JP2016516563A - 嫌気性還元脱塩素化中のメタン生成の抑制 - Google Patents
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Abstract
酵素および補酵素抑制剤の使用によりメタン生成バクテリアにおけるメタン生成を抑制する本願の方法は、嫌気性還元脱塩素化中に作用する。赤色酵母米、ビタミンB10誘導体、エタンスルホン酸塩などの種々の化合物が、メタンの生成を担うこれらの異なる酵素および補酵素システムを破壊するために利用されるが、これらに限定されるものではない。本方法では、改善プロセス中に土壌や地下水のシステムに注入される有機水素供与体に対するメタン生成微生物とハローバクテリアの競合に影響を与える。【選択図】図1
Description
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、同一発明者による同時継続中の「嫌気性還元脱塩素化中のメタン生成の抑制」と題された2013年 3月 5日出願の特許出願第13/785,840号の部分継続であり、その優先権が本明細書にて主張されている。
本特許出願は、同一発明者による同時継続中の「嫌気性還元脱塩素化中のメタン生成の抑制」と題された2013年 3月 5日出願の特許出願第13/785,840号の部分継続であり、その優先権が本明細書にて主張されている。
本発明は、メタンの生成に関与する異なる酵素および補酵素システムの各種抑制剤の使用に関する。本発明は、赤色酵母米、ビタミンB10誘導体、エタンスルホン酸塩を使用して酵素および補酵素システムを破壊し、メタン生成におけるメタン生成微生物の生産性を制限するものである。
塩素化脂肪族炭化水素(CAHs)を含むハロゲン化揮発性有機化合物(VOCs)は、スーパーファンド(Superfund)やその他米国内の有害廃棄物処理サイトの土壌や地下水中に最も頻繁に発生するタイプの汚染物質である。1996年にアメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は、これらサイトの浄化には今後数十年にわたって450億ドル以上の費用が掛かると見込んでいる。
CAHsは、人工的な有機化合物である。それらは通常、1つまたはそれより多い水素原子を塩素原子に置換したり、あるいは塩素化化合物をより低度の塩素化状態に選択的に脱塩素化したりする各種プロセスを通して天然に存在する炭化水素成分(メタン、エタン、エテン)および塩素により作られる。CAHsは、溶剤および脱脂剤としての使用、及び原材料の製造過程での使用を含む多種多様な用途で使用されている。CAHsは、テトラクロロエテン(PCE)、トリクロロエテン(TCE)、四塩化炭素(CT)、クロロホルム(CF)、及び塩化メチレン(MC)などの溶剤を含む。CAHsを含んだ廃棄物の過去これまでの管理では、米国の多くの汚染された地下水の領域にCAHsの存在を招き、結果的に土壌と地下水の汚染につながった。TCEは、これら汚染物質の中で最も普通に見られるものである。加えて、CAHsおよびその分解生成物(ジクロロエタン(DCA)、ジクロロエテン(DCE)、塩化ビニル(VC)など)は地下に存続し続ける傾向にあり、公衆衛生と環境に危険を及ぼしている。
地下水中のPCE、TCE、シス-1,2-ジクロルエテン(cis-1,2-DCE)、VCなどの塩素化炭水化物汚染物質を処理するための費用効率が良好で信頼性のある入手可能な技術のオプションは、特には以下のようなケースでは従来のポンプ・アンド・処理プロセス(pump-and-treat process)からは近年排除されてきている:
・非水相液体(NAPLs)、マイクロエマルジョン、または高濃度の吸収物質が存在して高い溶解相濃度になっているケース。
・地表構造または使用性のために地下水へのアクセスが制限されているケース。
・地域の規制により、空気散布や自然減衰などの他の利用可能な技術の実施が禁止されているケース。
・ポンプ・アンド・処理技術が適用されてきたが、除去率が限界に達しているケース。
・リスクベースの閉鎖に対しては汚染が広範囲で濃度が高すぎるが、それ以外は比較的低いケース(通常は100から7500 ppb)。
・溶解CAHsの土地の境界を越えた移動や隣接する表面水への移動が、長期的な浄化要求につながるケース。
・底にある飲料水帯水層への自由相CAHs(DNAPL)の垂直移動が懸念されるケース。
・非水相液体(NAPLs)、マイクロエマルジョン、または高濃度の吸収物質が存在して高い溶解相濃度になっているケース。
・地表構造または使用性のために地下水へのアクセスが制限されているケース。
・地域の規制により、空気散布や自然減衰などの他の利用可能な技術の実施が禁止されているケース。
・ポンプ・アンド・処理技術が適用されてきたが、除去率が限界に達しているケース。
・リスクベースの閉鎖に対しては汚染が広範囲で濃度が高すぎるが、それ以外は比較的低いケース(通常は100から7500 ppb)。
・溶解CAHsの土地の境界を越えた移動や隣接する表面水への移動が、長期的な浄化要求につながるケース。
・底にある飲料水帯水層への自由相CAHs(DNAPL)の垂直移動が懸念されるケース。
各サイトでの環境化学は、そのサイトにおける塩素化溶剤の生分解速度を部分的に決定している。地下水中のクロロエテンやクロロエタンなどの塩素化溶剤の初期代謝は通常、連続還元脱塩素化と呼ばれる生化学的プロセスを含む。土地固有の(native)有機物などの電子供与体と、酸素や塩素化溶剤などの電子受容体の異なる形式および濃度の発生は、サイトの自然減衰の間にどれだけの還元脱塩素化が発生するかの決定に大きく係わっている。
実験室での研究によれば、酢酸塩(acetate)、プロピオン酸塩(propionate)、酪酸塩(butyrate)、安息香酸塩(benzoate)、グルコース、乳酸塩(lactate)、メタノール、およびトルエンを含む多様な有機物基質が、還元脱塩素化を刺激するであろうことを示している。糖蜜、乳清、コーン・スティープ・リカー、コーン油、水素化綿の実油ビーズ、固体食品ショートニング、牛脂、溶融コーン油マーガリン、ココナッツ油、大豆油、水素添加大豆油のような安価で複雑な基質が、完全な還元脱塩素化を支援する能力を備えている。
