以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1(a)に、本実施の形態に係るワイヤレス電力伝送装置900を示す。本実施の形態に係るワイヤレス電力伝送装置900は、給電装置902および受電装置904を備え、磁界を利用し、給電装置902から受電装置904にワイヤレスで(非接触)で電力が供給される。本実施の形態において、受電装置904は、たとえば携帯電話端末やノート型コンピュータなどの電子機器(図示省略)に搭載され、受電装置904で受電された電力は、当該電子機器で消費される。
本実施の形態に係る給電装置902は、交流電源910、整合回路912、および送電アンテナ906を含んで構成されている。
交流電源910は、一例として、給電装置902の外部から、予め定められた周波数の交流電力を供給する電源である。送電アンテナ906は、送電コイルLT、共振コンデンサCTを含み、受電装置904(電子機器)に対し、磁界を用いて電力を送電する部位である。整合回路912は、交流電源910の出力インピーダンスと送電アンテナ906の入力インピーダンスとのマッチングを行う回路であり、該整合回路912により、交流電源910から送電アンテナ906へ効率よく電力が供給される。なお、交流電源910と送電アンテナ906とのインピーダンス整合を考慮しなくてよい場合には、本整合回路912は省略しても差し支えない。
受電装置904は、受電アンテナ908、整合回路920、整流回路914、電圧安定化回路916、および負荷918を含んで構成されている。
受電アンテナ908は、受電コイルLR、共振コンデンサCRを含み、送電アンテナ906からの磁界を受け、該磁界を電流に変換する。整合回路920は、整合回路912と同様、受電アンテナ908と整流回路914との間のインピーダンス整合を行う回路であり、電力を効率よく伝送する。なお、本整合回路920も、前後に接続される回路のインピーダンス整合を考慮しなくてよい場合には、省略しても差し支えない。
整流回路914は、受電アンテナ908で受電した交流電力を整流し、直流電力に変換する回路である。電圧安定化回路916は、整流回路914から供給される直流電力を安定化させ、負荷918に供給する回路である。負荷918は、電子機器内において電力が供給される部位を代表させたものであり、電子機器内に設けられたバッテリー(2次電池)が接続される場合がある。
ワイヤレス電力伝送装置900は、方式的には直接給電型のワイヤレス電力伝送装置に属するが、別の方式として、間接給電型のワイヤレス電力伝送装置がある。
図1(b)に、間接給電型のワイヤレス電力伝送装置950の一例を示す。ワイヤレス電力伝送装置950は、給電装置952および受電装置954を備え、磁界を利用し、給電装置952から受電装置954にワイヤレスで電力が供給される。なお、図1(b)では、図1(a)における整合回路、整流回路、電圧安定化回路を省略している。
給電装置952は、交流電源964および送電アンテナ958を含んで構成され、各々ワイヤレス電力伝送装置900の、交流電源910および送電アンテナ906と同様の機能を有している。また、受電装置954は、受電アンテナ960および負荷966を含んで構成され、各々、ワイヤレス電力伝送装置900の、受電アンテナ908および負荷918と同様の機能を有している。
送電アンテナ958は、送電アンテナ906と同様に、送電コイルLT1および共振コンデンサCTを含み、受電アンテナ960は、受電アンテナ908と同様に、受電コイルLR1および共振コンデンサCRを含んでいる。
ワイヤレス電力伝送装置950の給電装置952では、さらに、送電コイルLT1に誘導結合されたコイルLT2を含み、コイルLT2は電源の一部を構成している。また、受電装置954では、さらに、受電コイルLR1に誘導結合されたコイルLR2を含み、コイルLR2は負荷の一部を構成している。
以上のように構成された、間接給電型のワイヤレス電力伝送装置950は、特に給電系の伝送距離を長くしたい場合に用いられる方式である。
以下、本実施の形態に係る送電アンテナおよび受電アンテナについて説明するが、以下で説明する送電アンテナおよび受電アンテナは、直接給電方式、間接給電方式を問わず用いられる。なお、以下では、ワイヤレス電力伝送用の送電アンテナおよび受電アンテナを総称する場合には、単に「アンテナ」という。
つぎに、図2および図3を参照して、本実施の形態に係るアンテナである、送電アンテナ10Eおよび受電アンテナ50Eについて説明する。
図2(a)に示すように、本実施の形態に係る送電アンテナ10Eは、送電コイルとしてのループLP3および共振コンデンサCP1を含んで構成されている。また、本実施の形態に係る受電アンテナ50Eは、受電コイルとしてのループLP4および共振コンデンサCP2を含んで構成されている。
詳細は後述するが、本実施の形態に係る送電アンテナ10Eおよび受電アンテナ50Eは、一例として、少なくとも2層の配線層を有するプリント板を使用して作製されている。以下では、2層の配線層を有するプリント板を例示して説明することとし、プリント基板の表面側の配線層を「第2配線層」といい、プリント基板の裏面側の配線層を「第1配線層」という。また、便宜的に、送電アンテナの第1配線層を「1層目」、第2配線層を「2層目」、受電アンテナの第2配線層を「3層目」、第1配線層を「4層目」と称することとする。なお、本実施の形態では、プリント板の配線層を使用する形態を例示して説明するが、これに限られず、たとえば半導体の配線層を使用する形態としてもよい。
