JP2016130227A - 呼吸器ウイルス感染症の予防・治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】IFN-α asORNを安定に、かつ効率よく、治療標的部位(ウイルス感染局所)に送達・細胞内に導入して、IFN-αの発現を増強させ得るIFN-α asORNのDDS製剤、ウイルス感染症の予防及び/又は治療剤、並びにその投与プロトコルを提供すること【解決手段】インターフェロン-α mRNAに相補的な配列を含み、インターフェロン-αの発現を増強させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを封入した生体適合性ナノ粒子を含有してなる、ウイルス感染症の予防剤又及び/又は治療剤。【選択図】なし
Description
本発明は、ウイルス感染局所にアンチセンスオリゴリボヌクレオチド(asORN)の投与を可能にするDDS製剤に関する。より詳細には、インターフェロン-α mRNAに相補的な配列を含み、インターフェロン-αの発現を増強させ得るasORNを乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ナノ粒子に含有させてなる、呼吸器ウイルス感染症の予防剤又は治療剤に関する。
I型インターフェロン(IFN)は自然免疫における抗ウイルス活性の中心的な役割を担うサイトカインであり、ウイルス感染によって一過的に分泌され、周囲の細胞に働きかけて抗ウイルス活性、細胞増殖抑制活性などの多様な生理活性を発揮する。I型IFNはIFN-α、-β、-ω、-ε、-κに分けられ、このうちIFN-αには、第9染色体上に少なくとも13の機能性サブタイプをコードする遺伝子群が存在する。IFN-αおよび-βは、これらの生理活性に基づき、血漿由来の製剤および遺伝子工学的に製造された組換えタンパク製剤が、B型肝炎、C型肝炎等のウイルス感染症、あるいは腫瘍などの種々の疾患に対する治療(もしくは補助療法)に利用されている。
アンチセンスRNAとは、mRNAに転写されない鎖(逆鎖)の転写産物であり、mRNAと相補的な塩基配列を持つ。これまでの研究から、アンチセンスRNAは、mRNAの安定化もしくは不安定化、mRNAからの翻訳抑制など、異なる生理機能を有する多様な制御性RNAのグループに属することがわかっている(非特許文献1)。
木村らは、IFN-α1のアンチセンスRNA(IFN-α1 AS RNA)がIFN-α1 mRNAを安定化・発現増強すること、並びに、その機能中心である特定の二次構造をとる領域の塩基配列を持つasORNが、全長のAS RNAと同程度にmRNA発現を増加させることを見出した(特許文献1及び非特許文献2)。また、IFN-α1 AS RNAと相補的なセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α1 mRNAに対するAS RNAの安定化作用を阻害することにより、IFN-α1 mRNAを不安定化し、IFN-α1の発現を調節し得ることも見出した。
アンチセンスオリゴヌクレオチドやsiRNAなどは、標的遺伝子に対して高い選択性を有することから、核酸医薬品の開発は急速に進展している。しかしながら、核酸医薬の実用化に向けて、in vivoでの安定性と細胞への導入効率の向上が大きな課題となっている。例えば、LNAやBNA等、核酸分子自体の修飾により安定性の向上が図られている。
一方で、薬物を目標とする患部へ効果的に送達させるための輸送システム(ドラッグデリバリーシステム;DDS)も盛んに研究されている。DDS製剤は、副作用を最小限に抑えながら、薬物による治療効果を高めることができる。
本発明者らは、ろ過滅菌用メンブレンフィルターを通過可能な粒子径を有する、PLGAナノ粒子の製造方法を開発した(特許文献2)。PLGAは生体適合性かつ生体内分解性であるため、DDSのキャリアーとして有効である。
Nature Reviews Molecular Cell Biology,10:637-643 (2009)
Cellular and molecular life sciences,70(8):1451-1467(2013)
上述のように、IFN-α AS RNAの特定領域に対応するasORNが、IFN-α mRNAを安定化し、その発現を増強させることが、細胞レベルで実証されている。しかしながら、ウイルスに感染した動物の標的部位に、該asORNを効率よく送達し細胞内に導入するための投与手段は確立されておらず、該asORNのin vivoでの効果については、これまで報告されていない。
従って、本発明の目的は、IFN-α asORNを安定に、かつ効率よく、治療標的部位(ウイルス感染局所)に送達・細胞内に導入して、IFN-αの発現を増強させ得るIFN-α asORNのDDS製剤、ウイルス感染症の予防及び/又は治療剤、並びにその投与プロトコルを提供することである。
従って、本発明の目的は、IFN-α asORNを安定に、かつ効率よく、治療標的部位(ウイルス感染局所)に送達・細胞内に導入して、IFN-αの発現を増強させ得るIFN-α asORNのDDS製剤、ウイルス感染症の予防及び/又は治療剤、並びにその投与プロトコルを提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、IFN-α1 asORNを、本発明者らが以前に開発したPLGAナノ粒子に含有させることを考案した。そこでまず、IFN-αによる自然免疫応答を検討可能な動物系として、ヒトA型インフルエンザウイルス感染モルモットモデル系を確立した。さらにモルモットのIFN-α1 asORNを同定し、該asORNをPLGAナノ粒子に含有させたDDS製剤を作製して、モルモット細胞に導入、至適条件を検討した。その結果、市販の遺伝子導入試薬を用いた場合よりもIFN-α1 mRNAの発現を増大させるDDS製剤を得ることに成功した。
次に、該DDS製剤を、ヒトA型インフルエンザウイルス感染モルモットの気道内に吸入投与し、気道臓器内でのIFN-α1 mRNAの発現及び鼻腔洗浄液中のウイルス力価を測定した。その結果、IFN-α1 asORN製剤の投与により、モルモット気道におけるIFN-α1 mRNAの発現が上昇し、鼻汁中のウイルス力価を顕著に低下させることができた。前述のとおり、IFN-αには13種類のサブタイプが存在するが、それらのうちIFN-α1 mRNAの発現を増大させるだけで、十分な抗ウイルス効果が得られることが明らかとなった。
また、該製剤の投与前後で、IFN-αタンパク質の直接投与において報告されている発熱や自己免疫疾患の発症等の副作用を認めず、IFN-αタンパク質製剤に対する安全面での優位性が認められた。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
次に、該DDS製剤を、ヒトA型インフルエンザウイルス感染モルモットの気道内に吸入投与し、気道臓器内でのIFN-α1 mRNAの発現及び鼻腔洗浄液中のウイルス力価を測定した。その結果、IFN-α1 asORN製剤の投与により、モルモット気道におけるIFN-α1 mRNAの発現が上昇し、鼻汁中のウイルス力価を顕著に低下させることができた。前述のとおり、IFN-αには13種類のサブタイプが存在するが、それらのうちIFN-α1 mRNAの発現を増大させるだけで、十分な抗ウイルス効果が得られることが明らかとなった。
また、該製剤の投与前後で、IFN-αタンパク質の直接投与において報告されている発熱や自己免疫疾患の発症等の副作用を認めず、IFN-αタンパク質製剤に対する安全面での優位性が認められた。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
尚、本発明において、本発明者らは、上述の通り、インフルエンザウイルス感染モデルとしてモルモットを用いた。モルモットは、有効なインターフェロン応答遺伝子群(特に中心となって機能するMx1遺伝子)を有するため、生体レベルでインターフェロン応答を介する抗ウイルス性自然免疫応答を研究するには有用であると、本発明者らは考えたからである。本発明における抗ウイルス応答を定量的に解析した実験結果は、当該モルモット感染モデル系が、従来からインフルエンザウイルス感染実験に頻用されるマウスモデル(インターフェロン応答遺伝子群: 特に中心となって機能するMx1遺伝子に変異を有するため抗ウイルス効果を定量的に検証できず、その生死のみで判定する欠陥を有する)に対し、明白な優位性を持つことを証明した。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1] インターフェロン(IFN)-α mRNAに相補的な配列を含み、IFN-αの発現を増強させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させた生体適合性ナノ粒子を含有してなる、ウイルス感染症の予防剤及び/又は治療剤。
[2] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α mRNAのSL1および/またはSL2領域内の塩基配列に相補的な配列を含む、[1]記載の剤。
[3] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α mRNAのBulged SL領域内の塩基配列に相補的な配列を含む、[2]記載の剤。
[4] アンチセンスオリゴヌクレオチドがリボヌクレオチドである、[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[5] 複数回投与することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の剤。
[6] ウイルス感染局所に投与することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の剤。
[7] ウイルスがインフルエンザウイルスである、[1]〜[6]のいずれかに記載の剤。
[8] 気道内投与することを特徴とする、[7]記載の剤。
