JP2017096516A - 冷暖房用パネル、及び冷暖房システム - Google Patents

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Abstract

【課題】大気中で室温付近の放射伝熱による熱移動を、従来に比べて長距離化・大面積化にて効率的かつ経済的に実施可能とした冷暖房用パネル、及び冷暖房システムを提供すること。
【解決手段】本発明の冷暖房用パネルは、基材(5)の上に配置された複数の導電体層(7、9)と、これらに挟まれた誘電体層(8)とを有して構成されるプラズモン共振構造体(3)を備え、前記プラズモン共振構造体は、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を有することを特徴とする。これにより、室温付近の温度の大気中において、放射伝熱による熱移動を、従来に比べて長距離化・大面積化にて効率的かつ経済的に行うことができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、大気中で放射伝熱を利用して熱移動を可能とする冷暖房用パネル、及び冷暖房システムに関する。
室温付近の温度帯における、放射伝熱による熱移動の応用例として、放射冷暖房技術が挙げられる。室温付近の温度帯を対象とする放射冷暖房は、従来の空調のように温風、冷風を使用しないことから、心地よく、省エネルギーの冷暖房として、近年、注目されるようになっている。
一般的な放射冷暖房は、高温のヒータから放射される赤外線を反射鏡により一方向に放射するものや、室内の天井や床板の温度を、室温に近い比較的低い温度で制御するものである。ヒータ、天井、床等の素材は、黒体に類似した幅広い波長域の赤外線を放射・吸収する。このため、多くの赤外線が、大気中に含まれる水や二酸化炭素に吸収され、人等を加熱・冷却する前に、途中の大気を加熱・冷却してしまう。その結果、数m以上離れると冷暖房効果が薄れ、十分な効率が得られているとはいえなかった。
また、天井や床から放射される赤外線は、指向性を持たないために、冷暖房対象物を選択的に暖めることができないといった問題もあった。
ここで、従来において、放射・吸収する赤外線の波長を、特定波長に選択する方法としては、いくつかの技術が提案されている。
特許文献1及び特許文献2には、大気による赤外線の吸収を防止するために、ストーブ等の高温熱放射体の金属表面に一酸化ケイ素膜を被覆して、大気吸収の少ない10μm付近の赤外線を選択的に放射させる発明が開示されている。
特許文献3には、マイクロキャビティと呼ばれる微細な凹凸構造を利用して、特定の波長以下の赤外線を指向性高く放射する発明が開示されている。
特許文献4には、波長選択性を有し、入射角依存性が小さいボロメータに関する発明が開示されている。
特許第2909538号公報 特許第3932364号公報 特開2003−12329号公報 特開2014−44164号公報
しかしながらいずれの特許文献においても、特定波長の赤外線を放射・吸収出来るものの、冷暖房対象物までの距離が長距離化しても、大気中で室温付近の放射伝熱効率の減衰を抑制でき、加えて、大面積化が可能な放射・吸収体に関する発明は開示されていない。
また、特許文献1及び特許文献2は、ストーブ等の高温表面用の素材に関する発明であり、放射面全域を均一な組成で形成することが難しいと考えられ、放射率や波長選択性が十分とはいえない。また、化合物の加熱放射特性を利用したものであることから放射波長を制御することは難しい。
特許文献3に記載された発明は、赤外線を効率よく放射するには精密なキャビティ形状が必要で、また指向性を高めるには口径に比べて非常に深いキャビティが必要となる。このことから、大面積化は困難である。また、特許文献3の指向性赤外線放射体を室内に設置するような場合には、埃や油汚れ等によってキャビティ機能が低下する。このためキャビティ内を清掃することが必要とされるが、キャビティは深く、キャビティ内をきれいに清掃することが難しいといった問題もある。
特許文献4に記載された発明は、半導体加工技術により作成される小型のセンサ(ボロメータ)に関するものであり、大面積の放射体を作ることは困難である。また特許文献4は、ボロメータに関する発明であり、そもそも冷暖房用の放射・吸収体として適用されることを想定していない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、大気中で室温付近の放射伝熱による熱移動を、従来に比べて長距離化・大面積化にて効率的かつ経済的に実施可能とした冷暖房用パネル、及び冷暖房システムを提供することを目的とする。
本発明者は、特定波長の赤外線を効率よく放射・吸収するために、製作が容易なプラズモン共振構造体を利用することで、冷暖房対象物までの距離を延ばしても放射伝熱効率の減衰を抑制でき、従来の黒色体よりも暖かさ・涼しさを感じることの出来る冷暖房用パネルを大面積で形成出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明の冷暖房用パネルは、基材の上に配置された複数の導電体層と、これらに挟まれた誘電体層とを有して構成されるプラズモン共振構造体を備え、前記プラズモン共振構造体は、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を有することを特徴とする。
本発明では、波長8〜14μmの赤外線に対する最大放射率或いは最大吸収率が0.7以上であり、波長5〜8μmの波長域の平均放射率或いは平均吸収率が0.5以下であり、波長14〜20μmの波長域の平均放射率或いは平均吸収率が0.3以下であることが好ましい。
また本発明では、前記赤外線の放射・吸収面から垂直方向に4m以下の距離において、放射温度計で測定した表面温度の温度変化率が、0.5℃/m以下であることが好ましい。
