(実施形態1)
本実施形態の調光装置1は、図1Aに示すように、一対の入力端子11,12と、双方向スイッチ2と、位相検出部3と、入力部4と、制御部5とを備えている。
一対の入力端子11,12は、照明負荷6と交流電源7との間に電気的に接続される。双方向スイッチ2は、一対の入力端子11,12間において、双方向の電流の遮断・通過を切り替えるように構成されている。位相検出部3は、交流電源7の交流電圧Vacの位相を検出する。入力部4は、照明負荷6の光出力の大きさを指定する調光レベルが入力される。
制御部5は、図1Bに示すように、位相検出部3からの検出信号に基づいて、交流電圧Vacの半周期のうちの可変時間VT1の間、一対の入力端子11,12間において双方向の電流を通過させるように双方向スイッチ2を制御する調光制御を実行する。調光制御では、可変時間VT1の長さが調光レベルに応じて決まる。
制御部5は、制御部5の起動時から一定時間の間、可変時間VT1を起動用時間ST1に設定する起動制御を実行した後に、調光制御を実行する。そして、起動用時間ST1は、調光制御での可変時間VT1よりも長い。
なお、ここでいう「入力端子」は、電線等を接続するための部品(端子)として実体を有しなくてもよく、たとえば電子部品のリードや、回路基板に含まれる導体の一部であってもよい。また、以下の説明では、「時点Aから」という表現は、時点Aを含む意味とする。たとえば「第1時点から」は、第1時点を含む意味である。一方、「時点Aまで」という表現は、時点Aは含まず、時点Aの直前までを意味する。たとえば「第1時点まで」は、第1時点は含まず、第1時点の直前までを意味する。
以下、本実施形態の調光装置1について説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本実施形態の調光装置1は、図1Aに示すように、一対の入力端子11,12、双方向スイッチ2、位相検出部3、入力部4、制御部5、およびスイッチ駆動部8を備えている。
調光装置1は、2線式の調光装置であって、交流電源7に対して照明負荷6と電気的に直列に接続された状態で使用される。照明負荷6は、光源としてのLED素子61とLED素子61を点灯させる点灯回路62とを備えている。交流電源7は、たとえば単相100〔V〕、60〔Hz〕の商用電源である。調光装置1は、一例として、壁スイッチや照明システム100(図6参照)に適用可能である。
照明負荷6は、通電時に点灯する。また、照明負荷6の点灯回路62は、調光装置1で位相制御された交流電圧Vacの波形から調光レベルを読み取り、LED素子61の光出力の大きさを変化させる。ここで、点灯回路62は、一例としてブリーダ回路などの電流確保用の回路を有している。このため、調光装置1の双方向スイッチ2が非導通となる期間においても、照明負荷6に電流を流すことが可能である。
双方向スイッチ2は、一対の入力端子11,12間において、双方向の電流の遮断・通過を切り替えるように構成されている。双方向スイッチ2は、たとえば、一対の入力端子11,12間に電気的に直列に接続されたスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の2個の素子からなる。たとえば、スイッチ素子Q1,Q2の各々は、エンハンスメント形のnチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)からなる半導体スイッチ素子である。
スイッチ素子Q1,Q2は、一対の入力端子11,12間において、いわゆる逆直列に接続されている。つまり、スイッチ素子Q1,Q2はソース同士が互いに接続されている。スイッチ素子Q1のドレインは入力端子11に接続され、スイッチ素子Q2のドレインは入力端子12に接続されている。両スイッチ素子Q1,Q2のソースは、グランドに接続されている。なお、グランドは、調光装置1の内部回路にとって基準電位となる。
