JP2017127214A - 炭酸ガスインジケーターを有する容器、及びこれを用いた炭酸ガス検知方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば動物細胞の培養は通常、培養液中の生細胞を培養温度で一定に保持するとともに培養液のpHも一定に保持する必要がある。その際、一般的に用いられる重炭酸塩緩衝系培養液の場合、pHを7.4に保持するために炭酸ガス濃度を5vol%程度に保持する必要がある。
また、微生物培養においても発育の促進のために炭酸ガス濃度を一定に保持する必要がある場合がある。例えば、Neisseria(淋菌・髄膜炎菌)やHaemophilus(インフルエンザ菌)などの炭酸ガス要求菌の培養には炭酸ガス濃度を5〜10vol%、嫌気性菌の培養には炭酸ガス濃度5〜25vol%、微好気性菌の培養には炭酸ガス濃度3〜15vol%に保持する必要がある。
しかし、包装容器の穴あきや、シール不良、または輸送中における容器の破壊、すなわちピンホールの発生により容器内のガス雰囲気が変化し、内容の死滅、または変質が生じることがあった。
しかしながら、一般的に炭酸ガスインジケーターは微小のガス濃度変化を検出するのが困難であり、例えば、炭酸ガス濃度が5.0vol%から4.0vol%に下がったとしても、ガス漏れを検知することは困難であった。
すなわち本発明は以下の通りである。
容器内が炭酸ガスを含むガス雰囲気であるガスバリア性の容器(A)及び該容器(A)を包むガスバリア性の容器(B)を備える容器において、容器(A)の外側と容器(B)の内側の空間部(C)が炭酸ガス濃度0〜0.3vol%のガス雰囲気であり、且つ該空間部(C)に炭酸ガスインジケーターを有する容器。
<2>
空間部(C)の体積が、容器(A)の体積の1/100〜1である、<1>に記載の容器。
<3>
容器(A)と容器(B)が接触してなる容器であって、該接触面の面積が、容器(A)の表面積の1〜70%である、<1>及び<2>のいずれかに記載の容器。
<4>
容器(B)の少なくとも一部が透明である、<1>〜<3>に記載の容器。
<5>
炭酸ガスインジケーターが、容器(B)を通して目視可能である、<1>〜<4>に記載の容器。
<6>
容器(B)がリジッド容器である、<1>〜<5>に記載の容器。
<7>
容器(B)内の圧力が、大気圧以上である、<1>〜<6>に記載の容器。
<8>
炭酸ガスインジケーターが、炭酸ガスにより色変化を生じる指示薬である、<1>〜<7>に記載の容器。
<9>
前記指示薬がメタクレゾールパープルである、<8>に記載の容器。
<10>
前記容器(A)が細胞培養・保存用の容器である、<1>〜<9>に記載の容器。
<11>
前記容器(A)が微生物培養・保存用の容器である、<1>〜<9>に記載の容器。
<12>
<1>〜<9>のいずれかに記載の容器を用いる、炭酸ガス検知方法。
本発明は、容器内が炭酸ガスを含むガス雰囲気であるガスバリア性の容器(A)及び該容器(A)を包むガスバリア性の容器(B)を備える容器において、容器(A)の外側と容器(B)の内側の空間部(C)が炭酸ガス濃度0〜0.3vol%のガス雰囲気であり、且つ該空間部(C)に炭酸ガスインジケーターを有する容器、及び該容器を用いる炭酸ガス検知方法である。
本発明は、容器(A)の外側と容器(B)の内側の空間部(C)に配置する炭酸ガスインジケーターの表示変化により該容器(A)の炭酸ガスの漏洩を検知する方法である。即ち、容器内が炭酸ガスを含むガス雰囲気であるガスバリア性の容器(A)に例えばピンホールが発生すると、容器(A)から炭酸ガスが容器(A)の外側と容器(B)の内側の空間部(C)へ浸入し、容器(A)の外側と容器(B)の内側の空間部(C)の炭酸ガス濃度が上昇する。このときに炭酸ガスインジケーターが微量の炭酸ガス濃度の上昇によって変色するため、容器(A)の炭酸ガスの漏洩を早期発見できる。
ガスバリア性を有する包装材の具体例として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン等の材質のものや、これらの表面に更に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物を蒸着させたものや、これら各種材質の多層フィルム(ラミネートフィルム)等が挙げられる。
また、外部から後述する炭酸ガスインジケーターの表示を確認することを容易とするため、上記容器(B)の少なくとも一部は透明であることが好ましい。
炭酸ガスは水に溶けて弱い酸性を呈する。雰囲気中に炭酸ガス濃度が十分に存在するとpH値が低くなるが、炭酸ガス濃度が低下するに従ってpH値が高くなる。そのため、炭酸ガスの検知にはpH値変化に伴って指示薬が色変化を生じるpH指示薬を用いるのが好ましい。
また、pH指示薬を用いた炭酸ガスの検知には、一定量の水の存在と保持が必要である。
尚、空間部(C)に含まれる上記炭酸ガス以外のガスの具体例として、空気、窒素、酸素等が挙げられる。
本発明における被包装物として例えば、細胞や微生物などの生物試料が挙げられる。
細胞は、培養や保存時に炭酸ガス濃度を一定に保持する必要がある細胞である。その具体例としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞株CHO細胞やヒト子宮頸癌細胞株HeLa細胞等が挙げられる。
