JP2016214135A - 油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法 - Google Patents

油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】油脂の口腔内感覚に関する分子を同定し、油脂の口腔内感覚を増強する物質を探索するスクリーニング系を提供すること。
【解決手段】GPR120タンパク質を発現する細胞、好ましくはGPR120タンパク質およびGα
qタンパク質を発現する細胞に油脂の口腔内感覚を増強する物質の候補物質を添加する工程、GPR120タンパク質の活性を測定する工程、およびGPR120タンパク質を活性化する化合物を選択する工程を含む、油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法および該物質を含有する食品に関する。油脂の口腔内感覚を増強する物質は、食品分野等で有用である。
油脂は食品に含まれる栄養素の一つであり、特有な好ましい口腔内感覚を引き起こすが、カロリーの過剰摂取により高脂血症、肥満症などの疾病を引き起こすという問題があることから、カロリーの過剰摂取無しに油脂の口腔内感覚を増強させる必要があった。
しかしながら、これまでに油脂の口腔内感覚を増強させるという課題自体がほとんど認識されておらず、ましてや、油脂の口腔内感覚に関与する分子の同定については全く報告がないのが現状である。
特許文献1には、Gタンパク共役型受容体(GPCR)である、GPR40またはGPR120を用いた脂肪様の味を示す物質のスクリーニング方法が開示されている。しかし、この文献では実際にGPR40またはGPR120を用いてそのような物質をスクリーニングできたことは開示がな
く、根拠となるのはGPR40がマウスの有郭乳頭の味細胞で発現していること、およびGPR40のノックアウトマウスで脂肪酸の摂取量が減ったという知見のみであり、ヒトでの官能評価等での裏付けは全くなされていない。GPR120についてはマウスの有郭乳頭の味細胞で発現していることだけしか示されておらず、段落0025では、GPR120の発現組織が多岐に渡るので脂肪酸によって引き起こされる他の味覚調節への関与が示唆されている。そもそも、特許文献1で脂肪(fat)は脂肪酸を意味し、油脂ではない。
その他にもGPR120のアゴニストの糖尿病や肥満などの代謝疾患治療薬への応用が報告されているが(特許文献2〜4および非特許文献1)、ヒトにおける油脂の口腔内感覚へのGPR120の関与については全く示唆がない。
国際公開2007/014824号パンフレット 国際公開2010/008831号パンフレット 国際公開2010/080537号パンフレット 国際公開2010/104195号パンフレット
Mol Pharmacol 84:710-725, November 2013
本発明の課題は、油脂の口腔内感覚に関与る分子を同定し、油脂の口腔内感覚を増強させる物質をスクリーニングするための系を提供することにある。本発明の他の課題は、油脂の口腔内感覚が増強した油脂含有食品およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、GPR120のアゴニストをスクリーニングすることで、ヒトでの官能評価に裏付けられた、油脂の口腔内感覚を増強させる物質が得られることを見出し、さらに、GPR120とGαqを共存させた評価系でより高感度および高精度で油脂の口腔内感覚を増強させる物質が得られることを見出し、本発
明を完成するに至った。
本発明は、以下のとおりである。
(1)GPR120タンパク質を使用することを特徴とする、油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(2)GPR120タンパク質がヒト由来であることを特徴とする、(1)に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(3)GPR120タンパク質が配列番号6に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、細胞内で発現させたときにリガンドに応答して細胞内カルシウム量を増加させるタンパク質である、(1)または(2)に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(4)GPR120タンパク質を発現する細胞に油脂の口腔内感覚を増強する物質の候補物質を添加する工程、GPR120タンパク質の活性を測定する工程、およびGPR120タンパク質を活性化する物質を選択する工程を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(5)GPR120タンパク質の活性が、細胞内カルシウム量に基づいて測定される、(4)に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(6)さらに、選択された物質について油脂の口腔内感覚増強を確認する工程を含む、(4)または(5)に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(7)GPR120タンパク質とともにGαqタンパク質を使用することを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(8)Gαqタンパク質がヒト由来であることを特徴とする、(7)に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(9)Gαqタンパク質が配列番号8に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、GPR120タンパク質とともに細胞内で発現させたときにリガンドに応答して細胞内カルシウム量を増加させるタンパク質である、(7)または(8)に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(10)油脂の口腔内感覚を増強する物質が、油脂含量0.5重量%以上の飲食品において、油脂の口腔内感覚を増強する物質であることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
