以下、本発明の生体情報測定システムの一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
また、図1は、トイレ室に設置された水洗大便器に本発明の第1実施形態による生体情報測定システムを取り付けた状態を示す図である。図2は、本実施形態の生体情報測定システムの構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態の生体情報測定システムに備えられているガス検出装置の構成を示す図である。
図1に示すように、生体情報測定システム1は、トイレ室Rに設置された水洗大便器2の上に載置した便座4の内部に組み込まれた測定装置6、及びトイレ室Rの壁面に取り付けられたリモコン8からなる被験者側装置10を有する。さらに、図2に示すように、生体情報測定システム1は、サーバー12と、スマートフォン等に専用のソフトウェアを組み込んだ被験者用端末14と、病院等の医療機関に設置された医療機関端末16と、を備え、これらは被験者側装置10との間でデータを交換することにより生体情報測定システム1の機能の一部を果たしている。また、サーバー12及び医療機関端末16には、多数の被験者側装置10から送信される測定データが集積され、データ分析が行われる。
本実施形態の生体情報測定システム1では、被験者が排便時に放出する排便ガス中の硫黄成分を含む臭気性ガス、特に、メチルメルカプタン(CH3SH)ガスに基づいて癌の判定を含む体調状態の分析を行うものである。さらに、本実施形態の生体情報測定システム1においては、臭気性ガスの他に、健康系ガスについても測定し、これらの相関に基づいて体調状態の分析精度を向上させている。健康系ガスとは、腸内発酵由来で腸内の健康度が高い程多くなるガスであり、具体的には、二酸化炭素、水素、メタン、短鎖脂肪酸などのガスである。本実施形態では、健康系ガスとして、測定が容易で量も多いため健康指標の測定の信頼性を高く保てる二酸化炭素ガス、水素ガスを測定している。ここで、各被験者側装置10では、被験者の排便中もしくは排便直後に分析結果が表示されるように構成されている。これに対して、サーバー12においては、多数の被験者による測定結果が集積され、他の被験者との比較等により、より詳細な分析が可能になっている。このように、本実施形態の生体情報測定システム1では、トイレ室R内に設置された被験者側装置10において簡易な分析を行い、サーバー12においてより詳細な分析を行うものである。
ここで、本実施形態の生体情報測定システム1における体調の測定原理を説明する。
消化器系の癌、特に大腸癌を患うと、患部からメチルメルカプタンや硫化水素等の硫黄成分を含む臭気性ガスが、排便と同時に排出されることが文献等で報告されている。消化器とは食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、すい臓、胆嚢、であり、大腸も、虫垂、盲腸、直腸、結腸に分類できるが、以下この4つの部位を総称して大腸とする。癌は、日々の変化は少なく、徐々に進行していくものである。癌が進行すると硫黄成分を含む臭気性ガス、特に、メチルメルカプタンの量が増加していく。すなわち、硫黄成分を含む臭気性ガスのガス量が増加した場合には、癌が進行していると判断することができる。さらには、近年「未病」という考えが広がっており、疾病状態となる以前に体調が悪化した時点で、体調改善を行い、疾病を防止するという考えが広がっている。このため、癌、特に大腸癌のような進行性の癌を、癌になる以前に検知し、体調改善することが求められている。
ここで、排便時に排泄される排便ガスには、硫化水素及びメチルメルカプタン以外に、窒素、酸素、アルゴン、水蒸気、二酸化炭素、水素、メタン、酢酸、トリメチルアミン、アンモニア、プロピオン酸、二硫化メチル、三硫化メチルなどが含まれている。このうち、癌の疾病を判定するためには、硫黄系成分を含む臭気性ガス、特に、メチルメルカプタンを測定する必要がある。排便ガス中に含まれるプロピオン酸、二硫化メチル、三流化メチルは、メチルメルカプタンに比べて非常に微量であるため、癌の判定等の体調の解析には問題とならないので無視することができる。しかしながら、その他のガス成分は無視できる程度まで微量とはいえない。正確に癌の判定を行うためには、硫黄成分を含む臭気性ガスのみを検出することができるセンサを用いることが当然考えられる。しかしながら、硫黄成分を含む臭気性ガスのみを検出するセンサは大型でかつ非常に高価であるため、家庭用の機器として構成することは難しい。
これに対して、発明者らは、鋭意研究の結果、排便ガス中のメチルメルカプタンのみを検出するのではなく、その他の臭気性ガスも含めた臭気性ガスを検出するガスセンサを用いることにより、安価で家庭用の機器として構成することができるとの着想に至った。具体的には、発明者らは、ガスを検知するセンサとして、硫黄成分を含む含硫ガスだけではなく、その他の臭気性のガスにも反応する汎用的な半導体ガスセンサや固体電解質センサを用いることとした。
癌のリスクが高まった状態では、メチルメルカプタンガスなどの硫黄成分を含む非常に強い臭気性ガスが多くなる。そして、半導体ガスセンサや固体電解質センサのような臭気性ガスに広く反応するセンサであれば、必ずこのようなガスの増加を検知できる。しかしながら、後述するように、半導体ガスセンサや固体電解質センサのような臭気性ガスに広く反応するセンサは、悪しき生活習慣により体調不良となると増加する硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、トリメチルアミン、及びアンモニアなどの臭気性ガスも検知してしまう。しかしながら、癌は数年という長い期間をかけて進行する病気であり、癌になった場合には、メチルメルカプタンガスや硫化水素などの硫黄成分を含む非常に強い臭気性ガスが強くなった状態が長期にわたり続く。このため、硫黄成分を含む含硫ガスだけではなく、その他の臭気性のガスにも反応する汎用的な半導体ガスセンサや固体電解質センサを用いたとしても、長期にわたりガス量が高い場合には、癌の疾病の可能性が高く、癌リスクが増加していると判断することができる。
また、酸化・還元反応を用いた半導体センサや固体電解質センサは、メチルメルカプタンガスのみならず、排便ガス中の臭気性ガスである酢酸、トリメチルアミン、及びアンモニアなども検出してしまう。しかしながら、発明者らは、実験の結果、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、トリメチルアミン、及びアンモニアなどの臭気性ガスの混合量は、悪しき生活習慣により体調が悪化すると多くなり、体調が良好であると減少する傾向を示すことを発見した。具体的には、健康な人は、メチルメルカプタンガス及びメチルメルカプタンガス以外の臭気性ガスの総量が少ない。これに対して、メチルメルカプタンガス及びメチルメルカプタンガス以外の臭気性ガスの総量は、過度な便秘や、食事の種類、睡眠不足、暴飲暴食、飲み過ぎ、過度なストレスなどの要因による腸内環境の悪化で一時的に高まる。
なお、排便ガス中の酢酸は、下痢などにより体調が悪化した場合のみならず、体調が良好な場合にも多くなる傾向を有する。すなわち、上述した体調変化にともなうメチルメルカプタン等の他の臭気性ガスのガス量の傾向と必ずしも一致していない。しかしながら、排便ガスに含まれる酢酸のガス量は、メチルメルカプタンに比べて非常に小さく、体調が良好な場合に酢酸のガス量が増えたとしても、その増加量はその他の臭気性ガスの減少量に比べて非常に小さい。さらに、下痢などにより体調が悪化した場合の酢酸の増加量は、体調が良好な場合の増加量に比べて非常に大きい。よって、排便ガスに含まれる臭気性ガスの量は、全体として、悪しき生活習慣により体調が悪化すると多くなり、体調が良好であると減少する傾向を示す。そして、このような悪しき生活習慣による腸内環境の悪化の末、癌となってしまうため、排便ガスに含まれる臭気性ガスの量は、癌が未病状態にあるうちに、体調改善を行うための好適な指標となる。
本実施形態では、メチルメルカプタンガスのみならず、硫化水素、酢酸、トリメチルアミン、アンモニアなどのメチルメルカプタンガス以外の排便ガス中の臭気性ガスに反応する半導体センサや固体電解質センサの検出データに基づき体調の解析を行う。これにより、体調不良や悪しき生活習慣の結果を反映した解析結果が得られ、この解析結果を、癌リスクを高めるような体調や生活習慣を改善させるための客観的なデータに基づく指標として用いることができる。
また、排便ガスには、臭気性ガスのみならず、H2やメタンが含まれており、ガスセンサに半導体ガスセンサや固体電解質センサを用いた場合には、これらセンサはH2やメタンにも反応してしまう。さらには、各家庭に半導体ガスセンサや固体電解質センサを用いた測定装置を設定した場合には、これらセンサが芳香剤や香水にも反応してしまうおそれがある。
これに対して、発明者らは、後に詳述するように、水素センサ、メタンセンサやカラムを用いて、半導体ガスセンサや固体電解質センサの検出データから水素やメタンの影響を分離する方法、及び、排便行動を検知することにより芳香剤や香水の影響をノイズとして除去する方法を確立した。これにより、半導体ガスセンサや固体電解質センサの検出したデータから水素やメタンの影響を分離し、さらには、芳香剤や香水の影響を除去して、排便ガス中の臭気性ガス量だけを推定することが可能となった。
また、排便ガス中に含まれるメチルメルカプタンやその他の臭気性ガスのガス量は、H2やメタンに比べて非常に少ない。このため、半導体ガスセンサや固体電解質センサを用いたとしても、これら臭気性ガスの混合ガス量を正確に測定できないおそれがある。
これに対して、発明者らは、健常者は、腸内環境が酸性であるが、癌患者になると、硫黄成分を含む臭気性ガスが発生し、そのガス量が多くなる。また、腸内環境がアルカリ性になり、さらに、ビフィズス菌等の量が減ってしまい、CO2、H2、脂肪酸などの醗酵系成分の健康系ガス量が臭気性ガス量の増加に反比例するように確実に継続的に少なくなることに着目した。
このため、発明者らは、各回の測定では測定精度が必ずしも高くないが、メチルメルカプタン等の臭気性ガス量と、CO2、H2などの健康系ガス成分のガス量との相関を毎日の排便時にモニタリングすることにより、進行癌の発生を検知できるのではないかと考えた。
そこで、発明者らは、60代以下の健常者、60〜70代の健常者、早期がんの患者、進行癌の患者の排便ガスに含まれる健康系ガスと、臭気性ガスの量を測定したところ、図41に示すような結果となった。すなわち、健常者の排便ガスは、健康系ガス量が多く、臭気性ガスのガス量が少ない。これに対して、がん患者の排便ガスは、健康系ガス量が少なく、臭気性ガスの量が多い。そして、早期癌に比べて進行癌の排便ガスに含まれる健康系ガスの量は減少している。さらに、健康系ガス量及び臭気性ガス量ががん患者と健常者の中間量である場合には、グレーゾーン、すなわち、未病状態であると考えられる。このため、発明者らは、上記の知見に基づき、被験者の健康系ガスのガス量と臭気性ガスのガス量を測定し、これらの相関に基づき健康状態の判定精度を高めることができると考えた。
また、発明者らは、排便ガスを測定したところ、1回の排便時に、複数回の排泄行為(1回のおならや1回の便を排出する行為)を行う場合には、初回の排泄行為に伴って排出される排便ガス量が多く臭気性ガスも多く含まれることが判明した。したがって、本実施形態では、微量な臭気性ガスを正確に測定するために初回の排便ガスに基づき被験者の健康状態の分析を行うことにした。これによって、2回目以降の排泄行為のガス量を測定する際には、初回の排泄行為により排出された便やおならの影響を受ける可能性があるため、この影響を軽減できた。
本実施形態の生体情報測定システム1は、上述した測定原理に基づくものである。なお、以下の説明における臭気性ガスとは、硫黄成分を含む臭気性ガスであるメチルメルカプタンガス、及び、メチルメルカプタン以外の硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、トリメチルアミン、及びアンモニアなどの臭気性ガスを含むものである。
次に、本実施形態の生体情報測定システム1の具体的構成を詳細に説明する。
図1に示すように、生体情報測定システム1における被験者側装置10は、トイレ室R内の水洗大便器2に取り付けられ、おしり洗浄機能付き便座4に一部が組み込まれている。おしり洗浄機能付き便座4には、測定装置6として、水洗大便器2のボウル2a内のガスを吸引する吸引装置18と、吸引されたガスに含まれる特定の成分を検出するガス検出装置20が組み込まれている。なお、吸引装置18は、通常のおしり洗浄機能付き便座4に組み込まれている脱臭装置と一部の機能を兼ねており、吸引装置18により吸引されたガスは脱臭装置により脱臭され、その後ボウル2a内に戻される。また、吸引装置18、ガス検出装置20等、便座4に組み込まれた各装置は、便座側に内蔵された制御装置22(図2)によって制御される。
図2に示すように、被験者側装置10は、便座4に組み込まれた測定装置6と、リモコン8に内蔵されたデータ解析装置60から構成されている。
測定装置6は、CPU22aと記憶装置22bを有する制御装置22を備えている。この制御装置22は、水素ガスセンサ24と、臭気性ガスセンサ26と、二酸化炭素センサ28と、湿度センサ30と、温度センサ32と、入室検知センサ34と、着座検知センサ36と、排便・排尿検知センサ38と、便蓋開閉装置40と、ノズル駆動装置42と、ノズル洗浄装置44と、便器洗浄装置46と、便器除菌装置48と、芳香剤噴射装置である芳香剤噴霧機50と、脱臭エアー供給器52と、吸引装置18と、センサ加温ヒータ54と、送受信機56と、ダクトクリーナー58に接続されている。なお、後述するように、水素ガスセンサと、臭気性ガスセンサとは一体のセンサとすることができる。
温度センサ32は、臭気性ガスセンサ26等の触媒の温度を測定する。また、湿度センサ30はボウル2a内から吸引されたガスの湿度を測定する。これらのセンサのセンサ感度は、触媒の温度により僅かに変化してしまう。また、排尿等による湿度変化が同様にセンサの感度に影響を与える。本実施形態では、臭気性ガス量が非常に少量であるためこの微量なガスを精度よく安定して測定できるように、これらのセンサ30、32により測定された温度及び湿度に応じて、便器側CPU22aはセンサ30、32のセンサ温度や吸引湿度を所定の範囲に正確に保つように、後述するセンサ加温ヒータ54や湿度調整装置59(図3)を制御して、所定の温度や湿度環境に調整する。なお、これらのセンサや装置は必須なものではなく、精度を向上させる上で備えることが望ましい。
入室検知センサ34は、例えば、赤外線センサであり、被験者のトイレ室Rへの入退出を検知する。
着座検知センサ36は、例えば、赤外線センサや圧力センサ等であり、被験者が便座4に着座しているか否かを検知する。
排便・排尿検知センサ38は、本実施形態においては、マイクロ波センサで構成されており、被験者により排出されたものが小便であるか、大便であるか、さらに、大便が封水に浮いているか、沈んでいるか、また、便が下痢状態であるか否か等の排便の状態を検知するように構成されている。或いは、CCDや、封水の推移を測定する水位センサ等で排便・排尿検知センサ38を構成することもできる。
便蓋開閉装置40は、入室検知センサ34等の検出信号に基づいて、状況に応じて便蓋を開閉するための装置である。
ノズル駆動装置42は、おしり洗浄に用いられる装置であり、排便後の被験者のおしりの洗浄を行う装置である。ノズル駆動装置42は、ノズルを駆動して、水洗大便器2の洗浄を行うように構成されている。
ノズル洗浄装置44は、ノズル駆動装置42のノズルを洗浄するための装置であり、本実施形態においては、水道水から次亜塩素酸を生成し、生成した次亜塩素酸によりノズルを洗浄するように構成されている。
便器洗浄装置46は、洗浄水タンク(図示せず)に貯留されていた水や水道水を便器内に放出し、水洗大便器2のボウル2a内を洗浄するための装置である。便器洗浄装置46は、通常は被験者によるリモコン8の操作により作動され、ボウル2a内を洗浄するが、後述するように、状況に応じて制御装置22により自動的に作動される。
便器除菌装置48は、例えば、水道水から次亜塩素酸水などの除菌水を生成し、生成した除菌水を水洗大便器2のボウル2aに噴霧し、ボウル2aの殺菌を行う装置である。
芳香剤噴霧機50は、トイレ室R内に所定の芳香剤を噴霧するための装置である。これは、被験者が任意の芳香剤をトイレ室R内に噴霧し、これが測定の外乱となるような臭気成分が噴霧されるのを防止するために備えられたものである。芳香剤噴霧機50を備えることにより、予め決められた測定に影響を与えない芳香剤を、状況に応じて所定の時期に所定量噴霧することができ、芳香剤が噴霧されたことを生体情報測定システム1が認識することができる。これにより、体調測定に対する外乱が減少し、解析結果が安定化されるので、芳香剤噴霧機50は出力結果安定化手段として機能する。
吸引装置18は、水洗大便器2のボウル2a内のガスを吸引するためのファンを備えており、吸引されたガスは臭気性ガスセンサ26等の検出部を流れた後、脱臭フィルタにより脱臭される。吸引装置18の詳細な構成については後述する。
脱臭エアー供給器52は、吸引装置18により吸引され、脱臭された後の空気をボウル2a内に排出する装置である。
センサ加温ヒータ54は、臭気性ガスセンサ26等の触媒を加熱活性させるためのものである。各センサは触媒が所定温度に維持されることにより、所定の気体成分を正確に検出することができる。
ダクトクリーナー58は、吸引装置18に取り付けられたダクト18a内を、例えば、水道水を電気分解した次亜塩素酸等により清掃するための装置である。
