以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
また、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によっては、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
なお、本明細書等について、In:M:Zn=4:2:3またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが4の場合、Mが1以上3以下(1≦M≦3)であり、Znが2以上4以下(2≦Zn≦4)とする。また、In:M:Zn=5:1:6またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが5の場合、Mが0.1より大きく2以下(0.1<M≦2)であり、Znが5以上7以下(5≦Zn≦7)とする。また、In:M:Zn=1:1:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、Mが0.1より大きく2以下(0.1<M≦2)であり、Znが0.1より大きく2以下(0.1<Zn≦2)とする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である金属酸化物について説明する。
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor、または単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
本発明の一態様の金属酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、元素M(元素Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)が含まれていてもよい。
また、本発明の一態様の金属酸化物は、窒素を有すると好ましい。具体的には、本発明の一態様の金属酸化物において、SIMSにより得られる窒素濃度が、1×1016atoms/cm3以上、好ましくは1×1017atoms/cm3以上2×1022atoms/cm3以下とすればよい。なお、金属酸化物に窒素を添加すると、バンドギャップが狭くなり、導電性が向上する傾向がある。従って、本明細書等において、本発明の一態様である金属酸化物は、窒素などが添加された金属酸化物も含むものとする。また、窒素を有する金属酸化物を金属酸窒化物(Metal Oxynitride)と呼称してもよい。
<金属酸化物の構成1>
本発明の一態様における金属酸化物の概念図を図1に示す。本発明の一態様における金属酸化物は、例えば、図1に示すように、金属酸化物を構成する元素が偏在することで、各元素を主成分とする領域001、および領域002を形成し、各領域が、混合し、モザイク状に形成される。
つまり、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の元素が偏在し、該元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
領域001、および領域002は、それぞれ偏在した元素により、物理特性が決定する。例えば、領域001に偏在する元素と、領域002に偏在する元素とを比較して、領域001に偏在する元素が絶縁体となる傾向が強い場合、領域001は誘電体(絶縁体)の機能を有し、誘電体領域となる。一方、領域002に偏在する元素と、領域001に偏在する元素とを比較して、領域002に偏在する元素が導体となる傾向が強い場合、領域002は導電体の機能を有し、導電体領域となる。導電体領域、および誘電体領域がモザイク状に混合することで、材料としては、半導体として機能する場合がある。
つまり、本発明の一態様における金属酸化物は、物理特性が異なる材料が混合した、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)の一種である。
ここで、本明細書において、本発明の一態様である金属酸化物が、導電体の機能を有する領域と、誘電体の機能を有する領域とが混合し、材料の全体では半導体としての機能する場合、CAC(Cloud−Aligned composite)−OS(Oxide Semiconductor)、またはCAC−metal oxideと定義する。
CAC−OS、またはCAC−metal oxideにおいて、導電体領域と、誘電体領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、材料中において、導電体領域と、誘電体領域とは、それぞれ偏在しており、導電体領域の周辺がぼけてクラウド状に観察される場合もある。なお、CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、導電体領域と、誘電体領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散していることが好ましい。
誘電体領域、または導電体領域のサイズは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングで評価することができる。
例えば、誘電体領域は、断面写真のEDXマッピングにおいて、誘電体領域の径が、0.5nm以上10nm以下、または1nm以上2nm以下で観察される場合がある。また、領域の中心部から周辺部にかけて、主成分である元素の密度は、徐々に小さくなる。例えば、EDXマッピングでカウントできる元素の個数(以下、存在量ともいう)が、中心部から周辺部に向けて傾斜すると、断面写真のEDXマッピングにおいて、領域の周辺部が不明瞭な(ボケた)状態で観察される。
なお、CAC−OS、またはCAC−metal oxideとは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まない。例えば、Inを主成分とする膜と、元素Mを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まないものとする。
つまり、CACとは、機能または材料の構成の一例であり、CAC−OS、またはCAC−metal oxideにおいて、結晶構造は副次的な要素である。一方、本明細書等において、CAAC(c−axis aligned crystal)と記載する場合、CAACは結晶構造の一例を表す。
CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した層状の結晶構造である。ここで、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn(1+x0)Ga(1−x0)O3(ZnO)m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。当該結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。
なお、CAC−OS、またはCAC−metal oxideにおける結晶性は、電子線回折で評価することができる。例えば、電子線回折パターン像において、リング状に輝度の高い領域が観察される。また、リング状の領域に複数のスポットが観察される場合がある。
CAC−OS、またはCAC−metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電体領域は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能を有し、絶縁体(または誘電体)領域は、キャリアとなる電子を流さない機能を有する。
導電体としての機能と、誘電体としての機能とを、それぞれ相補的に作用させることでスイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSまたはCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
以下では、一例として、CAC−OS、またはCAC−metal oxideである、インジウム、元素M及び亜鉛を有する金属酸化物(以下、単に金属酸化物とする)について説明する。なお、金属酸化物が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
例えば、金属酸化物は、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、元素Mの酸化物(以下、MOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、または元素Mの亜鉛酸化物(以下、MX4ZnY4OZ4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)を有する。
ここで、図1に示す概念が、本発明の一態様の金属酸化物であると仮定する。その場合、領域001がMOX3を主成分とする領域、領域002がInX2ZnY2OZ2、またはInOX1を主成分とする領域である。このとき、MOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とは、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、それぞれ明確な境界が観察できない場合がある。例えば、MOX3が主成分である領域において、元素Mの原子数は、中心部から周辺部にかけて徐々に減少し、代わりに、Zn原子数が増加することで、MX4ZnY4OZ4が主成分である領域へと段階的に変化する。従って、EDXマッピングにおいて、MOX3が主成分である領域の周辺部は不明瞭な(ボケた)状態で観察される。
つまり、本発明の一態様の金属酸化物は、MOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、混合している金属酸化物である。なお、本明細書等において、例えば、領域002の元素Mに対するInの原子数比が、領域001の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、領域002は、領域001と比較して、Inの濃度が高いとする。
ここで、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域は、MOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
一方、MOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、MOX3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
従って、本発明の一態様の金属酸化物を半導体素子に用いた場合、MOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および、低いオフ電流(Ioff)を実現することができる。
また、本発明の一態様の金属酸化物に窒素を添加することにより、当該金属酸化物は、バンドギャップが狭くなる傾向がある。従って、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域の導電性をさらに増加させることができる。つまり、窒素を添加した金属酸化物をトランジスタに用いる場合、さらに高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を有するトランジスタにすることができる。
具体的には、本発明の一態様の金属酸化物において、SIMSにより得られる窒素濃度を先に記載の数値とすればよい。
また、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現するには、金属酸化物において、キャリア密度が高いことが好ましい。金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、本発明の一態様の金属酸化物に水素を添加してもよい。具体的には、本発明の一態様の金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1018atoms/cm3以上、好ましくは1×1019atoms/cm3以上2×1022atoms/cm3以下とする。
一方、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と同様に、MOX3などが主成分である領域においても、酸化物が形成される。ここで、元素Mとしてアルミニウムまたはシリコンなどのバンドギャップが大きい元素(例えば、ガリウムよりバンドギャップが大きい元素)を用いることで、酸化物が形成されても十分な絶縁性を有する領域にすることができる。
例えば、Al2O3のバンドギャップは8.6eVであり、Ga2O3のバンドギャップ4.8eVより大きい。また、AlNのバンドギャップは6.3eVであり、GaNのバンドギャップ3.5eVより大きい。つまり、元素Mにアルミニウムを用いた場合の領域002は、元素Mにガリウムを用いた場合の領域002よりも、高い絶縁性を有すると考えられる。従って、元素Mとしてアルミニウムまたはシリコンなどのバンドギャップが大きい元素を用いる場合、よりリーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
従って、元素Mとして、アルミニウムまたはシリコンなどの酸素と結合力の強い元素を用いることにより、金属酸化物の酸素欠損に相当するサイトを、当該元素Mによって補填することができる。また、金属酸化物に添加した窒素も酸素欠損に相当するサイトを補填することができる。
なお、酸素欠損(Voともいう)とは、金属酸化物中に存在した酸素が、拡散または消失した状態をいう。金属酸化物中に酸素欠損が生じると、金属酸化物の電気伝導度を変化させてしまうことがある。なお、酸素欠損は、酸素または、異なる元素でその欠陥の一部が修復(補填)することで、低減することができる。酸素欠損を低減することで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化、および光による劣化を抑制することができる。
また、本発明の一態様の金属酸化物に窒素を添加する、および元素Mに酸素と結合力の強い元素を用いることで、成膜ガス中の酸素を低減、または成膜ガスに酸素を含まない構成としても、金属酸化物の酸素欠損の低減を図ることができる。このように酸素欠損の低減された金属酸化物をトランジスタに用いることにより、信頼性が高いトランジスタにすることができる。従って、本発明の一態様の金属酸化物を用いたトランジスタは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
また、元素Mとしてアルミニウムを用いることにより、金属酸化物中にAlNxが形成される場合がある。AlNxは熱伝導率が高いので、AlNxを有する金属酸化物をトランジスタに用いることで、高温環境での使用に耐えられるパワーデバイスを作製することができる。
以上より、元素Mとしては、例えば、アルミニウムを用いることが好ましい。元素Mとしてアルミニウムを用いたIn−Al−Zn酸化物では、上記に加えて、アルミニウム酸化物、またはアルミニウム亜鉛酸化物などが含まれる。
