JP2017009158A - ミサイル防御システムとその方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】弾を直接ミサイルに衝突させずに、ミサイルを墜落又は進路変更させることができるミサイル防御システムとその方法を提供する。【解決手段】空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルAの予想経路P上の散布位置Qを算出する演算装置3と、散布位置Qに向けて発射される弾5と、散布装置11を制御する制御装置13と、を備える。散布位置Qは、弾5がミサイルAより先に到達できる予想経路上の位置である。弾5は、空中に散布される散布物質7と、散布物質7を空中に散布する散布装置11と、を有する。制御装置13は、散布位置Qで、散布物質7を散布するように散布装置11を制御する。【選択図】図2

Description

本発明は、空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルを対象とするミサイル防御システムとその方法に関する。
対艦ミサイル防御システムは、ミサイルの誘導を妨害するものと、ミサイルを直接破壊するものとに大別される。
前者には、例えばチャフロケット弾、長射程チャフロケット弾、コーナーリフレクタ型デコイ弾、IRデコイ弾、電波妨害弾、等が含まれる。
後者には、例えば近接防御火器システムや短距離艦対空誘導弾が含まれる。
コーナーリフレクタ型デコイ弾や電波妨害弾としては、例えば特許文献1に開示されている。
近接防御火器システムは、追尾レーダ、射撃指揮装置、多銃身機関砲が一体となっており、自律的にミサイルを捕捉し、機関砲の向きを制御し、発砲、撃墜する。
例えば短距離艦対空誘導弾は、セミアクティブレーダ誘導によりミサイルに向かって飛翔し、ミサイルを直接破壊する。このようなミサイルを直接破壊する防御システムは、例えば特許文献2、3に開示されている。
特開2001−91195号公報 特開平7−190695号公報 特表2007−510127号公報
ミサイルの誘導を妨害する対艦ミサイル防御システムでは、ミサイルの誘導システムを欺瞞できるか否かは、ミサイルのシーカの種類に依存する。シーカの種類を事前に把握するのは困難であるため、ミサイルの誘導を妨害する対艦ミサイル防御システムでいつも完全に対応できる保証はない。
また近接防御火器システムは、追尾レーダ、射撃指揮装置、多銃身機関砲、等の運用費用が高い。その上、一つの機関砲では、同時に到来する複数のミサイルに対応できない。
また、安全上の観点から、洋上では弾薬を補給できない。そのため、近接防御火器システムは、ミサイルに対応できる継続時間が短かった。
さらに従来の短距離艦対空誘導弾を使用した防御システムは、高速で飛翔する1基のミサイルに、同じく高速で飛翔させた誘導弾を衝突させようとするものである。ミサイルに誘導弾を着弾させるためには、ミサイルの位置、飛翔速度、予想経路等を正確に把握し、ミサイルの予想経路に交差する軌道で誘導弾を飛翔させる必要がある。その上、ミサイルと誘導弾の軌道は異なるため、ミサイルが、ミサイルの予想経路と誘導弾の軌道との交点に位置する正にその時に、誘導弾がその交点に位置していなければミサイルに着弾できない。その上、ミサイルの軌道は、天候や風向き、風速など、周辺の環境に左右される。
そのため短距離艦対空誘導弾を使用した防御システムで、ミサイルへの命中率を向上させるのは難しかった。
また短距離艦対空誘導弾は、セミアクティブレーダ誘導による誘導システムを有するため、1発の誘導弾の製造費用が高い。そのため命中率を上げるために短距離艦対空誘導弾を複数弾発射すると、1基のミサイルを撃墜するのに掛かる費用は高くなる。
さらに特許文献3には、迎撃体がミサイルと衝突するか否かを判断し、衝突しないと判断した場合に、迎撃体から運動エネルギロッド群から形成された雲をミサイルの軌道上に形成することが開示されている。ミサイルは、その運動エネルギロッド群の中を通過することにより、ロッドに衝突する。特許文献3には、運動エネルギロッド群のロッドが、六角形や円筒形断面等、様々な形状を有したタンタル製の多数の金属片であることが開示されている。