微生物は、培養や保存時に炭酸ガス濃度を一定に保持する必要がある微生物である。微生物の例として、炭酸ガス要求菌であるNeisseria(淋菌・髄膜炎菌)やHaemophilus(インフルエンザ菌)、嫌気性菌であるStaphylococcus(ブドウ球菌、グラム陽性球菌)、Corynebacterium(コリネバクテリウム属、グラム陽性桿菌)、Listeria属(リステリア属、グラム陽性桿菌)、大腸菌(エシェリキア属、グラム陰性桿菌)、Clostridium属(ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、破傷風菌)等、微好気性菌であるCampylobacter、Helicobacter pylori等が挙げられる。
容器(A)にはPET製の炭酸ガスバリア性袋、容器(B)には透明なPET製のガスバリア性リジッド容器を用いた。
容器(A)に細胞とともにガス濃度調整剤としてカルチャーパルCO2 0.5L(商品名、三菱瓦斯化学(株)製)と空気500mLを入れ、炭酸ガス濃度を5vol%、酸素濃度を15vol%に調整した。
容器(A)と容器(B)の空間部(C)の体積が50mL(空間部(C)の体積は容器(A)の体積の1/10)、容器(B)の圧力が大気圧以上となるように空気を入れ、該空間部(C)に炭酸ガスインジケーターを封入した。容器(A)と容器(B)の接触面の面積は、容器(A)の表面積の4%であった。
炭酸ガスインジケーターは、pH指示薬にメタクレゾールパープルを利用し、保水材としてグリセリンを含み、添加したpH指示薬がアルカリ色を示すように調整されたリン酸ナトリウム水溶液を含浸させた基材を水蒸気透過度が20g/m2/24hrs以下の小袋内に封入したものを用いた。
容器(A)に、注射針(テルモ(株)製、注射針ネオラス 27G)で、直径0.5mmのピンホールを故意に開けて35℃にて3時間保存したとき、炭酸ガスインジケーターは紫色から白色へ変色し、これは炭酸ガス濃度が上昇したことを示しており、炭酸ガスの漏洩を目視で判断できた。
炭酸ガスインジケーターを封入しない以外は、実施例1と同様に細胞を包装した。
容器(A)にピンホールが発生していない正常な状態で35℃にて3時間保存したときと容器(A)にピンホールを故意に開けて35℃にて3時間保存したとき、目視では違いが分からず容器(A)の炭酸ガスの漏洩を判断できなかった。
容器(A)と容器(B)の空間部(C)に炭酸ガス濃度100vol%のガスを入れる以外は、実施例1と同様に細胞を包装した。
容器(A)にピンホールが発生していない正常な状態で35℃にて3時間保存したときと容器(A)にピンホールを故意に開けて35℃にて3時間保存したとき、目視では違いが分からず炭酸ガスの漏洩を判断できなかった。
2…容器(A)
3…容器(B)
4…炭酸ガスインジケーター
5…空間部(C)、炭酸ガス濃度0〜0.3vol%のガス雰囲気
6…炭酸ガスを含むガス雰囲気
Claims (12)
- 容器内が炭酸ガスを含むガス雰囲気であるガスバリア性の容器(A)及び該容器(A)を包む容器(B)を備える容器において、容器(A)の外側と容器(B)の内側の空間部(C)が炭酸ガス濃度0〜0.3vol%のガス雰囲気であり、且つ該空間部(C)に炭酸ガスインジケーターを有する容器。
- 空間部(C)の体積が、容器(A)の体積の1/100〜1である、請求項1に記載の容器。
- 容器(A)と容器(B)が接触してなる容器であって、該接触面の面積が、容器(A)の表面積の1〜70%である、請求項1又は2に記載の容器。
- 容器(B)の少なくとも一部が透明である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器。
- 炭酸ガスインジケーターが、容器(B)を通して目視可能である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器。
- 容器(B)がリジッド容器である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器。
- 容器(B)内の圧力が、大気圧以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の容器。
- 炭酸ガスインジケーターが、炭酸ガスにより色変化を生じる指示薬である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の容器。
- 前記指示薬がメタクレゾールパープルである、請求項8に記載の容器。
- 前記容器(A)が細胞培養・保存用の容器である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の容器。
- 前記容器(A)が微生物培養・保存用の容器である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の容器。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の容器を用いる、炭酸ガス検知方法。
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