JP2016175955A - Ptfe加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PTFE及び放射光の遮蔽マスクの熱膨張収縮による影響を抑制し、より優れた精度でPTFEを微細加工することができるPTFE加工品の製造方法を提供すること。【解決手段】PTFE材料に加工を施して所望の形状を備えるPTFE加工品を形成するPTFE加工品の製造方法であって、前記PTFE加工品の使用温度に設定された前記PTFE材料に対して選択的に0.05keV〜40keVの光子エネルギーを持つ放射光を照射し、前記放射光が照射された部分を蒸発させることなく前記放射光が照射された部分の重合鎖を切る放射光照射工程と、前記放射光照射工程後において前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を除去する除去工程と、を有すること。【選択図】図3
Description
本発明は、微細加工が施されたPTFE製品の製造方法に関し、特にPTFEを微細加工するための加工技術に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)は、耐薬品性、耐熱性、及び絶縁性に優れ、且つ摩擦係数が固体中で最小の物質である。従来からこのような特性が注目され、絶縁材、断熱材、ワッシャー、及び耐薬品性部品等の各種部材への適用がなされており、医療、半導体、電気、機械、及び化学等の幅広い分野において利用されている。
いずれの分野においても、各種部材に適した形状となるようにPTFEを加工する必要があり、特にPTFEの微細加工に関する加工技術が研究されている。PTFEの微細加工技術としては、機械加工、レーザーアブレーションによる加工、放射光による光刺激エッチング(以下、放射光刺激エッチングと称する)が従来から知られている。
しかしながら、PTFEは難加工材料であるため、ミクロンレベルのアスペクト比の比較的に高い微細加工(すなわち、加工幅又は加工径が小さく、加工深さが大きい微細加工)は、機械加工では困難であった。また、レーザーアブレーションによる加工は、炭酸ガスレーザー等の高強度レーザーを照射して、加工部材を蒸発させることで穴を形成するが、集光したレーザーはコーン状になっているため、アスペクト比の高い微細加工は困難であった。
これに対して、放射光刺激エッチングは、X線を含む放射光の作用によって容易に重合度が低下するPTFEの特性を利用した微細加工方法である。具体的な加工方法の一例としては、高強度で直進性の良い放射光を微細加工されたX線遮蔽マスク(露光マスク、フォトマスク)を介してPTFEに照射し、当該照射時である露光中にPTFE(融点327℃)を200℃以上に加熱しておくことで、X線マスクを使って放射光の照射した箇所のみを選択的に蒸発させ、アスペクト比の高い微細加工を実現している。当該放射光刺激エッチングを利用した加工方法は、例えば、特許文献1及び2、並びに非特許文献1に開示されている。
Japanese Journal of Applied Physics Vol. 47, No. 1, 2008, pp. 337-341
しかしながら、放射光刺激エッチングによる微細加工においては、PTFEを200℃以上に加熱しながら放射光を照射するため、微細加工後にPTFEを加工装置から取り出すと、PTFEの温度が200℃よりも低い室温(例えば、25℃)になる。ここで、PTFEの線膨張係数は、室温で10×10−5/℃、300℃で18×10−5/℃であり、微細パターンが施されているX線遮蔽マスクを構成する金属に比べて一桁ほど大きくなっている。このため、微細加工後にPTFEを加工装置から取り出すと、PTFEは熱収縮によってその寸法が変化してしまう。すなわち、放射光照射時である加工時と加工終了後とにおけるPTFEの寸法が異なり、精度の優れたPTFEの微細加工が困難であった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、PTFE及び放射光の遮蔽マスクの熱膨張収縮による影響を抑制し、より優れた精度でPTFEを微細加工することができるPTFE加工品の製造方法を提供することにある。
