JP2016523538A - N末端が切り詰められたベータ−ガラクトシドアルファ−2,6−シアリルトランスフェラーゼ変異体を用いた糖タンパク質のモノ−およびバイ−シアリル化のためのプロセス - Google Patents

N末端が切り詰められたベータ−ガラクトシドアルファ−2,6−シアリルトランスフェラーゼ変異体を用いた糖タンパク質のモノ−およびバイ−シアリル化のためのプロセス Download PDF

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Abstract

本開示は、N末端切り詰め欠失を有する特定のグリコシルトランスフェラーゼ変異体の使用に向けられている。ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I)の2種類の異なる切り詰め変異体の組み合わせは、異なる特異的シアリルトランスフェラーゼ酵素活性を示すことが分かった。1つの例において、第1の変異体Δ89 hST6Gal−Iがバイ−シアリル化された標的分子の形成を触媒した条件下で、第2の変異体Δ108 hST6Gal−Iはモノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒した。従って、特に定量的に制御された様式で免疫グロブリンのような糖タンパク質の一部であるグリカン部分の末端受容体基をシアリル化するための、哺乳類のグリコシルトランスフェラーゼの変異体、その同じものをコードする核酸、哺乳類のグリコシルトランスフェラーゼの変異体を組み換えで生成するための方法および手段ならびにその使用が開示される。【選択図】図3

Description

本開示は、N末端切り詰め欠失を有する特定のグリコシルトランスフェラーゼ変異体の使用に向けられている。ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I)の2種類の異なる切り詰め変異体の組み合わせは、異なる特異的シアリルトランスフェラーゼ酵素活性を示すことが分かった。1つの例において、第1の変異体Δ89 hST6Gal−Iがバイ−シアリル化された標的分子の形成を触媒した条件下で、第2の変異体Δ108 hST6Gal−Iはモノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒した。従って、特に定量的に制御された様式で免疫グロブリンのような糖タンパク質の一部であるグリカン部分の末端受容体基をシアリル化するための、哺乳類のグリコシルトランスフェラーゼの変異体、その同じものをコードする核酸、哺乳類のグリコシルトランスフェラーゼの変異体を組み換えで生成するための方法および手段ならびにその使用が開示される。
トランスフェラーゼ(EC2)は、ある物質から別の物質への官能基の移動を触媒する。酵素のスーパーファミリーであるグリコシルトランスフェラーゼは、糖タンパク質、糖脂質およびグリコサミノグリカンの炭水化物部分部分の合成に関わっている。特異的なグリコシルトランスフェラーゼは、活性化された糖供与体の単糖部分の受容体分子への順次の移動によりオリゴ糖を合成する。従って、“グリコシルトランスフェラーゼ”は、糖部分のそのヌクレオチド供与体からポリペプチド、脂質、糖タンパク質または糖脂質の受容体部分への移動を触媒する。このプロセスは、“グリコシル化”としても知られている。例えば糖タンパク質の構造部分である炭水化物部分は、“グリカン”とも呼ばれる。グリカンは、全ての既知の翻訳後タンパク質修飾の最も一般的なもの(prevalent)を構成している。グリカンは、接着、免疫応答、神経細胞の移動および軸索の伸長のように多様な、多岐にわたる生物学的認識プロセスに関わっている。糖タンパク質の構造部分として、グリカンはタンパク質の折り畳みならびにタンパク質の安定性および生物学的活性の支持における役割も有する。
グリコシルトランスフェラーゼ触媒において、単糖単位グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、グルクロン酸(GlcUA)、ガラクツロン酸(GalUA)およびキシロースは、ウリジンジホスフェート(UDP)−α−D誘導体として活性化され;アラビノースは、UDP−β−L誘導体として活性化され;マンノース(Man)およびフコースは、それぞれGDP−α−DおよびGDP−β−L誘導体として活性化され;そしてシアル酸(=Neu5Ac;=SA)は、β−D−Neu5AcのCMP誘導体として活性化される。
多くの異なるグリコシルトランスフェラーゼが、グリカンの合成に寄与している。糖タンパク質の炭水化物部分の構造的多様性は特に大きく、複雑な生合成経路により決定される。真核生物において、糖タンパク質のグリカン部分の生合成は、小胞体(endoplasmatic reticulum)(“ER”)およびゴルジ装置の内腔で行われる。糖タンパク質の単一の(分枝状または線状)炭化水素鎖は、典型的にはNまたはO結合型グリカンである。翻訳後プロセシングの間に、炭水化物は、典型的にはポリペプチドにアスパラギンを介して(“N結合型グリコシル化”)、またはセリンもしくはスレオニンを介して(“O結合型グリコシル化”)連結される。グリカンの合成は、N結合型かO結合型かにかかわらず(=N/O結合型)、いくつかの異なる膜アンカー型グリコシルトランスフェラーゼの活性により達成される。糖タンパク質は、1個以上のグリカンに連結されたアミノ酸(=“グリコシル化部位”)を含み得る。特定のグリカン構造は、線状または分枝状であることができる。分枝は、炭水化物の顕著な特徴であり、それはDNA、RNA、およびポリペプチドに典型的な線状の性質とは対照的である。それらの基本的な構築ブロックである単糖の大きな不均一性と組み合わせられて、グリカン構造は高い多様性を示す。さらに、個々の糖タンパク質種のメンバーにおいて、個々のグリコシル化部位に結合したグリカンの構造が異なる可能性があり、従って、結果としてそれぞれの糖タンパク質種の微不均一性を、すなわちポリペプチド部分の同じアミノ酸配列を共有する種における微不均一性をもたらす。
シアリルトランスフェラーゼ(=“ST”)は、シアル酸(=5−N−アセチルノイラミン酸=Neu5Ac=NANA)残基の供与体化合物から(i)糖脂質もしくはガングリオシドの末端単糖受容体基への、または(ii)糖タンパク質のN/O結合型グリカンの末端単糖受容体基への移動を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである。ヒトのST種を含む哺乳類のシアリルトランスフェラーゼに関して、一般的な供与体化合物が存在し、それはシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸(=CMP−Neu5Ac=CMP−NANA)である。シアル酸残基の移動は、“シアリル化すること”および“シアリル化”とも呼ばれる。
シアリル化された糖タンパク質のグリカン構造において、(1個以上の)シアリル部分(単数または複数)は、通常はオリゴ糖の末端位置にある。末端の(すなわち露出される)位置のため、シアル酸は、多くの異なる生物学的認識現象に参加することができ、異なる種類の生物学的相互作用において役目を果たすことができる。糖タンパク質において、1個より多くのシアリル化部位、すなわちシアリルトランスフェラーゼに関する基質の役目を果たし、シアル酸残基の移動に適した受容体基であることができることができる部位が存在し得る。そのような1個より多くの部位は、原理的に、糖タンパク質の異なるグリコシル化部位にアンカーされた複数の線状グリカン部分の末端であり得る。加えて、分枝状グリカンは、シアリル化が起こり得る複数の部位を有し得る。
現在の知識によれば、末端のシアル酸残基は、(i)ガラクトシル−Rにα2→3(α2,3)結合している、(ii)ガラクトシル−Rにα2→6(α2,6)結合している、(iii)N−アセチルガラクトサミニジル−Rにα2→6(α2,6)結合している、(iv)N−アセチルグルコサミニジル−Rにα2→6(α2,6)結合している、および(v)シアリジル−Rにα2→8/9(α2,8/9)結合しているのが見付かる可能性があり、ここで−Rは受容体基質部分の残りの部分を意味する。従って、シアリルコンジュゲートの生合成(=“シアリル化”)において活性なシアリルトランスフェラーゼは、一般にそのそれぞれの単糖受容体基質に従って、そしてそれが触媒するグリコシド結合の3、6または8/9位に従って命名および分類される。従って、当該技術で既知の文献において、例えばPatel RY, et al, Glycobiology 16 (2006) 108-116において、真核生物のシアリルトランスフェラーゼ、例えばグリコシド結合の形成の間にNeu5Ac残基が移される受容体糖残基のヒドロキシル位置に応じて(i)ST3Gal、(ii)ST6Gal、(iii)ST6GalNAc、または(v)ST8Siaへの言及がなされている。より包括的な方式でのシアリルトランスフェラーゼへの言及は、例えばST3、ST6、ST8としてなされることもでき;従って、“ST6”は、α2,6シアリル化を触媒するシアリルトランスフェラーゼを具体的に包含する。
二糖部分β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン(=Galβ1,4GlcNAc)は、糖タンパク質のN結合型グリカンのアンテナの高頻度な末端残基であるが、O結合型グリカンにおいて、そして糖脂質においても存在し得る。酵素β−ガラクトシド−α2,6−シアリルトランスフェラーゼ(=“ST6Gal”)は、グリカンまたはグリカンの分枝(=“アンテナ”)の末端Galβ1,4GlcNAcのα2,6−シアリル化を触媒することができる。その一般的な観点に関して、DallOlio F. Glycoconjugate Journal 17 (2000) 669-676の文書に参照がなされている。ヒトにおいて、そして他の哺乳類において、ST6Galのいくつかの種が存在するようである。本開示は、特にヒトのβ−ガラクトシド−α2,6−シアリルトランスフェラーゼI(=ST6Gal−I;IUBMB酵素命名法に従うEC2.4.99.1)を扱うが、それに限定されない。
シアリルトランスフェラーゼのST6群は、2つの部分群ST6GalおよびST6GalNAcを含む。ST6Gal酵素の活性は、Neu5Ac残基の、グリカンまたはグリカンのアンテナ中の末端Galβ1,4GlcNAcの一部である遊離ガラクトシル残基のC6ヒドロキシル基への移動を触媒し、それによりグリカンにおいてGalβ1,4GlcNAc部分のガラクトシル残基にα2→6結合した末端シアル酸残基を形成する。グリカン中の結果として生じた新しく形成された末端部分は、Neu5Acα2,6Galβ1,4GlcNAcである。
本文書の出願の時点でのヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I)の野生型ポリペプチドは、公式にアクセス可能なNCBIのデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/115445)において“UniProtKB/Swiss-Prot: P15907.1”として開示された。コード配列を含むさらなる情報が、データベース項目“Gene ID: 6480”(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6480)内に編集されたハイパーリンクとして提供されている。
哺乳類のシアリルトランスフェラーゼは、他の哺乳類のゴルジ常在性グリコシルトランスフェラーゼと、(i)短い細胞質側のN末端尾部、(ii)膜貫通断片、それに続く(iii)変動可能な長さのステム領域、および(iv)ゴルジ装置の内腔に面するC末端の触媒ドメインを有するいわゆる“II型構造”を共有している(Donadio S. et al. Biochimie 85 (2003) 311-321における)。哺乳類のシアリルトランスフェラーゼは、それらの触媒ドメインにおいて著しい配列の相同性を示すようである。
Donadio S. et al.は、CHO細胞においてhST6Gal−IのいくつかのN末端が切り詰められた変異体を発現させ、最初の35、48、60および89アミノ酸を含むN末端欠失は、それでもなおシアル酸の外因性受容体への移動においてなお活性である変異体酵素をもたらすことを見出した。
