図1は、空調システム10を含むことができ、かつ本発明の実施形態を実行することができる航空機8を示すが、明瞭にするためにその一部分のみを示している。図示するように、航空機8は、胴体14に結合された複数のエンジン12、胴体14内に配置された操縦室16、および胴体14から外向きに延びる翼アセンブリ18を含むことができる。民間航空機が図示されているが、本発明の実施形態は、任意のタイプの航空機、たとえば、これに限らないが、固定翼,回転翼、ロケット、個人用航空機、および軍用航空機で使用することも考えられる。さらに、2つのエンジン12が各翼アセンブリ18に示されているが、単一のエンジン12を含む任意の数のエンジン12が含まれてもよいことが理解されよう。
空調システム10は、航空機8の環境制御システムの一部を形成することができ、種々のサブシステムを含むことができる。たとえば、とりわけ、抽気システム20、1つもしくは複数の空調パック22、および空気分配もしくは客室温度制御システム24(図3)が空調システム10に含まれてもよい。抽気システム20は、エンジン12の各々に接続することができ、燃焼器の上流側にあるエンジン12の圧縮機段から抽気することにより、空調システム10に空気を供給することができる。高度に圧縮された空気を抽気システム20に提供するために、様々な抽気ポートがエンジン12の様々な部分に接続され得る。この抽気の温度および圧力は、エンジン12の圧縮機段および回転数に依存して大きく変化する。空調パック22および客室温度制御システム24については、以下の図2および図3を参照してより詳細に説明する。
航空機8の適正な動作を可能にする付加的な航空機システム30も、航空機8に含まれてもよい。空調システム10、そのサブシステム、および付加的な航空機システム30に関連するいくつかのセンサ32もまた、航空機8に含まれてもよい。任意の数のセンサ32が含まれていてもよいし、任意の適切なタイプのセンサ32が含まれてもよいことが理解されるであろう。センサ32は、様々な出力信号および情報を送信することができる。
コントローラ34および無線通信リンク35を有する通信システムもまた、航空機8に含まれてもよい。コントローラ34は、空調システム10、複数の航空機システム30、およびセンサ32に動作可能に結合することができる。コントローラ34はまた、航空機8の他のコントローラに接続されてもよい。コントローラ34は、メモリ36を含むことができ、メモリ36は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、またはディスク、DVD、CD−ROMなどの1つもしくは複数の異なるタイプの携帯用電子メモリ、あるいは、これらのタイプのメモリの任意の好適な組み合わせを含むことができる。コントローラ34は、1つまたは複数のプロセッサ38を含むことができ、それは任意の適切なプログラムを実行することができる。コントローラ34は、FMSの一部であってもよいし、あるいはFMSに動作可能に結合されてもよい。
情報のコンピュータ検索可能データベースをメモリ36に格納することができ、プロセッサ38によってアクセスすることができる。プロセッサ38は、データベースを表示し、またはデータベースにアクセスするための実行可能な命令のセットを実行することができる。あるいは、コントローラ34は、情報のデータベースに動作可能に結合されてもよい。たとえば、そのようなデータベースは、代わりのコンピュータまたはコントローラに格納することができる。データベースは、複数のデータセットを有する単一のデータベース、互いにリンクされた複数の個別のデータベース、または単純なデータテーブルを含む、任意の適切なデータベースであってもよいことが理解されよう。データベースがいくつかのデータベースを組み込むことができること、あるいはデータベースが実際には複数の個別のデータベースであってもよいことが想定される。データベースは、航空機8および航空機のフリートに関する空調システムの履歴データを含むことができるデータを格納することができる。データベースはまた、しきい値、履歴値、もしくは集計値を含む基準値、およびこのような基準値を決定することに関連するデータを含むことができる。