還元脱塩素化は、酸素が存在しない場合にのみ発生する;そして、塩素化溶剤は、そのプロセスを実行する微生物の生理内で実際に酸素の代役となる。この生理学的プロセスの間に塩素化溶剤を使用する結果、少なくともその一部が脱塩素化される。浄化処理技術では通常、このプロセスが直ちに発生することを確実にするために酸素除去剤を地下に導入している。
溶解された酸素を消費するため、しばしば有機栄養のバクテリアが使用され、これによって地下水の酸化還元能力を低減させている。加えて、そのバクテリアが有機粒子上で成長すると、それらは炭素を発酵して各種の揮発性脂肪酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸)を放出し、これが発酵部位から地下水プルーム内に拡散して脱ハロゲン化剤やハロ呼吸(halorespiring)の種を含む他のバクテリアのための電子供与体として作用する。鉄源は通常、直接的な化学的脱塩素化を刺激するかなりの反応表面領域を提供し、化学的な酸素除去を介して地下水の酸化還元能力の追加の低減となる。
バクテリアは一般に、1)エネルギを引き出す手段、2)必要とする電子供与体のタイプ、3)必要とする炭素の起源、によって分類される。地下でCAHsの生分解に関与しているバクテリアは、典型的には化学合成生物であり(化学的酸化還元反応からエネルギを引き出している)、有機化合物を電子供与体および有機炭素の起源として使用している(有機従属栄養生物)。しかしながら、バクテリアはさらに、使用する電子受容体、したがって地下で支配する領域のタイプによっても分類されている。相対的により多くのエネルギを発生させる酸化還元反応を引き起こすバクテリアの電子受容体のクラスは、相対的により少ないエネルギを発生させる酸化還元反応を引き起こすバクテリアの電子受容体のクラスよりも大きな部分を占めている。
ある種の微生物は、適用されるシステムから酸素や硝酸塩を除去する助けとなる。好塩性生物は塩を好む生物であり、高塩分濃度の環境に生息する。それらには主に原核及び真核の微生物が含まれ、環境の浸透圧をバランスさせ、塩の変性効果に抵抗する能力を有している。好塩性微生物の中には、多様な有機栄養やメタン生成の古細菌;光合成、無機栄養、有機栄養の各バクテリアや;光合成、有機栄養の真核生物がある。一方、メタン生成微生物は、他の形態の嫌気性呼吸で生成される余剰の水素や発酵生成物を除去しているため、嫌気性環境の中で極めて重要な環境作用を果たしている。メタン生成微生物は典型的には、CO2を除く全ての電子受容体(例えば、酸素、硝酸塩、三価鉄、および硫酸塩)が枯渇した環境下で繁栄している。
熱力学的に考察すれば、酸素と硝酸塩の方が塩素化溶媒よりもエネルギ面から有利な電子受容体であるため、還元脱塩素は、酸素と硝酸塩の双方が帯水層から枯渇した後にのみ発生するであろう。水素と酢酸塩に発酵されるほとんど全ての基質は、これらの材料が脱塩素化の微生物により使用されることから、還元脱塩素化を補強するために使用することがでる。しかしながら、水素はまた、メタン生成バクテリアをメタンに変換するメタン生成バクテリアにとっての基質でもある。水素を利用することにより、このメタン生成微生物は脱塩素化微生物と競合する。
メタン生成の抑制は、最終的に低メタン生成につながるが、これは主要関心事の各種環境側面に良好な影響を与え、また原位置浄化(in-situ remediation)プロセスにおける還元脱塩素化もしくは塩素化揮発有機化合物(CVOCs)を増進させる環境条件を脱ハロゲン化バクテリアがより有効的に使用する助けとなるだろう。
したがって、嫌気性還元脱塩素化プロセスの間にメタン生成に係わる酵素及び補酵素システムを抑制するための方法の技術が求められている。
嫌気性還元脱塩素化プロセスの間にメタン生成に係わる酵素及び補酵素システムを抑制するための方法の技術の必要性を解決するため、本発明がなされた。
本発明は、メタン生成に重要な役割を果たす各種酵素および補酵素の作用を抑えることによってメタン生成有機物からメタン生成を抑制する方法を提供する。本発明では、様々な酵素および補酵素がターゲットとされる。使用される当該抑制剤は、システム内に存在する他のバクテリアに対しては無害であることが見出されている。
酵素および補酵素抑制剤を使用してメタン生成微生物のメタン発生を抑制する本方法は、塩素化溶剤の原位置浄化において非常に有用となり得る。この方法は、浄化プロセスの間に土壌及び地下水システム中に注入される有機水素供与体に対するメタン生成微生物と好塩性バクテリアの競合に有効に作用することが期待される。この方法はまた、主要温室効果ガスと考えられているメタン排出量を低減させるための代替となるアプローチを提供する。この点において、本発明の少なくとも1つの実施の形態を説明する前に、本発明は、以下に記載された構造の詳細ならびに構成要素の配置の適用に限定されるものでないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施の形態の可能性を含み、様々な態様で実行が可能である。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明目的であり、限定とみなすべきではないことは理解されるべきである。
以上より、当業者には、本開示に基づく概念は、本発明の各種目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基礎として容易に利用できることが理解されよう。したがって、本願の特許請求の範囲は、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、このような同等の構成をも包含すると見ることが重要である。
ここに開示される内容は特に、メタン生成微生物によるメタン生成を抑制する方法に関するものであり、当該方法は、メタン生成微生物を、メタン生成を抑制するに十分となる有効量の赤色酵母米、ビタミンB10誘導体、エタンスルホン酸塩(ethanesulfonate)を含む組成物に接触させることを含む。本発明の1つの態様として、本方法は土壌や地下水などの環境媒体の還元脱塩素化をもたらすものとなる。