双方向スイッチ2は、スイッチ素子Q1,Q2のオン、オフの組み合わせにより、4つの状態を切替可能である。4つの状態には、両スイッチ素子Q1,Q2が共にオフである双方向オフ状態と、両スイッチ素子Q1,Q2が共にオンである双方向オン状態と、スイッチ素子Q1,Q2の一方のみがオンである2種類の一方向オン状態とがある。一方向オン状態では、スイッチ素子Q1,Q2のうち、オンの方のスイッチ素子から、オフの方のスイッチ素子の寄生ダイオードを通して一対の入力端子11,12間が一方向に導通することになる。たとえば、スイッチ素子Q1がオン、スイッチ素子Q2がオフの状態では、入力端子11から入力端子12に向けて電流を流す第1一方向オン状態となる。また、スイッチ素子Q2がオン、スイッチ素子Q1がオフの状態では、入力端子12から入力端子11に向けて電流を流す第2一方向オン状態となる。
このため、一対の入力端子11,12間に交流電源7から交流電圧Vacが印加される場合、交流電圧Vacの正極性の半周期においては、第1一方向オン状態が「順方向オン状態」、第2一方向オン状態が「逆方向オン状態」となる。一方、交流電圧Vacの負極性の半周期においては、第2一方向オン状態が「順方向オン状態」、第1一方向オン状態が「逆方向オン状態」となる。ここで、双方向スイッチ2は、「双方向オン状態」および「順方向オン状態」の両状態がオン状態であり、「双方向オフ状態」および「逆方向オン状態」の両状態がオフ状態である。
位相検出部3は、一対の入力端子11,12間に印加される交流電圧Vacの位相を検出する。ここでいう「位相」には、交流電圧Vacのゼロクロス点、交流電圧Vacの極性(正極性、負極性)を含んでいる。位相検出部3は、交流電圧Vacのゼロクロス点を検出すると、検出信号を制御部5に出力するように構成されている。位相検出部3は、ダイオードD31と、第1検出部31と、ダイオードD32と、第2検出部32と、を有している。第1検出部31は、ダイオードD31を介して入力端子11に電気的に接続されている。第2検出部32は、ダイオードD32を介して入力端子12に電気的に接続されている。第1検出部31は、交流電圧Vacが負極性の半周期から正極性の半周期に移行する際のゼロクロス点を検出する。第2検出部32は、交流電圧Vacが正極性の半周期から負極性の半周期に移行する際のゼロクロス点を検出する。
すなわち、第1検出部31は、入力端子11を正極とする電圧が規定値未満の状態から規定値以上の状態に移行したことを検出すると、ゼロクロス点と判断する。同様に、第2検出部32は、入力端子12を正極とする電圧が規定値未満の状態から規定値以上の状態に移行したことを検出すると、ゼロクロス点と判断する。規定値は0〔V〕付近に設定された値(絶対値)である。たとえば、第1検出部31の規定値は、+数〔V〕程度であり、第2検出部32の規定値は、−数〔V〕程度である。したがって、第1検出部31および第2検出部32で検出されるゼロクロス点の検出点は、厳密な意味でのゼロクロス点(0〔V〕)から少し時間が遅れる。
入力部4は、ユーザによって操作される操作部から、調光レベルを表す信号を受け付け、制御部5に調光信号として出力する。入力部4は、調光信号を出力するのに際して、受け付けた信号を加工してもよいし、しなくてもよい。調光信号とは、照明負荷6の光出力の大きさを指定する数値等であって、照明負荷6を消灯状態とする「OFFレベル」を含む場合もある。なお、操作部は、ユーザの操作を受けて入力部4に調光レベルを表す信号を出力する構成であればよく、たとえば可変抵抗器やロータリスイッチ、タッチパネルなどである。その他、操作部は、たとえばリモートコントローラやスマートフォンなどの通信端末であってもよい。
制御部5は、たとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成として備えている。マイコンは、マイコンのメモリに記録されているプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、制御部5としての機能を実現する。プログラムは、予めマイコンのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、コンピュータ(ここではマイコン)を、制御部5として機能させるためのプログラムである。