(11)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストを油脂含量0.5重量%以上の食品に添加することを特徴とする、油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
(12)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストが、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、3-(3,5-dichloro-4-((5-chloro-2,2-dimethyl-2,3-dihydrobenzofuran-7-yl)methoxy)phenyl)-2-methylpropanoic acidまたは4-[4-(3-chlorophenyl)-3-ethyl-2(3H)-thiazolylideneamino] benzenesulfonic acidである、(11
)に記載の油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
(13)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストの濃度が0.0001重量ppm〜1000重量ppmである、(11)または(12)に記載の油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。(14)油脂含有食品がドレッシングである、(11)〜(13)のいずれかに記載の油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
(15)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストおよび0.5重量%以上の油脂を含む食品。
(16)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストが、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、3-(3,5-dichloro-4-((5-chloro-2,2-dimethyl-2,3-dihydrobenzofuran-7-yl)methoxy)phenyl)-2-methylpropanoic acidまたは4-[4-(3-chlorophenyl)-3-ethyl-2(3H)-thiazolylideneamino] benzenesulfonic acidである、(15
)に記載の食品。
(17)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストの濃度が0.0002重量ppm〜500重量ppmである、(
15)または(16)に記載の食品。
(18)ドレッシングである、(15)〜(17)のいずれかに記載の食品。
(19)非遊離脂肪酸GPR120アゴニストを有効成分とする油脂の口腔内感覚増強剤。
GPR120を用いることにより、油脂含有食品に添加した際の油脂の口腔内感覚を増強させる物質をスクリーニングしうる。スクリーニングで得られた油脂の口腔内感覚を増強させる物質を油脂含有食品に微量添加することにより、少ない量の油脂で油脂の好ましい感覚を提供できるため、カロリーの過剰摂取を抑制でき、肥満等の代謝疾患の予防にも効果が期待できる。
各化合物のGPR120活性化の程度を示す図。横軸は化合物濃度、縦軸はΔF/F値を示す。●はGPR120のみ、黒四角はGPR120+ Gα16-gust44、黒三角はGPR120+ Gαq導入細胞での結果を示す。 各化合物のGPR120、GPR120+ Gα16-gust44、またはGPR120+ Gαq活性化のS/N比を示す図。 低脂肪ドレッシングの油脂様のコーティング感に対する、各GPR120アゴニストの影響を示す図。 GPR120アゴニスト(化合物1)による低脂肪ドレッシングの油脂様のコーティング感増強に対する、GPR120アンタゴニストの影響を示す図。 ドレッシングの油脂様のコーティング感に対するGPR120アンタゴニストの影響を示す図。 各化合物のGPR120、GPR120+ Gα16-gust44、またはGPR120+ Gαq活性化のΔF/F比を示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
<油脂の口腔内感覚を増強する物質>
本明細書中において、「油脂の口腔内感覚」とは、舌の上で感知される油脂(トリグリセリド)の感覚を意味し、例えば、油脂が舌の上を覆い、まとわりつく感覚をいう。なお、油脂を口腔内に含んでから、0〜2秒未満をトップ、2秒以上〜5秒未満をミドル、それ以降をラストと定義でき、これらの期間のうち、少なくとも1つ以上の期間で油脂の口腔内感覚が増強されればよい。
<GPR120>
本発明において、GPR120タンパク質としては、ヒト、マウス、ラットなどの哺乳動物由来のGPR120タンパク質が挙げられるが、ヒトGPR120タンパク質が好ましく、ヒトGPR120タンパク質としては、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
