JP2017114721A - 中空酸化チタン粒子の製造方法 - Google Patents

中空酸化チタン粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】所定の範囲の粒子径、空孔率、平均細孔径及び結晶子サイズを有し、液中における沈降抑制性に優れた中空酸化チタン粒子を効率的に製造し得る方法を提供すること。【解決手段】平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、空孔率が5体積%以上70体積%以下であり、平均細孔径が100nm以下であり、酸化チタンの結晶子サイズが1Å以上500Å以下である中空酸化チタン粒子の製造方法である。この製造方法は、粒子径1nm以上150nm以下の酸化チタンナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、中空酸化チタン粒子の製造方法に関し、更に詳しくは所定の範囲の粒子径、空孔率、平均細孔径及び結晶子サイズを有し、液中における沈降抑制性に優れた中空酸化チタン粒子の製造方法に関する。
酸化チタン粒子はその高い屈折率から、白色顔料として各種インク材料に配合されて用いられることが多い。特に、酸化チタン粒子が中空状の形態を有する微小なものである場合には、中実状の粗大粒子に比べて小粒径で且つ低比重という構造的な特徴に起因して、各種液中での沈降抑制性が発現するので、分散安定性に一層優れた白色顔料として用いることができる。
中空酸化チタン粒子を製造する従来の方法としては、例えば薄片状チタニアゾルを噴霧乾燥する方法が知られている(特許文献1参照)。しかし通常の噴霧乾燥で得られる中空酸化チタン粒子はその粒子径が大きく、同文献に記載の中空酸化チタン粒子の外径は実質的に約20μmである。
非特許文献1には、外殻にシリカナノ粒子を含み、内部に樹脂粒子を含むカプセル構造体を静電噴霧によって製造した後に樹脂粒子を焼却することで、中空シリカ粒子を製造することが記載されている。この方法では樹脂粒子を焼却する工程が必須であり、また樹脂粒子を焼却することで発生する多量のガスに起因して外殻が崩壊し易くなる恐れがある。
特許文献2には、シリカナノ粒子を噴霧乾燥することで中空シリカ粒子を得る方法が記載されている。しかし、通常の噴霧乾燥で得られる中空シリカ粒子はその粒径が大きくなってしまい、実際5〜30μmと大きなサイズのものである。
国際公開第99/11574号パンフレット 特開2009−114010号公報
Langmuir 29(2013),p.13152?13161
本発明の課題は中空酸化チタン粒子の製造方法の改良にあり、更に詳しくは所定の範囲の粒子径、空孔率、平均細孔径及び結晶子サイズを有し、液中における沈降抑制性に優れた中空酸化チタン粒子の製造方法を提供することにある。
本発明は、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、空孔率が5体積%以上70体積%以下であり、平均細孔径が100nm以下であり、酸化チタンの結晶子サイズが1Å以上500Å以下である中空酸化チタン粒子の製造方法であって、
粒子径1nm以上150nm以下の酸化チタンナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する中空酸化チタン粒子の製造方法を提供するものである。
本発明の方法によれば、所定の範囲の粒子径、空孔率、平均細孔径及び結晶子サイズを有し、液中における沈降抑制性に優れた中空酸化チタン粒子を効率的に製造することができる。
図1(a)及び図1(b)はそれぞれ、本発明の方法に従い製造される中空酸化チタン粒子の断面構造一例を示す模式図である。 図2は、静電噴霧工程において帯電液滴が中空酸化チタン粒子になるまでの変化を示す図である。 図3(a)は、静電噴霧工程において液滴の表面に被膜が形成される様子を示す模式図であり、図3(b)は、溶媒の蒸発に伴う液滴の半径の減少速度に対して、中空酸化チタン粒子の中心方向への拡散速度が同等以上である場合の液滴の表面近傍の状態の変化を示す図(図3(a)対応図)である。 図4は、本発明の実施に好ましく用いられる中空酸化チタン粒子の製造装置の概略構成を示す図である。 図5は、図4に示す装置の液体噴霧部の要部を示す断面図である。 図6は、図4に示す装置の液体噴霧部を、図4中の下側から視た液体噴霧部の正面図である。 図7は、図4に示す装置の液体噴霧部の要部を示す斜視図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
〔本発明の従い製造される中空酸化チタン粒子〕
まず、本発明の方法に従って製造される中空酸化チタン粒子について説明する。図1(a)及び(b)には、本発明の方法に従って製造される中空酸化チタン粒子3A,3Bの典型的な2つの形態が示されている。図1(a)及び(b)にそれぞれ示す中空酸化チタン粒子3A,3Bは概ね球形のものであり、中空部32及び該中空部32を取り囲む球状の外殻部33を有している。外殻部33は球殻の形状をしている。概ね球形とは、中空酸化チタン粒子3A,3Bの投影像を観察したときに、その投影像の真円度が0.8以上であることを言う。真円度とは、中空酸化チタン粒子3A,3Bの100個の投影像を観察し、以下の式から算出される値の相加平均値のことである。
真円度=4π(投影像の面積)/(投影像の周長)2
図1(a)に示す中空酸化チタン粒子3Aにおける外殻部33は、高分子成分34及び複数の酸化チタンナノ粒子35を含んでいる。必要に応じ、外殻部33はシリカナノ粒子を初めとする他のナノ粒子を複数含んでいてもよい。
一方、図1(b)に示す中空酸化チタン粒子3Bにおける外殻部33は、複数の酸化チタンナノ粒子35を含んでいる。この酸化チタンナノ粒子35は粒子どうしが焼結しており、それによって外殻部33は複数の酸化チタンナノ粒子35の焼結体から構成されている。必要に応じ、外殻部33はシリカナノ粒子を初めとする他のナノ粒子を複数含んでいてもよい。シリカナノ粒子等は、該シリカナノ粒子等と焼結しているか、又は酸化チタンナノ粒子35と焼結している。図1(a)に示す中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33と異なり、図1(b)に示す中空酸化チタン粒子3Bの外殻部33には高分子成分が実質的に含まれていない。「実質的に含まれていない」とは、中空酸化チタン粒子3Bに占める高分子成分の割合が0.1質量%以下であることをいう。
中空酸化チタン粒子3A,3Bに占める高分子成分の割合は以下の方法で測定される。
熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、質量A(mg)の中空酸化チタン粒子3A,3Bを酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱する。高分子成分の熱分解温度における質量減少がB(mg)であったとき、その中空酸化チタン粒子3A,3Bの外殻部33の高分子成分の含有率は以下の式で算出することができる。
外殻部33の高分子成分の含有率(質量%)=(B/A)×100
原料液に含まれる酸化チタンナノ粒子と高分子成分との固形分比(質量比)が、そのまま、中空酸化チタン粒子3A,3Bの外殻部33の酸化チタンナノ粒子と高分子成分との質量比となる場合は、原料液中の固形分比や配合比からから中空酸化チタン粒子3A,3Bの外殻部33の高分子成分の含有率をとすることもできる。また、中空酸化チタン粒子3A,3Bから高分子成分が溶解可能な溶媒により高分子成分を抽出し、その抽出液を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析、示差走査熱量測定、熱重量測定装置などの熱分析などの機器分析又はその組み合わせによって、外殻部33の高分子成分の含有率を測定することもできる。