なお、図1に示す本実施形態においては、吸引装置18と、脱臭エアー供給器52と、ダクトクリーナー58は、脱臭装置として一体に構成されている。すなわち、ダクト18a内に吸引装置18によりボウル2a内のガスを吸引し、吸引したガスを脱臭フィルタ78(図3)により脱臭処理し、脱臭処理されたガスは再びボウル2a内に放出される。これにより、外部からボウル2a内に臭気性ガスセンサ26に反応する気体が流入し、被験者の排便期間中においてボウル2a内の気体成分が被験者から排出された排便ガス以外の要因で変化することが抑制される。従って、脱臭フィルタ78を備えた脱臭装置及び脱臭エアー供給器52は、出力結果安定化手段として機能する。或いは、変形例として、各ガスセンサに反応しない気体をボウル2a内に流入させる測定用ガス供給装置(図示せず)を設けておき、吸引装置18によって吸引された気体と等量の測定用ガスをボウル2a内に流入させるように本発明を構成することもできる。この場合、測定用ガス供給装置(図示せず)は、解析結果を安定させる出力結果安定化手段として機能する。
次に、図2に示すように、リモコン8にはデータ解析装置60が内蔵されており、このデータ解析装置60には、被験者特定装置62と、入力装置64と、送受信機66と、表示装置68と、スピーカー70が接続されている。本実施形態においては、これら送受信機66、表示装置68、及びスピーカー70は、データ解析装置60による解析結果を出力する出力装置として機能する。また、データ解析装置60は、CPU、記憶装置、及びこれらを作動させるプログラム等から構成され、記憶装置内にはデータベースが構築されている。
入力装置64及び表示装置68は、本実施形態においては、タッチパネルで構成されており、被験者の名前等の被験者識別情報等、各種の入力を受け付けると共に、体調の測定結果等、種々の情報が表示されるようになっている。
スピーカー70は、生体情報測定システム1が発する各種の警報、メッセージ等を出力するように構成されている。
被験者特定装置62には、予め、被験者の名前等の被験者識別情報を登録しておく。被験者が生体情報測定システム1を使用する際には、登録された被験者がタッチパネル上に表示され、被験者は自分の名前を選択する。
さらに、リモコン8側の送受信機66は、ネットワークを介してサーバー12と通信可能に接続されている。被験者用端末14は、例えば、スマートフォン、タブレットPC、又はPC等の受信したデータを表示可能な装置からなる。
サーバー12は、排便ガスデータベースを備える。排便ガスデータベースには、生体情報測定システム1を使用している各被験者の被験者識別情報に対応づけて各排便行動における臭気性ガス量及び健康系ガスのガス量を含む測定データと、信頼度データとが測定日時ともに記録されている。また、サーバー12には、診断テーブルが記録されており、またデータ解析回路を有する。
さらに、サーバー12は、病院や保健機関等に設置された医療機関端末16とネットワークを介して接続されている。医療機関端末16は、例えば、PCなどからなり、サーバー12のデータベースに記録されたデータを閲覧可能である。
次に、図3を参照して、便座4に内蔵されているガス検出装置20の構成を説明する。
まず、本実施形態の生体情報測定システム1では、臭気性ガス及び水素ガスを検出するために、ガス検出装置20には、ガスセンサとして半導体ガスセンサが用いられている。また、二酸化炭素を検出するために、ガス検出装置20には、固体電解質型センサが用いられている。
半導体ガスセンサは、酸化スズ等を含む酸化金属膜からなる触媒を有する。触媒は、数百度に加熱された状態で、加熱された触媒が還元性ガスに曝されると、表面に吸着している酸素と還元性ガスの間で酸化・還元反応がおこる。半導体ガスセンサは、この酸化・還元反応による触媒の抵抗値の変化を電気的に検出することにより、還元性ガスを検出することができる。半導体ガスセンサが検出可能な還元性ガスには、水素ガスや、臭気性ガスが含まれる。なお、本実施形態においては、臭気性ガスを検出するセンサ、水素ガスを検出するセンサ共に半導体ガスセンサが使用されているが、臭気性ガスセンサに使用されている触媒は臭気性ガスに強く反応するように、水素ガスセンサに使用されている触媒は水素ガスに強く反応するように、夫々触媒の成分が調整されている。
このように、本実施形態においては、「臭気性ガスセンサ」として「半導体ガスセンサ」が使用されているが、上記のようにこの「半導体ガスセンサ」は検出対象としているメチルメルカプタンガスの他、それ以外の臭気性ガスにも広く反応する一般的な物を使用している。また、後述するように「臭気性ガスセンサ」として固体電解質センサを用いることも可能であるが、固体電解質センサも、半導体ガスセンサと同様にメチルメルカプタンガスの他、それ以外の臭気性ガスにも広く反応する一般的な物を使用してかまわない。換言すれば、メチルメルカプタンガスのみに反応するガスセンサは、極めて製作困難であり、製作することができたとしても極めて大型で高価なガスセンサとなってしまう。このように大型で高価なガスセンサを採用したとすれば、高度な臨床検査で使用される医療機器としては実現可能であったとしても、民生品として販売可能なコストで生体情報測定システムを製造することは不可能になる。本実施形態の生体情報測定システムにおいては、検出対象であるメチルメルカプタンガス以外の、他の臭気性ガスにも反応してしまう簡易な、汎用的なガスセンサを「臭気性ガスセンサ」として採用することにより、民生品としての生体情報測定システムを実現可能にしたのである。上記のように、本実施形態において採用されているガスセンサは、メチルメルカプタンガス、及びメチルメルカプタンガス以外の臭気性ガスにも反応してしまうセンサであるが、本明細書においては、便宜上、これを「臭気性ガスセンサ」と呼ぶことにする。本実施形態において採用されている「臭気性ガスセンサ」が反応する臭気性ガスとして、代表的には、メチルメルカプタンガス、硫化水素ガス、アンモニアガス、アルコール系のガスが挙げられる。
また、本実施形態の生体情報測定システム1において採用されている「臭気性ガスセンサ」は、対象としているメチルメルカプタンガスの他、それ以外の臭気性ガスにも反応してしまうセンサであるが、後述する種々の工夫により、このようなガスセンサを使用しても民生品として必要にして十分な精度の測定を可能にしている。具体的には、トイレ室という種々の臭気性ガスが存在する空間において、測定環境を整備するための工夫、ガスセンサによる検出信号から、被験者の排便行動を想定して、排便ガスに関するデータを抽出するデータ処理上の工夫、誤差の大きい検出データが得られた場合でも、それにより被験者に過度の心理的負担を与えないための工夫等が挙げられる。各工夫点についての詳細は後述する。
なお、本実施形態では、臭気性ガス及び水素ガスを検出するためのセンサとして半導体ガスセンサを用いた場合について説明するが、これに代えて、固体電解質センサを用いることも可能である。固体電解質センサは、例えば、安定ジルコニア等の固体電解質を加熱しておき、固体電解質を透過するイオン透過量に基づいて、ガスを検知するセンサである。固体電解質センサが検出可能なガスには、水素ガス及び臭気性ガスが含まれる。また、本実施形態では、二酸化炭素を検出するためのセンサとして、固体電解質センサが用いられている。二酸化炭素センサはこれらに限られるものではなく赤外方式などでも良い。なお、二酸化炭素を検出するセンサは省略することもできる。
図3に示すように、本実施形態においては、吸引装置18の内部にガス検出装置20が配置されている。
吸引装置18は、下方に向けられたダクト18aと、概ね水平方向に向けられた吸気通路18bと、吸気通路18bの下流側に配置された吸引ファン18cにより構成されている。また、ダクト18aの内部には、ダクトクリーナー58、及び湿度調整装置59が設けられている。
ガス検出装置20は、吸気通路18bの内部に配置されたフィルタ72と、臭気性ガスセンサ26と、水素ガスセンサ24と、二酸化炭素センサ28によって構成されている。図3に示すように、吸気通路18bを横断するようにフィルタ72が配置され、フィルタ72の下流側に臭気性ガスセンサ26、水素ガスセンサ24、及び二酸化炭素センサ28が並置されている。
さらに、臭気性ガスセンサ26の下流側に脱臭フィルタ78が設けられ、この脱臭フィルタ78によって吸気されたガスを脱臭することにより、吸引装置18は脱臭装置としても機能している。
また、脱臭フィルタ78の下流側には湿度調整装置59が設けられている。湿度調整装置59には吸湿剤が封入されており、ボウル2a内の湿度を低下させる必要がある場合には、脱臭フィルタ78を通過した空気が、封入されている吸湿剤の中を通過するように流路が切り替えられ、ボウル2a内を循環している空気から水分が除去される。これにより、ボウル2a内の湿度は適正値に維持され、各ガスセンサの検出感度がほぼ一定に維持される。従って、湿度調整装置59は、ボウル2a内の湿度変化を抑制する出力結果安定化手段として機能する。
吸引ファン18cは、水洗大便器2のボウル2a内の、臭気性ガス等を含む異臭ガスを一定速度で吸引し、脱臭した上でボウル2a内に戻すものである。脱臭用のダクト18aは、内部へ小便等の飛沫が入り込まないように、吸引口が下方に向けられた状態でボウル2a内に開口している。メチルメルカプタン等の臭気性ガスや、水素ガスは分子量が小さいため、排便後すぐに上昇してしまう。これに対して、本実施形態では、ボウル2a内に開口したダクト18aの入口から吸引ファン18cによって吸引することにより、排出された臭気性ガス及び水素ガスを確実にガス検出装置20内へ導入することができる。このように、吸引装置18は、被験者が排便を開始する前から作動され、被験者の排便期間中において一定流速の気体を各ガスセンサに接触させる。これにより、安定した測定値を得ることができる。従って、吸引装置18及びこれを作動させる制御装置22は、出力結果安定化手段として機能する。
フィルタ72は、脱臭機能を備えていないフィルタであって、臭気性ガス、水素、及び二酸化炭素を通過し、尿や洗浄剤等の異物の通過を妨げるように構成されている。このようなフィルタ72としては、化学反応を利用せず、機械的に異物を捕集する部材、例えば、細かいネット状部材を用いることができる。これにより、臭気性ガスセンサ26、水素ガスセンサ24、及び二酸化炭素センサ28が尿石等により汚染されるのを防止できる。
さらに、各ガスセンサに対して、各ガスセンサの上流側、かつ、フィルタ72の下流側にセンサ加温ヒータ54が夫々設けられている。上述の通り、半導体ガスセンサである臭気性ガスセンサ26及び水素ガスセンサ24は、触媒を所定の温度に加熱した状態において、水素及び臭気性ガスを検出することができる。センサ加温ヒータ54は、臭気性ガスセンサ26及び水素ガスセンサ24の触媒を加熱するために設けられている。また、二酸化炭素センサ28も固体電解質を所定の温度に加熱する必要があり、センサ加温ヒータ54が設けられている。これらセンサ加温ヒータ54はセンサに付着した異臭ガス成分を加熱除去するための異臭除去装置としても機能する。なお、臭気性ガスセンサ、水素ガスセンサとして固体電解質センサを使用する場合においても触媒を加熱するためのセンサ加温ヒータを設ける必要がある。
さらに、センサ加温ヒータ54は、各センサに付着した堆積物を除去するための手段としても機能する。フィルタ72を通過したガスは異物が除かれているものの、吸引したガスには様々な異臭ガス成分が含まれている。このような異臭ガス成分は各ガスセンサに付着し、微量な臭気性ガスを測定する際のノイズの原因となりうる。これに対して、センサ加温ヒータ54により、センサの触媒を加熱することにより、新たな装置を設けることなく、センサに付着した異臭ガスを加熱除去することができる。また、制御装置22は、被験者の排便行動が開始される前から、各ガスセンサの温度が一定になるようにセンサ加温ヒータ54を制御する。即ち、制御装置22は、気流が接触することにより、各ガスセンサの温度が低下するのを抑制するように、センサ加温ヒータ54を制御する。これにより、被験者の排便期間中において、各ガスセンサの感度が所定の値に管理され、各ガスセンサによる測定誤差を抑制することができる。従って、制御装置22及びセンサ加温ヒータ54は、出力される解析結果を安定化させる出力結果安定化手段として機能する。
また、脱臭フィルタ78は、臭気性ガス等の異臭ガスを吸着する触媒フィルタである。脱臭フィルタ78により臭気性ガス等のガスが取り除かれた空気は、ボウル2aへ戻される。この際、ボウル2a内に還流されたガスに臭気性ガス等が含まれていると、ボウル2a内に流入した臭気性ガス等が再びダクト18aから吸引され、臭気性ガスセンサ26が再度検出してしまうおそれがある。このため、本実施形態では、臭気性ガスセンサ26の下流側に脱臭フィルタ78を配置することにより、ボウル2a内に戻されるガスから臭気性ガス等の臭気成分を確実に除去している。
なお、被験者が便座4に着座すると、下着等によりボウル2a上部が閉鎖される。ボウル2a内が負圧になってしまうと、被験者の体や、着衣等に付着した異臭ガス成分がボウル2a内に吸引されてしまう。本実施形態の生体情報測定システム1においては、排便ガス内に微量しか含まれていない臭気性ガスを検出するため、臭気性ガスセンサ26の感度が極めて高く設定されており、被験者の体や、着衣等に付着した異臭ガス成分すら測定に対する外乱となる。これに対して、本実施形態においては、脱臭後のガスをボウル2a内に戻しているため、ボウル2a内が負圧となることはなく、被験者の体や、着衣等に付着した異臭ガス成分がボウル2a内に引き込まれるのを防止することができる。
ここで、臭気性ガスセンサ26として用いている半導体ガスセンサは、臭気性ガスのみならず、水素も検出してしまう。このため、半導体ガスセンサの検出した検出データから水素ガスの影響を分離する必要がある。本実施形態においては、このような水素ガスの影響を分離するための水素分離機構として、ガス検出装置20内において半導体ガスセンサにより検出された臭気性ガスの検出値から、水素ガスセンサ24により検出された水素ガスの検出値を減算することにより、水素ガスの影響を分離して臭気性ガスセンサ26の検出値として出力している。このような水素分離機構と半導体ガスセンサと、水素ガスセンサ24とを含み、臭気性ガス量及び水素ガス量に応じた検出値を出力する構成を検出値出力機構という。なお、上記の半導体ガスセンサにより検出された臭気性ガスの検出値から、水素ガスセンサ24により検出された水素ガスの検出値を減算する演算処理は、データ解析装置60等において行ってもよい。また、本実施形態では、半導体ガスセンサの検出した検出データから水素ガスの影響を分離するための水素分離機構について説明するが、メタンを検知するメタンセンサを設けることにより、半導体ガスセンサの検出した検出データからメタンの影響を分離することも可能である。メタンガスセンサとしては、触媒の成分をメタンに強く反応するように調整した半導体ガスセンサを用いればよい。
なお、多くの人の腸内には、メタンを生成するメタン生成菌が存在しない、又は、存在してもその量は非常に少ないため、多くの人は排便ガスに含まれるメタン量は非常に少ない。このため、本実施形態では、健康系ガスセンサとして、水素センサ24及び二酸化炭素センサ26を設けている。しかしながら、稀に、腸内のメタン生成菌が非常に多い人が存在する。このように腸内のメタン生成菌が非常に多い人の排便ガスは、メタンの生成量が多くなるが、水素の生成量が少なくなる。このため、水素センサ24及び二酸化炭素センサ26のみを設けた場合には、腸内のメタン生成菌が非常に多い人の排便ガスは、健康系ガスの排出量が少なく判断され、好ましくない。本実施形態では、多くの人に合わせるため、健康系ガスセンサとして、水素センサ24及び二酸化炭素センサ26を設ける構成としているが、メタンガス量の多い人に合わせて水素センサ24に代えてメタンガスセンサを設けてもよい。さらには、予め、水素センサ24及び二酸化炭素センサ26に加えてメタンガスセンサを設けておくことにより、如何なる被験者にも対応することができるため、より好ましい。
以上説明したように、排便ガスには大量の水素が含まれるが、半導体ガスセンサは臭気性ガスのみならず、水素も検出してしまう。これに対して、半導体ガスセンサである臭気性ガスセンサ26により検出されたガス量から、水素ガスセンサ24により検出された水素ガス量を減算することにより、水素の影響を分離することができるため、正確に臭気性ガスのガス量を測定できる。
また、排便ガスに含まれる水素ガスは分子量が空気に比べて非常に小さく、ボウル2aから逃げ出しやすい。これに対して、本実施形態では、吸引装置18のファン18cにより排便ガスを吸引しているため、確実に水素ガスを含む排便ガスを捕集することができる。
また、吸引した排便ガスをそのままボウル2a内に戻すと、臭気性ガスセンサ26による測定精度が低下する。これに対して、本実施形態では、吸引した排便ガスを脱臭フィルタ78により脱臭してボウル内に戻しているため、臭気性ガス量や水素量を正確に測定できる。さらに、このような脱臭フィルタ78は、各センサの下流側に配置する必要があるが、このような脱臭フィルタ78を各センサの下流に設けると、センサが異物により直接汚染される可能性がある。これに対して、本実施形態では、センサの上流側に脱臭機能を備えていないフィルタ72を設けているため、臭気成分測定に影響を与えず異物によるセンサの汚染を低減できる。
また、ボウル2a内のガスを吸引するとボウル2a内の圧力が下がり、被験者の体や衣服に付着した異臭ガス成分がボウル2a内に流れこむ恐れがある。これに対して、本実施形態では、脱臭後の臭気成分を除去した空気をボウル2a内に戻しているため、ボウル2a内への被験者の体や衣服に付着した異臭ガス成分の流れ込みを防止し、正確な測定が可能となった。
ただし、脱臭後の臭気成分を除去した空気をボウル2a内に戻すのは必須の構成ではない。このように脱臭後の臭気成分を除去した空気をボウル2a内に戻す構成を採用しない場合には、被験者の体や衣服に付着した異臭ガス成分がボウル2a内に流れこむおそれがある。しかしながら、後述に図9を参照して説明するように、残留ガスの基準値を設定する際に、これら被験者の体や衣服に付着した異臭ガス成分の影響を含めた上で、残留ガスの基準値が設定される。このため、脱臭後の臭気成分を除去した空気をボウル2a内に戻さなくても、ガス量の推定を行うことは可能である。