[9] ナノ粒子がポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)または乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)である、[1]〜[8]のいずれかに記載の剤。
[1] インターフェロン(IFN)-α mRNAに相補的な配列を含み、IFN-αの発現を増強させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させた生体適合性ナノ粒子を含有してなる、ウイルス感染症の予防剤及び/又は治療剤。
[2] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α mRNAのSL1および/またはSL2領域内の塩基配列に相補的な配列を含む、[1]記載の剤。
[3] アンチセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α mRNAのBulged SL領域内の塩基配列に相補的な配列を含む、[2]記載の剤。
[4] アンチセンスオリゴヌクレオチドがリボヌクレオチドである、[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[5] 複数回投与することを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の剤。
[6] ウイルス感染局所に投与することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の剤。
[7] ウイルスがインフルエンザウイルスである、[1]〜[6]のいずれかに記載の剤。
[8] 気道内投与することを特徴とする、[7]記載の剤。
[9] ナノ粒子がポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)または乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)である、[1]〜[8]のいずれかに記載の剤。
本発明により、核酸医薬を、気道をはじめとする標的部位に安全かつ効率よく送達・細胞内に導入することが可能となり、以て、該核酸医薬による疾患の治療及び/又は予防が可能となる。
また、本発明により、ウイルス感染モルモットモデル系はIFN-αによる自然免疫応答を定量的に検討可能な動物系として、ウイルス感染症に対する自然免疫応答の制御研究に有用であることが示された。
また、本発明により、ウイルス感染モルモットモデル系はIFN-αによる自然免疫応答を定量的に検討可能な動物系として、ウイルス感染症に対する自然免疫応答の制御研究に有用であることが示された。
本発明は、IFN-α mRNAに相補的な配列を含み、IFN-αの発現を増強させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させた生体適合性ナノ粒子を含有してなる、ウイルス感染症の予防剤及び/又は治療剤(以下、「本発明の製剤」ともいう。)を提供する。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNAに相補的な配列を含み、かつIFN-αタンパク質の発現を増強させ得るオリゴヌクレオチドであれば、いかなるものであってもよい。ここで「相補的」な配列とは、mRNAに対して完全相補的な配列のみならず、細胞の生理的な条件下でmRNAとハイブリダイズしてmRNAを安定化し得る限り、1ないし数(2, 3, 4もしくは 5)塩基のミスマッチを含んでもよい。好ましくは、IFN-α mRNAに相補的な配列とは、ストリンジェントな条件、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件(例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられる)下で、該mRNAとハイブリダイズし得る配列である。
具体的には、IFN-α mRNAに対する内因性AS RNAは、該mRNAの熱力学的に安定でない部分と相互作用して該mRNAを安定化すると考えられるので、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNA中の熱力学的に安定でない部分に相補的な配列を含むことが好ましい。熱力学的に安定でない部分としては、mRNAが二次構造をとった際に一本鎖の状態にある(例えば、ステムループ構造のループ部分にあたる)領域が挙げられる。IFN-α mRNAの二次構造は、該mRNAの塩基配列情報をもとに、mfold(GCG Software; Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 86: 7706-10 (1989) 参照)に代表されるような既存のRNA二次構造予測プログラムを用いて予測することができる。IFN-α mRNAには少なくとも13種類の機能性サブタイプが存在するが(例えば、Science, 209: 1343-1347 (1980)、Gene, 11: 181-186(1980)、Nature, 290: 20-26 (1981)、Nature, 313: 698-700 (1985)、J. Invest. Dermatol., 83: 128s-136s (1984)、J. Interferon Res., 2: 575-585 (1982)、J. Interferon Res., 13: 227-231 (1993)、J. Biol. Chem., 268: 12565-12569 (1993)、Acta Virol.,38: 101-104 (1994)、Biochim. Biophys. Acta, 1264: 363-368 (1995) 参照)、それらの塩基配列情報はいずれも容易に入手可能である。例えば、ヒトIFN-α1 mRNA(cDNA)の塩基配列は、DDBJ/EMBL/GenBank ヌクレオチドデータベースにAccession No. AB578886として登録されている。当該塩基配列を配列番号1に示す。また、実施例でターゲットとして用いたモルモットIFN-α1 mRNA(cDNA)(DDBJ/EMBL/GenBank Accession No. AB671739)の塩基配列を配列番号2に示す。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-αのいずれのサブタイプのmRNAを安定化するものであってもよいが、少なくともIFN-α1 mRNAを安定化するものであることが好ましい。後述の実施例に示されるとおり、IFN-α1 mRNAのみを安定化するだけで、インフルエンザウイルス等のウイルス感染に対して、十分な抗ウイルス効果が発揮され得る。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドに加えて、他の1以上のIFN-αサブタイプのmRNAを安定化し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含有する核酸カクテルであってもよい。
具体的には、IFN-α mRNAに対する内因性AS RNAは、該mRNAの熱力学的に安定でない部分と相互作用して該mRNAを安定化すると考えられるので、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNA中の熱力学的に安定でない部分に相補的な配列を含むことが好ましい。熱力学的に安定でない部分としては、mRNAが二次構造をとった際に一本鎖の状態にある(例えば、ステムループ構造のループ部分にあたる)領域が挙げられる。IFN-α mRNAの二次構造は、該mRNAの塩基配列情報をもとに、mfold(GCG Software; Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 86: 7706-10 (1989) 参照)に代表されるような既存のRNA二次構造予測プログラムを用いて予測することができる。IFN-α mRNAには少なくとも13種類の機能性サブタイプが存在するが(例えば、Science, 209: 1343-1347 (1980)、Gene, 11: 181-186(1980)、Nature, 290: 20-26 (1981)、Nature, 313: 698-700 (1985)、J. Invest. Dermatol., 83: 128s-136s (1984)、J. Interferon Res., 2: 575-585 (1982)、J. Interferon Res., 13: 227-231 (1993)、J. Biol. Chem., 268: 12565-12569 (1993)、Acta Virol.,38: 101-104 (1994)、Biochim. Biophys. Acta, 1264: 363-368 (1995) 参照)、それらの塩基配列情報はいずれも容易に入手可能である。例えば、ヒトIFN-α1 mRNA(cDNA)の塩基配列は、DDBJ/EMBL/GenBank ヌクレオチドデータベースにAccession No. AB578886として登録されている。当該塩基配列を配列番号1に示す。また、実施例でターゲットとして用いたモルモットIFN-α1 mRNA(cDNA)(DDBJ/EMBL/GenBank Accession No. AB671739)の塩基配列を配列番号2に示す。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-αのいずれのサブタイプのmRNAを安定化するものであってもよいが、少なくともIFN-α1 mRNAを安定化するものであることが好ましい。後述の実施例に示されるとおり、IFN-α1 mRNAのみを安定化するだけで、インフルエンザウイルス等のウイルス感染に対して、十分な抗ウイルス効果が発揮され得る。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドに加えて、他の1以上のIFN-αサブタイプのmRNAを安定化し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含有する核酸カクテルであってもよい。
