JP2016219247A - 真空ポンプおよび質量分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の吸気口を有する真空ポンプの排気性能の向上。【解決手段】真空ポンプ1は、第1ターボ分子ポンプステージよりも上流側に設けられた第1吸気口と、第1ターボ分子ポンプステージよりも下流側に設けられ、ホルベックポンプステージに連通する第2吸気口と、を備え、ホルベックポンプステージの第1ネジステータ60には、第2吸気口と一以上のネジ溝とを連通する貫通孔60aが、第1ネジステータ60の外周面から内周面に貫通するように形成され、貫通孔60aが貫通しているネジ溝601c〜601eと貫通孔60aが貫通していないネジ溝601a,601b,601f〜601hとの間に、隣接するネジ溝同士を連通する連通溝603が設けられている。【選択図】図4
Description
本発明は、真空ポンプおよび質量分析装置に関する。
ターボ分子ポンプ等の真空ポンプは、清浄な高真空環境を生成できるポンプとして種々の装置に用いられている。例えば、質量分析器においては、四重極ロッドや検出器における真空度は、イオン源における真空度よりも5倍から10倍程度高く設定される。そのため、そのような装置に対して一台の真空ポンプで対応できるように、複数の排気口を備える真空ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の真空ポンプでは、第1および第2のターボ分子ステージとホルベック(Holweck)ステージとを備え、第1ターボ分子ステージに流入可能な第1吸気口と、第1ターボ分子ステージと第2ターボ分子ステージとの間に流入可能な第2吸気口と、ホルベックステージに流入可能な第3吸気口とを備えている。ホルベックステージのステータ側には、前記第3吸気口と連通する貫通孔が形成されている。
ところで、ホルベックステージのステータには複数の螺旋溝が形成されており、それらは同一の形状を有している。しかしながら、特許文献1に記載の真空ポンプでは、前記貫通孔は複数の螺旋溝の内の一部の螺旋溝のみに貫通しているので、螺旋溝毎に気体の流量が異なることになる。その結果、ホルベックステージの吸気側圧力が高くなり、ポンプ全体の排気性能の悪化を招くことになる。
本発明の好ましい実施形態による真空ポンプは、第1ポンプステージと、前記第1ポンプステージよりもポンプ下流側に設けられ、ネジ溝とネジ山とが内周面周方向に交互に複数形成された円筒状ステータ、および、前記円筒状ステータの内周側に設けられた円筒状ロータを有する第2ポンプステージと、前記第1ポンプステージよりも上流側に設けられた第1吸気口と、前記第1ポンプステージよりも下流側に設けられ、前記第2ポンプステージに連通する第2吸気口と、を備える真空ポンプであって、前記円筒状ステータには、前記第2吸気口と一以上の前記ネジ溝とを連通する貫通孔が、前記円筒状ステータの外周面から内周面に貫通するように形成され、前記貫通孔が貫通している第1のネジ溝と前記貫通孔が貫通していない第2のネジ溝との間に、隣接するネジ溝同士を連通する連通路が設けられている。
さらに好ましい実施形態では、前記連通路は、前記貫通孔から流入した気体が、前記貫通孔の周方向中央位置に対して周方向に対称配置された複数の前記第2のネジ溝に導かれるように、設けられている。
さらに好ましい実施形態では、前記円筒状ステータの全ての前記ネジ溝に対して、隣接するネジ溝同士を連通する前記連通路を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記隣接するネジ溝同士を連通する連通路は、前記円筒状ステータの軸方向同一位置に形成されている。
さらに好ましい実施形態では、前記連通路は、前記円筒状ステータの軸方向において、前記貫通孔のポンプ上流側端面と前記ネジ溝のポンプ上流側端面との間の領域を除く他の領域に設けられている。
さらに好ましい実施形態では、前記円筒状ステータは、軸方向に分割された上流側ステータと下流側ステータとで構成され、前記貫通孔は前記上流側ステータに形成され、前記連通溝は、前記上流側ステータのポンプ下流側端部、または、前記下流側ステータのポンプ上流側端部に形成されている。