中空酸化チタン粒子3A,3Bにおいては、外殻部33を構成する酸化チタンナノ粒子35は、その粒子径が1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、10nm以上であることが一層好ましい。また、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが一層好ましい。酸化チタンナノ粒子35の粒子径は、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることが更に好ましく、10nm以上50nm以下であることが一層好ましい。このような粒子径の酸化チタンナノ粒子35を用いることで、中空酸化チタン粒子3を首尾よく製造することができる。酸化チタンナノ粒子の粒子径は、例えば次のようにして測定することができる。中空酸化チタン粒子3の表面又は断面を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、撮影された電子顕微鏡像から酸化チタンナノ粒子を選定し、その最大横断長を酸化チタンナノ粒子の直径とする。酸化チタンナノ粒子の直径を球換算した体積を求め、撮像された100個以上の酸化チタンナノ粒子の累積分布50体積%(メジアン径)を示す直径を酸化チタンナノ粒子の粒子径とする。なお中空酸化チタン粒子3Bにおける酸化チタンナノ粒子35の粒子径とは、焼結体における結晶粒界の大きさのことである。
なお後述するように、中空酸化チタン粒子3は酸化チタンナノ粒子を含む原料液を静電噴霧することで製造される。この原料液に含まれた状態の酸化チタンナノ粒子の粒子径と外殻部33を構成する酸化チタンナノ粒子35の粒子径は実質的に同一である。原料液に含まれた状態の酸化チタンナノ粒子の粒子径は、例えば次のようにして測定することができる。酸化チタンナノ粒子を含む原料液を任意の濃度に希釈し、動的光散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所、ナノ粒子解析装置SZ−100)で測定したときのメジアン径を、酸化チタンナノ粒子の粒子径とする。
酸化チタンには代表的な結晶形としてルチル型とアナターゼ型があることが知られている。ルチル型の酸化チタンは、アナターゼ型の酸化チタンに比べて屈折率が高く、白色顔料としての隠蔽力が高い。したがって、中空酸化チタン粒子3A,3Bを白色顔料として用いる場合には、外殻部33を構成する酸化チタンナノ粒子は、アナターゼ型よりもルチル型の方が有利である。尤も、中空酸化チタン粒子3A,3Bを白色顔料以外の用途に用いた場合には、ルチル型よりもアナターゼ型の方が有利なこともある。
必要に応じて外殻部33に含有されるシリカナノ粒子は、外殻部33の強度を向上させる目的で用いられる。シリカナノ粒子は、その粒子径が1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることが更に好ましく、5nm以上であることが一層好ましい。また、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが一層好ましい。シリカナノ粒子の粒子径は、1nm以上150nm以下であることが好ましく、3nm以上100nm以下であることが更に好ましく、5nm以上50nm以下であることが一層好ましい。このような微粒のシリカナノ粒子を用いることで、中空酸化チタン粒子を焼結したときにシリカナノ粒子が酸化チタンナノ粒子のバインダーとして働くことで、より緻密で強固な外殻部が形成される点で好ましい。またアナターゼ型の酸化チタンナノ粒子は、高温で焼結を施すことで結晶子サイズの増大及びルチル型へ結晶変換が生じるが、外殻部33にシリカナノ粒子が含有されることで、高温下でも結晶子サイズの増大及びルチル型への結晶変換が抑制され易くなる。シリカナノ粒子の粒子径は、酸化チタンナノ粒子の粒子径と同様の方法で測定することができる。なお中空酸化チタン粒子3Bにおけるシリカナノ粒子の粒子径とは、焼結体における結晶粒界の大きさのことである。
中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33に含まれる高分子成分34は、酸化チタンナノ粒子35、及び必要に応じて用いられるシリカナノ粒子等の他のナノ粒子のバインダーとして機能する。外殻部33における高分子成分34の含有割合は、中空酸化チタン粒子3Aに対して好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。この割合で高分子成分34が含まれていることで、該高分子成分34が、外殻部33を形成する酸化チタンナノ粒子35を結合するバインダーとして機能する。また外殻部33に高分子成分34を好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含むことによって、外殻部33は酸化チタンナノ粒子35が高濃度に充填され、強度に優れたものとなる。高分子成分34の詳細については後述する。
中空酸化チタン粒子3A,3Bは、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、且つ空孔率が5体積%以上70体積%以下である。本発明の製造方法は、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下の微小な中空酸化チタン粒子3A,3Bを製造できる点において優れている。平均粒子径は、中空酸化チタン粒子3A,3Bの具体的な用途等を考慮して適宜調整し得るが、より好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、更に好ましくは0.3μm以上3μm以下である。この範囲の平均粒子径を有する中空酸化チタン粒子3A,3Bは、例えば白色顔料として用いると、十分に高い白色度を示すことから好ましい。平均粒子径の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
中空酸化チタン粒子3A,3Bは、中空の粒子であり、空孔率が5体積%以上である。空孔率が5体積%以上であることによって、中空であることによる種々の有利な効果、例えば比重が低くなることに起因する沈降の抑制などの効果が得られる。他方、空孔率が70体積%以下であることによって、種々の利用に耐え得る強度をもった中空粒子となる。中空酸化チタン粒子3A,3Bの空孔率は、より好ましくは7体積%以上50体積%以下であり、更に好ましくは10体積%以上40体積%以下である。空孔率は、中空酸化チタン粒子3A,3Bの体積に占める中空部32の体積の割合のことであり、後述する方法によって測定される。
中空酸化チタン粒子3A,3Bは、その平均細孔径が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、10nm以下であることが一層好ましい。また平均細孔径が0.01nm以上であることが好ましく、0.1nm以上であることが更に好ましく、1nm以上であることが一層好ましい。中空酸化チタン粒子3A,3Bの平均細孔径は、0.01nm以上100nm以下であることが好ましく、0.1nm以上50nm以下であることが更に好ましく、1nm以上10nm以下であることが一層好ましい。中空酸化チタン粒子3の平均細孔径がこの範囲内であることによって、各種成分の中空酸化チタン粒子3A,3B内部への浸透性や、内部に浸透させた成分の徐放性に優れたものとなり、また、外殻部33が高密度となり中空酸化チタン粒子3A,3Bが強度に優れたものとなる。なお、ここで言う平均細孔径とは、外殻部33のメソ細孔の平均細孔径のことである。平均細孔径は、後述する方法によって測定される。
