JP2017109330A - 液体吐出ヘッドユニット、液体吐出装置、および、液体吐出ヘッドユニットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を充填材によりできるだけ段差無く連続させることが可能な液体吐出ヘッドユニット、液体吐出装置、および、液体吐出ヘッドユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】液体を吐出するノズル(40)が露出された底面(底板15)および該底面に交差する側面(側壁16)を有し、底面と側面とが曲面(18a)により連続する複数の液体吐出ヘッド(記録ヘッド3)と、隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間を形成した状態で複数の液体吐出ヘッドを保持する保持部材(ヘッド固定基板8)と、隙間に充填されて、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を連続的に繋げる連続面(27s)を有する充填材(27)と、を備え、連続面は、曲面の側面との境界(B1)よりも曲面の底面との境界(B2)側に位置することを特徴とする。
【選択図】図6
【解決手段】液体を吐出するノズル(40)が露出された底面(底板15)および該底面に交差する側面(側壁16)を有し、底面と側面とが曲面(18a)により連続する複数の液体吐出ヘッド(記録ヘッド3)と、隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間を形成した状態で複数の液体吐出ヘッドを保持する保持部材(ヘッド固定基板8)と、隙間に充填されて、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を連続的に繋げる連続面(27s)を有する充填材(27)と、を備え、連続面は、曲面の側面との境界(B1)よりも曲面の底面との境界(B2)側に位置することを特徴とする。
【選択図】図6
Description
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体吐出ヘッドを保持部材に複数保持して構成される液体吐出ヘッドユニット、液体吐出装置、および、液体吐出ヘッドユニットの製造方法に関する。
液体吐出装置は液体吐出ヘッドを備え、この液体吐出ヘッドから各種の液体を吐出(噴射)する装置である。この液体吐出装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを吐出し、ディスプレイ製造装置用の色材吐出ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極形成装置用の電極材吐出ヘッドでは液状の電極材料を吐出し、チップ製造装置用の生体有機物吐出ヘッドでは生体有機物の溶液を吐出する。
液体吐出ヘッドとしては、複数の液体吐出ヘッドを保持部材に固定してユニット化したものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構成においては、隣り合う液体吐出ヘッド同士の間には、各液体吐出ヘッドの相対的な位置の調整に必要な隙間が形成される。ここで、一般的な液体吐出装置においては、底面(ノズル面)に付着した液体等の汚れを取り除くため、払拭部材(ワイパー)によって当該ノズル面が払拭されるワイピング動作が行われるが、このワイピング動作によって上記の隙間に液体が入り込むという不具合があった。隙間に残った液体の量によっては、この液体が自重により記録媒体に垂れ落ちたり、記録媒体と液体吐出ヘッドとの接触によって液体により記録媒体が汚れたりする虞があった。このため、特許文献1の構成では、ヘッド間の隙間に充填材の流れ出しを抑制するチューブ状の弾性体を挿入した上で充填材(封止材)としての接着剤が充填されている。硬化前の充填材は、ヘッド間の隙間のノズル面側において充填材自体の表面張力により保持される。あるいは、充填材が硬化するまでの間、隙間の開口を粘着テープで塞いでおき、充填材が硬化した後に当該テープを剥がす構成も提案されている。
しかしながら、例えば、ヘッド間の隙間への充填時において充填材の粘度が比較的低い(容易に流動する液状である)場合において、記録ヘッドの底面の縁(側面と交差する部分)が曲面である場合では、ヘッド間の隙間において充填材がメニスカスを形成しにくいため、充填材の表面の位置が安定しないという問題があった。また、チューブ状の弾性体を隙間に挿入したとしても、チューブとヘッドとの間に部分的に間隙が生じた場合には、当該部分から充填材が漏れ出すおそれがあった。さらに、隙間をテープで塞ぐ構成では、充填材の硬化後に当該テープが剥がしにくく、無理に剥がそうとすると充填材が剥がれたり脱落したりする虞があった。また、例えば、ヘッド間の隙間への充填時において充填材の粘度が比較的高い(ジェル状もしくはゲル状である)場合には、充填位置の調整が難しい上、ヘッド間の隙間において底面側に露出する充填材の表面を凹凸無くできるだけ平坦な状態とすることが難しいという問題があった。そして、各ヘッドの底面は、必ずしも同一面上に揃うとは限らず、それぞれ高さや傾き等がばらつく場合がある。このような場合に、これらの底面を充填材によりできるだけ段差なく連続させるように繋げることが難しかった。隣り合うヘッドの底面同士に段差が生じると、ワイピング動作の際にこの段差に液体が残りやすくなったり、当該段差によってワイパーがダメージを受けたりする虞があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を充填材によりできるだけ段差無く連続させることが可能な液体吐出ヘッドユニット、液体吐出装置、および、液体吐出ヘッドユニットの製造方法を提供するものである。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体を吐出するノズルが露出された底面および該底面に交差する側面を有し、前記底面と前記側面とが交差する部分が第3面により連続する複数の液体吐出ヘッドと、
隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間を形成した状態で前記複数の液体吐出ヘッドを保持する保持部材と、
前記隙間に充填されて、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を連続的に繋げる連続面を有する充填材と、
を備え、
前記連続面は、前記第3面の前記側面との境界よりも前記第3面の前記底面との境界側に位置することを特徴とする。
隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間を形成した状態で前記複数の液体吐出ヘッドを保持する保持部材と、
前記隙間に充填されて、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を連続的に繋げる連続面を有する充填材と、
