JP2016050278A - γ−リノレン酸の精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、γ−リノレン酸を、煩雑な工程を経ずに高純度に精製する簡易な方法を提供することを課題とする。【解決手段】γ−リノレン酸を精製する際に、尿素付加処理を行う出発原料として、微生物発酵油を使用し、γ−リノレン酸を含有する微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換し、該低級アルコールエステルに尿素アルコール溶液を添加してγ−リノレン酸以外の脂肪酸の脂肪酸エステルの尿素付加体を形成させ、尿素付加体非含有画分を回収することで、高純度なγ−リノレン酸が得られる。【選択図】図5

Description

本発明は、γ−リノレン酸(GLA)の精製方法に関する。
γ−リノレン酸は、癌細胞増殖抑制作用、精子活力向上作用、皮膚障害改善作用等の種々の生理活性を有するものであることから、医薬品、健康食品または化粧品等の製造に幅広く使用されている。そして、医薬品、健康食品または化粧品等の製造に使用されるためには、高度に精製されていることが望ましい。しかし、エイコサペンタエン酸(EPA)等のn3系脂肪酸の精製方法は種々検討されているが、γ−リノレン酸等のn6系脂肪酸の精製方法は、あまり検討がなされていない。
特許文献1には、水産動物油のケン化物を酸触媒の存在下で低級アルコールとエステル化した後、これを尿素付加処理し、該付加物を除去して得た非尿素付加物である脂肪酸の低級アルコールエステルを真空蒸留することによる、エイコサペンタエン酸またはその低級アルコールエステルの製造方法が、記載されている。
特許文献2には、植物油脂から脂肪酸アルコールエステルとグリセリンとを含有する組成物を生成し、該組成物から分子蒸留等により脂肪酸アルコールエステルを分別し、該脂肪酸アルコールエステルに尿素付加処理を施し、得られた非尿素付加体を液体クロマトグラフィーにより分画して、エイコサテトラエン酸アルコールエステルを分取する方法が、記載されている。
尿素付加処理によるγ−リノレン酸の精製においては、これまで、植物油を原料とする方法が知られている(特許文献3)。特許文献3には、スグリ属の果実の種子またはそれから抽出した油をケン化して得られた脂肪酸混合物を、低級アルカノールに溶解した尿素により処理し、形成された尿素複合体を分離除去し、γ−リノレン酸豊富化フラクションを液相から集めることを特徴とする、γ−リノレン酸を選択的に豊富化する方法が、記載されている。しかし、スグリ属の果実種子油には、γ−リノレン酸と同じ不飽和度であるα−リノレン酸が、γ−リノレン酸とほぼ同程度もしくはそれ以上含まれており、さらに、リノール酸が約40〜50%も含まれている。
特公平03−047259号公報 特開平04−100898号公報 特開昭61−095095号公報
本発明は、γ−リノレン酸を、煩雑な工程を経ることなく高純度に精製する簡易な方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、γ−リノレン酸を精製する際に、尿素付加処理を行う出発原料として、微生物発酵油が適していることを見出し、γ−リノレン酸を含有する微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換し、該低級アルコールエステルに尿素アルコール溶液を添加してγ−リノレン酸以外の脂肪酸
の脂肪酸エステルの尿素付加体を形成させ、尿素付加体非含有画分を回収することで、効率よくγ−リノレン酸が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]γ−リノレン酸を含有する微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換し、
該低級アルコールエステルに尿素アルコール溶液を添加してγ−リノレン酸以外の脂肪酸の脂肪酸エステルの尿素付加体を形成させ、
該尿素付加体非含有画分を回収することを特徴とする、
γ−リノレン酸の精製方法。
[2]前記微生物発酵油が、α−リノレン酸を実質的に含まないものである、[1]に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[3]前記微生物発酵油中のリノール酸含有量は、γ−リノレン酸含有量よりも少ないことを特徴とする、[1]または[2]に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[4]前記微生物発酵油が、Mucor属由来またはMortierella属由来のものである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[5]前記微生物発酵油が、Mucor