JP2017171978A - 鍛造部品及びその製造方法並びにコンロッド - Google Patents
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金属組織がフェライト面積率30%以上のフェライト・パーライト組織であり、
Vノッチによるシャルピー衝撃値が10J/cm2以上20J/cm2以下であり、
0.2%耐力が600MPa以上であることを特徴とする鍛造部品にある。
式(1):R1=12.6×[C]+16×[P]+0.14×[S]+12×[V]
(但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。)
該鍛造用鋼材を加熱した後、温度1150〜1300℃で熱間鍛造を施して鍛造部品を作製し、
上記熱間鍛造の直後に、800℃から600℃までの平均冷却速度が150〜250℃/分となるように上記鍛造部品を冷却することを特徴とする鍛造部品の製造方法にある。
C(炭素)は、強度を確保するための基本元素である。適度な強度及びシャルピー衝撃値を得ると共に適度な被削性を確保するためには、C含有量を上記範囲内に収めることが重要である。C含有量が0.20%未満の場合には、強度等を確保することが困難となると共に破断分割時に変形が生じるおそれがある。C含有量が0.40%を超える場合には、被削性の悪化、破断分割時の欠けの問題等が懸念される。
Siは、製鋼時の脱酸剤として有効であり、この効果を得るためには、Si含有量を0.01%以上とすることが必要である。一方、破断分割性を向上させるために従来添加されていたPを添加することなく、上記鍛造部品の破断分割性を向上させるためには、Si含有量を従来よりも低めに調整する必要がある。かかる観点から、Si含有量を0.20%以下とした。また、Si含有量が多すぎると、脱炭が増加し疲労強度に悪影響が生じるおそれもある。破断分割性をより向上させるためには、Si含有量を0.15%以下とすることが好ましい。
Mnは、製鋼時の脱酸ならびに鍛造部品の強度、靱性バランスを調整するために有効な元素である。強度、靱性バランス調整に加え、金属組織の最適化、被削性及び破断分割性向上のためには、Mn含有量を上記特定の範囲内にすることが必要である。Mnの含有量が0.30%未満の場合には、強度と靭性とのバランスを適正な範囲に調整することが難しくなる。一方、Mn含有量が1.60%を超える場合には、パーライト組織の増加やベイナイト組織の生成の可能性が高まり、0.2%耐力の低下や被削性の悪化を招くおそれがある。
Pは、製造上不純物としての含有が避けられない元素であるが、P含有量を0.030%以下とすることにより、P含有量の増加による熱間加工性の悪化を回避することができる。
Sは上記鍛造部品の被削性を向上させるために必要な元素であり、その効果を得るためには、S含有量を0.040%以上とすることが必要である。一方、S含有量が多すぎる場合には、鍛造時に割れが生じやすくなる。S含有量を0.150%以下とすることにより、鍛造時の割れを抑制することができる。
Crは、Mnと同様に鍛造部品の強度、靱性バランスを調整するために有効な元素である。上記鍛造部品中にCrが含まれていれば、これらの作用効果を得ることができる。Crによる作用効果をより高める観点からは、Cr含有量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Cr含有量が過度に多い場合には、Mn含有量が過度に多い場合と同様に、パーライト組織の増加やベイナイト組織の生成の可能性が高まり、0.2%耐力の低下や被削性の悪化を招くおそれがある。これらの問題を回避する観点から、Cr含有量は0.50%以下とする。
Al含有量を0.001%以上とすることにより、製鋼時の脱酸を促進することができる。一方、Al含有量が過度に多い場合には、アルミナ系介在物の増加により、被削性の悪化を招くおそれがある。被削性の悪化を回避する観点から、Al含有量は0.070%以下とする。
Vは、鍛造部品の製造過程において、熱間鍛造後の冷却時に炭窒化物となってフェライト中に微細に析出し、析出強化により強度を向上させる作用を有している。V含有量を0.25%以上とすることにより、鍛造部品の強度を向上させることができる。V含有量が過度に多くなると、原料コストが増加する一方で、添加量に見合った強度向上効果が得られなくなる。従って、強度向上効果と原料コストとのバランスの観点から、V含有量は0.35%以下とする。