グリコシル化は、タンパク質の折り畳み、安定性および生物学的活性の制御に影響を及ぼすタンパク質の重要な翻訳後修飾である。シアリル部分(=シアル酸、5−N−アセチルノイラミン酸、Neu5Ac)は、通常はN−グリコシル化の末端の位置において露出されており、従って生物学的認識およびリガンド機能への主要な寄与因子であり、例えば末端のシアル酸を特徴とするIgGは、より少ない炎症反応および増大した血清半減期を誘導することが示された。
定められたグリカン構造の酵素的合成のためのグリコシルトランスフェラーゼの使用は、療法用タンパク質、例えば抗体のN−グリコシル化を方向付けるための道具になりつつある。原核生物由来のグリコシルトランスフェラーゼは通常は複雑な糖タンパク質構造には作用しないため、哺乳類由来のシアリルトランスフェラーゼが好ましい。例えば、Barb et al. (2009)は、免疫グロブリンGのFc断片の非常に強力なシアリル化された形態を、単離されたヒトST6Gal−Iを用いて調製した。しかし、療法適用のための組み換えST6Gal−Iの利用は、様々な宿主(ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)および大腸菌)における低い発現および/または不十分な活性のため、まだ限られている。
当該技術には、哺乳類のグリコシルトランスフェラーゼは、複雑な標的分子、例えば糖タンパク質または糖脂質のアンテナ状受容体部位をインビトロでシアリル化するために好都合に用いられ得ることが既知である。しかし、特にシアリル化されることができる2個以上の受容体部位を有する標的分子に関して、定量的に制御された様式でシアリル化を実施するための手段および方法がまだない。すなわち、標的分子の2個以上の、またはさらには全ての受容体部位をシアリル化するのとは対照的に、いくつかの受容体部位の内の1個のみをシアリル化することを可能にする手段、方法および条件を提供することが望ましい。さらに、バッチシアリル化反応混合物において標的分子の単一事象シアリル化およびその多事象シアリル化の間の釣り合いを制御することが望ましい。
驚くべきことに、最初に、2種類の切り詰められた変異体Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iは、インビトロで抗体に対して異なるシアリル化活性を示すが、他の標的に対しても示すことが分かった。見たところ、IgG−Fcのアンテナ状グリカンG2は、分枝の末端においてシアリル化され得る2個のガラクトース部分を有する。同一の反応条件下で、Δ89 hST6Gal−Iは、好ましくはバイ−シアリル化されたグリカン(G2+2SA)の合成を触媒し、一方で変異体Δ108 hST6Gal−Iは、モノ−シアリル化されたグリカン(G2+1SA)を合成する。従って、両方の酵素は、グリカン構造の、特にN−グリカンの選択的シアリル化のための適切な道具である。
本発明者らによる最初の発見は、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIのΔ108 hST6Gal−I変異体は、主に2個以上のアンテナ状受容体部位を有する標的分子に単一のシアリル残基のみを付加することができることである。対照的に、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIおよびその特定の変異体、例えばΔ89 hST6Gal−Iの酵素活性は、標的分子の多数のシアリル化をもたらす。従って、Δ108 hST6Gal−Iのみを、例えばバッチプロセスにおいて用いることにより、モノ−シアリル化された標的分子が2個以上のシアリル化されていないアンテナ状受容体部位を有する標的分子から生成され得る。
これは、特に免疫グロブリンの、そしてまた他のグリコシル化された標的分子のインビトロ糖鎖工学の分野におけるいくつかの異なるアプローチへの道を開く。本明細書において、具体的かつ例示的に、結果としてモノ−シアリル化された、およびバイ−シアリル化された免疫グロブリンG分子の生成をもたらす方法が提供され、ここでその割り当て(ration)は、(i)Δ108 hST6Gal−Iの酵素活性および(ii)標的分子の受容体部位を飽和させる方式でシアリル化することができるヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼIの酵素活性の量を制御することにより制御される。しかし、シアリル化されるべき標的分子の定量的シアリル化制御によるいくつかの他のインビトロシアリル化アプローチが実行可能になり、本開示から推定され得る。
特定の態様において、この文書は、ヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(hST6Gal−I、EC 2.4.99.1;データベース項目P15907)の2種類の異なる変異体の、HEK293細胞における一過性遺伝子発現による、100mg/Lまでの収量での高収量発現を開示している。その2種類の変異体は、驚くほど異なるシアリル化活性を特徴とすることが分かった。
Patel RY, et al, Glycobiology 16 (2006) 108-116 DallOlio F. Glycoconjugate Journal 17 (2000) 669-676 Donadio S. et al. Biochimie 85 (2003) 311-321
第1観点において、SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I)の、標的分子からモノ−シアリル化された標的分子を特異的に形成するための使用が開示され、ここで、標的分子は、糖タンパク質または糖脂質から選択され、ここで、標的分子は、ガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を末端構造として有する複数のアンテナ状標的部分を含み、ここで、モノ−シアリル化された標的分子は、単一のシアリル化された末端アンテナ状標的部分を含み、そしてここで、シアリル化された末端のアンテナ状標的部分は、1個のN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を含む。
さらなる観点において、標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子をインビトロで生成するための方法が開示され、その方法は、(a)(i)標的分子(その標的分子は、糖タンパク質および糖脂質から選択され、その標的分子は、複数のアンテナを含み、そのアンテナの少なくとも2個は、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する);(ii)SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);(iii)シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸またはその機能的均等物を含む組成物を提供し;(b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下でインキュベートし、それにより標的分子ごとに単一の末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(=α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基)を形成し;それによりインビトロで標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する工程を含む。
さらに別の観点において、糖タンパク質および糖脂質から選択されるモノ−シアリル化された標的分子が開示され、そのモノ−シアリル化された標的分子は、本明細書で開示されるような方法により得ることができる。
さらに別の観点において、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする水性緩衝液を含む組成物が開示され、その組成物は、さらに以下のものを含む:(a)グリコシル化された標的分子(その標的分子は、糖タンパク質および糖脂質から選択され、その標的分子は、複数のアンテナを含み、そのアンテナの少なくとも2個は、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する);(b)SEQ ID NO:2のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ89 hST6Gal−I)、またはΔ89 hST6Gal−Iのシアリルトランスフェラーゼ酵素活性より高い、もしくはそれと等しいシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を有する可溶性のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI変異体;(c)SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);(d)シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸、またはその機能的均等物。
さらに別の観点において、インビトロで、そしてグリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で、標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された1個以上のシアリル残基(単数または複数)を有するシアリル化された標的分子を生成するための、本明細書で開示されるような組成物の使用が開示される。
さらに別の観点において、インビトロで標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成するための方法が開示され、その標的分子は、糖タンパク質および糖脂質から選択され、その標的分子は、複数のアンテナを含み、そのアンテナの少なくとも2個は、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有し、その方法は、以下の工程を含む:(a)本明細書で開示されるような組成物を提供し;(b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で予め決定された時間間隔の間インキュベートし、それにより末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(単数または複数)[=α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基(単数または複数)]を形成し、ここで、Δ89 hST6Gal−Iは、バイ−シアリル化されたIgGの形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iは、モノ−シアリル化されたIgGの形成を触媒し;それによりインビトロで標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する。
さらに別の観点において、グリコシル化された標的分子の調製が開示され、その標的分子は、IgGクラスの免疫グロブリン分子であり、ここで、調製物中のモノ−およびバイ−シアリル化された標的分子の量は、制御された量であり、その調製物は、本明細書で開示されるような方法により得られる。
精製されたHEK細胞において発現された組み換えhST6Gal−I変異体のSDS−PAGE。レーン1および4:分子量マーカー;レーン2:精製された酵素デルタ108 hST6Gal−I、5μgがゲル上にロードされた;レーン3:精製された酵素デルタ89 hST6Gal−I、5μgがゲル上にロードされた。 組み替えΔ89 hST6Gal−Iを用いたアシアロMAB IgG4のシアリル化の時間経過。末端ガラクトース残基を有するグリカン(G2+0SA;“アシアロ”)、モノ−シアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびバイ−シアリル化されたグリカン(G2+2SA)の相対的含有率が示されている。 組み替えΔ108 hST6Gal−Iを用いたアシアロMAB IgG4のシアリル化の時間経過。末端ガラクトース残基を有するグリカン(G2+0SA;“アシアロ”)、モノ−シアリル化されたグリカン(G2+1SA)およびバイ−シアリル化されたグリカン(G2+2SA)の相対的含有率が示されている。
