JP2016193000A - チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する生体インプラントおよびその製造方法 - Google Patents

チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する生体インプラントおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】術前など生体外では可視光に応答して光触媒活性を示すことにより感染を防止する抗菌性を有し、かつ術後の可視光が届かない生体内や皮膚接触部分でも抗菌性を有し、かつ速やかな骨形成能を兼ね備える、チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する、固定具等も含む生体インプラントおよびその安価な製造方法を提供する。
【解決手段】生体インプラントは、チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する生体インプラントであって、アルカリ処理、銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理、及び加熱処理によって、該基体の表面は、網目構造が形成された改質層を備え、前記改質層は、少なくともその表面にアナターゼ型酸化チタン相を含有し、かつ銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素がドープされている、ことを特徴とする。
【選択図】図24

Description

本発明は、生体インプラントとその製造方法に関する。
疾病や外傷等の治療のために使用される人工骨、創外固定具、内固定具や、失われた関節機能を再建するために使用される人工関節、歯科領域で使用される人工歯根等の生体インプラントは、近年医療分野において広く用いられている。これら固定具を含めて、生体インプラントの基体は、骨内等に固定して使用されることから高強度、高破壊靭性を必要とし、ステンレス合金やコバルト・クロム合金、チタン合金などが主に使用されている。その中でも、チタン金属およびチタン合金は、軽量であること、金属であっても生体に無害であること、およびその酸化物が光触媒活性を有することなどの点から注目されている。
人工骨等のインプラントの基体は、移植代替物であるので、生体骨との親和性(骨親和性)を有することが非常に重要である。基体が骨親和性を示す条件は、第一に、体液中で表面に骨の成分であるヒドロキシアパタイト(以下、「アパタイト」という)層を形成することであるので、生体骨との親和性に関して、アパタイトの果たす役割は本質的なものである。
チタン金属およびチタン合金は、生体に無害であるが、その表面自体は生体不活性で、生体骨との親和性が低いため、そのままでは周囲の骨と結合しない。従って、インプラントとして実用化する場合には、チタン金属やチタン合金と、骨組織との間の密着強度が増大するまでに長期間を要し、この結果、埋設したインプラントがゆるんでしまうといった問題を解決する必要があった。
例えば、インプラントの基体として、チタン金属やチタン合金を使用した場合、顎骨に埋入されたインプラントが咬合力を支持できるまで(骨組織がインプラントに結合するまで)、通常下顎で3ヶ月、上顎で6ヶ月の治癒期間が必要となると言われており、この様な治療期間の長期化は、患者や術者の不満を募らせる要因ともなっている。
この様な事情から、骨親和性を付与・向上させるために、チタン金属またはチタン合金の基体表面に生体活性を付与することが試みられている。
一般的に、インプラント基体表面に生体活性を付与する方法としては、例えば、フルオロアパタイトを含有するショット材を用いたサンドブラスト法を用いて表面を粗面処理したり(特許文献1)、ヒドロキシアパタイトや金属酸化物等の酸化物材料などを基体表面に付着させて膜を形成する、コーティング法が研究されている(特許文献2)。
コーティング方法としては、プラズマ溶射法、フレーム溶射法などの溶射法や、ゾルゲルコーティング法などがある。溶射法は、被覆材料粉末などを高温ガス流中に存在させ、高温ガス流とともに基体表面に衝突させて付着させることで、生体活性を付与するものである。
しかしながら、前述の溶射法には、被覆材料粉末を高温ガス流中に存在させ、高温ガス流とともに基体表面に衝突させて付着させることから、アパタイトが熱分解してしまうこと、金属イオン等を均一に導入することができないこと、基体と、形成された酸化チタン膜やアパタイト膜等との間の密着性が非常に低いことなどの問題点がある。
また、ゾルゲル法には、生成された被膜が、同様にチタン基体との密着性が非常に低いこと、さらに、これらの方法で信頼性の高いコーティング層を形成するためには、処理プロセスが複雑になり、高価な装置が必要となり製造コストが高くなることなどの、問題点がある。
一方、これら生体インプラントは、置換手術時における細菌等の微生物感染の感染源になる可能性があるという問題もあり、生体外で抗菌性を有する生体インプラントが求められていた。
本発明者は、そのような生体外で抗菌性を有する生体インプラントとして、特許文献3において、チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する生体インプラントであって、アルカリ処理およびアンモニア処理によって、該基体の表面は網目構造が形成された改質層を備え、改質層は少なくともその表面にアナターゼ型酸化チタン相を含有しアルカリチタン酸塩の非晶質相を実質的に含有しないこと、を特徴とする生体インプラントを報告した。この生体インプラントは、生体外では抗菌性を有し、かつ、生体内では優れた骨親和性を示す。
