JP2017092198A - スピン伝導素子及び磁気センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】バックグラウンドの電圧を抑制し、高いS/Nを得ることができるスピン伝導素子及び磁気センサを提供する。
【解決手段】スピン伝導素子1は、チャンネル層7にそれぞれ離間して設けられる、第一参照電極20Aと、第一強磁性層12Aと、第二強磁性層12Bと、第二参照電極20Bとを有する。チャンネル層7は、第一領域A1と、第二領域A2とを有し、第一領域A1と第二領域A2は離間しており、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bが電流が印可される部分であり、第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aが電圧が検出される部分である。第一領域A1を加熱する発熱素子11Aおよび第二領域A2を冷却する冷却素子の少なくとも一方を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、スピン伝導素子及び磁気センサに関するものである。
従来、外部磁場を検出する種々の素子が知られている。例えばHDDなどに用いられる磁気ヘッドや磁気センサには、微小領域からの磁場の検出や高出力特性が望まれている。従来のTMR素子はスピンバルブ型構造を有し、比較的大きな出力特性を有する。微小領域から磁場を検出するには素子を微細化するという方法が取られるが、素子を微細化することによって素子抵抗が増大してしまう。例えば1Tbit/inch以上の記録密度領域では特性向上に限界が見え始め、別の構造や方式が必要とされている。
電荷を伴わないスピンだけの流れであるスピン流を利用したスピン伝導素子は、電流の流れを伴わないためノイズが小さく、高感度の磁気センサ用の素子として期待されている。特に、特許文献1及び2に記載のスピン蓄積型磁気ヘッドはスピン流を利用したスピン伝導素子を用いており、スピン伝導素子は、強磁性電極を積層面内に設置できるため、従来の磁気抵抗効果素子よりも薄い素子に形成できる。これらにより、スピン伝導素子は高感度で高記録密度を期待できる磁気ヘッドにおける読み込み部として期待されている。
特開2004−342241号公報 特開2008−181592号公報
スピン流を利用したスピン伝導素子を用いたデバイスの場合、最適条件の場合においてバックグラウンドの電圧をゼロにすることが可能であるため、原理的に高い信号比を得ることが可能である。しかしながら、実際にはバックグラウンドの電圧がゼロにならないという課題があった。
スピン流に伴う出力信号は弱いため、必要に応じて出力信号を増幅する必要がある。出力信号を増幅する際にはバックグラウンドの電圧も増幅されてしまうため、スピン流に伴う出力信号をデバイスにおいて使用する際にシグナルとノイズの比(S/N)を大きくするには、バックグラウンドの電圧を抑制することが重要である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、バックグラウンドの電圧を抑制し、高いS/Nを得ることができるスピン伝導素子及び磁気センサを提供することを目的とする。
発明者の鋭意検証の結果、バックグラウンドの電圧はスピン流を用いたスピン伝導素子内の温度勾配によって生じることが明らかになった。
上記の課題を解決するため、本発明にかかるスピン伝導素子は、チャンネル層と、第一参照電極と、第一強磁性層と、第二強磁性層と、第二参照電極とを有し、前記第一参照電極と、前記第一強磁性層と、前記第二強磁性層と、前記第二参照電極とは、前記チャンネル層上に前記チャンネル層を介して互いに離間して設けられ、前記チャンネル層は、前記第一参照電極と積層方向から見て重なる領域と前記第一強磁性層と積層方向から見て重なる領域とそれらの間の領域からなる第一領域と、前記第二強磁性層と積層方向から見て重なる領域と前記第二参照電極と積層方向から見て重なる領域とそれらの間の領域からなる第二領域とを有し、前記第一領域と前記第二領域は離間しており、前記第二強磁性層及び前記第二参照電極が電流が印可される部分であり、前記第一強磁性層及び前記第一参照電極が電圧が検出される部分であり、前記第一領域を加熱する発熱素子および前記第二領域を冷却する冷却素子の少なくとも一方を有することを特徴とする。ここで、「チャンネル層上に設けられる」とは、チャンネル層の上面側に設けられる場合のみではなく、チャンネル層の下面側に設けられる場合やチャンネル層の側面側に設けられる場合も含む意味である。
本発明のスピン伝導素子では、第二強磁性層及び第二参照電極が電流注入部であり、第一強磁性層及び第一参照電極が電圧検出部である。即ち、本発明のスピン伝導素子は、チャンネル層を介して第二強磁性層と第二参照電極との間に電流が流され、チャンネル層を介した第一強磁性層と第一参照電極の間の電圧が検出される構造である。すなわち、第二領域は、第二強磁性層と第二参照電極との間に流れる電流によって発熱するが、第一領域は、電流が流れないため発熱しない。この場合、第二領域を起点として、第二領域から離れるほど温度が下がる構造となる。したがって、第一領域内にも温度勾配が発生し、第一強磁性層と第一参照電極の間に温度勾配に起因した電圧が発生する。この熱に由来する電圧は電荷を伴わない純スピン流に由来するものではないため、バックグラウンドの電圧としてノイズの要因となる。よって、この温度勾配を低減するために、電流が流れず発熱しない第一領域を加熱する発熱素子を設置するか、電流によって発熱している第二領域を冷却する冷却素子を設置するか、あるいは、発熱素子及び冷却素子のいずれも設置することによって、温度勾配によるバックグラウンドの電圧を抑制し、高いS/Nを得ることができる。
更に、本発明のスピン伝導素子は、前記発熱素子または前記冷却素子が、前記チャンネル層に対し、前記チャンネル層に接する非磁性絶縁層を介して設置されていることが好ましい。
熱伝導を考慮するならば、チャンネル層に対し導電性の層を介して、発熱素子または冷却素子が設置される方が良い。しかしながら、スピン伝導素子では、電流及びスピン流を考慮する必要がある。発熱素子または冷却素子とチャンネル層の間の層として、導電性の層をチャンネル層に接して用いると、電流の経路が所望のものから変化してしまい、出力が低下する。さらに、この導電性の層においてスピンが容易に緩和してしまうため、十分なスピンを第二強磁性層から第一強磁性層へ到達させることができず、この点からも出力が低下する。また、発熱素子または冷却素子とチャンネル層の間の層として、磁性絶縁層をチャンネル層に接して用いると、電流の経路は変化しないが、スピンが磁性絶縁層を介して伝導あるいは緩和してしまうため、十分なスピンを第二強磁性層から第一強磁性層へ到達させることができず、出力が低下する。したがって、発熱素子または冷却素子が、チャンネル層に対し、チャンネル層に接する非磁性絶縁層を介して設置されていることで、出力低下を抑制することができる。
更に、本発明のスピン伝導素子は、前記発熱素子または前記冷却素子が、前記チャンネル層の積層面側に設置されていることが好ましい。
スピン伝導素子は薄膜プロセスで形成されるため、一般的に積層方向に対しての寸法は微小であり、積層面内に対しての寸法がより大きくなる。チャンネル層の積層面側に発熱素子または冷却素子が設置された場合には、発熱素子または冷却素子による加熱又は冷却の効果を受けるチャンネル層の面積を大きくすることができ、第一領域または第二領域の温度を調整しやすくなる。
更に、本発明のスピン伝導素子は、前記発熱素子または前記冷却素子が、前記チャンネル層の側面側に設置されていても良い。
発熱素子または冷却素子がチャンネル層の側面側に設置されることで、チャンネル層の積層面側に発熱素子または冷却素子が設置されていない場合には、積層方向への膜厚の増大を抑制し、スピン伝導素子の積層方向の大きさを小さくすることができる。チャンネル層の積層面側に発熱素子または冷却素子が設置されている場合には、チャンネル層の積層面側及び側面側の両方からの加熱又は冷却が可能になり、第一領域または第二領域の温度を調整しやすくなる。
