埋込み可能な神経変調システムは、様々な疾患及び障害に治療効果を有することが明らかにされている。ペースメーカー及び「埋込み可能な心臓細動除去器(ICD)」は、いくつかの心臓疾患(例えば、不整脈)の治療に非常に有効であることが明らかにされている。「脊髄刺激(SCS)」システムは、慢性疼痛症候群の治療のための治療方式として長い間受入れられており、脊椎変調の用途は、狭心症及び失禁のような追加の用途に拡張され始めている。「脳深部刺激(DBS)」も、難治性パーキンソン病の治療に十有余年にわたって治療効果的に適用されており、脳深部刺激(DBS)は、最近では本態性振戦及び癲癇のような追加の分野においても適用されている。更に、最近の研究では、「末梢神経刺激(PNS)」システムが、慢性疼痛症候群及び失禁の治療に有効性を証明しており、いくつかの追加の用途が現在研究下にある。更に、脊髄損傷患者の麻痺した肢部にある程度の機能を回復させるために、NeuroControl(米国オハイオ州クリーブランド)によるFreehandシステムのような「機能性電気刺激(FES)」システムが適用されている。
これらの埋込み可能な神経変調システムの各々は、一般的に、望ましい刺激部位に埋込まれる1つ又は2つ以上の電極担持変調リードと、神経変調デバイスとを含み、神経変調デバイスは、刺激部位から離して埋込まれるが、変調リードに直接に結合されるか又は延長リードを介して変調リードに間接的に結合される。かくして、変調パラメータセットに従って一定体積の組織を活性化し、患者に望ましい有効な治療を与えるために、神経変調デバイスから電極に電気パルスを送出する。特に、少なくとも1つのカソード電極と少なくとも1つのアノード電極との間で搬送される電気エネルギは、十分に強い場合、閾値レベルを超えて神経細胞を消極(又は「刺激」)する電界を生成し、それによって神経繊維に沿って伝播する活動電位(AP)の発生を誘起する。典型的な変調パラメータセットは、いずれかの与えられた時点で変調電流を流出させる(アノード)又は回収する(カソード)電極、並びに振幅、持続時間、及び刺激パルスの速度を含むことができる。
神経変調システムは、選択された変調パラメータに従って電気刺激パルスを発生させるように神経変調デバイスに遠隔的に命令するための手持ち式患者プログラミング装置を更に含むことができる。遠隔制御器(RC)の形態にある手持ち式プログラミング装置それ自体は、例えば、一般的に、プログラミングソフトウエアパッケージがインストールされたラップトップのような汎用コンピュータを含む臨床医用プログラミング装置(CP)を用いて臨床医がプログラミングすることができる。
当然ながら、神経変調デバイスは、作動にエネルギを必要とする能動的デバイスであり、従って、神経変調システムは、多くの場合、電力が消耗した神経変調デバイスを入れ替えるための手術手順を回避することができるように、神経変調デバイスを再充電するための外部充電器を含むことができる。外部充電器と埋込まれた神経変調デバイスとの間でエネルギを無線で搬送するために、一般的に、充電器は、神経変調デバイスの内部又は上部に設けられた類似の充電コイルにエネルギを供給する交流(AC)充電コイルを含む。神経変調デバイス上に設けられた充電コイルによって受信されたエネルギは、次いで、神経変調デバイス内に含まれた電子構成要素に直接給電するために使用することができ、又は神経変調デバイス内の再充電可能バッテリ内に蓄えることができ、その後に、必要に応じて電子構成要素に給電するために、この蓄積されたエネルギを使用することができる。
一般的に、いずれかの与えられた神経変調用途に対する治療効果は、変調パラメータを調節することによって最適化することができる。多くの場合、これらの治療効果は、変調される組織の体積を刺激する神経繊維の直径に相関付けられる。例えば、脊髄刺激(SCS)では、大きい直径の知覚繊維の活性化(すなわち、増強)が、脊髄の後角内の神経細胞間相互作用によってより小さい直径の疼痛繊維の伝達を低下させる/遮断すると考えられている。大きい知覚繊維の活性化は、一般的に、患者によって知覚される疼痛信号を置換する代替感覚として特徴付けることができる錯感覚として公知の感覚を生成する。
