発明の詳細な説明
当初、インビトロで転写された5'三リン酸を持つsiRNA (低分子干渉RNA)は、選択細胞株からのI型IFNの産生を刺激するが、5' OHを持つ合成siRNAは刺激しないと報告されていた20, 21。しかしながら、I型IFNの産生をもたらした分子機構は知られていなかった。
その後、インビトロで転写された長いdsRNA (50 bp以上)がRIG-Iによって検出されると報告された10。
ほぼ同時に、長さが21〜27 bpであり、かついずれの5'リン酸基もない、合成による短い平滑末端dsRNAがRIG-Iのリガンドであると報告された16。さらに、2ヌクレオチドの3'突出部、およびそれほどではないにせよ、5'突出部はRIG-Iを不活性化すると報告された16。平滑末端はRIG-Iによって認識される分子署名であると仮定された。
その後間もなく、インビトロで転写された5'三リン酸を持つ短いssRNAおよびdsRNAがRIG-Iのリガンドと特定された15, 19。さらに、Marques TJ et al. (2006) 16で用いられたものと同じ配列を有するインビトロで転写された短いdsRNAは、dsRNAが平滑末端または3'突出部を有するかどうかにかかわらず、精製された初代ヒト単球においてIFN-α産生を同程度まで刺激することが示された15。言い換えれば、5'三リン酸の存在下において、dsRNAオリゴヌクレオチドの末端構造はオリゴヌクレオチドのIFN-α誘導活性に影響を与えなかった; 3'突出部の存在はRIG-Iを不活性化しなかった。この知見は、5'三リン酸がRIG-Iによって認識され、RIG-Iを活性化する分子署名である15, 19という考えを確証するものであり、平滑末端が、RIG-Iを活性化する分子署名ではない16ことを示唆するものである。
同時に、5'リン酸を持つA型インフルエンザ由来の一本鎖ゲノムRNAがRIG-Iによって認識されることが報告された25。
ごく最近になって、RIG-IのC末端の調節ドメインRDが、インビトロで転写されたssRNAリガンド上の5'三リン酸の認識に関与することが報告された26。
ほぼ同時に、5'一リン酸を有する25ヌクレオチド長のdsRNAも、RIG-Iのリガンドであることが報告された24。さらに、5'三リン酸を持つssRNAは、RIG-Iのリガンドであることが確認された24。さらに、5'一リン酸を持つ平滑末端dsRNAが、3'突出部を持つものよりもIFN応答の誘導で強力であることが報告された24。しかしながら、直観に反した方法で、dsRNAにおける5'一リン酸はRIG-IのC末端ドメインとの相互作用に必要とされないのに対し、5'三リン酸はC末端ドメインと実際に相互作用することも報告された。さらに、IFN応答を誘導するdsRNAオリゴヌクレオチドの能力は、ヘリカーゼドメインによる巻き戻し活性と逆相関することも報告されたが、これは、平滑末端がIFN応答の誘導に必要とされるだけでなく、ヘリカーゼ活性にも必要とされるという先の報告と矛盾するものである16。
またつい最近になって、インビトロでの転写によって作出されたshRNAの5'末端の2つまたは3つのGの存在は、5'三リン酸を持つRNAがRIG-I経路を介してIFN-β産生を誘導する能力をなくすことが報告された30。特に、二つの5' Gを持つshRNAは、これには二つのG-Uゆらぎ塩基対が末端に有った、すなわち、平滑末端が有ったが、IFN応答を誘導するうえで完全に不活性であった。
要約すれば、いくつかの構造的に異なるRNA分子が、RIG-Iのリガンドであることが報告されており、異なる分子署名がRIG-Iによって認識されると仮定されている。先行技術におけるデータは一貫性がなく、時には、RIG-Iの活性化に重要であった分子署名に関して矛盾していた。言い換えれば、RIG-I認識および活性化に重要な分子署名に関して先行技術には意見の一致がなかった。
単球、形質細胞様樹状細胞(PDC)および骨髄系樹状細胞(MDC)などの、さまざまな免疫細胞型が、5'三リン酸を持つ二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(以下「3pRNA」; 本発明者らの未発表データ)による刺激に応じてIFN-αを産生できるとはいえ、このような二本鎖3pRNAオリゴヌクレオチドの認識は、異なる細胞型では異なる受容体によって媒介されるものと思われる。PDCはTLR7を主に利用するものと思われるが、単球はRIG-Iを主に利用するものと思われる(実施例1; 図1)。実際に、PDCは、適切なTLRリガンドでの刺激によってかなりの量のIFN-αを産生する唯一の細胞型である。対照的に、骨髄系細胞などの、他の免疫細胞はTLRリガンドによる刺激に応じてIFN-α以外のサイトカインを産生する。それゆえ、単球(機能性PDCの混入していない)は、IFN-α産生を読み出しとして用い、RIG-Iによるリガンド認識およびRIG-Iの活性化の機構を研究するのに理想的である。
本発明者らは、精製された初代ヒト単球を、Marques TJ et al. (2006) 16において用いられたものと同じ、いずれの5'リン酸もない、合成による短い平滑末端dsRNAで刺激し、驚いたことに、IFN-α産生が認められないことが分かった(実施例2; 図2、サンプル「27+0 ds」)。さらに、本発明者らは、精製された初代ヒト単球を、Takahasi et al. (2008) 24において用いられたものと同様の、5'リン酸を持つ合成による短い平滑末端dsRNAで刺激し、驚いたことに、IFN-α産生がほとんどまたは全く認められないことが分かった(実施例3; 図6、「P-A」を名称として有するサンプル)。これらの知見は、平滑末端が、RIG-Iによって認識される分子署名であって、5'三リン酸の非存在下でRIG-Iを活性化できたという先行技術における示唆16, 24と矛盾する。
しかしながら、とても驚いたことに、本発明者らが精製初代ヒト単球を、5'三リン酸を持つ合成dsRNAオリゴヌクレオチドで刺激した場合に、5'三リン酸を持つ末端を平滑末端化するとdsRNAオリゴヌクレオチドのIFN誘導活性が劇的に増強されることを本発明者らは見出した(実施例3; 図4〜6、サンプル「3P-X + AS X24」、「3P-X + AS X24+A」、「3P-X + AS X24+2A」、「3P-X + AS X23」)。PDCが枯渇した末梢血単核細胞(PBMC)またはクロロキンで前処理されたPBMCで同じ結果が得られ、どちらの場合にも、PDCからのIFN-α産生が排除された。
この知見は驚きである。というのは、これが、平滑末端の存在によっては5'三リン酸を持つdsRNAのIFN誘導活性が増強されなかったという先の報告15と矛盾するからである。さらに、この知見は、平滑末端が、RIG-Iによって認識され、RIG-Iを活性化するのに5'三リン酸と同じ側になければならないということを初めて実証するものである。
この驚くべき知見は、5'三リン酸も平滑末端もともに、RIG-Iによって認識される分子署名であることを示唆している。5'三リン酸はRIG-Iによって認識される第一の分子署名であるのに対して、平滑末端はそれだけではRIG-Iを活性化できないが、5'三リン酸の存在下でRIG-I活性化を増大できる第二のものである。さらに、平滑末端の活性増強効果は、平滑末端が5'三リン酸を持つ末端であった場合に認められたのみであったという事実は、5'三リン酸および平滑末端が、3次元構造中で互いに隣接しているRIG-Iの機能ドメインまたはサブドメインによって認識されることを示唆している。特に、5'三リン酸および平滑末端はRIG-Iの同じドメイン、つまりC末端の調節ドメインによって認識される可能性が極めて高い。
本知見は驚きである。というのは、21塩基対(bp)ほどの短いdsRNAオリゴヌクレオチドが、5'三リン酸および平滑末端を持つ場合に、RIG-Iを活性化でき、かなりのIFN-α産生を誘導できることも本発明者らは見出し、このことは、一貫したRIG-I活性化にとって25 bpの長さが必要であるというMarques et al. (2006)の提唱16とは大いに異なっているからである。
さらに、本発明者らは、5'三リン酸および平滑末端を持つdsRNAのRIG-I活性化およびIFN-α誘導活性が、5'三リン酸を持つ5'ヌクレオチドの同一性に依ることを見出した。5'アデノシン(A)を持つdsRNAは、5'グアノシン(G)を持つものまたは5'ウリジン(U)を持つものよりも強力であったのに対し、それらは全て、5'シチジン(C)を持つものよりも強力であった。
いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、化学的に合成されたdsRNAオリゴヌクレオチドは、各集団におけるオリゴヌクレオチドが化学的に明確に定義され、本質的に同じ長さ、配列および末端構造を有する本質的に均質な集団であるものと仮定される。対照的に、インビトロでの転写によって得られたdsRNAオリゴヌクレオチドは、可変性の長さおよび末端構造を有する。
本発明者らは、かくして、5'三リン酸を持つヌクレオシドとしてAに関連し、少なくとも一つの5'三リン酸および5'三リン酸と同じ末端にある少なくとも一つの平滑末端を持つ合成dsRNAオリゴヌクレオチドを、RIG-Iの活性化およびRIG-I発現細胞からのI型IFN産生の誘導に極めて強力な剤と特定した。
さらに、内因性RNAの真核生物転写後プロセッシングの間に行われる、RNAのある種のヌクレオシド修飾は、5'三リン酸を持つRNA分子のIFN-α誘導活性を抑止することが報告されている15, 19。これらの修飾の一つが2'-O-メチル化であった。
しかしながら、驚いたことに、本発明者らは、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドを2'-O-メチル化すると、オリゴヌクレオチドのIFN-α誘導活性が抑止されないばかりか、増強もされ、オリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を増強するさらに別の分子署名をもたらすことを見出した。同時に、上記の位置以外の任意の位置でのヌクレオチドの2'-O-メチル化は、オリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性の減少をもたらした。この知見は、5'三リン酸を持つオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を特定位置の2'-O-メチル化によって調節する可能性を広げる。5'三リン酸を持つオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性は、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドの2'-O-メチル化によって増強されうるが、I型IFN誘導活性はその他任意のヌクレオチド、とりわけ、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドのすぐ5'側にある二番目に最も3'側のヌクレオチドの2'-O-メチル化によって低減されうる。
さらに、本発明者らは、遺伝子抑制活性を持った5'三リン酸末端を有する二本鎖オリゴヌクレオチド、とりわけ、5'三リン酸末端を有する抗bcl-2 siRNA (3p-siRNA)が黒色腫に対して特に有用であることを見出した。
細胞質性の抗ウイルスヘリカーゼ・レチノイン酸誘導タンパク質-1 (RIG-I)による5'三リン酸の認識は、樹状細胞のような先天性免疫細胞を活性化し、腫瘍細胞においてインターフェロンおよびアポトーシスを直接的に誘導した。これらのRIG-Iを介した活性はsiRNAを介した遺伝子抑制、とりわけbcl-2抑制と協力して、インビボで肺転移における腫瘍細胞の広範なアポトーシスを引き起こす。治療活性にはNK細胞およびインターフェロンのほか、肺転移におけるbcl-2 mRNAの部位特異的な切断およびインビボでの腫瘍細胞におけるbcl-2タンパク質の下方制御による、bcl-2標的変異を用いた救出から明らかなように、bcl-2の抑制も必要とされた。同時に、3p-siRNAは、免疫細胞および腫瘍細胞の両レベルでのRIG-I活性化が免疫無視を修正して、遺伝子抑制が重要な分子事象を統制する、単一分子に基づいた手法となる。
RNA干渉(RNAi)の機構を通じ、腫瘍生存の鍵となる調節因子をコードするmRNAを標的化するために、これらの短い二本鎖RNAをデザインすることができる45,46。RNAオリゴヌクレオチドの違ったおよび独立した生物学的特性は、ウイルス核酸の検出のために特殊化された免疫受容体の活性化でありうる。普遍的に発現されるヘリカーゼRIG-Iは、細胞の細胞質中のウイルスRNAの存在をシグナル伝達する二つの免疫受容体のうちの一つである11。具体的には、RIG-Iは5'末端に三リン酸基を有するRNAを検出する15,47。細胞の細胞質中のRNAポリメラーゼによるそのような5'三リン酸RNAの形成は、大部分のマイナス鎖RNAウイルスに特徴的である48。
RIG-Iによる3p-RNAの認識はRNA配列とほとんど無関係であり、遺伝子抑制は5'三リン酸の存在によって阻害されないので、両方の生物学的活性を一つの短いdsRNA分子において組み合わせることができる。
5'末端に三リン酸基を有するそのような短いdsRNA分子(3p-siRNA)を、任意の鍵となる腫瘍生存因子のmRNAを標的化するようにデザインすることができる。黒色腫の場合、そのような分子はBcl-2である。Bcl-2はB細胞リンパ腫においてもともと見出されたものであり、アポトーシスの調節に関与している。Bcl-2の過剰発現は、化学療法に対する黒色腫細胞の異常な抵抗性に関わるものと考えられる49〜51。
それゆえ、本発明は、免疫受容体活性化能も遺伝子抑制活性もともに有するオリゴヌクレオチド調製物を対象にする。好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチド調製物はBcl-2抑制能およびRIG-I活性化能を有する。
定義
「一つの(a)」および「一つの(an)」という冠詞は、冠詞の文法的目的語の一つまたは二つ以上(すなわち、少なくとも一つ)をいうように本明細書において用いられる。例として、「一つの要素(an element)」は、一つの要素(one element)または二つ以上の要素(more than one element)を意味する。
本明細書において用いられる全ての用語は、特に断りのない限り、当技術分野において確立された意味を持つ。当業者は、本記述および/または確立されたプロトコル、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbour Laboratory, New York)、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., 2007, John Wiley & Sons, New York)およびCurrent Protocols in Immunology (Coligan et al., 2007, John Wiley & Sons, New York)に開示されているものなどにしたがい本明細書において開示される技術を行うことができる。
「5'三リン酸を持つRNAオリゴヌクレオチド」、「三リン酸RNAオリゴヌクレオチド」および「3pRNAオリゴヌクレオチド」という表現は、互換的に用いられる。
「構造モチーフ」および「分子署名」という表現は、互換的に用いられる。
オリゴヌクレオチド
第一の局面において、本発明は、本質的に均質なオリゴヌクレオチドの集団を含み、かつRIG-Iを活性化でき、抗ウイルス応答、具体的にはI型IFN応答、より具体的にはIFN-α応答を誘導できるオリゴヌクレオチド調製物を提供する。
オリゴヌクレオチドは少なくとも一つの平滑末端を有しかつ平滑末端の5'末端に少なくとも1個のリボヌクレオチドを含み、この平滑末端が、最も5'側のリボヌクレオチドに付着した5'三リン酸を持ち、この5'三リン酸にはいずれのキャップ構造もなく、平滑末端の後に、長さが少なくとも19塩基対(bp)、好ましくは少なくとも21塩基対(bp)である完全に二本鎖の部分が続く。言い換えれば、平滑末端は完全に二本鎖の部分の末端である。
「完全に二本鎖の」とは、二本鎖の部分がいずれの一本鎖構造によっても中断されないことを意味する。オリゴヌクレオチド部分は、この部分を形成する核酸の二本のストレッチが同じ長さを有し、かつ互いに100%相補的である配列を有する場合に、完全に二本鎖である。当技術分野において確立されているように、二つのヌクレオチドは、それらが塩基対、ワトソン・クリック塩基対(A-U、G-C)またはゆらぎ塩基対(U-G、U-A、I-A、I-U、I-C)のいずれかを形成できるなら、互いに相補的であると言われる。
二本鎖の部分は長さが好ましくは少なくとも20 bp、21 bp、より好ましくは少なくとも22 bp、23 bp、さらにより好ましくは少なくとも24 bp、25 bpである。二本鎖の部分は長さが好ましくはせいぜい60 bp、より好ましくはせいぜい50 bp、さらにより好ましくはせいぜい40 bp、最も好ましくは少なくとも30 bpである。
オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つ鎖の5'末端に好ましくは少なくとも2、3、4、5、6個、より好ましくは少なくとも7、8、9、10、11、12個、さらにより好ましくは少なくとも13、14、15、16、17、18個、最も好ましくは少なくとも19個のリボヌクレオチドを有する。最も好ましい態様において、完全に二本鎖の部分はもっぱらリボヌクレオチドから構成される。
一つの態様において、オリゴヌクレオチドはRNAオリゴヌクレオチドである。別の態様において、オリゴヌクレオチドはRNA-DNAハイブリッドである。
「本質的に均質な集団」とは、調製物に含まれるオリゴヌクレオチドが同じヌクレオチド配列、骨格、修飾、長さおよび末端構造を含めて、本質的に同じ化学的同一性(または化学的組成)を有することを意味する。言い換えれば、調製物に含まれるオリゴヌクレオチドは化学的に定義されており、互いと本質的に同一である。具体的には、調製物中のオリゴヌクレオチドの少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも96%、97%、98%、最も好ましくは少なくとも99%が同じヌクレオチド配列、骨格、修飾、長さおよび末端構造を含めて、同じ化学的同一性(または化学的組成)を有することを意味する。言い換えれば、調製物は少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも96%、97%、98%、最も好ましくは少なくとも99%純粋である。当業者はゲル電気泳動法(特に、変性ゲル電気泳動法)、HPLC法、質量分析法(例えば、MALDI-ToF MS法)および配列決定法などの、任意の適切な方法を用いて、オリゴヌクレオチド調製物の純度および化学的同一性(または化学的組成)を容易に判定することができる。
一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、二本鎖オリゴヌクレオチドである。
当技術分野において確立され、本明細書において用いられている「二本鎖オリゴヌクレオチド」は、二本の一本鎖オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドをいう。
具体的には、二本鎖オリゴヌクレオチドは、鎖の少なくとも一つが5'末端に少なくとも1個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも6個のリボヌクレオチドを含み、5'末端に少なくとも1個のリボヌクレオチドを含む鎖の少なくとも一つが、最も5'側のリボヌクレオチドに付着した三リン酸を有し、この三リン酸にはいずれのキャップ構造もなく、5'三リン酸を持つ末端の少なくとも一つが平滑末端であり、5'三リン酸を持つ平滑末端の少なくとも一つの後に、長さが少なくとも19塩基対(bp)、好ましくは少なくとも21塩基対(bp)である完全に二本鎖の部分が続くものである。
一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは完全に二本鎖である。この場合、オリゴヌクレオチドは、同じ長さを有する、かつ互いに100%相補的である配列を有する二つの一本鎖オリゴヌクレオチドから構成される。
一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは部分的に二本鎖である。この場合、オリゴヌクレオチドを形成する二本の鎖は、異なる長さ、互いに100%相補的ではない配列、またはその両方を有する。言い換えれば、オリゴヌクレオチドの少なくとも一つの完全に二本鎖の部分は一方または両方の末端で一本鎖構造と結び付いている。
