JP2016196854A - 空燃比センサの異常診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】空燃比センサの素子割れを確実に検出する。
【解決手段】空燃比センサの異常診断装置は、空燃比センサの出力電流を検出する電流検出部と、空燃比センサの素子温度を制御するセンサ温度制御部と、気筒間の空燃比の不均一性であるインバランス度合いを推定するインバランス度合い推定部とを具備する。異常診断装置は、排気ガスの目標空燃比がリッチ空燃比にされた場合に空燃比センサの出力電流がリーン空燃比に対応する所定の閾値以上になったときに空燃比センサに素子割れが生じていると判定するS18:Yes。空燃比センサの異常を検出すべきときには、インバランス度合い推定部によって推定S14されたインバランス度合いが所定の基準値以上に大きくなった場合には、基準値よりも小さい場合に比べて、センサ温度制御部によって空燃比センサの素子温度が高くなるように制御されるS15と共に閾値が高く設定されるS16。
【選択図】図19

Description

本発明は、内燃機関の排気通路に配置される空燃比センサの異常診断装置に関する。
従来から、空燃比を目標空燃比に制御するようにした内燃機関では、空燃比に応じた限界電流が発生する限界電流式の空燃比センサを機関排気通路内に配置することが知られている。斯かる内燃機関では、空燃比センサにより空燃比が目標空燃比となるように燃焼室に供給する燃料量がフィードバック制御される。ところが、この空燃比センサは、センサ素子の外表面とセンサ素子の内部空間とが連通してしまうような素子割れが発生する場合がある。このような素子割れが発生すると、空燃比センサは、空燃比に応じた適切な出力を発生させることができなくなり、その結果、空燃比を正確に目標空燃比にフィードバック制御しえなくなる。
そこで、空燃比センサの素子割れを検出するための異常診断装置が従来より公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、通常、空燃比センサへの印加電圧は限界電流領域の中央に設定されており、空燃比センサのセンサ素子に割れが生じたり、電極上の白金が凝縮したり場合には、空燃比センサへの印加電圧が限界電流領域の中央部から高電圧側にずれるとされている。したがって、この特許文献1に記載の装置では、空燃比センサへの印加電圧が限界電流領域の中央部から高電圧側又は低電圧側にずれた場合には、空燃比センサのセンサ素子に割れが生じているか、或いは電極上の白金が凝縮したと判断される。
特開2010−174790号公報 特開2000−55861号公報 特開2004−19542号公報 特開2003−014683号公報 特開2012−31775号公報
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、空燃比センサのセンサ素子に割れが生じたことを確実に検出することはできない。
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、空燃比センサの素子割れを確実に検出することのできる異常診断装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明では、内燃機関の排気通路に設けられ且つ空燃比に応じた限界電流を発生させる空燃比センサの異常診断装置において、前記空燃比センサの出力電流を検出する電流検出部と、前記空燃比センサの素子温度を制御するセンサ温度制御部と、気筒間の空燃比の不均一性であるインバランス度合いを推定するインバランス度合い推定部とを具備し、当該異常診断装置は、前記空燃比センサの異常を検出すべく該空燃比センサ周りを流通する排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比にされた場合に前記空燃比センサの出力電流が理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する所定の閾値以上になったとき又は該閾値以上になる頻度が所定頻度以上になったときに前記空燃比センサに素子割れが生じていると判定し、前記空燃比センサの異常を検出すべきときには、前記インバランス度合い推定部によって推定された前記インバランス度合いが所定の基準値以上に大きくなった場合には、該基準値よりも小さい場合に比べて、前記センサ温度制御部によって前記空燃比センサの素子温度が高くなるように制御されると共に前記閾値が高く設定される、空燃比センサの異常診断装置が提供される。
本発明によれば、空燃比センサの素子割れを確実に検出することができる。
図1は、本発明の異常診断装置が用いられている内燃機関を概略的に示す図である。 図2は、空燃比センサの概略的な断面図である。 図3は、各排気空燃比A/Fにおける印加電圧Vと出力電流Iとの関係を示す図である。 図4は、印加電圧Vを一定にしたときの空燃比と出力電流Iとの関係を示す図である。 図5は、内燃機関の通常運転時における、上流側排気浄化触媒の酸素吸蔵量等の変化を示すタイムチャートである。 図6は、気筒間で排気空燃比にインバランスが発生しているときの出力電流等の変化を示すタイムチャートである。 図7は、素子割れが生じている空燃比センサの概略的な断面図である。 図8は、空燃比センサの素子割れが生じたときの出力電流Iと空燃比A/Fとの関係を示す図である。 図9は、空燃比センサの素子割れが生じたときの出力電流Iと印加電圧Vとの関係を示す図である。 図10は、酸素濃度センサの概略的な断面図と、酸素濃度センサの出力電圧Eの変化とを示す図である。 図11は、空燃比センサの概略的な断面図と、空燃比センサの出力電流Iの変化とを示す図である。 図12は、空燃比センサの出力電流Iを示す図である。 図13は、空燃比センサの出力電流Iを示す図である。 図14は、空燃比センサの出力電流Iを示す図である。 図15は、異常診断を行う際の下流側空燃比センサの出力電流等の変化を示すタイムチャートである。 図16は、異常診断を行う際の下流側空燃比センサの出力電流等の変化を示すタイムチャートである。 図17は、インバランス度合いと目標素子温度との関係を示す図である。 図18は、出力電流とリッチガード空燃比との関係を示す図である。 図19は、下流側空燃比センサの異常診断を行うためのフローチャートである。 図20は、出力電流に応じた累積出力頻度の例を示す図である。 図21は、空燃比センサの出力電流Iを示す図である。 図22は、インバランス度合いと閾値との関係を示す図である。 図23は、下流側空燃比センサの異常診断を行うためのフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
<内燃機関全体の説明>
図1は、本発明の第一実施形態に係る異常診断装置が用いられる内燃機関を概略的に示す図である。図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。吸気弁6は吸気ポート7を開閉し、排気弁8は排気ポート9を開閉する。
図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4の内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。点火プラグ10は、点火信号に応じて火花を発生させるように構成される。また、燃料噴射弁11は、噴射信号に応じて、所定量の燃料を燃焼室5内に噴射する。なお、燃料噴射弁11は、吸気ポート7内に燃料を噴射するように配置されてもよい。また、本実施形態では、燃料として理論空燃比が14.6であるガソリンが用いられる。しかしながら、本発明の異常診断装置が用いられる内燃機関では、ガソリン以外の燃料、或いはガソリンとの混合燃料を用いてもよい。
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ポート7、吸気枝管13、サージタンク14、吸気管15は吸気通路を形成する。また、吸気管15内にはスロットル弁駆動アクチュエータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。スロットル弁18は、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。
一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。排気マニホルド19は、各排気ポート9に連結される複数の枝部とこれら枝部が集合した集合部とを有する。排気マニホルド19の集合部は上流側排気浄化触媒20を内蔵した上流側ケーシング21に連結される。上流側ケーシング21は、排気管22を介して下流側排気浄化触媒24を内蔵した下流側ケーシング23に連結される。排気ポート9、排気マニホルド19、上流側ケーシング21、排気管22及び下流側ケーシング23は、排気通路を形成する。
電子制御ユニット(ECU)31はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36及び出力ポート37を具備する。吸気管15には、吸気管15内を流れる空気流量を検出するためのエアフロメータ39が配置され、このエアフロメータ39の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。また、排気マニホルド19の集合部には排気マニホルド19内を流れる排気ガス(すなわち、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス)の空燃比を検出する上流側空燃比センサ40が配置される。加えて、排気管22内には排気管22内を流れる排気ガス(すなわち、上流側排気浄化触媒20から流出して下流側排気浄化触媒24に流入する排気ガス)の空燃比を検出する下流側空燃比センサ41が配置される。これら空燃比センサ40、41の出力も対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。なお、これら空燃比センサ40、41の構成については後述する。
