JP2018011772A - ファントムおよび評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光音響装置の性能評価を良好に行うためのファントムを提供する。【解決手段】被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能を評価するためのファントムであって、背景光学係数および音響特性を被検体に近似させた母材と、母材の内部に配置された、所定の光学特性を持つターゲットを備え、母材には、背景光学係数を測定するための領域が設けられているファントムを用いる。【選択図】図1
Description
本発明は、ファントムと、ファントムを用いた光音響装置の評価方法に関する。
近年、光イメージング技術の一つとして、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー)が提案されている。光音響トモグラフィーを用いる光音響装置は、パルス光を被検体に照射して、被検体を伝搬・拡散させ、パルス光のエネルギーを吸収した被検体組織から発生する光音響波を検出する。そして、検出信号を処理し、被検体内部や表面の光学特性値に関連した特性情報(被検体情報)を取得し、画像データを生成する。
一般的に、光音響装置の性能評価にはファントムを用いる。ファントムに配置されている被評価物(ターゲット)の形状や配置状況は既知である。したがって、性能評価の際には、ファントムを光音響測定して得られた画像データ中のターゲットと、実際のファントムでのターゲット配置を比較することにより、光音響装置が所定の性能を発揮しているかどうかを判定できる。性能評価の対象は例えば、解像度、コントラスト、ターゲットの検出性能、酸素飽和度などの光学特性値の算出精度である。また評価結果に基づいて、測定結果(検出信号、被検体情報、画像データなど)の補正や、装置の校正(部品の位置ずれや歪みの補正、探触子劣化の検出)が可能になる。
特許文献1には、光音響装置を評価するための、人体組織に近い光学特性と音響特性を有する材料を使用したファントムが開示されている。特許文献1に記載の人体組織を測定するPAT装置では、このファントムを使用して界面での反射を抑制している。
正確性の高い光音響測定を行うためには、酸素飽和度などの光学特性値が正しく測定できるかどうかの性能評価を行い、装置を校正することが重要である。そのためには、性能評価の時点でのファントムの構造情報(外形形状やターゲットの配置状況など)や物性情報(光学特性・音響特性など)を正確に知る必要がある。ここで、樹脂製のファントムにおいては、光学特性などが経時変化する場合がある。光学特性が変化すると光吸収体(ターゲット)へ到達する光量が変化し、それに伴って発生する音圧分布も変化する。その結果、性能評価が正確に行われないおそれがある。このようなファントムの経時変化に伴う光学特性の変化を踏まえた性能評価の技術が求められている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明は、光音響装置の性能評価を良好に行うためのファントムを提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能を評価するためのファントムであって、
背景光学係数および音響特性を前記被検体に近似させた母材と、
前記母材の内部に配置された、所定の光学特性を持つターゲットと、
を備え、
前記母材には、前記背景光学係数を測定するための領域が設けられている
ことを特徴とするファントムである。
被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能を評価するためのファントムであって、
背景光学係数および音響特性を前記被検体に近似させた母材と、
前記母材の内部に配置された、所定の光学特性を持つターゲットと、
を備え、
前記母材には、前記背景光学係数を測定するための領域が設けられている
ことを特徴とするファントムである。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
ファントムを用いて被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能の評価方法であって、
前記ファントムは、背景光学係数および音響特性を前記被検体に近似させた母材と、前記母材の内部に配置された所定の光学特性を持つターゲットを備え、前記母材には前記背景光学係数を測定するための領域が設けられており、
前記領域を用いて前記背景光学係数を測定するステップと、
前記ファントムの形状に関する情報を含むファントム情報を取得するステップと、
前記背景光学係数および前記ファントム情報を用いて前記被検体内の光分布を取得するステップと、
前記被検体に光が照射されて発生する光音響波を電気信号に変換するステップと、
前記光分布と前記電気信号を用いて前記被検体内の光学特性値を示す画像データを取得するステップと、
前記画像データに含まれる前記ターゲットの画像を用いて前記性能を評価するステップと、
を有することを特徴とする評価方法である。
ファントムを用いて被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能の評価方法であって、
前記ファントムは、背景光学係数および音響特性を前記被検体に近似させた母材と、前記母材の内部に配置された所定の光学特性を持つターゲットを備え、前記母材には前記背景光学係数を測定するための領域が設けられており、
前記領域を用いて前記背景光学係数を測定するステップと、
前記ファントムの形状に関する情報を含むファントム情報を取得するステップと、
前記背景光学係数および前記ファントム情報を用いて前記被検体内の光分布を取得するステップと、
前記被検体に光が照射されて発生する光音響波を電気信号に変換するステップと、
前記光分布と前記電気信号を用いて前記被検体内の光学特性値を示す画像データを取得するステップと、
前記画像データに含まれる前記ターゲットの画像を用いて前記性能を評価するステップと、