本発明の好ましい実施形態による質量分析装置は、上記の真空ポンプと、第1の分析ユニットと、前記第1の分析ユニットよりも高い圧力領域で動作する第2の分析ユニットと、前記第1の分析ユニットが収納され、前記真空ポンプの第1吸気口が接続される第1排気口を有する第1チャンバと、前記第2の分析ユニットが収納され、前記真空ポンプの第2吸気口が接続される第2排気口を有する第2チャンバと、を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記連通路は、前記貫通孔から流入した気体が、前記貫通孔の周方向中央位置に対して周方向に対称配置された複数の前記第2のネジ溝に導かれるように、設けられている。
さらに好ましい実施形態では、前記円筒状ステータの全ての前記ネジ溝に対して、隣接するネジ溝同士を連通する前記連通路を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記隣接するネジ溝同士を連通する連通路は、前記円筒状ステータの軸方向同一位置に形成されている。
さらに好ましい実施形態では、前記連通路は、前記円筒状ステータの軸方向において、前記貫通孔のポンプ上流側端面と前記ネジ溝のポンプ上流側端面との間の領域を除く他の領域に設けられている。
さらに好ましい実施形態では、前記円筒状ステータは、軸方向に分割された上流側ステータと下流側ステータとで構成され、前記貫通孔は前記上流側ステータに形成され、前記連通溝は、前記上流側ステータのポンプ下流側端部、または、前記下流側ステータのポンプ上流側端部に形成されている。
本発明の好ましい実施形態による質量分析装置は、上記の真空ポンプと、第1の分析ユニットと、前記第1の分析ユニットよりも高い圧力領域で動作する第2の分析ユニットと、前記第1の分析ユニットが収納され、前記真空ポンプの第1吸気口が接続される第1排気口を有する第1チャンバと、前記第2の分析ユニットが収納され、前記真空ポンプの第2吸気口が接続される第2排気口を有する第2チャンバと、を備える。
本発明によれば、複数の吸気口を有する真空ポンプの排気性能の向上を図ることができる。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明に係る真空ポンプの一実施の形態を示す外観斜視図である。真空ポンプ1は、第1ハウジング70と第2ハウジング80とを備えている。第1ハウジング70には、第1吸気口71、第2吸気口72および第3吸気口73が形成されたフランジ部75が設けられている。各吸気口71,72,73には、それぞれシールリングが装着されるシールリング溝71a,72a,73aが形成されている。第2ハウジング80には後述するようにモータが設けられ、第2ハウジング80の表面(真空ポンプ1の底面)には放熱フィン86が形成されている。
図2は、真空ポンプ1を軸方向に沿って断面した断面図である。また、図3は、図2のA1−A1断面図である。第1ハウジング70の内部には、第1タービンロータ20,第2タービンロータ30およびモータロータ90が固定されたシャフト10が設けられている。シャフト10は、永久磁石43,44を用いた磁気軸受とボールベアリング84とによって支持されている。モータロータ90の外周側に設けられたモータステータ91は、第2ハウジング80に保持されている。ボールベアリング84は、第2ハウジング80に固定されるベアリングホルダ83に保持されている。
永久磁石44は、シャフト10の図示右端部に形成された凹部内に固定されている。永久磁石44の内側に配置された永久磁石43は、磁石ホルダ40に保持されている。磁石ホルダ40はホルダ支持部41に固定され、そのホルダ支持部41は第1ハウジング70に固定されている。磁石ホルダ40には、ボールベアリング42が設けられている。ボールベアリング42は、永久磁石44と永久磁石43とが接触しないようにシャフト10の振れ回りを規制する規制部材として機能する。
第1タービンロータ20には、複数のタービン翼を備えた第1タービン翼段21が軸方向に複数段形成されている。複数の第1タービン翼段21に対して、複数のタービン翼を備えた第1固定翼段22が軸方向に交互に配置されている。これらの第1タービン翼段21と第1固定翼段22とにより、第1ターボ分子ポンプステージTP1が構成される。
第2タービンロータ30には、複数のタービン翼を備えた第2タービン翼段31が軸方向に複数段形成されている。複数の第2タービン翼段31に対して、複数のタービン翼を備えた第2固定翼段32が軸方向に交互に配置されている。これらの第2タービン翼段31と第2固定翼段32とにより、第2ターボ分子ポンプステージTP2が構成される。第1固定翼段22および第2固定翼段32の軸方向(図示左右方向)の位置決めは、スペーサ23,33,50によって行われる。