を備え、
前記連続面は、前記第3面の前記側面との境界よりも前記第3面の前記底面との境界側に位置することを特徴とする。
本発明によれば、隣り合う液体吐出ヘッドの隙間に充填された充填材の連続面が、第3面の側面との境界よりも第3面の底面との境界側に位置することにより、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士が、無用な段差や凹凸を生じさせることなく当該連続面により連続的に繋げられる。ここで、第3面は、曲面により構成されてもよいし、底面と側面とのそれぞれに対して傾斜した斜面により構成されていてもよい。そうすると、特に、隣り合う液体吐出ヘッドの底面の高さや傾きが異なる場合においても、段差や角張った部分が生じにくい。これにより、ワイピング動作時の払拭性が向上し、液体吐出ヘッド同士の間に液体が残留することが抑制される。その結果、残留した液体が自重により記録媒体等の上に落下したり、記録媒体と液体吐出ヘッドとの接触によって記録媒体が液体で汚れたりする不具合が低減される。
また、本発明は、前記第3面の撥液性が、前記底面の撥液性よりも低い構成に好適である。
すなわち、当該構成によれば、充填材の充填時には、第3面上に充填材が密着しやすく、ワイピング動作時に充填材が剥がれることが抑制される。また、充填材自体に撥液性がある場合には、第3面の撥液性を補うことができる。
さらに、前記連続面の一部は、前記第3面の前記底面との境界を超えて前記底面上に位置することが望ましい。
この構成によれば、充填材に硬化収縮が生じたとしても、充填材の全体が隙間の奥に落ち窪むことが抑制される。これにより、硬化収縮後においても液体吐出ヘッドの底面との間に段差が生じにくい。また、隙間への充填材の充填作業の際に、液体吐出ヘッドの底面における充填材の付着を避ける部分にマスキングテープを貼付する場合、第3面から外れた平らな底面に貼付すればよいため、当該マスキングテープを貼付しやすい。
また、前記連続面は、前記第3面の前記側面との境界と、前記第3面の前記底面との境界と、の間に位置する構成を採用することもできる。
この構成によれば、連続面が、第3面の前記側面との境界と、第3面の前記底面との境界と、の間に位置することにより、液体吐出ヘッドの底面との間に段差が生じにくく、また、充填材が、液体吐出ヘッドの底面よりも液体の吐出側に突出しないので、ワイピング動作時に払拭部材との接触により充填剤が剥がれるリスクが低減される。また、液体吐出ヘッドを保持部材から取り外した際に、液体吐出ヘッドの底面に充填材の一部が残渣として残りにくいので、リサイクル等が容易となる。
また、上記各構成において、前記充填材は、隣り合う液体吐出ヘッドの側面同士を連続的に繋げる連続側面を有する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、液体吐出ヘッドの底面のワイピング動作時に払拭部材が弾性変形してその一部が液体吐出ヘッドの側面に接触した場合においても、液体が液体吐出ヘッドの側面同士の間に形成される隙間の開口から内部に侵入することが抑制される。
また、上記構成において、前記液体吐出ヘッドにおいて互いに交差する側面同士が、曲面により連続している構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、液体吐出ヘッドと連続側面との間に段差が生じにくいので、液体吐出ヘッドの底面のワイピング動作時に払拭部材が弾性変形して液体吐出ヘッドの側面に接触した場合においても払拭性がよく、液体が残ることが抑制される。
また、上記各構成において、前記隙間に、前記充填材を吸収して保持する吸収部材が挿入された構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、隙間に充填された充填材が吸収部材に保持されるので、充填材の粘度が比較的低い場合においても流れ出しが抑制される。このため、液体吐出ヘッドの底面に対する充填材の連続面の位置の調整が容易となる。また、流れ出しが抑制されることから充填材の充填量も低減される。
また、上記構成において、前記吸収部材は、多孔質構造を有し、
前記底面に近い側の気孔密度が、前記底面に遠い側の気孔密度よりも高い構成を採用することができる。
前記底面に近い側の気孔密度が、前記底面に遠い側の気孔密度よりも高い構成を採用することができる。
この構成によれば、底面に近い側の気孔密度が、底面に遠い側の気孔密度よりも高いので、毛細管現象により充填材の吸収性が良く、充填材がより確実に保持される。
また、本発明の液体吐出装置は、上記何れか一の構成の液体吐出ヘッドユニットを備えることを特徴とする。
この構成によれば、ワイピング動作時の払拭性が向上し、液体吐出ヘッド同士の間に液体が残留することが抑制される。その結果、残留した液体が自重により記録媒体等の上に落下したり、記録媒体と液体吐出ヘッドとの接触によって記録媒体が液体で汚れたりする不具合が低減される。
また、本発明の液体吐出ヘッドユニットの製造方法は、上記何れか一の構成の液体吐出ヘッドユニットの製造方法であって、
隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間が形成されると共に相対位置が規定された状態で各液体吐出ヘッドが保持部材に固定されるヘッド固定工程と、
前記液体吐出ヘッドの底面同士の間に形成された前記隙間の底面側開口を覆い塞ぐ状態で充填材が塗布される充填材塗布工程と、
摺動部材が前記隙間の底面側開口の延在方向に沿って摺動されて、該摺動部材により余剰な充填剤が掻き取られつつ前記隙間内に前記充填材が充填される充填材充填工程と、
を含むことを特徴とする。
隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間が形成されると共に相対位置が規定された状態で各液体吐出ヘッドが保持部材に固定されるヘッド固定工程と、
前記液体吐出ヘッドの底面同士の間に形成された前記隙間の底面側開口を覆い塞ぐ状態で充填材が塗布される充填材塗布工程と、
摺動部材が前記隙間の底面側開口の延在方向に沿って摺動されて、該摺動部材により余剰な充填剤が掻き取られつつ前記隙間内に前記充填材が充填される充填材充填工程と、
を含むことを特徴とする。
この方法によれば、液体吐出ヘッド同士の隙間において各液体吐出ヘッドの底面の形状に拘わらず(例えば、底面の縁部分が角張っている構成であっても、または、当該縁部分が曲面である構成であっても)、当該底面により近い位置に充填材を安定して配置することが可能となり、ワイピング動作時の払拭性が向上する。また、充填材は、摺動部材が摺動することで均されるので、充填材の粘度が比較的高いジェル状やゲル状の場合であっても、凹凸が殆ど生じることなく滑らかで平坦な連続面が形成される。これにより、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士が、無用な段差や凹凸を生じさせることなく当該連続面により連続的に繋げられる。