通常、代替感覚又は人工感覚は、疼痛感覚と比較して我慢されるが、患者は、時としてこれらの感覚が不快であると報告することがあり、従って、一部の場合、これらの代替感覚又は人工感覚を神経変調器療法に対して有害な副作用と考えることができる。高周波パルス電気エネルギは、錯感覚を引き起こさずに慢性疼痛に対する神経変調療法を与えるのに有効である可能性があることが示されている。活動電位(AP)の発生と各電気パルスの間に1対1の対応性を与えるために低周波数から中間周波数までを使用する従来の神経変調療法とは対照的に、神経繊維内に自然発生する活動電位(AP)を遮断するか又は他に神経繊維内の活動電位(AP)を妨害するために、高周波変調(例えば、1KHz〜50KHz)を使用することができる。高周波変調療法は、初期の研究において良好な有効性を示したが、1つの有意な欠点は、低周波数から中間周波数までの変調とは対照的である高周波変調をもたらすための比較的高いエネルギ要件である。特に、電気波形を発生させるのに必要とされるエネルギ量は、電気波面の周波数に比例する。従って、比較的低い周波数の変調エネルギを発生させる神経変調デバイスは、一般的に1〜2週間毎に一度しか再充電を受けることを必要としないのに対して、比較的高い周波数の変調エネルギを発生させる神経変調デバイスは、毎日又はそれよりも多く頻繁な再充電を必要とする可能性がある。
以下に続く説明は、脊髄変調(SCM)システムに関する。しかしながら、本発明は、脊髄変調における用途に非常に適するが、その最も広義の態様において、そのように限定されないことを理解すべきである。むしろ、本発明は、組織を変調するのに使用される任意の種類の埋込み可能な電気回路と共に使用され得る。例えば、本発明は、ペースメーカー、細動除去器、蝸牛変調器デバイス、網膜変調器デバイス、協働する体肢運動を生成するように構成された変調器デバイス、皮質変調器デバイス、脳深部変調器デバイス、末梢神経変調器デバイス、マイクロ変調器デバイス、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛などを治療するように構成された任意その他の組織変調器デバイスの一部として使用されてもよい。
最初に図1に着目すると、例示の脊椎変調(SCM)システム10は、概略的には、1つ又は2つ以上の(この場合、は、2つの)埋込み可能な変調リード12(1)、12(2)と、完全埋込み可能な変調器(IPG)14と、外部遠隔制御器(RC)16と、臨床医用プログラマー(CP)18と、外部試行変調器(ETM)20と、外部充電器22とを含む。
埋込み可能な変調器(IPG)14は、1つ又は2つ以上の経皮延長リード24を介して、アレイをなして配置された複数の電極26を担持する変調リード12に物理的に接続される。図示の実施形態において、変調リード12は経皮リードであり、この目的のために、電極26は、変調リード12に沿って一列に配置される。別の実施形態において、電極26は、単一パドルリード上に2次元パターンで配置されてもよい。以下でより詳細に説明するように、埋込み可能な変調器(IPG)14は、電気パルス列の形態の電気変調エネルギを変調パラメータセットに従って電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。
外部試行変調器(ETM)20も、経皮延長リード28及び外部ケーブル30を介して変調リード12に物理的に接続されるのがよい。埋込み可能な変調器(IPG)14のパルス発生回路と類似したパルス発生回路を有する外部試行変調器(ETM)20も、電気パルス列の形態の電気変調エネルギを電極アレイ26に送出する。外部試行変調器(ETM)20と埋込み可能な変調器(IPG)14の間の主な相違点は、外部試行変調器(ETM)20が、変調リード12を埋込んだ後に且つ埋込み可能な変調器(IPG)14の埋込みの前に、供給すべき変調の応答性を試験するために試験的に使用される埋込み不能なデバイスである点である。従って、埋込み可能な変調器(IPG)14に関して本明細書で説明する任意の機能は、外部試行変調器(ETM)20に関しても同じく実施され得る。例示のETMの更なる詳細は、特許文献1(米国特許第6,895,280号明細書)に記載されている。