外殻部33を構成する酸化チタンは、その結晶子サイズが1Å以上であることが好ましく、10Å以上であることが更に好ましく、100Å以上であることが一層好ましい。また、500Å以下であることが好ましく、400Å以下であることが更に好ましく、300Å以下であることが一層好ましい。外殻部33を構成する酸化チタンの結晶子サイズは、1Å以上500Å以下であることが好ましく、10Å以上400Å以下であることが更に好ましく、100Å以上300Å以下であることが一層好ましい。外殻部33を構成する酸化チタンの結晶子サイズがこの範囲内であると、外殻部33を高強度のものとすることができ、外力に起因する中空酸化チタン粒子3A,3Bの崩壊を抑制することができる。酸化チタンの結晶子サイズは、後述する方法によって測定される。
中空酸化チタン粒子3は、細孔容積が0.001cm/g以上0.1cm/g以下であることが好ましい。細孔容積が0.001cm/g以上であることによって、外殻部33の内部と外部とでの物質透過性が高くなるため、揮散制御基材として揮散性に優れたものとなり、また、細孔容積が0.1cm/g以下であることによって、過度に外殻部33が低密度にならないため、粒子の強度に優れたものとなる。この観点から、中空酸化チタン粒子3の細孔容積は、0.001cm/g以上0.05cm/g以下であることが更に好ましく、0.001cm/g以上0.03cm/g以下であることが一層好ましい。細孔容積は、後述する方法によって測定される。
図1(a)に示す中空酸化チタン粒子3Aは、それが中空構造を有していることに起因して、中実の酸化チタン粒子に比べて低比重のものとなる。その特性を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、中空酸化チタン粒子3Aを白色顔料として用いると、該粒子3Aが塗料やインク中で沈降しにくくなるので、塗料やインクを定期的に循環させる回数を減らすことができるか、あるいは循環の必要がなくなるという利点がある。また、中空酸化チタン粒子3Aの中空部32に各種機能成分を内包し、外部環境に応じて機能成分を徐放するようなデリバリー基材として用いることができる。更に、充填剤等として樹脂フィルム等の樹脂成形体に配合することもできる。
図1(b)に示す中空酸化チタン粒子3Bは、その中空部32に各種の成分を封入可能であることに加えて、外力に抗して外殻部33が一層崩壊しにくいという利点を有しており、それらの利点の一又は二以上を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、上述した塗料やインクの顔料、及び樹脂成形体の充填剤の用途に加え、医薬品、香料成分、機能性成分の徐放剤として用いることができる。
〔中空酸化チタン粒子の製造方法〕
本発明の中空酸化チタン粒子の製造方法は、粒子径が1nm以上150nm以下の酸化チタンナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する。原料液としては、高分子成分が溶媒に溶解又は分散した溶液に、酸化チタンナノ粒子が分散したものが好ましく用いられる。また本発明の課題を解決できる種類及び量の範囲内において、公知の充填剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化チタン以外の無機粒子(例えば上述したシリカナノ粒子)、樹脂粒子、架橋剤、電解質、酸・塩基、香料、油性成分、ワックス、蓄熱材、医薬成分等を配合することができる。
静電噴霧工程においては、図2に示すとおり、静電噴霧により噴霧され、且つ帯電した液滴31が、溶媒36の蒸発に伴いレイリー分裂することによって小径の液滴31Aが生じるとともに、その液滴31Aの表面からも溶媒が蒸発して、表面近傍の酸化チタンナノ粒子35及び高分子成分34の濃度が高まる。そして、更に乾燥が進むことによって、表面近傍に酸化チタンナノ粒子35及び高分子成分34からなる被膜33Aを有する粒子37が生じる。この被膜33Aが形成された粒子37の内部の溶媒が蒸発することによって、中空部32及び外殻部33を有する微小な中空酸化チタン粒子3Aが得られる。
中空部32を有する微小な中空酸化チタン粒子3Aを得るためには、被膜33Aが形成されるタイミングが重要である。例えば、静電噴霧により噴霧した直後の液滴31Aに被膜が形成されると、その後の分裂が阻害され、平均粒子径が10μm以下の微小な中空酸化チタン粒子3Aが得られにくくなる。他方、静電噴霧により噴霧した液滴31Aが、レイリー分裂を繰り返して微粒子化しても被膜が形成されないと、平均粒子径が10μm以下の微小粒子とはなるものの、図2(e)に示すとおり、中空部を有しない中実粒子38となり易くなる。
被膜の形成のタイミングを適正なものとして微小な中空酸化チタン粒子3Aを効率よく生じさせる観点から、本発明においては、原料液に含ませる酸化チタンナノ粒子の粒子径を1nm以上としている。酸化チタンナノ粒子の粒子径を1nm以上、特に10nm以上とすると、図3(a)に示すとおり、表面Sからの溶媒の蒸発に伴う液滴31Aの半径の減少速度に対して、酸化チタンナノ粒子35の、液滴31Aの中心方向cへの拡散速度が遅くなり易く、外殻部33となる被膜33Aが形成され易くなる。これとは対照的に、酸化チタンナノ粒子の粒子径が1nm未満であると、図3(b)に示すとおり、表面Sからの溶媒の蒸発に伴う液滴31Aの半径の減少速度に対して、同等以上の速度で酸化チタンナノ粒子35が液滴31Aの中心方向cへと拡散し易くなるため、液滴31Aの表面S近傍の酸化チタンナノ粒子の濃度が高くなりにくい。その結果、外殻部33となる被膜33Aが形成されにくい。
一方、酸化チタンナノ粒子の粒子径が150nm超であると、静電噴霧後、早い段階で被膜が形成され易くなり、レイリー分裂や表面からの蒸発が抑制されて、平均粒子径が10μm以下の微小な中空酸化チタン粒子3Aが得られにくくなる。このように、噴霧後に被膜33Aが形成されるタイミングが遅くなると中実粒子になり易くなり、噴霧後に被膜33Aが形成されるタイミングが早すぎると微小な粒子が得られにくくなるため、微小な中空酸化チタン粒子3Aを得るためには、噴霧後、捕集面に到達するまでの間の適切なタイミングで被膜が形成されるようにする。
平均粒子径が10μm以下の微小な中空酸化チタン粒子3Aを得る観点から、原料液に含ませる酸化チタンナノ粒子35は、粒子径が10nm以上50nm以下であることが更に好ましい。同様の観点から、原料液中の酸化チタンナノ粒子35の含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、また好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
必要に応じて、原料液中にはシリカナノ粒子等の他のナノ粒子を含有させることもできる。原料液中のシリカナノ粒子等の含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下であり、また好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。シリカナノ粒子等の粒子径は1nm以上150nm以下であることが好ましく、3nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
原料液中の酸化チタンナノ粒子、及び必要に応じて用いられるシリカナノ粒子等の粒子径は、溶媒中で分散した状態の粒子のメジアン径を意味し、具体的には酸化チタンナノ粒子やシリカナノ粒子等の分散液を粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、粒子径分布測定装置 SZ―100など)で測定されたメジアン径の値を用いることとする。
被膜の形成のタイミングに影響する因子としては、上述した酸化チタンナノ粒子35の粒径の他に、原料液の粘度、原料液を噴霧する環境条件、溶媒の揮発のし易さ等が挙げられる。これらの因子は、静電噴霧された液滴がレイリー分裂により適度に微粒子化した段階で被膜が形成されるように適宜に調整する。