circinelloides由来のものである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[6]前記低級アルコールエステルと、前記尿素アルコール溶液中の尿素との割合が、低級アルコールエステル:尿素=1:4〜6(重量比)である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[7]前記尿素アルコール溶液中の尿素とアルコールとの割合が、尿素:アルコール=1:5〜7.5(重量比)である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[8]前記尿素アルコール溶液中のアルコールと、前記低級アルコールエステルとの割合が、低級アルコールエステル:アルコール=1:20〜40(重量比)である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[9]前記尿素アルコール溶液が、炭素数3以下の低級アルコールに尿素を溶解したものである、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[10]前記低級アルコールエステルに変換する前に、前記微生物発酵油を分子蒸留により前処理することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
[11]前記尿素付加体非含有画分を、さらに液体クロマトグラフィーにより分画することを特徴とする、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
尿素付加処理を行う出発原料として、微生物発酵油を使用すると、γ−リノレン酸を高純度に得ることができる。また、該尿素付加処理により高純度でγ−リノレン酸が得られるため、分子蒸留等の前処理や液体クロマトグラフィー等による精製処理を省略することができ、簡易なステップでγ−リノレン酸を得ることができる。
尿素のメタノールとエタノールに対する溶解度曲線。 尿素/脂肪酸低級アルコールエステルの変化に伴う、γ−リノレン酸エチルエステルの純度と収率の変化を示す図。 メタノール/尿素の変化に伴う、γ−リノレン酸エチルエステルの純度と収率の変化を示す図。 尿素/脂肪酸低級アルコールエステルの変化に伴う、γ−リノレン酸エチルエステルの純度と収率の変化を示す図。 尿素/脂肪酸低級アルコールエステルの変化に伴う、γ−リノレン酸エチルエステルの純度と収率の変化を示す図。
本発明のγ−リノレン酸の精製方法は、γ−リノレン酸を含有する微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換し、該低級アルコールエステルに尿素アルコール溶液を添加してγ−リノレン酸以外の脂肪酸の脂肪酸エステルの尿素付加体を形成させ、該尿素付加体非含有画分を回収することを特徴とする。
本発明の精製方法における微生物発酵油とは、発酵により微生物が産生する油脂分のことであり、微生物を培養することにより得ることができる。当該微生物発酵油としては、微生物発酵により生産された、γ−リノレン酸と他の脂肪酸を含む油脂である限り、制限なく使用できるが、精製効率の観点から、α−リノレン酸を実質的に含まず、また、リノール酸含有量がγ−リノレン酸含有量より少ないか、微生物発酵油中のリノール酸含有量が15%以下、10%以下、または5%以下であるものが好ましい。微生物発酵油は微生物の菌体を含んでもよい。
そのような微生物発酵油としては、たとえば、Mucor circinelloidesもしくはMucor javanicus等のMucor属、または、Mortierella alpinaMortierella isabellinaMortierella ramaniana var.angrisporaMortierella elongataMortierella exigua、もしくはMortierella hygrophila等のMortierella属の微生物を培養して得られる発酵油が挙げられる。これらの微生物は、いずれもγ−リノレン酸を含む各種脂肪酸を生産する能力を有し、菌体内に当該脂肪酸を蓄積することが知られている。
上記微生物の培養方法は、当該微生物の培養方法として公知のもの、たとえば、特許第4294099号公報または特開昭63−283589号公報に記載の方法等が挙げられるが、上記微生物がよく生育して、γ−リノレン酸を産生する培養方法であれば制限なく用いられる。例えば、炭素源としてグルコースや澱粉を用い、窒素源として硫安、尿素の他、脱脂大豆粉,脱脂米糖などの有機窒素源を用いたものが挙げられる。必要に応じて、リン酸塩、マグネシウム塩,マンガン塩,またはカルシウム塩などの金属塩を添加した培地で、pH、温度を制御しながら培養すればよい。pHは4〜6が好ましく、pH5がより好ましい。温度は20〜40℃が好ましく、30℃がより好ましい。また、上記微生物由来の発酵油が市販されており、それらを用いてもよい。
本発明の精製方法においては、まず、微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換する。
微生物発酵油中の脂肪酸はグリセリドの形で存在するため、ケン化により遊離脂肪酸とした後にエステル化反応を行ってもよいし、エステル交換法によりグリセリドを低級アルコールエステル化してもよい。
