例示的な実施形態を詳細に示す図面に進む前に、本開示は記載の中で説明され又は図面に示された詳細又は方法に限定されないことが理解されるべきである。また、用語は、単に説明を目的としており、限定とみなされるべきではないことが理解されるべきである。
[概要]
概略的に図面を参照すると、様々な例示的な実施形態による、フィードバック制御システムにおいてサンプリングレートを適応的に調節するためのシステム及び方法が示されている。本明細書に記載のシステム及び方法は、被制御処理又はシステムに対する時定数を自動的に推定し、且つ推定された時定数に基づいてサンプリングレートを自動的に設定する。時定数は、誤差信号(例えば、被制御システムから受信したフィードバック信号と設定値との差)を解析することによって推定される。
時定数を推定することは、システムが設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを決定することを含む。システムが設定値変化を受ける場合、時定数は、誤差曲線の下の面積を決定するために誤差信号を(例えば、数値的に、解析的に)積分することによって推定される。誤差曲線の下の面積は、推定された時定数を決定するために設定値変化の振幅で割られてもよい。システムが負荷変動を受ける場合、時定数は、負荷変動に応答して誤差信号が極値(例えば、極小値又は極大値)に達する時間を決定することによって推定されてもよい。負荷変動が開始する時間値は、推定された時定数を決定するために誤差信号が極値に達する時間値から減算されてもよい。推定された時定数は、手動での観測又は調節無しで、フィードバック制御システムに対するサンプリングレートを自動的及び適応的に設定するために使用されてもよい。
本明細書に記載のシステム及び方法は、既存のフィードバックコントローラ(例えば、比例積分(PI)コントローラ、比例積分微分(PID)コントローラ、パターン認識適応コントローラ(PRAC;pattern recognition adaptive controller)に組み込まれるか又は既存のフィードバックコントロールシステムを補完してもよい。適応的に決定されたサンプリングレートは、被制御処理又はシステムに対する最適制御パラメータ(例えば、比例利得、積分時間等)を決定する際に適応フィードバックコントローラの性能を有利に改善し得る。
[制御システム]
図1を次に参照すると、例示的な実施形態による、閉ループ制御システム100のブロック図が示されている。システム100は、建物管理システム又は建物管理システムの一部(例えば、HVAC制御システム、照明制御システム、電力制御システム、セキュリティシステム等)であってもよい。システム100は、単一の建物、建物のシステム、建物内の1つ以上のゾーンを制御するために使用されるローカル又は分散型制御システムであってもよい。一部の実装では、システム100は、ジョンソンコントロールズ社により販売されているMETASYS(R)ブランド制御システムであってもよい。システム100は、PIコントローラ102、プラント104、減算要素106、及び加算要素108を含むように示されている。
プラント104は、閉ループシステム100により監視及び制御されるシステム又は処理(例えば、制御処理)であってもよい。プラント104は、1つ以上の可変入力装置(例えば、ダンパー、空気処理装置、冷却装置、ボイラ、アクチュエータ、モータ等)及び1つ以上の測定装置(例えば、温度センサ、圧力センサ、電圧センサ、流量センサ、湿度センサ等)を含む動的システム(例えば、建物、建物のシステム、建物内のゾーン等)であってもよい。一部の実装では、プラント104は建物(例えば、部屋、床、領域等)の中のゾーンであってもよく、制御システム100はゾーン内の温度を制御するために使用されてもよい。例えば、制御システム100は、建物ゾーンへの調整空気(例えば、加熱、冷却、加湿等)のフローを増加又は減少させるためのHVAC装置(空気処理装置(AHU)、可変風量(VAV)ボックス))におけるダンパー位置を能動的に調節してもよい。
プラント104は、制御信号uを変動信号dと結合する加算要素108からの入力を受信してもよい。一部の実施形態では、プラント104は、伝達関数
を有する一次プラントとしてモデル化されてもよく、ここでτ
pは支配的時定数であり、Lは時間遅延であり、K
pは処理利得である。他の実施形態では、プラント104は、二次、三次、又は更なる高次プラントとしてモデル化されてもよい。プラント104は、制御信号u及び変動信号dに応答してフィードバック信号yを生成してもよい。フィードバック信号yは、誤差信号eを生成するために減算要素106において設定値rから減算されてもよい(例えば、e=r−y)。
PIコントローラ102は、減算要素106から誤差信号eを受信するように示されている。PIコントローラ102は、誤差信号eに応答して制御信号uを生成してもよい。一部の実施形態では、コントローラ102は、比例積分コントローラである。PIコントローラ102は、伝達関数
を有してもよく、ここでK
cはコントローラ利得であり、T
iは積分時間である。コントローラ利得K
c及び積分時間T
iは、誤差信号eに対するPIコントローラ102の応答を定義する制御パラメータである。即ち、コントローラ利得K
c及び積分時間T
iは、どのようにPIコントローラ102が誤差信号eを制御信号uに変換するかを制御する。一部の実施形態では、K
c及びT
iは唯一の制御パラメータである。他の実施形態では、異なる制御パラメータ(例えば、微分制御パラメータ等)が、制御パラメータK
c及びT
iに加えて又は代えて使用されてもよい。
図1を更に参照すると、ラプラス領域において、誤差信号e(s)は、設定値r(s)に関して
と表されてもよい。誤差信号e(s)は、変動信号d(s)に関して
と表されてもよい。誤差信号に関する両式の共通項は、
と書き直されてもよい。この式は、そのK
pK
c≒1及びそのT
i≒τ
pを推定することによって簡略化され得る。次に、簡略化された閉ループ伝達関数は、
図2を次に参照すると、例示的な実施形態による、閉ループシステム200のブロック図が示されている。システム200は、適応フィードバックコントローラ210、時定数推定器214及びサンプリングレート調節器216を有する処理コントローラ201を含むように示されている。適応フィードバックコントローラ210は、パターン認識適応コントローラ(PRAC)、モデル認識適応コントローラ(MRAC)、又は任意の他のタイプの適応調整又はフィードバックコントローラであってもよい。PRACコントローラは、米国特許第5,355,305号、第5,506,768号及び第6,937,909号、並びに他のリソースにおいてより詳細に記載されている。
適応フィードバックコントローラ210は、比例積分(PI)コントローラ、比例微分(PD)コントローラ、比例積分微分(PID)コントローラ、又はフィードバック信号、誤差信号及び/又は設定値に応答して制御信号を生成する任意の他のタイプのコントローラを含んでもよい。適応フィードバックコントローラ210は、制御信号を生成するために使用される1つ以上のコントローラパラメータ(例えば、比例利得、積分時間等)を適応的に調節する任意のタイプのフィードバックコントローラ(例えば、PRAC、MRAC、PI等)であってもよい。適応フィードバックコントローラ210は、PIコントローラ202及び適応チューナ212を含むように示されている。
PIコントローラ202は、図1を参照して記載されたPIコントローラ102と同じ又は同類であってもよい。例えば、PIコントローラ202は、伝達関数
を有する比例積分コントローラであってもよい。PIコントローラ202は、減算要素206から誤差信号eを受信して、加算要素208に制御信号uを提供してもよい。加算要素208は、制御信号uを変動信号dと結合して、プラント204に結合信号を提供してもよい。要素206、208及びプラント204は、図1を参照して記載された要素106、108及びプラント104と同じ又は同類であってもよい。
適応チューナ212は、誤差信号eを制御信号uに変換する際に、PIコントローラ202により使用される制御パラメータを周期的に調節(例えば、較正、同調、更新等)してもよい。適応チューナ212により決定された制御パラメータは、コントローラ利得Kc及び積分時間Tiを含んでもよい。適応チューナ212は、PIコントローラ202から制御信号uを受信して、(例えば、先述の米国特許に記載されているように)制御信号uに基づいて制御パラメータKc及びTiを適応的に決定してもよい。適応チューナ212は、制御パラメータKc及びTiをPIコントローラ202に提供する。
図2を更に参照すると、システム200は、時定数推定器214を含むように更に示されている。時定数推定器214は、プラント204に対する支配的時定数τpを決定する。次に、推定された時定数τpは、PIコントローラ202に対する適切なサンプリングレートhを適応的に決定するためにサンプリングレート調節器216により使用される。また、時定数τpは、所与の制御信号uへのプラント204の応答を予測するために使用されてもよい。時定数推定器214は、誤差信号eと共に設定値rを受信するように示されている。他の実施形態では、時定数推定器214は、誤差信号eのみを受信してもよく、又は設定値r及びフィードバック信号y(例えば、e=r−y)に基づいて誤差信号eを計算してもよい。時定数推定器214は、誤差信号e、設定値r、及び/又は制御システム200の様々なコンポーネントから受信する他の入力に基づいて支配的時定数τpを決定してもよい。一部の実施形態では、時定数推定器214は、(例えば、フィードフォワード、モデル予測制御、及び/又は開ループ制御システムにおける)制御信号uに基づいて時定数を推定してもよい。一部の実施形態では、制御信号uは、時定数を推定する際に、誤差信号eに代えて又は加えて使用されてもよい。
