JP2017132837A - 複合材料とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボンナノチューブにチオフェン重合体が内包されるとともに、所望のハロゲンイオンがドープされてなる新規な複合材料を提供することである。【解決手段】ここで開示される複合材料は、チオフェン骨格を有するチオフェン重合体と、ハロゲンと、これらを内部に収容するカーボンナノチューブと、を含む。この複合材料は、末端がハロゲンで終端されたハロゲン化オリゴチオフェンを用意すること;少なくとも一部が開環されたカーボンナノチューブを用意すること;カーボンナノチューブの内部にハロゲン化オリゴチオフェンを導入すること;および、ハロゲン化オリゴチオフェンをカーボンナノチューブの内部で熱重合させ、チオフェン重合体を作製すること;により製造することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、複合材料に関する。より詳細には、カーボンナノチューブにチオフェン重合体が内包されている複合材料と、その製造方法に関する。
芳香環や多重結合を有するπ共役系化合物は、様々な有機機能材料として幅広く用いられている。とくに、硫黄原子を含む5員環のヘテロ芳香族化合物であるチオフェンが複数個連なったオリゴチオフェン、ポリチオフェンは、有機導電性材料、有機半導体材料等として広く応用が期待されている。
導電性高分子を合成する方法としては、一般的に、π共役系分子を電解重合、触媒を用いた化学重合および熱重合等で重合させる手法が知られている。これらのうち、熱重合は、電解液や触媒を必要としないため、比較的低コストで原料の無駄を抑えることができるという利点がある。また熱重合に際しては、適度に高い高温で重合を行うことで反応速度を高めることが可能となる。しかしながら、導電性高分子をナノスケールで製造する場合、高温環境では分子運動が活発化してπ共役系分子が二次元あるいは三次元的に熱重合してしまう。そのため、導電経路となるπ共役領域の拡張が抑制され、導電性の高い導電性高分子を得ることは困難となっていた。そこで、ナノスケールの円筒状物質を一次元テンプレートとして用い、このテンプレートにπ共役系分子を内包して、テンプレートの内部でπ共役系分子を重合させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1)。
第45回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム予稿集、第20頁、発表番号1−12
非特許文献1には、カーボンナノチューブ(CNTs)にオリゴチオフェンを内包し、熱重合反応によってポリチオフェンを合成する技術が報告されている。非特許文献1の技術においては、ポリチオフェンの合成に400℃程度の高温での加熱が必要とされる。また、ポリチオフェンへの正孔ドーピングは、電気化学的手法により実現されることが開示されている。したがって、非特許文献1では、正孔ドーピングのための物質およびその環境の準備を必要とし、合成後の工程が増すという欠点があった。また、非特許文献1の手法によると、400℃程度の高温での加熱が必要となるため、熱耐性に乏しい材料については分解が同時に進行してしまうという副次的な欠点もあった。さらに、出力の高い炉を使用する必要があり、消費電力が高くなってしまっていた。
本発明は、上記の従来技術の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、カーボンナノチューブにチオフェン重合体が内包されているとともに、所望のハロゲンイオンがドープされてなる新規な複合材料を提供することである。また他の側面として、この複合材料の新規な製造方法を提供することである。
ここに開示される技術は、チオフェン骨格を有するチオフェン重合体と、ハロゲンと、上記チオフェン重合体および上記ハロゲンを内部に収容するカーボンナノチューブと、
を含む、複合材料を提供する。
ハロゲンは求電子性を有するため、カーボンナノチューブ内にチオフェン重合体とハロゲンとが存在することで、正孔ドーピングが実現される。また、チオフェン重合体は一次元のケースであるカーボンナノチューブに収容されているため、π共役系が直線状(もしくは一次元的)に重合(もしくは成長)し、移動度が高い材料が得られることが期待される。これにより、これまでにない構成の新規な複合材料が実現される。
ここに開示される複合材料の好適な一態様について、上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであることを特徴としている。これにより、例えば、カーボンナノチューブ部分の電気伝導性を、金属性または半導体性に好適に制御し得るために好ましい。
ここに開示される複合材料の好適な一態様について、上記カーボンナノチューブの内径は、0.9nm以上3nm以下であることを特徴としている。これにより、カーボンナノチューブの軸方向に沿ってチオフェン重合体が配向された状態で導入される。このことにより、移動度のさらに高いチオフェン重合体が得られることが期待される。
ここに開示される複合材料の好適な一態様について、上記チオフェン重合体は、下記一般式で表される構造を含む化合物またはその誘導体を含む。ただし、式中、R及びRは、それぞれ独立の水素原子、ハロゲン原子又は有機官能基であり、nは4以上の整数である。これにより、チオフェン重合体に対するハロゲンの割合を好適に制御することができて好ましい。
ここに開示される複合材料の好適な一態様について、上記ハロゲンは、3つ以上のハロゲンを含むポリハロゲンイオンであることを特徴としている。これにより、チオフェン重合体のドーピングが安定的に実現される。
ここに開示される複合材料の好適な一態様について、上記ハロゲンは、臭素(Br)およびヨウ素(I)の少なくとも一方を含むことを特徴としている。これらの元素は、求電子性が高く、導電性が付与されたチオフェン重合体と安定して共存し得るために好ましい。
ここに開示される複合材料の好適な一態様について、複数の上記カーボンナノチューブが膜状に集合されていることを特徴とする。これにより、膜状の複合材料が提供される。
他の側面において、ここに開示される技術は、上記のいずれかに記載の複合材料を含む、光吸収材料を提供する。この複合材料は、ハロゲンイオンがドーピングされているため、最大吸収ピークが低エネルギー側にシフトされて、吸収帯域が拡大されている。これにより、ハロゲンイオンがドープされていない状態のチオフェン重合体およびカーボンナノチューブよりも広い波長範囲にわたる光を吸収することができる。
他の側面において、ここに開示される技術は、上記のいずれかに記載の複合材料を含む電子素子を提供する。この複合材料は、π共役系であるカーボンナノチューブの内部に、π共役系のチオフェン重合体が内包されている。したがって、例えば、カーボンナノチューブが金属的性質を有するとき、カーボンナノチューブの帯電状況を制御することで、内包されるチオフェン重合体やハロゲンに静電エネルギーを蓄えることができる。例えばこのような特性を利用して、ナノオーダーのサイズの各種の電子素子を実現することができる。
