JP2018011370A - 電力系統監視システム、方法および装置 - Google Patents

電力系統監視システム、方法および装置 Download PDF

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裕丈 石井
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Abstract

【課題】電力系統の状態を検出できるようにした電力系統監視システム、方法および装置を提供すること。
【解決手段】電力系統監視システムの各監視装置1は、所定のパケットを通信ネットワークCLを介してマスタ/スレーブ方式で交換することにより時刻を同期させる所定のプロトコルを用いることで、他の各監視装置1との間で時刻を同期する時刻同期部11と、時刻同期部により時刻が同期した状態で、電力系統から電力の時間軸波形を取得する系統波形取得部12と、時間軸波形を解析する時間軸波形解析部13と、時間軸波形をフーリエ変換し、周波数スペクトルを解析する周波数スペクトル解析部14と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、電力系統監視システム、方法および装置に関する。
近年、固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)や自己託送が広まりつつある。固定価格買取制度とは、需要家側で発電した電力を電力会社が固定価格で長期間購入する制度である。自己託送とは、需要者の持つ自家発電設備で発電した電力を送配電ネットワーク(電力系統)を介して当該需要家の持つ工場などへ送電するサービスである。これら固定価格買取制度や自己託送の普及に伴って、需要家側に設置される太陽光発電装置や風力発電装置などの分散型発電装置の総発電能力も増加傾向にある。
しかし、太陽光発電装置や風力発電装置などの分散型発電装置の発電量は天候に大きく左右されるため、電力系統に繋がる分散型発電装置の総発電能力が増大するほど、電圧や周波数などの系統状態の安定を保つのは難しくなる。需要家側の発電量が変動して需給バランスが崩れると、電力系統の電圧や周波数(位相)が変動し、規定の範囲から外れる可能性があり、電力系統を不安定にさせる大きな要因となる。
また、需要家側に設置される分散型の発電装置を電力系統に接続するには、需要家は認証登録済のPCS(Power Conditioning System)や売電用メータを用いて電力系統と分散型発電装置とを接続する必要はあるが、特別な技術や知識がなくとも電子申請するだけで、自分の所有する分散型発電装置を電力系統に接続することが可能となってきている。
したがって、需要家が故意または過失により、不正な波形を電力系統へ流入させてしまう可能性がある。不正な波形とは、許容された変動範囲を超える周波数や電圧を持つ電力波形や正弦波とは異なる電力波形のことを意味する。電力系統に不正な波形が流入すると、電力品質の低下を招き、電力系統を不安定にさせる大きな要因にもなる。
しかし、従来は、需要家側に設置される分散型の発電装置は少なく、比較的高い信頼性で運用されていたため、不正な波形が電力系統へ流入するのを阻止するという問題意識が無く、その対処方法も提案されていない。
一方、GPS(Global Positioning System)を用いて、各装置の時刻を同期させることにより地絡事故や短絡事故などの事故点(位置)を特定する技術等、送配電の監視を高度化する技術は知られている(特許文献1〜6)。また、時刻を同期させて太陽光発電パネルの監視制御を行う技術も知られている(特許文献7)。
特開2012−134895号公報 特開2009−247086号公報 特開2009−176107号公報 特開2004−108906号公報 特開2004−28659号公報 特開2002−250749号公報 特開2012−74782号公報
将来、需要家側に設置される分散型の発電装置が大量導入された場合、太陽光発電装置や風力発電装置などの分散型発電装置の発電量は天候に大きく左右されるため、急激な出力変動が短期的な需給バランスを引き起こし、電圧や周波数が規定の範囲から外れる問題が発生する。
また、休日など需要の少ない時間帯に余剰電力が発生する問題も、需要家側に設置される分散型の発電装置が大量導入された場合には、電力系統を不安定にさせる大きな要因となる。また、需要家側の発電装置から電力系統へ不正な波形が流入してしまう問題も、需要家側に設置される分散型の発電装置が大量導入された場合には、電力系統の品質を低下させる大きな要因となり得る。
なお、GPSを用いた地絡などの事故の発生箇所を特定する従来技術では、異常発生場所を正確に把握できたとしても、安価に実現するのが難しく、使い勝手が低い。また、GPS電波を受信するためには見通し状況が問題となり、建設工事などにより見通し状況が悪化することもある。さらに都市部では、電線共同溝に電線類を収容して地下へ埋設するといういわゆる電線類地中化が進展しつつある。電線と共に監視装置も地中に埋設されると、GPS電波を受信することができないため、監視装置間で時刻を同期させるのが難しくなり、この結果、異常発生場所の特定精度が低下する。