また本発明では、前記プラズモン共振構造体は、表面に凹凸構造を備え、前記凹凸構造の凸部高さ或いは凹部深さが0.5μm以下であることが好ましい。
また本発明では、前記凸部の平面形状は円形状であり、前記円形状の直径は、1.5〜4μmであり、各凸部間の間隔は、1〜4μmであり、各導電体層の膜厚は、0.02〜1μmであり、前記誘電体層の膜厚は、0.1〜0.5μmであることが好ましい。
また本発明では、前記誘電体層が、CeO、Yから選択される少なくとも1種にて形成されることが好ましい。
また本発明では、前記導電体層は、Al、Au、Niから選択される少なくとも1種にて形成されることが好ましい。
また本発明では、前記プラズモン共振構造体は、前記赤外線の放射・吸収面から大気への対流伝熱による熱損失を低減するためのカバー層が、前記放射・吸収面側に被覆されていることが好ましい。
また本発明では、前記プラズモン共振構造体の表面温度は、0〜80℃の範囲内で調整されることが好ましい。
また本発明では、前記赤外線の放射・吸収面側に配置される所定の平面形状を有する導電体層が、金属微粒子含有インクを用いた印刷により形成されることが好ましい。
また本発明における冷暖房システムは、上記に記載の冷暖房用パネルを、冷暖房空間に備えたことを特徴とする。
また本発明では、前記冷暖房用パネルが、冷暖房対象物から0.5m以上離れた位置に配置された構成に出来る。
本発明の冷暖房用パネル、及びそれを用いた冷暖房システムによれば、室温付近の温度の大気中において、放射伝熱による熱移動を、従来に比べて長距離化・大面積化にて効率的かつ経済的に行うことができる。
本実施の形態における冷暖房用パネルの斜視図である。 本実施の形態における冷暖房用パネルの表面を示す部分拡大平面図である。 本実施の形態における冷暖房用パネルの部分拡大縦断面図である。 図4Aは、冷暖房用パネルのプラズモン共振構造体を更に拡大して示した部分拡大縦断面図であり、図4Bは、冷暖房用パネルの表面部分の部分拡大平面図である。 本実施の形態における冷暖房システムを示す概念図である。 本実施の形態におけるプラズモン共振構造体の製造工程を示す部分拡大縦断面図である。 本実施例のプラズモン共振構造体における波長と吸収率(放射率)との関係を示すグラフである。 表面温度0〜80℃の黒体における波長と放射エネルギーとの関係を示すグラフである。 黒色体と、本実施の形態のプラズモン共振構造体における、距離と放射温度との関係を示すグラフである。 ポリエチレンシートの波長と透過率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本実施の形態に係る冷暖房用パネル1は、図1に示すように、広い面積を備えた薄いシート状であり、厚みHは、数mm〜数cm程度であり、縦寸法L及び横寸法Wは、数十cm〜数m程度である。冷暖房用パネル1の面積としては、0.25m〜数m程度である。このように本実施の形態の冷暖房用パネル1を、大面積にて作製可能であり、冷暖房用パネル1を設置する冷暖房空間の大きさや制約等により適宜大きさを調整して形成出来る。
図2に示すように冷暖房用パネル1の表面1aには、多数の導電体不連続層9が間隔を空けて形成されている。各導電体不連続層9の幅寸法(図2では導電体不連続層9の直径)や、各導電体不連続層9間の間隔は、赤外線の波長選択性の観点に基づいて所定範囲内にて調整される。導電体不連続層9は、後述するプラズモン共振構造体の上層側(表面側)の導電体層に該当する。
図3に示すように、冷暖房用パネル1は、温度調節プレート2と、プラズモン共振構造体3と、カバー層4とが積層された構造である。
本実施の形態のプラズモン共振構造体3により、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を備えた、冷暖房用パネル1とすることが出来る。
[プラズモン共振構造体3の構成]
本実施の形態に用いるプラズモン共振構造体3は、図4Aに示すように、2層の導電体層(導電体連続層7と導電体不連続層9)の間に誘電体層8が挟まれた積層構造を有して構成される。
図4Aに示すように、導電体連続層7の裏面側には基材5が設けられている。すなわちプラズモン共振構造体3は、基材5上に積層された構造である。導電体不連続層9は、図4A及び図4Bに示すように、誘電体層8上に形成されている。
基材5は、薄膜状のプラズモン共振構造層を支えるための支持体である。基材5は、板状、フィルム状の素材であり、使用する方法や環境に応じて樹脂素材、ガラス、セラミックス等の無機素材から選択することができ、熱的な応答性を高めるために厚みを薄くすることが好ましい。基材5はフィルム状であることが薄型化や製造コスト、生産性の観点より好ましい。「フィルム状」とは、可撓性を有する薄い平板部材である。
図4Aに示すように、基材側から金属材料等にて形成される導電体連続層7、絶縁性の誘電体層8、及び、金属材料等にて形成される導電体不連続層9が積層されて構成される。導電体不連続層9は、図4A、図4Bに示すように、誘電体層8の表面に間隔を空けて形成された凸部を構成する。したがって導電体不連続層9が形成されていない領域では、誘電体層8の表面が露出している。