用語“a”、“an”および“the”は、文脈が別途明確に示さない限り、一般に複数の指示対象を含む。本明細書で用いられる際、“複数”は、1より多くを意味するものと理解される。例えば、複数は、少なくとも2、3、4、5、またはより多くを指す。具体的に記載されない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる際、用語“または”は、包括的であるものと理解される。
別途具体的に記載されない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられる際、用語“約”は、当該技術における通常の許容の範囲内、例えば平均値の2標準偏差以内として理解される。“約”は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解されることができる。文脈から別途明確でない限り、本明細書で提供される全ての数値は、用語“約”により修飾され得る。
用語“アミノ酸”は、一般に、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質中に組み込まれることができるあらゆる単量体単位を指す。本明細書で用いられる際、用語“アミノ酸”は、以下の20種類の天然の、または遺伝子にコードされるアルファ−アミノ酸を含む:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)。“X”残基が未定義である場合、これらは“あらゆるアミノ酸”として定義されるべきである。これらの20種類の天然アミノ酸の構造は、例えばStryer et al., Biochemistry, 第5版, Freeman and Company (2002)において示されている。追加のアミノ酸、例えばセレノシステインおよびピロリジンも、遺伝子にコードされている可能性がある(Stadtman (1996) “Selenocysteine,” Annu Rev Biochem. 65:83-100およびIbba et al. (2002) “Genetic code: introducing pyrrolysine,” Curr Biol. 12(13):R464-R466)。用語“アミノ酸”は、非天然アミノ酸、修飾されたアミノ酸(例えば、修飾された側鎖および/または主鎖を有する)、およびアミノ酸類似体も含む。例えば、Zhang et al. (2004) “Selective incorporation of 5-hydroxytryptophan into proteins in mammalian cells,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(24):8882-8887、Anderson et al. (2004) “An expanded genetic code with a functional quadruplet codon” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101(20):7566-7571、Ikeda et al. (2003) “Synthesis of a novel histidine analogue and its efficient incorporation into a protein in vivo,” Protein Eng. Des. Sel. 16(9):699-706、Chin et al. (2003) “An Expanded Eukaryotic Genetic Code,” Science 301(5635):964-967、James et al. (2001) “Kinetic characterization of ribonuclease S mutants containing photoisomerizable phenylazophenylalanine residues,” Protein Eng. Des. Sel. 14(12):983-991、Kohrer et al. (2001) “Import of amber and ochre suppressor tRNAs into mammalian cells: A general approach to site-specific insertion of amino acid analogues into proteins,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98(25):14310-14315、Bacher et al. (2001) “Selection and Characterization of Escherichia coli Variants Capable of Growth on an Otherwise Toxic Tryptophan Analogue,” J. Bacteriol. 183(18):5414-5425、Hamano-Takaku et al. (2000) “A Mutant Escherichia coli Tyrosyl-tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine,” J. Biol. Chem. 275(51):40324-40328、およびBudisa et al. (2001) “Proteins with {beta}-(thienopyrrolyl)alanines as alternative chromophores and pharmaceutically active amino acids,” Protein Sci. 10(7):1281-1292を参照。さらに説明すると、アミノ酸は、典型的には、置換された、もしくは未置換のアミノ基、置換された、もしくは未置換のカルボキシル基、および1個以上の側鎖もしくは基、またはこれらの基のいずれかの類似体を含む有機酸である。典型的な側鎖は、例えば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル(alkynl)、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、またはこれらの基のあらゆる組み合わせを含む。他の代表的なアミノ酸は、光で活性化され得るクロスリンカーを含むアミノ酸、金属結合アミノ酸、スピン標識されたアミノ酸、蛍光性アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規の官能基を有するアミノ酸、他の分子と共有結合的または非共有結合的に相互作用するアミノ酸、光ケージ化(photocaged)および/または光異性化し得るアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化されたアミノ酸、他の炭水化物で修飾されたアミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子で置換されたアミノ酸、化学的に開裂可能な、および/または光で開裂可能なアミノ酸、炭素結合した糖を含有するアミノ酸、酸化還元活性アミノ酸、アミノチオ酸を含有するアミノ酸、ならびに1個以上の毒性部分を含むアミノ酸を含むが、それらに限定されない。
用語“タンパク質”は、リボソームの翻訳プロセスの生成物としてのポリペプチド鎖(アミノ酸配列)を指し、ここで、そのポリペプチド鎖は、翻訳後の折り畳みプロセスを経ており、それは結果として3次元のタンパク質構造をもたらす。用語“タンパク質”は、1種類以上の翻訳後修飾、例えば(それらに限定されないが)グリコシル化、リン酸化、アセチル化およびユビキチン化を有するポリペプチドも包含する。
本明細書で開示されるようなあらゆるタンパク質、特に本明細書で開示されるような組み換えにより生成されたタンパク質は、特定の態様において、組み換えタンパク質上に遺伝学的に移植されたペプチド配列である“タンパク質タグ”を含む。タンパク質タグは、タグのタンパク質分解による除去を容易にするための特異的プロテアーゼ切断部位を有するリンカー配列を含むことができる。特定の態様として、“親和性タグ”が、標的タンパク質に、その標的がその粗製の生物学的源から親和性技法を用いて精製され得るように付加されている。例えば、その源は、その標的タンパク質を発現している形質転換された宿主生物、またはその中にその標的タンパク質が形質転換された宿主生物により分泌された培養上清であることができる。親和性タグの特定の態様は、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を含む。ポリ(His)タグは、特定の金属キレートマトリックスへの結合を促進する広く用いられているタンパク質タグである。
用語“キメラタンパク質”、“融合タンパク質”または“融合ポリペプチド”は、そのアミノ酸配列が少なくとも2つの別個のタンパク質からのアミノ酸配列の部分配列の融合生成物に相当するタンパク質を指す。融合タンパク質は、典型的にはアミノ酸配列の直接の操作により生成されるのではなく、むしろそのキメラアミノ酸配列をコードする“キメラ”遺伝子から発現される。
用語“組み換え”は、組み換え法により意図的に改変されたアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。本明細書における用語“組み換え核酸”により、元々インビトロで一般に核酸のエンドヌクレアーゼによる操作により通常は天然には存在しない形態で形成された核酸が意味される。従って、単離された線状形態の変異体DNAポリメラーゼ核酸、またはインビトロで通常は連結されていないDNA分子をライゲーションすることにより形成された発現ベクターは、両方とも本発明の目的に関して組み換え的であると考えられる。一度組み替え核酸が作製され、宿主細胞中に再導入されたら、それは非組み換え的に、すなわちインビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボの細胞機構を用いて複製されるであろうことは理解されている;しかし、そのような核酸は、一度組み換えで生成されたら、その後非組み換え的に複製されるが、なお本発明の目的に関して組み換え的であると考えられる。“組み換えタンパク質”または“組み換えで生成されたタンパク質”は、組み換え技法を用いて、すなわち上記で示されたような組み換え核酸の発現により作製されたタンパク質である。
核酸は、それが別の核酸配列との機能的関係の中に置かれている場合、“作動可能に(operably)連結されている”。例えば、プロモーターもしくはエンハンサーは、コード配列に、それがその配列の転写に影響を及ぼす場合、作動可能に連結されており;またはリボソーム結合部位は、コード配列に、それが翻訳を促進するように配置されている場合、作動可能に連結されている。
用語“宿主細胞”は、単細胞原核生物および真核生物(例えば、哺乳類細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、および放線菌)ならびに細胞培養において増殖している場合のより高次の植物または動物からの単一の細胞の両方を指す。
用語“ベクター”は、その中に外来DNAの断片が挿入されていることができる、DNA、典型的には二本鎖DNAの断片を指す。ベクターは、例えばプラスミド由来であることができる。ベクターは、ベクターの宿主細胞中での自律的複製を促進する“レプリコン”ポリヌクレオチド配列を含有する。外来DNAは、異種性DNAとして定義され、それは天然には宿主細胞中に見られないDNAであり、それは例えばベクター分子を複製し、選択可能もしくはスクリーニング可能なマーカーをコードし、または導入遺伝子をコードする。ベクターは、外来の、または異種性DNAを適切な宿主細胞中に輸送するために用いられる。一度宿主細胞に入ったら、ベクターは、宿主の染色体DNAとは独立して、またはそれと同時に複製されることができ、ベクターおよびその挿入されたDNAのいくつかのコピーが生成され得る。加えて、ベクターは、挿入されたDNAのmRNA分子への転写を可能にする、または挿入されたDNAの多コピーのRNAへの複製を他の方法で引き起こす必要な要素も含有することができる。一部の発現ベクターは、加えて、発現されたmRNAの半減期を増大させる、および/またはmRNAのタンパク質分子への翻訳を可能にする、挿入されたDNAに隣接する配列要素を含有する。挿入されたDNAによりコードされるmRNAおよびポリペプチドの多くの分子が、このように急速に合成され得る。
