図1は、本発明の第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20の構成の概略を示す構成図である。第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20は、複数の仮想無線アクセスポイントVAPをアクセスポイントとしてメッシュ状に構成された無線メッシュネットワーク22と、無線メッシュネットワーク22と無線接続されていると共にインターネット10に有線接続された複数のインターネットゲートウェイIGWと、無線メッシュネットワーク22におけるデータ転送経路とこのデータ転送経路における利用チャネルを設定するオープンフローコントローラOFCと、を備え、モバイル端末12を無線メッシュネットワーク22を介してインターネット10に接続するシステムとして構成されている。
各仮想無線アクセスポイントVAPは、図中右下に示すように、複数の無線LANアクセスポイントAPを有線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続されることにより、接続した無線LANアクセスポイントAPの数と同数のチャネルを同時利用できるアクセスポイントとして構成されており、オープンフロー(OpenFlow)におけるオープンフロースイッチ(OpenFlowスイッチ)機能を実装している。各無線LANアクセスポイントAPは、予め定められた周波数帯による無線送受信が可能な周知の無線機として構成されている。また、各仮想無線アクセスポイントVAPは、各チャネルの所定時間内の送信パケット数や送信パケットのバイト数を記憶すると共に、これに基づいて各チャネルで所定時間内にデータ送受信した送信トラフィック量や受信トラフィック量、各チャネルで所定時間内にデータ送受信したフロー毎の送信トラフィック量(送信フロートラフィック量)や受信トラフィック量(受信フロートラフィック量)を集計して保持している。なお、以下では、送信トラフィック量と受信トラフィック量の和を所定時間内トラフィック量と称し、送信フロートラフィック量と受信フロートラフィック量の和をフロートラフィック量と称する。
オープンフローコントローラOFCは、汎用のコンピュータにオープンフロー(OpenFlow)におけるオープンフローコントローラ(OpenFlowコントローラ)機能を有するソフトウエアを実行することにより構成されており、各仮想無線アクセスポイントからフローが未定義のパケットを受信したときに、無線メッシュネットワーク22におけるデータ転送経路とこのデータ転送経路における利用チャネルをフローテーブルに書き込むことによりフローを定義する。フローは、レイヤ1〜4の識別情報(OpenFlow 1.0では12種類、OpenFlow 1.1では15種類)の組み合わせにより定義することができ、第1実施例では、マッチングルールとして送信元のIPアドレス,宛先のIPアドレス,送信ポート番号,受信ポート番号を主に用い、アクションとしてMAC/IPアドレスの書き換えや出力ポート指定などを用いた。なお、本発明はデータ転送経路における複数チャネルの利用が本質であるため、データ転送経路については、周知の手法あるいは今後開発されるであろう未知の手法によって設定されるものとし、データ転送経路の設定についての詳細な説明は行なわない。
図1では、オープンフローコントローラOFCによって周知の手法により設定されたモバイル端末12からインターネット10までのデータ転送経路を仮想無線アクセスポイントVAPの右下の番号として示した。図2は、図1におけるモバイル端末12からインターネット10へのデータ転送経路における構成の概略を示す構成図であり、図3は、図2における仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4の各々が2つの無線LANアクセスポイントAPにより構成されている場合の構成の概略を示す構成図である。図1に示すように、モバイル端末12からインターネット10までのデータ転送経路は、下段中央の仮想無線アクセスポイントVAP1、中段中央の仮想無線アクセスポイントVAP2、中段左の仮想無線アクセスポイントVAP3、上段左の仮想無線アクセスポイントVAP4、左のインターネットゲートウェイIGWとなっている。このデータ転送経路では、図2では各仮想無線アクセスポイントVAP間でチャネルA,チャネルB,チャネルC,・・・の無線LANアクセスポイントAPの数と同数のチャネルを同時利用することができ、図3では各仮想無線アクセスポイントVAP間でチャネルA,チャネルBの2つのチャネルを同時利用することができる。なお、各仮想無線アクセスポイントVAPにおける無線LANアクセスポイントAPの数は如何なる数であっても構わない。また、各仮想無線アクセスポイントVAPにおける無線LANアクセスポイントAPの数は同一である必要もない。例えば、図3において、仮想無線アクセスポイントVAP3が2つの無線LANアクセスポイントAPにより構成されている場合、仮想無線アクセスポイントVAP3と送受信する仮想無線アクセスポイントVAP2,VAP4との間ではチャネルAとチャネルBの2つのチャネルだけが同時利用でき、仮想無線アクセスポイントVAP1,VAP2間ではチャネルA,チャネルB,チャネルC,・・・が同時利用できるものとなる。
次に、こうして構成された第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20において、モバイル端末12からインターネット10までのデータ転送経路が設定された場合における各仮想無線アクセスポイントVAPにおける利用チャネルについて説明する。利用チャネルの設定は、オープンフローコントローラOFCによりフローが未定義のパケットに対してフローを定義する際にデータ転送経路を設定した後にデータ転送経路の仮想無線アクセスポイントVAPに対して行なわれる。図4は、定義方式1の利用チャネル定義手法を示すフローチャートである。定義方式1の利用チャネル定義手法では、設定されたデータ転送経路の全ての仮想無線アクセスポイントVAPに対してカウンタCに対応するチャネルを利用チャネルとして設定し(ステップS100)、カウンタCを値1だけインクリメントし(ステップS110)、カウンタCがチャネル数に至ったときには(ステップS120)、カウンタCを値1に初期化して(ステップS130)、処理を終了する。カウンタCに対応するチャネルとしては、例えば、カウンタC=1のときにはチャネルA,カウンタC=2のときにはチャネルB,カウンタC=3のときにはチャネルC,・・・のように定めることができる。このように、フローの定義が行なわれる毎にチャネルA,チャネルB,チャネルC,・・・と異なるチャネルが利用チャネルに設定される。なお、カウンタCとチャネルとの関係は以下の説明でも同様である。
図5は、図3の構成においてモバイル端末12から3本のデータ送信が行なわれたときの定義方式1の利用チャネル定義手法によりチャネルが割り当てられる様子を示す説明図である。図中、白矢印、斜め線ハッチング矢印、黒矢印は、モバイル端末12からの3本のデータ送信を示す。この例では、白矢印、斜め線ハッチング矢印、黒矢印の順にモバイル端末12からデータ送信操作が行なわれている。白矢印のデータ送信では、カウンタCは初期値の値1であるから、全ての仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4でカウンタC=1に対応するチャネルAが利用チャネルとして設定される。次の斜め線ハッチング矢印のデータ送信では、カウンタCが値1だけインクリメントされて値2となっているから、全ての仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4でカウンタC=2に対応するチャネルBが利用チャネルとして設定される。このとき、カウンタCは、チャネル数(値2)に到達するため値1に初期化される。黒矢印のデータ送信では、カウンタCが初期値の値1となっているから、全ての仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4でカウンタC=1に対応するチャネルAが利用チャネルとして設定される。このように、各チャネルのより均等な利用が図られている。
図6は、定義方式2の利用チャネル定義手法を示すフローチャートである。定義方式2の利用チャネル定義手法では、データ転送経路における1番目の仮想無線アクセスポイントVAPに対してカウンタCに対応するチャネルを利用チャネルとして設定し(ステップS200)、2番目以降の仮想無線アクセスポイントVAPに対して受信チャネルの次のチャネルを利用チャネルとして設定する(ステップS210)。即ち、仮想無線アクセスポイントVAPで中継する毎に(ホップ毎に)チャネルを順次切り替えるものとなる。そして、カウンタCを値1だけインクリメントし(ステップS220)、カウンタCがチャネル数に至ったときには(ステップS230)、カウンタCを値1に初期化して(ステップS240)、処理を終了する。ここで、受信チャネルの次のチャネルは、チャネルA,チャネルB,チャネルC,・・・の順で次のチャネルの意である。なお、例えば、図3に示すように、仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4の各々が2つの無線LANアクセスポイントAPにより構成されている場合には、チャネルA,チャネルBの2つなので、受信チャネルがチャネルAのときには次のチャネルはチャネルBとなり、受信チャネルがチャネルBのときには次のチャネルはチャネルAとなる。