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第1実施形態による生体情報測定システム1により体調を測定する流れを説明する。
図4は、体調測定の流れを説明する図であり、上段には体調測定における各工程を示し、下段には、各工程においてリモコンの表示装置に表示される画面の一例を示している。図5は、リモコンの表示装置に表示される画面の一例を示す図である。
本実施形態の生体情報測定システム1では、被験者が排便時に放出する排便ガス中の臭気性ガスと、健康系ガスとの相関に基づき、癌の判定を含む体調状態の分析を行うものである。ここで、各被験者側装置では、排便期間中もしくは、一回の排便期間が終了した後、退出するまでの短時間で分析結果が表示されることが好ましい。しかしながら、短時間で分析を行うと分析精度が低くなるおそれがある。また、被験者が排出した排便ガスの全てを吸引装置18によって吸引することは困難であると共に、便器内やトイレ内が非常に不衛生な状態や芳香剤が強い測定環境では、これらが外乱となって影響をおよぼし測定精度が低下するおそれがある。このため、各被験者側装置において、被験者へ疾病の有無を含む体調を伝える際には、被験者の心理負担を考慮し、長期間に亘る多数回の排便行動時に測定を行った経時的な結果に基づいて、癌と関連性の高い臭気性ガスの絶対量だけを強く伝えるのではなく、被験者の体調の変化、すなわち腸内状態の変化が強く伝わるようにしている。また、各排便行動時における測定誤差も考慮して、本実施形態においては、一回の排便行動時の測定結果に基づいて、被験者に通知する体調が大きく変化することがないように、被験者に通知されるように工夫している。これは癌という病気が長期に渡って進行する病気であるという特性を利用したものであり、短期間で癌と関連性の強い臭気性ガス量を大きく変化するのは、癌との関連性が強いのではなく、悪しき生活習慣の結果やノイズの影響に起因することが大きいためであり、体調が大きく変化すると被験者への不要な心理不安となるためである。
上記の点に鑑み、本実施形態においては、まず、被験者側装置10では、一回の排便行動のうちの最初の排便ガスの測定結果、すなわち一回目の排泄行為時に排出された排便ガスに基づき、簡易に健康状態の分析を行い、健康状態の分析結果を表示する。これに対して、サーバー12においては、一回の排便行動の間に排出された総ガス量に基づき、他の被験者との比較等を行うことにより、より詳細な分析が可能である。そこで、本実施形態の生体情報測定システム1では、トイレ室R内に設置された被験者側装置10において簡易な分析を行い、サーバー12においてより詳細な分析を行う。
図4に示すように、本実施形態の生体情報測定システム1による一回の排便行動時における測定においては、測定前環境整備工程S1と、測定開始準備工程S2と、測定基準値設定工程S3と、測定工程S4と、検診工程S5と、通信工程S6と、測定後環境整備工程S7が実行される。
測定前環境整備工程S1とは、被験者がトイレ室Rに入室する前に行われる工程である。なお、被験者がトイレ室Rに入室したか否かは、入室検知センサ34(図2)により検知される。
測定前環境整備工程S1では、便座側の制御装置22はセンサ加温ヒータ54、吸引装置18、及び便蓋開閉装置40を測定待機モードに変更して制御する。センサ加温ヒータ54は、測定待機モードでは、温度センサ32により測定された温度に基づき、臭気性ガスセンサ26の触媒の温度が測定を行う際の温度よりも低い温度(例えば、370℃)になるように制御される。吸引装置18は、測定待機モードでは、吸引風量が最少限となるように制御される。便蓋開閉装置40は、測定待機モードでは、便蓋が閉じた状態となるように制御される。
また、測定前環境整備工程S1において、臭気性ガスセンサ26の触媒は、センサ加温ヒータ54が測定待機モードであるため、最適温度よりは低くなっているものの、臭気性ガスのガス濃度の測定は可能である。水洗大便器2に付着便等がある等、ボウル2a内に異臭ガスの発生源がある場合には、臭気性ガスセンサ26により測定されるガス濃度が所定値以上となる。制御装置22は、測定前環境整備工程S1において、臭気性ガスセンサ26により測定されたガス濃度の値が所定値を超えた場合には便器洗浄を実行する。具体的には、制御装置22は、ノズル駆動装置42によりノズルから洗浄水を放出してボウル2aを洗浄する、便器洗浄装置46により洗浄水タンクに貯留されていた水をボウル2a内に放出してボウル2a内を洗浄する、あるいは、便器除菌装置48により、水道水から次亜塩素酸水などの除菌水を生成し、生成した除菌水をボウル2aに吹きかけ、ボウル2aの殺菌を行う。
また、臭気性ガスセンサ26により測定されるガス濃度が所定値以上の場合において、制御装置22が吸引装置18を作動させてボウル2a内の気体を排出して、ガス濃度を低下させることもできる。吸引装置18により吸引された気体は、脱臭フィルタ78により脱臭されるので、吸引装置18及び脱臭フィルタ78は脱臭装置として機能する。また、便蓋を開放させた状態で吸引装置18により気体を吸引することにより、ボウル2a内のみではなく、トイレ室R内も脱臭することができるので、吸引装置18及び脱臭フィルタ78はトイレ室脱臭装置としても機能させることができる。好ましくは、吸引装置18及び脱臭フィルタ78を脱臭装置として機能させる場合には、被験者の排便期間内において体調測定を行っているときよりも、吸引装置18による気体の吸引量を大きくする。
或いは、トイレ室Rに設けられた換気装置(図示せず)を制御装置22が制御できるように構成しておき、換気装置を作動させることによりガス濃度を低下させても良い。このようにして、ボウル2a内に残留している臭気性ガスの濃度を低下させ、残留している気体に起因する残留ガスノイズの影響が軽減される。従って、測定前環境整備工程S1において実行されるノズル駆動装置42、便器洗浄装置46又は便器除菌装置48によるボウル2aの洗浄又は殺菌、及びボウル2a内又はトイレ室R内の排気/脱臭は、残留ガスノイズの影響を軽減するノイズ対応手段、及び残留している臭気性ガスの濃度を低下させる残留ガス除去手段として機能する。また、被験者がトイレ室Rに入室していない、被験者の排便期間以外のときに実行されるノイズ対応手段は、第1ノイズ対応手段として機能すると共に、残留ガス除去手段として機能する。
さらに、測定前環境整備工程S1において、上述した便器洗浄を行っても、臭気性ガスセンサ26により測定されるガス量が所定値未満とならない場合には、制御装置22は、送受信機56により清掃ワーニング指令信号を送信する。リモコン8側の送受信機66が清掃ワーニング指令信号を受信すると、表示装置68又はスピーカ70により被験者に対してトイレの洗浄をするよう報知する。
また、測定前環境整備工程S1において、制御装置22は、定期的に吸引環境クリーニングを行う。具体的には、制御装置22は、ダクトクリーナー58を駆動し、吸引装置18のダクト18a内に洗浄水を吹き付けてダクト18a等を洗浄する。さらに、センサ加温ヒータ54により水素ガスセンサ24、臭気性ガスセンサ26及び二酸化炭素センサ28を高温に加熱して、これらガスセンサ24、26、28の表面に付着した異臭ガス成分を焼失させる。
次に、制御装置22は、入室検知センサ34により被験者の入室が検知されると、送受信機56を介してリモコン8側の送受信機66に測定開始準備工程S2を開始する旨の信号を送信し、リモコン側と同期しながら測定開始準備工程S2を行う。
測定開始準備工程S2では、まず、リモコン8に内蔵された被験者特定装置62は被験者を特定する。具体的には、生体情報測定システム1には、システムが設置された住宅の居住者が登録されており、登録されている居住者が被験者の候補として表示される。即ち、図5に示すように、リモコン8の表示装置68の上部には、「被験者A」、「被験者B」、「被験者C」..として候補者のボタンが表示され、トイレ室Rに入室した被験者が自己に対応するボタンを押すことにより、被験者が特定される。さらに、リモコン8に内蔵されたデータ解析装置60は、記憶装置を参照して、被験者特定装置62が受け付けた個人識別情報の過去の測定データ及び解析の基準となる基準データとしての体調表示テーブルを取得する。
また、測定開始準備工程S2において、データ解析装置60は、図5に示すように、表示装置の二段目に、例えば、「前回別の場所で排便しましたか?」といった、前回の排便がこの装置が設置されているトイレにおいて行われたか否かに関する質問と、その回答の選択肢「はい(今朝)」、「はい(昨日午後)」、「はい(昨日午前)」、「一昨日以前」、「いいえ」を表示する。被験者がこの質問に回答することにより、データ解析装置60の入力装置64に被験者の排便履歴情報が入力される。このような被験者の前回の排便行動からの経過時間に関する排便履歴情報はリモコン8に内蔵された記憶装置(被験者情報記憶装置)に記憶され、この被験者情報記憶装置には、予め登録されている被験者の体重、年齢、性別等に関する被験者情報も記憶されている。また、排便履歴情報は、サーバー12に送信され、サーバー12のデータベースに記録される。
また、測定開始準備工程S2において、便器側の制御装置22は、センサ加温ヒータ54、吸引装置18、及び便蓋開閉装置40を測定モードに制御する。センサ加温ヒータ54は、測定モードでは、温度センサ32により測定された温度に基づき、臭気性ガスセンサ26の触媒の温度が測定に適した温度(400℃)となるように、制御される。また、吸引装置18は、測定モードでは、吸引風量を、排便ガスがボウル2aから外部に漏れないような風量まで上昇させ、このような風量から変動しないように一定に制御される。また、便蓋開閉装置40は、測定モードでは、便蓋を開放するように制御される。
また、測定開始準備工程S2において、臭気性ガスセンサ26によって検出された臭気性ガス濃度が高い場合には、制御装置22は、便器除菌装置48によりボウル2a内の除菌を行う。
また、測定開始準備工程S2において、湿度センサ30により測定された湿度が臭気性ガスセンサ26による排便ガスの測定に適していないような値の場合には、制御装置22は、湿度調整装置59に信号を送り、ボウル内の湿度が適正値となるように制御を行う。
また、測定開始準備工程において、アルコール系除菌剤を使用したシートや、スプレーにより便座4の清掃が行われると、アルコールに臭気性ガスセンサ26が反応しガス濃度値が急増する。このように臭気性ガスセンサ26により測定されるガス濃度が急増した場合には、データ解析装置60は、表示装置68に警告を表示する。
また、データ解析装置60は、臭気性ガスセンサ26による測定値を、排便ガス測定のベースとなるノイズレベルである環境基準値として記憶する。この環境基準値に基づき、データ解析装置60は、測定が可能な状態であるか否かを判断する。そして、データ解析装置60は、ノイズレベルの測定中、及び測定が可能でないと判定した場合には、表示装置68により、図4の下段に示すように、「測定準備中! できればちょっと待って下さい」といった、被験者に排便を待機するように促す表示を提示する。
次に、制御装置22は、着座検知センサ36により被験者が着座したことが検知されると、送受信機56を介してデータ解析装置60に測定基準値設定工程S3を開始する旨の信号を送信し、データ解析装置60と同期しながら測定基準値設定工程S3を行う。なお、着座検知センサ36が検出と非検出とを所定回繰り返すような場合は、被験者による便座の清掃の影響であるため、このような場合はS1に戻ることが望ましい。
測定基準値設定工程S3では、データ解析装置60が臭気性ガスセンサ26により測定された測定値に基づき、被験者に起因するノイズレベルの判定である被験者付着異臭ノイズ判定を行う。即ち、臭気性ガスセンサ26により測定された測定値が十分に低下し、安定していない場合には、アルコール系除菌剤等による除菌が行われた可能性があると判断して、図4の下段に示す「測定準備中! できればちょっと待って下さい」の表示を継続する。或いは、被験者に起因するノイズレベルが所定値以上の場合において、データ解析装置60は、局部洗浄装置であるノズル駆動装置42に信号を送ってこれを作動させ、被験者のおしり洗浄を実行する。または、データ解析装置60は、被験者がおしり洗浄を実行するよう、表示装置68により被験者に報知する。このように、データ解析装置60によるおしり洗浄の実行及びそれを促す報知、及び被験者へのノイズが大きいことの報知は、第1ノイズ対応手段とは異なる対応によって被験者ノイズを軽減する第2ノイズ対応手段として機能する。また、上述した第1ノイズ対応手段は、被験者がトイレ室Rに入室していないときに実行されるのに対して、第2ノイズ対応手段は被験者がトイレ室Rに入室しているとき実行される。一方、臭気性ガスセンサ26により測定された測定値が十分に低下している場合には、この表示は消去される。また、所定時間経過しても臭気性ガスセンサ26により測定された測定値が十分に低下しない場合には、データ解析装置60は体調の測定を中止し、その旨を表示装置68に表示して被験者に報知する。このように、データ解析装置60は、被験者の排便期間前におけるボウル2a内の気体成分が、測定に適さないと判断した場合には、被験者の体調測定を中止するので、出力結果安定化手段として機能する。
また、測定基準値設定工程S3において、データ解析装置60は、後に詳述するように、臭気性ガスセンサ26により測定されたガス濃度に基づきガス量推定のための基準値を設定する。
次に、データ解析装置60は、後に詳述するように、臭気性ガスセンサ26による測定値が、基準値から大きく立ち上がると、被験者が排泄行為を行ったと判定する。このように被験者が排泄行為を行ったと判定してから、着座検知センサ36により被験者が離座したことが検知されるまで、データ解析装置60は、測定工程S4を行う。
測定工程S4では、制御装置22は、水素ガスセンサ24、臭気性ガスセンサ26、二酸化炭素センサ28と、湿度センサ30と、温度センサ32と、入室検知センサ34と、着座検知センサ36と、排便・排尿検知センサ38とにより測定された検出データが、被験者特定装置62により特定された被験者毎に記憶装置に記憶される。制御装置22は、記憶装置に記憶したこれら測定値を、測定工程S4終了後に送受信機56を介して、データ解析装置60に送信する。なお、本実施形態では、測定値は測定工程S4終了後に制御装置22からデータ解析装置60に送信することとしているが、これに限らず、測定と並行してリアルタイムで送信してもよい。
また、制御装置22は、被験者が被験者を特定する情報を被験者特定装置62に入力していない状態であっても、排便ガスの測定を開始させる。情報が入力される前に検出された検出データは、その後被験者が一回の排便中に被験者情報を入力すると、入力された被験者情報と関連づけて記憶装置に記憶される。排便という切羽詰った状況において各種の入力を先にさせず、落ち着いてから入力を行えるようにした排便という特性に合わせた実用的な工夫である。さらに、測定開始後、所定時間経過しても被験者が被験者情報を入力しない場合には、被験者に入力を促すメッセージが表示装置68及びスピーカ70から出力され、被験者に報知する。これにより、被験者の入力忘れを防止することができる。
また、これと同時に、測定基準値設定工程S3と同様に、データ解析装置60は、測定可能か否かを判断する。データ解析装置60により測定可能と判定された場合には、データ解析装置60は表示装置68により、図4下段に示すように、「検診者:東陶太郎(被験者識別情報)様」、「測定OK! 測定しています」というような、被験者に対して測定が行われている旨の表示を提示する。
次に、制御装置22は、着座検知センサ36により被験者が離座したことが検知されると、送受信機56を介してデータ解析装置60に検診工程S5を開始する旨の信号を送信する。データ解析装置60は、この信号を受信すると健診工程S5を開始する。
データ解析装置60は、まず、各センサにより測定された測定値に基づき、後に詳述する測定信頼度の演算を行う。
一方、被験者が離座した後も被験者を特定する情報が入力されていない場合には、制御装置22は、水洗大便器2の洗浄を禁止する。即ち、被験者特定情報が入力されない場合には、被験者がリモコン8の洗浄ボタン(図示せず)を操作しても、制御装置22は水洗大便器2の洗浄水を吐出させず、入力を促すメッセージを表示させる。これにより、被験者に被験者特定情報の入力を強く促すことができる。
また、データ解析装置60は、後に詳述するように、臭気性ガスと、水素ガス(健康系ガス)のガス量を推定する。
また、検診工程S5において、データ解析装置60は、所定期間内に行われた複数回の排便において検出され、記憶装置に記憶された複数の検出データの経時変化に基づいて被験者の体調を解析する検診結果演算を行うと共に、記憶値に基づく経時診断を行う。そして、経時診断に基づくアドバイス内容を選択する。データ解析装置60は、図5の3段目に示すように、表示装置68に選択したアドバイス内容を健康管理に関するメッセージとして表示する。図5に示す例においては、検診結果として、被験者の現在の体調状態は「体調不全」に該当すること、アドバイスとして「腸内環境が悪いようです。健康的な生活を心がけましょう。」と表示されている。
さらに、検診結果の下には、今回の測定における水素ガス、二酸化炭素ガス等の健康系のガス量、臭気性ガス等の体調不良系のガス量が表示される。また、アドバイスの下には、過去4回分の測定結果が併せて表示される。さらに、被験者が表示画面上の「詳細画面」ボタンを押すと、過去1ヶ月の被験者の体調変化を示したテーブルが表示される。この表示については後述する。このように、リモコン8の表示装置68に表示される解析結果には、体調状態、アドバイス及び、体調変化(測定データの履歴)のみであり、医療機関端末16に表示されるようながんの疾病の判定結果に関する通知は含まれていない。なお、これらの解析結果は、被験者用端末14に通知してもよい。