原料液に含ませる高分子成分は、有機高分子であり、水溶性高分子でもよいし、非水溶性高分子でもよい。また天然高分子でも合成高分子でもよい。原料液に含ませる高分子成分は、製造する中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33を酸化チタンナノ粒子とともに構成する高分子成分となる。
前記の水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、キトサン、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、ゼラチン、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。非水溶性高分子としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。用いられる高分子成分は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した高分子成分から任意の複数種類を組み合わせて用いることもできる。
原料液に、高分子成分が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等を例示することができる。用いる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した溶媒から任意の複数種類を選定し、混合して用いても構わない。
特に溶媒として水又は水を50質量%超含むものを用いる場合は、前述した各種の水溶性高分子を用いることが好適である。水溶性高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性高分子の中でも、水溶性多糖類又は水溶性多糖類誘導体が好適である。水溶性多糖類誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロースが特に好適である。水を50質量%超含む溶媒としては、水と水溶性アルコール類(例えばメタノールやエタノール等)との混合物が挙げられる。原料液中の高分子化合物(高分子成分)の含有率は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、また好ましくは3質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
静電噴霧する原料液の粘度は、平均粒子径が10μm以下の微小な中空酸化チタン粒子3Aを得る観点から、好ましくは10mPa・s以上500mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以上350mPa・s以下である。この粘度は、原料液を静電噴霧するときの温度で測定された値である。原料液の粘度の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
噴霧後、捕集面に到達するまでの間の適切なタイミングで被膜33Aが形成されるようにして、平均粒子径が10μm以下の微小な中空酸化チタン粒子3Aを得る観点から、液滴31を乾燥させる気相の露点温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、更に好ましくは-20℃以上であり、また好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下であり、また好ましくは−50℃以上20℃以下、より好ましくは−30℃以上10℃以下、更に好ましくは−20℃以上0℃以下である。
図4には、本発明で行われる静電噴霧工程に好ましく用いられる中空酸化チタン粒子3Aの製造装置の一例の概略構成が示されている。図5は、図4に示す装置の液体噴霧部の要部を示す断面図である。これらの図に示す製造装置1は、原料液である液体30を噴霧させる液体噴霧部2と、液体噴霧部2に対して、原料液である液体30を供給する原料液供給手段(図示せず)と、液体噴霧部2に対して圧縮空気4を供給する圧縮空気供給手段(図示せず)と、高電圧発生手段5と、液体噴霧部2に形成された液体吐出口23と対向配置された対向電極6とを備えている。
液体噴霧部2は、原料液である液体30が通過する導電性金属製の金属細管21を備えた液体吐出ノズル22と、液体吐出ノズル22の一端に形成された液体吐出口23と、液体吐出口23の周囲から圧縮空気を噴出させる圧縮空気の第1噴射口24と、圧縮空気を噴射する第2噴射口25とを備えている。第2噴射口25には、コロナ放電用の針電極26を設け、コロナ放電により生じた空気イオンを含むイオン搬送流を生じさせることもできる。
高電圧発生手段5は、導電性の金属細管21に高電圧を印加可能であるとともに、コロナ放電用の針電極26にもコロナ放電を生じさせるための高電圧を印加可能であり、導電性の金属細管及び針電極と前記対向電極との間に電位差を生じさせ得る。対向電極6は、接地されるか、又は液体吐出口23から噴霧された帯電粒子とは逆極性の電圧が印加される。
製造装置1について更に説明すると、液体吐出ノズル22は、導電性の金属細管21自体から構成されている。金属細管21は、通直な直管であり、内部を原料液である液体30が流通可能になっている。金属細管21の内径は、例えば0.1mm以上1.0mm以下で、好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。金属細管21の外径は、例えば0.2mm以上2.0mm以下で、好ましくは0.3mm以上1.5mm以下である。金属細管21の内径及び外径をこの範囲内に設定することで、原料液である液体30を、容易に、且つ定量的に送液できるとともに、ノズル周辺の狭い領域に電界が集中し、原料液を効率よく帯電させられる。
金属細管21及び液体吐出ノズル22は、液体噴霧部2のケース体20に、共通する中心軸が一方向Xに延在するように支持されており、液体吐出ノズル22の一端に開口する開口部が、液体吐出口23を形成している。液体噴霧部2の正面視において、液体吐出口23は円形であり、その周囲に、圧縮空気を噴出させる圧縮空気の第1噴射口24が形成されている。
第1噴射口24は、図6に示すとおり、液体吐出口23を囲む環状に形成されていることが好ましいが、液体吐出口23の周囲に、複数個、好ましくは3個以上20個以下の第1噴射口24が、液体吐出口23を囲むように環状に配置されていてもよい。
液体噴霧部2の正面視とは、液体吐出ノズル22の液体吐出口23をその正面から視た状態をいい、本実施形態の装置1においては、液体噴霧部2を、図4における下側から視た状態である。
第1噴射口24は、圧縮空気供給手段によって圧縮空気が供給される内部空間42と連通した第1流路24Aの一端部に形成されており、圧縮空気供給手段によって内部空間42に圧縮空気4が供給されると、第1流路24Aを通過した圧縮空気が、第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41として噴出する。また、原料液供給手段は、液体吐出ノズル22に対して微粒子の原料液である液体30を定量的に供給することができる。第1噴射口24から微粒化用圧縮空気を噴出させつつ、液体吐出ノズル22に原料液である液体30を供給することによって、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24が、2流体ノズルとして機能し、原料液である液体30が微粒化されて液体吐出口23から噴霧される。
図5には、液体吐出ノズル22の中心軸の延在方向Xが鉛直方向に一致し、第1流路24Aが液体吐出ノズル22の中心軸に沿って延在する例を示したが、本発明において、圧縮空気4や微粒化した液体3を噴射させる方向は、特に制限されず、鉛直方向の下方に代えて、水平方向、斜め上方、斜め下方等としてもよい。また、第1流路24Aは、液体吐出ノズル22の中心軸と平行でもよいし非平行でもよい。