上述した目的を達成するため、本発明の第1の態様は、PTFE材料に加工を施して所望の形状を備えるPTFE加工品を形成するPTFE加工品の製造方法であって、前記PTFE加工品の使用温度に設定された前記PTFE材料に対して選択的に0.05keV〜40keVの光子エネルギーを持つ放射光を照射し、前記放射光が照射された部分を蒸発させることなく前記放射光が照射された部分の重合鎖を切る放射光照射工程と、前記放射光照射工程後において前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を除去する除去工程と、を有することである。
本発明においては、PTFE材料に対して、露光を行う放射光照射工程と、PTFE材料を部分的に蒸発して所望の形状を形成する除去工程とが、同時に行われることなく、独立した工程として別々に行われることになる。このため、放射光照射工程においては、除去工程における加熱処理が施されることがなくなり、PTFE材料の熱膨張収縮による歪みがなくなり、優れた精度で微細加工を施すことができる。また、本発明においては、PTFE加工品の使用温度に合わせて放射光照射工程が実施されるため、放射光照射工程とPTFE加工品の使用温度差に起因する熱膨張収縮差による歪も抑制されることなり、より優れた精度で微細加工が施されたPTFE加工品を製造することができる。
本発明の第2の態様によれば、上記本発明の第1の態様において、前記放射光照射工程では、前記放射光のエネルギーのみを前記PTFE材料に付与することである。これにより、PTFE材料全体が加熱されることがなくなり、PTFE材料の熱膨張収縮による歪みを低減することができる。
本発明の第3の態様によれば、上記本発明の第1又は第2の態様において、前記除去工程では、前記PTFE材料に加熱処理を施して前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を蒸発させることである。これにより、PTFE材料に対して優れた微細加工を施し、優れた精度のパターン形成を実現できる。
本発明の第4の態様によれば、上記本発明の第3の態様において、前記除去工程では、前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を直接的に加熱することである。これにより、PTFE材料に対して優れた微細加工を施し、優れた精度のパターン形成を実現できる。
本発明の第5の態様によれば、上記本発明の第3又は4の態様において、前記除去工程では、前記PTFE材料の表裏面を直接的に加熱することである。これにより、PTFE材料に対して優れた微細加工を施し、優れた精度のパターン形成を実現できる。
本発明の第6の態様によれば、上記本発明の第3の態様において、前記除去工程では、前記PTFE材料に対して熱風を当てることである。これにより、PTFE材料に対して優れた微細加工を施し、優れた精度のパターン形成を実現できる。
本発明の第7の態様によれば、上記本発明の第1又は2の態様において、前記除去工程では、前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を化学エッチングによって除去することである。これにより、PTFE材料に対して優れた微細加工を施し、優れた精度のパターン形成を実現できる。
本発明の第8の態様によれば、上記本発明の第1乃至7のいずれかの態様において、前記放射光照射工程及び前記除去工程を繰り返し、前記PTFE材料に追加の加工を施す繰り返し工程を更に有することである。これにより、1つのPTFE加工品に対して、貫通孔、又は深さの異なる複数の凹部を形成することができる。
本発明によれば、PTFE及び放射光の遮蔽マスクの熱膨張収縮による影響を抑制し、より優れた精度でPTFEを微細加工することができるPTFE加工品の製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明のPTFE加工品の製造方法及び製造されるPTFE自体の実施例を詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明に係る製造方法の工程及び製造されるPTFE自体を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部分の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