また、元素Mとしては、例えば、シリコンを用いることが好ましい。元素Mとしてシリコンを用いたIn−Si−Zn酸化物では、上記に加えて、シリコン酸化物、またはシリコン亜鉛酸化物などが含まれる。また、In−Si−Zn酸化物では、SIMSにより得られるSiの濃度が5×1018atoms/cm3以上であることが好ましい。
なお、本発明の一態様の金属酸化物を半導体素子に用いた場合に、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および、低いオフ電流(Ioff)を実現する伝導メカニズムは、パーコレーション理論の1つであるランダム抵抗網モデルにより、推定することができる。
つまり、本発明の一態様の酸化物における電気伝導は、基本的に、キャリアである電子が、導電性が高いInX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を自由に動くことにより生じると考えられる。
また、絶縁性が高いMOX3などが主成分である領域およびその近傍では、電子が局在状態となる。従って、キャリアである電子が、絶縁性が高いMOX3などが主成分である領域を、飛躍(ホッピング)することによって電気伝導が担われる場合がある。なお、飛躍過程は原子の熱振動などに起因して生じると推測され、電気伝導率は温度の上昇とともに増大する傾向がある。また、飛躍過程は外部から与えられる作用(例えば、電気的な作用など)に起因して生じる場合がある。具体的には、本発明の一態様の金属酸化物に電界を加えることによって飛躍過程が生じる場合がある。
また、本発明の一態様の金属酸化物を用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、本発明の一態様の金属酸化物は、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
<金属酸化物の構成2>
図2は、図1に示す概念図の変形例である。図2に示すように、領域001、および領域002の他に、領域003を有していてもよい。
領域003は、金属酸化物の形成条件によって、形成される場合がある。例えば、領域003として、In、元素M、Zn、およびOによる1つの化合物が形成される場合がある。また、領域001よりも元素Mの濃度が低く、かつ領域001よりも元素Mの濃度が高い領域、および領域002よりもInの濃度が低く、かつ領域002よりもInの濃度が高い領域などが、領域003として形成される場合がある。
従って、領域003は、領域001よりも導電性が高く、領域002よりも絶縁性が高い領域である。従って、基本的に、領域003は、キャリアが流れることなく、またスイッチング動作にも寄与しない。つまり、基本的に機能を有しない領域である。
<金属酸化物の成膜方法>
以下では、金属酸化物の一例について説明する。
金属酸化物を成膜する際の温度としては、室温以上140℃未満とすることが好ましい。なお、室温とは、温度調節を行わない場合だけでなく、基板を冷却するなど温度調節を行う場合も含むものとする。
また、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および窒素、または混合ガスを適宜用いる。混合ガスの場合、成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合が、0%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下とする。
また、成膜ガスに窒素ガスを含めて成膜することにより、窒素を有する金属酸化物を成膜することができる。窒素ガスを添加して金属酸化物を成膜する場合、窒素流量比を大きくし、金属酸化物に十分な量の窒素を含ませることで、キャリア移動度を高めることができる。金属酸化物に十分な量の窒素を含ませることで、金属酸化物を有するトランジスタにおいて、低いゲート電圧(例えば0Vより大きく2V以下の範囲)における電界効果移動度の向上が顕著となる。
窒素流量比は、窒素を有する金属酸化物の用途に応じた好ましい特性を得るために、10%以上100%以下の範囲で適宜設定することができる。
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガス、窒素ガス、及びアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで金属酸化物に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、スパッタリング法で金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(5×10−7Paから1×10−4Pa程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
また、スパッタリングターゲットとして、In−M−Zn金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、スパッタリングターゲットとして、元素Mの化合物などの絶縁性材料(誘電性材料ということもできる。)を含む領域と、酸化インジウムなどの導電性材料を含む領域と、を有し、それぞれの領域が互いに分離している複合ターゲットを用いることができる。また、絶縁性材料を含む領域、または導電性材料を含む領域のどちらか一方、または双方に窒素元素が含まれる材料を有することで、成膜される金属酸化物に窒素を添加することができる。
なお、複合ターゲットにおいて、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、それぞれ粒子状であることが好ましい。ここで、複合ターゲットでは、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、機能が分離しているため、導電性材料を含む領域に含まれる元素と絶縁性材料を含む領域に含まれる元素とは、互いに結合しないことが好ましい。また、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、それぞれ径が10μm未満であることが好ましい。また、複合ターゲットは、結晶構造を有してもよい。例えば、微結晶構造(nc(nano−crystal)構造という場合もある。)または多結晶構造を有してもよい。
例えば、複合ターゲットに含まれる導電性材料の原子数比を絶縁性材料の原子数比より多くすることが好ましい。当該複合ターゲットを用いて製膜することで、金属酸化物中に、絶縁性材料より多く導電性材料が含まれるため、よりキャリア移動度を高くすることができる。
また、スパッタリング装置において、ターゲットを回転または移動させても構わない。成膜条件、例えば、成膜中にマグネットユニットを上下または/及び左右に揺動させることによって、本発明の複合金属酸化物を形成することができる。例えば、ターゲットを、0.1Hz以上1kHz以下のビート(リズム、拍子、パルス、周波、周期またはサイクルなどと言い換えてもよい。)で回転または揺動させればよい。または、マグネットユニットを、0.1Hz以上1kHz以下のビートで揺動させればよい。
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または他の実施例に示す構成と適宜、組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である金属酸化物について説明する。
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor、または単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
本発明の一態様の金属酸化物(Metal Oxide)は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、ホウ素が含まれていてもよい。ここで、金属酸化物が、インジウム、ホウ素及び亜鉛を有する場合を考える。
<金属酸化物の構成1>
本発明の一態様における金属酸化物の概念図を図3に示す。本発明の一態様における金属酸化物は、例えば、図3に示すように、金属酸化物を構成する元素が偏在することで、各元素を主成分とする領域001、および領域002を形成し、各領域が、混合し、モザイク状に形成される。
つまり、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の元素が偏在し、該元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
領域001、および領域002は、それぞれ異なる物理特性を有する。例えば、領域001が、誘電体(絶縁体)の機能を有する場合、誘電体領域となる。一方、領域002が導電体の機能を有する場合、導電体領域となる。導電体領域、および誘電体領域がモザイク状に混合することで、材料としては、半導体として機能する場合がある。
つまり、本発明の一態様における金属酸化物は、物理特性が異なる材料が混合した、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)の一種である。
ここで、本明細書において、本発明の一態様である金属酸化物が、導電体の機能を有する領域と、誘電体の機能を有する領域とが混合し、材料の全体では半導体としての機能する場合、CAC(Cloud−Aligned composite)−OS(Oxide Semiconductor)、またはCAC−metal oxideと定義する。
なお、CAC−OS、またはCAC−metal oxideとは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まない。例えば、Inを主成分とする膜と、Bを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まないものとする。
つまり、CACとは、機能または材料の構成の一例であり、CAC−OS、またはCAC−metal oxideにおいて、結晶構造は副次的な要素である。一方、本明細書等において、CAAC(c−axis aligned crystal)と記載する場合、CAACは結晶構造の一例を表す。
CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した層状の結晶構造である。ここで、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn(1+x0)Ga(1−x0)O3(ZnO)m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。当該結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。
なお、CAC−OS、またはCAC−metal oxideにおける結晶性は、電子線回折で評価することができる。例えば、電子線回折パターン像において、リング状に輝度の高い領域が観察される。また、リング状の領域に複数のスポットが観察される場合がある。
CAC−OS、またはCAC−metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電体領域は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能を有し、絶縁体(または誘電体)領域は、キャリアとなる電子を流さない機能を有する。
導電体としての機能と、誘電体としての機能とを、それぞれ相補的に作用させることでスイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSまたはCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
以下では、CAC−OS、またはCAC−metal oxideである、インジウム、ホウ素及び亜鉛を有する金属酸化物(以下、単に金属酸化物とする)について説明する。
本発明の一態様における金属酸化物は、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、酸化ホウ素(以下、BOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、または亜鉛酸化ホウ化物(以下、ZnY4OZ4BX4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)を有する。
ここで、図3に示す概念が、本発明の一態様の金属酸化物であると仮定する。その場合、領域001がBOX3を主成分とする領域、領域002がInX2ZnY2OZ2、またはInOX1を主成分とする領域である。
金属酸化物において、領域001と、領域002とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、金属酸化物中において、領域001と、領域002とは、それぞれ偏在しており、領域001の周辺がぼけてクラウド状に観察される場合もある。なお、領域001と、領域002とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散していることが好ましい。
なお、領域001、または領域002のサイズは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングで評価することができる。例えば、領域001は、断面写真のEDXマッピングにおいて、誘電体領域の径が、0.5nm以上10nm以下、または1nm以上2nm以下で観察される場合がある。
このとき、BOX3が主成分である領域001と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域002とは、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、それぞれ明確な境界が観察できない場合がある。例えば、領域002において、B原子は、中心部から周辺部にかけて徐々に減少し、代わりに、Zn原子が増加することで、BX6ZnY6OZ6が主成分である領域へと段階的に変化する。つまり、領域002の中心部から周辺部にかけて、B原子の密度は、徐々に小さくなる。従って、EDXマッピングでカウントできるB原子の個数(以下、存在量ともいう)が、中心部から周辺部に向けて傾斜するため、断面写真のEDXマッピングにおいて、領域の周辺部が不明瞭な(ボケた)状態で観察される。
つまり、本発明の一態様の金属酸化物は、BOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、混合している金属酸化物である。なお、本明細書等において、例えば、領域002のBに対するInの原子数比が、領域001のBに対するInの原子数比よりも大きいことを、領域002は、領域001と比較して、Inの濃度が高いとする。
ここで、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域は、BOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
一方、BOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、BOX3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