好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNAのSL1(配列番号1に示されるヒトIFN-α1 mRNA塩基配列にあっては、塩基番号229〜305で示される塩基配列)および/またはSL2領域(配列番号1に示されるヒトIFN-α1 mRNA塩基配列にあっては、塩基番号308〜434で示される塩基配列)内の塩基配列に相補的な配列を含む。ヒトIFN-α1 mRNAの種々の欠失変異体を用いた実験から、該mRNAの核外輸送には、配列番号1に示される塩基配列中塩基番号208〜452で示される領域が形成する2つのステムループ(SL1およびSL2)からなる二次構造を、核外輸送因子が認識することが必要であることが明らかとなった。IFN-α mRNAに対する内因性AS RNAは、この核外輸送責任領域(CSSともいう)をターゲットとして該mRNAと相互作用することによりmRNAの分解を阻害すると考えられるので、CSS中の配列のうちで上記の条件に適合する領域、即ち、CSSが二次構造をとった際にSL1またはSL2領域内でループ構造を形成する部分の塩基配列に相補的な配列を含むヌクレオチドは、内因性IFN-α AS RNAと同様にIFN-α mRNAを安定化し、該mRNAレベルを増大させ、IFN-αタンパク質の産生を増強することができる。特に、SL2領域内のBulged SL(配列番号1に示されるヒトIFN-α1 mRNA塩基配列にあっては、塩基番号322〜352で示される塩基配列)領域内の塩基配列に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドがより好ましい。モルモットIFN-α mRNAにおける対応する領域として、後記実施例においてセンスオリゴヌクレオチドとして用いたS3 seODN(配列番号4:モルモットIFN-alpha1 cDNA, nt252-270: CAGGCAGACCTTCAACCTC)及びS4 seODN(配列番号5:モルモットIFN-alpha1 cDNA, nt 270-288: CTTCAGATCAGAGGACTCA)の塩基配列を含む領域が挙げられる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの長さに特に制限はなく、IFN-αの内因性 AS RNAの任意の断片を含むものであってよいが、配列特異性の面から、標的配列に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約12塩基以上、より好ましくは約15塩基以上含むものである。また、投与のし易さ等の面から、100塩基以下、好ましくは50塩基以下、より好ましくは25塩基以下の塩基長を有するものが挙げられる。
さらに、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドが10〜50塩基程度のオリゴヌクレオチドの場合、該ヌクレオチドは、配列非特異的な反応を起こす配列(例えば、5’-CG-3’、5’-GGGG-3’、5’-GGGGG-3’等)を含まないものから選択することが好ましく、また、IFN-α mRNA以外のRNA中に類似の相補鎖配列が存在しないものから選択することが好ましい。他のRNA中に類似の相補鎖配列が存在しないことは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの候補配列をクエリーとして、対象とする哺乳動物のゲノム配列に対して相同性検索をかけることにより確認することができる。ここで相同性検索手段としては、公知の核酸の相同性検索ソフトウェア(例えば、NCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)NBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)、GCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラム等)を用いることができる。また、ゲノムDNAデータセットとしては、例えば、Celera社が提供する全ヒトゲノムデータを用いることができる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞への導入方法に応じて種々の形態で用いられる。例えば、該アンチセンスオリゴヌクレオチドが10〜50塩基程度のオリゴヌクレオチドの場合、一本鎖DNA、一本鎖RNA、DNA/RNAキメラのいずれであってもよく、さらに公知の修飾の付加されたものであってもよいが、好ましくは一本鎖RNA(即ち、asORN)である。ここで「ヌクレオチド」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいてもよい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどによる分解を防ぐために、センスオリゴヌクレオチドを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2'位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2'-O-Me)、CH2CH2OCH3(2'-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2'-endo(S型)とC3'-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的AS RNAに対して強い結合能を付与するために、2'酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA (LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2'-endo(S型)とC3'-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的AS RNAに対して強い結合能を付与するために、2'酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA (LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-αのmRNA(cDNA)配列に基づいて、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、膜透過機能を有するペプチド(例えば、ショウジョウバエ由来のAntennapediaホメオドメイン(AntP)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のTAT、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のVP22等の細胞通過ドメイン)などで修飾することにより、該オリゴヌクレオチドの細胞への取り込みを促進することができる。
本発明の製剤において、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させる生体適合性ナノ粒子は特に制限されず、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)または乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリε-カプロラクトン、ポリβ-ヒドロキシ酪酸等の生体適合性高分子が挙げられるが、好ましくはPLA、PGA、PLGA等であり、より好ましくはPLGAである。
本発明の製剤は、例えば、特開2011-111429号公報に記載の方法に準じて調製することができる。具体的には、該方法は、生体適合性ナノ粒子を形成してナノ粒子含有溶液とするナノ粒子形成工程と、該ナノ粒子含有溶液から良溶媒を留去してナノ粒子懸濁液とする留去工程とを含む。以下、ナノ粒子形成工程、留去工程、ろ過滅菌工程までを順を追って説明する。
(ナノ粒子形成工程)
本発明の製剤に用いられる生体適合性ナノ粒子は、分子量が5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。生体適合性ナノ粒子がPLGAの場合、乳酸とグリコール酸との組成比は1:99〜99:1であればよいが、乳酸1に対して、グリコール酸1〜0.1であることが好ましく、0.5〜0.25であることがより好ましく、0.333であることが特に好ましい。
本発明の製剤に用いられる生体適合性ナノ粒子は、分子量が5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。生体適合性ナノ粒子がPLGAの場合、乳酸とグリコール酸との組成比は1:99〜99:1であればよいが、乳酸1に対して、グリコール酸1〜0.1であることが好ましく、0.5〜0.25であることがより好ましく、0.333であることが特に好ましい。
生体適合性ナノ粒子の製造方法として用いられるESD法(Emulsion Solvent Diffusion method;水中エマルジョン溶媒拡散法)は、エマルジョンを形成してから、良溶媒と貧溶媒との相互拡散を利用して薬物を球状に結晶化させる方法である。操作手順としては、まず、良溶媒中に生体適合性高分子を溶解後、この生体適合性高分子が析出しないように、薬物(本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド)溶解液を良溶媒中へ添加混合する。この生体適合性高分子と薬物とを含む良溶媒溶液を、攪拌下で貧溶媒中に滴下すると、混合液中の良溶媒(有機溶媒)が貧溶媒中へ急速に拡散移行する。その結果、貧溶媒中で良溶媒の自己乳化が起き、サブミクロンサイズの良溶媒のエマルジョン滴が形成される。さらに、良溶媒と貧溶媒の相互拡散が進むにつれ、エマルジョン滴内の生体適合性高分子並びに薬物の溶解度が低下し、最終的に、薬物を含有した球形結晶粒子の生体適合性ナノ粒子が生成する。
