以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法について説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1を用いて、第1の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法について説明する。
図1に示すように、二酸化炭素回収システム1は、プロセス排ガス2(処理対象排ガス)に含有される二酸化炭素を吸収液に吸収させて、当該吸収液をリッチ液4として排出する吸収塔20と、吸収塔20から供給されるリッチ液4を加熱して二酸化炭素を放出させて、当該リッチ液4をリーン液5として排出する再生塔30と、を備えている。このうち吸収塔20において二酸化炭素を吸収液に吸収させたプロセス排ガス2は、吸収塔排ガス3として吸収塔20から排出される。また、再生塔30から二酸化炭素が蒸気と共に再生塔排ガス8として排出される。なお、吸収塔20に供給されるプロセス排ガス2は、特に限定されるものではないが、例えば火力発電所や、製鉄所、清掃工場等で排出される排ガスとすることができる。このような排ガスは、図示しない送風機によって吸収塔20に供給され、その際、必要に応じて冷却処理後に吸収塔20に供給されるようにしてもよい。
吸収液は、吸収塔20と再生塔30とを循環し、吸収塔20において二酸化炭素を吸収してリッチ液4となり、再生塔30において二酸化炭素を放出してリーン液5となる。なお、吸収液には、例えば、モノエタノールアミン(monoethanolamin)、ジエタノールアミン(diethanolamin)などのアミン系水溶液を好適に用いることができるが、このようなアミンの種類に限定されるものではない。また、1種類または2種類以上のアミンを含有する水溶液で構成されていてもよい。
吸収塔20は、吸収塔20内に収容され、プロセス排ガス2とリーン液5とを接触させて、プロセス排ガス2に含有される二酸化炭素をリーン液5に吸収させる吸収部20a(充填層またはトレイ)を有している。吸収塔20は、下部からプロセス排ガス2を受け入れ、塔頂から吸収塔排ガス3が排出されるようになっている。吸収部20aは、向流型気液接触装置として構成されている。
吸収塔20の下部に供給されたプロセス排ガス2は、吸収塔20内を吸収部20aに向かって上昇する。一方、再生塔30からのリーン液5が、分散落下して吸収部20aに供給される。吸収部20aにおいて、プロセス排ガス2とリーン液5とが気液接触して、プロセス排ガス2に含有される二酸化炭素がリーン液5に吸収されてリッチ液4が生成される。
生成されたリッチ液4は、吸収塔20の下部に一端貯留され、吸収塔20の底部から排出される。リーン液5と気液接触したプロセス排ガス2は、二酸化炭素が除去されて、吸収部20aから排出されて吸収塔20内を上昇し、吸収塔排ガス3として吸収塔20の塔頂から排出される。
吸収塔20と再生塔30との間には熱交換器70が設けられている。本実施の形態による熱交換器70は、第1熱交換器31と第2熱交換器32とを備えている。吸収塔20と第1熱交換器31との間にはリッチ液用ポンプ33が設けられている。このことにより、吸収塔20から排出されたリッチ液4は、リッチ液用ポンプ33によって第1熱交換器31および第2熱交換器32をこの順に通って再生塔30に供給される。一方、再生塔30と第2熱交換器32との間にはリーン液用ポンプ34が設けられている。このことにより、再生塔30から排出されたリーン液5は、リーン液用ポンプ34によって第2熱交換器32および第1熱交換器31をこの順に通って吸収塔20に供給される。すなわち、第1熱交換器31および第2熱交換器32により構成された熱交換器70は、吸収塔20から排出されたリッチ液4を、再生塔30から排出されたリーン液5を用いて加熱し、加熱されたリッチ液4を再生塔30に向けて排出する。熱交換器70においてリッチ液4を加熱して温度が低下したリーン液5は、熱交換器70から吸収塔20に向けて排出される。
第1熱交換器31は、吸収塔20から排出されたリッチ液4を、第2熱交換器32から排出されたリーン液5を用いて加熱し、リッチ液4とリーン液5とを熱交換させる。このことにより、第2熱交換器32から排出されたリーン液5が熱源となって、吸収塔20から排出されたリッチ液4が加熱される。加熱されたリッチ液4は、第1熱交換器31から第2熱交換器32に向けて排出され、リーン液5は、第1熱交換器31から吸収塔20に向けて排出される。すなわち、第1熱交換器31は、リッチ液4を、第2熱交換器32から排出されたリーン液5を用いて加熱し、加熱されたリッチ液4を第2熱交換器32に向けて排出するように構成されている。