第2タービンロータ30の第2タービン翼段31よりもポンプ下流側(図示左側)には、円板部34が形成されている。円板部34には、第1円筒ロータ62と第2円筒ロータ63が固定されている。第2円筒ロータ63は、第1円筒ロータ62の内周側に配置される。第1円筒ロータ62の外周側には第1ネジステータ60が設けられ、第1円筒ロータ62と第2円筒ロータ63との間には第2ネジステータ61が設けられている。第1ネジステータ60には、第1ハウジング70の第3吸気口73と対向する位置に、貫通孔60aが形成されている。
図3に示すように、第1ネジステータ60の内周面、第2ネジステータ61の外周面と内周面、および、第2円筒ロータ63の内周面が対向する第2ハウジング80の対向面には、ネジ溝およびネジ山がそれぞれ形成されている。第1および第2円筒ロータ62,63と第1および第2ネジステータ60,61と、第2ハウジング80の対向面に形成されたネジ溝およびネジ山とにより、ホルベック(Holweck)ポンプステージHPが構成される。
図2の第1吸気口71から流入した気体は、第1ターボ分子ポンプステージTP1によって第1ターボ分子ポンプステージTP1の下流側に排気される。また、第2吸気口72から流入した気体、および、第1ターボ分子ポンプステージTP1により排気された気体は、第2ターボ分子ポンプステージTP2によって第2ターボ分子ポンプステージTP2の下流側に排気される。第2ターボ分子ポンプステージTP2により排気された気体、および、第3吸気口73から流入した気体は、ホルベックポンプステージHPによって排気される。ホルベックポンプステージHPにより排気された気体は、第2ハウジング80に形成された排気通路81,82を通過して、排気ポート85から排出される。吸気口71,72,73の圧力Pは、P(71)<P(72)<P(73)のように下流側ほど高くなる。
図4は、第1ネジステータ60の内周面側の構造を示す展開図である。また、図5(a)は、図4のA2−A2断面図を示したものである。図4の図示上側が吸気側(ポンプ上流側)で、図示下側が排気側(ポンプ下流側)である。第1ネジステータ60の内周面側には、ネジ溝とネジ山とが、周方向に交互に複数形成されている。図4に示す例では、8つのネジ溝601a〜601hと8つのネジ山602a〜602hとが交互に形成されている。貫通孔60aは、3つのネジ溝601c,601d,601eに亘って形成されている。貫通孔60aよりもポンプ下流側には、ステータ内周面を一周する連通溝603が形成されている。なお、図4に示す例では、貫通孔60aはネジ山602d,602eを貫通していないが、貫通するような構成としても良い。
第1ネジステータ60の内周側に設けられた第1円筒ロータ62が矢印方向に回転することにより、ネジ溝601a〜601hに流入した気体は、ポンプ下流側(排気側)に排気される。ところで、貫通孔60aが形成されていないネジステータの場合には、吸気側から流入した気体は、各ネジ溝601a〜601hのそれぞれに対してほぼ均一に流入することになる。そのため、吸気側の圧力状態は、ネジ溝601a〜601hのいずれにおいてもほぼ同一となる。
一方、第1ネジステータ60のように貫通孔60aが形成され、第3吸気口73からの気体が貫通孔60aからも流入する構成の場合、ネジ溝601c〜601eの流量R1は、他のネジ溝601a,601b,601f〜601hの流量R2よりも大きくなる。一般的に第3吸気口73の圧力P(73)は第2吸気口72の圧力P(72)の10倍以上である。そのため、ホルベックポンプステージHPの吸気側圧力はネジ溝601c〜601eの吸気側圧力によって支配され、貫通孔60aが形成されていない場合に比べて、ホルベックポンプステージHPの吸気側圧力が高くなる。
そこで、本実施の形態では、連通溝603を形成することで、貫通孔60aが形成されたネジ溝601c〜601eとその他のネジ溝601a,601b,601f〜601hとを連通するようにした。連通溝603を介してネジ溝601c〜601eの気体がネジ溝601a,601b,601f〜601hに流入し、各ネジ溝601a〜601hの流量の均一化が図れる。このように、貫通孔60aから流入した気体はより多くのネジ溝を流れることで流量の均一化が図れ、ホルベックポンプステージHPの排気効率の向上を図ることができる。その結果、第3吸気口73の圧力P(73)の低圧力化、すなわち真空度の向上を図ることができる。