従って、本発明の一態様の金属酸化物を半導体素子に用いた場合、BOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および、低いオフ電流(Ioff)を実現することができる。
また、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現するには、金属酸化物において、キャリア密度が高いことが好ましい。金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1018atoms/cm3以上2×1022atoms/cm3以下、好ましくは1×1019atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下とする。この結果、導電性が高い領域のキャリア密度が高まり、本発明の一態様の金属酸化物の移動度を高めることができる。
一方、ホウ素は、インジウム及び亜鉛と比較して酸素との結合エネルギーが大きい。
例えば、B−Oの結合エネルギーは、809kJ/molであり、In−Oの結合エネルギー346kJ/mol及びZn−Oの結合エネルギー250kJ/molより大きい。また、B−Oの結合エネルギーは、In−Ga−Zn系の金属酸化物に含まれるZn−Oの結合エネルギー374kJ/molより大きい。つまり、酸化ホウ素を用いた場合の領域002は、酸化ガリウムを用いた場合の領域002よりも、膜中の酸素の結合を安定させることが可能であり、高い絶縁性を有すると考えられる。従って、金属酸化物において、導電性が高い領域のキャリア密度が高くても、絶縁性が高い領域として結合エネルギーの高い酸化ホウ素を用いることで、リーク電流を抑制することが可能である。この結果、本発明の一態様の金属酸化物は良好なスイッチング動作を実現できる。
上記のように、ホウ素は酸素との結合力が高いため、金属酸化物の酸素欠損に相当するサイトを、当該ホウ素によって補填することができる。
なお、酸素欠損(Voともいう)とは、金属酸化物中に存在した酸素が、拡散または消失した状態をいう。金属酸化物中に酸素欠損が生じると、金属酸化物の電気伝導度を変化させてしまうことがある。なお、酸素欠損は、酸素または、異なる元素でその欠陥の一部が修復(補填)することで、低減することができる。酸素欠損を低減することで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化、および光による劣化を抑制することができる。
また、金属酸化物に、酸素と結合力の強いホウ素を用いることで、成膜ガス中の酸素を低減、または成膜ガスに酸素を含まない構成としても、金属酸化物の酸素欠損の低減を図ることができる。このように酸素欠損の低減された金属酸化物をトランジスタに用いることにより、信頼性が高いトランジスタにすることができる。従って、本発明の一態様の金属酸化物を用いたトランジスタは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
なお、本発明の一態様の金属酸化物を半導体素子に用いた場合に、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および、低いオフ電流(Ioff)を実現する伝導メカニズムは、パーコレーション理論の1つであるランダム抵抗網モデルにより、推定することができる。
つまり、本発明の一態様の酸化物における電気伝導は、基本的に、キャリアである電子が、導電性が高いInX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を自由に動くことにより生じると考えられる。
また、絶縁性が高いBOX3などが主成分である領域およびその近傍では、電子が局在状態となる。従って、キャリアである電子が、絶縁性が高いBOX3などが主成分である領域を、飛躍(ホッピング)することによって電気伝導が担われる場合がある。なお、飛躍過程は原子の熱振動などに起因して生じると推測され、電気伝導率は温度の上昇とともに増大する傾向がある。また、飛躍過程は外部から与えられる作用(例えば、電気的な作用など)に起因して生じる場合がある。具体的には、本発明の一態様の金属酸化物に電界を加えることによって飛躍過程が生じる場合がある。
また、本発明の一態様の金属酸化物を用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、本発明の一態様の金属酸化物は、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
<金属酸化物の構成2>
図4は、図3に示す概念図の変形例である。図4に示すように、領域001、および領域002の他に、領域003を有していてもよい。
領域003は、金属酸化物の形成条件によって、形成される場合がある。例えば、領域003として、In、B、Zn、およびOによる1つの化合物が形成される場合がある。また、領域001よりもBの濃度が低く、かつ領域001よりもBの濃度が高い領域、および領域002よりもInの濃度が低く、かつ領域002よりもInの濃度が高い領域などが、領域003として形成される場合がある。
従って、領域003は、領域001よりも導電性が高く、領域002よりも絶縁性が高い領域である。従って、基本的に、領域003は、キャリアが流れることなく、またスイッチング動作にも寄与しない。つまり、基本的に機能を有しない領域である。
<金属酸化物の成膜方法>
以下では、金属酸化物の一例について説明する。
金属酸化物を成膜する際の温度としては、室温以上140℃未満とすることが好ましい。なお、室温とは、温度調節を行わない場合だけでなく、基板を冷却するなど温度調節を行う場合も含むものとする。
また、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および窒素、または混合ガスを適宜用いる。混合ガスの場合、成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合が、0%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下とする。
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガス、窒素ガス、及びアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで金属酸化物に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、スパッタリング法で金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(5×10−7Paから1×10−4Pa程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
また、スパッタリングターゲットとして、In−B−Zn金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、スパッタリングターゲットとして、酸化ホウ素の化合物などの絶縁性材料(誘電性材料ということもできる。)を含む領域と、酸化インジウムなどの導電性材料を含む領域と、を有し、それぞれの領域が互いに分離している複合ターゲットを用いることができる。
なお、複合ターゲットにおいて、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、それぞれ粒子状であることが好ましい。ここで、複合ターゲットでは、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、機能が分離しているため、導電性材料を含む領域に含まれる元素と絶縁性材料を含む領域に含まれる元素とは、互いに結合しないことが好ましい。また、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、それぞれ径が10μm未満であることが好ましい。また、複合ターゲットは、結晶構造を有してもよい。例えば、微結晶構造(nc(nano−crystal)構造という場合もある。)または多結晶構造を有してもよい。
例えば、複合ターゲットに含まれる導電性材料の原子数比を絶縁性材料の原子数比より多くすることが好ましい。当該複合ターゲットを用いて製膜することで、金属酸化物中に、絶縁性材料より多く導電性材料が含まれるため、よりキャリア移動度を高くすることができる。
また、スパッタリング装置において、ターゲットを回転または移動させても構わない。成膜条件、例えば、成膜中にマグネットユニットを上下または/及び左右に揺動させることによって、本発明の複合金属酸化物を形成することができる。例えば、ターゲットを、0.1Hz以上1kHz以下のビート(リズム、拍子、パルス、周波、周期またはサイクルなどと言い換えてもよい。)で回転または揺動させればよい。または、マグネットユニットを、0.1Hz以上1kHz以下のビートで揺動させればよい。
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または他の実施例に示す構成と適宜、組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、図5乃至図12を参照して説明する。
<2−1.半導体装置の構成例1>
図5(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり、図5(B)は、図5(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図5(C)は、図5(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、図5(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図5(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
図5(A)(B)(C)に示すトランジスタ100は、所謂トップゲート構造のトランジスタである。
トランジスタ100は、基板102上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の金属酸化物108と、金属酸化物108上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の導電膜112と、絶縁膜104、金属酸化物108、及び導電膜112上の絶縁膜116と、を有する。
また、金属酸化物108は、導電膜112が重畳する領域において、絶縁膜104上の金属酸化物108を有する。例えば、金属酸化物108は、本発明の一態様である金属酸化物を用いることができる。
また、金属酸化物108は、導電膜112が重畳せずに、且つ絶縁膜116が接する領域において、領域108nを有する。領域108nは、先に説明した金属酸化物108が、n型化した領域である。なお、領域108nは、絶縁膜116と接し、絶縁膜116は、窒素または水素を有する。そのため、絶縁膜116中の窒素または水素が領域108nに添加されることで、キャリア密度が高くなりn型となる。
また、金属酸化物108は、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ましい。一例としては、金属酸化物108のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。
なお、金属酸化物108は、上記の組成に限定されない。例えば、金属酸化物108のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=5:1:6近傍としてもよい。ここで近傍とは、Inが5の場合、Mが0.5以上1.5以下であり、且つZnが5以上7以下を含む。
金属酸化物108が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有することで、トランジスタ100の電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、トランジスタ100の電界効果移動度が50cm2/Vsを超える、さらに好ましくはトランジスタ100の電界効果移動度が100cm2/Vsを超えることが可能となる。
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提供することができる。また、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、表示装置が有する信号線からの信号の供給を行うソースドライバ(とくに、ソースドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
一方で、金属酸化物108が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有していても、金属酸化物108の結晶性が高い場合、電界効果移動度が低くなる場合がある。
なお、金属酸化物108の結晶性としては、例えば、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)を用いて分析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて分析することで解析できる。
また、図5(A)(B)(C)に示すように、トランジスタ100は、絶縁膜116上の絶縁膜118と、絶縁膜116、118に設けられた開口部141aを介して、領域108nに電気的に接続される導電膜120aと、絶縁膜116、118に設けられた開口部141bを介して、領域108nに電気的に接続される導電膜120bと、を有していてもよい。
なお、本明細書等において、絶縁膜104を第1の絶縁膜と、絶縁膜110を第2の絶縁膜と、絶縁膜116を第3の絶縁膜と、絶縁膜118を第4の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。また、導電膜112は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜120aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜120bは、ドレイン電極としての機能を有する。
また、絶縁膜110は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
<2−2.半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
[第1の絶縁膜]
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜104としては、例えば、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成することができる。なお、金属酸化物108との界面特性を向上させるため、絶縁膜104において少なくとも金属酸化物108と接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。また、絶縁膜104として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理により絶縁膜104に含まれる酸素を、金属酸化物108に移動させることが可能である。