<実施例>
(PTFE材料の加工)
本実施例に係るPTFE加工品の製造方法は、PTFE加工品の使用温度に設定されたPTFE材料に対して選択的に0.05keV〜40keVの光子エネルギーを持つ放射光を照射する放射光照射工程と、PTFE材料を部分的に除去する除去工程とを有している。先ず、図1及び図2を参照して各工程に使用される各装置を説明する。ここで、図1は、放射光照射工程に使用される放射光照射装置の概略構成図を示し、図2は除去工程に使用される除去装置の概略構成図を示している。
(PTFE材料の加工)
本実施例に係るPTFE加工品の製造方法は、PTFE加工品の使用温度に設定されたPTFE材料に対して選択的に0.05keV〜40keVの光子エネルギーを持つ放射光を照射する放射光照射工程と、PTFE材料を部分的に除去する除去工程とを有している。先ず、図1及び図2を参照して各工程に使用される各装置を説明する。ここで、図1は、放射光照射工程に使用される放射光照射装置の概略構成図を示し、図2は除去工程に使用される除去装置の概略構成図を示している。
図1に示すように、放射光照射装置1は、出射されたX線を含むシンクロトロン放射光(以下、単に放射光と称する)を導光する放射光管2、及び当該放射光管2に接続され処理空間を構成するチャンバー3を有している。また、チャンバー3内には、PTFE材料4を載置するための露光ステージ5、PTFE材料4を選択的に露出してPTFE材料4の選択的な露光を実現するための露光マスク6が設けられている。更に、露光マスク6は、可動ステージ7を介して露光ステージ5に取り付けられており、PTFE材料4に対するマスク開口部の位置を変更することができる。そして、露光ステージ5には、冷却水を流すための水路8が設けられている。
上述した放射光照射装置1において、放射光管2は電子蓄積リング、シンクロトロン、及び線形加速器等から構成される放射光施設に接続されている。また、チャンバー3内は、真空ポンプ(図示せず)によって極低圧状態(優れた真空度の状態)が維持されている。
上述した放射光照射装置1において、露光ステージ5の載置面5aと露光マスク6とは、PTFE材料4の厚さ以上は少なくとも離間しており、例えば、PTFE材料4を露光ステージ5の載置面に搭載した場合に、PTFE材料4と露光マスク6との間に約1mm以下の間隔が設けられてもよい。また、露光マスク6を可動ステージ7によって移動することができるため、放射光を照射した後に露光マスク6を移動して更に放射光を照射することにより、1つのPTFE材料4に対して照射量を変えつつも複数の場所に放射光を照射することができる。すなわち、PTFE材料の放射光の照射部分ごとに、その照射量を自在に調整することができる。更に、冷却水が水路8を経由して露光ステージ5の内部を通過するため、露光時における露光ステージ5及びPTFE材料4の温度上昇を抑制することができ、チャンバー3内を一定の温度に維持することができる。
露光マスク6の材料として例えばステンレス板を用いることができ、当該ステンレス板に所望のパターンを形成したものを露光マスク6として用いることができる。例えば、厚さが0.1mmのステンレス板に、直径0.5mmの貫通孔を形成したものを露光マスク6として使用できる。なお、露光マスク6の材料は、放射光を透過しない材料、或いは透過したとしてもPTFE材料4に顕著な変化が生じさせない材料から適宜選択することができる。また、露光マスク6の厚さ、及び貫通孔のパターン形状は、マスクパターン形成の容易性、放射光の特性、及びPTFE材料4に形成する加工パターンを考慮して適宜変更することができる。
なお、本実施例においては、放射光の遮蔽に使用される部材として露光マスク6を用いたが、PTFE材料4に対して選択的に放射光を照射することができ、かつ一旦蒸発したPTFEからの揮発物の拡散の妨げにならないような他の遮蔽部材を用いてもよく、或いはスポット的に放射光を照射できるような光学系を構成してもよい。
図2に示すように、除去装置11は、一般的な環状電気炉12の内部にカーボンステージ13が設けられた構造である。このような除去装置11を用いることにより、カーボンステージ13に設けられたPTFE材料4を、所定の温度及び所定の真空度で全体的に加熱することができる。