上記方法において、前記充填材塗布工程の前に、前記底面側開口を露出させる一方、前記ノズルを覆う状態で前記液体吐出ヘッドにマスキング材を貼付するマスキング工程と、
前記充填材塗布工程の後に、前記液体吐出ヘッドに貼付されたマスキング材を除去するマスキング除去工程と、
をさらに含むことが望ましい。
前記充填材塗布工程の後に、前記液体吐出ヘッドに貼付されたマスキング材を除去するマスキング除去工程と、
をさらに含むことが望ましい。
この方法によれば、隙間への充填材の充填作業の際に、液体吐出ヘッドの底面における充填材の付着を避ける部分にマスキングテープを貼付することにより、充填材の充填範囲の管理が容易である。また、液体吐出ヘッドの底面におけるノズル等に充填材が付着することが抑制される。
上記方法において、前記充填材塗布工程の前に、前記充填材を吸収して保持する吸収部材が前記隙間内に挿入される吸収部材挿入工程をさらに含むことが望ましい。
この方法によれば、隙間に充填された充填材が吸収部材に保持されるので、充填材の粘度が比較的低い場合においても流れ出しが抑制される。このため、液体吐出ヘッドの底面に対する充填材の連続面の位置の調整が容易となり、作業性も向上する。また、流れ出しが抑制されることから充填材の充填量も低減される。
上記方法において、前記充填材塗布工程において、隣り合う液体吐出ヘッドの側面同士の間に形成された前記隙間の側面側開口を覆い塞ぐ状態で充填材が塗布され、
前記充填材充填工程において、前記摺動部材が前記隙間の側面側開口の延在方向に沿って摺動されて、該摺動部材により余剰な充填剤が掻き取られつつ前記隙間内に前記充填材が充填されることが望ましい。
前記充填材充填工程において、前記摺動部材が前記隙間の側面側開口の延在方向に沿って摺動されて、該摺動部材により余剰な充填剤が掻き取られつつ前記隙間内に前記充填材が充填されることが望ましい。
この方法によれば、隣り合う液体吐出ヘッドの側面同士の間に形成された前記隙間の側面側開口にも充填剤が充填されるので、液体吐出ヘッドの底面のワイピング動作時に払拭部材が弾性変形して液体吐出ヘッドの側面に接触した場合においても、液体が液体吐出ヘッドの側面同士の間に形成される隙間の開口から内部に侵入することが抑制される。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明は、本発明の液体吐出装置として、液体吐出ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3を複数備えるヘッドユニット4(本発明の液体吐出ヘッドユニットに相当)を搭載したインクジェット式プリンター(以下、プリンター)1を例に挙げて行う。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(液体の被着弾物の一種)の表面に対して液体状のインクを吐出して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、複数の記録ヘッド3を有するヘッドユニット4と、記録媒体2を搬送する搬送機構5と、ヘッドユニット4における各記録ヘッド3の底面(ノズル面)に記録媒体2を相対させた状態で支持する媒体支持部6と、を装置本体7の内部に備えている。
本実施形態におけるヘッドユニット4は、記録媒体2の搬送方向(第1の方向)に交差する方向(第2の方向)に複数の記録ヘッド3を板状のヘッド固定基板8(本発明における保持部材に相当)に取り付けてユニット化されたものであり、各記録ヘッド3のノズル面を媒体支持部6(プラテン)に向けた姿勢で装置本体7に固定されている。ヘッドユニット4の各記録ヘッド3には、本発明における液体の一種であるインクを貯留した図示しないインクカートリッジ(液体貯留手段)からのインクが供給されるように構成されている。このインクカートリッジは、ヘッドユニット4上に装着される構成であってもよいし、装置本体7においてヘッドユニット4とは異なる位置に配置されて供給チューブ等を介して各記録ヘッド3にインクが供給される構成であってもよい。
搬送機構5は、媒体支持部6よりも記録媒体の搬送方向における上流側に上下一対に配置された第1の搬送ローラー10aと、媒体支持部6よりも搬送方向における下流側に上下一対に配置された第2の搬送ローラー10bと、を備えており、これらの搬送ローラー10a,10bを駆動させることにより、供給側からの記録媒体2を、上下のローラーで挟んだ状態で媒体支持部6上を通過させて排出側に向けて搬送する。
本実施形態における媒体支持部6は、記録ヘッド3の並設方向に沿って長尺な板状の支持台であり、ヘッドユニット4によって画像等の記録が行われる対象の記録媒体2を支持する。なお、搬送機構5が、無端ベルトやドラムにより構成されるものもあり、このような構成では、ベルトやドラムが媒体支持部として機能する。また、媒体支持部6としては、記録媒体2を静電気力により吸着させる構成のものや、負圧を発生させることで記録媒体2を吸着させる構成のものを採用することもできる。
装置本体7には、上記各構成部材の他に、記録ヘッド3のノズル面を封止するキャッピング部材(図示せず)や、ワイピング動作によりノズル面を払拭する払拭部材11(図3参照)が配置されている。本実施形態における払拭部材11は、エラストマー等の弾性を有する素材で板状に作製されており、後述するように、ヘッドユニット4における各記録ヘッド3のノズル面を、記録ヘッド並設方向の一端側から他端側に向けて摺動して払拭するように構成されている。なお、払拭部材11としては、ベルトの表面が布で覆われ、このベルトが回動することで表面の布がノズル面を摺動して払拭する構成のもの等、種々の構成の払拭部材を採用することができる。
図2は、ヘッドユニット4の構成を示す分解斜視図である。図3は、ヘッドユニット4の底面図である。図4は、図3におけるA−A線における断面図である。図5は、図4における領域Xの拡大図である。図6は、図5における隙間周辺の拡大図である。
本実施形態におけるヘッドユニット4は、ヘッド固定基板8の下面、すなわち、媒体支持部6側の面に複数(本実施形態においては合計4つ)の記録ヘッド3を、搬送方向に交差する方向(第2の方向)に並べて固定している。各記録ヘッド3は、複数の単位ヘッド12(ヘッドチップ)と、各単位ヘッド12に供給するインクが流れる供給流路等が形成された流路構造体13と、各単位ヘッド12を保護する保護板14を備えている。単位ヘッド12は、後述するようにノズル40が開設されたノズルプレート30や、ノズル40と連通するインク流路が形成された基板や、インクを吐出させる駆動源であるアクチュエーターユニット等の構成部材が積層されて構成されている。本実施形態において、各記録ヘッド3には、複数(本実施形態においては合計4つ)の単位ヘッド12が、記録ヘッド3の並設方向である第2の方向に並べて配置されている。そして、構成部材の最も下(最も媒体支持部6側)に配置されるノズルプレート30とは反対側の面において流路構造体13とそれぞれ接合されている。なお、単位ヘッド12の詳細な構成については後述する。
