JP2017067057A - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】スクロール圧縮機(1)のクランク室(21a)からオルダム室(43)への潤滑油の供給を確実に行えるようにして、圧縮室(26a,26b)への給油量が少なくなるのを抑える。
【解決手段】圧縮機構(20)が固定されるハウジング(21)に、スラスト弾性溝(50)とオルダム室(43)とを連通する油連通路(51)を形成する。
【選択図】図2
【解決手段】圧縮機構(20)が固定されるハウジング(21)に、スラスト弾性溝(50)とオルダム室(43)とを連通する油連通路(51)を形成する。
【選択図】図2
Description
本発明は、圧縮機構が固定されるハウジングにスラスト弾性溝が形成されたスクロール圧縮機に関し、特に、クランク室からオルダム室を介して圧縮室へ給油をするための給油構造に関するものである。
従来、スクロール圧縮機において、圧縮機構が固定されるハウジングにスラスト弾性溝を形成する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。スラスト弾性溝は、ハウジングの上端面から所定寸法の位置でクランク室の外周方向へ向かってのびる環状の溝であり、このスラスト弾性溝を形成することによりハウジングの上端部に弾性を持たせるものである。そして、ハウジングにスラスト弾性溝を形成すると、その弾性によりハウジングと可動スクロールのスラスト摺動面の密着性が高くなり、可動スクロールの安定性が向上する。
一方、スラスト弾性溝を形成する構造にすると、ハウジングと可動スクロールのスラスト摺動面の密着性が高くなり、クランク室からスラスト摺動面を介してオルダム室に潤滑油が供給されにくくなってしまう。スラスト弾性溝が形成されないタイプの圧縮機構では、オルダム室に供給された潤滑油がオルダム継手の動作に伴って飛沫になり、圧縮室に供給されるが、スラスト弾性溝を形成することによってオルダム室の潤滑油自体が少なくなると、オルダム室から圧縮室への給油量も少なくなってしまう。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クランク室からオルダム室への潤滑油の供給を確実に行えるようにして、圧縮室への給油量が少なくなるのを抑えることである。
第1の発明は、固定スクロール(22)及び可動スクロール(23)と、両スクロール(22,23)を保持するハウジング(21)と、該ハウジング(21)と可動スクロール(23)の間に設けられて該ハウジング(21)に対する可動スクロール(23)の動作を制限するオルダム継手(40)とを有する圧縮機構(20)を備え、該ハウジング(21)には、固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の間のスラスト摺動面で両スクロール(22,23)を圧接させるためのスラスト弾性溝(50)と、上記オルダム継手(40)を可動に収容するオルダム室(43)とが形成されたスクロール圧縮機を前提としている。
そして、このスクロール圧縮機では、上記ハウジング(21)に、上記スラスト弾性溝(50)とオルダム室(43)とを連通する油連通路(51)が形成されていることを特徴としている。
この第1の発明では、ハウジング(21)にスラスト弾性溝(50)が形成されているので、ハウジング(21)と可動スクロール(23)との密着性が高くなり、可動スクロール(23)の位置が安定する。一方、この発明ではスラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に油が供給される。
第2の発明は、第1の発明において、上記油連通路(51)が、上記スラスト弾性溝(50)から上記スラスト摺動面に開口する第1通路(52)と、該スラスト摺動面における第1通路(52)の開口部からオルダム室(43)に連通する第2通路(53)とを有していることを特徴としている。
この第2の発明では、スラスト弾性溝(50)からスラスト摺動面に向かって、潤滑油が油連通路(51)の第1通路(52)と第2通路(53)を通り、オルダム室(43)に供給される。
第3の発明は、第2の発明において、上記第2通路(53)のオルダム室(43)側の出口が、上記圧縮機構(20)における冷媒吸入口(27a)の近傍に配置されていることを特徴としている。
この第3の発明では、スラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通る油は、圧縮機構(20)における冷媒吸入口(27a)の近傍でオルダム室(43)に供給される。