時定数τpを推定するために使用される処理は、システム200が設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかに依存してもよい。設定値変化は、設定値rの増加又は減少である。設定値変化は、即時的(例えば、第1の設定値から第2の設定値への突然の変化)又は漸進的(例えば、ランプ増加又は減少等)であってもよい。設定値変化は、ユーザ(例えば、サーモスタットの温度設定を調節すること)により開始され、又は別のコントローラ又は処理(例えば、管理コントローラ、外ループカスケードコントローラ等)から受信されてもよい。
システム200が設定値変更を受ける場合、時定数推定器214は、誤差曲線の下の面積Aを決定するために誤差信号eを(例えば、数値的に、解析的に)積分することによって時定数τpを推定してもよい。次に、時定数推定器214は、推定された時定数τpを決定するために、設定値変化の振幅aにより誤差曲線の下の面積Aを割ってもよい
負荷変動は、プラント204に適用される非制御入力である。例えば、建物用の温度制御システムにおいて、負荷変動は、(例えば、特に暑い又は寒い日の間)建物の外壁を介して又は開放ドアを介して伝達される熱を含んでもよい。負荷変動は、測定される又は測定されないものであってもよい。一部の実施形態では、推定器214は、システム200が設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを示す信号(例えば、状態指示、処理出力等)を適応フィードバックコントローラ210から受信する。他の実施形態では、時定数推定器214は、誤差信号e及び/又は設定値rを解析することによって設定値変化又は負荷変動が発生したかどうかを決定する。
システム200が負荷変動を受ける場合、時定数推定器214は、負荷変動に応答して誤差信号eが極値(例えば、極小値又は極大値)に達する時間texを決定することによって時定数τpを推定してもよい。時定数推定器214は、推定された時定数τpを決定するために負荷変動に応答して誤差信号eが極値texに達する時間から負荷変動が開始する時間tdを減算してもよい(例えば、τp=tex−td)。設定値変化及び負荷変動に応答して時定数τpを推定するために使用されるシステム及び方法は、図3及び図4をそれぞれ参照してより詳細に記載される。
一部の実施形態では、時定数推定器214は、識別された負荷変動又は設定値変化に応答して時定数τpを決定する。時定数推定器214は、リアルタイムに(例えば、先述の計算を行うために十分なデータが収集された直後に)時定数τpを有利に決定してもよい。例えば、時定数推定器214は、符号変化(例えば、正から負、負から正、ゼロ交差等)に関して誤差信号eを監視してもよい。負荷変動又は設定値変化が発生すると、誤差信号eは、「ゼロ交差」を経て、極値に達するまで増加又は減少してもよい。PIコントローラ202は、制御入力uを操作することによって誤差信号eの振幅を減少させようとしてもよい。定常状態に達すると、誤差信号eは、誤差信号eがゼロに接近及び/又は交差するときに別の「ゼロ交差」を経てもよい。時定数推定器214は、誤差信号e下の面積を計算するために又はtdとtexとの間の時間差を計算するために時間境界としてゼロ交差を使用してもよい。
他の実施形態では、時定数推定器は、履歴変動データを使用してτpを決定してもよい。一部の実施形態では、時定数推定器214は、時定数τpが推定される被制御処理又はシステムに対してローカルである。他の実施形態では、時定数推定器は、遠隔で(例えば、「クラウド」で、管理レベルで)実装されてもよい。時定数推定器214は、PIコントローラ202、適応チューナ212の一部であるか、又はこのようなコンポーネントとは別に実装されてもよい。
一部の実施形態では、時定数推定器214は、時定数推定処理を進める前に、変動(例えば、負荷変動又は設定値変化)が有意閾値を超えるかどうかを決定する。例えば、時定数推定器214は、変動に応答する誤差信号eの振幅を閾値と比較してもよい。誤差信号eの振幅は、変動が発生した後の最大又は最小振幅であってもよい。一部の実施形態では、閾値は、ノイズ閾値(例えば、上限ノイズ閾値、下限ノイズ閾値、ノイズ帯域等)である。閾値は、事前定義される(例えば、メモリから取得される、ユーザにより指定される)又は被制御システム又は処理から取得される定常状態測定値に基づいて自動的に決定されてもよい。他の実施形態では、閾値は、面積閾値(例えば、誤差曲線の下の面積)、時間閾値、又はこれらの組み合わせである。例えば、時定数推定器214は、変動に応答する誤差曲線の下の面積を閾値面積の値と比較してもよい。積分された面積が閾値を超える場合、時定数推定器214は、変動が有意であると決定してもよい。時定数推定器214は、変動が有意であると決定される場合、時定数推定処理に進んでもよい。一部の実施形態では、時定数推定器214は、変動が有意であると決定されない場合、時定数τpの推定には進まない。他の実施形態では、時定数推定器214は、変動の有意性を決定せず、及び/又は決定された有意性に関わらずτpを推定する。
図2を更に参照すると、システム200は、サンプリングレート調節器216を含むように更に示されている。サンプリングレート調節器216は、時定数推定器214から推定された時定数τpを受信して、推定された時定数τpに基づいてサンプリングレートhを計算してもよい。一部の実施形態では、サンプリングレートhは、被制御システム又は処理(例えば、プラント204)からフィードバック測定値を取得するためにPIコントローラ202により使用されるサンプリング間隔又はサンプリング周波数を定義する。他の実施形態では、サンプリングレートhは、制御信号uがPIコントローラ202により調節されるレートを定義する。更なる実施形態では、サンプリングレートhは、制御信号Kc及びTiが適応チューナ212により更新されるレートを定義する。
一部の実施形態では、サンプリングレート調節器216は、推定された時定数τpの50分の1から推定された時定数τpの間の値にサンプリングレートhを設定してもよい
より詳細な実施形態では、サンプリングレートhは、推定された時定数τ
pの40分の1から推定された時定数τ
pの間の値に設定されてもよい
一部の実施形態では、サンプリングレートhは、推定された時定数τ
pの20分の1から推定された時定数τ
pの3分の1の間の値に設定されてもよい
例示的な実施形態では、サンプリングレートhは、推定された時定数τ
pの10分の1に略等しい値に設定されてもよい
一部の実施形態では、サンプリングレート調節器216は、時定数推定器214、PIコントローラ202、又は適応チューナ212と結合されてもよい。
一部の実施形態では、サンプリングレート調節器216は、計算されたサンプリングレートhを現在又は過去のサンプリングレートh0と比較する。計算されたサンプリングレートhがh0から有意に異なる場合、サンプリングレートは、最近計算された値hに更新されてもよい。一部の実施形態では、新しいサンプリングレートhが現在のサンプリングレートの2倍以上である場合(例えば、h≧2h0)、現在のサンプリングレートh0は、新しいサンプリングレートhに更新される。他の実施形態では、新しいサンプリングレートhが現在のサンプリングレートの半分より小さい場合(例えば、h≦0.5h0)、現在のサンプリングレートh0は、新しいサンプリングレートhに更新される。更なる実施形態では、サンプリングレート調節器216は、現在のサンプリングレートh0と計算されたサンプリングレートhとの間の差分が差分閾値を超える場合
現在のサンプリングレートh
0を更新してもよい。更新されたサンプリングレートhは、適応フィードバックコントローラ210に伝達されてもよい。
適切に設定されたサンプリングレートh(例えば、処理時定数τpの関数であるサンプリングレート)は、適応フィードバックコントローラ210に対して改善された安定性及び制御機能を有利に提供し得る。サンプリングレートhを適応的及び自動的に決定することは、広範な制御システムを適切に構成するために人間の介入(例えば、試行錯誤手法又は適切なサンプリングレートの概算)を不要にしてもよい。
[応答時間グラフ]
図3を次に参照すると、例示的な実施形態による、設定値rの変化に対する誤差信号eの時間応答を例示するグラフ300が示されている。グラフ300は、設定値rにおける振幅aの段階的増加に応答する時間の関数として誤差信号eを示している。一部の実施形態では、プラント204の出力yは、即時的に増加又は減少することができない連続型変数である。誤差信号eは設定値rと出力yとの間の差分と定義されるので(例えば、e=r−y)、誤差信号eは、設定値変化の直前の第1の値(例えば、e=0)から設定値変化の直後の第2の値に突然増加してもよい。第2の値は、設定値変化の振幅aに等しくてもよい。PIコントローラ202は、プラント204に適用される制御信号uを調節することによって誤差信号eの増加に応答してもよい。このような調節は、設定値変化の振幅aから定常状態の値(例えば、e=0)へと誤差信号eを連続的に減少させてもよい。
図3を更に参照すると、時定数推定器214は、設定値rのステップ変化に対する誤差信号eの応答に基づいてプラント204に対する時定数τpを推定してもよい。先述したように、ラプラス領域において、誤差信号e(s)は、設定値r(s)に関して
である。設定値における振幅aのステップ変化は、誤差信号
を生成する。グラフ300の誤差曲線の下の面積は、誤差信号e(s)を積分することによって決定されてもよい
安定システムにおいて、曲線の下の面積Aは、t=∞及びt=0における面積の差分と表され得る。即ち、
である。この式から、時定数τ
pは設定値変化の振幅a及び誤差曲線の下の面積Aにのみ依存することが明らかである。
時定数推定器214は、設定値変化に応答する誤差曲線の下の面積Aを追跡して、数式
によって時定数τ
pを推定してもよい。誤差曲線の下の面積Aは、時間ステップ間の間隔の期間により各時間ステップkにおける誤差信号eの振幅を乗算することによって追跡されてもよい
一部の実施形態では、設定値変化の振幅aは、設定値変化の直後の誤差信号eの振幅に基づいて推定されてもよい。他の実施形態では、設定値変化の振幅aは、設定値rを解析することによって決定されてもよく、又は適応フィードバックコントローラ210からの入力として受信してもよい。