本発明の1つの実施の形態によれば、本方法は、環境媒体へ発酵性基質を添加するステップをさらに含んでいる。当業者に知られた発酵性基質は、そのいずれもが本発明の方法にて動作可能である。例として幾つかの有用な発酵性基質を挙げれば、炭水化物;これにはブグルコース、グルコース生成化合物を含み;酢酸塩; プロピオン酸塩; 酪酸塩; 安息香酸塩; 乳酸塩;ギ酸塩;メタノール; トルエン;糖蜜;乳清;コーン・スティープ・リカー;コーン油、ピーナッツ油、ココナツ油、ダイズ油、水素化綿の実油ビーズを含む油;固形食品ショートニング、牛脂;溶融コーン油マーガリン;繊維性植物材料;キチン質および水素添加大豆があるが、これらに限定されるものではない。
生物学的メタンの形成は、メタン生成微生物により触媒される微生物プロセスである。本明細書で使用するメタン生成微生物の用語は、メタンを生成するバクテリアと古細菌(従来は古細菌バクテリアに分類されていた)の両方を含むメタン生成生物を意味する。メタン生成微生物のすべての種のメタン生成経路は、共通してメチル基からメタンへの変換を有しているが;ただし、メチル基の起源は異なっている。ほとんどの種は、還元剤となる水素分子(H2)またはギ酸塩により二酸化炭素(CO2)をメチル基に還元する能力を有している。CO2とH2を利用するメタン生成微生物のメタン生成経路には特定のメタン生成酵素が係わっており、これはユニークな補酵素を使用してユニークな反応を触媒する。
生合成酵素、4-(β-D-リボフラノシル)アミノベンゼン-5’リン酸(β-RFA-P)シンターゼは、メタノプテリン(methanopterin)生合成の最初のステップを触媒する重要な酵素である。この酵素は、β-RFA-P,CO2と無機ピロリン酸塩(PPi)の汚染物質の形成と共に、パラアミノ安息香酸(pABA)と5-ホスホ-α-D-リボシル-1-ピロリン酸塩(PRPP)の縮合を触媒する。この酵素は、ホスホリボシルトランスフェラーゼとデカルボキシラーゼで、ホスホリボシルトランスフェラーゼとpABA-依存酵素の中ではユニークであるC-リボシドを形成する。
β-RFA-Pシンターゼは、テトラヒドロメタノプテリン(H4MPT)の生合成内の初期ステップであり、メタン生成微生物の成長とエネルギ代謝に非常に重要な修飾された葉酸塩である。
メタノフランとH4MPTは、CO2からメチル基への可逆的還元における1炭素担体として機能する。H4MPTは、1つの炭素の反応がアミノ酸およびヌクレオチドの代謝に関与することから、メタン形成において複数のステップに関与するものとなる。H4MPTは、古細菌中およびバクテリアの1クラス(例えば、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens))の内に見出されるが、これらの2つの葉酸塩(葉酸塩とメタノプテリン)の生合成経路は異なるもので、細胞の生理学では異なる機能的役割を果たしていることを示唆している(DumitruとRagsdale,2004)。
5,6,7,8-テトラヒト゛ロメタノフ゜テリン(H4MPT)
テトラヒドロメタノプテリンの構造
テトラヒドロメタノプテリンの構造
補酵素F420または8-ヒドロキシ-5- デアザフラビンは、多くの放線菌や散発的に他のバクテリア系列のメタン生成微生物における酸化還元反応に関与する2電子伝達補酵素である。それは全てのメタン生成の種における様々なレベルに存在し、ストレプトミセス・グリセウスおよびアナシスティス属ニデュランスにおいても特定されている。少なくとも4つの異なる形態の補酵素が言及されており、この全ては2つ、3つ、4つまたは5つのグルタミン酸残基からなる伸長側鎖を有するデアザリボフラビン(deazariboflavin)発色団を含んでいる。補酵素F420−2(すなわち、2つのグルタミン酸残基からなる側鎖を持つ)は、水素化(hydrogenotrophic)メタン生成微生物に存在する補酵素の形式とみられ、一方メチロトローフ種は、補酵素F420−4とF420−5を含んでいる(ReynoldsとColleran, 1987)。
補酵素F420の特徴の1つは、CO2からメチル基への還元における2つのステップに対して電子供与体として作用することである。メタノブレビバクター属スミシー(Methanobrevibacter smithii)からのF420依存NADP酸化還元酵素は、NADP+とF420の間にメタン生成時の重要な電子移動ステップを触媒する。反応の間、NADPはF420から1つまたはそれより多くの水素化物(H−)を受けてNADPHに還元される。これは、M・スミシーなどのメタン生成バクテリア中でのメタン形成の重要なステップである。したがってNADP酸化還元酵素は、メタン形成に極めて重要な役割を果たす(Sherma他、2011)。
酸化状態 還元状態(F420H2)
補酵素F420 (F420)
補酵素F420の構造
補酵素F420 (F420)
補酵素F420の構造
補酵素M(CoM),2-スルファニルエタンスルホン酸塩(sulfanylethanesulfonate)は、自然界で知られている最小の補因子である。この補因子は、スルフヒドリル基にメチル化されてCH3-S-COMを形成し、これは全てのメタン生成経路における最終ステップを触媒するメチルレダクターゼのための基質となる。補酵素B,2-[(7-メルカプト-1-オキソヘプチル)アミノ]-3-ホスホノオキシブタン酸は、メチル補酵素M還元酵素のための第2の基質であり、反応の結果CoM(CoB-S-S-CoM)を有するヘテロジスルフィド複合体を形成する(Ferry, 2002)。古細菌は、生合成HMG-COA還元酵素を有することが知られた唯一のバクテリアであることから、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A(HMG-COA)還元酵素もまた、メタノブレビバクター属のメタン生成に極めて重要な他の酵素である(MillerとWollin, 2001)。
H2を電子供与体とするCO2からCH4の還元(反応1)は、本発明の骨子となるメタン生成の経路である。
4H2+CO2→CH4+2H2O,ΔGO’=-130.4kJ/モルCH4 (1)
4H2+CO2→CH4+2H2O,ΔGO’=-130.4kJ/モルCH4 (1)
上記CO2還元経路は、メタノバクテリウム属サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)株の存在下で観察される(Ferry, 2002)。