あるいは、データベースは、コントローラ34から分離されてもよいが、コントローラ34によってアクセスできるように、コントローラ34と通信することができることが想定される。たとえば、データベースは携帯型メモリ装置に含まれてもよく、そのような場合には、航空機8は、携帯型メモリ装置を受け入れるためのポートを含むことができ、コントローラ34が携帯型メモリ装置の内容を読み取ることができるように、そのようなポートはコントローラ34と電子的に通信することが想定される。また、データベースは無線通信リンク35を介して更新することができ、このようにして、リアルタイム情報をデータベースに含めることができ、コントローラ34によってそれにアクセスできることが想定される。
さらに、そのようなデータベースは、航空会社の運航センター、飛行運用部門制御、または別の場所などの位置で航空機8から離れて配置することも想定される。コントローラ34は、データベース情報がコントローラ34に提供され得るワイヤレスネットワークに動作可能に結合することができる。
民間航空機が示されているが、本発明の実施形態のいくつかの部分は、地上システム62のコンピュータまたはコントローラ60を含む任意の場所で実現することができることが想定される。さらに、上述したデータベースは、宛先サーバまたはコントローラ60に配置されてもよく、それは指定された地上システム62に配置され、それを含んでもよい。あるいは、データベースは、代わりの地上位置に配置されてもよい。地上システム62は、無線通信リンク64を介して、コントローラ34およびコントローラ60から離れて配置されたデータベースを含む他の装置と通信することができる。地上システム62は、航空会社の管理または飛行運用部門などの任意のタイプの通信する地上システム62であってもよい。
図2は、主熱交換器70、一次熱交換器72、圧縮機73、流量制御バルブ74、タービン75、氷結防止バルブ76、ラム空気入口フラップアクチュエータ77、およびコントローラ78を有する空調パック22としても知られている冷風ユニットの例示的な概略図を示し、コントローラ78は航空機8の操縦室16内に配置することができ、コントローラ34に動作可能に結合することができる。追加の構成要素が含まれてもよく、上記は一例に過ぎないことが理解されるであろう。さらに、いくつかのセンサ32が空調パック22内に含まれるものとして示されている。センサ32は、空調パック22の温度、空調パック22の圧力、またはバルブ位置に関するデータを含む種々のデータを出力することができる。たとえば、センサ32のうちのいくつかは、たとえばバルブの状態(たとえば、全開、開、遷移時、閉、全閉)を含む、バルブの設定および/または位置を示すバイナリフラグを含む様々なパラメータを出力することができる。
任意の適切な構成要素を冷却装置として機能することができるように空調パック22に含めることができることが理解されるであろう。空調パック22に流れる抽気の量は、流量制御バルブ74により調節される。抽気は、一次熱交換器72に入り、そこでラム空気、膨張、または両方の組み合わせのいずれかによって冷却される。冷たい空気は次に圧縮機73に入り、再加圧されて、空気を再加熱する。主熱交換器70通過することにより、高い圧力を維持しつつ、空気を冷却する。次に空気はタービン75を通過し、タービン75は空気を膨張させて熱をさらに減少させる。
図3は、航空機8の客室89内のゾーン88内に空気を分配する、ミキサユニット80、再循環ファン82、マニホールド84、およびノズル86を有する客室温度制御システム24、ならびに制御機構90の例示的な図を示す。図示するように、空調パック22からの排気は、再循環ファン82からの濾過された空気とミキサユニット80で混合されて、マニホールド84に供給され得る。マニホールド84からの空気は、ダクトを通して、航空機8の様々なゾーン88のオーバーヘッド分配ノズル86に導くことができる。制御機構90は、各ゾーン88内の温度、および客室温度制御システム24の他の様々な様相を制御することができる。制御機構は、コントローラ34に動作可能に結合できることが理解されよう。いくつかのセンサ32が含まれてもよく、ゾーン88内の空気温度、客室温度制御システム24内の圧力、ダクト温度を含む客室温度制御システム24の物理的部分の温度などを含む客室温度制御システム24の様々な様相に関する信号を出力することができる。