図7は、図3の構成においてモバイル端末12から3本のデータ送信が行なわれたときの定義方式2の利用チャネル定義手法によりチャネルが割り当てられる様子を示す説明図である。図中、白矢印、斜め線ハッチング矢印、黒矢印は、モバイル端末12からの3本のデータ送信を示す。この例では、白矢印、斜め線ハッチング矢印、黒矢印の順にモバイル端末12からデータ送信操作が行なわれている。白矢印のデータ送信では、カウンタCは初期値の値1であるから、1番目の仮想無線アクセスポイントVAP1でカウンタC=1に対応するチャネルAが利用チャネルとして設定される。2番目の仮想無線アクセスポイントVAP2では、受信チャネルがチャネルAであるから、次のチャネルのチャネルBが利用チャネルとして設定され、3番目の仮想無線アクセスポイントVAP3では、受信チャネルがチャネルBであるから、次のチャネルのチャネルAが利用チャネルとして設定され、4番目の仮想無線アクセスポイントVAP3では、受信チャネルがチャネルAであるから、次のチャネルのチャネルBが利用チャネルとして設定される。即ち、ホップ毎にチャネルA,チャネルBが切り替えられる。次の斜め線ハッチング矢印のデータ送信では、カウンタCが値1だけインクリメントされて値2となっているから、1番目の仮想無線アクセスポイントVAP1でカウンタC=2に対応するチャネルBが利用チャネルとして設定され、2番目以降の仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP4では、チャネルA,チャネルB,チャネルAが利用チャネルに設定される。黒矢印のデータ送信では、カウンタC1が初期値の値1となっているから、白矢印と同様に、1番目の仮想無線アクセスポイントVAP1でカウンタC=1に対応するチャネルAが利用チャネルとして設定され、2番目以降の仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP4では、チャネルB,チャネルA,チャネルBが利用チャネルに設定される。
図8は、定義方式3の利用チャネル定義手法を示すフローチャートである。定義方式3の利用チャネル定義手法では、各仮想無線アクセスポイントVAPから各チャネルの所定時間内トラフィック量を取得し(ステップS300)、各仮想無線アクセスポイントVAPにおいて所定時間内トラフィック量が最小となるチャネルを利用チャネルとして設定する(ステップS310)。
図9は、図3の構成においてモバイル端末12から1本のデータ送信が行なわれているときにモバイル端末13から仮想無線アクセスポイントVAP3,VAP4、インターネットゲートウェイIGWにトラフィック量が非常に大きい1本のデータ送信が行なわれるときに定義方式3の利用チャネル定義手法によりモバイル端末13からのデータ送信に対してチャネルが割り当てられる様子を示す説明図である。図10は、図9の状態からモバイル端末12から更に1本のデータ送信が行なわれるときに定義方式3の利用チャネル定義手法によりチャネルが割り当てられる様子を示す説明図である。図9において、モバイル端末12からの白矢印のデータ送信では、利用チャネルは、仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4に対して全てチャネルAが設定されている。このとき、モバイル端末13から仮想無線アクセスポイントVAP3,VAP4、インターネットゲートウェイIGWのデータ転送経路で黒矢印のデータ送信が行なわれると、黒矢印のデータ送信では、利用チャネルは、仮想無線アクセスポイントVAP3,VAP4に対して所定時間内トラフィック量が小さいチャネルBが設定される。この状態から、モバイル端末12から斜め線ハッチング矢印のデータ送信が行なわれると、利用チャネルは、仮想無線アクセスポイントVAP1、VAP2に対しては未使用のチャネルBが設定され、仮想無線アクセスポイントVAP3,VAP4に対しては、フロートラフィック量が黒矢印のデータ送信の方が白矢印のデータ送信より大きいために白矢印のデータ送信が行なわれているチャネルAの方がチャネルBに比して所定時間内トラフィック量が小さくなるから、チャネルAが設定される。このように、各チャネルのより均等な利用が図られている。
図11は、定義方式4の利用チャネル定義手法を示すフローチャートである。定義方式4の利用チャネル定義手法では、各仮想無線アクセスポイントVAPから各チャネルの送信トラフィック量を取得し(ステップS400)、データ転送経路の順に順次対象となる仮想無線アクセスポイントVAPから所定範囲内の各仮想無線アクセスポイントVAPの各チャネルの送信トラフィック量を合計してチャネル毎の所定範囲内トラフィック量を計算し(ステップS410)、所定範囲内トラフィック量が最小となるチャネルを利用チャネルに設定する(ステップS420)。ここで、「所定範囲」としては、例えば、対象の仮想無線アクセスポイントVAPの無線が到達する範囲(干渉範囲)や隣接する仮想無線アクセスポイントVAPの範囲などを用いることができる。特に干渉範囲とすることが望ましい。そして、データ転送経路の順に対象の仮想無線アクセスポイントVAPの次の仮想無線アクセスポイントVAPが存在するか否かを判定し(ステップS430)、次の仮想無線アクセスポイントVAPが存在するときにはステップS410に戻り、次の仮想無線アクセスポイントVAPが存在しないときには処理を終了する。即ち、このステップS410,S420の処理をデータ転送経路の順に順次対象となる仮想無線アクセスポイントVAPを変更して行なうのである。データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが所定範囲(干渉範囲)になる場合の定義方式4の利用チャネル定義手法を示すフローチャートを図12に示す。この場合、全ての仮想無線アクセスポイントVAPが所定範囲内となるため、ステップS410は、各仮想無線アクセスポイントVAPの各チャネルの所定時間内トラフィック量を合計してチャネル毎の所定範囲内トラフィック量を計算する処理(ステップS410B)となり、ステップS430の判定処理は不要となる。
図13は、図9の状態からモバイル端末12から更に1本のデータ送信が行なわれるときに定義方式4の利用チャネル定義手法によりチャネルが割り当てられる様子を示す説明図である。なお、説明の容易のため、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4が所定範囲(干渉範囲)になる場合について考える。図9の状態では、所定範囲内トラフィック量は、チャネルAでは各仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4における送信トラフィック量(白矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量)の和として計算され、チャネルBでは仮想無線アクセスポイントVAP3,VAP4の送信トラフィック量(黒矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量)の和として計算される。黒矢印のデータ送信における送信フロートラフィック量は白矢印のデータ送信における送信フロートラフィック量に比して非常に大きいときには、チャネルBの所定範囲内トラフィック量がチャネルAのものより大きくなるから、新たなモバイル端末12からの1本のデータ送信(斜め線ハッチング矢印のデータ送信)に対しては、図13に示すように、チャネルAが利用チャネルとして設定される。このように、所定範囲(干渉範囲)を考慮して利用チャネルを設定することにより、各チャネルのより均等な利用を図ることができる。
次に、定義済みのフローにより複数のデータ送信が行なわれている最中にフローの利用チャネルを変更する際の手法について説明する。図14は、変更方式1の利用チャネル変更手法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは各仮想無線アクセスポイントVAPに対して、同時並行して一定の頻度で繰り返し実行される。変更方式1の利用チャネル変更手法では、まず、仮想無線アクセスポイントVAPから各チャネルの所定時間内トラフィック量とフロートラフィック量とを取得すると共に(ステップS500)、所定時間内トラフィック量のチャネル間差分を計算し(ステップS510)、計算したチャネル間差分のうち最大となるチャネル間差分が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS520)。ここで、「所定値」は、チャネル間差分が大きくてフローの利用チャネルの変更が必要か否かを判定するものであり、無線通信容量や所定時間などにより適宜定められるものである。最大となるチャネル間差分が所定値以上であると判定されたときには、利用チャネルの変更が必要と判断し、所定時間内トラフィック量が最大のチャネルで送信されているフロー群のうち、最大となるチャネル間差分に所定係数k1を乗じた値にフロートラフィック量が最も近いフローを選択し(ステップS530)、選択したフローの利用チャネルを所定時間内トラフィック量が最小となるチャネルに変更する(ステップS540)。ここで所定係数k1は、値0より大きく値1より小さい値であり0.5近傍が好ましい。所定係数k1が0.5近傍が好ましいのは、最大のチャネル間差分の1/2のフロートラフィック量となるフローの利用チャネルを変更することによりそのチャネル間差分を打ち消すことができることに基づく。一方、ステップS520で最大となるチャネル間差分が所定値未満であると判定された仮想無線アクセスポイントVAPでは利用チャネルの変更は不要と判断して、利用チャネルの変更は行なわずに処理を終了する。