GPR120タンパク質は、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に限られず、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)として、リガンド(アゴニスト)に応答して細胞内カ
ルシウム量を増加させることができるタンパク質である限り、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質のホモログや人為的な改変体等を有するタンパク質も使用することができる。すなわち、配列番号6に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加等を含む配列を有するタンパク質であってもよい。
ここで、「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。また、アミノ酸置換は保存的置換が好ましく、保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe
、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性
アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸で
ある場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換
、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、Cys
からSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPhe
への置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPhe
への置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの
置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。
さらに、上記のようなGPR120タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列全体に対して、90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、野生型GPR120タンパク質と同等の機能を有するタンパク質であってもよい。
GPR120タンパク質をコードするDNA(以下、「GPR120遺伝子」と記載することがある。
)は、配列番号5の塩基配列を有するDNA又は配列番号5の相補配列とストリンジェント
な条件下でハイブリダイズし、かつ、野生型GPR120タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわ
ゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いポリヌクレオチド同士、例えば75%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、0.1×SSC、0.1% SDS 、好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
GPR120遺伝子は、例えば配列番号5の塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)由来の試料(例えば、総RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー)
とを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、又はサザンハイブリダーゼーションもしくはノーザンハイブリダイゼーション等を実施することにより、取得することができる。
<Gαq>
GPR120と共役するGタンパク質
本発明において、GPR120とともに使用されうる、GPR120と共役するGタンパク質として
は、細胞に内在するGタンパク質でもよいが、GPR120とともにGタンパク質のαサブユニット(Gαタンパク質)を導入してもよい。Gαタンパク質としては、アデニル酸シクラーゼを活性化するGαsタンパク質でもよいが、ホスホリパーゼCを活性化するGαqタンパク質
が好ましい。Gαqタンパク質としては、ヒト、マウス、ラットなどの哺乳動物由来のGαqタンパク質が挙げられるが、ヒトGαqタンパク質が好ましく、ヒトGαqタンパク質としては、配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
Gαqタンパク質は、配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に限られず、GP
R120と共役して、リガンド(アゴニスト)に応答して細胞内カルシウム量を増加させることができるタンパク質である限り、配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク質のホモログや人為的な改変体等、保存的変異を有するタンパク質も使用することができる。すなわち、配列番号8に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加等を含む配列を有するタンパク質であってもよい。
さらに、上記のようなGαqタンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列全体に対して、90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、野生型Gαq タンパク質と同等の機能を有するタ
ンパク質であってもよい。
Gαqタンパク質をコードするDNA(以下、「Gαq遺伝子」と記載することがある。)は
、配列番号7の塩基配列を有するDNA又は配列番号7の相補配列とストリンジェントな条