導電体不連続層9は、プラズモン共振を特定波長の光に対して起こすために、特定の平面形状をしており、平面形状としては図4Bに示す丸形状や、四角形状等の単純形状のほか、十字形状や中抜き形状等、種々の形状を選択することが出来る。導電体不連続層9の平面形状は、要求される共振波長やその半値幅に応じて適宜選択出来る。中でも、図4Bに示す丸形状は、高い放射・吸収率を得やすく、半値幅を狭めやすい等の性能上の利点や、形状作成が比較的容易であることから、望ましい平面形状の一つである。本実施の形態の冷暖房用パネル1にて適用される、波長8〜14μmの特定波長の赤外線に対しては、導電体不連続層9の平面形状が丸形状の場合、導電体不連続層9の直径Dは、1.5〜4μm程度である。また、導電体不連続層9の厚みh(図4A参照)は、8〜14μmの赤外線がほぼ透過しない0.02〜0.1μm程度であれば足りる。ただし、長期使用時の酸化等を考慮して、厚みhを、上記寸法の10倍程度までの範囲で厚くすることも出来る。また、各導電体不連続層9間の間隔Pは、丸形状の場合、1.0〜4μm程度であり、間隔Pは狭いほうが、高い放射・吸収率を得やすい傾向がある。ここで「間隔P」は、各導電体不連続層9間の最も狭い距離として規定される。図4Bでは、間隔Pは、どの導電体不連続層9間でも一定値となっているが、製造誤差等を考慮して、間隔Pは、所定数の間隔(例えば10間隔)の平均値として示すことが出来る。
また、導電体不連続層9の配置は特に制限はないが、単位面積当たりに出来るだけ多くの凸形状を配置出来る規則的な六方格子構造や四方格子構造とした方が効率的である。ただし、規則構造によって生じる虹色を防止し、又は、プラズモン共振構造体が放射・吸収する赤外線の半値幅を制御するために、導電体不連続層9の大きさなどの平面形状を不均一にしたり、或いは導電体不連続層9間の間隔Pを不均一とすることも出来る。
絶縁性の誘電体層8は、導電体不連続層9と導電体連続層7を絶縁するためのスペ−サである。誘電体層8の厚みは、波長8〜14μmの特定波長の赤外線に対しては、0.1〜0.5μm程度である。図4Aでは、誘電体層8は、導電体連続層7上を被覆する連続層であるが、導電体不連続層9と同じ形状とした不連続層とすることも出来る。誘電体層8の構造は、プラズモン共振構造体3の性能や、プラズモン共振構造体3を形成する際の製造方法、製造コスト等から適宜選択することが出来る。誘電体層8を、導電体不連続層9と同じ形状とした不連続層として形成することで、導電体連続層7上に複数の、誘電体層8と導電体不連続層9との積層構造から成る凸部が形成され、凸部間に、導電体連続層7の表面が現れる。
導電体連続層7は、基材5と誘電体層8に挟まれた金属材料等の導電体からなる層である。導電体連続層7の厚みは、8〜14μmの赤外線がほぼ透過しない0.02〜0.1μm程度であれば足りる。ただし、長期使用時の酸化等を考慮して、導電体連続層7の厚みを上記寸法よりも適宜厚くすることが可能である。また、完全に連続層である必要はなく、導電体不連続層9の周期に合わせて適当な間隔で不連続層とすることも出来る。このときは、基材5上に、導電体不連続層間に誘電体層8が挟まれた積層構造から成る複数の凸部が形成され、凸部間に、基材5の表面が現れる。
なお、上記した各寸法は、導電体不連続層9、誘電体層8及び導電体連続層7として用いる素材によって多少範囲が前後するものの、後述する素材にて形成された各層であれば上記寸法内にて調整することで、適切且つ容易に、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を有した冷暖房用パネル1とすることが出来る。
また、導電体連続層7、誘電体層8、導電体不連続層9等の各層間には、接着性を高めるために、厚みが1〜10nm程度の接着層を設けてもよい。なお、5nm以下の厚みとすれば光学的には問題とならない場合が多いため、厚みは5nm以下とすることが好ましい。接着層の素材は、各層の素材に応じて選択されるが、無機物であればクロム(Cr)やチタン(Ti)等の金属材料やその酸化物等である。
本実施の形態におけるプラズモン共振構造体3は、その薄膜構造から、表面の平坦性が高いことが特徴である。したがって、プラズモン共振構造体3の表面には、大気中の埃等の異物が付着しにくく、また、プラズモン共振構造体3の表面に物が接触しても構造が破壊されにくい等の利点を持つ。このように異物の付着や構造破壊を抑制するために、プラズモン共振構造体3の表面の凹凸高さ、或いは凹凸深さ(図4Aでは、導電体不連続層9の厚みhに該当する)は、0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。
なお、プラズモン共振構造体3の表面の凹凸構造を構成する層は、少なくとも誘電体層8上に形成された、図4に示すような複数の凸部からなる導電体不連続層9であってもよいし、或いは、導電体不連続層9とは逆のパターン、すなわち導電体層に複数の穴(凹部)が形成された構造であってもよい。
なお、後述するように、プラズモン共振構造体3の表面を誘電体でコーティングする場合は、実質的にプラズモン共振構造体3の表面の凹凸を無くして平坦化面にすることも出来る。
プラズモン共振構造体3の放射率については、波長8〜14μm、特に波長10〜12μmの特定波長の赤外線に対して、最大放射率或いは最大吸収率が0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上である。これにより、大気中で効率的に放射伝熱による熱移動を起こすことが出来る。それ以外の波長域については、放射率或いは吸収率は、出来るだけ低い値であることが好ましい。ここで、図8に示すように、表面温度0〜80℃の黒体が放射する赤外線のピーク波長は8〜11μmであり、5〜8μmの波長域では波長が短くなると急激に放射エネルギーが減少し、14〜20μmの波長域では波長が長くなると徐々に放射エネルギーが減少する傾向がある。このことから、本実施の形態においては、5〜8μmの波長域の平均放射率或いは平均吸収率が0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.4以下であり、14〜20μmの波長域の平均放射率或いは平均吸収率が0.3以下、好ましくは0.2以下であることが好ましい。
[プラズモン共振構造体3の素材]