図3を更に参照すると、一部の実施形態では、時定数推定器214は、被制御システム又は処理(例えば、プラント204)に対する時間遅延Lを決定する。時間遅延Lは、入力が被制御システムに適用される時間と入力が効果を出し始める時間との間の間隔を表してもよい。時定数推定器214は、設定値変化への誤差信号eの応答を解析することによって時間遅延Lを決定してもよい。例えば、グラフ300は、設定値変化が発生した直後に誤差信号eが設定値変化の振幅aに即時的に変化することを示す。誤差信号eは、時間遅延Lが過ぎた後でシステムのダイナミクスが効果を出し始めるようになるまで、この値を維持してもよい。時定数推定器214は、誤差信号eの振幅が(例えば、調節された制御入力uに応答して)減少し始める時間から設定値変化が発生する時間を減算することによって時間遅延Lを推定してもよい。一部の実施形態では、時定数τp及び時間遅延Lは、別々に決定されてもよい。他の実施形態では、時定数τp及び時間遅延Lは、単一の変数(例えば、平均滞留時間、支配的時定数等)に結合されてもよい。
図4を次に参照すると、例示的な実施形態による、負荷変動に対する誤差信号eの時間応答を例示するグラフ400が示されている。負荷変動は、非制御及び/又は未測定入力としてプラント204に適用されてもよい。負荷変動は、プラント204から受信した出力y及びその結果として誤差信号eの変化を引き起こしてもよい(例えば、e=r−y)。一部の実施形態では、プラント204の出力yは、即時的に増加又は減少することができない連続型変数である。設定値rが一定に保たれる場合、負荷変動は、(例えば、設定値変化により引き起こされる即時的増加又は減少ではなく)誤差信号eの連続的増加又は変化を引き起こしてもよい。グラフ400は、負荷変動に応答して連続的に減少する誤差信号eを示している。誤差信号eは、初期値(例えば、e=0)から極小値eminに減少するように示されている。他の実施形態では、負荷変動は、初期値(例えば、e=0)から極大値emaxへの誤差信号の増加を引き起こしてもよい。
ラプラス領域において、負荷変動の振幅aのステップ変化に対する誤差信号eの応答は、数式
により表されてもよく、ここでK
pは処理利得であり、Lは被制御システム又は処理(例えば、プラント204)の時間遅延である。負荷変動が発生すると、システムのダイナミクスは、時間遅延Lの後になるまで誤差信号eに影響を与え始めない。従って、時間遅延Lは無視されてもよく、負荷変動における振幅aのステップ変化に対する誤差信号eの応答は数式
時間領域では、誤差信号eは
である。誤差信号の極値(例えば、極大値又は極小値)は、
の場合に時間t
exで見つけられる。負荷変動に応答して誤差信号eの極値は、変動が効果を発揮した後で時定数τ
pに略等しい時間に発生してもよい。時定数推定器214は、負荷変動に応答して誤差信号eが極値t
exに達する時間から、負荷変動に応答して誤差信号eの振幅がt
dを増加させ始める時間を減算することによって時定数τ
pを決定してもよい(例えば、τ
p=t
ex−t
d)。
[性能グラフ]
図5A−5Dを次に参照すると、例示的な実施形態による適応的に更新するサンプリングレートhの期待利益が示されている。図5A−5Dにおいて、シミュレーションされる一次プラントには、3つの異なるタイプのコントローラ、即ち、最適コントローラパラメータ(PIopt)を有する比例積分(PI)コントローラ、固定サンプリングレートh(PRACfixed)を有するパターン認識適応コントローラ(PRAC)、及び(例えば、図2−4を参照して記載されたシステム及び方法を使用する)適応的に調節されたサンプリングレートhを有するPRAC(PRACadaptive)により決定される制御信号uが提供される。
図5Aを詳細に参照すると、グラフ501は、シミュレーションされるプラントが一連の設定値変化及び負荷変動を独立して受けるときの時間の関数として結果として得られる被測定変数yを例示している。設定値rが線510で示され、PIopt、PRACfixed及びPRACadaptiveの性能がそれぞれ線520、530及び540で示されている。図5Aから分かるように、PRACadaptive(線540)は、PRACfixed(線530)と比較すると、設定値rを追跡する(例えば、設定値に等しいように被測定変数yを制御する)ための優れた能力を実証している。PRACadaptiveの性能は、PIopt(線520)の性能さえも超え得る。
図5Bを参照すると、グラフ502は、PRACadaptiveに対する時間の関数としてサンプリングレートhを例示している。サンプリングレートhは、t=0において第1の値で開始するように示されている。約t=250秒で、サンプリングレートhはより低い値に調節される。図5Aを再び参照すると、この略同じ時間(例えば、t≒250秒)に、PRACadaptiveの性能は有意に改善する。特に、PRACadaptiveは、シミュレーションを通じて1度だけサンプリングレートhを調節するように示されている。単一のサンプリングレートの調節は、(例えば、時定数推定器214を参照して記載された)時定数τp推定、及び(例えば、サンプリングレート調節器216による)後続のサンプリングレート調節が、シミュレーションされるプラントの真の時定数τpを正確に捉えることを示唆し得る。
図5C及び5Dを参照すると、PRACfixedに対する及びPRACadaptiveに対する時間の関数として(例えば、適応チューナ212により決定される)コントローラ利得パラメータKc及び積分時間パラメータTiを例示している。図5Cでは、線550はPRACfixedに対するコントローラ利得パラメータKcを示し、線560はPRACadaptiveに対する利得パラメータKcを示す。図5Dでは、線570はPRACfixedに対する積分時間パラメータTiを示し、線580はPRACadaptiveに対する積分時間パラメータTiを示す。約t=250秒で(即ち、サンプリングレートhが調節されるのと同時に)、PRACadaptiveは、コントローラ利得Kcを初期値からより低い値に調節することによって、及び積分時間Tiを初期値からより低い値に調節することによって補償する。特に、PRACadaptiveは、シミュレーションを通じて1度だけコントローラ利得Kc及び積分時間Tiを調節するように示されている。この単一の調節は、サンプリングレートhが適切に設定されると、PRACadaptiveが、後続の訂正を必要とせずに適切なコントローラ利得Kc及び積分時間Tiを正確に決定できることを示唆し得る。
[処理コントローラ]
図6を次に参照すると、例示的な実施形態による、処理コントローラ201のブロック図が示されている。処理コントローラ201は、通信インターフェース610及び処理回路620を含むように示されている。通信インターフェース610は、任意の数のジャック、有線端子、有線ポート、無線アンテナ、又は他の通信アダプタ、ハードウェア、又は情報(例えば、設定値r情報、誤差信号e情報、フィードバック信号y情報等)又は制御信号(例えば、制御信号u等)を伝達するための装置を含んでもよい。通信インターフェース610は、処理コントローラ201と被制御システム又は処理(例えば、プラント204)との間で、処理コントローラ201と管理コントローラとの間で、又は処理コントローラ201とローカルコントローラ(例えば、装置、建物、又はネットワーク固有コントローラ)との間で情報及び/又は制御信号を送信又は受信するように構成されてもよい。通信インターフェース610は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(AN)、及び/又はインターネット等の分散ネットワークを介して情報を送信又は受信するように構成されてもよい。通信インターフェース610は、本明細書に記載の通信を提供又は促進するように構成される通信電子機器(例えば、受信機、送信機、トランシーバ、変調器、復調器、フィルタ、通信プロセッサ、通信論理モジュール、バッファ、復号器、符号器、暗号化器、増幅器等)を含み得る。
処理回路620は、プロセッサ630及びメモリ640を含むように示されている。プロセッサ630は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、一群の処理コンポーネント、又は他の適切な電子処理コンポーネントとして実装され得る。
メモリ640(例えば、メモリ装置、メモリユニット、記憶装置等)は、本開示に記載の様々な処理、レイヤ、及びモジュールを遂行し又は促進するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ以上の装置(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置等)である。メモリ640は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよい。メモリ640は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は本願に記載の様々なアクティビティ及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、メモリ640は、処理回路620を介してプロセッサ630に通信可能に接続され、本明細書に記載の1つ以上の処理を(例えば、処理回路620及び/又はプロセッサ630により)実行するためのコンピュータコードを含む。メモリ640は、時定数推定モジュール642、サンプリングレート調節モジュール644、及び適応フィードバック制御モジュール646を含むように示されている。
時定数推定モジュール642は、図2を参照して記載された時定数推定器214の機能を行うように構成されてもよい。時定数推定モジュール642は、誤差信号e、設定値信号r、及び/又はフィードバック信号yを受信してもよい。時定数推定モジュール642は、誤差信号eを監視して、誤差信号eに基づいて被制御システム又は処理に対する時定数τpを推定するように構成されてもよい。一部の実装では、時定数推定モジュール642は、(例えば、適応フィードバック制御646から信号を受信すること、誤差信号eを解析すること等によって)被制御システムが設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを決定してもよい。