コントローラ34およびコントローラ60は、本発明の実施形態または実施形態の一部を実施するように構成された2つの例示的な実施形態を示しているに過ぎないことが理解されるであろう。動作中には、コントローラ34および/またはコントローラ60は、空調システム10またはそのサブシステムの故障を診断することができる。非限定的な例として、1つまたは複数のセンサ32は、空調システム10の種々の特性に関連するデータを送信することができる。コントローラ34および/またはコントローラ60は、空調システム10またはそのサブシステムの故障を診断するために、制御機構、センサ32、航空機システム30、データベースからの入力、および/または航空会社の管理もしくは飛行運用部門からの情報を利用することができる。とりわけ、コントローラ34および/またはコントローラ60は、時間の経過と共にデータを解析して、空調システム10の動作のドリフト、傾向、ステップ、またはスパイクを決定することができる。コントローラ34および/またはコントローラ60はまた、センサデータを解析し、それに基づいて空調システム10の故障を診断することができる。空調システム10またはそのサブシステムの故障が診断されると、航空機8および/または地上システム62に表示を提供することができる。空調システム10またはそのサブシステムの障害の診断は、飛行中に行うことができ、飛行後にも行うことができ、あるいは任意の数の飛行の後にも行うことができると想定される。故障がコントローラ34および/またはコントローラ60のいずれによっても診断できるように、無線通信リンク35および無線通信リンク64の両方をデータを送信するために用いることができる。
コントローラ34およびコントローラ60の一方は、航空機8の空調システム故障を診断するための実行可能命令セットを有するコンピュータプログラムのすべてまたは一部を含むことができる。このような診断された故障は、構成要素の不適切な動作および構成要素の障害を含むことができる。本明細書で使用される診断という用語は、故障が発生した後の判定を意味しており、故障の発生に先立って故障を知らせる前向きの判定を意味する予測とは対照的である。診断と共に、コントローラ34および/またはコントローラ60は故障を検出することができる。コントローラ34および/またはコントローラ60が故障を診断するためのプログラムを実行するか否かに関わらず、プログラムは、機械実行可能命令またはデータ構造を搬送または記憶するための機械可読媒体を含み得るコンピュータプログラム製品を含んでもよい。
本明細書で説明される技術の完全な理解を提供するために、本発明の実施形態を実施することができる環境の詳細が記載されていることを理解されたい。しかし、これらの具体的な詳細がなくても例示的な実施形態を実施できることは、当業者には明らかであろう。例示的な実施形態については、図面を参照して説明する。これらの図面は、本明細書で説明されるモジュールもしくは方法、またはコンピュータプログラム製品を実施する特定の実施形態の特定の詳細を示す図である。しかし、図面が、図面に存在し得る限定を課すものと解釈すべきではない。方法およびコンピュータプログラム製品は、その動作を達成するための任意の機械可読媒体上で提供することができる。実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを用いて、あるいはこの目的または別の目的のために組み込まれた専用コンピュータプロセッサによって、あるいはハードワイヤードシステムによって実施することができる。さらに、複数のコンピュータまたはプロセッサは、コントローラ34および/またはコントローラ60が複数のコントローラから形成され得ることを含むように用いることができる。故障を診断するコントローラは、コントローラが互いに通信する複数のコントローラを含み得ることを含む任意の適切なコントローラであってもよいことが理解されよう。
上述したように、本明細書に記載した実施形態は、機械実行可能命令またはデータ構造を運搬または格納するための機械可読媒体を含むコンピュータプログラム製品を含んでもよい。そのような機械可読媒体は、任意の利用可能な媒体であってもよく、汎用もしくは専用コンピュータ、またはプロセッサを有する他のマシンによってアクセスすることができる。例として、そのような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROMまたは他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、あるいは、機械実行可能な命令またはデータ構造の形で所望のプログラムコードを運搬または格納するために使用することができ、汎用もしくは専用コンピュータまたはプロセッサを有する他のマシンによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むことができる。ネットワークまたは別の通信接続(有線、無線、または有線もしくは無線の組み合わせ)を介して、ある1つの機械に情報が伝達または提供された場合には、その機械は、その接続を機械可読媒体と適切に見ている。したがって、このような接続はいずれも、機械可読媒体と適切に呼ばれる。また上記の組み合わせも、機械可読媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能命令は、たとえば、命令およびデータを含み、それは汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または専用処理装置に特定の機能または機能群を実行させる。