を有することを特徴とする評価方法である。
本発明によれば、光音響装置の性能評価を良好に行うためのファントムを提供することができる。
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。よって、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明は、光音響トモグラフィー技術を用いた被検体情報取得装置の性能評価や校正に用いるファントムに関する。本発明はまた、ファントムを用いた評価方法または校正方法、あるいはファントムの製造方法に関する。被検体情報取得装置は、光音響装置または画像処理装置とも呼べる。本発明はまた、上記の評価方法や校正方法を、CPUやメモリ等のハードウェア資源を備える情報処理装置に実行させるプログラムや、そのプログラムを格納したコンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体としても捉えられる。
ファントムが模擬する被検体の例としては、乳房などの生体の一部がある。他にも、手、足、胴体など生体の他の部位や、マウスのようなヒト以外の動物、変形しやすい非生物なども模擬の対象となり得る。
<実施例1>
(ファントムの構成)
図1に、本実施例のファントム100の構成を示す。このファントムは乳房用の光音響装置の性能評価のために用いられる。図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は下面図、図1(d)はファントム中央における断面図(図1(a)のA−A’線での断面図)である。
(ファントムの構成)
図1に、本実施例のファントム100の構成を示す。このファントムは乳房用の光音響装置の性能評価のために用いられる。図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は下面図、図1(d)はファントム中央における断面図(図1(a)のA−A’線での断面図)である。
ファントムは、樹脂である母材と一体化した、装置に取り付けるためのフランジ101、光音響装置とファントムの位置を規定するための位置決め部となるガイド103、ファントムの樹脂部105の光学測定のための開口102、ファントムを把持するための把持部104、生体相当の光学係数を有する樹脂部105、複数のターゲット106を含んでいる。フランジ101の外径はφ300mm、開口102の内径はφ90mmである。また、ファントムの底面は曲面で、側面は一部が平坦になっている外径φ200mmの円柱である。複数のターゲット106により光音響装置の画像コントラスト、酸素飽和度などの光学特性の測定精度、解像度、ターゲットの検出性能などが評価できる。
(ファントムの材料)
本発明におけるファントムの樹脂部105の母材は、いわゆるウレタン樹脂で、ポリオールと、ポリオールに分散可能なフィラーから成る。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を利用できる。ここでは、人体組織の音響伝搬特性に近いポリエーテルポリオールを用いる。なお、ポリオールは通常液体状態であり、硬化剤を含ませることにより硬化する。本発明では、樹脂部105の音響伝搬特性を人体組織に近似させるため、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いる。
本発明におけるファントムの樹脂部105の母材は、いわゆるウレタン樹脂で、ポリオールと、ポリオールに分散可能なフィラーから成る。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を利用できる。ここでは、人体組織の音響伝搬特性に近いポリエーテルポリオールを用いる。なお、ポリオールは通常液体状態であり、硬化剤を含ませることにより硬化する。本発明では、樹脂部105の音響伝搬特性を人体組織に近似させるため、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いる。
フィラーは、樹脂部105の光の散乱係数と吸収係数を人体組織に近似させるために用いられる。光散乱性を有するフィラーとしては酸化チタン等の無機酸化物が挙げられる。また、光吸収性を有するフィラーとしては顔料を用いることが望ましい。顔料としてはカーボンブラックのような黒色顔料が好適である。本発明では、ファントムの樹脂部105の光学係数が、生体の値の範囲内である吸収係数0.005mm−1、等価散乱係数1mm−1程度になるよう調整する。また、音響特性は、音速1450m/s、減衰率:0.5dB/cmMHz程度に調整する。
(ターゲット)
ファントムには、装置の分解能、酸素飽和度、コントラストを評価するための指標となる、ターゲットが配置されている。ターゲットとは光音響装置の性能を評価するための被評価物である。ターゲットや樹脂部の光学特性や音響特性は既知であるため、実測値と理論値との比較に基づく校正や性能評価が可能となる。
ファントムには、装置の分解能、酸素飽和度、コントラストを評価するための指標となる、ターゲットが配置されている。ターゲットとは光音響装置の性能を評価するための被評価物である。ターゲットや樹脂部の光学特性や音響特性は既知であるため、実測値と理論値との比較に基づく校正や性能評価が可能となる。
ここではターゲット106として、色材を添加したナイロンワイヤを用いる。ナイロンワイヤは、金型への装着が容易だという利点がある。ただし、ターゲットはこれに限定されない。ターゲット形状は、リングや球体でもよい。これらの場合は、ナイロンワイヤでターゲットを両端から引っ張ることによって金型に配置できる。また、ターゲットの材料は、ウレタン樹脂、ゴムなどであっても良い。
ナイロンワイヤはウレタン系の樹脂と比べて硬く、細くできるので、解像度を評価するのに好適である。ここでは、解像度評価のために、光音響装置の解像度より細い、φ0.1mmのナイロンワイヤを用いる。また酸素飽和度を評価するターゲットとしては、酸素飽和度75%および95%相当となるように色材の波長ごとの吸収係数を調整したナイロンワイヤを用いる。色材の候補としては、銅フタロシアニン等のシアン顔料、モノアゾレ