第2熱交換器32は、第1熱交換器31から排出されたリッチ液4を、再生塔30から排出されたリーン液5を用いて加熱し、リッチ液4とリーン液5とを熱交換させる。このことにより、再生塔30から排出されたリーン液5が熱源となって、第1熱交換器31から排出されたリッチ液4が加熱される。加熱されたリッチ液4は、第2熱交換器32から再生塔30に向けて排出され、リーン液5は、第2熱交換器32から第1熱交換器31に向けて排出される。すなわち、第2熱交換器32は、第1熱交換器31から排出されたリッチ液4を、リーン液5を用いて加熱し、加熱に用いられたリーン液5を第1熱交換器31に向けて排出するように構成されている。
熱交換器70のうちの第1熱交換器31および第2熱交換器32に用いる熱交換器のタイプは特に限られることはなく、プレート型熱交換器や、シェルアンドチューブ型熱交換器、二重管式熱交換器など任意のタイプの熱交換器を用いることができる。なお、図1においては、一例として、プレート型熱交換器を模式的に示している。
ところで、再生塔30は、再生塔30内に収容され、リッチ液4から二酸化炭素を放出させる再生部30a(充填層またはトレイ)を有している。この再生部30aは、向流型気液接触装置として構成されている。
再生塔30には、リボイラー35が連結されている。このリボイラー35は、加熱媒体6によって、再生塔30から供給されるリーン液5を加熱して蒸気7を発生させ、発生した蒸気7が再生塔30に供給される。より具体的には、リボイラー35には、再生塔30の底部から排出されるリーン液5の一部が供給されるとともに、例えばボイラー(図示せず)などの外部から加熱媒体6(高温の蒸気)が供給される。すなわち、この供給された加熱媒体6からリーン液5に熱エネルギが投入され、この熱エネルギの投入量が、再生塔30においてリッチ液4から二酸化炭素を放出させるために再生塔30に投入される熱エネルギの投入量に相当する。リボイラー35に供給されたリーン液5は、加熱媒体6と熱交換することによって加熱されて、リーン液5から蒸気7が生成される。この際、リーン液5から二酸化炭素も放出され得る。生成された蒸気7は二酸化炭素とともに再生塔30の下部に供給され、再生塔30内のリッチ液4を加熱し、リッチ液4の温度を高めている。なお、加熱媒体6は、高温の蒸気に限られることはない。
再生塔30の下部に供給された蒸気7は、再生塔30内を再生部30aに向って上昇する。一方、吸収塔20からのリッチ液4は、分散落下して再生部30aに供給される。再生部30aにおいて、リッチ液4と蒸気7とが気液接触して、リッチ液4から二酸化炭素が放出されてリーン液5が生成される。このようにして再生塔30において吸収液が再生されている。
生成されたリーン液5は、再生塔30の底部から排出され、リッチ液4と気液接触した蒸気7は、更に二酸化炭素を含有した再生塔排ガス8として再生塔30の塔頂から排出される。
第1熱交換器31と吸収塔20との間には、第1熱交換器31から吸収塔20に供給されるリーン液5を冷却するリーン液用冷却器36が設けられている。リーン液用冷却器36には、外部から冷却水等の冷却媒体が供給され、リーン液用冷却器36は、第1熱交換器31において冷却されたリーン液5を更に冷却する。
リーン液用冷却器36において冷却されたリーン液5は、吸収塔20の吸収部20aに供給される。吸収部20aにおいて、リーン液5はプロセス排ガス2と気液接触してプロセス排ガス2に含有される二酸化炭素がリーン液5に吸収されてリッチ液4となる。このようにして、二酸化炭素回収システム1では、吸収液がリーン液5となる状態とリッチ液4となる状態とを繰り返しながら循環するようになっている。
図1に示す二酸化炭素回収装置1は、再生塔30の塔頂から排出された再生塔排ガス8を冷却し、蒸気を凝縮して凝縮水9を生成するガス用冷却器40と、ガス用冷却器40により生成された凝縮水9を再生塔排ガス8から分離する気液分離器41と、を更に備えている。このようにして、再生塔排ガス8に含有される水分が低減されて、気液分離器41から二酸化炭素ガス10として排出される。排出された二酸化炭素ガス10は、図示しない設備に供給されて貯蔵される。一方、気液分離器41において分離された凝縮水9は、その自重(または図示しない凝縮水用ポンプ)によって再生塔30に戻され、リッチ液4と混合する。なお、ガス用冷却器40には、外部から、再生塔排ガス8を冷却するための冷却媒体(例えば、冷却水)が供給されるようになっている。