実施形態について、たとえばネットワーク化された環境で機械によって実行されるプログラムモジュールの形で、プログラムコードなどの機械実行可能命令を含むプログラム製品により一実施形態において実現することができる方法ステップの一般的な文脈で説明する。一般に、プログラムモジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含むことができ、これらは特定のタスクを実行する、または特定の抽象データ型を実現するという技術的効果を有する。機械実行可能命令、関連するデータ構造、およびプログラムモジュールは、本明細書で開示される方法のステップを実行するためのプログラムコードの例を表す。このような実行可能命令または関連するデータ構造の特定のシーケンスは、そのようなステップで記述される機能を実現するための対応する動作の例を表す。
実施形態は、プロセッサを有する1つまたは複数のリモートコンピュータへの論理接続を用いるネットワーク化された環境で実施されてもよい。論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、およびワイドエリアネットワーク(WAN)を含むことができるが、これらは例として提示するものであって、限定するものではない。このようなネットワーキング環境は、オフィス規模もしくは企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、およびインターネットでは一般的であり、多種多様な異なる通信プロトコルを使用することができる。当業者は、このようなネットワークコンピューティング環境は、通常、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのもしくはプログラム可能な家庭用電化製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、およびメインフレームコンピュータ等を含む、多くのタイプのコンピュータシステム構成を包含することを理解するであろう。
実施形態はまた、通信ネットワークを介して(有線リンク、無線リンク、または有線もしくは無線リンクの組み合わせのいずれかによって)リンクされたローカルおよびリモート処理装置によってタスクが実行される、分散コンピューティング環境で実施することもできる。分散型コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカルおよびリモートメモリ記憶装置の両方に配置することができる。
本発明の一実施形態により、図4は、空調システム10の空調パック22の故障を診断するために用いることができる方法100を示す。
診断された故障は、診断された障害または故障のレベルが、システムが故障するレベルに増加することを含むことができる。方法100は、空調パック22に関するデータを1つまたは複数のセンサ32から送信することによりステップ102で開始する。より具体的には、空調パック22およびそれらの関連するコントローラ78の構成要素の温度、圧力もしくは流量、バルブ位置、アクチュエータ位置などに関するデータを出力する1つまたは複数のセンサ32からデータを送信することができる。これは、1つまたは複数のセンサ32からデータを逐次的におよび/または同時に送信するステップを含んでもよい。送信されたデータは、データベースまたはコントローラ34および/もしくはコントローラ60を含む任意の適切な装置によって受信することができる。