外部遠隔制御器(RC)16は、双方向RF通信リンク32を介する遠隔測定によって外部試行変調器(ETM)20を制御するのに使用されるのがよい。いったん埋込み可能な変調器(IPG)14及び変調リード12を埋込んだら、双方向RF通信リンク34を介する遠隔測定によって埋込み可能な変調器(IPG)14を制御するのに、外部遠隔制御器(RC)16を使用するのがよい。そのような制御により、埋込み可能な変調器(IPG)14を起動又は停止し、且つ、異なる変調パラメータセットを用いてプログラミングすることを可能にする。埋込み可能な変調器(IPG)14によって出力される電気変調エネルギの特性を能動的に制御するために、外部遠隔制御器(RC)16は、プログラミングされた変調パラメータを修正するように操作されてもよい。
臨床医用プログラマー(CP)18は、手術室及びその後の診療において、埋込み可能な変調器(IPG)14及び外部試行変調器(ETM)20をプログラミングするための詳細な変調パラメータを臨床医に提供する。臨床医用プログラマー(CP)18は、IR通信リンク36及び外部遠隔制御器(RC)16を介して、埋込み可能な変調器(IPG)14又は外部試行変調器(ETM)20と間接的に通信することによって上述の機能を実施することができる。これに代えて、臨床医用プログラマー(CP)18は、RF通信リンク(図示せず)を介して、埋込み可能な変調器(IPG)14又は外部試行変調器(ETM)20と直接に通信してもよい。
外部充電器22は、誘導リンク38を介して埋込み可能な変調器(IPG)14を経皮的に充電するのに使用される携帯デバイスである。簡潔化の目的で、外部充電器22の詳細に関しては、本明細書では記載しない。外部充電器の例示の実施形態の詳細は、特許文献1(米国特許第6,895,280号明細書)に開示されている。いったん埋込み可能な変調器(IPG)14がプログラミングされ、埋込み可能な変調器(IPG)14の電源が外部充電器22によって充電されるか又はその他の仕方で補充されると、埋込み可能な変調器(IPG)14は、外部遠隔制御器(RC)16又は臨床医用プログラマー(CP)18が存在しない状態で、プログラミングされた通りに機能することができる。
次いで、図2を参照して、変調リード12の外部特徴部と埋込み可能な変調器(IPG)14を以下に簡単に説明する。変調リードの一方12(1)は、(E1〜E8とラベル付けした)8つの電極26を有し、他方の変調リード12(2)は、(E9〜E16とラベル付けした)8つの電極26を有する。リード及び電極の実際の個数及び形状は、当然ながら意図する用途に従って異なる。埋込み可能な変調器(IPG)14は、電子機器及びその他の構成要素(下記でより詳細に説明する)を含むための外側ケース44を含む。外側ケース44は、チタン等の導電性生体適合材料からなり、体内電子機器を身体組織及び体液から保護する密封室を形成する。いくつかの場合、外側ケース44は、電極として機能してもよい。埋込み可能な変調器(IPG)14は、電極26を外側ケース44内の内部電子機器(下記でより詳細に説明する)に電気結合する方式で変調リード12の近位端部が嵌合するコネクタ46を更に含む。この嵌合を設けるために、コネクタ42は、変調リード12の近位端部を受入れるための1つ又は2つ以上のポート50を含む。延長リード24(図1に示す)が使用される場合、ポート50は、変調リード12の近位端部の代わりにかかる延長リード24の近位端部を受入れることができる。
更に、埋込み可能な変調器(IPG)14は、マイクロコントローラ54、バッテリ56、メモリ58等の電子構成要素、及び当業者に既知の他の適切な構成要素を含む。マイクロコントローラ54は、埋込み可能な変調器(IPG)14によって実施される神経変調を指示及び制御するために、メモリ58に格納された適切なプログラムを実行する。遠隔測定回路52(アンテナを含む)は、外部遠隔制御器(RC)16から適切な変調搬送波信号でプログラミングデータ(例えば、作動プログラム及び/又は神経変調パラメータ)を受信するように構成され、且つ、後でメモリ58に格納されるプログラミングデータを回復するために搬送信号を復調するように構成される。再充電可能なリチウムイオンバッテリ又はリチウムイオンポリマーバッテリであるのがよいバッテリ56は、埋込み可能な変調器(IPG)14に作動電力を供給する。