吸収塔20と再生塔30との間には、これらの間で加熱されるリッチ液4の状態を測定するリッチ液状態測定手段が設けられている。本実施の形態においては、熱交換器70のうち第1熱交換器31と第2熱交換器32との間に、リッチ液状態測定手段としてのボイド率計測器50が設けられており、熱交換器70での(とりわけ、第1熱交換器31と第2熱交換器32との間の)リッチ液4の状態(本実施形態ではボイド率)が測定(計測)されている。このボイド率計測器50は、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4のボイド率を計測する。計測されたボイド率は、後述する制御部52に送信される。ボイド率計測器50に用いる計測器のタイプは特に限られることはないが、例えば、電気抵抗変化や光屈折率変化を用いてボイド率を計測可能な計測器、コリオリ式流量計などを用いることができる。
第2熱交換器32と再生塔30との間に、圧力調節弁51(圧力調節部)が設けられている。この圧力調節弁51は、本実施の形態では、吸収塔20と再生塔30との間で加熱されるリッチ液4のうち第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の圧力を調節する。
上述した圧力調節弁51は、制御部52によって、リッチ液状態測定手段により測定された、吸収塔20と再生塔30との間のリッチ液4の状態に基づいて制御されるようになっている。より具体的には、制御部52は、ボイド率計測器50により計測されたリッチ液4のボイド率が所定の目標ボイド率になるように圧力調節弁51を制御してリッチ液4の圧力を調節する。本実施の形態においては、制御部52は、圧力調節弁51に開度調節指令を送信し、圧力調節弁51の開度を調節して、リッチ液4の圧力を調節する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用として、二酸化炭素回収方法(二酸化炭素回収システムの運転方法)について説明する。
二酸化炭素回収システム1を運転している間、プロセス排ガス2に含有される二酸化炭素は、吸収塔20で、再生塔30から排出されたリーン液5に吸収される。二酸化炭素を吸収したリーン液5は、リッチ液4として吸収塔20から再生塔30に向けて排出される。吸収塔20から供給されたリッチ液4は、再生塔30で加熱されて二酸化炭素を放出する。二酸化炭素を放出したリッチ液4は、リーン液5として再生塔30から吸収塔20に向けて排出される。
二酸化炭素回収システム1を運転している間、吸収塔20と再生塔30との間で、吸収塔20から排出されたリッチ液4は、再生塔30から排出されたリーン液5と熱交換する。より具体的には、吸収塔20から排出されたリッチ液4は、第1熱交換器31に供給されて、第2熱交換器32から排出されたリーン液5を用いて加熱される。ここで、吸収塔20から排出されるリッチ液4の温度は比較的低いため、当該リッチ液4は、液体の単相となっている。一方、第2熱交換器32から排出されるリーン液5の温度は比較的高いため、単相のリッチ液4が第1熱交換器31において加熱される。そして、加熱されたリッチ液4は、第1熱交換器31から第2熱交換器32に向けて排出される。
第1熱交換器31から排出されたリッチ液4は、第2熱交換器32に供給されて、再生塔30から排出されたリーン液5を用いて加熱される。ここで、第1熱交換器31から排出されるリッチ液4の温度は比較的低く、再生塔30から排出されるリーン液5の温度は比較的高いため、リッチ液4が第2熱交換器32において加熱される。そして、加熱されたリッチ液4は、第2熱交換器32から再生塔30に向けて排出される。このようにして、リーン液5と熱交換したリッチ液4は、再生塔30に向けて排出される。
このように、単相流として第1熱交換器31に流入したリッチ液4は、第1熱交換器31および第2熱交換器32においてリーン液5によって加熱される。このことにより、リッチ液4の温度は、第1熱交換器31内および第2熱交換器32内を流れ進むに従って上昇する。そして、所定の温度に達すると、リッチ液4から水蒸気と二酸化炭素ガスが発生して、リッチ液4は単相流から気液二相流に遷移する。リッチ液4が二相流に遷移する遷移点は、第1熱交換器31内および第2熱交換器32内のリッチ液4の流路のうちのいずれかの位置にある。このため、少なくとも第1熱交換器31に流入する際にはリッチ液4は単相流になっているとともに、少なくとも第2熱交換器32から流出される際には、リッチ液4は二相流になっている。
