JP2017125032A - 糖尿病患者における心不全の治療用組成物 - Google Patents

糖尿病患者における心不全の治療用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】糖尿病患者の心臓の合併症、特に心不全を予防、治療、または遅延する方法の提供。【解決手段】有効量のニューレグリンタンパク質を含む医薬組成物。前記ニューレグリンがニューレグリン−1であることが好ましく、更にニューレグリン−1βのFGF様ドメインを含むことがより好ましい、医薬組成物。【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
(技術分野)
本発明は、ヒトの心不全の予防、治療、または遅延のための薬剤を調製するためのニューレグリンタンパク質の使用、および上記薬剤を利用したヒトの心不全の予防、治療、または遅延のための方法に関する。特に、本発明は、ニューレグリンタンパク質を含む組成物を利用した、心臓病の合併症を発症した糖尿病患者、または心臓病の合併症を発症するリスクが高い糖尿病患者における心不全の予防、治療、または遅延のための方法を提供する。
(発明の背景)
近年、真性糖尿病(DM)、特に2型糖尿病の有病率は著しく増加している。最近の統計によると、緊急の対策が取られなければ、糖尿病を患う患者数は、2011年の3億6600万人から、2030年までに5億5200万人に増加すると見込まれることが示されている。糖尿病患者における主な死因は、心臓の合併症、または循環器疾患、特に冠動脈心疾患(CHD)であって、2型DM患者の死因の75%も占めている。糖尿病患者に最もよく見られる心臓病の症状はCHDであるが、DMはCHDから進行し得るHFとも強い関連性があるようである。HFを患っている患者の約15〜25%は糖尿病患者でもある。したがって、糖尿病患者の多くが、心臓の合併症、特にHFを患っている。
DMは下記のメカニズムによって、心臓の合併症、特にHFの進行に因果的に関係することがある。メカニズムとは、すなわち、付随した共存症に起因する、冠動脈アテローム性動脈硬化症の進行によるもの、カルシウムハンドリング異常の促進によるもの、あるいは特定の糖尿病性心筋症を介するもの等である。
付随した共存症または危険因子は、糖尿病患者のHFのリスクの増加の一因と成り得る。これらの心血管リスク因子(脂質異常症、高血圧症、凝固亢進、肥満、および炎症等)はインスリン抵抗性症候群の一部であって、少なくとも部分的には核ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)によって制御される。PPAR−ガンマの活性化はインスリン感受性、および内皮機能を向上させると共に、炎症および血圧を低下させる。フラミンガムコホート(Framingham cohort)においては、糖尿病の男女は、糖尿病ではない男女よりも血圧が高く肥満体であった。HF集団においても同じ所見が報告されている。
糖尿病患者におけるアテローム性動脈硬化症のリスクが増加することは、HFのリスクが増加する一因に大いに成り得る。DMは、HFの遠因である冠動脈疾患のリスクの顕著な増加と関連する。高血糖症は、血管組織における多数の変質を引き起こし、これは加速性アテローム性動脈硬化症を促進させる可能性がある。
糖尿病患者の間では、単独の拡張機能障害において高い有病率が見られた。これは、糖尿病患者におけるカルシウムハンドリング異常が原因であることがある。糖尿病の慢性モデルにおいては、心筋細胞の弛緩期間中の筋小胞体(SR)Ca2+の再取込みが低下する。これは、細胞レベルにおける脱分極後の活動電位(APs)の延長と共に、器官レベルにおける心室弛緩障害に関連していた。こうしたSRCa2+の取込み異常のメカニズムは、無症状の単独の拡張機能障害、つまり、拡張期心不全に進行し得る初期の病理イベントの原因となるようである。
また、特定の糖尿病性心筋症が存在することによって、DMはHFの進行を助長し得ることを示すデータもある。DMによって心外膜冠状動脈疾患と無関係のHFが誘発され得るのかどうかについて正確なメカニズムは分かっていないが、いくつかの推測が挙げられている。該推測としては、細小血管症、代謝因子、線維症等が挙げられている。
また、糖尿病ではレニン−アンジオテンシン系が調整されないと共に、アンジオテンシンII(AngII)が、局所的な酸化障害を引き起こすことがあり、その結果、心臓の細胞死が促進されることがある。糖尿病は、筋細胞、内皮細胞、および線維芽細胞のアポトーシスが、それぞれ85倍、61倍、26倍増加するという特徴を有していた。さらに、糖尿病および高血圧は、筋細胞および内皮細胞の壊死を増加させた。筋細胞のアポトーシスや壊死は、心不全を引き起こし得る拡張型筋疾患を進行させることがある。
期待されている新規な治療法の1つは、心臓の合併症、特に心不全を患っている、または患うリスクがある患者へのニューレグリン(以下、「NRG」とする)投与を行うものである。ニューレグリンは、糖尿病患者が損傷を受けている、心筋構造を改善し、心筋細胞の生存を促進し、カルシウム恒常性を促進する機能と共に、その抗アテローム性動脈硬化作用によって、糖尿病患者の心臓の合併症を予防、治療、または遅延することが可能である。
NRGはEGF様成長因子ファミリーであり、NRG1、NRG2、NRG3、およびNRG4ならびにこれらのアイソフォームを含む、構造的に関連している、成長因子のファミリーおよび分化因子のファミリーを含んでおり、一連の生物学的反応(乳がん細胞分化および乳タンパク質の分泌の刺激、神経堤細胞からシュワン細胞への分化誘導、アセチルコリン受容体の骨格筋細胞合成の刺激、および心筋細胞の生存およびDNA合成の促進等)に関連する。心室肉柱の形成および後根神経節の発達に重度の欠陥がある、ニューレグリン遺伝子を標的にしたホモ接合体マウス胚のインビボ実験は、ニューレグリンが心臓および神経の発達に不可欠であることを示している。
NRGsはEGF受容体ファミリーに結合する。EGF受容体ファミリーは、EGFR、ErbB2、ErbB3およびErbB4を含み、これらはそれぞれ、細胞増殖、細胞分化、および細胞生存等の複数の細胞機能において重要な役割を果たしている。これらは、タンパク質チロシンキナーゼ受容体であり、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通キナーゼドメインおよび細胞質チロシンキナーゼドメインから成る。ErbB3またはErbB4の細胞外ドメインにNRGが結合した後、構造変化を引き起こし、ErbB3、ErbB4、およびErbB2との間でヘテロダイマー形成が生じるか、またはErbB4自身のホモダイマー形成が生じる。これにより、細胞膜の内側において受容体のC末端ドメインのリン酸化が引き起こされる。リン酸化された細胞内ドメインは、その後、細胞内において、さらなるシグナルタンパク質と結合し、対応する下流のAKTまたはERKシグナル経路を活性化し、一連の細胞反応を引き起こす。一連の細胞反応としては、例えば、細胞増殖、細胞分化、細胞アポトーシス、細胞移動、または細胞接着の、活性化もしくは低下が挙げられる。これらの受容体の中でも、心臓では、主にErbB2およびErbB4が発現している。
