JP2017176438A - 中性子捕捉療法システム及びガンマ線反応素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】取り扱いが容易であるガンマ線反応素子を備えた中性子捕捉療法システムを提供する。
【解決手段】中性子捕捉療法システム1は、患者Sへ中性子線Nを照射する中性子線照射部4と、患者Sが載置された治療台15と、患者Sの少なくとも一部を含むガンマ線拡散領域Rに設けられ、ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子20と、を備え、ガンマ線反応素子20は、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。
【選択図】図1
【解決手段】中性子捕捉療法システム1は、患者Sへ中性子線Nを照射する中性子線照射部4と、患者Sが載置された治療台15と、患者Sの少なくとも一部を含むガンマ線拡散領域Rに設けられ、ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子20と、を備え、ガンマ線反応素子20は、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。
【選択図】図1
Description
本発明は、中性子捕捉療システム及びガンマ線反応素子に関する。
従来、中性子線を照射してがん細胞を死滅させる中性子捕捉療法として、ホウ素化合物を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が知られている。ホウ素中性子捕捉療法では、がん細胞に予め取り込ませておいたホウ素に中性子線を照射し、これにより生じる重荷電粒子の飛散によってがん細胞を選択的に破壊する。
このような中性子捕捉療法で用いられるシステムとして、例えば、特許文献1に記載されているように、被照射体へ中性子線を照射する照射部と、被照射体が載置される治療台と、を備えた中性子捕捉療法システムが知られている。
上記特許文献1に記載されているような一般的な中性子捕捉療法システムにおいては、陽子線等の荷電粒子線をターゲットと呼ばれる金属へ照射することで中性子線を発生させている。荷電粒子線をターゲットへ照射して中性子線を発生させる際に、副次的にガンマ線も生じてしまう。中性子線の発生に伴って生じるガンマ線が被照射体に照射されることによる被曝の問題があり、安全性の確保のため、被照射体に照射されるガンマ線の線量を測定する必要がある。このようなガンマ線の線量の測定には、例えば熱蛍光線量計(TLD:ThermoLuminescense Dosimeter)が用いられる。
共に存在している中性子線とガンマ線とからガンマ線だけを正確に検出するためには、中性子線の影響を抑制する必要がある。このことを考慮し、従来の中性子捕捉療法システム用の熱蛍光線量計の素子は、例えば中性子線に反応しない石英ガラス等が管状に形成されてなるガラス容器に、酸化ベリリウムの粉を封入することによって構成されている。しかしながら、現状、当該ガラス容器を加工できるメーカが限られており、このような熱蛍光線量計の素子の製造が困難となっている。さらに、従来の素子では、ガラス容器が破損すると、酸化ベリリウムの粉が飛散してしまう等、取り扱いが容易ではない。よって、中性子捕捉療法システムにおいては、より安全性を高めるため、容易に取り扱うことのできる素子が求められている。
そこで本発明は、取り扱いが容易であるガンマ線反応素子を備えた中性子捕捉療法システム、及び、取り扱いが容易であるガンマ線反応素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る中性子捕捉療法システムは、被照射体へ中性子線を照射する照射部と、被照射体が載置された治療台と、被照射体の少なくとも一部を含むガンマ線拡散領域に設けられ、ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子と、を備え、ガンマ線反応素子は、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。