件下でハイブリダイズし、かつ、野生型Gαqタンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
なお、Gαqの説明において、「1または数個」、「ストリンジェントな条件」等はGPR120と同様である。
<スクリーニング方法>
本発明の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法はGPR120タンパク質を使用することを特徴とする。すなわち、GPR120タンパク質、あるいはこれを発現する細胞に作用する化合物を同定することにより、油脂の口腔内感覚を増強する物質を探索することができる。化合物の同定方法としては、GPR120タンパク質と被検物質との結合を測定する系でもよいが、GPR120タンパク質を発現した細胞を用いることが好ましく、GPR120タンパク質をコードする遺伝子を導入しGPR120タンパク質を発現させた細胞を用い、GPR120タンパク質に被験物質を接触させることがより好ましい。
GPR120タンパク質をコードする遺伝子を発現可能な形態で適当な宿主細胞に導入し、GPR120タンパク質を発現させることによって、GPR120を発現した細胞を取得することができる。例えば、GPR120タンパク質をコードする直鎖状のDNA、又は、GPR120タンパク質をコ
ードする配列を含むプラスミドベクターやウイルスベクターなどのベクターを宿主細胞に導入することによって、GPR120タンパク質を発現させることができる。発現可能な形態としては、例えば、DNA情報に基づいてGPR120タンパク質が生成し得るように、転写及び翻
訳に必要な配列を、GPR120タンパク質をコードする配列の上流に含むことが挙げられる。また、宿主細胞にGPR120タンパク質をコードするcRNAを注入することによっても、GPR120を発現した細胞を取得することができる。転写に必要な配列としては、プロモーター及びエンハンサー等の発現調節配列が挙げられる。また、転写ターミネーター配列を含んでいてもよい。翻訳に必要な配列としては、リボソーム結合部位が挙げられる。さらに、必要に応じて、プロセシング情報部位、例えばRNAスプライス部位、ポリアデニル化部位等を含んでいてもよい。ブロモーターとしては、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターが挙げられる。
GPR120タンパク質をコードする遺伝子を導入する細胞としては、動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞などが例示されるが、動物細胞が好ましく、ヒト由来細胞がより好ましい。細胞は株化された細胞でもよいし、組織から単離された細胞でもよい。例えば、単離された味細胞、又は舌上皮、副腎、松果体、甲状腺、メラノサイト、および、腎臓から選択される組織から単離された細胞などを用いてもよい。
GPR120タンパク質をコードする遺伝子を発現する組換えベクターを導入し、一時的または恒常的な機能発現が可能と考えられる細胞として、ヒト等の哺乳動物、カエル等の両生類のような動物細胞、昆虫細胞又は酵母が好ましく、動物細胞が特に好ましい。例えば、味細胞が濃縮された画分、あるいは単離された味細胞、又は、舌上皮、副腎、松果体、甲状腺、メラノサイト、および、腎臓から選択される組織から単離された組織などを用いても良い。具体的には、GPR120タンパク質をコードする遺伝子を発現する組換えベクターを導入し、機能発現が可能と考えられる細胞として、アフリカツメガエル卵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、human embryonic kidney(HEK)細胞、Sf-9 insect
、U-2 OS、COS-1、COS-7、HT-29、HeLa細胞等が挙げられる。
これらの細胞にGPR120タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入する方法としては、公知の方法を用いることができる。細胞へのポリヌクレオチドの導入等の操作に必要な技術は、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等
に記載されている。
本発明において、スクリーニングに使用される細胞は、GPR120タンパク質をコードする遺伝子とGαqタンパク質をコードする遺伝子の両方が導入された細胞がより好ましい。これらの遺伝子は別々のベクターまたは同一のベクターを用いて導入することができる。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様によれば、GPR120タンパク質を発現する細胞に油脂の口腔内感覚を増強する物質の候補物質を添加し、GPR120タンパク質の活性を測定し、GPR120タンパク質を活性化する化合物を選択する。GPR120タンパク質の活性は、例えば、細胞内カルシウムイオンの増加、ホスホリパーゼCの活性化、イノシトールリン酸
の増加、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)分泌の増加などを指標として測定することができる。あるいは、GPR120タンパク質の活性化によって発現が上昇する遺伝子(標的遺伝子)の発現量や、標的遺伝子のプロモーターとレポーター遺伝子を用いたレポーターアッセイ系により測定することもできる。より好ましくは、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇により測定することができる。
以下に本発明のスクリーニング方法を例示するが、これらに限定されるものではない。1)GPR120タンパク質発現細胞またはGPR120タンパク質およびGαqタンパク質発現細胞に被検物質を添加して、細胞内カルシウムイオン濃度を測定する。