NRG−1のEGF様ドメイン(50アミノ酸から64アミノ酸の大きさ)は、これらの受容体と結合し、活性化するのに十分であることが示されている。これまでの研究では、ニューレグリン−1β(NRG−1β)がErbB3およびErbB4と高い親和性で直接結合できることが示されている。オーファン受容体であるErbB2は、ErbB3のホモダイマーまたはErbB4のホモダイマーよりも高い親和性で、ErbB3およびErbB4とヘテロダイマーを形成し得る。神経発生における研究では、交感神経系の形成には、完全なNRG−1β、ErbB2およびErbB3シグナル系が必要であることが示されている。NRG−1βまたはErbB2もしくはErbB4の標的破壊は、心臓発生の欠陥のため、胚致死となる。近年の研究では、成体の通常の心臓機能の維持と共に、心臓血管発生におけるNRG−1β、ErbB2およびErbB4の役割もまた脚光を浴びている。NRG−1βは、成体心筋細胞における筋節組織化を増強することが示されている。臨床試験において、ならびに心不全の異なる動物モデルにおいて、組換えNRG−1β EGF様ドメインの投与は、心筋作用の悪化を有意に改善するか、心筋作用の悪化から有意に防御する。これらの結果は、心不全治療の主要な化合物としてNRG−1を有望なものにした。そして、本出願の開示によって、NRG−1による治療が、心臓病の合併症を発症した糖尿病患者、または心臓病の合併症を発症するリスクの高い糖尿病患者に対して、予防的または治療的メリットをもたらすことができるというさらなる証拠を提示する。
(発明の概要)
心不全治療のためのニューレグリンの人体臨床試験において、出願人は、糖尿病患者でもある心不全患者が、ニューレグリン治療から有効なメリットを受けることを発見した。そのようなメリットには死亡率の有意な低下が含まれる。
出願人は、NRGは、心筋細胞の分化、筋節および細胞骨格構造の組織化、ならびに細胞接着を増強することを発見した。出願人は、臨床試験において、ならびに心不全の異なる動物モデルにおいて、NRGが心筋作用の悪化を有意に改善するか、心筋作用の悪化から有意に防御することも発見した。NRGは、糖尿病患者が損傷を受けている、心筋構造の改善、心筋細胞の生存の促進、カルシウム恒常性の促進、およびその抗アテローム性動脈硬化症作用において効果的である。ニューレグリン、ニューレグリンポリペプチド、ニューレグリン誘導体、またはニューレグリンの活性を模倣している化合物は、本発明の範囲に含まれる。
したがって、本発明の第1の態様においては、糖尿病患者の心臓の合併症を予防、治療、または遅延するための方法が提供され、該方法は、有効量のニューレグリンを含む医薬組成物を上記の患者に投与するステップを含んでいる。ある実施形態においては、上記の心臓の合併症は心不全である。ある実施形態においては、上記の医薬組成物は、上記の患者の静脈内、または皮下に投与される。ある実施形態においては、上記の医薬組成物は導入レジメンに従って上記の患者に投与される。ある最適化実施形態においては、上記の導入レジメンは、上記の医薬組成物を少なくとも3、5、7、または10日間連続で投与することを含んでいる。いくつかのより好ましい実施形態においては、上記の医薬組成物は、上記の導入レジメン後の少なくとも6か月間、管理レジメンに従って上記の患者に投与される。いくつかのより好ましい実施形態においては、上記の管理レジメンは、上記の医薬組成物を3、5、7、または10日毎に投与することを含んでいる。
第2の態様においては、心不全を予防、治療、または遅延するための方法が提供され、該方法は、有効量のニューレグリンを含む医薬組成物を患者に投与するステップを含んでいる。ある実施形態においては、上記の患者は糖尿病患者である。ある実施形態においては、上記の医薬組成物は、上記の患者の静脈内、または皮下に投与される。ある実施形態においては、上記の医薬組成物は導入レジメンに従って上記の患者に投与される。ある最適化実施形態においては、上記の導入レジメンは、上記医薬組成物を少なくとも3、5、7、または10日間連続で投与することを含んでいる。いくつかのより好ましい実施形態においては、上記の医薬組成物は、上記の導入レジメン後の少なくとも6か月間、管理レジメンに従って上記の患者に投与される。いくつかのより好ましい実施形態においては、上記の管理レジメンは、上記の医薬組成物を3、5、7、または10日毎に投与することを含んでいる。
第3の態様においては、本発明は、糖尿病患者の心臓の合併症を予防、治療、または遅延するための有効量のニューレグリンを含む医薬組成物を提供する。ある実施形態においては、上記の心臓の合併症は心不全である。ある実施形態においては、メリットは、死亡率の有意な低下である。ある実施形態においては、上記のメリットは、再入院の有意な減少である。ある実施形態においては、上記のメリットは、慢性心不全の改善を示すバイオマーカーレベルの改善である。ある実施形態においては、上記の心臓の合併症は心不全である。
第4の態様においては、本発明は、有効量のニューレグリン、および真性糖尿病に対する有効量の予防薬剤または治療薬剤を含む組み合わせを提供する。
第5の態様においては、本発明は、慢性心不全患者の生存を改善または死亡率を低下させるための方法を提供し、該方法は、有効量のニューレグリンを含む医薬組成物を上記の慢性心不全患者に投与するステップを含んでいる。ある実施形態においては、慢性心不全患者は糖尿病患者である。ある実施形態においては、上記の医薬組成物は、上記の患者の静脈内、または皮下に投与される。ある実施形態においては、上記の医薬組成物は導入レジメンに従って上記の患者に投与される。ある最適化実施形態においては、上記の導入レジメンは、上記の医薬組成物を少なくとも3、5、7、または10日間連続で投与することを含んでいる。いくつかのより好ましい実施形態においては、上記の医薬組成物は、上記の導入レジメン後の少なくとも6か月間、管理レジメンに従って上記の患者に投与される。いくつかのより好ましい実施形態においては、上記の管理レジメンは、上記の医薬組成物を3、5、7、または10日毎に投与することを含んでいる。