また、液体吐出ノズル22の液体吐出口23から離間した位置に、液体吐出口23と対向配置された対向電極6とを備えている。詳細には、対向電極6は、液体吐出ノズル22の液体吐出口23の開口の正面の位置において、液体吐出口23の開口に対面して配置されている。対向電極6は、金属等から構成されており導電性を有している。液体吐出ノズル22の先端と対向電極6との間の距離(最短距離)は、好ましくは200mm以上1500mm以下であり、また、より好ましくは300mm以上1000mm以下である。
高電圧発生手段5は、図4に示すとおり、液体吐出ノズル22の導電性の金属細管21と対向電極6との間に、高電圧を印加可能に構成されている。図4に示す例では、液体吐出ノズル22の金属細管21に負電圧が印加されており、金属細管21が負極、対向電極6が接地されており、金属細管21と対向電極6との間には電界が生じる。なお、金属細管21と対向電極6との間に電界を生じさせるためには、図4に示す電圧の印加の仕方に代えて、液体吐出ノズル22の金属細管21に正電圧を印加するとともに、対向電極6を接地してもよい。また、対向電極6は必ずしも接地する必要はなく、金属細管21とは逆極性の電圧を印加するようにしてもよい。高電圧発生手段5によって発生させる電圧は、直流電圧であることが好ましい。
高電圧発生手段5には高圧電源装置などの公知の装置を用いることができる。金属細管21と対向電極6との間に加わる電位差は1kV以上、特に5kV以上とすることが、液体吐出口23から噴霧される原料液の液滴を十分に帯電させ、液滴のレイリー分裂を促進する点から好ましい。金属細管21と対向電極6との間に加わる電位差は、好ましくは1kV以上60kV以下、より好ましくは5kV以上50kV以下である。
図4に示す製造装置1における液体噴霧部2は、圧縮空気を噴射する第2噴射口25を備えている。
製造装置1における第2噴射口25は、図6に示すとおり、液体吐出口23の中心からの距離が、第1噴射口24よりも遠く、また、第1噴射口24から第2噴射口25までの距離L3が、液体吐出口23の中心から第1噴射口24までの距離L1よりも長くなっている。第2噴射口25は、図6に示すとおり、少なくとも、液体吐出口23の挟む両側の位置に一対形成されていることが好ましい。また、第2噴射口25は、図7に示すとおり、液体吐出口23の周囲に、液体吐出口23との間に間隔を設けて形成された傾斜面27に形成されている。傾斜面27は、液体吐出口23に近い側に傾斜下端、液体吐出口23から遠い側に傾斜上端を有している。傾斜面27は、平面状であることが好ましいが、凸曲面又は凹曲面状であってもよい。第2噴射口25は、液体吐出口23を挟むように一対設けるのに代えて、液体吐出口23の周囲に均等に3個以上設けることもできる。
第2噴射口25は、図4及び図5に示すとおり、遠位流路25A及び液体吐出ノズル22の中心軸に対して角度を有する傾斜流路25Bを介して、前述した内部空間42と連通している。圧縮空気供給手段によって内部空間42に圧縮空気4が供給されると、その一部が、前述したように、第1流路24Aを通って第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41として噴出する一方、他の一部が、遠位流路25A及び傾斜流路25Bを通って、第2噴射口25から噴射される。第1流路24A、遠位流路25A及び傾斜流路25Bは、それぞれ内面が円筒状をなしていることが好ましい。
遠位流路25A及び傾斜流路25Bは、互いに連通して、第2噴射口25に空気を供給する連続流路を形成しており、遠位流路25Aは、傾斜流路25Bに比して第2噴射口25から遠い位置にある。図5に示す遠位流路25Aは、液体吐出ノズル22の中心軸と平行に形成されているが、非平行であってもよく、また、傾斜流路25Bに対して角度を有する遠位流路25A自体が存在しなくてもよい。
また第2噴射口25には、コロナ放電を生じさせるための針電極26を設けることもできる。本実施形態の高電圧発生手段5は、針電極26にも、コロナ放電を生じさせるための高電圧を印加可能に構成されている。図4に示すとおり、本実施形態においては、液体吐出ノズル22の金属細管21及び針電極26に、分岐させた金属導線51を介して、同極性の電圧が印加されるように構成されている。
針電極26は、その先端が、第2噴射口25から突出するように配置されていることが好ましい。針電極26は、遠位流路25A又は傾斜流路25Bの内面に固定されていてもよく、また、遠位流路25Aの内面及び傾斜流路25Bの内面のいずれにも接触しないように支持されていてもよい。針電極26としては、放電用金属ワイヤ等を好ましく用いることができる。針電極として用いる放電用金属ワイヤの材質としては、タングステン、黄銅、銅、モリブデン等の導電性金属材料で腐食しにくいものが好ましい。また、針電極26は、圧縮空気の噴射に耐える強度をもち、噴射を妨げない適度な太さであることが好ましく、例えば、針電極26の直径は、第2噴射口の口径の60%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。例えば第2噴射口の口径が0.5mmの場合0.2〜0.3mmが好ましい。針電極26は、先端を針状に尖らせて、放電し易くして用いる。なお、針電極26として、先端が尖った放電用金属ワイヤ等を用いる場合、針電極26の直径は、直径が最大の部位における直径とする。また、針電極26は、先端が尖っていない棒状体であってもよい。
また、針電極26の第2噴射口25からの突出長さL5(図5参照)は、コロナ放電の生じ易さの観点から、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また空気の流れを妨げる程度を減らし、液の付着を防止する観点から、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。
なお、遠位流路25Aや傾斜流路25Bが形成されている部材が導電体である場合、その部材に針電極26を融着し、その部材に高電圧発生手段5からの金属導線51等を接続してもよい。
図4に示す例は、針電極26に、液体吐出ノズル22の金属細管21と同じ負電圧が印加した場合であるが、図4に示す電圧の印加の仕方に代えて、針電極26及び液体吐出ノズル22の金属細管21に正電圧を印加するとともに、対向電極6を接地してもよい。高電圧発生手段5によって発生させる電圧は、直流電圧であることが好ましい。
針電極26と対向電極6との間に加わる電位差は、15kV以上、特に20kV以上とすることが、コロナ放電により空気イオンを大量に生じさせる点から好ましい。一方、この電位差は60kV以下、特に50kV以下とすることが、装置の絶縁を過大にする必要がない点から好ましい。針電極26と対向電極6との間に加わる電位差は、好ましくは15kV以上60kV以下、より好ましくは20kV以上50kV以下である。
高電圧発生手段5は、液体吐出ノズル22の金属細管に電圧を印加する装置とは別に、針電極26に電圧を印加する装置を有していてもよく、相互に異なる電圧を発生させる機能を備えた電源装置を用いて、液体吐出ノズル22の金属細管と針電極26とに独立して異なる電圧を印加してもよい。
本実施形態の製造装置1は、図4に示すとおり、対向電極6の表面に、微粒子の捕集部7を備えている。微粒子の捕集部7は、導電性材料からなる対向電極6の表面であってもよいが、対向電極6の表面に、薄いフィルム等を被せて捕集部7として用いてもよい。
前述した製造装置1を用いて静電噴霧工程を実施するには、製造装置1の液体噴霧部2に、圧縮空気供給手段により圧縮空気を供給するとともに、定量送液ポンプ等の公知の原料液供給手段(図示せず)により液体噴霧部2に、原料液である液体30を供給する。圧縮空気の供給により、金属細管21の一端側に開口する液体吐出口23の周囲に位置する第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41が噴出するとともに、第2噴射口25から圧縮空気が噴射される。