第4の発明は、第1の発明において、上記油連通路(51)が、上記ハウジング(21)内で上記スラスト弾性溝(50)から上記オルダム室(43)に連通するハウジング内通路(54,55)であることを特徴としている。
第5の発明は、第4の発明において、上記ハウジング内通路(54)が、上記スラスト弾性溝(50)から上記スラスト摺動面と平行にのびるハウジング内第1通路(54a)と、ハウジング内第1通路(54a)の端部から該ハウジング(21)の軸方向にのびてオルダム室(43)に連通するハウジング内第2通路(54b)とを有していることを特徴としている。
第6の発明は、第4の発明において、上記ハウジング内通路(55)が、上記スラスト弾性溝(50)と上記オルダム室(43)とに連通する直線状の通路(55)であり、該ハウジング内通路(55)が上記スラスト摺動面に対して傾斜して形成されていることを特徴としている。
上記第4から第6の発明では、スラスト弾性溝(50)の中の潤滑油は、ハウジング(21)内に形成された油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に供給される。
本発明によれば、ハウジング(21)にスラスト弾性溝(50)が形成されているので、ハウジング(21)と可動スクロール(23)との密着性が高くなって可動スクロール(23)の位置が安定する一方、スラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に油が供給されるので、オルダム室(43)の潤滑油が少なくなるのを抑えられる。従って、圧縮機構(20)の動作に伴うオルダム継手(40)の動きにより、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室に供給される量も少なくならないので、潤滑不良を抑えられる。
上記第2の発明によれば、油連通路(51)を第1通路(52)と第2通路(53)から構成したことにより、潤滑油をオルダム室(43)に確実に供給できる。従って、圧縮機構(20)の動作に伴うオルダム継手(40)の動きにより、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室に供給される量が少なくなるのを確実に抑えられるので、潤滑不良も確実に抑えられる。
上記第3の発明によれば、スラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通る油が、圧縮機構(20)における冷媒吸入口(27a)の近傍でオルダム室(43)に供給されるので、潤滑油をより確実に圧縮室に供給できる。
上記第4から第6の発明によれば、スラスト弾性溝(50)の中の潤滑油が、ハウジング(21)内に形成されたハウジング内通路(54,55)を通ってオルダム室(43)に確実に供給される。したがって、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室に供給される量が少なくなるのを確実に抑えられるので、潤滑不良も確実に抑えられる。特に、第6の発明ではハウジング内通路(55)を直線状の通路(55)にしているので、加工を容易に行うことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
本発明の実施形態1について説明する。
図1は、この実施形態1に係るスクロール圧縮機(1)の縦断面構造図である。このスクロール圧縮機(1)は、図示していないが、冷媒回路において蒸発器で気化した低圧の冷媒ガスを圧縮して高圧にし、凝縮器(放熱器)へ送り出すものである。
このスクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、このケーシング(10)内に収納された圧縮機構(スクロール圧縮機構)(20)と、この圧縮機構(20)を駆動するために圧縮機構(20)とともにケーシング(10)内に収納された電動機(30)とを備えている。圧縮機構(20)はケーシング(10)内の上部の位置に配置され、電動機(30)はケーシング(10)内の下部(圧縮機構(20)の下方)の位置に配置されている。
上記ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上部開口を閉塞する上部鏡板(12)と、この胴部(11)の下部開口を閉塞する下部鏡板(13)とを有している。上部鏡板(12)と下部鏡板(13)は、胴部(11)の上下の開口端部に溶接でそれぞれ固定されている。