ーキ系顔料、モノアゾ系顔料等のマゼンダ顔料、ジアリライドイエロー等のイエロー顔料などが挙げられる。なお、光音響装置と超音波装置を兼用する場合、ナイロンワイヤは超音波画像の解像度評価にも使用できる。
ーキ系顔料、モノアゾ系顔料等のマゼンダ顔料、ジアリライドイエロー等のイエロー顔料などが挙げられる。なお、光音響装置と超音波装置を兼用する場合、ナイロンワイヤは超音波画像の解像度評価にも使用できる。
画像コントラストや酸素飽和度の評価は、広い面積のターゲットを用いる方が精度よく実行できる。そこで本実施例では、解像度評価用のターゲットとは別に、コントラストおよび酸素飽和度を評価するための広いターゲットを配置する。しかし、面積が広くなるほど中抜けが発生しやすくなるため、φ1−2mm程度が好適である。ここではシアン顔料を添加した、解像度より太いφ1.0mmのナイロンワイヤを用いる。
(金型)
金型200を用いたファントムの成型について述べる。図2(a)は金型の上面図、図2(b)はフランジをつけた状態での中央の断面図(図2(c)のB−B’線での断面図)、図2(c)はフランジをつけた状態での上面図、図2(d)はフランジをつけた状態での側面図である。
金型200を用いたファントムの成型について述べる。図2(a)は金型の上面図、図2(b)はフランジをつけた状態での中央の断面図(図2(c)のB−B’線での断面図)、図2(c)はフランジをつけた状態での上面図、図2(d)はフランジをつけた状態での側面図である。
金型は、曲面構造を成型する底部207、ターゲットを通す穴を有する側面部202、円柱を成型する円弧部201といった、複数の部品で構成されている。このように複数の部品に分割することによって、ファントムの母材であるウレタン樹脂から金型を離型しやすくなる。それぞれの金型同士を組み合わせるときは、位置決めピンによって位置を規定し、ボルトによって固定することが好ましい。
なお、ファントムの成型の際、フランジ101を金型の蓋としても使用される。フランジ101の開口102の内径はφ90mmであるが、図2(b)に示すように、開口表面からファントムの深部に進むに連れて、内径が狭くなっている構造である。このように、表面に対して深部が狭い部分を有することで、樹脂が硬化した後は、ウレタン樹脂が抜けにくくなる。フランジの位置決めは、フランジのガイド103と、金型の位置決め部203を用いて行う。フランジの固定は、フランジの裏面にあるネジ穴107と金型にあるガイド204を貫通させたボルトを用いて行う。位置決め部およびガイド部としては、ピンと穴の組み合わせが好適に用いられる。フランジと金型のいずれに穴を設けても良い。また、溝や段差などの噛み合わせにより位置決めを行っても良い。なお、必ずしも、開口の深部の内径の全体が、開口の表面の内径よりも狭くなっている必要はない。例えば深部において複数の突出した部分を設けることにより、樹脂の開口からの脱落を防ぐ構造でもよい。
(ファントムの成型)
ファントムの成型工程は次のとおりである。まず、フランジの傾斜部108、109に樹脂が密着しやすくする処理を施す。また、金型に離型材を塗布する処理を施す。そして、ナイロンワイヤを側面部202の穴に通すことで、ターゲットを配置する。そして、フランジ101と金型を固定する。
ファントムの成型工程は次のとおりである。まず、フランジの傾斜部108、109に樹脂が密着しやすくする処理を施す。また、金型に離型材を塗布する処理を施す。そして、ナイロンワイヤを側面部202の穴に通すことで、ターゲットを配置する。そして、フランジ101と金型を固定する。
次に、フィラーを真空脱泡・攪拌装置によって空気が入らないようにポリオールに分散させる。さらに、ポリオールに硬化剤を分散させた後、ポリオールを開口102から注型する。注型後、90度で1時間加熱することによってポリオールを硬化させる。最後に金型を外すことによって、フランジ101とウレタン樹脂が一体となった光音響用のファントムができる。なお、開口102を覆う蓋や扉を設けておき、光学特性評価のとき以外は樹脂部を保護することが好ましい。
(光学特性の評価)
続いて、性能評価の前または後にファントムの樹脂部105の光学特性を測定し、経時
変化による変化を検出する方法を説明する。ここでは、光学特性測定装置として近赤外分光装置を用いる。近赤外分光装置には、パルス光を照射して時間波形を解析する方法や、光を変調して周波数領域で解析する方法がある。なお、必ずしも光音響装置にファントムを設置した状態でなくとも、光学特性評価は実行できる。
続いて、性能評価の前または後にファントムの樹脂部105の光学特性を測定し、経時
変化による変化を検出する方法を説明する。ここでは、光学特性測定装置として近赤外分光装置を用いる。近赤外分光装置には、パルス光を照射して時間波形を解析する方法や、光を変調して周波数領域で解析する方法がある。なお、必ずしも光音響装置にファントムを設置した状態でなくとも、光学特性評価は実行できる。
図3に、近赤外分光装置の光ファイバからなるプローブが接触しているときのファントム100の断面を示す。ファントムの開口102から露出している樹脂部105には、光ファイバの近赤外照射部301と受光部302を接触させる。光ファイバは、固定部品304によって、樹脂部105の表面に対して垂直に光(近赤外光)が照射されるように固定される。光ファイバの近赤外照射部301と受光部302の距離は30mmである。ファントムの光学係数が生体相当の値の場合、近赤外照射部301から受光部302の光の経路はいわゆるバナナシェイプ303で示されるような範囲である。このとき、受光部302に戻る光の最大深度は開口から30mm程度である。受光した信号を既知の手法で解析することにより、吸収係数や散乱係数などの光学特性情報を取得できる。