本発明の磁気センサは、前記スピン伝導素子を有することを特徴とする。
本発明のスピン伝導素子を磁気センサに使用する場合には、第一強磁性層と第二強磁性層の保磁力は、互いに異なっていることが好ましい。本発明の磁気センサでは、第一強磁性層と第二強磁性層の間に流れるスピン流を介して、第一強磁性層と第二強磁性層の磁化の相対角によって出力が決定される。外部磁場の変化に応じて、この相対角が変化して出力が変化するので、本発明の磁気センサは外部磁場の検出を行うことができる。本発明の磁気センサは、高いS/Nを得ることができる本発明のスピン伝導素子を有するので、精度よく外部磁場を検出することができる。また、第一強磁性層と第二強磁性層の一方の保磁力が他方の保磁力に比べて非常に小さい場合、微小な外部磁場を検出することが可能となる。
本発明によれば、バックグラウンドの電圧を低減し、高いS/N比を得ることができるスピン伝導素子及び磁気センサを提供することができる。
第1実施形態に係るスピン伝導素子の概略平面図である。 図1におけるX1−X1線に沿った断面図である。 図1におけるY1−Y1線に沿った断面図である。 第2実施形態に係るスピン伝導素子の断面図である。 図4におけるY2−Y2線に沿った断面図である。 発熱素子がチャンネル層の上面側に形成されているスピン伝導素子の例の概略平面図である。 図6におけるX2−X2線に沿った断面図である。 図6におけるY3−Y3線に沿った断面図である。 第3実施形態に係るスピン伝導素子の概略平面図である。 図9におけるY4−Y4線に沿った断面図である。 第4実施形態に係るスピン伝導素子の断面図である。 図11におけるY5−Y5線に沿った断面図である。 冷却素子がチャンネル層の上面側に形成されているスピン伝導素子の例の概略平面図である。 図13におけるX3−X3線に沿った断面図である。 図13におけるY6−Y6線に沿った断面図である。 第5実施形態に係る磁気センサが有するスピン伝導素子の概略平面図である。 図16におけるY7−Y7線に沿った断面図に対応した磁気センサ100の断面模式図である。 図16におけるX4−X4線に沿った断面図に対応した磁気センサ100の断面模式図である。 実施例1のスピン伝導素子のスピン出力の測定結果を示す図である。
本発明を実施するための好適な形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、第1実施形態に係るスピン伝導素子1について説明する。
(基本構造)
図1は、第1実施形態に係るスピン伝導素子1の概略平面図(上面図)であり、図2は、図1におけるX1−X1線に沿った断面図であり、図3は、図1におけるY1−Y1線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、スピン伝導素子1は、チャンネル層7と、第一参照電極20Aと、第一強磁性層12Aと、第二強磁性層12Bと、第二参照電極20Bとを有している。チャンネル層7は、下地絶縁層80を介して基板21上に設けられ、第一参照電極20Aと、第一強磁性層12Aと、第二強磁性層12Bと、第二参照電極20Bとは、チャンネル層7上にチャンネル層7を介して互いに離間して設けられている。チャンネル層7は、第一参照電極20Aと第一強磁性層12Aとが並ぶ方向(膜面内における方向)が長辺方向であり、その長辺方向に垂直な方向(膜面内における方向)が短辺方向である矩形の平面視形状を有している。また、この矩形の平面視形状の長辺方向は、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bとが並ぶ方向(膜面内における方向)でもある。スピン伝導素子1では、第一参照電極20Aと、第一強磁性層12Aと、第二強磁性層12Bと、第二参照電極20Bとは、チャンネル層7において、この順に互いに離間して設けられている。チャンネル層7の長辺方向(図1における左右方向)をx方向、チャンネル層7の短辺方向(図1における上下方向)をy方向、チャンネル層7と、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bとの積層方向をz方向とする。後述する第2〜第4実施形態(図4〜図15)においても同様である。なお、図1においては、下地絶縁層80と基板21は省略している。
チャンネル層7は、第一参照電極20Aと積層方向から見て重なる領域A11と第一強磁性層12Aと積層方向から見て重なる領域A12とそれらの間の領域A13からなる第一領域A1と、第二強磁性層12Bと積層方向から見て重なる領域A21と第二参照電極20Bと積層方向から見て重なる領域A22とそれらの間の領域A23からなる第二領域A2とを有している。第一領域A1と第二領域A2は離間している。第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bが電流が印可される部分であり、チャンネル層7を介して第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bとの間に電流が流される。また、第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aが電圧が検出される部分であり、チャンネル層7を介した第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aとの間の電圧が検出される。スピン伝導素子1は、一方の強磁性層から注入されたスピン流を他方の強磁性層で検出するものである。また、図1及び図3に示すように、スピン伝導素子1は、第一領域A1を加熱する発熱素子11Aを有している。発熱素子11Aはチャンネル層7の側面側に、チャンネル層7に接する非磁性絶縁層81を介して、第一領域A1に対応した位置(チャンネル層7の長辺方向に沿った側面側から見て第一領域A1と重なる位置)に設置されている。スピン伝導素子1では、発熱素子11Aが、第一領域A1をチャンネル層7の短辺方向に挟むように、チャンネル層7の長辺方向に沿った両側面側に設けられている。発熱素子11Aは、第二領域A2に対し第一領域A1を選択的に加熱し、第一領域A1と第二領域A2の温度差が、発熱素子11Aが機能しない場合と比べて小さくなるように機能する。
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bとチャンネル層7との間には、それぞれ障壁層14A及び障壁層14Bが設けられている。
(強磁性層の材料)
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの材料としては、例えば、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群の金属を1種以上含む合金、又は、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される1又は複数の金属と、B、C、N、Si及びGeからなる群から選択される1種以上の元素とを含む合金が挙げられ、具体的には、CoFeB、NiFe等が挙げられる。
(障壁層)
第二強磁性層12Bとチャンネル層7との間には、障壁層14Bが設けられているので、第二強磁性層12Bからチャンネル層7へスピン偏極した電子を多く注入することが可能となり、スピン伝導素子の出力を高めることが可能となる。また、注入されたスピンがチャンネル層7から第一強磁性層12Aに流れる現象が生じ得るが、第一強磁性層12Aとチャンネル層7との間には、障壁層14Aが設けられているので、第一強磁性層12Aとチャンネル層7との間の抵抗が高くなることでこの現象が抑制され、効率的なスピン注入が可能になる。