導電体連続層7、及び導電体不連続層9として用いられる導電性素材は、使用温度、酸素雰囲気等の環境によって要求される耐酸化性、耐腐食性や価格、生産性、外観、及び誘電体層8との接着性等から適宜選択出来る。導電体連続層7と導電体不連続層9には同じ素材を用いてもよいし異なる素材を用いてもよい。導電性素材としては、一般には導電性が高く、酸化や腐食に対する耐性の高い金属が好適である。例えば、本実施の形態の冷暖房用パネル1を高温の大気中で使用する場合、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属類を、導電性素材として用いることが好ましく、室温付近の大気中であれば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)等を用いることが好ましい。特に、導電性素材としては、Al、Au、Niから選択される少なくとも1種にて形成されることが好ましい。
誘電体層8として用いられる誘電素材は、使用温度、酸素雰囲気、水分等の環境、導電体連続層7、及び導電体不連続層9との接着性から適宜選択出来る。本実施の形態の冷暖房用パネル1を高温の大気中で使用する場合、誘電素材は、無機誘電体が好ましく、例えば、珪素(Si)の単体、若しくは、その酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体、又はその複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混ざった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)等の金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体、又はそれらの複合物を用いることが出来る。これらの中でも珪素の単体、イットリウムの酸化物(Y)、及びセリウムの酸化物(CeO)は、波長8〜14μm、特に10〜12μmにおいて透明性が高く、誘電率が安定しているため好ましい。また本実施の形態の冷暖房用パネル1を比較的低温の大気中で用いる場合、誘電素材として樹脂を用いることができ、特に、薄膜コーティングが可能である樹脂から適宜選択することが好適である。例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の高耐久性樹脂が好ましい。
また、導電性素材、特に導電体不連続層9の酸化や腐食を防止し、またプラズモン共振構造体3の表面を機械的に保護するために、プラズモン共振構造体3の表面(基材面側とは反対側の面)を、緻密な誘電体でコーティングすることも出来る。このように、誘電体のコーティング層を設けることで、プラズモン共振構造体3の表面の凹凸高さを小さくでき、或いは凹凸を無くすことも可能になる。例えば、誘電体のコーティング層としては、ダイヤモンドライクカーボンを用いることができる。コーティング層は、金属の酸化防止に用いられる。
[温度調節プレート]
温度調節プレート2は、プラズモン共振構造体3の裏面側に配置され、放射する赤外線のもとになる熱エネルギーをプラズモン共振構造体3に与え、若しくはプラズモン共振構造体3が吸収した赤外線による熱エネルギーを取り除く機能を有する。
プラズモン共振構造体3に熱エネルギーを与えるには電気ヒータ等を用い、またプラズモン共振構造体3から熱エネルギーを取り除くには冷却素子等を用いることが出来るが、水や空気などの熱媒により加熱、冷却出来る金属などの板とすることも出来る。
温度調節プレート2とプラズモン共振構造体3は、高熱伝導性層を介して接続されることが好ましく、例えば、高熱伝導性層は、金属やダイヤモンド、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス、これらの粒子を含む樹脂素材等が挙げられる。
温度調節プレート2は、出来るだけ熱容量が小さい方が、応答性を早くでき好ましいが、外乱による温度変動を考慮した場合、適宜、熱容量を大きくすることも可能である。
温度調節プレート2の裏面側は、外部と熱的に遮断するために断熱材で覆うことが好ましい。断熱材としては、熱伝導性の低いガラス等の無機素材からなる一般的な断熱材も使用出来るが、高度な断熱性を有する真空断熱プレートや発泡フェノール樹脂プレート等を使用することが特に好ましい。
[カバー層]
プラズモン共振構造を保護し、プラズモン共振構造体3から大気への対流伝熱による熱損失を低減するために、プラズモン共振構造体3の表面側に、カバー層4を設けることも出来る。
カバー層4は、波長8〜14μmの赤外線に対する透過率が高い素材であることが必要であり、具体的には樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等を用いることが出来る。また、カバー層4の最外層を薄いPTFEとした積層構造として、カバー層4の耐候性を高めることも出来る。カバー層4には、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボン、シリコン(Si)等の無機素材も使用でき、樹脂と組み合わせることもでき、また樹脂にカーボン粉末等を加えることで、白色、灰色、黒色まで色調を変えることも出来る。
カバー層4は、板材としてプラズモン共振構造体3の表面に直接、貼り合せることも出来るが、対流伝熱による熱損失を低減し、カバー層4の表面への結露を防止するために、プラズモン共振構造体3とカバー層4との間に断熱層を設けることが好ましい。断熱層はカバー層4とプラズモン共振構造体3との間に、0.1〜10mm程度の複数のスペーサを介在させ、各スペーサ間に、乾燥空気等赤外線を透過し熱を伝えにくい物質を封入することで構成される。カバー層4は、厚みが増すとカバー層自身の赤外線の吸収が無視できなくなることから、できるだけ薄いことが好ましく、断熱機能をあわせ持つためには、発泡体とすることもできる。発泡体は少ない素材で、高い剛性や断熱機能を得ることができ、ポリエチレン、ポリプロピレンでは数十倍までの発泡倍率が得られる。