生体適合性ナノ粒子の粒子径は、含有する本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内導入(IFN-α mRNAの安定化・発現増強)効率に影響する。この粒子径及びナノ粒子の分散状態は、使用する良溶媒及び貧溶媒の種類、並びに良溶媒及び貧溶媒に対する生体適合性高分子濃度と密接な関係がある。
良溶媒に対する生体適合性高分子濃度は、1mg/mL以上、6mg/mL以下とすることが好ましい。
アセトンとエタノールを含む良溶媒を用いることで、良溶媒に対するPLGA濃度を実用的な範囲に維持しつつ、ナノ粒子の粒子径を加圧ろ過法により滅菌可能なレベル(例えば、粒子径200nm以下)であって、含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを効率よく標的部位(ウイルス感染局所)に送達し、かつ標的細胞内に導入し得る(その結果、標的であるmRNAを安定化・発現増強し得る)レベルまで小径化が可能である。良溶媒中のアセトンとエタノールの混合比には特に制限はないが、エタノール濃度を10体積%以上とすることが好ましい。必要に応じて良溶媒中に水等のアセトンとエタノール以外の溶媒を混合しても良い。
アセトンとエタノールを含む良溶媒を用いることで、良溶媒に対するPLGA濃度を実用的な範囲に維持しつつ、ナノ粒子の粒子径を加圧ろ過法により滅菌可能なレベル(例えば、粒子径200nm以下)であって、含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを効率よく標的部位(ウイルス感染局所)に送達し、かつ標的細胞内に導入し得る(その結果、標的であるmRNAを安定化・発現増強し得る)レベルまで小径化が可能である。良溶媒中のアセトンとエタノールの混合比には特に制限はないが、エタノール濃度を10体積%以上とすることが好ましい。必要に応じて良溶媒中に水等のアセトンとエタノール以外の溶媒を混合しても良い。
貧溶媒に対する生体適合性高分子濃度は、1mg/mL以上、6mg/mL以下とすることが好ましい。
生体適合性ナノ粒子を医薬製剤として使用する場合、通常、乾燥させたナノ粒子を分散媒中に再懸濁させるが、貧溶媒としてポリビニルアルコール(PVA)水溶液を用いることにより、ナノ粒子表面をPVAで被覆することができる。貧溶媒中のポリビニルアルコール濃度には特に制限はないが、10重量%以下とすることが好ましい。
生体適合性ナノ粒子を医薬製剤として使用する場合、通常、乾燥させたナノ粒子を分散媒中に再懸濁させるが、貧溶媒としてポリビニルアルコール(PVA)水溶液を用いることにより、ナノ粒子表面をPVAで被覆することができる。貧溶媒中のポリビニルアルコール濃度には特に制限はないが、10重量%以下とすることが好ましい。
生体適合性ナノ粒子の粒子径は、含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを効率よく標的部位(ウイルス感染局所)に送達し、かつ標的細胞内に導入し得る(その結果、標的であるmRNAを安定化・発現増強し得る)限り特に制限はないが、例えば、最終製剤における平均粒子径として500nm以下とすることが好ましく、300nm以下がさらに好ましい。好ましい一実施態様においては、平均粒子径は60〜150nm、より好ましくは70〜120nmであり得る。PLGAナノ粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは水溶液中でアニオン性分子として存在するが、ESD法を用いてアニオン性分子を含有した生体適合性ナノ粒子を製造しようとすると、良溶媒中に溶解混合した水溶性のアニオン性分子が貧溶媒中に漏出、溶解してしまい、ナノ粒子だけが沈積するため、アニオン性分子がほとんど含有されない場合がある。これに対し、上記ナノ粒子形成工程においてカチオン性高分子を貧溶媒中に添加すると、ナノ粒子表面を被覆したカチオン性高分子がエマルジョン滴表面に存在するアニオン性分子と相互作用し、貧溶媒中へのアニオン性分子の漏出を抑制することができる。
生体適合性ナノ粒子製剤における薬物の含有率(生体適合性高分子重量に対する薬物の重量%)が高いほど、製剤中に配合するナノ粒子量を少なくできるため、一般的には好ましいが、薬物含有量には限界がある。薬物をナノ粒子に含有させる場合は、製造上の理由から含有率に比例してナノ粒子の粒子径も大きくなるため、ナノ粒子が細胞内まで到達し難くなる。そのため、製剤における薬物含有率は、通常0.5重量%以上30重量%以下である。好ましい一実施態様においては、本発明の製剤中のアンチセンスオリゴヌクレオチドの含有率は、1〜2重量%、好ましくは1.2〜1.8重量%、より好ましくは1.4〜1.7重量%であり得る。
粒子内のオリゴヌクレオチドの含有率は、定量分光光度計により定量することができる。
粒子内のオリゴヌクレオチドの含有率は、定量分光光度計により定量することができる。
また、生体内の細胞膜は負に帯電しているが、従来の球形晶析法で製造された生体適合性ナノ粒子の表面は、一般的に負のゼータ電位を有しているため、電気的反発力によりナノ粒子の細胞接着性が悪くなるという問題点があった。従って、カチオン性高分子を用いてナノ粒子表面に正のゼータ電位をもたせることで、細胞膜に対するナノ粒子の接着性を増大させ、アニオン性分子の細胞内移行性を向上させることもできる。
本発明に用いられるカチオン性高分子としては、キトサン及びキトサン誘導体、セルロースに複数のカチオン基を結合させたカチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミノ化合物、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジニウムクロリド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物(DAM)、アルキルアミノメタクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(DAA)、細胞膜(生体膜)の構成成分であるリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)と重合性に優れたメタクリロイル基とを併せ持つ2-メタクリロイルオキシエチルホスホルコリン(MPC)を構成単位とする高分子に第4級アンモニウム塩等のカチオン基を結合させたカチオン性高分子(例えばMPCと2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー)等が挙げられる。好ましくはキトサンである。
生体適合性ナノ粒子の表面電荷(ゼータ電位)は、含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを効率よく標的部位(ウイルス感染局所)に送達し、かつ標的細胞内に導入し得る(その結果、標的であるmRNAを安定化・発現増強し得る)限り特に制限はないが、0mV以上とすることが好ましく、5mV以上がさらに好ましい。好ましい一実施態様においては、生体適合性ナノ粒子の表面電荷は、20〜55mV、好ましくは20〜40mV、より好ましくは25〜37mVであり得る。
(留去工程)
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させた球形結晶粒子の生体適合性ナノ粒子の生成後、良溶媒である有機溶媒を減圧留去し、ナノ粒子懸濁液とする。この留去工程において、良溶媒である有機溶媒を生体適合性高分子のガラス転移点を超える温度で長時間に亘って減圧留去すると、ナノ粒子を構成する生体適合性高分子の剛性が低下して流動性が増すことによりナノ粒子同士が融着し、留去工程に続くろ過滅菌工程において加圧ろ過特性が著しく低下してしまう。そのため、留去工程はできるだけ低温で、且つ短時間で行う必要がある。具体的には、45℃以下で30時間以内に行うことが好ましい。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させた球形結晶粒子の生体適合性ナノ粒子の生成後、良溶媒である有機溶媒を減圧留去し、ナノ粒子懸濁液とする。この留去工程において、良溶媒である有機溶媒を生体適合性高分子のガラス転移点を超える温度で長時間に亘って減圧留去すると、ナノ粒子を構成する生体適合性高分子の剛性が低下して流動性が増すことによりナノ粒子同士が融着し、留去工程に続くろ過滅菌工程において加圧ろ過特性が著しく低下してしまう。そのため、留去工程はできるだけ低温で、且つ短時間で行う必要がある。具体的には、45℃以下で30時間以内に行うことが好ましい。
(ろ過滅菌工程)
留去工程で得られた生体適合性ナノ粒子懸濁液を精製水で希釈し、孔径0.2μmのろ過滅菌用メンブレンフィルターが装着されたろ過装置に充填した後、窒素ガスで加圧しながらろ過滅菌することができる。
上記の方法により製造された生体適合性ナノ粒子は、平均粒子径が200nm以下であり、水中ではある程度凝集した状態にあるものの、孔径0.2μmのメンブレンフィルターに対し、加圧ろ過後の生体適合性ナノ粒子の回収率は90%以上と高い値を示す。
留去工程で得られた生体適合性ナノ粒子懸濁液を精製水で希釈し、孔径0.2μmのろ過滅菌用メンブレンフィルターが装着されたろ過装置に充填した後、窒素ガスで加圧しながらろ過滅菌することができる。
上記の方法により製造された生体適合性ナノ粒子は、平均粒子径が200nm以下であり、水中ではある程度凝集した状態にあるものの、孔径0.2μmのメンブレンフィルターに対し、加圧ろ過後の生体適合性ナノ粒子の回収率は90%以上と高い値を示す。