障壁層は、トンネル障壁層であることが好ましい。トンネル障壁層の材料として、例えば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、スピネル酸化膜、または酸化亜鉛などを用いることができる。抵抗の増大を抑制し、トンネル絶縁層として機能させる観点から、トンネル障壁層の膜厚は、3nm以下であることが好ましい。また、トンネル障壁層の膜厚は、1原子層の厚みを考慮して、0.4nm以上であることが好ましい。
(参照電極の材料)
第一参照電極20A及び第二参照電極20Bの材料は非磁性の金属であることが好ましい。第一参照電極20Aや第二参照電極20Bの材料として、例えば、Cu、Au、Pt、Ta、CrまたはAlなどの金属材料が挙げられる。
(チャンネル層)
チャンネル層7はスピンが蓄積・伝導する層である。チャンネル層7の材料は、非磁性導電性材料であり、スピン拡散長が長く、導電率が比較的小さい材料であることが好ましい。例えば、チャンネル層7の材料として、B、C、Mg、Al及びCuからなる群から選択される1つ以上の元素を含む材料が挙げられる。具体的には、Cu、MgB等が挙げられる。また、例えば、チャンネル層7の材料を、Si、Ge、GaAs、CまたはZnOのうちのいずれか1つを含む半導体とすることができる。半導体材料を用いたチャンネル層7には、導電性を付与するためのイオンが添加されていてもよい。イオン濃度は、例えば1.0×1015〜1.0×1022cm−3とすることができ、イオン種は例えばリンである。半導体材料はスピン拡散長が比較的長く、導電率が比較的小さいため、これらの半導体材料を用いたチャンネル層7はスピン蓄積層としてより好適であり、なおかつ金属を用いたチャンネル層7よりも、出力を高くすることも可能である。
チャンネル層7の材料は、単層あるいは3層以下のグラフェンとしても良い。グラフェンはスピン拡散長が比較的長いため、チャンネル層7内に好適にスピンを蓄積できる。
チャンネル層7の材料は、Ag, Cu, Al, Mgのうちのいずれか1つを含む金属としても良い。これらの金属はスピン拡散長が短いが、バックグラウンドの電圧が小さくなる特徴を持つ。
また、チャンネル層7における第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまでの距離は、チャンネル層7に用いる材料のスピン拡散長以下であることが好ましい。
(その他の材料)
基板21は、例えばAlTiC基板またはSi基板である。基板21上に設けられる下地絶縁層80の材料は、例えばSiO(酸化シリコン)、HfOまたはSiN(窒化シリコン)である。発熱素子11Aの材料は例えばSiであり、チャンネル層7と同じ材料であることが好ましい。あるいは、発熱素子11Aの材料は抵抗の高い金属であるWや、安価で配線しやすいCuや、耐熱性の高いPtやRuでもよい。非磁性絶縁層81の材料は例えばSiO、HfOまたはSiNである。
(具体例の説明)
スピン伝導素子1について、より具体的な例で説明する。ここで説明する具体例では、チャンネル層7はCZ法によって形成されたSiであり、CZ法によるSiが切り出されて基板21(AlTiC基板)上の下地絶縁層80(SiO)に貼り付けられたものである。下地絶縁層80上にCZ法によって形成されたSiを設置した後、熱を加えることによって、CZ法によって形成されたSiを下地絶縁層80に密着させる。また、第一参照電極20A及び第二参照電極20B(Al)、障壁層14A及び14B(MgO)、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12B(Fe)は、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法またはイオンビームスパッタリング法のいずれかで形成される。チャンネル層7及び発熱素子11Aは、貼り付けられたSiをイオンミリング法、あるいは、化学的な手法によってエッチングすることで、それぞれ図1〜図3に示されるような所定の形状に同時に形成される。この際、チャンネル層7の側面と発熱素子11Aとの間に隙間を形成し、チャンネル層7と発熱素子11Aとが離間するようにする。
チャンネル層7の側面と発熱素子11Aの間のすきまに非磁性絶縁層81(SiO)をALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成し、チャンネル層7と発熱素子11Aが電気的に接触しない構造とする。これはチャンネル層7に流れるスピン流が発熱素子11Aからチャンネル層7の外に流出するのを防ぐためである。発熱素子11Aの両端には電流を供給する配線を設置する。この配線は発熱素子11Aに電流を供給する機能を有し、その材料はCu、AuまたはPtなどの低抵抗の材料が好ましい。
発熱素子11Aに電流源を接続し、発熱素子11Aに電流を印加することで、第一領域A1を加熱することができ、発熱素子11Aに印加する電流を調整することで、第一領域A1の温度を調整することができる。
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、それぞれy方向を長軸とした直方体形状を有している。
第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bのx方向における幅を異ならせて形状磁気異方性に差をつけることで、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bの保磁力を互いに異ならせることができる。このようにすることにより、外部磁場の変化に応じて、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bの磁化の相対角が変化して出力(チャンネル層7を介した第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aとの間の電圧)が変化するようにすることができる。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bのいずれか一方の強磁性層の上に反強磁性層を形成して、反強磁性層と強磁性層の磁気相関を利用して第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bの保磁力を互いに異ならせることもできる。
(効果の説明)
第二強磁性層12Bは、チャンネル層7へスピンを注入するための注入電極であり、第一強磁性層12Aはチャンネル層7を伝導してきたスピンを検出するための受け取り電極として機能する。電流はチャンネル層7を介して第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間に流れ、第二強磁性層12Bから注入されたスピン流は、第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間の電圧を測定することによって検出される。よって、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間の第二領域A2は、チャンネル層7の電気抵抗に起因して、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bとの間に流れる電流によって発熱するが、第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間の第一領域A1には電流が流れないため、第一領域A1は発熱しない。この場合、第二領域A2を起点として、第二領域A2から離れるほど温度が下がる構造となる。したがって、第一領域A1内にも温度勾配が発生し、第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間に温度勾配に起因した電圧が発生する。この熱に由来する電圧は電荷を伴わない純スピン流に由来するものではないため、バックグラウンドの電圧としてノイズの要因となる。スピン伝導素子1は、図1のように第一領域A1に対応した位置に設置された、第一領域A1を加熱する発熱素子11Aを有しているので、発熱素子11Aにより第一領域A1を加熱することにより、この温度勾配を低減して、温度勾配によるバックグラウンドの電圧を抑制し、高いS/Nを得ることができる。