また、アクセルペダル42にはアクセルペダル42の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ43が接続され、負荷センサ43の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランク角センサ44は例えばクランクシャフトが15度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート36に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ44の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路45を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11及びスロットル弁駆動アクチュエータ17に接続される。なお、ECU31は、下流側空燃比センサ41の異常診断を行う異常診断装置として機能する。
上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24は、酸素吸蔵能力を有する三元触媒である。具体的には、排気浄化触媒20、24は、セラミックから成る担体に、触媒作用を有する貴金属(例えば、白金(Pt))及び酸素吸蔵能力を有する物質(例えば、セリア(CeO2))を担持させた三元触媒である。三元触媒は、三元触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に維持されていると、未燃HC、CO及びNOxを同時に浄化する機能を有する。加えて、排気浄化触媒20、24が酸素吸蔵能力を有している場合には、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に対してリッチ側或いはリーン側に若干ずれたとしても未燃HC、CO及びNOxとが同時に浄化される。
すなわち、排気浄化触媒20、24が酸素吸蔵能力を有していると、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりも若干リーンになったときには、排気ガス中に含まれる過剰な酸素が排気浄化触媒20、24内に吸蔵され、排気浄化触媒20、24の表面上が理論空燃比に維持される。その結果、排気浄化触媒20、24の表面上において未燃HC、CO及びNOxが同時に浄化され、このとき排気浄化触媒20、24から流出する排気ガスの空燃比は理論空燃比となる。
一方、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりも若干リッチになったときには、排気ガス中に含まれている未燃HC、COを還元させるのに不足している酸素が排気浄化触媒20、24から放出され、この場合にも排気浄化触媒20、24の表面上が理論空燃比に維持される。その結果、排気浄化触媒20、24の表面上において未燃HC、CO及びNOxが同時に浄化され、このとき排気浄化触媒20、24から流出する排気ガスの空燃比は理論空燃比となる。
このように、排気浄化触媒20、24が酸素吸蔵能力を有している場合には、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比に対してリッチ側或いはリーン側に若干ずれたとしても未燃HC、COとNOxとが同時に浄化され、排気浄化触媒20、24から流出する排気ガスの空燃比は理論空燃比となる。
<空燃比センサの説明>
本実施形態では、空燃比センサ40、41として、コップ型の限界電流式空燃比センサが用いられる。図2を用いて、空燃比センサ40、41の構造について簡単に説明する。空燃比センサ40、41は、固体電解質層51と、その一方の側面上に配置された排気側電極52と、その他方の側面上に配置された大気側電極53と、通過する排気ガスの拡散律速を行う拡散律速層54と、基準ガス室55と、空燃比センサ40、41の加熱、特に固体電解質層51の加熱を行うヒータ部56とを具備する。ヒータ部56はヒータ部56に接続されるECU31と共に、空燃比センサ40、41の素子温度、特に空燃比センサ40、41の固体電解質層51の温度を制御するセンサ温度制御部として機能する。
特に、本実施形態のコップ型の空燃比センサ40、41では、固体電解質層51は一端が閉じられた円筒状に形成される。固体電解質層51の内部に画成された基準ガス室55には、大気ガス(空気)が導入されると共に、ヒータ部56が配置される。固体電解質層51の内面上に大気側電極53が配置され、固体電解質層51の外面上に排気側電極52が配置される。固体電解質層51及び排気側電極52の外面上にはこれらを覆うように拡散律速層54が配置される。なお、拡散律速層54の外側には、拡散律速層54の表面上に液体等が付着するのを防止するための保護層(図示せず)が設けられてもよい。
固体電解質層51は、ZrO2(ジルコニア)、HfO2、ThO2、Bi23等にCaO、MgO、Y23、Yb23等を安定剤として配当した酸素イオン伝導性酸化物の焼結体により形成されている。また、拡散律速層54は、アルミナ、マグネシア、けい石質、スピネル、ムライト等の耐熱性無機物質の多孔質焼結体により形成されている。さらに、排気側電極52及び大気側電極53は、白金等の触媒活性の高い貴金属により形成されている。
また、排気側電極52と大気側電極53との間には、ECU31に搭載された印加電圧制御装置60によりセンサ印加電圧Vが印加される。加えて、ECU31には、センサ印加電圧Vを印加したときに固体電解質層51を介してこれら電極52、53間に流れる電流Iを検出する電流検出部61が設けられる。この電流検出部61によって検出される電流が空燃比センサ40、41の出力電流Iである。
このように構成された空燃比センサ40、41は、図3に示したような電圧−電流(V−I)特性を有する。図3からわかるように、空燃比センサ40、41の出力電流Iは、排気ガスの空燃比、すなわち排気空燃比A/Fが高くなるほど(リーンになるほど)、大きくなる。また、各排気空燃比A/FにおけるV−I線には、センサ印加電圧V軸に平行な領域、すなわちセンサ印加電圧Vが変化しても出力電流Iがほとんど変化しない領域が存在する。この電圧領域は限界電流領域と称され、このときの電流は限界電流と称される。図3では、排気空燃比が18であるときの限界電流領域及び限界電流をそれぞれW18、I18で示している。
図4は、印加電圧Vを0.45V程度(図3)で一定にしたときの、排気空燃比と出力電流Iとの関係を示している。図4からわかるように、空燃比センサ40、41では、排気空燃比が高くなるほど(すなわちリーンになるほど)、空燃比センサ40、41からの出力電流Iが大きくなるように、排気空燃比に対して出力電流がリニアに(比例するように)変化する。加えて、空燃比センサ40、41は、排気空燃比が理論空燃比であるときに出力電流Iが零になるように構成される。
なお、空燃比センサ40、41としては、図2に示した構造の限界電流式空燃比センサに代えて、例えば積層型の限界電流式空燃比センサ等の他の構造の限界電流式の空燃比センサを用いてもよい。
<基本的な制御>
このように構成された内燃機関では、上流側空燃比センサ40及び下流側空燃比センサ41の出力に基づいて、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比が機関運転状態に基づいた最適な空燃比となるように、燃料噴射弁11からの燃料噴射量が設定される。このような燃料噴射量の設定方法としては、上流側空燃比センサ40の出力に基づいて上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比(或いは、上流側空燃比センサ40周りを流通する排気ガスの空燃比)が目標空燃比となるように燃料噴射弁11からの燃料噴射量をフィードバック制御すると共に、下流側空燃比センサ41の出力に基づいて上流側空燃比センサ40の出力を補正したり、目標空燃比を変更したりする方法が挙げられる。
図5を参照して、このような目標空燃比の制御の例について、簡単に説明する。図5は、内燃機関の通常運転時における、上流側排気浄化触媒の酸素吸蔵量、目標空燃比、上流側空燃比センサの出力電流及び下流側空燃比センサの出力電流のタイムチャートである。また、「通常運転時」は、内燃機関の特定の運転状態に応じて燃料噴射量を調整する制御(例えば、内燃機関を搭載した車両の加速時に行われる燃料噴射量の増量補正や、燃焼室への燃料の供給を停止する燃料カット制御等)を行っていない運転状態(制御状態)を意味する。
図5に示した例では、下流側空燃比センサ41の出力電流がリッチ判定空燃比(例えば、14.55)に相当する値以下となったときに、目標空燃比はリーン設定空燃比AFTlean(例えば、15)に設定され、維持される。その後、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量が推定され、この推定値が予め定められた判定基準吸蔵量Cref(最大酸素吸蔵量Cmaxよりも少ない量)以上になると、目標空燃比はリッチ設定空燃比AFTrich(例えば、14.4)に設定され、維持される。図5に示した例では、このような操作が繰り返し行われる。
具体的には、図5に示した例では、時刻t1の前では、目標空燃比がリッチ設定空燃比AFTrichとされ、これに伴って、上流側空燃比センサ40の出力電流も理論空燃比よりもリッチな空燃比(以下、「リッチ空燃比」という)に相当する値、すなわち負の値となっている。また、上流側排気浄化触媒20には酸素が吸蔵されていることから、下流側空燃比センサ41の出力電流はほぼゼロ、すなわち理論空燃比(14.6)に相当する値となっている。このとき、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比はリッチ空燃比となっていることから、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量は徐々に低下する。