医療材料に、抗菌性を付与する方法としては、銀などの抗菌性を示す元素を含有させた合金が知られている。例えば特許文献4には、チタンに銀を添加したチタン銀合金が開示され、バイオフィルムに対する付着増殖抑制機能が付与されたことが記載されている。
特開2009−136632号公報 特開2003−52805号公報 国際公開第2014/136567号 特開2010−121153号公報
しかしながら、特許文献3に記載の生体インプラントは、生体外では抗菌性を有し、かつ、生体内では優れた骨親和性を示すものの、生体内では抗菌性を有さないと考えられる。また、特許文献4に記載のチタン銀合金の骨親和性は明らかにされていない。
更に、創外固定具のように、生体外であっても生体と接触させて使用する生体インプラントの場合には、接触部分に光が当たらないため抗菌性を有さず、感染症を引き起こす恐れがある。具体的には、整形外科領域における術後感染症の発生確率は、人工膝関節において1.5%、人工股関節において、0.7%、脊椎固定具において3.7%、創外固定具において51%であることが知られている。
この発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、術前など生体外では可視光に応答して光触媒活性を示すことにより感染を防止する抗菌性を有し、かつ術後の可視光が届かない生体内や皮膚接触部分でも抗菌性を有し、かつ速やかな骨形成能を兼ね備える、チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する、固定具等も含む生体インプラントおよびその安価な製造方法を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決するため、抗菌性を示す元素を用いることを検討したところ、驚くべき事に、チタン系インプラント基体をアルカリ処理し、次いで、銀イオンと特定の金属イオンを含有する水溶液で処理し、更に加熱処理を行うことにより、チタン系インプラント基体の表面に高密度で抗菌イオン担持酸化チタンが形成され、可視光が届かない生体内での高い抗菌性と骨結合性が得られるだけでなく、可視光応答型光触媒活性(細胞付着抑制効果)が著しく増加することを見出した。本発明者は、更に検討を行い、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の態様を含む。
(1)チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する生体インプラントであって、
アルカリ処理、銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理、及び加熱処理によって、該基体の表面は、網目構造が形成された改質層を備え、
前記改質層は、少なくともその表面にアナターゼ型酸化チタン相を含有し、かつ銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素が深さ方向で表面側に局在的にドープされている、
ことを特徴とする、生体インプラント。
(2)前記銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液が、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンを含有し、それぞれのイオン濃度が0.5〜2Mであると好ましい。
(3)前記改質層が、ヒドロキシアパタイトが形成された、ヒドロキシアパタイト層またはヒドロキシアパタイト複合体層をさらに備えると好ましい。
(4)チタン金属又はチタン合金よりなる基体を、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンを含有するアルカリ水溶液に接触させるアルカリ処理を行うステップと、
銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理を行うステップと、
加熱処理するステップを含む、生体インプラントの製造方法。
(5)前記銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液が、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンを含有し、それぞれのイオン濃度が0.5〜2Mであると好ましい。
(6)さらに、擬似体液中でヒドロキシアパタイト層またはヒドロキシアパタイト複合体層を形成させるステップを含むと好ましい。
本発明によれば、術前など生体外では可視光に応答して光触媒活性を示すことにより感染を防止する抗菌性を有し、かつ術後の可視光が届かない生体内や皮膚接触部分でも抗菌性を有し、かつ速やかな骨形成能を兼ね備える、チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する、固定具等も含む生体インプラントおよびその安価な製造方法を提供することができる。