他の側面において、ここに開示される技術は、複合材料の製造方法を提供する。この製造方法は、末端がハロゲンで終端されたハロゲン化オリゴチオフェンを用意すること;少なくとも一部が開環されたカーボンナノチューブを用意すること;上記カーボンナノチューブの内部に上記ハロゲン化オリゴチオフェンを導入すること;および、上記ハロゲン化オリゴチオフェンを上記カーボンナノチューブの内部で熱重合させ、チオフェン重合体を作製すること;を含む。これにより、従来よりも低い温度域でオリゴチオフェンの熱重合を実現することができる。また、熱重合と同時に、ポリハロゲンイオンのドーピングを簡便に実現することができる。
ここに開示される製造方法の好適な一態様について、上記カーボンナノチューブの内径は、0.9nm以上3nm以下であることを特徴としている。これにより、カーボンナノチューブの軸方向に沿って、ハロゲン化オリゴチオフェンを導入することができ、一次元的にハロゲン化オリゴチオフェンを重合させることができる。
ここに開示される製造方法の好適な一態様について、上記ハロゲン化オリゴチオフェンは、末端がハロゲンで終端されたビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン又はそれらの誘導体であることを特徴としている。これにより、熱重合後のチオフェン重合体に対して、適量のハロゲンイオンをドープすることができる。
一実施形態に係る複合材料の製造方法を模式的に説明したフロー図である。 一実施形態に係る(a)単層カーボンナノチューブ(SWNT)およびジブロモターチオフェン内包単層カーボンナノチューブ(Br−3T@SWNT)の線形光吸収スペクトルと、(b)その差分スペクトルである。 一実施形態に係るBr−3Tの内包時間を変えたときのBr−3T@SWNTの差分スペクトルである。 一実施形態に係る熱重合する前後のBr−3T@SWNT(24h)の差分スペクトルである。 一実施形態に係る複合材料の(a)EDSスペクトル、(b)全体SEM像、(c)EDS分析領域SEM像、(d)Brマップおよび(e)Sマップである。 一実施形態に係る複合材料のラマンスペクトルである。 参照例の(a)SWNTおよびターチオフェン内包SWNT(3T@SWNT)の線形光吸収スペクトルと、(b)その差分スペクトルである。 熱重合させた3T@SWNTの差分スペクトルである。 (a)帯電前および(b)帯電後の複合材料を利用する電子素子を説明する図である。
以下、本技術が提供する複合材料の好適な製造方法について説明しながら、かかる複合材料の特徴について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、複合材料を構成する原料の入手法、電子素子の構築等に係る一般的事項等)は、当該分野における出願当時の技術常識に基づき当業者は把握することができる。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と、当該分野における出願時の技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「X〜Y」との表記は、「X以上Y以下」を意味する。
ここに開示される技術は、チオフェン骨格を有するチオフェン重合体と、ハロゲンとが、カーボンナノチューブ内に収容されている複合材料を提供する。この複合材料の製造方法は必ずしも限定されないが、好適な一実施形態を以下に説明する。
ここに開示される複合材料の製造方法は、図1に示したように、本質的に、以下の工程を含む。
(S1)ハロゲン化オリゴチオフェンの用意
(S2)開環されたカーボンナノチューブの用意
(S3)カーボンナノチューブ内部へのハロゲン化オリゴチオフェンの導入
(S4)ハロゲン化オリゴチオフェンの熱重合
なお、上記工程S1およびS2は、それぞれ工程S3に先立って実施すればよく、工程S1と工程S2との間の順番等に特に制限はない。工程S1と工程S2とは、いずれか一方を先に行ってもよいし、両者を並行または同時に実施してもよい。以下、各工程について説明する。
[S1:ハロゲン化オリゴチオフェンの用意]
工程S1では、ハロゲン化オリゴチオフェンを用意する。ハロゲン化オリゴチオフェンは、複合材料においてカーボンナノチューブ内に収容されるチオフェン重合体の前駆体ともいえる原料である。このハロゲン化オリゴチオフェンは、オリゴチオフェン(oligothiophene)の末端がハロゲンで終端された有機化合物である。換言すると、オリゴチオフェンの端に位置するチオフェン環の2位または3位(典型的には2位)にハロゲンが配位したものであり得る。
ハロゲン化オリゴチオフェンにおけるハロゲンは、後述の工程S3における熱重合を低温で実施するために欠かせない要素である。ハロゲンは、オリゴチオフェンの両末端に配位していてもよいし、いずれか一方の末端に配位していてもよい。好ましくは両末端に配位したジハロゲン化オリゴチオフェンである。ハロゲンの種類は特に制限されず、元素周期律表の各種の第17族元素であってよい。典型的には、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等を上げることができる。これらはいずれか1種であってもよいし、2種以上が組み合わされていてもよい。好ましくは、BrおよびIの少なくとも一方を含む態様であり得る。
オリゴチオフェンは、5員環構造を有する含硫黄複素環式化合物の一種であるチオフェン(CS)のオリゴマーおよびその誘導体である。オリゴチオフェンは、代表的なπ共役系分子の一つであり、直鎖状に連結したものを好ましく用いることができる。換言すると、ハロゲン化オリゴチオフェンは、直鎖状π共役系分子であり得る。
なお、本明細書において、「オリゴマー」とは、モノマーであるチオフェンが直列に結合した比較的分子量が低い重合体を意味し、重合するモノマーの数(重合数)、すなわち代表的には[CS]で表されるチオフェン単位の繰り返し数は厳密には制限されない。すなわち、複合材料におけるチオフェン重合体の前駆体として理解することができる。
このようなオリゴチオフェン(典型的には、[CS]mで表される)におけるチオフェン単位の繰り返し数mは、おおよその目安として、2以上とすることができ、3以上が好ましく、例えば4以上であってもよい。オリゴチオフェンにおけるモノマー数が大きすぎると昇華が困難となり、後述の化学気相法等によりハロゲン化オリゴチオフェンをカーボンナノチューブへ内包させるのが困難となるために好ましくない。また、製造される複合材料においてチオフェン重合体に対するハロゲンの割合が少なくなってしまう点においても好ましくない。かかる観点から、チオフェン単位の繰り返し数mは、オリゴチオフェンの昇華が可能な重合数とすることができる。かかる繰り返し数mは、おおよその目安として、8以下とすることができ、7以下が好ましく、例えば6以下であってもよい。
このようなハロゲン化オリゴチオフェンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。5,5’−ジクロロ−2,2’−ビチオフェン、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、5,5’−ジヨード−2,2’−ビチオフェン、5−ブロモ−2,2’−ビチオフェン−5’−カルボキシアルデヒド等のチオフェン二量体;5,5”−ジクロロ−2,2’:5’,2”−ターチオフェン、5,5”−ジブロモ−2,2’:5’,2”−ターチオフェン、5,5”−ジヨード−2,2’:5’,2”−ターチオフェン、5”−ブロモ−2,2’:5’,2”−ターチオフェン−5−カルボキシアルデヒド等のチオフェン三量体;5,5’’’−ジブロモ−2,2’:5’,2”:5”,2’’’−クォーターチオフェン等のチオフェン四量体;等である。