保護板14は、記録ヘッド3に設けられている各単位ヘッド12に共通な金属製の板材であり、プレス加工により作製されている。各単位ヘッド12のノズルプレート30を被覆する平らな底板15と、並設された単位ヘッド12を囲むように流路構造体13側に向けて屈曲した平らな側壁16を有している。側壁16の外側の面は、本発明における液体吐出ヘッドの側面に相当する。なお、保護板14における四方の側壁16のうち、底板15の第2の方向の両側に位置する側壁を側壁16aとし、また、底板15の第1の方向の両側に位置する側壁を側壁16bとする。また図6等に示すように、底板15と側壁16とが交差する部分は曲面18a(本発明における第3面の一種)となっている。換言すると、いずれも平面からなる底板15と側壁16とは、両者の間の曲面18aを介して連続している。同様に、互いに交差する平面からなる側壁16a,16b同士も、曲面18bにより連続している(図8および図9等参照)。
底板15には、各単位ヘッド12のノズルプレート30に対応する位置に、当該ノズルプレート30に形成されたノズル40を露出させるため、ノズル列方向に長尺な貫通口17がそれぞれ形成されている。各単位ヘッド12は、それぞれ対応する貫通口17にノズル40を露出させた状態で接着剤等により保護板14における底板15の上面(媒体支持部6側とは反対側の面)に接合される。この底板15に後述するコンプライアンス基板34が接合されることにより各単位ヘッド12の高さ、すなわち、ノズル面に垂直な方向の位置がそれぞれ規定される。本実施形態では、この保護板14における底板15の下面(底板15における媒体支持部6側の面)と貫通口17における単位ヘッド12の露出部分とにより本発明における液体吐出ヘッドの底面(ノズル面)が構成されている。
また、本実施形態における保護板14の底面(底板15の下面)には、撥液膜25が形成されている(図5および図6参照)。この撥液膜25は、例えば、フッ素を含む撥液剤が塗布されることで形成されている。この撥液剤としては、フルオロアルキル基を含むシラン化合物、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシランが用いられる。また、塗布によるものではなく、例えば、蒸着あるいはスピンコート等によるものであってもよい。さらに、共析メッキにより撥液膜25を形成してもよい。また、保護板14の側壁16および曲面18aにも同様に撥液膜25が形成されている。この撥液膜25は、底板15および側壁16における撥液膜25の膜厚と比べて曲面18aにおける撥液膜25の膜厚を薄くし、撥液性を弱めて(低くして)いる。
流路構造体13は、インクカートリッジから送られてきたインクを各単位ヘッド12に分配・供給する部材である。図2に示すように、この流路構造体13の上面には、複数の円筒状のインク導入部19が突設されており、このインク導入部19から内部の供給流路にインクを導入する。本実施形態においては、合計4色のインクに対応して合計4つのインク導入部19が流路構造体13に設けられている。流路構造体13の内部において各供給流路は、記録ヘッド3に設けられた単位ヘッド12の数に応じた数の分岐流路に分岐される。また、流路構造体13の下面側(インク導入部19が開設された上面側とは反対側)の内部には、各単位ヘッド12を収容して保持する保持空部20が形成されており、この保持空部20の天井面20a(単位ヘッド12が接合される面)に、供給流路から分岐した分岐流路の下流側の開口が、各単位ヘッド12に対応してそれぞれ開設されている。上記保持空部20内に、保護板14に接合された各単位ヘッド12が収容されて、各単位ヘッド12の上面と、保持空部20の天井面20aとが接着剤24(図5参照)によって接合される。これにより、各単位ヘッド12のインク流路と、流路構造体13内の供給流路から分岐した分岐流路とが液密に連通する。
図2乃至図4に示すように、上記の各記録ヘッド3は、それぞれ相対位置が規定された状態で第2の方向に並べてねじ止め若しくは接着剤によりヘッド固定基板8の下面に固定される。各記録ヘッド3の相対位置は、それぞれの位置決めの基準となるノズル40が所定の位置に配置されるように規定される。このため、ヘッド固定基板8に固定された各記録ヘッド3の底面は、必ずしも同一面(仮想的な面)上に揃わず、その高さ(媒体支持部6に垂直な方向の位置)や傾き等が互いに異なる場合がある。本実施形態においては、図5および図6に示すように、隣り合う記録ヘッド3のうちの一方(図5および図6中の左側)の記録ヘッド3の底面よりも、他方の記録ヘッド3(図5および図6中の右側)の記録ヘッド3の底面が、下方(媒体支持部6側)に位置している。また、図5に示すように、隣り合う記録ヘッド3同士の間には、各記録ヘッド3の相対的な位置を調整するために必要な調整代として隙間Gが形成される。本実施形態においては、この隙間Gに充填材27が充填されることで隙間Gへのインクの侵入が抑制されている。この点の詳細については後述する。
次に、単位ヘッド12の構成について説明する。
図7は、単位ヘッド12の分解斜視図である。本実施形態における単位ヘッド12は、ノズルプレート30、連通板31、アクチュエーターユニット32、コンプライアンス基板34、ケース35等の複数の構成部材が積層されて接着剤等によって接合されて構成されている。なお、以下においては、単位ヘッド12の各構成部材の積層方向を、適宜上下方向として説明する。
図7は、単位ヘッド12の分解斜視図である。本実施形態における単位ヘッド12は、ノズルプレート30、連通板31、アクチュエーターユニット32、コンプライアンス基板34、ケース35等の複数の構成部材が積層されて接着剤等によって接合されて構成されている。なお、以下においては、単位ヘッド12の各構成部材の積層方向を、適宜上下方向として説明する。
アクチュエーターユニット32は、ノズルプレート30に形成されたノズル40と連通する圧力室(図示せず)が形成された流路基板32aと、各圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電素子や発熱素子等のアクチュエーターと、これらの流路基板32aおよびアクチュエーターを保護する封止板32bと、がユニット化されたものである。封止板32bの平面視における略中央部には、駆動IC等の駆動回路36を実装した配線基板37が挿通される配線空部38が開設されている。この配線空部38内にアクチュエーターのリード電極が配置され、このリード電極に配線基板37の配線端子が電気的に接続される。