制御部5は、位相検出部3からの検出信号および入力部4からの調光信号に基づいて双方向スイッチ2を制御する。制御部5は、スイッチ素子Q1,Q2を別々に制御する。具体的には、制御部5は、第1制御信号Sb1にてスイッチ素子Q1を制御し、第2制御信号Sb2にてスイッチ素子Q2を制御する。
スイッチ駆動部8は、スイッチ素子Q1を駆動(オン/オフ制御)する第1駆動部81と、スイッチ素子Q2を駆動(オン/オフ制御)する第2駆動部82と、を有している。第1駆動部81は、制御部5から第1制御信号Sb1を受けて、スイッチ素子Q1にゲート電圧を印加する。これにより、第1駆動部81はスイッチ素子Q1をオン/オフ制御する。同様に、第2駆動部82は、制御部5から第2制御信号Sb2を受けて、スイッチ素子Q2にゲート電圧を印加する。これにより、第2駆動部82はスイッチ素子Q2をオン/オフ制御する。第1駆動部81は、スイッチ素子Q1のソースの電位を基準にしてゲート電圧を生成する。第2駆動部82も同様である。
次に、本実施形態の調光装置1の動作について、図2を参照して説明する。図2では、交流電圧Vac、第1検出信号ZC1、第2検出信号ZC2、第1制御信号Sb1、および第2制御信号Sb2を示している。ここで、第1検出信号ZC1は第1検出部31による検出信号、第2検出信号ZC2は第2検出部32による検出信号である。なお、ここでは、第1検出信号ZC1が「H」レベルから「L」レベルに変化することをもって、第1検出信号ZC1が発生したこととする。また、第2検出信号ZC2が「H」レベルから「L」レベルに変化することをもって、第2検出信号ZC2が発生したこととする。つまり、第1検出信号ZC1および第2検出信号ZC2は、ゼロクロス点の検出時に「H」レベルから「L」レベルに変化する信号である。
まず、交流電圧Vacが正極性の半周期における調光装置1の動作について説明する。調光装置1は、位相制御の基準となる交流電圧Vacのゼロクロス点を位相検出部3で検出する。交流電圧Vacが負極性の半周期から正極性の半周期に移行する際には、交流電圧Vacが正極性の規定値Vzcに達すると、第1検出部31が第1検出信号ZC1を出力する。ここでは、第1検出信号ZC1の発生時点を第1時点t1とし、半周期の始点(ゼロクロス点)t0から第1時点t1までの期間を、第1期間T1とする。
第1期間T1では、制御部5は、第1制御信号Sb1および第2制御信号Sb2を「OFF」信号にしている。これにより、第1期間T1では、2個のスイッチ素子Q1,Q2がいずれもオフになり、双方向スイッチ2が双方向オフ状態となっている。
第1検出信号ZC1を受ける(第1時点t1に達する)と、制御部5は、第1制御信号Sb1および第2制御信号Sb2を「ON」信号にする。このため、第1時点t1から調光信号に応じた長さのオン時間が経過した第2時点t2までの第2期間T2では、2個のスイッチ素子Q1,Q2がいずれもオンになり、双方向スイッチ2が双方向オン状態となる。第2期間T2では、交流電源7から双方向スイッチ2を介して照明負荷6へ電力が供給され、点灯回路62が起動すれば照明負荷6が点灯する。
第2時点t2に達すると、制御部5は、第2制御信号Sb2を「ON」信号に維持したまま、第1制御信号Sb1を「OFF」信号にする。この状態は、半周期の終点(ゼロクロス点)t4よりも一定時間(たとえば300〔μs〕)だけ手前の時間である第3時点t3に達するまで維持される。これにより、第2時点t2から第3時点t3までの第3期間T3では、2個のスイッチ素子Q1,Q2のうちスイッチ素子Q1のみがオフし、双方向スイッチ2が逆方向オン状態となる。そのため、第3期間T3では、交流電源7から照明負荷6への電力が断たれる。
第3時点t3に達すると、制御部5は、第1制御信号Sb1および第2制御信号Sb2を「OFF」信号にする。この状態は、半周期の終点(ゼロクロス点)t4に達するまで維持される。これにより、第3時点t3から半周期の終点(ゼロクロス点)t4までの第4期間T4では、2個のスイッチ素子Q1,Q2がいずれもオフになり、双方向スイッチ2が双方向オフ状態となる。