なお、例えば、3,3’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、3’−ブロモ−2,2’:5’,2”−ターチオフェンのように、その末端の2位または3位にハロゲンが配位していない物質については、ここでいうところのハロゲン化チオフェンとしては使用することができない。
また、5,5’’’’−ジブロモ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−ペンタチオフェン、5,5’’’’−ジクロロ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−ペンタチオフェン、5,5’’’’−ジヨード−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’−ペンタチオフェン等の五量体;5,5’’’’’−ジブロモ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セキシチオフェン、5,5’’’’’−ジクロロ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セキシチオフェン、5,5’’’’’−ジヨード−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セキシチオフェン等の六量体;5,5’’’’’’−ジブロモ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’:5’’’’’,2’’’’’’−セプチチオフェン、5,5’’’’’’−ジクロロ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’:5’’’’’,2’’’’’’−セプチチオフェン、5,5’’’’’’−ジヨード−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’:5’’’’’,2’’’’’’−セプチチオフェン等の七量体;5,5’’’’’’’−ジブロモ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’:5’’’’’,2’’’’’’:5’’’’’’,2’’’’’’’−オクチチオフェン、5,5’’’’’’’−ジクロロ−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’:5’’’’’,2’’’’’’:5’’’’’’,2’’’’’’’−オクチチオフェン、5,5’’’’’’’−ジヨード−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’:5’’’’’,2’’’’’’:5’’’’’’,2’’’’’’’−オクチチオフェン等の八量体;等である。しかしながら、ハロゲン化オリゴチオフェンは上記に例示される化合物に限定されるものではない。
なお、オリゴチオフェンは、無置換のオリゴチオフェン骨格に所望の官能基を付与することにより、電子特性の細かな調整を行えることが知られている。同様に、このハロゲン化オリゴチオフェンにおいても、オリゴチオフェン骨格に所望の官能基が付与されていてもよい。
かかる置換基としては、任意の有機官能基であってよく、例えば、一例として、炭化水素基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲノ基、ケイ素含有官能基、硫黄含有官能基、窒素含有官能基、リン含有官能基が挙げられる。より好ましくは、例えば、炭素数1〜10の直鎖,分岐又は環状のアルキル基,ビニル基,アリール基等に代表される炭化水素基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、フルオロ基,クロロ基,ブロモ基等のハロゲノ基であり得る。
このようなハロゲン化オリゴチオフェンは、市販されているものを入手してもよいし、合成して用意してもよい。合成する場合には、例えば、公知の電気化学合成法、クロスカップリング等の化学合成法を利用することができる。
[S2:開環されたカーボンナノチューブの用意]
工程S2では、少なくとも一部が開環されたカーボンナノチューブを用意する。以下、カーボンナノチューブを、単に「CNT」と記す場合がある。
CNTは、典型的には、炭素六員環ネットワークであるグラフェンシートが円筒形状に丸められた形態の炭素材料である。CNTは、1枚のグラフェンシートが丸められたような単層の筒状体(チューブ)からなる単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube;SWNT)と、この筒状体が入れ子となった多層構造の多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube;MWNT)のいずれであってもよい。例えば、単層カーボンナノチューブか2層カーボンナノチューブの使用が好ましい。
また、CNTは製造方法によることなく各種のものを用いることができる。例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相成長法等の手法により製造されたCNTであってよい。CNTは、カイラリティが調整されていて、金属的特性を示すCNTあるいは半導体的特性を示すCNTないしはその混合物を、選択して用いるようにしてもよい。なお、ここに開示される複合材料は、CNTの軸方向に沿ってチオフェン重合体が一次元的に重合されている。したがって、CNTとしても配向性の高いCNTを用いることもできる。例えば、基板に対して複数のCNTが垂直に配向した基板付きCNT集合体や、この基板付きCNT集合体から基板を除去した配向性CNT集合体等を用いるようにしてもよい。また、CNTは、2次元的に集合したCNT膜の形態であってもよい。ここで、CNTは、2次元の膜において任意の一方向に配向されていてもよい。あるいは、CNTは、2次元の膜において厚み方向で互いに交わることなく、平行に配置されていてもよい。
用意するCNTの寸法は特に制限されない。CNTは、例えば、対象とするハロゲン化オリゴチオフェンを収容し得る直径を有するものを用いることができる。なお、参考までに、ターチオフェンのチオフェン骨格に直交する方向の寸法は、おおよそ0.5nm程度と見積もることができる(例えば、図1の(S1)参照)。したがって、例えば後述の化学気相輸送法によりCNTの内部空間に上記で用意したハロゲン化オリゴチオフェンを好適に導入するとの観点からは、CNTの直径は、例えば、0.9nm以上であってよく、1.0nm以上がより好ましく、1.1nm以上が特に好ましい。
また、例えば、π共役領域の拡張を効果的に実現するためには、CNTの内部空間にハロゲン化オリゴチオフェンを、一本ずつ、重なることなく内包することが好ましい。かかる観点から、例えば、CNTの直径は、1.5nm以下が適当であり、1.4nm以下がより好ましく、例えば1.3nm以下が特に好ましい。例えば、CNTの直径は、おおよその目安として、1.2nm±0.2nm程度が好適範囲であるといえる。