図15は、図3の構成においてモバイル端末12から2本のデータ送信について利用チャネルが割り当てられて送信されている様子を示す説明図である。図16は、図15の状態からモバイル端末13から仮想無線アクセスポイントVAP4を経由してインターネットゲートウェイIGWに向けてデータ送信が行なわれるときに定義方式3の利用チャネル定義手法によりチャネルが割り当てられる様子を示す説明図である。図17は、図16の状態で変更方式1による利用チャネル変更手法が実行されたときの結果を示す説明図である。図15〜図16において、白矢印のデータ送信は斜め線ハッチング矢印のデータ送信よりフロートラフィック量が小さいものとし、黒矢印のデータ送信はフロートラフィック量が白矢印や斜め線ハッチング矢印のデータ送信に比して非常に大きいものとする。図15においては、モバイル端末12からの白矢印のデータ送信では、利用チャネルは仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4に対してチャネルAが設定されており、斜め線ハッチング矢印のデータ送信では、利用チャネルは仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4に対してチャネルBが設定されている。この状態からモバイル端末13から黒矢印のデータ送信が行なわれると、黒矢印のデータ送信における利用チャネルは、白矢印のデータ送信の方が斜め線ハッチング矢印のデータ送信よりフロートラフィック量が小さいため、仮想無線アクセスポイントVAP4に対して白矢印のデータ送信のチャネルAと同一のチャネルAが設定される。この図16の状態で変更方式1の利用チャネル変更手法が実行されると、仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP3では、チャネル間差分の最大値が所定値未満となるため、利用チャネルの変更は不要と判断され、仮想無線アクセスポイントVAP4では、黒矢印のデータ送信のフロートラフィック量が非常に大きいことから、所定時間内トラフィック量が最大のチャネルAのフロー(白矢印のデータ送信と黒矢印のデータ送信)のうちチャネルAとチャネルBのチャネル間差分に所定係数k1(0.5程度)を乗じた値((白矢印のデータ送信のフロートラフィック量+黒矢印のデータ送信のフロートラフィック量−斜め線ハッチング矢印のフロートラフィック量)×k2)にフロートラフィック量が最も近いフロー(白矢印のデータ送信)が選択され、このフロー(白矢印のデータ送信)の利用チャネルを所定時間内トラフィック量が最小のチャネルBに変更される。この状態が図17である。図示するように、各チャネルのより均等な利用が図られている。
図18は、変更方式2の利用チャネル変更手法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは一定の頻度で繰り返し実行される。変更方式2の利用チャネル変更手法では、各仮想無線アクセスポイントVAPから各チャネルの送信トラフィック量と送信フロートラフィック量とを取得し(ステップS600)、データ転送経路の順に順次対象となる仮想無線アクセスポイントVAPに対して、以下に説明するステップS610〜ステップS680までの処理を実行する。
各仮想無線アクセスポイントVAPに対する処理では、まず、対象の仮想無線アクセスポイントVAPから所定範囲内の各仮想無線アクセスポイントVAPの各チャネルにおける送信トラフィック量を合計してチャネル毎の所定範囲内トラフィック量として計算し(ステップS610)、所定範囲内トラフィック量のチャネル間の差分としてチャネル間差分を計算する(ステップS620)。そして、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPで、所定範囲内トラフィック量が最大となるチャネルで送信されているフロー群のうち、最大のチャネル間差分に所定係数k2を乗じて得られる所定係数範囲内でその上限値に最も近い送信フロートラフィック量のフローの選択が可能かどうかを確かめる(ステップS630,S640)。ここで、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPが複数存在する場合も生じるが、その場合、第1実施例では、データ転送経路の順に選択するものとした。また、所定係数k2は、値0より大きく値1より小さい値であり0.5近傍で0.5以下が好ましい。所定係数k2が0.5近傍が好ましいのは、最大のチャネル間差分の1/2のフロートラフィック量となるフローの利用チャネルを変更することによりそのチャネル間差分を打ち消すことができることに基づく。そして、フローの選択が可能な場合には、選択したフローの利用チャネルをその仮想無線アクセスポイントVAPで所定範囲内トラフィック量が最小となるチャネルに変更し(ステップS650)、利用チャネルを変更したフローの送信フロートラフィック量を変更の前後のチャネルの送信トラフィック量から減算・加算して新たな送信トラフィック量として計算し(ステップS660)、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPを次回ステップS630でチャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPとして選択可能な対象から削除し(ステップS670)、所定範囲内にまだ時間チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPとして選択されていない仮想無線アクセスポイントVAPが存在するか否かを判定し(ステップS680)、選択されていない仮想無線アクセスポイントVAPが存在する場合には、ステップS610に戻る。このステップS610〜S680までの処理を繰り返すことにより、所定範囲内の全ての仮想無線アクセスポイントVAPがステップS630でチャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPとして順次選択され、フローの利用チャネルの変更が可能なときにはその変更が行なわれる。
ステップS610〜S680の処理を所定範囲内の仮想無線アクセスポイントVAPの数だけ繰り返し実行すると、ステップS680で所定範囲内で選択されていない仮想無線アクセスポイントVAPは存在しないと判定されるから、データ転送経路の順において対象の仮想無線アクセスポイントVAPの次の仮想無線アクセスポイントVAPが存在するか否かを判定し(ステップS690)、次の仮想無線アクセスポイントVAPが存在するときには、ステップS610に戻り、その仮想無線アクセスポイントVAPを対象の仮想無線アクセスポイントVAPとしてステップS610〜S680の処理を所定範囲内の仮想無線アクセスポイントVAPの数だけ繰り返し実行する。
データ転送経路の順に全ての仮想無線アクセスポイントVAPに対してステップS610〜S680の処理を実行すると、全てのチャネル間差分が所定値以下になっているか否かを判定すると共に(ステップS700)、データ転送経路の順に全ての仮想無線アクセスポイントVAPに対するステップS610〜S680の処理を所定回数実行されたか否かを判定し(ステップS710)、全てのチャネル間差分が所定値以下になっておらず、所定回数実行していないときには、ステップS610に戻って、データ転送経路の順の全ての仮想無線アクセスポイントVAPに対するステップS610〜S680の処理を再度実行する。一方、全てのチャネル間差分が所定値以下になっているときや、全てのチャネル間差分が所定値以下になっていなくても所定回数実行しているときには、本ルーチンを終了する。ここで、所定回数は、例えば5回や10回、20回などを用いることができる。このように、仮想無線アクセスポイントVAPから所定範囲内の各仮想無線アクセスポイントVAPの各チャネルの送信トラフィック量を考慮することにより、データ転送経路全体としての各チャネルのより均等な利用を図ることができる。
データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが所定範囲(干渉範囲)になる場合の変更方式2の利用チャネル定義手法を示すフローチャートを図19に示す。この場合、全ての仮想無線アクセスポイントVAPが所定範囲内となるため、ステップS610は、各仮想無線アクセスポイントVAPの各チャネルの送信トラフィック量を合計してチャネル毎の所定範囲内トラフィック量を計算する処理(ステップS610B)となり、ステップS690の判定処理は不要となる。
図20は、図17の状態で変更方式2の利用チャネル変更手法により利用チャネルが変更されたときの結果を示す説明図である。なお、説明の容易のため、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4が所定範囲(干渉範囲)になる場合について考える。図17の状態では、所定範囲内トラフィック量は、チャネルAでは仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP3の送信トラフィック量の和(白矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量の和)と仮想無線アクセスポイントVAP4の送信トラフィック量(黒矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量)との総和として計算され、チャネルBでは仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP3の送信トラフィック量の和(斜め線ハッチング矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量の和)と仮想無線アクセスポイントVAP4の送信トラフィック量(斜め線ハッチング矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量と白矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量との和)との総和として計算される。上述したように、黒矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量は白矢印や斜め線ハッチング矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量に比して非常に大きいため、所定範囲内トラフィック量が最大となるチャネルはチャネルAとなる。各仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4におけるチャネル間差分は同一であるから、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPは仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4となる。