システムが設定値変化を受ける場合、時定数推定モジュール642は、(例えば、誤差信号eにより定義される)誤差曲線の下の面積を決定することによって時定数τpを推定してもよい。誤差曲線の下の面積は、推定された時定数τpを決定するために設定値変化の振幅で割られてもよい。システムが負荷変動を受ける場合、時定数τpは、負荷変動に応答して誤差信号eが極値(例えば、極小値又は極大値)に達する時間を決定することによって推定されてもよい。時定数推定モジュール642は、推定された時定数τpを決定するために誤差信号eが極値に達する時間値から負荷変動が開始する時間値を減算してもよい。誤差信号eは、負荷変動が開始する時間を決定するためにゼロ交差(例えば、正から負又は負から正への符号変化)に関して監視されてもよい。時定数推定モジュール642は、推定された時定数τpをサンプリングレート調節モジュール644に伝達してもよい。
サンプリングレート調節モジュール644は、図2を参照して記載されたサンプリングレート調節器216の機能を行うように構成されてもよい。サンプリングレート調節器644は、時定数推定モジュール642から推定された時定数τpを受信して、推定された時定数τpに基づいてサンプリングレートhを計算してもよい。一部の実施形態では、サンプリングレート調節モジュール644は、推定された時定数τpの10分の1に略等しい値にサンプリングレートhを設定してもよい
一部の実施形態では、サンプリングレート調節モジュール644は、計算されたサンプリングレートhを現在又は過去のサンプリングレートh
0と比較する。計算されたサンプリングレートhがh
0から有意に異なる場合(例えば、hがh
0の半分より小さいか又はh
0の2倍よりも大きい)、サンプリングレート調節モジュールは、サンプリングレートを最近計算された値hに更新してもよい。更新されたサンプリングレートhは、適応フィードバック制御モジュール646に伝達されてもよい。
適応フィードバック制御モジュール646は、図2を参照して記載されたPIコントローラ202及び適応チューナ212の機能を行うように構成されてもよい。適応フィードバック制御モジュール646は、パターン認識適応コントローラ(PRAC)、モデル認識適応コントローラ(MRAC)、又は任意の他のタイプの適応調整又はフィードバックコントローラの機能を含んでもよい。適応フィードバック制御モジュール646は、フィードバック信号yと設定値rとの差分を表す誤差信号eを受信してもよい。適応フィードバック制御モジュール646は、誤差信号eに基づいて被制御処理又はシステムに対する制御信号uを計算してもよい。制御信号uは、通信インターフェース610を介して被制御処理又はシステムに伝達されてもよい。
[適応的サンプリングレート調節]
図7を次に参照すると、例示的な実施形態による、フィードバック制御システムにおいてサンプリングレートを適応的に調節するための処理のフローチャート700が示されている。処理700は、変動イベントに関して誤差信号を監視することを含むように示されている(ステップ702)。誤差信号eは、被制御処理又はシステムから受信したフィードバック信号yと設定値rとの間の差分であってもよい。一部の実施形態では、ステップ702は、誤差信号eにおける変動(例えば、ゼロ誤差定常状態から誤差信号の偏差)が変動イベントと見なされるかどうかを決定することを含む。ステップ702は、誤差信号eの振幅又は誤差信号eで制限される面積を閾値と比較することを含んでもよい。一部の実施形態では、閾値は、ノイズ閾値(例えば、測定ノイズ、処理ノイズ、合成ノイズ等)であってもよい。振幅又は面積が閾値を超える場合、変動は、変動イベントと分類されてもよい。一部の実施形態では、処理700の残りのステップ(例えば、ステップ704−710)は、検出された変動が変動イベントと見なされる場合にのみ行われる。他の実施形態では、ステップ704−710は、検出された全ての変動に対して行われる。
ステップ702は、変動イベントを設定値変化及び負荷変動の少なくとも1つとして識別することを含んでもよい。一部の実施形態では、変動イベントは、適応フィードバックコントローラから受信した状態指示又は信号を介して識別されてもよい。例えば、PRACは、制御システムが設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを示す信号を出力してもよい。他の実施形態では、変動イベントは、誤差信号eを解析することによって識別されてもよい。例えば、設定値変化は誤差信号eの即時変化をもたらし得るが、負荷変動は誤差信号eの振幅の連続的増加をもたらしてもよい。
図7を更に参照すると、処理700は、制御処理に対する時定数を推定するために変動イベントに応答して誤差信号を評価することを更に含むように示されている。ステップ702において変動イベントが設定値変化として識別される場合、誤差信号eを評価することは、設定値変化に応答して誤差信号eによって制限される面積Aを追跡することを含んでもよい。誤差信号によって制限される面積Aは、誤差曲線(例えば、時間の関数としての誤差信号のグラフ表示)と時間軸(例えば、時間軸に沿って延びる「ゼロ誤差」線)との間の面積であってもよい。誤差信号によって制限される面積Aは、(例えば、誤差曲線が正の誤差値を含む場合)時間軸の上の面積であり、又は(例えば、誤差曲線が負の誤差値を含む場合)時間軸の下の面積であってもよい。誤差信号によって制限される面積Aは、解析的に(例えば、誤差信号を数式として表すこと、数式を積分すること、
等によって)、又は数値的に(例えば、時間ステップの持続時間で誤差信号の振幅を乗算すること、結果の積を足すこと、
一部の実施形態では、誤差信号eによって制限される面積Aは、追跡間隔の間、追跡されてもよい。追跡間隔は、設定値変化の時間で開始して、誤差信号eが時間軸を横切る時間(例えば、「ゼロ交差」)で終了してもよい。他の実施形態では、追跡間隔は、誤差信号|e|の振幅が振幅閾値を横切る時間で終了してもよい。振幅閾値は、制御システムが変動イベントに適切に応答した決定され得る非ゼロ誤差値であってもよい。一部の実施形態では、振幅閾値は、被制御システム又は処理に対するノイズ閾値(例えば、測定ノイズ、処理ノイズ等)であってもよい。
ステップ702において変動イベントが設定値変化と識別される場合、ステップ704は、制御処理の推定された時定数を決定するために、設定値変化の振幅aで、誤差信号によって制限される面積Aを割ることを更に含んでもよい
一部の実施形態では、設定値変化の振幅は、設定値信号を解析すること(例えば、設定値変化の後の設定値から設定値変化の前の設定値を減算すること)によって取得され得る。他の実施形態では、設定値変化の振幅aは、誤差信号eを解析すること(例えば、誤差信号の振幅において即時増加の振幅を決定すること)によって取得され得る。更なる実施形態では、設定値変化の振幅aは、別の処理又はシステムから受信され得る。
ステップ704を更に参照すると、ステップ702において変動イベントが負荷変動と識別された場合、変動イベントに応答して誤差信号を評価することは、負荷変動に応答して誤差信号|e|の振幅を追跡すること、及び負荷変動に応答して誤差信号|e|の振幅が極大値に達する時間を決定することを含んでもよい。誤差信号|e|maxの最大振幅は、負荷変動に応答する極値(極大値emax又は極小値emin)であってもよい。設定値変化とは異なり、負荷変動は、変動の発生後、時間texで極大値|e|maxに達するまで連続的に(例えば、非即時的に)誤差信号|e|の振幅を増加させてもよい。ステップ702において変動イベントが負荷変動と識別される場合、ステップ704は、制御処理の時定数を決定するために、誤差信号の振幅が極大値texに達する時間から誤差信号の振幅が負荷変動に応答して増加し始める時間時間tdを減算することを含んでもよい(例えば、τp=tex−td)。
図7を更に参照すると、処理700は、推定された時定数に基づいてフィードバック制御システムを使用するためにサンプリングレートを決定することを更に含むように示されている(ステップ706)。サンプリングレートhは、サンプリング期間(例えば、サンプル間の間隔)又はサンプリング周波数(例えば、サンプルが得られるレート)であってもよい。一部の実施形態では、サンプリングレートhは、非制御処理に適用される制御信号uを決定するのに使用されるフィードバック信号yから測定値のサブセットを選択するために使用されてもよい。他の実施形態では、サンプリングレートhは、制御信号uが更新される間隔を指定してもよい。一部の実施形態では、ステップ706は、推定された時定数τpの40分の1から推定された時定数τpの間でサンプリングレートhを選択することを含んでもよい
より詳細な実施形態では、ステップ706は、推定された時定数τ
pの約10分の1のサンプリングレートhを選択することを含んでもよい
図7を更に参照すると、一部の実施形態では、処理700は、決定されたサンプリングレートhをフィードバック制御システムにより使用される過去のサンプリングレートh
0と比較すること(ステップ708)、及び、1つ以上の更新基準に適合することが比較により明らかになる場合、過去のサンプリングレートh
0を決定されたサンプリングレートhに更新すること(ステップ710)を更に含んでもよい。更新基準は、変化が最小であるか又は有意でない場合に、過去のサンプリングレートh
0が更新されることを防いでもよい。例えば、更新基準は、決定されたサンプリングレートhが過去のサンプリングレートの少なくとも2倍である場合(例えば、h≧2h
0)、過去のサンプリングレートh
0をステップ706で決定されたサンプリングレートhに更新することを含んでもよい。一部の実施形態では、決定されたサンプリングレートhが過去のサンプリングレートの半分より小さい場合(例えば、h≦0.5h
0)、過去のサンプリングレートh
0は、ステップ706で決定されたサンプリングレートhに更新されてもよい。更なる実施形態では、ステップ708及び710は、過去のサンプリングレートh
0とステップ706で決定されたサンプリングレートhとの差分が差分閾値を超える場合