なお、CNTの内部空間にハロゲン化オリゴチオフェンを、複数本ずつ重ねて内包する場合は、CNTの直径を適宜拡大することができる。例えば、ハロゲン化オリゴチオフェンを二本重ねて内包する場合、CNTの直径は、おおよそ1.3nm以上であってよく、1.4nm以上がより好ましく、1.5nm以上とすることができる。また、CNTの直径は、3nm以下が適当であり、2.9nm以下がより好ましく、例えば2.8nm以下が特に好ましい。なお、言うまでもなく、ハロゲン化オリゴチオフェンを、一本ずつ、重なることなく内包する場合に、CNTの直径を1.5nm超過とすることも可能である。
CNTについての直径は、SWNTについては筒状になったグラフェンシート(チューブ)の断面径(チューブ径)を、MWNTについては最内層のチューブのチューブ径をいう。CNTの長さも特に制限されない。ハロゲン化オリゴチオフェンは、CNT内に導入されてエネルギー的に安定となる。そのためハロゲン化オリゴチオフェンは、CNTの長さに関わらず、CNTの十分奥にまで導入され得る。したがって、CNTの長さは、例えば、所望の複合体の形状等に応じて適宜用意することができる。一例として、CNTの長さは、100nm〜10μm程度とすることができる。
以上のCNTは、少なくとも一部が開環されたものを用いるようにする。例えば、CNTの筒状体の少なくとも一方の端部(チューブ端)が解放されていたり、チューブ端やチューブ壁に孔が開いたりして、チューブ(MWNTにおいては最内層のチューブ)の内部と外部とが連通した形態のものであれば、そのままで用いることができる。この場合の孔(開孔)とは、上記で用意したハロゲン化オリゴチオフェンが通過できる程度の大きさの孔を意味する。CNTの開孔は、具体的には、0.5nmを超える大きさであればよい。例えば、0.6nm以上2nm以下程度の開孔であってよい。したがって、グラフェンシートにおける炭素六員環はここでいう開孔には含まれない。
一方で、CNTは、その生成機構に関連して、チューブ端がキャップと呼ばれるフラーレン状の半球体で閉じられ、チューブの内部と外部とが連通していない状態で生成され得る。このような場合、CNTの内部空間にハロゲン化オリゴチオフェン等を導入するには、このキャップを取ったり、チューブ壁に孔を開けたりする必要がある。そのような場合は、CNTに開環処理を施して、CNTの少なくとも一部に上記のサイズの開孔が形成されたCNT(つまり、開環されたCNT)を用意する。
CNTの開環処理の方法は特に制限されず、公知の手法を適宜採用することができる。
例えば、CNTを300℃〜700℃程度の反応性ガス雰囲気中で1分以上保持することで、単層カーボンナノチューブに直径0.4nm〜2nm程度の孔を開孔することができる。この場合の反応性ガス雰囲気とは、例えば、大気雰囲気、乾燥空気、あるいは酸素を20%程度含んだ不活性ガス(例えば、乾燥窒素ガス)等とすることができる。
また、例えば、CNTを水または有機溶媒(例えばエタノール等)中に分散させて超音波を照射することで、キャップ部分の5員環の結合を切断し、CNTのキャップを取って開環することができる。
[S3:ハロゲン化オリゴチオフェンの導入]
工程S3では、上記で用意したCNTの内部空間に、ハロゲン化オリゴチオフェンを導入する。すなわち、CNTにハロゲン化オリゴチオフェンを内包する。
ハロゲン化オリゴチオフェンの内包は、公知の各種の内包処理の手法を利用して実施することができる。好適例としては、化学気相輸送法(昇華法)、キャピラリーフィリング法等が挙げられる。化学気相輸送法では、例えば、ハロゲン化オリゴチオフェンとCNTとをガラス管内に減圧封入し、加熱してハロゲン化オリゴチオフェンを昇華させる。すると、ハロゲン化オリゴチオフェンは気相の状態でCNTに内包される。キャピラリーフィリング法は、CNTの毛細管現象を利用して、気相状態または液相状態のハロゲン化オリゴチオフェンをCNTの内部空間に導入するものである。以下、より簡便な、化学気相輸送法について説明する。
化学気相輸送法におけるガラス管の減圧レベルは、例えば、1×10−3Torr〜1×10−7Torr(好適には、1×10−4Torr〜1×10−6Torr)程度とすることができる。また、加熱温度は、ハロゲン化オリゴチオフェンが気体として安定に存在する温度範囲であり、使用するハロゲン化オリゴチオフェンによって異なり得る。具体的には、処理温度は、上記減圧雰囲気におけるハロゲン化オリゴチオフェンの気化温度を下限とし、分解温度を上限とする温度範囲として考慮することができる。おおよその目安として、90℃〜310℃(より好ましくは100℃〜200℃、例えば130℃〜150℃)程度とすることが例示される。
内包処理の時間は特に制限されないが、CNT内にハロゲン化オリゴチオフェンがこれ以上導入されない飽和状態を実現する時間であることが好ましい。具体的には、例えば、12時間以上とすることができ、18時間以上とすることがより好ましく、24時間以上とすることが特に好ましい。CNTの寸法等にもよるため一概には言えないが、内包処理の時間は、例えば、48時間以下とすることができる。
このような温度範囲では、ハロゲン化オリゴチオフェンは蒸気となり、開環されたCNTに触れて、CNTの開孔部より内部空間に取り込まれる。これによって、ハロゲン化オリゴチオフェンをCNTに内包させることができる。
なお、CNTの内部空間は、上記のとおり直径がナノメートルオーダー(典型的には、約0.9nm以上3nm以下)であり、長さは直径に対して十分に長い。したがって、このような一次元状に延びたCNTの内部空間内に、ハロゲン化オリゴチオフェンは内包される。換言すると、ハロゲン化オリゴチオフェンは、CNTの軸方向に沿って、一次元状に配向されてCNTに内包される。
このとき、CNTの直径が0.9nm以上1.5nm以下程度である場合は、CNTの内部にハロゲン化オリゴチオフェンは、概ね重なることなく、一列になって(鎖状に)導入され得る。また、CNTの直径が1.3nm以上1.5nm以下程度の場合は、CNTの内部にハロゲン化オリゴチオフェンは二列になって、並列に導入され得る。
[S4:ハロゲン化オリゴチオフェンの熱重合]
工程S4では、ハロゲン化オリゴチオフェンをCNTの内部で熱重合させ、チオフェン重合体を作製する。
熱重合反応は、ハロゲン化オリゴチオフェンを内包した状態のCNTを、例えば、一般的な重合反応と同様に、無酸素雰囲気下で加熱することで進行させることができる。具体的には、例えば、不活性雰囲気、真空雰囲気等で加熱すればよい。不活性雰囲気としては、窒素雰囲気、Ar等の希ガス雰囲気等であってよい。真空雰囲気における減圧レベルは、例えば、1×10−3Torr〜1×10−7Torr(好適には、1×10−4Torr〜1×10−6Torr)程度とすることができる。また、加熱温度は、ハロゲン化オリゴチオフェンの熱重合が安定して進行する温度範囲であり、使用するハロゲン化オリゴチオフェンによって異なり得る。おおよその目安として、150℃以上とすることができ、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。加熱温度の上限は、ハロゲン化オリゴチオフェンの熱分解が生じない温度とすることができる。おおよその目安として、400℃以下とすることができ、360℃以下がより好ましく、320℃以下が特に好ましい。好適には、例えば、250℃〜300℃程度の温度範囲とすることができる。