上記ケーシング(10)の胴部(11)には、その中央よりも若干下方の位置に、吸入管(14)が設けられている。この吸入管(14)からは、ケーシング(10)内における電動機(30)の周囲の吸入空間(S1)に低圧の冷媒ガスが導入される。そして、この低圧の冷媒ガスは、圧縮機構(20)が有する吸入口(27a)を介して、ケーシング(10)内の吸入空間(S1)から圧縮機構(20)に導入されるようになっている。なお、吸入空間(S1)と吸入口(27a)とは、後述の上部ハウジング(21)の開口を介して連通している。このように、本実施形態の圧縮機は、いわゆる低圧ドーム型のスクロール圧縮機(1)である。
なお、この実施形態のスクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)内の空間のほぼ全体を占める圧縮機構(20)の下方の空間が低圧の吸入空間(S1)であるのに対して、圧縮機構(20)の上方の小さな空間は吐出ガスが満たされる高圧空間(S2)として構成されている。本実施形態のように圧縮機構の上方の小さな空間が高圧空間(S2)である場合も、圧縮機の形式としては低圧ドーム型と称するのが一般的である。なお、高圧空間(S2)に充満する高圧ガスをケーシング(10)の外へ吐出するため、上部鏡板(12)の側部には吐出管(15)が設けられている。
図2は上記圧縮機構(20)の部分拡大断面図である。上記圧縮機構(20)は、ケーシング(10)の胴部(11)に固定された上部ハウジング(21)に固定されており、この上部ハウジング(21)の上面に固定された固定スクロール(22)と、固定スクロール(22)に対して自転をせずに所定の周回軌道上を公転するように構成された可動スクロール(23)とを有している。
図1に示すように、上部ハウジング(21)には、上記電動機(30)を挟んで下方に配置された下部ハウジング(24)が長寸のボルト(25)で固定されている。上部ハウジング(21)は胴部(11)の上端部側に溶接で固定され、下部ハウジング(24)は胴部(11)の下端部側に設けられているリテーナープレート(25)にボルトで固定されている。上部ハウジング(21)は、上面側の中央部分に凹陥部(21a)を有している。また、上部ハウジング(21)の上面は可動スクロール(23)を載置する受け面として構成されている。そして、上部ハウジング(21)と可動スクロール(23)との軸方向圧接面がスラスト軸受け面になっている。
上記可動スクロール(23)は、上部ハウジング(21)の上面に載置される可動側鏡板(可動側平板部)(23a)と、この可動側鏡板(23a)の上面に立設された渦巻き壁状の可動側ラップ(23b)とから構成されている。可動側鏡板(23a)の下面には円筒状のボス(23c)が形成されている。この可動スクロール(23)のボス(23c)には、上記電動機(30)に連結されている駆動軸(クランク軸)(35)の上端部がスライドブッシュ(38)を介して連結され、電動機(30)が圧縮機構(20)を駆動するように構成されている。駆動軸(35)の上端部は、後述するようにクランク軸の偏心ピン(35a)として構成されている。
上部ハウジング(21)の上面には、上記固定スクロール(22)がボルトなどの締結手段によって固定され、ハウジング(21)と固定スクロール(22)の間に可動スクロール(23)が位置変化可能に保持されている。固定スクロール(22)は、固定側鏡板(22a)と、この固定側鏡板(22a)の下面に立設された渦巻き状の固定側ラップ(22b)と、固定側鏡板(22a)と連接して固定側ラップ(22b)の周囲に位置する固定側平板部(22d)とから構成されている。この固定側ラップ(22b)と上記可動側ラップ(23b)は、互いに噛合した状態で可動スクロール(23)が自転をせずに固定スクロール(22)に対して公転可能となるようなインボリュート曲線に基づいて形成されている。
また、上記固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の間には、両スクロール(22,23)が軸方向に圧接しながら摺動する対向面(P)が形成されている。この対向面(P)は、可動側平板部である可動側鏡板(23a)の上面と固定側平板部(22d)の下面とから構成されており、可動側鏡板(23a)の上面と固定側平板部(22d)の下面が、微細な隙間を介して対向するようになっている。この隙間には、後述するように潤滑油が供給されるので、潤滑油がシール剤になって冷媒の漏れが抑えられる。