その後、時刻t1においては、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量がゼロに近づくことにより、上流側排気浄化触媒20に流入した未燃ガス(未燃HC、CO)の一部は上流側排気浄化触媒20で浄化されずに流出し始める。その結果、時刻t2において、下流側空燃比センサ41の出力電流が、理論空燃比よりも僅かにリッチなリッチ判定空燃比AFrichに相当する値となり、このとき目標空燃比はリッチ設定空燃比AFTrichからリーン設定空燃比AFTleanへ切り替えられる。
目標空燃比の切替により、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比は理論空燃比よりもリーンな空燃比(以下、「リーン空燃比」という)になり、未燃ガスの流出は減少、停止する。また、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量は徐々に増加し、時刻t3において、判定基準吸蔵量Crefに到達する。このように、酸素吸蔵量が判定基準吸蔵量Crefに到達すると、目標空燃比は、再びリーン設定空燃比AFlenaからリッチ設定空燃比AFTrichへと切り替えられる。この目標空燃比の切替により、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比は再びリッチ空燃比となり、その結果、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量は徐々に減少し、以降は、このような操作が繰り返し行われる。このような制御を行うことにより、上流側排気浄化触媒20からNOxが流出するのを防止することができる。
なお、通常制御として行われる上流側空燃比センサ40及び下流側空燃比センサ41の出力に基づく目標空燃比の制御は上述したような制御に限定されるものではない。これら空燃比センサ40、41の出力に基づく制御であれば、如何なる制御であってもよい。したがって、例えば、通常制御として、目標空燃比を理論空燃比に固定して、上流側空燃比センサ40の出力電流がほぼゼロ、すなわちほぼ理論空燃比に相当する値になるようにフィードバック制御を行うと共に、下流側空燃比センサ41の出力電流に基づいて上流側空燃比センサ40の出力電流を補正するような制御を行ってもよい。
<インバランス度合いの検出>
ところで、複数の気筒を有する内燃機関では、燃料噴射弁の個体差や経年劣化等により、一部の気筒のみで燃料噴射弁からの燃料供給量にずれが生じる場合がある。この場合、燃料供給量にずれが生じている気筒から排出された排気ガスの空燃比が、他の気筒から排出された排気ガスの空燃比とは異なるものになる。この結果、気筒間で排気空燃比にばらつきが生じ、斯かる排気空燃比のばらつきはインバランスと称される。なお、以下の説明では、気筒間の排気空燃比におけるばらつきの大きさ、すなわち不均一性をインバランス度合いと称する。
本実施形態では、インバランス度合いを推定するようにしている。以下では、図6を参照してインバランス度合いの推定方法を簡単に説明する。図6は、目標空燃比が一定に維持されている場合における、空燃比センサの出力電流及び出力電流の変化率(一階微分値)のタイムチャートである。図中の実線はインバランス度合いが小さい場合、図中の破線はインバランス度合いが大きい場合の推移をそれぞれ表している。また、図中の時刻t1、t2、t3、t4は、1番気筒のピストンが吸気上死点に到達するタイミングを示している。したがって、時刻t1〜t2の期間、時刻t2〜t3の期間等はそれぞれ内燃機関の1サイクル(クランク角720°)に対応する。
インバランス度合いが小さい場合、または気筒間でインバランスが生じていない場合には、図6に破線で示したように、空燃比センサ40、41の出力電流は各サイクル中にほとんど変動しない。このため、出力電流の変化率(一階微分値)もほとんど変動せず、同様に、二階微分値もほとんど変動しない。
一方、インバランス度合いが大きい場合、1サイクル中に、空燃比センサ周りを、燃料噴射弁からの燃料供給量が相対的に多い気筒からの排気ガスと、燃料供給量が相対的に少ない気筒からの排気ガスとが流通する。このため、インバランス度合いが大きい場合には、1サイクル中に空燃比センサ40、41周りを流通する排気ガスの空燃比が大きく変動する。この結果、この場合、図6に実線で示したように、空燃比センサ40、41の出力電流は1サイクル中に大きく変動する。
このように空燃比センサ40、41の出力電流が大きく変動すると、これに伴って出力電流の変化率も大きく変動する。すなわち、インバランス度合いが大きいほど、空燃比センサの出力電流における変動が大きくなり、よって出力電流の変化率における変動も大きくなる。したがって、インバランス度合いが大きいほど、出力電流の変化率の絶対値における平均値(平均絶対値)が大きくなる。
そこで、本実施形態では、内燃機関の運転中に、空燃比センサの出力電流に基づいて、その変化率の平均絶対値を算出すると共に、算出された値に基づいてインバランス度合いを算出するようにしている。具体的には、算出された出力電流の変化率の平均絶対値が大きいほど、インバランス度合いが大きいものとして、インバランス度合いの算出が行われる。
なお、本実施形態では、上流側空燃比センサ40及びECU30は、インバランス度合いを推定するインバランス度合い推定部を構成する。また、本実施形態では、上述したように、空燃比センサ40、41の出力電流の変化率の平均絶対値に基づいて、インバランス度合いを算出するようにしている。しかしながら、インバランス度合いを適切に推定することができれば、上述した方法とは異なる方法でインバランス度合いの算出を行うようにしてもよい。
<空燃比センサの素子割れ>
ところで、上述したような空燃比センサ40、41に生じる異常状態として、空燃比センサ40、41を構成する素子に割れが生じる素子割れという現象が挙げられる。具体的には、固体電解質層51及び拡散律速層54を貫通する割れ(図7のC1)や、固体電解質層51及び拡散律速層54に加えて両電極52、53を貫通する割れ(図7のC2)が発生する。このような素子割れが発生すると、図7に示したように割れた部分を介して排気ガスが基準ガス室55内に進入する。この場合、多量の排気ガスが基準ガス室55内に進入すると、排気ガスの空燃比がリッチ空燃比であったとしても、空燃比センサ40、41の出力電流はリーン空燃比に相当する値、すなわち正の値となる。次に、このことについて、図8を参照しつつ説明する。
図8は、印加電圧を0.45V程度で一定にしたときの、図4と同様な排気空燃比A/Fと空燃比センサ40、41の出力電流Iとの関係を示している。なお、この図8は、空燃比センサ40、41に固体電解質層51及び拡散律速層54を貫通する貫通穴を穿設して人工的に素子割れの状態を作った場合の実験結果を示している。この図8において、×印は空燃比センサ40、41が正常である場合を示しており、□印、△印、○印は空燃比センサ40、41に貫通穴を穿設した場合を示している。なお、□印は直径が0.1mmの貫通穴を穿設した場合を示しており、△印は直径が0.2mmの貫通穴を穿設した場合を示しており、○印は直径が0.5mmの貫通穴を穿設した場合を示している。
図8に示したように、貫通穴の直径が0.1mmの場合(□印)には、空燃比センサ40、41が正常である場合(×印)と同様に排気空燃比A/Fが大きくなるにつれて、すなわち排気空燃比A/Fがリーンになるにつれて空燃比センサ40、41の出力電流Iが増大する。このときには、空燃比センサ40、41の出力電流Iは排気空燃比A/Fに対して図4と同様に変化する。一方、貫通穴の直径が0.2mmの場合(△印)及び貫通穴の直径が0.5mmの場合(○印)には、排気空燃比A/Fが14.6以上であってリーン空燃比のときには、貫通穴の直径が0.1mmの場合(□印)及び空燃比センサ40、41が正常である場合(×印)と同様に排気空燃比A/Fが大きくなるにつれて、すなわち排気空燃比A/Fがリーンになるにつれて空燃比センサ40、41の出力電流Iが増大する。これに対して、排気空燃比A/Fが14.6以下であってリッチ空燃比のときには、排気空燃比A/Fが小さくなるにつれて、すなわち排気空燃比A/Fがリッチになるにつれて空燃比センサ40、41の出力電流Iが大幅に増大する。
この実験結果からわかるように貫通穴の直径が大きくなると、貫通穴から空燃比センサ40、41内に侵入した排気ガスが空燃比センサ40、41の出力電流Iに大きな影響を与え、排気空燃比A/Fがリッチ空燃比であったとしても空燃比センサ40、41の出力電流Iは正の電流値となる。すなわち、実際の排気空燃比A/Fがリッチ空燃比であったとしても、空燃比センサ40、41の出力電流はリーン空燃比に相当する値、すなわち正の値を示すことになる。したがって、図8に示した実験結果から、実際の排気空燃比A/Fがリッチ空燃比であるときに空燃比センサ40、41の出力電流が正の値を示している場合には、空燃比センサ40、41の出力電流に大きな影響を与える素子割れが生じていると判断できることになる。
一方、図9の実線は、空燃比センサ40、41の出力電流に大きな影響を与える素子割れが生じている場合において、排気空燃比A/Fがリッチ空燃比であるときの空燃比センサ40、41の出力電流Iと空燃比センサ40、41への印加電圧Vとの関係を示している。空燃比センサ40、41が正常である場合には、排気空燃比A/Fがリッチ空燃比のときには図3からわかるように空燃比センサ40、41の出力電流Iは負の電流値となる。しかしながら、空燃比センサ40、41の出力電流に大きな影響を与える素子割れが生じた場合には、図9の実線からわかるように、排気空燃比A/Fがリッチ空燃比であるときに空燃比センサ40、41の出力電流Iは正の電流値となり、しかもこのとき、空燃比センサ40、41への印加電圧Vを増大させると空燃比センサ40、41の出力電流Iが増大する。