また、図5の最下段に示すように、表示装置68の下部には、今回の測定データの信頼度が表示されている。図5に示す例では、信頼度は比較的高い「4」と表示されている。また、信頼度が低い場合には、信頼度の表示の下に、信頼度が低下した理由及びそれを改善するためのアドバイスが表示される。例えば、ボウル内に残留している気体に起因する残留ガスノイズ、又は被験者に起因する被験者ノイズが大きい場合には、信頼度を低下させ、ノイズが測定結果に影響していることを被験者に報知する。従って、表示装置68による信頼度の表示は、ノイズ対応手段として機能する。信頼度の計算については後述する。
次に、制御装置22は、入室検知センサ34により被験者が退室したことを検知すると、送受信機56を介してデータ解析装置60に対してデータ送信を行う旨の信号を送信する。データ解析装置60は、この信号を受信すると通信工程S6を行う。
データ解析装置60は、通信工程S6において、被験者特定装置62により特定された被験者を識別する情報と、各種センサにより測定したデータ、算出した信頼度、測定日時情報、排便・排尿検知センサ38により取得された便量及び便の状態の少なくとも一方に関する便状態情報、及び排便履歴情報を含む通知用データを、ネットワークを介してサーバー12へ送信する。サーバー12は、受信したこれら情報をデータベースに記録する。
また、制御装置22は、入室検知センサ34により被験者が退室した後、測定後環境整備工程S7を行う。
制御装置22は、測定後環境整備工程S7において、臭気性ガスセンサ26によりガス濃度を測定する。そして、制御装置22は、排便期間終了後所定時間経過しても臭気性ガスセンサ26により測定されたガス濃度が所定の値よりも大きい場合には、水洗大便器2のボウル2aに便付着があると判定し、便器洗浄装置46により洗浄水タンクに貯留されていた洗浄水をボウル2a内に放出してのボウル2a内を洗浄する、あるいは、便器除菌装置48により、水道水から次亜塩素酸水などの除菌水を生成し、生成した除菌水をボウル2aに噴霧し、ボウル2aの殺菌を行う。
これらの便器洗浄装置46による追加の便器洗浄、及び便器除菌装置48によるボウル2aの殺菌は、残留している臭気性ガスの濃度を低下させる残留ガス除去手段として機能する。好ましくは、残留ガス除去手段によって自動的に実行される便器洗浄は、被験者がリモコン8の洗浄スイッチ(図示せず)を操作することにより実行される通常の便器洗浄よりも、洗浄力を高く設定しておく。具体的には、残留ガス除去手段によって実行される便器洗浄は、ボウル2aへの洗浄水の吐出回数を多く設定しておき、或いは、洗浄水の流速を高く設定しておくのがよい。また、残留ガス除去手段が実行するボウル2aの殺菌は、被験者がリモコン8の殺菌スイッチ(図示せず)を操作することにより実行される通常のボウルの殺菌よりも、殺菌力を強く設定しておく。具体的には、残留ガス除去手段が実行するボウルの殺菌では、通常の殺菌よりも高濃度の殺菌水が噴霧され、又は多量の殺菌水が噴霧されるように設定する。
さらに、残留ガス除去手段は、排便期間終了後所定時間経過しても臭気性ガスセンサ26により測定されたガス濃度が所定の値よりも大きい場合には、ダクト18a内に汚れがあると判断して、ダクトクリーナー58を作動させる。ダクトクリーナー58は、吸引装置18に取り付けられたダクト18a内を、水道水を電気分解した次亜塩素酸等により洗浄する。
また、残留ガス除去手段は、以上の洗浄、殺菌処理を実行しても依然として臭気性ガスセンサ26により測定されたガス濃度が十分に低下せず、所定の値よりも大きい場合には、水洗大便器2の清掃を促すメッセージを表示装置68に表示する。
そして、制御装置22は、測定後環境整備工程S7において、センサ加温ヒータ54、吸引装置18、及び便蓋開閉装置40を測定待機モードに変更して、一回の測定を終了する。
次に、図6を参照して、体調表示テーブルを説明する。この体調表示テーブルは図5に示す表示画面において「詳細画面」ボタンを押すことにより表示されるテーブルである。
リモコン8側の記憶装置には、体調表示テーブルと、被験者識別情報に対応づけられて各被験者の排便日時と、過去の測定データが被験者ごとに記録されている。リモコン8側の記憶装置に記憶された過去の測定データは、排便期間中の全期間のデータであってもよいが、記憶装置の容量との関係から、排便期間中の初回の排泄行為により排出された排便ガスの測定データ(初回の排泄行為の期間の測定データ)であることが好ましい。
図6に示すように、体調表示テーブルは、上述した発明者らが行った実験に基づき決定されたテーブルであり、縦軸に第1の指標である臭気性ガス(表示上は体調不良系ガスとしている)のガス量に関する指標、横軸に第2の指標である健康系ガスのガス量に関する指標を表したグラフである。第1の指標は、ガス検出装置20によって検出された第1検出データに基づく、臭気性ガスの量に関するものであり、第2の指標は、ガス検出装置20によって検出された第2検出データに基づく、健康系ガスである水素ガスの量に関するものである。リモコン8の表示装置68には、このような縦軸、横軸を有する体調表示テーブル上に、被験者の排便ガスの測定結果が経時的にプロット点として表示される。即ち、図6に示すように、同一の被験者の最新の測定結果を表すプロット点を「1」とし、前回の結果を「2」、前々回の結果を「3」...として、過去30回分のプロット点が数字と共に表示される。これにより、被験者は自己の体調の経時変化を認識することができる。なお、本実施形態では30回分としたが、数週間分、数か月分でもよく、また癌の進行が年単位であることを考えて年単位でも良い。被験者が状況に応じて表示範囲を変えることができるようにすることは更に望ましく、更に、表示範囲が多い場合は月平均にして1年分とか2年分というように表示の仕方も見易さを考慮して変更すると更に良いことは言うまでもない。
また、体調表示テーブルでは、健康系ガスに関する指標と臭気性ガスに関する指標との関係に応じて、「疾病疑いレベル2」、「疾病疑いレベル1」、「体調不全レベル2」、「体調不全レベル1」、「体調良好」といった体調状態の良否に応じた複数段階の領域が設定されている。ここで、図6に示すように、最も体調の悪い状態に対応する「疾病疑いレベル2」は、臭気性ガスのガス量が最も多く、健康系ガスのガス量が最も少ない、体調表示テーブルの左上の領域に設定されている。一方、最も体調の良い状態に対応する「体調良好」は、臭気性ガスのガス量が最も少なく、健康系ガスのガス量が最も多い、体調表示テーブルの右下の領域に設定されている。これらの間の体調レベルを示す「疾病疑いレベル1」、「体調不全レベル2」、及び「体調不全レベル1」の領域は、体調表示テーブル上で右上がりの帯状の領域として、左上から順に設定されている。このような体調表示テーブルは、被験者の体重、年齢、性別等に合わせて予め設定されており、このテーブル上に第1、第2の指標に基づくプロット点を表示することにより、検出データ及び被験者情報に基づく解析を行うことができる。
このように、本実施形態においては、臭気性ガスのガス量に関する指標、及び健康系ガスのガス量に関する指標の2つの指標を使用しているので、より詳細に被験者の体調や体調の変化を評価することができる。例えば、体調が良いことを表す健康系ガスのガス量が多い場合であっても、臭気性ガスのガス量も多い場合には、最も体調が良好なレベルの評価にはならない(体調表示テーブルの右上の領域)。逆に、体調が良いことを表す健康系ガスのガス量が非常に少ない場合であっても、臭気性ガスのガス量が少なければ、最も体調が悪いレベルを示す評価にはならない(体調表示テーブルの左下の領域)。
また、例えば、「体調不全レベル1」と、これよりも体調が悪い状態を表す「体調不全レベル2」の境界線は、横軸の健康系ガス量に関する指標が増大すると共に縦軸の臭気性ガス量に関する指標も増大するように右上がりに引かれ、体調が悪い状態を表す「体調不全レベル2」は、この境界線の臭気性ガス量に関する指標が大きい側に分布している。このように境界線が設定されているため、本実施形態においては、横軸の健康系ガス量に関する指標が同一の値であっても、縦軸の臭気性ガス量に関する指標の値によって体調の評価が異なるものとなる。また、同等の評価を得るためには、縦軸の臭気性ガス量の値が大きくなるにつれ、横軸の健康系ガス量の値も大きくなる必要がある。
また、リモコン8側の記憶装置には、これら体調状態に応じたアドバイスが記録されている。具体的には、体調状態「疾病疑いレベル2」には「通院して下さい」というアドバイスが、体調状態「疾病疑いレベル1」には「通院を推奨します」というアドバイスが、体調状態「体調不全レベル2」には「疾病懸念が高まります。ストレス軽減、生活習慣を至急改善しましょう」というアドバイスが、体調状態「体調不全レベル1」には「腸内環境が悪いようです。健康的な生活を心がけましょう」というアドバイスが、体調状態「体調良好」には「体調は良好です」というアドバイスが対応付けられて記録されている。体調表示テーブル上には、被験者の体調を示すプロット点と共に、最新のプロット点が位置する領域に対応したアドバイスが表示される。
しかしながら、リモコン8の表示装置68の体調表示テーブル上に示されるプロット点は、データ解析装置60により解析された解析結果をそのまま示したものではなく、所定の補正を施して移動された位置にプロット点が示される。ここで、本実施形態の生体情報測定システム1により検出することを想定している疾病は大腸癌等であり、このような疾病は数日のうちに急激に進行するものではない。一方、本実施形態の生体情報測定システム1は、トイレ室Rに設置した水洗大便器2のボウル2aから排便ガスを吸引して、吸引したガスを分析するものであるから、排便ガスを全量採集することはできない。また、被験者が香水を付けていた場合や、トイレ室R内に臭気性ガス等、臭気性ガスセンサ26に反応するガスが残留している場合等、様々な要因により体調の測定結果に誤差が生じる虞がある。
このため、被験者の1回の測定結果に基づいて、表示される体調が大きく体調の悪い側に振れると、被験者に不要な心理的負担を与えてしまう。また、体調の測定結果が一回の測定毎に大きく振れると、体調の測定結果に対する被験者の信頼を失ってしまう結果となる。このため、本実施形態の生体情報測定システム1においては、データ解析装置60による解析結果に補正を施し、表示される測定結果が一回の測定毎に大きく振れることがないようにしている。しかしながら、リモコン8の記憶装置に保存される検出データ及びサーバー12に送信され保存される検出データは、補正を施していないものが検出データの信頼度と共に記憶される。また、リモコン8の記憶装置には次回の表示も考慮して補正して表示した表示の座標を記憶しておくことが良い。このように、本実施形態の生体情報測定システム1によって得られる検出データは、全てが高い信頼性を有するものではない。しかしながら、毎日の排便行動について長期間継続的にデータを取得し、これをリモコン8の記憶装置やサーバー12に集積しておくことにより、被験者の長期間に亘る体調の変化を検知することが可能となり、被験者の体調が大きく悪化する前に、大腸癌等の大きな疾病に至ることのないよう注意を喚起することができる。
このように、検出データに施す補正は、表示装置68に出力される被験者の体調の指標が、検出誤差等によって体調不良の方向に振れるのを抑制する出力結果安定化手段として機能する。
なお、本実施形態では、リモコン8の記憶装置に保存される検出データとしては、必ずしも、補正を施していないものでなくてもよく、補正後の検出データを記録してもよい。
次に、図7を参照して、プロット点の補正を説明する。
図7(a)は、最新データのプロット点の、補正による移動の一例を示す図であり、(b)は、プロット点の移動量に対するリミット処理を示す図である。
まず、図7(a)に示すように、最新の測定に基づいてデータ解析装置60が算出したプロット点が「1」であり、この点が、過去30回の測定データのプロット点の重心Gから大きくずれている。このように、前回までの測定データの分布に対して大きく外れたプロット点「1」が表示されると、被験者に過度の心理負担を与えてしまう。癌リスクは1日で高まるようなものではないため、このような測定データの大きな変化は、癌リスクが高まったというより、前日の悪しき生活習慣の結果、または、ノイズの影響である可能性が高い。そこで、本実施形態では、過度な心理負担を被験者に与えないように配慮し、補正を行っている。このため、データ解析装置60は、最新の解析結果が体調不良の側(左上方向)に変化した場合には、プロット点「1」を体調表示テーブル上に表示する位置を、今回の測定データの信頼度に基づいて、重心Gの方向に所定距離移動させて表示する。即ち、図7(a)に示す例においては、プロット点「1」を重心Gの方向(体調良好の側)に移動するように補正したプロット点「1’」の位置に最新の測定データが表示される(実際にはプロット点「1」は表示されない)。このプロット点「1」の重心G方向への移動距離は、最新の測定データの信頼度が低いほど大きくされる。このように、最新のプロット点を良好な体調を示す側に移動することにより、被験者への心理負担を軽減することができる。なお、測定データの信頼度の計算については後述する。しかしながら、データ解析装置60は、最新のプロット点の体調不良の側への移動が所定回数以上連続した場合には、補正量(補正による移動量)を小さくする。これにより、被験者が自己の体調が悪化していることを認識し、体調改善に努めることを促すことができる。
また、最新の体調測定において非常に大きなノイズが入り、最新のプロット点が非常に大きくずれた場合には、図7(a)で説明した補正を施した場合でも、なお表示される体調が、体調不良の側に大きく移動することが考えられる。このため、図7(b)に示すように、最新データの、重心Gからの移動距離には所定のリミッタがかけられている。即ち、最新データの重心Gからの移動は±40%に制限され、最新のデータが重心Gの座標から40%以上ずれた場合であっても、40%ずれた位置に最新データがプロットされる。例えば、重心Gの座標値が(x,y)である場合、最新データがプロットされうる座標値の範囲は(0.6x〜1.4x,0.6y〜1.4y)となり、これ以上ずれた位置にはプロットされないようになっている。
さらに、このような40%を超える最新データの移動が2回連続した場合には、最新のデータが移動し得る範囲を60%に緩和する。これにより、例えば、重心Gの座標値が(x,y)である場合、最新のデータがプロットされうる座標値の範囲は(0.4x〜1.6x,0.4y〜1.6y)に変更される。これは、このように大きな最新データの移動が高頻度で発生している場合には、単なる測定誤差ではなく、被験者の何らかの体調の変化が反映されていると考えられるためである。
次に、図8を参照して、サーバー側の診断テーブルを説明する。なお、以下のサーバーにおける処理はサーバー12に設けられたデータ解析回路により行われる。
図8は、サーバー側に表示される診断テーブルの一例を示す図である。上述したように、本実施形態の生体情報測定システム1においては、データ解析装置60により解析された全排便期間の測定データがインターネットを介して、逐次サーバー12に送信され、サーバー側のデータベースに記録されている。この蓄積された測定データは、被験者などによって登録されている医療機関に設置された医療機関端末16に表示可能に構成されている。例えば、リモコン8の表示装置68に表示された「通院を推奨します」というメッセージを受けて、被験者が医療機関を受診した場合には、医療機関端末16では、サーバー用の診断テーブルが表示できるようになっている。診断テーブルは、その縦軸、横軸はリモコン8の表示装置68に表示される体調表示テーブルと同一の指標を表すものであるが、各領域に割り当てられている体調の状態が、より具体的になっている。医師は、サーバー12側のデータベースに記録されている被験者の測定データを医療機関端末16で参照することにより、被験者の経時的な体調を参照することができ、医療機関における検査や治療に役立てることができる。或いは、サーバー12に送信される測定データが、著しい体調不良を示している場合において、被験者が登録している医療機関から診察を受けるよう該当する被験者の被験者用端末14に通知がなされるように本発明を構成することもできる。
この医療機関端末16に表示される診断テーブルは、上記のように被験者の表示装置68上に表示される体調表示テーブルとは異なるものになっている。図8に示すように、サーバー12側の診断テーブルは、上述した発明者らが行った実験に基づき決定されたテーブルであり、健康系ガスのガス量と、臭気性ガスのガス量との関係に対応して、疾病状態が関連づけられている。具体的には、診断テーブルでは、健康系ガスのガス量と臭気性ガスのガス量との関係に応じて、「大腸癌懸念大」、「早期大腸癌懸念大」、「早期大腸癌疑い」、「体調不全レベル3」、「体調不全レベル2」、「体調不全レベル1」、「健康状態」、「腸内不全(下痢)」、及び、「誤測定疑い」の領域が設定されている。
このように設定されたサーバー側の診断テーブル上に、被験者の過去の測定データが経時的にプロットされ、プロット点の位置に基づき「大腸癌懸念大」、「早期大腸癌懸念大」、「早期大腸癌疑い」等の癌の疾病に関する判定が行われる。なお、サーバー側の診断テーブルに表示されるプロット点には、補正やリミッタは施されておらず、医師は、表示されたデータを、その信頼度と共に総合的に判断する。また、医療機関端末16に表示される診断テーブル及び判定結果は、医師が参照することを前提に設定されているため、疾病の名称や、その進行度合い等がより具体的に表示されるようになっている。また、長期にわたり、プロット点が、例えば、「大腸癌懸念大」、「早期大腸癌懸念大」、「早期大腸癌疑い」等の癌の疾病に関する領域内に位置する場合には、より、疾病の可能性が高い旨表示する。医師は、示されたプロット点や、測定の信頼度等を総合的に判断して、被験者に対して、その体調の状態を告げることができる。また、医療機関端末16は、過去の測定データが継時的にプロットされた診断テーブルに加えて、データベースを参照して算出した信頼度、各種センサにより測定したデータ、便量及び便の状態の少なくとも一方に関する便状態情報、及び排便履歴情報も表示可能に構成されている。