ろ過滅菌された生体適合性ナノ粒子をそのまま乾燥させて用いるか、或いは必要に応じて複合化する。ナノ粒子の複合化方法としては、凍結乾燥法が好適に用いられる。また、流動層乾燥造粒法(例えば、アグロマスタAGM(ホソカワミクロン(株)製を使用して流動造粒を行うこと)または乾式機械的粒子複合化法(例えば、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株)製)を使用して圧縮力および剪断力を加えること)により複合化しても良い。特に、流動層乾燥造粒法の中でも粒子化する材料を含む混合物を流動ガス中に噴霧する噴霧乾燥式流動層造粒法を用いた場合、時間と手間のかかる凍結乾燥工程を省略可能となり、複合粒子を容易に且つ短時間で製造できるため工業化にも有利となる。この複合化により、使用前まではナノ粒子が取り扱いの容易な凝集粒子となっており、用時に分散媒に再懸濁することで、ナノ粒子が再分散して高反応性等の特性を復元可能となる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、IFN-α mRNAを安定化することにより、IFN-α mRNAおよびIFN-αタンパク質の発現を増強することができる。IFN-αは、抗ウイルス作用、細胞増殖抑制作用、ナチュラルキラー細胞の活性化作用などの多様な生理活性を有するので、本発明の製剤は、IFN-αの発現増強剤として、種々の疾患の予防および/または治療に利用することができる。そのような疾患としては、例えば、インフルエンザ等の気道系ウイルス感染症、B型肝炎、C型肝炎(活動性、非活動性)、ヘルペス感染症(性器ヘルペス、角膜ヘルペス炎、口腔ヘルペスなど)、尖圭コンジローマ、AIDS等のウイルス感染症、腎臓癌、腎細胞癌、乳癌、膀胱癌、基底細胞癌、頭頸部癌、頸管異形成、皮膚悪性腫瘍、カポジ肉腫、悪性黒色腫、幼児血管腫、慢性肉芽腫症、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、毛様細胞白血病、T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)骨髄症、多発性骨髄腫、リンパ腫などの癌、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、シェーグレン症候群、多発性硬化症(MS)、口内炎、性器疣贅、膣内疣贅、赤血球増加症、血小板増加症、菌状息肉症、突発性難聴、老年性円盤状黄斑変性症、ベーチェット病などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の製剤は、単独で、あるいは薬理学上許容されうる担体とともに常套手段に従って製剤化し、医薬組成物として使用することができる。例えば、上記乾燥もしくは凍結乾燥した本発明の製剤を、例えば水もしくはそれ以外の生理学的に許容し得る液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等)等の水性溶媒との無菌性懸濁液とすることができる。該懸濁液は適宜、自体公知の生理学的に許容し得る賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等とともに、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって経口剤(例えば錠剤、カプセル剤等)あるいは非経口剤として製造することができる。非経口剤としては、例えば、注射剤、エアロゾル剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含し得る。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。エアロゾル製剤はジクロロジフロロメタン、プロパン、窒素などのような圧縮された許容しうる抛射薬内に入れることができる。あるいはネブライザーやアトマイザーのような非圧縮性製剤用医薬品として製剤化してもよい。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射剤用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例:エタノール)、ポリアルコール(例:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例:ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、本発明の製剤には、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸など)などをさらに配合してもよい。
本発明の製剤が懸濁液の形態である場合、該製剤中に含有されるアンチセンスオリゴヌクレオチド含有PLGAナノ粒子の量は、該粒子が凝集しない程度で、かつ十分な薬効を発揮し得る量であれば特に制限はなく、通常20w/v%以下であり、例えば10w/v%以下が挙げられる。好ましい一実施態様においては、本発明の懸濁液剤中に含有されるアンチセンスオリゴヌクレオチド含有PLGAナノ粒子の量は、1〜5w/v%、好ましくは1〜3w/v%であり得る。
本発明の製剤の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの1回投与量として通常0.1〜1000μg、好ましくは1〜100μg、より好ましくは10〜50μgを、1日1回もしくは数回投与することができる。本発明の製剤は、複数回投与することが好ましく、例えば、上記投与を2〜7日間実施することができる。投与ルートは全身投与(例、静脈内投与、筋肉内投与等)又は局所投与(例、気道内投与等)のいずれも用いることができるが、投与量を少なくし、副作用を低減する等の目的のためには、ウイルス感染局所への投与が好ましい。例えば、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス等の呼吸器ウイルス感染症に対しては、気道内投与が好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 モルモットIFNA1遺伝子の決定及び同IFN-α1 アンチセンスRNA (AS RNA)が認識するモルモットIFN-α1 mRNA部位の同定
(1)材料
モルモットseODN:S2、S3、S4、S5、S6
細胞:ヒトインフルエンザウイルスA/PR/8/34 (PR8, H1N1)あるいはEMCV (ATCC VR-129B)感染モルモット胎児線維芽細胞(104C1, ATCC CRL-1405)、ウイルス非感染104C1細胞
(1)材料
モルモットseODN:S2、S3、S4、S5、S6
細胞:ヒトインフルエンザウイルスA/PR/8/34 (PR8, H1N1)あるいはEMCV (ATCC VR-129B)感染モルモット胎児線維芽細胞(104C1, ATCC CRL-1405)、ウイルス非感染104C1細胞
(2)操作手順
モルモットIFNA1遺伝子の決定
モルモットゲノムのバイオインフォマティクス解析から得られたモルモットIFNA1候補遺伝子 (表1)を、それぞれモルモット104C1細胞において発現させ、ヒトインフルエンザウイルスA/PR/8/34 (PR8, H1N1)並びにEMCV (ATCC VR-129B)に対する抗ウイルス効果を検討 (図1)した。その結果、各ウイルス感染に対し最大の防御効果を示したCandidate 1遺伝子をモルモット(gp) IFNA1遺伝子(DDBJ/ EMBL/ GenBank accession number, AB671739)と決定した。
モルモットIFNA1遺伝子の決定
モルモットゲノムのバイオインフォマティクス解析から得られたモルモットIFNA1候補遺伝子 (表1)を、それぞれモルモット104C1細胞において発現させ、ヒトインフルエンザウイルスA/PR/8/34 (PR8, H1N1)並びにEMCV (ATCC VR-129B)に対する抗ウイルス効果を検討 (図1)した。その結果、各ウイルス感染に対し最大の防御効果を示したCandidate 1遺伝子をモルモット(gp) IFNA1遺伝子(DDBJ/ EMBL/ GenBank accession number, AB671739)と決定した。
モルモットIFN-α1 AS RNAが認識するモルモットIFN-α1 mRNA部位の同定
RNA二次構造予測ソフトmfoldを用いて、モルモットIFNA1遺伝子から同mRNAの二次構造を予測した。予測した構造の自由エネルギー値から、安定度の高い順に10の候補構造を選択し、これらに共通するステムループ構造の存在を確認した (図2、丸で囲った領域)。次いで、ヒトIFN-a1 AS RNAがmRNAを認識する部位を決定した方法(WO 2011/046221参照)にならい、この共通ステムループ構造中の一本鎖領域の塩基配列からなるseODNのS2-S6(配列番号3〜7)をデザインした (図3A)。 これらをウイルス非感染のモルモット104C1細胞に導入したところ、図3Bで示したS2、S4並びにS6の導入細胞において、モルモットIFN-a1 AS RNAの内因性発現の特異的な抑制が観察された。すなわち、S2、S4、S6のseODNがモルモットIFN-α1 AS RNAとDNA-RNA二本鎖を形成する結果、細胞内のRNase Hが二本鎖中のAS RNA部分を消化し、その発現が抑制される事が示された。この実験結果は、モルモットIFN-α1 mRNA上のS2、S4、S6の塩基配列の部位においてAS RNAはmRNAを認識し、ヒトIFN-α1 AS RNAの場合と同様、その安定性を制御する可能性を示唆する。
RNA二次構造予測ソフトmfoldを用いて、モルモットIFNA1遺伝子から同mRNAの二次構造を予測した。予測した構造の自由エネルギー値から、安定度の高い順に10の候補構造を選択し、これらに共通するステムループ構造の存在を確認した (図2、丸で囲った領域)。次いで、ヒトIFN-a1 AS RNAがmRNAを認識する部位を決定した方法(WO 2011/046221参照)にならい、この共通ステムループ構造中の一本鎖領域の塩基配列からなるseODNのS2-S6(配列番号3〜7)をデザインした (図3A)。 これらをウイルス非感染のモルモット104C1細胞に導入したところ、図3Bで示したS2、S4並びにS6の導入細胞において、モルモットIFN-a1 AS RNAの内因性発現の特異的な抑制が観察された。すなわち、S2、S4、S6のseODNがモルモットIFN-α1 AS RNAとDNA-RNA二本鎖を形成する結果、細胞内のRNase Hが二本鎖中のAS RNA部分を消化し、その発現が抑制される事が示された。この実験結果は、モルモットIFN-α1 mRNA上のS2、S4、S6の塩基配列の部位においてAS RNAはmRNAを認識し、ヒトIFN-α1 AS RNAの場合と同様、その安定性を制御する可能性を示唆する。