CO2からCH4への還元経路
CO2からCH4に至る還元の間にたどるステップは以下のようである:最初に二酸化炭素がホルミル基レベルに還元され、その後ホルミル基がホルムアルデヒドレベルに還元される。次のステップで、メチレン基がメチルレベルまで還元され、最後にそのメチルレベルがメタンに変換される。上記還元ステップの4つ全てにつき以下に概要を述べる(Ferry, 1992)。
1.二酸化炭素からホルミルレベルへの還元
CO2からホルミルレベルへの還元は、ホルミル・メタノフラン・デヒドロゲナーゼ(FMF)により触媒される。FMFは、経路における最初の安定的中間体である。逆方向への酵素の活性は、M.サーモオートトロフィカム株の全ての抽出物中のメチルビオロゲンまたは補酵素F420のいずれかの還元に関連している。
CO2からホルミルレベルへの還元は、ホルミル・メタノフラン・デヒドロゲナーゼ(FMF)により触媒される。FMFは、経路における最初の安定的中間体である。逆方向への酵素の活性は、M.サーモオートトロフィカム株の全ての抽出物中のメチルビオロゲンまたは補酵素F420のいずれかの還元に関連している。
2.ホルミルレベルからホルムアルデヒドへの還元
還元の前に、ホルミル基は、反応2に示されるように5,6,7,8-テトラヒドロメタノプテリンに移転され、その後、反応3に示すように脱水環化によってメテニル誘導体に変換される。
FMF+H4MPT→5-ホルミル-H4MPT+2MF,ΔGO’=-4.4kJ/モル(2)
5-ホルミル-H4MPT+H+→5,10-メテニル-H4MPT+ +H20,
ΔGO’=-4.6kJ/モル (3)
還元型補酵素F420による5,10-メテニル-H4MPTからホルムアルデヒドレベルへの還元は反応4に示される。
5,10-メテニル-H4MPT++F420H2→5,10-メチレン-H4MPT +F420+H+ ΔGO’=6.5KJ/モル (4)
上述したように、補酵素F420は、水酸化物イオンを供与または受容する必須の2電子担体である(酸化還元電位〜-350mV)。5,10-メチレン-H4MPTデヒドロゲナーゼ活性の消失は、浄化手順の間もしくは空気への暴露によりF420に電子受容体としての依存度がより高まる。
還元の前に、ホルミル基は、反応2に示されるように5,6,7,8-テトラヒドロメタノプテリンに移転され、その後、反応3に示すように脱水環化によってメテニル誘導体に変換される。
FMF+H4MPT→5-ホルミル-H4MPT+2MF,ΔGO’=-4.4kJ/モル(2)
5-ホルミル-H4MPT+H+→5,10-メテニル-H4MPT+ +H20,
ΔGO’=-4.6kJ/モル (3)
還元型補酵素F420による5,10-メテニル-H4MPTからホルムアルデヒドレベルへの還元は反応4に示される。
5,10-メテニル-H4MPT++F420H2→5,10-メチレン-H4MPT +F420+H+ ΔGO’=6.5KJ/モル (4)
上述したように、補酵素F420は、水酸化物イオンを供与または受容する必須の2電子担体である(酸化還元電位〜-350mV)。5,10-メチレン-H4MPTデヒドロゲナーゼ活性の消失は、浄化手順の間もしくは空気への暴露によりF420に電子受容体としての依存度がより高まる。
3.メチレン基からメチルレベルへの還元
前記5,10-メチレン-H4MPT還元酵素は、反応5で還元型F420(F420H2)を生理的電子供与体として利用する。
5,10-メチレン-H4MPT+F420H2→5-メチル-H4MPT+F420,
ΔGO’=−5.2kJ/モル (5)
この反応は、いずれの方向にも進行する;しかしながら、生理学的に適切なメチレン還元は、熱力学的に有利である。H2は電子の起源であるため(反応6)、この還元は発エルゴン的であり、したがって主な電気化学的ポテンシャルの発生を伴うであろう。
5,10-メチレン-H4MPT+H2→5-メチル-H4MPT,
ΔGO’=−14kJ/モル (6)
前記5,10-メチレン-H4MPT還元酵素は、反応5で還元型F420(F420H2)を生理的電子供与体として利用する。
5,10-メチレン-H4MPT+F420H2→5-メチル-H4MPT+F420,
ΔGO’=−5.2kJ/モル (5)
この反応は、いずれの方向にも進行する;しかしながら、生理学的に適切なメチレン還元は、熱力学的に有利である。H2は電子の起源であるため(反応6)、この還元は発エルゴン的であり、したがって主な電気化学的ポテンシャルの発生を伴うであろう。
5,10-メチレン-H4MPT+H2→5-メチル-H4MPT,
ΔGO’=−14kJ/モル (6)
4.メチル基からメタンへの変換
a.メチル基の補酵素Mへの移転
還元の前に、5-メチルH4MPTのメチル基は、反応7に示すように補酵素M(HS-CoM)に移転される。
5-メチル-H4MPT+HS-CoM→CH3-S-CoM+H4MPT、
ΔGO’=-29.7kJ/モル (7)
b.CH3-S-CoMの還元脱メチル化
CH3-S-CoMのメチル還元性酵素は、反応8を触媒する。経路の最終還元ステップで、CoM-S-S-HTPは、それぞれのスルフヒドリル補因子に還元される(反応9)。
CH3-S-CoM+HS-HTP→CH4+CoM-S-S-HTP、
ΔGO’=−45kJ/モル (8)
CoM-S-S-HTP+H2→HS-CoM+HS-HTP、
ΔGO’=−40kJ/モル (9)
a.メチル基の補酵素Mへの移転
還元の前に、5-メチルH4MPTのメチル基は、反応7に示すように補酵素M(HS-CoM)に移転される。
5-メチル-H4MPT+HS-CoM→CH3-S-CoM+H4MPT、
ΔGO’=-29.7kJ/モル (7)
b.CH3-S-CoMの還元脱メチル化
CH3-S-CoMのメチル還元性酵素は、反応8を触媒する。経路の最終還元ステップで、CoM-S-S-HTPは、それぞれのスルフヒドリル補因子に還元される(反応9)。
CH3-S-CoM+HS-HTP→CH4+CoM-S-S-HTP、
ΔGO’=−45kJ/モル (8)
CoM-S-S-HTP+H2→HS-CoM+HS-HTP、
ΔGO’=−40kJ/モル (9)