そこで、本発明の目的は、安価な時刻同期機能を具備し、電力系統の状態を検出できるようにした電力系統監視システム、方法および装置を提供することにある。また本発明の他の目的は、電力系統の状態を安価に高精度かつ高機能に検出できるとともに、電力系統へ流入する不正な波形を正確に検出できるようにした電力系統監視システム、方法および装置を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明に従う電力系統監視システムは、電力系統に複数設けられた監視装置を備え、各監視装置は、所定のパケットを通信ネットワークを介してマスタ/スレーブ方式で交換することにより時刻を同期させる所定のプロトコルを用いることで、他の各監視装置との間で時刻を同期する時刻同期部と、時刻同期部により時刻が同期した状態で、電力系統から電力の時間軸波形を取得する系統波形取得部と、時間軸波形を解析する時間軸波形解析部と、時間軸波形をフーリエ変換し、周波数スペクトルを解析する周波数スペクトル解析部とを備える。
本発明によれば、高価なGPSを設置せずに既存の配電自動化システムの設備を出来る限り有効活用しながら、所定のパケットを通信ネットワークを介してマスタ/スレーブ方式で交換することにより時刻を同期する所定のプロトコルを用いるため、監視装置が地中に埋設等された場合でも時刻を同期させることができ、安価に電力系統の状態を検出することができる。
本実施形態の全体概要を示す説明図。 配電系統を中心に示す電力系統の概略図。 配電子局のハードウェア図。 配電親局のハードウェア図。 PTP方式による時刻同期方法を示すフローチャート。 各配電子局で位相がずれる様子を示す説明図。 各配電子局で検出される時間軸波形とその時間軸波形をフーリエ変換して得られる周波数軸スペクトラムとを対比して示す説明図。 時間軸波形をスペクトル解析して不正な波形を検出する方法の説明図。 親局の処理を示すフローチャート。 子局の処理を示すフローチャート。 第2実施例に係り、親局と子局がPTP方式で時刻を同期する様子を示す説明図。 第3実施例に係り、親局が不正な波形の発生場所および発生原因を特定する処理を示すフローチャート。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下に述べるように、本実施形態に係る電力系統監視システムは、例えば、複数の配電子局1と、少なくとも一つの配電親局2とを備えており、各配電子局1と配電親局2とは通信ネットワークCNを介して双方向通信可能に接続されている。配電子局1は「監視装置」に対応し、配電親局2は「管理装置」に対応する。以下の説明では、子局1、親局2と略記する場合がある。
先に各子局1の機能構成を説明する。各子局1は、電力系統のうち配電系統の所定箇所に配置されており、配電線PLに設置された開閉器7の動作を制御する。本実施形態の子局1は、電力系統の状態(配電系統の状態)を示す時間軸波形を解析すると共に、その時間軸波形をフーリエ変換処理することで周波数スペクトル解析を実行し、電力系統の状態(電圧値、電流値、周波数、位相、遅延時間、高調波歪みなど)を高度に監視し、その監視結果に応じて開閉器7の動作を制御する。さらに不正な波形も抽出する。各子局1で取得したデータ、および/または、各子局1で解析結果のデータは、通信ネットワークCNを介して親局2へ送られる。
子局1は、後述のようにマイクロコンピュータシステムを利用して構成されており、例えば、時刻同期部11、系統波形取得部12、時間軸波形解析部13、周波数スペクトル解析部14、不正波形検出部15、記録部16、送信部17および開閉器制御部18を備える。
時刻同期部11は、例えばIEEE1588v2等のPTP(Precision Time Protocol)方式に従って時刻を同期させるための機能である。これにより、各子局1の間と、各子局1と親局2とは、誤差を例えば±1μs以下の比較的高い精度で時刻が同期する。
系統波形取得部12は、配電線PL(配電系統PLとも呼ぶ場合がある)を流れる電力系統の波形を時刻同期部11から出力される同期信号に同期して取得する機能である。時間軸波形解析部13は、系統波形取得部12で取得した電力系統の時間軸波形を解析して、電圧値(最大値、最小値、平均値)、電流値(最大値、最小値、平均値)、遅延時間などを解析及び異常検出する機能である。
周波数スペクトル解析部14は、時間軸波形をフーリエ変換処理することで、周波数スペクトルを求め、そのスペクトルから電力系統の状態を基本波成分(50Hzあるいは60Hz)の振幅や位相を解析し、高調波成分歪みなどを検出する機能である。不正波形検出部15は、周波数スペクトル解析から得た基本波の波形と系統波形取得部12で取得した波形とを比較することで、不正な波形を抽出する機能である。