送信されたデータは、飛行の飛行前、飛行後、または最長巡航セグメントに関連付けることができる。より具体的には、送信されたデータは、飛行前、飛行後、または最長巡航からのセンサ出力であってもよい。また、送信されたデータは、データが飛行前、飛行後、および最長巡航に関して送信され得ることを含む、飛行前、飛行後、および/または最長巡航の任意の組み合わせであってもよいことが想定される。本明細書で使用される飛行前という用語は、航空機8の地上走行を含む、飛行のために車輪が上がるまでの任意の時間を示し、より具体的には、1つまたは複数のエンジンが始動し、ドアが閉じられてから、離陸ロールが開始されるまでの時間を含んでもよい。本明細書で使用される飛行後という用語は、航空機8の地上走行を含む、航空機が着陸した後の時間を示し、より具体的には、制動が完了した後に、主エンジンが停止され、またはパーキングブレーキが設定されるまでの時間を含んでもよい。搭載システムによって記録された、高度および空中もしくは地上速度などの追加の標準パラメータを送信することができることが想定され、コントローラ34および/またはコントローラ60は、いつ航空機8が飛行前、飛行後、および/または最長巡航であるかを判定することができる。送信されたデータは、飛行前、飛行後、および/または最長巡航に関連し得るが、データは、航空機8の飛行の任意の数の異なるフェーズの間に、あるいは航空機8が飛行を完了した後に、送信することができると想定される。たとえば、センサ出力は、飛行ごとに1回、飛行ごとに複数回、あるいは、飛行後に送信することができる。
ステップ102におけるデータの送信は、空調パック22の1つまたは複数の特性に関連するセンサ出力を画定することができる。センサ出力は、センサ出力を画定するための、種々の他の情報が導出され、あるいは抽出され得る生データを含むことができると想定される。センサ出力が直接受信されるか、あるいは受信した出力から導出されるかに関わらず、出力はセンサ出力とみなすことができることが理解されよう。たとえば、センサ出力は、時間と共に集計されて、集計されたセンサデータを画定することができる。時間と共に送信されたセンサ出力を集計することは、飛行の複数のフェーズにわたって、および/または複数の飛行にわたって送信されたセンサ出力を集計することを含むことができる。このような集計されたセンサデータは、中央値、最大値、最小値などを含むことができる。このような集計されたセンサデータは、保守イベント後にリセットすることができる。任意のセンサ出力を含む送信されたデータは、時系列データ(たとえば、1Hz)、集計、計算値などを含むことができることが理解されよう。
ステップ104では、送信されたデータまたはセンサ出力は、送信されたデータに対する所定のしきい値と比較することができる。所定のしきい値は、温度値、圧力値、許容できるバルブもしくはアクチュエータの位置範囲などであってもよいことを含む、送信されたデータに関連する任意の適切な所定のしきい値であってもよい。送信されたデータに対する所定のしきい値はまた、たとえば、航空機の空調システムに関する履歴データまたは複数の他の航空機についての履歴データを含むセンサ出力に対する所定のしきい値の履歴を含むことができる。このように、出力信号は、同じ航空機および航空機の全台数に対する以前の飛行から得られた結果と比較することができる。さらに、センサ出力に対する所定のしきい値は、動作中に決定された値を含むことができる。あるいは、所定のしきい値は、上述したように、データベースのうちの1つに格納することができる。
このようにして、センサ出力は、センサ出力に対する所定のしきい値と比較することができる。任意の適切な比較を行うことができる。たとえば、比較は、センサ出力と所定のしきい値との間の差を決定することを含むことができる。非限定的な例として、比較は、最近の信号出力を履歴値と比較することを含むことができる。比較は飛行ごとに基づいて行ってもよいし、あるいはデータを一連の飛行にわたって処理してもよい。比較は、相関が所定のしきい値を超える場合を含む、2つのパラメータの間の相関の変化をさらに測定することができる。たとえば、送信されたデータが、飛行前および/または巡航中に空調パック22の温度、圧力、バルブおよびアクチュエータの位置を示すことができる場合には、比較は、温度、圧力、および位置を対応する所定のしきい値と比較することを含むことができる。送信されたデータの中央値が算出される場合には、ステップ104における比較は、中央値を所定のしきい値と比較するステップを含むことができる。さらに、送信されたデータの最大値および最小値を決定することができる場合には、ステップ104における比較は、最小値および/または最大値を所定のしきい値と比較するステップを含むことができる。また、ステップ104で複数の比較を行うことができると想定される。たとえば、1つのタイプのセンサデータを、複数回送信することができ、比較は、データを制御限界などの所定のしきい値と比較することができる。