なお、静脈相当のターゲット305、解像度ターゲット306、動脈相当のターゲット307は、曲面部から深さ10mmごとに配置され最大30mm深さにある。そのため、樹脂部105の光学特性測定は、ターゲットから影響をほぼ受けない。すなわち、照射された近赤外光は、ターゲットの影響をほぼ受けずに受光部に到達する。ここで「影響をほぼ受けない」とは、例えばターゲット領域まで達する近赤外光が照射光量の0.5%以下であれば良い。ただしこの範囲は診断の目的や装置の性能に応じて適宜決定すればよい。
このように、開口102を設けることにより、ファントムの樹脂部105の光学特性を直接評価することができる。その結果、ファントムに温度や湿度などの環境による劣化が起こったり、経時変化が起こったりしても、現時点での光学係数を取得できる。なお、光学特性の計測には、樹脂部105の側面や底面を用いることも可能である。ただし、側面や底面は曲率を有していることが多く、近赤外分光測定結果の解析時の計算量増大や、近赤外光照射部301や受光部302を押し付けることによる歪みの発生が起こる可能性がある。また、側面や底面は、ファントムの性能評価時に露出したり他の部材に押し当てられたりするため、部位による劣化状況の差が大きい。一方、開口102に露出した樹脂部105は、光学特性の性能評価のみに用いられるため、標準的な変化状況を測定できる。
(音響特性の評価)
樹脂部105の音響伝播特性の測定は、送信用のトランスデューサーと受信用のニードル型ハイドロフォンの間に、ファントム作製時に作った音響試験片を配置して行う。試験片の厚みを変えた場合の、超音波の到達時間の差から音速を、超音波の振幅の差から減衰特性を、それぞれ測定できる。なお、音の伝播は数センチ単位での変化であるため、評価用サンプルを分けても大きく影響しない。一方、光の伝播は数ミリ単位で大きく変化するため、上述したようにファントム本体を用いることが好ましい。
樹脂部105の音響伝播特性の測定は、送信用のトランスデューサーと受信用のニードル型ハイドロフォンの間に、ファントム作製時に作った音響試験片を配置して行う。試験片の厚みを変えた場合の、超音波の到達時間の差から音速を、超音波の振幅の差から減衰特性を、それぞれ測定できる。なお、音の伝播は数センチ単位での変化であるため、評価用サンプルを分けても大きく影響しない。一方、光の伝播は数ミリ単位で大きく変化するため、上述したようにファントム本体を用いることが好ましい。
以上のようなファントムの構成にすることで、光音響装置の性能の評価を行うのに好適なファントムを提供できる。ファントムに開口102を設けることにより、ファントムの光学特性を容易に測定できるため、経時変化が起こった場合でも正確な被検体情報や画像データを取得できる。特に、ターゲットの埋め込み位置と開口102の位置を離すことにより、近赤外照射部から射出された光がターゲットの影響を受けずに受光部まで到達するため、背景光学係数の測定結果に対してターゲットが与える影響を無くすことができる。
<実施例2>
以下に、図面等を用いて本発明の光音響装置の画像評価について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に、図面等を用いて本発明の光音響装置の画像評価について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(光音響装置)
本実施例における乳房測定用の光音響装置400を図4に示す。図4(a)は、光音響装置にファントム410を配置した状態の、センサ部分およびファントム410の断面図を示す。図4(a)にはさらに、光音響装置の模式的ブロック図を示す。図4(a)の光音響装置は、典型的には寝台式の乳房検査装置である。被検者は寝台に伏臥位で横たわり、寝台の穴から乳房を挿入する。そして、穴の下方の探触子により測定が行われる。光音響装置の性能評価時には、本実施例のファントムは、その寝台の穴から挿入される。
本実施例における乳房測定用の光音響装置400を図4に示す。図4(a)は、光音響装置にファントム410を配置した状態の、センサ部分およびファントム410の断面図を示す。図4(a)にはさらに、光音響装置の模式的ブロック図を示す。図4(a)の光音響装置は、典型的には寝台式の乳房検査装置である。被検者は寝台に伏臥位で横たわり、寝台の穴から乳房を挿入する。そして、穴の下方の探触子により測定が行われる。光音響装置の性能評価時には、本実施例のファントムは、その寝台の穴から挿入される。
図4(b)は、センサ部分の上面図である。半球容器401には、センサである探触子402が半球面に沿う位置でスパイラル状に512個配置されている。そして、被検体は、ポリエチレンテレフタラートからなる保持部材406に配置される。ここでは、乳房の代わりにファントム410が位置決め機構411によって光音響装置に配置されている。なお位置決めには、フランジのガイド103を用いても構わない。
半球容器401は音響の整合層となる溶液(例えば、水、ジェル、油)で満たされる。さらに、半球容器401には、光照射部403からの計測光が通過する空間が設けられている。そして、被検体にz方向の負の向きから計測光が照射される。光を照射された被検体(またはファントム)から発生する光音響波を各探触子が受信し、その検出信号を再構成することによって3次元の光音響画像を得ることができる。
また、光音響装置に、半球容器401と保持部材406の相対位置を変えるXYステージなどの走査機構を設けることも好ましい。XYステージを走査しながら光照射と光音響波検出を行うことにより、広範囲を光音響測定することが可能になる。
なお、光音響装置が超音波装置を兼ねるようにすれば、複数のモダリティによる多面的な診断が可能になる。図4の装置の場合は、リニア型の超音波プローブ404を備えている。超音波プローブは被検体(またはファントム)に超音波を送信し、音響インピーダンスの界面で反射したエコー波を受信する。その受信信号を解析することにより、被検体の構造情報を取得できる。リニア型の超音波プローブ404を半球状容器401とともに走査することで、広範囲の超音波画像を取得できる。
(光照射部)