実施例2 PLGA-asORNの作製及びasORN導入効果の検証
(1)材料
モルモットseODN:S3、S4
細胞: PR8ウイルス感染モルモット104C1細胞
PLGA基材(PLGA-7520(和光純薬工業株式会社); 乳酸・グリコール酸重合比=3:1、平均分子量20,000Da)
(1)材料
モルモットseODN:S3、S4
細胞: PR8ウイルス感染モルモット104C1細胞
PLGA基材(PLGA-7520(和光純薬工業株式会社); 乳酸・グリコール酸重合比=3:1、平均分子量20,000Da)
(2)操作手順
PR8ウイルス感染104C1細胞へのセンスオリゴデオキシヌクレオチド(seODN)の導入
続いて、実施例1で決定したseODN塩基配列のうちS3とS4を選択し、これと相補的なAS RNA上の塩基配列(すなわちasORN;この配列はAS RNAがmRNAを安定化する機能ドメインに該当する)を過剰発現することで、IFN-α1 mRNAの発現増加効果の確認を計画した。その目的で、モルモットS3及びS4 seODNを、PR8ウイルス感染モルモット104C1細胞にまず導入し、ウイルス感染下におけるIFN-α1 AS RNAの発現抑制が同mRNA発現に及ぼす効果を検討した。導入にあたっては、104C1細胞を1ウエルあたり3.7 x 105 cellsになるように6穴ウエルに播種し、37℃で16時間培養した。次いで、各3μgのS3及びS4 seODNを最終200μlになるようにRPMI-1640培養液で希釈し、これを各3μlのMATra-ATM溶液(IBA GmbH, Germany)に加え、撹拌後室温で20分間留置した。次いで、マグネットプレート上に静置した6穴プレート中の104C1細胞に、上記希釈液を順次加え、さらに室温で15分間静置後37℃で6時間培養した。6時間後、PR8ウイルスを、Multiplicity of infection(MOI): 25.5になるように感染し、感染後24、36、48時間にモルモットIFN-α1 AS並びにmRNA分子数を定量した。 結果を図4に示す。S4はヒトの場合と同様、モルモットIFN-α1 AS RNAの発現を、最大値に到達後低下させた。その最大値は陰性対照のS(-)を上回り、その後の減少度もより顕著であった。この傾向は、IFN-α1 mRNAの発現においても同様に観察された。この結果は、ヒト用seODNによるヒトIFN-α1 AS RNAの発現抑制実験結果(Kimura et al., CMLS, 2013)から、ウイルス感染後36時間までは、感染に伴うAS RNAの転写活性化がS4によるAS RNAの発現抑制効果を上回っていたが、感染36時間以降は、両者の関係が逆転し、AS RNAの発現レベルが低下したため、同mRNAを安定化する効果が損なわれたことによると考えられた。
これに対し、S3を導入したPR8ウイルス感染細胞においては、非感染細胞では観察されなかったIFN-α1 AS RNA、mRNA共に、陰性対照を上回る経時的な増加が観察された。これは、感染細胞においては、モルモット用S3 seODNはモルモットIFN-α1 AS RNAと複合体を形成し、この複合体形成がAS RNA分解性のマイクロRNA (miR)やRNA結合タンパク質の結合を阻害する結果、ウイルス感染により発現が増大し、かつ分解を免れたIFN-α1 AS RNA によるmRNAの安定化ならびにIFN-α1 mRNA発現レベルの増大をもたらすと考えた。
そこで、これらモルモット用seODNをデザインしたモルモットIFN-α1 mRNAの塩基配列に対応するAS RNA上の塩基配列から、モルモットasORN3(配列番号8)およびasORN4(配列番号9)を作製し、その過剰発現実験を次ぎに行った。
PR8ウイルス感染104C1細胞へのセンスオリゴデオキシヌクレオチド(seODN)の導入
続いて、実施例1で決定したseODN塩基配列のうちS3とS4を選択し、これと相補的なAS RNA上の塩基配列(すなわちasORN;この配列はAS RNAがmRNAを安定化する機能ドメインに該当する)を過剰発現することで、IFN-α1 mRNAの発現増加効果の確認を計画した。その目的で、モルモットS3及びS4 seODNを、PR8ウイルス感染モルモット104C1細胞にまず導入し、ウイルス感染下におけるIFN-α1 AS RNAの発現抑制が同mRNA発現に及ぼす効果を検討した。導入にあたっては、104C1細胞を1ウエルあたり3.7 x 105 cellsになるように6穴ウエルに播種し、37℃で16時間培養した。次いで、各3μgのS3及びS4 seODNを最終200μlになるようにRPMI-1640培養液で希釈し、これを各3μlのMATra-ATM溶液(IBA GmbH, Germany)に加え、撹拌後室温で20分間留置した。次いで、マグネットプレート上に静置した6穴プレート中の104C1細胞に、上記希釈液を順次加え、さらに室温で15分間静置後37℃で6時間培養した。6時間後、PR8ウイルスを、Multiplicity of infection(MOI): 25.5になるように感染し、感染後24、36、48時間にモルモットIFN-α1 AS並びにmRNA分子数を定量した。 結果を図4に示す。S4はヒトの場合と同様、モルモットIFN-α1 AS RNAの発現を、最大値に到達後低下させた。その最大値は陰性対照のS(-)を上回り、その後の減少度もより顕著であった。この傾向は、IFN-α1 mRNAの発現においても同様に観察された。この結果は、ヒト用seODNによるヒトIFN-α1 AS RNAの発現抑制実験結果(Kimura et al., CMLS, 2013)から、ウイルス感染後36時間までは、感染に伴うAS RNAの転写活性化がS4によるAS RNAの発現抑制効果を上回っていたが、感染36時間以降は、両者の関係が逆転し、AS RNAの発現レベルが低下したため、同mRNAを安定化する効果が損なわれたことによると考えられた。
これに対し、S3を導入したPR8ウイルス感染細胞においては、非感染細胞では観察されなかったIFN-α1 AS RNA、mRNA共に、陰性対照を上回る経時的な増加が観察された。これは、感染細胞においては、モルモット用S3 seODNはモルモットIFN-α1 AS RNAと複合体を形成し、この複合体形成がAS RNA分解性のマイクロRNA (miR)やRNA結合タンパク質の結合を阻害する結果、ウイルス感染により発現が増大し、かつ分解を免れたIFN-α1 AS RNA によるmRNAの安定化ならびにIFN-α1 mRNA発現レベルの増大をもたらすと考えた。
そこで、これらモルモット用seODNをデザインしたモルモットIFN-α1 mRNAの塩基配列に対応するAS RNA上の塩基配列から、モルモットasORN3(配列番号8)およびasORN4(配列番号9)を作製し、その過剰発現実験を次ぎに行った。
モルモットasORNの過剰発現
seODNと同様にして、モルモットasORN3、4をPR8ウイルス感染モルモット104C1細胞に導入した。結果を図5に示す。ヒトasORNの場合と同じく (Kimura et al., CMLS, 2013)、モルモットasORN4は、IFN-α1 AS RNAの発現レベルに影響すること無く、同mRNAの発現レベルを増大させた。
これに対し、モルモットasORN3は、IFN-α1 AS RNAの発現レベルを増大することにより、同mRNAの発現を増加させた。その増加度は、asORN4による増加を上回り、より長時間継続した。そこで、次項では、asORN3をPLGAナノ粒子に封入し、実験に供した。
上述のasORN3導入効果は、上記S3 seODN導入実験について考察したのと同様に、asORN3がAS RNA分解性のmiRやRNA結合タンパク質を吸着する結果、分解を免れたAS RNAがIFN-α1 mRNAを安定化し、その発現レベルを増大させることによるためと考えられた。
seODNと同様にして、モルモットasORN3、4をPR8ウイルス感染モルモット104C1細胞に導入した。結果を図5に示す。ヒトasORNの場合と同じく (Kimura et al., CMLS, 2013)、モルモットasORN4は、IFN-α1 AS RNAの発現レベルに影響すること無く、同mRNAの発現レベルを増大させた。
これに対し、モルモットasORN3は、IFN-α1 AS RNAの発現レベルを増大することにより、同mRNAの発現を増加させた。その増加度は、asORN4による増加を上回り、より長時間継続した。そこで、次項では、asORN3をPLGAナノ粒子に封入し、実験に供した。
上述のasORN3導入効果は、上記S3 seODN導入実験について考察したのと同様に、asORN3がAS RNA分解性のmiRやRNA結合タンパク質を吸着する結果、分解を免れたAS RNAがIFN-α1 mRNAを安定化し、その発現レベルを増大させることによるためと考えられた。
モルモットasORN封入PLGAナノ粒子の作製及び導入
1.条件検討
モルモット用配列として決定されたasORN3とncasORNをそれぞれ封入したナノ粒子及び、比較対照用のBlankナノ粒子を作製した。本ナノ粒子は、ESD法によりPLGA基材(PLGA-7520; 乳酸・グリコール酸重合比=3:1、平均分子量20,000Da)を用いて、以下のようにして作製した。