2)被検物質を添加したときと、被検物質を添加しなかったとき(ネガティブコントロール)の細胞内カルシウムイオン濃度を比較する。
3)被検物質を添加したときに細胞内カルシウムイオン濃度を増加させる物質、すなわち、被検物質を添加したときに被検物質を添加しなかったときよりも高い細胞内カルシウムイオン濃度を示す被検物質をGPR120アゴニストとして選択する。
なお、GPR120タンパク質の既知アゴニストをポジティブコントロールとし、それと同等以上にGPR120を活性化する物質を選択してもよい。
細胞内カルシウム濃度は、例えば、カルシウム蛍光プローブ(例えば、Fura−2、Fluo−3など)を用いて測定することができる。また、市販のカルシウム測定キットを使用することもできる。
スクリーニングに用いる被検物質としては、特に制限はなく、低分子化合物、糖類、ペプチド、タンパク質などを用いることができる。なお、遊離脂肪酸以外の化合物であることが好ましい。
本発明のスクリーニング方法で選択された化合物(GPR120アゴニスト)については、ヒ
トによる味覚試験などの官能試験によって油脂の口腔内感覚を増強できることを確認することが好ましい。味覚試験としては、油脂を含む食品に化合物を添加し、口腔内に含んで舌によって感知される油脂の感覚を化合物非添加の場合と比較することが例示される。
本発明のスクリーニング方法で選択された化合物(好ましくは遊離脂肪酸以外のGPR120アゴニスト)は、油脂含有食品の添加物として用いることができる。なお、遊離脂肪酸は食品に添加して保存することや加熱することにより、アルデヒドなどの不快臭成分を生成するため、遊離脂肪酸以外の化合物、すなわち、非遊離脂肪酸GPR120アゴニストが好ましい。非遊離脂肪酸GPR120アゴニストとしては、例えば、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、3-(3,5-dichloro-4-((5-chloro-2,2-dimethyl-2,3-dihydrobenzofuran-7-yl)methoxy)phenyl)-2-methylpropanoic acidおよび4-[4-(3-chlorophenyl)-3-ethyl-2(3H)-thiazolylideneamino] benzenesulfonic acidが挙
げられる。
GPR120アゴニストを油脂およびその他の食品成分を含む組成物に添加することにより、油脂の口腔内感覚が維持された食品を製造することができる。ここで、油脂含有食品としては、油脂を0.5重量%以上含む食品が好ましく、油脂を2.0重量%以上含む食品がより好ましい。具体的には、ドレッシング、チーズ、バター、マーガリン、マヨネーズ、ラード、スープ、カレー、ヨーグルト、フライ食品、スナック菓子、クリーム、チョコレートなどが挙げられる。なお、食品は飲料も含む。
本発明のスクリーニング方法で選択された化合物の油脂含有食品に対する使用量は、油脂の口腔内感覚の増強に有効な量であればよく、用途に応じて適宜調節されるが、好ましくは、油脂含有食品中に、0.0001重量ppm〜1000重量ppmであり、より好ましくは0.0002重量ppm〜500重量ppmである。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕GPR120タンパク質発現ベクターの構築
ヒトGPR120タンパク質発現ベクターの構築
ヒトGPR120タンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されてお
り(accession No. NM_001195755)(配列番号5)、これを参考にして例えばヒトのmRNAからクローニング可能である。ヒトmRNAを鋳型とし、配列番号1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号2に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして、RT-PCR反応を行なった。得られたDNA
断片を、GENEART Seamless cloning and Assambly kit(A13288、ライフテクノロジーズ
社)を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)のHindIII-XbaIサイトにサブクローニングし、ヒトGPR120タンパク質発現ベクターを構築した。なお、前記プラスミドpcDNA3.1(+)は、サイトメガロウイルス由来のプロモーター配列を持っており、動物
細胞にクローニング断片にコードされるポリペプチドを発現させるために使用することができる。
〔実施例2〕Gα遺伝子のクローニング
Gα16-gust44遺伝子のクローニング
Gα16-gust44遺伝子はUedaらの論文(The Journal of Neuroscience, 2003・23(19):7376-7380)、および特許第4654038号を参考に作製した。
Gαq遺伝子のクローニング
ヒトGαqタンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されており
(accession No. NM_002072)(配列番号7)、これを参考にして例えばヒトのmRNAから
クローニング可能である。ヒトmRNAを鋳型とし、配列番号3に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号4に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして、RT-PCR反応を行なった。得られたDNA断片
を、GENEART Seamless cloning and Assambly kit(A13288、ライフテクノロジーズ社)