記録部16は、時間軸波形解析部13の解析結果、周波数スペクトル解析部14の解析結果、不正波形検出部15の検出結果などのデータをメモリに記録する機能である。送信部17は、記録部16に保存されたデータの全部または一部を、通信ネットワークCNを介して親局2へ送信する。送信部17は、親局2の要求に応じて子局1のデータを親局2へ送信することもできるし、または、一定時間が経過するたびにあるいは所定のイベントが発生するたびに、子局1のデータを親局2へ送信することもできる。
開閉器制御部18は、開閉器7を制御する機能である。開閉器制御部18は、例えば電力系統の異常が検出された場合に、その波及を抑止すべく開閉器7を開いて配電線PLを遮断する。これに対し保守作業の結果、異常状態から復旧すると、開閉器制御部18は開閉器7を閉じて配電線PLを連通させる。
親局2の機能構成を説明する。親局2も後述のようにマイクロコンピュータシステムを利用して構成されており、例えば、時刻同期部21、データ収集部22、解析部23、制御部24、記録部25、統計情報管理部26を備える。
時刻同期部21は、子局1の時刻同期部11と同様に、PTP方式に従って親局2内の時刻を同期させる機能である。データ収集部22は、各子局1から取得データや解析データなどを定期的にまたは不定期に収集する機能である。
解析部23は、各子局1から収集したデータに基づいて異常の発生箇所や発生原因を解析する機能である。制御部24は、解析部23の解析結果に応じて、子局1に制御信号を出力する機能である。制御信号としては、例えば、開閉器7の開閉状態を変更させるための指示信号、配電ルートの変更を指示するための指示信号がある。
記録部25は、例えば、解析部23の解析結果や制御信号の出力履歴などを記録する機能である。記録部25は、各子局1から収集したデータを記憶することもできる。統計情報管理部26は、電力波形の統計情報(図12の統計情報SD)を管理する。統計情報管理部26は、不正な波形とその原因とを対応付ける管理も行う。したがって、子局1で検出された最新の不正波形と統計情報に記憶されている過去の不正波形とを照合することで、最新の不正波形の原因を特定(推定)することができる。なお、統計情報SDは常に更新されて学習していく機能を持ち、不正波形の原因を特定する精度が高まっていく特徴を持つ。
このように構成される本実施形態では、各子局1の時刻同期部11と親局2の時刻同期部21とは、定期的にPTP方式に従って時刻を同期させている。
各子局1は、その設置箇所における系統状態を系統波形取得部12で取得し、その時間軸波形を時間軸波形解析部13で解析する。さらに、各子局1の周波数スペクトル解析部14は、時間軸波形をフーリエ変換処理することで周波数スペクトルを生成し、周波数スペクトルを解析する。不正波形検出部15は、周波数スペクトル解析部14の解析結果などに基づいて、配電系統に混入した不正波形を検出する。解析部13,14および不正波形検出部15で得たデータは、記録部16にいったん保存され、その後所定のタイミングで送信部17により親局2へ送信される。
時間軸波形解析部13、周波数スペクトル解析部14、不正波形検出部15により電力系統の異常が検出された場合、あるいは、親局2から指示された場合に電力系統から切り離す。開閉器制御部18は、開閉器7に制御信号を出力し、開閉器7を開いて電力系統から切り離す。復旧した場合、開閉器制御部18は、開閉器7に制御信号を出力し、開閉器7を閉じて電力系統に再接続させる。
本実施形態では、PTP方式に基づいて各子局1および親局2の時間を同期させるため、NTP(Network Time Protocol)方式を採用する場合に比べて、時計同期精度を大幅に高めることができる。
本実施形態では、上述の通りPTP方式を採用するため、各子局1および親局2がGPS信号をそれぞれ受信して時刻を同期させる場合に比べて、コストを低減できる。さらに、GPS方式を採用する場合は、GPS信号を受信するための見通し状況を確保する必要があるが、子局1の設置環境や周囲環境は種々変化するため、常に安定した見通し状況を確保できるとは限らない。例えば、子局1の周囲でビルディングの建設などが始まると、GPS信号の安定した受信が阻害されるおそれがある。さらに、近年では、都市部を中心に電線類の地中化が広まりつつあるが、電線類と一緒に子局1が地中に埋設されてしまうとGPS信号を受信できなくなる。
一方、電力系統は、Webアプリケーションなどとは異なり、国民の生活や企業の経済活動に直結する重要な社会基盤であるため、常に正確に監視して大規模な停電などが生じないようにする必要がある。したがって、監視システムを高精度で安定稼働させる必要がある。しかしGPS方式で時刻を同期させる場合は、上述の理由から、各子局1および親局2の時刻を同期させることができないおそれがあり、電力系統の安全性および信頼性を維持するのが難しい。これに対し、本実施形態では、通信ネットワークCNを介してパケットを交換することで時刻を同期するPTP方式を採用するため、各子局1が空を見通せる必要はなく、電力系統の安全性および信頼性を維持することができる。