これに加えて、埋込み可能な変調器(IPG)14は、その中にプログラミングされた変調パラメータセットに従って電極アレイ26にパルス電気波形の形態の電気調整及び変調エネルギを供給するパルス発生回路57を含む。そのような変調パラメータは、アノード(正)、カソード(負)として活性化され且つ停止(ゼロ)される電極を定める電極組合せと、電極アレイ26の各電極に割り当てられる変調エネルギの百分率(分割電極形態)と、(埋込み可能な変調器(IPG)14が電極アレイ26に定電流又は定電圧のいずれを供給するかに依存してミリアンペア又はボルトで測定される)パルス振幅、(マイクロ秒で測定される)パルス幅、(パルス毎秒で測定される)パルス速度、及び(変調作動持続時間X及び変調停止持続時間Yとして測定)バースト速度を定める電気パルスパラメータを含む。
脊椎変調(SCM)システム10の作動中に供給されるパルスパターンに関し、電気エネルギを伝達するか又は受入れるように選択される電極を本明細書では「活性化」と記し、それに対して電気エネルギを伝達又は受入れるように選択されない電極を本明細書では「非活性化」と記す。電気エネルギの送出は、2つ(又は3つ以上)の電極の間で発生し、これらの電極のうちの1つが外側ケース44であってもよく、その場合、電流は、外側ケース44内に含まれるエネルギ源から組織への経路と、組織から外側ケース44内に含まれるエネルギ源へのシンク経路とを有する。電気エネルギは、単極方式又は多極(例えば、二極、三極等)方式で組織に伝達される。単極送出は、選択されるリード電極26のうちの1つが埋込み可能な変調器(IPG)14のケースと共に活性化され、それによって変調エネルギが、この選択される電極26とケースとの間で伝達される場合、発生する。二極変調は、リード電極26のうちの2つがアノード及びカソードとして活性化され、それによって変調エネルギが、選択されるこれらの電極26の間で伝達される場合、発生する。三極送出は、リード電極26のうちの3つが、2つのアノードと残りの1つのカソードとして、又は、2つのカソードと残りの1つのアノードとして活性化される場合、発生する。
電気エネルギは、電極の間で単相電気エネルギ又は多相電気エネルギとして送出される。単相電気エネルギは、全て正(アノード)又は全て負(カソード)のいずれかである一連のパルスを含む。多相電気エネルギは、正と負の間で交替する一連のパルスを含む。例えば、多相電気エネルギは、一連の2相パルスを含み、各2相パルスは、カソード(負の)変調パルスと、組織を通る直流電荷移動を防止し、それによって電極の劣化及び細胞の創傷を回避するために変調パルスの後に発生させるアノード(正の)電荷回収パルスを含む。すなわち、電荷は、電極組織インタフェース及び変調期間(変調パルスの長さ)中の電極における電流を介して搬送され、電極組織インタフェース及び充電期間(充電パルスの長さ)中の同じ電極における反対の極性を有する電流を介して戻される。再充電パルスは、能動的なものであってもよく、この場合、電流は、電極及び電流源又は電圧源を介して能動的に搬送され、又は、再充電パルスは受動的であってもよく、この場合、電流は、電極及び回路に存在する結合容量から流れる電荷の再配分を介して受動的に搬送される。
図3に示すように、変調リード12は、患者48の脊椎46に埋込まれる。変調リード12の好ましい配置は、刺激される脊髄区域に隣接する硬膜に隣接してのものであり、すなわち、硬膜の近く又はその上に静置されるものである。変調リード12が脊椎46を出る箇所の近くにおける空間の欠如に起因して、埋込み可能な変調器(IPG)14は、一般的に、腹部又は臀部の上方のいずれかに手術で生成されたポケット内に埋込まれる。埋込み可能な変調器(IPG)14は、当然ながら患者の身体の他の箇所に埋込まれてもよい。延長リード24は、電極リード12の出口箇所から離して埋込み可能な変調器(IPG)14を設置するのを容易にする。図3に示すように、臨床医用プログラマー(CP)18は、外部遠隔制御器(RC)16を介して埋込み可能な変調器(IPG)14と通信する。
次いで図4を参照して、外部遠隔制御器(RC)16の1つの例示の実施形態を以下に説明する。上記で解説したように、外部遠隔制御器(RC)16は、埋込み可能な変調器(IPG)14、臨床医用プログラマー(CP)18、又は外部試行変調器(ETM)20と通信することができる。外部遠隔制御器(RC)16は、内部構成要素(プリント回路基板(PCB)を含む)を含むケーシング100と、ケーシング100の外面によって担持された照明表示画面102及びボタンパッド104とを含む。図示の実施形態において、表示画面102は、照明平面パネル表示画面であり、ボタンパッド104は、フレックス回路の上に配置された金属ドームを有する薄膜スイッチと、プリント回路基板(PCB)に直接に接続されたキーパッドコネクタとを含む。選択的な実施形態において、表示画面102は、タッチスクリーン性能を有する。ボタンパッド104は、埋込み可能な変調器(IPG)14を「起動」及び「停止」することを可能にし、更に埋込み可能な変調器(IPG)14内の変調パラメータの調節又は設定、及び画面と画面の間の選択を可能にする複数のボタン106、108、110、112を含む。