光照射部403は、被検体やファントムに、照射端405を経由して、光源からのパルス光を照射する装置である。光源としては、大出力を得るためにレーザー光源であることが望ましい。ただしこれに限るものではなく、レーザーの代わりに発光ダイオードやフラッシュランプ等を用いることもできる。なお、レーザーを用いる場合、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なものが使用できる。その照射のタイミング、波形、強度等は光制御部によって制御される。
光照射部403は、被検体やファントムに、照射端405を経由して、光源からのパルス光を照射する装置である。光源としては、大出力を得るためにレーザー光源であることが望ましい。ただしこれに限るものではなく、レーザーの代わりに発光ダイオードやフラッシュランプ等を用いることもできる。なお、レーザーを用いる場合、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なものが使用できる。その照射のタイミング、波形、強度等は光制御部によって制御される。
なお、光音響波を効果的に発生させるためには、被検体の熱特性に応じて十分短い時間に光を照射させなければならない。被検体が生体である場合、光源から発生するパルス光のパルス幅は10〜50ナノ秒程度が好適である。また、パルス光の波長は、被検体内部まで光が伝搬する波長であることが望ましい。具体的には、生体の場合、700nm以上1100nm以下である。ここでは、固体レーザーであるチタンサファイアレーザーを用いる。酸素飽和度を測定するためには複数の波長の光を照射する。本実施例では、波長は760nmと800nmとする。
(光音響測定用の探触子)
探触子402は、光音響波を受信して、アナログ電気信号に変換する。ここでは、CM
UT(容量性マイクロマシン超音波探触子)を用いる。PZT(圧電セラミックス)やファブリペロー干渉計を用いてもよい。探触子402は単素子で、φ3mmの開口を持ち、帯域は0.5−5MHzの帯域である。低周波数の音響波を受信可能とすることによって、3mm程度の太い血管であっても、中が抜けてリング状に見えるような状況が発生し難くなる。なお、装置の解像度は0.4mmである。
探触子402は、光音響波を受信して、アナログ電気信号に変換する。ここでは、CM
UT(容量性マイクロマシン超音波探触子)を用いる。PZT(圧電セラミックス)やファブリペロー干渉計を用いてもよい。探触子402は単素子で、φ3mmの開口を持ち、帯域は0.5−5MHzの帯域である。低周波数の音響波を受信可能とすることによって、3mm程度の太い血管であっても、中が抜けてリング状に見えるような状況が発生し難くなる。なお、装置の解像度は0.4mmである。
探触子402で受信した信号はデータ取得部407に伝送される。データ取得部407は、増幅処理を行うアンプや、デジタル変換処理を行うA/D変換器などを備える。アナログ電気信号は、データ取得部407の処理を経てデジタル電気信号として装置制御部408に送られる。サンプリング周波数は50MHzで2048サンプリングを行う。また、データは符号付きの12ビットである。装置制御部408では後述する再構成処理を行って被検体情報を示す画像データを生成し、表示部409に送信する。
(装置制御部)
装置制御部としては、CPU、ROMやRAMやHDDなどの記憶部、通信装置、入力部を備え、記憶部に格納されているプログラムを実行することにより制御を実施する、PCやワークステーションを利用できる。複数のPCが協働して装置制御部として機能してもよい。ユーザが情報を入力するための入力部としては、マウス、キーボード、タッチパネルなどを利用できる。
装置制御部としては、CPU、ROMやRAMやHDDなどの記憶部、通信装置、入力部を備え、記憶部に格納されているプログラムを実行することにより制御を実施する、PCやワークステーションを利用できる。複数のPCが協働して装置制御部として機能してもよい。ユーザが情報を入力するための入力部としては、マウス、キーボード、タッチパネルなどを利用できる。
(超音波プローブ)
リニア型の超音波プローブ404は、被検体またはファントムに超音波を送信し、エコー波を受信してアナログ電気信号に変換する超音波素子を含む。超音波素子としても、PZT、CMUTなどが挙げられる。図4の超音波プローブ404は、一列に192個の素子が配置されたリニアアレイである。エコー波に由来する信号は、光音響波と同様に処理されて装置制御部408で画像データ化される。
リニア型の超音波プローブ404は、被検体またはファントムに超音波を送信し、エコー波を受信してアナログ電気信号に変換する超音波素子を含む。超音波素子としても、PZT、CMUTなどが挙げられる。図4の超音波プローブ404は、一列に192個の素子が配置されたリニアアレイである。エコー波に由来する信号は、光音響波と同様に処理されて装置制御部408で画像データ化される。
(画像再構成)
画像再構成は装置制御部408にて行われる。これには、ユニバーサルバックプロジェクション法や整相加算法など既知の再構成手法を利用できる。ここでは、ユニバーサルバックプロジェクション法を用いる方法について説明をする。まず、光音響測定で発生する初期音圧分布P(r)は数式(1)で表わされる。
画像再構成は装置制御部408にて行われる。これには、ユニバーサルバックプロジェクション法や整相加算法など既知の再構成手法を利用できる。ここでは、ユニバーサルバックプロジェクション法を用いる方法について説明をする。まず、光音響測定で発生する初期音圧分布P(r)は数式(1)で表わされる。
このとき投影データに相当する項b(r0,t)を、数式(2)に示す。ここで、pd(r0)は探触子402で検出される光音響信号、r0は各検出素子の位置、tは時間、Ω0は探触子402の立体角である。不図示の記憶部に格納されている光音響信号を数式(1)に基づいて処理をすることにより、初期音圧分布P(r)を得ることができる。
次に、吸収係数分布は、初期音圧分布P(r)から算出できる。吸収体に光が照射され
た時に発生する音圧P(r)は、数式(3)で表される。