第1実施例では、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPが複数存在する場合には、データ転送経路の順に選択されるから、仮想無線アクセスポイントVAP1が選択されることになる。仮想無線アクセスポイントVAP1のチャネルAのフロー群のうち、最大のチャネル間差分に所定係数k2(k2は0.5近傍が好適)を乗じた所定係数範囲内でその上限値に最も近い送信フロートラフィック量のフローは、黒矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量が非常に大きいことから、白矢印のデータ送信が所定係数範囲内でその上限値に最も近い送信フロートラフィック量のフローとして選択され、このフロー(白矢印のデータ送信)の利用チャネルが所定範囲内トラフィック量が小さいチャネルBに変更される。仮想無線アクセスポイントVAP1の白矢印のデータ送信の利用チャネルがチャネルBに変更されると、所定範囲内トラフィック量は、チャネルAでは白矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量だけ減少し、チャネルBではその分だけ増加することになるが、黒矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量が支配的であるため、所定範囲内トラフィック量が最大となるチャネルはチャネルAで継続される。そして、仮想無線アクセスポイントVAP1が対象から除外されるため、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPとして仮想無線アクセスポイントVAP2が選択され、仮想無線アクセスポイントVAP1のときと同様に、白矢印のデータ送信のフローが選択されて利用チャネルが所定範囲内トラフィック量が小さいチャネルBに変更される。仮想無線アクセスポイントVAP3についても同様である。最後に仮想無線アクセスポイントVAP4がチャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPとなるが、黒矢印のデータ送信の送信フロートラフィック量が非常に大きいことからフロー(黒矢印のデータ送信)を選択することができず、利用チャネルの変更は行なわれない。この状態が図20である。
次に、第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20によりネットワーク容量がどの程度増加しているかについての実験を行なったので、その結果について説明する。実験における基本構成としては、図21や図23に示すように、データ転送経路を、クライアントコンピュータPC1、仮想無線アクセスポイントVAP1,仮想無線アクセスポイントVAP2,仮想無線アクセスポイントVAP3,仮想無線アクセスポイントVAP4,クライアントコンピュータPC2とし、IEEE802.11a(100ch/112ch)を用い、オープンフローコントローラOFCについては各仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4と有線により接続した。
実験1では、比較例と定義方式1の利用チャネル定義手法とによりクライアントコンピュータPC1から送信レート7Mの2本のデータ送信を行ない、データ送信中の利用チャネルの変更は行なわないものとした。図21は実験1の手法を模式的に示す説明図であり、図22は実験1の結果を示す説明図である。比較例としては、単一のチャネルしか用いることができない4つの無線LANアクセスポイントを4つの仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4の代わりに用いるものとした。図22に示すように、比較例では、1チャネルに2フロー分のトラフィックが流れるためにスループットが8.25〜8.44と小さいのに対し、定義方式1の利用チャネル定義手法では、2フローが2チャネルに分散してトラフィックが流れるため、スループットが14.08〜14.10と大きくなっている。
実験2では、定義方式1の利用チャネル定義手法により利用チャネルを設定し、データ送信中に利用チャネルの変更を行なわない場合(以下、単に「定義方式1」という。)、定義方式2の利用チャネル定義手法で利用チャネルを設定し、データ送信中に利用チャネルの変更を行なわない場合(以下、単に「定義方式2」という。)、定義方式3の利用チャネル定義手法により利用チャネルを設定し、その後、変更方式1の利用チャネル変更手法によりデータ送信中に利用チャネルの変更を行なう場合(以下、単に「変更方式1」という。)、定義方式4の利用チャネル定義手法により利用チャネルを設定し、その後、変更方式2の利用チャネル変更手法によりデータ送信中に利用チャネルの変更を行なう場合(以下、単に「変更方式2」という。)の4つ場合に対して、送信レート1M、送信レート0.1Mのデータ送信を交互に各12本送信した後に送信レート0.1Mのデータ送信を12本送信した。図23は、実験2の手法を模式的に示す説明図であり、図24は実験2の結果を示す説明図である。図24に示すように、定義方式1では、チャネル利用に偏りが生じるため、スループットは9.31〜10.64と小さい。定義方式2では、定義方式1に比してチャネル利用の均等化が図られるため、スループットは12.87〜14.26と大きくなる。変更方式1では、動的なチャネル割当によりトラフィックを各チャネルで平滑化しているため、スループットは14.25〜14.27と大きい。変更方式2でも、動的なチャネル割当によりトラフィックを各チャネルで平滑化しているため、スループットは14.25〜14.26と大きい。なお、実験2では、変更方式1と変更方式2の間に優位な差を認めることはできなかった。
実験3では、変更方式1および変更方式2に対して、クライアントコンピュータPC1から仮想無線アクセスポイントVAP1,VAP2,VAP3,VAP4を経由してクライアントコンピュータPC2に送信レート3.5Mのデータ送信を2本送信し、その後クライアントコンピュータPC3から仮想無線アクセスポイントVAP3,VAP4を経由してクライアントコンピュータPC3に送信レート28.5Mのデータ送信を行なった。図25は、実験3の手法を模式的に示す説明図であり、図26は実験3の結果を示す説明図である。図26に示すように、変更方式1では、各仮想無線アクセスポイントVAPの個別制御により仮想無線アクセスポイントVAP1,VAP2の送信トラフィックが仮想無線アクセスポイントVAP3の大きな送信トラフィックの影響を受けているため、スループットは26.30〜28.03とあまり大きくならない。変更方式2では、広域的な制御により仮想無線アクセスポイントVAP1,VAP2の送信トラフィックも利用チャネルの変更が行なわれるため、スループットは33.26〜35.46と大きなものとなる。
以上説明した第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20によれば、複数の無線LANアクセスポイントAPを有線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続してなる複数の仮想無線アクセスポイントVAPをアクセスポイントとして無線メッシュネットワーク22を構成することにより、仮想無線アクセスポイントVAPを構成する無線LANアクセスポイントAPの数と同数のチャネルを同時利用することができる。この結果、無線バックボーンネットワークのネットワーク容量を飛躍的に増加させることができる。また、オープンフローを用いるため、データ転送に複数チャネルの同時利用を容易に行なうことができる。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、定義方式1の利用チャネル定義手法を用いてフローを定義する毎に異なるチャネルを利用チャネルとして設定することにより、各チャネルのより均等な利用を促進することができる。また、定義方式2の利用チャネル定義手法を用いてデータ転送経路においてホップする毎に異なるチャネルを利用チャネルとして設定することにより、定義方式1の利用チャネル定義手法による場合に比して、各チャネルの更なる均等な利用を促進することができる。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、定義方式3の利用チャネル定義手法を用いて、各仮想無線アクセスポイントVAPに対し、所定時間内トラフィック量が最小となるチャネルを前記利用チャネルとしてフローを定義することにより、定義方式1の利用チャネル定義手法や定義方式2の利用チャネル定義手法による場合に比して、各チャネルの更なる均等な利用を促進することができる。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、定義方式4の利用チャネル定義手法を用いて、各仮想無線アクセスポイントVAPに対し、所定範囲に属する仮想無線アクセスポイントの所定時間内トラフィック量をチャネル毎に合計することによりチャネル毎の所定範囲内トラフィック量を計算すると共に、所定範囲内トラフィック量が最小となるチャネルを前記利用チャネルとしてフローに定義することにより、所定範囲内の仮想無線アクセスポイントVAPの送受信状態を加味して各チャネルの更なる均等な利用を促進することができる。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式1の利用チャネル変更手法を用いて、各仮想無線アクセスポイントVAPに対し、所定時間内トラフィック量が最大のチャネルで送信されているフロー群から1つのフローを選択すると共に、この選択したフローが所定時間内トラフィック量が最小のチャネルで送信されるよう利用チャネルを変更することにより、時間の経過に伴ってチャネルの所定時間内トラフィック量が変化しても、各チャネルのより均等な利用を促進することができる。