また、交流電圧Vacが負極性の半周期における調光装置1の動作は、正極性の半周期と基本的に同様の動作となる。すなわち、交流電圧Vacが負極性の規定値−Vzcに達すると、第2検出部32が第2検出信号ZC2を出力する。第2検出信号ZC2を受けると、制御部5は、第1制御信号Sb1および第2制御信号Sb2を「ON」信号にする。そして、第2検出信号ZC2の発生時点が第1時点t1となる。
以下、制御部5は、交流電圧Vacが正極性の半周期の場合と同様に動作する。すなわち、制御部5は、第1時点t1において双方向スイッチ2が双方向オン状態となるように、双方向スイッチ2を制御する。また、制御部5は、第2時点t2において双方向スイッチ2が逆方向オン状態となるように、第3時点t3において双方向スイッチ2が双方向オフ状態となるように、双方向スイッチ2を制御する。
本実施形態の調光装置1は、以上説明した正極性の半周期の動作と負極性の半周期の動作とを交流電圧Vacの半周期ごとに交互に繰り返すことで、照明負荷6の調光を行う。ここで、第1時点t1から第2時点t2までの第2期間T2は、入力部4に入力された調光レベルに応じた時間(オン時間)であるので、半周期において一対の入力端子11,12間に双方向の電流を通過させる時間は、調光レベルに従って規定されることになる。以下では、交流電圧Vacの半周期において、一対の入力端子11,12間に双方向の電流を通過させる時間を「可変時間VT1」とする。
すなわち、照明負荷6の光出力を小さくする場合には可変時間VT1は短く、照明負荷6の光出力を大きくする場合には可変時間VT1は長く規定される。このため、入力部4に入力される調光レベルに応じて、照明負荷6の光出力の大きさを変えることが可能である。
上述のように、本実施形態の調光装置1は、交流電圧Vacの半周期において、入力部4に入力された調光レベルに応じて可変時間VT1を変化させる位相制御により、照明負荷6を調光している。このような位相制御により照明負荷6を調光する場合、図3に示すように、一対の入力端子11,12間に印加される電圧(以下、「端子間電圧」)V1の最大電圧Vmaxは、調光レベルに応じて変化する。つまり、調光レベルが低ければ端子間電圧V1の最大電圧Vmaxは小さくなり、調光レベルが高ければ端子間電圧V1の最大電圧Vmaxは大きくなる。なお、端子間電圧V1の最大電圧Vmaxは、交流電圧Vacの最大電圧よりも大きくなることはない。
なお、既に述べたように、交流電圧Vacの半周期の始点から一定時間(第1期間T1)が経過するまでは、双方向スイッチ2が双方向オフ状態であるため、一対の入力端子11,12間において双方向の電流が遮断されている。図3では、説明の便宜上、交流電圧Vacの半周期の始点から、一対の入力端子11,12間に双方向の電流を通過させていると仮定する。図1B、および後述する図4においても同様である。
ところで、本実施形態の調光装置1ではなく、一般的な調光装置は、起動すると、起動前に入力されていた調光レベルに応じた光出力の大きさとなるように照明負荷を調光する。したがって、起動前に入力されていた調光レベルが低ければ、調光装置の起動時に照明負荷に印加される電圧も小さくなる。
ここで、照明負荷6は、多種多様な製造業者により製造されており、品質も千差万別である。したがって、照明負荷6によっては、印加される電圧が小さいことにより点灯回路62が起動せず、照明負荷6が点灯しない可能性がある。つまり、このような照明負荷6に一般的な調光装置を用いる場合、起動前に入力されていた調光レベルが低ければ、調光装置の起動時において、照明負荷6に印加される電圧が点灯回路62を起動させるために必要な電圧(電力)を満たさず、点灯回路62の起動に失敗する可能性がある。
照明負荷6の点灯回路62の起動に失敗した場合、ユーザが単に調光レベルを上げる操作を行ったとしても、照明負荷6は点灯しない。この場合、照明負荷6を点灯させるためには、ユーザは、調光レベルを上げた状態で調光装置の電源を落とし、再度、調光装置を起動させるという煩雑な手順を踏む必要がある。また、照明負荷6の点灯回路62の起動に失敗した場合、調光装置または照明負荷6が故障したとユーザが勘違いするおそれがある。