Nは、大気中に最も多く含まれる元素であり、大気溶解をする場合には製造上不純物としての含有が避けられない。しかしながら、N含有量が0.0150%を超えると、鋼中においてVと結合して、強度向上に寄与しない比較的大きい炭窒化物が多く形成され、V添加による強度向上効果を阻害するおそれがある。なお、上記のN含有範囲においても、N含有量が高いほど、強度向上に寄与しない比較的粗大な炭窒化物が鋼中において多くなる可能性がある。これを回避して鍛造部品の強度を確保するためには、熱間鍛造時により高めの温度に加熱して比較的粗大な炭窒化物を固溶させることが好ましい。
Caは、鍛造部品の被削性向上に有効な元素ある。Caは、不純物として鍛造部品中に少量含まれる元素であるが、被削性をより向上させるために、必要に応じて積極的に添加してもよい。なお、Ca含有量が過度に多い場合には、添加量に見合った被削性向上の効果を得ることが難しい。従って、被削性向上の効果と添加量とのバランスの観点から、Ca含有量を0.0100%以下とすることが好ましい。
上記鋼に含まれる不可避的不純物としては、例えば、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Mo(モリブデン)等がある。
式(1):R1=12.6×[C]+16×[P]+0.14×[S]+12×[V]
但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。
式(2):R2=4×[C]−[Si]+0.2×[Mn]+7×[Cr]−[V]
但し、上記式(2)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。
上記鍛造部品の金属組織は、フェライト面積率30%以上のフェライト・パーライト組織である。金属組織中のフェライト面積率を30%以上とすることにより、鍛造部品に要求される水準の被削性を確保することができる。上記鍛造部品の被削性をより向上させるためには、フェライト面積率は50%以上であることが好ましい。なお、上記鍛造部品のフェライト面積率は、通常、95%以下である。また、フェライト面積率は、鍛造部品の断面にナイタール腐食を施した後、当該断面にJIS G0555に準拠した点算法を適用することにより算出することができる。
上記鍛造部品は、Vノッチによるシャルピー衝撃値が上記特定の範囲内にある。これにより、破断分割時の変形や欠けを抑制することができるとともに、破断分割後に、適度な凹凸を有する破面を形成することができる。その結果、分割後の部品を精度よく噛み合わせることができる。
上記鍛造部品の0.2%耐力は600MPa以上とし、好ましくは700MPa以上とする。0.2%耐力が600MPa以上である鍛造部品は、十分に高い強度を有しているため、強度を確保しつつ軽量化をより容易に行うことができる。
上記鍛造部品を製造するに当たっては、少なくとも、電気炉等で原料を溶解し、上記特定の化学成分を有する鋳造片を作製し、これに熱間圧延等の熱間加工を加えて鍛造用鋼材を準備する工程と、鍛造用鋼材に対して熱間鍛造を施す工程と、熱間鍛造後の鍛造品を冷却する冷却工程とを行う。
上記鍛造部品に係る実施例につき説明する。本例では、化学成分組成が異なる複数種類の合金(表1、合金A〜X)からなる試験材(表2、試験材1〜24)を準備して、コンロッドを作製する場合を想定した加工を加えて各種評価を行った。ここで、合金A〜Lは、上記特定の化学成分を有する鋼であり、合金M〜Xは、各元素の含有量及び指数R1の値のうち少なくとも1つが上記特定の範囲から外れている、比較用の鋼である。また、合金K及び合金Lは、指数R2の値が上記特定の範囲から外れているが、フェライト面積率が30%以上のフェライト・パーライト組織が得られている鋼である。