次に、図10から図12を参照しつつ、空燃比センサ40、41の出力電流に大きな影響を与える素子割れが生じた場合には、排気空燃比A/Fがリッチ空燃比であるときに、図7及び図9に示したように、空燃比センサ40、41の出力電流Iは正の電流値となり、図9に示したように、空燃比センサ40、41への印加電圧Vを増大させると空燃比センサ40、41の出力電流Iが増大する理由について、簡単に説明する。
図10(A)は、拡散律速層を有しない酸素濃度センサの作動原理の説明図を示している。図10(A)において、Aは固体電解質層、Bは大気側電極、Cは排気側電極をそれぞれ示している。この酸素濃度センサは、大気側の酸素分圧Paと排気側の酸素分圧Pdとの差により次式(1)にしたがって起電力Eを発生する。
E=(RT/4F)ln(Pa/Pd) …(1)
なお、Rは気体定数、Tは固体電解質層Aの絶対温度、Fはファラディ定数である。
排気ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比のときには大気側の酸素分圧Paの方が排気側の酸素分圧Pdよりも高いので大気中の酸素は大気側電極Bにおいて電子を受け取り、図10(A)に示したように、酸素イオンとなって固体電解質層A内を排気側電極Cまで移動する。その結果、大気側電極Bと排気側電極C間には起電力Eが発生する。このとき大気側の酸素分圧Paと排気側の酸素分圧Pdとの比はそれほど大きくなく、したがって図10(B)に示したように、排気ガスの空燃比A/Fがリーンのときの起電力Eは0.1V程度となる。
これに対し、排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比になると排気側電極C上は酸欠状態となり、このとき排気側電極Cに到達した酸素イオンは未燃HC、COと反応してただちに消費される。したがって、このときには酸素イオンが次から次へと固体電解質層A内を排気側電極Cまで移動する。このときには大気側の酸素分圧Paと排気側の酸素分圧Pdとの比が極めて大きくなるために、図10(B)に示したように、排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比になると起電力Eは0.9V程度まで急激に上昇し、排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比となっている限り、起電力Eは0.9V程度に維持される。
図11(A)は、本実施形態において用いられる空燃比センサ40、41の作動原理の説明図を示している。なお、図11(A)において、51は固体電解質層、52は排気側電極、53は大気側電極、54は拡散律速層をそれぞれ示している。一方、図11(B)は、或るリーン空燃比(A/F)lに対する空燃比センサ40、41の出力電流Iと印加電圧Vとの関係、及び或るリッチ空燃比(A/F)rに対する空燃比センサ40、41の出力電流Iと印加電圧Vとの関係を示している。さて、この空燃比センサ40、41でも大気側電極53と排気側電極52との間には起電力Eが発生しており、さらにこの空燃比センサ40、41では大気側電極53と排気側電極52との間に、この起電力Eとは逆向きに印加電圧Vが印加される。大気側電極53と排気側電極52との間に印加電圧Vが印加されると排気側電極52の表面上において酸素が酸素イオンとされ、この酸素イオンを排気側電極52から大気側電極53へ送り込むポンピング作用が行われる。その結果、空燃比センサ40、41には出力電流Iが発生する。
さて、排気ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比であるときには、排気ガス中の酸素が拡散律速層54を通って排気側電極52の表面上に達する。このとき大気側の酸素分圧Paと排気側の酸素分圧Pdとの比はそれほど大きくなく、したがってこのときには0.1V程度の起電力Eが発生している。このような状態で印加電圧Vを高めていくと酸素イオンのポンピング作用によって図11(A)において実線の矢印で示す正の出力電流Iか発生するようになる。一方、拡散律速層54内を拡散して排気側電極52の表面上に達する酸素量は、排気ガス中の酸素分圧Peと排気側電極52の表面上における酸素分圧Pdとの差に比例し、排気側電極52の表面上には、排気ガス中の酸素分圧Peと排気側電極52の表面上における酸素分圧Pdとの差に応じた量の酸素しか供給されない。したがって、印加電圧Vを増大しても、排気側電極52の表面上に供給される酸素の量が律速されているためにポンピング作用によって送り込まれる酸素イオンの量は一定量に制限される。したがって図11(B)において(A/F)lで示したように、出力電流Iは印加電圧Vが変化しても一定に維持される、すなわち限界電流が生ずることになる。
これに対して、排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比になると、未燃ガスが拡散律速層54を通って排気側電極52の表面上に達する。このとき、排気側電極52に到達した酸素イオンは未燃ガスと反応してただちに消費され、したがって排気側電極52上は酸欠状態となる。したがって、大気側の酸素分圧Paと排気側の酸素分圧Pdとの比が極めて大きくなるため、電極52、53間には0.9V程度の大きな起電力Eが発生し、したがって酸素イオンが次から次へと固体電解質層51内を排気側電極52まで移動する。このときには、図11(A)において破線の矢印で示す負の出力電流Iが発生する。ところがこの場合も、拡散律速層54内を拡散して排気側電極52の表面上に達する未燃ガスの量は、排気ガス中の分圧Peと排気側電極52の表面上における未燃ガスの分圧Pdとの差に比例する。よって、排気側電極52の表面上には、排気ガス中の未燃ガスの分圧Peと排気側電極52の表面上における未燃ガスの分圧Pdとの差に応じた量の未燃ガスしか供給されない。すなわち、排気側電極52の表面上に供給される未燃ガスの量は拡散律速層54によって律速されることになる。
ところで、このように0.9V程度の起電力Eが発生しているときに0.9V程度の印加電圧Vを印加すると、起電力Eと印加電圧Vとは極性が逆向きなので、図11(B)の実線(A/F)rからわかるように、空燃比センサ40、41の出力電流Iは零となる。この状態から印加電圧Vを低下させていくと酸素イオンが排気側電極52に向けて移動を開始する。ところがこのとき、上述したように、排気側電極52の表面上に供給される未燃ガスの量は拡散律速層54によって律速されている。したがって、印加電圧Vを低下させても、排気側電極52に達する酸素イオンの量は一定量に制限され、したがって図11(B)において(A/F)rで示したように、出力電流Iは印加電圧Vが変化しても一定に維持される、すなわち限界電流が生ずることになる。一方、このように0.9V程度の起電力Eが発生しているときには排気側電極52の表面上には酸素が存在していない。したがって、このとき0.9Vよりも高い印加電圧Vを印加しても酸素イオンが大気側電極53に向けて移動することもなく、この場合には、すなわち0.9Vよりも高い印加電圧Vを印加した場合には、排気側電極52と固体電解質層51との境界面において水分の分解が生じ、それにより図11(B)において(A/F)lで示したように、出力電流Iは印加電圧Vが急激に上昇することになる。
さて、空燃比センサ40、41に素子割れが発生すると、排気ガスが図6に示したように、基準ガス室55内に進入する。すなわち、図11(A)において、排気ガスが大気側に侵入する。このとき排気ガスの空燃比がリーン空燃比である場合には、リーン空燃比の排気ガスが基準ガス室55内に侵入することになる。リーン空燃比の排気ガスが基準ガス室55内に侵入すると、基準ガス室55内の酸素濃度は若干低下する。しかしながらこの場合、大気側の酸素分圧Paの方が依然として排気側の酸素分圧Pdよりも高く、しかもこのときには大気側の酸素分圧Paと排気側の酸素分圧Pdとの比はそれほど大きくないため、0.1V程度の起電力Eが発生する。この場合には、印加電圧Vを増大しても、排気側電極52の表面上に供給される酸素の量が律速されているためにポンピング作用によって送り込まれる酸素イオンの量は一定量に制限される。したがって図11(B)において(A/F)lで示したように、出力電流Iは印加電圧Vが変化しても一定に維持される、すなわち限界電流が生ずることになる。したがって、空燃比センサ40、41に素子割れが発生しても、出力電流Iは印加電圧Vの変化に対して正常時と同様に変化することになる。
図12(A)は、空燃比センサ40、41が正常な場合において、排気ガスの空燃比がリーン空燃比であるときの出力電流Iの変化を示しており、図12(B)は、空燃比センサ40、41に素子割れが発生した場合において、排気ガスの空燃比がリーン空燃比であるときの出力電流Iの変化を示している。図12(A)と図12(B)とを比較するとわかるように、排気ガスの空燃比がリーン空燃比である場合には、空燃比センサ40、41が正常であろうと、空燃比センサ40、41に素子割れが発生していようと、印加電圧Vの変化に対する出力電流Iの変化パターンはほとんど同じである。したがって、図8に示したように、排気ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比である場合には、空燃比センサ40、41が正常であろうと、空燃比センサ40、41に素子割れが発生していようと、空燃比センサ40、41の出力電流Iは空燃比A/Fが高くなるとほぼ同じ値でもって増大することになる。したがって、排気ガスの空燃比がリーンのときの出力電流Iの変化からは、空燃比センサ40、41に素子割れが発生したか否かを判別することはできない。