ハウジング(21)と可動スクロール(23)の間には、可動スクロール(23)の自転を禁止して公転だけを許容する(動作を制限する)ためのオルダム継手(40)が配置されている。オルダム継手(40)は、上部ハウジング(21)の平面図である図3に仮想線で示しているように円環状のリング部材であって、上面と下面にはリングの中心を挟んで対向するキー(41,42)が一対ずつ形成されている。このオルダム(40)継手の上面の一対のキーと(41)下面の一対のキー(42)は位相が90°ずれている。そして、上記可動スクロール(23)には、オルダム継手(40)の上面のキー(41)が径方向へスライド可能に嵌合するキー溝(23d)が形成されている。また、上部ハウジング(21)には、上記オルダム継手(40)の下面のキーがスライド可能に嵌合するキー溝(21b)が形成されている。
図4に示すように、固定側鏡板(22a)と可動側鏡板(23a)と固定側ラップ(22b)と可動側ラップ(23b)の間には、複数の圧縮室(26a,26b)が区画形成されている。これらの圧縮室(26a,26b)には、固定側ラップ(22b)の外周面と可動側ラップ(23b)の内周面の間に形成される圧縮室(26a)と、固定側ラップ(22b)の内周面と可動側ラップ(23b)の外周面の間に形成される圧縮室(26b)とが含まれている。
上記圧縮室(26a,26b)は、外周側の比較的大きな空間が可動スクロール(23)の公転に伴って縮小しながら内周側へ移動して小さな空間になるように構成されており、外周側が低圧側、内周側が高圧側になっている。そして、上記圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内における上記電動機(30)の周囲の低圧空間(吸入空間)(S1)に導入された低圧ガスを吸入するように該低圧空間(S1)と連通する上記吸入口(27a)を、固定スクロール(22)の下面の外周部分に有している。
上記圧縮機構(20)が有する固定スクロール(22)の上部の中心部分には、圧縮室(26a,26b)から高圧空間(S2)に連通する吐出口(27b)が形成されている。固定スクロール(22)には、この吐出口(27b)からの冷媒の逆流を防止するための逆止弁(28)(図1参照)が装着されている。また、固定スクロール(22)の上面には吐出口(27b)を周りから囲むように、冷媒中の油を捕捉する環状のデミスタ(39)が装着されている。上記吐出口(27b)を通って圧縮室(26a,26b)から流出した高圧の冷媒ガスは、上記高圧空間(S2)に流出する。この高圧の冷媒ガスをケーシング(10)から吐出するために、上記ケーシング(10)における上部鏡板(12)の側部に上述の吐出管(15)が設けられている。この吐出管(15)を通ってケーシング(10)から流出した高圧の冷媒は、冷媒回路の凝縮器(放熱器)へ供給される。冷媒は、その後、冷媒回路中を流れる際に膨張機構による膨張行程と蒸発器による蒸発行程を経た後、再び圧縮機(1)に吸入される。
上記電動機(30)は、上部ハウジング(21)と下部ハウジング(24)の間に固定された大径円筒状のステータ(31)と、このステータ(31)の内部に回転自在に配置された小径円筒状のロータ(32)とを有している。ステータ(31)にはコイルが巻き付けられ、ロータ(32)には永久磁石が埋め込まれている。上記ステータ(31)のコイルに電流を流すと回転磁界が発生し、ロータ(32)がステータ(31)内で回転する。
ロータ(32)には、上記駆動軸(35)(クランク軸)が固定されている。この駆動軸(35)は、主軸部(35b)と、この主軸部(35b)の上端に形成された上記偏心ピン(35a)とを有している。この偏心ピン(35a)は、主軸部(35b)の回転中心から所定量だけ偏心した位置に形成され、上述したように上記可動スクロール(23)のボス(23c)にスライドブッシュ(38)を介して嵌合している。なお、この嵌合部分には滑り軸受け(36)が装着されている。
上記駆動軸(35)が回転すると、上記偏心ピン(35a)とそれに嵌合している可動スクロール(23)のボス(23c)は、駆動軸(35)の回転中心の周りの所定の旋回軌道上を偏心回転運動(公転)する。このとき、可動スクロール(23)は、オルダム継手による動作の規制により、自転をせずに公転だけを行う。上部ハウジング(21)の凹陥部(21a)は、上記ボス(23c)の偏心回転運動を許容する大きさになる直径寸法で形成されたクランク室である。
また、上部ハウジング(21)と下部ハウジング(24)には、上記駆動軸(35)を回転自在に支持する転がり軸受け(29a,29b)が装着されている。
また、上部ハウジング(21)と下部ハウジング(24)には、上記駆動軸(35)を回転自在に支持する転がり軸受け(29a,29b)が装着されている。