送電アンテナ10EのループLP3は2層目(第2配線層)に形成されており、共振コンデンサCP1は、1層目(第1配線層)と2層目(第2配線層)に同形状の平行平板を配置して形成されている。受電アンテナ50EのループLP4は3層目(第2配線層)に形成されており、共振コンデンサCP2は、3層目(第2配線層)と4層目(第1配線層)に同形状の平行平板を配置して形成されている。つまり、本実施の形態では、送電アンテナ10Eの第2配線層に形成されたループLP3と、受電アンテナ50Eの第2配線層に形成されたループLP4とが対向する構成となっている。図2(a)では、1層目ないし4層目のうちの2層目および3層目を示している。また、本実施の形態では、共振コンデンサCP1およびCP2の容量を、一例として1.62pFとしている。
送電アンテナ10EのループLP3の一部に表記された四角で囲まれた1は、後述する伝送特性をシミュレーションする場合の交流電源を、受電アンテナ50EのループLP4の一部に表記された四角で囲まれた2は、伝送特性をシミュレーションする場合の負荷を、各々表している(図4および図6参照)。また、本実施の形態では、送電アンテナ−受電アンテナ間の伝送特性を、送電アンテナの交流電源から受電アンテナの負荷までのSパラメータS21の絶対値でシミュレーションしている。
Sパラメータとは、電子回路や電子部品の特性を表すために使用される回路網パラメータのひとつで、散乱行列とも呼ばれ、回路網の通過特性、反射特性を示す。2ポートのSパラメータは、S11、S21、S12、およびS22の4つのパラメータで回路網を表現するが、S21は、そのうちの順方向伝達特性を示し、S21の絶対値の最大値は1である。また、本実施の形態では、伝達特性を3次元電磁界シミュレーションにより求めており、解析シミュレータとしては、Sonnet em(ソネット技研)を用いている。なお、以下では、|S21|を単にS21と記載することとする。
図3を参照して、送電アンテナ10E−受電アンテナ50E間の伝送特性S21について説明するが、図3では、比較例として、スタブによる共振コンデンサを用いたアンテナの伝送特性も図示している。「スタブ」とは、伝送線路の途中または端部に並列に接続された分岐線路であり、スタブ線路ともいう。
図2(b)は、各々ループLP1の一端および他端に並列に接続され、対向して配置されたスタブS1およびS2を有する送電アンテナ100Cと、各々ループLP2の一端および他端に並列に接続され、対向して配置されたスタブS3およびS4を有する受電アンテナ500Cと、を示している。送電アンテナ100Cおよび受電アンテナ500Cは、各々単層で構成されている(図2(b)では、各々、「スタブの1層目」、「スタブの2層目」と表記されている)。
以下に示すシミュレーションに際しては、スタブS1とS2とが対向して構成されるコンデンサの容量、および、スタブS3とS4とが対向して構成されるコンデンサの容量は、送電アンテナ10Eの共振コンデンサCP1、受電アンテナ50Eの共振コンデンサCP2と同じ値の1.62pFとしている。また、送電アンテナ10EのループLP3および受電アンテナ50EのループLP4の外形、送電アンテナ100CのループLP1および受電アンテナ500CのループLP2の外形は、いずれも同じ外形としている。
図3(a)は、送電アンテナ10E−受電アンテナ50E間の伝送特性を、図3(b)には、送電アンテナ100C−受電アンテナ500C間の伝送特性を、各々示している。
図3の各図では、送電アンテナと受電アンテナとの距離(図3では、「D3」と表記、単位はmm、詳細は後述する)をパラメータとして変えており、たとえば、同図中に示す「D3=10」は、送電アンテナ−受電アンテナ間の距離が10mmであることを示している。両者の伝送特性はほぼ同じ特性を示し、また、共振周波数frは、fr≒153MHzとなっている。
図3に示す結果から、送電アンテナおよび受電アンテナの共振コンデンサをスタブを用いて構成してもよいともいえる。しかしながら、図2(b)に示すように、スタブ(S1ないしS4)はループ(LP1、LP2)の内部に配置する必要があるため、その大きさ、すなわち容量値が制限される。ワイヤレス電力伝送装置では、伝送効率や、取り扱いのし易さ等から共振周波数を低くすることが求められる場合もあるところ、スタブでは共振コンデンサの容量値としての限界があり、共振周波数frを低くすることができない。
なお、上記送電アンテナ10Eおよび受電アンテナ50Eと、送電アンテナ100Cおよび受電アンテナ500Cと、の各々について、間接給電方式の構成とした場合の伝送特性も比較している。その結果、送電アンテナ10Eおよび受電アンテナ50EではS21のピーク値が0.999となり、送電アンテナ100Cおよび受電アンテナ500CではS21のピーク値が0.987となった。すなわち、スタブ型のアンテナよりも平行平板型のアンテナの方が伝送効率が高くできることがわかっている。なお、間接給電方式でシミュレーションする場合の構成は、図1の送電アンテナ958として、送電アンテナ10Eまたは送電アンテナ100Cを接続し、受電アンテナ960として、受電アンテナ50Eまたは受電アンテナ500Cを接続している。
つぎに、本実施の形態に係る送電アンテナ10Eおよび受電アンテナ50Eの、平行平板型の共振コンデンサの形状を大きくした場合の実施の形態に係る送電アンテナ100および受電アンテナ500について説明する。本実施の形態に係るアンテナは、ループの内部に平行平板型の共振コンデンサを設けるようにしたので、共振コンデンサの外形はループの大きさまでの範囲で選択され、大きな容量の値も容易に設定される。一例として、本実施の形態に係る送電アンテナ100および受電アンテナ500の平行平板104の面積は、送電アンテナ10Eおよび受電アンテナ50Eの共振コンデンサCP1およびCP2の310倍とし、従って容量値を、1.62×310≒500pFとしている。