迎撃体とミサイルが衝突しないということは、ミサイルの予想経路と迎撃体の軌道のずれが大きい、もしくは迎撃体とミサイルとで、ミサイルの予想経路と迎撃体の軌道の交点に到着するタイミングが合っていないということを意味する。特許文献3のロッドは、肉眼でその形状を確認でき、衝突による運動エネルギでミサイルを破壊できるほどの大きさをもつ金属片である。特許文献3では、その大きさの金属片に、異なる方向に散開する運動エネルギを付加し、予想経路上に散開している。
金属片は、運動エネルギを付加されて高速で移動する。それゆえ、特許文献3の運動エネルギロッド群がミサイルの予想経路上に位置できるのはほんの一瞬にすぎない。ミサイルが、その一瞬に運動エネルギロッド群内を通過しなければ、ロッドで破壊されることはない。例えばミサイルの実際の飛翔速度が予想より遅く、運動エネルギロッド群の散布から2〜3秒後にミサイルがその位置を通過した場合、ミサイルはロッドに衝突しない。
したがって運動エネルギロッド群でミサイルを破壊するには、ミサイルの予想経路と速度に迎撃体の軌道や飛翔速度、タイミングを厳密に合わせなければならないため、特許文献3の迎撃体でミサイルを破壊できる可能性は、それほど高くなかった。
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、弾を直接ミサイルに衝突させずに、ミサイルを墜落又は進路変更させることができるミサイル防御システムとその方法を提供することにある。
本発明によれば、空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルの予想経路上の散布位置を算出する演算装置と、
空中に散布され前記ミサイルに吸い込まれ得る散布物質と、前記散布物質を前記空中に散布する散布装置と、を有し、前記散布位置に向けて発射される弾と、
前記散布装置を制御する制御装置と、を備え、
前記散布位置は、前記弾が前記ミサイルより先に到達できる前記予想経路上の位置であり、
前記散布物質は、燃焼により発熱するものであり、
前記制御装置は、前記散布位置で、前記散布物質を散布するように前記散布装置を制御する、ことを特徴とするミサイル防御システムが提供される。
また前記散布物質は、液体燃料であり、
前記散布装置は、前記散布により、前記空中を浮遊する大きさの前記液体燃料の液滴が複数密集して形成される燃料雲を前記散布位置に形成する。
また前記散布物質は、火薬又は固体燃料であり、
前記火薬又は前記固体燃料は、前記空中を浮遊する大きさの粒子の集合物であり、
前記散布装置は、前記散布により、複数の前記粒子が浮遊しながら密集して形成する燃料雲を前記散布位置に形成する。
また前記散布装置は、起爆可能な爆薬と、前記制御装置に制御され該爆薬に点火する点火装置と、を有し、
前記散布物質は、前記爆薬の周囲に配置される。
また前記散布物質は、気密の圧力容器内に納められた気体燃料であり、
前記散布装置は、爆発により前記圧力容器を破壊可能な爆薬と、前記制御装置に制御され該爆薬に点火する点火装置と、を有する。
また、本発明によれば、空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルの予想経路上の散布位置を算出し、
空中に散布され前記ミサイルに吸い込まれ得る燃焼により発熱する散布物質を有する弾を前記散布位置に向けて発射し、前記散布位置は、前記弾が前記ミサイルより先に到達できる前記予想経路上の位置であり、
前記散布位置の前記空中で前記弾から前記散布物質を散布する、ことを特徴とするミサイル防御方法が提供される。
上述した本発明の装置と方法によれば、ミサイルの予想経路上の散布位置を算出して、その散布位置に散布物質を散布する。散布物質は、燃焼により発熱する性質をもつ。散布物質は、空中に散布された状態で、ミサイルに吸い込まれ得る状態となっている。