本発明の第6の態様においては、薬剤を調製するためのニューレグリンタンパク質の使用方法が提供された。上記の薬剤は長期的なメリットを得るために慢性心不全患者に投与することが可能である。ある実施形態においては、上記の慢性心不全患者は糖尿病患者である。ある実施形態においては、上記の長期的なメリットは、生存の改善である。ある実施形態においては、上記の長期的なメリットは、再入院の減少である。他の実施形態においては、上記の長期的なメリットは、慢性心不全の長期的な予後を示すバイオマーカーの改善である。
(発明の詳細な説明)
開示内容を明確にし、そして限定しないように、以下の本発明の詳細な説明は以下に続く各項目に分かれている。本明細書で言及されたすべての刊行物は、挙げられた刊行物に関わる方法および/または物質を開示および記載するために参照することによって、本明細書に組み込まれる。
(定義)
特に断ら無い限り、本明細書において用いられている全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有している。本明細書において言及されている全ての特許、出願、公開された出願、および他の刊行物は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。この項目で説明されている定義が、本明細書に参照によって組み込まれている特許、出願、公開された出願、および他の刊行物に説明された定義に反する場合または矛盾する場合には、この項目において説明されている定義を、参照によって本明細書に組み込まれている定義よりも優先する。
本明細書において用いられる場合、単数形での記載であっても、文脈で明らかに他のことを指示していない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の意味である。
本明細書において用いられる場合、本発明において用いられている「ニューレグリン」または「NRG」は、ErbB2、ErbB3、ErbB4もしくはその組合せと結合し、活性化し得るタンパク質またはペプチドを表しており、全てのニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGF様ドメイン単独、ニューレグリンEGF様ドメインを含むポリペプチド、ニューレグリン変異体もしくは誘導体、および上述の受容体を同様に活性化する任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物(詳細は後述する)を包含するが、これらに限定されるものではない。ニューレグリンはまた、NRG−1、NRG−2、NRG−3およびNRG−4タンパク質、ペプチド、断片、およびニューレグリンの活性を模倣する化合物を包含する。本発明において用いられるニューレグリンは、上述のErbB受容体を活性化することができ、それらの生物学的反応を調節する。例えば、骨格筋細胞においてアセチルコリン受容体の合成を刺激し、および/または心筋細胞分化、生存およびDNA合成を向上させる。ニューレグリンはまた、それらの生物学的活性を実質的に変化させない保存性アミノ酸置換を有するそれらのバリアントも包含する。アミノ酸の好適な保存性置換は、本技術の当業者に公知であり、結果として得られる分子の生物学的活性を通常変化させずに成し得る。本技術の当業者は、通常、ポリペプチドが不可欠ではない領域における単一のアミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変化させない、ということを認めている(例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Bejacmin/Cummings Pub. co., p.224参照)。好ましい実施形態においては、本発明において用いられるニューレグリンは、ErbB2/ErbB4もしくはErbB2/ErbB3ヘテロダイマーと結合し、これらを活性化する。ペプチドは、例えば、アミノ酸配列:SHLVKCAEKEKTFCVNGGECFMVKDLSNPSRYLCKCPNEFTGDRCQNYVASFYKAEELYQ(配列番号1)を含む、NRG−1β2アイソフォームの177−237残基を含むペプチドが挙げられるが、限定の目的で挙げるものではない。NRG−1β2アイソフォームの177−237残基を含む上記ペプチドは、上記受容体と結合し、これを活性化するのに十分であると証明された上記EGF様ドメインを含む。
本明細書で用いられる場合、「上皮細胞増殖因子様ドメイン」または「EGF様ドメイン」は、ErbB2、ErbB3、ErbB4またはその組合せと結合し、これらを活性化し、そして、下記文献に開示されているEGF受容体結合ドメインと構造的な類似性を有している、ニューレグリン遺伝子によってコードされているポリペプチドモチーフを表している(WO 00/64400, Holmes et al., Science,256:1205-1210 (1992); U.S. Patent Nos. 5,530,109 and 5,716,930; Hijazi et al., Int. J. Oncol., 13:1061-1067 (1998); Chang et al., Nature, 387:509-512(1997); Carraway et al., Nature, 387:512-516 (1997); Higashiyama et al., J. Biochem., 122:675-680 (1997); およびWO 97/09425)。これらの文献の内容はすべて、本明細書に参照によって組み込まれる。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、ErbB2/ErbB4またはErbB2/ErbB3ヘテロダイマーと結合し、これらを活性化する。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、NRG−1の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含んでいる。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、NRG−1の177−226、177−237、または177−240のアミノ酸残基に対応するアミノ酸配列を含んでいる。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、NRG−2の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含んでいる。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、NRG−3の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含んでいる。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、NRG−4の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含んでいる。ある実施形態においては、EGF様ドメインは、米国特許第5,834,229号に記載されているように、Ala Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Proのアミノ酸配列を含んでいる。