上記ケーシング(10)の底部には、冷凍機油を貯留するための油溜まり(16)が形成されている。つまり、油溜まり(16)は低圧空間(S1)内に形成されている。上記駆動軸(35)の下端部には、遠心ポンプ(37)が装着されている。駆動軸(35)の内部には、遠心ポンプ(37)に連通して上方へのびる給油通路(35c)が、該駆動軸(35)の下端部から上端部まで形成されている。駆動軸(35)の偏心ピン(35a)の上端面と可動側鏡板(23a)の下面との間には、油の流入する空間である油受け部(46)が設けられている。油受け部(46)に流入した油は、そこからさらに上記クランク室(21s)に流入する。
本実施形態では、上部ハウジング(21)には、固定スクロー(22)ルと可動スクロール(21)の間のスラスト摺動面(P)で両スクロール(21,22)を圧接させるため、環状のスラスト弾性溝(50)が形成されている。また、上記上部ハウジング(21)及び固定スクロール(22)には、上記オルダム継手(40)を可動に収容するオルダム室(43)が形成されている。
そして、上記上部ハウジング(21)には、上記スラスト弾性溝(50)とオルダム室(43)とを連通する油連通路(51)が形成されている。この給油通路は、上記スラスト弾性溝(50)から上記スラスト摺動面(P)に開口する第1通路(52)と、該スラスト摺動面における第1通路(52)の開口部からオルダム室(43)に連通する第2通路(53)とを含んでいる。また、上記第2通路(53)は、オルダム室(43)側の出口が、上記圧縮機構(20)における冷媒吸入口(27a)の近傍に配置されている。
−運転動作−
次に、このスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
次に、このスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
電動機(30)に通電すると、ロータ(32)が回転し、それに伴って駆動軸(35)が回転をする。駆動軸(35)が回転すると、駆動軸(クランク軸)(35)の回転中心の周りの所定の周回軌道上を偏心ピン(35a)が偏心回転運動(旋回)をする。したがって、可動スクロール(23)も偏心回転運動をする。このとき、可動スクロール(23)は、オルダム継手によって自転をすることが禁止されているので、固定スクロール(22)に対して公転運動だけをする。
可動スクロール(23)が公転すると、固定側ラップ(22b)と可動側ラップ(23b)の間に形成されている圧縮室(26a,26b)のうち、最外周にあってまだ空間が閉じ切られておらず、容積が拡大中の圧縮室(26a,26b)にケーシング(10)内の低圧の冷媒ガスが吸入される。可動スクロール(23)の公転が進むと最外周の圧縮室(26a,26b)が閉じ切られて閉空間となり、さらに可動スクロール(23)の公転が進むと圧縮室(26a,26b)の容積が縮小するので冷媒ガスが圧縮されていく。圧縮室(26a,26b)は縮小しながら圧縮機構(20)の中心へ向かって移動し、やがて圧縮機構(20)の中心部にある吐出口(27b)と連通する。そうすると、高圧になった冷媒ガスが圧縮機構(20)の上方の高圧空間(S2)へ吐出され、さらに吐出管(15)から冷媒回路の凝縮器へ流れていく。なお、スクロール式の圧縮機構(20)は、上述したように複数の圧縮室(26a,26b)を有している。そして、すべての圧縮室(26a,26b)で、上記と同様の動作が、次々と繰り返して行われる。
駆動軸(35)が回転をするとき、ケーシング(10)の下部の油溜まり(16)に溜まっている冷凍機油は、遠心ポンプ(37)の作用で駆動軸(35)の給油通路(35c)を上昇し、駆動軸(35)の上端面の油受け部(46)に流入する。油受け部(46)に流入した油は、さらにクランク室(21a)に流入する。クランク室(21a)の油はスラスト弾性溝(50)に入り、そこから油連通路(51)を通ってオルダム室(43)へ入る。そして、オルダム室(43)の中で動くオルダム継手(40)により冷凍機油がスラスト摺動面(P)に供給され、さらに圧縮室(26a,26b)に入る。本実施形態では、上部ハウジング(21)にスラスト弾性溝(50)を形成しているので、上部ハウジング(21)と可動スクロール(23)との密着性が高くなって可動スクロール(23)の動作が安定するとともに、スラスト弾性溝(50)からオルダム室(43)に連通する油連通路(51)を上部ハウジング(21)に形成しているので、スラスト摺動面(P)に適量の油が供給される。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上述したように、上部ハウジング(21)にスラスト弾性溝(50)が形成されているので、上部ハウジング(21)と可動スクロール(23)との密着性が高くなって可動スクロール(23)の動作が安定する一方、スラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に油が供給される。したがって、圧縮機構(20)の動作に伴うオルダム継手(40)の動きにより、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室(26a,26b)に供給される量が少なくなるのを確実に抑えられるので、潤滑不良を確実に抑えられる。