ケン化は、公知の方法、たとえば酵素法またはアルカリ法等により行うことができる。
酵素法は、たとえば、微生物発酵油にリパーゼ溶液を加えて撹拌し、30℃で48時間以上静置した後、70℃以上に加熱することにより、ケン化物を得る方法である。
アルカリ法は、アルカリ性アルコール溶液またはアルカリ水を用いて行うことができる。アルカリ性アルコール水(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)を使用する場合には、微生物発酵油の3倍以上のアルコールに微生物発酵油を分散後、高濃度のアルカリ水を加えて2〜6時間室温で撹拌する。次に、硫酸水で酸性としながらアルコール含量50%以下にすると、ケン化物を得ることができる。アルカリ水(苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ソーダ等の水溶液)を使用する場合は、微生物発酵油のケン化価の2倍以上のアルカリ水を加え、70〜120℃で数時間撹拌後に冷却し、酸で中和することによりケン化物を得ることができる。
上記で得られたケン化物のエステル化は、ケン化物に低級アルコール、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、イソブタノール、またはブタノール等の炭素数4以下のアルコールを加え、適切な触媒下で50〜120℃、0.5〜5時間加熱することにより行うことができる。ケン化物である脂肪酸と低級アルコールとは等モルであることが好ましいが、目安としては、ケン化物の3倍以上の容量の低級アルコールを用いるのがよい。触媒は、酸触媒を用いることができ、たとえば、硫酸またはスルホン酸等が挙げられ、全体量の1〜10%程度用いるのがよい。
微生物発酵油中にグリセリドの形で存在する脂肪酸を、ケン化の工程を経ずに、直接、低級アルコールエステルに変換するには、グリセリドのアルコリシスによりエステル交換を行ってもよい。
当該アルコリシスは常法に従って行うことができる。たとえば、触媒を0.1%以上含有する低級アルコールを微生物発酵油に加えて、20〜80℃、好ましくは40〜60℃で0.5〜4時間撹拌することにより、行うことができる。低級アルコールとしては、炭素数4以下のアルコール、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、イソブタノール、またはブタノール等が挙げられる。触媒としては、たとえば、アルカリ金属のアルコラート、水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、酸化物、水素化物又はフェノラート等を用いることができるが、ナトリウムアルコラートまたは水酸化カリウムが好ましく、ナトリウムアルコラートがより好ましい。触媒として水酸化カリウムを用いる場合、微生物発酵油の1〜20倍、好ましくは10倍の容量の低級アルコールを用い、触媒としてナトリウムアルコラートを用いる場合は、微生物発酵油の0.1〜10倍、好ましくは0.4倍の容量の低級アルコールを用いることができる。
上記により得られた脂肪酸の低級アルコールエステルに、尿素アルコール溶液を添加して、尿素付加体を形成させる尿素付加処理を行う。尿素アルコール溶液は、尿素を低級アルコールに溶解したものである。尿素アルコール溶液を調製するために使用する低級アルコールとしては、尿素を溶解し得るものであれば限定されないが、炭素数3以下のアルコールが好ましく、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロピルアルコールが挙げられるが、尿素の溶解度の点でメタノールが好ましい。尿素アルコール溶液中の尿素と低級アルコールとの割合は、純度と収率を勘案すると、重量比で尿素:アルコール=1:5.0〜7.5が好ましく、1:5.5〜7.5がより好ましく、1:5.5〜6.0がさらに好ましい。
上記により得られた脂肪酸の低級アルコールエステルと、前記尿素アルコール溶液中の尿素との割合は、重量比で低級アルコールエステル:尿素=1:4〜6が好ましく、1:5〜6がより好ましい。
また、前記尿素アルコール溶液中のアルコールと、前記低級アルコールエステルとの割合は、重量比で低級アルコールエステル:アルコール=1:20〜40が好ましく、1:30がより好ましい。
尿素付加処理としては、脂肪酸の低級アルコールエステルに、尿素アルコール溶液を添加し、1分〜5時間、好ましくは5分〜3時間、より好ましくは5分〜1時間、加熱撹拌する。加熱温度は、40〜80℃が好ましく、50〜80℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。その後、0〜25℃、好ましくは0〜10℃で、1〜15時間、好ましくは5〜12時間静置することにより、脂肪酸エステルの尿素付加体が析出する。尿素付加体形成能は脂肪酸の不飽和度に依存することが知られており、微生物発酵油中の脂肪酸は、不飽和度がγ−リノレン酸より低いものが多いため、γ−リノレン酸エステル以外の脂肪酸エステルの尿素付加体が析出し、γ−リノレン酸エステルは尿素付加体をほとんど形成しない。