発熱素子11Aによる第一領域A1の加熱の調整は、例えば以下のように行う。発熱素子11Aにある一定の時間だけ電流を印加し、その前後のバックグラウンドの電圧を測定する。発熱素子11Aに電流を印加した後にバックグラウンドの電圧が小さくなれば、再度一定の時間だけ発熱素子11Aに電流を印加し、バックグラウンドの電圧が変化しない状態になるまでこれを繰り返す。その後は、印加する電流値を小さくするか、電流を印加する時間を短くしてバックグラウンドの電圧が維持されるようにする。逆に、発熱素子11Aに電流を印加した後、バックグラウンドの電圧が大きくなれば、一定以上の時間、電流の印加を止めた後、印加する電流値を小さくするか、電流を印加する時間を短くして、発熱素子11Aに電流を印加した後にバックグラウンドの電圧が小さくなるようにする。
更に、スピン伝導素子1は、発熱素子11Aが、チャンネル層7に対し、チャンネル層7に接する非磁性絶縁層81を介して設置されているので、出力低下を抑制することができる。
熱伝導を考慮するならば、チャンネル層7に対し導電性の層を介して、発熱素子11Aが設置される方が良い。しかしながら、スピン伝導素子では、電流及びスピン流を考慮する必要がある。発熱素子11Aとチャンネル層7の間の層として、導電性の層をチャンネル層7に接して用いると、電流の経路が所望のものから変化してしまい、出力が低下する。さらに、この導電性の層においてスピンが容易に緩和してしまうため、十分なスピンを第二強磁性層12Bから第一強磁性層12Aへ到達させることができず、この点からも出力が低下する。また、発熱素子11Aとチャンネル層7の間の層として、磁性絶縁層をチャンネル層7に接して用いると、電流の経路は変化しないが、スピンが磁性絶縁層を介して伝導あるいは緩和してしまうため、十分なスピンを第二強磁性層12Bから第一強磁性層12Aへ到達させることができず、出力が低下する。したがって、発熱素子11Aが、チャンネル層7に対し、チャンネル層7に接する非磁性絶縁層81を介して設置されていることで、出力低下を抑制することができる。
更に、スピン伝導素子1は、発熱素子11Aがチャンネル層7の側面側に設置され、チャンネル層の積層面側に発熱素子が設置されていないので、積層方向への膜厚の増大を抑制し、スピン伝導素子1の積層方向の大きさを小さくすることができる。
なお、スピン伝導素子1では、発熱素子11Aがチャンネル層7の長辺方向に沿った両側面側に設置されているが、どちらか一方の側面側に設置されている場合でも効果を発揮する。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係るスピン伝導素子2について、第1実施形態のスピン伝導素子1と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
スピン伝導素子2が第1実施形態のスピン伝導素子1と異なる点は、図4及び図5に示すように、発熱素子11Aがチャンネル層7の積層面側に設置されている点である。その他の点は第1実施形態のスピン伝導素子1と同じであるので適宜説明を省略する。図4は、図2に示すスピン伝導素子1の断面図に対応した、スピン伝導素子2の断面図であり、図5は、図4におけるY2−Y2線に沿った断面図である。スピン伝導素子2では、基板21上に発熱素子11Aが設置され、発熱素子11Aの周りは下地絶縁層80が設置され、下地絶縁層80上にチャンネル層7が形成されている。スピン伝導素子2では、下地絶縁層80は非磁性絶縁層であり、チャンネル層7と発熱素子11Aの間の下地絶縁層80は、第1実施形態のスピン伝導素子1における非磁性絶縁層81を兼ねている。発熱素子11Aは、第一領域A1に対応した位置(基板21の表面における、第一領域A1と積層方向から見て重なる領域)に設置されている。
スピン伝導素子2について、より具体的な例で説明する。ここで説明する具体例では、まず、基板21上にスパッタリング法によって発熱素子11AとしてSiを形成し、発熱素子11Aの両端には電流を供給する配線を設置する。その後、ALD法によって下地絶縁層80としてSiOを形成する。CMPでSiOの表面を平坦化した後、第1実施形態と同様にして下地絶縁層80上にチャンネル層7となるSiを貼り付ける。貼り付けられたSiをエッチングしてチャンネル層7を形成する際には、発熱素子11Aは形成しない。その他の第一参照電極20A、第二参照電極20B、障壁層14A、14B、第一強磁性層12Aおよび第二強磁性層12Bの形成は第1実施形態と同様である。
発熱素子11Aに電流源を接続し、発熱素子11Aに電流を印加することで、第一領域A1を加熱することができ、発熱素子11Aに印加する電流を調整することで、第一領域A1の温度を調整することができる。
スピン伝導素子2は、発熱素子11Aがチャンネル層7の積層面側に設置されているので、第一領域A1の温度を調整しやすくなる。
スピン伝導素子は薄膜プロセスで形成されるため、一般的に積層方向に対しての寸法は微小であり、積層面内に対しての寸法がより大きくなる。チャンネル層7の積層面側に発熱素子11Aが設置された場合には、発熱素子11Aによる加熱の効果を受けるチャンネル層7の面積を大きくすることができ、第一領域A1の温度を調整しやすくなる。
第1実施形態のスピン伝導素子1では、発熱素子11Aがチャンネル層7の側面側に設置され、第2実施形態のスピン伝導素子2では、発熱素子11Aがチャンネル層7の積層面側に設置されているが、発熱素子11Aがチャンネル層7の側面側と積層面側の両方に設置されるようにしても良い。この場合、チャンネル層7の積層面側及び側面側の両方からの加熱が可能になり、第一領域A1の温度を調整しやすくなる。
第1実施形態及び第2実施形態において、発熱素子11Aは、領域A13における第一強磁性層12Aから第一参照電極20Aへの方向における中間位置よりも、第二領域A2に対して遠い側の第一領域A1の部分に対応した位置に設置され、この部分を少なくとも加熱可能に設置されるのが好ましい。このようにすることで、第一領域A1内の温度勾配をより確実に小さくすることができる。
また、第2実施形態のスピン伝導素子2では、発熱素子11Aがチャンネル層7の下側(基板12側)に設置されているが、発熱素子11Aはチャンネル層7の上面側に設置されていてもよい。
図6〜8に、発熱素子11Aがチャンネル層7の上面側に形成されている例(スピン伝導素子2A)を示す。図6は、この例の概略平面図(上面図)であり、図7は、図6におけるX2−X2線に沿った断面図であり、図8は図6におけるY3−Y3線に沿った断面図である。この例では、発熱素子11Aは、チャンネル層7の上面側における第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間に、チャンネル層7に対し非磁性絶縁層81を介して形成されている。
図6〜8に示すスピン伝導素子2Aの作製方法について、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と異なり、貼り付けられたSiをエッチングしてチャンネル層7を形成する際には、発熱素子11Aは形成しない。第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12Bおよび第二参照電極20Bを形成後、これらの上部以外のチャンネル層7の上面に非磁性絶縁層81としてALD法を用いたSiOを形成する。その後、発熱素子11AとしてSiをスパッタリング法によって非磁性絶縁層81上に形成する。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係るスピン伝導素子3について、第1実施形態のスピン伝導素子1と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