一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つ一方の平滑末端、および5'三リン酸を持っても持たなくてもよいもう一方の末端に1つ、2つ、3つまたはそれ以上のヌクレオチドの一つの5'突出部を有する。別の態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つ一方の平滑末端、および5'三リン酸を持っても持たなくてもよいもう一方の末端に1つ、2つ、3つまたはそれ以上のヌクレオチドの一つの3'突出部を有する。別の態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つ一つの平滑末端、および5'三リン酸を持っても持たなくてもよいもう一つの平滑末端を有する。さらなる態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、それぞれが5'三リン酸を持つ二つの平滑末端を有する。ある種の態様において、5'または3'突出部は3つまたはそれより少ない、好ましくは2つまたはそれより少ないヌクレオチドを有する。
一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、一つの5'三リン酸を有する。別の態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、二つの5'三リン酸を有する。好ましい態様において、二番目の5'三リン酸も5'リボヌクレオチドに付着する。
好ましい態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは長さが少なくとも19 bp、好ましくは少なくとも21 bpである唯一の完全に二本鎖の部分を含む、完全に二本鎖または部分的に二本鎖である。より好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、部分的に二本鎖であり、平滑末端の最も5'側のリボヌクレオチドに付着した一つの5'三リン酸、および平滑末端ではないかつ5'三リン酸を持たないもう一方の末端の1 ntの3'突出部を含む。
唯一の完全に二本鎖の部分を含む完全に二本鎖のオリゴヌクレオチドまたは部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドの場合、オリゴヌクレオチドは長さが少なくとも19 bp、好ましくは少なくとも21 bpであり、ここで長さは、完全に二本鎖であるオリゴヌクレオチドの連続部分の塩基対の数をいう。言い換えれば、突出部の長さは「二本鎖オリゴヌクレオチドの長さ」から除外される。「連続」とは、完全に二本鎖であり、かついずれの一本鎖構造によっても中断されないオリゴヌクレオチドの部分のことを意味する。好ましくは、二本鎖オリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも20、21 bp、より好ましくは少なくとも22、23 bp、最も好ましくは少なくとも24、25 bpである。好ましくは、二本鎖オリゴヌクレオチドは、長さがせいぜい60 bp、より好ましくはせいぜい50 bp、さらにより好ましくはせいぜい40 bp、最も好ましくはせいぜい30 bpである。
一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドはホモ二重鎖である。「ホモ二重鎖」とは、オリゴヌクレオチドを形成する二本の鎖が5'から3'の方向で正確に同じ長さおよび配列を有することを意味する。ホモ二重鎖は、二本鎖オリゴヌクレオチドを形成する各鎖が100%自己相補的な配列を有する場合に形成されることができ、5'側の半分の配列が3'側の半分の配列に100%相補的であることを意味する。
オリゴヌクレオチドを作出するためのさまざまな方法が当技術分野において公知である。しかしながら、本質的に均質な二本鎖オリゴヌクレオチドの集団を得るためには、化学的合成が好ましい調製方法である。化学的合成の特定の方法または工程が重要であるわけではない; オリゴヌクレオチド調製物が同じヌクレオチド配列、骨格、修飾、長さおよび末端構造を含めて、本質的に同じ化学的同一性(または化学的組成)を有する本質的に均質なオリゴヌクレオチドの集団を含むように、合成されたオリゴヌクレオチドが精製され、品質管理されることが重要であるにすぎない。オリゴヌクレオチドはキャピラリーゲル電気泳動法およびHPLC法などの、当技術分野における任意の標準的な方法によって精製することができる。最も商業的な供給源から入手される一本鎖または二本鎖のいずれかの、合成オリゴヌクレオチドは、5'OHを含む。これらの合成オリゴヌクレオチドを、当技術分野において公知の任意の適切な方法によって5'三リン酸を持つように5'末端で修飾することができる。5'三リン酸の付着に好ましい方法は、Janos Ludwig and Fritz Eckstein 27によって開発されたものである。
あるいは、インビトロでの転写を利用することもできる。しかしながら、インビトロでの転写によって二本鎖オリゴヌクレオチドを調製するよう一本鎖を得るために、各インビトロで転写された一本鎖が実際に一本鎖であって、所望の配列を有することを確実とするように方策を講じる必要がある。RNAポリメラーゼを用いてインビトロで異常な転写産物を作出することができる。例えば、インビトロでRNAポリメラーゼにより作出されたRNA転写産物は、折り畳まれ、RNA依存RNA合成をプライミングし、未定義のおよび/または不均一の長さおよび配列の異常な転写産物の作出をもたらしうると仮定される。それゆえ、原則として、RNA転写産物それ自体によってプライミングされるRNA合成を阻止しうる任意の方策を利用することができる。
例えば、一本鎖オリゴヌクレオチドは、配列X1-X2-X3-...Xm-2-Xm-1-Xmを有するようにデザインされ、ここでmはオリゴヌクレオチドの長さであり、配列には自己相補性が全くないかまたはごくわずかであり、X1、X2、X3、...、Xmは4種の従来のヌクレオチドA、U、CおよびGのうちの1つ、2つまたは3つから選択され、Xm-2、Xm-1およびXmのいずれかに相補的であるヌクレオチド、すなわち、Ym-2、Ym-1およびYmの少なくとも一つがX1、X2、X3、...、Xmに対して選択された1つ、2つまたは3つのヌクレオチドのなかにはない。
そのようなssRNAオリゴヌクレオチドを作出するのに適したDNA鋳型は、当技術分野において公知の任意の適切な方法を用いて作出することができる。インビトロでの転写反応は、DNA鋳型、およびX1-X2-X3-...Xm-2-Xm-1-Xmに含まれない相補的ヌクレオチドを含まないヌクレオチド混合物を用いてセットアップされる。当技術分野において公知の任意の適切なインビトロでの転写条件を用いることができる。相補的ヌクレオチドがないため、異常なRNAプライミングRNA合成が行われうることがない。結果として、X1-X2-X3-...-Xmの一本鎖集団を得ることができる。得られたssRNA調製物を当技術分野において公知の任意の適切な方法により精製することができ、等量の、相補配列を有する二つの精製ssRNA調製物をアニールさせて、所望の配列の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの本質的に均質な集団を得ることができる。
例えば、ssRNAオリゴヌクレオチドは
であることができ、ATP、CTPおよびGTPの存在下で、すなわち、UTPの非存在下でインビトロでの転写を行うことができる。
異なる方法を用いて二本鎖オリゴヌクレオチドを形成する二本の鎖を合成することも可能である。例えば、一方の鎖を化学的合成によって調製することができ、もう一方をインビトロでの転写によって調製することができる。さらに、必要に応じて、インビトロで転写されたssRNAを仔ウシ腸ホスファターゼ(CIP)などの、ホスファターゼで処理して、5'三リン酸を除去することができる。
別の態様において、オリゴヌクレオチドは、ステム・ループ構造を有する一本鎖オリゴヌクレオチドである。当技術分野において確立され、本明細書において用いられている「一本鎖オリゴヌクレオチド」は、一本の一本鎖オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドをいう。当技術分野において確立され、本明細書において用いられているように、ステム・ループ構造は、相補配列および同じ長さを有する核酸の二本のストレッチで構成されている完全に二本鎖の部分であるステム、ならびに一本鎖の部分であるループを含む。
具体的には、一本鎖オリゴヌクレオチドは5'末端に三リン酸を有し、少なくとも一つのステム・ループ構造を含み、このステム・ループ構造の少なくとも一つのステムは一本鎖オリゴヌクレオチドの5'末端および3'末端から構成され、完全に二本鎖であり(すなわち、いずれの一本鎖構造によっても中断されない)、かつ長さが少なくとも19 bp、好ましくは少なくとも21 bpであり、オリゴヌクレオチドの最も5'末端および3'末端によって形成された、かつループに結び付けられていないステムの末端が平滑末端である。言い換えれば、オリゴヌクレオチドの、最も5'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドおよび最も3'末端の少なくとも21個のヌクレオチドが100%の相補性を有する。
5'三リン酸および平滑末端を持つステムは、長さが好ましくは少なくとも20、21 bp、より好ましくは少なくとも22、23 bp、最も好ましくは少なくとも24、25 bpである。ステムは長さが好ましくはせいぜい60 bp、より好ましくはせいぜい50 bp、さらにより好ましくはせいぜい40 bp、最も好ましくはせいぜい30 bpである。
ループの正確なサイズおよび配列が重要であるわけではない; ループがステムの形成および安定性に悪影響を与えず、平滑末端と5'三リン酸との間のRIG-Iとの相互作用を妨げ(例えば、立体的に妨害し)ないことが重要であるにすぎない。ステム・ループ構造の形成は、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に基づき当業者によって容易に予測され、当技術分野において公知の方法によって実験的に検証されることができる。例えば、ssRNAオリゴヌクレオチドを一本鎖特異的なRNaseで消化し、変性ゲル上で分析してもよい。オリゴヌクレオチドとRIG-Iとの間の結合は、免疫沈降法15、蛍光異方性測定法26、およびゲルシフトアッセイ法24のような、当技術分野において公知の任意の適切な方法を用いて容易に判定することができる。
一つの態様において、一本鎖オリゴヌクレオチドは唯一のステム・ループ構造を含む。
一本鎖オリゴヌクレオチド調製物は、化学的合成またはインビトロでの転写によって得ることができる。調製の特定の方法または工程が重要であるわけではない; オリゴヌクレオチド調製物が同じヌクレオチド配列、骨格、修飾、長さおよび末端構造を含めて、本質的に同じ化学的同一性(または化学的組成)を有する本質的に均質なオリゴヌクレオチドの集団を含むように、オリゴヌクレオチドが精製され、品質管理されうることが重要であるにすぎない。オリゴヌクレオチドが化学的に合成され、5'OHを持つなら、当技術分野において公知の任意の適切な方法、好ましくはJanos Ludwig and Fritz Eckstein 27によって開発された方法により5'三リン酸を付加することができる。
いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、一本鎖オリゴヌクレオチドの5'および3'ヌクレオチドが100%の相補性を有し、ステムが平滑末端を有する場合、ステム・ループ(またはヘアピン)構造および平滑末端を、定義された配列、長さおよび末端構造とともに持つ一本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、異常なRNAプライミングによる、RNA依存性の転写がないため、インビトロでの転写によって正確に得ることができると仮定される。
上記に定義されているように、長さが少なくとも19 bp、好ましくは少なくとも21 bpであり、平滑末端を有し、かつ平滑末端に5'三リン酸を持つ、少なくとも一つの完全に二本鎖の部分は連続して完全に二本鎖である、すなわち、いずれの一本鎖構造によっても中断されないとはいえ、これは、RIG-Iを活性化でき、抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導できるオリゴヌクレオチドの場合である必要はない。オリゴヌクレオチドのIFN誘導活性があまり低減されないという点で二本鎖の部分を形成する核酸の二本のストレッチにおいて一つまたは複数のミスマッチが許容されうる。言い換えれば「完全に」二本鎖の部分は不連続である、すなわち、一つまたは複数の一本鎖(またはループ)構造によって中断されることもある。そのようなオリゴヌクレオチドの本質的に均質な集団を含むオリゴヌクレオチド調製物も本発明によって包含される。
一本鎖(またはループ)構造は、二本鎖の部分を形成する核酸の二本のストレッチの一方または両方に生じうる。
好ましくは、「完全に」二本鎖の部分はせいぜい3つ、より好ましくはせいぜい2つ、さらにより好ましくはせいぜい1つの一本鎖(またはループ)構造によって中断される。
二本鎖の部分を形成する核酸の二本のストレッチの一方または両方に生じるループは、同じまたは異なる長さを有することができる。好ましくは、ループは、長さがせいぜい8、7ヌクレオチド(nt)、より好ましくはせいぜい6、5 nt、さらにより好ましくはせいぜい4、3 nt、最も好ましくはせいぜい2、1 ntである。ループの長さとは、二つの隣接する完全に鎖構造の間にあり、かつ核酸の他方のストレッチ上のヌクレオチドと塩基対合しない、核酸の一方のストレッチにおけるヌクレオチドの数をいう。
ミスマッチは、5'三リン酸を持つ平滑末端から好ましくは少なくとも3、4、5、6 bp、より好ましくは少なくとも7、8、9、10、11、12 bp、さらにより好ましくは少なくとも13、14、15、16、17、18 bp離れている。ミスマッチと平滑末端との間の距離は、平滑末端と、塩基対を形成しないかつ平滑末端に最も近い最初のヌクレオチドとの間のヌクレオチドの数をいう。
上記の用語を説明するために図16を参照されたい。センダイウイルスゲノムの場合には、ゲノムRNAの5'末端および3'末端により形成される二本鎖構造は、5'末端の核酸のストレッチにおける3 nt (5'-UUU-3')のループによって中断されており、3'末端の核酸のストレッチにおけるいずれのループ構造によっても中断されていない。狂犬病ウイルスゲノムの場合には、ゲノムRNAの5'末端および3'末端により形成される二本鎖構造は、5'末端の核酸のストレッチにおける5 nt (5'-AUAAA-3')のループ、引き続き1 nt (A)のループ、引き続き5 nt (5'-AAUGA-3')のループによって中断されており、3'末端の核酸のストレッチにおける1 nt (G)のループおよび3 nt (3'-CUA-5')のループおよび1 nt (C)のループによって中断されている。
一つの態様において、二本鎖または一本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、GCまたはUA塩基対合の代わりに一つまたは複数のGUゆらぎ塩基対を含む。
好ましい態様において、二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、5個、好ましくは少なくとも6、7、8、9、10個、より好ましくは少なくとも11、12、13、14、15個、さらにより好ましくは少なくとも16、17、18、19、20個のイノシン(I)を含む。別の好ましい態様において、オリゴヌクレオチドにおけるアデノシン(A)および/またはグアノシン(G)の少なくとも1、2、3、4、5%、好ましくは少なくとも10、15、20、25、30%、より好ましくは少なくとも35、40、45、50、55、60%、さらにより好ましくは少なくとも70、80または90%がイノシン(I)と置き換えられる。
少なくとも一つの5'三リン酸を持つ5'リボヌクレオチドは優先順位の高い順に、A、その次にG、その次にU、その次にCであることが好ましい。
好ましい態様において、5'三リン酸を持つ二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドの5'末端の最初の4つのリボヌクレオチドの配列は、5'から3'方向へ
から選択される。より好ましい態様において、5'三リン酸を持つオリゴヌクレオチドの5'末端の最初の4つのリボヌクレオチドの配列は、No. 1〜19から、より好ましくはNo. 1〜9から、さらにより好ましくはNo. 1〜4から選択される。ある種の態様において、上記5'端の4ヌクレオチド配列の最初のヌクレオチドはAの代わりに、優先順位の高い順に、G、UまたはCである。
ある種の態様において、二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドはTLR、特に、TLR3、TLR7およびTLR8によって認識される一つまたは複数の構造モチーフまたは分子署名を含む。
一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドまたは一本鎖オリゴヌクレオチドのステムは、長さが少なくとも30 bpであり、TLR3によって認識される2。
別の態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドまたは一本鎖オリゴヌクレオチドのステムは、TLR7によって認識される定義済の配列モチーフを含む
3, 4, 5, 22, 29。一つの好ましい態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドまたは一本鎖オリゴヌクレオチドのステムは、モチーフのヌクレオチド配列が5'から3'方向へ
からなる群より選択される4ヌクレオチド(4 mer)モチーフのうちの、少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つ、より好ましくは少なくとも三つ、さらにより好ましくは少なくとも四つ、さらにより好ましくは少なくとも五つ、最も好ましくは少なくとも六つ含む。
好ましくは、4 merのモチーフは、No. 101〜119、No. 101〜118、No. 101〜117、No. 101〜116、より好ましくはNo. 101〜115、No. 101〜114、No. 101〜113、No. 101〜112、より好ましくはNo. 101〜111、No. 110〜110、No. 101〜109、No. 101〜108、No. 101〜107、さらにより好ましくはNo. 101〜106、No. 101〜105、No. 101〜104、No. 101〜103、最も好ましくはNo. 101〜102の4 merのモチーフからなる群より選択される。オリゴヌクレオチドは、同じ4 merモチーフの一つもしくは複数のコピーまたは一つもしくは複数の異なる4 merモチーフの一つもしくは複数のコピーを含むことができる。
別の態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つ一つの平滑末端、および5'または3'突出部を有する一つの末端を有し、この5'または3'突出部は、TLR8によって認識される定義済の配列モチーフを含む
4, 18, 22, 28。さらなる態様において、一本鎖オリゴヌクレオチドのループは、TLR8によって認識される定義済の配列モチーフを含む。ある種の態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドの5'もしくは3'突出部または一本鎖オリゴヌクレオチドのループは、長さが少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも12個、最も好ましくは少なくとも18個のヌクレオチドである。好ましい態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドの5'もしくは3'突出部または一本鎖オリゴヌクレオチドのループは、モチーフのヌクレオチド配列が5'から3'方向へ
からなる群より選択される4ヌクレオチド(4 mer)モチーフのうちの、少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つ、より好ましくは少なくとも三つ、さらにより好ましくは少なくとも四つ、さらにより好ましくは少なくとも五つ、最も好ましくは少なくとも六つ含む。
好ましくは、4 merのモチーフは、No. 201〜211、より好ましくはNo. 201〜210、No. 201〜209、No. 201〜208、さらにより好ましくはNo. 201〜207、No. 201〜206、No. 201〜205、No. 201〜204、さらにより好ましくはNo. 201〜203、No. 201〜202の上記4 merのモチーフからなる群より選択される。最も好ましくは、4 merのモチーフはUCGU (No. 201)である。オリゴヌクレオチドは、同じ4 merモチーフの一つもしくは複数のコピーまたは一つもしくは複数の異なる4 merモチーフの一つもしくは複数のコピーを含むことができる。
さらなる態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つ一つの平滑末端、および5'または3'突出部を有する一つの末端を有し、この5'または3'突出部は、デオキシリボヌクレオチドから構成され、TLR9によって認識される定義済の配列モチーフを含む6。別の態様において、一本鎖オリゴヌクレオチドのループは、デオキシリボヌクレオチドから構成され、TLR9によって認識される定義済の配列モチーフを含む。好ましい態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドの5'もしくは3'突出部または一本鎖オリゴヌクレオチドのループは一つまたは複数の非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。