用語“核酸”または“ポリヌクレオチド”は、互換的に用いられることができ、リボース核酸(RNA)もしくはデオキシリボース核酸(DNA)ポリマーまたはそれらの類似体に該当し得るポリマーを指すことができる。これは、ヌクレオチドのポリマー、例えばRNAおよびDNA、ならびに合成による形態、その修飾された(例えば化学的または生化学的に修飾された)形態、および混合型ポリマー(例えば、RNAおよびDNAサブユニットの両方を含むもの)を含む。典型的な修飾は、メチル化、天然存在ヌクレオチドの1個以上の類似体による置換、ヌクレオチド間修飾、例えば無電荷結合(例えば、メチルホスホネート類、ホスホトリエステル類、ホスホルアミデート類(phosphoamidates)、カルバメート類等)、ペンダント(pendent)部分(例えばポリペプチド)、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤、アルキル化剤、および修飾された結合(例えばアルファアノマー核酸等)を含む。示された配列に水素結合および他の化学的相互作用により結合するそれらの能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も含まれる。典型的には、ヌクレオチド単量体は、ホスホジエステル結合により連結されているが、核酸の合成による形態は、他の結合(例えばNielsen et al. (Science 254:1497-1500, 1991)において記載されているようなペプチド核酸)を含むことができる。核酸は、例えば、染色体または染色体断片、ベクター(例えば発現ベクター)、発現カセット、ネイキッドDNAまたはRNAポリマー、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の生成物、オリゴヌクレオチド、プローブ、およびプライマーであることができ、またはそれを含むことができる。核酸は、例えば、一本鎖、二本鎖、または三本鎖であることができ、いずれかの特定の長さに限定されない。別途示されない限り、個々の核酸配列は、明確に示されたあらゆる配列に加えて、相補配列を含むか、またはコードしている。
用語“グリコシル化”は、グリコシル残基を受容体基に共有結合的に連結する化学反応を意味する。1つの特定の受容体基は、ヒドロキシル基、例えば別の糖のヒドロキシル基である。“シアリル化”は、受容体基がシアル酸(=N−アセチルノイラミン酸)と反応するグリコシル化の特定の形態である。そのような反応は、典型的には、シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸を供与体化合物または補助基質として用いるシアリルトランスフェラーゼ酵素により触媒される。
“シアリル化”は、その同じことを可能にする条件下でのグリコシルトランスフェラーゼの酵素活性(特定の場合におけるシアリルトランスフェラーゼの酵素活性)の結果の特定の態様である。一般に、当業者は、その中でグリコシルトランスフェラーゼの酵素反応が実施され得る(=“グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする”)水性緩衝液は、緩衝塩、例えばトリス、MES、リン酸塩、酢酸塩、または具体的にはpH6〜pH8のpH範囲において、より具体的にはpH6〜pH7の範囲において緩衝することができる、さらにもっと具体的には約pH6.5の溶液を緩衝することができる別の緩衝塩を用いて緩衝される必要があることを理解している。その緩衝液は、さらに中性塩、例えばNaCl(それに限定されないが)を含有することができる。さらに、特定の態様において、当業者は、水性緩衝液に、二価イオン、例えばMg2+またはMn2+を含む塩、例えばMgClおよびMnCl(それらに限定されないが)を添加することを考えることができる。当該技術で既知のグリコシルトランスフェラーゼ酵素活性を可能にする条件は、周囲温度(室温)を含むが、より一般的には0℃〜40℃、特に10℃〜30℃の範囲の温度、特に20℃を含む。
用語“グリカン”は、多糖またはオリゴ糖を、すなわち酸加水分解の際に複数の単糖を生成する多量体化合物を指す。糖タンパク質は、ポリペプチド鎖の側鎖基に、典型的にはアスパラギンもしくはアルギニンを介して(“N結合型グリコシル化”)、またはセリンもしくはスレオニンを介して(“O結合型グリコシル化”)共有結合している1個以上のグリカン部分を含む。
複雑なグリカン構造の酵素的合成のためのグリコシルトランスフェラーゼの使用は、複雑な生理活性糖タンパク質を得るための魅力的なアプローチである。例えば、Barb et al. Biochemistry 48 (2009) 9705-9707は、免疫グロブリンGのFc断片の非常に強力なシアリル化形態を、単離されたヒトST6Gal−Iを用いて調製した。しかし、糖タンパク質の療法的適用における増大する関心は、シアリルトランスフェラーゼを含むグリコシルトランスフェラーゼの増大する需要をもたらす。糖タンパク質のシアリル化を増大させる、または改変するための異なる戦略が、Bork K. et al. J. Pharm. Sci. 98 (2009) 3499-3508により記載された。魅力的な戦略は、組み換えで生成されたタンパク質(例えば免疫グロブリンおよび成長因子であるが、それらに限定されない)、特に療法用タンパク質のインビトロでのシアリル化である。この目的のため、いくつかの研究グループが、形質転換された生物におけるシアリルトランスフェラーゼの発現および組み換えで生成されたシアリルトランスフェラーゼの精製を記載した。原核生物由来のグリコシルトランスフェラーゼは、通常は複雑な糖タンパク質(例えば抗体)には作用しないため、哺乳類由来からのシアリルトランスフェラーゼが好んで研究された。
本文書の開示および全ての観点ならびに本明細書における観点および態様の対象となる特定の糖タンパク質は、限定ではなく、細胞表面糖タンパク質および血清中に可溶性形態で存在する糖タンパク質(“血清糖タンパク質”)を含み、その糖タンパク質は、特に哺乳類由来のものである。“細胞表面糖タンパク質”は、その一部が膜の表面上に位置しており、表面糖タンパク質のポリペプチド鎖の膜アンカー部分によりそれに結合している糖タンパク質であると理解されており、ここでその膜は生物細胞の一部である。細胞表面糖タンパク質という用語は、細胞表面糖タンパク質の単離された形態ならびに例えばタンパク質分解的切断により、またはそのような可溶性断片の組み換え精製により膜アンカー部分から分離されているその可溶性断片も包含する。“血清糖タンパク質”は、血清中に存在している糖タンパク質、すなわち全血の非細胞部分中、例えば細胞性血液構成要素の沈降後の上清中に存在する血液タンパク質として理解されている。限定ではなく、具体的に考えられる、および例示される血清糖タンパク質は、免疫グロブリンである。本明細書において言及される特定の免疫グロブリンは、IgG群(ガンマ重鎖を特徴とする)、具体的には4つのIgG部分群のいずれかに属する。本明細書における開示、観点および態様に関して、用語“血清糖タンパク質”は、モノクローナル抗体も包含する;モノクローナル抗体は、当該技術で周知であり、人工的に、例えばハイブリドーマ細胞により、または形質転換された宿主細胞を用いて組み換えで生成され得る。さらなる血清特異的糖タンパク質は、キャリヤータンパク質、例えば血清アルブミン、フェチュイン、またはフェチュインがメンバーであるヒスチジンリッチ糖タンパク質のスーパーファミリーの別の糖タンパク質メンバーである。さらに、限定ではなく、本明細書における全ての開示、観点および態様に関する具体的に考えられる、および例示される血清糖タンパク質は、グリコシル化タンパク質シグナル伝達分子である。この群の特定の分子は、エリスロポエチン(EPO)である。
糖タンパク質のインビトロ工学に関して、グリコシルトランスフェラーゼが効率的な道具として用いられ得る(Weijers 2008)。哺乳類由来のグリコシルトランスフェラーゼは、基質としての糖タンパク質と適合性であるが、細菌のグリコシルトランスフェラーゼは、通常はオリゴ糖のようなより単純な基質を修飾する。この理由のため、糖タンパク質のグリカン部分における合成的変化は、好都合には道具として一般的に好まれる哺乳類のグリコシルトランスフェラーゼを用いて行われる。しかし、糖鎖工学におけるグリコシルトランスフェラーゼの大規模適用に関して、大量(すなわち産業的な量)の適切な酵素の利用可能性が必要とされる。本明細書で記載される発明は、特に切り詰め欠失を有する2種類の変異体を提供する。両方の変異体、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iは、シアリル化hST6Gal−I酵素活性を示す。
本明細書で記載されるそれぞれの切り詰め変異体は、それぞれの切り詰め欠失の最後のアミノ酸位置の番号を示す“デルタ”(=“Δ”)名称を与えられており、それはSEQ ID NO:1に従う野生型hST6Gal−IポリペプチドのN末端から数えられる。2種類の異なるN末端切り詰め変異体であるΔ89 hST6Gal−I(SEQ ID NO:2において示されるアミノ酸配列)およびΔ108 hST6Gal−I(SEQ ID NO:3において示されるアミノ酸配列)が、より詳細に研究された。
特に哺乳類細胞、例えばCHO細胞およびHEK細胞を用いた発現系を用いるΔ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iの発現のために、発現ベクターが構築された。hST6Gal−IのΔ108切り詰め変異体に関する、およびhST6Gal−IのΔ89切り詰め変異体に関する発現コンストラクトを含むベクターが作製された。組み換えで発現された酵素の精製を容易にするため、そのコンストラクトによりコードされる切り詰め変異体ポリペプチドは、N末端のHisタグを含んでいた。
さらに、本明細書で開示されるような別の観点は、形質転換された宿主生物であり、ここでその宿主生物は、本明細書で開示されるような発現ベクターにより形質転換されている。特に好都合には、ヒト胎児由来腎臓293(HEK)細胞が、本明細書で開示されるような教示を実施するために用いられ得る。これらの細胞の特に好都合なことは、それらは、トランスフェクションとその後に続く培養に非常に適していることである。従って、HEK細胞は、組み換え発現および分泌により標的タンパク質を生成するために効率的に用いられ得る。それでもなお、HeLa、COSおよびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、周知の代替物であり、本明細書で開示されるような全ての観点の特定の態様として本明細書に含まれる。
さらなる観点および本明細書で開示されるような全ての他の観点の特定の態様は、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iから選択される組み換えで生成された変異体哺乳類グリコシルトランスフェラーゼである。具体的には、その変異体は、形質転換されたHEK細胞において生成される。
さらに、本明細書で開示されるような別の観点は、組み換えで変異体哺乳類グリコシルトランスフェラーゼを生成するための方法であり、その方法は、発現ベクターにより形質転換された宿主生物において本明細書で開示されるような変異体哺乳類グリコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を発現させ、ここでポリペプチドが形成され、それにより変異体哺乳類グリコシルトランスフェラーゼを生成する工程を含む。
本開示の一観点は、糖タンパク質グリカン中のN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の形成を触媒することができる変異体哺乳類グリコシルトランスフェラーゼであり、ここでその哺乳類グリコシルトランスフェラーゼは、SEQ ID NO:2のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ89 hST6Gal−I)である。Δ89 hST6Gal−Iの酵素活性は、本明細書において標的分子としてのIgG1およびIgG4に関して非限定的な方式で例示されているように、標的分子上の可能な受容体部位の、単一の受容体部位のみではないシアリル化を可能にする。