これに対し、空燃比センサ40、41に素子割れが発生しているときに排気ガスの空燃比がリッチ空燃比になると、出力電流Iは正常時に比べて大きく変化する。すなわち、空燃比センサ40、41に素子割れが発生しているときに排気ガスの空燃比がリッチ空燃比になると、多量の未燃ガスが基準ガス室55内に進入する。すなわち、図11(A)において、多量の未燃ガスが大気側に侵入する。多量の未燃ガスが基準ガス室55内に進入すると、これら未燃ガスは大気側電極53の表面上において酸素と反応し、したがって大気側電極53の表面上は酸欠状態となる。このとき大気側電極53の表面上における酸素分圧Paと排気側電極52の表面上における酸素分圧Pdとの比が小さくなり、したがってこのとき発生する起電力Eは0.1V程度となる。このように0.1V程度の起電力Eが発生しているときに0.1V程度の印加電圧Vを印加すると、起電力Eと印加電圧Vとは極性が逆向きなので、図12(C)において実線で示したように、空燃比センサ40、41の出力電流Iは零となる。この状態から印加電圧Vを低下させていくと酸素イオンが排気側電極52に向けて移動を開始する。ところがこのとき、上述したように、排気側電極52の表面上に供給される未燃ガスの量は拡散律速層54によって律速されている。したがって、印加電圧Vを低下させても、排気側電極52に達する酸素イオンの量は一定量に制限され、したがって図12(C)において実線で示したように、出力電流Iは印加電圧Vが変化しても一定に維持される、すなわち限界電流が生ずることになる。
一方、このように0.1V程度の起電力Eが発生しているときには排気側電極52の表面上には酸素が存在していない。したがって、このとき0.1Vよりも高い印加電圧Vを印加しても酸素イオンが大気側電極53に向けて移動することもない。この場合には、すなわち0.1Vよりも高い印加電圧Vを印加した場合には、排気側電極52と固体電解質層51との境界面において水分の分解が生じ、それにより図12(C)において実線で示したように、出力電流Iは印加電圧Vが急激に上昇することになる。すなわち、空燃比センサ40、41に素子割れが発生しているときに、排気ガスの空燃比がリッチ空燃比になると、図12(C)において実線で示したように出力電流Iの変化パターンは、図12(C)において破線で示す正常の出力電流Iの変化パターンに対して、矢印で示したように起電力Eが低下した分(0.8V)だけ印加電圧Vの低下方向に移動した形となる。したがって、空燃比センサ40、41に素子割れが発生しているときに、排気ガスの空燃比がリッチ空燃比になると、図8及び図9に示したように、空燃比センサ40、41の出力電流Iは正の電流値となり、すなわち空燃比センサ40、41の出力電流に対応する空燃比(以下、「出力空燃比」という)がリーン空燃比を示し、しかもこのとき、図9に示したように、空燃比センサ40、41への印加電圧Vを増大させると空燃比センサ40、41の出力電流Iが急速に増大することになる。
図13に、図12(B)に示した出力電流Iの変化をXで示し、図12(C)において実線で示した出力電流Iの変化をYで示す。すなわち、図13において、Xは、空燃比センサ40、41が正常である場合或いは空燃比センサ40、41に素子割れが発生している場合において、排気ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比にされているときの印加電圧V対する出力電流Iの変化を示している。一方、Yは、空燃比センサ40、41に素子割れが発生している場合において排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比にされたときの印加電圧V対する出力電流Iの変化を示している。さて、空燃比センサ40、41、例えば下流側空燃比センサ41に素子割れが発生した場合には、排気ガスの空燃比がリッチ空燃比にされたときに、図13のYで示したように、下流側空燃比センサ41の出力電流Iは正の電流値となる。すなわち、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比を示す。したがって、排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比にされたときに、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが正の電流値となっている場合には、すなわち、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比を示している場合には下流側空燃比センサ41に素子割れが発生していると判断できるようにみえる。
しかしながら、実際には、下流側空燃比センサ41が正常であったとしても、排気ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比にされたときに、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが正の電流値となる場合、すなわち、下流側空燃比センサ41の出力空燃比sがリーン空燃比を示す場合がある。このように排気ガスの空燃比がリッチ空燃比にされたときに下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比を示す場合としては、上述したように気筒間で排気空燃比にインバランスが発生している場合が挙げられる。
すなわち、気筒間で排気空燃比にインバランスが発生していると、一部の気筒では排気ガスの空燃比がリッチ空燃比となり、残りの気筒では排気ガスの空燃比がリーン空燃比となる。このため、排気ガスの平均空燃比としては理論空燃比近傍になっていたとしても、機関本体から排出された排気ガス中の未燃ガスの量は多い。未燃ガス中には一定の割合で水素が含まれているため、この場合には排気ガス中には水素が多く含まれることになる。ここで、水素は他の成分に比べて分子径が小さいことから、空燃比センサ40、41の拡散律速層を通過しやすい。このため、排気ガス中に水素が多く含まれると、空燃比センサ40、41の出力電流Iは実際の排気ガスの空燃比に対応する出力電流よりも大きくなる。したがって、空燃比センサ40、41の出力空燃比がリッチ側にずれた値となる。
このように空燃比センサ40、41の出力空燃比がリッチ側にずれた状態で、上流側空燃比センサ40の出力空燃比に基づいて空燃比が目標空燃比になるようにフィードバック制御すると、各気筒への燃料噴射量が減量される。このため、排気ガスの実際の平均空燃比は目標空燃比よりもリーンとなり、このような状態で空燃比をリッチ空燃比にすべく各気筒への燃料噴射量が増量されても平均空燃比はリーン空燃比となる場合がある。この場合には、下流側空燃比センサ41が正常であったとしても、目標空燃比がリッチ空燃比にされたときに、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが正の電流値となり、よってその出力空燃比がリーン空燃比を示すことになる。
このため、目標空燃比がリッチ空燃比にされたときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比を示している場合には、必ず下流側空燃比センサ41に素子割れが発生していると判断すると誤判断する可能性がある。したがって、下流側空燃比センサ41の素子割れの診断は、気筒間での排気空燃比のインバランスを考慮して行う必要がある。
<異常診断の原理>
ところで、上述したように空燃比センサに限界電流が発生する電圧よりも高い電圧を印加すると、排気側電極52と固体電解質層51との境界面において水分の分解が生じ、それにより出力電流Iは印加電圧Vの上昇に伴って上昇する。このとき出力電流Iが上昇する程度は、下流側空燃比センサ41の素子温度に応じて変化する。
図14は、排気ガスの目標空燃比がリッチ空燃比であるときの印加電圧Vと出力電流Iとの関係を示している。図中のX1は、下流側空燃比センサ41が正常であってその素子温度が高温(例えば、700℃)である場合の関係を、図中のX2は、下流側空燃比センサ41が正常であってその素子温度が低温(例えば、650℃)である場合の関係をそれぞれ示している。一方、図中のY1は、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生していてその素子温度が高温である場合の関係を、図中のY2は、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生していてその素子温度が低温である場合の関係をそれぞれ示している。加えて、図中のZ1は、気筒間で排気空燃比のインバランスが発生していて下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合の関係を示している。また、図中のZ2は、気筒間で排気空燃比のインバランスが発生していて下流側空燃比センサ41の素子温度が低温である場合の関係を示している。
図14に示したように、下流側空燃比センサ41が正常である場合、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合にも低温である場合にも、下流側空燃比センサ41ではほぼ同一の印加電圧Vの範囲において同一の出力電流Iが発生する。ところが、限界電流が発生する電圧よりも印加電圧が高い領域では、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合(図中のX1)には、低温である場合(図中のX2)に比べて、印加電圧Vの上昇に伴う出力電流Iの上昇量が大きい。これは、限界電流が発生する電圧よりも印加電圧が高い領域では排気側電極52と固体電解質層51との境界面において水分の分解が生じるが、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温であるほど分解反応が促進されるためだと考えられる。