本実施形態では、各子局1において電力系統の状態監視や不正波形を検出し、親局2では複数の各子局1からのデータに基づいて異常の発生箇所や発生原因を特定するため、各子局1と親局2とで監視処理を適切に分担することができる。各子局1は、速やかに系統状態の異常を検出すると共に、不正波形を検出することができ、親局2では複数の子局1のデータを総合的かつ高度に解析することで、異常の発生箇所や発生原因を特定することができる。
図2〜図10を用いて第1実施例を説明する。図2は、電力系統の概略を示す。配電系統PLには、複数の子局1が分散して配置されている。各子局1に対応する変圧器6には、それぞれ複数の電力需要家3が接続されている。以下では、電力需要家3を需要家3と呼ぶ。需要家3の少なくとも一部は、図示は省略するが、太陽光発電装置または風力発電装置などの分散型発電装置を備えることができる。
電力系統には複数の配電用変電所4が設けられている。各配電用変電所4は、図示せぬ送電系統から供給される電力の電圧値を調整して、各配電系統PLへ供給する。各配電用変電所4には、それぞれ複数の配電系統PLが接続されている。各配電用変電所4には、親局2が設置されている。制御所5は、複数の配電用変電所4を管理するもので、各配電用変電所4とスイッチSWを介して双方向通信可能に接続されている。なお、親局2は各配電用変電所4に設置する場合、制御所5に設置する場合、各配電用変電所4と制御所5の双方に設置し連携しながら動作する場合、のいずれでもよい。本実施例では各配電用変電所4に設置した例を用いて説明する。
配電用変電所4内の親局2は、その配電用変電所4の管理下にある各子局1と通信ネットワークCNを介して双方向通信可能に接続されている。通信ネットワークCNは、例えば、光ファイバケーブルまたはメタルケーブルを用いた有線通信網である。これに限らず、通信ネットワークCNの少なくとも一部を無線通信網として構成してもよい。親局2と各子局1との間でのデータ送受信が可能であれば、その通信方式を問わない。
各子局1は、開閉器7および変圧器6に接続されている。さらに、各子局1は通信分岐装置8を介して通信ネットワークCNに接続されている。
図3は、子局1のハードウェア構成例を示す。子局1は、例えば、マイクロプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)101、PTP処理部102、メモリ103、I/O(Input/Output)部104、モデム105、電源部106、FFT(Fast Fourier transform)エンジン107、を備える。
マイクロプロセッサ101は、子局1の全体動作を制御するもので、メモリ103に格納されている所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行することで、所定の機能を実現する。PTP処理部102は、PTPマスタとの間でPTPパケットを送受信することで、時刻を精密に同期させる。
メモリ103は、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリデバイスなどから構成されており、所定のコンピュータプログラムを格納する。さらにメモリ103は、マイクロプロセッサ101に対して作業領域を提供する。さらにメモリ103は、開閉器7から取得した系統波形のデータ、子局1での解析結果および一次判断結果のデータ、子局1から開閉器7への制御信号などを保存する。
I/O部104は、開閉器7との間で信号やデータを送受信する回路である。モデム105は、通信分岐装置8を介して通信ネットワークCNに接続するための回路である。電源部106は、配電系統PLからの電力を利用して子局1の各回路へ必要な電力を供給する回路である。開閉器7の上流側および下流側にはそれぞれ変圧器6が設けられており、電源部106は、各変圧器6に接続されている。したがって、開閉器7の上流または下流のいずれか一方で停電が生じた場合でも、電源部106は子局1に対して電力を供給することができる。なお、電源部106は必要に応じバッテリーを搭載してもよい。
FFTエンジン107は、マイクロプロセッサ101によるソフトウェア処理として実現することもできる。PTP処理部102もマイクロプロセッサ101によるソフトウェア処理として実現してもよい。通信分岐装置8は、子局1の内部に設けてもよい。
ここで、図1との対応関係の例を説明する。時刻同期部11はPTP処理部102に、系統波形取得部12はI/O部104およびメモリ103に、時間軸波形解析部13はマイクロプロセッサ101でのソフトウェア処理に、それぞれ対応する。さらに、周波数スペクトル解析部14および不正波形検出部15は、FFT処理部107とマイクロプロセッサ101でのソフトウェア処理に、記録部16はマイクロプロセッサ101でのソフトウェア処理とメモリ103に、送信部17はモデム105と通信分岐装置8に、それぞれ対応する。