本発明は、酵素および補酵素の抑制のための追加の実施の形態を提供しており、それは上述したようにメタン生成プロセスの不可欠な部分である。ターゲットとなる酵素はメタノプテリンであり、ターゲットとなる補酵素は補酵素F420と補酵素AおよびMである。
生合成酵素4-(β-D-リボフラノシル)アミノベンゼン-5 '-リン酸塩(β-RFA-P)シンターゼは、メタノプテリン生合成の最初のステップを触媒する。メタノプテリンの還元型であるH4MPTは、メタン生成の複数のステップに関与しており;また、真核生物およびバクテリア中の主要な1炭素担体であるテトラヒドロ葉酸の機能の代替となる。メタン生成微生物による成長とエネルギ生産におけるH4MPTの重要性を考えると、RFA-Pシンターゼの抑制は、特異的にメタノプテリン生合成を停止させるものであり、それによって他のバクテリアの代謝に障害を及ぼすことなくメタン発生を排除する。多くの研究者が上記仮説を支持する研究を行っている(Dumitru他 2003)。メタノプテリン生合成の最初のステップの間で、RFA-Pシンターゼは、ホスホリボシルピロリン酸塩(PRPP)とpABAの、CO2、無機ピロリン酸塩、およびβ-RFA-Pへの転換を触媒する。
何人かの研究者は、メタン生成微生物RFA-Pシンターゼを部分的に精製して特徴づけており、アルカエオグログブス属フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)由来の酵素が均質に精製されてクローニングされ、異所的に過剰発現された。反応は、オキソカルベニウム中間体と、pABAとのその付加物を介して進行する(RascheとWhite, 1998)。しかし最も重要なのは、他の研究グループ(Dumitru他,2003)が、pABAの構造類似体である競合性のある抑制剤の設計に焦点を当てたことである。アミノ基はほとんどのpABA依存反応において求核剤であり、一方、環炭素4はRFA-Pシンターゼで触媒された反応において求核剤であるため、RFA-Pシンターゼを抑制するpABAの類似体は極めて選択的である。
ドミトル(Dumitru,2003)他によって提示された抑制剤は、RFA-Pシンターゼの活性を減じ、メタン生成微生物の純粋培養でメタン発生を阻止する。培養に過剰の自然基質pABAを供給すると抑制が緩和されることから、RFA-Pシンターゼは細胞標的であることを示唆している。この抑制剤は、酢酸生成バクテリアの成長に悪影響を及ぼすことはない。
pABAは、ビタミンB10としてより広く知られていることには留意すべきである。ビタミンB10はビタミンB複合体の一部であり、水溶性ビタミンであると考えられる。pABAはプテロイドグルタミン酸塩の成分である。いくつかのバクテリアに対してプロビタミンとして働くため、一時はビタミンであると考えられ、ビタミンB-xと呼ばれた。
ドミトル(Dumitru,2003)他は、全てpABAのN置換誘導体であった各種抑制剤を合成し、PFA-Pシンターゼと共にそれらの抑制定数を特定した。その結果は、RFA-PシンターゼのpABA結合部位が、アミノ基の近くに比較的大きな疎水性ポケットを持っていることを示唆している。各pABA類似体は、メタン生成微生物M.マールブルゲンシス(M.marburgensis:従来はM.サーモオートトロフィカムとして知られた)のメタン生成と増殖とを抑制する能力についてテストされた。わずかな量のメタンが、成長は完全に抑制されたM.マールブルゲンシス培養のヘッドスペースで測定された。100nMにて、現在最も強力な抑制剤、4-[(2-ピリジルメチル)アミノ]安息香酸は、メタン生成微生物の成長とM.マールブルゲンシスによるメタンの形成を完全に阻止している。抑制は、pABAと媒体を補充することによって全て逆戻りとなり、pABAと多分RFA-Pシンターゼと思われる細胞標的の抑制剤との間の競合相互作用を示している。
酢酸生成は、多くの嫌気性生息地でメタン発生微生物と競合する嫌気性および水素化バクテリアのプロセスである。各抑制剤は、酢酸生成バクテリアM.サーモアセティカ(M.Thermoacetica)の増殖に対する効果をテストされた。メタノプテリンは、バクテリアの生存のためには必要ではない:従って、ここで説明するRFA-Pシンターゼ抑制剤はいずれも、1mMまでの濃度で、M.サーモアセティカの成長には影響を及ぼすことはない(Dumitru他,2003)。
前記抑制剤の効果が、メタンの形成および揮発性脂肪酸(VFA)生成でテストされた。メタンの生成は、5mMの4-(エチルアミノ)安息香酸塩、または9mMの4-(イソプロピルアミノ)安息香酸塩によって完全に抑制される。5mMの4-(2-ヒドロキシエチル)安息香酸塩は、メタンの生成を対照レベルの2.5%に抑制した。対照として、メチル補酵素M還元酵素の抑制剤である1mMのブロモエタンスルホン酸塩(bromoethanesulfonate)は、すべての実験でメタン生成を完全に抑制(P<0.01)した(Dumitru他、2003)。
VFA生成に対する有効ないくつかの抑制剤の効果もテストされた。VFA生成は、メタン生成を完全にブロックする濃度のRFA-Pシンターゼ抑制剤を添加しても抑えることはできなかった。例えば、7mMの4-エチルアミノ安息香酸塩が人工的反芻システムに追加されたとき、酢酸塩(P<0.05)とプロピオン酸塩(P<0.10)のレベルが、抑制剤に暴露されていない対照に対して上昇している。これらの結果は、酢酸生成バクテリアの純粋培養での研究と一致しており、この抑制剤が他のバクテリアに対して悪影響を及ぼさないことを示している(Dumitru他、2003)。
シャルマ(Sharma,2011)他は、ロバスタチンとコンパクチン(メバスタチン)が有する潜在抑制効果を、メタン生成の間でM.スミシー由来のF420依存NADP酸化還元酵素によりテストした。彼らの研究結果により、ロバスタチンとコンパクチン(メバスタチン)化合物の双方は、F420依存NADP酸化還元酵素タンパク質の潜在的抑制剤として有効であることが見出された。