ここに開示される技術において、ハロゲン化オリゴチオフェンは末端をハロゲンで終端している。ハロゲン化オリゴチオフェンは、好ましくは両端がハロゲンで終端されている。したがって、ハロゲン化オリゴチオフェンがCNTに内包されたとき、隣り合うハロゲン化オリゴチオフェンの間には、二つのハロゲン基が隣り合って存在し得る。ハロゲン基は反応性が高いため、このような状態で減圧加熱を行うと、縮合重合反応が容易に生じ得る。このとき、隣り合うハロゲン化オリゴチオフェンから二つのハロゲンが脱離して、オリゴチオフェン同士が重合する。これにより、従来よりも低い重合温度で、チオフェンの重合を実施することができる。換言すると、ハロゲンで終端されていないオリゴチオフェン同士よりも、より低い温度でチオフェン重合体を得ることができる。また、CNT内に、CNTの軸方向に沿って重合されたチオフェン重合体を作製することができる。これにより、ここに開示される複合材料が製造される。
なお、ここに開示される複合材料の製造方法において、上記のハロゲン化オリゴチオフェンの熱重合のための熱処理は、1回に限定されることなく、2回以上行ってもよい。例えば、前駆体としてのハロゲン化オリゴチオフェンのチオフェン環の数が少なく、ハロゲンの寸法(原子径またはイオン径)が大きい場合等には、重合反応により一つのCNT内に複数のポリチオフェンが合成され得る。このような場合は、CNT内の複数のポリチオフェンをさらに重合させて、よりチオフェン環の数の多い(分子量の大きい)ポリチオフェンを合成するようにしてもよい。この場合、例えば、熱重合のための熱処理後のポリチオフェン内包CNTに対して、さらにハロゲン化オリゴチオフェンをCNT内に導入(内包)し、その後に熱重合のための熱処理を行うことなどが例示される。また例えば、熱重合のための熱処理ののち、室温程度にまで冷却されたポリチオフェン内包CNTに対して、再び熱重合のための熱処理を行うことなどが例示される。
上記のように、CNTの直径が0.9nm以上1.5nm以下程度である場合は、CNTの内部に、鎖状のポリチオフェンが重なることなく形成される。つまり、ポリチオフェンは、CNTの軸方向に沿って複数存在していても良いが、CNTの直径方向においては一つのみが存在し得る。これにより、π共役領域が単一分子幅で拡張された複合材料が製造される。
また、CNTの直径が1.3nm以上1.5nm以下程度の場合は、ポリチオフェンは二列になって形成される。つまり、ポリチオフェンは、CNTの軸方向に沿って複数存在していても良いが、CNTの直径方向においては二つのみが並列に存在し得る。これにより、π共役領域が、例えば二分子幅で拡張された複合材料が製造される。
なお、この熱重合に際し、二つの隣り合うハロゲン化オリゴチオフェンから脱離したハロゲンは、2つが集まってより安定なハロゲン分子を形成する。ここで、ハロゲンは求電子性を有するため、電子アクセプタとなり得る。そのため、CNT内でチオフェン重合体と複数個のハロゲン分子とが存在すると、ハロゲンがチオフェン重合体から電子を抜き取りポリハロゲンイオンとなって、正孔ドーピングが実現され得る。これにより、チオフェン重合体に導電性が付与され得る。
このように、ここに開示される製造方法では、チオフェンの熱重合と同時に、導電性の付与も行われ、これまでにない画期的な構成であり得る。
[付加的な工程]
以上の複合材料の製造方法においては、本発明の本質を損ねない範囲において、上記のS1〜S4以外の工程を含むことができる。そのような工程としては、原料として用いるCNT(開環されたCNTであり得る。)の精製工程や、CNTの成形工程である。
CNTは、製造方法によっては触媒金属や煤状物が不純物として混入した状態で製造される。したがって、精製工程においてCNTを精製することで、純度の高い複合材料を得ることができる。精製の手法は特に制限されず、混入が予想される不純物の種類に応じて、公知のCNTの精製方法を採用することができる。例えば、具体的には、真空雰囲気中での加熱処理、適切な酸による酸処理、液体クロマトグラフィーによる精製等である。真空雰囲気中での加熱処理は、例えば、CNTを1×10−4Torr〜1×10−6Torrの真空雰囲気内で、500℃以上(例えば600℃〜700℃)に加熱することで実施できる。酸処理は、例えば、CNTを硝酸等の酸化性強酸中に入れ、100〜200℃程度で数時間加熱したのち水洗することで実施できる。液体クロマトグラフィーによる精製は、例えば、CNTを適切な分散媒に十分に分散させた後、液体クロマトグラフィーを行うことで実施できる。
このCNTの精製は、例えば、工程S2の前に、あるいは工程S2の一部として、CNTの開環処理を行う前に実施することが好ましい。
また、ここに開示される複合材料は、後述するが、特異な機能性を有する機能性材料として利用し得る。したがって、この複合材料において、複数のCNTは、所望の用途に応じた適切な形態に一体成形されていてもよい。かかる成形方法は特に制限されない。例えば、シート状の複合材料を得たい場合には、CNTを適切な基材上にシート状に堆積させてから用いることができる。好適には、CNTを適切な分散媒に分散させた後、除去可能な材料からなるフィルターを使用してろ過することで、緻密かつ均一な組織のシート状のCNTを得ることができる。フィルターの除去は、適切な手段によるフィルターの剥離、溶解、分解等により実現することができる。
[複合材料]
以上のようにして得られる複合材料は、チオフェン骨格を有するチオフェン重合体と、ハロゲンと、これらチオフェン重合体とハロゲンとを内部に収容する、少なくとも一部が開環されたCNTとを含む。
チオフェン重合体は、原料として用いたハロゲン化オリゴチオフェンが直列に結合したことで、分子量が比較的大きくなった重合体を意味する。したがって、ハロゲン化オリゴチオフェンが重合したものである限り、チオフェン重合体におけるチオフェン単位(典型的には[CS]で表される)の繰り返し数は厳密には制限されない。
このようなチオフェン重合体は、例えば、下記一般式で表される化学構造を有した無置換のチオフェン重合体又はその誘導体であり得る。ただし、下記一般式中、R及びRは、それぞれ独立の水素原子、ハロゲン原子又は有機官能基であり、nは4以上の整数である。
このような無置換のチオフェン重合体[CS]nにおけるチオフェン単位の繰り返し数nは、おおよその目安として、4以上とすることができ、6以上が好ましく、10以上が特に好ましく、例えば20以上であってもよい。チオフェン単位の繰り返し数nは、典型的には、100以上であり得る。
チオフェン重合体は、チオフェン環の水素基が任意の置換基により置換された誘導体であってもよい。かかる置換基としては、任意の有機官能基であってよく、例えば、一例として、炭化水素基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲノ基、ケイ素含有官能基、硫黄含有官能基、窒素含有官能基、リン含有官能基が挙げられる。より好ましくは、例えば、炭素数1〜10の直鎖,分岐又は環状のアルキル基,ビニル基,アリール基等に代表される炭化水素基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、フルオロ基,クロロ基,ブロモ基等のハロゲノ基であり得る。