比較例4(銀(1M))の生体インプラントの擬似体液(SBF)浸漬前の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。 比較例4の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 比較例5(亜鉛(1M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 比較例5の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 比較例6(銅(1M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 比較例6の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 比較例7(銅、亜鉛(各1M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 比較例7の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 実施例1(銀、銅(各1M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 実施例1の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 実施例2(銀、亜鉛(各1M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 実施例2の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 実施例3(銀、銅、亜鉛(各1M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 実施例3の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 実施例4(銀、銅、亜鉛(各5M))の生体インプラントのSBF浸漬前のSEM像である。 実施例4の生体インプラントのSBF浸漬後のSEM像である。 比較例4〜6、実施例3、4の生体インプラントのSBF浸漬前の薄膜X線回析(TF−XRD)の回折図である。 比較例4〜6、実施例3、4の生体インプラントのSBF浸漬後のTF−XRDの回折図である。 比較例7、実施例1、2の生体インプラントのSBF浸漬前のTF−XRDの回折図である。 比較例7、実施例1、2の生体インプラントのSBF浸漬後のTF−XRDの回折図である。 比較例4〜6、実施例3、4の生体インプラントのSBF浸漬前のX線光電子分光(XPS)のAg−Ag結合のピーク近傍のスペクトルである。 比較例4〜6、実施例3、4の生体インプラントのSBF浸漬前のXPSのCu−Cu結合、Cu−O結合のピーク近傍のスペクトルである。 比較例4〜6、実施例3、4の生体インプラントのSBF浸漬前のXPSのZn−O結合のピーク近傍のスペクトルである。 比較例1〜7、実施例1〜4で得た試料の可視光下での光触媒能(MB分解率(%))を示す棒グラフである。
本発明の生体インプラントは、チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する。
ここで、生体インプラントとは、疾病や外傷等の治療のために使用される人工骨、創外固定具、内固定具や、失われた関節機能を再建するために使用される人工関節、歯科領域で使用される人工歯根等を包含するものとする。また、基体とは、生体インプラントとして所定の形状に形成したものを含む。
基体としては、金属毒性のない純チタン金属が良いが、成形性の点ではTi−6Al−4V、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−3Al−13V−11Cr、Ti−15Mo−5Nb−3Ta、Ti−6Al−2Mo−Taのような合金でも良い。
基体の表面は、図1に示す様な微細な網目構造(多孔質構造)が形成された改質層を備える。この改質層は、アルカリ・抗菌イオン処理によって形成され、少なくともその表面に、アナターゼ型酸化チタン相を含有し、銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素が深さ方向で表面側に局在的にドープされている。銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素は、生体インプラント中、深さ方向で表面側に局在的に存在しているので、これらの元素の基体全体の含有量が少なくても本願発明の効果が得られる。改質層の表面の銀元素濃度は、5atom%以上20atom%未満であると好ましく、7atom%以上10atom%未満であるとより好ましい。また、改質層に銅元素がドープされている場合の銅元素濃度は、0.1atom%以上20atom%未満であると好ましく、1.2atom%以上1.3atom%未満であるとより好ましい。また、改質層に亜鉛元素がドープされている場合の亜鉛元素濃度は、0.1atom%以上20atom%未満であると好ましく、0.2atom%以上0.3atom%未満であるとより好ましい。ここで、改質層の表面の元素濃度は、XPSで求めた値である。XPSでは、基体の表面から10nm程度の深度までの元素濃度を測定できる。
基体がチタン合金の場合は、構成元素として銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素を含まないものとすることができる。また、構成元素として銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素を含む場合であっても、基体全体のそれぞれの元素濃度は、前述の改質層の表面の元素濃度未満とすることができる。
さらに、基体としては、上記改質層である第一の層の上に、更にアパタイトを主成分とする第二の層(ヒドロキシアパタイト層またはヒドロキシアパタイト複合層)が形成されたものでもよい。
第一の層および第二の層の厚さは特に限定されないが、第一の層の厚さは、0.1〜10ミクロン程度、第二の層の厚さは、1ミクロン以上が好ましい。より好ましくは、第一の層の厚さは、0.5〜5ミクロン、第二の層の厚さは、3〜30ミクロン程度、特に好ましくは、第一の層の厚さは、0.5〜2ミクロン、第二の層の厚さは、5〜20ミクロン程度がよい。
本発明の生体インプラントは、例えば次のような方法で製造することができる。
洗浄、乾燥させた、所定形状所定寸法のチタン金属又はチタン合金よりなる基体を用意する。