図4に、本実施の形態に係る送電アンテナ100および受電アンテナ500を示す。図4(a)は送電アンテナ100の斜視図を、図4(b)は受電アンテナ500の斜視図を、各々示している。
図4(a)に示すように送電アンテナ100は、コイルとしての機能を有するループ102、およびコンデンサとしての機能を有する平行平板104aおよび104b(以下、総称する場合には、「平行平板104」という)を備えている。平行平板104aは、接続部106aおよびスルーホールTHを介してループ102の一端に接続され、平行平板104bは、接続部106bを介してループ102の他端に接続されている(以下、総称する場合には、「接続部16」という)。また、ループ102には、送電アンテナ100に電力を供給する交流電源90が接続される。
図4(b)に示すように受電アンテナ500は、コイルとしての機能を有するループ502およびコンデンサとしての機能を有する平行平板504aおよび504b(以下、総称する場合には、「平行平板504」という)を備えている。平行平板504aは、接続部506aおよびスルーホールTHを介してループ502の一端に接続され、平行平板504bは、接続部506bを介してループ502の他端に接続されている(以下、総称する場合には、「接続部506」という)。また、ループ502には、受電アンテナ500が搭載される電子機器の電力消費部であるインピーダンスZ0の負荷92が接続される。
図5は、本実施の形態に係る送電アンテナ100および受電アンテナ500の1層目ないし4層目のレイアウトを図示している。本シミュレーションでは、平行平板104、504をループ102の中央部に配置した場合と、偏らせて配置した場合の伝送特性の相違についても検討している。図5(a)は、平行平板104aおよび104bを中央に配置した場合の送電アンテナ100Aの1層目と2層目、および、平行平板504aおよび504bを中央に配置した場合の受電アンテナ500Aの3層目と4層目を各々示している。また、図5(b)は、平行平板104aおよび104bをループ102の中央部ではなく偏らせて配置した場合の送電アンテナ100Bの1層目と2層目、および、平行平板504aおよび504bをループ502の中央部ではなく偏らせて配置した場合の受電アンテナ500Bの3層目と4層目を各々示している。
図6は、本実施の形態に係る送電アンテナ−受電アンテナ間の伝送特性をシミュレーションする場合のシミュレーションモデルを示している。本シミュレーションモデルでは、各々2層の仮想的な送電側平面対PTおよび受電側平面対PRを考え、送電側平面対PTに送電アンテナ10の第1配線層および第2配線層を、図6を平面視して上からこの順に配置し、受電側平面対PRに受電アンテナ50の第2配線層および第1配線層を上からこの順に配置する。図6中の四角で囲まれた”1”がシミュレーション上の信号源を、四角で囲まれた”2”がシミュレーション上の50Ω負荷を示している。
このシミュレーションモデルでは、信号源がループ102を励振すると、ループ102から磁界Mが発生し、磁界Mによりループ102と予め定められた結合係数で結合されたループ502が励振され、ループ502に電流が発生する。この、信号源から負荷までの伝達特性を示すパラメータが上記S21である。なお、送電側平面対PTと受電側平面対PRの内側の層同士の距離、すなわち、送電アンテナの第2配線層と、受電アンテナの第2配線層との間の距離を、送電アンテナ100と受電アンテナ500との間の距離D3と定義する。
図7(a)に、送電アンテナ100A−受電アンテナ500A間の伝送特性(S21)のシミュレーション結果を、図7(b)に、送電アンテナ100B−受電アンテナ500B間の伝送特性(S21)のシミュレーション結果を示す。図7(a)と図7(b)とを比較して明らかなように、送電アンテナ100A−受電アンテナ500A間の伝送特性と、送電アンテナ100B−受電アンテナ500B間の伝送特性とでは、大きな相違はない。つまり、本実施の形態に係るアンテナでは、平行平板(104、504)のループ(102、502)内の位置によって、伝送特性は大きく変化しないことがわかる。
[第2の実施の形態]
図8(a)に本実施の形態に係る送電アンテナ10を、図8(b)に本実施の形態に係る受電アンテナ50を示す。本実施の形態に係るアンテナは、上記実施の形態に係るアンテナにおいて、平行平板の内部に開口を設けた形態である。なお、本実施の形態に係るアンテナのループの形状は、上記実施の形態に係るアンテナのループの形状と同じ形状とし、平行平板の面積は、同等にしている。
図8(a)に示すように送電アンテナ10は、コイルとしての機能を有するループ12およびコンデンサとしての機能を有する平行平板14aおよび14b(以下、総称する場合には、「平行平板14」という)を備えている。平行平板14aは、接続部16aおよびスルーホールTHを介してループ12の一端に接続され、平行平板14bは、接続部16bを介してループ12の他端に接続されている(以下、総称する場合には、「接続部16」という)。
本実施の形態に係る平行平板14aは内部に開口部18aを有し、平行平板14bは開口部18bを有する(以下、総称する場合には、「開口部18」という)。本実施の形態に係る平行平板14aと平行平板14bとは、開口部18を含めて同じ形状とされるとともに、対向して配置されている。また、ループ12には、送電アンテナ10に電力を供給する交流電源90が接続される。
図8(b)に示すように受電アンテナ50は、コイルとしての機能を有するループ52およびコンデンサとしての機能を有する平行平板54aおよび54b(以下、総称する場合には、「平行平板54」という)を備えている。平行平板54aは、接続部56aおよびスルーホールTHを介してループ52の一端に接続され、平行平板54bは、接続部56bを介してループ52の他端に接続されている(以下、総称する場合には、「接続部56」という)。