スピン伝導素子3が第1実施形態のスピン伝導素子1と異なる点は、図9及び図10に示すように、発熱素子11Aにかえて、第二領域A2を冷却する冷却素子11Bを有している点である。冷却素子11Bは、チャンネル層7の側面側に、チャンネル層7に接する非磁性絶縁層81を介して、第二領域A2に対応した位置(チャンネル層7の長辺方向に沿った側面側から見て第二領域A2と重なる位置)に設置されている。その他の点は第1実施形態のスピン伝導素子1と同じであるので適宜説明を省略する。図9は、図1に示すスピン伝導素子1の概略平面図に対応した、スピン伝導素子3の概略平面図(上面図)であり、図10は、図9におけるY4−Y4線に沿った断面図である。
冷却素子11Bはペルチェ素子であることが好ましい。ペルチェ素子の材料としては、n型またはp型の半導体の例として、Si, BiTe, CeSb2.85Te0.15, MgSi, Bi0.3Sb1.7Te, CoSb, MnSi1.73, NaxCoOy, CaCoまたはSrTiOが挙げられ、ペルチェ素子は、これらのn型半導体とp型半導体を接合した素子であることが好ましい。冷却素子11Bは、第一領域A1に対し第二領域A2を選択的に冷却し、第一領域A1と第二領域A2の温度差が、冷却素子11が機能しない場合と比べて小さくなるように機能する。
スピン伝導素子3の作製方法例について、第1実施形態と異なる点について説明する。貼り付けられたSiをエッチングしてチャンネル層7を形成する際には、発熱素子11Aは形成せず、別に作製され所定の大きさに加工された冷却素子11Bを下地絶縁層80上にチャンネル層7と離間して設置し、加熱することによって下地絶縁層80と冷却素子11Bを密着させる。
チャンネル層7と冷却素子11Bの間のすきまに非磁性絶縁層81を形成し、チャンネル層7と冷却素子11Bが電気的に接触しない構造とする。これはチャンネル層7に流れるスピン流が冷却素子11Bからチャンネル層7の外に流出するのを防ぐためである。冷却素子11Bの両端には、第1実施形態と同様の、電流を供給する配線を設置する。
冷却素子11Bに電流源を接続し、冷却素子11Bに電流を印加することで、第二領域A2を冷却することができ、冷却素子11Bに印加する電流を調整することで、第二領域A2の温度を調整することができる。
第1実施形態のスピン伝導素子1と同様に、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間の第二領域A2は、チャンネル層7の電気抵抗に起因して、第二強磁性層と第二参照電極との間に流れる電流によって発熱し、これに起因して第一領域A1内に温度勾配が発生するが、スピン伝導素子3は図9のように、第二領域A2を冷却する冷却素子11Bを有しているので、冷却素子11Bにより第二領域A2を冷却することにより、この温度勾配を低減して、温度勾配によるバックグラウンドの電圧を抑制し、高いS/Nを得ることができる。
冷却素子11Bによる第二領域A2の冷却の調整は、例えば以下のように行う。冷却素子11Bにある一定の時間だけ電流を印加し、その前後のバックグラウンドの電圧を測定する。冷却素子11Bに電流を印加した後にバックグラウンドの電圧が小さくなれば、再度一定の時間だけ冷却素子11Bに電流を印加し、バックグラウンドの電圧が変化しない状態になるまで繰り返す。その後は、印加する電流値を小さくするか、電流を印加する時間を短くしてバックグラウンドの電圧が維持されるようにする。逆に、冷却素子11Bに電流を印加した後、バックグラウンドの電圧が大きくなれば、一定以上の時間、電流の印加を止めた後、印加する電流値を小さくするか、電流を印加する時間を短くして、冷却素子11Bに電流を印加した後にバックグラウンドの電圧が小さくなるようにする。
更に、スピン伝導素子3は、冷却素子11Bが、チャンネル層7に対し、チャンネル層7に接する非磁性絶縁層81を介して設置されているので、出力低下を抑制することができる。
熱伝導を考慮するならば、チャンネル層7に対し導電性の層を介して、冷却素子11Bが設置される方が良い。しかしながら、スピン伝導素子では、電流及びスピン流を考慮する必要がある。冷却素子11Bとチャンネル層7の間の層として、導電性の層をチャンネル層7に接して用いると、電流の経路が所望のものから変化してしまい、出力が低下する。さらに、この導電性の層においてスピンが容易に緩和してしまうため、十分なスピンを第二強磁性層12Bから第一強磁性層12Aへ到達させることができず、この点からも出力が低下する。また、冷却素子11Bとチャンネル層7の間の層として、磁性絶縁層をチャンネル層7に接して用いると、電流の経路は変化しないが、スピンが磁性絶縁層を介して伝導あるいは緩和してしまうため、十分なスピンを第二強磁性層12Bから第一強磁性層12Aへ到達させることができず、出力が低下する。したがって、冷却素子11Bが、チャンネル層7に対し、チャンネル層7に接する非磁性絶縁層81を介して設置されていることで、出力低下を抑制することができる。
更に、スピン伝導素子3は、冷却素子11Bがチャンネル層7の側面側に設置され、チャンネル層の積層面側に冷却素子が設置されていないので、積層方向への膜厚の増大を抑制し、スピン伝導素子3の積層方向の大きさを小さくすることができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態に係るスピン伝導素子4について、第3実施形態のスピン伝導素子3と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
スピン伝導素子4が第3実施形態のスピン伝導素子3と異なる点は、図11及び図12に示すように、冷却素子11Bがチャンネル層7の積層面側に設置されている点である。その他の点は第3実施形態のスピン伝導素子3と同じであるので適宜説明を省略する。図11は、図2に示すスピン伝導素子1の断面図や図4に示すスピン伝導素子2の断面図に対応した、スピン伝導素子3の断面図であり、図12は、図11におけるY5−Y5線に沿った断面図である。スピン伝導素子4では、基板21上に冷却素子11Bが設置され、冷却素子11Bの周りは下地絶縁層80が設置され、下地絶縁層80上にチャンネル層7が形成されている。スピン伝導素子4では、下地絶縁層80は非磁性絶縁層であり、チャンネル層7と冷却素子11Bの間の下地絶縁層80は、第3実施形態のスピン伝導素子3における非磁性絶縁層81を兼ねている。冷却素子11Bは、第二領域A2に対応した位置(基板21の表面における、第二領域A2と積層方向から見て重なる領域)に設置されている。
スピン伝導素子4の作製方法例について説明する。基板21上に、別に作製され所定の大きさに加工された冷却素子11Bを設置し、熱を加えることによって、基板21と冷却素子11Bを密着させ、冷却素子11Bの両端には電流を供給する配線を設置する。その後、ALD法によって下地絶縁層80としてSiOを形成する。その後は第2実施形態のスピン伝導素子2の作製例と同様にして、チャンネル層7、第一参照電極20A、第二参照電極20B、障壁層14A、14B、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bを形成する。
冷却素子11Bに電流源を接続し、冷却素子11Bに電流を印加することで、第二領域A2を冷却することができ、冷却素子11Bに印加する電流を調整することで、第二領域A2の温度を調整することができる。
スピン伝導素子4は、冷却素子11Bがチャンネル層7の積層面側に設置されているので、第二領域A2の温度を調整しやすくなる。