チタン金属またはチタン合金の基体をアルカリ性水溶液に接触(浸漬)してアルカリ処理を行う。次に、上記アルカリ処理後の基体を、銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触(浸漬)してドープ処理を行う。その後、基体を加熱処理する。
さらに、加熱処理を行った基体を、アパタイトの溶解度以上のカルシウムCaとリンPを含む水溶液中、例えば擬似体液中に浸漬して、改質層の上に更にアパタイトを主成分とする層が形成されたものとしてもよい。
ここで、アルカリ処理のアルカリ性水溶液のアルカリ性は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属に基づくと好ましい。これらの金属イオンは、水中のヒドロニウムイオンと容易に交換可能だからである。さらに、好ましくはナトリウムNaイオン、カリウムKイオン及びカルシウムCa2+イオンのうち1種以上を含む水溶液である。アルカリ水溶液の好ましい濃度、温度及び反応時間は、それぞれ1〜10モル/L(M)、40〜70℃及び1〜24時間である。
アルカリ処理の後には、洗浄、乾燥を行うことが出来る。洗浄は、例えば、超純水を軽く注ぎ、その後、室温で乾燥させる。乾燥時間は、適宜選択できるが、通常15〜30分である。乾燥状態は、目視で確認できる。
ドープ処理の銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液は、銀イオンと銅イオンを少なくとも含有するか、銀イオンと亜鉛イオンを少なくとも含有し、より好ましくは銀イオンと銅イオンを少なくとも含有し、特に好ましくは銀イオンと銅イオンと亜鉛イオンを少なくとも含有する。この2種類又は3種類のイオンを含有する水溶液を用いると、得られる生体インプラントの光触媒特性が顕著に向上する。
銀イオン源は特に限定されないが、例えば硝酸銀、塩化銀、クロム酸銀、酢酸銀、硝酸銀、フッ化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、リン酸銀が挙げられるが、硝酸銀が好ましい。銅イオン源は特に限定されないが、例えば硝酸銅、塩化銅、クロム酸銅、酢酸銅、硝酸銅、フッ化銅、ヨウ化銅、硫酸銅、リン酸銅が挙げられるが、硝酸銅が好ましい。亜鉛イオン源は特に限定されないが、例えば硝酸亜鉛、塩化亜鉛、クロム酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛が挙げられるが、硝酸亜鉛あるいは塩化亜鉛が好ましい。これらの内、硝酸銀と硝酸銅の組み合わせ、硝酸銀と硝酸亜鉛の組み合わせが好ましく、硝酸銀と硝酸銅と硝酸鉛の組み合わせがより好ましい。
水溶液の銀イオンの濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10M、より好ましくは0.5〜2Mである。水溶液が銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する場合のそれぞれのイオン濃度は、好ましくは0.1〜10M、より好ましくは0.5〜2Mである。水溶液に接触させる際の温度は、好ましくは70〜90℃、より好ましくは、75〜85℃である。水溶液に接触させる際の反応時間は、好ましくは1〜96時間、より好ましくは、46〜50時間である。
ドープ処理の後には、洗浄、乾燥を行うことが出来る。洗浄は、例えば、超純水を軽く注ぎ、その後、室温で乾燥させる。洗浄によって、用いた水溶液が基体表面に残存せず、表面状態のばらつきを抑えることができる。乾燥時間は、適宜選択できるが、通常15〜30分である。乾燥状態は、目視で確認できる。
加熱処理の加熱温度は、好ましくはチタン金属又はチタン合金の転移温度以下の温度とし、より好ましくは300〜800℃、特に好ましくは550〜650℃である。また、加熱処理の時間は、好ましくは0.1〜2時間、より好ましくは0.5〜1.5時間である。この加熱処理によって、酸素が拡散して生成される改質層の厚さが増加し、改質層の密着性が向上する。
加熱後、基体を、アパタイトの溶解度以上のカルシウムとリンを含む水溶液、例えば、擬似体液(SBF)中に浸漬して、改質層の上に更にアパタイトを主成分とする層が形成したものとしてもよい。また、他の公知の方法でアパタイト層を形成してもよい。
擬似体液(SBF)中に浸漬する場合は、上記基体表面にアパタイトを形成させる条件であれば何れでも構わないが、例えば、36〜37℃で1〜10日間浸漬する。
チタン金属又はチタン合金よりなる基体が生体骨との親和性を示す条件は、体液中で表面に骨の成分であるヒドロキシアパタイト(ここでは、「アパタイト」という)層を形成することであり、生体骨との親和性に対してアパタイトの果たす役割は本質的なものである。そして、下記に示すように、擬似体液(SBF)中で試験的に基体表面に形成されるアパタイト層の有無とその程度は、骨親和性の指標とされている(ISO23317:2007)。
(実施例)
本発明を、以下に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。生体インプラントの特性は以下の方法で測定した。
(表面構造分析)
試料表面の構造変化を、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope)、株式会社キーエンス製、VE−8800)、薄膜X線回析(TF−XRD(thin-film X-ray diffractometer)、株式会社リガク製、RINT−2200VL)又はX線光電子分光(XPS(X-ray Photoelectron Spectrometer)、Kratos Analytical Ltd.、AXIS Ultra DLD)により調べた。TF−XRD測定は、X線源:NiフィルタCuKα線、X線出力:40kV,40mA、走査速度:2°/分、サンプリング角度:0.02°の条件で行った。XPS測定は、X線源:単色化AlKα線(1486.7eV)、X線出力:15kV,10mAの条件で行った。各XPSスペクトルの結合エネルギーは、284.8eVのC1sスペクトルにより補正し、各XPSスペクトルについて、ピークフィッティング前にCasaXPSソフトウェア(バージョン2.3.15)によりシャーリーバックグラウンド除去を行った。