ニューレグリンタンパク質は、医薬組成物の形態であることが好ましいが、その組成、投与量、および投与経路は、本技術における公知の方法に従って決定することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro (Editor) Mack Publishing Company, April 1997; Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Banga, 1999; and Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins, Hovgaard and Frkjr (Ed.), Taylor &Francis, Inc., 2000; Medical Applications of Liposomes, Lasic and Papahadjopoulos (Ed.), Elsevier Science, 1998; Textbook of Gene Therapy, Jain, Hogrefe & Huber Publishers, 1998; Adenoviruses: Basic Biology to Gene Therapy, Vol. 15, Seth, Landes Bioscience, 1999; Biopharmaceutical Drug Design and Development, Wu-Pong and Rojanasakul (Ed.), Humana Press, 1999; Therapeutic Angiogenesis: From Basic Science to the Clinic, Vol. 28, Dole et al. (Ed.), Springer-Verlag New York, 1999参照)。
上記のニューレグリンタンパク質は、経口投与、直腸投与、局所投与、吸入投与、口腔投与(例えば、舌下投与)、非経口投与(例えば、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、または静脈内投与)、経皮投与、またはその他の適した投与経路用に調製することができる。任意の特定の症例における最適な経路は、治療対象の病状の性質や重症度、および用いられる特定のニューレグリンタンパク質の性質によって決まる。上記のニューレグリンタンパク質は単独で投与することができる。または、上記のニューレグリンタンパク質は、薬学上許容される担体または添加剤と共に投与することが好ましい。本方法では、任意の適切な薬学上許容される担体または添加剤を使用することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro (Editor) Mack Publishing Company, April 1997参照)。
本発明によると、上記のニューレグリンタンパク質は、単独または他の薬剤、担体または添加剤と組み合わせて、任意の適した投与経路(陰茎海綿体注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、皮内注射、経口投与、または局所投与等)用に調製してもよい。本方法は、防腐剤を添加したアンプルまたは多回投与容器に入った単位投与形態の注射投与用の製剤を用いてもよい。上記の製剤は、油性または水性賦形剤の、懸濁液、溶液または、乳濁液等の形態を取ってもよく、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤等の調合のための薬剤を含んでいてもよい。また、活性成分は、使用前に、適切な賦形剤、発熱性物質を除去した無菌の水、またはその他の溶液と構成するために粉状でもよい。本発明における局所投与は、フォーム、ゲル、クリーム、軟膏、皮膚貼付薬、または泥膏を使用してもよい。
本発明で使用され得る薬学上許容される組成物、およびその投与方法は、米国特許第5,736,154;6,197,801B1;5,741,511;5,886,039;5,941,868;6,258,374B1;および5,686,102に記載されているものを含むが、これらに限定されるわけではない。
治療または予防での薬用量は、治療対象の症状の重症度および投与経路によって変わる。投与量、そしておそらく投与頻度も、個々の患者の年齢、体重、症状、および反応によって変わる。
なお、主治医は、毒性または有害な副作用によって、いつどのように治療をやめたり、中断したり、またはより少ない投与量に治療を調整したりするのかを認識しているものである。主治医は、その反対に、臨床反応が十分でない場合(毒性の副作用を除く)、いつどのようにより多い投与量に治療を調整するのかも認識しているものである。
適切なものであれば如何なる投与経路でも使用可能である。剤形は、錠剤、トローチ剤、カシェ剤、分散剤、懸濁液、溶液、カプセル、膏薬等を含む。Remington's Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。従来の薬物合成技術に従って、実際の使用においては、単独または他の薬剤と組み合わせた上記ニューレグリンを、完全に混合した混合剤中の活性成分として、医薬担体または添加剤(β−シクロデキストリン、および2−ヒドロキシ−プロピル−β−シクロデキストリン等)と組み合わせてもよい。上記担体は、局所または非経口等の投与に望ましい広範囲の調製形態を取ってよい。静脈注射または注入等の非経口投与形態用の組成物の調製においては、水、グリコール、油、緩衝液、砂糖、防腐剤、リポソーム等当業者に公知の類似の製薬媒体を用いてもよい。そのような非経口組成物として、例えば、5%w/vのデキストロース、通常の生理的食塩水、またはその他の溶液が挙げられるが、これらに限定するものではない。投与される、単独または他の薬剤と組み合わせた上記ニューレグリンタンパク質の総投与量を、約1〜2000mlの範囲の静脈注射用流体のバイアルで投与してもよい。希釈液の量は上記総投与量によって変わる。