この結果、無線バックボーンネットワークのネットワーク容量を更に増加させることができる。しかも、チャネル間の所定時間内トラフィック量の差分としてのチャネル間差分を計算し、この計算したチャネル間差分のうち最大のチャネル間差分に所定係数k1を乗じた値に最も近いフロートラフィック量となるフローを選択するから、所定係数を調整することにより、より効率的に各チャネルの均等な利用を図ることができる。また、チャネル間差分のうち最大のチャネル間差分が所定値未満のときには利用チャネルの変更は行なわないから、不必要な利用チャネルの変更を抑制することができる。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式2の利用チャネル変更手法を用いて、各仮想無線アクセスポイントVAPに対して、所定範囲に属する各仮想無線アクセスポイントVAPの各チャネルの送信トラフィック量を合計することによりチャネル毎の所定範囲内トラフィック量を計算すると共に、所定範囲内トラフィック量のチャネル間の差分としてのチャネル間差分を計算し、所定範囲に属する仮想無線アクセスポイントVAPのうちチャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPに対して、所定範囲内トラフィック量が最大のチャネルで送信されているフロー群から1つのフローを選択すると共に、この選択したフローが所定範囲内トラフィック量が最小のチャネルで送信されるよう利用チャネルを変更することにより、時間の経過に伴ってチャネルの所定時間内トラフィック量が変化しても、データ転送経路全体としてデータ転送における各チャネルのより均等な利用を図ることができる。しかも、チャネル間差分のうち最大となるチャネル間差分に所定係数k2を乗じて得られる所定係数範囲内の送信フロートラフィック量のフローが存在するときには送信フロートラフィック量が所定係数範囲の上限値に最も近いフローを選択して利用チャネルの変更を行ない、所定係数範囲内のフロートラフィック量のフローが存在しないときには利用チャネルの変更は行なわないことにより、不必要な利用チャネルの変更を抑制することができる。さらに、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPにおいて、利用チャネルを変更したときには変更に係るフローのフロートラフィック量を変更前のチャネルの送信トラフィック量から減算すると共に変更後のチャネルの送信トラフィック量に加算し、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPの対象とされた仮想無線アクセスポイントVAPをステップS630のチャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPの対象から削除して、ステップS630の選択の対象としての仮想無線アクセスポイントVAPが存在しなくなるまで、ステップS610〜S680の処理を繰り返すから、所定範囲内のチャネル利用の均等化を高い精度で行なうことができる。加えて、全てのチャネル間差分が所定値以下になっているか、所定値以下になっていなくてもステップS610〜S680の処理が所定回数実行されるまでデータ転送経路の順における最初の仮想無線アクセスポイントVAPを対象の仮想無線アクセスポイントVAPとしてステップS610〜S680の処理を繰り返すから、データ転送経路全体のチャネル利用の均等化を高い精度で行なうことができる。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、複数のインターネットゲートウェイIGWによりインターネット10に接続されているものとしたが、インターネットに接続さていないものとしても構わない。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、各仮想無線アクセスポイントVAPは複数の無線LANアクセスポイントAPを有線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続されているものとしたが、複数の無線LANアクセスポイントAPを無線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続されているものとしたり、複数の無線LANアクセスポイントAPの一部については有線により残部については無線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続されているものとしたりしてもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、オープンフローを用いるものとしたが、必ずしも、オープンフローを用いないものとしても構わない。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、定義方式1の利用チャネル定義手法や定義方式2の利用チャネル定義手法、定義方式3の利用チャネル定義手法により、フローの定義の際にデータ転送経路における各仮想無線アクセスポイントVAPの利用チャネルを設定するものとしたが、これらの利用チャネル定義手法以外の定義手法を用いてフローの定義の際にデータ転送経路における各仮想無線アクセスポイントVAPの利用チャネルを設定するものとしてもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式1の利用チャネル変更手法において、仮想無線アクセスポイントVAPの所定時間内トラフィック量が最大のチャネルで送信されているフロー群のうち、最大となるチャネル間差分に所定係数k1を乗じた値にフロートラフィック量が最も近いフローを選択するものとしたが、フロートラフィック量が最小のフローを利用チャネルを変更するフローとして選択するものとしたり、フロートラフィック量が最大のフロー以外の任意のフローを利用チャネルを変更するフローとして選択するものとしたりしてもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式1の利用チャネル変更手法において、所定時間内トラフィック量のチャネル間差分のうち最大となるチャネル間差分が所定値未満のときには利用チャネルの変更は行なわないものとしたが、最大となるチャネル間差分の値に拘わらず、常に利用チャネルの変更を行なうものとしてもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式2の利用チャネル変更手法において、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPにおいて、所定範囲内トラフィック量が最大のチャネルのフロー群から最大のチャネル間差分に所定係数k2を乗じた所定係数範囲内のうちその上限値に最も近いフロートラフィック量のフローを利用チャネルを変更するフローとして選択するものとしたが、フロートラフィック量が最小のフローを利用チャネルを変更するフローとして選択するものとしたり、フロートラフィック量が最大のフロー以外の任意のフローを利用チャネルを変更するフローとして選択するものとしたりしてもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式2の利用チャネル変更手法において、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPにおいて、利用チャネルを変更したときには変更したフローのフロートラフィック量を変更前のチャネルの所定時間内トラフィック量から減算すると共に変更後のチャネルの所定時間内トラフィック量に加算し、チャネル間差分が最大となる仮想無線アクセスポイントVAPの対象とされた仮想無線アクセスポイントVAPをステップS630の選択の対象としての仮想無線アクセスポイントの対象から削除して、ステップS630の選択の対象としての仮想無線アクセスポイントVAPが存在しなくなるまで、ステップS610〜S680の処理を繰り返すものとしたが、こうした繰り返しは行なわないものとしても構わない。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式2の利用チャネル変更手法において、データ転送経路の順に対象の仮想無線アクセスポイントVAPの次の仮想無線アクセスポイントVAPが存在しなくなるまでステップS610〜S680の処理を繰り返して行なうものとしたが、こうした繰り返しは行なわないものとしてもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20では、変更方式2の利用チャネル変更手法において、全てのチャネル間差分が所定値以下になるか、全てのチャネル間差分が所定値以下になっていなくても所定回数実行するまで、ステップS610〜S690の処理を繰り返して行なうものとしたが、繰り返し回数に拘わらず全てのチャネル間差分が所定値以下になるまで繰り返し処理を実行するものとしたり、チャネル間差分の値に拘わらず所定回数に至るまで繰り返し処理を実行するものとしたりしても構わない。また、こうした繰り返し処理を行なわないものとしてもよい。
次に、本発明の第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120について説明する。第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120は、第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20と同一の構成をしている。従って、重複した説明を回避するため、第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120の構成のうち第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、チャネルをグループAとグループBとに区別する。グループ区別の初期値は、伝送レートが最も小さいチャネルをグループBとし、その他のチャネルをグループAとする。そして、定義方式5の利用チャネル定義手法により新規フローにグループAのチャネルのいずれかに利用チャネルを割り当て、変更方式3の利用チャネル変更手法によりグループAのチャネルに利用チャネルが割り当てられた新規フローをグループBのチャネルに変更する。図27は、定義方式5の利用チャネル定義手法の一例を示すフローチャートであり、図28は、変更方式3の利用チャネル変更手法の一例を示すフローチャートである。