絶縁膜104の厚さは、50nm以上、または100nm以上3000nm以下、または200nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜104を厚くすることで、絶縁膜104の酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜104と金属酸化物108との界面における界面準位、並びに金属酸化物108に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。
絶縁膜104として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。本実施の形態では、絶縁膜104として、窒化シリコン膜と、酸化窒化シリコン膜との積層構造を用いる。このように、絶縁膜104を積層構造として、下層側に窒化シリコン膜を用い、上層側に酸化窒化シリコン膜を用いることで、金属酸化物108中に効率よく酸素を導入することができる。
[導電膜]
ゲート電極として機能する導電膜112、ソース電極として機能する導電膜120a、ドレイン電極として機能する導電膜120bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
また、導電膜112、120a、120bには、インジウムと錫とを有する酸化物(In−Sn酸化物)、インジウムとタングステンとを有する酸化物(In−W酸化物)、インジウムとタングステンと亜鉛とを有する酸化物(In−W−Zn酸化物)、インジウムとチタンとを有する酸化物(In−Ti酸化物)、インジウムとチタンと錫とを有する酸化物(In−Ti−Sn酸化物)、インジウムと亜鉛とを有する酸化物(In−Zn酸化物)、インジウムと錫とシリコンとを有する酸化物(In−Sn−Si酸化物)、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物(In−Ga−Zn酸化物)等の酸化物導電体または金属酸化物を適用することもできる。
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC(Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば、金属酸化物に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、金属酸化物は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化された金属酸化物を、酸化物導電体ということができる。一般に、金属酸化物は、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する金属酸化物である。したがって、酸化物導電体は、ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して金属酸化物と同程度の透光性を有する。
また、導電膜112、120a、120bには、Cu−X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu−X合金膜を用いることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
また、導電膜112、120a、120bには、上述の金属元素の中でも、特にチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。特に、導電膜112、120a、120bとしては、窒化タンタル膜を用いると好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対して、高いバリア性を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が少ないため、金属酸化物108と接する導電膜、または金属酸化物108の近傍の導電膜として、好適に用いることができる。
また、導電膜112、120a、120bを、無電解めっき法により形成することができる。当該無電解めっき法により形成できる材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、Au、Sn、Co、Ag、及びPdの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を用いることが可能である。特に、CuまたはAgを用いると、導電膜の抵抗を低くすることができるため、好適である。
[第2の絶縁膜]
トランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜110としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。なお、絶縁膜110を、2層の積層構造または3層以上の積層構造としてもよい。
また、絶縁膜110として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜110の膜厚を大きくできるため、トンネル電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジスタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さいトランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。
また、絶縁膜110は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE’センターが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダングリングボンドに起因する。絶縁膜110としては、E’センター起因のスピン密度が、3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜を用いればよい。
[金属酸化物]
金属酸化物108としては、先に示す金属酸化物を用いることができる。
<原子数比>
以下に、図15(A)、図15(B)、および図15(C)を用いて、本発明に係る金属酸化物が有するインジウム、元素Mおよび亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。なお、図15(A)、図15(B)、および図15(C)には、酸素及び窒素の原子数比については記載しない。また、金属酸化物が有するインジウム、元素M、および亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
図15(A)、図15(B)、および図15(C)において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラインを表す。
また、図15(A)、図15(B)、および図15(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比、およびその近傍値の金属酸化物は、スピネル型の結晶構造をとりやすい。
また、金属酸化物中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。金属酸化物中に複数の相が共存する場合、異なる結晶構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
図15(A)に示す領域Aは、金属酸化物が有する、インジウム、元素M、および亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
金属酸化物は、インジウムの含有率を高くすることで、金属酸化物のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い金属酸化物はインジウムの含有率が低い金属酸化物と比較してキャリア移動度が高くなる。
一方、金属酸化物中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍値である場合(例えば図15(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
従って、本発明の一態様の金属酸化物は、キャリア移動度が高い、図15(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ましい。
特に、図15(B)に示す領域Bは、領域Aの中でも、キャリア移動度が高く、信頼性が高い優れた金属酸化物を得ることができる。なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値、および[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、およびその近傍値を含む。
なお、金属酸化物が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。同じ原子数比であっても、形成条件により、金属酸化物の性質が異なる場合がある。例えば、金属酸化物をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される。また、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。従って、図示する領域は、金属酸化物が特定の特性を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
また、金属酸化物108が、In−M−Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、In−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いることができる。また、スパッタリングターゲットとして、In−M−Zn金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、スパッタリングターゲットとして、元素Mの化合物などの絶縁性材料(誘電性材料ということもできる。)を含む領域と、酸化インジウムなどの導電性材料を含む領域と、を有し、それぞれの領域が互いに分離している複合ターゲットを用いることができる。また、絶縁性材料を含む領域、または導電性材料を含む領域のどちらか一方、または双方に窒素元素が含まれる材料を有することで、成膜される金属酸化物に窒素を添加することができる。
また、金属酸化物108が、In−B−Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、In−B−Zn酸化物を含むターゲットを用いることができる。また、スパッタリングターゲットとして、In−B−Zn金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、スパッタリングターゲットとして、酸化ホウ素の化合物などの絶縁性材料(誘電性材料ということもできる。)を含む領域と、酸化インジウムなどの導電性材料を含む領域と、を有し、それぞれの領域が互いに分離している複合ターゲットを用いることができる。
なお、複合ターゲットにおいて、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、それぞれ粒子状であることが好ましい。ここで、複合ターゲットでは、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、機能が分離しているため、導電性材料を含む領域に含まれる元素と絶縁性材料を含む領域に含まれる元素とは、互いに結合しないことが好ましい。また、導電性材料を含む領域及び絶縁性材料を含む領域は、それぞれ径が10μm未満であることが好ましい。また、複合ターゲットは、結晶構造を有してもよい。例えば、微結晶構造(nc(nano−crystal)構造という場合もある。)または多結晶構造を有してもよい。
例えば、複合ターゲットに含まれる導電性材料の原子数比を絶縁性材料の原子数比より多くすることが好ましい。当該複合ターゲットを用いて製膜することで、金属酸化物中に、絶縁性材料より多く導電性材料が含まれるため、よりキャリア移動度を高くすることができる。
なお、成膜される金属酸化物108の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
また、金属酸化物108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3.0eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
また、金属酸化物108は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例えば、CAAC−OS、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高い。
[第3の絶縁膜]
絶縁膜116は、窒素または水素を有する。絶縁膜116としては、例えば、窒化物絶縁膜が挙げられる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いて形成することができる。絶縁膜116に含まれる水素濃度は、1×1022atoms/cm3以上であると好ましい。また、絶縁膜116は、金属酸化物108の領域108nと接する。したがって、絶縁膜116と接する領域108n中の窒素または水素の濃度が高くなり、領域108nのキャリア密度を高めることができる。また、金属酸化物108も窒素を有する構成であるため、絶縁膜116と金属酸化物108との密着性を高めることができる。
[第4の絶縁膜]
絶縁膜118としては、酸化物絶縁膜を用いることができる。また、絶縁膜118としては、酸化物絶縁膜と、窒化物絶縁膜との積層膜を用いることができる。絶縁膜118として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いればよい。
また、絶縁膜118としては、外部からの水素、水等のバリア膜として機能する膜であることが好ましい。
絶縁膜118の厚さは、30nm以上500nm以下、または100nm以上400nm以下とすることができる。
<2−3.トランジスタの構成例2>
次に、図5(A)(B)(C)に示すトランジスタと異なる構成について、図6(A)(B)(C)を用いて説明する。
図6(A)は、トランジスタ150の上面図であり、図6(B)は図6(A)の一点鎖線X1−X2間の断面図であり、図6(C)は図6(A)の一点鎖線Y1−Y2間の断面図である。
図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ150は、基板102上の導電膜106と、導電膜106上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の金属酸化物108と、金属酸化物108上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の導電膜112と、絶縁膜104、金属酸化物108、及び導電膜112上の絶縁膜116と、を有する。