この状態で、高電圧発生手段5を作動させて、微粒子の原料液である液体が通過する導電性の金属細管21及び針電極26に負電圧の直流高電圧を印加すると、金属細管21内を流れる液体30にマイナスの電荷が帯電し、その帯電した液体30が、液体吐出口23から、液体吐出口23の周囲から噴出された微粒化用圧縮空気41によって微粒化されて噴霧される。液体30は、噴霧により液滴となるとともに帯電した帯電液滴31となっている。
噴霧により生じた帯電液滴31は、第1噴射口24からの圧縮空気の噴射により生じた気流に乗り、また金属細管21と対向電極6に生じた電界に沿って対向電極6に向かって流れる。
また、針電極26への負電圧の高電圧の印加により、針電極26からのコロナ放電で空気イオンが生じるとともに、第2噴射口25からの圧縮空気の噴射により、空気イオンを含む気流であるイオン搬送流45が生じる。イオン搬送流45中に含まれる空気イオンは、帯電液滴31と同じ極性であるマイナスに帯電している。
また第2噴射口25は、液体吐出口23に近い側に傾斜下端を有する傾斜面27に形成されており、空気イオンを含むイオン搬送流45は、図5に示すとおり、前述した帯電液滴の流れFに対して、角度をつけて吹き付けられる。
コロナ放電で生じさせる空気イオン(負イオン)としては、例えば、O2 -(H2O)n ,O3 -(H2O)n ,NO2 -(H2O)n ,NO3 -(H2O)n ,CO3 -(H2O)n ,NO3 -,NO3 -(HNO3n ,NO3 -NO3等が挙げられる。
帯電液滴31と同じ極性に帯電した空気イオンを含むイオン搬送流45を、噴霧により生じた帯電液滴31の流れFに吹き付けることによって、流れF中の帯電液滴31の帯電量が増加する。帯電量が増加する理由は、通常、帯電液滴31と空気イオンは同極性であり、平行流ならば反発して合一することはないが、帯電液滴31の流れFに角度をつけて高速の空気イオンを衝突させているので、帯電液滴31に空気イオンが取り込まれ、その結果、帯電量が増加していると考えられる。
図2(a)ないし図2(d)に示すとおり、静電噴霧により噴霧された帯電した液滴31は、溶媒36の蒸発に伴いレイリー分裂することによって小径の液滴31Aを生じ、その液滴31Aの表面からも溶媒が蒸発して、表面近傍の酸化チタンナノ粒子35及び高分子成分34の濃度が高まり、更に乾燥が進むことによって、中空酸化チタン粒子3Aが得られる。そして、その中空酸化チタン粒子3Aが捕集部7に捕集される。
捕集は、対向電極6を接地した状態、もしくは対向電極に、微粒子と逆極性の電圧、即ち微粒子がマイナスに帯電している場合はプラス、微粒子がプラスに帯電している場合はマイナスの電圧を印加した状態で行ってもよい。また針電極26を設置せずに、第2噴射口25から圧縮空気を噴射することも可能である。その際、噴射された気流は空気イオンを含まないため、帯電液滴31の帯電量が増加することはない。
イオン搬送流45の吹き付けによる帯電量の増大を一層効果的に生じさせる観点から、イオン搬送流を生じさせるための圧縮空気を噴射する噴射口である第2噴射口25の中心軸25cと、液体吐出口23の中心軸23cとが、液体吐出口23からの距離Lが2〜6mmの範囲内において40〜80度の交差角度θ(図5参照)で交差することが好ましい。
距離Lを2mm以上6mm以下の範囲内とすることにより、イオン搬送流45を、帯電液滴があまり拡散せず、空気イオンの濃度も高い状態で、帯電液滴の流れFに吹き付けることができ、帯電効率が高くなり、交差角度θを40〜80度の範囲内とすることにより、イオン搬送流45を帯電液滴の流れFに強く衝突させることができて帯電効率が高まるとともに、角度が大きすぎて液滴が広く飛散してしまうことも防止できる。
なお、第2噴射口25の中心軸25cと、液体吐出口23の中心軸23cとの交差は、中心軸どうしがねじれの位置にあっても該点Pにおいて交差しているとしてよい。液体吐出口23の中心軸23c上の点Pを中心とする半径0.5mmの球殻の内部を第2噴射口25の中心軸25cが通過することが好ましく、半径0.35mmの球殻の内部を第2噴射口25の中心軸25cが通過することがより好ましい。第2噴射口25の中心軸25cが液体吐出口23の中心軸23c上の点Pを中心とする前記半径の球殻の内部を通過していれば、該点Pにおいて交差しているとする。
同様の観点から、第2噴射口25の中心軸25cと液体吐出口23の中心軸23cとは、液体吐出口23からの距離Lが3mm以上5mm以下の範囲内において45度以上60度以下の交差角度θで交差することが更に好ましい。
液体吐出口23の中心軸23cは、液体吐出口23に隣接する液体30の流路の中心軸であり、該液体30の流路内に位置する部分に加えて、液体吐出口23から突出する、軸長方向への延長部分も含まれる。本実施形態における、液体吐出口23の中心軸23cは、液体吐出ノズル22の中心軸及びその軸長方向への延長部分と一致している。
第2噴射口25の中心軸25cは、第2噴射口25に隣接する流路、即ち前述した傾斜流路25Bの中心軸であり、該流路25B内に位置する部分に加えて第2噴射口25から突出する軸長方向への延長部分も含まれる。
本発明における静電噴霧工程には、圧縮空気を併用しないエレクトロスプレー法を用いることもできるが、噴霧量を多くして中空酸化チタン粒子の生産効率を向上させる観点から、2流体ノズルを用いる方法により行うことが好ましい。2流体ノズルは、圧縮空気などの高速気体の流れを利用して液体を微粒化するものであり、テイラーコーンを生じさせる従来のエレクトロスプレー法に比して大量の液体を微粒化して噴霧することができる。
前述した製造装置1においては、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24が、2流体ノズルとして機能し、原料液である液体30が微粒化されて液体吐出口23から噴霧される。原料液の静電噴霧を、2流体ノズルを用いた方法で行う態様には、図4に示す製造装置のように、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24に加えて第2噴射口25からも圧縮空気を噴射して行う態様、及び第2噴射口25を設けずに、第1噴射口24のみから圧縮空気を噴射して行う態様等も含まれる。
原料液である液体30の静電噴霧を、2流体ノズルを用いて行うことで、噴霧量を比較的多くすることができる。原料液の噴霧量は、0.1mL/分以上100mL/分以下とすることが好ましく、0.2mL/分以上50mL/分以下とすることが更に好ましい。
ここでいう噴霧量は、噴霧させるために液体吐出ノズル等に供給する原料液の量と同じである。例えば、前記の製造装置1においては、原料液である液体30を、液体吐出ノズル22に送液して該液体吐出ノズル22から吐出させているが、その液体吐出ノズル22に対する原料液である液体30の供給量が、原料液の噴霧量である。
本発明の中空酸化チタン粒子の製造方法においては、上述の手順で得られた中空酸化チタン粒子3Aをそのまま用いることができる。具体的には、静電噴霧工程の後に、中空酸化チタン粒子3Aを焼結する工程を行わないでそのまま用いることができる。これに代えて、中空酸化チタン粒子3Aをアナターゼ型からルチル型へ結晶転移させる結晶転移温度以上で加熱する焼結工程を更に行ってもよい。この焼結工程を行うことによって、中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33の焼結が進行し、中空酸化チタン粒子3Bが生成する。アナターゼ型からルチル型への結晶転移温度はおよそ650℃から700℃の範囲である。なお所望の中空酸化チタン粒子の物性が得られる場合おいては、焼結工程は行わなくても構わない。