定義方式5の利用チャネル定義手法では、まず、前回の新規フローに対して利用チャネルを定義してから算定必要時間経過しているか否かを判定する(ステップS1100)。ここで、算定必要時間は、新規フローに利用チャネルが割り当てられてから、新規フローの転送レートを算定することができるまでに必要な時間として予め設定されるものである。なお、図28の利用チャネル変更手法は、新規フローに対して利用チャネルを定義してからこの算定必要時間が経過したときに実行される。前回の新規フローに対して利用チャネルを定義してから算定必要時間経過しているときには、新規フローに対して、グループAのチャネルのうち伝送レートが最も大きいチャネルを利用チャネルとして定義し(ステップS1110)、前回の新規フローに対して利用チャネルを定義してから算定必要時間経過していないときには、新規フローに対して、グループAのチャネルのうち伝送レートを流れているフローの数に値1を加えた数(フロー数+1)で除して得られる期待値が最大となるチャネルを利用チャネルとして定義する(ステップS1120)。期待値は、チャネルのフロー当たりの期待できるレートを意味する。例えば、期待値は、データの送受信が行われていないチャネルでは伝送レートとなり、1つのフローが流されているチャネルでは伝送レート/2となり、2つのフローが流されているチャネルでは伝送レート/3となる。
変更方式3の利用チャネル変更手法では、まず、各仮想無線アクセスポイントVAPから算定必要時間内のチャネル毎の送信パケット数と各送信パケットのバイト数とを取得する(ステップS1200)。続いて、グループBの各チャネルの伝送レートと送信パケット数と各送信パケットのバイト数とから、各チャネルにおける所定時間内の各フローのチャネル占有時間と残余時間とを計算する(ステップS1210)。ここで、チャネル占有時間は、チャネルに流れるフローの転送レートのチャネルの伝送レートに対する割合(フローのチャネル占有率)と所定時間とを乗じたものである。残余時間は、所定時間からチャネルの各フローのチャネル占有時間の和を減じたものである。なお、残余時間の所定時間に対する割合をチャネル非利用率と称し、値1からチャネル非利用率を減じたものをチャネル利用率と称する。
次に、グループAの対象フロー(利用チャネルが定義されて算定必要時間経過した新規フロー)に対して、所定時間内の送信パケット数と各送信パケットのバイト数とグループBの各チャネルの伝送レートとから、所定時間内のグループBの各チャネルに対するチャネル占有時間を計算する(ステップS1220)。即ち、対象フローをループBの各チャネルに流したときのチャネル占有時間を計算するのである。そして、グループAの対象フローをグループBの各チャネルに変更したとしたときの変更後の残余時間を計算し、残余時間が値0以上で最小となるチャネルを対象フローの利用チャネルとして変更する(ステップS1230)。ここで、残余時間が最小となることは、チャネル非利用率が最小となることを意味しており、言い換えれば、チャネル利用率が最大になることを意味している。変更後の残余時間が負の値となることは、チャネル利用率が100%を超えることを意味しており、対象フローをそのチャネルで送受信するとパケットロスが生じることを意味しており、変更方式3の利用チャネル変更手法ではそのチャネルへの利用チャネルの変更は行なうことができないものとなる。対象フローの利用チャネルをグループBのチャネルに変更できないときには、対象フローの利用チャネル(グループAのチャネル)をグループBに変更する(ステップS1240,S1250)。
こうして利用チャネルの変更か利用チャネルのグループBへの変更のいずれかを行なうと、グループBのチャネルのうち送受信が終了していずれのフローも流れていないチャネルがあるか否かを判断し(ステップS1260)、フローが流れていないチャネルがあるるときには、そのチャネルをグループAに変更する(ステップS1270)。なお、この場合、グループBのチャネルが1つしかない場合にそのチャネルがグループAに変更されると、グループBのチャネルがなくなるため、直ちに、初期値として伝送レートが最も小さいチャネルがグループBに区別されることになる。
図29は、モバイル端末12aから仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4を経由してモバイル端末12bに対して3Mbpsのデータ送信を行なったときの定義方式5の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てる様子を示す説明図である。図29では、チャネルA〜Dの伝送レートは、順に9Mbps,54Mbps,9Mbps,54Mbpsであり、初期値として、伝送レートが最小のチャネルCがグループBに区別され、チャネルA,B,DがグループAに区別されている。また、データ送信条件として、伝送レートが9Mbpsのチャネルでは1.8Mbpsのデータを安定して送受信できるものとし、伝送レートが54Mbpsのチャネルでは9Mbpsのデータを安定して送受信できるものとした。従って、送信のみ或いは受信のみであれば、伝送レートが9Mbpsのチャネルでは3.6Mbpsのデータを安定して送信または受信でき、伝送レートが54Mbpsのチャネルでは18Mbpsのデータを安定して送信または受信できることになる。このことは、送信パケットに送信元のIPアドレスや宛先のIPアドレス,送信ポート番号,受信ポート番号などのヘッダや待ち時間などが付加されることにより、伝送レートが9Mbpsのチャネルでは、1.8Mbpsの送受信によりチャネル利用率が100%になり、伝送レートが54Mbpsのチャネルでは、9Mbpsの送受信によりチャネル利用率が100%になることを意味している。また、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが干渉範囲になる場合を考える。定義方式5の利用チャネル定義手法では、新規フロー(白矢印)は、グループAのチャネルのうち伝送レートが最大のチャネルに割り当てられるから、図示するように、チャネルA,Dのいずれかに割り当てられることになる。図29では、チャネルDに割り当てられている。
図30は、図29の状態に対して変更方式3の利用チャネル変更手法により利用チャネルを変更する様子を示す説明図である。第1ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP2間の送受信)では、グループBのチャネルはチャネルCだけであり、仮想無線アクセスポイントVAP1では送信のみであり仮想無線アクセスポイントVAP2では受信のみであることから、チャネルCで3Mbpsのデータを安定して送受信できる。即ち、残余時間は値0以上となる。このため、利用チャネルはグループBのチャネルCに変更される。この場合のチャネル利用率は(3Mbps/3.6Mbps)として計算できる。第2ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP3間の送受信)では、第1ホップで利用チャネルを変更したグループBのチャネルCでは、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが干渉範囲になるため、利用チャネルをチャネルCに変更するとチャネル利用率が100%を超えて残余時間が負の値となる。このため、新規フローの利用チャネルの変更は行なわれず、グループAのチャネルDがグループBに変更される。
図31は、図30の状態に対して、モバイル端末12aから仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4を経由してモバイル端末12bに対して新規フローとして3Mbpsのデータ送信(斜め線ハッチング矢印)を行なった際に新規フローに対して定義方式5の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てる様子を示す説明図である。新規フロー(斜め線ハッチング矢印)は、グループAのチャネルA,Bのうち伝送レートが大きいチャネルBに割り当てられる。図32は、図31の状態に対して変更方式3の利用チャネル変更手法により利用チャネルを変更する様子を示す説明図である。第1ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP2間の送受信)では、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが干渉範囲になるため、利用チャネルをグループBのチャネルCへの変更は行われない。一方、新規フロー(斜め線ハッチング矢印)の利用チャネルをグループBのチャネルDに変更しても、変更後のチャネル利用率は6Mbps/9Mbpsであり、残余時間は値0以上となる。このため、新規フロー(斜め線ハッチング矢印)の利用チャネルはチャネルDに変更される。2ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP3間の送受信)および第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)でも第1ホップと同様に、利用チャネルはチャネルDに変更される。