図4は、親局2のハードウェア構成例を示す。親局2は、例えば、マイクロプロセッサ(CPU)201、PTP処理部202、メモリ203、モデム204、電源部205を備える。
マイクロプロセッサ201は、親局2の全体動作を制御するもので、メモリ203に格納されている所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行することで、所定の機能を実現する。PTP処理部202は、PTPマスタとの間でPTPパケットを送受信することで、時刻を高精度に同期させる。
メモリ203は、例えば、RAMやフラッシュメモリデバイスなどから構成され、所定のコンピュータプログラムを格納する。メモリ203は、マイクロプロセッサ201に作業領域を提供する。さらにメモリ203は、各子局1から受信するデータ(子局1での解析結果、一次判断結果のデータなど)、親局2での解析結果などを記憶する。
I/O部104は、開閉器7との間で信号やデータを送受信する回路である。モデム105は、通信分岐装置8を介して通信ネットワークCNに接続するための回路である。電源部106は、配電系統PLからの電力を利用して子局1の各回路へ必要な電力を供給する回路である。開閉器7の上流側および下流側にはそれぞれ変圧器6が設けられており、電源部106は、各変圧器6に接続されている。したがって、開閉器7の上流または下流のいずれか一方で停電が生じた場合でも、電源部106は子局1に対して電力を供給することができる。
モデム204は、親局側の通信分岐装置8を介して通信ネットワークCNに接続する回路である。電源部205は、親局側の変圧器6から出力される電力を利用して、親局2の各回路へ電力を供給する。
図5は、PTP方式による時刻の同期方法を示す。最初にPTPマスタは、GPSなどの正確な時刻源から、時刻情報(TOD:Time Of Dayと位相情報(PPS:Pulse Per Second)を受信し、PTPマスタの時刻を同期させる。以下、PTPマスタとPTPスレーブとは、通信ネットワークを介して、PTP方式に従うパケット(PTPパケット)を送受信する。PTPマスタとPTPスレーブとは、パケットの送信時刻および受信時刻をタイムスタンプにより伝達する。
PTPマスタは、時刻t1に、PTPパケットとしてのsyncパケットをPTPスレーブへ送信する。PTPスレーブは、時刻t2に、syncパケットを受信する。PTPスレーブは、時刻t3に、他のPTPパケットとしてのDelay_RequestパケットをPTPマスタへ送信する。PTPマスタは、時刻t4に、さらに他のPTPパケットとしてのDelay_ResponseパケットをPTPスレーブへ送信する。
PTPスレーブは、PTPマスタからのDelay_Responseパケットを受信すると、以下の式1にしたがって、PTPマスタ時刻を基準とする時間ずれΔTptpを算出し、PTPスレーブ時刻をPTPマスタ時刻に一致させる。
ΔTptp=((t4−t3)+(t2−t1))/2・・・式1
以上の処理を定期的に実施し平均化処理することで、PTPスレーブは、PTPマスタ時刻との誤差を例えば±1μs以下にすることができる。
ここで本実施例では、親局2のPTP処理部202がPTPマスタに該当し、各子局1のPTP処理部102がPTPスレーブに該当する。これに代えて、後述する他の実施例のように、各子局1のPTP処理部102および親局2のPTP処理部202がいずれもPTPスレーブとなり、親局2とは別に設けられたPTPマスタとの間で時刻を合わせる構成としてもよい。
なお、各子局1のPTP処理部102と親局2のPTP処理部202とが送受信するPTPパケットは、各子局1から親局2へ送信するデータまたは親局2から各子局1への指示データに多重化して、通信ネットワークCNで送信することができる。
図6は、配電系統PLを高精度な絶対時刻の下で監視している場合において、各子局1での位相ずれを模式的に示す。以下、4つの拠点P1,P2,P3,P4での位相ずれΔθp1,Δθp2,Δθp3,Δθp4を説明する。
図7は、各拠点P1〜P4の各子局1で取得された時間軸波形および周波数スペクトル(周波数軸スペクトル)を対比した一例を示す。
図7の縦方向は拠点間の距離、つまり最も上流に位置する子局1(P1)を基準とする他の子局1(P2),子局1(P3),子局1(P4)の距離を示す。本実施例における上流、下流とは、電力の供給される方向での上流、下流を意味し、配電系統PLでは配電用変電所4が最も上流に位置する。図7の奥行き方向は、各拠点における時間軸を示す。