なお、連通溝603を形成する場合の軸方向位置は、図5(a)に示す範囲B、すなわち、貫通孔60aのポンプ上流側端部からネジ溝601dのポンプ下流側端部の間に設定される。貫通孔60aから流入した気体を他のネジ溝601a,601b,601f〜601hで効果的に排気するためには、範囲Bのより上流側に設けるのが好ましい。貫通孔60aからネジ溝601dに流入した気体は、ホルベックポンプステージHPの排気作用によって大部分がポンプ下流側へと流れることになる。そのため、連通溝603を貫通孔60aの上端部とネジ溝601dの上端部との間に形成した場合には、連通溝603を介した気体の流れによる流量均一化を効果的に行うことが難しい。
なお、図5(a)に示す例では、連通溝603の深さをネジ溝601dの深さ(すなわり、ネジ山602eの高さ)よりも深く設定している。しかしながら、流量均一化に支障が無ければ、図5(b)のように、連通溝603の深さを、ネジ溝601dの深さよりも浅く設定しても良い。
図4では、ステータ内周を一周する連通溝603を形成して、ネジ溝同士を連通するようにしたが、図6に示すような連通路を形成するようにしても良い。図6(a)に示す例では、連通路604c〜604fをネジ山602c〜602fに形成した。連通路604c〜604fの溝深さは、ネジ溝601a〜601hの溝深さと同一に設定されている。これにより、貫通孔60aから流入した気体は、ネジ溝601cに隣接するネジ溝601b、および、ネジ溝601eに隣接するネジ溝601fに流入することができる。その結果、ネジ溝601b〜601fの間で流量の均一化が図れ、連通路604c〜604fを設けない場合よりもホルベックポンプステージHPの吸気側圧力の低圧化が図れる。
図6(b)に示す例では、図6(a)の連通路604c,604fに加えて、さらに、ネジ山602b,602gに連通路604b,604gを設けた。その結果、貫通孔60aから流入した気体は、連通路604b〜604gを介して、ネジ溝601hを除くネジ溝601a,601b,601f,601gに流入することができる。そのため、図6(a)の場合に比べて、より多くのネジ溝間で流入量の均一化を図ることができる。さらに、全ての隣接するネジ溝同士を連通路で連通するようにしても良い。なお、図6では、連通路604b〜604gは、ステータ軸方向に関して同一位置に形成されているが、同一位置でなくても構わない。同一位置とすることで、連通路604b〜604gの溝形成作業が簡単化される。
いずれの場合も、貫通孔60aが連通していないネジ溝601a,601b,601f〜601hの内、貫通孔60aの周方向中央Mに対して左右対称に配置されたネジ溝に、貫通孔60aからの気体が導かれるように連通路が形成されている。連通路をこのように形成することで、貫通孔60aからの気体を、貫通孔60aに対して左右対称に流通させることができる。
例えば、図6(a)において、仮に、貫通孔60aの周方向一方に配置された設けられたネジ溝601f、601gに気体を流入させるように連通路を形成する場合、ネジ溝601gはネジ溝601bよりも貫通孔60aから遠ざかっている。そのため、図6(a)の場合よりも流量均一化に関して劣っている。すなわち、貫通孔60aから流入した気体を左右対称に配置された複数のネジ溝に導く方が、流量均一化にとって好ましい。
このように、貫通孔60aから左右方向に遠ざかるほど、連通路を介した気体の流入量は減少する。そのため、減少傾向が比較的大きい場合には、最も遠いネジ溝601h(貫通孔60aの周方向中央Mに対向するネジ溝)への連通路が無い図6(b)のような構成であっても、一周に亘る連通溝603の場合とほぼ同一の効果を得ることができる。
なお、図6に示した二つの例では、貫通孔60aが形成されたネジ溝同士の間にも連通路604d,604eを設けたが、設けなくても構わない。その場合、ネジ溝601dについては、気体が他のネジ溝に移動する連通路が無いので、連通路604d,604eを設けた場合に比べて流量均一化が劣ることになる。
[変形例]
図7,8は、上述した実施の形態の変形例を示す図である。変形例では、上述した実施の形態の第1ネジステータ60を、図7に示すように貫通孔60aが形成された上流側ネジステータ60Bと、下流側ネジステータ60Cとに分割した。図8(a)は、図7のA3−A3断面図であり、上流側ネジステータ60Bと下流側ネジステータ60Cとを係合して一体とした状態を示す。図8(a)に示す第1ネジステータ60は、図5(a)に示す第1ネジステータ60を分割構造とした場合である。また、図8(b)は、図5(b)に示す第1ネジステータ60を分割構造とした場合を示す。上流側ネジステータ60Bの係合部605aと下流側ネジステータ60Cの係合部605bとを係合させることによって、一体の第1ネジステータ60となる。