本発明は、本発明の治療レジメンを実行するためのキットも提供する。そのようなキットは、薬学上許容される形態で、単独または他の薬剤と組み合わせた、治療に効果的な量の上記ニューレグリンタンパク質の1つ以上の容器を備えている。好ましい剤形は、無菌生理的食塩水、デキストロース溶液、緩衝液、またはその他の薬学上許容される無菌流体との組み合わせでもよい。また、上記組成物は、凍結乾燥または乾燥させてもよく、この場合、上記キットは、注射用溶液にするために複合体を元に戻すため、薬学上許容される溶液(無菌であることが好ましい)を容器内にさらに任意に含んでいる。薬学上許容される溶液の例としては、生理的食塩水およびデキストロース溶液が挙げられる。
他の実施形態においては、本発明のキットは、上記組成物を注射するため、無菌形態で包装されていることが好ましい針または注射器、および/または包装されたアルコールパッドをさらに備えている。医師または患者によって組成物を投与するための説明が任意に含まれている。
本明細書において用いられる場合、「治療する」、「治療」および「治療している」は、疾患、不調または病気の症状を改善、またはそうでなければ良い方へ変化させる任意の方法を表している。治療の効果は、完全にまたは部分的に病気またはその症状を防ぐという点から予防的でもよく、および/または病気および/または上記病気に起因する有害な効果の部分的または完全な治癒という点から治療的でもよい。治療には本明細書の組成物の任意の薬学的利用も含まれている。
本明細書において用いられる場合、「心不全」は、代謝組織が必要とする速度で、心臓が血液を送り出さない心臓機能の異常を意味している。心不全は、広範囲の疾患状態(鬱血性心不全、心筋梗塞、不整頻拍、家族性肥大型心筋症、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、心筋炎等)を含んでいる。上記心不全は、限定されるわけではないが、虚血性、先天性、リューマチ性、ウイルス性、毒性または特発性の形態を含む多くの要因から起こり得る。慢性心肥大は、鬱血性心不全および心停止の前兆となる重大な疾患状態である。
本明細書において用いられる場合、「タンパク質」は、文脈で明らかに他のことを指示していない限り、「ポリペプチド」または「ペプチド」と同義である。
本明細書において用いられる場合、「血漿」は、文脈で明らかに他のことを指示していない限り、「血清」と同義である。
本明細書において用いられる場合、「長期的なメリット」は、治療または干渉後に、該治療または干渉によって起こる短期間では見られないメリットを意味している。慢性心不全患者にとっての長期的なメリットとは、生存の改善、再入院の減少、または長期的な予後を示すバイオマーカーの改善であってもよい。ある実施形態においては、上記メリットを観察する期間は約6か月である。ある実施形態においては、上記メリットを観察する期間は約1年である。ある実施形態においては、上記メリットを観察する期間は約2年である。その他の実施形態においては、上記メリットを観察する期間は約3年、5年、10年、またはそれ以上である。
本明細書において用いられる場合、「生存」は、ある患者が生存している期間または確率を意味し、生存期間や生存率として表現され得る。生存期間は、診断または治療から死亡するまでの期間である。生存率は、診断または治療後の一定期間に生存している人々の割合を意味している。各患者にとって、治療または干渉によって生存期間が延びることはメリットと見なすことができる。患者集団または大規模の集団にとって、平均生存期間の延長または生存率の増加はメリットと見なすことができる。
本明細書において用いられる場合、「再入院」は、一定期間内に病院に入院した患者の入院回数または入院頻度を意味している。病院への入院はあらゆる疾患によるものでもよいが、治療を受けている疾患と同じ疾患のみによるものでもよい。各患者にとって、一定期間内の再入院の回数の減少はメリットと見なすことができる。患者集団または大規模集団にとって、再入院の合計回数または平均回数の減少はメリットと見なすことができる。
BNPおよびNT−proBNP血漿レベルは、心不全が疑われる場合または心不全にかかった場合の日々の管理において有望な項目である。臨床でのBNPおよびNT−proBNPの使用についての多くの研究は、その診断特性について扱っており、BNPおよびNT−proBNPの予後値を裏付けるのにますます多くの証拠が利用できるようになっている。NT−proBNPはBNPよりも血中での半減期が約6倍長いので、心不全の診断または予後マーカーとしてより広く利用される。血漿NT−proBNPレベルは、市販のキットで分析可能である。例を示すために、Roche社またはBiomedica社の市販のキットを挙げるが、これに限定されるわけではない。本発明の例では、NT−proBNPレベルは、Biomedica社(オーストリア)のキットによって検出された。
血中のBNPおよびNT−proBNPレベルは、予後が良くない患者では両マーカーの値が典型的に高くなるので、心不全のスクリーニングおよび診断のために用いられ、さらに心不全の予後を定めるのに有用である。本発明では、BNPまたはNT−proBNPの血漿レベルが、ニューレグリンによる心不全治療に適した患者を示すことを発見した。実際、心不全の任意の診断または予後マーカーは、患者がニューレグリンによる心不全治療に適しているかどうかを決定するために利用可能である。本発明で特定されたNT−proBNP血漿レベルは、ニューレグリンから有効な治療メリットを得るであろう心不全患者を選択するための制限というより、ガイドラインとして利用されるべきである。例えば、5000fmol/mlの血漿レベルを利用すると、ニューレグリンによる治療メリットを得るであろう心不全患者を選択することはやはり可能であるが、こうした患者の中には、より少ない治療メリットしか得られない患者もいる。
本明細書において用いられる場合、「活性ユニット」、「EU」、または「U」は、最大反応の50%を誘導し得る規格品の量を意味する。すなわち、所定の活性物質について活性ユニットを決定するためには、EC50が測定されるべきである。例えば、生産品のあるバッチのEC50が0.1μgであった場合、これが1ユニットになる。さらに、その生産品の1μgが用いられる場合、10EU(1/0.1)が用いられる。EC50は、本技術において公知の任意の方法によって決定することができ、本発明者らが用いている方法を含んでいる。この活性ユニットの決定は、遺伝子操作されている生産品、および臨床に用いられる薬剤の品質管理において重要である。また、この活性ユニットの決定によって、異なる調製薬および/または異なるバッチナンバーからの生産品を、同一の基準によって定量することができる。