一方、本発明の装置と方法は、空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルに対して使用される。
そのため予想経路を飛翔するミサイルは、散布位置を通過する際に、散布位置に散布された散布物質を空気と共に吸い込む。ミサイルは推力を得るために取り込んだ空気を圧縮し、燃焼している。したがって散布物質は空気の圧縮によって散布物質が濃縮され、燃焼される。
散布物質は、燃焼により発熱する性質を有するため、ミサイルの内部で燃焼され、発熱し、過剰燃焼を起こす。ミサイル内部は、過剰燃焼により圧力がさらに上昇し、過熱される。それによりミサイル内部が損傷し、推力が低下、又は消失する。
そのため、本発明の装置と方法は、ミサイルを内部から破壊できる。それにより本発明の装置と方法は、弾が直接ミサイルに命中しなくても、ミサイルを墜落又は進路変更させることができる。
本発明のミサイル防御システムが対象とするミサイルと本発明のミサイル防御システムの効果の説明図である。 本発明のミサイル防御システムの説明図である。 本発明の弾の断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明のミサイル防御システムが対象とするミサイルと本発明のミサイル防御システム1の効果の説明図である。図1(A)は、本発明のミサイル防御システム1が対象とするミサイルAであり、図1(B)は、ミサイルAのエンジンEの説明図である。図1(C)は、本発明のミサイル防御システム1の効果の説明図である。なお、図1(B)において、弾頭等の描写は省略している。
本発明は、空気を吸い込んで燃焼し、推進するミサイルA(以下、単にミサイルA)を対象とするミサイル防御システム1とその方法である。
一般にミサイルは、推進システムとして、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、ラムジェットエンジン、又は固体ロケットモータを有するものに分類される。本発明のミサイル防御システム1が対象とする「空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルA」は、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、及びラムジェットエンジンを搭載した、自由流を取り込みながら飛翔するエアーブリージングミサイルである。これらのエンジンEは、いずれも空気取り込み口Dと燃料噴射器Fとを有し、内部で燃料を燃焼する。これらのエンジンEは、特に100km以上の射程をもつ長距離ミサイルに搭載されている。以下、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、及びラムジェットエンジンを総称して単に「エンジンE」と呼ぶ。
本発明のミサイル防御システム1が対象とするミサイルAの例として、図1(B)にラムジェットエンジンを例示する。
ラムジェットエンジンは、ミサイルAの進行方向前方に開口した空気取り込み口Dと燃料噴射器F、保炎機Gを有する。ラムジェットエンジンは、超音速で飛翔することにより、空気取り込み口Dからエンジン内部に空気を取り込む。取り込んだ空気は、ラムジェットエンジンの形状と超音速の速度により圧縮されながら後方へ移動する。空気取り込み口Dの後方には、燃料噴射器Fと保炎機Gが設けられている。燃料噴射器Fは、その後方の保炎機Gに液体燃料fを噴射する。保炎機Gは、液体燃料fを着火し、着火した火炎を保持する。これにより燃料噴射器Fに噴射された液体燃料fは、圧縮空気で燃焼され燃焼ガスを発生する。燃焼ガスはミサイルAの後方に放出される。それによりミサイルAは推力を得る。ラムジェットエンジンを搭載したミサイルは、マッハ1.0から、マッハ3.0を超える速度で飛翔する。
なお、空気取り込み口Dと燃料噴射器Fを有し、エンジン内部で液体燃料fを燃焼させる点に関して、ラムジェットエンジンは、ターボファンエンジンとターボジェットエンジンと同様である。