リッチ液4が二相流に遷移する際の温度は、リッチ液4の二酸化炭素濃度および圧力に依存する。このため、リッチ液4の二酸化炭素濃度および圧力に応じて、リッチ液4が二相流に遷移する遷移点の位置が変化し得る。しかしながら、本実施の形態では、この遷移点の位置が、リッチ液4の圧力を調節することにより調節される。
より具体的には、吸収塔20と再生塔30との間のリッチ液4の状態、すなわち第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4のボイド率が、ボイド率計測器50により計測される。そして、計測されたリッチ液4のボイド率が所定の目標ボイド率になるように圧力調節弁51の開度が制御部52によって調節される。このことにより、計測されたリッチ液4のボイド率に基づいてリッチ液4の圧力が調節される。例えば、計測されたボイド率が目標ボイド率よりも小さい場合には、圧力調節弁51の開度を大きくしてリッチ液4の圧力を低くし、計測されたボイド率が目標ボイド率よりも高い場合には、圧力調節弁51の開度を小さくしてリッチ液4の圧力を高める。このため、リッチ液4の二酸化炭素濃度変化や圧力変化によらずに、リッチ液4のボイド率を目標ボイド率に調節することが可能になる。ここで、目標ボイド率は、リッチ液4から二酸化炭素を放出させるために再生塔30に投入される熱エネルギの投入量が最小となるようなボイド率であることが好適である。また、リッチ液4の圧力およびボイド率の関係は、予め実験などにより求めておき、制御部52に記憶しておくことが好ましい。このようにして記憶された関係を用いることにより、計測されたボイド率に基づいて、目標ボイド率となる目標圧力値を算出することが可能になる。
ボイド率計測器50により計測されたリッチ液4のボイド率が目標ボイド率になると、リッチ液4の二相流への遷移点を、適切な位置、すなわち、再生塔30に投入される熱エネルギの投入量を最小にすることが可能な位置に位置づけることができる。このことにより、高い伝熱効率でリッチ液4を加熱することができる単相流のリッチ液4の流路長を長くすることができ、リッチ液4の加熱効率を向上させることができる。また、第2熱交換器32から排出されて再生塔30に供給されるリッチ液4のボイド率が低下することを抑制できる。例えば、遷移点は、第1熱交換器31のリッチ液4の出口付近や第2熱交換器32のリッチ液4の入口付近に位置づけられることが好ましいが、再生塔30への熱エネルギの投入量を低減可能であれば、遷移点は、第1熱交換器31内の任意の位置に位置づけられてもよく、あるいは第2熱交換器32内の任意の位置に位置づけられていてもよい。
このように本実施の形態によれば、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4のボイド率が、所定の目標ボイド率になるように、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の圧力が調節される。このことにより、リッチ液4が単相流から二相流に遷移する遷移点を、リッチ液4の流路のうち適切な位置に位置づけることができる。このため、リッチ液4を高い伝熱効率で加熱することができるとともに、第2熱交換器32から排出される際のリッチ液4のボイド率の低下を抑制できる。この結果、再生塔30への熱エネルギの投入量を低減することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図2を用いて、本発明の第2の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法について説明する。
図2に示す第2の実施の形態においては、リッチ液状態測定手段が測定するリッチ液の状態を、吸収塔と再生塔との間のリッチ液の温度および二酸化炭素濃度とし、これらの吸収塔と再生塔との間のリッチ液の温度および二酸化炭素濃度に基づいて、リッチ液の圧力が調節される点が主に異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図2において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図2に示すように、本実施の形態においては、熱交換器70のうちの第1熱交換器31と第2熱交換器32との間に、リッチ液状態測定手段としての圧力計測器60、温度計測器61および濃度計測器62が設けられている。図2では、圧力計測器60、温度計測器61および濃度計測器62が、この順に配列されている例が示されているが、配列順はこれに限られることはない。