中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33を構成する酸化チタンナノ粒子は、その結晶形がアナターゼ型である場合と、ルチル型である場合とがあるところ、アナターゼ型の酸化チタンナノ粒子を用いた場合には、焼結工程において酸化チタン結晶形をルチル型に結晶転移させることが、焼結によって得られる中空酸化チタン粒子3Bの白色度や隠蔽力が向上する観点から好ましい。アナターゼ型の酸化チタンをルチル型に結晶転移させるためには、例えば焼結工程での加熱温度を650℃以上790℃以下に設定することが好ましく、670℃以上700℃以下に設定することが好ましい。焼結の雰囲気は、大気等の酸化性雰囲気、及び窒素やアルゴン等の不活性雰囲気を好ましく採用することができる。焼結時間は、アナターゼ型の酸化チタンがルチル型に結晶転移するのに十分な時間を適切に設定すればよい。加熱には、静電噴霧工程で得られた中空酸化チタン粒子3Aを加熱可能な任意の加熱装置を用いることができ、例えば、炉の内部の温度を任意に設定できる電気炉等を用いることができる。この加熱によって、中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33に含まれていた高分子成分は熱分解によってそのほとんどが消失する。焼結後の中空酸化チタン粒子の外殻部に含まれる高分子成分の割合は好ましくは0.1質量%以下になる。
一方、ルチル型の酸化チタンナノ粒子を用いて中空酸化チタン粒子3Aを製造した場合には、焼結工程後も、外殻部33の酸化チタンの結晶形はルチル型であることが好ましい。こうすることで、焼結時の加熱温度を低めに設定しても、ルチルの結晶形を有する中空酸化チタン粒子を容易に得ることができるという利点がある。具体的には、中空酸化チタン粒子3Aを焼結工程に付すときの加熱温度を100℃以上790℃以下に設定することが好ましく、300℃以上700℃以下に設定することが好ましい。焼結の雰囲気は、大気等の酸化性雰囲気、及び窒素やアルゴン等の不活性雰囲気を好ましく採用することができる。焼結時間は、外殻部33の焼結が十分に進行し、該外殻部33の強度が十分に高まるように適切に設定すればよい。
静電噴霧によって中空酸化チタン粒子3Aを製造するときには、原料液中に、粒子径1nm以上150nm以下の酸化チタンナノ粒子、溶媒、及び高分子成分に加えて、粒子径1nm以上150nm以下のシリカナノ粒子等の他のナノ粒子を含有させることもできる。このような原料液を用いて静電噴霧を行い、それによって生じた液滴を気相中で乾燥させることで製造された中空酸化チタン粒子3Aは、その外殻部33に酸化チタンナノ粒子に加えてシリカナノ粒子が含まれた状態になっている。原料液中の酸化チタンナノ粒子がアナターゼ型である場合には、外殻部33中の酸化チタンナノ粒子もアナターゼ型となる。一方、原料液中の酸化チタンナノ粒子がルチル型である場合には、外殻部33中の酸化チタンナノ粒子もルチル型となる。このようにして得られた中空酸化チタン粒子3Aを焼結工程に付すことで、中空酸化チタン粒子3Bが得られる。この場合、焼結工程における加熱温度をシリカナノ粒子の融点以下とすることで、シリカナノ粒子の焼結を生じさせることができる。加熱温度によっては、酸化チタンナノ粒子の焼結も生じることがある。このような焼結工程によって、中空酸化チタン粒子3Bの外殻部33の強度が一層高まるという利点がある。特に、静電噴霧に用いられる原料液中の酸化チタンナノ粒子がアナターゼ型である場合には、焼結工程での加熱温度を高めに設定しても、過剰焼結による酸化チタンナノ粒子の粗大化及びそれに起因する外殻部33の強度低下がシリカナノ粒子の存在によって抑制されるとともに、焼結工程後の外殻部33中の酸化チタンのアナターゼ型の結晶形が維持され易くなる。以上の観点から、焼結工程における加熱温度は、上述のとおりシリカナノ粒子の融点以下とすることが好ましく、1000℃以下とすることが更に好ましい。また、800℃以上とすることが好ましく、900℃以上とすることが更に好ましい。焼結工程における加熱温度は、800℃以上で且つシリカナノ粒子の融点以下とすることが好ましく、800℃以上1000℃以下とすることが更に好ましい。なお純粋なバルクのシリカの融点は約1650℃であるが、シリカナノ粒子はナノサイズ効果や不純物の含有に起因して、その融点はバルクのシリカの融点よりも低くなる。シリカナノ粒子の融点は、示差走査熱量測定における吸熱ピークの温度で定義される。測定時の昇温速度は5℃/分とし、雰囲気は酸素とする。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。例えば静電噴霧によって中空酸化チタン粒子3Aを製造し、次いでこれを焼結工程に付して中空酸化チタン粒子3Bを得た後、該中空酸化チタン粒子3Bを更に後処理工程に付してもよい。また、静電噴霧によって中空酸化チタン粒子3Aを製造し、次いでこれを焼結工程に付す前に、該中空酸化チタン粒子3Aを任意の処理工程に付してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
表1に示す処方の原料液を調製し、図4に示す中空酸化チタン粒子の製造装置を用いて、原料液を静電噴霧し、微小な粒子を得た。ただし、針電極26を取り外し、第2噴射口からは空気イオンを含まない圧縮空気の噴射を行った。表1中の「HPC」はヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬工業株式会社、6.0−10.0mPa・s)を示す。酸化チタンナノ粒子はAM−5(多木化学株式会社製)を使用した。溶媒である水・エタノール混合液における水の割合は86.9%であり、エタノールの割合は13.1%であった。
原料液の噴霧量は0.5mL/分とした。
他の条件は、下記のとおりとした。
噴霧空気圧:0.4MPa
気相の露点温度:13℃
細管への印加電圧:+20kV
噴射口から対向電極(捕集部)までの距離:850mm
前記の静電噴霧によって、図1(a)に示す構造の中空酸化チタン粒子3Aが得られた。この中空酸化チタン粒子3Aについて、平均粒子径、空孔率、結晶形、結晶子サイズ、平均細孔径、及び細孔容積を、以下に示す方法により測定した。その結果を表1に示す。
〔平均粒子径の測定方法〕
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社、JSM−6510)を用いて、加速電圧20kV、倍率5000倍にて中空酸化チタン粒子3Aの観察を行った。1視野あたり50〜200個の粒子が含まれる2視野中の全粒子の直径を画像上で実測し、その算術平均を平均粒子径として算出した。
〔空孔率の測定方法〕
測定は23℃環境下で行った。質量A0(g)の5mL規格比重瓶にイソプロパノールを基準線まで注いだときの質量をA1(g)、該比重瓶からイソプロパノールを捨て、十分に乾かした後に約0.5gの中空酸化チタン粒子3Aを比重瓶に入れたときの質量をA2(g)、再度イソプロパノールを基準線まで注いだときの質量をA3(g)とする。中空酸化チタン粒子3Aの見かけ比重、及び空孔率は以下の式から計算される。
見かけ比重=イソプロパノールの比重×(A2−A0)/(A1+A2−A0−A3
空孔率(%)=100×(1−見かけ比重/中空酸化チタン粒子3Aの真比重)
なお23℃でのイソプロパノールの比重は0.785、中空酸化チタン粒子3Aの真比重は4.2とした。
〔結晶形及び結晶子サイズ〕
X線回折装置(リガク株式会社、デスクトップX線回折装置 600)を用いて、中空酸化チタン粒子3AのX線回折スペクトルを測定した。なおX線回折装置の回折角度2θは2°から60°、走査角度0.05°/分で測定を行った。このX線回折スペクトルから酸化チタンの結晶形(アナターゼ型またはルチル型)を評価した。アナターゼ型の中空酸化チタン粒子については2θ=25.3°に現れる結晶ピークから、ルチル型の中空酸化チタン粒子については2θ=27.4°に現れる結晶ピークからScherreの式を用いて結晶子サイズを算出した。