また、CNT内には、チオフェン重合体とともに、ハロゲンが含まれている。このハロゲンは、分子の形態であってもよいし、イオンや錯体等の分子以外の形態であってもよい。ハロゲンは求電子性が高いことから、上述のようにチオフェン重合体から電子を抜き取り、典型的には、ハロゲンイオンの形態で含まれ得る。ハロゲンイオンの種類は特に制限されず、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)の他、三ヨウ化物イオン(I )、五ヨウ化物イオン(I )、七ヨウ化物イオン(I )、二塩化ヨウ化物イオン(ICl )、四塩化ヨウ化物イオン(ICl )、四フッ化臭素イオン(BrF )等のポリハロゲンイオンであり得る。ハロゲンは、例えば、臭素(Br)およびヨウ素(I)の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
同様に、チオフェン重合体は、ハロゲンに電子を奪われ、正孔ドープされている。これにより、チオフェン重合体には導電性が付与され得る。このとき、チオフェン重合体は一次元ナノ構造物であるCNTに収容されているため、π共役系はCNTに沿って直線状(もしくは一次元的)に重合(もしくは成長)し得る。これにより、移動度が高い導電性材料が得られることが期待される。延いては、これまでにない構成の新規な複合材料が実現される。
また、複合材料におけるチオフェン重合体は、直鎖状のπ共役系分子でもあり得る。直鎖状のπ共役系分子は、大きな三次の非線形光学特性を備えることができる。したがって、この複合材料は、光デバイス材料として利用され得る。
なお、このような複合材料において、CNTの内部には、正孔ドープされたチオフェン重合体と、ポリハロゲンイオンが近接して存在する。換言すると、CNTの内部には、カチオンとしてのチオフェン重合体(PTイオン)と、アニオンとしてのポリハロゲンイオンとが近接して存在している。この複合材料の様子を、図9に断面図として模式的に示した。図9の例では、ハロゲンとして臭素(Br)を用い、臭素イオンが存在している場合を示している。
図9(a)に示すように、CNTには、カチオン(PTイオン)とアニオン(臭素イオン)とが内包されている。次いで、図9(b)に示すように、例えば、CNTを正に帯電させる。すると、クーロン相互作用により、PTイオンと臭素イオンに変位が生じる。つまり、PTイオンはCNTの中心軸に近接し、臭素イオンはCNTのチューブ壁に近接する。これは、CNTのp軌道の動径方向への広がりを考えたときに、CNT内でもチューブ壁付近には電場が存在し、イオンが動くことが期待されるためである。これにより、この複合材料に、静電エネルギーを蓄え得ることがわかる。
このことを、単純化した具体例を示して説明する。例えば、PTイオンおよび臭素イオンを球状の電荷とみなし、CNTの帯電により蓄積するエネルギーを見積もる。図9(a)の帯電前の状態において、PTイオンは分子間力(π−π相互作用)によりCNTのチューブ壁にスタックしている。臭素イオンは、クーロン引力によってPTイオンに近接している。この距離を、臭素とPT骨格の炭素(C)とのファンデルワールス半径の和とすると、R(0.170nm)+RBr(0.185nm)=0.355nmと見積もることができる。ここで、図9(b)に示したようにCNTが正に帯電すると、クーロン相互作用によりPTイオンと臭素イオンは移動する。このときの臭素イオンとPTイオンの距離は、CNTの半径(r)から、上記の臭素とCNT骨格の炭素(C)とのファンデルワールス半径の和を引いた値となる。つまり、半径が1nmのCNTを用いたと仮定すると、この値は0.645nmとなる。ここで、CNTの比誘電率を100[Pichler et al., Phys. Rev. Lett. 80, 4729 (1998)参照]とすると、臭素イオンとPTイオンのもつ静電エネルギーは0.018eV変化する。したがって、例えば、一本のCNTの長さが300nmであって、このCNTの内部にセキシチオフェンイオン(長さ2.4nm)が隙間無く並んでいると仮定すると、1本のCNTで2.3eVの静電エネルギーを蓄えられる。ここでCNTはバンドル(束)を形成しやすいことを考慮して、例えば7本のCNTの束(直径6.7nm)として存在するとする。このとき、このCNTのバンドルは、16eVの静電エネルギーを蓄電できると見積もることができる。
なお、具体的に図示していないが、CNTを負に帯電させた場合にも、同様にして静電エネルギーを蓄えることができる。このことにより、この複合材料は、ナノメートルオーダーの両極性の電気二重層キャパシタとして利用することができる。この電気二重層キャパシタは、電解液を必要としないため、液漏れの心配が不要である。また高温環境での使用も可能であり、高い耐久性を実現し得る。なお、このようなキャパシタを実現するために、CNTの帯電が容易であるとの観点からは、CNTとして金属性のCNTを好ましく用いることができる。しかしながら、CNTとしては、金属性のCNTを用いてもよいし、半導体性のCNTを用いてもよいし、両者の混合物を用いてもよい。
以上のように、ここに開示される複合材料は、ナノ電子素子、ナノ光学素子、ナノエネルギー貯蔵体等として利用できることが、当業者であれば合理的に理解することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に示す。しかしながら、本発明はかかる例によって限定されるものではない。
[1.SWNTの調製]
テンプレートおよび反応場として、チューブ径が1.0±0.2nmの単層カーボンナノチューブ(SWNT;NanoIntegris社製、HiPco Purified)を用意した。
まず、このSWNT25mgを、1.0×10−5Torrの真空中、650℃で1時間加熱することにより精製した。次いで、精製後のSWNTを、550℃の大気中で1時間加熱することで、チューブ端を開環した。
[2.SWNT膜の作製]
開環処理を施したSWNTを、1質量%のコール酸ナトリウム水溶液20mL中に分散させることで、SWNT分散液を用意した。そしてこのSWNT分散液を、ニトロセルロースフィルターを用いて吸引ろ過することで、フィルター上にSWNTが2次元的に堆積されたSWNT膜を得た。このSWNT膜付きフィルターを、石英基板上にSWNT膜が内側になるように配置したのち、アセトンを滴下することで、フィルターを溶解、除去した。これにより、石英基板上にSWNT膜を接着(転写)した。
[3.前駆体分子の内包]
(例1)
SWNTに内包させる導電性高分子の前駆体として、5,5”−ジブロモ−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(Br−3T)を用意した。このBr−3Tは、3つのチオフェン環が直鎖状に結合したターチオフェン(2,2’:5’,2”−ターチオフェン)を用意し、その両末端の水素原子を、臭素原子でそれぞれ置換したものである。Br2−3Tは、P. Bauerle et al., Synthesis, 1099 (1993)に開示された手法により合成したが、例えば、市販のものを入手して用いてもよい。