なお、金属酸化物108は、図5(A)(B)(C)に示すトランジスタ100と同様の構成である。図6(A)(B)(C)に示す、トランジスタ150は、先に示すトランジスタ100の構成に加え、導電膜106と、開口部143と、を有する。
開口部143は、絶縁膜104、110に設けられる。また、導電膜106は、開口部143を介して、導電膜112と、電気的に接続される。よって、導電膜106と導電膜112には、同じ電位が与えられる。なお、開口部143を設けずに、導電膜106と、導電膜112と、に異なる電位を与えてもよい。または、開口部143を設けずに、導電膜106を遮光膜として用いてもよい。例えば、導電膜106を遮光性の材料により形成することで、第2の領域108iに照射される下方からの光を抑制することができる。
また、トランジスタ150の構成とする場合、導電膜106は、第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜112は、第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁膜104は、第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜110は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
導電膜106としては、先に記載の導電膜112、120a、120bと同様の材料を用いることができる。特に導電膜106として、銅を含む材料により形成することで抵抗を低くすることができるため好適である。例えば、導電膜106を窒化チタン膜、窒化タンタル膜、またはタングステン膜上に銅膜を設ける積層構造とし、導電膜120a、120bを窒化チタン膜、窒化タンタル膜、またはタングステン膜上に銅膜を設ける積層構造とすると好適である。この場合、トランジスタ150を表示装置の画素トランジスタ及び駆動トランジスタのいずれか一方または双方に用いることで、導電膜106と導電膜120aとの間に生じる寄生容量、及び導電膜106と導電膜120bとの間に生じる寄生容量を低くすることができる。したがって、導電膜106、導電膜120a、及び導電膜120bを、トランジスタ150の第1のゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極として用いるのみならず、表示装置の電源供給用の配線、信号供給用の配線、または接続用の配線等に用いる事も可能となる。
このように、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ150は、先に説明したトランジスタ100と異なり、金属酸化物108の上下にゲート電極として機能する導電膜を有する構造である。トランジスタ150に示すように、本発明の一態様の半導体装置には、複数のゲート電極を設けてもよい。
また、図6(B)(C)に示すように、金属酸化物108は、第1のゲート電極として機能する導電膜106と、第2のゲート電極として機能する導電膜112のそれぞれと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。
また、導電膜112のチャネル幅方向の長さは、金属酸化物108のチャネル幅方向の長さよりも長く、金属酸化物108のチャネル幅方向全体は、絶縁膜110を間に挟んで導電膜112に覆われている。また、導電膜112と導電膜106とは、絶縁膜104、及び絶縁膜110に設けられる開口部143において接続されるため、金属酸化物108のチャネル幅方向の側面の一方は、絶縁膜110を間に挟んで導電膜112と対向している。
別言すると、導電膜106及び導電膜112は、絶縁膜104、110に設けられる開口部143において接続され、且つ金属酸化物108の側端部よりも外側に位置する領域を有する。
このような構成を有することで、トランジスタ150に含まれる金属酸化物108を、第1のゲート電極として機能する導電膜106及び第2のゲート電極として機能する導電膜112の電界によって電気的に取り囲むことができる。トランジスタ150のように、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域が形成される金属酸化物108を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded channel(S−channel)構造と呼ぶことができる。
トランジスタ150は、S−channel構造を有するため、導電膜106または導電膜112によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に金属酸化物108に印加することができるため、トランジスタ150の電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ150を微細化することが可能となる。また、トランジスタ150は、酸化物半導体膜108が、導電膜106、及び導電膜112によって取り囲まれた構造を有するため、トランジスタ150の機械的強度を高めることができる。
なお、トランジスタ150のチャネル幅方向において、酸化物半導体膜108の開口部143が形成されていない側に、開口部143と異なる開口部を形成してもよい。
また、トランジスタ150に示すように、トランジスタが、半導体膜を間に挟んで存在する一対のゲート電極を有している場合、一方のゲート電極には信号Aが、他方のゲート電極には固定電位Vbが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には信号Aが、他方のゲート電極には信号Bが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には固定電位Vaが、他方のゲート電極には固定電位Vbが与えられてもよい。
信号Aは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Aは、電位V1、または電位V2(V1>V2とする)の2種類の電位をとるデジタル信号であってもよい。例えば、電位V1を高電源電位とし、電位V2を低電源電位とすることができる。信号Aは、アナログ信号であってもよい。
固定電位Vbは、例えば、トランジスタのしきい値電圧VthAを制御するための電位である。固定電位Vbは、電位V1、または電位V2であってもよい。この場合、固定電位Vbを生成するための電位発生回路を、別途設ける必要がなく好ましい。固定電位Vbは、電位V1、または電位V2と異なる電位であってもよい。固定電位Vbを低くすることで、しきい値電圧VthAを高くできる場合がある。その結果、ゲートーソース間電圧Vgsが0Vのときのドレイン電流を低減し、トランジスタを有する回路のリーク電流を低減できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電源電位よりも低くしてもよい。一方で、固定電位Vbを高くすることで、しきい値電圧VthAを低くできる場合がある。その結果、ゲート−ソース間電圧Vgsが高電源電位のときのドレイン電流を向上させ、トランジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電源電位よりも高くしてもよい。
信号Bは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Bは、電位V3、または電位V4(V3>V4とする)の2種類の電位をとるデジタル信号であってもよい。例えば、電位V3を高電源電位とし、電位V4を低電源電位とすることができる。信号Bは、アナログ信号であってもよい。
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと同じデジタル値を持つ信号であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流を向上し、トランジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。このとき、信号Aにおける電位V1及び電位V2は、信号Bにおける電位V3及び電位V4と、異なっていても良い。例えば、信号Bが入力されるゲートに対応するゲート絶縁膜が、信号Aが入力されるゲートに対応するゲート絶縁膜よりも厚い場合、信号Bの電位振幅(V3−V4)を、信号Aの電位振幅(V1−V2)より大きくしても良い。そうすることで、トランジスタの導通状態または非導通状態に対して、信号Aが与える影響と、信号Bが与える影響と、を同程度とすることができる場合がある。
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと異なるデジタル値を持つ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号Bによって別々に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。例えば、トランジスタがnチャネル型である場合、信号Aが電位V1であり、かつ、信号Bが電位V3である場合のみ導通状態となる場合や、信号Aが電位V2であり、かつ、信号Bが電位V4である場合のみ非導通状態となる場合には、一つのトランジスタでNAND回路やNOR回路等の機能を実現できる場合がある。また、信号Bは、しきい値電圧VthAを制御するための信号であってもよい。例えば、信号Bは、トランジスタを有する回路が動作している期間と、当該回路が動作していない期間と、で電位が異なる信号であっても良い。信号Bは、回路の動作モードに合わせて電位が異なる信号であってもよい。この場合、信号Bは信号Aほど頻繁には電位が切り替わらない場合がある。
信号Aと信号Bが共にアナログ信号である場合、信号Bは、信号Aと同じ電位のアナログ信号、信号Aの電位を定数倍したアナログ信号、または、信号Aの電位を定数だけ加算もしくは減算したアナログ信号等であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流が向上し、トランジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。信号Bは、信号Aと異なるアナログ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号Bによって別々に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。
信号Aがデジタル信号であり、信号Bがアナログ信号であってもよい。または信号Aがアナログ信号であり、信号Bがデジタル信号であってもよい。
トランジスタの両方のゲート電極に固定電位を与える場合、トランジスタを、抵抗素子と同等の素子として機能させることができる場合がある。例えば、トランジスタがnチャネル型である場合、固定電位Vaまたは固定電位Vbを高く(低く)することで、トランジスタの実効抵抗を低く(高く)することができる場合がある。固定電位Va及び固定電位Vbを共に高く(低く)することで、一つのゲートしか有さないトランジスタによって得られる実効抵抗よりも低い(高い)実効抵抗が得られる場合がある。
なお、トランジスタ150のその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であり、同様の効果を奏する。
また、トランジスタ150上にさらに、絶縁膜を形成してもよい。図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ150は、導電膜120a、120b、及び絶縁膜118上に絶縁膜122を有する。
絶縁膜122は、トランジスタ等に起因する凹凸等を平坦化させる機能を有する。絶縁膜122としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成される。該無機材料としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜等が挙げられる。該有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
<2−4.トランジスタの構成例3>
次に、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ150と異なる構成について、図7を用いて説明する。
図7(A)(B)は、トランジスタ160の断面図である。なお、トランジスタ160の上面図としては、図6(A)に示すトランジスタ150と同様であるため、ここでの説明は省略する。
図7(A)(B)に示すトランジスタ160は、導電膜112の積層構造、導電膜112の形状、及び絶縁膜110の形状がトランジスタ150と異なる。
トランジスタ160の導電膜112は、絶縁膜110上の導電膜112_1と、導電膜112_1上の導電膜112_2と、を有する。例えば、導電膜112_1として、酸化物導電膜を用いることができる。上記酸化物導電膜としては、スパッタリング法を用い、酸素ガスを含む雰囲気にて形成すればよい。また、上記酸化物導電膜としては、例えば、インジウムと錫とを有する酸化物、タングステンとインジウムとを有する酸化物、タングステンとインジウムと亜鉛とを有する酸化物、チタンとインジウムとを有する酸化物、チタンとインジウムと錫とを有する酸化物、インジウムと亜鉛とを有する酸化物、シリコンとインジウムと錫とを有する酸化物、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物等が挙げられる。
また、図7(B)に示すように、開口部143において、導電膜112_2と、導電膜106とが接続される。開口部143を形成する際に、導電膜112_1となる導電膜を形成した後、開口部143を形成することで、図7(B)に示す形状とすることができる。導電膜112_1に酸化物導電膜を適用した場合、導電膜112_2と、導電膜106とが接続される構成とすることで、導電膜112と導電膜106との接続抵抗を低くすることができる。
また、トランジスタ160の導電膜112及び絶縁膜110は、テーパー形状である。より具体的には、導電膜112の下端部は、導電膜112の上端部よりも外側に形成される。また、絶縁膜110の下端部は、絶縁膜110の上端部よりも外側に形成される。また、導電膜112の下端部は、絶縁膜110の上端部と概略同じ位置に形成される。
トランジスタ160の導電膜112及び絶縁膜110をテーパー形状とすることで、トランジスタ160の導電膜112及び絶縁膜110が矩形の場合と比較し、絶縁膜116の被覆性を高めることができるため好適である。
なお、トランジスタ160のその他の構成は、先に示すトランジスタ150と同様であり、同様の効果を奏する。
<2−5.半導体装置の作製方法>
次に、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ150の作製方法の一例について、図8乃至図10を用いて説明する。なお、図8乃至図10は、トランジスタ150の作製方法を説明するチャネル長方向、及びチャネル幅方向の断面図である。
まず、基板102上に導電膜106を形成する。次に、基板102、及び導電膜106上に絶縁膜104を形成し、絶縁膜104上に金属酸化物膜を形成する。その後、金属酸化物膜を島状に加工することで、金属酸化物108aを形成する(図8(A)参照)。