本開示のさらなる観点は、糖タンパク質グリカン中のN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分のα2,6グリコシド結合の形成を触媒することができる変異体哺乳類グリコシルトランスフェラーゼであり、ここでその哺乳類グリコシルトランスフェラーゼは、SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I)である。Δ89 hST6Gal−Iまたはその機能的均等物とは対照的に、Δ108 hST6Gal−Iの標的分子との相互作用は、典型的には単一の受容体部位のみのシアリル化を可能にする。
グリコシルトランスフェラーゼのN末端が切り詰められた変異体は、それらの膜貫通ドメインの欠失のため、インビトロで好都合に用いられる。従って、そのような変異体は、溶液中でのグリコシルトランスフェラーゼ反応を触媒および実施するために有用である。
驚くべきことに、hST6Gal−Iの切り詰め変異体Δ108(すなわち、対応する野生型ポリペプチド中に存在する位置1〜108におけるアミノ酸を欠いているポリペプチドを有する変異体hST6Gal−Iタンパク質)は、酵素的に活性であることが分かった;すなわち、hST6Gal−IのΔ108切り詰め変異体は、Neu5Ac残基の、グリカンまたはグリカンのアンテナ中の末端Galβ1,4GlcNAcの一部である遊離ガラクトシル残基のC6ヒドロキシル基への移動を触媒し、それによりそのグリカンにおいてGalβ1,4GlcNAc部分のガラクトシル残基にα2→6結合した末端シアル酸残基を形成することができる。さらに、hST6Gal−IのΔ108切り詰め変異体は、糖タンパク質のグリカン部分の構成を合成的に変化させるための糖鎖工学適用に適している。さらに、hST6Gal−IのΔ108切り詰め変異体は、異なる宿主生物における組み換え発現に十分に適しており、それによりこの酵素の大量の、そして妥当な費用での生成を可能にする。
加えて、変異体Δ108 hST6Gal−Iだけは、さらにもっと驚くべきことには、そのシアリル化活性に関して限定されているようであり;従って、それは、糖タンパク質および糖脂質から選択される標的分子のアンテナ状グリカン部分中に含まれる末端受容体部分(Galβ1,4GlcNAc)への単一のシアリル残基のみの付加を触媒することができ、ここで、その末端受容体部分は、α2,6シアリル化されることができる。単一の標的分子の1個より多くの受容体(標的)部分のシアリル化は観察されなかったため、Δ108 hST6Gal−Iは、特異的なモノ−シアリル化のために好都合に用いられ得る。本発明者らの知る限りでは、そのような酵素的特徴は今のところ独特である。
従って、本明細書で開示されるような全ての態様の第1観点は、SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I)の、標的分子からモノ−シアリル化された標的分子を特異的に形成するための使用であり、ここで、その標的分子は、糖タンパク質または糖脂質から選択され、ここで、その標的分子は、末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する複数の(=2個以上の)アンテナ状標的部分を含み、ここで、そのモノ−シアリル化された標的分子は、単一のシアリル化された末端アンテナ状標的部分を含み、そしてここで、そのシアリル化された末端アンテナ状標的部分は、1個のN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を含む。特定の態様は、標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子をインビトロで生成するための方法であり、その方法は、以下の工程を含む:(a)(i)標的分子、その標的分子は糖タンパク質および糖脂質から選択され、その標的分子は複数のアンテナを含み、そのアンテナの少なくとも2個はそれぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;(ii)SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);(iii)シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸、またはその機能的均等物を含む組成物を提供し;(b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下でインキュベートし、それにより標的分子ごとに単一の末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(=α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基)を形成し;それによりインビトロで標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する。
本明細書で開示される全ての観点の特定の態様において、工程(a)において提供される標的分子は、α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基を含まない。そのような標的分子に至るための1つの方法は、グリコシダーゼ、特にシアリダーゼ活性を有する酵素を用いて全ての末端シアリル残基を除去することである。この、そのような“アシアロ”標的タンパク質(しかしそれはそのシアル化のための2個以上の受容体部位を保持している)を用いる上記の方法を用いて、本開示、特に上記の使用および方法は、当業者が糖タンパク質および糖脂質から選択されるモノ−シアリル化された標的分子を調製することを可能にし、そのモノ−シアリル化された標的分子は、本明細書で開示されるような方法により得ることができる。
Δ108 hST6Gal−Iの、非制限的なヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI活性を有する酵素、例えば特にΔ89 hST6Gal−Iとの組み合わせ、両方の酵素変異体の同時使用は、それが2個以上の利用可能なアンテナ状受容体部分(単数または複数)を有する標的分子のインビトロシアリル化をさらに制御するために用いられることができるため、特に好都合である。従って、Δ89 hST6Gal−Iは、シアリル化を触媒してバイ−シアリル化された標的タンパク質(本明細書において非限定的な方式でヒトモノクローナルIgG1およびIgG4により例示される)を形成することができるが、同じ条件下で、Δ108 hST6Gal−Iは、シアリル化を触媒して、シアリル化の前には末端のアンテナ状部分としてシアリル残基を含んでいなかったモノ−シアリル化された標的タンパク質を形成することだけができることが分かった。従って、定量的に制御されたシアリル化のためのさらなるプロセスが考えられ、ここでΔ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれの酵素活性の量は予め決定されている。
注目すべきことに、特定の2種類の酵素Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iの組み合わせは、本明細書で非限定的な方式で例示されるように、モノ−およびバイ−シアリル化されたIgG標的分子の制御された比率を有するインビトロでシアリル化されたIgG標的分子が生成され得る点で、定量的に制御された方式でシアリル化することを可能にする。この態様における適切な標的も、アシアロ糖タンパク質、すなわち、例えばインビトロシアリル化の前に末端のシアル酸残基がアンテナ状グリカンからシアリダーゼを示す酵素の作用により除去されている糖タンパク質として得られる、末端のアンテナ状シアリル残基を含まない糖タンパク質を含む。それに関する例は、ノイラミニダーゼである。
本明細書で開示されるようなさらなる観点として、β−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI活性を有する酵素の組み合わせの適用に関して、第1工程において、組成物が形成され、その組成物は、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする水性緩衝液を含み、その組成物は、さらに以下のものを含む:(a)グリコシル化された標的分子(その標的分子は、糖タンパク質および糖脂質から選択され、その標的分子は、複数のアンテナを含み、そのアンテナの少なくとも2個は、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する);(b)SEQ ID NO:3の末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);(c)SEQ ID NO:2のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ89 hST6Gal−I)のシアリルトランスフェラーゼ酵素活性より高い、またはそれと等しいシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を有する可溶性のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI変異体;(d)シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸、またはその機能的均等物。特定の態様において、(c)の構成要素は、SEQ ID NO:2のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ89 hST6Gal−I)である。
2種類のグリコシルトランスフェラーゼ酵素の比率を変動させることにより、モノ−およびバイ−シアリル化されたIgG標的分子の比率が制御され得ることが分かった。従って、特定の態様において、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれは、予め決定された量で存在する。別の特定の態様において、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれの量は、予め決定された酵素活性を有する。すなわち、その2種類の酵素のそれぞれに関して、組成物中の酵素活性の絶対量は、測定された量であり、それはモノ−シアリル化された標的分子対バイ−またはさらに多くシアリル化された標的分子が形成されるであろう程度を最終的に決定する。従って、再現可能な比率のモノ−およびバイ−またはより多くシアリル化された標的分子を生成することが可能になった。
従って、本明細書で開示されるようなさらなる観点は、本明細書で開示されるような組成物の、インビトロで、そしてグリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で、標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された1個以上のシアリル残基(単数または複数)を有するシアリル化された標的分子を生成するための使用である。特定の態様において、シアリル化は、一方でモノ−シアリル化された標的分子が、他方でバイ−またはより多くシアリル化された標的分子が、酵素活性をその標的分子に同時に適用することにより生成されるように、定量的に決定される。本明細書で開示されるようなそれぞれの他の観点におけるように、アシアロ標的分子は、本開示の実施者にとって特に好都合である特定の態様であることが、ここで繰り返して述べられる。
本開示のさらなる観点は、インビトロで標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成するための方法であり、その標的分子は、糖タンパク質および糖脂質から選択され、その標的分子は、複数のアンテナを含み、そのアンテナの少なくとも2個は、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有し、その方法は、以下の工程を含む:(a)本明細書で開示されるような組成物を提供し、その組成物は、測定された量のΔ108 hST6Gal−IおよびΔ89 hST6Gal−IもしくはΔ89 hST6Gal−Iのシアリルトランスフェラーゼ酵素活性より高い、もしくはそれと等しいシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を有する可溶性のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI変異体、および/または測定された酵素活性のΔ89 hST6Gal−Iもしくはその機能的均等物およびΔ108 hST6Gal−Iを含み;(b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で予め決定された時間間隔の間インキュベートし、それにより末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(単数または複数)[=α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基(単数または複数)]を形成し、ここで、Δ89 hST6Gal−Iは、バイ−シアリル化されたIgGの形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iは、モノ−シアリル化されたIgGの形成を触媒し;それによりインビトロで標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する。