図33は、図32の状態に対して、モバイル端末12aから仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4を経由してモバイル端末12bに対して新規フローとして3Mbpsのデータ送信(黒矢印)を行なった際に新規フローに対して定義方式5の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てる様子を示す説明図である。新規フロー(黒矢印)は、グループAのチャネルA,Bのうち伝送レートが大きいチャネルBに割り当てられる。図34は、図33の状態に対して変更方式3の利用チャネル変更手法により利用チャネルを変更する様子を示す説明図である。図32のときと同様に、最初のホップ(仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP2間の送受信)では、利用チャネルのグループBのチャネルCへの変更は行なわれない。一方、新規フロー(斜め線ハッチング矢印)の利用チャネルをグループBのチャネルDに変更した場合、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが干渉範囲であることを考慮すると、変更後のチャネル利用率は9Mbps/9Mbpsとなり、残余時間は値0となる。このため、新規フロー(黒矢印)の利用チャネルはチャネルDに変更される。2ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP3間の送受信)および第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)でも第1ホップと同様に、利用チャネルはチャネルDに変更される。
図35は、3Mbpsの斜め線ハッチング矢印の新規フローを定義方式5の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てて図31の状態としてから算定必要時間が経過する前に3Mbpsの黒矢印の新規フローを定義方式5の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てる様子を示す説明図である。この場合、グループAの各チャネルA,Bの期待値は9Mbps,27Mbpsとなるから、黒矢印の新規フローは、チャネルBに割り当てられる。斜め線ハッチング矢印の新規フローのグループBのチャネルへの利用チャネルの変更や黒矢印の新規フローのグループBのチャネルへの利用チャネルの変更は、図33および図34の状態と同様である。
次に、第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120によりパケットロスがどの程度減少しているかについての実験4を行なったので、その結果について説明する。実験4における基本構成としては、図29〜図35に示すように、データ転送経路を、モバイル端末12a、仮想無線アクセスポイントVAP1,仮想無線アクセスポイントVAP2,仮想無線アクセスポイントVAP3,仮想無線アクセスポイントVAP4,モバイル端末12bとし、チャネルA〜Dの伝送レートを順に9Mbps,54Mbps,9Mbps,54Mbpsとし、IEEE802.11a(100ch/112ch)を用い、オープンフローコントローラOFCについては各仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4と有線により接続した。
実験4では、モバイル端末12aから順次複数のフローを送信した際の、定義方式4の利用チャネル定義手法と変更方式2の利用チャネル変更手法を用いた場合(第1実施例の良法)と定義方式5の利用チャネル定義手法と変更方式3の利用チャネル変更手法を用いた場合(第2実施例)のパケットロス率とパケットロス数とを集計した。図36に集計結果を示す。図36に示すように、第1実施例の良法では、パケットロス率の最小値が13.825、中央値が16.548、最大値が22.695であり、パケットロス数の最小値が5967、中央値が7142、最大値が9795であった。一方、第2実施例では、パケットロス率の最小値が0.013902、中央値が0.31974、最大値が0.81094であり、パケットロス数の最小値が6、中央値が138、最大値が321であった。このように、第2実施例では、第1実施例の良法に対してでも飛躍的にパケットロス率およびパケットロス数を減少させることができる。
以上説明した第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120でも第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20と同様に、複数の無線LANアクセスポイントAPを有線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続してなる複数の仮想無線アクセスポイントVAPをアクセスポイントとして無線メッシュネットワーク22を構成することにより、仮想無線アクセスポイントVAPを構成する無線LANアクセスポイントAPの数と同数のチャネルを同時利用することができる。この結果、無線バックボーンネットワークのネットワーク容量を飛躍的に増加させることができる。また、オープンフローを用いるため、データ転送に複数チャネルの同時利用を容易に行なうことができる。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、定義方式5の利用チャネル定義手法を用いて、新規フローに利用チャネルを割り当ててから算定必要時間経過後の新規フローに対しては、グループAのチャネルのうち伝送レートが最大のチャネルを利用チャネルとして定義することにより、転送レートが不明な新規フローに対してより適正な利用チャネルを割り当てることができる。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、定義方式5の利用チャネル定義手法を用いて、新規フローに利用チャネルを割り当ててから算定必要時間経過する前の新規フローに対しては、グループAのチャネルのうち伝送レートを流れているフローの数に値1を加えた数で除して得られる期待値が最大となるチャネルを利用チャネルとして定義することにより、転送レートが不明な新規フローに対してより適正な利用チャネルを割り当てることができる。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、初期値として、伝送レートが最小のチャネルをグループBに区別し、残余のチャネルをグループAに区別する。これにより、伝送レートが最大のチャネルをグループAとすると共に伝送レートが最小のチャネルをグループBとすることができる。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、変更方式3の利用チャネル変更手法を用いて、新規フローに利用チャネルを割り当ててから算定必要時間経過したときに、グループAのチャネルに利用チャネルが定義された新規フロー(対象フロー)に対して、グループBの各チャネルに変更したとしたときの変更後の残余時間を計算し、残余時間が正の値で最小となるチャネル、即ちチャネル利用率が100%以下で最大となるチャネルに対象フローの利用チャネルを変更する。これにより、パケットロスを生じることなく、フローをグループBのチャネルのうちの一部のチャネルに順次集約することができる。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、グループAのチャネルに利用チャネルが定義された新規フローに対して、グループBのチャネルに利用チャネルを変更できないときには、新規フローの利用チャネルをグループBに変更し、グループBのチャネルのうち送受信が行われていないチャネルについてはグループAに変更する。これにより、必要に応じて、グループBを区別することができると共にグループAのチャネルを確保することができる。
第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、仮想無線アクセスポイントVAPのチャネルをグループA,Bに区別し、新規フローに対してはグループAのチャネルのうち伝送レートが最大のチャネルや期待値が最大のチャネルを利用チャネルとして定義し、算定必要時間後に利用チャネルが割り当てられた新規フローをグループBに変更するものとした。しかし、仮想無線アクセスポイントVAPのチャネルをグループA,Bに区別することなく、新規フローに伝送レートが最大のチャネルや期待値が最大のチャネルを利用チャネルとして定義し、算定必要時間後に利用チャネルが割り当てられた新規フローを利用チャネルを変更するものとしてもよい。この場合、図37に例示する定義方式6の利用チャネル定義手法と図38の変更方式4の利用チャネル変更手法を実行すればよい。
定義方式6の利用チャネル定義手法では、まず、前回の新規フローに対して利用チャネルを定義してから算定必要時間経過しているか否かを判定する(ステップS1300)。算定必要時間は、定義方式5の利用チャネル定義手法と同様に、新規フローに利用チャネルが割り当てられてから、新規フローの転送レートが分かるまでの時間かこの時間より若干長い時間として予め設定されるものである。従って、図38の利用チャネル変更手法は、新規フローに対して利用チャネルが定義されてから、この算定必要時間が経過したときに実行される。前回の新規フローに対して利用チャネルを定義してから算定必要時間経過しているときには、各チャネルの伝送レートと送信パケット数と送信パケットのバイト数とから各チャネルの残余レートを計算し(ステップS1310)、新規フローに対して、残余レートが最大のチャネルを利用チャネルとして定義する(ステップS1320)。ここで、残余レートは、対象のチャネルでそのときに送受信している各フローの転送レートの和を伝送レートから減じたものであり、対象のチャネルでパケットロスを生じることなく送受信可能な余裕分のレートである。したがって、データの送受信を行なっていないチャネルでは伝送レートが残余レートとなる。なお、残余レートは、上述の残余時間を用いれば、「残余レート=伝送レート×残余時間/所定時間」によって示すこともできる。一方、前回の新規フローに対して利用チャネルを定義してから算定必要時間経過していないときには、新規フローに対して、伝送レートを流れているフローの数に値1を加えた数(フロー数+1)で除して得られる期待値が最大となるチャネルを利用チャネルとして定義する(ステップS1120)。