本発明に係る中性子捕捉療法システムでは、被照射体の少なくとも一部を含むガンマ線拡散領域に、ガンマ線が照射されることによって反応するガンマ線反応素子が設けられている。このガンマ線反応素子は、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。よって、ガンマ線が照射された後に例えば線量測定器等を別途用いてこのガンマ線反応素子から発せられる光を測定することにより、ガンマ線の線量が測定される。このガンマ線反応素子は、焼結体として構成されているため、破損に強く、且つ、材料が飛散する可能性が低い。よって、ガンマ線反応素子の取扱いを容易にすることができる。以上より、取り扱いが容易であるガンマ線反応素子を備えた中性子捕捉療法システムを提供することができる。
また、本発明に係る中性子捕捉療法システムにおいて、ガンマ線反応素子は、酸化ベリリウムの焼結体であってもよい。酸化ベリリウムは、ガンマ線が照射されるとその内部状態が変化し、ガンマ線が照射された後に熱が加えられるとその内部状態の変化量に応じた光を発する性質を有しており、且つ、焼結等の加工がし易いため、ガンマ線反応素子の材料として好適である。よって、ガンマ線反応素子を容易に製造することができる。
また、本発明に係るガンマ線反応素子は、ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子であって、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。
本発明に係るガンマ線反応素子は、ガンマ線が照射された状態において、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。よって、ガンマ線が照射された後に例えば線量測定器等を別途用いてこのガンマ線反応素子から発せられる光を測定することにより、ガンマ線の線量が測定される。このガンマ線反応素子は、焼結体として構成されているため、破損に強く、且つ、材料が飛散する可能性が低い。よって、ガンマ線反応素子の取扱いを容易にすることができる。以上より、取り扱いが容易であるガンマ線反応素子を提供することができる。
本発明によれば、取り扱いが容易なガンマ線反応素子を備えた中性子捕捉療法システム、及び、取り扱いが容易なガンマ線反応素子を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る中性子捕捉療法装置について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、図1を用いて、本実施形態に係る中性子捕捉療法システムの概要を説明する。図1に示すように、本実施形態に係る中性子捕捉療法システム1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行うために用いられるシステムである。中性子捕捉療法システム1は、ホウ素(10B)が投与された患者(被照射体)Sの腫瘍へ中性子線Nを照射してがん治療を行う。
中性子捕捉療法システム1は、加速器2、ビーム輸送装置3、中性子線照射部4(照射部)、及び治療台15を備えている。加速器2は、例えば、サイクロトロンである。加速器2は、水素イオン等の荷電粒子を加速して、陽子線(陽子ビーム)を荷電粒子線Pとして作り出す。ここで加速器2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Pを生成する能力を有する。なお、加速器2は、サイクロトロンに限られず、例えばシンクロトロンやシンクロサイクロトロン、ライナック等であってもよい。加速器2から出射された荷電粒子線Pは、ビーム輸送装置3へ導入される。
ビーム輸送装置3は、加速器2が作り出した荷電粒子線Pを輸送する。ビーム輸送装置3は、ビームダクト5、四極電磁石6、電流モニタ7、及び走査電磁石8を有する。ビームダクト5の一端側には加速器2が接続され、ビームダクト5の他端側には中性子線照射部4が接続されている。荷電粒子線Pは、ビームダクト5内を通り、中性子線照射部4に向かって進行する。
四極電磁石6は、ビームダクト5に沿って複数設けられている。四極電磁石6は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Pのビーム軸調整又はビーム径調整を行う。