本実施の形態に係る平行平板54aは内部に開口部58aを有し、平行平板54bは開口部58bを有する(以下、総称する場合には、「開口部58」という)。平行平板54aと平行平板54bとは、開口部58を含めて同じ形状とされるとともに、対向して配置されている。また、ループ52には、受電アンテナ50が搭載される電子機器の電力消費部であるインピーダンスZ0の負荷92が接続されている。
本実施の形態に係る送電アンテナ10および受電アンテナ50は、上記実施の形態と同様、一例として、2層の配線層を有するプリント板を使用して作製されている。以下、図9を参照して送電アンテナ10の層ごとのレイアウト構成について、図10を参照して受電アンテナ50の層ごとのレイアウト構成について説明する。
図9(a)は、第1配線層側、つまりプリント板の裏面側から見た送電アンテナ10の平面図を示している。図9(a)に示すように、送電アンテナ10は、平行平板14aおよび接続部16aが第1配線層で形成され、ループ12、平行平板14bおよび接続部16bが第2配線層で形成され、第1配線層の接続部16aと第2配線層のループ12とが、スルーホールTHで接続されている。図9(b)は、図9(a)に示すA−A’での断面図を、図9(c)は、図9(a)に示すB−B’での断面図を各々示している。図9(b)および(c)における表記(1)が第1配線層、表記(2)が第2配線層を示している。
図10(a)は、第2配線層側、つまりプリント板の表面側から見た受電アンテナ50の平面図を示している。図10(a)に示すように、受電アンテナ50は、ループ52、平行平板54b、および接続部56bが第2配線層で形成され、平行平板54aおよび接続部56aが第1配線層で形成され、第1配線層の接続部56aと第2配線層のループ52とが、スルーホールTHで接続されている。図10(b)は、図10(a)に示すC−C’での断面図を、図10(c)は、図10(a)に示すD−D’での断面図を各々示している。
以上のように構成された本実施の形態に係る送電アンテナ10と受電アンテナ50とを実際に使用する場合には、図8に示すように各々の第2配線層側を対向させて、つまり、ループ12とループ52とを直接対向させて配置する。
つぎに、図11ないし図15を参照して、本実施の形態に係る送電アンテナ−受電アンテナ間の伝送特性のシミュレーション結果について説明する。本実施の形態も、上記実施の形態と同様、送電アンテナ−受電アンテナ間の伝送特性を、送電アンテナの交流電源から受電アンテナの負荷までのSパラメータS21でシミュレーションしている。そして、Sパラメータをシミュレーションする場合の信号源は図8(a)の交流電源90の位置に、50Ω(図8(b)では、「Z0」と表記)負荷は図8(b)の負荷92の位置に各々接続している。
図11は、本実施の形態に係る送電アンテナ−受電アンテナ間の伝送特性をシミュレーションする場合のシミュレーションモデルを示している。本シミュレーションモデルは、図6に示すシミュレーションモデルにおける送電アンテナ100の位置に送電アンテナ10を配置し、受電アンテナ500の位置に受電アンテナ50を配置したモデルである。したがって、モデルについての詳細は先述と同様であるので省略する。
図12は、平行平板14、54の外形、および開口部18、58の形状をさまざまに変えた場合の送電アンテナ10および受電アンテナ50の平面図を示している。図12(a)は、開口部18、58の大きさが大きい場合の送電アンテナ10Aおよび受電アンテナ50Aの平面図を、図12(b)は、開口部18、58の大きさが中程度の場合の送電アンテナ10Bおよび受電アンテナ50Bの平面図を、図12(c)は、開口部18、58の大きさが小さい場合の送電アンテナ10Cおよび受電アンテナ50Cの平面図を、各々示している。なお、本実施の形態において開口部18,58の大きさを変える場合には、平行平板14、54の実質的な面積を変えないように、開口部を大きくするにしたがって、平行平板の幅を狭くするようにしている。
図12(a)、(b)、(c)の各々では、左から右に向かって、送電アンテナの第1配線層、第2配線層、受電アンテナの第2配線層、第1配線層の順で、すなわち、図8(a)、(b)を上方から(送電アンテナ10の第1配線層側から)見た順で並んでいる。
図12における(1)ないし(4)の表記は、第1層目ないし第4層目を示している。
図13(a)は、送電アンテナ10Aから受電アンテナ50Aへの伝送特性、すなわち、平行平板の開口部が大きい場合の伝送特性を示し、図13(b)は、送電アンテナ10Bから受電アンテナ50Bへの伝送特性、すなわち、平行平板の開口部が中程度の場合の伝送特性を示し、図13(c)は、送電アンテナ10Cから受電アンテナ50Cへの伝送特性、すなわち、平行平板の開口部が小さい場合の伝送特性を、各々示している。図13の各図では、送電アンテナと受電アンテナとの距離D3をパラメータとして変えている。
図13に示す結果から、開口部18、58が大きくなるにしたがって伝送特性S21のピーク値が下がるので、電力の伝送効率が低下することがわかり、距離D3が短いほど伝送効率が高いこともわかる。すなわち、図13(a)から、開口部18、58が大の場合は、S21の値自体が0.1以下と小さくなる。また、開口部18、58が中程度の場合のS21のピークは約0.34、開口部18、58が小の場合のS21のピーク値は約0.4となっている。
図13に示す結果から、求められる伝送効率を考慮して、図9(a)に示す開口部の幅d1と平行平板部の幅d2とを決定すべきことがわかる。本実施の形態では、d1とd2との関係を種々変えて設定し、シミュレーションした結果、d1とd2との間に以下に示す(式1)が成立する場合に、伝送効率の劣化が少なく、好ましいという結果を得ている。