二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドは上記のTLR3、TLR7、TLR8およびTLR9によって認識される一つまたは複数の同じまたは異なる構造モチーフまたは分子署名を含むことができる。
二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドは、合成および/または修飾ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を損なう(すなわち、低減する)ことのない限り、任意の天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたはそれらの混合物を含むことができる。
一つの態様において、オリゴヌクレオチドにはプソイドウリジン、2-チオウリジン、2'-フッ素-dNTP、特に2'-フッ素-dCTP、2'-フッ素-dUTPのようないずれの修飾も含まない。
別の態様において、5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドを除き、オリゴヌクレオチドのヌクレオチドには2'-O-メチル化がない。
好ましい態様において、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドの少なくとも一つが2'-O-メチル化される。より好ましくは、最も3'側のヌクレオチドは2'-O-メチル化UTPである。
一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチドであり、一つの3'末端の、かくして一つの最も3'側のヌクレオチドを含む。一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、二本鎖オリゴヌクレオチドであり、二つの3'末端を含む。一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは一つの平滑末端に一つの5'三リン酸を含み、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドが2'-O-メチル化される。一つの態様において、二本鎖オリゴヌクレオチドは二つの平滑末端に二つの5'三リン酸を含み、二つの平滑末端の最も3'側のヌクレオチドの一方、好ましくは両方が2'-O-メチル化される。
二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドは、連結がオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を損なうことのない限り、任意の天然ヌクレオシド間結合、合成ヌクレオシド間結合、修飾ヌクレオシド間結合またはそれらの混合物を含むことができる。一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも一つのホスホロチオエート結合および/または少なくとも一つのピロリン酸結合を含む。
二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドの5'三リン酸基は、修飾がオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を損なうことのない限り、修飾されることができる。例えば、三リン酸基中の酸素(O)の一つまたは複数を硫黄(S)と置き換えることができ; 三リン酸基を一つまたは複数のリン酸基の付加によって修飾することができる。
二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドを共有結合的にまたは非共有結合的に修飾して、その化学的安定性、ヌクレアーゼ分解に対する耐性、細胞膜および/もしくは細胞内膜を横断する能力、標的(臓器、組織、細胞型、細胞内区画)特異性、薬物速度論的特性、生体内分布、またはそれらの任意の組み合わせを改善することができる。例えば、ホスホロチオエート結合および/またはピロリン酸結合を導入して、RNAオリゴヌクレオチドの化学的安定性および/またはヌクレアーゼ耐性を増強することができる。別の例において、オリゴヌクレオチドを脂質または脂質に基づく分子、好ましくはコレステロールまたはその誘導体のような、一つまたは複数の親油性の基または分子に共有結合的に連結させることができる。親油性の基または分子は、5'三リン酸を持つ平滑末端に付着しないことが好ましい。好ましくは、修飾はオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を含まない。あるいは、修飾により起こるオリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性の低下は、安定性および/もしくは送達の増大ならびに/または上記の他の特性によって差し引かれる。
二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドは、たくさんの上記の特徴のうちの任意の組み合わせを持つことができる。好ましい二本鎖オリゴヌクレオチドは、一つの5'三リン酸が5' Aに付着している一つの平滑末端および21〜30 bpの長さを有するRNAオリゴヌクレオチドである。より好ましい二本鎖オリゴヌクレオチドは、5' Aに付着した一つの5'三リン酸を持つ一つの平滑末端、5'三リン酸を持たないもう一つの末端の1または2 ntの5'突出部、および21〜30 bpの長さを有するRNAオリゴヌクレオチドである。好ましい一本鎖オリゴヌクレオチドは、長さが21〜30 bpのステムを有する一つのステム・ループ構造を有する。さらにより好ましくは、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する少なくとも一つの最も3'側のリボヌクレオチドは、上記のオリゴヌクレオチドにおいて2'-O-メチル化される。
第二の局面において、本発明は、オリゴヌクレオチドがマイナス一本鎖RNAウイルスのゲノムRNAの最も5'末端の少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも21ヌクレオチドに100%相補的なヌクレオチド配列を有する、本質的に均質な一本鎖オリゴヌクレオチドの集団を含むオリゴヌクレオチド調製物を提供する。
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、マイナス一本鎖RNAウイルスのゲノムRNAの最も5'末端の少なくとも20、21ヌクレオチド、好ましくは22、23ヌクレオチド、より好ましくは24、25ヌクレオチドに100%相補的なヌクレオチド配列を有する。
マイナス一本鎖RNAウイルスはインフルエンザA型ウイルス、狂犬病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、センダイウイルス、エボラウイルスおよびハンタウイルスを含むが、これらに限定されることはない。
いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、そのような一本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つウイルスゲノムRNAの5'末端とともに、平滑末端を有する完全に二本鎖の構造を形成し、それによってウイルスゲノムRNAの5'末端および3'末端により形成されるステム・ループ構造を含んだ部分的に二本鎖の構造よりも強力なRIG-Iリガンドを提供する。
本発明のオリゴヌクレオチド調製物を単独でまたは一つもしくは複数の免疫刺激剤との組み合わせで用いて、ウイルス特異的にマイナス一本鎖RNAウイルスに対する、抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導することができる。本発明のオリゴヌクレオチド調製物を単独でまたは一つもしくは複数の免疫刺激剤および/もしくは抗ウイルス剤との組み合わせで用いて、ウイルス感染、特に、マイナス一本鎖RNAウイルスによる感染を予防および/または処置することができる。
第三の局面において、本発明は、オリゴヌクレオチドがヌクレオチド2+mと2+m+nとの間でマイナス一本鎖RNAウイルスのゲノムRNAの5'末端のヌクレオチド配列に100%相補的なヌクレオチド配列を有し、mおよびnが独立して正の整数であり、mが1以上でありかつ5以下であり、ならびにnが12以上、好ましくは13、14、15、より好ましくは16、17、18、さらにより好ましくは19、20、21である、本質的に均質な一本鎖オリゴヌクレオチドの集団を含むオリゴヌクレオチド調製物を提供する。
好ましくは、nが20、21、より好ましくは22、23、さらにより好ましくは24、25以上である。好ましくは、nが60、50、より好ましくは40、さらにより好ましくは30以下である。
いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、そのような一本鎖オリゴヌクレオチドは、5'三リン酸を持つウイルスゲノムRNAの5'末端とともに、2〜6 ntの5'突出部を有する完全に二本鎖の構造を形成し、それによって不活性なRIG-Iリガンドを提供する。オリゴヌクレオチドがウイルスゲノムRNAの3'末端よりもウイルスゲノムRNAの5'末端に対して高い相補性度を有するので、オリゴヌクレオチドは、ウイルスゲノムRNAの5'末端と3'末端との間で形成される二本鎖構造におけるウイルスゲノムRNAの3'末端に取って代わり、それによって活性なRIG-Iリガンドを不活性なRIG-Iリガンドに変換する。
本発明のオリゴヌクレオチド調製物を単独でまたは一つもしくは複数の免疫抑制薬との組み合わせで用いて、ウイルス特異的にマイナス一本鎖RNAウイルスに対する、抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を低減しまたは消失さえもし、I型IFNおよび/または抗ウイルス応答の他の成分の過剰産生が引き起こす悪影響を抑止および/または阻止(すなわち、低減および/または除去)することができる。
siRNAオリゴヌクレオチド
別の態様において、本発明は、アンチセンス領域が標的遺伝子またはその一部分によりコードされるRNAのヌクレオチドに対して相補的なヌクレオチド配列を含み、かつセンス領域がアンチセンス領域に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、センス領域とアンチセンス領域とを含んだ、標的遺伝子の発現を下方制御するまたは標的RNAの切断を指令する低分子干渉5'-3p-オリゴヌクレオチド(3p-siRNA)を特徴とする。
「相補性」とは、G-Uゆらぎ塩基対合を含め従来のワトソン・クリック塩基対合または本明細書において記述される他の非従来のタイプのいずれかにより、核酸が別の核酸配列と水素結合を形成できることを意味する。一つの態様において、一方の鎖がセンス領域といわれるヌクレオチド配列を含み、かつもう一方の鎖がアンチセンス領域といわれるヌクレオチド配列を含み、それぞれの鎖は長さが15〜30ヌクレオチドである、siRNA分子などの、本発明の二本鎖核酸分子は、二本鎖核酸分子のセンス領域とアンチセンス領域との間で約10%〜約100% (例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%)の相補性を含む。本発明の核酸オリゴヌクレオチドに関連して、核酸分子のその相補配列との結合自由エネルギーは、核酸の関連機能、例えば、RNAi活性を進行させるのに十分である。核酸分子の結合自由エネルギーの判定は、当技術分野において周知である(例えば、Turner et al., 1987, CSH Symp. Quant. Biol. LII pp. 123-133; Frier et al., 1986, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 83:9373-9377; Turner et al., 1987, J. Am. Chem. Soc. 109:3783-3785を参照のこと)。%相補性は、第二の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン・クリック塩基対合)を形成できる核酸分子における近接残基の割合を示す(例えば、10個のヌクレオチドを有する第二の核酸配列に対して塩基対合されている第一のオリゴヌクレオチドにおける計10個のヌクレオチドのうち5、6、7、8、9または10個のヌクレオチドは、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%および100%の相補性となる)。一つの態様において、本発明のsiRNA分子は、siRNAオリゴヌクレオチドのセンス鎖またはセンス領域とアンチセンス鎖またはアンチセンス領域との間の完全な相補性を有する。一つの態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドは、対応する標的核酸分子に対して完全に相補的である。「完全に相補的な」とは、核酸配列の近接残基の全てが第二の核酸配列における同数の近接残基と水素結合することを意味する。一つの態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドは、一つもしくは複数の標的核酸分子またはその一部分に相補的な約15〜約30またはそれ以上(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30またはそれ以上)のヌクレオチドを含む。一つの態様において、本発明のsiRNA分子はsiRNAオリゴヌクレオチドのセンス鎖もしくはセンス領域とアンチセンス鎖もしくはアンチセンス領域との間でまたはsiRNAオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖もしくはアンチセンス領域と対応する標的核酸分子との間で部分的な相補性(すなわち、100%未満の相補性)を有する。例えば、部分的な相補性はsiRNA分子のセンス鎖もしくはセンス領域とアンチセンス鎖もしくはアンチセンス領域との間でまたはsiRNAオリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖もしくはアンチセンス領域と対応する標的核酸分子との間で生じるバルジ、ループまたは突出部をもたらしうるsiRNA構造内のさまざまなミスマッチまたは塩基対合していないヌクレオチド(例えば、1、2、3、4、5個またはそれ以上のミスマッチまたは塩基対合していないヌクレオチド)を含むことができる。
ある種の態様において、上記の二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドは遺伝子抑制活性を有する。本明細書において用いられる場合、「遺伝子抑制活性」という用語は、遺伝子の発現を、好ましくはRNA干渉(RNAi)を介して、下方制御するオリゴヌクレオチドの能力をいう。好ましい態様において、オリゴヌクレオチドはsiRNA (低分子干渉RNA)またはshRNA (低分子ヘアピンRNA)である。
ある種の態様において、上記の二本鎖または一本鎖オリゴヌクレオチドはアポトーシス誘導活性を有する。本明細書において用いられる場合、「アポトーシス誘導活性」という用語は、プログラム細胞死を、好ましくは腫瘍細胞におけるRIG-Iの活性化を介して、好ましくは腫瘍細胞におけるRNA干渉(RNAi)を介して、好ましくは腫瘍細胞におけるまたは腫瘍細胞において発現されるI型IFN受容体を介してアポトーシス誘導に間接的に寄与する免疫細胞のような他の細胞におけるI型IFN経路を介して、誘導するオリゴヌクレオチドの能力をいう。好ましい態様において、オリゴヌクレオチドはsiRNA (低分子干渉RNA)またはshRNA (低分子ヘアピンRNA)である。
一つの態様において、本発明は、例えば、標的遺伝子またはRNAがタンパク質コード配列を含む、標的遺伝子の発現を阻害する、下方制御するもしくは低減する、または標的RNAの切断を指令する(3p-siRNA)オリゴヌクレオチドを特徴とする。一つの態様において、本発明は、例えば、標的遺伝子またはRNAが、標的遺伝子発現に関わる非コード配列または調節要素(例えば、非コードRNA、miRNA、stRNAなど)を含む、標的遺伝子の発現を下方制御する、または標的RNAの切断を指令する3p-siRNAオリゴヌクレオチドを特徴とする。本明細書における態様のいずれかにおいて、本発明の3p-siRNAオリゴヌクレオチドはRNA干渉またはRNA干渉の阻害を介して一つまたは複数の標的の発現を調節する。RNA干渉はRISCを介した標的切断(例えば、siRNAを介したRNA干渉)であることができる。RNA干渉は標的の翻訳阻害(例えば、miRNAを介したRNA干渉)であることができる。好ましい態様において、RNA干渉は標的の転写阻害(例えば、siRNAを介した転写抑制)である。RNA干渉は通常、細胞質内で行われる。一つの態様において、RNA干渉は核内で行われることもできる。
特に好ましい態様において、siRNAオリゴヌクレオチドは「複合活性」を有する。本明細書において用いられる場合、「複合活性」という用語は、RIG-Iを活性化するかつ遺伝子抑制活性を有するオリゴヌクレオチドの能力をいう。言い換えれば、「複合活性」は、a) RIG-Iを発現する細胞においてRIG-Iを活性化もできおよび/または抗ウイルス応答、特に、IFN応答を誘導もでき、ならびにb) 標的遺伝子の発現を下方制御もできるオリゴヌクレオチドをいう。「複合」という用語は、同じオリゴヌクレオチドが複合活性を示すことを意味する。
一つの態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドは、RNAiを媒介する能力を維持しながらも修飾されたヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドを用いて、安定性、活性、毒性、免疫応答および/または生物学的利用能のようなインビトロでのまたはインビボでの特徴を改善することができる。例えば、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドは、siRNAオリゴヌクレオチドに存在するヌクレオチドの総数の割合として修飾ヌクレオチドを含むことができる。したがって、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドは、約5%〜約100%の修飾ヌクレオチド(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)を一般に含むことができる。例えば、一つの態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド位置の約5%〜約100% (例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)が2'-糖修飾、例えば、2'-O-メチルヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノ、2'-O-メトキシエチルヌクレオチド、2'-O-トリフルオロメチルヌクレオチド、2'-O-エチル-トリフルオロメトキシヌクレオチド、2'-O-ジフルオロメトキシ-エトキシヌクレオチドまたは2'-デオキシヌクレオチドのような、核酸糖修飾を含む。別の態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド位置の約5%〜約100% (例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)がイノシン、プリン、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6-トリメトキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば、5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5-ハロウリジン(例えば、5-ブロモウリジン)または6-アザピリミジンもしくは6-アルキルピリミジン(例えば6-メチルウリジン)、あるいはプロピン修飾のような、核酸塩基修飾を含む。別の態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド位置の約5%〜約100% (例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)が核酸骨格修飾を含む。別の態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチド位置の約5%〜約100% (例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチド)が核酸糖、塩基もしくは骨格修飾またはそれらの任意の組み合わせ(例えば、核酸糖、塩基、骨格または非ヌクレオチド修飾の任意の組み合わせ)を含む。一つの態様において、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドは、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の修飾ヌクレオチドを含む。所与のsiRNAオリゴヌクレオチドに存在する修飾ヌクレオチドの実際の割合は、siRNAオリゴヌクレオチドに存在するヌクレオチドの総数に依るであろう。siRNAオリゴヌクレオチドが一本鎖であるなら、%修飾は、一本鎖siRNAオリゴヌクレオチドに存在するヌクレオチドの総数に基づくことができる。同様に、siRNAオリゴヌクレオチドが二本鎖であるなら、%修飾は、センス鎖、アンチセンス鎖、またはセンス鎖とアンチセンス鎖の両方に存在するヌクレオチドの総数に基づくことができる。