次に、図1乃至図3を参照しつつPTFE材料4の加工工程を詳細に説明する。ここで、図3((a)〜(e))はPTFE材料4の加工工程(すなわち、PTFE加工品の製造工程)の各工程を示す概略図である。
先ず、準備したPTFE材料4をチャンバー3内の露光ステージ5の載置面5aに載置する。本実施例においては、厚さが1mmのPTFE材料4に対して平坦度を持たせるための内部応力除去処理(220℃、4時間)を施したものを準備したが、PTFE材料4の厚さ及びアニール条件は、要求されるPTFE加工品の寸法や、露光条件に応じて適宜変更することができる。その後、放射光を遮蔽するパターンニング加工が施された露光マスク6を介して、PTFE材料4に対して、X線の周波数を含み1〜20keVの光子エネルギーを有する放射光を選択的に照射する(図3(a))。
ここで、PTFE材料4に放射光を照射する際のチャンバー3内の温度は、完成したPTFE加工品の使用温度に設定する。換言すれば、PTFE材料4の温度を完成したPTFE加工品の使用温度に設定することになる。例えば、当該PTFE加工品が常温(25℃)で使用される場合には、PTFE材料4の温度を常温近傍(20℃〜30℃)に設定してもよく、当該PTFE加工品が約60℃で使用される場合には、PTFE材料4の温度を60℃近傍(55℃〜65℃)に設定してもよい。ここで、PTFE材料4の温度を常温とすることは、チャンバー3内を特に加熱又は冷却する必要がないため、PTFE材料4に対して放射光のエネルギーのみが実質的に付与されることになる。
このようにすることにより、放射光の照射時においてもPTFE加工品の使用状況と同様の熱膨張収縮を生じさせることができ、完成したPTFE加工品を使用する場合にも、温度上昇に起因する微細加工のずれ等が生じることがなくなる。また、後述する除去工程時の温度と比較して低い温度で放射光を照射することが可能となり、PTFE材料4の熱膨張収縮による歪みを抑制し、優れた精度の微細加工が可能となる。なお、PTFE材料4は放射光の照射によって照射部分の表面温度が上昇している可能性はあるが、溶融・脱ガスがほとんど起こることはない。
PTFE材料4に放射光を照射すると、放射光が照射された部分においては、PTFEの重合鎖が切れ、分子量が低下する。このため、当該重合鎖が切れた部分の融点は、放射光が照射されていない部分の融点と比較して低くなる。図3(b)において、当該重合鎖が切れた部分を放射光照射部21とし、放射光が照射されていない部分を放射光非照射部22として示す。本実施例においては、後述する除去工程において、当該融点の差を利用して溶融・蒸発を選択的に発生させ、PTFE材料4の微細加工を施すことになる。このような放射光の照射及びPTFE材料4の部分的な重合鎖の切断を経て、本実施例に係る放射光照射工程が完了する。
当該放射光照射工程においては、露光マスク6の開口寸法又はパターン形状により、放射光照射部21の照射平面上の寸法(すなわち、直径、幅、又は長さ)を調整することができる。また、当該放射光照射工程においては、放射光照射部21における露光量を調整することにより、放射光照射部21の厚さ(すなわち、放射光照射部21の照射平面に直交する方向の寸法である深さ)を調整することができる。
次に、放射光の照射領域において内部まで十分な照射量を得たPTFE材料4を放射光照射装置1から取り出し、除去装置11内のカーボンステージ13上に載置する(図3(c))。そして、除去装置11内を減圧しつつ加熱し、PTFE材料4を所定の雰囲気中(250℃、1気圧以下)に所定の時間以上だけ曝す。
上述したように、PTFE材料4の放射光照射部21は、重合鎖が切れて融点が低下しているため、上記加熱によって露出面から徐々に蒸発する(図3(d))。そして、所定時間以上の加熱処理を経ることで、PTFE材料4の放射光照射部21が全て蒸発して除去され、貫通孔23が形成されることになる(図3(e))。ここで、上記の放射光照射工程における露光量を調整することにより、放射光照射部21の厚さを変更し、PTFE材料4を貫通しない凹部を形成するようにしてもよい。このようなPTFE材料4の放射光照射部21が蒸発して貫通孔23又は凹部が形成されることにより、本実施例に係る除去工程が完了し、所望の形状を備えるPTFE加工品の製造が完了する。