アクチュエーターユニット32の下面には、このアクチュエーターユニット32よりも広い面積を有する連通板31が接合される。本実施形態における連通板31には、アクチュエーターユニット32の内部の圧力室と、ノズルプレート30のノズル40とを連通するノズル連通口39と、各圧力室に共通な共通液室41と、この共通液室41と圧力室とを連通する供給口43と、が形成されている。共通液室41(リザーバー若しくはマニホールドとも呼ばれる)は、ノズル列方向(第1の方向)に沿って形成された空部であり、連通板31において、ノズルプレート30のノズル列42毎に対応して2つ形成されている。なお、1つのノズル列42に複数の共通液室41が設けられる構成もある。この共通液室41と供給口43とは、連通板31の下面(ノズルプレート30と接合される面)において連通している。
上記の連通板31の下面の略中央部分には、複数のノズル40が形成されたノズルプレート30が接合される。本実施形態におけるノズルプレート30は、連通板31よりも小さい面積の板材である。このノズルプレート30は、連通板31の下面において、共通液室41の開口部から外れた位置であって、ノズル連通口39が複数開口した領域に、これらのノズル連通口39と複数のノズル40とがそれぞれ連通する状態で接着剤等により接合される。図3および図7に示すように、本実施形態におけるノズルプレート30には、複数のノズル40が列設されてなるノズル列42が合計2条形成されている。
また、連通板31の下面において、ノズルプレート30の周囲を囲むように、コンプライアンス基板34が接合される。このコンプライアンス基板34は、連通板31の下面に開口した共通液室41の開口を封止している。本実施形態におけるコンプライアンス基板34は、可撓膜34aと、これを支持する支持板34bと、を有する。可撓膜34aは、可撓性を有する薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)や薄手のステンレス鋼(SUS)等)により形成されている。また、支持板34bは、可撓膜34aよりも厚みのあるステンレス鋼等の金属等の硬質の材料で形成される。この支持板34bの共通液室41に対向する領域は、この共通液室41の開口形状に倣った形状の貫通口となっている。このため、共通液室41、すなわち、共通液室41の開口面は、可撓性を有する可撓膜34aのみで封止されている。そして、この部分が、インク流路内の圧力変動に応じて変位するコンプライアンス部として機能する。
アクチュエーターユニット32及び連通板31には、ケース35が固定されている。ケース35は、平面視において連通板31と略同一形状を呈し、その下面側にはアクチュエーターユニット32を収容する図示しない収容空部を有している。そして、収容空部にアクチュエーターユニット32が収容された状態でノズルプレート30側の下面が連通板31によって封止される。このケース35の平面視における略中央部分には、収容空部と連通する挿通空部44が開設されている。この挿通空部44は、アクチュエーターユニット32の配線空部38とも連通する。上記の配線基板37は、挿通空部44を通じて配線空部38に挿入されるように構成されている。また、ケース35の内部において、挿通空部44および収容空部の両側には、連通板31の共通液室41と連通する液室空部が形成されている。また、ケース35の上面には、各液室空部と連通する導入口45がそれぞれ開設されている。単位ヘッド12が位置決めされた状態で流路構造体13に接合されると、導入口45は、流路構造体13における供給流路の分岐流路と連通する。このため、流路構造体13の供給流路を通過してきたインクは、導入口45を通じて共通液室41へと導入される。
また、本実施形態において、保護板14は、コンプライアンス基板34の連通板31とは反対側の面(支持板34b)と接合される。すなわち、保護板14の底板15に設けられた貫通口17は、ノズルプレート30の面積よりも広い開口面積を有し、この貫通口17内にノズルプレート30のインクが吐出される側の面(ノズル面)を露出させる。なお、保護板14は、これに限定されず、例えば、保護板14の貫通口17をノズルプレート30の外形よりも小さな開口面積とし、保護板14をノズルプレート30のノズル面に当接又は接着するようにしてもよい。
このような構成の単位ヘッド12では、共通液室41にインクが導入され、当該共通液室41からノズル40に至るまでインク流路内がインクで満たされる。そして、駆動回路36からの駆動信号に従い、アクチュエーターユニット32のアクチュエーターが駆動されることにより、圧力室内のインクに圧力変動が生じ、この圧力振動によって所定のノズル40からインクが吐出される。
本発明に係るヘッドユニット4では、図5及び図6等に示すように、隣り合う記録ヘッド3の間に形成される隙間Gに充填材27が充填されている。具体的には、充填材27は、記録ヘッド3の底面同士に形成される隙間Gの底面側開口O1(図9等参照)から充填されている。充填材27の充填工程の詳細については後述する。この充填材27としては、撥液性・耐インク性を有し、払拭時に払拭部材11が接触したとしても変形や位置ずれが生じにくい材質のものが望ましい。例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤等の各種接着剤を用いることができる。本実施形態においては、充填材27としてエポキシ樹脂系接着剤が採用されている。
図8は、隣り合う記録ヘッド3の隙間Gに充填材27が充填された状態を説明する斜視図である。従来のこの種のヘッドユニットにおいても、隣り合う記録ヘッドの間の隙間に充填材が充填されていたものの、記録ヘッドの底面に対して充填材の表面(ヘッド間の隙間に露出した面)の位置が安定せず、記録ヘッドの底面との間に段差が生じる虞があった。特に、隣り合う記録ヘッドの底面同士が同一面に揃わない場合(高さや傾きが異なる場合)に段差が生じやすい。これに対し、本発明に係るヘッドユニット4では、図5、図6、および図8に示すように、隣り合う記録ヘッド3の底面(保護板14の下面)の高さが異なり、両者が同一面上に揃わない場合においても、記録ヘッド3の底面側の充填材27の表面である連続面27sによって各記録ヘッド3の底面同士をできるだけ段差無く滑らかに連続させるように構成されている。
図6に示すように、充填材27は、保護板14の側壁16のうち、隣り合う記録ヘッド3の互いに対向する側壁16a同士の間の隙間Gに充填されている。そして、図6に示すように、これらの記録ヘッド3の何れとの位置関係においても、充填材27の連続面27sが、曲面18aと側壁16aとの境界B1よりも底板15の下面(記録ヘッド3の底面)側に位置する。本実施形態においては、充填材27の連続面27sの一部は、曲面18aと底板15の下面との境界B2を超えて底板15の下面に位置している。なお、充填材27の連続面27sの位置に関し、平坦な状態を想定したときの位置を意味する。硬化収縮等により、連続面27sが平坦な状態ではない場合、連続面27sの保護板14との境界が上記範囲にあればよい。このように、充填材27の連続面27sが、少なくとも曲面18aと側壁16aとの境界B1よりも底板15側に位置するように記録ヘッド3間の隙間Gに充填されることで、隣り合う記録ヘッド3の底面同士が、無用な段差や凹凸を生じさせることなく当該連続面27sにより連続的に繋げられる。特に、隣り合う記録ヘッド3の底面が同一面に揃わない場合においても段差や角張った部分が生じにくい。これにより、ワイピング動作における払拭部材11の拭き取り性が向上する。その結果、記録ヘッド3同士の隙間Gにインクが残留することが抑制される。その結果、隙間Gに残留したインクが自重により記録媒体2等の上に落下したり、記録媒体2と記録ヘッド3との接触によって記録媒体2がインクで汚れたりする不具合が低減される。