ターボファンエンジンとターボジェットエンジンは、複数の動翼が取り付けられたタービンを回転させることにより空気取り込み口Dから取り込んだ空気を圧縮する。ターボファンエンジンは、亜音速飛翔の長距離ミサイルに使用されている。ターボジェットエンジンは、長距離ミサイルに最も広く使用されており、マッハ0.9〜マッハ2.5の速度でミサイルを飛翔させる。
このようにターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、及びラムジェットエンジンは、いずれも、取り込んだ空気をエンジンEの内部で圧縮し、その圧縮空気で燃料を燃焼することにより、推力を発生させている。
図2は、本発明のミサイル防御システムの説明図である。
はじめに、本発明のミサイル防御方法について説明する。
本発明のミサイル防御方法は、まずミサイルAの発射を把握し、予想経路P上の散布位置Qを算出する。
次いで、散布物質7を有する弾5を散布位置Qに向けて発射し、散布位置Qの空中で、散布物質7を散布する。
それにより散布物質7は、空中に散布され、ミサイルA(例えばミサイルAのエンジンE)に吸い込まれる。エンジンEの中で燃焼した散布物質7は、発熱し、ミサイルAのエンジンEを過熱する。
次に、本発明のミサイル防御システム1について説明する。
本発明のミサイル防御システム1は、レーダ装置2、演算装置3、弾5、及び制御装置13を備える。
レーダ装置2は、飛翔するミサイルAを発見する。レーダ装置2は、発見したミサイルAに関する情報(例えばミサイルAの位置、速度、ミサイルAを発見した方角等に関する情報)を演算装置3に出力する。
なお、レーダ装置2と演算装置3は、独立したシステムであることは必須ではなく、艦船や航空機のレーダ、及び演算装置で代替可能である。
演算装置3は、レーダ装置2から入力したミサイルAに関する情報から、ミサイルAの予想経路Pを算出する。そして演算装置3は、これから発射する弾5がミサイルAより先に到達できる予想経路P上の散布位置Qを算出する。散布位置Qは、例えば緯度、経度、高さ(以下、位置情報)で表されていてもよい。また、演算装置3は、弾5の飛翔速度から、様々な情報を算出し、制御装置13に出力する。演算装置3が算出する情報は、例えば弾5を発射すべき時刻、弾5を発射する方角や発射角度、発射時点から弾5が散布位置Qに到達するまでの時間、ミサイルAが散布位置Qに到達する予想時刻、等である。
弾5は、陸上、船舶上、もしくは航空機に設置された発射装置15により発射され、散布位置Qに向けて発射される。
発射装置15は、制御装置13に制御され、弾5を発射する。例えば発射装置15は、演算装置3が算出した時刻に、適切な方角かつ発射角度で、弾5を発射することが好ましい。
弾5は、発射薬又はロケットモータ等の推進薬を有し、その燃焼により推進力を得ることが好ましい。
弾5は、発射装置15から発射された後に展開し、飛翔中の空力安定を保つ翼を有することが好ましい。
弾5は、その内部に散布物質7と散布装置11とを有する。
散布装置11は、弾5が散布位置Qに到達した時点で、散布物質7を空中に散布する。
散布物質7は、燃焼により発熱する性質をもつ物質である。散布物質7は、液体燃料、気体燃料、固体燃料、又は火薬であることが好ましい。
散布装置11によって空中に散布されたときには、空中に散布されミサイルA(例えばミサイルAのエンジンE)に吸い込まれ得る状態となっている。言い換えると、散布装置11は、散布物質7をミサイルAに吸い込まれ得る状態にして、空中に散布する。
なお、「ミサイルAに吸い込まれ得る」散布物質7とは、空中を浮遊し、ミサイルAが周囲の空気を取り込むときの風圧によって、空気と共にエンジンEの内部に吸い込まれ得る気体、ミスト、粉塵等の状態となった散布物質7を意味する。
弾5の具体例については、後で詳述する。
制御装置13は、演算装置3から入力した弾5の発射時刻、方角、発射角度、等の情報に基づき、発射装置15を制御する。また、制御装置13は、演算装置3が算出した発射時点から弾5が散布位置Qに到達するまでの時間に基づき、散布位置Qで散布物質7を散布するように、散布装置11を制御する。