図7,8は、上述した実施の形態の変形例を示す図である。変形例では、上述した実施の形態の第1ネジステータ60を、図7に示すように貫通孔60aが形成された上流側ネジステータ60Bと、下流側ネジステータ60Cとに分割した。図8(a)は、図7のA3−A3断面図であり、上流側ネジステータ60Bと下流側ネジステータ60Cとを係合して一体とした状態を示す。図8(a)に示す第1ネジステータ60は、図5(a)に示す第1ネジステータ60を分割構造とした場合である。また、図8(b)は、図5(b)に示す第1ネジステータ60を分割構造とした場合を示す。上流側ネジステータ60Bの係合部605aと下流側ネジステータ60Cの係合部605bとを係合させることによって、一体の第1ネジステータ60となる。
なお、図7,8に示す例では、連通溝603を上流側ネジステータ60Bに形成したが、下流側ネジステータ60Cに形成しても構わない。このように、変形例では、分割された上流側ネジステータ60Bまたは下流側ネジステータ60Cの端部に連通溝603を形成しているので、連通溝603の形成作業が容易となる。なお、位置決めピン等の位置決め部を係合部に設けることにより、上下のネジ溝同士の位置決めが容易となる。
図9は、3つの吸気口71〜73を備える真空ポンプ1が搭載される質量分析装置100の一例を示す図である。図9は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いた液体クロマトグラフ質量分析装置の概略構成を示す模式図である。質量分析装置100は、イオン化室150と質量分析部110とを備えている。質量分析部110には、イオン化室150に隣接する第1中間室113と、第1中間室に隣接する第2中間室114と、第2中間室114に隣接する分析室115とがそれぞれ隔壁を介して設けられている。
真空ポンプ1の第1吸気口71は、分析室115の排気口131に接続される。真空ポンプ1の第2吸気口72は、第2中間室114の排気口132に接続される。真空ポンプ1の第3吸気口73は、第1中間室113の排気口133に接続される。このように、圧力領域の異なる3つの空間(第1中間室113、第2中間室114および分析室115)を一つの真空ポンプ1で排気する。
イオン化室150にはイオン化用スプレー151が設けられている。液体クロマトグラフ部LCで成分分離された液体試料は、配管152によりイオン化用スプレー151に供給される。図示していないがイオン化用スプレー151にはネブライズガスが供給され、液体試料はイオン化用スプレー151により噴霧される。イオン化用スプレー151の先端には高電圧が印加されており、噴霧の際にイオン化される。第1中間室113とイオン化室150との間にはヒータブロック112が設けられており、ヒータブロック112にはイオン化室150と中間室113とを連通する脱溶媒管120が設けられている。脱溶媒管120は、イオン化室150で生成されたイオンや試料の液滴が通過する際に、脱溶媒化およびイオン化を促進する機能を有している。
第1中間室113には、第1イオンレンズ121が設けられている。第2中間室114には、オクタポール123とフォーカスレンズ124とが設けられている。第2中間室114と分析室115との間の隔壁には、細孔を有する入口レンズ125が設けられている。分析室115には、第1四重極ロッド126と、第2四重極ロッド127と、検出器128とが設けられている。
イオン化室150で生成されたイオンは、脱溶媒管120、第1中間室113の第1イオンレンズ121、スキマー122、第2中間室114のオクタポール123及びフォーカスレンズ124、入口レンズ125を順に経て分析室115に送られ、四重極ロッド126、127により不要イオンが排出され、検出器128に到達した特定イオンのみが検出されることになる。
(1)以上説明したように、本実施の形態の真空ポンプ1は、図2に示すように、複数の吸気口(第1吸気口71,第2吸気口72および第3吸気口73)を備え、円筒状の第1ネジステータ60には、第2吸気口72と3つのネジ溝601c,601d,601eと連通する貫通孔60aが、第1ネジステータ60の外周面から内周面に貫通するように形成され、少なくとも貫通孔60aが貫通しているネジ溝と貫通孔60aが連通していないネジ溝との間に、例えば、図6(a)に示すように、貫通孔60aが貫通しているネジ溝601c,601eと貫通孔60aが貫通していないネジ溝601b,601fとの間に、隣接するネジ溝同士を連通する連通路604c、604fが設けられている。