ここで、充填材27は、硬化の過程で多少収縮(硬化収縮)するが、その度合いは、充填材27の層がより厚い部分でより大きく生じる。このため、充填材27の連続面27sが曲面18aと側壁16aとの境界B1よりも底板15側に位置する構成において、曲面18a上や底板15上では充填材27の厚さが中央部分での厚さよりも薄いため、硬化収縮が生じたとしても、充填材27の全体が隙間の奥に落ち窪むことが抑制される。特に、本実施形態においては、充填材27の連続面27sの一部は、曲面18aと底板15の下面との境界B2を超えて底板15の下面に位置しているので、この部分が留めとなって充填材27の全体が落ち窪むことがより確実に抑制される。これにより、硬化収縮後においても記録ヘッド3の底面との間に段差が生じにくい。また、後述するように、隙間Gへの充填材27の充填作業の際に、記録ヘッド3の底面において充填材27の付着を避ける部分にマスキングテープ47を貼付する場合、曲面18aを避けて平らな底板15の下面に貼ればよいので、マスキング作業が容易である。
なお、本実施形態においては、充填材27の連続面27sの一部が、曲面18aと底板15との境界B2を超えて底板15の下面に位置している構成を例示したが、これには限られず、充填材27の連続面27sが、曲面18aの側壁16aとの境界B1と、曲面18aと底板15の下面との境界B2と、の間に位置する構成を採用することもできる。この構成によれば、記録ヘッド3の底面との間に段差が生じにくく、また、充填材27が、記録ヘッド3の底面よりもインクの吐出側(媒体支持部6側)に突出しないので、ワイピング動作時に払拭部材11との接触により充填剤27が剥がれるリスクが低減される。また、メンテナンスや修理等においてヘッド固定基板8から取り外した際に、記録ヘッド3の底面に充填材27の一部が残渣として残りにくいので、リサイクル等が容易となる。
さらに、本実施形態における充填材27の連続面27sには、撥液処理が施されている。これにより、インクの拭き取り性がより高められている。この撥液処理は、隙間Gへの充填後、充填材27の硬化後に撥液膜25と同様に撥液剤が塗布されることで行われる。本実施形態においては、上述したように底板15および側壁16と比べて曲面18aにおける撥液性が弱められているため、充填材27の充填時には、曲面18a上に充填材27が密着しやすい。このため、ワイピング動作時に払拭部材11との接触によって充填材27が剥がれることが抑制される。また、充填材27の連続面27sに撥液処理が施されることにより、曲面18aの撥液性を補うことができる。
そして、本実施形態においては、図8に示すように、隣り合う記録ヘッド3の側壁16b同士の間に形成された隙間Gの側面側開口O2(図9等参照)にも充填材27が充填されている。このため、充填材27は、これらの記録ヘッド3の側壁16b同士を連続的に繋げる連続側面27ssを有する。これにより、ワイピング動作時に払拭部材11が弾性変形してその一部が記録ヘッド3の側面(保護板14の側壁16b)に接触した場合においても、インクが記録ヘッド3の側面側から隙間Gに侵入することが抑制される。また、上述したように保護板14の側壁16b同士が、曲面18bにより連続しているので、記録ヘッド3と連続側面27ssとの間に段差が生じにくい。このため、ワイピング動作時に払拭部材11が弾性変形して記録ヘッド3の側面に接触した場合においても、払拭性がよく、インクが残ることが抑制される。
図9〜図15は、上記ヘッドユニット4の製造方法、主に、記録ヘッド3間の隙間に充填材27を充填する工程について説明する工程図である。なお、各図においては2つの記録ヘッド3のみが図示されており、他の構成の図示は省略されている。本実施形態においては、隣り合う記録ヘッド3同士の間に隙間Gが形成されると共に相対位置が規定された状態で各記録ヘッド3が固定基板8に固定された後(ヘッド固定工程)、隙間Gに充填材27が充填される。本実施形態における充填材27は、充填時の常温においてジェル状もしくはゲル状となっている。そして、図9および図10に示すように、各記録ヘッド3にマスキングテープ47(マスキング材の一種)がそれぞれ貼付される(マスキング工程)。このマスキングテープ47に関し、記録ヘッド3のノズル列方向(第1の方向)に平行となる方向における寸法(長さ)は、保護板14の底板15の第1の方向における寸法よりも長くなっている。また、記録ヘッド3のノズル列方向に直交する方向(第2の方向)の寸法(幅)は、保護板14の底板15の第2の方向の寸法と同じか、僅かに小さいか、もしくは、少し大きい。マスキングテープ47の幅が保護板14の底板15の第2の方向の寸法よりも小さい場合、貼付された状態で少なくともノズルプレート30が露出することのない寸法とされる。また、マスキングテープ47の幅が保護板14の底板15の第2の方向の寸法よりも大きい場合、曲面18aと側壁16aとの境界(図6におけるB1)を超えない寸法とされる。そして、マスキングテープ47の一端部は、第1の方向(ノズル列方向)の一側の側壁16bに貼られ、当該側壁16bと底板15との境界(曲面18a)を支点として図9中矢印で示すように底板15側に向けて倒され、底板15および他側の側壁16bの順にマスキングテープ47が貼られる。
図10は、マスキングテープ47が貼られた状態における記録ヘッド3の底面の斜視図、図11は、マスキングテープ47が貼られた状態における記録ヘッド3の底面を示す平面図である。なお、図11においてハッチングで示される部分が、マスキングテープ47が貼付された部分を示している。本実施形態においては、マスキングテープ47の幅は、保護板14の底板15の第2の方向の寸法よりも少し小さくなっており、当該マスキングテープ47の幅方向の端は、曲面18aと底板15との境界B2よりも少し内側に位置する。マスキング工程の後、図12に示すように、ディスペンサー48により記録ヘッド3間の隙間Gの開口O1,O2(図9および図10参照)を覆うように充填材27が塗布される(充填材塗布工程)。本実施形態において、充填材27は、各記録ヘッド3の底板15同士の隙間Gの底面側開口O1だけでなく、側壁16b同士の間の隙間Gの側面側開口O2にも塗布される。また、この際、充填材27は、隙間Gの開口O1,O2の幅よりも広い範囲で、且つ、ある程度の厚みとなるように塗布され、その一部はマスキングテープ47上にも塗布される。