制御装置13は、発射装置15の周囲に設置されていることが好ましい。その場合、ミサイル防御システム1は、制御装置13に近接した位置に送信装置17を備えることが好ましい。送信装置17は、制御装置13から出力された制御信号を無線で送信する。
なお、本システムのために、独立した制御装置13は必須ではなく、艦船や航空機など、同等の機能を持つ他のシステムで制御してもよい。
またミサイル防御システム1は、その制御信号を受信し、散布装置11に出力する受信装置19を弾5に備えることが好ましい。
本発明のミサイル防御システム1は、この構成により、ミサイルAの予想経路P上に散布物質7を散布できる。散布物質7は、ミサイルAに吸い込まれるほど細かい気体、ミスト、又は粉塵であるため、容易には自重で落下しない。そのため散布物質7は、空中を浮遊し続け、予想経路Pに長く留まることができる。
また図1(C)に示すように、散布物質7は、ミサイルAの周囲の空気と共にミサイルAに吸い込まれ、そのエンジン内部で空気が圧縮されることにより濃縮される。つまりミサイルA自体が供給する燃料に加え、空気と共に取り込まれ、濃度を増した散布物質7が、エンジン内部で燃焼する。上述したように散布物質7は、燃焼により発熱する性質をもつ。
ミサイルAの空気取り込み口Dからさらに燃料や火薬を取り込むことにより、エンジン内部には、ミサイルAの設計時に予定されていた量を大きく上回る熱量が供給される。それによりエンジン内部で過剰燃焼が生じ、エンジンEが、ミサイルAの設計時に予定されていた耐熱温度を超えて過熱される。なお、過剰燃焼とは、燃料が過剰に供給されて燃焼がなされることをいう。
それによりエンジンEに異常をきたし、ミサイルAの破砕、空力不安定による抵抗の上昇、減速、ミサイルAの軌道の制御不能、経路角の変更、又は墜落が生じる。
例えばエンジンEの異常としては、燃料と空気の比率が変化し、燃焼が停止、すなわちエンジンEが停止する事態が想定される。この場合、ミサイルAは推力を失い、減速し、墜落する。
また過剰燃焼により、エンジン内部の圧力が過剰に上昇し、その圧力により、内部からエンジンEを破砕することも想定される。
またエンジンEの異常としては、エンジン内部の金属部品等が融ける事態も想定される。
例えばエンジンEのジェットノズルの金属が融ければ、燃焼ガスの噴出方向が変化する。そのためミサイルAの経路角が変更し、軌道が制御不能となる。それによりミサイルAは予想経路Pから逸れ、又は墜落する。
例えばターボファンエンジンやターボジェットエンジンの内部では、多数の金属製の動翼を有したタービンが回転している。エンジン内部温度が、過剰燃焼で、タービンの動翼や回転軸の耐熱温度以上に上昇することにより、それらが融け、変形する事態が想定される。それによりタービンが回転不能となれば、エンジンEは停止する。
またタービンが回転できたとしても、動翼が変形すれば、エンジンEの性能が低下する。つまり、エンジンEの空力が不安定になり抵抗が上昇する。それによりエンジンEから排出する燃焼ガス量が低下し、ミサイルAが減速し、墜落する。
そのため、本発明のミサイル防御システム1は、ミサイルAを内部から破壊できる。それにより本発明のシステムと方法は、弾5がミサイルAに直接命中しなくても、ミサイルAを墜落又は進路変更させることができる。
図3は、本発明の弾の断面図である。図3(A)は、具体例1の断面図であり、図3(B)は、具体例4の断面図である。なお、図3は、発射薬又はロケットモータ等の推進薬の描写を省略している。
(弾5の具体例1)
散布装置11は、起爆可能な爆薬11aと、制御装置13に制御され爆薬11aに点火する点火装置11bと、を有する。また弾5は、受信装置19を備える。
例えば爆薬11aは、金属製の中空管21の中に詰められ、端部が点火装置11bに連結する。中空管21の壁面は、爆薬11aの爆発の衝撃波で容易に壊れる強度を有する。
点火装置11bは、制御装置13から送信された制御信号を受信装置19から入力し、その制御信号に従い、制御装置13が指令するタイミングで、爆薬11aを点火する。