強度評価用試験片は、以下の手順により作製した。まず、電気炉にて溶解して作製した鋳造片に熱間圧延を加えて棒鋼とし、この棒鋼を鍛伸して鍛造用鋼材としての直径φ20mmの丸棒を作製した。次いで、この丸棒を、実際の熱間鍛造における標準的な処理温度に相当する1200℃まで加熱し、この温度を30分間保持した。その後、ファン空冷により、丸棒の温度が室温になるまで冷却を行った。このとき、空冷時のファンの強さを調節し、丸棒表面の温度が800℃となってから600℃に到達するまでの平均冷却速度がおよそ190℃/分となるようにして冷却を行った。以上により、強度評価用試験片を作製した。
・硬さ測定:JIS Z2244に準拠してビッカース硬さを測定した。
・0.2%耐力の測定:JIS Z2241に準拠した引張試験を実施し、その結果に基づいて0.2%耐力を算出した。
・シャルピー衝撃値:強度評価用試験片にVノッチを形成し、JIS Z2242に準拠してシャルピー衝撃試験を実施した。その結果に基づき、シャルピー衝撃値を算出した。
また、強度評価用試験片を用い、以下の方法により金属組織の評価を行った。
・組織観察:ナイタール腐食を施した試験片の断面を、光学顕微鏡を用いて観察した。その結果、断面にフェライト組織が存在した場合には表2中の「金属組織」欄に記号Fを、パーライト組織が存在した場合には同欄に記号Pを、ベイナイト組織が存在した場合には同欄に記号Bを記載した。
・フェライト面積率:JIS G0555に準拠した点算法により、上記の断面におけるフェライト面積率を算出した。
・ベイナイト面積率:ベイナイト組織が生成された試験材について、JIS G0555に準拠した点算法により、上記の断面におけるベイナイト面積率を算出した。
被削性評価用試験片は、以下の手順により作製した。まず、電気炉にて溶解して作製した鋳造片に熱間圧延を加えて棒鋼とし、該棒鋼を鍛伸して鍛造用鋼材としての一辺25mmの断面正方形の角棒を作製した。次いで、この角棒を、実際の熱間鍛造における標準的な処理温度に相当する1200℃まで加熱し、この温度を30分間保持した。その後、ファン空冷により角棒の温度が室温になるまで冷却を行った。このとき、空冷時のファンの強さを調節し、角棒表面の温度が800℃となってから600℃に到達するまでの平均冷却速度がおよそ190℃/分となるようにして冷却を行った。冷却後、一辺20mmの正方形断面となるように角棒を切削した。以上により、被削性評価用試験片を作製した。
・使用ドリル:直径φ8mmのハイスドリル
・ドリル回転数:800rpm
・送り:0.20mm/rev
・加工深さ:11mm
・加工穴数:300穴(未貫通)
破断分割性評価用試験片は、以下の手順により作製した。まず、電気炉にて溶解して作製した鋳造片に熱間圧延を加えて棒鋼とし、該棒鋼を鍛伸して鍛造用鋼材としての長さ75mm、幅75mm、厚み25mmの板材を作製した。次いで、この板材を、実際の熱間鍛造における標準的な処理温度に相当する1200℃まで加熱し、この温度を30分間保持した。その後、ファン空冷により板材の温度が室温になるまで冷却を行った。このとき、空冷時のファンの強さを調節し、板材表面の温度が800℃となってから600℃に達するまでの平均冷却速度がおよそ190℃/分となるようにして冷却を行った。
試験材16は、Si過多によるシャルピー衝撃値への影響に比べてTiの添加によるシャルピー衝撃値への影響が大きかったため、シャルピー衝撃値が上記特定の範囲よりも小さくなった。その結果、破断分割性評価試験後に欠けが発生した。さらに、Tiの添加により試験材16の原料コストが増大した。
試験材18は、C含有量が多すぎたため、指数R1の値が上記特定の範囲よりも大きくなった。その結果、シャルピー衝撃値が上記特定の範囲よりも小さくなり、破断分割性評価試験後に欠けが発生した。また、試験材18は、C含有量の増加によって指数R2の値が上記特定の範囲よりも大きくなったため、フェライト面積率が低くなるとともに硬さが過度に高くなった。その結果、被削性の悪化を招いた。なお、試験材18の被削性指数は1.48であり、試験材1〜12に比べて劣っていた。
試験材20は、個々の元素の含有量は上記特定の範囲内であったが、指数R1の値が上記特定の範囲よりも大きかったため、シャルピー衝撃値が上記特定の範囲よりも小さくなった。その結果、破断分割性評価試験後に、破面の凹凸が過度に小さくなり、噛み合わせ精度が悪化した。
これらの試験材19、20及び24の結果から明らかなように、シャルピー衝撃値を上記特定の範囲内に調整するためには、個々の元素の含有量を上記特定の範囲にするだけでなく、指数R1の値が上記特定の範囲となるように各成分の含有量を調整する必要があることが理解できる。