次に、図13に示すように、スクレイパー(スキージ)49(本発明における摺動部材の一種)が、一側の側壁16b、底板15、および他側の側壁16bのそれぞれにおいて隙間Gの開口O1,O2の延在方向沿って摺動されることで、余剰な充填材27がスクレイパー49の先端縁によって掻き取られつつ、これらの開口O1,O2から充填材27が隙間G内に押し込まれて充填される(充填材充填工程)。スクレイパー49は、エラストマー等の弾性を有する素材のものが用いられる。これにより、図14に示すように、隣り合う記録ヘッド3の底面の高さ等が異なっている場合でも、段差や凹凸に倣ってスクレイパー49の先端縁が弾性変形しつつ充填材27を隙間G内に押し込む。このように、充填材27の連続面27sおよび連続側面27ssは、スクレイパー49の先端縁が記録ヘッドの底面や側面を摺動することで均されるので、充填材27の粘度が比較的高いジェル状やゲル状の場合であっても、凹凸が殆ど生じることなく滑らかで平坦な面となる。充填材27が隙間Gに充填されたならば、図15に示すように、マスキングテープ47が剥がされ、加熱処理等による充填材の硬化工程を経て充填材27の充填が完了する。なお、本実施形態においては、上述したように、充填材27の撥液性を高めるため、充填工程の後、充填材27の連続面27sに、このような工程を経て充填材27が記録ヘッド3の底面同士の隙間Gに充填材27が充填されることにより、図6および図8に示されるように、充填材27の連続面27sは、記録ヘッド3の底面同士を段差無く滑らかに連続させる。同様に、充填材27の連続側面27ssは、これらの記録ヘッド3の側壁16b同士を段差無く滑らかに連続させる。なお、本実施形態においては、充填材27の連続面27sの一部は、曲面18aと底板15との境界B2を超えて底板15の下面上に位置しているので(図6及び図8参照)、充填工程の終了時点では底板15の下面(記録ヘッド3の底面)と充填材27の連続面27sとの間にマスキングテープ47の厚み分の段差が生じる。しかしながら、マスキングテープ47の厚さはごく薄く、また、硬化収縮により厚みも塗布時の厚みよりも薄くなるため、ワイピング動作の拭き取り性等に殆ど影響はない。
図16乃至図19は、本発明の第2の実施形態について説明する図である。図16は、吸収部材51が隙間に挿入される前の状態における記録ヘッド3間の隙間周辺の断面図、図17は、吸収部材51が隙間に挿入された状態における記録ヘッド3間の隙間周辺の断面図である。また、図18は、図17における隙間周辺の拡大図であり、図19は、吸収部材51が隙間に挿入された状態における記録ヘッド3の底面図である。本実施形態においては、充填材27を充填する箇所にスポンジ等の多孔質部材からなる吸収部材51が挿入され、当該吸収部材51に充填材27が吸収・保持される構成となっている。本実施形態における充填材27の粘度は、上記第1の実施形態のものよりも低くてもよい。図16および図19に示すように、吸収部材51の寸法に関し、ノズル列方向に直交する第2の方向において、記録ヘッド3間の隙間Gよりも大きく、またノズル列方向である第1の方向において、記録ヘッド3の寸法よりも大きい。
そして、隣り合う記録ヘッド3同士の間に隙間Gが形成されると共に相対位置が規定された状態で各記録ヘッド3が固定基板8に固定された後(ヘッド固定工程)、図17に示すように、吸収部材51が、圧縮された状態で記録ヘッド3の間の隙間Gに挿入される(吸収部材挿入工程)。隙間Gに挿入された吸収部材51は、記録ヘッド3の底面(保護板14の底板15の下面)よりも下方(媒体支持部6側)に飛び出さないように、その挿入位置が調整される。記録ヘッド3の底面の高さが異なる場合には、高い側(媒体支持部6より遠い側)の記録ヘッド3の底面よりも下方に突出しないように吸収部材51の挿入位置が調整される。隙間Gに吸収部材51が挿入されたならば、上記第1の実施形態と同様に、マスキング工程、充填材塗布工程、および充填材充填工程等を経て、充填材27が隙間Gに充填されて吸収部材51に吸収・保持される。これにより、充填材27の粘度が比較的低い場合においても、充填材27が硬化するまでの間、当該充填材27の流れ出しが抑制される。このため、充填材27の連続面27s,27ssの位置の調整が容易となる。すなわち、充填材27の連続面27s,27ssが、記録ヘッド3の底面や側面から突出したり、逆に隙間の奥に入り込み過ぎたりすることが抑制される。これにより、隣り合う記録ヘッド3の底面や側面が、充填材27の連続面27s,27ssにより段差や凹凸無く滑らかに連続される。また、充填材27の充填時の作業性も向上する。さらに、流れ出しが抑制されることから充填材27の最終的な充填量も低減される。
ここで、上記吸収部材51に関し、記録ヘッド3の底面に近い側の多孔質構造の密度(気孔の密度)が、記録ヘッド3の底面に遠い側の多孔質構造の密度よりも高いことが望ましい。この構成によれば、記録ヘッド3の底面に近いほど毛細管現象により充填材27の吸収性が良く、充填材27がより確実に保持される。また、記録ヘッド3の底面から遠い側では、多孔質構造の密度が比較的低いので、例えば、記録ヘッド3に外力が加わった場合においても、当該部分が緩衝材として機能し、記録ヘッド3や充填材27へのダメージを低減することができる。
また、上記各実施形態においては、保護板14における底板15の下面が、ノズルプレート30と共に本発明に係る液体吐出ヘッドの底面として機能し、保護板14の側壁16a,16bが本発明における液体吐出ヘッドの側面として機能した構成を例示したが、これには限られず、保護板14が無い構成においても本発明を適用することができる。この場合、記録ヘッド3のノズル40が露出された面が、本発明における底面として機能し、記録ヘッド3の側面に相当する部分(側壁)が、本発明における側面として機能する。
さらに、上記各実施形態においては、底板15と側壁16とが交差する部分は曲面18aとなっていたが、底板15と側壁16とのそれぞれに対して傾斜した斜面となっていてもよく、底板15と側壁16とが両者の間の斜面を介して連続していてもよい。斜面とする構成においても曲面18aである構成と同様な作用効果を奏する。
また、上記各実施形態においては、保護板14の底板15と各単位ヘッド12のコンプライアンス基板34とが接合されたが、保護板14の底板15と各単位ヘッド12のノズルプレート30とが接合されてもよい。この場合には、ノズル面は、保護板14における底板15の下面と、貫通口17における単位ヘッド12の露出部分であるノズルプレート30とにより構成される。
さらに、上記各実施形態においては、各記録ヘッド3には、複数の単位ヘッド12が第2の方向に並べて配置されていたが、これに限られない。例えば、複数の単位ヘッド12が第1の方向に並べて配置されてもよいし、あるいは、ヘッドユニット4が第2の方向に一様なピッチでインクを吐出できるように単位ヘッド12を並べてもよい。