なお、加熱処理の際には、PTFE材料4の温度を150℃から400℃の間に設定することが好ましく、放射光非照射部22の融点を超えない200℃から327℃の間に設定することがより好ましい。また、本実施例においては、除去工程を低圧状態(いわゆる真空状態)で行っていたが、一般的な空気中、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、又は六フッ化硫黄(SF6)のような安定なフッ化ガス雰囲気で行ってもよい。これらの雰囲気においては、PTFE材料4の表面からの蒸発を阻害することが無く、良好に放射光照射部21を除去することができる。
更に、本実施例においては、1回の放射光照射工程と、1回の除去工程により、PTFE加工品を製造したが、放射光照射工程と除去工程とを繰り返して、PTFE加工品を製造してもよい。すなわち、PTFE材料4に追加の加工を施す繰り返し工程(複数回の放射光照射工程及び除去工程)を行い、PTFE材料4に形成される貫通孔23の数量を増加したり、或いはPTFE材料4を徐々に蒸発させ、複数回の工程によって1つの貫通孔23を形成してもよい。更には、貫通孔23、及び深さの異なる複数の凹部を備えるPTFE加工品を形成することもできる。
本実施例においては、PTFE材料4に対して、露光を行う放射光照射工程と、PTFE材料4を部分的に蒸発して所望の形状を形成する除去工程とが、同時に行われることなく、独立した工程として別々に行われることになる。このため、放射光照射工程においては、除去工程における加熱処理が施されることがなくなり、PTFE材料4及び露光マスク6の熱膨張収縮による歪みがなくなり、優れた精度で微細加工を施すことができる。
また、本実施例においては、PTFE加工品の使用温度に合わせて放射光照射工程が実施されるため、放射光照射工程とPTFE加工品の使用温度差に起因する熱膨張収縮差による歪も抑制されることなり、より優れた精度で微細加工が施されたPTFE加工品を製造することができる。
(PTFE加工品)
次に、本実施例に係るPTFE加工品の製造方法によって製造されたPTFE加工品の評価結果を図4乃至図7を参照しつつ説明する。図4は、複数の貫通孔23を有するPTFE加工品の拡大画像である。図5は、深さの異なるパターン(すなわち、凹部又は開口部)が形成されたPTFE加工品をレーザー顕微鏡によって計測した3次元画像図である。図6は、図5の線VI-VIに沿った断面におけるパターンの深さを示すグラフである。図7は、放射光照射工程における露光量と除去工程における加熱温度とを変化させた際のPTFE加工品のパターン深さの依存性を示すグラフである。なお、図5においては、面内の一の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とする。そして、貫通孔23の深さ方向をZ方向とする。
次に、本実施例に係るPTFE加工品の製造方法によって製造されたPTFE加工品の評価結果を図4乃至図7を参照しつつ説明する。図4は、複数の貫通孔23を有するPTFE加工品の拡大画像である。図5は、深さの異なるパターン(すなわち、凹部又は開口部)が形成されたPTFE加工品をレーザー顕微鏡によって計測した3次元画像図である。図6は、図5の線VI-VIに沿った断面におけるパターンの深さを示すグラフである。図7は、放射光照射工程における露光量と除去工程における加熱温度とを変化させた際のPTFE加工品のパターン深さの依存性を示すグラフである。なお、図5においては、面内の一の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とする。そして、貫通孔23の深さ方向をZ方向とする。
先ず、図4に示すように、本実施例に係るPTFE加工品の製造方法により、厚さ1mmのPTFE材料4に、直径0.5mmの貫通孔23を形成することができた。すなわち、アスペクト比の比較的に高い貫通孔23が実現できている。なお、図4において、メモリの間隔は1mmである。
図5及び図6に示すように、本実施例に係るPTFE加工品の製造方法において、放射光照射工程における放射光照射部21の露光量を調整することにより、PTFE材料4に深さの異なるパターンを形成する(すなわち、立体的な表面加工を施す)ことができた。換言すれば、放射光照射工程における放射光照射部21の露光量を調整すると、放射光照射部21の厚さが調整されることになる。特に、図5及び図6においては、PTFE加工品に深さがそれぞれ異なる第1パターン31及び第2パターン32が形成されている。そして、第1パターン31は、互いに深さが異なる第1凹部31a、第2凹部31b、及び第3凹部31cから構成され、第2パターン32は、互いに深さが異なる第1凹部32a、第2凹部32b、及び第3凹部32cから構成されている。