そこで、本実施形態の調光装置1では、制御部5は、図1Bに示すように、調光装置1の起動時から一定時間が経過するまでの起動期間CP1において、起動制御を実行している。そして、制御部5は、起動制御を実行した後、調光期間CP2において調光制御を実行している。
起動制御は、制御部5の起動時から一定時間の間、可変時間VT1を起動用時間ST1に設定する制御である。起動用時間ST1は、入力部4に入力される調光レベルに依らない一定の時間であって、調光制御での可変時間VT1よりも長い時間に設定される。また、起動用時間ST1は、一対の入力端子11,12間に印加される電圧(端子間電圧)V1の最大電圧Vmaxが、照明負荷6の点灯回路62を起動可能な電圧以上となるような時間であるのが好ましい。
調光制御は、位相検出部3からの検出信号に基づいて、交流電圧Vacの半周期のうちの可変時間VT1の間、一対の入力端子11,12間において双方向の電流を通過させるように双方向スイッチ2を制御する制御である。調光制御では、可変時間VT1は、入力部4に入力された調光レベルに応じて決まる。
ここでは、調光装置1の起動時において、照明負荷6の光出力の大きさは、調光レベルに応じた光出力の大きさよりも大きくなる。そして、調光装置1が起動した後に、照明負荷6の光出力の大きさが、調光レベルに応じた光出力の大きさとなる。
つまり、本実施形態の調光装置1では、起動時において、種々の照明負荷6の点灯回路62を起動可能と想定される電圧(電力)を、照明負荷6に与えることが可能である。このため、本実施形態の調光装置1では、起動時において、照明負荷6の点灯回路62の起動に失敗する可能性を低減することができ、結果として、照明負荷6が点灯しない可能性を低減することができる。したがって、本実施形態の調光装置1は、点灯回路62の起動に必要な電圧(電力)が高い照明負荷6に対しても適用することができるようになり、より多くの種類の照明負荷6に対応可能になる、という利点がある。
なお、本実施形態の調光装置1では、起動時において、可変時間VT1を調光レベルに応じた時間ではなく起動用時間ST1に設定する。このため、起動期間CP1では、照明負荷6の光出力の大きさが、調光レベルに応じた光出力の大きさ(つまり、ユーザが所望する光出力の大きさ)とは異なる可能性がある。しかしながら、起動制御を実行する起動期間CP1は、たとえば200〔ms〕と短いため、ユーザに違和感を与え難い。
ここで、本実施形態の調光装置1では、制御部5は、起動制御において、起動用時間ST1が可変時間VT1の可変範囲における最大値となるように制御している。可変時間VT1の可変範囲における最大値は、調光レベルの可変範囲の最大値であってもよいし、制御部5が可変時間VT1を制御可能な範囲における最大値であってもよい。たとえば、照明負荷6の光出力の大きさに応じて調光レベルが百分率で表されていると仮定する。そして、調光レベルの可変範囲の最大値が95%であったとすると、可変時間VT1の可変範囲における最大値は、95%であってもよいし、95%を超えた値であってもよい。
このように、本実施形態の調光装置1では、起動時において、照明負荷6に印加される電圧が最も大きくなる。言い換えれば、本実施形態の調光装置1では、起動時において、端子間電圧V1の最大電圧Vmaxが、交流電圧Vacの最大電圧に達する。このため、照明負荷6に印加される電圧(電力)が、点灯回路62の起動に必要な電圧(電力)を満たし易く、より多くの種類の照明負荷6に対応することが可能になる。
もちろん、起動用時間ST1を可変時間VT1の可変範囲における最大値にするか否かは任意である。つまり、起動用時間ST1は、端子間電圧V1の最大電圧Vmaxが交流電圧Vacの最大電圧に達するような時間である必要はない。
また、本実施形態の調光装置1では、制御部5は、図1Bに示すように、起動期間CP1と調光期間CP2との間であるフェード期間CP3において、フェード制御を実行している。つまり、制御部5は、起動制御を実行する起動期間CP1と調光制御を実行する調光期間CP2との間において、時間経過に伴って徐々に短くなるように可変時間VT1を制御するフェード制御を実行している。