一方、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生している場合、上述したように排気ガスの空燃比がリッチ空燃比であるときには、下流側空燃比センサ41の出力電流Iは正の電流値となる。このとき、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合(図中のY1)には、低温である場合(図中のY2)に比べて、出力電流Iが大きい。これは、下流側空燃比センサ41の素子温度が高いほど、固体電解質層51との境界面における水分の分解反応が促進されるためだと考えられる。
一方、下流側空燃比センサ41は正常であるが、排気空燃比に気筒間でインバランスが発生している場合、上述したように上流側空燃比センサ40の出力空燃比がリッチ側にずれる。このようにリッチ側にずれた上流側空燃比センサ40の出力空燃比に基づいてフィードバック制御を行うと、実際の排気空燃比は目標空燃比よりもリーン側の値となる。この結果、図14に実線Z1示したように、気筒間で排気空燃比にインバランスが生じている場合には、インバランスが生じていない場合に比べて、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが大きくなるようにずれ、すなわちその出力空燃比がリーン側にずれることになる。また、このようにインバランスが発生している場合には、実際の排気空燃比が目標空燃比よりもリーン側にずれているだけであり、下流側空燃比センサ41自体には異常が生じていない。このため、この場合、下流側空燃比センサ41が正常であってインバランスが生じていない場合と同様に、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合(図中のZ1)と低温である場合(図中のZ2)とで限界電流領域における挙動は同一となる。しかしながら、限界電流が発生する電圧よりも印加電圧が高い領域では、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合(図中のZ1)には、低温である場合(図中のZ2)に比べて、印加電圧Vの上昇に伴う出力電流Iの上昇量が大きくなる。
ここで、印加電圧を0.45Vに固定し、下流側空燃比センサ41の素子温度が低温である場合を考える。この場合、図14に示したように、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生しているとき(図中のY2)と、下流側空燃比センサ41は正常だがインバランスが発生しているとき(図中のZ2)とで出力電流Iがほぼ等しくなる。このため、この場合には、下流側空燃比センサ41に素子割れが生じているのか、気筒間でインバランスが生じているのかを判断することができない。
また、下流側空燃比センサ41に素子割れが生じている場合、下流側空燃比センサ41の出力電流Iは、下流側空燃比センサ41周りの排気ガスの実際の空燃比に比例して変化するわけではない。このため、仮に下流側空燃比センサ41に素子割れが発生していて且つ気筒間で排気空燃比にインバランスが生じているときであっても、下流側空燃比センサ41の出力空燃比はインバランスのみが生じていて素子割れが生じていないときの出力空燃比と同程度になる場合がある。このため、下流側空燃比センサ41の素子温度が低温である場合には、仮に上述したようにインバランス度合いを推定することができたとしても、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生しているか否かを正確に判断することはできない。
一方、下流側空燃比センサ41の素子温度が高温である場合を考える。この場合、図14に示したように、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生しているとき(図中のY1)と、下流側空燃比センサ41は正常だが気筒間で排気空燃比にインバランスが発生しているとき(図中の「Z1)とで出力電流Iは大きく異なる。具体的には、図14に示したように、素子割れが生じているときの方が気筒間で排気空燃比にインバランスが発生しているときよりも出力電流Iが大きくなる。したがって、下流側空燃比センサ41の素子温度を高温にすれば、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生している場合と、気筒間で排気空燃比にインバランスが発生している場合とを切り分けることができる。
一方、気筒間で排気空燃比にインバランスが発生していない場合、排気ガスの目標空燃比がリッチ空燃比であるときに下流側空燃比センサ41の出力電流Iが正の値になったとき、すなわち出力空燃比がリーン空燃比となったときには、下流側空燃比センサ41には素子割れが発生していると判断することができる。このため、この場合、下流側空燃比センサ41の素子温度を高温にする必要がない。
<空燃比センサの異常診断>
そこで、本実施形態に係る異常診断装置は、下流空燃比センサ41の異常を検出すべく下流側空燃比センサ41周りを流通する排気ガスの目標空燃比がリッチ空燃比にされた場合に下流側空燃比センサ41の出力電流Iがリーン空燃比に対応する所定の閾値以上になったときに下流側空燃比センサに素子割れが生じていると判定するようにしている。加えて、下流側空燃比センサ41の異常を検出すべきときには、インバランス度合い推定部によって推定されたインバランス度合いが所定の基準値以上に大きくなった場合には、この基準値よりも小さい場合に比べて、下流側空燃比センサ41の素子温度が高くなるように制御されると共に上記閾値を高く設定するようにしている。以下、図15及び図16を参照して、本実施形態における下流側空燃比センサ41の異常診断について説明する。
図15は、下流側空燃比センサ41の異常診断を行う際における、診断フラグ、インバランス度合い、目標空燃比、上流側空燃比センサ40及び下流側空燃比センサ41の出力電流及び下流側空燃比センサ41の素子温度のタイムチャートである。図中の下流側空燃比センサ41の出力電流に関して、破線は下流側空燃比センサ41に素子割れが生じていない場合、実線は下流側空燃比センサ41に素子割れが生じている場合をそれぞれ示している。
図示した例では、時刻t1において、下流側空燃比センサ41の異常診断の実行条件が成立し、異常診断フラグがONとされる。また、図示した例では、時刻t1以前においては、目標空燃比がリッチ設定空燃比とされており、これに伴って上流側空燃比センサ40の出力電流も負の値となっている。すなわち、上流側空燃比センサ40の出力空燃比もリッチ空燃比となっている。また、下流側空燃比センサ41の素子温度は、比較的低い温度T1(例えば、600℃)とされている。
時刻t1において下流側空燃比センサ41の異常診断が開始される。このとき、図15に示した例では、インバランス度合いがほぼゼロとなっている。このため、下流側空燃比センサ41の素子温度は、比較的低い温度T1のまま維持される。なお、温度T1は、内燃機関の通常運転時における下流側空燃比センサ41の素子温度と同一の温度とされる。
その後、異常診断が開始されてから所定時間が経過したとき(例えば、時刻t2)又はそれ以降の下流側空燃比センサ41の出力電流Iに基づいて、下流側空燃比センサ41の異常診断が行われる。下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が生じていない場合には、図15に破線で示したように、下流側空燃比センサ41の出力電流は負の値となる。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比はリッチ空燃比となる。一方、下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が生じている場合には、図15に実線で示したように、下流側空燃比センサ41の出力電流は正の値となる。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比はリーン空燃比となる。この結果、閾値αをゼロ(理論空燃比に相当)よりも僅かに大きな値に設定しておけば、下流側空燃比センサ41に異常が発生していない場合には出力電流が閾値よりも小さい値となる。一方、下流側空燃比センサ41に異常が発生している場合には出力電流は閾値以上となる。これにより、時刻t2における下流側空燃比センサ41の出力電流が閾値α以上であるときには下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生していると判定することができる。一方、時刻t2における下流側空燃比センサ41の出力電流が閾値α未満であるときには下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生していないと判定することができる。
図16は、下流側空燃比センサ41の異常診断を行う際における、図15と同様な、目標空燃比等のタイムチャートである。図16においても、下流側空燃比センサ41の出力電流に関して、破線は下流側空燃比センサ41に素子割れが生じていない場合、実線は下流側空燃比センサ41に素子割れが生じている場合をそれぞれ示している。図16に示した例においても、時刻t1以前において図15に示した例と同様な制御が行われており、且つ、時刻t1において下流側空燃比センサ41の異常診断の実行条件が成立する。特に、図16に示した例は、気筒間での排気空燃比のインバランス度合いが大きい場合を示している。
図16に示した例では、インバランス度合いが大きなものとなっているため、時刻t1において異常診断が開始されると、ヒータ部56により下流側空燃比センサ41の素子温度が比較的高い温度T2(例えば、700℃)まで上昇せしめられる。