電流モニタ7は、ターゲット9に照射される荷電粒子線Pの電流値を荷電粒子線Pの照射中にリアルタイムで検出する。電流モニタ7には、荷電粒子線Pに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。すなわち、電流モニタ7は、荷電粒子線Pに触れることなく(非接触で)、荷電粒子線Pの電流値を測定する。電流モニタ7は、例えば、中性子線照射部4のターゲット9に照射される荷電粒子線Pの電流値を精度よく検出するため、四極電磁石6による影響を排除すべく、四極電磁石6より下流側(荷電粒子線Pの下流側)で走査電磁石8の直前に設けられている。
走査電磁石8は、荷電粒子線Pを走査し、ターゲット9に対する荷電粒子線Pの照射制御を行う。走査電磁石8は、例えば、ターゲット9に対する照射位置を制御する。
中性子線照射部4は、荷電粒子線Pがターゲット9に照射されることにより中性子線Nを発生させ、患者Sに向かって中性子線Nを出射する。この中性子線Nの発生に伴い、ガンマ線等の放射線が発生する。中性子線照射部4は、ターゲット9、遮蔽体10、減速材11、及びコリメータ12を有している。
ターゲット9は、荷電粒子線Pの照射を受けて中性子線Nを生成する。ここでのターゲット9は、ベリリウム(Be)、リチウム(Li)、タンタル(Ta)、又はタングステン(W)等により形成され、例えば直径180mmの円板状を成している。ターゲット9は、円板状に限らず、他の固体形状又は液体等であってもよく、例えば液体金属等で構成されていてもよい。
減速材11は、ターゲット9で生成された中性子線Nを減速させて、中性子線Nのエネルギを低下させる。減速材11は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる第1の減速材11Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる第2の減速材11Bと、からなる積層構造を有している。
遮蔽体10は、発生させた中性子線N、当該中性子線Nの発生に伴ってターゲット9にて生じたガンマ線等の二次的な放射線、及び中性子線Nが減速材11によって減速される際に減速材11にて生じるガンマ線等の二次的な放射線を遮蔽し、患者Sが居る照射室へこれらの放射線が放出されることを抑制する。遮蔽体10は、減速材11を囲むように設けられている。遮蔽体10の下流側には、中性子線Nを出射するための出射口10aが設けられている。出射口10aは、略円形状を有している。
コリメータ12は、中性子線Nの照射野を整形する。コリメータ12は、中性子線Nが通過する開口12aを有する。コリメータ12は、例えば中央に開口12aを有するブロック状の部材である。コリメータ12は、遮蔽体10の出射口10aに嵌め込まれている。なお、コリメータ12は、出射口10aに嵌め込まれずに、出射口10aに隣接するように設けられてもよい。この際、コリメータ12は、治療台15に支持される構成としてもよい。コリメータ12は、例えば円形状の開口12aを有する筒状をなしている。本実施形態において、出射口10aの中心は、コリメータ12で規定される照射野の中心(開口12aの中心)と略一致している。
治療台15は、照射室13内に配置されている。図1においては、照射室13の範囲を破線で示している。照射室13は、中性子線Nを患者Sへ照射するために患者Sが配置される部屋である。照射室13は、ビーム輸送装置3のビームダクト5が伸びている方向の延長線上に配置されている。照射室13は、コンクリート製の遮蔽壁(不図示)に囲まれた遮蔽空間を有する。照射室13内において、治療台15が設けられる空間側とビーム輸送装置3が設けられる空間側とを区切るように、遮蔽板14が設けられている。遮蔽板14は、中性子線照射部4を囲むように設けられている。遮蔽板14は、ビーム輸送装置3や中性子線照射部4から発せられるガンマ線等の副次的な放射線が、治療台15が設けられる空間側へ到達することを抑制する。なお、遮蔽板14を完全な壁とし、ビーム輸送装置3が設けられる側の空間(第1の部屋)と、治療台15が設けられる側の空間(第2の部屋)と、を異なる部屋としてもよい。
治療台15は、中性子捕捉療法で用いられる載置台として機能する。治療台15には、患者Sが載置されている。なお、図1において、患者Sとコリメータ12とは離れて示されているが、実際には、患者Sはコリメータ12に対して近接又は接触している。治療台15は、キャスタ等を用いて中性子線照射部4に対して相対的に移動可能であってもよいし、中性子線照射部4に対して相対的に移動不可能に固定されていてもよい。治療台15は、照射室13の内部と外部との間で移動可能となるように走行部(例えば、車輪等)を有する構成としてもよい。