なお、図6において、横軸はPTFE加工品の中心を基準(すなわち、0)として、図5の線VI−VIに沿った方向(面内方向(X−X))の距離を示し、単位はマイクロメートル(μm)である。また、図6において、縦軸はPTFE加工品の表面を基準(すなわち、0)として、貫通孔23の深さ方向(Z方向)の距離を示し、単位はマイクロメートル(μm)である。
図7に示されたグラフに関しては、除去工程における加熱温度を200℃、250℃、300℃、及び350℃の4種類とし、各加熱温度に対して6種類(ただし、350℃に対しては2種類)露光量を設定し、合計20種類のPTFE加工品の深さを調査した。ここで、図7の横軸は、放射光照射部21の露光量(任意単位)であり、図7の縦軸はPTFE加工品の加工深さ(μm)である。
図7に示すように、放射光照射工程における放射光照射部21の露光量を増やすと、PTFE加工品の加工深さが増加することが分かった。また、除去工程における加熱温度を上げることにより、PTFE加工品の加工深さが増加することが分かった。すなわち、PTFE加工品の加工深さは、放射光照射工程における露光量及び除去工程における加熱温度に依存していることが分かった。このため、放射光照射工程における露光量及び除去工程における加熱温度を適宜調整することにより、PTFE加工品の加工深さを調整することができ、より最適な微細加工を実現することができる。
(変形例)
上述した実施例において、除去工程に使用される除去装置として環状電気炉12及びカーボンステージ13からなる構成が説明されたが、放射光照射部21を除去することができれば、他の除去装置及び除去方法を用いてもよい。例えば、重合鎖が切れた部分に対して、重合鎖の切られた分子の分子振動数と一致する電磁波を照射して選択的に加熱する加熱装置を用いてもよい。また、PTFE材料4の表裏面又は重合鎖が切れた放射光照射部21を直接的又は間接的に加熱することができる電気炉、反射炉、又は対流炉等の各種の加熱装置を用いてもよい。より具体的には、一般的なホットプレートを用いて、放射光照射部21を直接的に加熱する方法や、PTFE材料4の放射光照射部21を露出しつつPTFE材料4の放射光非照射部22を全体的に被覆するホットプレートを用いることができる。更に、放射光照射部21を十分に蒸発できる温度を備える熱風を当てることができる加熱装置を用いてもよい。そして、除去方法は加熱に限定されず、例えば、化学エッチングによってPTFE材料4の放射光照射部21を除去してもよく、イオンビーム等により重合鎖の切られた分子を弾き飛ばすことで除去してもよい。
上述した実施例において、除去工程に使用される除去装置として環状電気炉12及びカーボンステージ13からなる構成が説明されたが、放射光照射部21を除去することができれば、他の除去装置及び除去方法を用いてもよい。例えば、重合鎖が切れた部分に対して、重合鎖の切られた分子の分子振動数と一致する電磁波を照射して選択的に加熱する加熱装置を用いてもよい。また、PTFE材料4の表裏面又は重合鎖が切れた放射光照射部21を直接的又は間接的に加熱することができる電気炉、反射炉、又は対流炉等の各種の加熱装置を用いてもよい。より具体的には、一般的なホットプレートを用いて、放射光照射部21を直接的に加熱する方法や、PTFE材料4の放射光照射部21を露出しつつPTFE材料4の放射光非照射部22を全体的に被覆するホットプレートを用いることができる。更に、放射光照射部21を十分に蒸発できる温度を備える熱風を当てることができる加熱装置を用いてもよい。そして、除去方法は加熱に限定されず、例えば、化学エッチングによってPTFE材料4の放射光照射部21を除去してもよく、イオンビーム等により重合鎖の切られた分子を弾き飛ばすことで除去してもよい。
本発明は、医療、半導体、電気、機械、化学等の幅広い分野において使用される被覆材、絶縁材、断熱材、及び耐薬品性部品に用いられ、より優れた精度が要求される微細加工が施されたPTFE加工品を製造するために利用することができる。