0.25mgのasORN3を精製水0.625mLに溶解させた。5mgのPLGAをその良溶媒であるアセトン4.5mLに溶解してポリマー溶液とした。そこに、前記asORN3水溶液とエタノール1.25mLを添加、混合し混合良溶媒とした。次に、0.1重量%のポリビニルアルコール(PVA:ゴーセノールEG-05、日本合成化学製)水溶液12.5g中に2重量%キトサン(PROTASAN UP CL113、Novamatorix製)水溶液125mgを添加、混合し、PLGAの貧溶媒とした。この貧溶媒中に前記混合良溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で滴下し、良溶媒の貧溶媒中への拡散現象によってasORN3封入PLGAナノ粒子の懸濁液を得た。続いて、減圧下アセトン及びエタノールを留去した後、得られたナノ粒子の懸濁液にasORN3 0.05mg及びマンニトール(三菱商事フードテック製)5mgをさらに添加し、-45℃で凍結乾燥し粉末化して、asORN3含有PLGAナノ粒子粉末を得た。
1.条件検討
モルモット用配列として決定されたasORN3とncasORNをそれぞれ封入したナノ粒子及び、比較対照用のBlankナノ粒子を作製した。本ナノ粒子は、ESD法によりPLGA基材(PLGA-7520; 乳酸・グリコール酸重合比=3:1、平均分子量20,000Da)を用いて、以下のようにして作製した。
0.25mgのasORN3を精製水0.625mLに溶解させた。5mgのPLGAをその良溶媒であるアセトン4.5mLに溶解してポリマー溶液とした。そこに、前記asORN3水溶液とエタノール1.25mLを添加、混合し混合良溶媒とした。次に、0.1重量%のポリビニルアルコール(PVA:ゴーセノールEG-05、日本合成化学製)水溶液12.5g中に2重量%キトサン(PROTASAN UP CL113、Novamatorix製)水溶液125mgを添加、混合し、PLGAの貧溶媒とした。この貧溶媒中に前記混合良溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で滴下し、良溶媒の貧溶媒中への拡散現象によってasORN3封入PLGAナノ粒子の懸濁液を得た。続いて、減圧下アセトン及びエタノールを留去した後、得られたナノ粒子の懸濁液にasORN3 0.05mg及びマンニトール(三菱商事フードテック製)5mgをさらに添加し、-45℃で凍結乾燥し粉末化して、asORN3含有PLGAナノ粒子粉末を得た。
作製したPLGAナノ粒子の物性を表2に示す。モルモット用asORN3封入PLGAナノ粒子の平均粒子径を動的光散乱法(測定装置:Microtrac UPA)により測定すると157nmであり、asORN3の含有率を定量分光光度計(測定装置:V-530、日本分光株式会社)により定量すると1.31%(重量%;以下同じ)であった。また、本ナノ粒子は、カチオン性高分子のキトサンで修飾しており、粒子の表面荷電を表すゼータ電位は正電荷を示した。
続いて、細胞への導入効果を検証した。段落[0054]に示したように継代培養した104C1細胞をRPMI-1640培地で洗浄後、1ウエルあたり800μlのRPMI-1640培地を添加した。これに対し、封入asORN量またはncasORN量が3μgに相当するPLGAナノ粒子量を希釈、浮遊させた2回蒸留水各200μlを適宜加え、その後37℃、5% CO2環境下に、4時間静置した。その後、ウシ胎仔血清を20% v/v含む 2x RPMI-1640培地1 mlを加え、37℃、5% CO2環境下に各asORNあるいはncasORN導入細胞を6時間培養した。 その後、これらの細胞に対し、段落[0054]に記したように、PR8ウイルスを感染させた。このPR8ウイルス感染モルモット104C1細胞において、PLGAナノ粒子に封入したasORNを直接、あるいはasORN単体を市販の遺伝子導入試薬(MATra)を用いて導入した場合に観察される、モルモットIFN-α1 mRNA発現レベルの変動を検討した。その結果を図6に示す。mRNA分子の発現レベルは、asORN導入方法によらず、経時的に増大した。インフルエンザウイルス感染後36時間におけるモルモットIFN-α1 mRNAの分子数は、PLGA法: 455±90.67に対し、MATra法: 591±31.64であった。しかしながら、ncasORN導入による陰性対照群は、PLGA法で137±38.59、MATra法では265±43.57であったため、IFN-α1 mRNA分子の純増加度(陰性対照に対する増加割合)は、MATra法の2.23倍(= 591÷265)に対し、PLGA法が3.32倍 (= 455÷137)と優位であった。
そこで、MATra法を上回るモルモットIFN-α1 mRNAの発現を得る目的で、PLGAナノ粒子へのasORN3含有率(1.31%, 1.98%, 2.07%)、同粒子表面荷電値(ゼータ電位;41mV, 37mV, 49mV)ならびに細胞に導入する総核酸量(3μg, 6μg, 12μg, 24μg)を変えたPLGAナノ粒子を作製し(表2および表3)、それらを用いて同mRNAの発現量に及ぼす効果を検討した。各PLGAナノ粒子は、上記と同様に作製した。
図6の結果に従い、PR8ウイルス感染後36時間の時点で実施した予備実験から、従来粒子(1.31%, 41mV, 3μg)に比較し、PLGAナノ粒子表面荷電高値(49mV)ならびに導入総核酸量の増加(12μg, 24μg)はモルモットIFN-α1 mRNAの発現をむしろ低下させた。
この結果を参考にして、表面荷電値を30mVないしは38mVに設定したPLGAナノ粒子を用い、asORN3含有率 (1.46%, 2.10%)ならびに導入総核酸量(3μg, 6μg)を比較検討した(表4)。結果を図7に示す。核酸の導入量3μgにおいて、asORN3含有率1.46%のPLGAナノ粒子は、単位細胞総RNAあたりMATra法による2797±109.91分子を上回る4519±178.75分子のモルモットIFN-α1 mRNAを有意に誘導した(p < 0.01)。これに対し、核酸の導入量を6μgにあげた場合、同粒子により誘導されたIFN-α1 mRNA分子数は、MATra法を下回る2190±143.31に低下した。含有率を2.10%に上げた場合、核酸導入量3μgにおいて1818±82.15, 6μgにおいて2808±100.75の各IFN-α1 mRNA分子が誘導されるに過ぎず、後者においてMATra法に比肩するものの、ともに1.46%, 3μgの条件で使用したPLGAナノ粒子による結果には及ばなかった。
2.抗ウイルス効果判定用PLGAナノ粒子の作製
上記、条件検討の結果より、PR8ウイルス感染モルモット104C1細胞において、対照として用いたMATra法を上回るIFN-α1 mRNAを発現誘導するPLGAナノ粒子がasORN3を含有する条件は、含有率:1.46%; 表面荷電値:30mV、導入総核酸量:3μgであった。なお、導入総核酸量の増加に伴う誘導mRNA分子数の減少は、導入した過剰な核酸による細胞障害の結果と思われる。しかしながら、導入核酸量を3μgに統一した細胞において、asORN3含有率の増大(1.46%から2.10%)に伴いIFN-α1 mRNAの発現が低下する理由として、現時点ではさらなる検証が必要ではあるが、2.10%粒子より1.46%粒子において、平均粒子径が108nmから78nmに縮小したことがあげられる可能性はある。
また、陰性対照として用いたncasORNを封入したPLGAナノ粒子を導入した細胞において、検討したどのasORN含有率ならびに導入総核酸量においても、ncasORNをMATra法で導入した細胞を上回る非特異的なモルモットIFN-α1 mRNAの発現誘導が観察された。図6で示したように、PLGAナノ粒子単体を導入した細胞において、IFN-α1 mRNAの非特異的な発現誘導が観察された事から、今回ncasORNを封入したPLGAナノ粒子においても同様な現象が再現されたのかもしれない。しかしながら、先にあげた含有率:1.46%; 表面荷電値: 30mV、導入総核酸量: 3μgの条件下において、asORN3はncasORNに対し、有意にモルモットIFN-α1 mRNAの発現を増大した。従って、この条件下でPLGAナノ粒子を作製し、モルモット気道における抗ウイルス効果を検証することとした。各PLGAナノ粒子は、上記と同様に作製した。作製したPLGAナノ粒子の物性を表5に示す。
上記、条件検討の結果より、PR8ウイルス感染モルモット104C1細胞において、対照として用いたMATra法を上回るIFN-α1 mRNAを発現誘導するPLGAナノ粒子がasORN3を含有する条件は、含有率:1.46%; 表面荷電値:30mV、導入総核酸量:3μgであった。なお、導入総核酸量の増加に伴う誘導mRNA分子数の減少は、導入した過剰な核酸による細胞障害の結果と思われる。しかしながら、導入核酸量を3μgに統一した細胞において、asORN3含有率の増大(1.46%から2.10%)に伴いIFN-α1 mRNAの発現が低下する理由として、現時点ではさらなる検証が必要ではあるが、2.10%粒子より1.46%粒子において、平均粒子径が108nmから78nmに縮小したことがあげられる可能性はある。
また、陰性対照として用いたncasORNを封入したPLGAナノ粒子を導入した細胞において、検討したどのasORN含有率ならびに導入総核酸量においても、ncasORNをMATra法で導入した細胞を上回る非特異的なモルモットIFN-α1 mRNAの発現誘導が観察された。図6で示したように、PLGAナノ粒子単体を導入した細胞において、IFN-α1 mRNAの非特異的な発現誘導が観察された事から、今回ncasORNを封入したPLGAナノ粒子においても同様な現象が再現されたのかもしれない。しかしながら、先にあげた含有率:1.46%; 表面荷電値: 30mV、導入総核酸量: 3μgの条件下において、asORN3はncasORNに対し、有意にモルモットIFN-α1 mRNAの発現を増大した。従って、この条件下でPLGAナノ粒子を作製し、モルモット気道における抗ウイルス効果を検証することとした。各PLGAナノ粒子は、上記と同様に作製した。作製したPLGAナノ粒子の物性を表5に示す。
実施例3 asORN封入PLGAナノ粒子投与による抗ウイルス効果の判定
(1)材料
モルモット:4週齢のSPFグレードHartley系のメスモルモット