減速材11から出射された中性子線Nは、コリメータ12を通過して治療台15上の患者Sへ照射される。中性子線Nは、速中性子線、熱外中性子線、及び熱中性子線を含んでいる。また、中性子線Nは、中性子線Nの発生に伴い生じたガンマ線も伴った状態で患者Sへ照射される。これらの放射線のうち、主として熱中性子線が、患者Sの体内の腫瘍中に取り込まれたホウ素と核反応して、有効な治療効果を発揮する。中性子線Nのビームに含まれる熱外中性子線の一部も、患者Sの体内で減速されて上記治療効果を発揮する熱外中性子線となる。熱外中性子線は、0.5eV以下のエネルギの中性子線である。
さらに、本実施形態に係る中性子捕捉療法システム1Aは、ガンマ線反応素子20を備えている。ガンマ線反応素子20は、中性子線Nに伴って患者Sに照射されるガンマ線の線量を取得するために用いられる。ガンマ線反応素子20は、ガンマ線拡散領域Rに設けられており、ガンマ線が照射されることにより反応する。ガンマ線拡散領域Rは、照射室13内における患者Sの少なくとも一部(本実施形態では、患者Sの略全体)を含んだ所定の領域である。すなわち、ガンマ線拡散領域Rは、患者Sへの中性子線Nの照射に伴いガンマ線が照射される範囲(照射範囲)として規定される領域であって、少なくとも照射室13内の領域である。
ガンマ線拡散領域Rは、例えばコリメータ12で規定される照射野の中心(開口12aの中心)又は出射口10aの中心を通る仮想の軸線(以下、「照射中心軸線C」ともいう)を中心に広がっている領域である。照射中心軸線Cは、コリメータ12側から患者S側へ向かって照射された中性子線Nの上下流方向に延在している。ガンマ線拡散領域Rは、例えば照射中心軸線Cからの距離が略一定となるように略円柱状に広がっていてもよい。また、ガンマ線拡散領域Rは、例えば照射中心軸線Cの方向での位置に応じて、照射中心軸線Cからの距離が変化するように広がっていてもよい。例えば、ガンマ線拡散領域Rは、照射中心軸線Cの方向でコリメータ12側から離れるに従い、照射中心軸線Cからの距離が小さくなるように略円錐状に広がっていてもよい。
また、ガンマ線拡散領域Rは、例えば患者Sの体の表面Saの少なくとも一部(本実施形態では、略全体)を覆うように広がっていてもよい。例えば、ガンマ線拡散領域Rは、患者Sの体の表面Saに沿った輪郭線により規定される領域であってもよく、患者Sの体の表面Saに沿っており且つその表面Saから所定の距離離れた外郭線により規定される領域であってもよい。
ガンマ線反応素子20は、ガンマ線拡散領域Rに少なくとも一つ(本実施形態では、複数)設けられている。複数のガンマ線反応素子20は、例えば互いに所定間隔を有して配置されている。なお、ガンマ線反応素子20は一個ずつ配置されていてもよいし、二個以上の複数個を一組として一組ずつ配置されていてもよい。また、複数のガンマ線反応素子20は、互いに隙間なく隣接して配置されていてもよい。複数のガンマ線反応素子20には配線等が接続されておらず、複数のガンマ線反応素子20は、例えば、ガンマ線反応素子20単体の状態で患者Sに直接貼り付けられている。
ガンマ線反応素子20は、ガンマ線拡散領域Rにおける例えばガンマ線の線量を測定したい所望の位置に配置されている。ガンマ線反応素子20は、ガンマ線反応素子20が配置された各位置でのガンマ線の線量を後述する線量測定器で測定するために用いられる。ガンマ線反応素子20が配置された各位置でのガンマ線の線量を測定することにより、その各位置でのガンマ線の線量が安全な範囲内か否かを示す線量情報を取得することができる。
ガンマ線反応素子20は、例えば、コリメータ12における中性子線Nの出射側の端部12bから30cm離れた位置、60cm離れた位置、及び90cm離れた位置等の所定間隔毎の各位置に、複数並ぶように配置されていてもよい。本実施形態において、ガンマ線反応素子20は、コリメータ12の端部12b、及び、患者Sの体の表面Saにおける複数箇所等に配置されている。ガンマ線反応素子20は、この端部12b及び表面Saに対し、テープ材等の固定部材によって固定されていてもよい。
コリメータ12の端部12bに配置されたガンマ線反応素子20は、コリメータ12から中性子線Nが出射される位置(コリメータ12と患者Sとの境界位置)におけるガンマ線の線量を測定するために用いられる。患者Sの体の表面Saにおける複数箇所に配置された各ガンマ線反応素子20は、患者Sの体の表面Saにおける各ガンマ線反応素子20が配置された各位置におけるガンマ線の線量を測定するために用いられる。