1 放射光照射装置
2 放射光管
3 チャンバー
4 PTFE材料
5 露光ステージ
5a 載置面
6 露光マスク
7 可動ステージ
8 水路
11 除去装置
12 環状電気炉
13 カーボンステージ
21 放射光照射部
22 放射光非照射部
23 貫通孔
31 第1パターン
31a 第1凹部
31b 第2凹部
31c 第3凹部
32 第2パターン
32a 第1凹部
32b 第2凹部
32c 第3凹部
2 放射光管
3 チャンバー
4 PTFE材料
5 露光ステージ
5a 載置面
6 露光マスク
7 可動ステージ
8 水路
11 除去装置
12 環状電気炉
13 カーボンステージ
21 放射光照射部
22 放射光非照射部
23 貫通孔
31 第1パターン
31a 第1凹部
31b 第2凹部
31c 第3凹部
32 第2パターン
32a 第1凹部
32b 第2凹部
32c 第3凹部
Claims (8)
- PTFE材料に加工を施して所望の形状を備えるPTFE加工品を形成するPTFE加工品の製造方法であって、
前記PTFE加工品の使用温度に設定された前記PTFE材料に対して選択的に0.05keV〜40keVの光子エネルギーを持つ放射光を照射し、前記放射光が照射された部分を蒸発させることなく前記放射光が照射された部分の重合鎖を切る放射光照射工程と、
前記放射光照射工程後において前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を除去する除去工程と、を有するPTFE加工品の製造方法。 - 前記放射光照射工程においては、前記放射光のエネルギーのみを前記PTFE材料に付与する請求項1に記載のPTFE加工品の製造方法。
- 前記除去工程においては、前記PTFE材料に加熱処理を施して前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を蒸発させる請求項1又は2に記載のPTFE加工品の製造方法。
- 前記除去工程においては、前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を直接的に加熱する請求項3に記載のPTFE加工品の製造方法。
- 前記除去工程においては、前記PTFE材料の表裏面を直接的に加熱する請求項3又は4に記載のPTFE加工品の製造方法。
- 前記除去工程においては、前記PTFE材料に対して熱風を当てる請求項3に記載のPTFE加工品の製造方法。
- 前記除去工程においては、前記PTFE材料のうち重合鎖が切れた部分を化学エッチングによって除去する請求項1又は2に記載のPTFE加工品の製造方法。
- 前記放射光照射工程及び前記除去工程を繰り返し、前記PTFE材料に追加の加工を施す繰り返し工程を更に有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のPTFE加工品の製造方法。
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JP2016175955A true JP2016175955A (ja) | 2016-10-06 |
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ID=57069169
Family Applications (1)
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JP (1) | JP2016175955A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022255369A1 (ja) | 2021-06-02 | 2022-12-08 | 株式会社日本触媒 | 熱交換器 |
-
2015
- 2015-03-18 JP JP2015055011A patent/JP2016175955A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022255369A1 (ja) | 2021-06-02 | 2022-12-08 | 株式会社日本触媒 | 熱交換器 |
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