を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)のHindIII-EcoRIサイトにサ
ブクローニングし、ヒトGαqタンパク質発現ベクターを構築した。
〔実施例3〕培養細胞への遺伝子導入とGPR120活性・測定感度評価
10% Fetal bovine serum(ニチレイ)、1% Pen Strep(GIBCO)を含むDMEM/Ham's F-12(ナカライテスク)培地を用いて維持したHEK293E細胞をD-PBS(-)(ナカライテスク)で洗浄後、0.25% Trypsin EDTA(GIBCO)を用いて細胞をフラスコから回収した。遠心分離
(1,200 rpm, 3min)を行って上清を除去し、5% FBS DMEM/Ham's F-12中で0.75×107cell/mlになるように懸濁した。これを150 cm2フラスコ(IWAKI)に10ml播種し、一晩培養(37℃、5% CO2)した。翌日、培地をOpti-MEM(invitrogen、Life Technologies社)30mlに交換して、Opti-MEMとLipofectamin2000(invitrogen、Life Technologies社)を用いて調
製したヒトGPR120遺伝子混合物溶液(Gα16-gust44またはGαq遺伝子、総計63.8μg)を細胞懸濁液にゆっくり添加し、6時間培養(37℃、5% CO2)することで遺伝子を導入した。
遺伝子導入後に、D-PBS(-)で細胞を洗浄後、0.25% Trypsin EDTA(GIBCO)を用いて細
胞をフラスコから剥がして回収した。細胞数をカウント後、5% FBS DMEM(2.78mMグルコ
ース、GIBCO)培地中に0.5×106cell/mlになるように懸濁した。この細胞懸濁液を、D-Lysine coat 96well plate(BDバイオサイエンス)の各ウェルに7.0×104cellになるように播種し、一晩培養した。
培養後、96ウェルの培地をすべて捨て、Assay用buffer(20 mM HEPES, 146 mM NaCl, 1
mM MgSO4, 1.39 mMグルコース, 1mM CaCl2, 2.5 mM Probenecid, 0.05% Bovine serum albumin)で80倍に希釈した細胞内カルシウムイオン測定用染色液Calcium assay kit Express(Molecular Device)を200μl加え、37℃で30分、室温にて45分静地し、染色を行っ
た。染色後、FDSSμCELL(浜松ホトニクス)を用いてAssay用bufferで調製した刺激物(
被検物質)を50μl添加し、刺激後120秒間までの蛍光値を測定した。刺激前後の蛍光値(Ex480:Em540)を測定することで、刺激物の添加によりGPR120とGタンパク質を介して引
き起こされる細胞内遊離カルシウムイオン濃度の変化を定量的に調べた。蛍光値の測定および解析には、FDSSμCELL付属のソフト(FDSS7000EX)を用いて行い、ΔF/F値は下記の
方法により算出し、それを評価に用いた。得られるΔF/F値は添加した物質に対する応答
の強さを示す。
またこのΔF/F値を用いてS/N比を算出した。具体的には各々の物質を種々の濃度で添加したときに得られたΔF/Fの最小値をノイズ(N)値とし、ΔF/Fの最大値をシグナル(S)値として、S/N値を算出し、活性測定感度の指標とした。すなわちS/N値が高いほどヒトGPR120と被検物質の相互作用を検出する感度が高く、より低濃度領域でGPR120活性化物質の刺激を容易に見出されることを示すものである。
刺激物質として用いたGPR120アゴニストは、いずれも自社で合成した化合物1(4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid:TUG-891、 Mo
l Pharmacol.84(5):710-25.)、化合物2(3-(3,5-dichloro-4-((5-chloro-2,2-dimethyl-2,3-dihydrobenzofuran-7-yl)methoxy)phenyl)-2-methylpropanoic acid :WO2010080537(Example13))、化合物3(4-[4-(3-chlorophenyl)-3-ethyl-2(3H)-thiazolylideneamino]
benzenesulfonic acid :WO2010008831(compound number 31))とOleic acid、Linoleic
acidを使用した。
抑制物質として用いたGPR120アンタゴニストは、自社で合成した化合物4(compound number 39、Bioorg Med Chem Left.24(14):3100-3)を使用した。
<結果:ヒトGPR120の活性検出と測定感度>
HEK293E細胞にGPR120単独(Gタンパク質なし)、またはGα16-gust44、またはGαqとともに、遺伝子導入し、各GPR120アゴニストを添加したときの応答値(ΔF/F)を図1に示
した。
また、S/N比を図2、及び表1に示す。
その結果、GPR120単独、GPR120+Gα16-gust44、GPR120+Gαqのいずれの系でも化合物によるGPR120の活性化が見られたが、全てのGPR120アゴニストにおいて、Gαq は、GPR120単独(Gタンパク質なし)、またはGα16-gust44より強い応答と高いS/N値を示し、より
高い感度でGPR120活性化物質を検出することが可能であることが示された。つまりGPR120とGαqを組み合わせて測定することにより、高い感度で油脂様コーティング感増強物質の検出が可能であることが示された。
[評価例1]低脂肪ドレッシングの油脂様のコーティング感に対する、GPR120アゴニストの影響