次に、図2を参照して、ガンマ線反応素子20の構成の詳細について説明する。図2は、図1のガンマ線反応素子20を示す概略斜視図である。図2に示すように、ガンマ線反応素子20は、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。
具体的に、このガンマ線反応素子20の材料としては、例えば、ガンマ線の照射を受けると、その内部状態(例えば原子核の状態)が変化し、ガンマ線の照射を受けた後に加熱されると、その内部状態の変化量に応じた光を発する性質(以下、「熱蛍光性質」ともいう)を有する材料(以下、「熱蛍光材料」ともいう)が用いられている。熱蛍光材料が加熱されることにより発する光の量は、その熱蛍光材料がガンマ線の照射を受けることで吸収したガンマ線のエネルギの数に比例している。
本実施形態では、熱蛍光材料として、例えば酸化ベリリウムを用いている。すなわち、本実施形態において、ガンマ線反応素子20は、酸化ベリリウムの焼結体である。酸化ベリリウムは、熱蛍光性質を有し、且つ、焼結等の加工がし易いため、ガンマ線反応素子20の材料として好適である。なお、ガンマ線反応素子20の材料としては、酸化ベリリウムに限らず、例えば、フッ化リチウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、及び硫酸マグネシウム等を用いてもよい。なお、材質により、ガンマ線のエネルギの違いによる感度が変わるため、複数種の材料を組み合わせることで、拡散領域のガンマ線のエネルギを特定することも可能となる。
ガンマ線反応素子20は、例えば、酸化ベリリウムの粉体を型等に入れて加熱しながら加圧することによって焼結された焼結体であって、当該焼結体を機械加工等によって所定の形状に削り出すことによって形成されている。例えば、ガンマ線反応素子20は、酸化ベリリウムの粉体を焼結した後、棒体状に削り出して形成されており、略円柱状を有している。ガンマ線反応素子20の軸方向での長さLaは、例えば約12mm程度であり、ガンマ線反応素子20の直径Lbは、例えば約2mm程度である。このガンマ線反応素子20の大きさは、従来の中性子捕捉療法システムにおける従来の熱蛍光線量計の素子(以下、「従来TLD素子」ともいう)と同程度である。
ガンマ線反応素子20は、熱蛍光性質を有する熱蛍光材料により形成されていることにより、ガンマ線の照射を受けた状態において加熱されると、照射された線量に応じた量の光を発する。このガンマ線反応素子20から発せられる光の量を線量測定器(不図示)により測定することによって、ガンマ線反応素子20に照射されたガンマ線の線量が取得される。なお、線量測定器としては、従来TLD素子に対応して構成されている既存の線量測定器を用いてもよいし、ガンマ線反応素子20に対応するように新たに製造された線量測定器を用いてもよい。本実施形態においては、ガンマ線反応素子20の大きさが従来TLD素子と略同程度の大きさであるため、従来TLD素子に代えて、ガンマ線反応素子20を既存の線量測定器に対して適用することができる。
線量測定器とは、例えば複数のガンマ線反応素子20をその内部に収容及び配置可能な密閉容器であって、その収容及び配置したガンマ線反応素子20に照射されたガンマ線の線量を測定する測定器である。例えば、線量測定器としては、熱風加熱方式の測定器が用いられる。この熱風加熱方式の線量測定器は、ガンマ線反応素子20がその内部に収容及び配置されて密閉された状態で、その内部に熱風を出してガンマ線反応素子20を加熱すると同時に、当該加熱によりガンマ線反応素子20から発せられる光を測定する。そして、線量測定器は、測定した光に基づき、ガンマ線反応素子20に照射されたガンマ線の線量を測定する。その結果、ガンマ線反応素子20が配置されていた位置におけるガンマ線の線量を取得することができる。また、線量測定器は、測定されたガンマ線の線量を、ガンマ線反応素子20にガンマ線を照射していた照射時間で除算することにより、瞬間的にガンマ線反応素子20に照射された線量を取得してもよい。
次に、本実施形態に係るガンマ線反応素子20の作用及び効果について、従来の中性子捕捉療法システムにおいて用いられていた従来TLD素子と比較して説明する。