図示の実施形態において、ボタン106は、埋込み可能な変調器(IPG)14を「起動」及び「停止」するように作動させることができる「起動/停止」ボタンとして機能する。ボタン108は、外部遠隔制御器(RC)16が、画面表示及び/又はパラメータの間で切り換わることを可能にする選択ボタンとして機能する。ボタン110及び112は、パルス振幅、パルス幅、及びパルス速度を含む埋込み可能な変調器(IPG)14によって発生させるパルスの変調パラメータのうちのいずれかを増大又は低減するように作動させることができる上/下ボタンとして機能する。例えば、選択ボタン108は、外部遠隔制御器(RC)16を、上/下ボタン110、112によってパルス振幅を調節することができる「パルス振幅調節モード」、上/下ボタン110、112によってパルス幅を調節することができる「パルス幅調節モード」、及び上/下ボタン110、112によってパルス速度を調節することができる「パルス速度調節モード」にするように作動させられる。これに代えて、刺激パラメータごとに専用の上/下ボタンを設けてもよい。刺激パラメータを増分又は減分するのに、上/下ボタンを使用する代わりに、ダイヤル、スライドバー、又はキーパッド等の任意その他の種類のアクチュエータを使用してもよい。
図5を参照して、ここで例示の外部遠隔制御器(RC)16の内部構成要素を以下に説明する。概略的には、外部遠隔制御器(RC)16は、プロセッサ114(例えば、マイクロコントローラ)と、プロセッサ114による実行のための作動プログラム並びに変調パラメータを格納するメモリ116と、変調パラメータを埋込み可能な変調器(IPG)14に出力し、埋込み可能な変調器(IPG)14からステータス情報を受信するための遠隔測定回路118と、ボタンパッド104から変調制御信号を受入れ、表示画面102(図4に示す)にステータス情報を伝達するための入力/出力回路120とを含む。プロセッサ114は、外部遠隔制御器(RC)16の他の機能を制御すること(本明細書では簡潔化の目的で記載しない。)に加えて、ボタンパッド104のユーザ操作に応答して振幅、相持続時間、周波数、及び波形形状を定める複数の変調パラメータセットを発生させる。次いで、これらの新しい変調パラメータセットは、遠隔測定回路118を介して埋込み可能な変調器(IPG)14に送信され、それにより、埋込み可能な変調器(IPG)14に格納された変調パラメータが調節され、及び/又は、埋込み可能な変調器(IPG)14がプログラミングされる。遠隔測定回路118は、臨床医用プログラマー(CP)18から変調パラメータを受信するために使用されてもよい。外部遠隔制御器(RC)16の機能及び内部構成要素の更なる詳細は、特許文献1(米国特許第6,895,280号明細書)に開示されている。
重要な点として、脊椎変調(SCM)システム10は、有効な治療を施しながら電気変調エネルギを発生させるために埋込み可能な変調器(IPG)14によって必要とされるエネルギ消費を最小にする方式で送出される電気変調エネルギを調節するように構成される。脊椎変調(SCM)システム10は、この最適化手順をユーザ指示に応答して実施してもよいし、最適化手順を自動的に開始してもよい。このようにして、電気変調エネルギをバッテリ寿命及び/又は再充電間隔に良好な影響を及ぼす変調パラメータを用いて送出することができる。
この目的のために、脊椎変調(SCM)システム10は、変調パラメータ値を、あるステップサイズだけ自動的に調節するのがよい。一実施形態では、変調パラメータは、例えば、2Hz〜100KHzであるパルス速度である。本発明は、埋込み可能な変調器(IPG)14による比較的大きいエネルギ消費を必要とし、従って、エネルギ消費の最小化によって最も利益を受ける比較的高い周波数のパルス速度(例えば、1KHz〜50KHzの範囲、より好ましくは、3KHz〜15KHzの範囲)に適している。使用することができる他の種類の変調パラメータは、パルス振幅、パルス幅、及びパルス負荷サイクルである。一般的に、パルス速度、パルス振幅、パルス幅、及びパルス負荷サイクルの値が大きい程、これらの変調パラメータ値に従って電気エネルギを発生させるのに必要とされるエネルギ消費は大きい。