以下は、NRGと細胞表面ErbB3/ErbB4分子との結合、およびErbB2リン酸化の間接媒介を介したNRG−1の生物学的活性を決定するための、例示的で、迅速かつ高感度であって、流動性の高い定量的な方法である(例えば、Michael D. Sadick etal., 1996, Analytical Biochemistry, 235:207-214、およびWO03/099300参照)。
簡潔に言えば、キナーゼ受容体活性酵素免疫測定吸着法(KIRA−ELISA)と称される測定法は、2つの別々のマイクロタイタープレートから成り、一方のマイクロタイタープレートは、細胞培養、リガンド刺激、および細胞溶解/受容体可溶化用であり、もう一方のマイクロタイタープレートは、受容体の捕捉とホスホチロシンELISA用である。上記測定法は、粘着乳癌細胞系列であるMCF−7において、NRGに誘導されたErbB2の活性の分析のため実施され、健全な受容体の刺激を利用する。膜タンパク質は、Triton X−100溶解を介して可溶化され、受容体は、ErbB3またはErbB4と交差反応を起こさないErbB2特異的抗体がコーティングされたELISAウェルに捕捉される。受容体のリン酸化の程度は、その後抗ホスホチロシンELISAによって定量化される。再現性のある標準曲線は、ヘレグリンβ1(177−244)に対して約360pMのEC50で作成される。理想的なHRGβ1(177−244)サンプルが、KIRA−ELISAおよび定量的抗ホスホチロシンウエスタンブロット(Western Blot)分析によって分析される場合、その分析結果は互いに非常に高い相関を示す。本レポートに記載の上記測定法は、HRGとErbB3および/またはErbB4との相互作用によるErbB2のチロシンリン酸化を明確に定量化することができる。
遺伝子操作薬の大部分はタンパク質およびポリペプチドであるため、それらの活性はそのアミノ酸配列、またはその立体構成によって形成される活性中心によって評価することができる。タンパク質およびポリペプチドの活性力価は、その絶対量に一致しないため、化学薬品の重量単位のようにその重量単位で活性を評価することができない。しかしながら、遺伝子操作薬の生物学的活性は、通常その薬力学的特性に一致し、所定の生物学的活性を介して確立された力価決定システムではその力価単位を求めることができる。したがって、生物学的活性の評価は、生物学的活性を有する物質の力価測定プロセスの一部になり得、遺伝子操作薬の品質管理の重要な要素である。遺伝子操作されている生産品および臨床に用いられる薬剤の品質管理にとって、生物学的活性基準を決定することは重要である。
最大反応の50%を誘導し得る規格品の量は、活性ユニット(1EU)として規定される。したがって、異なる調製薬および異なるバッチナンバーからの生産品を、同一の基準によって定量することができる。
(図面の簡単な説明)
図1は、11日目、30日目、90日目における、rhNRG−1およびプラセボを投与された糖尿病患者のNT−proBNPの結果である。
(実施例)
(実施例1:CHFのラットの異なる経路でのNeucardin(商標)投与による生存率への効果)
(導入)
この研究では、糖尿病患者の心筋梗塞を模倣した冠状動脈結紮(CAL)モデルを用いて、マイクロインジェクションポンプを用いた経静脈点滴または皮下(SC)ボーラスによるNeucardin(商標)の投与が、生存率および心臓の血行動態に効果があるかどうかを、CALから4週間後に開始したNeucardin(商標)の投与から120日後に調べた。心臓機能およびCALからの回復を確認するためにエコー心電図検査および心臓リモデリングも利用した。
<2. 方法>
<2.1. 試験動物>
系統、由来:ウィスターラット、Shanghai SLAC Laboratory Animal CO. LTD、体重200±10g、雄。
<2.2 試験対象>
<2.2.1 Neucardin(商標)>
識別:注射用組換えヒトニューレグリン−1(rhNRG−1, Neucardin(商標))。
ロットナンバー:200607009。
製造者:Zensun (Shanghai) Sci & Tech Co., Ltd。
剤形:凍結乾燥粉末。
外観:白またはオフホワイトの固形物。
ラベルに記載のrhNRG−1の容量:250μg/バイアル。
比活性:4897U/バイアル。
保存条件:2〜8℃。
<2.2.2 賦形剤>
識別:組換えヒトニューレグリン−1のプラセボ。
剤形:凍結乾燥粉末。
外観:白またはオフホワイトの固形物。
組成:ヒト血清アルブミン、マンニトール、リン酸塩、塩化ナトリウム。
保存条件:2〜8℃。
<2.3 手順>
<2.3.1 ラットCHFモデルの作成方法>
ラットのLADを結紮した。簡潔に説明すると、塩酸ケタミン(100mg/kg、IP)でラットに麻酔をかけ、胸部を剃り殺菌した。ラットに気管挿管を行い、室内の空気で機械的に酸素を供給した(呼吸速度:60呼吸/分、1回呼吸量:20ml)。それから第4および第5肋間の間に左開胸術を行い、左側の胸骨線に沿って皮膚を切開した。第4肋骨を胸骨に向かって切除した。心臓嚢に穴を開け、心臓をむき出しにした。絹縫合糸(6−0)を用いて起点から約2mmのところでLADを結紮した。その後、胸腔内の空気を抜き、胸部を3層(肋骨、筋肉、および皮膚)で閉じた。その後、ラットが自然呼吸を再開できるようになり、麻酔が解けるとケージに戻した。ラットを4週間維持し、その後エコー心電図検査により評価し、30〜45%のEF値を示す場合に正式の試験に加えた。全グループのラットは5つのケージに入れられ、標準的なエサを自由に食べられるようにし、純水も自由に飲めるようにした。室温を21±1℃に保ち、12時間周期で明/暗を切り替えた。
<2.3.2 マイクロインジェクションポンプによる経静脈点滴>
賦形剤またはNeucardin(商標)の経静脈点滴を尾の静脈を介して行った。この手順を実施するために、ラットの体重に対応した適当なラット保定器を使用した。ラットを保定器付近に置き、装置内に静かに置いた。順当に、ラットは保定器に補助なしで入った。その後、尾の静脈の血流を増やし、皮膚の角質層を軟化させるために、アルコールで湿らせたガーゼでラットの尾を拭いた。側面(側部)の2本の尾の静脈を特定し、針のべベルを上に向けて針が静脈にほぼ平行になるようにして、尾の終端から2〜3cmの尾の静脈に針を2mm挿入した。針が尾の静脈に確実に入っているかを確認するために、針のハブに血液を抜き取った。医療用テープを使用し上記針を尾に固定した。適当な速度(0.2〜0.4ml/時)で、マイクロインジェクションポンプまたはボーラス注射による薬または賦形剤の注入を開始した。
<2.3.3 SCボーラス>