asORN3を封入したPLGAナノ粒子:平均粒子径:106nm、含有率:1.61%、表面荷電値:35mV
(1)材料
モルモット:4週齢のSPFグレードHartley系のメスモルモット
asORN3を封入したPLGAナノ粒子:平均粒子径:106nm、含有率:1.61%、表面荷電値:35mV
(2)操作手順
4週齢のSPFグレードHartley系のメスモルモットを、購入後1週間飼育した。この間に、下痢、発熱、体重減少等の異常を来さないことを確認した。PLGAナノ粒子の投与前(ウイルス感染6時間前)に直腸温、体重、脾臓重量を測定し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用いて3%w/vとなるように浮遊・調製したPLGA-asORN (100μl/匹)を鼻腔から気道内に吸入・投与した。陰性対照として、ncasORNを同一条件で封入したPLGA-ncasORNを投与した群を設けた。これらのモルモットに対し、投与後6時間にPR8ウイルス(106PFU/匹)を同様に吸入・投与し、ウイルス感染を開始した。PLGA-asORNの投与量に依存した抗ウイルス効果の変動を観察する目的で、PR8ウイルス感染開始18時間後に、同一量のPLGA-asORNを再投与した群を設けた。PLGA-asORNの1回投与群、2回投与群、陰性対照投与群(各2匹/群)は、感染前6時間と感染開始後24時間、36時間、48時間の時点で、直腸温と体重を測定後に鼻腔洗浄液を回収した。この洗浄液は、ドライアイスを用いて、直ちに凍結保存した。モルモットは、ペントバルビタールナトリウム(200mg/kg)の腹腔内投与により安楽死させた後に、喉頭部から気管支分岐部迄の気道臓器ならびに脾臓を取り出し、前者はRNA分解酵素阻害剤に浸した後、また後者は重量を測定後に、ドライアイスを用いて凍結保存した。回収した気道臓器は、ホモゲナイザーを用いて破砕、均一化後、細胞総RNAを抽出し、RT-qPCR法によりIFN-α1 mRNA量を測定後、検量線を用いて分子数を決定した。鼻腔洗浄液中に含まれるPR8ウイルス力価は、MDCK細胞を用いたプラーク法により決定した。
4週齢のSPFグレードHartley系のメスモルモットを、購入後1週間飼育した。この間に、下痢、発熱、体重減少等の異常を来さないことを確認した。PLGAナノ粒子の投与前(ウイルス感染6時間前)に直腸温、体重、脾臓重量を測定し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用いて3%w/vとなるように浮遊・調製したPLGA-asORN (100μl/匹)を鼻腔から気道内に吸入・投与した。陰性対照として、ncasORNを同一条件で封入したPLGA-ncasORNを投与した群を設けた。これらのモルモットに対し、投与後6時間にPR8ウイルス(106PFU/匹)を同様に吸入・投与し、ウイルス感染を開始した。PLGA-asORNの投与量に依存した抗ウイルス効果の変動を観察する目的で、PR8ウイルス感染開始18時間後に、同一量のPLGA-asORNを再投与した群を設けた。PLGA-asORNの1回投与群、2回投与群、陰性対照投与群(各2匹/群)は、感染前6時間と感染開始後24時間、36時間、48時間の時点で、直腸温と体重を測定後に鼻腔洗浄液を回収した。この洗浄液は、ドライアイスを用いて、直ちに凍結保存した。モルモットは、ペントバルビタールナトリウム(200mg/kg)の腹腔内投与により安楽死させた後に、喉頭部から気管支分岐部迄の気道臓器ならびに脾臓を取り出し、前者はRNA分解酵素阻害剤に浸した後、また後者は重量を測定後に、ドライアイスを用いて凍結保存した。回収した気道臓器は、ホモゲナイザーを用いて破砕、均一化後、細胞総RNAを抽出し、RT-qPCR法によりIFN-α1 mRNA量を測定後、検量線を用いて分子数を決定した。鼻腔洗浄液中に含まれるPR8ウイルス力価は、MDCK細胞を用いたプラーク法により決定した。
(3)結果
mRNA発現量
気道組織におけるモルモットIFN-α1 mRNAの発現を図8に示す。陰性対照のncasORNと比較して、PR8ウイルス感染後24、36、48時間を経過した各時点で全て、気道組織中に有意にIFN-α1 mRNAの発現を認め、その発現コピー数は時間の経過とともに増加した。また、18時間の時点で再度投与した群は、asORN3を1回投与に比較し、その後の経過においてmRNA分子の増加数は全て上回っていた。
mRNA発現量
気道組織におけるモルモットIFN-α1 mRNAの発現を図8に示す。陰性対照のncasORNと比較して、PR8ウイルス感染後24、36、48時間を経過した各時点で全て、気道組織中に有意にIFN-α1 mRNAの発現を認め、その発現コピー数は時間の経過とともに増加した。また、18時間の時点で再度投与した群は、asORN3を1回投与に比較し、その後の経過においてmRNA分子の増加数は全て上回っていた。
PR8ウイルス力価
各時間で回収した鼻腔洗浄液中のPR8ウイルス力価を図9に示す。陰性対照のncasORN並びにasORN3の1回投与群と比較して、asORN3の2回投与群におけるIFN-α1 mRNA分子数の増過度から予想される通り、PR8ウイルス感染後24時間即ちIFN-α1 mRNA分子数増加の前倒し効果が出現する時点に一致して有意なウイルス力価の低下が確認された。
各時間で回収した鼻腔洗浄液中のPR8ウイルス力価を図9に示す。陰性対照のncasORN並びにasORN3の1回投与群と比較して、asORN3の2回投与群におけるIFN-α1 mRNA分子数の増過度から予想される通り、PR8ウイルス感染後24時間即ちIFN-α1 mRNA分子数増加の前倒し効果が出現する時点に一致して有意なウイルス力価の低下が確認された。
副作用
PLGAナノ粒子の投与前(ウイルス感染6時間前)に測定した直腸温、体重、脾臓重量の値を100%として、各感染後の経過時間における値を相対値として求め、その時間的変動を比較した。直腸温、モルモット体重、脾臓重量の経時的変化を図10−12に示す。PR8ウイルス感染前後において、陰性対照投与群、asORN3の1回ならびに2回投与群の直腸温、モルモット体重、脾臓重量間に、統計学的に有意な差は認められなかった。この結果より、PLGAナノ粒子をDDSとしてasORN3を気道投与し、IFN-αタンパク質の発現を早期に促しても、ヒトIFN-αタンパク質の投与に伴い観察される副作用:発熱(市販後の調査症例の40.8%に出現)、自己免疫疾患(0.1%未満の症例で、脾腫を伴うSLEを合併する報告がある)等の有意な出現は確認できなかった。
PLGAナノ粒子の投与前(ウイルス感染6時間前)に測定した直腸温、体重、脾臓重量の値を100%として、各感染後の経過時間における値を相対値として求め、その時間的変動を比較した。直腸温、モルモット体重、脾臓重量の経時的変化を図10−12に示す。PR8ウイルス感染前後において、陰性対照投与群、asORN3の1回ならびに2回投与群の直腸温、モルモット体重、脾臓重量間に、統計学的に有意な差は認められなかった。この結果より、PLGAナノ粒子をDDSとしてasORN3を気道投与し、IFN-αタンパク質の発現を早期に促しても、ヒトIFN-αタンパク質の投与に伴い観察される副作用:発熱(市販後の調査症例の40.8%に出現)、自己免疫疾患(0.1%未満の症例で、脾腫を伴うSLEを合併する報告がある)等の有意な出現は確認できなかった。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。よって、本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。即ち、本発明は添付の「特許請求の範囲」の精神及び範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
ここで述べられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
本発明の製剤は、核酸医薬を、気道をはじめとする標的部位に安全かつ効率よく送達・細胞内に導入することができるので、該核酸医薬による疾患の治療及び/又は予防剤として有用である。
Claims (9)
- インターフェロン(IFN)-α mRNAに相補的な配列を含み、IFN-αの発現を増強させ得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有させた生体適合性ナノ粒子を含有してなる、ウイルス感染症の予防剤及び/又は治療剤。
- アンチセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α mRNAのSL1および/またはSL2領域内の塩基配列に相補的な配列を含む、請求項1記載の剤。
- アンチセンスオリゴヌクレオチドが、IFN-α mRNAのBulged SL領域内の塩基配列に相補的な配列を含む、請求項2記載の剤。
- アンチセンスオリゴヌクレオチドがリボヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
- 複数回投与することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。
- ウイルス感染局所に投与することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤。
- ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の剤。
- 気道内投与することを特徴とする、請求項7記載の剤。
- ナノ粒子がポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)または乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015005435A JP2016130227A (ja) | 2015-01-14 | 2015-01-14 | 呼吸器ウイルス感染症の予防・治療剤 |
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