カバー層4の赤外線に対する透過率を高めるためには、表面に反射防止構造を設けることが好ましい。反射防止構造としては、屈折率の異なる薄膜からなる積層構造や、ピッチ3〜10μm程度の突起から構成されるモスアイ構造が挙げられる。モスアイ構造は、反射率の入射角依存性が小さく、表面素材の撥水性と合わせると、超撥水性を付与出来るといった利点がある。
更に、放射・吸収する赤外線に指向性を付与するためにカバー層4の表面にレンズアレイやプリズム等の光学構造を構成することも出来る。樹脂素材に対しては、これらの形状を転写するための金型を用い、熱転写することで、容易に光学構造を形成することが出来る。光学構造は、カバー層4の表面或いは裏面のどちらの面に形成してもよいが、光学構造を保護し、レンズアレイのピッチが小さく焦点距離が短い場合にプラズモン共振構造体3を焦点付近に配置するためには、プラズモン共振構造体3側(カバー層4の裏面側)に光学構造を配置することが好ましい。
また、カバー層4は板状構造だけでなく、例えば、球状のビーズ等の粒子からなる多孔質構造であってもよく、上記の樹脂ビーズを焼結すること等により多孔質構造を作製することが出来る。屈折率2.0の球の場合、焦点が球の表面に存在することから、ビーズをプラズモン共振構造体3の表面に一層並べるだけで、プラズモン共振構造体3を焦点付近に配置することが出来る。シリコンは屈折率が高いことから、樹脂に粉末として混合することで屈折率を容易に上げることが出来る。
[プラズモン共振構造体3の波長選択性]
本実施の形態におけるプラズモン共振構造体3は、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を有するが、波長選択性は、プラズモン共振構造体3の共振波長に基づく。
下記の参考文献には、プラズモン共振構造に光が入射されると、上下2枚の導電体表面において反平行電流が励起され、誘電体スペーサ内において強い光の封じ込めが起きるものとして、導電体層をインダクタとレジスタ、誘電体層8の誘電体をキャパシタに見立てた電気回路として扱うことで、比較的容易に共振波長を推定出来るとされている。
この手法により導電体層の、共振波長を推定することが可能であり、例えば、FDTD法(有限差分時間領域法)を用いてシミュレーションすることで、所望の波長選択性を有するプラズモン共振構造を適切かつ容易に設計することが出来る。
[参考文献]
Sakurai A, Zhao B, Zhang ZM.
"Prediction of the resonance condition of metamaterial emitters and absorbers
using LC circuit model", Proceedings of the 15th International Heat
Transfer Conference 2014; IHTC15-9012:1-10
[距離と放射温度との関係]
本実施の形態の冷暖房用パネル1によれば、冷暖房用パネル1の赤外線の放射・吸収面(プラズモン共振構造体3の表面)から垂直方向に4m以下の距離において、放射温度計で測定した表面温度の温度変化率が、0.5℃/m以下である。
図9は、黒色体と、本実施の形態のプラズモン共振構造体とを、60℃のホットプレート上に配置し、各測定対象物の表面から垂直方向に離れた各距離での放射温度を測定した結果である。
図9に示すように、ホットプレート近傍から距離が離れると両者の放射温度は、徐々に低下するが、黒色体のほうが、本実施の形態のプラズモン共振構造体よりも放射温度の下がり方が大きくなっている。
図9に示すように、本実施の形態のプラズモン共振構造体3は、プラズモン共振構造体3の表面から垂直方向に4m程度離れても、放射温度計で測定した表面温度の温度変化率が、0.5℃/m以下であった。このように、本実施の形態のプラズモン共振構造体3であれば、従来に比べて、距離に対する温度変化率を小さくできる。これは、本実施の形態のプラズモン共振構造体3では、従来に比べて、指向性が高く、所定方向に対して温度変化を小さくできることが一つの要因であると考えられる。
図5は、本実施の形態における冷暖房システムを示す概念図である。図5に示すように本実施の形態の冷暖房用パネル1は、冷暖房空間10の天井面11に設置されている。図5に示すように、冷暖房対象者12と、冷暖房用パネル1とは数m程度離れているが、本実施の形態によれば、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を備え、冷暖房用パネル1の表面温度の距離に対する温度変化率は、0.5℃/m以下である。よって、冷暖房対象者12は、冷暖房空間10のどの場所(横方向の位置や高さ位置)においても、無風状態で暖かさや涼しさを略均一に感じることができる。本実施の形態では、冷暖房用パネル1を大面積化でき、広い冷暖房空間10に対して、冷暖房効率に優れ省エネルギー化にも貢献できる。
また、冷暖房用パネル1を冷暖房空間10の天井面11でなく、壁面13や床面14に設置してもよい。また、冷暖房用パネル1が、冷暖房対象物(人や物)から0.5m以上離れた位置に配置される冷暖房システムに好ましく適用される。
[プラズモン共振構造体3の製造工程]
プラズモン共振構造体3は構造が簡単であることから、大面積に対しても比較的容易に、作製が可能で、基材5を樹脂や金属のフィルムとした場合、各工程を連続工程にでき生産効率を向上させることも可能である。
以下は、フィルム状の基材5と、導電体として金属を用いた場合の、連続工程による作製方法について説明する。