さらに、上記各実施形態においては、底板15と側壁16とが交差する部分は曲面18aとなっていたが、底板15と側壁16とのそれぞれに対して傾斜した斜面となっていてもよく、底板15と側壁16とが両者の間の斜面を介して連続していてもよい。斜面とする構成においても曲面18aである構成と同様な作用効果を奏する。
また、上記各実施形態においては、保護板14の底板15と各単位ヘッド12のコンプライアンス基板34とが接合されたが、保護板14の底板15と各単位ヘッド12のノズルプレート30とが接合されてもよい。この場合には、ノズル面は、保護板14における底板15の下面と、貫通口17における単位ヘッド12の露出部分であるノズルプレート30とにより構成される。
さらに、上記各実施形態においては、各記録ヘッド3には、複数の単位ヘッド12が第2の方向に並べて配置されていたが、これに限られない。例えば、複数の単位ヘッド12が第1の方向に並べて配置されてもよいし、あるいは、ヘッドユニット4が第2の方向に一様なピッチでインクを吐出できるように単位ヘッド12を並べてもよい。
そして、以上では、液体吐出ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド3(記録ヘッド3)を例に挙げて説明したが、本発明は、液体吐出ヘッドを複数並べて保持部材に固定した他の液体吐出ヘッドユニットにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等を複数備える液体吐出ヘッドユニット、および、これを備える液体吐出装置にも本発明を適用することができる。
1…プリンター,2…記録媒体,3…記録ヘッド,4…ヘッドユニット,5…搬送機構,6…媒体支持部,7…装置本体,8…ヘッド固定基板,10…搬送ローラー,11…払拭部材,12…単位ヘッド,13…流路構造体,14…保護板,15…底板,16…側壁,17…貫通口,18…曲面,19…インク導入口,20…保持空部,24…接着剤,25…撥液膜,27…充填材,30…ノズルプレート,31…連通板,32…アクチュエーターユニット,34…コンプライアンス基板,35…ケース,36…駆動回路,37…配線基板,38…配線空部,39…ノズル連通口,40…ノズル,41…共通液室,42…ノズル列,43…供給口,44…挿通空部,45…導入口,47…マスキングテープ,48…ディスペンサー,49…スクレイパー,51…吸収部材
Claims (13)
- 液体を吐出するノズルが露出された底面および該底面に交差する側面を有し、前記底面と前記側面とが交差する部分が第3面により連続する複数の液体吐出ヘッドと、
隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間を形成した状態で前記複数の液体吐出ヘッドを保持する保持部材と、
前記隙間に充填されて、隣り合う液体吐出ヘッドの底面同士を連続的に繋げる連続面を有する充填材と、
を備え、
前記連続面は、前記第3面の前記側面との境界よりも前記第3面の前記底面との境界側に位置することを特徴とする液体吐出ヘッドユニット。 - 前記第3面の撥液性が、前記底面の撥液性よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドユニット。
- 前記連続面の一部は、前記第3面の前記底面との境界を超えて前記底面上に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッドユニット。
- 前記連続面は、前記第3面の前記側面との境界と、前記第3面の前記底面との境界と、の間に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッドユニット。
- 前記充填材は、隣り合う液体吐出ヘッドの側面同士を連続的に繋げる連続側面を有することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドユニット。
- 前記液体吐出ヘッドにおいて互いに交差する側面同士が、曲面により連続していることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドユニット。
- 前記隙間に、前記充填材を吸収して保持する吸収部材が挿入されたことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドユニット。
- 前記吸収部材は、多孔質構造を有し、
前記底面に近い側の気孔密度が、前記底面に遠い側の気孔密度よりも高いことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッドユニット。 - 請求項1から請求項8の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドユニットを備えることを特徴とする液体吐出装置。
- 請求項1から請求項8の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドユニットの製造方法であって、
隣り合う液体吐出ヘッド同士の間に隙間が形成されると共に相対位置が規定された状態で各液体吐出ヘッドが保持部材に固定されるヘッド固定工程と、
前記液体吐出ヘッドの底面同士の間に形成された前記隙間の底面側開口を覆い塞ぐ状態で充填材が塗布される充填材塗布工程と、
摺動部材が前記隙間の底面側開口の延在方向に沿って摺動されて、該摺動部材により余剰な充填剤が掻き取られつつ前記隙間内に前記充填材が充填される充填材充填工程と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドユニットの製造方法。 - 前記充填材塗布工程の前に、前記底面側開口を露出させる一方、前記ノズルを覆う状態で前記液体吐出ヘッドにマスキング材を貼付するマスキング工程と、
前記充填材塗布工程の後に、前記液体吐出ヘッドに貼付されたマスキング材を除去するマスキング除去工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッドユニットの製造方法。 - 前記充填材塗布工程の前に、前記充填材を吸収して保持する吸収部材が前記隙間内に挿入される吸収部材挿入工程をさらに含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の液体吐出ヘッドユニットの製造方法。
- 前記充填材塗布工程において、隣り合う液体吐出ヘッドの側面同士の間に形成された前記隙間の側面側開口を覆い塞ぐ状態で充填材が塗布され、
前記充填材充填工程において、前記摺動部材が前記隙間の側面側開口の延在方向に沿って摺動されて、該摺動部材により余剰な充填剤が掻き取られつつ前記隙間内に前記充填材が充填されることを特徴とする請求項10から請求項12の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドユニットの製造方法。
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