一つの態様において、本発明は、(a) siRNA鎖の一方が標的遺伝子のRNAに相補的な配列を含んだ、化学的に修飾されうる、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドを合成する段階; および(b) 被験体または生物における標的遺伝子の発現を調節する(例えば、阻害する)のに適した条件の下で被験体または生物へsiRNAオリゴヌクレオチドを導入する段階を含む、被験体または生物における標的遺伝子の発現を調節する方法を特徴とする。
一つの態様において、本発明は、(a) siRNAが標的遺伝子のRNAに対する相補性を有する一本鎖配列を含んだ、化学的に修飾されうる、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドを合成する段階; および(b) 細胞における標的遺伝子の発現を調節する(例えば、阻害する)のに適した条件の下で細胞へsiRNAオリゴヌクレオチドを導入する段階を含む、細胞内での標的遺伝子の発現を調節する方法を特徴とする。
「調節」は、本発明との関連で標的遺伝子の発現の阻害、下方制御または低減を意味する。「阻害する」、「下方制御する」または「低減する」とは、遺伝子の発現、または一つもしくは複数のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子もしくは等価なRNA分子のレベル、または一つもしくは複数のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が本発明の核酸分子(例えば、siRNA)の非存在下において認められるものよりも下方に低減されることを意味する。一つの態様において、siRNAオリゴヌクレオチドによる阻害、下方制御または低減は、不活性なまたは減弱下された分子の存在下において認められるそのレベルよりも低い。別の態様において、siRNAオリゴヌクレオチドによる阻害、下方制御または低減は、例えば、スクランブル配列を有するまたはミスマッチを有するsiRNAオリゴヌクレオチドの存在下において認められるそのレベルよりも低い。別の態様において、本発明の核酸分子による遺伝子発現の阻害、下方制御または低減は、核酸分子の存在下でその非存在下でよりも大きい。一つの態様において、遺伝子発現の阻害、下方制御または低減は、RNAiを介した標的核酸分子(例えばRNA)の切断または翻訳の阻害などの、転写後抑制と関連している。
「遺伝子」または「標的遺伝子」または「標的DNA」とは、RNAをコードする核酸、例えば、ポリペプチドをコードする構造遺伝子を含むが、これに限定されない、核酸配列を意味する。「標的核酸」または「標的ポリヌクレオチド」とは、発現または活性を調節したい任意の核酸配列(例えば、任意の標的および/または経路標的配列)を意味する。標的核酸はDNAまたはRNAでありうる。一つの態様において、本発明の標的核酸は標的RNAまたはDNAである。
当業者は、遺伝子のコード配列を考慮すれば、Reynolds et al. 23に開示されているものなどの公的に入手可能なアルゴリズムならびに「BD-RNAiデザイン」(Beckton Dickinson)および「Block-iT RNAi」(Invitrogen)などのデザインエンジンを用いてsiRNAおよびshRNAを容易にデザインすることができる。たとえ従来のsiRNAが、通常、19 bp長であって、二つの2ヌクレオチドの3'突出部を有しても(すなわち、各一本鎖が21ヌクレオチド長であっても)、当業者は容易に、公知のアルゴリズムまたはデザインエンジンによってデザインされたsiRNAの配列を改変し、上記のものの構造特性を有する二本鎖オリゴヌクレオチドを得ることができる。さらに、当業者は容易に、上記のものの構造特性を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを得るためにデザインされたshRNAの配列を改変することもできる。さらに、当業者は容易に、ノザンブロット分析法、定量的もしくは半定量的RT-PCR法、ウエスタンブロット分析法、表面もしくは細胞内FACS分析法のような、当技術分野において公知の方法を用いてオリゴヌクレオチドの遺伝子抑制効力を試験することもできる。siRNAオリゴヌクレオチドをデザインするための一つの例示的な方法を以下に概説する。
以下の非限定的な方法を用いて、所与の遺伝子配列または転写産物を標的化するsiNAの選択を行うことができる。
1. 標的配列は、標的配列内に含まれる、特定の長さの全ての断片または部分配列、例えば23ヌクレオチドの断片のリストへインシリコで構文解析される。この段階は、典型的には、Oligo、MacVectorまたはGCG Wisconsin Packageのような市販の配列解析プログラムを用いて行われる。
2. 場合によっては、siRNAは二つ以上の標的配列に対応することもあり; こういったことは、例えば同じ遺伝子の異なる転写産物の標的化、二種以上の遺伝子の異なる転写産物の標的化、またはヒト遺伝子と動物ホモログの両方の標的化の場合であろう。この場合、特定の長さの部分配列リストを各々の標的について作出し、次にそれらのリストを比較して各リスト中のマッチング配列を見出す。次いで、大部分または全部の標的配列に存在する部分配列を見出すために所与の部分配列を含んだ標的配列の数にしたがって、部分配列を順位付けする。あるいは、順位付けによって、変異体の標的配列のような、標的配列に特有の部分配列を特定することもできる。そのような手法によって、変異体配列を特異的に標的化するように、かつ正常な配列の発現に影響を与えないようにsiRNAを使用することが可能になろう。
3. 場合によっては、siRNA部分配列が、所望の標的配列に存在しても一つまたは複数の配列に存在していない; こういったことは、標的化されないままとしたいパラロガスファミリーの成員を有する遺伝子を、siRNAが標的化する場合であろう。上記の段落2と同様に、特定の長さの部分配列リストを各々の標的について作出し、次にそれらのリストを比較して、標的遺伝子には存在するが非標的化パラログには存在しない配列を見出す。
4. ランク付けされたsiRNA部分配列をGC含量にしたがってさらに分析し、ランク付けしてもよい。30〜70%のGCを含んだ部位の方を取ってもよく、さらには40〜60%のGCを含んだ部位の方を取ってもよい。
5. ランク付けされたsiRNA部分配列を自己折り畳みおよび内部ヘアピンにしたがってさらに分析し、ランク付けしてもよい。いっそう弱い内部折り畳みが好ましい; 強力なヘアピン構造は回避される。
6. ランク付けされたsiRNA部分配列を、それらが配列の中にGGGまたはCCCの続きを有するかどうかにしたがってさらに分析し、ランク付けしてもよい。いずれかの鎖におけるGGG (またはさらに多くのG)はオリゴヌクレオチド合成を厄介にすることがあり、RNAi活性を妨げる可能性もあるので、より良い配列を利用できるときにはそれを回避する。標的鎖においてCCCを探す。というのは、それによりアンチセンス鎖にはGGGが配置されるからである。
7. ランク付けされたsiRNA部分配列を、(アンチセンス配列に3' UUをもたらすために)それらがジヌクレオチドUU (ウリジンジヌクレオチド)を配列の3'末端に、および/またはAAを配列の5'末端に有するかどうかにしたがってさらに分析し、ランク付けしてもよい。これらの配列によって、末端TTチミジンジヌクレオチドを有するsiRNAオリゴヌクレオチドをデザインすることが可能になる。
8. 上記のようにランク付けされた部分配列のリストから4つまたは5つの標的部位を選ぶ。例えば、23ヌクレオチドを有する部分配列において、各選ばれた23-merの部分配列の右側21ヌクレオチドを次いで、siRNA二重鎖の上(センス)鎖用にデザインおよび合成し、その一方、各選ばれた23-merの部分配列の左側21ヌクレオチドの逆相補体を次いで、siRNA二重鎖の下(アンチセンス)鎖用にデザインおよび合成する。末端TT残基が配列に望ましいなら(段落7に記述されているように)、センス鎖とアンチセンス鎖の両方の二つの3'末端ヌクレオチドをオリゴの合成前にTTに置き換える。
9. siRNAオリゴヌクレオチドをインビトロ、細胞培養または動物モデル系においてスクリーニングし、最も活性なsiRNAオリゴヌクレオチドまたは標的RNA配列内の最も好ましい標的部位を特定する。
好ましい態様において、siRNAは長さが少なくとも19 bp、好ましくは少なくとも21 bpであり; センス鎖は5'三リン酸を持ち; 5'三リン酸を持つ末端が平滑末端であり、かつ他端が平滑末端、1もしくは2ヌクレオチドの3'突出部、または1もしくは2ヌクレオチドの5'突出部である。好ましくは、5'三リン酸を持たない末端は平滑末端または1もしくは2ヌクレオチドの3'突出部、より好ましくは1もしくは2ヌクレオチドの3'突出部である。
好ましい態様において、siRNAまたはshRNAは疾患/障害関連遺伝子に特異的である。当技術分野において広く用いられるように、「疾患/障害関連遺伝子」という用語は、疾患/障害における細胞において発現されるが、正常細胞において発現されない遺伝子、または疾患/障害における細胞において正常細胞におけるよりも高いレベルで発現される遺伝子をいう。好ましい態様において、疾患/障害関連遺伝子の発現は、疾患/障害の確立および/または進行の原因となるまたは一因となる。
一つの態様において、疾患/障害は腫瘍またはがんであり、かつ疾患/障害関連遺伝子はがん遺伝子である。がん遺伝子の例としては、野生型および/または変異体Bcl-2、c-Myc、c-Ras、c-Met、Her2、EGFR、PDGFR、VEGFR、Edg4、Edg7、S1P、Raf、ERK WNT、Survivin、HGF、cdk2、cdk4、MITF、サイクリンD1、GROおよびmcl-1が挙げられる。特に好ましいがん遺伝子はBcl-2である。
別の態様において、疾患/障害はウイルス感染であり、かつ疾患/障害関連遺伝子は、宿主細胞認識、宿主細胞への侵入、ウイルス複製、ウイルス粒子集合(viral partical assembly)および/もしくはウイルス伝播に必要とされる遺伝子であり、またはその産物がそれらに必要とされる。疾患/障害関連遺伝子は、ウイルス遺伝子または宿主遺伝子であることができる。ウイルス遺伝子の一例は、HBVのHbsAgである。
薬学的組成物
本発明は、上記の本発明のオリゴヌクレオチド調製物の少なくとも一つおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。
「少なくとも一つ」とは、同じまたは異なるオリゴヌクレオチドの一つまたは複数のオリゴヌクレオチド調製物を一緒に使用できることを意味する。
好ましい態様において、薬学的組成物はさらに、細胞への、特に、細胞のサイトゾルへのオリゴヌクレオチドの送達を促進する剤を含む。
一つの態様において、送達剤は、オリゴヌクレオチドと複合体を形成する、かつ細胞へのオリゴヌクレオチドの送達を促進する複合体形成剤である。複合体形成剤は当技術分野において「トランスフェクション剤」ともいわれる。薬学的組成物の用途に適合する任意の複合体形成剤を利用することができる。複合体形成剤の例としては重合体および生分解性ミクロスフェアが挙げられる。重合体は好ましくは陽イオン性重合体、より好ましくは陽イオン性脂質である。陽イオン性脂質の例としてはDOTAP (Roche)およびリポフェクトアミン(Invitrogen)が挙げられる。脂質に基づく複合体形成剤の他の例はFuGene (Roche)である。重合体の例としてはin vivo-jetPEI(商標) (PolyPlus)およびコラーゲン誘導体のようなポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。生分解性ミクロスフェアの例としては、リポソーム、ビロソーム、SMARTICLES (登録商標) (Novosom, Halle)、安定核酸脂質粒子(SNALP)、SICOMATRIX (登録商標) (CSL Limited)およびポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)共重合体(PLGA)ミクロスフェアが挙げられる。
別の態様において、送達剤は、ウイルス、好ましくは複製欠損性ウイルスである。送達されるオリゴヌクレオチドは、ウイルス被膜に含有され、ウイルスをその標的特異性に基づき選択することができる。有用なウイルスの例としては、上気道上皮および他の細胞を標的化するポリミクソウイルス(polymyxovirus)、肝細胞を標的化するB型肝炎ウイルス、上皮細胞および他の細胞を標的化するインフルエンザウイルス、いくつかの異なる細胞型を標的化するアデノウイルス、上皮および扁平上皮細胞を標的化するパピローマウイルス、ニューロンを標的化するヘルペスウイルス、CD4+ T細胞、樹状細胞および他の細胞を標的化するHIVなどのレトロウイルス、種々の細胞を標的化する修飾ワクシニアアンカラ(Vaccinia Ankara)、ならびに腫瘍細胞を標的化する腫瘍溶解性ウイルスが挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスの例としては、天然の野生型ニューカッスル病ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の弱毒化株、ならびに単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、アデノウイルス、ポックスウイルスおよび麻疹ウイルスの遺伝子操作変異体が挙げられる。
送達剤により送達されることに加えて、オリゴヌクレオチドおよび/または薬学的組成物は、エレクトロポレーション、ショック波による投与、超音波誘発トランスフェクション、および金粒子を用いる遺伝子銃送達などの物理的な手段を介して細胞内に送達することができる。
薬学的組成物はさらに、オリゴヌクレオチドを安定化する剤などの別の剤を含んでもよい。安定化剤の例としては、オリゴヌクレオチドと複合体形成して、iRNP、キレート剤、例えばEDTA、塩およびRNase阻害剤などを形成するタンパク質が挙げられる。
ある種の態様において、薬学的組成物、特に、本発明の第一および第二の局面によるオリゴヌクレオチド調製物を含む薬学的組成物はさらに、一つまたは複数の薬学的に活性な治療剤を含む。薬学的に活性な剤の例としては、免疫刺激剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗腫瘍剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、抗血管新生因子、化学療法剤、抗体および遺伝子抑制剤が挙げられる。好ましくは、薬学的に活性な剤は、免疫刺激剤、抗ウイルス剤および抗腫瘍剤からなる群より選択される。二つ以上の薬学的に活性な剤は、同じまたは異なる範疇のものであってもよい。
ある種の態様において、薬学的組成物、特に、本発明の第一および第二の局面によるオリゴヌクレオチド調製物を含む薬学的組成物はさらに、ワクチンを予防的および/または治療的とできる、抗原、抗ウイルスワクチン、抗細菌ワクチンおよび/または抗腫瘍ワクチンを含む。
ある種の態様において、薬学的組成物、特に、本発明の第一および第二の局面によるオリゴヌクレオチド調製物を含む薬学的組成物はさらに、レチノイド酸、IFN-αおよび/またはIFN-βを含む。いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、レチノイド酸、IFN-αおよび/またはIFN-βは、おそらくRIG-I発現の上方制御を通じて、IFN-α産生に対する細胞の感受性を高めることができる。
薬学的組成物は、意図した投与経路、送達形式および望ましい投与量を含め、その治療用途に適合するどのような方法でも処方することができる。当業者は、Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed., Gennaro AR ed., Mack Publishing Company, 1990)に記述されているものなどの、当技術分野における共通の一般知識にしたがって最適な薬学的組成物を処方することができる。
薬学的組成物は、瞬間放出、制御放出、持続放出、徐放、長期放出、または持続放出のために処方することができる。
薬学的組成物は、意図した用途に適合するなら、局所経路、腸内経路および非経口経路を含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の任意の経路によって投与することができる。局所投与(Topic administration)は、経皮投与、吸入投与、鼻腔内投与、膣内投与、浣腸、点眼薬および点耳薬を含むが、これらに限定されることはない。腸内投与は、経口投与、直腸投与および栄養管を通じた投与を含むが、これらに限定されることはない。非経口投与は、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、心臓内投与、皮下投与、骨内投与、皮内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、経皮投与、経粘膜投与および吸入投与を含むが、これらに限定されることはない。
好ましい態様において、薬学的組成物は、スプレイ(すなわち、エアロゾル)調製物の形態におけるような、局所(例えば、粘膜、皮膚)塗布用である。
薬学的組成物は、予防目的用および/または治療目的用であることができる。例えば、スプレイ(すなわち、エアロゾル)調製物を用いて、鼻粘膜および肺粘膜の抗ウイルス能を強めることができる。
当業者は、処置される疾患または状態、疾患または状態の重症度、患者の年齢、性別および身体的状態、ならびに前処置の有無などの要因に基づいて最適な投与量、頻度、タイミングおよび投与経路を容易に判定することができる。
インビトロでの適用
本発明は、上記の本発明のオリゴヌクレオチド調製物のインビトロでの使用を提供する。特に、本出願は、インビトロで抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導するための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。本出願は同様に、インビトロで腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するための上記の少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物または少なくとも一つのsiRNAオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
本発明は、
(a) 上記の本発明の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを複合体形成剤と混合する段階; および
(b) RIG-Iを発現する細胞と、(a)の混合物とを接触させる段階
を含む、細胞において抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を刺激するためのインビトロでの方法を提供する。
細胞は外来核酸(RNAまたはDNA)からRIG-Iを内因的におよび/または外因的に発現することができる。外来性DNAはプラスミドDNA、ウイルスベクターまたはその一部分であることができる。外来性DNAは細胞のゲノムへ組み込まれてもよく、または染色体外に存在してもよい。細胞は初代免疫細胞、初代非免疫細胞および細胞株を含むが、これらに限定されることはない。免疫細胞は末梢血単核細胞(PBMC)、形質細胞様樹状細胞(PDC)、骨髄系樹状細胞(MDC)、マクロファージ、単球、B細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞およびNKT細胞を含むが、これらに限定されることはない。非免疫細胞は線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞および腫瘍細胞を含むが、これらに限定されることはない。細胞株は免疫細胞または非免疫細胞に由来することができる。
本発明は、
(a) 上記の本発明の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを複合体形成剤と混合する段階; および
(b) 腫瘍細胞と、(a)の混合物とを接触させる段階