まず、図6Aに示すように、導電体連続層7を、フィルム状の基材5の表面に形成する。形成方法としては、金属を真空蒸着やスパッタリングで付与する真空成膜法、無電解メッキにより付与するメッキ法、金属微粒子インクを塗布後に熱処理をする塗布法が一般的である。真空成膜法では使用出来る金属の制限は少ないが、メッキ法と塗布法では、使用出来る金属がニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)程度に限定されるといった制限がある。
室温付近で使用し波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射し或いは吸収するプラズモン共振構造に用いる金属としては、価格、大気中での安定性、成膜の容易さから、アルミニウム(Al)、金(Au)、ニッケル(Ni)が好ましく、成膜厚みが0.1μm程度と薄いことから、真空成膜法では高速で成膜することが可能である。
次に、図6Aに示すように、誘電体層8を導電体連続層7の上に被覆する。このとき、誘電体層8として無機誘電体を使用する場合、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の真空成膜法にて、誘電体層8を形成することが好ましい。これにより、誘電体層8として使用可能な素材の選択肢を広げることができ、また生産性も高めることが出来る。なお、無機誘電体の真空成膜は、一般に成膜速度が遅いことから、プラズモン共振構造の設計にあたっては、低コストで且つ大きな成膜速度が得られる無機誘電体を選定することが好ましい。また樹脂等の有機誘電体を用いた場合、誘電体層8の成膜厚みは0.2μm程度と薄くなり、膜厚制御が重要となる。このため、有機誘電体を用いて誘電体層8を形成する場合、樹脂を溶剤に溶かし薄膜コーターを用いて塗布することが実用的といえる。薄膜コーターとしては、1〜2μm程度の溶剤を含む薄膜が塗布出来るものであればよく、グラビアコーター、キャピラリーコーター等が用いられる。樹脂薄膜を塗布後、必要に応じ加熱乾燥や紫外線等の電磁波により樹脂を硬化させる。
誘電体層8の上に形成する導電体不連続層9の製法は、大きく2種類に分類できる。すなわち、予め誘電体層8の上に導電体不連続層9に用いる金属を導電体層20(連続層)として成膜し、後にマスクを使って部分的に金属を取り除き特定の平面形状を得る除去法と、誘電体層8の上に特定の平面形状を持つ導電体不連続層9を直接付与する直接付与法と、がある。
図6Aに示すように、除去法としては、例えば、導電体連続層7と同様な方法で、誘電体層8の上に導電体層20を連続層として成膜する。続いて、図6Bに示すように、導電体層20の上にフォトレジストを塗布若しくは貼り付け、フォトマスク等を用いて特定の平面形状部分にレジスト層21が残るように露光、現像する。続いて図6Cに示すように、レジスト層21にて保護されていない、露出する導電体層20を酸等による湿式エッチングやドライエッチングによりエッチングして除去する。そして図6Dに示すように、レジスト層21を除去することで、導電体不連続層9を誘電体層8上に形成することが出来る。ここで、レジスト層21はエッチング時のマスクとしてのみ用いられることから、導電体層20との接着性を微粘着程度のエッチングに耐えられる範囲として、出来るだけ低い接着性とすると、粘着ロールでレジスト層21を除去することが可能となり、生産工程を簡略化することが可能になる。
また、直接付与法には2種の方法が考えられる。第一の方法は、誘電体層8の上にフォトレジストを塗布若しくは貼り付け、フォトマスク等を用いて特定の平面形状以外の部分にレジスト層が残るように露光、現像する。その後、レジスト層の上、全面に導電体不連続層9として用いる金属材料を成膜し、レジスト層を溶剤で除去するとともにレジスト層上の金属を取り除く(リフトオフする)方法である。第二の方法は、直接、誘電体層8の上に金属ナノ粒子を含むインクを用いて特定の平面形状を印刷し加熱処理により金属ナノ粒子を結合し導電体不連続層9を形成する方法である。或いは、転写紙を用いた焼き物の絵付けと同様に、予め別工程で作成した導電体不連続層9をフィルムの上に乗せた転写用フィルムから誘電体層8の上に導電体不連続層9を転写する方法である。インクを用いた印刷には、インクジェット法やフレキソ印刷法が適している。
このように、基材5をフィルム状とすることで、種々の作製方法を適用することが出来るが、使用する素材によって、生産性や製造コストから適宜、作製方法を選択する。
[プラズモン共振構造の表面温度]
本実施の形態における、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射し或いは吸収するプラズモン共振構造においては、赤外線が大気に吸収されにくいことから、室温付近の放射伝熱を、従来よりも長距離化・大面積化にて効率的に行うことができる。これにより、放射冷暖房に利用する冷暖房用パネル1のプラズモン共振構造体3の表面温度は、0〜80℃の範囲であれば十分である。更に、表面温度が10〜60℃であれば、より経済的に運転出来る。放射冷暖房に使用する冷暖房用パネル1が設置される冷暖房空間の大きさや空間内での風の有無にもよるが、例えば、プラズモン共振構造体3の表面温度を、冷房時で目標室温より5〜15℃程度低い温度とする。また、プラズモン共振構造体3の表面温度を、暖房時で5〜30℃程度高い温度する。これにより、冷暖房効率を効果的に向上させることができる。また、例えば、住宅における放射冷暖房においては、冷房に年間17℃程度で安定した低温が得られる地下水を利用し、暖房には太陽光を利用して暖めた温水を用いることで、省エネルギー化を図ることも出来る。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
[プラズモン共振構造体の作製]