過去のサンプリングレートh
0を更新することを含んでもよい。
一部の実装では、本明細書に記載のシステム及び方法は、閉ループフィードバック制御システムで使用されてもよい。閉ループシステムに実装される場合、変動イベントは、(例えば、負荷変動又は設定値変化に関して)誤差信号を監視することによって検出されてもよい。誤差信号は、制御処理から受信したフィードバック信号に基づいてもよい。他の実装では、記載されたシステム及び方法は、フィードフォワード制御システム、開ループ制御システム、モデル予測制御システム、カスケード制御システム、及び/又は任意の他のタイプの自動化制御システムで使用されてもよい。非フィードバック制御システムに実装される場合、変動イベントは、(例えば、制御処理に提供される)制御信号、(例えば、フィードフォワード推定器から受信する)フィードフォワード信号、(例えば、被制御変数以外の変数を監視するセンサからの)センサ信号、又は制御システムの1つ以上のコンポーネント間で伝達される任意の他のタイプの(例えば、計算された又は測定された)信号を監視することによって検出されてもよい。監視された信号は、時定数を推定し、且つ非フィードバック制御システムで使用されるサンプリングレートを決定するために上記のように(例えば、時定数推定器214により)解析されてもよい。
[故障を検出して動作パラメータを調節するための応答時間の使用]
図8を次に参照すると、例示的な実施形態による、別の制御システムのブロック図が示されている。一部の実施形態では、制御システム800は、フィードバック制御システムである。他の実施形態では、制御システム800は、フィードフォワード制御システム、開ループ制御システム、モデル予測制御システム、カスケード制御システム、及び/又は任意の他のタイプの自動化制御システムであってもよい。システム800は、処理コントローラ801、無線センサ802、及びプラント804を含むように示されている。処理コントローラ801は、プラント804を監視及び制御するように構成されてもよい。制御システム800に変動が起こると、処理コントローラ801は、プラント804の応答時間を推定するために変動により影響を受ける信号を監視し得る。処理コントローラ801は、適切なサンプリングレートを決定し、故障を検出し、及び/又は処理コントローラ801により使用される動作パラメータを調節するためにプラント804の推定された応答時間を使用し得る。一部の実施形態では、処理コントローラ801は、決定されたサンプリングレートを無線コントローラ802に提供する。無線コントローラ802は、データサンプルを収集して、処理コントローラ801に送信するためにサンプリングレートを使用し得る。
処理コントローラ801は、通信インターフェース810及び処理回路820を含むように示されている。通信インターフェース810は、任意の数のジャック、有線端子、有線ポート、無線アンテナ、又は他の通信アダプタ、ハードウェア、又は情報(例えば、設定値r情報、誤差信号e情報、フィードバック信号y情報等)又は制御信号(例えば、制御信号u等)を伝達するための装置を含んでもよい。通信インターフェース810は、処理コントローラ801と被制御システム又は処理(例えば、プラント804)との間で、処理コントローラ801と管理コントローラとの間で、又は処理コントローラ801とローカルコントローラ(例えば、装置、建物、又はネットワーク固有コントローラ)との間で情報及び/又は制御信号を送信又は受信するように構成されてもよい。通信インターフェース810は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(AN)、及び/又はインターネット等の分散ネットワークを介して情報を送信又は受信するように構成されてもよい。通信インターフェース810は、本明細書に記載の通信を提供又は促進するように構成される通信電子機器(例えば、受信機、送信機、トランシーバ、変調器、復調器、フィルタ、通信プロセッサ、通信論理モジュール、バッファ、復号器、符号器、暗号化器、増幅器等)を含み得る。
処理回路820は、プロセッサ830及びメモリ840を含むように示されている。プロセッサ830は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、一群の処理コンポーネント、又は他の適切な電子処理コンポーネントとして実装され得る。メモリ840(例えば、メモリ装置、メモリユニット、記憶装置等)は、本開示に記載の様々な処理、レイヤ、及びモジュールを遂行し又は促進するためのデータ及び/又はコンピュータコードを記憶するための1つ以上の装置(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置等)である。メモリ840は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよい。メモリ840は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、又は本願に記載の様々なアクティビティ及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含んでもよい。例示的な実施形態によれば、メモリ840は、処理回路820を介してプロセッサ830に通信可能に接続され、本明細書に記載の1つ以上の処理を(例えば、処理回路820及び/又はプロセッサ830により)実行するためのコンピュータコードを含む。
処理コントローラ801は、データ収集器842を含むように示されている。データ収集器842は、通信インターフェース810を介して、データ信号及び/又はデータサンプルを受信し得る。一部の実施形態では、データ収集器842は、変動により影響を受ける信号をサンプリングする。例えば、データ収集器842は、変動により影響を受ける信号を受信するように示されている。変動により影響を受ける信号は、プラント804からのフィードバック信号(例えば、フィードバック信号y)、設定値信号(例えば、設定値信号r)、誤差信号e(例えば、e=r−y)、プラント804に提供される制御信号(例えば、入力信号u)、又は制御システム800における任意の他の信号であり得る。変動により影響を受ける信号は、制御システム800に変動が起こると変化する任意の信号であり得る。変化は、変動の直接的な結果(例えば、フィードバック信号yの変化)、又は変動に反応する処理コントローラ801の間接的な結果であり得る。例えば、変動により影響を受ける信号は、検出された変動を補償するためにプラント804に提供される入力信号uであり得る。
一部の実施形態では、データ収集器842は、サンプリングレート調節器856から受信したサンプリングレートで変動により影響を受ける信号をサンプリングする。サンプリングレートは、プラント804の推定された応答時間に基づいて自動的に調節され得る。データ収集器842により生成されるデータサンプルは、プラント804に対する適切な入力信号uを決定するのに使用するために適応コントローラ850に提供され得る。一部の実施形態では、データ収集器842は、無線センサ802からデータサンプルを受信する。無線センサ802からのデータサンプルは、サンプリングレート調節器856により決定されるサンプリングレートで収集され及び/又は送信され得る。
図8を更に参照すると、処理コントローラ801は、変動検出器844を含むように示されている。変動検出器844は、制御システム800の変動を検出することができる。一部の実施形態では、変動は、変化又は負荷変動である。変動検出器844は、変動により影響を受ける信号を監視することによって設定値変化又は負荷変動を検出することができる。一部の実施形態では、変動検出器844は、適応コントローラ850から受信した状態指示又は信号を使用して変動を検出する。例えば、コントローラ850は、制御システム800が設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを示す信号を出力してもよい。一部の実施形態では、変動は、ユーザ入力(例えば、ユーザ固有設定値変化)を含み、変動検出器844はユーザ入力を監視することによって変動を検出する。
一部の実施形態では、変動検出器844は、フィードバック制御システムにおける誤差信号eを解析することによって変動を検出する。例えば、設定値変化は誤差信号eの即時変化をもたらし得るが、負荷変動は誤差信号eの振幅の連続的増加をもたらしてもよい。非フィードバック制御システムに実装される場合、変動検出器844は、プラント804に提供される制御信号、(例えば、フィードフォワード推定器から受信する)フィードフォワード信号、(例えば、被制御変数以外の変数を監視するセンサからの)センサ信号、又は制御システム800の1つ以上のコンポーネント間で伝達される任意の他のタイプの(例えば、計算された又は測定された)信号を監視することによって変動を検出できる。変動検出器844は、いつ変動が制御システム800において検出されるかを応答時間推定器846に通知し得る。
応答時間推定器846は、図2を参照して記載された時定数推定器214の機能を行うように構成されてもよい。例えば、応答時間推定器846は、プラント804の応答時間を推定するために変動により影響を受ける信号を評価することができる。プラント804の応答時間は、変動に対するプラント804の応答を特徴付けるパラメータである。例えば、プラント804の応答時間は、(先に記載されたように)時定数τp、プラント804の支配的時定数、プラント804の帯域幅、開ループ応答時間、又は変動に対するプラント804の時間応答を特徴付ける任意の他のパラメータであってもよい。一部の実施形態では、応答時間推定器846は、制御システム800において検出された変動に応答して(例えば、変動検出器844からの変動通知を受信することに応答して)プラント804の応答時間を推定する。応答時間推定器846は、時定数推定器214が誤差信号eを評価するのと同じように変動により影響を受ける信号を評価することができる。