図7では、子局1(P1)から物理的に遠ざかるほど、遅延時間ΔTが増加すると共に、位相Δθのずれが大きくなる場合を例示している。ここで拠点P4の波形に着目すると、矢印で示すように、時間軸波形に歪みが生じている。このため、拠点P4の時間軸波形をフーリエ変換処理して得られる周波数スペクトル図では、基本波の周波数よりも高い周波数の位置に歪み成分が出現している。
例えば、拠点P4の子局1の付近に存在する需要家3から不正な波形が配電系統PLへ流入すると、図7に示すような歪みが生じる。その原因としては、例えば、需要家3の持つ分散型発電装置の故障、誤操作などが考えられる。原因となった需要家3の位置は、親局2が、拠点P4の子局1に隣接する他の拠点の子局からのデータを総合的に解析することで算出できる。また、親局2は、過去に調査された歪みと原因との関係を示す統計情報を用いることで、拠点P4で検出された不正波形の原因を推定することができる。
図8は、時間軸波形をスペクトル解析して不正な波形を検出する方法の例を示す。前提として、各子局1は、PTP方式にしたがって時刻を一致させている。各子局1のPTP処理部102は、通信ネットワークCNを流れるPTPパケットを用いて、PTPスレーブ時刻をPTPマスタ時刻に一致させる。これにより、親局2の管理下にある全ての子局1において、フーリエ変換処理(FFT)の開始位置を合わせておく。
子局1は、配電系統PLから取り込んだ電力の時間軸波形に対して、フーリエ変換処理を実施し、周波数スペクトルを得る(F10)。続いて子局1は、各周波数毎に分解された周波数スペクトルから基本波のスペクトルのみを抽出する(F11)。
子局1は、抽出された基本波のスペクトルを逆フーリエ変換処理することで、時間軸波形に戻す(F12)。逆フーリエ変換処理で得られる波形は、最初の入力波形から干渉成分を取り除いた波形であり、基準となる時間軸波形(基準波形)である。そこで、入力波形をFFT(F10)、基本波抽出(F11)、IFFT(F12)の処理時間分だけ遅延(F18)した遅延波形から基準波形を減算すれば、不正波形を抽出できる(F13)。不正波形とは、その拠点において正常時には観測されなかった、新たなパターンを持つ波形であると定義することもできる。
一方、基本波を抽出した後(F11)、その基本波の振幅や位相を解析することができる(F14)。さらに、入力波形の周波数スペクトルから基本波の周波数成分を取り除くことで、高調波成分だけを抽出することができる(F15)。そこで、抽出された高調波成分について振幅や位相を解析することもできる(F16)。さらに、周波数スペクトルの基本波成分と高調波成分とを比較することで、全高調波歪み(THD:Total Harmonic Distortion)を解析することもできる(F17)。
図9は、親局2の処理を示すフローチャートである。親局2は、PTP処理部202を用いてPTP方式での時刻同期処理を実行する(S10)。そして、親局2は、管理下にある各子局1からデータを収集する(S11)。
親局2は、各子局1のうち少なくとも複数の子局1のデータに基づいた解析、及び二次判断を実行する(S12)。本実施例では、各子局1での判断を一次判断と呼び、親局2での判断を二次判断と呼ぶ。親局2で実施する二次判断には、例えば、異常の発生した箇所の特定、その異常の発生原因の特定や子局1での一次判断では検出出来ない異常を予兆することなどがある。
親局2は、複数の子局1からのデータを解析することで、例えば、不正波形の存在を示す歪みを検出し、異常が生じているか判断することができる。親局2は、異常の発生を検出すると(S13:YES)、その異常状態に対応するための指示をその異常状態に対応すべき子局1へ出力し(S14)、本処理を終了する。異常状態に対応するための指示には、例えば開閉器7に対する遮断指示、電力供給経路の変更指示などがある。
一方、親局2は、異常が発生していないと判定すると(S13:NO)、異常状態から復旧したか判定する(S15)。親局2は、復旧したと判定すると(S15:YES)、対応する子局1に対して回復処理の実行を指示し(S16)、本処理を終了する。回復指示を受けた子局1は、開閉器7の状態を切り替える。親局2は、復旧していないと判定した場合(S15:NO)、本処理を終了する。
図10は、子局の処理を示すフローチャートである。子局1もPTP方式にしたがって時刻を同期させる(S20)。そして子局1は、開閉器7の両端から系統波形(電力波形)をそれぞれ取得し、記憶する(S21)。子局1は、取得した時間軸波形(系統波形)を解析し、遅延時間などを測定する(S22)。なお、系統波形を取得する頻度、長さはパラメータで変更できるものとする。
子局1は、時間軸波形のフーリエ変換処理を実施し(S23)、その結果として得られる周波数スペクトルを解析する(S24)。子局1は、周波数スペクトルの解析結果に基づいて、一次判断する(S25)。一次判断には、図8で述べたような、基本波の振幅や位相、全高調波歪みが適正値から外れていないか、などがある。一次判断の結果は、解析データと共にメモリ103へ格納される。