Γは弾性特性値であるグリューナイセン(Gruneisen)係数であり、体積膨張係数(β)と音速(c)の二乗の積を比熱(Cp)で割ったものである。μaはターゲットの吸収体での吸収係数である。また、Φ(r)は局所的な領域で吸収体に照射された光量である。数式3を吸収係数について解くことによって、吸収係数分布μa(r)を得ることができる。なお、樹脂部105の背景光学係数は、吸収体(ターゲット)の吸収係数より十分小さいため、吸収係数分布には表れない。典型的には、背景光学係数はターゲットの1/100〜1/1000である。
た時に発生する音圧P(r)は、数式(3)で表される。
Γは弾性特性値であるグリューナイセン(Gruneisen)係数であり、体積膨張係数(β)と音速(c)の二乗の積を比熱(Cp)で割ったものである。μaはターゲットの吸収体での吸収係数である。また、Φ(r)は局所的な領域で吸収体に照射された光量である。数式3を吸収係数について解くことによって、吸収係数分布μa(r)を得ることができる。なお、樹脂部105の背景光学係数は、吸収体(ターゲット)の吸収係数より十分小さいため、吸収係数分布には表れない。典型的には、背景光学係数はターゲットの1/100〜1/1000である。
Φ0は、表面での入射光の光量である。μeffは、被検体内またはファントムでの平均的な等価減衰係数で、散乱係数μbsや吸収係数μbaを反映したものであり、例えば数式(5)のように表わされる。
このように指数関数で減衰していくため、背景光学係数が少しずれると吸収係数分布や酸素飽和度分布に大きな影響を与えることとなる。
このように指数関数で減衰していくため、背景光学係数が少しずれると吸収係数分布や酸素飽和度分布に大きな影響を与えることとなる。
次に、吸収係数分布からヘモグロビン分布を求める方法を示す。吸収体の吸収係数μa(λ)は、単位体積当たりの酸化ヘモグロビンCHbOと還元ヘモグロビンCHbRの吸収によって決まる。酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸収係数をそれぞれの波長でEHbO(λ1),EHbR(λ1),EHbO(λ2),EHbR(λ2)とすると、数式(6)のように表わされる。なお、左辺は数式(3)によって得た吸収係数分布である。
酸素飽和度StOは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンを合わせた総ヘモグロビン量に対する酸化ヘモグロビンの割合であるため数式(8)のように表わされる。
各座標rで計算をすれば、酸素飽和度の画像を得ることができる。
各座標rで計算をすれば、酸素飽和度の画像を得ることができる。
(光学特性の取得と光音響装置の評価の処理フロー)
次に、ファントムの光学特性の取得と、ファントムを用いた光音響装置の性能評価について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の例では酸素飽和度を示す画像データを用いたが、初期音圧分布、吸収係数分布、光エネルギー吸収密度分布など、他の被検体情報に由来する画像データを用いてもよい。
次に、ファントムの光学特性の取得と、ファントムを用いた光音響装置の性能評価について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の例では酸素飽和度を示す画像データを用いたが、初期音圧分布、吸収係数分布、光エネルギー吸収密度分布など、他の被検体情報に由来する画像データを用いてもよい。
S1工程ではまず、ファントムの光学特性値を取得する。技師などのユーザは、開口102の蓋を開けて樹脂部105を露出させた状態にして、近赤外分光装置の近赤外照射部と受光部を樹脂部105に押し当てて、照射と受光を行う。得られた信号を解析することで、樹脂部105の光学係数(吸収係数および散乱係数)を取得できる。なお、この測定は毎回必須のものでなく、例えば2週間に1回程度でもよい。
S2工程で、ファントムの光音響測定を行う。まず、ファントム410を位置決め機構411によって光音響装置に設置する。位置決め機構411を用いることによってファントムを正確な位置に配置できる。ファントムには、解像度および酸素飽和度を評価するためのターゲットが異なる深さに配置されている。光音響測定においては、光照射部403が760nmと800nmの光を交互に照射する。このとき、走査機構であるXYステージによる相対移動も行われる。発生した光音響波は各探触子より検出され、データ取得部によりデジタル電気信号に変換され、記憶部に保存される。
S3工程で、装置制御部408がファントム情報を取得する。ファントム情報とは、ファントムの形状、構造情報、ターゲットの吸収係数、ターゲット位置情報、樹脂部105の吸収係数および散乱係数である。その他、画像再構成に利用可能な種々の情報をファントム情報に含み得る。ファントム情報の取得の際には、PCやワークステーションの入力部を用いたユーザからの入力を受け付ける。あるいは、ファントムにICタグやバーコートを取り付けておき、ICタグリーダーやバーコードリーダーを用いて予め格納されたファントム情報を読みだしてもよい。また、ユーザが入力する情報や、ICタグに格納される情報は、ファントム情報そのものではなく、ファントムの型番でもよい。
S4工程で装置制御部は、記憶部に保存されたファントム由来のデジタル電気信号を用いて、被検体の機能画像としての酸素飽和度画像を生成する。光音響画像は、被検体内部の構成物を反映していることから、被検体の機能情報を表す機能画像と呼べる。まず上述の画像再構成手法により、デジタル電気信号から波長ごとの初期音圧分布を生成する。次に、ファントムの形状と、S1で取得した背景光学係数から、ファントム内の光分布を求める。これらを用いて波長ごとの吸収係数画像や、酸素飽和度画像を取得できる。
なお、経時変化や欠損によりファントムが設計値から変形し、ファントム形状に関するファントム情報が不正確になる場合がある。この場合、光分布を正確に求めることができない。そこで、ファントム形状を正確に把握するために、カメラ等を用いて形状情報を取得すると良い。また、光音響装置が超音波装置を兼ねている場合、超音波送受信に要した時間に基づいて形状情報を取得してもよい。