試料表面の元素濃度はXPS測定により求めた。元素濃度計算においては、Kratos Axis Ultraに対する各元素の相対感度係数を考慮した。
(可視光下での光触媒能(メチレンブルー分解特性)試験)
試料を、5mLの0.01mMメチレンブルー(MB)水溶液に浸漬し、蛍光灯(10W、波長400〜720nm(可視光))で6時間照射した後、MB分解率(%)を可視紫外分光光度計により調べた。MB分解率(%)は下式で表される。
MB分解率(%)=(ブランクの光度 − 試料の光度 )×100/ブランクの光度
なお、一般的に酸化チタンは、波長300〜400nmの限定された紫外線領域の光照射で光触媒能(抗菌、殺菌等)を有するが、本実施例では、手術室等の室内と同様の可視光下で光触媒能試験を行った。
(大腸菌抗菌試験)
(1)試料に、大腸菌の菌液1ml(菌濃度:10/ml又は10/ml)を滴下し、1時間後(照射群の場合は、1時間、110mW/cmの可視光を照射)に、全量を回収する。
(2)菌液を10/ml、10/ml又は10/mlまで段階希釈する。
(3)各濃度100μlずつ10cmdishにまき、翌日コロニーをカウントし、コロニーフォーミングユニット(CFU/ml)を算出した。
(4)n数を2又は3として、CFU/mlの平均値を算出し、ブランク(菌のみ)を100%としたときの生存率(%)を算出した。
(アパタイト形成能試験)
試料を、ヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液(SBF)30mLに36.5℃で7日間浸漬し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社キーエンス製、VE−8800)を用いて、SEM像を観察し、アパタイト形成能を調べた。SEM像で、球状のアパタイトが観察されるときは試料の一部分にアパタイト形成されていることがわかり、なだらかなアパタイトが観察されるときは試料の全面にアパタイト形成されていることがわかる。なお、上記擬似体液(SBF)は、インプラント材料のアパタイト形成能をin vitroで調べるための水溶液としてISOで認可されているもの(ISO23317:2007 Implants for surgery. In vitro evaluation for apatite−forming of implant materials)を用いた。
(比較例1)
未処理の純チタン金属基体の角板1(10mm角、厚さ1mm:(株)高純度化学研究所、純度3N(99.9%)カタログ番号:TIE04CB)を用いて、アパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)を行った(試料R1)。アパタイト形成能試験の結果、アパタイト形成能はなかった。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に、大腸菌抗菌試験の結果を表1に示す。
(比較例2)
純チタン金属基体の角板1を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬し、洗浄し、乾燥し、次いで600℃で1時間加熱処理して試料R2を得た。得られた試料R2の、メチレンブルー分解特性試験を行った。結果を図24に示す。
(比較例3)
純チタン金属基体の角板1を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬し、洗浄し、乾燥し、次いで80℃の温水に48時間浸漬(温水処理)し、次いで600℃で1時間加熱処理して試料R3を得た。得られた試料R3のメチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌液濃度:10/ml及び10/ml)を行った。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に、大腸菌抗菌試験の結果を表1に示す。
(比較例4)
純チタン金属基体の角板1を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬し、洗浄し、乾燥し、次いで80℃の1Mの硝酸銀水溶液に48時間浸漬し、洗浄し、乾燥し、次いで600℃で1時間加熱処理して試料R4を得た。得られた試料R4のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)、XPS測定を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図1、図2に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在し、SBF浸漬後は、試料全面にアパタイトが形成している。SBF浸漬後のTF−XRDの結果をそれぞれ図17、図18に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に示す。大腸菌抗菌試験の結果を表1に示す。XPS測定の結果を図21〜図23に示す。
(比較例5)