一般に、中性子捕捉療法システムでは、共に存在している中性子線とガンマ線とからガンマ線だけを正確に検出するため、中性子線の影響を抑制する必要がある。このことを考慮し、従来TLD素子は、例えば中性子線に反応しない石英ガラス等が直径2mmで長さ10mm程度の管状に形成されてなるガラス容器に、酸化ベリリウムの粉を封入することによって構成されている。しかしながら、現状、当該ガラス容器を加工できるメーカが限られており、このような従来TLD素子の製造が困難となっている。さらに、従来TLD素子では、ガラス容器が破損すると、酸化ベリリウムの粉が飛散してしまう等、取り扱いが容易ではない。よって、中性子捕捉療法システムにおいては、より安全性を高めるため、容易に取り扱うことのできる素子が求められていた。
これに対し、本実施形態に係るガンマ線反応素子20は、酸化ベリリウムの粉体を型等に入れて加熱しながら加圧することによって焼結した後、機械加工等によって所定の形状に削り出すことによって製造されているため、機械加工等による量産が可能となっている。また、ガンマ線反応素子20は、従来TLDと同程度の大きさを有しているため、従来TLD素子に代えて、既存の線量測定装置に適用することができる。
さらに、ガンマ線反応素子20は、酸化ベリリウムの粉体の焼結体として構成されており、従来TLD素子のようにガラス容器等を必要としないため、ガラス容器等の破損のおそれがない。すなわち、ガンマ線反応素子20は、破損に強く、且つ、材料である酸化ベリリウムの粉が飛散する可能性も低い。よって、従来TLD素子に比べて、その取扱いを容易にすることができる。
以上より、本実施形態によれば、取り扱いが容易であるガンマ線反応素子20を備えた中性子捕捉療法システム1を提供することができる。
さらに、本実施形態によれば、ガンマ線反応素子20の材料として、熱蛍光性質を有しており、且つ、焼結等の加工がし易い酸化ベリリウムが用いられているため、ガンマ線反応素子20を容易に製造することができる。
また、本実施形態に係るガンマ線反応素子20によれば、取り扱いを容易にすることができる。
以上、本実施形態の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用してもよい。
例えば、図3は、変形例に係る中性子捕捉療法システム1Aを示す概略構成図である。この中性子捕捉療法システム1Aにおいて、治療台15には患者Sに代えてファントム30が載置されている。すなわち、上記実施形態において、被照射体は患者Sであるとしたが、これに限られず、被照射体としてファントム30を用いてもよい。なお、図3においては、ファントム30の概略断面を示している。
ファントム30は、治療前の治療品質保証のため、中性子線照射部4から照射された中性子線Nの線量分布を、実際の治療を行う前に測定するための構造体である。ファントム30は、コリメータ12の端部12bと近接又は接触している。ファントム30は、例えば中性子線Nが照射される人体模擬物質を収容可能な容器状を有している。人体模擬物質とは、中性子線Nの線量分布を測定する際に、人体を模したモデルとなる物質であり、例えば水等が採用される。ファントム30は、例えばその上端部30fが開口された矩形箱状をなしており、その内側に底壁部30a及び四つの側壁部30bを有している。
本変形例に係る中性子捕捉療法システム1Aにおいても、照射室13内におけるファントム30の少なくとも一部(本変形例においては、略全体)を含んだガンマ線拡散領域Rに、ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子20が少なくとも一つ(本実施形態においては、複数)設けられている。具体的に、本変形例において、ガンマ線反応素子20は、例えばファントム30の内側に複数配置されている。ガンマ線反応素子20は、例えば図示するように底壁部30a及び四つの側壁部30bのそれぞれに少なくとも一つずつ配置されていてもよく、例えばファントム30の内部にワイヤ等を張って当該ワイヤに置くことで立体的に配置されてもよい。なお、ここで立体的に配置されているとは、照射中心軸線Cに沿った方向と、当該方向に交差する方向等とに三次元的に配置されていることをいう。