を含む、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するためのインビトロでの方法を提供する。
腫瘍細胞は、腫瘍または腫瘍細胞株を有する脊椎動物から新鮮分離された初代腫瘍細胞であることができる。
オリゴヌクレオチド調製物は、上記の本発明の第一の局面によることが好ましい。
インビボでの適用
本出願は、上記の本発明のオリゴヌクレオチド調製物またはsiRNAオリゴヌクレオチドのインビボでの使用を提供する。
特に、本出願は、脊椎動物、特に、哺乳動物において抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導するための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。本出願はさらに、脊椎動物、特に、哺乳動物において腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。本出願はさらに、医学および/または獣医学診療で、脊椎動物、特に、哺乳動物において疾患および/または障害を予防および/または処置するための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。本発明は同様に、ワクチンアジュバントとして用いるための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。
さらに、本出願は、脊椎動物、特に、哺乳動物において抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導するための薬学的組成物の調製のための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。本出願はさらに、脊椎動物、特に、哺乳動物において腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するための薬学的組成物の調製のための上記の少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物または少なくとも一つのsiRNAオリゴヌクレオチドの使用を提供する。本出願はさらに、医学および/または獣医学診療で、脊椎動物、特に、哺乳動物において疾患および/または障害を予防および/または処置するための薬学的組成物の調製のための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。
オリゴヌクレオチド調製物は、上記の本発明の第一の局面によることが好ましい。
疾患および/または障害は、感染、腫瘍/がん、および免疫障害を含むが、これらに限定されることはない。
感染は、ウイルス感染、細菌感染、炭疽病、寄生虫感染、真菌感染およびプリオン感染を含むが、これらに限定されることはない。
ウイルス感染は、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ポリオウイルス、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)および天然痘ウイルスによる感染を含むが、これらに限定されることはない。一つの態様において、感染は、ウイルスおよび/または細菌、特に、インフルエンザ、より具体的には、鳥インフルエンザによって引き起こされる上気道感染である。
細菌感染は連鎖球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、大腸菌(E. Coli)およびシュードモナス菌(pseudomonas)による感染を含むが、これらに限定されることはない。一つの態様において、細菌感染は、細胞内細菌、例えばマイコバクテリウム(結核)、クラミジア、マイコプラズマ、リステリア、および通性細胞内細菌、例えば黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)による感染である細胞内細菌感染である。
寄生虫感染は蠕虫感染、特に、腸内蠕虫感染を含むが、これらに限定されることはない。
好ましい態様において、感染はウイルス感染または細胞内細菌感染である。より好ましい態様において、感染はC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、RSV、HPV、HSV1、HSV2およびCMVによるウイルス感染である。
さらに好ましい態様において、本出願は、アポトーシスを誘導するための薬学的組成物の調製のための上記の少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物またはsiRNAオリゴヌクレオチドの使用を提供する。さらに好ましい態様において、本出願は、脊椎動物、特に、哺乳動物における、(a) 抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答の誘導、およびb) 腫瘍標的遺伝子、特にBcl-2の下方制御の両方のための薬学的組成物の調製のための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。本出願はさらに、脊椎動物、特に、哺乳動物において腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するための薬学的組成物の調製のための少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。
腫瘍は良性腫瘍も悪性腫瘍(すなわち、がん)も含む。
がんは、胆道がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、絨毛腫、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、上皮内新生物、白血病、リンパ腫、肝がん、肺がん、黒色腫、骨髄腫、神経芽腫、口腔がん、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、直腸がん、肉腫、皮膚がん、精巣がん、甲状腺がんおよび腎がんを含むが、これらに限定されることはなく、好ましくは、がんは黒色腫である。
ある種の態様において、がんは、有毛細胞白血病、慢性骨髄原性白血病、皮膚T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、悪性黒色腫、扁平上皮がん腫、腎細胞がん腫、前立腺がん腫、膀胱細胞がん腫、乳房がん腫、卵巣がん腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肝細胞がん腫、基底細胞腫、結腸がん腫、子宮頸部異形成、およびカポジ肉腫(AIDS関連および非AIDS関連)から選択される。
免疫障害は、アレルギー、自己免疫障害、および免疫不全を含むが、これらに限定されることはない。
アレルギーは、呼吸アレルギー、接触アレルギーおよび食物アレルギーを含むが、これらに限定されることはない。
自己免疫疾患は、多発性硬化症、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、癩逆転反応(leprosy reversal reaction)、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性知覚神経性聴力喪失、再生不良性貧血、赤芽球ろう、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、慢性活性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、および間隙性肺線維症を含むが、これらに限定されることはない。
免疫不全は、自然免疫不全、後天性免疫不全(AIDSを含む)、薬物誘導性の免疫不全または免疫抑制(移植で用いられる免疫抑制薬およびがんの処置に用いられる化学療法剤によって誘導されるものなどの)、ならびに長期血液透析、外傷または外科手術によって引き起こされる免疫抑制を含むが、これらに限定されることはない。
好ましい態様において、免疫障害は多発性硬化症である。
ある種の好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは遺伝子抑制活性を有する。オリゴヌクレオチドはかくして、一つの分子中に遺伝子抑制および免疫刺激という二つの機能性が組み合わされている。好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは、がん遺伝子またはウイルス感染および/もしくは複製に必要な遺伝子などの、疾患/障害関連遺伝子に特異的な遺伝子抑制活性を有する。
ある種の態様において、オリゴヌクレオチドは免疫刺激剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗腫瘍剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、抗血管新生因子、化学療法剤、抗体および遺伝子抑制剤のような一つまたは複数の薬学的に活性な剤と組み合わせて用いられる。好ましくは、薬学的に活性な剤は、免疫刺激剤、抗ウイルス剤および抗腫瘍剤からなる群より選択される。二つ以上の薬学的に活性な剤は、同じまたは異なる範疇のものであってもよい。
一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、ワクチンを予防的および/または治療的とできる、抗原、抗ウイルスワクチン、抗細菌ワクチンおよび/または抗腫瘍ワクチンと組み合わせて用いられる。オリゴヌクレオチドは、アジュバントとして働くことができる。
別の態様において、オリゴヌクレオチドは、レチノイン酸および/またはI型IFN (IFN-αおよび/またはIFN-β)と組み合わせて用いられる。いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、レチノイド酸、IFN-αおよび/またはIFN-βは、おそらくRIG-I発現の上方制御を通じて、IFN-α産生に対する細胞の感受性を高めることができる。
他の態様において、薬学的組成物は感染、腫瘍および免疫障害のような疾患および/または障害の一つまたは複数の予防的および/または治療的処置と組み合わせて用いるためのものである。処置は薬理学的および/または理学的(例えば、外科、放射線照射)であることができる。
脊椎動物は魚類、両生類、鳥類および哺乳類を含むが、これらに限定されることはない。哺乳類はラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ウシ、雌ウシ、ブタ、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトを含むが、これらに限定されることはない。好ましい態様において、哺乳類はヒトである。
本出願は、脊椎動物、特に、マイナス一本鎖RNAウイルスに感染している哺乳動物において抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導するための上記の本発明の第二の局面による少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。本出願は同様に、医学および/または獣医学診療で、脊椎動物、特に、哺乳動物においてマイナス一本鎖RNAウイルスによる感染を予防および/または処置するための上記の本発明の第二の局面による少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。
さらに、本出願は、脊椎動物、特に、マイナス一本鎖RNAウイルスに感染している哺乳動物において抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を誘導するための薬学的組成物の調製のための上記の本発明の第二の局面による少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。本出願は同様に、医学および/または獣医学診療で、脊椎動物、特に、哺乳動物においてマイナス一本鎖RNAウイルスによる感染を予防および/または処置するための薬学的組成物の調製のための上記の本発明の第二の局面による少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。
ある種の態様において、オリゴヌクレオチドは免疫刺激剤、抗ウイルス剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、抗体および遺伝子抑制剤のような一つまたは複数の薬学的に活性な剤と組み合わせて用いられる。好ましくは、薬学的に活性な剤は、免疫刺激剤または抗ウイルス剤から選択される。二つ以上の薬学的に活性な剤は、同じまたは異なる範疇のものであってもよい。
一つの態様において、オリゴヌクレオチドは、ワクチンを予防的および/または治療的とできる、抗ウイルスワクチンと組み合わせて用いられる。
別の態様において、オリゴヌクレオチドは、レチノイン酸および/またはI型IFN (IFN-αおよび/またはIFN-β)と組み合わせて用いられる。いずれかの理論によって束縛されるわけではないが、レチノイド酸、IFN-αおよび/またはIFN-βは、おそらくRIG-I発現の上方制御を通じて、IFN-α産生に対する細胞の感受性を高めることができる。
他の態様において、薬学的組成物はウイルス感染の一つまたは複数の予防的および/または治療的処置と組み合わせて用いるためのものである。
本発明は、哺乳動物においてマイナス一本鎖RNAウイルスに対する抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を妨げるおよび/または阻害するための上記の本発明の第三の局面による少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物を提供する。本発明は同様に、哺乳動物においてマイナス一本鎖ウイルスに対する抗ウイルス応答、特に、I型IFN応答、より具体的には、IFN-α応答を妨げるおよび/または阻害するための薬学的組成物の調製のための上記の本発明の第三の局面による少なくとも一つのオリゴヌクレオチド調製物の使用を提供する。
一つの態様において、オリゴヌクレオチド調製物はウイルス誘発性の出血熱を処置するために用いることができる。ウイルス誘発性の出血熱は、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、新世界アレナウイルス(グアナリト、マチュポ、フニンおよびサビア)、リフトバレー熱ウイルス、ならびにクリミア・コンゴ出血熱ウイルスによって誘発される出血熱を含むが、これらに限定されることはない。
オリゴヌクレオチド調製物は単独でまたは一つもしくは複数の免疫抑制薬と組み合わせて用いることができる。
マイナス一本鎖RNAウイルスは、インフルエンザA型ウイルス、狂犬病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、センダイウイルス、エボラウイルスおよびハンタウイルスを含むが、これらに限定されることはない。
オリゴヌクレオチド調製物を調製するための方法
本発明は、上記の本発明の第一の局面のオリゴヌクレオチド調製物を調製するための方法を提供する。
具体的には、本発明は、
(a) ヌクレオチド配列の少なくとも一方が5'末端に少なくとも1つのリボヌクレオチドを含み、5'末端に少なくとも1つのリボヌクレオチドを含む少なくとも一方のオリゴヌクレオチド配列の5'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドの配列がもう一方のオリゴヌクレオチド配列の3'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドの配列と100%の相補性を有し、それによって平滑末端を形成する、二つのオリゴヌクレオチド配列を特定する段階;
(b) 平滑末端を形成する、5'末端に少なくとも1つのリボヌクレオチドを含む少なくとも一方のオリゴヌクレオチドが最も5'側のリボヌクレオチド上に5'三リン酸を持つ、(a)で特定された配列を有する、二つの本質的に均質な二つのオリゴヌクレオチドの集団を調製する段階;
(c) 本質的に均質な二本鎖オリゴヌクレオチドの集団を(b)で調製された二つのオリゴヌクレオチドから調製する段階; および
(d) 任意で、二本鎖オリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を試験する段階
を含む、免疫刺激活性、特に、I型IFN誘導活性、より具体的にはIFN-α誘導活性を有する二本鎖オリゴヌクレオチド調製物を調製するための方法を提供する。
一つの態様において、上記の方法により調製されたオリゴヌクレオチド調製物に含まれるオリゴヌクレオチドは、一つの5'三リン酸を持つ一つの平滑末端またはそれぞれが一つの5'三リン酸を持つ二つの平滑末端を有する。一つの態様において、上記の方法により調製されたオリゴヌクレオチド調製物に含まれるオリゴヌクレオチドは、一つの5'三リン酸を持つ一つの平滑末端およびいずれの5'三リン酸も持たない1または2ヌクレオチドの一つの5'突出部を有する。
さらに、本発明は、
(a) ヌクレオチド配列が5'末端に少なくとも1つのリボヌクレオチドを含み、オリゴヌクレオチド配列の5'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドの配列がオリゴヌクレオチド配列の3'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドの配列と100%の相補性を有する、オリゴヌクレオチド配列を特定する段階;
(b) オリゴヌクレオチドが最も5'側のリボヌクレオチド上に5'三リン酸を持つ、(a)で特定された配列を有する本質的に均質なオリゴヌクレオチドの集団を調製する段階; および
(c) 任意で、一本鎖オリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を試験する段階
を含む、免疫刺激活性、特に、I型IFN誘導活性、より具体的にはIFN-α誘導活性を有する一本鎖オリゴヌクレオチド調製物を調製するための方法を提供する。
好ましい態様において、上記の方法で特定されたオリゴヌクレオチド配列の、平滑末端を形成する、5'末端の少なくとも一つのリボヌクレオチドはAである。
さらに好ましい態様において、上記の方法で特定されたオリゴヌクレオチド配列の、平滑末端を形成する、5'末端の最初の4つのリボヌクレオチドの配列は、5'から3'方向へ
から選択される。より好ましい態様において、最初の4つのリボヌクレオチドの配列は、No. 1〜19から、より好ましくはNo. 1〜9から、さらにより好ましくはNo. 1〜4から選択される。
一つの態様において、本発明はさらに、5'三リン酸を持つかつ平滑末端を形成する最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドを2'-O-メチル化する段階を含む。
本発明はさらに、
(a) ヌクレオチド配列が標的遺伝子に特異的でありかつ5'末端に少なくとも1つのリボヌクレオチドを含み、オリゴヌクレオチド配列の5'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドの配列がオリゴヌクレオチド配列の3'末端の少なくとも19個、好ましくは少なくとも21個のヌクレオチドの配列と100%の相補性を有する、オリゴヌクレオチド配列を特定する段階;
(b) オリゴヌクレオチドが最も5'側のリボヌクレオチド上に5'三リン酸を持つ; 二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの、最も5'側のリボヌクレオチドの両方に5'三リン酸を持つ、または一方もしくはもう一方の5'末端に一つだけを持つ、(a)で特定された配列を有する、本質的に均質なオリゴヌクレオチドの集団を調製する段階;
(c) 任意で、一本鎖オリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を試験する段階; および
(d) 任意で、オリゴヌクレオチドを遺伝子抑制活性について試験する段階
を含む、標的遺伝子抑制およびI型IFN誘導活性の複合活性を有するオリゴヌクレオチド調製物を調製するための方法に関する。
本発明はさらに、
(a) 標的遺伝子に特異的である、第一のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を特定する段階;
(b) (a)で特定された配列を有する本質的に均質な第一のオリゴヌクレオチドの集団を調製する段階;
(c) 第二のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列が第一のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に100%相補的である、本質的に均質な第二のオリゴヌクレオチドの集団を調製する段階;
(d) 任意で、一本鎖オリゴヌクレオチドのI型IFN誘導活性を試験する段階; および
(e) 任意で、オリゴヌクレオチドを遺伝子抑制活性について試験する段階