そして化学気相輸送法により、このBr−3TをSWNT中に内包させた。すなわち、石英チューブ内の一方の端部に3mgのBr−3Tを載置し、他方の端部に上記で用意したSWNT膜を石英基板ごと収容して、真空封入(真空度1.0×10−5Torr)した。そしてこの石英チューブを電気炉に入れ、150℃、12時間保持することで、Br−3TをSWNT膜のSWNT内部に導入した。なお、参照のため、石英チューブにBr−3Tを入れず、SWNTのみを真空封入し、同様の条件で加熱処理したサンプルも用意した。
このようにして得られたBr−3T内包SWNT(Br−3T@SWNT)を、トルエンで十分に洗浄したのち、光吸収スペクトルを計測した。光吸収スペクトルの測定には、(株)日立製作所製、自記分光光度計U−3500を用いた。図2の(a)にBr−3T@SWNT(実線)およびSWNT単体(点線)の線形吸収スペクトルを、(b)にBr−3T@SWNTの吸収スペクトルからSWNT単体の吸収スペクトルを差し引いた差分吸収スペクトル(実線)を示した。なお、図2(b)には、参考のため、原料として用いたBr−3Tの線形吸収スペクトル(一点鎖線、溶媒:クロロホルム)も併せて示した。
図2(a)のSWNT単体の線形吸収スペクトルでは、〜1.0eV,〜1.7eV,〜2.2eVおよび〜3.3eVに、SWNTの励起子遷移による吸収が確認されている。これに対し、Br−3T@SWNTの線形吸収スペクトルには、約2eV以上の領域にブロードな新たな吸収があることがわかった。
そこで、図2(b)の差分吸収スペクトルを確認すると、〜3.1eVをピークとする吸収が見られ、これはBr−3Tの吸収と概ね一致する。このことから、Br−3T@SWNTにおいては、SWNTにBr−3Tが内包されているものと考えられる。
(例2)
化学気相輸送法によるBr−3TのSWNTへの内包処理時間を24時間に延長し、その他の条件は同様にして、Br−3TをSWNT膜のSWNT内部に導入した。また、参照のため、石英チューブにBr−3Tを入れず、SWNTのみを真空封入し、同様の条件で加熱処理したサンプルも用意した。このようにして得られたBr−3T内包SWNT(Br−3T@SWNT(24h))についても、トルエンで15分間十分に洗浄したのち、光吸収スペクトルを計測した。その結果を、SWNTのみを加熱した場合との差分スペクトルとして図3に示した。
なお、図3には、参考のため、図2(b)に示した内包処理時間が12時間の場合のBr−3T@SWNTの差分スペクトルと、ポリチオフェン(PT)についての線形吸収スペクトル(点線)も併せて示した。さらに、図3には、Br−3Tの最大吸収ピークが見られる3.1eVに点線を付した。なお、この図3に示されるように、Br−3TからPTへとπ共役系が長くなることで、一般に可視領域の吸収帯および吸収ピーク位置が低エネルギー側にシフトすることが知られている。
図3から明らかなように、SWNTへのBr−3Tの内包処理時間を2倍にすることで、差分スペクトルの形状は概ね維持されたまま吸収量が大幅に増大することがわかった。Br−3T@SWNT(24h)の最大吸収ピークは3.1eV近傍で概ね変わらないことから、内包処理時間を拡大することで、SWNTへのBr−3Tの内包量が増大したことが確認できた。なお、Br−3T@SWNT(24h)のスペクトルには、〜2.6eVに新たなピークが確認され、また4.5eV以上で緩やかな吸収が認められる。これはポリチオフェン(PT)の吸収スペクトルとほぼ一致する。このことから、Br−3T@SWNT(24h)においては、SWNTの内部でBr−3Tの重合がわずかではあるが開始され、少量のポリチオフェンが形成されていることが予想される。
[4.熱重合]
次いで、24時間の内包処理を行ったBr−3T@SWNT(24h)について、265℃で24時間の加熱処理を行った。このようにして得た熱処理後の試料(Br−3T@SWNT(24h,HP))について、上記と同様に光吸収スペクトルを計測した。その結果を、SWNTとの差分スペクトルとして図4に示した。
なお、図4には、参考のため、図3に示した未加熱のBr−3T@SWNT(24h)の差分スペクトルと、ヨウ素(I)をドープしてイオン化したポリチオフェン(I−PT)についての線形吸収スペクトル(点線)も併せて示した。I−PTについての吸収スペクトルは、文献(Synth. Met. 18(1987)189)に開示されたデータを参照した。また、Br−3Tの最大吸収ピークが見られる3.1eVと、ポリチオフェンの最大吸収ピークが見られる2.6eVとに点線を付した。
図4から明らかなように、Br−3T@SWNT(24h,HP)の差分スペクトルの最大ピークは〜2.6eV近傍にシフトし、その吸収も大きく増大することが確認された。このことにより、SWNT内部でのBr−3Tの重合が進行し、ポリチオフェン(PT)が形成されたものと考えられる。また、Br−3T@SWNT(24h,HP)には、〜0.5eVおよび〜1.6eVにもピークが認められ、約4eV以上の領域の吸収はやや減少した。これはイオン化したPTであるI−PTに特徴的な吸収構造と一致する。このことから、Br−3T@SWNT(24h,HP)にはイオン化したPTが存在することも確認された。
なお、Br−3Tの重合に際して、末端に配位していた臭素原子はチオフェン環から脱離し、安定した臭素分子を形成する。このとき、ハロゲンは電気陰性度が高いため、形成されたPTから電子を引き抜き、ハロゲンアニオン(例えば、ポリブロモイオン)とPTカチオンとを生じて安定化するものと推察される。つまり、このBr−3T@SWNT(24h,HP)においては、SWNT内部に陰イオン(ポリブロモアニオン)と陽イオン(PTカチオン)とが近接して存在しているといえる。換言すると、熱重合により形成されたPTはポリブルもアニオンにより正孔ドーピングされているものと考えられる。
(EDS分析)
そこで、SWNT内で熱重合させたBr−3Tにおける各元素の分布の様子を確認するために、エネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDS)分析を行った。EDS分析用の試料としては、両端を臭素で終端したBr−3TをSWNT膜のSWNTに内包し、310℃で24時間加熱して熱重合させたもの(Br−3T@SWNT(HP310℃))を用いた。この試料は、作製後のものを十分な量の純水に15分間浸漬することで洗浄し、6×10−5Torrの真空中、60℃で1時間加熱して乾燥させたものを、EDS分析に供した。EDS分析には、EDS検出器付きの走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、日本電子(株)製、JSM−5510LVN)を用いた。
図5に、得られた(a)EDSパターンおよび(b)分析用試料の全体のSEM像ならびに(c)EDS分析領域を示すSEM像を示した。また、当該分析領域における(d)臭素(Br)マップおよび(e)硫黄(S)マップも併せて示した。
図5(a)のX線スペクトルパターンから明らかなように、試料には、カーボンナノチューブおよびチオフェン骨格を構成する炭素(C)原子の他に、ポリチオフェンのヘテロ元素である硫黄(S)およびドーピングされた臭素(Br)が存在することが確認された。なお、スペクトル中のFeおよびSiに帰属されるピークは、カーボンナノチューブの製造に使用された触媒(Fe)と、試料作製時に用いたSiO基板に由来するものと考えられる。