導電膜106としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態においては、導電膜106として、スパッタリング装置を用い、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
なお、導電膜106となる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では、ウエットエッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタングステン膜をエッチングすることで導電膜を加工し、導電膜106を形成する。
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。本実施の形態においては、絶縁膜104として、PECVD装置を用い、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とを形成する。
また、金属酸化物108aを形成する際に、酸素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。なお、金属酸化物108aを形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)としては、0%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下である。また、成膜ガス全体に占める窒素ガスの割合が、成膜ガス全体に占める窒素ガスが10%以上100%以下とする。
なお、スパッタリングガスとして窒素を含むと、金属酸化物の成膜と同時に、金属酸化物中に窒素を添加することができる。
また、金属酸化物108aの形成条件としては、基板温度を室温以上180℃以下、好ましくは基板温度を室温以上140℃以下とすればよい。金属酸化物108aの形成時の基板温度を、例えば、室温以上140℃未満とすると、生産性が高くなり好ましい。
また、金属酸化物108aの厚さとしては、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上60nm以下とすればよい。
なお、基板102として、大型のガラス基板(例えば、第6世代乃至第10世代)を用いる場合、金属酸化物108aを成膜する際の基板温度を200℃以上300℃以下とした場合、基板102が変形する(歪むまたは反る)場合がある。よって、大型のガラス基板を用いる場合においては、金属酸化物108aの成膜する際の基板温度を室温以上200℃未満とすることで、ガラス基板の変形を抑制することができる。
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガス、窒素ガス、およびアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで金属酸化物に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
また、スパッタリング法で金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチャンバーは、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10−7Paから1×10−4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、チャンバー内のH2Oに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10−4Pa以下、好ましく5×10−5Pa以下とすることが好ましい。
本実施の形態においては、金属酸化物108aの形成条件を以下とする。
金属酸化物108aの形成条件を、金属酸化物ターゲット、または複合ターゲットを用いて、スパッタリング法により形成する。また、金属酸化物108aの形成時の基板温度と、酸素流量比、および窒素流量比は、適宜、設定することができる。また、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、スパッタリング装置内に設置された金属酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給することで、酸化物を成膜する。
なお、成膜した金属酸化物を、金属酸化物108aに加工するには、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。
また、金属酸化物108aを形成した後、加熱処理を行なってもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板の歪み点未満、または250℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下である。
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素を含む不活性雰囲気で行うことができる。または、不活性雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で加熱してもよい。処理時間は3分以上24時間以下とすればよい。
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱処理時間を短縮することができる。
次に、絶縁膜104及び金属酸化物108a上に絶縁膜110_0を形成する。(図8(B)参照)。
絶縁膜110_0としては、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を、プラズマ化学気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いて形成することができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
また、絶縁膜110_0として、堆積性気体の流量に対する酸化性気体の流量を20倍より大きく100倍未満、または40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa未満、または50Pa以下とするPECVD装置を用いることで、欠陥量の少ない酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
また、絶縁膜110_0として、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、絶縁膜110_0として、緻密である酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
また、絶縁膜110_0を、マイクロ波を用いたPECVD法を用いて形成してもよい。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は、電子温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速に用いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であり、密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜面及び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜110_0を形成することができる。
また、絶縁膜110_0を、有機シランガスを用いたCVD法を用いて形成することができる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)などのシリコン含有化合物を用いることができる。有機シランガスを用いたCVD法を用いることで、被覆性の高い絶縁膜110_0を形成することができる。
本実施の形態では絶縁膜110_0として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
次に、絶縁膜110_0上の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜110_0、及び絶縁膜104の一部をエッチングすることで、導電膜106に達する開口部143を形成する(図8(C)参照)。
開口部143の形成方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、開口部143を形成する。
次に、開口部143を覆うように、導電膜106及び絶縁膜110_0上に導電膜112_0を形成する。(図8(D))。なお、導電膜112_0の形成方法としては、スパッタリング法、及びALD法を用いてもよい。
本実施の形態においては、導電膜112_0として、スパッタリング法を用いて、膜厚が100nmのIn−Ga−Zn酸化物であるIGZO膜(In:Ga:Zn=4:2:4.1(原子数比)を成膜する。
次に、導電膜112_0上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスク140を形成する(図9(A)参照)。
次に、マスク140上から、エッチングを行い、導電膜112_0、及び絶縁膜110_0を加工する。また、導電膜112_0及び絶縁膜110_0の加工後に、マスク140を除去する。導電膜112_0、及び絶縁膜110_0を加工することで、島状の導電膜112、及び島状の絶縁膜110が形成される(図9(B)参照)。
本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、導電膜112_0、及び絶縁膜110_0を加工する。
なお、導電膜112、及び絶縁膜110の加工の際に、導電膜112が重畳しない領域の金属酸化物108aの膜厚が薄くなる場合がある。または、導電膜112、及び絶縁膜110の加工の際に、金属酸化物108aが重畳しない領域の絶縁膜104の膜厚が薄くなる場合がある。また、導電膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工の際に、エッチャントまたはエッチングガス(例えば、塩素など)が金属酸化物108a中に添加される、あるいは導電膜112_0、または絶縁膜110_0の構成元素が金属酸化物108中に添加される場合がある。
次に、絶縁膜104、金属酸化物108、及び導電膜112上に絶縁膜116を形成する。なお、絶縁膜116を形成することで、絶縁膜116と接する金属酸化物108aの一部は、領域108nとなる。ここで、導電膜112と重畳する金属酸化物108aは、金属酸化物108とする。(図9(C)参照)。
絶縁膜116としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態においては、絶縁膜116として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの窒化酸化シリコン膜を形成する。また、当該窒化酸化シリコン膜の形成時において、プラズマ処理と、成膜処理との2つのステップを220℃の温度で行う。当該プラズマ処理としては、成膜前に流量100sccmのアルゴンガスと、流量1000sccmの窒素ガスとを、チャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を40Paとし、RF電源(27.12MHz)に1000Wの電力を供給する。また、成膜処理としては、流量50sccmのシランガスと、流量5000sccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスとを、チャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を100Paとし、RF電源(27.12MHz)に1000Wの電力を供給する。
絶縁膜116として、窒化酸化シリコン膜を用いることで、絶縁膜116に接する領域108nに窒化酸化シリコン膜中の窒素または水素を供給することができる。
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(図10(A)参照)。
絶縁膜118としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用い、厚さ300nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
次に、絶縁膜118の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜118及び絶縁膜116の一部をエッチングすることで、領域108nに達する開口部141a、141bを形成する(図10(B)参照)。
絶縁膜118及び絶縁膜116をエッチングする方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、絶縁膜118、及び絶縁膜116を加工する。
次に、開口部141a、141bを覆うように、領域108n及び絶縁膜118上に導電膜を形成し、当該導電膜を所望の形状に加工することで導電膜120a、120bを形成する(図10(C)参照)。
導電膜120a、120bとしては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態においては、導電膜120a、120bとして、スパッタリング装置を用い、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
なお、導電膜120a、120bとなる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では、ウエットエッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタングステン膜をエッチングすることで導電膜を加工し、導電膜120a、120bを形成する。
続いて、導電膜120a、120b、及び絶縁膜118を覆って絶縁膜122を形成する。
以上の工程により、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ150を作製することができる。
なお、トランジスタ150を構成する膜(絶縁膜、金属酸化物膜、導電膜等)としては、上述の形成方法の他、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、ALD法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法が挙げられる。
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
MOCVD法などの熱CVD法は、上記記載の導電膜、絶縁膜、金属酸化物などの膜を形成することができる。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH、Hf[N(CH3)2]4)やテトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。