その後、異常診断が開始されてから所定時間経過したとき(例えば、時刻t2)又はそれ以降の下流側空燃比センサ41の出力電流に基づいて、下流側空燃比センサ41の異常診断が行われる。図16に示した例では、インバランス度合いが大きくなっているため、下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が生じていない場合においても、その出力電流は正の値となる(図16の破線)。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比はリーン空燃比となる。ただし、この場合、下流側空燃比センサ41の素子温度を比較的高い温度T2まで上昇させても、下流側空燃比センサ41の出力電流は増大しない。
一方、下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が生じている場合にも、下流側空燃比センサ41の出力電流が正の値となる。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比となる。加えて、この場合、下流側空燃比センサ41の素子温度を比較的高い温度T2まで上昇させると、その出力電流が増大する。この結果、閾値αを、インバランス度合いが低い場合における閾値よりも高い所定の値に設定しておけば、下流側空燃比センサ41に異常が発生していない場合には出力電流が閾値よりも大きな値となる。一方、下流側空燃比センサ41に異常が発生していない場合には出力電流は閾値α以上となる。これにより、時刻t2における下流側空燃比センサ41の出力電流が閾値α以上であるときには下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生していると判定することができる。一方、時刻t2における下流側空燃比センサ41の出力電流が閾値α未満であるときには下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生していないと判定することができる。
以上より、本実施形態によれば、気筒間で排気空燃比のインバランスが発生している場合であっても、下流側空燃比センサ41の素子割れの異常を正確に診断することができる。
なお、本実施形態では、下流側空燃比センサ41の異常診断が開始されたときのインバランス度合いに応じて、異常診断中における下流側空燃比センサ41の目標素子温度が設定される。具体的には、例えば、図17(A)に示したように、インバランス度合いが所定の基準値以上になるとステップ的に目標素子温度が上昇せしめられる。この場合には、閾値αも、インバランス度合いが上記基準値以上になるとステップ的に増大せしめられる。
或いは、下流側空燃比センサ41の目標素子温度は図17(B)に示したように設定されてもよい。具体的には、インバランス度合いが所定の基準値以上になると、インバランス度合いが増大するほど目標素子温度が上昇せしめられる。この場合には、閾値αも、インバランス度合いが上記基準値以上になると、インバランス度合いが増大するほど増大せしめられる。
また、下流側空燃比センサ41に素子割れが発生すると、上述したように周囲の空燃比がリッチ空燃比であっても下流側空燃比センサ41の出力電流が負の値となる。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比になる。この結果、上述したような基本的な制御を行っていると、目標空燃比がリッチ空燃比に設定される時間が長くなり、よって上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比に偏ってしまう。そこで、本実施形態では、空燃比センサ40、41に素子割れの異常が生じていると判定された場合には、目標空燃比を設定可能なリッチ度合いの上限値(設定可能な目標空燃比の下限値)、すなわちリッチガート空燃比を増大させるようにしている。
図18は、下流側空燃比センサ41の素子温度を比較的高い温度T2に制御しているときの下流側空燃比センサ41の出力電流Iとリッチガード空燃比との関係を示している。図18からわかるように、リッチガード空燃比は、出力電流Iが大きくなるほど、すなわち出力電流Iに相当する空燃比がリーン側の値になるほど、大きな空燃比とされ、すなわちそのリッチ度合いが小さくされる。したがって、出力電流Iが大きくなるほど、すなわち大きな素子割れが発生するほど、リッチガード空燃比のリッチ度合いが低下せしめられる。これにより、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比に偏ってしまうのを抑制することができる。
<フローチャート>
図19は、本実施形態における異常診断制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンでは、まず、ステップS11では、異常診断制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。異常診断制御の実行条件が成立しているときとは、例えば、内燃機関の始動後に未だ異常診断が実行されていないこと、空燃比センサ40、41が活性していること等を満たしている場合が考えられる。ステップS11において、異常診断制御の実行条件が成立していないと判定された場合には、制御ルーチンが終了せしめられる。
一方、ステップS11において、異常診断制御の実行条件が成立していると判定された場合には、ステップS12へと進む。ステップS12では、診断フラグがONとされる。診断フラグは、異常診断制御の実行中にONとされ、それ以外のときにはOFFとされるフラグである。次いで、ステップS13では、目標空燃比AFTがリッチ設定空燃比AFTrichに設定される。なお、このときの目標空燃比AFTは、必ずしもリッチ設定空燃比AFTrichでなくてもよく、リッチ設定空燃比AFTrich以下のリッチ空燃比であれば如何なる空燃比であってもよい。目標素子温度が設定されると、下流側空燃比センサ41の素子温度がこの目標素子温度となるように、ヒータ部56が制御される。
次いで、ステップS14では、インバランス度合い推定部によってインバランス度合いが推定される。次いで、ステップS15では、ステップS14で算出されたインバランス度合いに基づいて、図17に示したようなマップを用いて、目標素子温度が設定される。ステップS16では、ステップS14で算出されたインバランス度合いに基づいて、閾値αが設定される。
次いで、ステップS17では、診断フラグがONにされてからの経過時間が所定時間Δt0以上であるか否かが判定される。この所定時間Δt0は、ヒータ部56による下流側空燃比センサ41の加熱が開始されてからその素子温度が目標素子温度に達するのに必要な時間よりも長い時間とされる。所定時間Δt0は目標素子温度が高くなるほど長くなるように設定されてもよいし、予め定められた一定の値とされてもよい。経過時間が所定時間Δt0よりも短いと判定された場合には、制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS17において、経過時間が所定時間Δt0以上であると判定された場合には、ステップS18へと進む。
ステップS18では、下流側空燃比センサ41の出力電流AFdwnがステップS16において設定された閾値α以上であるか否かが判定される。ステップS18において、出力電流AFdwnが閾値α以上であると判定された場合には、ステップS19へと進み、下流側空燃比センサ41には異常が生じていると判定され、ステップS21へと進む。一方、ステップS18において、出力電流AFdwnが閾値αよりも小さいと判定された場合には、ステップS20へと進む。ステップS20では、下流側空燃比センサ41は正常であると判定され、ステップS21へと進む。ステップS21では、診断フラグがOFFにされ、制御ルーチンが終了せしめられる。
<第一実施形態の変更例>
次に、図20を参照して、第一実施形態の変更例について説明する。上記第一実施形態では、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが閾値α以上であるか否かに基づいて下流側空燃比センサ41の異常診断を行っている。しかしながら、下流側空燃比センサ41の出力電流Iにはノイズ等が発生することから、下流側空燃比センサ41周りの排気ガスの平均空燃比が閾値αに対応する空燃比よりも小さいにもかかわらず、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが偶発的に閾値α以上になってしまう場合が存在する。このように、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが偶発的に閾値α以上になってしまうと、実際には下流側空燃比センサ41には異常が生じていないにもかかわらず、下流側空燃比センサ41に異常が発生していると判定されてしまうことになる。そこで、本変更例では、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが所定の閾値以上になる頻度に基づいて下流側空燃比センサ41の異常診断を行うようにしている。
図20は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比と累積出力頻度との関係を示す図である。図中に累積出力頻度は、下流側空燃比センサ41の異常診断実行中の一定期間中における下流側空燃比センサ41の出力頻度を表している。具体的には、図20は、リーン側から下流側空燃比センサ41の出力頻度を累積したものである。よって、図中のリーン側では累積出力頻度はゼロになっており、一方、図中のリッチ側では累積出力頻度は100%となっている。なお、図中の実線は下流側空燃比センサ41が正常である場合、図中の破線は下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が生じている場合をそれぞれ示している。また、図中の実線及び破線のいずれも、気筒間における排気空燃比のインバランスは生じていない場合を示している。