本実施形態によれば、上述したように、上部ハウジング(21)にスラスト弾性溝(50)が形成されているので、上部ハウジング(21)と可動スクロール(23)との密着性が高くなって可動スクロール(23)の動作が安定する一方、スラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に油が供給される。したがって、圧縮機構(20)の動作に伴うオルダム継手(40)の動きにより、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室(26a,26b)に供給される量が少なくなるのを確実に抑えられるので、潤滑不良を確実に抑えられる。
特に、スラスト弾性溝(50)から油連通路(51)を通る冷凍機油が、圧縮機構(20)における冷媒吸入口(27a)の近傍でオルダム室(43)に供給されるので、冷凍機油をより確実に圧縮室に供給できる。
また、油連通路(51)を第1通路(52)と第2通路(53)とから構成したことにより、潤滑油をオルダム室(43)を介して圧縮室(26a,26b)へ確実に供給できる構造を、簡単に実現できる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。
本発明の実施形態2について説明する。
実施形態2は、図5に示すように、油連通路(51)の構成を上記実施形態1とは異なるようにした例である。
具体的には、この実施形態2において、上記油連通路(51)は、上記上部ハウジング(21)内で上記スラスト弾性溝(50)から上記オルダム室(43)に連通する通路である。具体的には、上記油連通路(51)は、上記スラスト弾性溝から上記スラスト摺動面と平行にのびるハウジング内第1通路(54a)と、ハウジング内第1通路(54a)から上部ハウジング(21)の軸方向上方へのびてオルダム室(43)に連通するハウジング内第2通路(54b)とを有している。
その他の構成は実施形態1と同じである。
この実施形態2によれば、スラスト弾性溝(50)の中の潤滑油が、上部ハウジング(21)内に形成された油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に確実に供給される。したがって、実施形態1と同様に、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室に供給される量が少なくなるのを確実に抑えられるので、潤滑不良も確実に抑えられる。
−実施形態2の変形例−
上記実施形態2の給油通路は、図6に示すように、上記スラスト弾性溝(50)と上記オルダム室(43)とに連通する直線状の通路(55)にしてもよい。この変形例において、上記油連通路(51)は、上記スラスト摺動面(P)に対して傾斜して形成されている。
上記実施形態2の給油通路は、図6に示すように、上記スラスト弾性溝(50)と上記オルダム室(43)とに連通する直線状の通路(55)にしてもよい。この変形例において、上記油連通路(51)は、上記スラスト摺動面(P)に対して傾斜して形成されている。
この実施形態2の変形例によれば、上記実施形態2と同様に、スラスト弾性溝(50)の中の潤滑油が、上部ハウジング(21)内に形成された油連通路(51)を通ってオルダム室(43)に確実に供給されるので、オルダム室(43)の潤滑油が圧縮室(26a,26b)に供給される量が少なくなるのを確実に抑え、潤滑不良も確実に抑えられる。また、この変形例では、油連通路(51)を直線状の通路にしているので、加工を容易に行うことができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、本発明を低圧ドームタイプのスクロール圧縮機に適用した例であるが、本発明はケーシング内が高圧圧力になる高圧ドームタイプのスクロール圧縮機であっても適用可能である。
また、油連通路(51)は、上記各実施形態で説明した構成に限らず、スラスト弾性溝(50)とオルダム室(43)とを連通するものであれば、構成を適宜変更してもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、圧縮機構のハウジングにスラスト弾性溝が形成されたスクロール圧縮機において、クランク室からオルダム室を介して圧縮室へ給油をするための給油構造について有用である。