このγ−リノレン酸エステル以外の脂肪酸エステルの尿素付加体を含む溶液から、濾過または遠心分離等により、γ−リノレン酸エステル以外の脂肪酸エステルの尿素付加体含有画分を分離し、γ−リノレン酸エステルを含有する画分、すなわち、γ−リノレン酸エステル以外の脂肪酸エステルの尿素付加体非含有画分(ろ液または遠心分離後の上清)を回収する。回収した尿素付加体非含有画分中のアルコールを留去して得た濃縮物に、水と非水溶性有機溶媒とを加えて混合した後静置すると、γ−リノレン酸エステルは非水溶性有機溶媒層に、尿素は水層に、それぞれ移行するので、非水溶性有機溶媒層を回収することでγ−リノレン酸エステルが得られる。水層は、中和するまで水で洗浄してもよい。
前記非水溶性有機溶媒としては、たとえば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素類、ならびにクロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類を挙げることができ、特にn−ヘキサンが好ましく用いられる。
回収した非水溶性有機溶媒層に真空乾燥等を行い、非水溶性有機溶媒を留去すると、高純度のγ−リノレン酸が得られる。このようにして得られたγ−リノレン酸は高純度であるため、このまま医薬品、健康食品または化粧料等の製造に使用してもよいが、さらに純度の高さを求める場合には、液体クロマトグラフィー法(特開2006−347984号公報、特開平07−126160号公報等参照)等によりさらに精製してもよい。
液体クロマトグラフィーとして、具体的には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることが好ましい。カラム充填剤としては、シリカゲルまたはオクタデシルシラン等の通常HPLCに用いられるものであれば制限なく使用できる。溶離液としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、酢酸、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジクロロメタン、アセトン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、n−ヘキサンまたはイソオクタン等から選ばれる2種以上の溶液の混和液を使用することができる。γ−リノレン酸含有溶液は、そのまま、またはベンゼン、アセトンまたはヘキサン等の溶媒に溶解させてカラムに注入した後、溶離液を流し続けて、カラム下端からの流出液を分画することにより、より高純度なγ−リノレン酸エステルを得ることができる。そして、γ−リノレン酸エステルを加水分解することでγ−リノレン酸が得られる。
また、本発明の精製方法において、微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換する前に、微生物発酵油中の脂肪酸以外の成分、たとえば、ステロール類、ワックス、または色素等の不純物を除去してもよい。除去方法としては、公知の各種分離精製方法を用いることができるが、分子蒸留が好ましい。不飽和脂肪酸は多くの活性メチレン基を有しており、通常の蒸留等を行うと変性、分解が免れないが、分子蒸留は高真空下で行うため、比較的低温で処理できる点で好ましいからである。
分子蒸留は、公知の分子蒸留装置を用いて行えばよい。その例としては、遠心薄膜式分子蒸留装置、回転薄膜式分子蒸留装置、流下薄膜式分子蒸留装置等を挙げることができる。その中でも、薄層分子蒸留器(柴田科学社製)を用いるのが好ましい。分子蒸留の条件は、γ−リノレン酸を回収できる限りにおいて制限はないが、たとえば、蒸留機内の真空度は圧力表示で少なくとも0.1torr以下、好ましくは0.05torr以下、特に好ましくは0.01torr以下で実施することができる。分子蒸留装置の蒸発面の温度は20〜100℃、好ましくは40〜80℃、より好ましくは60℃にコントロールするとよい。
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、これら実施例にのみ、限定を受けないことは言うまでもない。
1.微生物発酵油の生産
糸状菌の一種であるムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)を用いてγ−リノレン酸を発酵生産した。
ムコール・シルシネロイデス HUT 1121(微工研菌寄 FERM BP−3883)の菌体を、表1に示す条件下、発酵槽で培養し、得られたγ−リノレン酸含有菌体を、濾過によって回収した。この回収した菌体を12%の濃度になるように、再度、精製水に分散させた。得られた菌体含有液を、γ−リノレン酸を含有する微生物発酵油として、以下の工程において使用した。
2.微生物発酵油からのγ−リノレン酸の精製
(1) 脂肪酸のエステル化
ナトリウムアルコラートによって、微生物発酵油中の脂肪酸のエステル交換によるメチルエステル化を行った。原料は上記で得られた微生物発酵油を用いて、分析は薄層クロマトグラフィー(TLC MERCK社製 RP−18)で行った。