図20からわかるように、下流側空燃比センサ41が正常であるときには、その出力空燃比が所定の閾値α1以上になる頻度はそれほど多くなく、所定の基準頻度f未満となっている。一方、下流側空燃比センサ41に異常が生じているときには、その出力空燃比が所定の閾値α1以上になる頻度は比較的多く、所定の基準頻度f以上となっている。そこで、本変更例では、インバランス推定部によって推定されたインバランス度合いが基準値よりも小さい場合、例えば、ゼロである場合、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が所定の閾値α1以上になる頻度が基準頻度fよりも低いときには下流側空燃比センサ41には異常が生じていないと判定する。一方、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が所定の閾値α1以上になる頻度が基準頻度f以上であるときには、下流側空燃比センサ41に異常が生じていると判定する。
また、上記第一実施形態と同様に、閾値αは、インバランス度合いに応じて設定される。具体的には、インバランス度合いが大きくなるほど、閾値αも増大せしめられる(例えば、図20のα2)。これにより、インバランス度合いが大きくなって出力空燃比がリーン度合いの大きいリーン空燃比になる頻度が増大しても、下流側空燃比センサ41の異常を正確に判定することができる。
<第二実施形態>
次に、図22及び図23を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る装置の構成及び制御と同様である。
ところで、下流側空燃比センサ41の素子温度を或る一定以上の高温(例えば、700℃以上)にした場合、下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生しているときの出力電流Iは非常に大きくなる。このため、この場合、下流側空燃比センサ41に素子割れが生じているときの出力電流Iは、素子割れが生じておらず且つ気筒間で排気空燃比に素子割れが生じている場合の出力電流Iよりも大きくなる。この様子を、図21に示す。
図21は、下流側空燃比センサ41の素子温度を高温にした場合における排気ガスの目標空燃比がリッチ空燃比であるときの印加電圧Vと出力電流Iとの関係を示す、図14と同様な図である。図中のXは、下流側空燃比センサ41が正常であってインバランスが発生していない場合を示している。また、図中のYは、下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生していてインバランスが発生していない場合を示している。さらに、図中のZは、下流側空燃比センサ41が正常であってインバランスが発生している場合を示している。
図21からわかるように、下流側空燃比センサ41の印加電圧を0.45Vとした場合、下流側空燃比センサ41に素子割れの異常が発生している場合(図中のY)には、インバランスが発生している場合(図中のZ)に比べて出力電流Iが大きい。したがって、閾値をこれらの間に設定することにより、気筒間で排気空燃比にインバランスが発生している場合でも、下流側空燃比センサ41への素子割れの発生を検知することができる。
ただし、気筒間で排気空燃比にインバランスが発生している場合における下流側空燃比センサ41の出力電流Iは、インバランス度合いが大きくなるほど大きくなる。例えば、図中にZで示したときよりもインバランス度合いが大きくなると、下流側空燃比センサ41の出力電流Iは図21にZ’で示したようになる。したがって、下流側空燃比センサ41への素子割れの発生を判定する閾値をインバランス度合いに応じて変化させることで、具体的にはインバランス度合いが大きいほど閾値を高くすることで、素子割れの判定精度を高めることができる。
そこで、本実施形態に係る異常診断装置は、下流側空燃比センサ41の異常を検出すべく下流側空燃比センサ41周りを流通する排気ガスの目標空燃比がリッチ空燃比にされた場合に下流側空燃比センサ41の出力電流Iがリーン空燃比に対応する所定の閾値以上になったときに下流側空燃比センサ41に素子割れが生じていると判定するようにしている。加えて、下流側空燃比センサの異常を検出すべきときには、インバランス度合い推定部によって推定されたインバランス度合いが所定の基準値以上に大きくなったときには、この基準値よりも小さい場合に比べて、閾値を高く設定するようにしている。
具体的には、閾値αは、図22(A)に示したように、インバランス度合いが所定の基準値以上になるとステップ的に増大せしめられる。或いは、閾値αは、図22(B)に示したように、設定されてもよい。すなわち、インバランス度合いが所定の基準値以上になると、インバランス度合いが増大するほど閾値が増大せしめられる。
なお、本実施形態についても、上記第一実施形態の変更例と同様に、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが閾値以上になったか否かに基づいて異常診断を行う代わりに、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが所定の閾値以上になる頻度が基準頻度以上であるか否かに基づいて異常診断を行ってもよい。
<フローチャート>
図23は、本実施形態における異常診断制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図23に示したフローチャートでは、下流側空燃比センサ41の出力電流Iが所定の閾値以上になる頻度が基準頻度以上であるか否かに基づいて異常診断を行うようにしている。図23のステップS31〜S34は、図19のステップS11〜S34と同様であるため説明を省略する。ステップS35では、ステップS34で算出されたインバランス度合いに基づいて、図22に示したようなマップを用いて閾値αが設定される。
次いで、ステップS36では、下流側空燃比センサ41の出力電流IがステップS35において設定された閾値α以上であるか否かが判定される。ステップS36において、出力電流AFdwnが閾値αよりも小さいと判定された場合には、ステップS37がスキップされる。一方、ステップS36において、出力電流AFdwnが閾値α以上であると判定された場合には、ステップS37へと進む。ステップS37では、リーン時間のみをカウントするリーン時間カウンタCLがカウントアップされる。
次いで、ステップS38では、異常診断が開始されてからの時間をカウントするモニタ時間カウンタCMが予め定められた所定時間TM以上であるか否かが判定される。モニタ時間カウンタCMが所定時間TM未満であると判定された場合には、下流側空燃比センサ41の出力電流Iのデータが十分に集まっていないため、制御ルーチンが終了せしめられる。一方、モニタ時間カウンタCMが予め定められた所定時間TM以上であると判定された場合には、ステップS39へと進む。ステップS39では、ステップS37で算出されたリーン時間カウンタCLに基づいて下記式(2)によりリーン出力頻度FLが算出される。
FL=CL/TM×100 …(2)
次いで、ステップS40では、ステップS39で算出されたリーン出力頻度FLが基準頻度f以上であるか否かが判定される。リーン出力頻度FLが基準頻度f以上であると判定された場合には、ステップS41へと進み、下流側空燃比センサ41には異常が生じていると判定され、ステップS43へと進む。一方、ステップS40において、リーン出力頻度FLがfよりも小さいと判定された場合には、ステップS42へと進み、下流側空燃比センサ41は正常であると判定され、ステップS43へと進む。ステップS43では、診断フラグがOFFにされ、リーン時間カウンタCL及びモニタ時間カウンタCMがゼロにリセットされて、制御ルーチンが終了せしめられる。
1 機関本体
5 燃焼室
7 吸気ポート
9 排気ポート
19 排気マニホルド
20 上流側排気浄化触媒
24 下流側排気浄化触媒
31 ECU
40 上流側空燃比センサ
41 下流側空燃比センサ

Claims (1)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられ且つ空燃比に応じた限界電流を発生させる空燃比センサの異常診断装置において、
    前記空燃比センサの出力電流を検出する電流検出部と、前記空燃比センサの素子温度を制御するセンサ温度制御部と、気筒間の空燃比の不均一性であるインバランス度合いを推定するインバランス度合い推定部とを具備し、
    当該異常診断装置は、前記空燃比センサの異常を検出すべく該空燃比センサ周りを流通する排気ガスの目標空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比にされた場合に前記空燃比センサの出力電流が理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する所定の閾値以上になったとき又は該閾値以上になる頻度が所定頻度以上になったときに前記空燃比センサに素子割れが生じていると判定し、
    前記空燃比センサの異常を検出すべきときには、前記インバランス度合い推定部によって推定された前記インバランス度合いが所定の基準値以上に大きくなった場合には、該基準値よりも小さい場合に比べて、前記センサ温度制御部によって前記空燃比センサの素子温度が高くなるように制御されると共に前記閾値が高く設定される、空燃比センサの異常診断装置。
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