本明細書で開示されるような全ての観点の特定の態様において、標的分子は、糖脂質および糖タンパク質から選択される。糖タンパク質の特定の態様は、細胞表面糖タンパク質、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびウイルス由来のグリコシル化されたタンパク質からなる群から選択される。特定の態様において、グリコシル化された免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。さらにもっと具体的な態様において、そのグリコシル化された免疫グロブリンは、モノクローナル抗体である。
本明細書で開示されるような全ての観点の特定の態様において、標的分子は、糖タンパク質、特にグリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびウイルス由来のグリコシル化されたタンパク質である。組み合わせられたΔ89およびΔ108 hST6Gal−I変異体は、いくつかの限定的でない例の内の1つとして、組み換えで生成されたヒトモノクローナルIgG4抗体を複雑な標的(基質)として用いるシアリル化実験において活性であり;類似の発見が、シアリル化標的としてヒトIgG1モノクローナル抗体を用いて得られた。
見たところ、IgG−FcグリカンG2は、アンテナ分枝の末端においてシアリル化され得る2個のガラクトース部分を有する。適切な反応条件下で、N末端が切り詰められた変異体Δ89 hST6Gal−Iは、好ましくはジシアリル化されたグリカン(G2+2SA)の合成を触媒する。同時に、同じ条件下で、Δ108 hST6Gal−Iは、モノ−シアリル化された(G2+1SA)グリカンのみの形成を触媒する。従って、2種類の酵素を測定された量で組み合わせることにより、モノ−およびバイ−シアリル化されたグリカンを予め決定された量で特異的に合成することが可能になる。
本開示により提供されるような制御されたシアリル化は、所望の程度のシアリル化を有するモノ−、バイ−、およびより多くシアリル化された糖タンパク質をインビトロで合成するための新規の手段である。従って、IgG分子を用いて所望の技術的効果を示すことにより例示されるが、本明細書における開示に従う使用は、他の糖タンパク質を類似の方法で処理することも、グリコシルトランスフェラーゼ(glysosyltransferase)活性に関してその糖タンパク質が2個以上の末端アンテナβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を含むことを条件として、可能にする。同じ論法が類似の方式で糖脂質に適用される。
G2+0SAとして特性付けられる組み換えヒト化IgG1およびIgG4モノクローナル抗体(mab)、ならびにEPOが、シアリル化実験において標的として用いられた(30μg酵素/300μg標的タンパク質)。ST6Gal−Iの両方の酵素変異体(デルタ89およびデルタ108)が同一の反応条件下で用いられ、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA状態が質量分析により分析された。
高い発現率および効率的な精製手順のため、組み換えヒトST6−Gal−Iの両方の変異体(デルタ89およびデルタ109)は、大量に、そして高純度で入手可能である。両方の変異体は、モノクローナル抗体のような高分子量基質に関して活性である。それらは、2アンテナ状グリカンを有するモノクローナル抗体を基質として用いるシアリル化実験において異なる性能を示す。変異体デルタ89を用いると好ましくはバイ−シアリル化されたグリカンが得られ、一方で同一の条件下でデルタ108を用いるとモノ−シアリル化されたグリカンが得られる。
4アンテナ状グリカンも基質として受け入れられる(データは示されていない)。その結果は、両方の変異体が療法用抗体のインビトロ糖鎖工学のためにうまく用いられることができることを実証している。
組み換えヒトST6−Gal−Iは、大量に入手可能な第1酵素である。既に入手可能である供与体基質(補助基質として用いられる活性化された糖)と一緒に、非常に好都合な試薬のセットがタンパク質のインビトロ糖鎖工学のために提供される。
本明細書で提供されるような教示を実施することにより、ヒトST6−Gal−Iの組み換えΔ89変異体は大量に入手可能な酵素である。既に入手可能である供与体基質(補助基質として用いられる活性化された糖)と一緒に、非常に好都合な試薬のセットが、タンパク質の定量的に制御されたインビトロ糖鎖工学のために提供される。
以下の項目は、本開示の特定の観点および本明細書で提供される教示を実施するための特定の態様をさらに提供する。
1.グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする水性緩衝液を含む組成物であって、該組成物がさらに以下:
(a)グリコシル化された標的分子、該標的分子は、糖タンパク質および糖脂質から選択され、該標的分子は、複数のアンテナを含み、該アンテナの少なくとも2個は、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する;
(b)SEQ ID NO:2のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ89 hST6Gal−I)、またはΔ89 hST6Gal−Iのシアリルトランスフェラーゼ酵素活性より高い、もしくはそれと等しいシアリルトランスフェラーゼ酵素活性を有する可溶性のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI変異体;
(c)SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);
(d)シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸、またはその機能的均等物;
を含む組成物。
2.項目1に記載の組成物であって、該緩衝液が酢酸ナトリウム、トリス(=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、リン酸カリウム、およびNaClを含む組成物。
3.項目1および2のいずれかに記載の組成物であって、該緩衝液のpHが6.5である組成物。
4.項目1〜3のいずれかに記載の組成物であって、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれが予め決定された量で存在する組成物。
5.項目4に記載の組成物であって、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれの量が予め決定された酵素活性を有する組成物。
6.項目1〜5のいずれかに記載の組成物の使用であって、インビトロで、そしてグリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で該標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された1個以上のシアリル残基(単数または複数)を有するシアリル化された標的分子を生成するための使用。
7.項目6に記載の使用であって、シアリル化された標的分子において、付加されたシアリル残基を有するそれぞれの末端アンテナ状構造が、N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基である使用。
8.該標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子をインビトロで生成するための、項目4または項目5に記載の組成物の項目6および7のいずれかに記載の使用。
9.予め決定された時間間隔、具体的には0.5〜8時間から選択される時間間隔、より具体的には0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、および8時間から選択される時間間隔内での、項目6〜8のいずれかに記載の使用。
10.項目6〜9のいずれかに記載の使用であって、Δ89 hST6Gal−Iが主にバイ−またはより多くシアリル化された標的分子の形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iが主にモノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒する使用。
11.インビトロで標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成するための方法であって、該標的分子が、糖タンパク質および糖脂質から選択され、該標的分子が、複数のアンテナを含み、該アンテナの少なくとも2個が、それぞれ末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有し、該方法が以下の工程:
(a)項目4または項目5に記載の組成物を提供し;
(b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で予め決定された時間間隔の間インキュベートし、それにより末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(単数または複数)[=α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基(単数または複数)]を形成し、ここで、Δ89 hST6Gal−Iは、バイ−シアリル化された標的分子の形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iは、モノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒する;
を含み、それによりインビトロで標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する;
を含む方法。
12.項目11に記載の方法であって、該標的分子が、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iと共に同じ容器中および同じ条件下で同時にインキュベートされる方法。
13.項目12に記載の方法であって、Δ89 hST6Gal−Iが主にバイまたはより多くシアリル化された標的分子の形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iが主にモノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒する方法。
14.項目13に記載の方法であって、(i)Δ89 hST6Gal−Iの酵素活性および(ii)Δ108 hST6Gal−Iの酵素活性の2つの値の比率が、工程(b)において該標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加されるシアリル残基の量を決定する方法。
15.項目13および14のいずれかに記載の方法であって、Δ89 hST6Gal−Iの酵素活性の量と比較してより高い量のΔ108 hST6Gal−Iの酵素活性が、結果としてバイまたはより多くシアリル化された標的分子の形成の可能性と比較したモノ−シアリル化された標的分子の形成の増大した可能性をもたらす方法。
16.項目11〜15のいずれかに記載の方法であって、該標的分子がアンテナ状末端構造としてシアリル残基を含有しない方法。
17.項目11〜16に記載の方法であって、工程(a)の前に、該標的分子がシアリダーゼ酵素活性を有する酵素で前処理される方法。