圧力計測器60は、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の圧力を計測する。計測された圧力値は、制御部52に送信される。温度計測器61は、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の状態として当該リッチ液4の温度を計測する。計測された温度値は、制御部52に送信される。濃度計測器62は、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の状態として当該リッチ液4の二酸化炭素濃度(以下単に「濃度」と記す)を計測する。計測された濃度値は、制御部52に送信される。
本実施の形態における制御部52は、温度計測器61により計測されたリッチ液4の温度と、濃度計測器62により計測されたリッチ液4の濃度とに基づいて、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4のボイド率を計算式などを用いて推定し、推定したボイド率が所定の目標ボイド率になるような目標圧力値を算出する。そして、制御部52は、圧力計測器60により計測されたリッチ液4の圧力が目標圧力値になるように、圧力調節弁51を制御してリッチ液4の圧力を調節する。
本実施の形態においては、二酸化炭素回収システム1を運転している間、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の圧力が圧力計測器60により計測され、当該リッチ液4の温度が温度計測器61により計測され、当該リッチ液4の濃度が濃度計測器62により計測される。そして、計測されたリッチ液4の温度および濃度から、リッチ液4の目標圧力値が算出される。目標圧力値が算出されると、計測されたリッチ液4の圧力が、当該目標圧力値になるように圧力調節弁51の開度が制御部52によって調節される。このことにより、リッチ液4の圧力が調節される。例えば、計測された圧力が目標圧力値よりも小さい場合には、圧力調節弁51の開度を小さくしてリッチ液4の圧力を高くし、計測された圧力が目標圧力値よりも大きい場合には、圧力調節弁51の開度を大きくしてリッチ液4の圧力を低くする。このため、リッチ液4の濃度変化や圧力変化によらずに、リッチ液4のボイド率を目標ボイド率に調節することが可能になる。ここで、リッチ液4の圧力、温度、濃度、およびボイド率の関係は、予め実験などにより求めておき、制御部52に記憶しておくことが好ましい。このようにして記憶された関係を用いることにより、計測された温度および濃度に基づいて、目標ボイド率となる目標圧力値を算出することが可能になる。
このように本実施の形態によれば、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4の圧力が、所定の目標圧力値になるように、第2熱交換器32から排出されて再生塔30に供給されるリッチ液4の圧力が調節される。このことにより、第1熱交換器31から排出されて第2熱交換器32に供給されるリッチ液4のボイド率を、所定の目標ボイド率にすることができ、リッチ液4が単相流から二相流に遷移する遷移点を適切な位置に位置づけることができる。このため、リッチ液4を高い伝熱効率で加熱することができるとともに、第2熱交換器32から排出される際のリッチ液4のボイド率の低下を抑制できる。この結果、再生塔30への熱エネルギの投入量を低減することができる。
(第3の実施の形態)
次に、図3を用いて、本発明の第3の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法について説明する。
図3に示す第3の実施の形態においては、吸収塔と再生塔との間の熱交換器を1台とし、この熱交換器内のリッチ液の状態をリッチ液状態測定手段により測定する点が主に異なり、他の構成は、図1に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図3において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図3に示すように、本実施の形態においては、吸収塔20と再生塔30との間には、図1に示すような第1熱交換器31および第2熱交換器32により構成された熱交換器70ではなく、単一の熱交換器70が設けられている。本実施の形態による熱交換器70は、吸収塔20から排出されたリッチ液4を、再生塔30から排出されたリーン液5を用いて加熱し、リッチ液4とリーン液5とを熱交換させる。このことにより、リーン液5が熱源となって、リッチ液4が加熱される。加熱されたリッチ液4は、熱交換器70から再生塔30に向けて排出され、リーン液5は、熱交換器70から吸収塔20に向けて排出される。本実施の形態による熱交換器70に用いる熱交換器のタイプは、第1熱交換器31および第2熱交換器32と同様に、特に限られることはない。なお、図3においては、一例として、プレート型熱交換器を模式的に示している。