また、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH3)3)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。他の材料としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
また、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
また、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
<2−5.トランジスタの構成例4>
図11(A)は、トランジスタ300Aの上面図であり、図11(B)は、図11(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図11(C)は、図11(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、図11(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ300Aの構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図11(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
図11に示すトランジスタ300Aは、基板302上の導電膜304と、基板302及び導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶縁膜307上の金属酸化物308と、金属酸化物308上の導電膜312aと、金属酸化物308上の導電膜312bと、を有する。また、トランジスタ300A上、より詳しくは、導電膜312a、312b及び金属酸化物308上には絶縁膜314、316、及び絶縁膜318が設けられる。
なお、トランジスタ300Aにおいて、絶縁膜306、307は、トランジスタ300Aのゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜314、316、318は、トランジスタ300Aの保護絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ300Aにおいて、導電膜304は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜312aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜312bは、ドレイン電極としての機能を有する。
なお、本明細書等において、絶縁膜306、307を第1の絶縁膜と、絶縁膜314、316を第2の絶縁膜と、絶縁膜318を第3の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。
図11に示すトランジスタ300Aは、チャネルエッチ型のトランジスタ構造である。本発明の一態様の金属酸化物は、チャネルエッチ型のトランジスタに好適に用いることができる。
<2−6.トランジスタの構成例5>
図12(A)は、トランジスタ300Bの上面図であり、図12(B)は、図12(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図12(C)は、図12(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図12に示すトランジスタ300Bは、基板302上の導電膜304と、基板302及び導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶縁膜307上の金属酸化物308と、金属酸化物308上の絶縁膜314と、絶縁膜314上の絶縁膜316と、絶縁膜314及び絶縁膜316に設けられる開口部341aを介して金属酸化物308に電気的に接続される導電膜312aと、絶縁膜314及び絶縁膜316に設けられる開口部341bを介して金属酸化物308に電気的に接続される導電膜312bとを有する。また、トランジスタ300B上、より詳しくは、導電膜312a、312b、及び絶縁膜316上には絶縁膜318が設けられる。
なお、トランジスタ300Bにおいて、絶縁膜306、307は、トランジスタ300Bのゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜314、316は、金属酸化物308の保護絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜318は、トランジスタ300Bの保護絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ300Bにおいて、導電膜304は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜312aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜312bは、ドレイン電極としての機能を有する。
図11に示すトランジスタ300Aにおいては、チャネルエッチ型の構造であったのに対し、図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ300Bは、チャネル保護型の構造である。本発明の一態様の金属酸化物は、チャネル保護型のトランジスタにも好適に用いることができる。
<2−7.トランジスタの構成例6>
図13(A)は、トランジスタ300Cの上面図であり、図13(B)は、図13(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図13(C)は、図13(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図13に示すトランジスタ300Cは、図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ300Bと絶縁膜314、316の形状が相違する。具体的には、トランジスタ300Cの絶縁膜314、316は、金属酸化物308のチャネル形成領域上に島状に設けられる。その他の構成は、トランジスタ300Bと同様である。
<2−8.トランジスタの構成例7>
図14(A)は、トランジスタ300Dの上面図であり、図14(B)は、図14(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図14(C)は、図14(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
図14に示すトランジスタ300Dは、基板302上の導電膜304と、基板302及び導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶縁膜307上の金属酸化物308と、金属酸化物308上の導電膜312aと、金属酸化物308上の導電膜312bと、金属酸化物308、及び導電膜312a、312b上の絶縁膜314と、絶縁膜314上の絶縁膜316と、絶縁膜316上の絶縁膜318と、絶縁膜318上の導電膜320a、320bと、を有する。
なお、トランジスタ300Dにおいて、絶縁膜306、307は、トランジスタ300Dの第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜314、316、318は、トランジスタ300Dの第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ300Dにおいて、導電膜304は、第1のゲート電極としての機能を有し、導電膜320aは、第2のゲート電極としての機能を有し、導電膜320bは、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。また、導電膜312aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜312bは、ドレイン電極としての機能を有する。
また、図14(C)に示すように導電膜320aは、絶縁膜306、307、314、316、318に設けられる開口部342b、342cにおいて、導電膜304に接続される。よって、導電膜320aと導電膜304とは、同じ電位が与えられる。
なお、トランジスタ300Dにおいては、開口部342b、342cを設け、導電膜320aと導電膜304を接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば、開口部342bまたは開口部342cのいずれか一方の開口部のみを形成し、導電膜320aと導電膜304を接続する構成、または開口部342b及び開口部342cを設けずに、導電膜320aと導電膜304を接続しない構成としてもよい。なお、導電膜320aと導電膜304とを接続しない構成の場合、導電膜320aと導電膜304には、それぞれ異なる電位を与えることができる。
また、導電膜320bは、絶縁膜314、316、318に設けられる開口部342aを介して、導電膜312bと接続される。
なお、トランジスタ300Dは、先に説明のS−channel構造を有する。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いた表示装置の表示部等に用いることのできる表示パネルの一例について、図16及び図17を用いて説明する。以下で例示する表示パネルは、反射型の液晶素子と、発光素子との双方を有し、透過モードと反射モードの両方の表示を行うことのできる、表示パネルである。
<表示パネルの構成例>
図16は、本発明の一態様の表示パネル600の斜視概略図である。表示パネル600は、基板651と基板661とが貼り合わされた構成を有する。図16では、基板661を破線で明示している。
表示パネル600は、表示部662、回路659、配線666等を有する。基板651には、例えば回路659、配線666、及び画素電極として機能する導電膜663等が設けられる。また図16では基板651上にIC673とFPC672が実装されている例を示している。そのため、図16に示す構成は、表示パネル600とFPC672及びIC673を有する表示モジュールと言うこともできる。
回路659は、例えば走査線駆動回路として機能する回路を用いることができる。
配線666は、表示部や回路659に信号や電力を供給する機能を有する。当該信号や電力は、FPC672を介して外部、またはIC673から配線666に入力される。
また、図16では、COG(Chip On Glass)方式等により、基板651にIC673が設けられている例を示している。IC673は、例えば走査線駆動回路、または信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用できる。なお表示パネル600が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回路を備える場合や、走査線駆動回路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、FPC672を介して表示パネル600を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC673を設けない構成としてもよい。また、IC673を、COF(Chip On Film)方式等により、FPC672に実装してもよい。
図16には、表示部662の一部の拡大図を示している。表示部662には、複数の表示素子が有する導電膜663がマトリクス状に配置されている。導電膜663は、可視光を反射する機能を有し、後述する液晶素子640の反射電極として機能する。
また、図16に示すように、導電膜663は開口を有する。さらに導電膜663よりも基板651側に、発光素子660を有する。発光素子660からの光は、導電膜663の開口を介して基板661側に射出される。
<断面構成例>
図17に、図16で例示した表示パネルの、FPC672を含む領域の一部、回路659を含む領域の一部、及び表示部662を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
表示パネルは、基板651と基板661の間に、絶縁膜620を有する。また基板651と絶縁膜620の間に、発光素子660、トランジスタ601、トランジスタ605、トランジスタ606、着色層634等を有する。また絶縁膜620と基板661の間に、液晶素子640、着色層631等を有する。また基板661と絶縁膜620は接着層641を介して接着され、基板651と絶縁膜620は接着層642を介して接着されている。
トランジスタ606は、液晶素子640と電気的に接続し、トランジスタ605は、発光素子660と電気的に接続する。トランジスタ605とトランジスタ606は、いずれも絶縁膜620の基板651側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用いて作製することができる。
基板661には、着色層631、遮光膜632、絶縁膜621、及び液晶素子640の共通電極として機能する導電膜613、配向膜633b、絶縁膜617等が設けられている。絶縁膜617は、液晶素子640のセルギャップを保持するためのスペーサとして機能する。
絶縁膜620の基板651側には、絶縁膜681、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜684、絶縁膜685等の絶縁層が設けられている。絶縁膜681は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁膜682、絶縁膜683、及び絶縁膜684は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁膜684を覆って絶縁膜685が設けられている。絶縁膜684及び絶縁膜685は、平坦化層としての機能を有する。なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜684の3層を有する場合について示しているが、これに限られず4層以上であってもよいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁膜684は、不要であれば設けなくてもよい。
また、トランジスタ601、トランジスタ605、及びトランジスタ606は、一部がゲートとして機能する導電膜654、一部がソース又はドレインとして機能する導電膜652、半導体膜653を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。
液晶素子640は反射型の液晶素子である。液晶素子640は、導電膜635、液晶層612、導電膜613が積層された積層構造を有する。また導電膜635の基板651側に接して、可視光を反射する導電膜663が設けられている。導電膜663は開口655を有する。また導電膜635及び導電膜613は可視光を透過する材料を含む。また液晶層612と導電膜635の間に配向膜633aが設けられ、液晶層612と導電膜613の間に配向膜633bが設けられている。また、基板661の外側の面には、偏光板656を有する。