S5工程で装置制御部は、ファントムの光音響画像(機能画像)から、ファントム内の異なる深さに配置された静脈および動脈に相当するターゲット画像を抽出する。2次元または3次元の光音響画像は、単位領域(ピクセルまたはボクセル)の集合として表わされる。そこで、光音響画像に対して信号強度に基づく閾値処理や、ターゲット形状に基づくパターン判定処理を施すことで、ターゲットを抽出できる。このようにして、ファントム内の異なる深さにおける静脈相当と動脈相当のターゲットの酸素飽和度を算出する。なお、解像度用のターゲットについても酸素飽和度を求めても良いし、他の光学特性値を求めても良い。
S6工程で装置制御部は、光音響画像中のターゲットの状況に基づいて、光音響装置の性能の判定処理を行う。ターゲットの状況とは例えば、位置、サイズまたは太さ、吸収係数、酸素飽和度などである。光音響画像と実際のファントムを比較することで、性能評価が可能となる。また、性能評価の結果に基づいて校正情報を生成することも好ましい。
なお、本実施例のファントムでは、異なる深さに同じ酸素飽和度のターゲットが複数配置されている。そこで、深さが異なる場合でも酸素飽和度の誤差が所定の範囲内であるかどうかを検出することが好ましい。所定の誤差とは例えば、酸素飽和度の差にして±1%以内である。この場合、装置が所望の性能を発揮していると判断できる。このような比較処理を、動脈相当のターゲット群と、静脈相当のターゲット群それぞれについて行うことで、より精度の高い性能判定が可能になる。なお、酸素飽和度は数式(8)に示すように比で表されるため、位置による感度の影響を受けにくい。一方、吸収係数は、位置による感度の影響を比較的受けやすい。そのため、ここでは酸素飽和度を用いる。
ところで、上記フローではファントムの光学係数の測定値を利用した。しかし、光学係数を未知のパラメータとしてS2〜S5の工程を繰り返し、異なる深さにある同種のターゲットの酸素飽和度が所定の許容範囲内に収まるような光学係数が存在するかどうかを判定してもよい。この場合、ターゲットの酸素飽和度の絶対値が不明であっても装置の評価をすることができる。
このように、本実施例の手法によれば、本発明に係るファントムを利用して光音響装置の性能評価と校正を良好に実施できる。
<実施例3>
本発明にかかるファントムは、様々な形状とすることができる。図6に、ハンドヘルド型のプローブを備える光音響装置に好適なファントム600を示す。ここでは、筐体の中に光照射部と2次元探触子アレイを備える光音響測定用プローブを想定している。筐体には医師や技師が手に持つための把持部があり、探触子アレイの素子面を被検部位に押し当
てた状態で光を照射し、発生する光音響波を受信する。
本発明にかかるファントムは、様々な形状とすることができる。図6に、ハンドヘルド型のプローブを備える光音響装置に好適なファントム600を示す。ここでは、筐体の中に光照射部と2次元探触子アレイを備える光音響測定用プローブを想定している。筐体には医師や技師が手に持つための把持部があり、探触子アレイの素子面を被検部位に押し当
てた状態で光を照射し、発生する光音響波を受信する。
ファントム600の大きさは横幅130mm、高さ100mm、奥行80mmである。筺体601内部にウレタン母材からなる樹脂が封入されている。構造体である上面にハンドヘルド型のプローブに対する位置を規定する位置決め部602、側面に樹脂の光学測定用の開口604が配置されている。ウレタン母材は、少なくとも、構造体である上面には固定されている。好ましくは、筐体にウレタン母材が収められることにより、ウレタン母材が構造体に固定される。酸素飽和度を評価するための3本のターゲット603が、上面から深さ10mmごとに配置されている。なお、ファントム製造時においては、側面の開口604に蓋をしておき、位置決め部602から樹脂を注入する。
図6のファントムに対して近赤外分光法による光学係数取得処理を施すときは、側面の開口604の蓋を開けて、近赤外照射部と受光部を樹脂部に接触させる。これにより、ターゲット603が配置されていない領域を使って正確な光学係数を測定できる。そのため、背景光学係数の測定結果に対してターゲットが与える影響を無くすことができる。
続いて光音響装置の性能評価をする際には、上面の位置決め部602の開口にハンドヘルド型プローブの素子面を接触させる。そしてプローブに含まれる光照射部から光を照射し、発生する光音響波を探触子アレイで受信する。続いて装置制御部が検出信号に基づく画像再構成を行い、上述のフローと同様の手法で性能評価を行う。
以上のようなファントムの構成にすることで、ハンドヘルド型の光音響装置の性能評価に好適なファントムを提供することができる。
<その他の実施形態>
記憶装置に記録されたプログラムを読み込み実行することで前述した実施形態の機能を実現するシステムや装置のコンピュータ(又はCPU、MPU等のデバイス)によっても、本発明を実施できる。また、例えば、記憶装置に記録されたプログラムを読み込み実行することで前述した実施形態の機能を実現するシステムや装置のコンピュータによって実行されるステップからなる方法によっても、本発明を実施できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。この目的のために、上記プログラムは、例えば、ネットワークを通じて、又は、上記記憶装置となり得る様々なタイプの記録媒体(つまり、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体)から、上記コンピュータに提供される。したがって、上記コンピュータ(CPU、MPU等のデバイスを含む)、上記方法、上記プログラム(プログラムコード、プログラムプロダクトを含む)、上記プログラムを非一時的に保持するコンピュータ読取可能な記録媒体は、いずれも本発明の範疇に含まれる。