賦形剤またはNeucardin(商標)のSCボーラスをラットの背中から行った。この手順を実施するために、ラットの体重に対応した適当なラット保定器を使用した。皮膚を消毒するためにアルコールで湿らせたガーゼでラットの背中を拭いた。針のべベルを上に向けて針が皮膚にほぼ平行になるようにして、ラットの背中に針を3〜4cm皮下挿入した。医療用テープを使って上記針を背中に固定し、灌流チューブにつないだ。その後、ラットを保定器付近に置き、装置内に静かに置いた。順当に、ラットは補助なしで保定器に入った。保定器を閉めた後、ボーラス注射を開始した。
<2.3.4 実験グループおよび薬物注入>
MIラットをEF値によって無作為に以下の4グループに分けた。
グループA(経静脈およびSCボーラスのネガティブコントロール):n=58ラット、マイクロインジェクションポンプによる賦形剤の経静脈点滴を、最初の10日間に毎日8時間、0.2ml/時のスピードで行い、賦形剤のSCボーラス(Neucardin(商標)と同量)を120日目まで5日毎に行った。
グループB(Neucardin(商標)のSCボーラス):n=58、マイクロインジェクションポンプによる賦形剤の経静脈点滴を、最初の10日間に毎日8時間、0.2ml/時のスピードで行い、Neucardin(商標)のSCボーラス(10μg/日)を120日目まで5日毎に行った。
グループC(Neucardin(商標)の経静脈点滴):n=57、マイクロインジェクションポンプによるNeucardin(商標)の経静脈点滴(0.625μg/kg/時)を、最初の10日間に毎日8時間、0.2ml/時のスピードで行い、賦形剤のSCボーラス(Neucardin(商標)と同量)を120日目まで5日毎に行った。
グループD(Neucardin(商標)の経静脈点滴およびSCボーラス):n=57、マイクロインジェクションポンプによるNeucardin(商標)の経静脈点滴(0.625μg/kg/時)を、最初の10日間に毎日8時間、0.2ml/時のスピードで行い、賦形剤のSCボーラス(Neucardin(商標)と同量)を1日目、6日目、11日目に行い、その後16日目から最終日まで5日毎にNeucardin(商標)のSCボーラス(10μg/日)を行った。
<2.3.5 取得データ>
生存率、エコー心電図検査パラメーター、血行動態パラメーター。
<3. 結果>
<3.1 生存率>
表1は各グループ間の生存率を示している。各生存率は、グループA(賦形剤の経静脈点滴およびSCボーラス)では48.3%、グループB(Neucardin(商標)のSCボーラス)では62.1%、グループC(Neucardin(商標)の経静脈点滴)では64.9%、グループD(Neucardin(商標)の経静脈点滴およびSCボーラス)では82.5%だった。グループB、C、Dの生存率または死亡ラットの平均生存期間は、グループAと比較して向上または期間が長く、グループDの効果が最も高かった。
Figure 2017125032
<3.2 エコー心電図検査パラメーター>
エコー心電図検査パラメーターを表2に示した。冠状動脈結紮から4週間後および試験物質の投与前に、CHFラットをEF値に関して無作為に4グループに分けた。表2に示す通り、処置前(BT)は4グループ間に有意な差はなかった。投与開始から120日後では、EF値はそれぞれ、賦形剤グループでは30.7±3.1%、SCボーラスによるNeucardin(商標)グループでは32.9±4.1%、経静脈点滴によるNeucardin(商標)グループでは33.5±3.4%、そして経静脈点滴とSCボーラスによるNeucardin(商標)グループでは36.2±4.8%であった。処置後は、グループB、C、およびDのEF値およびFS値が、グループAのEF値およびFS値よりも高かった。
Figure 2017125032
<3.3 血行動態パラメーター>
表3は、121日目に、4グループの麻酔をかけた動物のMAP、HR、±dp/dt、LVEDP、およびLVSPの計測値を示している。Neucardin(商標)がSCボーラスまたは経静脈点滴のいずれか一方によって投与された場合(グループBおよびC)、Neucardin(商標)は、グループAと比較して、dp/dtをそれぞれ19.6%、27.1%有意に上昇させ、−dp/dtをそれぞれ22.5%、29.8%有意に上昇させた。Neucardin(商標)が経静脈点滴およびSCボーラスの両方によって投与された場合(グループD)は、賦形剤の場合と比較して、平均動脈圧(MAP、112.3±5.5mmHg)、左心室収縮期圧(LVSP、139.4±9.8mmHg)、+dp/dt(7012.1±903.0mmHg/秒)、−dp/dt(−4353.2±847.6mmHg/秒)の顕著な上昇がみられた。興味深いことに、MAP、LVSP、+dp/dt、および−dp/dtのこれらの値は、賦形剤が投与されたラットよりも、それぞれ10.6%、9.2%、38.5%、および37.5%高かった。これらの結果により、血行動態パラメーターについて、グループB、C、およびDの全てがグループAよりも良く、グループDの効果が最も高いことが示された。
Figure 2017125032
Figure 2017125032
<4. 結論>
経静脈点滴およびSCボーラスによるNeucardin(商標)の組み合わせ投与の場合でも、どちらか一方の経路でのみ当該ペプチドの投与を行った場合でも、賦形剤で処置されたラットと比較して、いずれもCALによってCHFを誘導したラットの生存率は上がり、心臓機能パラメーターが向上した。
(実施例2:標準治療に基づいた慢性心不全患者における組換えヒトニューレグリン1の効果と安全性を評価するための、無作為化二重盲検多施設プラセボ対照試験)
慢性心不全を患っている糖尿病患者を含む慢性心不全への組換えヒトニューレグリン−1の注入効果を評価するために、フェーズII、二重盲検多施設プラセボ対照標準治療に基づいた試験を、中国の複数の臨床施設で実施した。合計195人のNYHAクラスIIまたはIIIの安定した慢性心不全患者(21人の糖尿病患者を含む)を入院させて、3つのグループ(プラセボ、0.6μg/kgのrhNRG−1、1.2μg/kgのrhNRG−1)に無作為に分けた。Neucardinのグループには13人の糖尿病患者が含まれ(5人:0.6μg/kg/日のグループ、8人:1.2μg/kg/日のグループ)、プラセボのグループには9人の糖尿病患者が含まれた。グループ間において人口統計学上または治療経歴に有意な差はなかった。スケジュールに従って、まず病院にて10日間連続で患者に薬を投与し、11日目のフォローアップ後に退院させた。30日目および90日目の2回、別のオンサイトフォローアップを行った。最後の患者が入院してから1年後に電話インタビューを実施した。
治験薬:
仕様:Neucardin(商標)、7054Dalの分子量(1μg=0.14nmol)のニューレグリン−1 β2アイソフォームのEGF様ドメインを含む61アミノ酸ポリペプチド。250μg(5000EU)/バイアル(1μg=20EU)。