液晶素子640において、導電膜663は可視光を反射する機能を有し、導電膜613は可視光を透過する機能を有する。基板661側から入射した光は、偏光板656により偏光され、導電膜613、液晶層612を透過し、導電膜663で反射する。そして液晶層612及び導電膜613を再度透過して、偏光板656に達する。このとき、導電膜663と導電膜613の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板656を介して射出される光の強度を制御することができる。また光は着色層631によって特定の波長領域以外の光が吸収されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
発光素子660は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子660は、絶縁膜620側から導電膜643、EL層644、及び導電膜645bの順に積層された積層構造を有する。また導電膜645bを覆って導電膜645aが設けられている。導電膜645bは可視光を反射する材料を含み、導電膜643及び導電膜645aは可視光を透過する材料を含む。発光素子660が発する光は、着色層634、絶縁膜620、開口655、導電膜613等を介して、基板661側に射出される。
ここで、図17に示すように、開口655には可視光を透過する導電膜635が設けられていることが好ましい。これにより、開口655と重なる領域においてもそれ以外の領域と同様に液晶層612が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図しない光が漏れてしまうことを抑制できる。
ここで、基板661の外側の面に配置する偏光板656として直線偏光板を用いてもよいが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制することができる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子640に用いる液晶素子のセルギャップ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすればよい。
また導電膜643の端部を覆う絶縁膜646上には、絶縁膜647が設けられている。絶縁膜647は、絶縁膜620と基板651が必要以上に接近することを抑制するスペーサとしての機能を有する。またEL層644や導電膜645aを遮蔽マスク(メタルマスク)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制するためのスペーサとしての機能を有していてもよい。なお、絶縁膜647は不要であれば設けなくてもよい。
トランジスタ605のソース又はドレインの一方は、導電膜648を介して発光素子660の導電膜643と電気的に接続されている。
トランジスタ606のソース又はドレインの一方は、接続部607を介して導電膜663と電気的に接続されている。導電膜663と導電膜635は接して設けられ、これらは電気的に接続されている。ここで、接続部607は、絶縁膜620に設けられた開口を介して、絶縁膜620の両面に設けられる導電層同士を接続する部分である。
基板651と基板661が重ならない領域には、接続部604が設けられている。接続部604は、接続層649を介してFPC672と電気的に接続されている。接続部604は接続部607と同様の構成を有している。接続部604の上面は、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部604とFPC672とを接続層649を介して電気的に接続することができる。
接着層641が設けられる一部の領域には、接続部687が設けられている。接続部687において、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層と、導電膜613の一部が、接続体686により電気的に接続されている。したがって、基板661側に形成された導電膜613に、基板651側に接続されたFPC672から入力される信号または電位を、接続部687を介して供給することができる。
接続体686としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子としては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることができる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。またニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を用いることが好ましい。また接続体686として、弾性変形、または塑性変形する材料を用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体686は、図17に示すように上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体686と、これと電気的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良などの不具合の発生を抑制することができる。
接続体686は、接着層641に覆われるように配置することが好ましい。例えば、硬化前の接着層641に接続体686を分散させておけばよい。
図17では、回路659の例としてトランジスタ601が設けられている例を示している。
図17では、トランジスタ601及びトランジスタ605の例として、チャネルが形成される半導体膜653を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは導電膜654により、他方のゲートは絶縁膜682を介して半導体膜653と重なる導電膜623により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用することで、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
なお、回路659が有するトランジスタと、表示部662が有するトランジスタは、同じ構造であってもよい。また回路659が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、表示部662が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。
各トランジスタを覆う絶縁膜682、絶縁膜683のうち少なくとも一方は、水などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁膜682または絶縁膜683はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能となり、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
基板661側において、着色層631、遮光膜632を覆って絶縁膜621が設けられている。絶縁膜621は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁膜621により、導電膜613の表面を概略平坦にできるため、液晶層612の配向状態を均一にできる。
表示パネル600を作製する方法の一例について説明する。例えば剥離層を有する支持基板上に、導電膜635、導電膜663、絶縁膜620を順に形成し、その後、トランジスタ605、トランジスタ606、発光素子660等を形成した後、接着層642を用いて基板651と支持基板を貼り合せる。その後、剥離層と絶縁膜620、及び剥離層と導電膜635のそれぞれの界面で剥離することにより、支持基板及び剥離層を除去する。またこれとは別に、着色層631、遮光膜632、導電膜613等をあらかじめ形成した基板661を準備する。そして基板651または基板661に液晶を滴下し、接着層641により基板651と基板661を貼り合せることで、表示パネル600を作製することができる。
剥離層としては、絶縁膜620及び導電膜635との界面で剥離が生じる材料を適宜選択することができる。特に、剥離層としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁膜620として、窒化シリコンや酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を複数積層した層を用いることが好ましい。剥離層に高融点金属材料を用いると、これよりも後に形成する層の形成温度を高めることが可能で、不純物の濃度が低減され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
導電膜635としては、金属酸化物、または金属窒化物等の酸化物または窒化物を用いることが好ましい。
<各構成要素について>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。なお、先の実施の形態に示す機能と同様の機能を有する構成についての説明は省略する。
〔接着層〕
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジルコニウム等を用いることができる。
〔接続層〕
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
〔着色層〕
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。
〔遮光層〕
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
以上が各構成要素についての説明である。
<作製方法例>
ここでは、可撓性を有する基板を用いた表示パネルの作製方法の例について説明する。
ここでは、表示素子、回路、配線、電極、着色層や遮光層などの光学部材、及び絶縁層等が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は表示素子を含み、表示素子の他に表示素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなどの素子を備えていてもよい。
また、ここでは、表示素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を支持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さが10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には以下に挙げる2つの方法がある。一つは、基板上に直接、素子層を形成する方法である。もう一つは、基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基材を剥離し、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つの方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄くすることで可撓性を持たせる方法もある。
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には、基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基板を支持基材に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が容易になるため好ましい。
また、素子層を支持基材上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支持基材上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基材と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基材と剥離層の界面、剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。この方法では、支持基材や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する際にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成できるため、好ましい。
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。
素子層と支持基材とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエッチングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられる。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張の違いを利用し、加熱または冷却することにより剥離を行ってもよい。
また、支持基材と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
例えば、支持基材としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用いることができる。このとき、レーザ光等を用いて有機樹脂の一部を局所的に加熱する、または鋭利な部材により物理的に有機樹脂の一部を切断、または貫通すること等により剥離の起点を形成し、ガラスと有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。また、上記の有機樹脂としては、感光性の材料を用いると、開口部などの形状を容易に作製しやすいため好適である。また、上記のレーザ光としては、例えば、可視光線から紫外線の波長領域の光であることが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が250nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキシマレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三高調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザともいう)を用いてもよい。
または、支持基材と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱することにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流を流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加することにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては、半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
なお、上述した方法において、有機樹脂からなる絶縁層は、剥離後に基板として用いることができる。
以上が可撓性を有する表示パネルを作製する方法についての説明である。
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。