1Mの硝酸銀水溶液の代わりに、1Mの塩化亜鉛水溶液を用いた他は比較例4と同様にして試料R5を得た。得られた試料R5のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、XPS測定を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図3、図4に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在したが、SBF浸漬後もアパタイトが形成していない。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図17、図18に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に示す。XPS分析の測定を図21〜図23に示す。
(比較例6)
1Mの硝酸銀水溶液の代わりに、1Mの硝酸銅水溶液を用いた他は比較例4と同様にして試料R6を得た。得られた試料R6のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図5、図6に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在せず、SBF浸漬後は試料表面の一部にアパタイトが形成していた。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図17、図18に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に示す。XPS測定の結果を図21〜図23に示す。
(比較例7)
1Mの硝酸銀水溶液の代わりに、硝酸銅及び硝酸亜鉛の濃度がそれぞれ1Mの水溶液を用いた他は比較例4と同様にして試料R7を得た。得られた試料R7のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)、XPS測定を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図7、図8に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在したが、SBF浸漬後もアパタイトが形成していない。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図19、図20に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に示す。メチレンブルー分解能が無かった。大腸菌抗菌試験の結果を表1に、XPS測定の結果を図21〜図23に示す。
(実施例1)
純チタン金属基体の角板1を、5MのNaOH水溶液に60℃で24時間浸漬し、洗浄し、乾燥し、次いで80℃の硝酸銀及び硝酸銅の濃度がそれぞれ1Mの水溶液に48時間浸漬し、洗浄し、乾燥し、次いで600℃で1時間加熱処理して試料E1を得た。得られた試料E1のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図9、図10に示す。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図19、図20に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在し、SBF浸漬後は試料の全面にアパタイトが形成していた。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に、大腸菌抗菌試験の結果を表2に示す。
(実施例2)
硝酸銀及び硝酸銅の濃度がそれぞれ1Mの水溶液の代わりに硝酸銀及び硝酸亜鉛の濃度がそれぞれ1Mの水溶液を用いた他は実施例1と同様にして試料E2を得た。得られた試料E2のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図11、図12に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在し、SBF浸漬後は試料の全面にアパタイトが形成していた。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図19、図20に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に、大腸菌抗菌試験の結果を表2に示す。
(実施例3)
硝酸銀及び硝酸銅の濃度がそれぞれ1Mの水溶液の代わりに硝酸銀、硝酸銅及び硝酸亜鉛の濃度がそれぞれ1Mの水溶液を用いた他は実施例1と同様にして試料E3を得た。得られた試料E3のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)、XPS測定を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図13、図14に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在し、SBF浸漬後は試料の全面にアパタイトが形成していた。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図17、図18に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に、大腸菌抗菌試験の結果を表2に、XPS測定の結果を図21〜図23に示す。
(実施例4)
硝酸銀及び硝酸銅の濃度がそれぞれ1Mの水溶液の代わりに、硝酸銀、硝酸銅及び硝酸亜鉛の濃度がそれぞれ5Mの水溶液を用いた他は実施例1と同様にして試料E4を得た。得られた試料E4のアパタイト形成能試験、メチレンブルー分解特性試験、大腸菌抗菌試験(原液菌濃度:10/ml)、XPS測定を行った。SBF浸漬前後のSEM像をそれぞれ図15、図16に示す。SBF浸漬前は試料に網目構造が存在し、SBF浸漬後は試料の全面にアパタイトが形成していた。SBF浸漬前後のTF−XRDの結果をそれぞれ図17、図18に示す。メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に、大腸菌抗菌試験の結果を表2に、XPS測定の結果を図21〜図23に示す。