本発明によれば、本発明の組成物に含まれる天然に存在するスタチンは、メタン生成生物の経路内でメタン生成を抑制する働きをする。そのような天然に存在するスタチンの1つは、他の各種起源の中でも赤色酵母米から得られるロバスタチンである。ロバスタチン(C24H36O5)は、真菌類の成長の産生期 (idiophase:第2段階)の副産物であり、人間のコレステロール生成経路の主要な酵素でもある3-ヒドロキシ-3-エチルグルタリル補酵素A(HMG-COA)還元酵素の抑制剤である。人間のコレステロール形成と古細菌の細胞膜の形成の間には、古細菌の細胞膜内のリン脂質の脂質側がイソプレノイド鎖であることから類似性がある。イソプレノイドの形成は、コレステロール生成経路(メバロン酸経路)の中間ステップであり、HMG-COA還元酵素は、その生成のための重要な酵素でもある。したがって、HMG-COA還元酵素の抑制剤として、ロバスタチンはイソプレノイドの生成を阻止し、これによりコレステロールの合成および古細菌における膜形成を阻止する。ウォーリンとミラー(Wolin and Miller, 2005)は、ロバスタチンがセルロース分解バクテリアに如何なる悪影響をも及ぼすことなく、純粋なメタン生成バクテリアの成長と活性を大幅に減退させることを立証している。
前述したように、F420H2-NADPは、NADP+とF420の間での電子移動、すなわちF420から1つもしくはそれより多い水素化物(H-)の受容によりNADPをNADPHに還元するステップの触媒に作用する補酵素の1つである。
シャルマ(Sharma, 2011)他は、M.スミシー由来のF420依存NADP酸化還元酵素の3Dモデル構造を特定した。彼らのF420依存NADP酸化還元酵素のタンパク質モデルに基づいて、彼らはそれらの残滓物がリガンド結合部位ポケットを作ることを発見し、その後のさらなる研究によって、リガンドF420がそのタンパク質の空洞に結合することを見出した。この抑制剤化合物ロバスタチンとコンパクチン(メバスタチン)は、天然リガンドF420と比較として、モデルタンパク質に対してより高い親和性を示す。それらは、F420によるものと同一の空洞を共有し、同様な残滓物により囲まれる。換言すれば、酵素は基質と結合することができず、これによってメタン生成が減退されることから、抑制剤化合物ロバスタチンとコンパクチン(メバスタチン)は、メタン生成に対してその活性を阻止するのに非常に有効であった。ロバスタチンは、アスペルギルス属テレウスの培養から単離された菌類の代謝産物であり、コンパクチン(メバスタチン)は、ペニシリウム属ブレビコンパクツムから得られた抗真菌性の代謝産物である。シャルマ(Sharma, 2011)他は、ロバスタチンとコンパクチン(メバスタチン)が、F420-依存NADP酸化還元酵素タンパク質の活性部位を阻害するための強力な抑制剤として作用する可能性を打ち立てている。
コンハ゜クチン(メハ゛スタチン) ロハ゛スタチン
補酵素F420
コンパクチン(メバスタチン)、ロバスタチン、F420の構造
コンパクチン(メバスタチン)、ロバスタチン、F420の構造
研究者は、米の上の酵母(紅麹カビ、Monascus purpureus)を発酵させて作られるアジアの主食である赤色酵母米が、ロバスタチンなどのスタチン薬の活性成分を含むことを発見した。この研究により、赤色酵母米は、主要酵素ヒドロキシメチルグルタリル(hydroxymethylglutaryl)-SCoA(HMG-CoA)還元酵素を有効に抑制し、その結果メタン生成微生物の活性を抑制することが分かった。
ミラーとウォーリン(Miller and Wolin, 2001)は、主要前駆体メバロン酸塩の形成を抑制するためにロバスタチンを使用した。メバロン酸塩は、ヒドロキシメチルグルタリル-SCoA(HMG-CoA)の還元により形成される。その結果に基づき、彼らはロバスタチンがメタノブレビバクター属の成長とCH4の生成を抑制することを見出した。実際、4nmol/mlの培養媒体が成長の50%抑制を果たし、濃度≧10nmol/mlの培養媒体が成長を完全に抑制した。メタンの形成も大幅に抑制された。同時に非メタン生成微生物の集団は影響を受けなかった。
補酵素M(CoM;HSCH2CH2So3 −)は、すべてのメタン生成微生物に見られる補因子であるが、他のバクテリアや古細菌には見られない(LiuとWhitman, 2008)。CoMは、メタン生合成の最終ステップに関与し、そこではCoMに担持されたメチル基が、メチル-CoM還元酵素によってメタンに還元される。このグループに関与するメタン生成微生物抑制剤には通常、2-ブロモエタンスルホン酸塩(BES)、2-クロロエタンスルホン酸塩(CES)、2-メルカプトエタンスルホン酸塩(MES)、およびルマジンが含まれる(Liu他、2011)。これらの抑制剤は、H2とCO2を用いるメタン生成微生物中のメタン形成の間の最終ステップで、メチル転移反応を競合的に抑制することができる。通常の状況下では、これらの化合物は比較的低濃度でメタン生成微生物の全てのグループを抑制することができる。CoMとBESの伝統的な構造類似体は広く使用されており、微生物学的研究ではメタン生成微生物特異的な抑制剤と考えられてきた。コンラッド(Conrad, 2000)他は、10mMのBESが、イネの根システムにおける嫌気性メタン生成微生物を抑制する最適濃度であると報告している。嫌気性消化容器の好熱性環境内では、少なくとも50mMのBESを使用することでメタン生成の完全な抑制を達成することができる。水素化メタン生成微生物の抑制のためにはアセトクラスティック(acetoclastic)メタン生成微生物よりも高いBES濃度が必要とされる(Zinder他、1984);しかしながら、同様なシステムではメタン生成プロセスを抑制するために僅か10mMのBESが要求されるだけである(Siriwongrungson他、2007)。他の研究では、土壌中の5−20mMの濃度(Wuest他、2009)がメタン生成を抑制するのに極めて有効であることを示している。MESとCESも共に同様の抑制効果を有しており、連続流メタン生成微生物固定フィルムのカラムにおけるメタン生成活性を減退させるために使用されていた(Bouwer and McCarty, 1983)。様々なレポートは、プテリン化合物ルマジン[2,4-(1H,3H)- プテリジンディオネ(pteridinedione)]が、0.6mMの濃度でいくつかのメタン生成古細菌の成長を完全に抑制し、M.サーモオートトロフィカム株のマールブルグに対して殺菌性であることを示している(Nagar-Anthal他、1996)。