調製:注射用。
投与形態:点滴。
保存:3〜8℃で、利用が制限され、光が当たらない安全な場所。
プラセボ:
仕様:Neucardin(商標)の賦形剤。活性組換えヒトニューレグリン−1タンパク質を含まない250μg/バイアル。
Figure 2017125032
試験手順
10日間連続でプラセボまたはrhNRG−1(0.6または1.2μg/kg/日)が投与される3グループに患者を無作為に分け、11日目のフォローアップ後に退院させた。30日目および90日目の2回、別のオンサイトフォローアップを行った。治療前と11日目、30日目、および90日目に各患者の血液サンプルを採取した。NT−proBNP測定法(Biomedica社製キット)を用いて、血漿NT−proBNPをコア研究所で検査した。
糖尿病患者(5人:0.6μg/kg/日のグループ、8人:1.2μg/kg/日のグループ、9人:プラセボのグループ)に関しては、図1に示すように、30日目と90日目に、Neucardin(商標)が投与された患者において、NT−proBNP値の減少が見られ、これは長期的な予後の改善を示している。11日目に値が上昇したことについては、Neucardin(商標)の刺激によって、心筋細胞からBNPが直接放出されることによるものであり、このことは前臨床試験において確認されている。
これらの結果は、rhNRG−1による治療が、NT−proBNPの血漿レベルを下げることから、rhNRG−1が、慢性心不全を患っている糖尿病患者へ長期的なメリットを与えられることを示した。
(実施例3:標準治療に基づいた慢性心不全患者における組換えヒトニューレグリン1の無作為化二重盲検多施設プラセボ対照生存試験)
慢性心不全を患っている糖尿病患者を含む慢性心不全への組換えヒトニューレグリン−1の注入効果を評価するために、フェーズII、二重盲検多施設プラセボ対照標準治療に基づいた試験を、中国の複数の臨床施設で実施した。合計351人のNYHAクラスIIIまたはIVの安定した慢性心不全患者を入院させて、プラセボまたはrhNRG−1グループ(0.6μg/kg)に無作為に分けた。351人の患者のうち、68人の患者は糖尿病患者であった(そのうち35人の患者がプラセボのグループに含まれ、33人の患者がNeucardin(商標)のグループに含まれた)。グループ間において人口統計学上または治療経歴に有意な差はなかった。スケジュールに従って、病院にて10日間連続で患者に薬を投与し、11日目のフォローアップ後に退院させ、3週目から25週目の間、週に1回、外来患者として投薬を行った。治療前(ベースライン)、および各フォローアップ時に、各患者の血液サンプルを採取した。試験から52週目に生存情報を収集した。
治験薬:
仕様:Neucardin(商標)、7054Dalの分子量(1μg=0.14nmol)のニューレグリン−1 β2アイソフォームのEGF様ドメインを含む61アミノ酸ポリペプチド。250μg(5000EU)/バイアル(1μg=20EU)。
調製:注射用。
投与形態:点滴または静脈注入。
保存:3〜8℃で、利用が制限され、光が当たらない安全な場所。
プラセボ:
仕様:Neucardin(商標)の賦形剤。250μg/バイアルであって、活性組換えヒトニューレグリン−1タンパク質を含まない。
Figure 2017125032
糖尿病患者に関しては、プラセボグループの52週目の総死亡率は20%であって、35人の患者のうち7人が死亡した。一方、rhNRG−1グループでは総死亡率は9.1%であって、試験を終えた33人の患者のうち3人が死亡した。この結果から、rhNRG−1を投与した死亡率は、プラセボグループと比較して(プラセボグループは、慢性心不全の従来の標準治療を続けていたにもかかわらず)、約55%下がったことが分かる。
この試験の結果は、rhNRG−1が、心臓の合併症、特にHFを患っている糖尿病患者の死亡率を有意に低下させられることを示した。
11日目、30日目、90日目における、rhNRG−1およびプラセボを投与された糖尿病患者のNT−proBNPの結果である。

Claims (14)

  1. 糖尿病患者の心臓の合併症を予防、治療、または遅延するための方法であって、有効量のニューレグリンを含む医薬組成物を上記患者に投与するステップを含んでいることを特徴とする方法。
  2. 上記心臓の合併症は心不全であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 上記ニューレグリンは、ニューレグリン−1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 上記ニューレグリンは、ニューレグリン−1βのEGF様ドメインを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 上記ニューレグリンは、配列番号1を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 上記医薬組成物は、上記の患者の静脈内、または皮下に投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 上記医薬組成物は、導入レジメンに従って上記の患者に投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 上記導入レジメンは、少なくとも3、5、7、または10日間の上記の医薬組成物の連続投与を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 上記医薬組成物は、上記導入レジメン後の管理レジメンに従って上記の患者に投与されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  10. 上記管理レジメンは、3、5、7、または10日毎の上記の医薬組成物の投与を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 糖尿病患者の心臓の合併症を予防、治療、または遅延するための薬剤を調製するためのニューレグリンの使用方法。
  12. 上記ニューレグリンは、ニューレグリン−1であることを特徴とする請求項11に記載の使用方法。
  13. ニューレグリンタンパク質は、ニューレグリン−1βのEGF様ドメインを含むことを特徴とする請求項11に記載の使用方法。
  14. 上記ニューレグリンは、配列番号1を含むことを特徴とする請求項11に記載の使用方法。
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