各種GPR120アゴニストの低脂肪ドレッシングの油脂様のコーティング感に対する影響を検討するために、官能評価(採点法)を用いて調査した。低脂肪ドレッシング(Hidden Valley社製「Light Ranch」、脂肪分23%)にそれぞれ構造の異なる3種のGPR120アゴニスト(化合物1:13μM、化合物2:26μM、化合物3:50μM)を添加し、専門評価パネル4名で
評価を行った。評価項目は「トップのコーティング感」、「ミドルのコーティング感」、「ラストのコーティング感」とし、サンプルを口腔内に含んで0〜2秒未満をトップ、2秒
以上〜5秒未満をミドル、それ以降をラストと定義した。サンプルは5秒の時点で吐き出す。なお、「コーティング感」は「油などが舌の上を覆い、まとわりつく感覚」と定義した。無添加品を各評価項目3点とし、脂肪分47%のドレッシング(Hidden Valley社製「Ranch」、脂肪分47%)をトップ:3.25点、ミドル3.75点、ラスト3.5点として、0.25点刻みで
評価を行った。
その結果、図3に示すように、全てのGPR120アゴニストを含むドレッシングの油脂様のコーティング感が増強した。この結果から本発明のGPR120アゴニストを低脂肪ドレッシングに添加することにより、トップからラストの油脂様のコーティング感など、油脂の機能に似た評価項目の評点が増強することが示された。
[評価例2]GPR120アゴニストによる低脂肪ドレッシングの油脂様のコーティング感増強に対する、GPR120アンタゴニストの影響
GPR120アンタゴニストの、GPR120アゴニストによる低脂肪ドレッシングの油脂様のコーティング感増強に対する影響を検討するために、官能評価(採点法)を用いて調査した。低脂肪ドレッシング(Hidden Valley社製「Light Ranch」、脂肪分23%)にGPR120アゴニ
スト(化合物1:13μM )、もしくはGPR120アゴニスト(化合物1:13μM )とGPR120アンタゴニスト(化合物4:14μM)を添加し、専門評価パネル4名で評価を行った。評価項目
は「トップのコーティング感」、「ミドルのコーティング感」、「ラストのコーティング感」とした。無添加品を各評価項目3点とし、0.25点刻みで評価を行った。
その結果、図4に示すように、GPR120アゴニスト化合物1によって増強された油脂様の
コーティング感は、GPR120アンタゴニスト化合物4の併用により無添加品のレベルまで低
下した。以上の結果から、油脂様のコーティング感の増強にはGPR120の活性化が必要であることが示された。
[評価例3]ドレッシングの油脂様のコーティング感に対するGPR120アンタゴニストの影響
GPR120アンタゴニストのドレッシングの油脂様のコーティング感に対する影響を検討するために、官能評価(採点法)を用いて調査した。低脂肪ドレッシング(Hidden Valley
社製「Light Ranch」、脂肪分23%)にGPR120アンタゴニスト(化合物4:14μM )を添加
し、専門評価パネル4名で評価を行った。評価項目は「トップのコーティング感」、「ミ
ドルのコーティング感」、「ラストのコーティング感」とした。無添加品を各評価項目3点とし、0.25点刻みで評価を行った。
その結果、図5に示すように、GPR120アンタゴニストの添加によりドレッシングの油脂様のコーティング感が低下した。以上の結果から、GPR120アンタゴニストの添加によるGPR120の不活性化は、食品の油脂様のコーティング感を低下させることが示された。
[実施例4] 各種化合物の官能力価とGPR120発現細胞による活性との相関解析−導入Gタンパク質の影響
本発明のスクリーニング方法の有効性を明らかにすることを目的として、各種化合物について、実施例3で得られたGPR120発現細胞における活性と官能力価に相関があるか評価
を行った。官能評価は採点法を用い、低脂肪マヨネーズ(味の素株式会社製「ピュアセレ
クト コクうま」、脂肪分23%)に各化合物(化合物1:13μM、化合物2:26μM、化合物3:50
μM、Oleic acid:3.5mM、Linoleic acid:3.6mM)を添加し、専門評価パネル3名で評価を行った。評価項目は「コーティング感」とし、無添加品を評価項目3点として、0.25点刻み
で評価を行った。なお、評点3.75のコントロールとして脂肪分73%マヨネーズを用いた。
得られた官能評点の値から、濃度依存的に評点が増加すると仮定して評点3.75点に達するための添加量(濃度)を各化合物について算出し、官能強度順位をつけた(表2)。Gタ
ンパク質として、Gαqタンパク質を導入する手法とGα16-gust44タンパク質(特許第4654038号)を導入する方法について、各化合物16.7μMで得られるΔF/F値(図6)と、各化
合物のコーティング感の官能強度順位の相関を調べた結果を表3に示す。
Gαqタンパク質を導入する手法で得られるΔF/F値と官能評価で得られた評点3.75点に
達するための濃度(濃度が低いほど、その化合物の等濃度での力価が高いことを示す)について、Kendallの順位相関解析を行ったところ、有意な負相関(相関係数=-1
.0、p=0.042)を示した。すなわち、官能力価と活性との間に有意な正相関があることが示された。一方、GPR120単独やGα16-gust44タンパク質についても、Kendallの順位相関解析を行ったところ、GPR120単独の場合、相関係数=−0.60、p=0.142で有意性なし、Gα16-gust44を導入した場合は、相関係数=−0.40、p=0
.327で有意な相関は見られなかった。以上の結果から、Gαqタンパク質を導入する手法でスクリーニングを行うことにより、より精度高く、油脂含有食品に添加した際にコーティング感覚を増強させる物質を探索しうることが示唆された。

Claims (19)