このような連通路604c、604fを設けたことにより、貫通孔60aから流入した気体は、ネジ溝601cに隣接するネジ溝601b、および、ネジ溝601eに隣接するネジ溝601fに流入することができる。その結果、ネジ溝601b〜601fの間で流量の均一化が図れ、連通路604c〜604fを設けない場合よりもホルベックポンプステージHPの吸気側圧力の低圧化が図れる。
(2)さらに、図6(b)に示すように、連通路604b,604c,604f,604gは、貫通孔60aの周方向中央Mに対して周方向に対称配置された複数のネジ溝601a,601b,601f,601gに貫通孔60aから流入した気体が導かれるように、設けられている。連通路をこのように形成することで、貫通孔60aからの気体を貫通孔60aに対して左右対称に流通させることができ、より流量均一化を図ることができる。
(3)また、円筒状の第1ネジステータ60の全てのネジ溝に対して、隣接するネジ溝同士を連通する連通路を備えるようにしても良い。それにより、全てのネジ溝に貫通孔60aから流入した気体が導かれ、全てのネジ溝に関して流量の均一化を図ることができる。
(4)さらに、図6に示す連通路604b〜604gや図4に示す連通溝603のように、円筒状の第1ネジステータ60の軸方向同一位置に形成するのが望ましい。連通路の配置をこのようにすることにより、溝形成作業が容易となる。また、気体の排気性能は気体が流通するネジ溝の長さに依存するので、連通路を軸方向同一位置に形成することで、連通路からネジ溝の排気側端部までの距離が同一となり、流量均一化にとって好ましい。
(5)また、図5(a)に示すように、連通溝603のような連通路は、第1ネジステータ60の軸方向において、貫通孔60aのポンプ上流側端面とネジ溝601dのポンプ上流側端面との間の領域を除く他の領域(範囲B)に設けるのが好ましい。貫通孔60aからネジ溝601dに流入した気体の大部分はポンプ下流側へと流れるので、連通溝603を貫通孔60aの上端部とネジ溝601dの上端部との間に形成した場合、流量均一化を効果的に行うことが難しい。
(6)さらにまた、図7,8に示すように、第1ネジステータ60を軸方向に分割された上流側ネジステータ60Bと下流側ネジステータ60Cとで構成し、貫通孔60aを上流側ネジステータ60Bに形成し、連通路である連通溝603を、上流側ネジステータ60Bのポンプ下流側端部、または、下流側ネジステータ60Cのポンプ上流側端部に形成するようにしても良い。連通路は上流側ネジステータ60Bまたは下流側ネジステータ60Cの端部に形成されるので、連通路の形成作業が容易となる。
(7)本実施の形態の質量分析装置では、例えば、図9に示すように、第1の分析ユニットであるオクタポール123およびフォーカスレンズ124が収納される第2中間室114の排気口132に、真空ポンプ1の第2吸気口72が接続され、第1の分析ユニットよりも高い圧力領域で動作する第1イオンレンズ121が収納される第1中間室113の排気口133に、真空ポンプ1の第3吸気口が接続される。そのため、複数のチャンバを1台の真空ポンプ1で排気することができ、質量分析装置100のコストダウンを図ることができる。
なお、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えば、実施形態では3つの吸気口を有する真空ポンプを例に説明したが、本発明は、第2ターボ分子ポンプステージTP2および第2吸気口72が無く、第1吸気口71と第3吸気口73のみを備える真空ポンプにも適用することができる。
1…真空ポンプ、10…シャフト、20…第1タービンロータ、21…第1タービン翼段、22…第1固定翼段、60a…貫通孔、30…第2タービンロータ、31…第2タービン翼段、32…第2固定翼段、60…第1ネジステータ、60B…上流側ネジステータ、60C…下流側ネジステータ、61…第2ネジステータ、62…第1円筒ロータ、63…第2円筒ロータ、70…第1ハウジング、71…第1吸気口、72…第2吸気口、73…第3吸気口、75…フランジ部、80…第2ハウジング、81,82…排気通路、601a〜601h…ネジ溝、602a〜602h…ネジ山、603…連通溝、604b〜604g…連通路、100…質量分析装置、110…質量分析部、113…第1中間室、114…第2中間室、115…分析室、121…第1イオンレンズ、123…オクタポール、124…フォーカスレンズ、131,132,133…排気口、150…イオン化室、HP…ホルベック(Holweck)ポンプステージ、TP1…第1ターボ分子ポンプステージ、TP2…第2ターボ分子ポンプステージ