スピン伝導素子は薄膜プロセスで形成されるため、一般的に積層方向に対しての寸法は微小であり、積層面内に対しての寸法がより大きくなる。チャンネル層7の積層面側に冷却素子11Bが設置された場合には、冷却素子11Bによる冷却の効果を受けるチャンネル層7の面積を大きくすることができ、第二領域A2の温度を調整しやすくなる。
第3実施形態のスピン伝導素子3では、冷却素子11Bがチャンネル層7の側面側に設置され、第4実施形態のスピン伝導素子4では、冷却素子11Bがチャンネル層7の積層面側に設置されているが、冷却素子11Bがチャンネル層7の側面側と積層面側の両方に設置されるようにしても良い。この場合、チャンネル層7の積層面側及び側面側の両方からの冷却が可能になり、第二領域A2の温度を調整しやすくなる。
また、第4実施形態のスピン伝導素子4では、冷却素子11Bがチャンネル層7の下側(基板12側)に設置されているが、冷却素子11Bはチャンネル層7の上側に設置されていてもよい。
図13〜15に、冷却素子11Bがチャンネル層7の上面側に形成されている例(スピン伝導素子4A)を示す。図13は、この例の概略平面図(上面図)であり、図14は、図13におけるX3−X3線に沿った断面図であり、図15は図13におけるY6−Y6線に沿った断面図である。この例では、冷却素子11Bは、チャンネル層7の上面側における第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間に、チャンネル層7に対し非磁性絶縁層81を介して形成されている。
図13〜15に示すスピン伝導素子4Aの作製方法について、第3実施形態と異なる点について説明する。第3実施形態と異なり、冷却素子11Bを下地絶縁層80上には設置しない。第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12Bおよび第二参照電極20Bを形成後、これらの上部以外のチャンネル層7の上面に非磁性絶縁層81としてALD法を用いたSiOを形成する。その後、別に作製され所定の大きさに加工された冷却素子11Bを非磁性絶縁層81上に設置し、熱を加えることで非磁性絶縁層81と冷却素子11Bを密着させる。
本発明のスピン伝導素子は、第1、第2、第3及び第4実施形態に限定されない。例えば、第一領域A1のチャンネル層7を加熱する発熱素子11Aとチャンネル層7の第二領域A2を冷却する冷却素子11Bの両方を備えても良い。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態に係る磁気センサ100について説明する。磁気センサ100はスピン伝導素子5を有している。まず、スピン伝導素子5について、上述したスピン伝導素子2Aと異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
図16は、スピン伝導素子5の概略平面図(上面図)であり、図17は、図16におけるY7−Y7線に沿った断面図に対応した磁気センサ100の断面模式図であり、図18は、図16におけるX4−X4線に沿った断面図に対応した磁気センサ100の断面模式図である。図16〜18に示すように、チャンネル層7は下地絶縁層80および第二参照電極20B上に設けられ、平面視形状において、y方向が長辺方向である第1部位とx方向が長辺方向である第2部位とが接続されたT字形状である。チャンネル層7の第1部位と第2部位との接続部分(T字の交点部分)上に障壁層14Aを介して第一強磁性層12Aが設けられ、第1部位の両端上にそれぞれ第一参照電極20Aが設けられている。第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aは、チャンネル層7の上面側に設けられている。また、図16、18に示すように、チャンネル層7の第2部位上に、障壁層14Bを介して第二強磁性層12Bが設けられ、第2部位の端部上に第二参照電極20Bが設けられている。第二強磁性層12Bは、チャンネル層7の上面側に設けられており、第二参照電極20Bは、チャンネル層7の下面側に設けられている。
チャンネル層7の第1部位は、第一参照電極20Aと第一強磁性層12Aとが並ぶ方向(膜面内における方向)が長辺方向であり、その長辺方向に垂直な方向(膜面内における方向)が短辺方向である矩形の平面視形状を有している。チャンネル層7の第2部位は、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bとが並ぶ方向(膜面内における方向)が長辺方向であり、その長辺方向に垂直な方向(膜面内における方向)が短辺方向である矩形の平面視形状を有している。スピン伝導素子5では、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bは、チャンネル層7において、この順に互いに離間して設けられている。
スピン伝導素子5では、上述したスピン伝導素子2Aと同様に、発熱素子11Aがチャンネル層7の上面側における第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間に、チャンネル層7に対し非磁性絶縁層81を介して形成されているが、2つの第一参照電極20Aが設けられているため、発熱素子11Aは、2箇所に設けられている。尚、図16は、理解を容易にするために、非磁性絶縁層81を省略した図としている。
図18に示すように、磁気センサ100は、スピン伝導素子5と、下部磁気シールド200と、上部第一磁気シールド400Aと、上部第二磁気シールド400Bとを有している。
磁気センサ100において、第一強磁性層12Aは、その磁化方向の変化により外部磁場を検出するための層として機能する。第一強磁性層12Aは、チャンネル層7において外部磁場の磁束Bが進入する側に配置されている。第一強磁性層12Aとして特に軟磁性材料が適用される。
磁気センサ100において、第二強磁性層12Bの保磁力は第一強磁性層12Aの保磁力よりも大きくなっている。磁気センサ100では、反強磁性層8が、第二強磁性層12B上に設けられており、反強磁性層8が第二強磁性層12Bと交換結合することにより、第二強磁性層12Bの磁化方向が固定(一方向異方性が付与)されている。この場合、反強磁性層8を設けない場合よりも、第二強磁性層12Bの保磁力を大きくすることができる。反強磁性層8に用いられる材料は、第二強磁性層12Bに用いられる材料に合わせて選択される。例えば、反強磁性層8として、Mnを用いた反強磁性を示す合金、具体的にはMnと、Pt、Ir、Fe、Ru、Cr、Pd及びNiのうちから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む合金が挙げられる。具体的には、例えば、IrMn、PtMn等が挙げられる。第二強磁性層12Bの磁化方向が固定されることにより、第二強磁性層12Bの磁化の向きを外部磁場に反応し難くすることが可能となる。また、反強磁性層8上にはキャップ層9が設置されており、キャップ層9により、熱による元素拡散や結晶格子の歪みの影響を緩和させることができる。
第二強磁性層12Bに形状異方性を持たせて、第二強磁性層12Bの磁化を固定する場合には、反強磁性層8を省略することが可能である。例えば、第二強磁性層12Bを、y方向が長辺方向、x方向が短辺方向となる矩形形状にすればよい。なお、反強磁性層8及び第二強磁性層12Bの形状異方性の両方によって第二強磁性層12Bの磁化を固定してもよい。第一強磁性層12Aの保磁力が第二強磁性層12Bの保磁力に比べて非常に小さい場合、微小な外部磁場を検出することが可能となる。
上部第一磁気シールド400Aは、第一強磁性層12Aの上部に設けられ、第一強磁性層12Aと電気的に接続されている。上部第一磁気シールド400Aと2つの第一参照電極20Aとの間には電圧計が接続され、チャンネル層7を介した第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aとの間の電圧が検出されるようになっている。