d1<5×d2 ・・・ (式1)
ここで、図13(b)、(c)に示す結果から、本実施の形態に係るアンテナの共振周波数fr(S21のピーク値における周波数)は、fr≒13MHzであった。この共振周波数frの値は、図3(b)に示す比較例に係るアンテナの共振周波数frの値fr≒153MHzの1/10以下の値となっている。
また、本シミュレーションでは、送電アンテナと受電アンテナとの相対的な位置ずれについても検討している(図28参照)。ワイヤレス電力伝送装置では、使用時において、送電アンテナのループおよび平行平板と、受電アンテナのループおよび平行平板とが正確に対向していることが、伝送効率の観点から望ましい。しかしながら、実際の使用においては、送電アンテナと受電アンテナとを必ずしも正確に対向させられるとは限らない。そこで、本実施の形態では、送電アンテナと受電アンテナとの相対的な位置をずらした場合の、伝送特性の変化も検討している。本実施の形態では、相対的な位置ずれに関し、送電アンテナと受電アンテナとが平行を維持しつつ横にずれる場合(以下、この横ずれを「シフトずれ」という)と、送電アンテナと受電アンテナとが同一の点を中心として相対的に回転してずれる場合(以下、このずれを「回転ずれ」という)とを想定している。なお、以下のシミュレーションでは、送電アンテナ−受電アンテナ間の距離D3を、D3=10mmとしている。
図14は、シフトずれ量を0mm、0.8mm、2.4mm、4mmとした場合の上記実施の形態に係るアンテナのシフトずれに対する依存性と、本実施の形態に係るアンテナのシフトずれに対する依存性を示す図である。送電アンテナと受電アンテナとの相対的な位置のずらし方は、図28(a)に示すように、送電アンテナを図28(a)の平面視左側に移動させ、受電アンテナを図28(a)の平面視右側に移動させ、左右の移動量の合計が前記シフトずれ量となるようにしている。
図14(a)は、シフトずれ量を加味した送電アンテナ100A−受電アンテナ500A(図5(a)参照)間の伝送特性を、図14(b)は、シフトずれ量を加味した送電アンテナ100B−受電アンテナ500B(図5(b)参照)間の伝送特性を、図14(c)は、シフト量を加味した送電アンテナ10C−受電アンテナ50C(図12(c)参照)間の伝送特性を、各々示している。
図14に示す結果から、本実施の形態に係る送電アンテナ10C−受電アンテナ50C間の伝送特性は、開口部を有さない上記実施の形態に係る送電アンテナ100A(100B)−受電アンテナ間500A(500B)の伝送特性と比較して大きな変化はなく、伝送効率的に遜色のないことがわかる。また、本実施の形態に係る送電アンテナ10C−受電アンテナ50C間のシフトずれに対するロバスト性(外乱に対する耐力)も、開口部を有さない上記実施の形態に係る送電アンテナ100A(100B)−受電アンテナ500A(500B)間のシフトずれに対するロバスト性と比較して遜色のないことがわかる。
また、本実施の形態に係る送電アンテナ10C−受電アンテナ50Cと、開口部を有さない上記実施の形態に係る送電アンテナ100A(100B)−受電アンテナ500A(500B)とを、各々間接給電型(図1(b)参照)の構成として伝送特性を比較した結果についても、両者で大きな相違がないことを確認している(図示省略)。
つぎに、図15を参照して、送電アンテナ100A−受電アンテナ500A間、送電アンテナ100B−受電アンテナ500B間、および送電アンテナ10C−受電アンテナ50C間の回転ずれに対する特性の変化の検討結果について説明する。送電アンテナと受電アンテナとの回転のさせ方は、図28(b)に示すように、送電アンテナの位置をそのままとし、受電アンテナを−90°回転させている。
図15は、回転させない場合(図15では、「0°」と表記)と−90°回転させた場合(図15では、「−90°」と表記)の各送電アンテナ−受電アンテナ間の伝送特性を示しており、図15(a)は、送電アンテナ100A−受電アンテナ500A間の伝送特性を、図15(b)は、送電アンテナ100B−500B間の伝送特性を、図15(c)は、送電アンテナ10C−受電アンテナ50C間の伝送特性を示している。
図15に示す結果から、図15(c)に示す本実施の形態に係る送電アンテナ10C−受電アンテナ50C間の伝送特性の回転ずれに対する変動量は、図15(a)に示す、開口部を有さない平行平板を中央に配置した送電アンテナ100A−受電アンテナ500A間の伝送特性と大きく違わないことがわかる。つまり、本実施の形態に係る送電アンテナ10C−受電アンテナ50C間の、伝送効率で見た回転ずれに対するロバスト性は、開口部を有しない平行平板を用いた送電アンテナ100A−受電アンテナ500A間のロバスト性と比較して遜色はない。一方、図15(b)に示すように、開口部を有さない平行平板を偏在して配置した送電アンテナ100B−受電アンテナ500B間の伝送特性は、回転ずれに対して大きく変動することがわかる。
つぎに、図16ないし図19を参照して、本実施の形態に係る送電アンテナ10の開口部18内、あるいは受電アンテナ50の開口部58内に、伝導体を配置した場合の伝送特性の変化について説明する。本実施の形態に係る送電アンテナ10は開口部18を、受電アンテナ50は開口部58を各々有しているが、この開口部18、58を利用してプリント板を固定するネジを配置したり、開口部18、58を介して他の配線パターン、たとえば電源パターンを通過させたりする必要が生ずる場合もある。また、このような意図した伝導体の配置以外にも、たとえばはんだ屑のような意図しない異物が、開口部18、58内に付着するようなことも考えられる。そのため、本実施の形態では、開口部18、58内に伝導体が配置された場合の伝送特性の変化について検討した。