  1. GPR120タンパク質を使用することを特徴とする、油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  2. GPR120タンパク質がヒト由来であることを特徴とする、請求項1に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  3. GPR120タンパク質が配列番号6に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、細胞内で発現させたときにリガンドに応答して細胞内カルシウム量を増加させるタンパク質である、請求項1または2に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  4. GPR120タンパク質を発現する細胞に油脂の口腔内感覚を増強する物質の候補物質を添加する工程、GPR120タンパク質の活性を測定する工程、およびGPR120タンパク質を活性化する物質を選択する工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  5. GPR120タンパク質の活性が、細胞内カルシウム量に基づいて測定される、請求項4に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  6. さらに、選択された物質について油脂の口腔内感覚増強を確認する工程を含む、請求項4または5に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  7. GPR120タンパク質とともにGαqタンパク質を使用することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  8. Gαqタンパク質がヒト由来であることを特徴とする、請求項7に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  9. Gαqタンパク質が配列番号8に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、GPR120タンパク質とともに細胞内で発現させたときにリガンドに応答して細胞内カルシウム量を増加させるタンパク質である、請求項7または8に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  10. 油脂の口腔内感覚を増強する物質が、油脂含量0.5重量%以上の飲食品において、油脂の口腔内感覚を増強する物質であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法。
  11. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストを油脂含量0.5重量%以上の食品に添加することを特徴とする、油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
  12. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストが、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、3-(3,5-dichloro-4-((5-chloro-2,2-dimethyl-2,3-dihydrobenzofuran-7-yl)methoxy)phenyl)-2-methylpropanoic acidまたは4-[4-(3-chlorophenyl)-3-ethyl-2(3H)-thiazolylideneamino] benzenesulfonic acidである、請求項11に記
    載の油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
  13. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストの濃度が0.0001重量ppm〜1000重量ppmである、請求項11または12に記載の油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
  14. 油脂含有食品がドレッシングである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の油脂の口腔内感覚が増強された油脂含有食品の製造方法。
  15. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストおよび0.5重量%以上の油脂を含む食品。
  16. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストが、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、3-(3,5-dichloro-4-((5-chloro-2,2-dimethyl-2,3-dihydrobenzofuran-7-yl)methoxy)phenyl)-2-methylpropanoic acidまたは4-[4-(3-chlorophenyl)-3-ethyl-2(3H)-thiazolylideneamino] benzenesulfonic acidである、請求項15に記
    載の食品。
  17. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストの濃度が0.0002重量ppm〜500重量ppmである、請求項15
    または16に記載の食品。
  18. ドレッシングである、請求項15〜17のいずれか一項に記載の食品。
  19. 非遊離脂肪酸GPR120アゴニストを有効成分とする油脂の口腔内感覚増強剤。
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