また、図5(c)〜(e)から解るように、カーボンナノチューブの形状に対応してBrおよびSが存在することが確認された。以上のことから、ここに開示される複合材料においては、カーボンナノチューブの内部に、ポリハロゲンアニオンによりドープされたチオフェン重合体が収容されているといえる。
(例3)
化学気相輸送法によるBr−3TのSWNTへの内包処理条件を、1.0×10−5Torrの真空雰囲気下、160℃で24時間とし、その他の条件は同様にして、Br−3Tが内包されたSWNTである試料(Br−3T@SWNT)を得た。このBr−3T@SWNTを、トルエンで十分に洗浄して、SWNTの外表面に吸着しているBr−3Tを洗い流したのち、265℃で24時間の加熱処理を施した。このようにして、熱処理後の試料(Br−3T@SWNT(HP))を得た。
そして、熱処理の前後の試料、Br−3T@SWNTおよびBr−3T@SWNT(HP)について、ラマン分光分析を行った。分析には、ラマン分光装置(Renishaw製、ラマンマイクロスコープ in Via Reflex)を用い、励起レーザー波長は488nmとした。その結果、得られたラマンスペクトルを図6に示した。
ラマンスペクトルには電子密度の高い分子骨格の変形に対応するモードが強く観測される。図6に示すように、熱処理を施していないBr−3T@SWNTには、1455cm−1と1527cm−1とに2つのバンドが確認された。これらは、それぞれ、チオフェン環のC=C結合の対称伸縮振動と、逆対称伸縮振動とに帰属される。SWNTや臭素による終端構造との相関により僅かなシフトが見られるが、ピーク位置はターチオフェン(3Tに近接している。このことから、Br−3T@SWNTについては、内包された分子がBr−3T分子として存在することが示唆される。
一方の、熱処理後のBr−3T@SWNT(HP)については、C=C結合の対称伸縮振動のピークが1461cm−1と高波数側にシフトし、逆対称伸縮振動のピークが1506cm−1へと低波数側へシフトしたことが確認された。これは、一分子あたりのチオフェン環の数が6にまで増大し、SWNT内にセキシチオフェン(6T)分子が合成されたことを示唆するものである。この結果は、上記例2の線形吸収スペクトルおよびEDS分析の結果とも一致するものであり、SWNT内でポリチオフェンの合成が実現されたことが確認された。
(参考例)
上記のBr−3Tに代えて、臭素終端していない2,2’:5’,2”−ターチオフェン(3T)を用い、上記と同様の化学気相輸送法によりSWNT膜のSWNTに内包した。なお、3TのSWNTへの内包のための処理条件は、265℃、24時間とし、その他の条件は上記例1と同様にした。また、参照のため、石英チューブに3Tを入れず、SWNTのみを真空封入し、同様の条件で加熱処理したサンプルも用意した。
得られた3Tを内包したSWNT(3T@SWNT(265℃))について、上記と同様に光吸収スペクトルを計測した。図7の(a)に3T@SWNT(265℃)(実線)および3Tを内包していないSWNT単体(点線)の線形吸収スペクトルを、(b)に3T@SWNT(265℃)の吸収スペクトルからSWNT単体の吸収スペクトルを差し引いた差分吸収スペクトル(実線)を示した。なお、図7(b)には、参考のため、原料として用いた3Tの線形吸収スペクトル(点線、溶媒:クロロホルム)と、ポリチオフェン(PT)の線形吸収スペクトル(一点鎖線、溶媒:クロロホルム)も併せて示した。
図7(b)の差分スペクトルを見て明らかなように、3T@SWNT(265℃)の最大吸収ピークは3.1eV近傍にみられ、内包処理ではSWNT内でターチオフェン(3T)が熱重合していないことが確認された。
次いで、3T@SWNT(265℃)について、265℃〜500℃で24時間の加熱処理を行った。このようにして得た熱処理後の試料(3T@SWNT(HP))について、上記と同様に光吸収スペクトルを計測した。その結果を、SWNTとの差分スペクトルとして図8に示した。
図8から明らかなように、処理温度が265℃〜355℃の場合は最大吸収ピークが小さくなるもののピーク位置および形状に大きな変化はみられなかった。これに対し、処理温度が400℃以上となると2.6eV近傍の吸収が増大し、SWNT内にてPTが形成されることが確認された。しかしながら、同時に400℃以上では、〜4.0eV近傍の吸収が増大し、3Tの分解が始まることもわかった。このことから、SWNTに3Tを内包した場合には、3Tを分解させずに重合させるための熱処理温度の好適値がないことがわかった。また、〜0.5eVおよび〜1.6eVにピークは認められず、PTはイオン化していないことがわかった。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。

Claims (11)

  1. チオフェン骨格を有するチオフェン重合体と、
    ハロゲンと、
    前記チオフェン重合体および前記ハロゲンを内部に収容する、少なくとも一部が開環されたカーボンナノチューブと、
    を含む、複合材料。
  2. 前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の複合材料。
  3. 前記カーボンナノチューブの内径は、0.9nm以上3nm以下である、請求項1または2に記載の複合材料。
  4. 前記チオフェン重合体は、下記一般式:
    (ただし、式中、R及びRは、それぞれ独立の水素原子、ハロゲン原子又は有機官能基であり、nは4以上の整数である。);
    で表される構造を含む化合物またはその誘導体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料。
  5. 前記ハロゲンは、3つ以上のハロゲンを含むポリハロゲンイオンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料。
  6. 複数の前記カーボンナノチューブが膜状に集合されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料を含む、光吸収材料。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料を含む、電子素子。
  9. 末端がハロゲンで終端されたハロゲン化オリゴチオフェンを用意すること;
    少なくとも一部が開環されたカーボンナノチューブを用意すること;
    前記カーボンナノチューブの内部に前記ハロゲン化オリゴチオフェンを導入すること;および、
    前記ハロゲン化オリゴチオフェンを前記カーボンナノチューブの内部で熱重合させ、チオフェン重合体を作製すること;
    を含む、複合材料の製造方法。
  10. 前記カーボンナノチューブの内径は、0.9nm以上3nm以下である、請求項9に記載の複合材料の製造方法。
  11. 前記ハロゲン化オリゴチオフェンは、末端がハロゲンで終端されたビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン又はそれらの誘導体である、請求項9または10に記載の複合材料の製造方法。
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