図16(a)は、図11で説明したシミュレーションモデルに、図12(c)に示す本実施の形態に係る送電アンテナ10C、受電アンテナ50Cを配置し、さらに送電アンテナ10Cの開口部18内の中央に上記伝導体としてのネジN1を、受電アンテナ50Cの開口部58内の中央に上記伝導体としてのネジN2を配置したシミュレーションモデルを示している。また、図16(b)は、各アンテナの開口部内にネジを配置した状態を、2層目、つまり送電アンテナ10Cの第2配線層とネジN1との配置関係の詳細を図示し、代表して示している。
図17(a)は、開口部18および58内に各々ネジN1およびN2がない場合の伝送特性を、図17(b)は、開口部18および58内に各々ネジN1およびN2を配置した場合の、上記シミュレーションモデルによる伝送特性のシミュレーション結果を示している。図17に示すように、ネジの有無によって伝送特性の大きな変化はみられず、本実施の形態に係る送電アンテナおよび受電アンテナによれば、開口部内にネジ等の伝導体を配置してもよいことがわかる。なお、本シミュレーションでは、一例として、送電アンテナの開口部および受電アンテナの開口部の双方にネジを配置した形態で評価したが、いずれか一方の開口部にネジを配置しても同様の結果が得られることを確認している。
つぎに、図18および図19を参照して、開口部18、58内に他の配線パターンを配置した場合の伝送特性の変化について説明する。図18(a)は、図11に示すシミュレーションモデルに、送電アンテナ10Cおよび受電アンテナ50Cと、開口部18および58内に各々配置された他の配線パターンとしての浮島U1および浮島U2との配置状態を示している。なお、本シミュレーションでは、浮島U1は送電アンテナ10Cの2層目(送電アンテナ10Cの第2配線層)に配置し、浮島U2は、3層目(受電アンテナ50Cの第2配線層)に配置しているので、図18(a)では、2層目および3層目を代表して図示している。図18(b)は、その内2層目の配置状態の詳細を示している。
図19(a)は、開口部18、58内に浮島U1、U2がない場合の伝送特性を、図19(b)は、開口部18、58内に各々浮島U1およびU2を配置した場合の、上記シミュレーションモデルによる伝送特性のシミュレーション結果を示している。図19に示すように、浮島の有無によって伝送特性の大きな変化はみられず、本実施の形態に係る送電アンテナおよび受電アンテナによれば、開口部内に浮島等の他の配線パターンを配置してもよいことがわかる。なお、本シミュレーションでは、一例として、送電アンテナの開口部および受電アンテナの開口部の双方に浮島を配置した形態で評価したが、いずれか一方の開口部に浮島を配置しても同様の結果が得られることを確認している。
[第3の実施の形態]
以下、図20ないし図35を参照して、本実施の形態に係る送電アンテナおよび受電アンテナについて詳細に説明する。本実施の形態は、上記実施の形態に係る送電アンテナおよび受電アンテナの開口部を有する平行平板に、該平行平板の外周から開口部に達するスリットを設け、平行平板の図形的な回転および電流の回転を考慮した特性の違いを利用する形態である。
図20は、本実施の形態に係る送電アンテナおよび受電アンテナの一例として、代表的な形態を図示しており、図20(a)は、送電アンテナ10D、図20(b)は、受電アンテナ50Dを示している。送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dは、上記実施の形態と同様2層のプリント板で構成されており、その層構成は図8に示す送電アンテナ10および受電アンテナ50と同様の層構成となっている。また、本実施の形態に係る送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dも、上記実施の形態と同様に、プリント板のみならず、半導体の配線層を利用して構成してもよい。
図20(a)に示すように、送電アンテナ10Dは、第1配線層(1層目)に配置された、開口部38aを有する平行平板34a、接続部36a、第2配線層(2層目)に配置されたループ32、開口部38bを有する平行平板34b、および接続部36bを含んで構成されている。また、1層目の接続部36aと2層目のループ32とが、スルーホールTHによって接続されている。そして、平行平板34aには、平行平板34aの外周から開口部38aに至るスリットG1が、平行平板34bには、平行平板34bの外周から開口部38bに至るスリットG2が設けられている。
図20(b)に示すように、受電アンテナ50Dは、第2配線層(3層目)に配置された、ループ72、開口部78bを有する平行平板74b、接続部76b、第1配線層(4層目)に配置された開口部78aを有する平行平板74a、および接続部76aを含んで構成されている。また、3層目のループ72と4層目の接続部76aとが、スルーホールTHによって接続されている。そして、平行平板74bには、平行平板74bの外周から開口部78bに至るスリットG3が、平行平板74aには、平行平板74aの外周から開口部78aに至るスリットG4が設けられている。
以上のように構成された送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの断面図は各々図9および図10と同様となるので、図示を省略する。また、送電アンテナ10D−受電アンテナ50D間の伝送特性をシミュレーションする場合のシミュレーションモデルも図11と同様であり、シミュレーションに際しては、交流電源90と負荷92が接続される。