また、サーバー12には、多数の被験者側装置10が接続され、多数の被験者の測定データが集積されている。さらに、サーバー12側のデータベースには、或る測定データに基づいて医療機関を受診した被験者が、医療機関で精密な検査を受けた結果、どのような病状であったか、についてもデータが蓄積されている。従って、本実施形態の生体情報測定システム1によって測定されたデータと、実際の病状とを関連づけたデータをサーバー12側に集積することができる。このように集積された多数の被験者の測定データを基にサーバー側の診断テーブルは逐次更新され、更新された診断テーブルに基づいて、より精度の高い診断を行うことができる。また、サーバー側に集積されたデータに基づいて、体調表示テーブルを更新することもできる。サーバー側のデータに基づいて更新された体調表示テーブルは、インターネットを介して各被験者側装置10にダウンロードされ、リモコン8の表示装置68に表示される。しかしながら、体調表示テーブルが更新された場合であっても、被験者に直接提示される体調表示テーブルは、被験者に示すことが適切な内容に修正されている。
次に、図9を参照して、本実施形態の生体情報測定システム1に備えられた各センサによって検出されるデータと、それに基づくガス量の推定を説明する。
図9は、被験者の1回の排便における、生体情報測定システム1に備えられた各センサによる検出信号を模式的に示したグラフである。図9には、上段から順に、水素ガスセンサ24、二酸化炭素センサ28、臭気性ガスセンサ26、湿度センサ30、温度センサ32、着座検知センサ36、及び入室検知センサ34による検出信号の波形を示している。
上記各センサの検出信号に基づくガス量の推定は、体調状態を判別する体調状態判別手段であるデータ解析装置60、即ち、リモコン8に内蔵されたCPU及び記憶装置、又は、サーバー12のCPU及び記憶装置において行われる。データ解析装置60には、リモコン8の記憶手段から読み込んだ、排泄行為の開始時点を判定するための、ガス量の変化率の開始閾値、及び、安定した測定を行うことができるようなガス量に関する安定性閾値が予め設定されている。なお、ここでいう排泄行為にはおならも含まれる。
まず、図9の時刻t1において、入室検知センサ34は、被験者の入室を検知する。データ解析装置60は、入室検知センサ34によりトイレ室R内に被験者が入出する前の状態(時刻t0〜t1)においても、臭気性ガスセンサ26により臭気性ガスのガス量を測定している。この状態においても、芳香剤や水洗大便器2のボウル2aに付着している残留便の影響により、臭気性ガスセンサ26は反応し、或る程度の検出信号を出力している。このように、被験者の入室前の臭気性ガスセンサ26の測定値を残留ガスノイズであるガス量の環境基準値とする。なお、入室検知センサ34が入室を検知する前の状態では、臭気性ガスセンサ26や吸引装置18は節電状態となっており、臭気性ガスセンサ26の触媒を加熱するためのセンサ加温ヒータ54の温度が低めに設定され、吸引ファン18cの回転数が抑えられて通過する流量も低くなっている。
次に、時刻t1において、入室検知センサ34により被験者が入室したことが検知されると、臭気性ガスセンサ26及び吸引装置18が起動状態となる。これにより、臭気性ガスセンサ26のセンサ加温ヒータ54の温度が上昇するとともに、吸引装置18のファンの回転数が上がり、所定の流量のガスを吸引するようになる。これにより、温度センサ32による検出値が一旦大きく上昇した後、適正温度に収束する(図9の時刻t1〜)。なお、本明細書においては、入室検知センサ34が被験者のトイレ室Rへの入室を検知している期間(図9の時刻t1〜t8)を一回の「排便行動」と呼んでいる。また、被験者が入室すると、臭気性ガスセンサ26により検出される検出信号が上昇する。これは、臭気性ガスセンサ26が、被験者の体臭や、使用している香水、整髪料等に反応するためである。即ち、被験者がトイレ室Rに入室する前の残留ガスノイズからの増加分が、被験者に起因する被験者ノイズである。データ解析装置に内蔵されたノイズ測定回路は、ボウル2a内に残留している気体に起因する残留ガスノイズ、及び被験者に起因する被験者ノイズを検出する。また、臭気性ガスセンサ26は、便器内に排出された排便ガス中にppbオーダーで含まれる極めて微量の臭気性ガスを検出することを目的として、極めて高感度に設定されているため、人間の嗅覚で感じ取ることができない程度の臭気にも反応する。
次に、図9の時刻t2において、着座検知センサ36により被験者が便座4に着座したことが検知されると、この時点が被験者の1回の排便期間の開始時点として設定される。なお、本明細書においては、着座検知センサ36が被験者の便座4への着座を検知している期間(図9の時刻t2〜t7)を一回の「排便期間」と呼んでいる。そして、排便期間の開始時点(時刻t2)より後であり、かつ、後述する最初の排泄行為の開始(図9の時刻t5)直前における臭気性ガスセンサ26による検出値を残留ガスの基準値として設定する。
図9に示す例では、時刻t2において被験者が着座した後、時刻t3〜t4の間で湿度センサ30検出値が上昇している。これは、被験者の放尿を検知したものであり、臭気性ガスセンサ26の検出値は殆ど変化していないため、データ解析装置60は、排泄行為は行われていないと判断する。次いで、時刻t5において水素ガスセンサ24及び臭気性ガスセンサ26の検出値が急激に立ち上がっている。このように、被験者の着座後の排便期間において、臭気性ガスセンサ26の検出値が急激に立ち上がると、データ解析装置60は、排泄行為が行われたと判断する。
排泄行為が行われると、データ解析装置60は、臭気性ガスセンサ26による検出値の、残留ガスの基準値からの増加分(臭気性ガスセンサ26による検出値のグラフの斜線部分)である変動幅に基づいて、被験者から排出された臭気性ガス量を推定する。即ち、データ解析装置60は、被験者による排便期間開始時点における検出データの値を、被験者に起因するノイズレベルである基準値とし、臭気性ガスセンサにより検出された検出値と、基準値との差分を始点から終点まで時間積分することにより、一回目の排泄行為に伴う臭気性ガス量として推定する。このように、データ解析装置60は、基準値との差分に基づいて臭気性ガス量を推定しているので、被験者に起因するノイズの影響を抑制することができる。従って、この演算を行う、データ解析装置60に内蔵された回路はノイズ抑制回路として機能すると共に、被験者ノイズの影響を軽減する第2ノイズ対応手段として機能する。また、データ解析装置60は、被験者に起因するノイズレベルが所定値以上の場合には、表示装置68によりその旨を報知する。なお、臭気性ガス量の推定の詳細については後述する。同様に、データ解析装置60は、水素ガスセンサ24による検出値の、残留ガスの基準値からの増加分に基づいて、被験者から排出された水素ガス量を推定する。被験者による排泄行為が行われた(図9の時刻t5)後、臭気性ガスセンサ26及び水素ガスセンサ24による検出値は、残留ガスの基準値に復帰する。次いで、時刻t6において、被験者による2回目の排泄行為が行われると、再び臭気性ガスセンサ26、二酸化炭素センサ28及び水素ガスセンサ24による検出値が急激に立ち上がる。この2回目の排泄行為についても1回目の排泄行為と同様に、残留ガスの基準値からの増加分に基づいて、被験者から排出された臭気性ガス量、水素ガス量が推定される。なお、2回目以降の排泄行為の臭気性ガス量、水素ガス量を推定する際には、ボウル内の封水に浮遊する浮遊便等の影響を考慮し、それぞれの回ごとに基準値を変更してもよい。
このように、被験者が入室した後、複数回の排泄行為を行った場合(すなわち、所定の閾値以上のガス量の変化が複数回、検出された場合)には、各回の排泄行為に伴う排便ガス量が同様にして推定される。なお、二回目以降の排泄行為の排便ガス量を算出する際には、ボウル内の封水に浮遊する浮遊便等の影響を考慮し、それぞれの回ごとに基準値を変更してもよい。
次いで、図9の時刻t7において着座検知センサ36により被験者の離座が検知され1回の排便期間が終了し、時刻t8において入室検知センサ34により被験者の退室が検知され、1回の排便行動が終了する。データ解析装置60は、入室検知センサ34により被験者の退室が検知されるまでの各回の排泄行為に伴う排便ガス量を推定する。
このようにして測定された排便ガス量に基づき、リモコン8及びサーバー12において被験者の体調状態が判定される。この際、リモコン8側では、排便期間中、又は排便期間終了後すぐに、体調状態の測定を表示できることが望ましい。そして、排泄行為を複数回行うと、ボウル2a内に大便がたまるため、臭気性ガスによるガス量の測定の精度が下がる。一方で、一回目の排泄行為時には、大腸の最下流まで到達した排便ガスが排出されるため、体調の測定に最も有用な情報を得ることができ、測定の信頼度が高い。これらを踏まえ、リモコン8側では、一回目の排泄行為による排便ガス量(臭気性ガス及び水素ガスのガス量)が推定できた時点で、一回目の排泄行為による排便ガス量のみに基づいて被験者の体調状態が測定され、リモコン8の表示装置68に表示される。或いは、1回の排便行動のうちの、初期の排泄行為に関する検出データに基づく測定値の重み付けが、後期の排泄行為に関する重み付けよりも重くなるように、体調状態を測定することもできる。
これに対して、サーバー12側では、複数回の排泄行為による排便ガス総量を用いることでより正確に判定を行うことが望ましい。このため、サーバー12側では、複数回の排泄行為による排便ガス総量(臭気性ガス及び水素ガスのガス量の総量)、より好ましくは、着座から離座までの1回の排便期間に含まれる全ての排泄行為による排便ガス総量に基づき、被験者の体調状態が判定される。なお、サーバー12側における被験者の体調状態の判定は、必ずしも、1回の排便期間に含まれる全ての排泄行為による排便ガス総量である必要はないが、多数回の排便期間に含まれる全ての排泄行為による排便ガス総量に基づくものであることが好ましい。
ここで、図9に示した例では、残留ガスの基準値は一定であったが、基準値が一定でない場合においても臭気性ガスの排出量を推定することができる。例えば、臭気性ガスセンサ26により検出された検出値が増加傾向にある場合には、図10(a)に示すように、排泄行為の開始前の臭気性ガスセンサ26により検出された検出値の増加の変化率が、排泄行為の前後にも続くものとして引いた補助線Aを基準値とする。この補助線Aから臭気性ガスセンサ26による検出値の傾きが大きく変化した時点を1回の排泄行為が開始された時点と判断して、臭気性ガスの量を推定することができる。
なお、臭気性ガス量の推定は、排泄行為前の残留ガスを基準値として設定し、基準値からの差分に基づいて推定するため、基準値が大きく変動しないことが望ましい。このため、データ解析装置60は、排泄行為の開始時点の前の臭気性ガスセンサ26により検出される検出値の変化率(すなわち、基準値の変化率=補助線Aの傾き)が第1の安定性閾値以下の場合には、リモコン8の表示装置68又はスピーカ70からなる報知手段により、排便ガス量の推定精度が高い旨の表示を行う。
一方、排泄行為直前にスプレー式の芳香剤が噴霧された場合や、アルコール系便座除菌剤の除菌シートや除菌スプレーが使用されると、排泄行為前に臭気性ガスセンサ26により検出される検出値が大きく変動する。このような状態を基準値として設定すると、正確な臭気性ガス量の推定を行うことができない。このため、データ解析装置60は、被験者に起因するノイズレベルである基準値が所定値以上の場合、又は基準値の変化率が第2の安定性閾値以上の場合には、リモコン8の表示装置68又はスピーカ70からなる報知手段により、排便ガス量の推定精度が低い旨の通知を行う。このような報知を行ったにもかかわらず排泄行為が行われた場合には、体調の解析のための計測を行わない、または、測定信頼度を低く設定する。
次に、図10(b)を参照して、アルコール系便座除菌剤の使用検知を説明する。図10(b)は、被験者がアルコール系便座除菌剤を使用した場合における臭気性ガスセンサ26による検出値の一例を示すグラフである。
まず、図10(b)の時刻t10において、入室検知センサ34によって被験者の入室が検知された後、臭気性ガスセンサ26の検出値は被験者の体臭等に反応して緩やかに上昇する。次いで、時刻t11において被験者がアルコール系除菌剤を使用した便座除菌シートを取り出すと、臭気性ガスセンサ26がアルコール臭に反応して、その検出値が急激に立ち上がる。時刻t12において、被験者が便座4の除菌を終え、除菌シートをボウル2a内に廃棄すると、アルコール系は揮発性が高い為すぐに臭気性ガスセンサ26の検出値が低下し始める。この特性は、残留する異臭ガス成分とは異なるため、アルコール系除菌による検出値の急増は、しばらく待てば低下し、測定が可能になることを発明者らは見出した。但し、アルコール系の除菌シートによる除菌の場合は破棄された時に封水に浮遊することがある。この場合はアルコールの揮発が継続するため低下が遅れる傾向がある。そのため以下のようにシートを排出することが望ましい。
次いで、時刻t13において着座検知センサ36が被験者の着座を検知した後、被験者がリモコン8の洗浄スイッチ(図示せず)を操作して水洗大便器2の洗浄を実行すると、ボウル2aの留水に浮いていた除菌シートが排出されるため、臭気性ガスセンサ26の検出値は急激に低下する。アルコール系除菌剤が使用された場合、臭気性ガスセンサ26は概ねこのように推移する。
このため、データ解析装置60に内蔵された便座除菌検知回路は、入室検知センサ34が被験者の入室を検知した後、着座検知センサ36が被験者の着座を検知する前に、臭気性ガスセンサ26の検出値が所定値以上急激に上昇した場合、被験者がアルコール系除菌剤を使用して便座4等の除菌を行った、と判定する。本件発明者は、このように、被験者がトイレ室Rで行う特有の行動である便座4の除菌行為を、入室検知センサ34、着座検知センサ36、及び臭気性ガスセンサ26の検出信号から検知できることを見出したのである。
また、便座除菌検知回路がアルコール系除菌剤の使用を検知し、被験者が着座した後も所定時間水洗大便器2の洗浄が実行されない場合には、データ解析装置60に内蔵された除菌ノイズ対応回路は、便器洗浄装置46に信号を送り、自動的に便器洗浄を実行する。さらに、便座除菌検知回路がアルコール系除菌剤の使用を検知すると、除菌ノイズ対応回路は吸引ファン18cの回転数を上昇させる。これにより、吸引装置18によって吸引される気体の量が増加し、便座除菌によって揮発したアルコール成分が積極的に脱臭フィルタ78によって脱臭されることとなり臭気性ガスセンサ26の検出値を低下させることができる。即ち、除菌ノイズ対応回路は、便座除菌検知回路が除菌を検知すると、脱臭装置を作動させてアルコール系除菌剤に起因するノイズの影響を軽減する。
さらに、便座除菌検知回路がアルコール系除菌剤の使用を検知し、臭気性ガスセンサ26の検出値が上昇している状態では、除菌ノイズ対応回路は、体調測定を中止し、排便を待つよう表示装置68にメッセージを表示させ、被験者に報知する。除菌ノイズ対応回路は、体調測定が可能になるまで、被験者に対し、排便を待つ旨のメッセージを表示装置68に表示させ、被験者に報知する。これにより、アルコール系除菌剤に起因するノイズの影響が軽減される。一方、アルコール系除菌剤の使用により急激に立ち上がった臭気性ガスセンサ26の検出値は、被験者が除菌を終えると低下し始める。
除菌ノイズ対応回路は、臭気性ガスセンサ26が検出したノイズレベルが低下傾向に転じると、表示装置68に表示されている排便を待つ旨のメッセージを消去し、測定が可能になった旨を報知する。即ち、アルコール系除菌剤に起因するノイズレベルが低下傾向にある状況では、低下傾向にある臭気性ガスセンサ26の検出値の立ち上がりを検知することは可能である。データ解析装置60は、低下傾向にある臭気性ガスセンサ26の検出値が立ち上がった時点を、被験者による排便ガスの放出として検知する。しかしながら、臭気性ガスセンサ26が検出しているノイズレベルの低下が所定の変化率以上である状態では、除菌ノイズ対応回路は、体調測定を中止し、排便を待つ旨のメッセージの表示を継続する。即ち、ノイズレベルが急激に低下している状態では、排便ガスの放出による検出値の上昇がマスクされてしまい、排便ガスの放出を正確に検知することができないためである。また、基準値が大きく減少している中での演算は誤差も大きくなる為中止することが望ましい。
また、除菌ノイズ対応回路は、アルコール系除菌剤の使用により、ノイズレベルが所定値以上である場合には、体調測定のための計測を中止し、又は、測定信頼度を低く設定する。上述したように、測定の信頼度が低く設定されると、図7(a)により説明した体調表示テーブル上のプロット点が、良好な体調を示す側に、より大きく補正される。即ち、除菌ノイズ対応回路は、便座に対する除菌が検知された場合には、表示装置68によって出力される体調の良否を、良好な体調を示す側に補正する。
一方、水洗大便器2の付着便が多い場合や、大量の芳香剤を使用した場合には、臭気性ガスセンサ26により検出されるガス量の絶対値が大きくなり、場合によってはセンサによる検出値が飽和したり、測定精度が高い帯域を外れたりするため、このような状況では、微量である臭気性ガスの量を正確に推定することが難しくなる。このため、データ解析装置60は、基準値の絶対量が第3の安定性閾値以上の場合にも、体調測定のための計測を行わない、または、測定信頼度を低く設定する。