18.項目11〜17のいずれかに記載の方法であって、該標的分子が、糖脂質および糖タンパク質、ならびに特にグリコシル化された細胞表面タンパク質、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびウイルス由来のグリコシル化されたタンパク質から選択される方法。
19.項目18に記載の方法であって、グリコシル化された免疫グロブリンが、IgGクラスの、具体的にはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択されるモノクローナル抗体である方法。
20.グリコシル化された標的分子の調製物であって、該標的分子がIgGクラスの免疫グロブリン分子であり、該調製物中のモノ−およびバイ−シアリル化された標的分子の量が制御された量であり、該調製物が項目11〜19のいずれかに記載の方法により得られる調製物。
21.項目20に記載のグリコシル化された免疫グロブリン分子の調製物の、医薬組成物を調製するための使用。
22.SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I)の、標的分子から主にモノ−シアリル化された標的分子を特異的に形成するための使用であって、
該標的分子が、糖タンパク質または糖脂質から選択され、
該標的分子が、末端構造としてガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する複数のアンテナ状標的部分を含み、
該モノ−シアリル化された標的分子が、単一のシアリル化された末端アンテナ状標的部分を含み、そして
該シアリル化された末端アンテナ状標的部分が、1個のN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を含む使用。
23.主に該標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子をインビトロで生成するための方法であって、該方法が以下の工程:
(a)以下:
i.標的分子であって、該標的分子が、糖タンパク質および糖脂質から選択され、該標的分子が、複数のアンテナを含み、該アンテナの少なくとも2個が、それぞれ末端構造として該ガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する標的分子;
ii.SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);
iii.シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸、またはその機能的均等物;
を含む組成物を提供し、
(b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下でインキュベートし、それにより標的分子ごとに単一の末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(=α2,6シアリル化された末端アンテナ状残基)を形成する;
を含み、それによりインビトロで該標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する方法。
24.項目23に記載の方法であって、工程(a)において提供される標的分子がα2,6シアリル化された末端アンテナ状残基を含まない方法。
25.糖タンパク質および糖脂質から選択されるモノ−シアリル化された標的分子であって、該モノ−シアリル化された標的分子が項目24に記載の方法により得ることができるモノ−シアリル化された標的分子。
26.項目25に記載のモノ−シアリル化された標的分子の、医薬組成物を調製するための使用。
以下の実施例は、本開示の特定の態様およびその様々な使用を説明している。それらは、説明的な目的のためだけに述べられており、本開示を限定するものとして受け取られるべきではない。
実施例1
シアリルトランスフェラーゼの酵素活性に関する試験
アシアロフェチュイン(ジシアリル化されたフェチュイン、Roche Applied Science)を受容体として用いて、CMP−9−フルオロ−NANA(CMP−9−フルオロセイニル−NeuAc)を供与体基質として用いた(Brossmer, R. & Gross H. J. (1994) Meth. Enzymol. 247, 177-193)。酵素活性を、供与体化合物からアシアロフェチュインへのシアル酸の移動を測定することにより決定した。反応混合物(35mM MES、pH6.0、0.035% Triton X−100、0.07% BSA)は、2.5μgの酵素試料、5μLのアシアロフェチュイン(20mg/ml)および2μLのCMP−9−フルオロ−NANA(1.0mg/ml)を51μLの総体積中に含有していた。その反応混合物を、37℃で30分間インキュベートした。その反応を、10μLの阻害剤CTP(10mM)の添加により停止した。その反応混合物を、0.1M トリス/HCl、pH8.5を用いて平衡化したPD10脱塩カラム上に装填した。フェチュインを、そのカラムから、平衡化緩衝液を用いて溶離した。画分の大きさは1mLであった。形成されたフェチュインの濃度を、蛍光分光光度計を用いて決定した。励起波長は490nmであり、発光は520nmで測定された。酵素活性はRFU(相対蛍光単位)で表された。10000RFU/μgは、0.0839nmol/μg×分の比活性に相当する。
実施例2
SDSゲル電気泳動
分析的SDSゲル電気泳動を、NuPAGEゲル(4〜12%、Invitrogen)を用いて実施した。試料(36μl)を12μlのNuPAGE LDS試料緩衝液(Invitrogen)で希釈し、85℃で2分間インキュベートした。典型的には5μgのタンパク質を含有する分割量を、ゲル上に装填した。そのゲルを、SimplyBlue SafeStain(Invitrogen)を用いて染色した。
実施例3
エドマン分解によるN末端配列決定
発現されたヒトST6Gal−IのN末端配列を、エドマン分解により、Life Technologiesから得た試薬および装置を用いて分析した。試料の調製を、ProSorb試料調製カートリッジ(カタログ番号401950)およびProBlott Mini PK/10膜(カタログ番号01194)の取り扱い説明書において記載されているように行った。配列決定に関して、Prociseタンパク質配列決定プラットフォームを用いた。
実施例4
質量分析
HEK細胞において発現されたヒトST6Gal−Iの変異体の分子量を、質量分析において分析した。従って、ヒトST6Gal−Iのグリコシル化された、および脱グリコシル化された形態を調製し、Micromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMS装置(Waters UK)ならびにMassLynx V4.1ソフトウェアを用いて分析した。
実施例5
グリコシル化されたヒトST6Gal−I酵素の質量分析
質量分析測定のため、試料をエレクトロスプレー媒体(20%アセトニトリル+1%ギ酸)中で緩衝した。緩衝液交換は、illustra(商標)MicroSpin(商標)G−25カラム(GE−Healthcare)を用いて実施された。1mg/mlの濃度を有する20μgのシアリルトランスフェラーゼ変異体を、予め平衡化したカラムに適用し、遠心分離により溶離した。得られた溶離液を、エレクトロスプレーイオン化質量分析により分析した。
実施例6
脱グリコシル化されたヒトST6Gal−I酵素の質量分析
脱グリコシル化のため、シアリルトランスフェラーゼの試料を変性させ、還元した。100μgのシアリルトランスフェラーゼに、45μLの変性緩衝液(6M塩酸グアニジニウム)および13μLのTCEP(0.1mM、変性緩衝液中で希釈されたもの)を添加した。さらに、適切な量の超純水を、塩酸グアニジニウムの全体の濃度が約4Mであるように添加した。試料の37℃で1時間のインキュベーション後、緩衝液を、超純水で予め平衡化したBio−SpinR 6トリスカラム(Bio Rad)を用いて交換した。全試料をそのカラム上に適用し、遠心分離により溶離した。得られた溶離液5.5μlに、PNGase Fの0.1U/μl溶液を添加し、37℃で一夜インキュベートした。その後、その試料を30%ACNおよび1%FAに調節し、エレクトロスプレーイオン化質量分析により分析した。
実施例7
哺乳類宿主細胞における一過性遺伝子発現(TGE)のためのpM1MT発現コンストラクトのクローニング
ヒトST6Gal−Iの2つの断片を、エリスロポエチンシグナル配列(Epo)および2アミノ酸(AP)または4アミノ酸(APPR)のペプチドスペーサーを用いる一過性真核生物発現のためにクローニングした。N末端を切り詰められた断片Epo−AP−デルタ89 hST6Gal−I(SEQ ID NO:4)およびEpo−APPR−デルタ108 hST6Gal−I(SEQ ID NO:6)に関して、コドンを最適化されたcDNAを合成した。天然のリーダー配列およびN末端のタンパク質配列の代わりに、両方のhST6Gal−Iコード領域は、エリスロポエチンシグナル配列+APおよびAPPRリンカー配列を、そのポリペプチドの宿主細胞株の分泌機構による正確なプロセシングを確実にするために有する。加えて、その発現カセットは、予め消化されたpM1MTベクター断片(Roche Applied Science)のマルチクローニング部位中へのクローニングのためのSalIおよびBamHI部位を特徴とする。従って、hST6Gal−Iコード配列の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーター領域、続いて制御された発現のためのイントロンAおよびBGHポリアデニル化シグナルの制御下にある。
上記のコンストラクトのHEK細胞中での発現、および変異体hST6Gal−Iタンパク質の細胞上清中への分泌は、実施例8で記載されるように実施された。
実施例8
HEK細胞の形質転換ならびに一過性発現および分泌
プラスミドDNAのトランスフェクションによる一過性遺伝子発現(TGE)は、哺乳類細胞培養においてタンパク質を生成するための迅速な戦略である。組み換えヒトタンパク質の高レベル発現のため、懸濁に適応させたヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞株に基づくTGEプラットフォームを用いた。細胞を、振盪フラスコ中で、37℃において、無血清培地条件下で培養した。細胞に、おおよそ2×10vc/mlにおいて、293−Free(商標)(Merck)トランスフェクション試薬により複合体化したpM1MT発現プラスミド(0.5〜1mg/L細胞培養)を、製造業者の手引きに従ってトランスフェクションした。トランスフェクションの3時間後に、発現を後押しするため、バルプロ酸(HDAC阻害剤)を添加した(終濃度4mM)(Backliwal et al. (2008), Nucleic Acids Research 36, e96)。毎日、培養物に6%(v/v)のダイズペプトン加水分解物ベースの供給物(feed)を補った。培養上清を、トランスフェクション後7日目に、遠心分離により集めた。
実施例9
HEK細胞からの組み換えヒトST6Gal−I変異体の精製
HEK細胞発酵(fermentations)の上清から、hST6Gal−Iの異なる変異体(Epo−AP−デルタ89 hST6Gal−IおよびEpo−APPR−デルタ108 hST6Gal−I)を、単純化された精製プロトコルを用いて精製した。第1工程において、0.1リットルの細胞上清を濾過し(0.2μm)、その溶液を緩衝液A(20mMリン酸カリウム、pH6.5)に対して透析した。その透析物を、緩衝液Aで平衡化したS−Sepharose ffカラム(1.6cm×2cm)上に装填した。100mlの緩衝液Aで洗浄した後、酵素を、10mlの緩衝液Aおよび10mlの緩衝液A+200mM NaClの線形勾配、続いて48mlの緩衝液A+200mM NaClを用いる洗浄工程で溶離した。画分(4ml)を分析的SDSゲル電気泳動により分析した。酵素を含有する画分をプールし、緩衝液B(50mM MES、pH6.0)に対して透析した。透析したプールを、緩衝液Bで平衡化したHeparin Sepharose ffカラム(0.5cm×5cm)上に装填し、緩衝液B+200mM NaClを用いて溶離した。酵素を含有する画分(1ml)をプールし、緩衝液Bに対して透析した。タンパク質濃度を、280nmにおいて決定した(E280nm[10mg/ml]=1.931(デルタ89ST6Gal−Iに関して)および1.871(デルタ108ST6Gal−Iに関して))。酵素の質量分析は、Epo−AP−デルタ89 hST6Gal−Iは、N末端のアミノ酸APなしで発現されることを示した。この驚くべき発見は、発現したタンパク質のシグナルペプチダーゼによる異常な切断を示していた。コンストラクトEpo−APPR−デルタ108 hST6Gal−Iに関して、N末端配列はAPPRであることが確認され、これは、予想されたEPOシグナル配列のシグナルペプチダーゼによる切断を示している。HEK細胞からの組み換えヒトデルタ108 hST6Gal−Iに関して、600RFU/mgより大きい比活性が決定された。変異体デルタ89 hST6Gal−Iは、1100RFU/mgより大きい増大した比活性を示した。