〔平均細孔径及び細孔容積の測定方法〕
比表面積・細孔分布測定装置(日本ベル株式会社)を用いて、液体窒素を用いた多点法で、中空酸化チタン粒子3AのBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用した。100nm以下の細孔分布におけるピークトップをメソ細孔の平均細孔径とし、累積を細孔容積とした。中空酸化チタン粒子3Aには105℃で2時間加熱する前処理を施した。
〔実施例2及び3並びに比較例1及び2〕
表1に示す原料液を用いた。これ以外は実施例1と同様にして中空酸化チタン粒子3Aを製造した。ただし、比較例1及び2では、酸化チタンナノ粒子の粒径が大きすぎて、中空酸化チタン粒子が得られなかった。各実施例で得られた中空酸化チタン粒子3Aについて、平均粒子径、空孔率、結晶形、結晶子サイズ、平均細孔径、及び細孔容積を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。また使用した酸化チタンナノ粒子を以下に示す。
実施例2:TTO−W−5(石原産業株式会社)
実施例3:A−6(多木化学株式会社)
比較例1:ST−41(石原産業株式会社)
比較例2:酸化チタン ルチル型(和光純薬工業株式会社)
〔実施例4ないし9〕
前記の実施例1ないし3で得られた中空酸化チタン粒子3Aを用い、これを焼結工程に付すことで、図1(b)に示す構造の中空酸化チタン粒子3Bを製造した。焼結工程の条件は、以下の表2に示すとおりである。得られた中空酸化チタン粒子3Bについて、平均粒子径、結晶形、結晶子サイズ、平均細孔径、及び細孔容積を実施例1と同様に測定した。空孔率については以下の方法で測定した。その結果を表2に示す。なお表2には示していないが、中空酸化チタン粒子3Aの外殻部33に含まれていた高分子成分であるヒドロキシプロピルセルロースは、焼結工程において熱分解して該外殻部33における割合が0.1%以下になっていた。なお焼結工程は全て電気加熱炉を用い、所定の焼結温度に達した後に2時間保持することで行った。
〔空孔率の測定方法〕
測定は23℃環境下で行った。質量A0(g)の5mL規格比重瓶にイオン交換水を基準線まで注いだときの質量をA1(g)、該比重瓶からイオン交換水を捨て、十分に乾かした後に約0.5gの粒子を比重瓶に入れたときの質量をA2(g)、再度イオン交換水を基準線まで注いだときの質量をA3(g)とする。中空酸化チタン粒子3Bの見かけ比重、及び空孔率は以下の式から計算される。
見かけ比重=イオン交換水の比重×(A2−A0)/(A1+A2−A0−A3
空孔率(%)=100×(1−見かけ比重/中空酸化チタン粒子3Bの真比重)
なお23℃でのイオン交換水の比重は0.998、中空酸化チタン粒子3Bの真比重は4.2とした。
表1に示す結果から明らかなとおり、静電噴霧法を採用することで、中空酸化チタン粒子を首尾よく製造できることが判る。粒径100nm以下の酸化チタンナノ粒子を使用した実施例1〜3は5%以上の空孔率を示し、なおかつ平均細孔径及び細孔容積の値から緻密な外殻を形成していることが分かる。一方で、粒径100nm以上の酸化チタンナノ粒子を使用した比較例1及び2では中空粒子を得ることができなかった。また表2に示したように、アナターゼ型の中空酸化チタン粒子である実施例1を焼結工程に付した実施例4〜6は高い空孔率を維持したままルチル型に結晶相転移していることが判る。またルチル型の中空酸化チタン粒子である実施例2を焼結した実施例7も、ルチル型の中空酸化チタン粒子となった。これらはいずれも平均細孔径及び細孔容積の値から緻密で強固な外殻を形成していることが判る。また、アナターゼ型の中空酸化チタン粒子である実施例3を焼結した実施例8、9は、アナターゼ型結晶を維持した中空酸化チタン粒子となった。特にシリカナノ粒子を含有する実施例9は、高温(900℃)で焼結させても、アナターゼ型の結晶形が維持されるとともに、他の実施例に比べて外殻が緻密であることが判る。
1 中空酸化チタン粒子の製造装置
2 液体噴霧部
21 導電性の金属細管
22 液体吐出ノズル
23 液体吐出口
24 第1噴射口
24A 鉛直流路
25 第2噴射口
25c 第2噴射口の中心軸
26 針電極
27 傾斜面
3A,3B 中空酸化チタン粒子
30 原料液である液体
31 帯電液滴
32 中空部
33 外殻部
34 高分子成分
35 金属酸化物粒子
4 圧縮空気
41 微粒化用圧縮空気
45 イオン搬送流
5 高電圧発生手段
6 対向電極
7 捕集部

Claims (11)

  1. 平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、空孔率が5体積%以上70体積%以下であり、平均細孔径が100nm以下であり、酸化チタンの結晶子サイズが1Å以上500Å以下である中空酸化チタン粒子の製造方法であって、
    粒子径1nm以上150nm以下の酸化チタンナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する中空酸化チタン粒子の製造方法。
  2. 前記静電噴霧工程によって得られた中空酸化チタン粒子における酸化チタンの結晶形がルチル型である請求項1に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  3. 前記酸化チタンナノ粒子の結晶形がアナターゼ型である請求項1に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  4. 前記静電噴霧工程で得られた中空酸化チタン粒子を、酸化チタンの結晶転移温度以上で加熱して、該中空酸化チタン粒子における酸化チタンの結晶形をルチル型に結晶転移させる焼結工程を更に有する請求項3に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  5. 前記焼結工程での加熱温度が650℃以上790℃以下である請求項4に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法
  6. 前記原料液が粒子径1nm以上150nm以下のシリカナノ粒子を更に含む、請求項3に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  7. 前記原料液が粒子径1nm以上150nm以下のシリカナノ粒子を更に含み、
    前記シリカナノ粒子の融点以下で加熱する焼結工程を有し、該焼結工程で得られた中空酸化チタン粒子における酸化チタンの結晶形がアナターゼ型である、請求項3に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  8. 前記焼結工程における加熱温度が800℃以上1000℃以下である請求項7に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  9. 前記酸化チタンナノ粒子の結晶形がルチル型である請求項1に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  10. 前記静電噴霧工程で得られた粒子を、100℃以上790℃で加熱する焼結工程を有し、
    前記焼結工程で得られた中空酸化チタン粒子における酸化チタンの結晶形がルチル型である請求項9に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
  11. 細孔容積が0.001〜0.1cm/gである中空酸化チタン粒子を得る請求項1ないし10のいずれか一項に記載の中空酸化チタン粒子の製造方法。
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