上部第二磁気シールド400Bは、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの上部を覆うように設けられ、第一強磁性層12Aの上部に設置され、反強磁性層8及びキャップ層9を介して第二強磁性層12Bと電気的に接続されている。上部第二磁気シールド400Bと第二参照電極20Bとの間には電流源が接続され、チャンネル層7を介して第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bとの間に電流が印加されるようになっている。
第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間に電流が印加され、第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間の電圧を測定することにより外部磁場を検出することが可能となる。外部磁場の変化に応じて、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bの磁化の相対角が変化して、チャンネル層7を介した第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aとの間の電圧が変化する。
磁気センサ100は、高いS/Nを得ることができるスピン伝導素子5を有するので、精度よく外部磁場を検出することができる。
第5実施形態の磁気センサ100は、第二強磁性層12Bの保磁力が第一強磁性層12Aの保磁力よりも大きく、第一強磁性層12Aが、その磁化方向の変化により外部磁場を検出するための層として機能する例であるが、第一強磁性層12Aの保磁力を第二強磁性層12Bの保磁力よりも大きくし、第二強磁性層12Bを、その磁化方向の変化により外部磁場を検出するための層として機能させるようにしても良い。
また、第5実施形態の磁気センサ100は、第一領域A1を加熱する発熱素子11Aを有する例であるが、発熱素子11Aにかえて第二領域A2を冷却する冷却素子11Bを有するようにしても良い。また、発熱素子11Aと冷却素子11Bの両方を有するようにしても良い。
(実施例1)
以下に、実施例1として、第1実施形態に係るスピン伝導素子1の具体的な一例について説明する。まず、予め準備した基板21としてのAlTiC基板に、アライメントマークを形成した。続いて、下地絶縁層80として、厚さ5nmのSiOを基板21の全面に形成した。
その後、チャンネル層7および発熱素子11Aとなる、CZ法によって作製されたSiを下地絶縁層80上に貼り付けた。このSi(Si層)の厚さは50nmとした。イオン注入技術によってリンをSi層に打ち込み、不純物濃度を調整した。このときの不純物濃度は、5×1019/cmであり、不純物を活性化するためにRTA(Rapid Thermal Anneal)法によってアニールを行った。
Si層のアニールによる結晶化後、RCA洗浄及びフッ酸によりSi層の表面を洗浄した。続いて、MBE法によりSi層上に障壁層としてMgO層を1nm、強磁性層としてFe層を5nm、保護膜としてTi層を3nmこの順に形成した。
チャンネル層7を図1のような細線形状に加工できるようにフォトマスクをし、イオンミリング法及び化学的エッチングによって余計な部分を除去し、チャンネル層7の寸法が4000×80×50nm(x方向の寸法×y方向の寸法×z方向の寸法であり、以降の寸法の記載も同じであるが、z方向の寸法は省略する場合がある。)となるようにした。同時に、図1のようにチャンネル層7からy方向に20nm離間させてチャンネル層7の第一領域A1となる部分の横に発熱素子11A(520×40×50nm)を形成した。発熱素子11AのSi層上のMgO層、Fe層及びTi層はイオンミリング法にて除去した。その後、チャンネル層7と発熱素子11Aの間に非磁性絶縁層81としてSiOを成膜して充填した。
次に、フォトリソグラフィ法により、第一強磁性層12A(40×80nm)及び第二強磁性層12B(20×80nm)をそれぞれ括弧内の寸法の矩形状に加工するためのマスクを形成した。このマスクを用いて、イオンミリング法により、チャンネル層7上の不要なMgO層、Fe層及びTi層及と、チャンネル層7の一部を除去した。これにより、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bを形成した。その後、Al層を厚さ20nm形成して、フォトリソグラフィ法により第一参照電極20A(80×80nm)及び第二参照電極20B(80×80nm)をそれぞれ括弧内の寸法に形成した。第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bの間隔(第一強磁性層12Aと第二強磁性層12B間の距離(最短距離))は80nm、第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間隔(第一強磁性層12Aと第一参照電極20Aの間の距離(最短距離))は400nm、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間隔(第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間の距離(最短距離))は400nmとした。以上のようにして、スピン伝導素子1を作製した。
次に、第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bを電流源に接続した。また、第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aに電圧計を接続し、チャンネル層7に流れるスピンを電圧として検出した。
発熱素子11Aに電流源を接続し、発熱素子11Aを機能させ、外部磁場をy軸方向に印可した場合のスピン出力の測定結果を図19に示す。発熱素子11Aは以下のようにして機能させた。第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bに一定の電流を流しながら、発熱素子11Aに1secの長さのパルス電流を流し、バックグラウンド電圧を観測した。パルス電流を流した後、バックグラウンド電圧が下がった場合には再度同じパルス電流を流した。これを、パルス電流を流した後でバックグラウンド電圧が変化しない状態になるまで繰り返した。バックグラウンド電圧が変化しない状態になった後は、1msecの長さのパルス電流を発熱素子11Aに流して、バックグラウンド電圧が維持できるように調整した。第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間に流す電流は100μAとした。図19に示したようにスピン出力は29μVであり、バックグラウンド電圧は20μVであった。
(実施例2)
次に、実施例2として、第2実施形態に係るスピン伝導素子2の具体的な一例について説明する。基板21上に下地絶縁層80を形成する前に、発熱素子11AとなるSi膜を厚さ10nmで形成した。フォトマスクを用いたイオンミリング法により、第一領域A1に対応した位置(基板21の表面における、第一領域A1と積層方向から見て重なる領域)に、第一領域A1の平面視形状と同じ形状及び大きさ(520×80nm)に発熱素子11Aを形成した。その後、SiOを成膜し、CMPによってSiOを平坦化して、厚さ20nmの下地絶縁層80を形成した。その後は、Siのエッチング加工時に発熱素子11Aを形成しないこと以外は実施例1と同様にしてチャンネル層7、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bを形成した。以上のようにして、スピン伝導素子2を作製した。
実施例1と同様にして、スピン伝導素子2のスピン出力の測定を行った。実施例1と同様に発熱素子11Aを機能させた場合は、スピン出力は28μVであり、バックグラウンド電圧は10μVであった。
(実施例3)