を含み、第一および/または第二のオリゴヌクレオチドが最も5'側のリボヌクレオチド上にまたは両方の5'リボヌクレオチド上に5'三リン酸を持ち; 5'三リン酸にはいずれのキャップ構造もなく; かつ第一および第二のオリゴヌクレオチドは長さが少なくとも19塩基対、好ましくは少なくとも21塩基対、より好ましくは少なくとも24塩基対を有する、標的遺伝子抑制およびI型IFN誘導活性の複合活性を有するオリゴヌクレオチド調製物を調製するための方法に関する。
オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を調節するための方法
本発明は、オリゴヌクレオチドが少なくとも一つの平滑末端を有しかつ平滑末端の5'末端に少なくとも1個のリボヌクレオチドを含み、平滑末端が、最も5'側のリボヌクレオチドに付着した5'三リン酸を持ち、この5'三リン酸にはいずれのキャップ構造もなく、平滑末端の後に、長さが少なくとも19塩基対(bp)、好ましくは少なくとも21塩基対(bp)である完全に二本鎖の部分が続く、オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性、特に、I型IFN誘導活性、より具体的にはIFN-α誘導活性を増強するための方法であって、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドを2'-O-メチル化する段階を含む、方法を提供する。
本発明は同様に、オリゴヌクレオチドが少なくとも一つの平滑末端を有しかつ平滑末端の5'末端に少なくとも1個のリボヌクレオチドを含み、平滑末端が、最も5'側のリボヌクレオチドに付着した5'三リン酸を持ち、この5'三リン酸にはいずれのキャップ構造もなく、平滑末端の後に、長さが少なくとも19塩基対(bp)、好ましくは少なくとも21塩基対(bp)である完全に二本鎖の部分が続く、オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性、特に、I型IFN誘導活性、より具体的にはIFN-α誘導活性を低減するための方法であって、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドではないヌクレオチドを2'-O-メチル化する段階を含む、方法を提供する。
好ましい態様において、2'-O-メチル化されるヌクレオチドは、平滑末端に5'三リン酸を持つ最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドのすぐ5'側のヌクレオチドである。
本発明を以下の実施例によって例証する。
実施例は例証の目的のためのみであり、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
材料および方法
1. 細胞
若年の健常ドナーにより供与された全血から、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離(Biochrom、Berlin, Germany)によってヒトPBMCを調製した。PDCは、Miltenyi Biotec(Bergisch-Gladbach, Germany)製の血液樹状細胞Ag (BCDA)-4樹状細胞単離キットを用いて、MACSによって単離した。簡潔に説明すると、コロイド状の常磁性マイクロビーズに結合している抗BDCA-4 AbでPDCを標識し、磁気分離カラムに2回(LSカラム、次にMSカラム;Miltenyi Biotec)通した。単離されたPDC(lineage陰性、MHC-II陽性、およびCD123陽性細胞)の純度は、95%を超えていた。単球を単離する前に、MACS(LDカラム;Miltenyi Biotec)によりPDCを枯渇させ、次いで単球単離キットII(Miltenyi Biotec)を用いて単球を単離した。MDCは、抗CD1cビーズを用いた免疫磁気選別(CD1c (BDCA-1)+樹状細胞単離キット、ヒト、Miltenyi Biotec)によって、PBMCから精製した。細胞の生存率は、トリパンブルー排除により決定して95%を超えていた。特記しない限り、細胞は刺激実験のために96ウェルプレートで培養した。MDC(0.5×106個/ml)は、10% FCS、1.5 mM L-グルタミン、100 U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI 1640中で保持した。PDC(0.25×106個/ml)は、10 ng/ml IL-3(R&D Systems GmbH)を補充した同じ培地中で培養した。単球(0.5×106個/ml)は、2% AB血清(BioWhittaker、Heidelberg, Germany)、1.5 mM L-グルタミン、100 U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI培地中に再懸濁した。化合物はすべて、使用前に内毒素の混入について試験した。
2. マウス
TLR7欠損(TLR7-/-)マウスはS. Akiraによって供与された3。雌C57BL/6マウスはHarlan-Winkelmann(Borchen, Germany)より購入した。マウスは、実験の開始時に6〜12週齢であった。動物実験は地域の規制当局(Regierung von Oberbayern、Munich, Germany)によって承認された。
3. RNA
化学合成RNAオリゴヌクレオチドは、Eurogentec(Leiden, Belgium)、MWG-BIOTECH AG(Ebersberg, Germany)、biomers.net GmbH(Ulm, Germany)より購入し、任意にJanos Ludwig(Rockefeller Univ., USA)によって修飾された。インビトロ転写RNAは、Megashort Scriptキット(Ambion、Huntingdon, UK)を用いて製造業者の説明書に従って調製した。インビトロ転写を37℃で一晩行った。DNase I(Ambion)を用いてDNA鋳型を消化した。フェノール:クロロホルム抽出およびアルコール沈殿によって、RNAを精製した。Mini Quick Spin(商標)オリゴカラム(Roche)にRNAを通すことによって、過剰な塩およびNTPを除去した。RNAのサイズおよび完全性をゲル電気泳動でチェックした。CpG-ODNは、Coley Pharmaceutical Group(Wellesley, USA)またはMetabion(Martinsried, Germany)より購入した。2'-O-メチル化オリゴヌクレオチドは、biomers.net GmbHより取得した。
4. 細胞の刺激(トランスフェクション)
特記しない限り、製造業者のプロトコールに従って、96ウェルプレートの各ウェルにおいてLipofectamine 2000(Invitrogen) 0.5μlを用いて、精製RNAオリゴヌクレオチド200 ngを細胞にトランスフェクトした。CpG ODNは最終濃度3μg/mlで使用した。ポリカチオン性ポリペプチドであるポリ-L-アルギニン(Sigma, P7762)を用いるトランスフェクションについては、PBS(PAA Laboratories GmBH)で希釈した核酸200 ngをポリ-L-アルギニン280 ngと混合し、刺激前に20分間インキュベートした。実験によっては、刺激する前の30分間、1または2.5μg/mlクロロキン(Sigma)で細胞を前処理した。刺激/転写の24時間後に、組織培養上清を回収し、IFN-α産生についてアッセイした。
5. IFN-α ELISA
製造業者の推奨に従ってIFN-αモジュールセット(Bender MedSystems、Graz, Austria)を用いて、刺激/トランスフェクションの24時間後に回収した細胞培養上清においてヒトIFN-αを評価した。以下のプロトコールに従って、マウスIFN-αを測定した:モノクローナルラット抗マウスIFN-α(クローンRMMA-1)を捕獲Abとして使用し、ポリクローナルウサギ抗マウスIFN-α血清を検出に使用し(いずれもPBL Biomedical Laboratories)、HRP結合ロバ抗ウサギIgGを二次試薬として使用した(Jackson ImmunoResearch Laboratories)。マウスrIFN-α(PBL Biomedical Laboratories)を標準品(IU/mlのIFN-α濃度)として使用した。
結果
実施例1. 単球およびPDCにおいて異なる受容体によって認識される、5'三リン酸を有するRNAオリゴヌクレオチド
PDC、MDC、および単球はすべて、IFN-αを産生することにより、5'三リン酸を有するRNAオリゴヌクレオチド(3pRNA)の刺激に応答し得ることが判明した(データは示さず)。これらの異なる免疫細胞集団において3pRNAの認識に関与する受容体を同定するために、TLR7、TLR8、およびTLR9媒介性の核酸認識の強力な阻害剤であるクロロキンの存在下および非存在下において、インビトロ転写3pRNA(表1)をこれらの細胞にトランスフェクトした。
(表1)RNAおよびDNAオリゴヌクレオチド配列
(ppp:三リン酸;下線の文字:塩基の3'側のホスホロチオエート連結;太字、CpGジヌクレオチド)
図1Aに示すように、単球からの3pRNA誘導性IFN-α産生はクロロキンの添加によって影響を受けなかったのに対して、PDCからの3pRNA誘導性IFN-α産生はクロロキンの添加によって大幅に減少した。
さらに、図1Aに示すように、3pRNAがPDCからIFN-αを誘導する能力は、TLR7によって認識される分子的特徴であることが知られている配列中のUの存在に依存する。
さらに、図1Bに示すように、野生型マウス由来のPDCはIFN-αを産生することによって3pRNAによる刺激に応答するが、TLR7欠損(TLR7-/-)マウス由来のPDCでは、この応答は完全になくなりはしないものの、劇的に減少する。
総合すると、これらの結果から、PDCにおける3pRNAの認識はヌクレオチド配列に依存的な様式で主にTLR7によって媒介されるのに対し、単球における3pRNAの認識は、完全ではないにせよ主にRIG-Iによって媒介され、ヌクレオチド配列に非依存的である。
実施例2. 5'三リン酸の存在が厳密に必要とされる、単球におけるIFN-α誘導
5'一リン酸を有する合成RNAオリゴヌクレオチド(表2)を、精製初代ヒト単球にトランスフェクトした。5'三リン酸を有するインビトロ転写RNAを、陽性対照として使用した。トランスフェクション/刺激の24時間後に、IFN-α分泌のレベルを測定した。
(表2)RNAオリゴヌクレオチド配列
(p:一リン酸;ppp:三リン酸;下線の文字:塩基の3'側のホスホロチオエート連結;太字、CpGジヌクレオチド)
図2Bに示すように、5'三リン酸の存在または非存在にかかわらず、試験したRNAオリゴヌクレオチドはすべて、短いdsRNAの認識に主にTLR7を使用する(実施例1を参照されたい)PDCからIFN-α産生を誘導することができた。
図2Bに示すように、5'三リン酸を有する、インビトロ転写RNAオリゴヌクレオチドである3pRNAは、相当量のIFN-αを誘導したのに対し、5'OHを有する合成RNAオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが平滑末端を有するか3'オーバーハングを有するかにかかわらず、単球からIFN-α産生を誘導することができなかった。
これらの結果から、単球におけるIFN-α誘導には5'三リン酸が厳密に必要であることが示される。単球ではRNA認識およびIFN-α誘導は主にRIG-Iによって媒介されるため(実施例1を参照されたい)、このデータから、平滑末端は、少なくとも5'三リン酸の非存在下ではRIG-Iによって認識されないことが示唆される。
実施例3. 5'三リン酸を有する合成二本鎖オリゴヌクレオチドの免疫刺激活性を増大させる平滑末端
3pRNAオリゴヌクレオチドはTLR7依存的経路を介してPDCからIFN-α産生を誘導することができるため(実施例1を参照されたい)、IFN-αのRIG-I依存的誘導を研究するために、RNAオリゴヌクレオチド(図3および表3)を精製単球、PDC枯渇PBMC(PBMC-PDC)、またはクロロキン処理PBMC(PBMC+Chl)にトランスフェクトした。
RNAオリゴヌクレオチドの設計および命名を図3に示し、オリゴヌクレオチドの配列を表3に示す。
(表3)RNAおよびDNAオリゴヌクレオチド配列
(syn:合成;ivt:インビトロ転写)
図4A、5A、および6Aに示すように、単球からIFN-αを誘導するためには、二本鎖3pRNAオリゴヌクレオチドに21ヌクレオチドの最低限の長さが必要である。さらに、二本鎖3pRNAオリゴヌクレオチドが5'三リン酸を有するのと同じ末端に平滑末端を有する場合に、最も高いIFN-α誘導活性が認められた。非三リン酸末端に1ntの3'オーバーハングを有する二本鎖オリゴヌクレオチドが、非三リン酸末端において平滑末端を有するものよりも高いIFN-α誘導活性を有したため、非三リン酸末端における平滑末端の形成は好ましくないように見える(図5Aおよび6、3P-A + AS A23と3P-A + AS A24、または3P-G + AS G23と3P-G + AS G24を比較されたい)。さらに、5'三リン酸を有する5'末端にAを有するdsRNAオリゴヌクレオチドは、同じ位置にGまたはUを有するものよりも、IFN-αの誘導においてより強力であった;5'三リン酸を有する5'末端にCを有するdsRNAオリゴヌクレオチドは、最も弱かった。PDC枯渇PBMCおよびクロロキン処理PBMCでも、同様の結果が得られた(図4〜6、BおよびC)。
対照的に、5'一リン酸を有する二本鎖オリゴヌクレオチドは、末端構造にかかわらず、IFN-αの誘導において効果的ではなかった(図6)。
これらのデータから、RIG-I認識には5'三リン酸が必要であることが示唆される。さらに、平滑末端はRIG-Iによって認識される分子的特徴である;これにより、RIG-I経路を介したIFN-αの誘導に際して、同じ末端に5'三リン酸を有する合成二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの効力が増大する。
実施例4. インビトロ転写によって生成され得る一本鎖RNA転写産物
5'三リン酸を有する合成dsRNAおよびインビトロ転写ssRNAのいずれもが、RIG-Iを活性化し得ることが示されている15, 25。本発明者らは、RIG-I活性化には二本鎖立体配置が必要であることを見出した19。インビトロ転写によって得られたssRNAは、おそらくは二本鎖立体配置を有する異常なRNA転写産物の存在に起因して、RIG-Iを活性化し得ると仮定された。
実際に、全4種類のNTP(すなわち、ATP、UTP、GTP、CTP)の存在下でssRNAをインビトロで転写させ、これを尿素ポリアクリルアミドゲルで泳動した場合、2本のバンドが認められ、このことから二本鎖種の存在が示される(図7C、試料4、「ivt3P-G_ACA」)。
続いて、UTPの非存在下でインビトロ転写を行った。驚くべきことに、上方のバンドはゲルから消失し、転写産物は、精製初代ヒト単球からIFN-a誘導を誘導しなかった(図7A〜C、試料5、「ivt3P-G_ACA-U」)。
それだけではIFN誘導活性をもたないそのようなインビトロ転写一本鎖RNAオリゴヌクレオチド(ivt3P-G_ACA-U)に合成相補鎖(AS G21)を添加すると、IFN誘導活性が回復した(図1A〜C、試料6、「ivt3P-G_ACA-U + AS G21」)。
この結果から、インビトロ転写により、二本鎖形成を含まず、かつIFN誘導活性を含まないssRNAを得ることが可能であることが示唆される。そのようなインビトロ転写ssRNAは、相補鎖との二本鎖形成時にのみ、RIG-Iリガンドを活性化するようになり得る。
実施例5. 位置依存的である、5'三リン酸を有する平滑末端化RNAオリゴヌクレオチドのIFN-α誘導活性に及ぼす2'-O-メチル化の影響
健常ドナーから単球を精製し、Lipofectamine 2μlと複合化した、0.8μg/mlの表示の二本鎖オリゴヌクレオチド(図8)で刺激した。5'三リン酸を有する5' Aを伴う鎖(すなわち、3P-A)を以下「センス鎖」と称し、その相補鎖(修飾を伴うまたは伴わないAS A24)を「アンチセンス鎖」と称する。
アンチセンス鎖において3'末端からの様々な位置、2位、4位、12位、および20位のUを2'-O-メチル化すると、二本鎖3PオリゴヌクレオチドのIFN-α誘導活性が減少した(図8)。この知見は、真核生物の転写後RNAプロセシング中に起こるヌクレオシド修飾が、RNAオリゴヌクレオチドのIFN誘導活性を無効にするという以前の報告と一致する15, 19。この活性減少作用は、2'-O-メチル化がアンチセンス鎖の3'末端から2位にて起こった場合に最も顕著であった。
驚くべきことに、アンチセンス鎖の最も3'側のUを2'-O-メチル化した場合、二本鎖オリゴヌクレオチドのIFN誘導活性は減少するどころか、およそ20%増強された(図8)。
これらの結果から、特定の位置での2'-O-メチル化による、3PオリゴヌクレオチドのIFN誘導活性の改変の可能性が示唆される。3PオリゴヌクレオチドのIFN誘導活性は、平滑末端において5'三リン酸を有する最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドの2'-O-メチル化によって増強され得るが、IFN誘導活性は任意の他のヌクレオチド、特に、平滑末端において5'三リン酸を有する最も5'側のリボヌクレオチドと塩基対合する最も3'側のヌクレオチドのすぐ5'側にある、2番目に3'側のヌクレオチドの2'-O-メチル化によって減少し得る。
実施例6. RIG-Iによって認識され、これを活性化する分子モチーフ
材料および方法
三リン酸オリゴリボヌクレオチドの化学合成
遊離の5'-OH末端を含むオリゴリボヌクレオチドは、Dharmaconによる市販の5'-シリル2' ACE保護アミダイトを用いてABI 392合成機で合成した。固相三リン酸化は、Ludwig and Ecksteinによって開発されたプロトコールの改良版を用いて行った27。最終産物をナトリウム塩としてエタノールから沈殿させた。MALDI-ToF解析は、Metabion(Martinsried, Germany)によって行われた。
一リン酸RNA、非修飾RNA、およびインビトロ転写RNA
一リン酸RNAおよび非修飾RNAオリゴヌクレオチド(ORN)は、商業的供給業者(それぞれ、Metabion、Martinsried, Germany、およびBiomers、Ulm, Germany)によって合成された。配列を表1に収載する。Ivt3P-GおよびIvt3P-Gacaは、市販のインビトロT7転写キット(Epicentre)を用いてインビトロ転写(IVT)によって生成した。DNA鋳型依存的インビトロ転写RNAを生成するには、T7プロモーター領域
をプロモーター+鋳型鎖
とハイブリダイズさせ、インビトロ転写反応の鋳型として直接使用した。ivt3P-G w/o Uおよびivt3P-Gaca w/o Uを生成するには、インビトロ転写をUTPの非存在下で行った。
細胞培養
健常なボランティアドナーのヒト全血から、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離(Biochrom Berlin, Germany)によってヒトPBMCを単離した。形質細胞様樹状細胞(PDC)は、磁気標識抗CD304抗体(Miltenyi Biotec)を用いて陽性枯渇させた。手付かずの単球は、製造業者の説明書(ヒト単球単離キットII、Miltenyi Biotec)に従って、PBMCから陰性枯渇により取得した。全細胞の生存率は、トリパンブルー排除により決定して95%を超えていた。特記しない限り、400,000個の細胞(PBMC)または200,000個の細胞(単球)を、刺激実験のために96ウェルプレートで培養した。細胞は、10% FCS、1.5 mM L-グルタミン、100 U/mlペニシリン、およびストレプトマイシン100μg/mlを含むRPMI 1640中で保持した。化合物はすべて、使用前に内毒素の混入について試験した。
サイトカインの検出
IFN-a産生の量は、Bender MedSystems(Vienna, Austria)によるIFN-aモジュールセットを用いて測定した。ELISAアッセイは製造業者のプロトコールに従って行った。サイトカインの濃度は、公知の量の組換えサイトカインを用いて得られた検量線によって決定した。
フローサイトメトリー
細胞純度は、FACS LSRII(BD Biosciences、Heidelberg, Germany)を用いて、細胞表面抗原のFACS解析によって評価した。ヒト単球をCD14に対する抗体-FITCまたはCD14に対する抗体-APCで染色し、細胞純度は83%〜99%であった。ヒトPDCは、CD123に対する抗体-PE、HLA-DRに対する抗体-PerCPで陽性標識し、CD11cに対する抗体-APCおよびlineageマーカーに対するカクテル(FITC)について陰性標識した。抗体はBD PharMingenより購入した。データ解析は、CellQuest(BD Biosciences)およびFlowjo(Treestar)を用いて生存細胞で行った。
タンパク質の精製および解析