子局1は、メモリ103に保存されているデータを親局2へ送信する(S26)。データを暗号化して圧縮したり、差分情報や特徴量だけを送信したりすることでデータサイズを低減してもよい。なお、データを親局2へ送信する頻度、データサイズはパラメータで変更できるものとする。
子局1は、親局2へのデータ送信と共に、制御対象として事前に設定されている事象が生じたか判定する(S27)。制御対象の事象とは、例えば、基本波の振幅や位相、全高調波歪みが適正値から外れていないかなどのように、開閉器7の動作を制御することで対処すべき事象である。
子局1は、対処すべき事象を検出したと判定すると(S27:YES)、開閉器7に制御信号を出力し、配電系統から切り離す(S28)。復旧後においては、子局1は開閉器7に制御信号を出力し、配電系統に再接続させる(S28)。子局1は、開閉器7を制御した後、本処理を終了する。一方、子局1は、対象すべき事象を検出しなかった場合(S27:NO)、本処理を終了する。そして所定時間が経過すると、子局1は、図10の処理を再度実行する。なお、対処すべき事象を検出したと判定(S27:YES)されるケースは、子局1の一次判断(S25)によるものと、親局2の二次判断(S12)によるものの双方があり得る。
このように構成される本実施例によれば、各子局1と親局2とをPTP方式に従って時刻を同期させるため、各子局1でのフーリエ変換処理の開始タイミングを正確に一致させることができる。この結果、親局2は、時刻の同期している複数の子局1で処理したデータに基づいて、正確に異常状態を判断することができる。
本実施例では、PTP方式に基づいて時刻合わせを実施するため、NTP方式を採用する場合に比べて、時計同期精度を大幅に高めることができ、各子局1でGPS信号を受信する場合に比べて、コストを低減でき、かつ時刻同期の信頼性を向上できる。
本実施例では、各子局1と親局2とで監視処理を適切に分担して、監視処理の精度と信頼性を向上できる。
本実施例によれば、電力系統の状態を監視装置(配電子局)単位で高精度に検出し、複数の監視装置(配電子局)のデータを管理装置(配電親局)側で総合的かつ高度に解析することにより、電力系統における異常の発生箇所や発生原因を特定することができる。例えば、配電ロスが通常よりも大きく発生している場所を特定できるといった効果や、さらには再生エネルギーの出力抑制を監視装置(配電子局)単位で囲まれたエリア単位できめ細やかに制御できるといった効果も得られる。
図11を用いて、第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、第1実施例の変形例に該当するため、第1実施例との差異を中心に説明する。本実施例では、PTPマスタサーバ9を親局2とは別に設け、親局2のPTP処理部202および各子局1のPTP処理部102をPTPスレーブとして構成している。
なお、図11では、各子局1と親局2とはそれぞれPTPマスタとPTPパケットの送受信が可能であるが、これに代えて、親局2がPTPマスタと通信して時刻を合わせた後、親局2が各子局1と通信することで各子局1の時刻を合わせる構成でもよい。PTP方式には、バウンダリクロック方式、トランスペアレントクロック方式、スルー方式が知られているが、必要に応じて適した方式を採用すればよい。このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。
図12を用いて第3実施例を説明する。本実施例では、親局2において、複数の子局1からのデータに基づき、異常の発生箇所や発生原因を特定する処理を示す。図12に示す処理は、図9のステップS12の一例である。
親局2は、各子局1から取得したデータを比較し、例えば、電圧値、位相、周波数の変化などから異常発生箇所を特定する(S60)。次に、親局2は、不正波形と統計情報SDを比較し、不正波形の発生した原因を特定する(S61)。親局2は、異常の発生箇所や発生原因を記録したレポートを作成し、管理者へ出力する(S62)。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。本実施例は第2実施例の構成と組み合わせることもできる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。また、上述した実施例は適宜組み合わせて実行することもできる。
1:配電子局、2:配電親局、3:需要家、4:配電用変電所、5:制御所、6:変圧器、7:開閉器、通信分岐装置、11,21:時刻同期部、12:系統波形取得部、13:時間軸波形解析部、14:周波数スペクトル解析部、15:不正波形検出部、22:データ収集部、26:統計情報管理部

Claims (14)

  1. 電力系統を監視するシステムであって、
    電力系統に複数設けられた監視装置を備え、
    前記各監視装置は、