基材フィルムとして厚み100μmで200mm角の光学グレードPETフィルムを用い、PETフィルムを20℃に保った金属製温度調節ブロックに貼り付けた。まず、PETフィルム表面に接着層として、Arガス圧力0.67Pa、スパッタリングパワー4W/cm、積層速度0.25nm/sにて積層厚みが5nmとなるように二酸化珪素(SiO)を成膜した。続いて、SiO被膜の上に、真空蒸着法にてアルミニウム(Al)を真空度2.5×10−3Pa、蒸着速度4nm/sで積層厚みが100nmとなるように成膜した。更に、同様の条件でAl被膜の上に、CeOをスパッタリング法にて積層厚みが270nmとなるように成膜し、その上にAlを真空蒸着法にて積層厚みが60nmとなるように成膜した。次に、PETフィルムを、温度調節ブロックから剥がした後、Al被膜の上に東京応化工業製ポジ型フォトレジストTHMR−iP3100MMを、スピンコートし、乾燥後、約1.0μm厚みのフォトレジスト層を得た。続いて、直径2.7μmの丸型をピッチ4.0μmで正方格子状に配置した石英ガラス製クロムマスクを、すきまに水を入れてフォトレジスト層に乗せた。そして、中心波長365nmの紫外線ランプを用いた平行光露光機にて紫外線を30mJ/cmにて照射し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)2.38wt%の現像液で現像した。次に、リン酸55wt%、硝酸10wt%、酢酸15wt%の混合水溶液をAlエッチング液として2分間浸漬し、フォトレジスト層で保護されていない露出部分のAl被膜を溶解した。最後に、アセトンでフォトレジスト層を溶解除去し乾燥した。
作製したプラズモン共振構造体の表面をSEMにて観察したところ、フォトマスクの直径に近い直径2.5μmの丸型のAl被膜(導電体不連続層)が観察された。
[プラズモン共振構造体の光学評価]
上記にて作製したプラズモン共振構造体の赤外線吸収率を、赤外線分光光度計にて測定した。測定はサンプルに対して入射角10度で測定光を入射し、反射光を金で内部コーティングした積分球を用いてとらえ、平滑な金表面を基準として、波長5〜20μmの光線吸収率を求めた。得られたスペクトルを図7に示す。
図7に示すように、波長9.8μmにおいて最大吸収率0.96の単一ピークが得られた。また、5〜8μmの波長域においては最大でも0.12、平均すると0.10以下の吸収率であり、14〜20μmの波長域においては最大でも0.1、平均すると0.05以下の吸収率であった。
また、上記にて作製したプラズモン共振構造体の赤外線透過率を、赤外線分光光度計にて測定したところ、透過光は検出されず、上記の吸収率は放射率とみなせることがわかった。
[放射温度計による測定]
幅1m、高さ0.5m、厚み2mmのアルミニウム平板の裏側に銅パイプを高熱伝導性の接着剤を用いて貼り付け、その裏側に10mm厚みのフェノール樹脂フォーム製断熱材を張り付けた温度調節プレートを2枚作成し、銅パイプを10〜90℃の水を供給出来る水循環温度調節器に接続した。一方の温度調節プレートAには、本実施例の積層体フィルムを、光学用両面粘着フィルムを用いて貼り付け、プラズモン共振構造による赤外線放射・吸収体(プラズモン共振構造体)とした。また他方の温度調節プレートBには、放射率0.94の黒色塗料を塗膜厚み30μmで塗り黒色体とした。両方の温度調節プレートを表面に貼り付けたフィルム状熱電対にて、表面温度が60℃になるように昇温し、波長8〜14μmの赤外線を使用した放射温度計(チノー製IR−TA)を用いて、温度調節プレートの中心から鉛直方向に0.1m、0.5m、1.0m、2.0m、4.0m離れた各地点で、観測される最も高い温度を測定した。なお、放射温度計の設定放射率は、黒色塗料を塗った温度調節プレートBの表面温度が、プレートの中心から鉛直方向に0.1mの距離で60℃と表示されるように設定した。放射温度計による表面温度の測定は、温度調節プレートを垂直に立て、室温23℃、湿度40%RHで空気が温度調節プレートに平行で横方向に0.3m/秒で流れる室内で行った。同様に、両方の温度調節プレートを表面に貼り付けたフィルム状熱電対で計測した表面温度が20℃になるように冷却し、それぞれの表面温度を放射温度計により測定した。
[人の感覚による比較]
放射温度計による表面温度の測定と同様に、温度調節プレートを表面に貼り付けたフィルム状熱電対で計測した表面温度が60℃若しくは20℃になるように温度調節し、0.1m、0.5m、1.0m、2.0m離れた各地点で、プラズモン共振構造体及び黒色体に対し、手をかざした。そしてプラズモン共振構造体(本実施例)及び黒色体(比較例)のどちらが暖かく、冷たく感じるかについて評価した。感覚評価は、評価者を3人として、互いに結果を知らせることなく、個別に実施した。
測定結果及び、比較結果を以下の表1に示す。表1に示すように、放射温度計による表面温度の測定では、接触表面温度が60℃の場合、黒色体の方がプラズモン共振構造体よりも、距離によらず7〜10℃高い値を示すことがわかった。これにより、黒色体のほうが、プラズモン共振構造体より多くの赤外線エネルギーを放射していることがわかった。また、接触表面温度が20℃の場合、黒色体の方がプラズモン共振構造体よりも、距離によらず4〜5℃低い値を示すことがわかった。これにより、黒色体のほうが、プラズモン共振構造体より多くの赤外線エネルギーを高温物から吸収出来ることがわかった。
一方、人の感覚による比較評価では、3人の評価者とも同じ結果を示し、距離が0.1mと近い場合には、黒色体の方がプラズモン共振構造体(表1では、P構造体を記載する)よりも暖かく、若しくは冷たく感じた。しかしながら、距離が0.5m以上離れると、感じ方の結果が逆転し、プラズモン共振構造体の方が黒色体よりも暖かく、若しくは冷たく感じることがわかった。
Figure 2017096516