(His6)-Flagタグ化RIG-I(HF-RIG-I)を293T細胞で一過性に過剰発現させ、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含むCHAPS含有溶解緩衝液(150 mM NaCl、50 mM Tris/HCl pH 7.4、2 mM MgCl2、1 mM DTT、1% CHAPS)中で溶解した。溶解物を、抗FLAGビーズ(Sigma)と共に4℃で一晩インキュベートした。続いて、抗FLAGビーズを溶解緩衝液および高塩濃度洗浄緩衝液(300 mM NaCl、50 mM Tris/HCl pH 7.4、5 mM MgCl2、1 mM DTT、0.1% CHAPS)で洗浄した。ビーズにFLAGペプチド(300 ug/ml)を添加することにより、RIG-I-FLAGを溶出した。組換えRIG-Iの純度を、SDS-PAGE分離およびその後のクマシーブルー染色により決定した(図4G)。
ATPアーゼアッセイ
ATPアーゼアッセイは、アッセイ緩衝液(50 mM KCl、55 mM HEPES(pH 7.0) 3 mM MgCl2、0.5 mM DTT、0.1 mM ATP)中で行った。EC50を算出するため、RNAを6 fM〜4μMの範囲で力価測定した。37℃で30分間インキュベートした後、製造業者のプロトコールに従って、FRETベースの高感度競合イムノアッセイ(HTRF(登録商標) Transcreener(商標) ADP、Cisbio、Bedford, USA)を用いて、ADPの発生を測定した。FRETは、EnVision(登録商標)マルチラベルリーダー(PerkinElmer、Waltham, USA)を用いて測定した。このアッセイにおいて、FRETの阻害は、RIG-IのATPアーゼ活性によって生じたADPの濃度と相関する。ADP濃度を、製造業者のプロトコールに従ってADP/ATP滴定曲線より算出した。
AlphaScreen RIG-I結合アッセイ
RNAの(His6) FLAGタグ化RIG-I(HF-RIG-I)に対する結合親和性は、増幅発光近接ホモジニアスアッセイ(AlphaScreen;Perkin Elmer)により、記載通りに測定した31, 32。このアッセイでは、精製HF-RIG-Iを漸増濃度のビオチン化RNAと共に、緩衝液(50 mM Tris/pH 7.4、100 mM NaCl、0.01% Tween 20、0.1% BSA)中で37℃で1時間インキュベートし、続いてHF-RIG-I結合ニッケルキレートアクセプタービーズ(Perkin Elmer)およびビオチン-RNA結合ストレプトアビジンドナービーズ(Perkin Elmer)と共に25℃で30分間インキュベートした。ドナービーズは光増感剤フタロシアニンを含み、これは680-nmレーザー光による照射後に、周囲の酸素を「一重項」酸素に変換する。4-sの寿命中に、「一重項」酸素は最大200 nmまで拡散し、ビーズに結合している被験分子の相互作用によって近接したアクセプタービーズ上のチオキセン誘導体を活性化し得る。それに続いて起こる、520〜620 nmの範囲で発光する蛍光色素(同一ビーズ内に含まれる)の活性化によって生じた化学発光は、関連するビーズの数および近接性と相関し、これはドナー(ビオチン-RNA)とアクセプター(HF-RIG-I)の解離定数と逆相関する。アッセイは384ウェルプレート(Proxiplate;Perkin-Elmer)のウェル中で行った。マルチラベルリーダー(Envision;Perkin Elmer)で、プレートを放出された蛍光について解析した。
結果
自己相補性およびひいては二次構造形成(分子内または分子間二本鎖形成)がないと予測される、5'-Gを伴う24mer RNAオリゴヌクレオチド(3P-G)を設計した(表5を参照されたい)。以前に確立された方法を用いることにより、対応する合成オリゴヌクレオチドの5'末端に三リン酸基を共有結合させた27。HPLCおよびMALDI-ToFを用いて、RNAオリゴヌクレオチドの純度を確認した(図9A〜C)。インビトロ転写により、同じ配列(ivt3P-G)および陽性対照オリゴヌクレオチド(IVT2、30mer、表5)を生成した。RNAオリゴヌクレオチドのRIG-I活性を、RIG-I活性化の十分に確立されたアッセイ法である初代ヒト単球で調べた15。
(表5)オリゴヌクレオチド配列(5'→3')
3P=三リン酸、P=一リン酸、ivt=インビトロ転写;syn=合成
*alpha screenに用いたオリゴは、5'においてビオチンで標識した。
**AS A24PおよびTAK 25Pは、3'において一リン酸化した。
予測通り、インビトロ転写型の3P-Gおよび陽性対照配列IVT2は、単球においてIFN-αを誘導した。意外なことに、合成3P-GはIFN-α誘導を示さなかった(図9D)。ポリアクリルアミドゲル解析から、ivt3P-Gが2本の主要なバンドとして存在し、その一方が合成3P-Gの単一バンドよりもゆっくりと移動することが明らかになった(図9E、レーン5対レーン1)。合成3P-Gは分子的に明確であるため、ivt3P-Gは、自己相補性または高分子量のいずれかに起因して、よりゆっくりと移動するバンドを形成する。本発明者らが使用した配列を考えると、自己相補性が存在する可能性は低い。しかしながら、本来一本鎖になるよう設計されたIVT反応物から相補的副産物および二本鎖RNA産物が生じるRNA鋳型依存的RNA転写によって、高分子量が生じたということもあり得る。実際に、完全合成の相補的一本鎖(三リン酸基を含まない、AS G24)を3P-Gに添加すると(3P-G+AS G24)、完全なRIG-Iリガンド活性が生じた(図9D)。
本発明者らは次に、3つの3'UUUを3'ACAに置換することにより、3P-Gの配列を3P-Gacaに変更した(図9F右側パネルを参照されたい)。3P-Gacaのインビトロ転写は、インビトロ反応混合物中に3種のヌクレオチド、G、C、およびAのみを必要とし、Uを必要としない。したがって、二本鎖形成はUの存在下でのみ起こり得る。明確な合成RNAを用いることによって得られた結果と一致して、本発明者らは、ivt3P-GacaがIFN-αを強く誘導したのに対し、ivt3P-Gaca w/o U(反応混合物中にUが存在しない、二本鎖が予測されない)はIFN-α誘導を示さないことを見出した(図9F)。21merの相補鎖(AS G21)を添加すると、IFN-α誘導活性は回復した。ivt3P-Gaca w/o Uの二本鎖形成の欠如が、ゲル解析を用いて確認された(図9F)。
次に、3P-Gに対して相補的な鎖(AS G24)の長さを、24ヌクレオチドから13ヌクレオチドに減少させた(3P-Gおよび相補的AS G24〜AS G13、図10Aおよび表5を参照されたい)。配列3P-Gとでは、AS G21が相補鎖の許容される最小の長さであることを、本発明者らは見出した(図10A)。AS G23は3P-Gと共に(非三リン酸末端において1ヌクレオチドの3'オーバーハング)、一貫してAS G24(非三リン酸末端においてオーバーハングなし)よりも高い活性を示した;3P-AとのAS A23およびAS A24についても、同様のことが認められ(図10B)、非三リン酸末端における平滑末端形成は好ましくないことが示唆される。
5'-ヌクレオチドの寄与を解析するため、本発明者らは、3P-GのRIG-Iリガンド活性を他の3つの合成変種(3P-A、3P-C、3P-U)と比較した。5'-グアノシンと比較して、5'-アデノシンが好ましいことが認められた(図10Cおよび10D)。さらに、3P-Gおよび3P-Aの両者について、非三リン酸末端において相補鎖を伸長させると、IFN-α誘導活性は減少せず、むしろ増加した(図11A)。
非三リン酸末端とは異なり、三リン酸末端における伸長によりRIG-Iリガンド活性は減少した(図11Bおよび13)。RIG-Iリガンド活性は、三リン酸末端において5'オーバーハングを生じる相補鎖の短縮に対して、特に感受性が高い(3P-G+AS 23、3P-G+AS 21、3P-G+AS 19、図11C)。非関連のRNA配列を用いた場合にも、同様の結果が認められた(GFP2、図14を参照されたい)。3つの関連した配列、3P-GFP1、3P-GFP2、および3P-GFP3の比較から、一本鎖RNAオリゴヌクレオチド内のステムループ二次構造形成はRIG-I活性化に十分でないことが示唆された(図14、配列は表5を参照されたい)。
次に本発明者らは、合成5'一リン酸一本鎖RNA(P-A)と合成5'三リン酸一本鎖RNA(3P-A)を比較し、平滑末端の寄与および二本鎖部分の長さを研究するために、相補鎖の長さを変更した(図11D)。同じ配列の5'三リン酸型と比較して、本発明者らは、5'一リン酸平滑末端二本鎖RNA(P-A+AS A24)によってそれほどのIFN-α誘導を認めなかった。一リン酸末端における1ヌクレオチドの3'オーバーハング(P-A+AS A25)、もしくは一リン酸鎖の1ヌクレオチドの3'オーバーハング(P-A+AS A23)(図11D)、または相補鎖の21ヌクレオチドへの短縮(P-A+AS A21)により、RIG-I活性は増加しなかった(データは示さず)。TakahasiらのRNA配列についても、同様のことが認められた(図15)24。
本発明者らは、HEK293T細胞から単離された精製ヒトRIG-Iタンパク質と、異なる一本鎖および二本鎖RNAリガンドとの直接的相互作用を解析した。一本鎖RNAは(すべて白記号)、5'三リン酸または5'一リン酸にかかわりなく、ATPアーゼ活性を誘導しなかった(図12A)。二本鎖RNA分子は(すべて黒記号)、二本鎖の組成および5'末端の立体配置に応じて15 nM〜600 nMの範囲のEC50を示した(図12A)。5'一リン酸を伴うおよび5'リン酸を伴わない二本鎖RNA(P-A+AS A24、HO-A+AS A24)は、5'三リン酸を伴う二本鎖RNAよりも35倍および20倍高いEC50(低いATPアーゼ活性)を示した(図12A)。単球において相当量のIFN-αを誘導した5'三リン酸二本鎖RNA分子(3P-A+AS A24、3P-A+AS A23、3P-A+AS A21、図13を参照されたい)は、IFN-αを弱く誘導したdsRNAリガンド(3P-A+AS A34、3P-A+AS23、3P-A+AS21、3P-A+AS19、3P-A+ASA19)よりも、20〜150倍低い濃度でEC50に到達した(図12B、図13Aおよび13Bと比較されたい)。異なる5'塩基を伴う異なる5'三リン酸RNA(3P-A+AS A24、3P-G+AS G24、3P-U+AS U24、3P-C+AS C24、図12C)のATPアーゼ活性は、観察されたIFN-α誘導活性を反映した(A=G=U>C、図10Aと比較されたい)。これらのデータから、RNA RIG-IリガンドのIFN-α誘導活性はATPアーゼ活性と相関することが実証される。
本発明者らが、ホモジニアスリガンド相互作用アッセイを用いて、異なるRNA分子のRIG-Iに対する親和性を解析したところ、本発明者らは、RNAのRIG-Iへの結合が5'末端における三リン酸の存在に厳密に依存することを見出した(図12Dおよび12E)。5'-三リン酸RNA(3P-A+AS A24)の解離定数は、およそ4 nMであった。対応する非修飾RNA、5'一リン酸RNA、または脱リン酸化3P-RNA(HO-A+AS A24、P-A+AS A24、3P-A+AS A24 CIAP)のKd(app)は、本アッセイの検出限界を超えたが、5'三リン酸二本鎖RNAのKd(app)よりも少なくとも1000倍高かった(図12D、E、およびF)。単球におけるIFN-α誘導活性と一致して、IFN-α誘導性の5'-三リン酸RNA(3P-A+AS A24)と非IFN-α誘導性の5'-三リン酸RNA(3P-A+AS23、3P-A+AS A20、図12Cと13を比較されたい)のRIG-Iへの結合の大きさは、4〜5倍異なった(図12E)。
これらの結果を総合すると、i) RIG-I活性化には5'三リン酸一本鎖RNAでは十分ではないこと、ii) 5'三リン酸の認識には、三リン酸を保有する5'ヌクレオチドを包含する少なくとも21ヌクレオチドに及ぶ二本鎖が必要であること、iii) 5'三リン酸末端における3'オーバーハングにより活性が減少し、5'三リン酸末端における5'オーバーハングにより活性が消失すること、およびiv) アデノシンは、三リン酸を保有する好ましいヌクレオチドであることが実証される。さらに、5'三リン酸の5'一リン酸による置換により、IFN-α誘導活性は実質的に失われる。
二本鎖RNAは二本鎖RNAウイルス中に存在するばかりでなく、プラス一本鎖RNAウイルスの複製生活環においても、相当量のサイトゾル二本鎖RNAが産生されることが報告された33。RIG-I認識に二本鎖RNAが必要であることと一致して、二本鎖RNAウイルスおよびプラス一本鎖RNAウイルスは、実際にRIG-Iのリガンドである10, 34。しかしながら一見すると、二本鎖RNAは検出され得ないが25, 35、それでもなおウイルスゲノム一本鎖RNAがRIG-Iを活性化する15, 25マイナス一本鎖RNAウイルスのRIG-I媒介性検出に関して10, 34、このことは明確ではないように見える。しかしながら、二本鎖RNAが存在しないことを実証するために用いた抗体は25, 33、40塩基よりも長い二本鎖RNAの検出に限定されている35。配列データの慎重な解析を行ったところ、本発明者らは、RIG-Iを活性化することが知られているマイナス鎖ウイルスのゲノムが、完全な平滑末端、および三リン酸基を保有する5'アデノシンを伴う短い二本鎖を形成する5'および3'配列を含むことに気付いた(図16)。そのようなパンハンドル構造は36、ウイルスRNAポリメラーゼ複合体のRNA転写開始部位として役立ち、インフルエンザウイルスに関して広く研究された37。
実施例7:Bcl-2サイレンシングおよび抗腫瘍活性
材料および方法
1. 細胞株
マウスB16黒色腫細胞(H-2b)、C26腺癌細胞(H-2d)、NIH-3T3線維芽細胞、および初代マウス胎児線維芽細胞(MEF)は、10%熱非働化ウシ胎児血清(FCS、Invitrogen Life Technologies)、2 mM L-グルタミン、100 U ml-1ペニシリン、100μg ml-1ストレプトマイシン、および10 mM β-メルカプトエタノール(いずれもSigma-Aldrichによる)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(Biochrom、Berlin, Germany)で培養した。ヒト黒色腫細胞株1205 Lu(M. Herlyn、Wistar Institute、Philadelphia, PA, USA)は、20% LeibovitzのL-15(PAA Laboratories)、2% FCS(PAA Laboratories)、1.68 mM CaCl2(Sigma)、および5μg ml-1インスリン(Sigma)を添加したMCDB153 (Sigma)で培養した。
2. 初代細胞の培養
マウス初代細胞は、10% FCS、3 mM L-グルタミン、100μgストレプトマイシン、100 U/mlペニシリン、および10 mM β-メルカプトエタノールを補充したVLE RPMI 1640(Biochrom)で培養した。Flt3リガンドで誘導した(Flt3-L)骨髄培養物由来の形質細胞様DC(pDC)は、B220マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)で選別した。古典的樹状細胞(cDC)は、記載されている通りに生成した15。いくつかの実験では、CD19マイクロビーズ(Milteny Biotec)を用いてMACSによって、野生型マウスの脾臓からB細胞を単離した。手付かずのNK細胞およびT細胞は、NK細胞単離キットおよびCD4 T細胞単離キット(Milteny Biotec)を用いて、脾臓から選別した。全細胞の生存率はトリパンブルー排除により決定して95%を超えており、純度はFACSにより解析して>90%であった。
3. RNA
化学合成RNAオリゴヌクレオチドは、Eurogentec(Leiden, Belgium)またはMWG-BIOTECH AG(Ebersberg, Germany)より購入した。本実験に使用したすべての化学合成RNAオリゴヌクレオチドの詳細なリストについては、表7を参照されたい。いくつかの実験では、一本鎖ポリリボアデノシン酸(ポリA)または非サイレンシング対照siRNAを対照RNAとして使用した(表7に表示)。インビトロ転写RNAは、記載されている通りに合成した15。すべてのインビトロ転写鋳型の詳細なリストについては、表8を参照されたい。
(表8)インビトロ転写用のDNAオリゴヌクレオチド(鋳型)
4. インビトロでのRNAのトランスフェクション
製造業者のプロトコールに従ってLipofectamine 2000またはLipofectamine RNAiMAX(いずれもInvitrogen)を用いて、50〜70%コンフルエントな黒色腫細胞にRNA(1μg ml-1)を24時間にわたってトランスフェクトした。200μlの容量中でLipofectamine 0.5μlを用いて、DCおよび免疫細胞サブセットに核酸200 ngをトランスフェクトした。
5. プラスミド
IFN-β-Lucレポータープラスミド、野生型pPME-myc NS3-4A(NS3-4A)、pPME-myc MutNS3-4A(NS3-4A*;セリン139からAlaへの不活化変異を含む)は、T. ManiatisおよびJ, Chenより供与された。RIG-Iおよび空の対照ベクターは、T.Fujitaにより供与された11。ウミシイタケルシフェラーゼトランスフェクション効率ベクター(phRLTK)は、Promegaより購入した。WTマウスBcl-2をコードするcDNA(mBcl-2/pcDNA)は、Christoph Borner(Institute of Molecular Medicine and Cell Research, Albert-Ludwigs-University of Freiburg、Germany)により供与された。
6. インビトロおよびインビボRACE
Tryzol試薬(Invitrogen)およびRNeasy精製手順(QIAGEN)を用いて、B16細胞の(インビトロ)またはプールした転移性肺組織から全RNAを精製した。プールした試料由来のRNA 5μgを、GeneRacerアダプター[AP1](Invitrogen;5'-CGACUGGAGCACGAGGACACUGACAUGGACUGAAGGAGUAGAAA)と直接連結させた。連結させたRNAを、遺伝子特異的プライマー(表9)を用いて逆転写した。切断産物を検出するため、RNAアダプターおよびmBcl2 mRNAに相補的なプライマー(第1 PCRラウンドにはGR5'およびRev 1またはRev 2;ネステッドPCRにはGRN5'およびRevN)を用いて、2ラウンドの連続したPCRを行った。5'-RACEに使用したすべてのプライマーの詳細なリストについては、表9を参照されたい。PCR産物のクローニングおよび個々のクローンの配列決定により、特異的切断産物の同一性を確認した。
7. ウェスタンブロッティング
50 mM Tris;pH 7.4、0.25 M NaCl、1 mM EDTA、0.1% Triton X-100、0.1 mM EGTA、5 mM Na3VO4、50 mM NaF、およびプロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、EDTAフリー、Roche)を含む緩衝液中で細胞を溶解し、SDS-PAGEによって分離し、半乾燥電気ブロッティングによりそれらをニトロセルロース膜(Amersham-Biosciences)に転写した。RIG-I、Bcl-2(Santa Cruz、sc-7382)、Mcl-1、Bcl-xL、Bim、およびPuma(いずれもCell Signaling Technology)に特異的な抗体を4℃で一晩インキュベートし、ペルオキシダーゼ結合抗ラットまたは抗ウサギ二次抗体(Amersham-Biosciences)により検出した。化学発光(ECLキット;Amersham-Biosciences)により、バンドを可視化した。
8. マウスおよびRNAによるインビボ処理
RIG-I、MDA-5、TLR7、IFNAR欠損マウスおよびCD11c-DTRマウスは、記載されている通りに樹立した3, 10, 55, 56。腫瘍負荷実験に使用したTLR7欠損マウスおよびIFNAR欠損マウスは、少なくとも10世代にわたりC57BL/6遺伝的背景と交配させた。HGF/CDK4R24Cマウスは、記載されている通りに繁殖させた57。製造業者のプロトコールに従ってRNAをjetPEIと複合化した後、このRNAを用いてマウスを静脈から処理した。簡潔に説明すると、各マウスに対して、200μl容量の5%グルコース溶液中でインビボjetPEI 10μlと核酸50μgを混合し(N:P比10/1)、15分間インキュベートした。6時間後、サイトカイン測定のために血清を回収した。全身的なDC枯渇に際しては、CD11c-DTRトランスジェニックマウスに、PBS中のジフテリア毒素(DT)(Sigma D-0564) 100 ngを腹腔内注射した。DT注射の24時間後に、マウスをjePEI複合化RNAで処理した。CD11c+枯渇は、フローサイトメトリーにより確認した。
9. B16黒色腫肺転移の誘導およびリンパ球枯渇