    所定のパケットを通信ネットワークを介してマスタ/スレーブ方式で交換することにより時刻を同期させる所定のプロトコルを用いることで、他の各監視装置との間で時刻を同期する時刻同期部と、
    前記時刻同期部により時刻が同期した状態で、電力系統から電力の時間軸波形を取得する系統波形取得部と、
    前記時間軸波形を解析する時間軸波形解析部と、
    前記時間軸波形をフーリエ変換し、周波数スペクトルを解析する周波数スペクトル解析部と、
    を備える電力系統監視システム。
  2. 前記各監視装置は、さらに、前記周波数スペクトル解析部の解析結果に基づいて不正な波形を検出する不正波形検出部を備える、
    請求項1に記載の電力系統監視システム。
  3. 前記各監視装置から前記時間軸波形、前記周波数スペクトルおよび前記不正波形のデータ群を取得し、複数のデータ群に基づいて電力系統に生じた異常を解析する異常解析部をさらに備える、
    請求項2に記載の電力系統監視システム。
  4. 前記周波数スペクトル解析部は、
    前記系統波形取得部から入力された時間軸波形に対して、前記時刻同期部から入力される同期信号に従ってフーリエ変換処理を実行し、
    前記フーリエ変換処理の結果から周波数成分を分析することで、位相の進み遅れを検出すると共に歪み成分を検出し、
    前記不正波形検出部は、
    前記フーリエ変換処理の結果から抽出した基本周波数成分を逆フーリエ変換処理することで基準となる時間軸波形を生成し、
    前記入力された時間軸波形と前記基準となる時間軸波形とを比較することで、歪み成分に対応する不正波形を検出する、
    請求項3に記載の電力系統監視システム。
  5. 前記異常解析部は、前記不正波形が検出された電力系統上の位置と前記不正波形とを対応付けて保存する、
    請求項4に記載の電力系統監視システム。
  6. 前記異常解析部は、不正波形と原因とを対応付けて保存する統計情報と検出した不正波形とを照合することで、前記不正波形の原因を特定する、
    請求項5に記載の電力系統監視システム。
  7. 前記各監視装置に通信ネットワークを介して接続される管理装置をさらに備え、
    前記管理装置は、前記所定のプロトコルに従って時刻を同期する管理装置側の時刻同期部と前記異常解析部とを有する、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の電力系統監視システム。
  8. 前記時刻同期部が使用する前記通信ネットワークと、前記各監視装置と前記管理装置を接続する前記通信ネットワークとは共通である、
    請求項7に記載の電力系統監視システム。
  9. 前記所定のプロトコルは、PTP(Precision Time Protocol)である、
    請求項1に記載の電力系統監視システム。
  10. 電力系統に複数設けた監視装置を用いて電力系統を監視する方法であって、
    前記各監視装置は、
    所定のパケットを通信ネットワークを介してマスタ/スレーブ方式で交換することにより時刻を同期させる所定のプロトコルを用いることで、他の各監視装置との間で時刻を同期し、
    時刻が同期した状態で、電力系統から電力の時間軸波形を取得し、
    前記時間軸波形を解析し、
    前記時間軸波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを解析し、
    前記周波数スペクトルの解析結果に基づいて不正な波形を検出する、
    電力系統監視方法。
  11. さらに、前記周波数スペクトルの解析結果に基づいて不正な波形を検出する、
    請求項10に記載の電力系統監視方法。
  12. 前記各監視装置は、前記各監視装置と通信ネットワークを介して接続された異常解析部に対して、前記時間軸波形、前記周波数スペクトルおよび前記不正波形のデータ群を送信することで、前記異常解析部により複数のデータ群に基づいて電力系統に生じた異常を解析させる、
    請求項10に記載の電力系統監視方法。
  13. 電力系統を監視する監視装置であって、
    所定のパケットを通信ネットワークを介してマスタ/スレーブ方式で交換することにより時刻を同期させる所定のプロトコルを用いることで、他の各監視装置との間で時刻を同期する時刻同期部と、
    前記時刻同期部により時刻が同期した状態で、電力系統から電力の時間軸波形を取得する系統波形部と、
    前記時間軸波形を解析する時間軸波形解析部と、
    前記時間軸波形をフーリエ変換し、周波数スペクトルを解析する周波数スペクトル解析部と、
    を備える電力系統監視装置。
  14. さらに、前記周波数スペクトル解析部の解析結果に基づいて不正な波形を検出する不正波形検出部を備える、
    請求項13に記載の電力系統監視装置。
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