使用した放射温度計は、被測定物からの波長8〜14μmの赤外線を、熱電対上に集めて表面温度を測定している。黒色体が黒体放射をしていると仮定すると、ステファンボルツマンの法則から60℃の場合、698W/mを放射しており、同様に51℃のプラズモン共振構造体も黒体放射をしていると仮定すれば、626W/mとなり、放射エネルギーは60℃に比較して10%近く少ないといえる。この放射エネルギーが少ないことは、プラズモン共振構造体の放射率が1を超えることがないことからも、正しいといえる。
このように、放射エネルギーが少ないのにもかかわらず、0.5m以上の距離において、60℃のプラズモン共振構造体が同温度の黒色体よりも暖かく感じられる現象は、プラズモン共振構造体では、大気吸収の少ない波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射していることに起因していると考えられる。これにより、プラズモン共振構造体のほうが黒色体よりも放射温度計で測定される値の距離依存性が少なく、黒色体では約0.7℃/mで温度が変わるのに対し、プラズモン共振構造体では約0.5℃/m以下であることがわかった。
[カバー層の影響]
赤外線透過性のポリエチレンシートとして、旭化成ケミカルズ製サンファインUTS−Kの0.5mm厚みシートを60℃のプラズモン共振構造体に乗せ、放射温度計で0.5mの距離から温度を測定したところ、54.0℃であった。ポリエチレンシートなしの場合に比べ、約3℃表面温度が高く観測された理由は、図10に示すように、ポリエチレンシートが波長10μmの赤外線に対し約30%の吸収を示し、波長14μm付近で、ほぼ100%の吸収を示すことから、ポリエチレンシート自体が赤外線の放射体となり、約60℃のポリエチレンシートから放射された赤外線が加算されることによると考えられる。一方、比重0.04で0.5mm厚みのポリエチレン発泡シートについて同様に表面温度を測定した。その結果、測定される温度は発泡シートなしの場合と差が見られず、カバー層を形成するポリエチレン量が実質的に少ない場合は、プラズモン共振構造体の性能を低下させることなく、プラズモン共振構造体を周囲から断熱、保護することができるといえる。
本発明によるプラズモン共振構造体を利用することで、より少ないエネルギーで、従来に比べて、大気中における長距離の冷暖房が可能になる。特に大気の影響を受けにくいことから、室内のみならず、風のある屋外空間での冷暖房や熱移動にも適しており、排熱を宇宙空間に効率よく放出するスカイラジエータとしても利用出来る。
1 冷暖房用パネル
2 温度調節プレート
3 プラズモン共振構造体
4 カバー層
5 基材
7 導電体連続層
8 誘電体層
9 導電体不連続層
10 冷暖房空間
11 天井面
12 冷暖房対象者
20 導電体層
21 レジスト層


Claims (12)

  1. 基材の上に配置された複数の導電体層と、これらに挟まれた誘電体層とを有して構成されるプラズモン共振構造体を備え、前記プラズモン共振構造体は、波長8〜14μmの赤外線を選択的に放射或いは吸収する波長選択性を有することを特徴とする冷暖房用パネル。
  2. 波長8〜14μmの赤外線に対する最大放射率或いは最大吸収率が0.7以上であり、波長5〜8μmの波長域の平均放射率或いは平均吸収率が0.5以下であり、波長14〜20μmの波長域の平均放射率或いは平均吸収率が0.3以下であること特徴とする請求項1に記載の冷暖房用パネル。
  3. 前記赤外線の放射・吸収面から垂直方向に4m以下の距離において、放射温度計で測定した表面温度の温度変化率が、0.5℃/m以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷暖房用パネル。
  4. 前記プラズモン共振構造体は、表面に凹凸構造を備え、前記凹凸構造の凸部高さ或いは凹部深さが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷暖房用パネル。
  5. 前記凸部の平面形状は円形状であり、前記円形状の直径は、1.5〜4μmであり、各凸部間の間隔は、1〜4μmであり、各導電体層の膜厚は、0.02〜1μmであり、前記誘電体層の膜厚は、0.1〜0.5μmであることを特徴とする請求項4に記載の冷暖房用パネル。
  6. 前記誘電体層が、CeO、Yから選択される少なくとも1種にて形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷暖房用パネル。
  7. 前記導電体層は、Al、Au、Niから選択される少なくとも1種にて形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の冷暖房用パネル。
  8. 前記プラズモン共振構造体は、前記赤外線の放射・吸収面から大気への対流伝熱による熱損失を低減するためのカバー層が、前記放射・吸収面側に被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の冷暖房用パネル。
  9. 前記プラズモン共振構造体の表面温度は、0〜80℃の範囲内で調整されることを特徴とする請求項8に記載の冷暖房用パネル。
  10. 前記赤外線の放射・吸収面側に配置される所定の平面形状を有する導電体層が、金属微粒子含有インクを用いた印刷により形成されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の冷暖房用パネル。
  11. 請求項1から請求項10のいずれかに記載の冷暖房用パネルを、冷暖房空間に備えたことを特徴とする冷暖房システム。
  12. 前記冷暖房用パネルが、冷暖房対象物から0.5m以上離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の冷暖房システム。
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