本実施の形態においても、吸収塔20と再生塔30との間で加熱されるリッチ液4の状態を測定するリッチ液状態測定手段としてボイド率計測器50が設けられている。図3に示すように、本実施の形態によるボイド率計測器50は、熱交換器70内のリッチ液4のボイド率を計測する。このボイド率計測器50は、熱交換器70内のリッチ液4の流路のうち、入口と出口との間の所定の位置におけるリッチ液4のボイド率を計測するようになっている。ボイド率の計測位置は、熱交換器70のタイプや構成に応じて任意とすることができる。例えば、ボイド率計測器は、熱交換器70内のマニホールド部に設置することが好適である。
また、本実施の形態による圧力調節弁51は、熱交換器70と再生塔30との間に設けられており、熱交換器70内のリッチ液4の圧力を調節する。
二酸化炭素回収システム1を運転している間、吸収塔20から排出されたリッチ液4は、熱交換器70に供給されて、再生塔30から排出されたリーン液5を用いて加熱される。ここで、吸収塔20から排出されるリッチ液4の温度は比較的低いため、液体の単相となっている。一方、再生塔30から排出されるリーン液5の温度は比較的高いため、単相のリッチ液4が熱交換器70において加熱される。そして、加熱されたリッチ液4は、熱交換器70から再生塔30に向けて排出される。
このように、単相流として熱交換器70に流入したリッチ液4は、熱交換器70においてリーン液5によって加熱される。このことにより、リッチ液4の温度は、熱交換器70内を流れ進むに従って上昇する。そして、所定の温度に達すると、リッチ液4から水蒸気と二酸化炭素ガスが発生して、リッチ液4は単相流から気液二相流に遷移する。リッチ液4が二相流に遷移する遷移点は、熱交換器70内のリッチ液4の流路のうちのいずれかの位置にある。このため、少なくとも熱交換器70に流入する際にはリッチ液4は単相流になっているとともに、少なくとも熱交換器70から流出される際には、リッチ液4は二相流になっている。
本実施の形態では、熱交換器70内の所定の位置を流れるリッチ液4のボイド率が、ボイド率計測器50により計測される。そして、計測されたリッチ液4のボイド率が所定の目標ボイド率になるように圧力調節弁51の開度が制御部52によって調節される。このことにより、熱交換器70内のリッチ液4の圧力が調節される。例えば、計測されたボイド率が目標ボイド率よりも小さい場合には、圧力調節弁51の開度を大きくしてリッチ液4の圧力を低くし、計測されたボイド率が目標ボイド率よりも高い場合には、圧力調節弁51の開度を小さくしてリッチ液4の圧力を高める。このため、リッチ液4の二酸化炭素濃度変化や圧力変化によらずに、リッチ液4のボイド率を目標ボイド率に調節することが可能となる。
ボイド率計測器50により計測されたリッチ液4のボイド率が目標ボイド率になると、リッチ液4の二相流への遷移点を、適切な位置、すなわち、再生塔30に投入される熱エネルギの投入量を最小にすることが可能な位置に位置づけることができる。このことにより、高い伝熱効率でリッチ液4を加熱することができる単相流のリッチ液4の流路長を長くすることができ、リッチ液4の加熱効率を向上させることができる。また、熱交換器70から排出されて再生塔30に供給されるリッチ液4のボイド率が低下することを抑制できる。なお、熱交換器70を1台設けた本実施の形態における遷移点の位置は、例えば、熱交換器70のリッチ液4の入口と出口との間となるが、再生塔30への熱エネルギの投入量を低減可能であれば、遷移点の位置は熱交換器70のリッチ液4の入口と出口との間に限られることはなく任意である。
このように本実施の形態によれば、熱交換器70内のリッチ液4のボイド率が、所定の目標ボイド率になるように、熱交換器70から排出されて再生塔30に供給されるリッチ液4の圧力が調節される。このことにより、リッチ液4が単相流から二相流に遷移する遷移点を熱交換器70内のリッチ液4の流路のうち適切な位置に位置づけることができる。このため、リッチ液4を高い伝熱効率で加熱することができるとともに、熱交換器70から排出される際のリッチ液4のボイド率の低下を抑制できる。この結果、再生塔30への熱エネルギの投入量を低減することができる。