一部の実施形態では、応答時間推定器846は、(例えば、適応コントローラ850から信号を受信することによって、変動により影響を受ける信号を解析することによって)制御システム800が設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを決定する。システムが設定値変化を受ける場合、応答時間推定器846は、変動により影響を受ける信号を結合することによって応答時間を推定してもよい。例えば、応答時間推定器846は、変動により影響を受ける信号により定義される曲線の下の面積を決定し得る。応答時間推定器846は、推定された応答時間を決定するために、設定値変化の振幅により曲線の下の面積を割ってもよい。
システムが負荷変動を受ける場合、応答時間推定器846は、負荷変動に応答して変動により影響を受ける信号が極値(例えば、極小値又は極大値)に達する時間を決定することによって応答時間を推定し得る。応答時間推定器846は、推定された応答時間を決定するために信号が極値に達する時間値から負荷変動が開始する時間値を減算してもよい。応答時間推定器846は、負荷変動が開始する時間を決定するために閾値交差(例えば、正から負又は負から正への符号変化)に関して変動により影響を受ける信号を監視し得る。応答時間推定器846は、動作パラメータ計算器848、故障検出器852、サンプリングレート調節器856に推定された応答時間を伝達するか、又は応答時間データベース854に推定された応答時間を記憶してもよい。
サンプリングレート調節器856は、図2を参照して記載されたサンプリングレート調節器216の機能を行うように構成されてもよい。サンプリングレート調節器856は、応答時間推定器846から推定された応答時間を受信して、推定された応答時間に基づいてサンプリングレートhを計算してもよい。一部の実施形態では、サンプリングレート調節器856は、推定された応答時間の10分の1に略等しい値にサンプリングレートhを設定する。一部の実施形態では、サンプリングレート調節器856は、計算されたサンプリングレートhを現在又は過去のサンプリングレートh0と比較する。計算されたサンプリングレートhがh0から有意に異なる場合(例えば、hがh0の半分より小さいか又はh0の2倍よりも大きい)、サンプリングレート調節器856は、サンプリングレートを最近計算された値hに更新してもよい。
一部の実施形態では、更新されたサンプリングレートhは、最小許容サンプリングレートである。最小許容サンプリングレートは、推定された応答時間の関数であってもよく(例えば、推定された応答時間の10分の1)、適切な制御を確保するためにデータサンプルがプラント804から収集され得る最小レートを示してもよい。一部の実施形態では、サンプリングレート調節器856は、更新されたサンプリングレートhをデータ収集器842に提供する。データ収集器842は、データ収集器842が変動により影響を受ける信号のサンプルを収集するレートを調節するために更新されたサンプリングレートhを使用し得る。一部の実施形態では、サンプリングレート調節器856は、更新されたサンプリングレートhを無線センサ802に提供する。無線センサ802は、無線センサ802がデータサンプルを収集し及び/又は処理コントローラ801に送信するレートを調節するために更新されたサンプリングレートhを使用し得る。
図8を更に参照すると、処理コントローラ801は、動作パラメータ計算器848を含むように示されている。動作パラメータ計算器848は、図2を参照して記載された適応チューナ212の機能を行うように構成されてもよい。一部の実施形態では、動作パラメータ計算器848は、適応コントローラ850により使用される1つ以上の動作パラメータの値を計算するためにプラント804の推定された応答時間を使用する。例えば、動作パラメータ計算器848は、推定された応答時間の関数としてコントローラ利得Kc及び積分時間Ti等のコントローラパラメータに関する値を計算し得る。一部の実施形態では、動作パラメータ計算器848は、図5A‐5Dを参照して記載された推定された応答時間に基づいて各動作パラメータの初期値を調節する。推定された応答時間に基づいて動作パラメータ計算器848がコントローラ動作パラメータをどのように計算し得るかの複数の例が、米国特許第5,355,305号、第5,506,768号及び第6,937,909号に詳細に記載されている。こうした特許の各々の全開示は、参照により本明細書に援用される。
適応コントローラ850は、図2を参照して記載されたPIコントローラ202の機能を行うように構成されてもよい。適応コントローラ850は、パターン認識適応コントローラ(PRAC)、モデル認識適応コントローラ(MRAC)、又は任意の他のタイプの適応調整又はフィードバックコントローラの機能を含んでもよい。適応コントローラ850は、フィードバックコントローラ、フィードフォワードコントローラ、モデル予測コントローラ、又はプラント804に対する入力信号を生成する任意の他のタイプのコントローラであってもよい。適応コントローラ850は、データ収集器842及び/又は無線センサ802からデータサンプルを受信してもよい。適応コントローラ850は、プラント804に関する入力信号uを生成するために動作パラメータ計算器848により計算される動作パラメータと組み合わせてデータサンプルを使用してもよい。入力信号uは、通信インターフェース810を介してプラント804に伝達されてもよい。
図8を更に参照すると、処理コントローラ801は、故障検出器852及び応答時間データベース854を含むように示されている。応答時間データベース854は、応答時間推定器846により決定される応答時間の履歴を記憶してもよい。新しい応答時間がプラント804に関して推定される度に、新しい応答時間は、応答時間データベース854に記憶され得る。プラント804の応答時間は、故障が無い場合、相対的に一定のままであることが期待され得る。応答時間の有意な変化は、故障が発生したことを示し得る。例えば、故障した建物設備は、プラント804を変動に対してよりゆっくりと反応させてもよく、これはより長い応答時間をもたらし得る。
故障検出器852は、制御システム800における故障を検出するためにプラント804に関する応答時間の履歴を使用し得る。例えば、故障検出器852は、応答時間推定器846により生成された現在の応答時間を、応答時間データベース854からの過去の応答時間と比較し得る。現在の応答時間が過去の応答時間とは有意に異なる場合、故障検出器852は、故障が発生したことを決定してもよい。一部の実施形態では、故障検出器852は、現在の応答時間と過去の応答時間との差分を計算して、差分を閾値と比較する。差分が閾値を超える場合、故障検出器852は、故障が発生したことを決定してもよい。一部の実施形態では、故障検出器852は、過去の応答時間に対する現在の応答時間の比率を計算する。比率が最小閾値より小さいか又は最大閾値より大きい場合、故障検出器852は、故障が発生したことを決定してもよい。
次に図9を参照すると、例示的な実施形態による、制御システム800の一部がより詳細に示されている。システム800は、処理コントローラ801及び無線センサ802を含むように示されている。処理コントローラ801は、無線センサ802にサンプリングレートを提供し得る。サンプリングレートは、図8を参照して記載されたように、プラント804の推定された応答時間に基づいて処理コントローラ801により自動的に決定され得る。無線センサ802は、被測定変数のサンプルを収集して、処理コントローラ801に送信するために処理コントローラ801からのサンプリングレートを使用し得る。例えば、無線センサ802は、処理コントローラ801により提供されるサンプリングレートで被測定変数のサンプルを収集及び/又は送信し得る。無線センサ802は、処理コントローラ801に被測定変数のサンプルをフィードバック信号(例えば、フィードバック信号y)として提供し得る。
無線センサ802は、センサ908、低電力マイクロコントローラ902、及び無線チップ910を含むように示されている。センサ908は、関心の変数を測定して、被測定データ値を低電力マイクロコントローラ902に提供し得る。センサ908は、温度センサ、湿度センサ、エンタルピーセンサ、圧力センサ、照明センサ、流量センサ、電圧センサ、弁位置センサ、負荷センサ、リソース消費センサ、及び/又は制御システム800における関心の変数を測定可能な任意の他のタイプのセンサであってもよい。一部の実施形態では、センサ908は、無線センサ802内のバッテリにより給電される。センサ908は、一定のサンプリング間隔でデータサンプルを収集してもよい。一部の実施形態では、サンプリング間隔は、処理コントローラ801から受信したサンプリングレートにより定義される。例えば、処理コントローラ801から受信したサンプリングレートが毎分1サンプルである場合、センサ908は、建物の特定のゾーンの温度測定値を毎分収集してもよい。
低電力マイクロコントローラ902は、被測定変数の値を含むメッセージを生成してもよく、処理コントローラ801にメッセージを提供することができる。低電力マイクロコントローラ902は、データを処理することが可能な任意のコントローラコンポーネントであってもよい。例えば、マイクロコントローラ902は、データを受信、処理、及び出力することが可能なプロセッサを含む処理回路を含んでもよい。一部の実施形態では、マイクロコントローラ902は、データを記憶することが可能なメモリを含んでもよい。他の実施形態では、マイクロコントローラ902は、メモリを含まなくてもよい。低電力マイクロコントローラ902は、無線伝送タイマ904及びメッセージ生成器906を含むように示されている。
伝送タイマ904は、センサ802から処理コントローラ801への無線伝送のタイミングを監視及び制御するように構成されてもよい。伝送タイマ904は、処理コントローラ801から受信したサンプリングレートに基づいて無線センサ802に対する伝送間隔及び/又は伝送レートを識別又は決定するように構成されてもよい。例えば、伝送タイマ904は、処理コントローラ801により提供されるサンプリングレートで処理コントローラへのデータサンプルを低電力マイクロコントローラ902に送信させてもよい。一部の実施形態では、伝送タイマ904は、無線センサ802の電力消費を最適化する(例えば、最小化する)伝送間隔を決定する。最適な伝送間隔は、サンプリングレート制約を受けてもよい。サンプリングレート制約は、処理コントローラ801により提供され得る最小許容サンプリングレートを定義してもよい。伝送タイマ904は、サンプリングレート制約を受ける、データサンプルを収集し及び/又は処理コントローラ801に送信する最適レートを決定するために処理コントローラ801からのサンプリングレートを使用し得る。