したがって、上述したものは本発明の原理の単なる例示と考えられる。さらに、多くの修正および変更が当業者に容易に想起されるため、本発明が表示し記述された構成と動作通りに限定されることを望むものではなく、したがって、全ての適用可能な修正ならびに均等事項は本発明の範疇にあるものと考えられる。
「メタン抑制剤RYR」有効性のベンチテスト
目的
当該実験室研究の目的は、本願発明者らにより開発された組成物であるメタン抑制剤RYR(MIRYR)の有効性を評価することにある。当該製品は、メタン生成微生物の存在が確かめられ、それが活性である環境内でメタン生成を抑制するように設計された。
当該実験室研究の目的は、本願発明者らにより開発された組成物であるメタン抑制剤RYR(MIRYR)の有効性を評価することにある。当該製品は、メタン生成微生物の存在が確かめられ、それが活性である環境内でメタン生成を抑制するように設計された。
材料および方法
対照(Control)とテストの2つの嫌気性反応器が使用された。これら2つの反応器には、活性メタン生成微生物集団を含む期限切れ栄養補助食品を処理するバイオマスが捲かれた。反応器には1週間に1度飼料が与えられ、キャシディ(Cassidy, 2008a, 2008b)他に記載された嫌気性シーケンシングバッチ反応器として運転された。当該記載内容は、参考として本明細書に含まれる[Cassidy DP, Hirl PJ, Belia E.(2008a)、嫌気性シーケンシャルバッチ反応器内でのエタノール副産物からのメタン生成、Water Science & Technology、58(4):789-793; Cassidy DP, Hirl PJ, Belia E.(2008b)。嫌気性シーケンシャルバッチ反応器内での溶解物(DDGS)を有する蒸留器の乾燥穀物の溶解性画分からのメタン生成、Water Environment Reserch.80(6):570-575]。
対照(Control)とテストの2つの嫌気性反応器が使用された。これら2つの反応器には、活性メタン生成微生物集団を含む期限切れ栄養補助食品を処理するバイオマスが捲かれた。反応器には1週間に1度飼料が与えられ、キャシディ(Cassidy, 2008a, 2008b)他に記載された嫌気性シーケンシングバッチ反応器として運転された。当該記載内容は、参考として本明細書に含まれる[Cassidy DP, Hirl PJ, Belia E.(2008a)、嫌気性シーケンシャルバッチ反応器内でのエタノール副産物からのメタン生成、Water Science & Technology、58(4):789-793; Cassidy DP, Hirl PJ, Belia E.(2008b)。嫌気性シーケンシャルバッチ反応器内での溶解物(DDGS)を有する蒸留器の乾燥穀物の溶解性画分からのメタン生成、Water Environment Reserch.80(6):570-575]。
開始の第1週間は、反応器には土壌はなく、メタン生成微生物培養のみを含んでいた。
1週間の後にシルト砂が加えられ、その結果20重量%の固形分濃度を有するスラリーが得られた。このシルト砂がメタン生成微生物活性に影響しないことを確かめるため、反応器はシルト砂と共にさらに1週間運転された。
1週間の後にシルト砂が加えられ、その結果20重量%の固形分濃度を有するスラリーが得られた。このシルト砂がメタン生成微生物活性に影響しないことを確かめるため、反応器はシルト砂と共にさらに1週間運転された。
当該バイオ反応器は容量が2.5Lあり、2Lのスラリーを含んでいた。反応器は気密であり、嫌気反応のために特別に設計されていた。反応器は、実験室温度の22℃〜24℃に維持された。反応器は、週に一度栄養補助飼料を供与して運転された。供与後の目標とする初期化学酸化デマンド(「COD」)濃度は2000mg/Lであった。その週を通して、生成されるバイオガスの量が以下のように測定された。メタン含有量のためのガスサンプルを収集するために、反応器の上部の隔壁のあるポート内にシリンジが定期的に挿入された。バイオガス試料のメタン含有量は、その後火炎イオン化検出器(GC−FID)付きのガスクロマトグラフに注入することによって定量化された。該反応器は、pHと酸化還元電位(「ORP」)を測定するための専用プローブを有していた。各サイクルの後(すなわち、飼料供与の前)、総溶解固形分(「TDS」)を測定するためにプローブが反応器に挿入され、CODを測定するためにサンプルが採取された。サンプリングと飼料供与の間、反応器内容物への酸素の浸入を最小限に抑えるためミキサーのスイッチは切られた。
当該テスト反応器には、当初40g/L濃度のメタン抑制剤RYR(MIRYR)が投与された。一週間後、対照には20mg/LのMIRYRが投与された。
当該テスト反応器には、当初40g/L濃度のメタン抑制剤RYR(MIRYR)が投与された。一週間後、対照には20mg/LのMIRYRが投与された。
結果
研究の最初の2週間は開始期間であり、次の2週間はテスト期間であった。開始期間には、2つの反応器内にメタン生成微生物集団が確立された。開始期間の最初の週には、反応器はシルト砂なしで運転され、第2週にはシルト砂(20重量%)と共に運転された。テスト期間は、テスト反応器にMIRYR(40g/L)を投与して開始された。テスト期間の第1週目は、対照は適切な対照として維持され、すなわちMIRYRは添加されていない。投与量40mg/LのMIRYR /Lは、テスト反応器内でのメタン生成を減少させたため、試験期間の第2週目に20g/LのMIRYRを対照反応器に投与することが決定された。この試験期間は17日間続いた。
研究の最初の2週間は開始期間であり、次の2週間はテスト期間であった。開始期間には、2つの反応器内にメタン生成微生物集団が確立された。開始期間の最初の週には、反応器はシルト砂なしで運転され、第2週にはシルト砂(20重量%)と共に運転された。テスト期間は、テスト反応器にMIRYR(40g/L)を投与して開始された。テスト期間の第1週目は、対照は適切な対照として維持され、すなわちMIRYRは添加されていない。投与量40mg/LのMIRYR /Lは、テスト反応器内でのメタン生成を減少させたため、試験期間の第2週目に20g/LのMIRYRを対照反応器に投与することが決定された。この試験期間は17日間続いた。