記憶装置に記録されたプログラムを読み込み実行することで前述した実施形態の機能を実現するシステムや装置のコンピュータ(又はCPU、MPU等のデバイス)によっても、本発明を実施できる。また、例えば、記憶装置に記録されたプログラムを読み込み実行することで前述した実施形態の機能を実現するシステムや装置のコンピュータによって実行されるステップからなる方法によっても、本発明を実施できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。この目的のために、上記プログラムは、例えば、ネットワークを通じて、又は、上記記憶装置となり得る様々なタイプの記録媒体(つまり、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体)から、上記コンピュータに提供される。したがって、上記コンピュータ(CPU、MPU等のデバイスを含む)、上記方法、上記プログラム(プログラムコード、プログラムプロダクトを含む)、上記プログラムを非一時的に保持するコンピュータ読取可能な記録媒体は、いずれも本発明の範疇に含まれる。
105:樹脂部、101:フランジ、102:開口、106:ターゲット
Claims (9)
- 被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能を評価するためのファントムであって、
背景光学係数および音響特性を前記被検体に近似させた母材と、
前記母材の内部に配置された、所定の光学特性を持つターゲットと、
を備え、
前記母材には、前記背景光学係数を測定するための領域が設けられている
ことを特徴とするファントム。 - 前記母材の前記領域は、光学特性測定装置を用いて前記背景光学係数を測定するときに、前記ターゲットが前記背景光学係数の測定結果にほぼ影響を与えない位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のファントム。
- 前記光学特性測定装置は、近赤外照射部と受光部を備える近赤外分光装置であり、
前記母材の前記領域は、前記近赤外照射部から照射された近赤外光が前記ターゲットの影響をほぼ受けずに前記受光部に到達できる位置に設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載のファントム。 - 前記光音響装置に対する位置決め部を有する構造体をさらに備え、
前記構造体は前記母材と固定されており、
前記背景光学係数の測定は、前記構造体に設けられた開口から露出する前記領域を用いて行われる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のファントム。 - 前記光音響装置には、前記ファントムが挿入される穴が設けられた寝台を有しており、
前記構造体は、前記母材を固定するとともに前記寝台と位置決めされるフランジであり、
前記フランジに設けられた前記開口は、表面に対し深部が狭くなる部分を有する構造である
ことを特徴とする請求項4に記載のファントム。 - 前記構造体の前記位置決め部は、前記母材を成型するときに用いられる金型に対する位置決めにも用いられる
ことを特徴とする請求項4または5に記載のファントム。 - 前記光音響装置は、ハンドヘルド型プローブを有し、
前記構造体は、前記母材が配置された筐体である
ことを特徴とする請求項4に記載のファントム。 - 前記特性情報は、前記被検体内の吸収体の酸素飽和度である
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のファントム。 - ファントムを用いて被検体の特性情報を取得する光音響装置の性能の評価方法であって、
前記ファントムは、背景光学係数および音響特性を前記被検体に近似させた母材と、前記母材の内部に配置された所定の光学特性を持つターゲットを備え、前記母材には前記背景光学係数を測定するための領域が設けられており、
前記領域を用いて前記背景光学係数を測定するステップと、
前記ファントムの形状に関する情報を含むファントム情報を取得するステップと、
前記背景光学係数および前記ファントム情報を用いて前記被検体内の光分布を取得する
ステップと、
前記被検体に光が照射されて発生する光音響波を電気信号に変換するステップと、
前記光分布と前記電気信号を用いて前記被検体内の光学特性値を示す画像データを取得するステップと、
前記画像データに含まれる前記ターゲットの画像を用いて前記性能を評価するステップと、
を有することを特徴とする評価方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016143266A JP2018011772A (ja) | 2016-07-21 | 2016-07-21 | ファントムおよび評価方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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ID=61019704
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JP (1) | JP2018011772A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111743570A (zh) * | 2019-03-28 | 2020-10-09 | 无锡声美达医学技术有限公司 | 一种对具有影像引导功能的超声弹性测量仪器的超声测量深度进行检测的方法及装置 |
WO2024075482A1 (ja) * | 2022-10-07 | 2024-04-11 | デンカ株式会社 | 医療シミュレータ用樹脂組成物及びその成形品 |
-
2016
- 2016-07-21 JP JP2016143266A patent/JP2018011772A/ja active Pending
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