Claims (7)
- 第1ポンプステージと、
前記第1ポンプステージよりもポンプ下流側に設けられ、ネジ溝とネジ山とが内周面周方向に交互に複数形成された円筒状ステータ、および、前記円筒状ステータの内周側に設けられた円筒状ロータを有する第2ポンプステージと、
前記第1ポンプステージよりも上流側に設けられた第1吸気口と、
前記第1ポンプステージよりも下流側に設けられ、前記第2ポンプステージに連通する第2吸気口と、を備える真空ポンプであって、
前記円筒状ステータには、前記第2吸気口と一以上の前記ネジ溝とを連通する貫通孔が、前記円筒状ステータの外周面から内周面に貫通するように形成され、
前記貫通孔が貫通している第1のネジ溝と前記貫通孔が貫通していない第2のネジ溝との間に、隣接するネジ溝同士を連通する連通路が設けられている、真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記連通路は、前記貫通孔から流入した気体が、前記貫通孔の周方向中央位置に対して周方向に対称配置された複数の前記第2のネジ溝に導かれるように、設けられている、真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記円筒状ステータの全ての前記ネジ溝に対して、隣接するネジ溝同士を連通する前記連通路が設けられている、真空ポンプ。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記隣接するネジ溝同士を連通する連通路は、前記円筒状ステータの軸方向同一位置に形成されている、真空ポンプ。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記連通路は、前記円筒状ステータの軸方向において、前記貫通孔のポンプ上流側端面と前記ネジ溝のポンプ上流側端面との間の領域を除く他の領域に設けられている、真空ポンプ。 - 請求項4に記載の真空ポンプにおいて、
前記円筒状ステータは、軸方向に分割された上流側ステータと下流側ステータとで構成され、
前記貫通孔は前記上流側ステータに形成され、
前記連通路は、前記上流側ステータのポンプ下流側端部、または、前記下流側ステータのポンプ上流側端部に形成されている、真空ポンプ。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の真空ポンプと、
第1の分析ユニットと、
前記第1の分析ユニットよりも高い圧力領域で動作する第2の分析ユニットと、
前記第1の分析ユニットが収納され、前記真空ポンプの第1吸気口が接続される第1排気口を有する第1チャンバと、
前記第2の分析ユニットが収納され、前記真空ポンプの第2吸気口が接続される第2排気口を有する第2チャンバと、を備える質量分析装置。
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JP2015102902A JP2016219247A (ja) | 2015-05-20 | 2015-05-20 | 真空ポンプおよび質量分析装置 |
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Family Applications (1)
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JP2015102902A Pending JP2016219247A (ja) | 2015-05-20 | 2015-05-20 | 真空ポンプおよび質量分析装置 |
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JP (1) | JP2016219247A (ja) |
-
2015
- 2015-05-20 JP JP2015102902A patent/JP2016219247A/ja active Pending
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