メッセージ生成器906は、被測定変数のサンプルを含むメッセージを生成するように構成されてもよい。一部の実施形態では、各メッセージは、被測定変数の1つのサンプルを含む。他の実施形態では、各メッセージは、被測定変数の複数のサンプルを含む。例えば、メッセージ生成器906は、処理コントローラ801に送信されるメッセージの数を更に減らすために、被測定変数の複数のサンプルを単一のメッセージにパッケージングし得る。メッセージ生成器906は、伝送タイマ904により決定される伝送間隔でデータサンプルを含むメッセージを処理コントローラ801に提供してもよい。低電力マイクロコントローラ902は、メッセージを処理コントローラ801に無線で送信する無線チップ910にメッセージを提供する。
処理コントローラ801は、無線チップ912、メッセージパーサ914、及び適応コントローラ850を含むように示されている。無線チップ912は、無線センサ802の無線チップ910からメッセージを受信して、メッセージをメッセージパーサ914に提供する。メッセージパーサ914は、メッセージからデータ値を抽出して、データ値を適応コントローラ850に提供する。適応コントローラ850は、制御出力(例えば、被測定変数に影響を与えるように動作するプラント804の設備に対する制御信号)を生成するために制御アルゴリズムへの入力としてデータ値を使用する。一部の実施形態では、処理コントローラ801は、図8を参照して記載された一部又は全ての特徴を含む。
一部の実施形態では、無線チップ910及び912は、無線通信プロトコル(例えば、ZigBee(登録商標)、WiFi、Bluetooth(登録商標)、NFC等)を使用して互いに通信する。一部の実施形態では、有線接続等、他の通信インターフェース及びコンポーネントが含まれてもよい。無線チップ910及び912は、アンテナを介してデータを送信及び受信することが可能なトランシーバを含んでもよい。同じ無線通信プロトコルを使用する一方で、無線チップ910及び912は、異なるチップであってもよく、異なるハードウェアを使用してもよい。無線チップ910及び912は、RF等の任意の周波数範囲を使用して動作してもよい。チップ910及び912は、RF範囲外の周波数を使用してもよく、無線チップではなくてもよい。一部の実施形態では、チップ910及び912は、IR等の他の周波数範囲を使用して動作してもよい。チップ910及び912は、任意の通信インターフェース610を利用してもよく、具体的に列挙したものに限定されない。
一部の実施形態では、無線センサ802及び処理コントローラ802は、“Systems and Methods for Extending the Battery Life of a Wireless Sensor in a Building Control System”と題され、2016年1月6日に提出された米国特許出願第14/989,740号に記載された一部又は全てのコンポーネントを含み、その開示の全体は参照により本明細書に援用される。
[サンプリングレート調節及び故障検出処理]
図10を次に参照すると、例示的な実施形態による、制御システムにおいて無線センサにより使用されるサンプリングレートを自動的に調節するための処理1000のフローチャートが示されている。処理1000は、図8を参照して記載されたように、制御システム800の1つ以上のコンポーネントにより行われ得る。
処理1000は、変動により影響を受ける信号を評価することによってプラント(例えば、プラント804)の応答時間を推定することを含むように示されている(ステップ1002)。一部の実施形態では、ステップ1002は、応答時間推定器846により行われる。プラント804の応答時間は、変動に対するプラント804の応答を特徴付けるパラメータである。例えば、プラント804の応答時間は、(先に記載されたように)時定数τp、プラント804の支配的時定数、プラント804の帯域幅、開ループ応答時間、又は変動に対するプラント804の時間応答を特徴付ける任意の他のパラメータであってもよい。一部の実施形態では、ステップ1002は、制御システム800において検出された変動に応答して(例えば、変動検出器844からの変動通知を受信することに応答して)行われる。
一部の実施形態では、ステップ1002は、(例えば、適応コントローラ850から信号を受信することによって、変動により影響を受ける信号を解析することによって)制御システムが設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを決定することを含む。システムが設定値変化を受ける場合、ステップ1002は、変動により影響を受ける信号を結合することによって応答時間を推定することを含んでもよい。例えば、ステップ1002は、変動により影響を受ける信号により定義される曲線の下の面積を決定することを含み得る。ステップ1002は、推定された応答時間を決定するために、設定値変化の振幅により曲線の下の面積を割ることを含み得る。
システムが負荷変動を受ける場合、ステップ1002は、負荷変動に応答して変動により影響を受ける信号が極値(例えば、極小値又は極大値)に達する時間を決定することによって応答時間を推定することを含み得る。ステップ1002は、推定された応答時間を決定するために信号が極値に達する時間値から負荷変動が開始する時間値を減算することを含み得る。ステップ1002は、負荷変動が開始する時間を決定するために閾値交差(例えば、正から負又は負から正への符号変化)に関して変動により影響を受ける信号を監視することを含み得る。
処理1000は、推定された応答時間に基づいてサンプリングレートを調節することを含むように示されている(ステップ1004)。一部の実施形態では、ステップ1004は、サンプリングレート調節器856により行われる。一部の実施形態では、ステップ1004は、推定された応答時間の10分の1に略等しい値にサンプリングレートhを設定することを含む。一部の実施形態では、ステップ1004は、計算されたサンプリングレートhを現在又は過去のサンプリングレートh0と比較することを含む。計算されたサンプリングレートhがh0から有意に異なる場合(例えば、hがh0の半分より小さいか又はh0の2倍よりも大きい)、ステップ1004は、サンプリングレートを最近計算された値hに更新することを含んでもよい。一部の実施形態では、更新されたサンプリングレートhは、最小許容サンプリングレートである。最小許容サンプリングレートは、推定された応答時間の関数(例えば、推定された応答時間の10分の1)であってもよく、適切な制御を確保するためにデータサンプルがプラント804から収集され得る最小レートを示してもよい。
一部の実施形態では、ステップ1004は、更新されたサンプリングレートhをデータ収集器(例えば、データ収集器842)に提供することを含む。データ収集器は、データ収集器が変動により影響を受ける信号のサンプルを収集するレートを調節するために更新されたサンプリングレートhを使用し得る。一部の実施形態では、ステップ1004は、更新されたサンプリングレートhを無線センサー(例えば、無線センサ802)に提供することを含む。無線センサは、無線センサがデータサンプルを収集し及び/又は処理コントローラ801に送信するレートを調節するために更新されたサンプリングレートhを使用し得る。
処理1000は、調節されたサンプリングレートでプラントから被測定変数のサンプルを収集することを含むように示されている(ステップ1006)。一部の実施形態では、ステップ1006は、無線センサ802により行われる。例えば、無線センサ802は、処理コントローラ801から調節されたサンプリングレートを受信して、被測定変数のサンプルを収集する(例えば、調節されたサンプリングレートで被測定変数のサンプルを収集する)ために調節されたサンプリングレートを使用し得る。一部の実施形態では、無線センサ802は、無線センサ802の電力消費を最適化するために調節されたサンプリングレートを使用する。例えば、無線センサ802は、データサンプルを測定し及び/又は処理コントローラ801に送信することによって消費される電力を最小化するために最適化処理を行ってもよい。ステップ1006は、被測定変数が少なくとも調節されたサンプリングレートの頻度でサンプリングされ及び/又は送信されることを確実にするために最適化処理に対する制約として調節されたサンプリングレートを使用することを含み得る。
処理1000は、入力を生成してプラントに提供するために被測定変数のサンプルを使用することを含むように示されている(ステップ1008)。一部の実施形態では、ステップ1008は、適応コントローラ850により行われる。ステップ1008は、プラント804に対する入力信号uを生成するために被測定変数のサンプルを使用することを含んでもよい。一部の実施形態では、被測定変数のサンプルは、入力信号uを生成するために1つ以上の動作パラメータ(例えば、コントローラ利得Kc、積分時間Ti等)と組み合わせて使用される。例えば、適応コントローラ850は、入力信号uを生成するために伝達関数
一部の実施形態では、ステップ1008は、適応コントローラ850により使用される1つ以上の動作パラメータの値を計算するためにプラント804の推定された応答時間を使用することを含む。例えば、ステップ1008は、推定された応答時間の関数としてコントローラ利得Kc及び積分時間Ti等のコントローラパラメータに関する値を計算することを含み得る。一部の実施形態では、ステップ1008は、図5A‐5Dを参照して記載されたように、推定された応答時間に基づいて各動作パラメータの初期値を調節することを含む。推定された応答時間に基づいてコントローラ動作パラメータがどのように調節又は計算され得るかの複数の例が、米国特許第5,355,305号、第5,506,768号及び第6,937,909号に詳細に記載されている。