(試料表面の元素濃度)
比較例4〜6、実施例3、4の試料(R4、R5、R6、E3、E4)のXPS測定(図21〜図22)により試料表面の元素濃度を求めた。結果を表3に示す。ドープ処理に用いる水溶液中のイオンとして、銀を単独で用いた場合よりも銀・銅・亜鉛の3成分を用いた水溶液の方が、試料表面の銀元素濃度が高く、水溶液の濃度が、5Mの水溶液を用いるよりも、薄い1Mの水溶液を用いた方が試料表面の銀元素濃度が高いことがわかった。
(メチレンブルー分解特性試験)
メチレンブルー分解特性試験の結果を図24に示した。左から順に、比較例1〜6、実施例1、2、比較例7、比較例3、4である。銅イオン単独、亜鉛イオン単独、銅イオンと亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理を行った場合(比較例5、6、7)、メチレンブルー分解特性が得られなかった。それに対して、銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理を行った場合(実施例1〜4)、メチレンブルー分解特性が得られた。また、銀イオンと銅イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理を行った場合に(実施例1、3、4)、優れたメチレンブルー分解特性が得られ、特に、銀イオン、銅イオン、及び亜鉛イオンを1M濃度で含有する水溶液に接触させるドープ処理を行った場合(実施例3)、著しく優れたメチレンブルー分解特性が得られた。
(大腸菌抗菌試験)
大腸菌抗菌試験の結果をまとめる。比較例1では、「菌のみ」と「未処理チタン」では、両試料間、および照射あり/照射なしで有意差がなく、30個/dish以上の大腸菌コロニーを確認した。抗菌性が無いことがわかった。比較例4では、可視光照射の有無に関わらず抗菌性が確認されたが、可視光照射による抗菌性の向上は確認されなかった。比較例7では、照射なしでは抗菌性が確認されず、照射有りの一方だけ抗菌性が確認された。実施例1では、可視光照射による抗菌性の向上が確認された。実施例2では、可視光照射による抗菌性がやや向上した。実施例3では、可視光照射の有無に関わらず抗菌性が確認され、可視光照射による抗菌性の著しい向上が確認された。実施例4では、照射の有無に関わらず、3個/dish以下のきわめて少ないコロニー数が観測された。強い抗菌性を示すことが確認された。これは、銀元素が含まれているため、光照射がなくても強い抗菌性を発揮したと考えられるが、光照射の効果はその強い抗菌性に埋もれてしまったと考えられる。以上の抗菌試験の結果は、MB分解率の結果と概ね相関していると考えられる。
最後に、本明細書に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることを理解すべきである。可能性のある他の修正は、本発明の範囲内である。それ故、例示の方法によって、制限なく、本発明の別の構成が、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、示され記述されたものに正確に限定されるものではない。

Claims (6)

  1. チタン金属又はチタン合金からなる基体を有する生体インプラントであって、
    アルカリ処理、銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理、及び加熱処理によって、該基体の表面は、網目構造が形成された改質層を備え、
    前記改質層は、少なくともその表面にアナターゼ型酸化チタン相を含有し、かつ銀元素、並びに銅元素及び/又は亜鉛元素が深さ方向で表面側に局在的にドープされている、
    ことを特徴とする、生体インプラント。
  2. 前記銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液が、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンを含有し、それぞれのイオン濃度が0.5〜2Mである、請求項1に記載の生体インプラント。
  3. 前記改質層が、ヒドロキシアパタイトが形成された、ヒドロキシアパタイト層またはヒドロキシアパタイト複合体層をさらに備える、請求項1又は2に記載の生体インプラント。
  4. チタン金属又はチタン合金よりなる基体を、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンを含有するアルカリ水溶液に接触させるアルカリ処理を行うステップと、
    銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液に接触させるドープ処理を行うステップと、
    加熱処理するステップを含む、生体インプラントの製造方法。
  5. 前記銀イオン並びに銅イオン及び/又は亜鉛イオンを含有する水溶液が、銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンを含有し、それぞれのイオン濃度が0.5〜2Mである、請求項4に記載の生体インプラントの製造方法。
  6. さらに、擬似体液中でヒドロキシアパタイト層またはヒドロキシアパタイト複合体層を形成させるステップを含む、請求項4又は5に記載の生体インプラントの製造方法。
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