(第4の実施の形態)
次に、図4を用いて、本発明の第4の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法について説明する。
図4に示す第4の実施の形態においては、リッチ液状態測定手段が測定するリッチ液の状態を、吸収塔と再生塔との間のリッチ液の温度および二酸化炭素濃度とし、これらの吸収塔と再生塔との間のリッチ液の温度および二酸化炭素濃度に基づいて、リッチ液の圧力が調節される点が主に異なり、他の構成は、図3に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図4において、図3に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図4に示すように、本実施の形態における二酸化炭素回収システム1は、リッチ液状態測定手段としての、例えば、図2に示すような圧力計測器60、温度計測器61および濃度計測器62を備えている。
図4に示す形態では、圧力計測器60は、熱交換器70内のリッチ液4の圧力を計測する。この圧力計測器60は、熱交換器70内のリッチ液4の流路のうち、入口と出口との間の所定の位置におけるリッチ液4の圧力を計測するようになっている。温度計測器61は、熱交換器70内のリッチ液4の温度を計測し、濃度計測器62は、熱交換器70内のリッチ液4の二酸化炭素濃度(以下単に「濃度」と記す)を計測する。これら温度計測器61および濃度計測器62は、熱交換器70内のリッチ液4の流路のうち、入口と出口との間の所定の位置におけるリッチ液4の温度、濃度をそれぞれ計測するようになっている。
圧力、温度および濃度の計測位置は、熱交換器70のタイプや構成に応じて任意とすることができる。例えば、圧力計測器、温度計測器および濃度計測器は、熱交換器70内のマニホールド部に設置することが好適である。
本実施の形態による制御部52は、温度計測器61により計測されたリッチ液4の温度と、濃度計測器62により計測されたリッチ液4の濃度とに基づいて、熱交換器70内のリッチ液4のボイド率を計算式などを用いて推定し、推定したボイド率が所定の目標ボイド率になるような目標圧力値を算出する。そして、制御部52は、圧力計測器60により計測されたリッチ液4の圧力が、目標圧力値になるように、圧力調節弁51を制御してリッチ液4の圧力を調節する。
本実施の形態においては、二酸化炭素回収システム1を運転している間、熱交換器70内を流れるリッチ液4の圧力が圧力計測器60により計測され、当該リッチ液4の温度が温度計測器61により計測され、当該リッチ液4の濃度が濃度計測器62により計測される。そして、計測されたリッチ液4の温度および濃度から、リッチ液4の目標圧力値が算出される。目標圧力値が算出されると、計測されたリッチ液4の圧力が、当該目標圧力値になるように圧力調節弁51の開度が制御部52によって調節される。このことにより、リッチ液4の圧力が調節される。例えば、計測された圧力が目標圧力値よりも小さい場合には、圧力調節弁51の開度を小さくしてリッチ液4の圧力を高くし、計測された圧力が目標圧力値よりも大きい場合には、圧力調節弁51の開度を大きくしてリッチ液4の圧力を低くする。このため、リッチ液4の濃度変化や圧力変化によらずに、リッチ液4のボイド率を目標ボイド率に調節することが可能となる。ここで、リッチ液4の圧力、温度、濃度、およびボイド率の関係は、予め実験などにより求めておき、制御部52に記憶しておくことが好ましい。このようにして記憶された関係を用いることにより、計測された温度および濃度に基づいて、目標ボイド率となる目標圧力値を算出することが可能となる。
このように本実施の形態によれば、熱交換器70内のリッチ液4の圧力が、所定の目標圧力値になるように、熱交換器70から排出されて再生塔30に供給されるリッチ液4の圧力が調節される。このことにより、熱交換器70内のリッチ液4のボイド率を、所定の目標ボイド率にすることができ、リッチ液4が単相流から二相流に遷移する遷移点を適切な位置に位置づけることができる。このため、リッチ液4を高い伝熱効率で加熱することができるとともに、熱交換器70から排出される際のリッチ液4のボイド率の低下を抑制できる。この結果、再生塔30への熱エネルギの投入量を低減することができる。
以上述べた実施の形態によれば、再生塔への熱エネルギの投入量を低減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。