処理1000は、変動により影響を受ける信号のサンプルを生成するために調節されたサンプリングレートを使用することを含むように示されている(ステップ1010)。一部の実施形態では、ステップ1010は、データ収集器842により行われる。例えば、データ収集器842は、変動により影響を受ける信号を監視して、調節されたサンプリングレートで変動により影響を受ける信号のサンプルを収集し得る。一部の実施形態では、変動により影響を受ける信号は、プラント804からのフィードバック信号又はフィードバック信号に基づく誤差信号(例えば、フィードバック信号と設定値との差分)である。一部の実施形態では、変動により影響を受ける信号は、被測定変数及び/又は被測定変数の関数である。一部の実施形態では、変動により影響を受ける信号は、プラント804に提供される入力信号及び/又はプラントに提供される入力信号の関数である。
一部の実施形態では、処理1000は、ステップ1010を行った後でステップ1002に戻る。例えば、ステップ1010で生成された変動により影響を受ける信号のサンプルは、プラント804の応答時間を評価するためにステップ1002で評価され得る。処理1000は、推定された応答時間の更新、動作パラメータの調節、及び調節された動作パラメータに基づいて更新された制御信号のプラント804への提供を行うために反復的に繰り返され得る。
図11を次に参照すると、例示的な実施形態による、制御システムにおける故障を検出するための処理1100のフローチャート1100が示されている。処理1100は、図8を参照して記載されたように、制御システム800の1つ以上のコンポーネントにより行われ得る。
処理1100は、制御システムにおける変動を検出することを含むように示されている(ステップ1102)。一部の実施形態では、ステップ1102は、変動検出器844により行われる。ステップ1102は、変動により影響を受ける信号を監視することによって設定値変化又は負荷変動を検出することを含んでもよい。一部の実施形態では、ステップ1102は、適応コントローラ850から受信した状態指示又は信号を使用して変動を検出することを含む。例えば、コントローラ850は、制御システム800が設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを示す信号を出力してもよい。一部の実施形態では、変動は、ユーザ入力(例えば、ユーザ固有設定値変化)を含み、ステップ1102はユーザ入力を監視することによって変動を検出することを含む。
一部の実施形態では、ステップ1102は、フィードバック制御システムにおける誤差信号eを解析することによって変動を検出することを含む。例えば、設定値変化は誤差信号eの即時変化をもたらし得るが、負荷変動は誤差信号eの振幅の連続的増加をもたらしてもよい。非フィードバック制御システムにおいて、ステップ1102は、プラント804に提供される制御信号、(例えば、フィードフォワード推定器から受信する)フィードフォワード信号、(例えば、被制御変数以外の変数を監視するセンサからの)センサ信号、又は制御システム800の1つ以上のコンポーネント間で伝達される任意の他のタイプの(例えば、計算された又は測定された)信号を監視することによって変動を検出することを含み得る。
処理1100は、変動により影響を受ける信号を評価することによってプラントの応答時間を推定することを含むように示されている(ステップ1104)。一部の実施形態では、ステップ1104は、応答時間推定器846により行われる。プラント804の応答時間は、変動に対するプラント804の応答を特徴付けるパラメータである。例えば、プラント804の応答時間は、(先に記載されたように)時定数τp、プラント804の支配的時定数、プラント804の帯域幅、開ループ応答時間、又は変動に対するプラント804の時間応答を特徴付ける任意の他のパラメータであってもよい。一部の実施形態では、ステップ1104は、制御システム800において検出された変動に応答して(例えば、ステップ1102に応答して)行われる。
一部の実施形態では、ステップ1104は、(例えば、適応コントローラ850から信号を受信することによって、変動により影響を受ける信号を解析することによって)制御システムが設定値変化又は負荷変動を受けるかどうかを決定することを含む。システムが設定値変化を受ける場合、ステップ1104は、変動により影響を受ける信号を結合することによって応答時間を推定することを含んでもよい。例えば、ステップ1104は、変動により影響を受ける信号により定義される曲線の下の面積を決定することを含み得る。ステップ1104は、推定された応答時間を決定するために、設定値変化の振幅により曲線の下の面積を割ることを含み得る。
システムが負荷変動を受ける場合、ステップ1104は、負荷変動に応答して変動により影響を受ける信号が極値(例えば、極小値又は極大値)に達する時間を決定することによって応答時間を推定することを含み得る。ステップ1104は、推定された応答時間を決定するために信号が極値に達する時間値から負荷変動が開始する時間値を減算することを含み得る。ステップ1104は、負荷変動が開始する時間を決定するために閾値交差(例えば、正から負又は負から正への符号変化)に関して変動により影響を受ける信号を監視することを含み得る。
処理1100は、推定された応答時間に基づいて制御システムにおける故障を検出することを含むように示されている(ステップ1106)。一部の実施形態では、ステップ1106は、故障検出器852により行われる。プラント804の応答時間は、故障が無い場合、相対的に一定のままであることが期待され得る。応答時間の有意な変化は、故障が発生したことを示し得る。例えば、故障した建物設備は、プラント804を変動に対してよりゆっくりと反応させてもよく、これはより長い応答時間をもたらし得る。
ステップ1106は、制御システム800における故障を検出するために(応答時間データベース854から)プラント804に関する応答時間の履歴を使用することを含んでもよい。例えば、ステップ1106は、ステップ1104で生成された現在の応答時間を、応答時間データベース854からの過去の応答時間と比較することを含んでもよい。現在の応答時間が過去の応答時間とは有意に異なる場合、ステップ1106は、故障が発生したことを決定することを含んでもよい。一部の実施形態では、ステップ1106は、現在の応答時間と過去の応答時間との差分を計算して、差分を閾値と比較することを含む。差分が閾値を超える場合、ステップ1106は、故障が発生したことを決定することを含んでもよい。一部の実施形態では、ステップ1106は、過去の応答時間に対する現在の応答時間の比率を計算することを含む。比率が最小閾値より小さいか又は最大閾値より大きい場合、ステップ1106は、故障が発生したことを決定することを含んでもよい。
[例示的な実施形態の構成]
様々な例示的な実施形態に示されたシステム及び方法の構造及び配置は単なる例示である。本開示には少数の実施形態のみが詳細に記載されているが、多くの修正(例えば、サイズ、寸法、構造、形状及び様々な要素の比率、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、方向の変更)が可能である。例えば、要素の配置は反転され又は他のやり方で変更されてもよく、個々の要素の性質又は数又は位置が変更又は変形されてもよい。従って、このような全ての修正が、本開示の範囲内に含まれることが意図される。任意の処理又は方法のステップの順番又は順序が、代替的な実施形態に従って変更され又は再順序付けされてもよい。他の置換、修正、変更及び省略が、本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態の設計、動作条件及び配置で行われてもよい。
本開示は、様々な動作を遂行するための任意の機械可読媒体上のプログラム製品、システム及び方法を考慮している。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、又はこの若しくは別の目的で組み込まれる、適切なシステムのための専用コンピュータプロセッサによって、又は配線システムによって実装されてもよい。本開示の範囲内の実施形態は、機械実行可能命令又はそれに記憶されるデータ構造を伝送する又は有する機械可読媒体を含むプログラム製品を含む。このような機械可読媒体は、汎用又は専用コンピュータ又はプロセッサを有する他の機械によりアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であってもよい。例えば、このような機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM又は他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、又は機械実行可能命令又はデータ構造の形態で所望のプログラムコードを伝送又は記憶するために使用され得る且つ汎用又は専用コンピュータ又はプロセッサを有する他の機械によりアクセスされ得る任意の他の媒体を含んでもよい。上記の組み合わせも、機械可読媒体の範囲内に含まれる。例えば、機械実行可能命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は専用処理機械に所定の機能若しくは機能グループを実行させる命令及びデータを含む。
図面は方法ステップの特定の順番を示しているが、ステップの順番は描かれたものと異なっていてもよい。また、2つ以上のステップが同時に又は部分的に同時に行われてもよい。このような変形は、選択されたソフトウェア及びハードウェアシステムに及び設計者の選択に依存するであろう。このような全ての変形は、本開示の範囲内である。同様に、ソフトウェアの実装は、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ及び決定ステップを遂行するためのルールベース論理及び他の論理を有する標準プログラミング技術によって達成され得る。