次に、実施例3として、図6〜8に示すスピン伝導素子2Aの具体的な一例について説明する。Siのエッチング加工時に発熱素子11Aを形成しないこと以外は実施例1と同様にしてチャンネル層7、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bを形成した後、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bの上部以外のチャンネル層7の上面に、非磁性絶縁層81としてALD法を用いて厚さ10nmのSiOを形成した。その後、発熱素子11Aとして厚さ10nmのSiをスパッタリング法によって第一参照電極20Aと第一強磁性層12Aとの間の非磁性絶縁層81上に360×80nmの寸法で形成した。以上のようにして、スピン伝導素子2Aを作製した。
実施例1と同様にして、スピン伝導素子2Aのスピン出力の測定を行った。実施例1と同様に発熱素子11Aを機能させた場合は、スピン出力は30μVであり、バックグラウンド電圧は4μVであった。
(実施例4)
次に、実施例4として、第3実施形態に係るスピン伝導素子3の具体的な一例について説明する。発熱素子11Aにかえて冷却素子11Bをチャンネル層7の側面側における第二領域A2に対応した位置(チャンネル層7の長辺方向に沿った側面側から見て第二領域A2と重なる位置)に設置した以外は、実施例1と同様にしてスピン伝導素子3を作製した。冷却素子11Bは、n型とp型のSiGeの接合素子(500×80×50nm)であり、下地絶縁層80上にチャンネル層7からy方向に20nm離間させて冷却素子11Bを設置し、加熱することによって下地絶縁層80と冷却素子11Bを密着させた。また、実施例1と同様にして、チャンネル層7と冷却素子11Bの間に非磁性絶縁層81としてSiOを成膜して充填した。
冷却素子11Bに電流源を接続し、冷却素子11Bを機能させ、実施例1と同様に外部磁場をy軸方向に印可してスピン伝導素子3のスピン出力の測定を行った。冷却素子11Bは以下のようにして機能させた。第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bに一定の電流を流しながら、冷却素子11Bに1secの長さのパルス電流を流し、バックグラウンド電圧を観測した。パルス電流を流した後、バックグラウンド電圧が下がった場合には再度同じパルス電流を流した。これを、パルス電流を流した後でバックグラウンド電圧が変化しない状態になるまで繰り返した。バックグラウンド電圧が変化しない状態になった後は、1msecの長さのパルス電流を冷却素子11Bに流して、バックグラウンド電圧が維持できるように調整した。第二強磁性層12Bと第二参照電極20Bの間に流す電流は、実施例1と同様に100μAとした。スピン出力は32μVであり、バックグラウンド電圧は18μVであった。
(実施例5)
次に、実施例5として、第4実施形態に係るスピン伝導素子4の具体的な一例について説明する。発熱素子11Aにかえて冷却素子11Bを基板21上の第二領域A2に対応した位置(基板21の表面における、第二領域A2と積層方向から見て重なる領域)に設置した以外は、実施例2と同様にしてスピン伝導素子4を作製した。冷却素子11Bは、n型とp型のSiGeの接合素子(500×80×50nm)であり、基板21上に冷却素子11Bを設置し、加熱することによって基板21と冷却素子11Bを密着させた。
実施例4と同様にして、スピン伝導素子4のスピン出力の測定を行った。実施例4と同様に冷却素子11Bを機能させた場合は、スピン出力は30μVであり、バックグラウンド電圧は7μVであった。
(実施例6)
実施例6として、図13〜15に示すスピン伝導素子4Aの具体的な一例について説明する。発熱素子11Aにかえて冷却素子11Bを第二参照電極20Bと第二強磁性層12Bとの間の非磁性絶縁層81上に設置した以外は、実施例3と同様にしてスピン伝導素子4Aを作製した。冷却素子11Bは、n型とp型のSiGeの接合素子(360×80×50nm)であり、非磁性絶縁層81上に冷却素子11Bを設置し、加熱することによって非磁性絶縁層81と冷却素子11Bを密着させた。
実施例4と同様にして、スピン伝導素子4のスピン出力の測定を行った。実施例4と同様に冷却素子11Bを機能させた場合は、スピン出力は33μVであり、バックグラウンド電圧は4μVであった。
(比較例)
比較例1のスピン伝導素子として、実施例1のスピン伝導素子1において、発熱素子11Aを形成しないスピン伝導素子を作製した。また、比較例2のスピン伝導素子として、実施例2のスピン伝導素子2において、発熱素子11Aを形成しないスピン伝導素子を作製した。実施例1と同様にして、比較例1および比較例2のスピン伝導素子のスピン出力の測定を行った。比較例1のスピン伝導素子のスピン出力は29μVであり、バックグラウンド電圧は230μVであった。比較例2のスピン伝導素子のスピン出力は29μVであり、バックグラウンド電圧は243μVであった。表1に、実施例1〜6及び比較例1〜2のスピン伝導素子のスピン出力およびバックグラウンド電圧の測定結果を示す。
Figure 2017092198
実施例1〜6は、同構造で発熱素子11Aや冷却素子11Bを有さない比較例1および比較例2よりもバックグラウンドの電圧が1桁以上低いことがわかる。スピン出力は実施例1〜6及び比較例1〜2においてほぼ変化しないため、実施例1〜6の方が高いS/N比を得ることできることがわかる。
1、2、2A、3、4、4A、5…スピン伝導素子
7…チャンネル層
8…反強磁性層
9…キャップ層
11A…発熱素子
11B…冷却素子
12A…第一強磁性層
12B…第二強磁性層
14A、14B…障壁層
20A…第一参照電極
20B…第二参照電極
21…基板
80…下地絶縁層
81…非磁性絶縁層
81B…第二絶縁層
200…下部磁気シールド
400A…上部第一磁気シールド
400B…上部第二磁気シールド
A1…第一領域
A2…第二領域
A11、A12、A13、A21、A22、A23…領域

Claims (5)

  1. チャンネル層と、第一参照電極と、第一強磁性層と、第二強磁性層と、第二参照電極とを有し、
    前記第一参照電極と、前記第一強磁性層と、前記第二強磁性層と、前記第二参照電極とは、前記チャンネル層上に前記チャンネル層を介して互いに離間して設けられ、
    前記チャンネル層は、前記第一参照電極と積層方向から見て重なる領域と前記第一強磁性層と積層方向から見て重なる領域とそれらの間の領域からなる第一領域と、前記第二強磁性層と積層方向から見て重なる領域と前記第二参照電極と積層方向から見て重なる領域とそれらの間の領域からなる第二領域とを有し、
    前記第一領域と前記第二領域は離間しており、
    前記第二強磁性層及び前記第二参照電極が電流が印可される部分であり、
    前記第一強磁性層及び前記第一参照電極が電圧が検出される部分であり、
    前記第一領域を加熱する発熱素子および前記第二領域を冷却する冷却素子の少なくとも一方を有することを特徴とするスピン伝導素子。
  2. 前記発熱素子または前記冷却素子は、前記チャンネル層に対し、前記チャンネル層に接する非磁性絶縁層を介して設置されていることを特徴とする請求項1に記載のスピン伝導素子。
  3. 前記発熱素子または前記冷却素子は、前記チャンネル層の積層面側に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピン伝導素子。
  4. 前記発熱素子または前記冷却素子は、前記チャンネル層の側面側に設置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピン伝導素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスピン伝導素子を有する磁気センサ。
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