さらに、サーバー12のデータベースには、上述したように新たな被験者の臭気性ガスのガス量及び健康系ガスのガス量の測定データが逐次蓄積される。また、サーバー12のデータベースには、医療機関端末16から被験者が医療機関で受診した癌の健診結果が被験者の識別情報に対応づけられて記録される。サーバー12は、このような癌の健診結果と、臭気性ガス及び健康系ガスのガス量の変化の履歴の変化に基づき、記録された診断テーブルを更新する。
図11は、診断テーブルの更新の一例を示す図である。例えば、古い診断テーブルにある被験者の臭気性ガス及び健康系ガスの測定データAをプロットして解析を行った結果、「早期大腸癌疑い」と判定された場合であっても、健診により、この患者が早期大腸癌であると診断されたとする。このような場合には、図11に示すように、早期大腸癌と診断された被験者の測定データAに対応する部分が含まれるように、「大腸癌懸念大」、「早期大腸癌懸念大」、「早期大腸癌疑い」の領域を広げ、「体調不全レベル」の領域を狭くする。これとは逆に、例えば、古い診断テーブルにおいて、臭気性ガス及び健康系ガスのガス量の相関から「早期大腸癌疑い」と判定された場合であっても、健診の結果、癌の疑いなしと診断された被験者が多数存在した場合には、「体調不全レベル」の領域を広げ、「大腸癌懸念大」、「早期大腸癌懸念大」、「早期大腸癌疑い」の領域を狭くする。なお、診断テーブルを更新した場合には、表示テーブルの各領域も同様に変更する。
また、サーバー12には、被験者の体重、年齢、性別等の属性情報及び臭気性ガス及び健康系ガスの測定データの変化の履歴の傾向に関して条件分けされた複数の体調表示テーブルが記録されている。
そして、被験者側装置10において、より詳細な体調の解析を行うことを希望する場合には、サーバー12に被験者の識別情報とともに、被験者の体重、年齢、性別等の属性情報を登録する。そして、サーバー12に、このより詳細な分析を希望する被験者の測定データが蓄積されると、サーバー12は、この被験者の属性情報及び測定データの変化の履歴に近い条件の体調表示テーブルを選択する。サーバー12は、選択した体調表示テーブルを、ネットワークを介して、被験者側装置10に送信する。被験者側装置10は、サーバー12から新たな体調表示テーブルを受信すると、すでに記憶している体調表示テーブルを受信した体調表示テーブルに変更する。これにより、被験者側装置10において、被験者の属性や測定データの履歴に応じたより正確な体調の解析を行うことができる。
なお、上記説明した実施形態では、被験者側装置10においても、測定データの履歴を記憶する構成としているが、これに限らず、測定データはサーバー12のデータベースのみに測定データを記憶させ、被験者側装置10はサーバー12のデータベースから過去の測定データの履歴を読み込み、検診工程S5における検診結果演算及び継時診断をおこなってもよい。
ここで、図4の検診工程S5における信頼度の算出方法について以下詳述する。臭気性ガスセンサ26として用いられている半導体ガスセンサの特徴として、臭気性ガスのみならず、芳香剤、除菌シート等の周囲の異臭ガスや被験者の体や衣服に付着した異臭ガスも検出してしまうことがある。さらには、半導体ガスセンサにより検出される臭気性ガスの検出値は、便の状態(例えば、下痢状態であるか否か)や、便量によっても変化する。このため、癌に関する疾病の判定を行う上で、これら異臭ガスノイズの影響の大きさや、便の状態を評価できることが求められている。本実施形態では、トイレ室内に設置された被験者側装置10のデータ解析装置60に設けられた信頼度判定回路により、このような排便ガスの異臭ガスノイズの影響や、便の状態等などの測定の精度に影響を及ぼす事象を評価し、ガス検出装置20によるガス検出の精度を示す指標として、測定信頼度を判定することとしている。
図12は、測定信頼度を判定する方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、被験者の体や衣服に付着した異臭ガスの影響、湿度の影響、温度の影響、及び、排便ガスの回数の影響による補正が行われた場合を例として説明する。以下の測定信頼度の判定は、リモコン8のデータ解析装置60内の臭気性ガスの検出の信頼度を判定する信頼度判定回路を用いて行われる。
測定装置6の水素ガスセンサ24、臭気性ガスセンサ26、二酸化炭素センサ28、湿度センサ30、温度センサ32、入室検知センサ34、着座検知センサ36、及び排便・排尿検知センサ38からの出力は、リモコン8のデータ解析装置60に送られる。図12にはこれらセンサからの出力の一例が示されている。
また、リモコン8のデータ解析装置60には、予め、信頼度を算出するための複数の信頼度補正テーブルが記録されている。
図13〜図16は、それぞれ、被験者の体や衣服に付着した異臭ガスの影響を判定するための被験者付着異臭ガスノイズ補正テーブル、湿度の影響を判定するための湿度補正テーブル、温度の影響を判定するための温度補正テーブル、及び、排泄の回数による影響を判定するための排泄回数補正テーブルを示す図である。
臭気性ガスセンサ26として用いられている半導体ガスセンサは、被験者に付着した排便ガス以外の異臭ノイズ(環境ノイズ)を検出してしまう。被験者に付着した異臭ガス成分の量(ノイズ量)が多い場合には、測定の信頼度が低いといえる。このため、図13に示すように、被験者付着異臭ガスノイズ補正テーブルでは、付着異臭ガスノイズ量に対して補正値が定められている。具体的には、被験者に付着した異臭ガス成分の量が所定値未満の場合には補正を行わない値として補正値を1とし、被験者に付着した異臭ガス成分の量が所定量以上の場合には、異臭ガス成分の量が多いほど徐々に信頼値を低下させるために1からのマイナスの補正量を大きくし、被験者に付着した異臭ガス成分のノイズ量が所定量よりもあまりにも多い場合には、測定不可(補正値0)としている。付着異臭ガスノイズ量は、着座検知センサ36により被験者が着座したことが検知される前の非排便期間における臭気性ガスセンサ26により検知された検知データに基づいて決定される。なお、被験者に付着した異臭ガス成分は、排便期間中の一部ではなく排便期間全体に影響を与えるため、排便期間全体にわたって信頼度を補正する。以下、このように排便期間全体にわたって信頼度を補正するものを「全体補正」という。
また、被験者が放尿するとボウル2a内の湿度が上昇し、臭気性ガスセンサ26の触媒に到達するガスの湿度が高くなる。臭気性ガスセンサ26に到達するガスの湿度が高くなると、臭気性ガスセンサ26の抵抗が変化してしまい、センサ感度が低下してしまう。また、ボウル2a内の付着便に尿がかかると、付着便が乾燥状態から柔らかくなり、付着便から再度排便ガスがボウル2a内に尿がかかっている間、一時的に多く放出されてしまうことがある。この付着便から放出された排便ガスは、被験者から放出された排便ガスを測定する際にノイズとして臭気性ガスセンサに検出されてしまうおそれがある。このため、図14に示すように、湿度補正テーブルでは、湿度センサ30により測定された湿度が所定値よりも低い場合には1とし、所定値以上の場合には、湿度が高くなるにつれて信頼度が低下し、測定限界値以上の場合には、測定不可(補正値0)としている。なお、排尿行為は一時的な行為であるため、湿度補正テーブルは、湿度センサ30により測定された湿度の変化が見られた期間のみを補正する「部分補正」としている。なお、以下、このように排便期間の特定の期間のみにおいて信頼度を補正するもの、または、排便期間の全体において補正するが、排便期間の各期間において異なる補正するものを「部分補正」という。
また、臭気性ガスセンサ26として用いられている半導体ガスセンサは、酸化スズからなる触媒を加熱した状態において、表面に吸着している酸素と還元ガスの酸化・還元反応に基づいて、臭気性ガスを検出している。このため、触媒の温度が所定の温度範囲よりも高い又は低い場合には、センサ感度が低下してしまう。このため、図15に示すように、温度補正テーブルでは、温度センサ32により検知された温度に応じて補正値が定められている。具体的には、温度センサ32により検出された温度が、臭気性ガスセンサ26の触媒の測定に適した適温範囲内である場合には、信頼度を高めるように補正値を1よりも大きな値とし、温度センサ32により検出された温度が適温範囲よりも若干高い又は低い範囲内である場合には、信頼値を低下させるように補正値を1未満の値とし、さらに、温度センサにより検出された温度が測定可能な温度の上限値よりも大きい範囲、又は、測定可能な温度の下限値よりも小さい場合には、測定不可(補正値0)としている。なお、温度補正は、排便期間において大きく変動しないため、排便期間全体を補正する全体補正としている。
また、上述の通り、1回の排便期間の間に、複数回排泄行為を行う場合には、1回目では、排便ガス量そのものが多く(臭気性ガス量も多くなる)なるため、排便期間における初期の排泄行為の方が後期の排泄行為よりも分析の精度が高くなる。このため、図16に示すように、排泄行為回数補正テーブルでは、初回の排便ガスの補正値は信頼値を高めるように1よりも大きい値に設定し、2回目は1とし、3回目以降は1未満の値とし、回数が増えるにつれ、徐々に低下するものとした。これによって排便ガスの1回目が優先的に診断対象となるように工夫している。なお、排泄行為回数補正テーブルは、排便ガスが検知された期間のみを補正するものであり、部分補正としている。
図12に示すように、時刻t1において入室検知センサ34により被験者の入室が検知されると、測定装置6の制御装置22は、待機状態である測定前環境整備工程から測定開始準備工程に移行され、センサ加温ヒータ54及び吸引装置18を駆動させる。これにより、温度センサ32により検知される温度が上昇し、適正温度に収束する。そして、リモコン8のデータ解析装置60は、着座検知センサ36により着座が検知される前の非排便期間において、温度補正テーブルを参照して、温度センサ32により測定された収束温度に対応する補正値を取得する。図12に示す例では、温度補正値は0.9となる。
また、時刻t1において被験者が入室すると被験者に付着した異臭ノイズにより、臭気性ガスセンサ26により検出される検知データが増加した後、一定の値に収束する。そして、時刻t2において着座検知センサ36により着座が検知される。リモコン8のデータ解析装置60は、着座検知センサ36による着座の検知前の非排便期間における臭気性ガスセンサ26により測定された検出データに対応する補正値を求める。本実施形態では、被験者付着異臭ガスノイズ補正値は0.7となる。
次に、時刻t3において、着座検知センサ36により着座が検知された後の排便期間において、被験者が放尿すると湿度センサ30による検出値が上昇する。なお、この湿度センサ30による湿度上昇の検知は、例えば、排便期間前、すなわち、着座検知センサ36により着座が検知される前の湿度を基準として測定するとよい。このように、湿度センサ30により検出データの上昇が検知された場合には、この検出データが上昇している期間について、データ解析装置60は湿度補正テーブルを参照し、上昇した検出データに対応する補正値を求める。本実施形態では、湿度センサ30による検出データが上昇した期間(すなわち、時刻t3〜t4)の部分補正値は0.6となる。
次に、時刻t5、t6において被験者が排泄行為を行うことにより、臭気性ガスセンサ26により検知された検知データと基準値との差の変化率が所定値以上となった場合には、データ解析装置60はこの排泄行為に伴うガス量を算出する。また、これとともに、データ解析装置60は排便期間内における排泄行為の回数に応じて、回数補正テーブルを参照し、1回目の排泄行為に対応する期間(すなわち、時刻t5〜t5´)は、補正値1.5となり、2回目の排泄行為に対応する期間(すなわち、時刻t6〜t6´)は、補正値1.0となる。
データ解析装置60は、このように推定した全体補正値及び部分補正値に基づき、各排泄行為に伴うガス検知の測定信頼度を算出する。本実施形態では、信頼度は、3を基準としており、各排泄行為に対する信頼度は3×全ての全体補正値の積×全ての対応する部分補正値の積として算出する。具体的には、1回目の排泄行為の信頼度は3(基準)×0.9(温度補正値)×0.7(被験者付着ノイズ補正値×1.5(回数補正値)=2.84となる。また、二回目の排泄行為の信頼度は、3(基準)×0.9(温度補正値)×0.7(被験者付着ノイズ補正値×1.0(回数補正値)=1.89となる。
そして、このようにして算出された信頼度は、図5を参照して説明したように、リモコン8の表示装置68に表示される。さらに、算出された信頼度は、臭気性ガスセンサ26の検知データや、水素ガスセンサ24の検知データとともに、被験者側装置からサーバー12へ送信され、サーバー12の排便ガスデータベースに記録される。なお、この際、サーバー12の排便ガスデータベースには、臭気性ガスセンサの検知データ及び水素ガスセンサの検知データは、後述する信頼度による補正を行っていない生データが記録される。そして、サーバー12に接続された医療機関端末16により、測定データを閲覧する場合には、臭気性ガスセンサ26の検知データや、水素ガスセンサ24の検知データとともにこの測定信頼度が表示される。医療機関の医師は、医療機関端末16に表示された臭気性ガス及び水素ガスとともに表示された測定信頼度を参照して診断を行う。これにより、医者等が測定データに基づき、被験者の体調の診断を行う際に、測定信頼度の高いデータを使用して、より正確な診断を行うことができる。また、医師は測定信頼度が低いデータについては使用しない、また、重視しないで、診断を行ってもよい。なお、測定データの一部又は全部の期間の信頼度が1以下の場合には測定精度が非常に低いため、測定不可として、サーバー12への測定データの送信を行わなくてもよい。
また、このようにして算出した測定信頼度に基づき臭気性ガスセンサ26と、水素ガスセンサ24の検出データを補正することも可能である。具体的には、測定信頼度が高い場合には、実際の検出値を用いるが、測定信頼度が低い場合には、検出値を過去の検出値に近い値となるように補正する。一例として、被験者側装置10において1回目の排泄行為に伴う排便ガスの検出データに基づき体調を分析する際に、リモコン8の記憶装置に記録された過去の測定データに近づけるように、新たに検出した検出値を補正する場合を説明する。上述した通り、1回目の排泄行為に伴う信頼度は2.84と算出された。
データ解析装置60は、このようにして算出された信頼度に基づき、測定値の補正量を決定する。図17は、データ解析装置に記録された信頼度と、測定値の補正率との関係を示す補正テーブルを示す図である。同図に示すように、例えば、本実施形態では、信頼度が1以下の場合には、検出データの信頼度が低すぎるために測定値を使用不可とする。すなわち、信頼度が所定値以下の期間の検出データに基づく体調の解析は行わず、信頼度が所定値よりも大きい検出データのみに基づき解析を行い解析結果が表示装置68に表示される。また、信頼度が1より大きく2以下の場合には、測定値を過去履歴側に20%近づける補正を実施する。また、測定値を信頼度が2より大きく3以下の場合には、測定値を過去履歴側に15%近づける補正を実施する。また、信頼度が3より大きく4以下の場合には、測定値を過去履歴側に10%近づける補正を実施する。また、信頼度が4より大きく5以下の場合には、測定値を過去履歴側に5%近づける補正を実施する。また、測定値が5より大きい場合には、測定値を補正することなく用いる。
上記の例では、1回目の排泄行為に伴う信頼度は2.84である。このため、図7(a)を参照して説明したように、最新データのプロット点を過去の測定値に15%近づけるような補正を行って、過去のデータとともに表示する。
なお、このような信頼度に基づく補正は、サーバー12側で行ってもよい。また、サーバー12側で体調の解析を行う場合には、例えば、1回分の排便期間のうち、信頼度が所定値以上の排泄行為の臭気性ガスの検出値及び水素ガスの検出値を総計し、総計したデータに基づいて体調の解析を行ってもよい。また、リモコン8の記憶装置に保存される検出データとしては、必ずしも、測定信頼度に基づく補正を施していないものでなくてもよく、補正後の検出データを記録してもよい。
補正テーブルは上述した被験者付着異臭ガスノイズ補正テーブル、温度補正テーブル、及び、湿度補正テーブルに限られない。図18〜図29は、補正テーブルの例を示す図である。
例えば、トイレ室内に芳香剤等の排便ガス以外の異臭ノイズ(環境ノイズ)が存在する場合には、臭気性ガスセンサ26がこの異臭ノイズを検知してしまい、測定の精度が低下するおそれがある。そこで、データ解析装置60は、環境ノイズの影響を評価すべく、信頼度を補正する。なお、このような環境ノイズのノイズ量については、例えば、入室検知センサ34により被験者の入室が検知される前の臭気性ガスセンサ26による検出データに基づき評価することができる。図18は、環境ノイズ補正テーブルを示す図である。同図に示すように、環境ノイズ補正値は、環境ノイズのノイズ量が所定値より小さい場合には1であり、環境ノイズのノイズ量が所定値以上に大きくなるにつれて信頼値を下げるために補正係数も小さくする。そして、環境ノイズのノイズ量が測定可能上限値以上の場合には、測定不能とする。なお、環境ノイズ補正値は、排便期間全体に影響するため、全体補正とすればよい。
また、例えば、スプレー式の芳香剤を使用した場合など、基準値を設定する際に臭気性ガスセンサ26の検出データが大きく変動している場合や、ガス量の推定の際に設定した基準値の傾きが大きい場合や、推定したガス量の精度が低くなってしまう。そこで、データ解析装置60は、基準値安定性補正テーブルを参照し、このような基準値安定性の不良状態の影響(基準値安定度不良という)を評価すべく、信頼度を補正する。基準値安定性については、例えば、非排便期間における基準値の時間軸に対する傾きや、基準値を設定する際の臭気性ガスセンサ26の検出値の変動の大きさに基づき、評価することができる。図19は、基準値安定度補正テーブルを示す図である。同図に示すように、基準値安定性ノイズ補正値は、基準値安定性不良が小さい場合には1であり、基準値安定性不良が大きくなるにつれて小さくなる。そして、基準値安定性不良が所定値以上の場合には、測定不能とする。なお、ガス量の推定は、各排泄行為に対して基準値を設定するため、各排泄行為に対応した期間のみの補正値、すなわち、部分補正とする。