表1は、研究の間に対照とテストの反応器内で測定されたバイオガスの生成量、pH値、及びCOD、ORP、TDSの濃度を示す。各飼料供与サイクル(すなわち、各週)に反応器内で生成されたバイオガスの量は、72−82mLの範囲であった。このガス量は、開始期間の第2週目にシルト砂を導入したことによっても影響を受けていないことが分かる。テスト期間の第1週目のテストへの40mg/LのMIRYRの追加と、テスト期間の第2週目の20mg/MIRYRの追加は、反応器内でのバイオガス量に目立った影響を与えていない。各シーケンシャルバッチ反応器サイクル後のCOD測定値は、56から108mg/Lの範囲であった。反応器には各サイクルごとに2000mg/Lの飼料が供与されており、したがって表1のCOD濃度は、CODが嫌気性培養によって消費されたことを示している。pHの値は6.1から6.4の範囲であった。ORPの値は全てが-300mV近傍であり、これはメタン生成微生物条件の典型的なものである。反応器中のTDSは、約1200〜1250mg/Lの範囲であった。
表2は、17日間の研究期間内に反応器中で生成されたバイオガス中に測定されたメタン含有量のリストである。図1は、表2に示されたメタン濃度のグラフを示す。開始期間中に、メタン濃度は約55%から70%の範囲となり、これは活発なメタン生成微生物の培養を意味する。テスト反応器内への40mg/LのMIRYRの投与は、11日の間にバイオガスのメタン濃度を62%から検出範囲(0.05%)以下まで減少させている。テスト反応炉内のこの検出範囲以下のメタン濃度は、反応器が外される17日まで維持された。7日目の対照反応器への20mg/LのMIRYRの投与は、17日の間(すなわち、10日後)でバイオガスのメタン濃度を65%から検出範囲(0.05%)以下まで減少させた。テスト期間中、テストと対照の反応器内で生成されたバイオガスの量は目立った変化はなく(表1)、バイオガスのメタン濃度だけが変化している。
本発明は、記載された実施の形態や実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載された精神と範疇に含まれる各種変更および同等な構成をも包含することが意図されていることは理解されよう。
Claims (15)
- メタン生成微生物によるメタン生成を抑制する方法であって、メタン生成微生物を、メタン生成の抑制に十分な有効量の、赤色酵母米、ビタミンB10誘導体、またはエタンスルホン酸塩、あるいは、前記赤色酵母米、ビタミンB10誘導体、またはエタンスルホン酸塩の任意の組み合わせ、を含む組成物に接触させることを含む方法。
- 前記メタン生成微生物が環境媒体内に存在している、請求項1に記載の方法。
- 前記環境媒体が、土壌または地下水である、請求項2に記載の方法。
- 前記土壌または地下水の還元脱塩素化をもたらす、請求項3に記載の方法。
- ビタミンB10誘導体を含む前記抑制組成物が、メタン生成経路内の4-(β-D-リボフラノシル)アミノベンゼン-5’-リン酸塩(β-RFA-P)シンターゼを阻止する、請求項1に記載の方法。
- 前記抑制組成物が、メタン生成経路内の3-ヒドロキシ-3-エチルグルタリル補酵素A(HMG-CoA)還元酵素を阻止する、請求項1に記載の方法。
- 前記抑制組成物が、メタン生成経路内の8-ヒドロキシ-5-デアザフラビン(補酵素F420)を阻止する、請求項1に記載の方法。
- 前記抑制組成物が、天然に存在するスタチンである、請求項1に記載の方法。
- 前記天然に存在するスタチンが、ロバスタチンである、請求項8に記載の方法。
- 前記ロバスタチンの起源が、赤色酵母米である、請求項9に記載の方法。
- 前記抑制組成物が、メタン生成経路内の2-スルタニルエタンスルホン酸塩(補酵素M)を阻止する、請求項1に記載の方法。
- 前記補酵素M抑制組成物が、2-ブロモエタンスルホン酸塩(BES)、2-クロロエタンスルホン酸塩(CES)、2-メルカプトエタンスルホン酸塩(MES)、ルマジンから選択されたエタンスルホン酸塩である、請求項11に記載の方法。
- 前記方法が、環境媒体へ発酵性基質を添加するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
- 前記発酵性基質が、植物性油、落花生油、コーン油、または魚油を含む油である、請求項13に記載の方法。
- 前記発酵性基質が、グルコースまたは発酵性グルコース生成化合物を含む炭水化物である、請求項13に記載の方法。
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/US2014/036632 WO2014153567A2 (en) | 2013-03-05 | 2014-05-02 | Inhibition of methane production during anaerobic reductive dechlorination |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2015561772A Pending JP2016516563A (ja) | 2014-05-02 | 2014-05-02 | 嫌気性還元脱塩素化中のメタン生成の抑制 |
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Country | Link |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021221235A1 (ko) * | 2020-04-29 | 2021-11-04 | 경상국립대학교산학협력단 | 에테폰을 포함하는 메탄가스 발생 저감용 비료 조성물 및 이의 용도 |
-
2014
- 2014-05-02 JP JP2015561772A patent/JP2016516563A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021221235A1 (ko) * | 2020-04-29 | 2021-11-04 | 경상국립대학교산학협력단 | 에테폰을 포함하는 메탄가스 발생 저감용 비료 조성물 및 이의 용도 |
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