ステップ106では、空調システム10の空調パック22の故障は、ステップ104における比較に基づいて診断することができる。たとえば、空調パック22の故障は、センサが所定のしきい値を満たすことを比較が示す場合に診断することができる。しきい値を「満たす」という用語は、本明細書では、しきい値と等しい、それより小さい、またはそれより大きいなどのように、変化の比較が所定のしきい値を満たすことを意味するために用いられる。このような判定は、正/負比較または真/偽比較によって満たされるように容易に変更できることが理解されよう。たとえば、しきい値よりも小さい値は、データが数値的に反転した場合にテストより大きい値を適用することにより、容易に満たすことができる。
関連するデータが得られて、適切な比較が行われるなどすれば、空調システム10の任意の数の故障を診断することができる。非限定的な例として、故障が空調パック22のラム空気入口フラップアクチュエータ77によるものと診断することができる。より具体的には、ステップ104における比較が、巡航中に空調パック22のラム空気入口フラップの位置が所定のしきい値を満たさないことを示す場合に、ラム空気入口フラップアクチュエータ77の故障を診断することができる。比較は、ラム空気入口フラップの位置が巡航中に通常よりも開いたままであることを示すことができる。これは、巡航中に、40度の所定のしきい値よりも大きな値などの極端な中央値として、比較において観察可能であり得る。あるいは、故障を診断することは、複数の比較に基づくことができる。より具体的には、ラム空気入口フラップの位置が上記の正常な位置にあると判定することができるが、提供された付加的な冷却により、比較は、圧縮機出口温度が通常よりも低いこと、および/またはパックの出口温度が不安定であることを示すことができる。不安定な挙動は、標準偏差の特徴によって識別することができる。さらに、バイパスバルブの位置は、パックの出口温度を維持しようとして開くので、より高く判定され得る。これらの付加的な比較は、ラム空気入口フラップアクチュエータ77が故障しており、かつ、それが別の故障を補償しようとしていないという診断を提供する。センサの故障はまた、多くの数の範囲外の読み取り値を判定することにより、あるいは、たとえば、最近の中央値温度を他の読み取り値が正常であると判定された場合の中央値温度の履歴と比較することにより、判定することができる。任意の数の故障は任意の数の比較に基づいて診断することができることが理解されよう。これらの比較はまた、故障の重大度に関する情報を提供するために用いることができる。
送信されたデータは空調パック22の複数のセンサ読み取り値に関連することができ、故障を診断することは1つの比較または複数の比較に基づくことができることが理解されよう。比較または比較の組み合わせは、どのセンサ、部品またはサブシステムが故障する可能性が高いかを示すことができる。たとえば、比較が所定のしきい値より高い水抽出器温度および所定のしきい値より高い圧縮機出口温度を示す場合に、空調パック22の一次熱交換器72の故障を診断することができる。さらに、比較が飛行の巡航期間中に所定のしきい値より高い圧縮機出口温度および所定のしきい値を満たす水抽出器温度を示す場合に、空調パック22の凝縮器の故障を診断することができる。
実施においては、センサデータおよび比較のための所定のしきい値は、空調パック22の故障を診断するためのアルゴリズムに変換することができる。このようなアルゴリズムは、実行可能な命令のセットを含むコンピュータプログラムに変換することができ、それはコントローラ34および/またはコントローラ60によって実行することができる。あるいは、コンピュータプログラムはモデルを含むことができ、それは空調システム10の故障を診断するために用いることができる。モデルは、推論ネットワーク、フローチャート、またはデシジョンツリーの使用を含むことができる。診断は、以前の故障と比較されたデータのシステムまたはパターンの理解に基づくことができる。モデルは、すべての利用可能な情報を使用することを確実にすることができ、かつ、誤検出(フォールスポジティブ)を差し引くことができる。たとえば、モデルは、圧力の特異なスパイクは空調システムの保守と関連付けることができるという知見を用いることができる。