・3%NaOMe・メタノール(原料に対して0.4倍量(容量比))
上記触媒を用い、室温で1時間反応させ、経時変化を薄層クロマトグラフィーで解析した。薄層クロマトグラフィーの展開溶媒はヘキサン−エーテル−酢酸(80:20:1)を用いた。ヘキサン、エーテル、酢酸は和光純薬製HPLCグレードを用いた。
次にエチルエステル化として、下記の触媒を用いて50℃で反応させた。その他の条件は上記と同じである。
・1%KOH/エタノール(原料に対して10倍量(容量比))
・3%NaOEt・エタノール(原料に対して0.4倍量(容量比))
(2) γ−リノレン酸の尿素付加処理
上記により得られたγ−リノレン酸エチルエステルを含む脂肪酸エチルエステルを原料として、尿素と、活性化剤としてメタノールを添加し、三者の最適比率に関する検討を行った。
尿素付加処理の活性化剤は、原料と尿素が互いに溶解することで付加反応を促進するもので、尿素付加対象が脂肪酸の場合、アルコールが好適に用いられる。ここでは、尿素の溶解度からメタノールを選択した。尿素のメタノールとエタノールに対する溶解度曲線を図1に示す。
なお、本実施例の目標純度は医薬品化を目的とするため、95%を設定した。下記に、これまで95%の純度を得るために行われていたスキーム並びに各工程での純度、収率を示す。
<95%γ−リノレン酸エチルエステル取得スキーム>
30%γ−リノレン酸含有微生物発酵油
↓エステル化
↓ KOH,PTS法

30%γ−リノレン酸エチルエステル含有微生物発酵油
↓分子蒸留(流下薄膜式)−I

30%γ−リノレン酸エチルエステル
↓尿素付加処理(1:4:10)−I
↓尿素付加処理(1:4:10)−II
↓ 二回の尿素付加処理後の収率 60%

95%γ−リノレン酸エチルエステル
↓分子蒸留(流下薄膜式)−II

95%γ−リノレン酸エチルエステル
トータル収率 50%
上記スキームで一回目の分子蒸留は尿素付加処理での妨害がない程度まで不純物を除去する。その後、尿素付加処理により濃縮された不純物を完全に除去するために最後にもう一度分子蒸留にかける。二度の分子蒸留にかける手間を尿素付加処理により効率化することを検討した。
上記において得られたγ−リノレン酸エチルエステルを含む脂肪酸エチルエステルを、分子蒸留せずに原料として使用し、尿素付加処理条件の検討を行った。上記において得られた30%γ−リノレン酸エチルエステルを含む脂肪酸の組成を表2に示す。
尿素付加処理の手順を以下に示す。
30%γ−リノレン酸エチルエステルを含む脂肪酸エチルエステルを秤量し、それに任意の比率で尿素とメタノールを加えた。リフラックスをかけながら70℃の条件下で10分間撹拌した。赤色のメタノール不溶画分が沈降してくるが、メタノール溶液画分が均一になっていればよい。加熱撹拌終了後、室温で20分静置した。その後4℃で一晩静置した。
同時に尿素飽和のメタノールを作り、4℃の冷蔵庫に一晩放置した。この飽和尿素メタノールは尿素付加体の濾過の際の洗浄に用いた。洗浄の際、メタノールをそのまま用いると、尿素付加体を形成した尿素が溶解し、尿素付加体がブレークしてしまうためである。
翌朝、30%γ−リノレン酸エチルエステルを含む脂肪酸エチルエステルに尿素とメタノールを加えた溶液を、速やかにブフナ漏斗で吸引濾過して尿素付加体を除去した後、該溶液の2倍容の飽和尿素メタノールで洗浄した。ろ液を十分大きなナスフラスコにいれ、メタノールを留去した。メタノールは完全に留去する必要はなく、次の水−ヘキサンによる二層分離においてメタノールの影響が出ない程度で十分である。
メタノールを留去したろ液は、水−ヘキサンを加えて分液漏斗にとり、さらに2規定の塩酸を少量加え、ヘキサン層に尿素付加体非含有画分のγ−リノレン酸エチルエステルを移行させた。その後、数回、水層が中和するまで水で洗った。pH試験紙で中和が確認されたら、それぞれヘキサン層を回収してエバポレーターでヘキサンを留去した。これらを真空乾燥に20分以上かけて完全に溶媒フリーとした後、秤量した。次にヘプタデカン酸エチルエステルを内部標準としてγ−リノレン酸の絶対含量を求め、秤量結果から純度と収率を求めた。前記ヘプタデカン酸エチルエステルは、市販のヘプタデカン酸を硫酸−エタノール法によりエチルエステル化し、日本練水株式会社製小型分取液体クロマトグラフィーで再度精製したものを用いた。
3.結果
メタノール/尿素=2.5または5の時、尿素/原料(脂肪酸低級アルコールエステル)の値を1から6まで変えた時のγ−リノレン酸エチルエステル純度並びに回収率を図2に
示した。尿素/脂肪酸低級アルコールエステルの増加に伴い、純度は上がるが回収率は下がった。純度は95%で頭打ちとなった。概ね尿素/脂肪酸低級アルコールエステル=4で純度はピークに達するので、次に尿素/脂肪酸低級アルコールエステル=4でメタノール/尿素の値を2.5,5,7.5に上げていったときのγ−リノレン酸エチルエステル純度並びに回収率を求め、図3に示した。その結果、メタノール/尿素=5から7.5にすることで回収率は飛躍的に伸び、γ−リノレン酸エチルエステル純度93.8%、回収率74%となった。