本例は、熱間鍛造後の冷却条件を種々変更した試験材の例である。本例においては、各元素の含有量が上記特定の範囲内であるとともに、指数R1及び指数R2が上記特定の範囲内である合金A〜E(表1参照)を用い、冷却速度を表3に示すように種々変更した以外は実施例と同様の方法により試験材の作製を行った。そして、得られた試験材を用い、実施例1と同様の評価を行った。表3に評価結果を示す。
81 貫通穴
82 ボルト挿通穴
83 切り欠き
Claims (6)
- 質量%で、C:0.20%以上0.40%以下、Si:0.01%以上0.20%以下、Mn:0.30%以上1.60%以下、P:0.030%以下(但し、0%を除く)、S:0.040%以上0.150%以下、Cr:0.50%以下(但し、0%を除く)、Al:0.001%以上0.070%以下、V:0.25%以上0.35%以下、Ca:0.0100%以下(但し、0%を除く)、N:0.0150%以下(但し、0%を除く)を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)により得られる指数R1が7.0以上8.5以下である化学成分を有し、
金属組織がフェライト面積率30%以上のフェライト・パーライト組織であり、
Vノッチによるシャルピー衝撃値が10J/cm2以上20J/cm2以下であり、
0.2%耐力が600MPa以上であることを特徴とする鍛造部品。
式(1):R1=12.6×[C]+16×[P]+0.14×[S]+12×[V]
(但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。) - 下記式(2)により得られる指数R2が2.15以上2.61以下である化学成分を有していることを特徴とする請求項1に記載の鍛造部品。
式(2):R2=4×[C]−[Si]+0.2×[Mn]+7×[Cr]−[V]
(但し、上記式(2)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。) - 上記金属組織におけるベイナイト面積率は5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の鍛造部品。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鍛造部品からなることを特徴とするコンロッド。
- 質量%で、C:0.20%以上0.40%以下、Si:0.01%以上0.20%以下、Mn:0.30%以上1.60%以下、P:0.030%以下(但し、0%を除く)、S:0.040%以上0.150%以下、Cr:0.50%以下(但し、0%を除く)、Al:0.001%以上0.070%以下、V:0.25%以上0.35%以下、Ca:0.0100%以下(但し、0%を除く)、N:0.0150%以下(但し、0%を除く)を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)により得られる指数R1が7.0以上8.5以下である化学成分を有する鍛造用鋼材を準備し、
該鍛造用鋼材を加熱した後、温度1150〜1300℃で熱間鍛造を施して鍛造部品を作製し、
上記熱間鍛造の直後に、800℃から600℃までの平均冷却速度が150〜250℃/分となるように上記鍛造部品を冷却することを特徴とする鍛造部品の製造方法。
式(1):R1=12.6×[C]+16×[P]+0.14×[S]+12×[V]
(但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。) - 上記鍛造用鋼材は、下記式(2)により得られる指数R2が2.15以上2.61以下である化学成分を有していることを特徴とする請求項5に記載の鍛造部品の製造方法。
式(2):R2=4×[C]−[Si]+0.2×[Mn]+7×[Cr]−[V]
(但し、上記式(2)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。)
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