ステップ108では、コントローラ34および/またはコントローラ60は、ステップ106で診断された空調システム10の空調パック22の障害の表示を提供することができる。表示は、操縦室16および地上システム62を含む任意の適切な位置に任意の適切な方法で提供することができる。たとえば、表示は、航空機8の操縦室16のプライマリ・フライト・ディスプレイ(PFD)に提供することができる。コントローラ34がプログラムを実行した場合には、表示は航空機8に提供されてもよいし、および/または地上システム62にアップロードされてもよい。あるいは、コントローラ60がプログラムを実行した場合には、表示は航空機8にアップロードまたは中継されてもよい。あるいは、航空会社の管理または飛行運用部門などの別の場所に表示が提供されるように、表示が中継されてもよい。
空調パック22の故障を診断する方法は柔軟性があり、図示した方法は単なる例示目的に過ぎないことが理解されよう。たとえば、図示したステップの順序は、例示目的のみであって、決して方法100を限定するものではなく、本発明の実施形態から逸脱せずに、ステップは異なる論理的順序で進行することができ、あるいは、追加のまたは介在するステップを含めることができることを理解されたい。たとえば、所定のしきい値は、航空機8の別の空調パック22から送信された流量データからコントローラ34および/またはコントローラ60によって決定することができる。非限定的な例として、そのような事例では、故障を診断するステップは、比較が航空機8の2つの空調パック22の間の流れの発散を示す場合に、空調パック22のコントローラ78の故障を診断するステップを含む。
さらなる例として、異なる比較は、センサがデータを送信した特定のフェーズに応じて特定の故障を示すことができる。アルゴリズム、コンピュータプログラム、モデルなどが故障を診断するのに用いられる場合には、故障は巡航中に送信されたデータと、飛行前または飛行後の地上で送信されたデータと、に応じて異なる。あるいは、同じ比較を特定の故障を示すために用いることができる。たとえば、航空機の動作の特定のフェーズにおけるデータは、以下の表1に示すように特定の診断を示すことができる。
さらなる例として、送信されたデータは、このような複数の飛行の飛行前、飛行後、および/または最長巡航部分を含む複数の飛行からのデータを含むことができると想定される。このような事例では、送信されたデータを比較するステップは、複数の飛行からのデータを関連する所定のしきい値と比較するステップを含むことができる。このようにして、複数の比較は、複数の飛行のデータを利用して行うことができる。さらに、故障を診断するステップは、比較が、所定のしきい値が所定の回数および/または複数の飛行を含む所定の数の飛行にわたって満たされることを示す場合に、故障を診断するステップを含むことができる。さらに、診断された故障は、航空機の飛行のフェーズごとに算出することができる中央値、最小値、最大値、標準偏差、しきい値の上または下の計数、状態の変化、相関などの導出されたデータに基づいてもよい。
たとえば、以下の表2は、基準となる特定の飛行数を超える回数を含むA320などの航空機の第1のタイプの診断中に使用されるいくつかの数値しきい値について詳細に示す。
さらなる例として、以下の表3は、基準となる特定の飛行数を超える回数を含むA330などの航空機の第2のタイプの診断中に使用される別の数値しきい値について詳細に示す。
上述した実施形態の有益な効果は、航空機により収集されたデータが空調パックの故障を診断するために利用できることを含む。これは、保守時間ならびに空調パックに起因する故障および問題の影響を低減する。特に、問題を診断するのに必要な時間が短縮され、かつ問題を正確に診断することができる。これは、保守費用、再スケジュール費用を低減し、航空機が地上にいる時間を最小にすることを含む、運用上の影響を最小にすることによって、費用の節約を可能にする。
この明細書は、本発明を開示するために実施例を用いており、最良の形態を含んでいる。また、いかなる当業者も本発明を実施することができるように実施例を用いており、任意のデバイスまたはシステムを製作し使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含んでいる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。このような他の実施例が請求項の文字通りの言葉と異ならない構造要素を有する場合、または、それらが請求項の文字通りの言葉と実質的な差異がなく等価な構造要素を含む場合には、このような他の実施例は特許請求の範囲内であることを意図している。