ここで、上記スリットG1ないしG4(以下、総称する場合は「スリットG」という)により規定される、本実施の形態に係る平行平板34、74の図形的な回転に伴う方向性について定義する。本実施の形態に係る送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dでは、各々接続部36および76の位置に対するスリットGの設け方により、平行平板の図形的な回転方向(右回り、左回り)が異なる。この図形的な回転(以下、「平板回転」という場合がある)に伴い、送電アンテナ10D−受電アンテナ50D間の伝送特性が異なる。
図21および図22を参照して、上記平板回転についてより詳細に説明する。図21は、送電アンテナ10Dの一形態を示しており、図21(a)は1層目を、図21(b)は2層目を各々示している。また、図22は、受電アンテナ50Dの一形態を示しており、図22(a)は3層目を、図22(b)は4層目を各々示している。図21および22は、平行平板34とループ32との接続部36を介した接続方法、および平行平板74とループ72との接続部76を介した接続方法は、スリットG1〜G4の位置も含めて図20に示す送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの接続方法と同じとした送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの例である。
図21(a)に示すように、スリットG1を接続部36aの図21(a)の正面視上側に設けることによって、接続部36aに接続された部分Aから出発して、接続部36aに接続されていない部分Bに到達するまでの経路は、図21(a)に点線で示す経路Kとなる。経路Kを、図21の正面視で見ると、つまり図20における送電アンテナ10Dの第1配線層側から見ると右回りであるので、図21(a)に示す平行平板の平板回転の方向は「右回り」(図21(a)では「R」と表記)であると定義する。
同様に考えると、図21(b)に示す2層目の平行平板の平板回転の方向は左回り、図22(a)に示す3層目の平板回転の方向は左回り、図22(b)に示す4層目の平板回転の方向は右回りとなる。ここで、ある送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの組の1層目から4層目までの平板回転の方向を、左を「L」、右を「Rと」表記し、記号(1層目の平板回転方向、2層目の平板回転方向、3層目の平板回転方向、4層目の平板回転方向)で表すことにする。すなわち、図21および図22に示す送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの平板回転の方向は(RLLR)となる。
図23(b)ないし図26(a)は、上記で定義される送電アンテナ10Dと受電アンテナ50Dとの平板回転方向の組み合わせのうち、各々(LLLL)、(LRLR)、(LRRL)、(RRRR)、(RLRL)、(RLLR)の各タイプの1層目ないし4層目のパターン配置状態を示している。
図23(a)は、比較例としてのスリットのない送電アンテナ10Cおよび受電アンテナ50C(図23(a)では、「なし」と表記)のパターン配置を示しており、図26(b)は、比較例としての、スリットが接続部とは反対側にある送電アンテナ10Fおよび受電アンテナ50F(図26(b)では、「中央」と表記)のパターン配置を示している。
図27に、図23ないし図26に示す平板回転方向の送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの伝送特性を示す。図27では、図23ないし図26に示す平板回転に、(RLLL)および(RLRR)の伝送特性を付け加えている。図27から、(RLLR)、(RLLL)、(RLRR)、(RRRR)、(LLLL)の各タイプは、S21のピーク値で比較した場合、送電アンテナ10Cおよび受電アンテナ50C(図13参照、図23(a)の「なし」)よりも伝送効率が向上することがわかる。さらに、(RLLR)、(RLLL)、(RLRR)の各タイプは、送電アンテナ10Fおよび受電アンテナ50F(図26(b)の「中央」)の伝送特性よりも伝送効率が向上することがわかる。また、(RLLR)タイプの伝送効率が最も高いことがわかる。
つぎに、本実施の形態に係る送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dのシフトずれおよび回転ずれに対する伝送特性の変化について説明する。図28(a)は、本シミュレーションにおけるシフトずれを発生させる方法、図28(b)は、回転ずれを発生させる方法を、各々説明するための図であり、各々(RLLR)タイプの送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの1層目ないし4層目を示している。
図28(a)に示すように、本実施の形態では、シフトずれを発生させる場合には、図28(a)正面視で左方向に送電アンテナ10Dをずらし、右方向に受電アンテナ50Dをずらし、合計のシフト量で所望のシフトずれ量を得る。図28(a)は、シフトずれ量を4mmとした場合の例を示している。むろん、送電アンテナ10Dあるいは受電アンテナ50Dの一方を固定し、他方を横にずらしてもよい。
図28(b)に示すように、本実施の形態では、回転ずれを発生させる場合には、送電アンテナ10Dを固定し、受電アンテナ50Dを同心に回転させて、所望の回転ずれ量を得る。図28(b)は、回転ずれ量を−90°(反時計回りの方向を正方向の回転としている)とした場合の例を示している。むろん、受電アンテナ50Dを固定し送電アンテナ10Dを回転させてもよい。