また、例えば、除菌シートにより便座を洗浄した場合には、除菌シートに含まれるアルコール等の成分を臭気性ガスセンサ26が検知してしまう。除菌シートに含まれるアルコール等の成分の影響は、除菌シートを使用した直後には臭気性ガスセンサ26に大きな値が検出されるが、アルコールは高揮発性であるため、短期間で臭気性ガスセンサ26に検出される値が低くなる。そこで、データ解析装置60は、除菌便座洗浄補正テーブルを参照し、便座除菌による影響に応じて信頼度を補正する。なお、除菌シートの使用は、例えば、入室検知センサ34により被験者が入室したことを検知した後、かつ、着座検知センサ36により被験者が着座したことを検知する前に、臭気性ガスセンサ26の検出データが所定値より大きく変動することを検知することにより検出することができる。図20は、除菌便座洗浄補正テーブルを示す図である。このように除菌シートが使用したことを検出した場合には、除菌シートの検出から所定の期間は測定不可(補正値0)とし、それ以降の期間の補正値は、1未満の値から時間の経過とともに1まで上昇する。なお、除菌シートの影響は上述した通り時間により変化するため、部分補正とする。
また、排便ガスに含まれる臭気性ガスは微量であるため、排便期間内に排出される臭気性ガスが多いほど、より正確な体調の分析を行うことができる。このため、データ解析装置60は、排便ガス総量補正値テーブルを参照し、臭気性ガスの総量に基づき信頼度を補正する。なお、排便ガス総量は、排便期間内の臭気性ガスセンサの検出データに基づき推定したガス量の合計により評価できる。図21は、排便ガス総量補正値テーブルを示す図である。同図に示すように、排便総量補正値は、排便ガス総量が所定値以上の場合には、測定中、芳香スプレーを噴射したなど、なんらかの問題が生じたとして測定不可(補正値0)とし、また、排便ガス総量が所定値以下の場合には、排便ガスがあまりに少なく正確な測定が行えないとして測定不可(補正値0)とする。そして、測定不可(補正値0)と判断されない範囲内では、排便ガス総量が多い場合には、補正値を1とし、排便ガス総量が少なくなるにつれて補正値が小さくなる。なお、排便ガス総量補正は、排便期間全体の排便ガス総量に基づき補正値を設定しているため、全体補正とする。
また、おなら時には排便時よりも大量の排便ガスがボウル内に放出されるため、おならによる排便ガスは体調の分析に好適である。このため、データ解析装置60は、被験者によるおならが検知された場合には、おなら補正値テーブルを参照し、おならに含まれる排便ガス量に基づき、おならの期間における信頼度を補正する。なお、おなら行為については、着座検知センサ36により着座が検知された後に、臭気性ガスセンサ26の検出値と基準値との差分が所定値以上の変化率で急激に上昇したことを検知した場合に、おなら行為が行われたと判定することができる。また、上記の差分が急激に上昇した時点から、再びガスセンサ26の検出値が基準値まで戻るまでの期間をおなら期間とすればよい。なお、より正確におなら行為が行われたことを検知するためには、臭気性ガスセンサ26の検出データが所定値以上の変化率で急激に上昇し、封水量センサ等により大便がボウル内に排出されていないことを検知すればよい。図22は、おなら補正値テーブルを示す図である。同図に示すように、おなら補正値テーブルでは、おならガス量(臭気性ガスセンサにより検出された排便ガス量)が少ない場合には補正値は1であり、おならガス量が増加するほど、補正値が上昇するように設定すればよい。
また、各排泄行為における便量が多い場合には、排便ガスの量が多くなり、より正確な体調の分析を行うことができるが、各排泄行為における便量が少ない場合には、排便ガスの量が少なくなり、体調の分析の精度が低くなる。そこで、データ解析装置60は、便量補正値テーブルを参照し、各排泄行為時における便量に基づき信頼度を補正する。なお、便量は例えば、排便・排尿検知センサ38の封水量の変化を検知する封水量センサ(便量測定装置)により評価することができる。図23は、便量補正値テーブルを示す図である。同図に示すように、便量が所定値以下の場合には、便量とともに排便ガス量も非常に少なく、正確な分析を行うことができないとして測定不可とする。そして、便量が所定値を超える場合には、便量が増えるにつれて補正値が1未満の値から1を超える値まで徐々に増加する。なお、便量は排泄行為ごとに判定されるため、便量補正値は部分補正とする。
また、例えば、便が下痢状態である場合には、放出時間が短いため、センサが十分に排便ガスを検知することができない。また、排便後の便が封水に浮いてしまうと、封水に浮かんだ便から排便ガスが放出されてしまい、排便ガスの検知精度が低下する。そこで、データ解析装置60は、便種補正テーブルを参照し、各排泄行為の便種に応じて信頼度を補正する。なお、便種は、便状態検知装置としての排便・排尿検知センサ38のCCDや、マイクロ波センサ等を用い、これらの検出結果に基づいて検出することができる。また、便の浮遊は、浮遊検知装置としてボウル内にCCDや、マイクロ波センサ等を設置することにより検知することができる。図24は、便種補正値テーブルを示す図である。同図に示すように、下痢便の場合には、測定不可(補正値0)とし、浮遊便が検知された場合には、それ以降の排泄行為における補正値を1未満の値とし、通常便が検知された場合には、補正値を1とする。なお、便種は排泄行為ごとに判定されるため、便種補正値は部分補正とする。
また、通常、健康な人は一日に一回程度排便を行う。これに対して、食中毒等により胃腸状態が悪くなると一日に何度も排便することがある。このような場合には、排便が行われたとしても、排便時に放出される排便ガス量も少なくなってしまう。また、便秘等により排便頻度が少なくなる場合には、臭気成分の生成時間が長くなったり、便量が増加したりするなどの理由で排便ガス量が増加する。あまりに排便間隔が大きくなると、体調の解析精度が低下してしまう。そこで、データ解析装置60は、排便間隔補正テーブルを参照し、排便間隔に基づき信頼度を補正する。なお、排便間隔は、データ解析装置60により記憶されている前回の排便の日時及び測定開始準備工程S2において入力された排便履歴情報に基づき判定できる。図25は、排便間隔補正値テーブルを示す図である。同図に示すように、排便間隔が極度に短い場合には、補正値を1よりも非常に低い値とし、排便間隔が1日程度である場合には補正値を1とし、排便間隔が2日程度である場合には、補正値を1よりも低い値とし、排便間隔が4日以上である場合には、補正値を1よりも非常に低い値としている。なお、排便間隔補正値は、全体補正とする。
排便ガスに基づく体調の判定では、例えば、前日暴飲暴食をしたなどの原因により胃腸状態が悪化した場合には、体調状態は本来の体調状態よりも悪く判定される。このため、日々の生活により、体調の解析結果にばらつきが生じてしまう。このため、例えば、本実施形態の生体情報測定システムによる体調の解析を開始した時点において、たまたま暴飲暴食等により体調状態の悪い日が重なってしまうと、履歴表示したとしても体調状態の悪い解析結果のみが表示されることとなり、医療機関等において正確な疾病の判定を行うことができなくなるおそれがある。そこで、データ解析装置60は、データ蓄積量補正テーブルを参照して被験者側装置に記憶された過去の計測データのデータ数に応じて、信頼度を補正する。図26は、データ蓄積量補正テーブルを示す図である。同図に示すように、蓄積データ数が5回未満の場合には、診断不可(補正値0)とし、蓄積データ数が5回以上、かつ、10回未満の場合には、補正値を1未満の非常に低い補正値とし、蓄積データ数が10回以上、かつ、30回未満の場合には、補正値を1未満の低い値とし、蓄積データ数が30回以上の場合には、補正値を1としている。本実施形態における被験者側装置は、癌を診断する装置ではなく、体調変化にともなって癌リスクが高まっているということを被験者に認知させて生活改善を図ってもらうことを意図した装置である。このため、1回の測定精度が高いわけではなく、その変化履歴こそが本装置の価値となるため、不要な心理負担を防止する上でもこのような対応を行うことが望ましい。
ダクト18aに設置されたフィルタ72に目詰まりが生じるとダクト18a内に吸引される風量が低下してしまう。これに対して、臭気性ガスセンサ26や水素ガスセンサ24に送られるガスの風量が変化してしまうと、臭気性ガスセンサ26や水素ガスセンサ24の検知データが風量に応じて変化してしまう。また、臭気性ガスセンサ26や水素ガスセンサ24に送られるガスの風速が早いと、ガスがセンサと接触する時間が短くセンサの触媒が十分に反応しなくなる。このため、臭気性ガスセンサ26や水素ガスセンサ24に送られる風量は一定であることが望ましい。このため、データ解析装置60は、風量補正値テーブルを参照し、臭気性ガスセンサ26や水素ガスセンサ24に送られるガスの風量(風速)に応じて信頼度を補正する。なお、ガスの風量は、例えば、脱臭装置に設けられた吸引ファン18cの電流及び電圧に基づき推定することができる。図27は、風量補正値テーブルを示す図である。同図に示すように、風量補正テーブルでは、風量が測定可能下限値未満及び測定可能上限値以上の場合には、測定不可(補正値0)とし、風量が最適な範囲内では補正値を1よりも大きい値とし、それ以外の測定可能な範囲内では1に近い値としている。なお、本実施形態では、目詰まりによる風量の低下の影響は、風量が多い場合よりもセンサ検知感度への影響が大きいため、測定可能な範囲内の最適範囲よりも高い範囲の補正値は、最適範囲よりも低い範囲の補正値が低く設定されている。なお、測定中の風量は大きく変化することはないため、全体補正としている。
排便ガスには、水素ガスと同様に、健康系ガスとしてCO2ガスが含まれる。このため、CO2ガスセンサにより大量のCO2が検出される場合には、センサ装置により確実に排便ガスを検知していることとなる。そこで、データ解析装置60は、CO2補正テーブルを参照し、二酸化炭素センサ28により検知されるCO2の検知データに基づき、信頼度を補正する。図28は、CO2補正テーブルを示す図である。同図に示すように、CO2補正テーブルでは、CO2の検出量が所定値よりも少ない場合には、補正値を1とし、CO2の検出量が所定値以上の場合には増加するにつれて補正値を大きくしている。なお、CO2補正値は、各排泄行為に対して算出することができるため、部分補正としている。このように、本実施形態においては、検出された水素ガスがCO2ガス量に基づいて補正されているので、健康系ガスは水素ガス及びCO2ガスを使用して評価されている。
また、健康系ガスの検出データとしてCO2ガスセンサの検出データを用いて体調の解析を行う場合には、CO2補正テーブルに代えて、水素ガスセンサ24により検出された検出値が高いほど、補正値が高くなるようなH2補正テーブルを用いればよい。
排便ガスには、水素ガスと同様に、健康系ガスとしてメタンが含まれる。このため、例えば、脱臭装置のダクト18a内にメタンガスに強く反応するメタンガスセンサを設置しておき、このメタンガスセンサにより大量のメタンが検知された場合には、排便ガスが大量に放出されていることになる、そこで、データ解析装置60は、メタンガス補正テーブルを参照し、メタンガスセンサにより検知されたメタンガスの検知量に基づき、信頼度を補正する。図29は、メタンガス補正テーブルを示す図である。同図に示すように、メタンガス補正テーブルでは、メタンガスの検出量が所定値よりも少ない場合には、補正値を1とし、メタンガスの検出量が所定値以上の場合には、増加するにつれて補正値を大きくしている。なお、メタンガス補正値は、各排泄行為に対して算出することができるため、部分補正としている。
なお、本実施形態では、CO2及びメタンの検出値が高い場合には、信頼度を高く補正することとしているが、これに限らず、CO2及びメタンの検出値が高い場合に水素ガスの検出値を高くするような補正をすることも可能である。
腸内に癌がある場合には臭気性ガスのみならず硫化水素ガスが排便ガスに含まれる。このため、例えば、脱臭装置のダクト18a内に硫化水素ガスに強く反応する硫化水素ガスセンサを設置しておき、この硫化水素ガスセンサによりセンサにより検知された硫化水素ガスの検知データに基づき、信頼度を補正する。図30は、硫化水素ガス補正テーブルを示す図である。同図に示すように、硫化水素ガス補正テーブルでは、硫化ガスの検出量が所定値よりも少ない場合には、補正値を1とし、硫化水素ガスの検知量が所定値以上の場合には増加するにつれて補正値を大きくしている。なお、硫化水素ガス補正値は、各排泄行為に対して算出することができるため、部分補正としている。以上説明した補正テーブルの一部又は全てを用いて信頼度を算出する。
次に、図9を参照して説明した例においてガス量の推定の方法に関する詳細な説明を省略したため、ここで説明する。
臭気性ガスを測定する臭気性ガスセンサ26として、半導体ガスセンサ又は固体電解質センサを用いている。半導体ガスセンサや、固体電解質センサや、水素ガスセンサ等のガスセンサは、臭気性ガスのみならず、芳香剤や、除菌シートに含まれるアルコールにも反応してしまう。
すなわち、被験者不在時であっても、例えば、芳香剤や、大便器のボウルに付着している残留便の影響により、ガスセンサの検出データには環境ノイズが含まれる。なお、このような芳香剤や、大便器のボウルに付着している残留便の影響は、時間により大きく変化するものではない。
また、被験者がトイレ空間内に入室すると、被験者の体臭や、使用している香水、整髪料等の被験者の体や衣服に付着した異臭ガス成分の影響により、ガスセンサにより検出される検出値はゆっくりと増加するが、被験者が着座すると、ボウル上方が被験者や衣服により覆われるため、ガスセンサにより検出されるデータ値は安定する、又は、ゆっくりと増加する。
また、仮に被験者が除菌シートにより便座を清掃すると、除菌シートが使用された瞬間には、半導体ガスセンサにより測定されるガス量は急激に増加するが、着座後、すなわち、除菌シートを使用してしばらくした後には、除菌シートの影響にガスセンサにより測定される検出値が増加することはない。
すなわち、被験者が着座した後は、被験者の体に付着した異臭ガスの影響により、ゆっくりとガスセンサの検出値が増加することはあるが、急激に増加することはない。
これに対して、被験者が排泄行為を開始すると、各排泄行為を行った時点において、ガスセンサは排便ガスに含まれる臭気性ガスや水素ガスに反応し、ガスセンサの検出値は急激に増加し、ピークをむかえた後、低下する。
このため、発明者らは、被験者が便座に着座した後であれば、ガスセンサによる検出値が急増することはなく、この検出値を基準値とすれば排便ガスに含まれる臭気性ガスや水素ガスはこの基準値からの急増として検知できると考えた。
そこで、本実施形態では、図9を参照して説明したように、データ解析装置60は、着座検知センサ36により被験者が便座4に着座したことが検知された時刻t2以降、かつ、排泄行為を開始する時刻t5の前の非排泄行為期間のガスセンサの検出データを基準値として設定する。次に、データ解析装置60は、時刻t5においてガスセンサの検出値と基準値との差分の変化率が正の所定値以上となった時点を排泄行為の開示時点として設定する。そして、データ解析装置60は、排泄行為時のガスセンサの検出値と基準値との差分を、排泄行為の開始時点から終了時点まで時間積分して(すなわち、排泄行為時のガス量の基準値よりも大きい部分の面積を求め)、これを排便ガス量として推定している。排泄行為の終了時点は、ガスセンサの検出値が基準値に再び戻る時点としてもよいし、ガスセンサの検出値と基準値との差分の変化率が開始時点以降において正から負に転じる時点としてもよい。
なお、臭気性ガスセンサ26と同様に、水素ガスセンサ24や二酸化炭素センサ28においても、排便ガス以外の異臭ノイズの影響を受けることがある。このため、水素ガスセンサ24や二酸化炭素センサ28の検出データに基づき、水素ガス及び二酸化炭素ガスのガス量を推定する場合も、排便ガスと同様に行うとよい。
なお、ガス量の推定方法は上記の方法に限定されない。以下、第2実施形態の生体情報測定システムにおけるガス量の推定方法を説明する。第2実施形態では、第1実施形態と比較してガス量の推定方法のみが相違している。
本実施形態のシステムにおいても、第1実施形態と同様に、臭気性ガスを測定する臭気性ガスセンサ26として、半導体ガスセンサ又は固体電解質センサを用いている。半導体ガスセンサ又は固体電解質センサは、加熱した触媒反応を検出することによりガス量を測定しているため、感度が低い。また、水素ガスセンサ24も半導体ガスセンサ同様に感度が低い。このように感度が低いガスセンサを用いる場合には、以下のような問題が生じる。なお、以下の問題は、半導体ガスセンサ特有のものではなく、固体電解質センサ及び水素ガスセンサも同様である。
例えば、図31に示すように、排便ガスのガス吐出総量は一定であるが、吐出時間及び時間当たりの吐出量が異なる各条件S1、S2、S3について、臭気性ガスセンサ26として半導体ガスセンサを用いて臭気性ガスを検知した場合を考える。図32は、吐出時間及び時間当たりの吐出量を変更した場合のガスセンサの検出波形を示す図であり、図33はガスセンサの検出波形に基づき算出したガス量を示す。なお、図32及び図33の、S1´、S2´、S3´がそれぞれ図31のS1、S2、S3に対応する。
図32に示すように、排便ガスのガス吐出総量が一定であっても、吐出時間が異なると、ガスセンサの時定数により、ガス吐出波形は同じ程度の時間をかけなければ収束しない。このため、発明者らは、ガス吐出時の傾きに注目した。図34は、図32に示す、ガスセンサの検知波形の初期部分を、時間軸を拡大して示す図である。同図に示すように、時間当たりの吐出量(吐出濃度)が異なる場合には、吐出開始からピーク値までの傾きと、ピーク値まで到達するまでの時間が異なっている。そして、時間当たりの吐出量(吐出濃度)が大きいほど、ピーク値までの傾きが大きくなり、ガス吐出時間が長いほど、ピーク値までの到達時間が長くなる。さらに、図35は、時間当たりの吐出量(吐出濃度)と、センサで検出される検出データ波形の立ち上がりの傾きの関係を示すグラフである。同図に示すように、時間当たりの吐出量(吐出濃度)と、半導体ガスセンサで検出される波形の立ち上がりの傾きとは略比例関係があるといえる。