このことから、尿素/脂肪酸低級アルコールエステル=4〜6、メタノール/尿素5.0〜7.5が精製に最適であることが分かった。
そこで、尿素/脂肪酸低級アルコールエステル=2〜8、メタノール/脂肪酸低級アルコールエステル=20〜40で条件を変え、同様の実験を行った。結果を図4に示した。図4中、「M/E」は「メタノール/脂肪酸低級アルコールエステル」の意味である。この結果から、尿素/脂肪酸低級アルコールエステル=5.5、メタノール/脂肪酸低級アルコールエステル=30の時に、目標であったγ−リノレン酸エチルエステル95%以上、回収率60%以上が達成されることがわかった。メタノール/脂肪酸低級アルコールエステル=30の時の測定結果を、横軸に尿素/脂肪酸低級アルコールエステルを取って示すと、図5のようになる。この図5から、メタノール/脂肪酸低級アルコールエステル=30のときには、メタノール/尿素=5.5〜7.5が精製に適していることが示されている。
今回用いた原料はγ−リノレン酸エチルエステルを30%含有している(表2)。その他の成分としてはオレイン酸エチルエステル(不飽和度1)が主成分であり、不飽和度が3であるγ−リノレン酸とは尿素付加体形成能の差がある程度大きかったため、1回の尿素付加処理での分離が容易であったと考えられる。また、γ−リノレン酸エチルエステルについで尿素付加体形成能が弱いリノール酸エチルエステル(不飽和度2)は、13%程度と比較的少量である。そのため一回の尿素付加処理で高純度化が可能となった。よって、微生物発酵油は、尿素付加処理によるγ−リノレン酸の精製に適した脂肪酸組成であるといえる。
尿素付加処理を行う出発原料として、微生物発酵油を使用することにより、γ−リノレン酸を高純度に得ることができる。また、該尿素付加処理により高純度でγ−リノレン酸が得られるため、分子蒸留等の前処理や液体クロマトグラフィー等による精製処理を省略することができ、簡易なステップでγ−リノレン酸を得ることができる。得られた高純度なγ−リノレン酸は、医薬品、健康食品または化粧料等の製造に好適である。

Claims (11)

  1. γ−リノレン酸を含有する微生物発酵油中の脂肪酸を低級アルコールエステルに変換し、
    該低級アルコールエステルに尿素アルコール溶液を添加してγ−リノレン酸以外の脂肪酸の脂肪酸エステルの尿素付加体を形成させ、
    該尿素付加体非含有画分を回収することを特徴とする、
    γ−リノレン酸の精製方法。
  2. 前記微生物発酵油が、α−リノレン酸を実質的に含まないものである、請求項1に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  3. 前記微生物発酵油中のリノール酸含有量は、γ−リノレン酸含有量よりも少ないことを特徴とする、請求項1または2に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  4. 前記微生物発酵油が、Mucor属由来またはMortierella属由来のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  5. 前記微生物発酵油が、Mucor circinelloides由来のものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  6. 前記低級アルコールエステルと、前記尿素アルコール溶液中の尿素との割合が、低級アルコールエステル:尿素=1:4〜6(重量比)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  7. 前記尿素アルコール溶液中の尿素とアルコールとの割合が、尿素:アルコール=1:5〜7.5(重量比)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  8. 前記尿素アルコール溶液中のアルコールと、前記低級アルコールエステルとの割合が、低級アルコールエステル:アルコール=1:20〜40(重量比)である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  9. 前記尿素アルコール溶液が、炭素数3以下の低級アルコールに尿素を溶解したものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  10. 前記低級アルコールエステルに変換する前に、前記微生物発酵油を分子蒸留により前処理することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
  11. 前記尿素付加体非含有画分を、さらに液体クロマトグラフィーにより分画することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のγ−リノレン酸の精製方法。
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