また、ガンマ線反応素子20は、ファントム30の外側表面、又は、コリメータ12の端部12b等に配置されていてもよい。ガンマ線反応素子20は、例えば、ファントム30の外側表面において、コリメータ12における中性子線Nの出射側の端部12bから30cm離れた位置、60cm離れた位置、及び90cm離れた位置等の所定間隔毎の各位置に、複数並ぶように配置されていてもよい。なお、ガンマ線反応素子20は、配置された各位置において、テープ材等の固定部材によって固定されていてもよい。
本実施形態においても、ガンマ線反応素子20は、上記実施形態同様、ガンマ線が照射された状態において、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である。よって、このガンマ線反応素子20から発せられた光の量を線量測定器で測定することによって、ガンマ線反応素子20が配置された各位置でのガンマ線の線量を測定することができ、その各位置でのガンマ線の線量が安全な範囲内か否かを示す線量情報を取得することができる。
例えば、ファントム30の中に立体的に配置されていたガンマ線反応素子20から発せられる光の量を線量測定器で測定することにより、ファントム30の中での線量分布を取得してもよい。また、ファントム30の外表面における各位置に複数並ぶように配置されていたガンマ線反応素子20から発せられる光の量を線量測定器で測定することにより、ファントム30の外表面における各位置における線量を取得してもよい。このようにして、中性子線照射部4から照射された中性子線Nに伴って生じるガンマ線の線量分布及び各位置における線量等を、実際の治療を行う前に測定することができる。
以上、本変形例においても、上記実施形態同様、取り扱いが容易であるガンマ線反応素子20を備えた中性子捕捉療法システム1Aを提供することができる。
また、上記実施形態及び上記変形例において、ガンマ線反応素子20は、略円柱状を有しているとしたが、ガンマ線反応素子20の形状はこれに限られない。ガンマ線反応素子20は、例えば楕円体状、円錐状、角錐状、円錐台状、角錐台状、及び多面体状等の種々の形状を有していてもよい。また、ガンマ線反応素子20の大きさは、従来TLD素子の大きさと同程度であるとしたが、これに限られず、従来TLD素子の大きさと異なっていてもよい。
また、上記変形例において、ファントム30は、例えば矩形箱状をなしているとしたが、これに限られない。ファントム30は、長円筒状、三角筒状、及び多角筒状等の種々の形状を有していてもよい。また、ファントム30は、例えば人体模擬物質を収容可能な容器状を有しているとしたが、これに限られない。例えば、ファントム30は、人体模擬物質そのものが板状等に形成されてなる板状ファントム等であってもよい。
また、上記実施形態において、コリメータ12は、円形状の開口12aを有する筒状をなしているとしたが、これに限られない。例えば、コリメータ12は、複数の櫛歯を有して各櫛歯の位置を調整することにより任意の開口を形成するマルチリーフコリメータ等であってもよい。コリメータ12がマルチリーフコリメータである場合には、コリメータ12の開口の中心が一定ではない。このため、照射中心軸線Cを、例えばコリメータ12の開口の中心とは無関係に出射口10aの中心を通る仮想の軸線を中心に広がっている領域としてもよい。
1,1A…中性子捕捉療法システム、4…中性子線照射部(照射部)、15…治療台、20…ガンマ線反応素子、30…ファントム(被照射体)、S…患者(被照射体)、N…中性子線、R…ガンマ線拡散領域。
Claims (3)
- 被照射体へ中性子線を照射する照射部と、
前記被照射体が載置された治療台と、
前記被照射体の少なくとも一部を含むガンマ線拡散領域に設けられ、ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子と、
を備え、
前記ガンマ線反応素子は、ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である、中性子捕捉療法システム。 - 前記ガンマ線反応素子は、酸化ベリリウムの焼結体である、請求項1に記載の中性子捕捉療法システム。
- ガンマ線が照射されることにより反応するガンマ線反応素子であって、
ガンマ線が照射された状態において、加熱されることにより、その照射されたガンマ線の線量に応じた光を発する材料の焼結体である、ガンマ線反応素子。
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