なお、弾5の点火タイミングを発射前に事前入力した上で発射し、散布位置Qで散布させてもよい。
散布物質7は、その爆薬11aを詰めた金属製の中空管21の周囲に配置される。図3(A)のように、散布物質7は、中空管21を取り囲むように配置されていることが好ましい。
具体例1の散布物質7は、液体燃料である。散布物質7が、液体燃料である場合、例えばケロシンやエチレンオキサイドであることが好ましい。
具体例1の弾5は、液密に設けられた燃料タンク9aを有する。燃料タンク9aの壁面は、爆薬11aの爆発の衝撃波で容易に壊れる強度を有する。
爆薬11aを詰めた中空管21は、燃料タンク9aの中央を貫通するように延びる。爆薬11aを起爆すると、その衝撃波で、液体燃料が四方に飛び散り、燃料雲7aを形成する。
制御信号は、弾5が散布位置Qに到達するタイミングで散布物質7を散布させるための信号である。制御装置13は、その制御信号を、受信装置19を介して点火装置11bに出力する。
この構成により、ミサイル防御システム1は、液体燃料の燃料雲7aを散布位置Qに形成できる。
液体燃料の燃料雲7aは、空中を浮遊する大きさの液体燃料の液滴が複数密集して形成されたものである。例えば「ミサイルAに吸い込まれ得る」液体燃料は、空中を浮遊する粒子状の液滴となって存在する状態の液体燃料である。この状態の液滴は、直径が3μm〜10μmの大きさであることが好ましい。しかしそれに限らず、液滴は、落下せずに空中を漂っていられる大きさであれば、これより大きくても小さくてもよい。例えば液滴の大きさは、液滴が空中浮遊を続けられるのであれば、3μm〜100μmの大きさであってもよい。
液体燃料は、一般に、応答性がよいという特徴をもつ。また例えばケロシンの発熱量が34.3kJ/cmと、トリニトロトルエンの発熱量の約5倍であることからも分かるように、液体燃料は、発熱量が大きいという特性ももつ。この発熱量は、金属材料を融かすには十分である。
本具体例の弾5は、散布物質7を液体燃料とするので、ミサイルAに取り込まれた後、直ちに過剰燃焼が発生し、ミサイルAのエンジンEを早急に停止、破砕、変形させ、ミサイルAを墜落又は進路変更させることができる。
また、液体燃料は、散布されやすい特性(良好な散布性)をもつ。
例えば、図3(A)の散布装置11の構成で、10リットルの液体燃料を散布する場合、1秒以内に直径10m以上の範囲に液体燃料が散布されることを確認している。
つまり本発明のミサイル防御システム1は、ミサイルAの予想経路P上の散布位置Qに、遅くとも1秒間で直径10mの球状の燃料雲7aを形成できる。
またその後、燃料雲7aは広がり続け、直径20〜40mの燃料雲7aとなる。つまりミサイル防御システム1は、散布位置Qの半径10〜20mの範囲に液体燃料の液滴を充満させることができる。そのため、ミサイル防御システム1は、ミサイルAの実際の経路が予想経路Pからずれても、実際の経路が半径10〜20mの範囲であれば、ミサイルAに燃料雲7aの中を通過させることができる。つまり本発明のミサイル防御システム1は、ミサイルAの実際の経路が予想経路Pからずれても、ミサイルAを墜落又は進路変更させることができる。
さらに液体燃料は、噴霧状に散布され、燃料雲7aを形成するので、20〜40秒以上の間、散布位置Qに滞空する。つまり液体燃料は、長い滞空性を有する。そのため具体例1の散布物質7が液体燃料であることにより、ミサイルAが実際に散布位置Qに到達した時刻が、演算装置3が算出した予想時刻とずれていても、液体燃料の液滴をミサイルAに吸い込ませることができる。それによりミサイル防御システム1は、演算装置3が算出した予想時刻が現実の時刻とずれていても、ミサイルAを墜落又は進路変更させることができる。
したがって、具体例1の弾5を使用するミサイル防御システム1は、直接弾を衝突させてミサイルAを破壊する従来の防御システムに比べ、ミサイルAから防御できる確率を高めることができる。