1 スクロール圧縮機
20 圧縮機構(スクロール圧縮機構)
21 上部ハウジング
22 固定スクロール
23 可動スクロール
27a 冷媒吸入口
40 オルダム継手
43 オルダム室
50 スラスト弾性溝
51 給油通路
52 第1通路
53 第2通路
54a ハウジング内第1通路
54b ハウジング内第2通路
55 直線状の通路
P スラスト摺動面
20 圧縮機構(スクロール圧縮機構)
21 上部ハウジング
22 固定スクロール
23 可動スクロール
27a 冷媒吸入口
40 オルダム継手
43 オルダム室
50 スラスト弾性溝
51 給油通路
52 第1通路
53 第2通路
54a ハウジング内第1通路
54b ハウジング内第2通路
55 直線状の通路
P スラスト摺動面
Claims (6)
- 固定スクロール(22)及び可動スクロール(23)と、両スクロール(22,23)を保持するハウジング(21)と、該ハウジング(21)と可動スクロール(23)の間に設けられて該ハウジング(21)に対する可動スクロール(23)の動作を制限するオルダム継手(40)とを有する圧縮機構(20)を備え、
上記ハウジング(21)には、固定スクロール(22)と可動スクロール(23)の間のスラスト摺動面で両スクロール(22,23)を圧接させるためのスラスト弾性溝(50)と、上記オルダム継手(40)を可動に収容するオルダム室(43)とが形成されたスクロール圧縮機であって、
上記ハウジング(21)には、上記スラスト弾性溝(50)とオルダム室(43)とを連通する油連通路(51)が形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1において、
上記油連通路(51)は、上記スラスト弾性溝(50)から上記スラスト摺動面に開口する第1通路(52)と、該スラスト摺動面における第1通路(52)の開口部からオルダム室(43)に連通する第2通路(53)とを有していることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項2において、
上記第2通路(53)のオルダム室(43)側の出口が、上記圧縮機構(20)における冷媒吸入口(27a)の近傍に配置されていることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1において、
上記油連通路(51)は、上記ハウジング(21)内で上記スラスト弾性溝(50)から上記オルダム室(43)に連通するハウジング内通路(54,55)であることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項4において、
上記ハウジング内通路(54)は、上記スラスト弾性溝(50)から上記スラスト摺動面と平行にのびるハウジング内第1通路(54a)と、ハウジング内第1通路(54a)から該ハウジング(21)の軸方向にのびてオルダム室(43)に連通するハウジング内第2通路(54b)とを有していることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項4において、
上記ハウジング内通路(55)は、上記スラスト弾性溝(50)と上記オルダム室(43)とに連通する直線状の通路(55)であり、該ハウジング内通路(55)は上記スラスト摺動面に対して傾斜して形成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015197020A JP2017067057A (ja) | 2015-10-02 | 2015-10-02 | スクロール圧縮機 |
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Family
ID=58494374
Family Applications (1)
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JP2015197020A Pending JP2017067057A (ja) | 2015-10-02 | 2015-10-02 | スクロール圧縮機 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2017067057A (ja) |
-
2015
- 2015-10-02 JP JP2015197020A patent/JP2017067057A/ja active Pending
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