発明者らは、上述した半導体ガスセンサによる検出波形の傾きが時間当たりの吐出ガスの吐出量(吐出濃度)対応し、半導体ガスセンサによる検出波形のピークまでの到達時間が吐出時間に対応するという知見に基づき、半導体ガスセンサの検出波形の傾き及びピークまでの到達時間の積(ガスセンサ波形面積)に基づきガス量を推定することとした。なお、図36は、このように吐出時間及び時間当たりの吐出量(吐出濃度)が異なる各条件S1、S2、S3に対して、半導体ガスセンサの検出波形の傾き及びピークまでの到達時間の積(ガスセンサ波形面積)に基づき推定したガス量を示す。同図に示すように、ガス量の波形の傾き及びピークまでの到達時間の積に基づき推定したガス量S1’’、S2’’、S3’’は同量となっており、ガス量の波形の傾き及びピークまでの到達時間に基づき正確なガス量の推定を行うことができることがわかる。
そこで、本実施形態では、上記の第1実施形態と同様に、着座検知センサ36により被験者の着座が検知された時点以降、かつ、排泄行為が開始される前の臭気性ガスセンサ26の検出データに基づいて基準値を設定する。そして、図10(a)に示すように、臭気性ガスセンサ26により測定された検出値と、基準値の差分の変化率が、予め設定された開始閾値を超えた時点を、排便ガス量の推定の開始時点(すなわち、排泄行為の開始時点)として設定する。次に、図10(a)に示すように、臭気性ガスセンサ26により検出された検出データと基準値との差分の変化率が負となった時点(すなわち、臭気性ガスセンサ26の検出データのピークの時点)を、排便ガス量の推定の終了時点(すなわち、排泄行為の終了時点)として設定する。
次に、データ解析装置60は、排泄行為の開始時点から終了時点までの検出データと基準値との差分の変化率を算出する。また、データ解析装置60は排泄行為の開始時点から終了時点までの排便ガス吐出時間を算出する。そして、データ解析装置60は、排泄行為の開始時点から終了時点までの検出データと基準値との差分の変化率と、排便ガス吐出時間とを積算し、この積算値をガス量として推定する。なお、水素ガスセンサ24の検出データに基づく水素ガス量の推定、及び、二酸化炭素センサ28の検出データに基づく二酸化炭素ガス量の推定も同様に行うことができる。上記説明したガス量の推定方法によれば、ガスセンサの時定数の影響を排除し、より正確に排便ガス量を推定することができる。
さらに、発明者らは、排便ガスの時間当たりの吐出量と、吐出時間との関係に関して検討を行ったところ、吐出量と吐出時間の関係に個人差が少ないことを発見した。すなわち、排便ガスの時間当たりの吐出量が多い場合には、被験者によらず吐出時間は比較的に短いある一定の時間となり、排便ガスの吐出ガスの時間当たりの吐出量が少ない場合には、被験者によらず吐出時間は長い一定の時間となる。このため、発明者らは、排便ガス中の臭気性ガスの時間当たりの吐出量(臭気性ガスセンサ26により検出される検出値の変化率)に基づき、排便ガス(臭気性ガス)の吐出時間を推定することができると考えた。なお、これと同様に、水素ガス、及び二酸化炭素の時間当たりの吐出量(水素ガスセンサ24、及び二酸化炭素センサ28により検出される検出値の変化率)に基づき、排便ガス(水素ガス及び二酸化炭素)の吐出時間を推定することができる。なお、本実施形態では、健康系ガス量と臭気性ガス量の相関を得るように面積を推定するようにしているが、健康系ガス濃度と臭気性ガス濃度だけでも同様に相関があり、同様な結果が得られることから、各センサの測定値の傾きから濃度を得るように構成するものであっても良い。この場合は面積の推定がなくなるため測定がより簡便にできる。
以下、上記知見に基づく第3実施形態の生体情報測定システムにおけるガス量の推定方法について説明する。第3実施形態では、第1及び第2実施形態と比較してガス量の推定方法のみが相違している。データ解析装置60には、上記実施形態で説明した差分の変化率の開始閾値、に加えて、差分の変化率と、ガスの吐出時間との対応関係に関する変化率−吐出期間データが設定されている。
着座検知センサ36により被験者の着座が検知された時点以降、かつ、排泄行為が開始される前の臭気性ガスセンサ26の検出データに基づいて基準値を設定する。臭気性ガスセンサ26により測定された検出値と基準値の差分の変化率が、予め設定された開始閾値を超えた時点を、排便ガス量の推定の開始時点(すなわち、排泄行為の開始時点)として設定する。そして、データ解析装置60は、変化率−吐出期間データを参照し、開始時点の検出値と基準値の差分の変化率に対応する吐出期間データを取得する。そして、データ解析装置60は、排泄行為の開始時点における検出データと基準値との差分の変化率と、吐出時間とを積算し、この積算値をガス量として推定する。なお、水素ガスセンサ24の検出データに基づく水素ガス量の推定、及び、二酸化炭素センサ28の検出データに基づく二酸化炭素ガス量の推定も同様に行うことができる。上記説明したガス量の推定方法によっても、ガスセンサの時定数の影響を排除し、より正確に排便ガス量を推定することができる。なお、上記各実施形態のガス量の推定方法では、臭気性ガスセンサ26として半導体ガスセンサを用いた場合について説明したが、これに代えて固体電解質センサを用いた場合であってもガス量の推定を行うことができる。なお、上記実施形態では、データ解析装置60は、差分の変化率を求め、変化率−吐出期間データを参照して開始時点の検出値と基準値の差分の変化率に対応する吐出期間データを取得し、変化率と吐出期間とに基づきガス量を推定していたが、本発明はこれに限られない。例えば、予め、差分の変化率とガス量とが対応付けられた変化率−ガス量データを記憶しておき、差分の変化率を求め、変化率−ガス量データを参照して、ガス量を直接推定してもよい。
なお、図1を参照して説明した第1実施形態の生体情報測定システムは、測定装置6が、トイレ室Rに設置された水洗大便器2の上に載置した便座4の内部に組み込まれている構成について説明したが、本発明の生体情報測定システムにおいて測定装置は、必ずしも便座の内部に組み込む必要はない。
図37(a)は、第4実施形態による生体情報測定システムにおける被験者側装置をトイレ室に設置された水洗大便器に取り付けた状態を示す図であり、同図(b)は、同図(a)に示す被験者側装置の測定装置を示す斜視図である。なお、第4実施形態では、第1実施形態と比較して被験者側装置の構成のみが相違している。図37(a)に示すように、本実施形態の生体情報測定システム101は、第1実施形態と同様の構成であるが、被験者側装置110の測定装置106の構成のみが異なっている。本実施形態の測定装置106は便座104とは別体に構成されている。
図37(b)に示すように、測定装置106は、装置本体180と、装置本体180の上面に横方向に延びるように取り付けられ、先端部が下方に向けて屈曲されたダクト118aと、装置本体180に接続された電源コード182とを含む。図37(a)に示すように、測定装置106は、ダクト118aの先端部を水洗大便器2のボウルの側壁に引っかけることにより、ダクト118aの先端がボウル内に位置した状態で固定されている。
装置本体180は、第1実施形態と同様に、水素ガスセンサと、臭気性ガスセンサと、二酸化炭素センサと、湿度センサと、温度センサと、入室検知センサと、着座検知センサと、排便・排尿検知センサと、吸引装置と、センサ加温ヒータと、送受信機と、を備える。ダクト118aから吸気されたガスは、脱臭されて装置本体180の底面に設けられた脱臭空気吹き出し口より放出される。ダクト118a内には、水素ガスセンサと、臭気性ガスセンサと、二酸化炭素センサと、湿度センサと、温度センサと、センサ加温ヒータと、ファンとが設けられている。ダクト118a内のセンサの配置については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。このような構成により、本実施形態の測定装置106によっても、臭気性ガスセンサ、水素ガスセンサ、及び、二酸化炭素センサにより、排便ガスに含まれる臭気性ガス、水素ガス、及び、二酸化炭素のガス量に応じた検出データを取得することができる。
なお、本実施形態の測定装置106とともに使用される便座104としては、便蓋開閉装置と、ノズル駆動装置と、ノズル洗浄装置と、便器洗浄装置と、便器除菌装置とを備え、測定装置106と通信可能な洗浄機能付き便座を用いることが望ましい。このような便座とともに測定装置106を用いることにより、異臭ガスを検知した場合の各種洗浄、除菌作業を行うことが可能になる。
また、第1実施形態では、図3に示すように、ガス検出装置20では、水素ガスセンサ24を脱臭フィルタ78の下流側に設ける構成としたが、必ずしもこのような構成にする必要はない。図38は、第5実施形態の生体情報測定システムにおけるガス検出装置の構成を示す図である。なお、第5実施形態では、第1実施形態と比較してガス検出装置の構成のみが相違している。同図に示すように、本実施形態ではガス検出装置120では、水素ガスセンサ24の配置が図3に示す実施形態と異なっている。本実施形態では、水素ガスセンサ24は、吸気通路18b内の脱臭フィルタ78の下流に設けられている。このような構成によれば、水素ガスセンサ24として水素ガスのみならず臭気性ガスにも反応するようなセンサを用いた場合であっても、水素ガスセンサ24が出力するデータから臭気性ガスの影響を除去することができる。
また、第1実施形態では、臭気性ガスセンサ26の検出した検出値から水素ガスセンサ24により検出された検出値を減算することにより、水素ガスの影響を分離して臭気性ガスの検出値を算出したが、本発明はこれに限られず、例えば、以下に説明するように水素ガスと臭気性ガスの臭気性ガスセンサ26への到達時間をずらすことにより、水素ガスの影響を分離することも可能である。
図39は、水素ガスと臭気性ガスの臭気性ガスセンサへの到達時間をずらすことにより、水素ガスの影響を分離するように構成された第6実施形態のガス検出装置の構成を示す図である。なお、第6実施形態では、第1実施形態と比較してガス検出装置の構成のみが相違している。同図に示すように、本実施形態では、ダクト18a内の吸気通路18bの主経路283aから分岐する分岐経路283bが設けられている。なお、第1実施形態では、水素ガスセンサと臭気性ガスセンサとを別個に設けていたが、本実施形態では一台の半導体ガスセンサにより水素ガス及び臭気性ガスの両方を検知する構成となっている。
第1実施形態と同様に、吸気通路18bには、フィルタ72と、フィルタ72の下流に設けられた脱臭フィルタ78と、吸引ファン18cとが設けられており、分岐経路283bはフィルタ72の下流側において分岐している。フィルタ72は脱臭機能を備えていないフィルタであって、臭気性ガス及び水素を通過し、尿や洗浄剤等の異物の通過を妨げる。また、脱臭フィルタ78も、第1実施形態と同様に、臭気性ガス等のガス成分を吸着する触媒である。
吸引ファン18cにより吸気通路18bには、一定の流量で大便器のボウル2a内の排便ガスが吸引される。吸気通路18b内に吸引された排便ガスは、フィルタ72を通過することにより尿や洗浄剤等の異物が除去され、脱臭フィルタ78により臭気性ガス等のガス成分が取り除かれた後、大便器のボウル2a内に戻される。
分岐経路283bには、上流側から下流側に向かって、流路切り換え弁284と、カラム286と、半導体ガスセンサ288と、ポンプ290とが順に設けられている。
流路切り換え弁284は、排泄行為中の一部の時間(ごく短時間)のみ開放され、吸気通路18b内を流れる排便ガスの一部(被験者の排泄行為中の一部の時間の分)を分岐経路283b内に引き込むための弁である。流路切り換え弁284は、分岐経路283bの最上流に設けられている。
カラム286は、流路切り換え弁284の下流側に設けられており、細長い配管内に、例えば、細い繊維材などが充填されて構成されている。カラム286は、ガスクロマトグラフィーの原理により、分子の大きさ(分子量)に応じてガスの通過する時間に差が生じるような機構である。
半導体ガスセンサ288の上流側には、半導体ガスセンサ288の触媒を所定の温度に加熱し、かつ、半導体ガスセンサ288に付着した異臭ガス成分を除去するためのセンサ加温ヒータ54が設けられている。
流路切り換え弁284により、吸気通路18bを流れるフィルタ72を通過した微量な排便ガスが分岐経路283bに流れ込む。そして、ポンプ290を駆動すると、ガスクロマトグラフィーの原理により、排便ガスに含まれる水素及び臭気性ガスは分子量に応じて異なる時間をかけてカラム286を通過し、半導体ガスセンサ288まで到達する。すなわち、分子量が小さい水素はカラム286を通過しやすく、短時間で半導体ガスセンサ288まで到達し、分子量が大きい臭気性ガスはカラム286を通過しにくく、水素よりも長い時間をかけて半導体ガスセンサ288まで到達する。なお、ポンプ290は、一定の流速で排便ガスを吸引するように構成されている。
図40は、図39に示すガス検出装置の半導体ガスセンサにより検出された検出波形を示す図である。同図に示すように、本実施形態のガス検出装置220の構成によれば、半導体ガスセンサ288は、水素ガスと臭気性ガスに対して時間的に分離された状態で反応する。特に、排泄行為は短時間に行われ、水素及び臭気性ガスを含む排便ガスも短時間しか放出されない。このように排便ガスの放出は短時間であるため、カラム286を半導体ガスセンサ288の上流に設けることにより、水素ガス及び臭気性ガスが半導体ガスセンサに到達までの時間をずらすことができ、一台の半導体ガスセンサ288により水素のガス量、及び、臭気性ガスのガス量を検出することができる。これも、発明者らが、癌と相関のあるメチルメルカプタンのガス量の全量を測定することなく、健康系ガスと臭気性ガスの相関で体調状態を判断する方法を採用し、このような場合には特定期間のガスの測定だけで良いと見出した技術知見に基づくものである。還元センサを用いると安価で良いが、排便ガス中に多く含まれる大量の水素の分離に困難となる。これに対して、本実施形態によれば、少量の特定期間だけの測定であるため、水素分離も容易となり極めて安価なセンサで実用性を実現できる。
なお、本実施形態では、カラム286により水素と臭気性ガスの半導体ガスセンサ288への到達時間をずらしているが、当然のことながら、排便ガスに含まれるメタンの到達時間もずらすことも可能である。これにより、半導体ガスセンサの検出した検出データから水素のみならずメタンの影響を分離することも可能である。
本発明の実施形態の生体情報測定システムによれば、ノイズ測定回路が残留ガスノイズ(図9の時刻t0〜t1のノイズレベル)及び被験者ノイズ(図9の時刻t1〜t2のノイズレベル)を検出し、ノイズ対応手段(ボウル2a内又はトイレ室R内の排気/脱臭、データ解析装置60によるおしり洗浄の実行及びそれを促す報知、及び被験者へのノイズが大きいことの報知、表示装置68による信頼度の表示、基準値との差分に基づく臭気性ガス量を推定)が検出されたノイズの影響を軽減する。このため、トイレ室R内というノイズの多い環境においても、硫黄成分を含む臭気性ガスであるメチルメルカプタンガス及びそれ以外の臭気性ガスにも反応してしまう汎用的なガスセンサを使用して、極めて微量な臭気性ガスを検出することが可能になる。この結果、生体情報測定システム1を、一般消費者が手軽に購入できるコストで提供することが可能になった。本実施形態の生体情報測定システム1によれば、家庭における排便ガスの測定によって癌等の重大な疾病になってしまうのを未然に防止することができ、もしくは軽度な状態で病院に通院して治療を受けることを促すことができる。
また、本実施形態の生体情報測定システムによれば、残留ガスノイズの影響を軽減する第1ノイズ対応手段(ボウル2a内又はトイレ室R内の排気/脱臭)と、これとは異なる対応により被験者ノイズの影響を軽減する第2ノイズ対応手段(データ解析装置60によるおしり洗浄の実行及びそれを促す報知、基準値との差分に基づく臭気性ガス量の推定)を備えているので、原因の異なるノイズの影響を効果的に軽減することが可能になり、これにより、極めて微量の臭気性ガスを検出することが可能になった。
さらに、本実施形態の生体情報測定システムによれば、第1ノイズ対応手段は、被験者が入室していないとき(図9の時刻t0〜t1)、第2ノイズ対応手段は、入室しているとき(図9の時刻t1〜t8)実行されるので、原因の異なるノイズを、入室検知センサ34により識別することができ、夫々に対して適切な対応によりノイズの影響を軽減することができる。
また、本実施形態の生体情報測定システムによれば、残留ガスノイズはボウル2aの洗浄又は排気により軽減し、軽減の難しい被験者ノイズは報知によって被験者に軽減を促すので、何れのノイズに対しても効果的にこれを軽減することができる。
さらに、本実施形態の生体情報測定システムによれば、被験者ノイズのノイズレベルを設定(図9の時刻t2におけるノイズレベル)し、このノイズレベルに基づいて、被験者ノイズの影響を軽減するので、除去することが困難な被験者ノイズの影響を効果的に排除することができる。
また、本実施形態の生体情報測定システムによれば、ノイズレベルが安定するまで排便を待つよう被験者に報知される(図4の下段)ので、被験者ノイズのノイズレベルを確実に検知した後、排便ガスの測定を開始することができ、確実に被験者ノイズの影響を排除することができる。
さらに、本実施形態の生体情報測定システムによれば、残留ガスノイズ及び被験者ノイズの影響が被験者に報知される(図5の下段)ので、被験者は、測定値へのノイズの影響度及びその原因を認識することができ、ノイズの原因を取り除くことができる。