図1は、精製されたHEK細胞からの組み換えhST6Gal−I変異体のSDS−PAGEの結果を示す。
実施例10
ヒト化モノクローナル抗体(MAB)のシアリル化
高度にガラクトシル化されたヒト化モノクローナル抗体MAB IgG4(国際公開第2005/023872号)を、シアリル化実験において用いた。反応混合物は、MAB IgG4(55μlの35mM酢酸ナトリウム/トリス緩衝液pH7.0中300μg)、供与体基質CMP−NANA(50μlの水中150μg)およびシアリルトランスフェラーゼ(20mMリン酸カリウム、0.1M NaCl、pH6.5中30μg)を含有していた。試料を、37℃で定められた時間の間インキュベートした。反応を停止するため、100μlの変性緩衝液(6M塩酸グアニジン)および30μlのTCEP(0.1mM、変性緩衝液中で希釈したもの)を試料に添加し、試料を37℃で1時間インキュベートした。試料を、エレクトロスプレー媒体(20%ACN、1%FA)中で、予め平衡化したillustra(商標)Nap5−カラム(GE−Healthcare)を用いて緩衝した。試料を、エレクトロスプレーイオン化質量分析により分析し、G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SA N−グリカンの含有率を決定した。Micromass Q−Tof UltimaおよびSynapt G2 HDMS装置(Waters UK)が用いられ、用いられたソフトウェアはMassLynx V 4.1であった。シアリル化の速度論を決定するため、反応を8時間までインキュベートした。
G2+0SA、G2+1SAおよびG2+2SAの含有率を、質量分析により決定した。図2は、Δ89 hST6Gal−Iを用いたインキュベーション期間の間の異なる時点の後に得られた、異なるようにシアリル化された標的タンパク質の相対量を示す。変異体Δ89 hST6Gal−Iに関して、2時間のインキュベーション後に既に高い含有率(88%)のバイ−シアリル化された形態G2+2SAが得られた(図2参照)。そのデータは、G2+2SAの含有率が8時間の延長されたインキュベーション後に有意に増大しなかった(89%)ことも示している。
対照的に、変異体デルタ108 hST6Gal−Iは、モノシアリル化された形態G2+1SAを合成した。2時間のインキュベーション後に、46%のモノシアリル化された形態G2+1SAの含有率が得られた。8時間のインキュベーション後に、その含有率は70% G2+1SAまで増大した(図3)。

Claims (18)

  1. グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする水性緩衝液を含む組成物であって、該組成物がさらに以下:
    (a)グリコシル化された標的分子であって、前記標的分子が、糖タンパク質および糖脂質から選択され、前記標的分子が、複数のアンテナを含み、前記アンテナの少なくとも2個が、それぞれ末端構造として前記ガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有するグリコシル化された標的分子;
    (b)SEQ ID NO:2のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ89 hST6Gal−I);
    (c)SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);
    (d)シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としての、シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸;
    を含む組成物。
  2. 請求項1に記載の組成物であって、前記標的分子が、グリコシル化された細胞表面タンパク質、グリコシル化されたタンパク質シグナル伝達分子、グリコシル化された免疫グロブリン、およびウイルス由来のグリコシル化されたタンパク質からなる群から選択される糖タンパク質である組成物。
  3. 請求項1および2のいずれかに記載の組成物であって、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれが予め決定された量で存在する組成物。
  4. 請求項3に記載の組成物であって、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iのそれぞれの量が予め決定された酵素活性を有する組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物の使用であって、インビトロで、そしてグリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で前記標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された1個以上のシアリル残基(単数または複数)を有するシアリル化された標的分子を生成するための使用。
  6. 前記標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子をインビトロで生成するための、請求項3または請求項4に記載の組成物の請求項5に記載の使用。
  7. 請求項5および6のいずれかに記載の使用であって、Δ89 hST6Gal−Iがバイまたはより多くシアリル化された標的分子の形成を触媒し、Δ108がモノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒する使用。
  8. インビトロで前記標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成するための方法であって、前記標的分子が、糖タンパク質および糖脂質から選択され、前記標的分子が、複数のアンテナを含み、前記アンテナの少なくとも2個が、それぞれ末端構造として前記ガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有し、前記方法が、以下の工程:
    (a)請求項3または請求項4に記載の組成物を提供し;
    (b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下で予め決定された時間間隔の間インキュベートし、それにより末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基(単数または複数)を形成し、ここで、Δ89 hST6Gal−Iは、バイ−シアリル化された標的分子の形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iは、モノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒する;
    を含み、それによりインビトロで前記標的分子の1個以上のアンテナ状末端構造(単数または複数)に付加された制御された量のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する;
    を含む方法。
  9. 請求項8に記載の方法であって、前記標的分子が、Δ89 hST6Gal−IおよびΔ108 hST6Gal−Iと、同じ容器中および同じ条件下で同時にインキュベートされる方法。
  10. 請求項9に記載の方法であって、Δ89 hST6Gal−Iが、バイまたはより多くシアリル化された標的分子の形成を触媒し、Δ108 hST6Gal−Iが、モノ−シアリル化された標的分子の形成を触媒する方法。
  11. 請求項10に記載の方法であって、Δ89 hST6Gal−Iの酵素活性の量と比較してより高いΔ108 hST6Gal−Iの酵素活性の量が、結果としてバイまたはより多くシアリル化された標的分子の形成の可能性と比較したモノ−シアリル化された標的分子の形成の増大した可能性をもたらす方法。
  12. 請求項8〜11のいずれかに記載の方法であって、前記標的分子がアンテナ状末端構造としてシアリル残基を含有しない方法。
  13. 請求項12に記載の方法であって、前記標的分子が、IgGクラスの、具体的にはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群から選択されるモノクローナル抗体である方法。
  14. グリコシル化された標的分子の調製物であって、前記標的分子が、IgGクラスの免疫グロブリン分子であり、前記調製物中のモノ−およびバイ−シアリル化された標的分子の量が、制御された量であり、前記調製物が、請求項8〜13のいずれかに記載の方法により得られる調製物。
  15. SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I)の、標的分子からモノ−シアリル化された標的分子を特異的に形成するための使用であって、
    前記標的分子が、糖タンパク質または糖脂質から選択され、
    前記標的分子が、末端構造として前記ガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する複数のアンテナ状標的部分を含み、
    前記モノ−シアリル化された標的分子が、単一のシアリル化された末端アンテナ状標的部分を含み、そして
    前記シアリル化された末端アンテナ状標的部分が、1個のN−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を含む使用。
  16. 前記標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子をインビトロで生成するための方法であって、前記方法が以下の工程:
    (a)以下:
    i.前記標的分子であって、前記標的分子が、糖タンパク質および糖脂質から選択され、前記標的分子が、複数のアンテナを含み、前記アンテナの少なくとも2個が、それぞれ末端構造として前記ガラクトシル残基中のC6位においてヒドロキシル基を有するβ−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン部分を有する標的分子;
    ii.SEQ ID NO:3のN末端が切り詰められたヒトβ−ガラクトシド−α−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(Δ108 hST6Gal−I);
    iii.シアリルトランスフェラーゼに触媒される反応のための供与体化合物としてのシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸;
    を含む組成物を提供し、
    (b)工程(a)の組成物を、グリコシルトランスフェラーゼの酵素活性を可能にする条件下でインキュベートし、それにより標的分子ごとに単一の末端アンテナ状N−アセチルノイラミニル−α2,6−β−D−ガラクトシル−1,4−N−アセチル−β−D−グルコサミン残基を形成する;
    を含み、それによりインビトロで前記標的分子の1個のアンテナ状末端構造に付加された単一のシアリル残基を有するシアリル化された標的分子を生成する方法。
  17. 請求項16に記載の方法であって、工程(a)において提供される標的分子がα2,6シアリル化された末端アンテナ状残基を含まない方法
  18. 糖タンパク質および糖脂質から選択されるモノ−シアリル化された標的分子であって、前記モノ−シアリル化された標的分子が請求項17に記載の方法により得ることができるモノ−シアリル化された標的分子。
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