なお、具体例1の弾5が有する散布装置11は、液体燃料を噴霧状に散布できるのであれば、上述したものに限らない。
(弾5の具体例2)
具体例2の散布物質7は、火薬である。散布物質7が、火薬である場合、例えばニトロセルロースが好ましく、特にシングルベースが好ましい。火薬の応答性の良さは、液体燃料と同様である。
散布物質7として火薬を使用する場合も、散布装置11の構成は、具体例1と同様であるが、その他の構成でもよい。
(弾5の具体例3)
具体例3の散布物質7は、固体燃料である。
散布物質7が、固体燃料である場合、例えばセシウムやアルミニウム粉末であることが好ましい。固体燃料の応答性の良さと発熱量の大きさは、液体燃料と同様である。
散布物質7として固体燃料を使用する場合も、散布装置11の構成は、具体例1と同様であるが、その他の構成でもよい。
「ミサイルAに吸い込まれ得る」火薬又は固体燃料は、空中を浮遊する粒子として存在する状態の火薬又は固体燃料である。
火薬又は固体燃料は、空中を浮遊する大きさの粒子の集合物が、金属製の中空管21が中央を貫通する燃料タンク9aに詰め込まれることにより、爆薬11aの周囲に火薬又は固体燃料が配置されることが好ましい。
火薬又は固体燃料の粒子は、エンジンが吸い込める大きさであればよい。しかし例えば粒子の大きさは、粒子が空中浮遊を続けられる大きさであってもよい。
散布装置11は、散布により、複数(すなわち多量)の火薬又は固体燃料の粒子が浮遊しながら密集して形成する燃料雲7aを散布位置Qに形成する。
本具体例の弾5を備えるミサイル防御システム1は、散布物質7として火薬又は固体燃料を使用することにより、液体燃料を散布できない状況でも本発明を実施できる。
また散布物質7として固体燃料を使用することにより、液体燃料と同様の発熱量も得られる。
その他の具体例2、3の弾5の構成と効果は、具体例1と同様である。
(弾5の具体例4)
具体例4の散布物質7は、気体燃料である。散布物質7が、気体燃料である場合、例えばアセチレンガスが好ましい。気体燃料は、応答性の良さ、発熱量、及び滞空性の良さが、液体燃料と同様である。気体燃料は、気密の圧力容器9b内に納められ、弾5に搭載される。圧力容器9bは、例えばガスボンベであってもよい。圧力容器9bは、爆薬11aの爆発の衝撃波で容易に壊れ、かつ気体を気密に密閉できる強度を有する。
なお、「ミサイルAに吸い込まれ得る」気体燃料は、気体燃料がそのまま気体として空中に放出された状態の気体燃料である。
散布装置11は、爆発により圧力容器9bを破壊可能な爆薬11aと、制御装置13に制御され爆薬11aに点火する点火装置11bと、を有する。
爆薬11aは、図3(B)に示すように、圧力容器9bに接して設けられていてもよい。しかしこれに限らず、例えば図3(A)に示すように、爆薬11aが詰められた中空管21が、圧力容器9bの中央を貫通して延びていてもよい。
本具体例の弾5は、散布物質7として気体燃料を有することにより、具体例1〜3の弾5より重量を軽くすることができる。また本具体例の弾5は、液体燃料を使用できない場合でも使用でき、液体燃料と同等の応答性の良さ、発熱量、及び滞空性の良さを得ることができる。
その他の具体例4の弾5の構成と効果は、具体例1と同様である。
上述した本発明の装置と方法によれば、ミサイルAの予想経路P上の散布位置Qを算出し、その散布位置Qに燃焼により発熱する性質をもつ散布物質7を散布する。散布物質7は、燃焼により発熱する性質をもつ。散布物質7は、空中に散布された状態で、ミサイルAに吸い込まれ得る状態となっている。
一方、本発明のシステムと方法は、空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルAに対して使用される。
そのため予想経路Pを飛翔するミサイルAは、散布位置Qを通過する際に、散布位置Qに散布された散布物質7を空気と共に吸い込む。ミサイルAは推力を得るために取り込んだ空気を圧縮し、燃焼している。したがって散布物質7は空気の圧縮によって散布物質7が濃縮され、燃焼される。