4×105個のB16黒色腫細胞を尾静脈に注射することにより、肺転移を実験的に誘導した。腫瘍処置に際しては、腫瘍細胞の負荷後3日、6日、および9日目に、後眼窩または尾静脈注射により、200μl容量中のjetPEIと複合化したRNA 50μgを投与した。負荷の14日後に、肺表面上の肉眼で見える黒色腫転移の数をカウントした。NK細胞およびCD8 T細胞の枯渇は、記載されている通りに行った54。
10. HGF×CDK4R24C/R24Cマウス由来の初代皮膚黒色腫の連続移植
発癌物質で処理したHGF×CDK4R24C/R24Cマウスに由来する初代黒色腫を解離し23, 30、それらをナイロンメッシュフィルター(70μl)に通し、CDK4R24C/R24Cマウスの側腹部に再度注射した。継代4〜6代目の1つの移植黒色腫に由来する105個の生存している移植HGF×CDK4R24C/R24C黒色腫細胞を、マウス5匹の群に皮内注射する処理実験を行った。副尺付き摺動ジョーノギスを用いて2つの最大交差直径(L=長さおよびW=幅)を測定することにより、腫瘍増殖を毎週モニターした。式、体積=(L×W2)×0.5に従って腫瘍サイズを算出し、それをmm3で表示した。4000 mm3を超える腫瘍を有するマウスは屠殺した。
11. 統計解析
両側スチューデントt検定により、差の統計的有意性を判定した。腫瘍実験の解析については、ノンパラメトリックなマンホイットニーU検定を用いて、2群間の平均値を比較した。SPSSソフトウェア(SPSS、Chicago, ILL)を用いて、統計的解析を行った。P値<0.05を有意と見なした。
B16黒色腫において肺転移の形成を減少させる、5'-三リン酸を有する抗bcl-2 siRNA
腫瘍治療への3p-siRNAアプローチの実行可能性を試験するために、本発明者らは、マウスBcl-2 mRNAの異なる領域を標的化する3種の合成siRNA(抗bcl-2.1、抗bcl-2.2、抗bcl-2.3)を、B16黒色腫細胞においてBcl-2タンパク質を下方制御する能力について試験した(以下の図17a左側パネルおよび表7)。抗Bcl-siRNAが5'-三リン酸を含んだ場合、Bcl-2下方制御の活性および特異性は維持された(図17a右側パネルおよび表8、OH-2.2および3p-2.2を3p-GCおよびミスマッチ3p-MMと比較)。生存促進性Bcl-2ファミリーメンバーであるMcl-1およびBcl-xL、ならびにアポトーシス促進性BH3-オンリーBcl-2ファミリーメンバーであるPumaおよびBimの発現は阻害されなかったため(図23)、3p-2.2によるBcl-2のサイレンシングは特異的であった。RACE(cDNA末端の迅速増幅)技術および配列決定を用いることで、Bcl-2サイレンシングによって、RNA干渉を裏付ける特異的切断産物が生成されたことが明らかになった(図17b)。
次に本発明者らは、B16黒色腫肺転移モデルにおいてインビボで、3p-2.2の抗腫瘍活性を調べた。腫瘍細胞を接種してから3日、6日、および9日目にマウスをRNAで処理し、12日または17日目に肺転移の増殖を評価した。図17cに示すように、OH-2.2(遺伝子サイレンシング活性は予測されるが、RIG-Iリガンド活性は予測されない)、ならびに3p-RNAオリゴヌクレオチドである3p-MMおよび3p-GC(RIG-Iリガンド活性は予測されるが、遺伝子サイレンシング活性は予測されない)は、黒色腫転移の増殖をある程度阻害した。しかしながら、Bcl-2特異的遺伝子サイレンシング特性と免疫刺激特性を兼ね備える3p-2.2は、顕著に増強された治療的抗腫瘍活性を示した。
抗腫瘍活性に必要であるI型IFNおよびNK細胞
5'-三リン酸RNAはRIG-Iを活性化することによりI型インターフェロンを刺激することが知られているため、本発明者らはI型IFNの抗腫瘍効果への寄与を評価することを試みた。I型IFN受容体ノックアウトマウス(IFNAR-/-)での実験から、インビボで観察された3p-2.2の抗腫瘍活性が無傷のI型IFNシグナル伝達に依存することが確認された(図18a、左側パネルと中央パネルを比較されたい)。本発明者らは、TLR7欠損マウスにおいて3p-2.2で処理した際に転移の数が大きく減少することを見出し、よってTLR7が3p-2.2の抗腫瘍活性に必要でないことが示唆された(図18a、右側パネル)。これにより、TLR7ではなくむしろRIG-I媒介性の3p-2.2認識およびI型IFN誘導が主要な役割を担うことが示された。枯渇研究から、B16黒色腫モデルにおける3p-2.2の抗腫瘍活性は、NK細胞に依存するが、CD8 T細胞には依存しないことが実証された(図18b)。これらの結果を総合すると、遺伝子サイレンシング(3p対照3p-GCの活性が有意に低いため)および(TLR7ではなく)RIG-I依存的免疫の両方が、インビボでのB16黒色腫モデルにおける3p-2.2の抗腫瘍活性に寄与することが確認される。
インビトロでの免疫細胞サブセットおよび腫瘍細胞における生得的反応およびアポトーシス
次に本発明者らは、インビトロにおいて特定の免疫細胞サブセットの刺激を研究した。形質細胞様樹状細胞ではTLR7活性化がIFN-αの産生を誘導するのに十分であるのに対して、古典的樹状細胞(cDC)は、TLR7活性化には応答せず、ウイルス感染に応答してIFN-αを産生する。cDCにおいて3p-MM、3p-GC、および3p-2.2は同様の量のIFN-αを誘導したが、OH-2.2は不活性であった(図19a)。3p-RNAは、B細胞、NK細胞、およびT細胞においてIFN-αを誘導しなかった。TLR7またはサイトゾルヘリカーゼMDA-5もしくはRIG-Iを遺伝的に欠損しているマウスから単離された樹状細胞を用いた研究から、3p-2.2および3p-GCによるcDCにおけるIFN-αの誘導はRIG-Iに依存するが、MDA-5にもTLR7にも依存しないことが確認された(図24)。3p-2.2に曝露したcDCにおいても、他のリンパ球サブセットにおいても、アポトーシスの誘導は認められなかった(図19b)。
RIG-Iは多くの細胞型で広く発現しているため、本発明者らは、B16黒色腫細胞におけるI型IFNの直接的誘導を調べた。3p-2.2、3p-MM、または3p-GCはB16細胞において同様のレベルのIFN-βプロモーターレポーター遺伝子活性を刺激したが、OH-2.2またはホスファターゼ処理した3p-2.2には応答しなかった(図19c)。休眠しているB16黒色腫細胞はRIG-Iをほとんど発現していなかった;しかしながら、外因性のIFN-βまたは3p-2.2の存在下でRIG-I発現は強く上方制御された(図19d)。3p-2.2または3p-GCで処理したB16細胞はケモカインIP-10を分泌し、MHCクラスIを上方制御したが、OH-2.2で処理したB16細胞ではそのようなことはなかった。(図25aおよび25b)。RIG-I特異的siRNAまたはNS3-4A(Cardif、MAVS、またはVISAとしても知られ、RIG-Iの重要なシグナル伝達分子であるIPS-1を切断するC型肝炎ウイルスのセリンプロテアーゼをコードする57, 53)の過剰発現によるRIG-I発現の阻害は、いずれもI型IFN応答を排除したため(図25c、d)、B16腫瘍細胞におけるI型IFN誘導はRIG-I依存的であった。これらのデータから、3p-RNAは腫瘍細胞において直接Rig-Iを介してI型IFNを活性化し得ることが示された。
3p-2.2 siRNAは、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2のサイレンシングを介してアポトーシスの誘導を促進するように設計された。実際に、3p-2.2はB16黒色腫細胞においてアポトーシスを強力に誘導した(図19e)。3p-2.2によるアポトーシス誘導はOH-2.2単独よりも実質的に高く、また抗bcl-2-siRNAによって3p-2.2によるアポトーシス誘導が減少し、このことからRIG-Iが3p-2.2によるアポトーシス誘導に寄与することが示唆された(図19eおよび19f)。さらに、3p-GCおよび3p-2.2によるアポトーシス誘導は、IFNARの非存在下で減少し(図19f;図25e)、I型IFNシグナル伝達が腫瘍細胞のRIG-Iに対する感作に関与することが示唆される。B16腫瘍細胞とは異なり、線維芽細胞は、Bcl-2のサイレンシング(OH-2.2)またはRIG-Iの活性化(3p-GC)または両者の組み合わせ(3p-2.2)によるアポトーシス誘導に対して感受性がなかった(図19g)。免疫細胞サブセットにおいてアポトーシス誘導が起こらないこと(図19b)と総合すると、これらの結果から、Bcl-2の下方制御およびRIG-Iの活性化によって選択的に黒色腫細胞のアポトーシスが起こり、このアプローチの相対的な腫瘍選択性が示唆される。
インビボにおける先天性免疫活性化の解析
次に本発明者らは、インビボにおける3p-2.2誘導性の先天性免疫応答を研究した。3p-2.2は、IFN-α、IL-12p40、およびIFN-γの全身レベルを誘導した(図20a、図26)。CD11c-DTRマウスにおけるこの細胞型の除去によって明らかなように、IFN-αは主としてCD11c+樹状細胞に由来する。インビボでの3p-2.2によるTh1サイトカイン誘導はRIG-Iによって支配され、TLR7の寄与はわずかであった(図26)。サイトカインの産生は用量依存的であり、かつ一過性であった。マウスは、おそらくは全身性のインターフェロンのために、リンパ球および血小板の数の減少を示したが、赤血球数の減少は示さず、他の明白な毒性も示さなかった(図27)。脾臓細胞のエクスビボ解析から、骨髄樹状細胞および形質細胞様樹状細胞、NK細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の強力な活性化が実証された(図28)。脾臓NK細胞の活性化は、野生型マウスおよびTLR7欠損マウスにおいて認められ、I型IFN受容体の存在を必要とした;NK細胞は、B16黒色腫細胞に対してエクスビボ殺腫瘍活性を示した(図29)。3p-2.2による処理は、肺におけるNK細胞の動員および活性化の強化と関連していた(図20b、c)。
インビボにおけるBcl-2サイレンシングの抗腫瘍活性に対する寄与
共焦点顕微鏡観察から、蛍光標識siRNAが健常肺組織および転移部位に到達したことが確認された(図30a)。Bcl-2は、3p-2.2およびOH-2.2で処理した腫瘍保有マウスの腫瘍細胞(図20d)においてサイレンシングされた(図20dおよび図30b)。bcl-2特異的siRNAのみが5'-RACEにより特異的切断産物を生じたため(図20e)、インビボにおけるBcl-2の下方制御はRNAiと関連していた。対照RNAで処理したマウスと比較して、3p-2.2で処理したマウスにおける大規模なアポトーシスがTunel染色から明らかとなったが、HMB45陽性腫瘍細胞の数は対照処理動物においてはるかに多かった(図20f)。インビボにおいて、免疫細胞サブセットではBcl-2サイレンシングもアポトーシスの誘導も認められず(図30c)、相対的な腫瘍細胞選択性がさらに支持される。
次に、インビボにおいて、bcl-2のサイレンシングが3p-bcl-2-siRNAの治療活性に寄与することを確認するために、レスキュー実験を行った。bcl-2タンパク質のアミノ酸配列に影響することなく、siRNA抗Bcl-2.2の標的切断部位を破壊するように特異的に設計された変異bcl-2 cDNAを、B16黒色腫細胞に安定に形質導入した(図31)。B16黒色腫細胞において変異bcl-2 cDNAを発現させると(mut-B16)、3p-2.2によるbcl-2サイレンシングおよびアポトーシス誘導は妨げられたが、異なる非変異部位においてbcl-2 mRNAを標的化する3p-2.4では、このように妨げられなかった(図21aおよび21b、表7)。
インビボにおいて、3p-2.4および3p-2.2はB16黒色腫肺転移に対して同様の抗腫瘍効力を示し(図21c)、同様の全身レベルのIFN-αを誘導した(図21d)。WT-B16およびMut-B16を用いたインビボレスキュー実験から、OH-2.2および3p-2.2の治療効果は、腫瘍細胞におけるbcl-2遺伝子サイレンシングに一部依存することが確認された(図21e)。総合すると、これらの結果から、遺伝子サイレンシングおよび先天性免疫のRIG-I依存的活性化の両方が、インビボでのB16黒色腫モデルにおける3p-2.2の抗腫瘍活性に寄与するという証拠が提供される。
次に本発明者らは、ヒト黒色腫の分子病態における重要な事象に基づき、かつ臨床設定をさらにより厳密に模倣する新たな遺伝的黒色腫モデルにおいて、3p-siRNAの抗腫瘍活性を確認した57。HGF/CDK4R24Cマウスの皮膚に由来する初代黒色腫を、CDK4 R24Cマウスの群に連続して移植した。3p-2.2を反復して腫瘍周囲に注射したところ、腫瘍増殖が有意に遅延し(図22a、左側パネル)、これはインビボでの黒色腫細胞におけるBcl-2の下方制御と関連しており、Mcl-1、Bcl-xL、Puma、またはBimの下方制御とは関連していなかった(図22a、右側パネル)。加えて、3p-2.2はまた、Balb/Cマウスの結腸癌モデルにおいて有意な抗腫瘍効力を示し(図22b、左側パネル)、これはIFN-αの全身的産生およびBcl-2発現の下方制御と関連していた(図22b、右側パネル、図32)。
最終的に本発明者らは、ヒト抗Bcl-2 siRNA(OH-h2.2および3p-h2.2)を設計し、それらをヒト黒色腫細胞株(1205 Lu)において試験した。1205 Luを3p-h2.2および3p-GCで処理した場合には、IFN-βを誘導し得たが、OH-h2.2または対照RNAで処理してもIFN-βは誘導し得なかった(図22c)。OH-h2.2および3p-h2.2はいずれも、Bcl-2タンパク質レベルを大きく減少させた(図22d)。マウスB16黒色腫細胞における3p-2.2と同様に、3p-h2.2はアポトーシスを強く促進し(図22d)、ヒト黒色腫細胞の生存度を減少させたが、いずれも健常ドナーの皮膚から単離された初代ヒトメラノサイトおよび初代ヒト線維芽細胞ではアポトーシス促進活性は顕著ではなかった(図22e)。
結果
本研究の結果から、Bcl-2をサイレンシングするように、かつRIG-Iを活性化するように意図して設計されたsiRNA(3p-2.2)を全身投与すると、組織学的レベルでの大規模な腫瘍アポトーシスに反映されて、腫瘍増殖が強く阻害されることが実証される。この応答にはI型IFNおよびNK細胞が必要であり、全身的なTh1サイトカイン(IFN-α、IL-12p40、IFN-γ)の誘導、免疫細胞サブセットの直接的および間接的活性化、ならびに肺組織におけるNK細胞の動員および活性化と関連している。さらに、Bcl-2の配列特異的サイレンシングは、3p-2.2の抗腫瘍効力に寄与する。これは、Bcl-2 mRNAの部位特異的切断、インビトロおよびインビボにおける配列依存的レスキュー研究、ならびに肺腫瘍細胞における単一細胞レベルでのBcl-2タンパク質の下方制御から明らかである。
その分子設計のゆえに、siRNA 3p-2.2は2つの異なる機能特性:a) 遺伝子サイレンシングおよびb) RIG-I活性化を含む。これら2つの特性によって生じる多くの生物学的効果が協同して、インビボにおいて有益な抗腫瘍応答を誘発し得る:a) Bcl-2のサイレンシングは、Bcl-2過剰発現に依存する細胞(腫瘍細胞など)においてアポトーシスを誘導することができ、また同じ機構を介して腫瘍細胞を先天性エフェクター細胞に対して感作させることもできる47:b) RIG-I活性化:RIG-Iは、免疫細胞、および腫瘍細胞を含む非免疫細胞において発現する。結果として、RIG-Iの活性化によって、免疫細胞サブセットの直接的および間接的活性化が生じるばかりでなく、腫瘍細胞においてI型IFNまたはケモカインの産生などの生得的反応も直接誘発され、アポトーシスが直接促進される。これらの活性は協調して作用して、認められる強力な抗腫瘍効果を誘発する(3p-siRNAによって誘発される強力な抗腫瘍機構の模式的概要については、図33を参照されたい)。
実際に、本発明者らのデータは、B16黒色腫細胞がRIG-Iを発現する、および3p-2.2はBcl-2をサイレンシングするばかりでなく、I型IFN、IP-10、MHC Iもまた刺激し、腫瘍細胞においてアポトーシスを直接誘導するという実験的証拠を提供する。さらに本発明者らは、腫瘍細胞におけるBcl-2のサイレンシングがRIG-Iリガンド活性を必要としないこと(OH-2.2は3p-2.2と同じ配列であるが、三リン酸がない)、およびRIG-I効果はBcl-2サイレンシング活性に依存しないこと(3p-MMおよび3p-GCは、三リン酸を有するがサイレンシングは起こさない)を実証する。重要なことには、本発明者らのデータは、それぞれの単一の活性と比較して、サイレンシングおよびRIG-I活性の両方が整った場合の、インビトロにおける腫瘍細胞アポトーシスの相乗的誘導、ならびにインビボでの腫瘍細胞における相乗的なBcl-2の阻害およびアポトーシスの誘導を実証する(3p-2.2をOH-2.2、3p-MM、または3p-GC単独と比較)。
インビボにおいて3p-2.2と比較して3p-MMおよび3p-GCの抗腫瘍応答がより低いこと、RIG-Iリガンド(3p-GC)単独ではインビボでの腫瘍細胞においてBcl-2阻害が起こらないこと、ならびに配列特異的レスキュー実験によって、遺伝子サイレンシングが3p-2.2の重要な機能特性であることが裏付けられる。同様に、インビボでの腫瘍細胞においてBcl-2が強力に阻害されるにもかかわらず、抗Bcl-2 siRNA(OH-2.2)に対する全体的な抗腫瘍応答が低いことから、生得的な寄与の重要性が強調される。それぞれの機構は単独では、インビボにおいて腫瘍増殖を抑制するのに、組み合わせほど強力ではない。このことは、OH-2.2によって誘導されるアポトーシスはBcl-2に完全に依存するのに対して、3p-2.2によって誘導されるアポトーシスはBcl-2遺伝子サイレンシングに一部依存するに過ぎないことを示したレスキュー実験によって支持される。
重要な問題は、組み合わせRNA分子3p-2.2の全身投与が、観察される腫瘍特異性をどのように引き起こし得るのかということである。静脈内注射後、ポリエチレンイミン(PEI)と複合化した蛍光標識RNAは肺のみならず、肝臓、脾臓、および腎臓にも濃縮された(データは示さず)。したがって、本発明者らの研究において、RNA送達は腫瘍に標的化されていない。それにもかかわらず、以下の3つの機構の協同作用によって説明され得る腫瘍特異的アポトーシス誘導が認められる:第1に、黒色腫細胞は高レベルのBcl-2を発現して、自発的な腫瘍細胞アポトーシスを妨げるのに対して50, 52、正常細胞では、アポトーシスのすべてのチェックポイントが完全であり、Bcl-2の阻害のみではアポトーシス誘導に十分ではない。これは、B16腫瘍細胞と線維芽細胞、およびヒト黒色腫細胞と初代ヒトメラノサイトを比較する本発明者らのデータによって支持される。第2に、本発明者らの方法では、RIG-I活性化はB16腫瘍細胞およびヒト黒色腫細胞においてアポトーシスを誘導するのに十分であるが、線維芽細胞、ヒト線維芽細胞、またはヒトメラノサイトなどの正常細胞では十分ではない。第3に、B16黒色腫細胞は、3p-siRNAをトランスフェクトした後にのみ、活性化NK細胞による死滅に対して感受性が非常に高くなり、MHC I発現を強く上方制御し、大量のIP-10を分泌する。したがって本発明者らは、腫瘍細胞におけるI型IFN系のRIG-I媒介性の活性化により、Stetson and Medzhitovによって提唱される53のと同様に、これらの細胞をNK細胞の攻撃および破壊を受けやすくさせる細胞表面上の変化が生じると仮説を立てる。
本発明者らの研究により、3p-siRNAによる処理を腫瘍形成の他のモデルに拡張できることが示される。本発明者らは、HGF×CDK4R24Cマウスの初代皮膚腫瘍に由来する黒色腫に対する抗腫瘍活性を見出した。HGF×CDK4R24Cマウス黒色腫モデルは、第1に、黒色腫が、患者において観察されるのと同様に、遺伝子変化の結果として生じるため、第2に、黒色腫形成がUV照射によって促進され得るため、黒色腫患者において予測される臨床的状況と非常によく似ている。このモデルでは、3p-2.2の反復投与により腫瘍増殖の有意な遅延が起こった。本発明者らはまた、Balb/cマウスにおける同質遺伝子的結腸癌モデルにおいて、3p-siRNAの抗腫瘍効力を認めた。さらに本発明者らは、このアプローチをヒト系に適合化できるという証拠を提供する。Bcl-2特異的3p-siRNAは、ヒト黒色腫細胞において遺伝子サイレンシングおよびRIG-I活性化の両方を媒介し、アポトーシスを引き起こしたのに対して、メラノサイトおよび線維芽細胞はアポトーシス誘導に対して抵抗性であった。これらの知見に基づき、このアプローチの原理により臨床応用の見込みが示される。
このような組み合わせ3p-siRNA分子の遺伝子サイレンシング活性は、腫瘍細胞の生存を支配する任意の所与の分子的に明確な遺伝的事象に指向することができる。異なる腫瘍関連遺伝子について選択されたsiRNA配列の組み合わせが実現可能である。腫瘍細胞における機能的スクリーニングによって同定された新規標的を、この組み合わせRNA系に直接持ち込むことができる。これによって、腫瘍細胞の生存、柔軟性、および免疫回避と効率的に対抗するために必要であると本発明者らが考える、異なる生物学的観点から腫瘍を攻撃する本発明者らの能力が進歩するであろう。本発明者らの研究において認められた相対的腫瘍特異性にもかかわらず、この戦略はRNAの腫瘍組織への標的化送達によってさらに改善されるであろう。