このため、本実施形態の調光装置1では、照明負荷6の光出力の大きさが、調光レベルに応じた光出力の大きさまで急激に変化し難く、ユーザに与える違和感を低減することができる。もちろん、制御部5がフェード制御を実行するか否かは任意である。なお、起動制御およびフェード制御を実行する期間(起動期間CP1およびフェード期間CP3)は、1秒以内であるのが好ましい。
また、本実施形態の調光装置1では、制御部5は、いわゆる逆位相制御方式(トレーリングエッジ方式)により照明負荷6の点灯および調光を行っている。つまり、制御部5は、位相検出部3からの検出信号に基づいて、交流電圧Vacの半周期の始点(ゼロクロス点)から可変時間VT1が経過した時点において、双方向スイッチ2がオン状態からオフ状態に切り替わるように双方向スイッチ2を制御している。
このため、本実施形態の調光装置1では、照明負荷6に対して交流電圧Vacのゼロクロス点から電力供給を開始するため、電力供給開始時の電流波形歪みを小さく抑えることができる。これにより、調光装置1に接続可能な照明負荷6の数(灯数)を増やしたり、うなり音の発生を抑制できたりする利点がある。
もちろん、制御部5が逆位相制御方式で照明負荷6の点灯および調光を行うか否かは任意である。たとえば、制御部5は、図4に示すように、いわゆる正位相制御方式(リーディングエッジ方式)により照明負荷6の点灯および調光を行ってもよい。正位相制御方式では、制御部5は、交流電圧Vacの半周期の途中から終点(ゼロクロス点)までの期間において可変時間VT1を設けている。なお、図4に示す例では、制御部5はフェード制御を実行していないが、起動期間CP1と調光期間CP2との間においてフェード制御を実行してもよい。
また、本実施形態の調光装置1は、起動時において、種々の照明負荷6の点灯回路62を起動可能と想定される電圧(電力)を照明負荷6に与えることができるように、起動用時間ST1を設定する。したがって、起動前に入力部4に入力されている調光レベルによっては、たとえば図5に示すように、起動用時間ST1が調光制御での可変時間VT1よりも短くなる場合がある。つまり、本実施形態の調光装置1は、点灯回路62を起動可能と想定される電圧(電力)を照明負荷6に与えることができれば、図5に示すような起動制御および調光制御を許容する。
本実施形態の調光装置1は、光源としてLED素子61を備えた照明負荷6に限らず、たとえば有機EL(Electroluminescence)素子などを光源とした様々な照明負荷6に適用可能である。
<照明システム>
以下、本実施形態の調光装置1が用いられる照明システム100について説明する。照明システム100は、図6に示すように、伝送ユニット101と、複数(ここでは、2つ)の調光装置1とを備える。また、照明システム100は、1つの操作端末102をさらに備える。
これらの伝送ユニット101、調光装置1および操作端末102は、2線式(図では1線で表す)の信号線103により互いに電気的に接続されている。また、調光装置1および操作端末102には、固有のアドレスが設定される。伝送ユニット101は、これらのアドレスを用いて調光装置1および操作端末102を個別に認識する。
調光装置1は、接続線104により対応する照明負荷6に電気的に接続されている。また、調光装置1は、交流電源7からの供給電力により、制御電源および駆動電源を生成する。制御電源は、制御部5の動作用の電源である。駆動電源は、スイッチ駆動部8の駆動用の電源である。操作端末102は、入力部4と同様に、たとえば可変抵抗器やロータリスイッチ、タッチパネルなどで構成される。
照明システム100では、たとえば双極性(±24V)の時分割多重信号からなる伝送信号によりデータの送受信が行われる。伝送ユニット101は、サイクリックに変更されるアドレスデータを含む伝送信号を信号線103に対して定期的に送出する。一方、調光装置1および操作端末102は、伝送信号に含まれるアドレスデータが自己のアドレスに一致すると、伝送信号に含まれる制御データを取り込む。そして、調光装置1および操作端末102は、伝送信号の信号返送期間において監視データを電流モード信号として返送する。