散布物質7は、燃焼により発熱する性質を有するため、ミサイルAの内部で燃焼され、発熱し、過剰燃焼を起こす。ミサイル内部は、過剰燃焼により圧力がさらに上昇し、過熱される。それによりミサイル内部が損傷し、推力が低下、又は消失する。
そのため、本発明の装置と方法は、ミサイルAを内部から破壊できる。それにより本発明の装置と方法は、弾5がミサイルAに直接命中しなくても、ミサイルAを墜落又は進路変更させることができる。
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば本発明のミサイル防御システム1が対象とするミサイルAは、エンジンE以外の場所で、空気を吸い込んで燃焼するものであってもよい。
また複数発の弾5を発射することで、空中の散布物質7の濃度を高め、又は燃料雲7aの大きさを増大させてもよい。
1 ミサイル防御システム、2 レーダ装置、3 演算装置、
5 弾、7 散布物質、7a 燃料雲、
9a 燃料タンク、9b 圧力容器、
11 散布装置、11a 爆薬、11b 点火装置、13 制御装置、
15 発射装置、17 送信装置、19 受信装置、21 中空管、
A ミサイル、D 空気取り込み口、E エンジン、
F 燃料噴射器、f 液体燃料、G 保炎機、P 予想経路、Q 散布位置

Claims (6)

  1. 空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルの予想経路上の散布位置を算出する演算装置と、
    空中に散布され前記ミサイルに吸い込まれ得る散布物質と、前記散布物質を前記空中に散布する散布装置と、を有し、前記散布位置に向けて発射される弾と、
    前記散布装置を制御する制御装置と、を備え、
    前記散布位置は、前記弾が前記ミサイルより先に到達できる前記予想経路上の位置であり、
    前記散布物質は、燃焼により発熱するものであり、
    前記制御装置は、前記散布位置で、前記散布物質を散布するように前記散布装置を制御する、ことを特徴とするミサイル防御システム。
  2. 前記散布物質は、液体燃料であり、
    前記散布装置は、前記散布により、前記空中を浮遊する大きさの前記液体燃料の液滴が複数密集して形成される燃料雲を前記散布位置に形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のミサイル防御システム。
  3. 前記散布物質は、火薬又は固体燃料であり、
    前記火薬又は前記固体燃料は、前記空中を浮遊する大きさの粒子の集合物であり、
    前記散布装置は、前記散布により、複数の前記粒子が浮遊しながら密集して形成する燃料雲を前記散布位置に形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のミサイル防御システム。
  4. 前記散布装置は、起爆可能な爆薬と、前記制御装置に制御され該爆薬に点火する点火装置と、を有し、
    前記散布物質は、前記爆薬の周囲に配置される、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のミサイル防御システム。
  5. 前記散布物質は、気密の圧力容器内に納められた気体燃料であり、
    前記散布装置は、爆発により前記圧力容器を破壊可能な爆薬と、前記制御装置に制御され該爆薬に点火する点火装置と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のミサイル防御システム。
  6. 空気を吸い込んで燃焼し推進するミサイルの予想経路上の散布位置を算出し、
    空中に散布され前記ミサイルに吸い込まれ得る燃焼により発熱する散布物質を有する弾を前記散布位置に向けて発射し、前記散布位置は、前記弾が前記ミサイルより先に到達できる前記予想経路上の位置であり、
    前記散布位置の前記空中で前記弾から前記散布物質を散布する、ことを特徴とするミサイル防御方法。
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