別の種類の変調パラメータは電極組合せである。取りわけ、電気エネルギを送出するのに使用されるカソードとアノードの間の間隔は、電気エネルギを発生させるのに必要とされるエネルギ消費を左右する。例えば、カソードとアノードの間の間隔が比較的小さい場合、カソードとアノードの間に電流の実質的な短絡が存在する可能性があり、それによって埋込み可能な変調器(IPG)14内でより高いエネルギ消費が必要である。それとは対照的に、カソードとアノードの間の間隔が比較的大きい場合、カソードとアノードの間の間隔には電流の実質的な短絡が存在せず、それにより、埋込み可能な変調器(IPG)14内ではより低いエネルギ消費しか必要とされない。従って、カソードとアノードの間の間隔が大きい程、この変調パラメータ値に従って電気エネルギを発生させるのに必要とされるエネルギ消費は小さい。
変調パラメータ値を調節するステップサイズは、変調パラメータ値の性質、並びにエネルギ消費の最小化/処理時間の望ましい分解能の精度に依存する。例えば、刺激パラメータがパルス速度である場合、ステップサイズを1000Hzとすることができるが、エネルギ消費最小化の分解能においてより高い精度が望ましい場合、ステップサイズを例えば500Hzまで低減させるのがよく、より迅速な処理時間が望ましい場合、例えば、2000Hzまで増大させるのがよい。別の例として、刺激パラメータがパルス振幅である場合、ステップサイズを0.1mAとすることができる。刺激パラメータがパルス幅である場合、ステップサイズを10μsとすることができる。刺激パラメータがパルス負荷サイクルである場合、ステップサイズを10%とすることができる。刺激パラメータが電極組合せである場合、ステップサイズを変調リードの電極間隔、例えば、5mmとすることができる。
脊椎変調(SCM)システム10は、調節された変調パラメータ値に従って、電気エネルギを電極26に出力するように埋込み可能な変調器(IPG)14に命令することができる。変調パラメータ値を調節し、電気エネルギを適用する段階は、調節された変調パラメータ値に従って適用される電気エネルギが有効ではないと決定されるまで繰返される。この決定は、変調パラメータセットがある期間にわたって安定した状態に留まるか否かに基づいている。変調パラメータセットがかなりの期間にわたって安定した状態に留まる場合、調節された変調パラメータ値に従う治療は有効な状態に留まると仮定することができる。変調パラメータセットが長期間にわたって安定した状態に留まらない場合(すなわち、患者が変調パラメータセットを手動で調節する場合)には、調節された変調パラメータ値に従う治療は有効でないと仮定することができる。適用される電気エネルギが有効でない場合、患者は、外部遠隔制御器(RC)16上の制御ボタン110、112(図4に示す)によって刺激エネルギを手動で調節することになる。
患者が、予め決められた期間の範囲で刺激の変調パラメータ値のうちのいずれにも手動調節を加えなかった場合、調節された変調パラメータ値に従う刺激は、恐らくは依然として有効である。予め決められた期間は、システム内に事前にプログラミングされてもよいし、臨床医によって設定されてもよい。予め決められた期間は、分、時間、日等の程度とすることができる。例えば、予め決められた期間は、1分よりも短い期間、1時間よりも短い期間、1日よりも短い期間、1週間よりも短い期間等とすることができる。
ユーザが刺激パラメータのうちのいかなるものにも手動調節を加えることなく予め決められた期間が経過した後、調節された変調パラメータ値は、メモリ(例えば、埋込み可能な変調器(IPG)14のメモリ58又は外部遠隔制御器(RC)16のメモリ116)に格納され、又は、脊椎変調(SCM)システム10が復帰する「過去の調節された変調パラメータ値」と見なされる。脊椎変調(SCM)システム10は、電気エネルギを電極26に送出するときに埋込み可能な変調器(IPG)14のエネルギ消費を最小にする最適化された変調パラメータ値を決定するために、上述の段階を繰返す。