たとえば、操作端末102は、操作状態を監視データとして伝送ユニット101に返送する。調光装置1は、対応する照明負荷6の点灯状態を監視データとして伝送ユニット101に返送する。なお、電流モード信号とは、信号線103の線間を開放した状態と、線間に低インピーダンスの素子を接続した状態との切り替えによって生じる電流変化で表される信号である。
上記構成の照明システム100によれば、ユーザが操作端末102を操作すると、操作端末102から伝送ユニット101に対して、信号線103を介して操作信号が送信されることになる。ここでいう操作信号は、ユーザの操作に応じて操作端末102で発生する信号であって、操作端末102から伝送ユニット101へ送信される電流モード信号である。
操作端末102からの操作信号を受信した伝送ユニット101は、ユーザの操作に応じた調光レベルを表す信号を、信号線103を介して調光装置1へ送信する。そして、調光装置1では、調光レベルを表す信号を入力部4で受け付けることで、対応する照明負荷6を調光する。ここでは、ユーザが操作端末102を操作することにより、操作端末102に対応付けられた複数の照明負荷6が一括して調光される。もちろん、操作端末102は、伝送ユニット101を介して、複数の調光装置1に対して個別に調光レベルを表す信号を送信するように構成されていてもよい。この構成では、ユーザが操作端末102を操作することで、複数の照明負荷6を個別に調光可能である。
(実施形態2)
本実施形態の調光装置1Aは、図7に示すように、切替部9をさらに備えている点で、実施形態1の調光装置1と相違する。以下、実施形態1の調光装置1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
切替部9は、ユーザによって操作される操作部から、制御モードを表す信号を受け付け、制御部5に切替信号として出力する。切替部9は、切替信号を出力するのに際して、受け付けた信号を加工してもよいし、しなくてもよい。切替信号とは、制御部5の制御モードを指定する信号である。
制御モードは、第1モードおよび第2モードの2つである。第1モードでは、制御部5は、実施形態1の調光装置1と同様に、調光装置1Aの起動時において、起動制御を実行した後に調光制御を実行する。なお、第1モードにおいては、制御部5は、フェード制御を併せて実行してもよい。第2モードでは、制御部5は、調光装置1Aの起動時において、起動制御を実行せずに調光制御を実行する。
なお、操作部は、入力部4と同様に、ユーザの操作を受けて切替部9に制御モードを表す信号を出力する構成であればよく、たとえば可変抵抗器やロータリスイッチ、タッチパネルなどである。その他、操作部は、たとえばリモートコントローラやスマートフォンなどの通信端末であってもよい。
また、切替部9は、入力部4の機能の一部として構成されていてもよい。たとえば、入力部4の操作部がタッチパネルで構成されている場合、タッチパネルを操作することで切替部9の機能を発揮できるようにしてもよい。
ここで、実施形態1の調光装置1における起動制御は、全ての照明負荷6に必要なわけではない。つまり、照明負荷6によっては、調光装置1の起動時において、起動前に入力されていた調光レベルが調光範囲の最小値であったとしても、点灯回路62を起動可能である。このような照明負荷6を調光する場合は、調光装置1の起動時においてユーザが違和感を覚え難くなるように、照明負荷6の光出力の大きさが即座に調光レベルに応じた光出力の大きさとなることが好ましい。
そこで、本実施形態の調光装置1Aでは、上述のように、制御部5は、起動制御および調光制御を実行する第1モードと、制御部5の起動時から調光制御を実行する第2モードとの2つの制御モードを有している。そして、本実施形態の調光装置1Aは、外部からの操作により、制御部5を第1モードおよび第2モードのいずれか一方に切り替える切替部9をさらに備えている。
つまり、本実施形態の調光装置1Aでは、起動時における制御部5の制御モードをユーザの意思により選択することが可能である。このため、本実施形態の調光装置1Aでは、ユーザの意思を尊重して照明負荷6を調光することができる。