図29は、(RLLR)タイプの送電アンテナ10D−受電アンテナ50D間のシフトずれ、および回転ずれによる伝送特性の変化のシミュレーション結果を示している。図14(c)に示す送電アンテナ10Cおよび受電アンテナ50Cのシフトずれに対する伝送特性の変化量、および図15(c)に示す送電アンテナ10Cおよび受電アンテナ50Cの回転ずれに対する伝送特性の変化量と比較して、(RLLR)タイプの送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dは、シフトずれ、回転ずれに対する伝送特性の変化量(ロバスト性)は同程度に維持され、さらに伝送効率が全体的に高くなっていることがわかる。
つぎに、上記平板回転と、送電アンテナおよび受電アンテナの平行平板に流れる電流の回転方向との関係について説明するが、まず、図30を参照して、電流の方向について定義する。
図30(a)ないし(d)は、図21および図22に示す(RLLR)タイプの送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの1層目ないし4層目を示している。本実施の形態では、シミュレーション上の電源(図30(b)では、四角で囲まれた「1」で表記)の一方の端子からの交流電流の向きのうち、図30(b)に示す時計回り(右回り)の電流iTの向きを基準とする。このとき、図30に示す例では、スルーホールTHを介して1層目の平行平板34aに経路を移した電流は、右回りで回転し、平行平板34bの電流は、接続部36bを介して電源の他方の端子に戻るので、右方向に回転する。
ループ32に発生する磁界によって受電アンテナ50Dのループ72が励振されるので、ループ72には右回りの電流iRが発生する(つまり、本実施の形態では、ループ32とループ72とを対向させて配置しているので、ループ72には必ず右回りの電流が発生する)。この際、3層目では、平行平板74bを介して負荷(図30(c)では、四角で囲まれた「2」で表記)の他方の端子に流れ込むので、平行平板74bの電流の向きは右回りである。また、ループ72に流れる電流iRは、スルーホールTHを介して平行平板74aに移るので、平行平板74aの電流の向きは右回りである。
以上、(RLLR)タイプの送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの平行平板における電流の向きをまとめると、平行平板34aでは右回り、平行平板34bでは右回り、平行平板74bでは右回り、平行平板74aでは右回りとなる。以下、平行平板における電流回転の向きを、平板回転の向きに準じて、<1層目の電流の向き、2層目の電流の向き、3層目の電流の向き、4層目の電流の向き>で表すこととする。この場合、(RLLR)タイプの送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dの電流回転の向きは、<RRRR>となる。すなわち、平板回転の方向と電流回転の向きは必ずしも一致しない。
図31ないし図34に、図27に示す各平板回転方向の送電アンテナ10Dおよび受電アンテナ50Dについての電流回転の向きを示す。すなわち、図31(a)は、平板回転(LLLL)の電流回転の向き<LRRL>を、図31(b)は、平板回転(LRLR)の電流回転の向き<LLRR>を、図32(a)は、平板回転(LRRL)の電流回転の向き<LLLL>を、図32(b)は、平板回転(RRRR)の電流回転の向き<RLLR>を、図33(a)は、平板回転(RLRL)の電流回転の向き<RRLL>を、図33(b)は、平板回転(RLLR)の電流回転の向き<RRRR>を、図34(a)は、平板回転(RLLL)の電流回転の向き<RRRL>を、図34(b)は、平板回転(RLRR)の電流回転の向き<RRLR>を、各々示している。なお、図31ないし図34の各図には、つぎに説明する図35における伝送効率の比較結果(○、△、×、××)を併せて示している。
図35に、上記平板回転の方向と電流回転の向きに対応する、S21のシミュレーション結果からもとめた伝送効率の比較結果を示している。図35においては、○が良好、△が比較的良好、×が不良、××が極めて不良という結果を示している。図35の結果から、電流回転の向きで、送電アンテナおよび受電アンテナの各々に1つ以上の右回転がある場合に伝送効率が良いことがわかる(No.1,4,6−8)。また、送電アンテナおよび受電アンテナの各々で2つとも右回転の場合が最も伝送効率が高いことがわかる(No.6)。換言すると、送電アンテナおよび受電アンテナの少なくとも一方に右回転がない場合は伝送効率が悪い(No.2,3,5)。さらに、送電アンテナおよび受電アンテナの向きが逆のときに、一番伝送効率が悪いことがわかる(No.2,5)。
図35に基づく上記結果を換言すると以下のようになる。すなわち、図30(b)に示すループ32に流れる電流iTの向き(時計回り)を基準方向とすると、送電アンテナを構成する2つの平行平板の少なくとも一方における電流の回転方向が基準方向であり、かつ受電アンテナを構成する2つの平行平板の少なくとも一方における電流の回転方向が基準方向である場合に伝送効率がよい。また、送電アンテナを構成する2つの平行平板の双方における電流の回転方向が基準方向であり、かつ受電アンテナを構成する2つの平行平板の双方における電流の回転方向が基準方向である場合に伝送効率が最も高い。
なお、上記各実施の形態では、送電アンテナの平行平板と受電アンテナの平行平板とを、開口部含めて同じ形状とし、対向させる形態を例示して説明したが、これに限られない。必要に応じて、送電アンテナと受電アンテナとで平行平板の大きさを変えてもよいし、平行平板の開口部の大きさを変えてもよい。また、本実施の形態では、ループおよび平行平板の形状を矩形にした形態を例示して説明するが、これに限られず、ループおよび平行平板の形状は円形、楕円形、多角形等さまざまな形状から選択した形状としてよい。