しかしながら、患者が変調パラメータのうちの1つに手動調節を実際に加えた場合、調節された変調パラメータ値に従って適用される電気エネルギは、恐らくは有効ではなく、最適化手順は停止される。この場合、脊椎変調(SCM)システム10は、有効な治療を与えるために前回使用された変調パラメータ値(例えば、「以前の調節済み変調パラメータ値」)が最適化された変調パラメータ値であると決定する。手動調節は、パルス速度、パルス振幅、パルス幅、パルス負荷サイクル、及び/又は電極組合せに対する調節を含む。患者によって手動で調節される変調パラメータ値は、脊椎変調(SCM)システム10によって自動的に調節される変調パラメータ値と同じであってもよいし、同じでなくてもよい。例えば、脊椎変調(SCM)システム10によって自動的に調節される変調パラメータ値がパルス速度である場合、患者がパルス速度又は任意その他の変調パラメータ値(例えば、パルス振幅、パルス幅、パルス負荷サイクル、及び/又は電極組合せ)のいずれを手動で調節しているかに関わらず最適化手順は終了される。
調節された変調パラメータ値を格納されるメモリ及び上述の機能を実施するコントローラ/プロセッサのいずれか又は両方は、埋込み可能な変調器(IPG)14内、外部遠隔制御器(RC)16内、又は臨床医用プログラマー(CP)18内のいずれかに含まれるのがよい。埋込み可能な変調器(IPG)14自体又は外部遠隔制御器(RC)16は、ユーザの介入なしにエネルギ消費最小化プロセスを周期的に開始することができる。
脊椎変調(SCM)システム10の構造及び機能を説明したので、図6を参照して、有効な治療を施しながら埋込み可能な変調器(IPG)14のエネルギ消費を最小にするようにシステム10を作動させるための技術を以下に説明する。この技術は、電気エネルギが変調パラメータ値に従って埋込み可能な変調器(IPG)14から電極26に送出される時に有効な治療が既に施されていると仮定する。
最初、変調パラメータ値を、ステップサイズだけ調節し、特に埋込み可能な変調器(IPG)14のエネルギ消費を低減するように調節する(段階200)。段階200で調節した変調パラメータ値を、「現在の調節済み変調パラメータ値」と呼ぶ。次いで、現在の調節済み変調パラメータ値に従う電気エネルギを埋込み可能な変調器(IPG)14から電極26に送出し、それにより、ターゲット組織部位を変調させる(段階202)。次いで、手動調節決定を行う(段階204)。すなわち、段階204は、予め決められた期間の範囲内に患者が変調パラメータのうちの1つに手動調節を加えたか否かを決定する段階を含む。
患者が手動調節を加えなかった場合、現在の調節済み変調パラメータ値は恐らく有効であり、現在の調節済み変調パラメータ値を保存又は格納する。すなわち、患者が手動調節を加えなかった場合、現在の調節済み変調パラメータ値を「以前の調節済み変調パラメータ値」と見なす。次いで、埋込み可能な変調器(IPG)14のエネルギ消費を更に最小にするために、段階200、202、及び204を繰返す。
患者が変調パラメータのうちのいずれかに手動調節を加えた場合、現在の調節済み変調パラメータ値は恐らくは有効ではなく、本方法を、段階208で終了する。本方法を終了すると、段階206からの以前の調節済みパラメータ値が、最適化された変調パラメータ値である。段階206が全く実施されない場合(すなわち、変調パラメータが最初に調節された時にユーザが手動調節を実施した場合)、最適化された変調パラメータ値が、初期の未調節の変調パラメータ値である。
上述の技術を各変調パラメータ値に対して繰返すのがよい。例えば、最適なパルス速度値を決定した後に、最適なパルス振幅、最適なパルス幅、最適なパルス負荷サイクル、及び/又は最適な電極組合せを決定するために、この技術を繰返すのがよい。
本発明の特定の実施形態を図示して説明したが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定するように意図していないことを理解すべきである。更に、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、様々な変形及び修正を加えることができることが明らかであろう。従って、本発明は、特許請求によって定められる本発明の精神及び範囲の中に含まれる可能性がある代替物、修正物、及び均等物を網羅するように意図している。