変更方式4の利用チャネル変更手法では、まず、各仮想無線アクセスポイントVAPから所定時間内のチャネル毎の送信パケット数と各送信パケットのバイト数とを取得する(ステップS1400)。続いて、各チャネルの伝送レートと送信パケット数と各送信パケットのバイト数とから、各チャネルにおける所定時間内の各フローのチャネル占有時間と残余時間とを計算する(ステップS1410)。次に、新規フロー(利用チャネルが定義されて算定必要時間経過した新規フロー)の利用チャネルを変更したとしたときの変更後の残余時間を計算し、残余時間が値0以上で最小となるチャネルを新規フローの利用チャネルとして変更する(ステップS1420)。上述したように、残余時間が最小となることは、チャネル利用率が最大になることを意味している。なお、変更後の残余時間のすべてが負の値となるときには、利用チャネルの変更は行なわれない。
定義方式6の利用チャネル定義手法による新規フロー(白矢印)の利用チャネルは、最大の伝送レートのチャネルに割り当てられる。図29〜図36で説明した第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120のときと同様に、チャネルA〜Dの伝送レートが順に9Mbps,54Mbps,9Mbps,54Mbpsである場合を考えると、新規フローはチャネルB,Dのいずれかに割り当てられる。いま、新規フローがチャネルDに割り当てられたときを考えれば、図29と同一の状態となる。図39は、図29の状態に対して変更方式4の利用チャネル変更手法により利用チャネルを変更する様子を示す説明図である。第1ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP2間の送受信)では、変更後の残余時間はチャネルA,Cが値0以上で最小となるから、利用チャネルはチャネルA,Cのいずれかに変更される。図39では利用チャネルがチャネルCに変更された状態を示している。第2ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP3間の送受信)では、データ転送経路における全ての仮想無線アクセスポイントVAPが干渉範囲になることを考慮すると、変更後のチャネルCの残余時間は負の値となり、チャネルAの残余時間が値0以上で最小となる。このため、利用チャネルはチャネルAに変更される。第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)では、変更後のチャネルA,Cの残余時間はいずれも負の値となり、チャネルB,Dの残余時間が値0以上で最小となる。このため、利用チャネルはチャネルDで保持される。
図40は、図39の状態に対して、モバイル端末12aから仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4を経由してモバイル端末12bに対して新規フローとして3Mbpsのデータ送信(斜め線ハッチング矢印)を行なった際に新規フローに対して定義方式6の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てる様子を示す説明図である。新規フロー(斜め線ハッチング矢印)は、伝送レートが最大のチャネルBに割り当てられる。図41は、図40の状態に対して変更方式4の利用チャネル変更手法により利用チャネルを変更する様子を示す説明図である。第1ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP2間の送受信)では、変更後のチャネルA,Cへの変更は行われない。チャネルDは、第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)で3Mbpsの白矢印のデータの送受信が行なわれているため、この影響を考慮すると、変更後のチャネル利用率は6Mbps/9Mbpsであり、残余時間は値0以上で最小となる。このため、利用チャネルはチャネルDに変更される。第2ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP3間の送受信)および第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)も第1ホップと同様に、利用チャネルはチャネルDに変更される。
図42は、図41の状態に対して、モバイル端末12aから仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP4を経由してモバイル端末12bに対して新規フローとして3Mbpsのデータ送信(黒矢印)を行なった際に新規フローに対して定義方式6の利用チャネル定義手法によりチャネルを割り当てる様子を示す説明図である。新規フロー(黒矢印)は、伝送レートが最大のチャネルBに割り当てられる。図43は、図42の状態に対して変更方式4の利用チャネル変更手法により利用チャネルを変更する様子を示す説明図である。第1ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP1〜VAP2間の送受信)では、変更後のチャネルA,Cへの変更は行われない。チャネルDは、第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)で3Mbpsの白矢印のデータの送受信と3Mbpsの斜め線ハッチング矢印のデータの送受信とが行なわれているため、この影響を考慮すると、変更後のチャネル利用率は9Mbps/9Mbpsであり、残余時間は値0となる。このため、利用チャネルはチャネルDに変更される。第2ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP2〜VAP3間の送受信)および第3ホップ(仮想無線アクセスポイントVAP3〜VAP4間の送受信)も第1ホップと同様に、利用チャネルはチャネルDに変更される。
このように、仮想無線アクセスポイントVAPのチャネルをグループA,Bに区別することなく、定義方式6の利用チャネル定義手法により新規フローに伝送レートが最大のチャネルや期待値が最大のチャネルを利用チャネルとして定義し、変更方式4の利用チャネル変更手法により算定必要時間後に利用チャネルが割り当てられた新規フローの利用チャネルを変更後の残余時間が値0以上で最小となるチャネルに変更するものとしても、第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120と同様の効果、例えば、仮想無線アクセスポイントVAPを構成する無線LANアクセスポイントAPの数と同数のチャネルを同時利用することができる効果、無線バックボーンネットワークのネットワーク容量を飛躍的に増加させることができる効果、オープンフローを用いることによりデータ転送に複数チャネルの同時利用を容易に行なうことができる効果、転送レートが不明な新規フローに対してより適正な利用チャネルを割り当てることができる効果、パケットロスを生じることなくフローの利用チャネルを一部のチャネルに順次集約することができる効果、などを奏することができる。
以上説明した第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20および第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、複数の無線LANアクセスポイントAPを有線により相互に送受信可能に数珠繋ぎに接続されることにより、接続した無線LANアクセスポイントAPの数と同数のチャネルを同時利用できるアクセスポイントとして仮想無線アクセスポイントVAPを構成するものとした。しかし、仮想無線アクセスポイントVAPは、複数のチャネルを同時利用できるアクセスポイントであればよいから、第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20および第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120の一部の仮想無線アクセスポイントVAPを複数のチャネルが同時利用できる単一の無線アクセスポイントAPにより構成するものとしてよいし、第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20および第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120のすべての仮想無線アクセスポイントVAPを複数のチャネルが同時利用できる単一の無線アクセスポイントAPにより構成するものとしてよい。仮想無線アクセスポイントVAPの一部または全部を複数のチャネルが同時利用できる単一の無線アクセスポイントAPにより構成しても、第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20や第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120の効果と同一の効果を奏することができる。また、仮想無線アクセスポイントVAPを構成する無線アクセスポイントAPの一部を複数のチャネルが同時利用できる単一の無線アクセスポイントAPにより構成してもよい。
第1実施例の無線メッシュネットワークシステム20および第2実施例の無線メッシュネットワークシステム120では、オープンフローを用いるものとした。しかし、オープンフロー(OpenFlow)を一般化した概念としてのSDN(software defined network)を用いるものとしてもよい。この場合、「オープンフロースイッチ機能」は「データプレーン機能」と称され、「オープンフローコントローラ機能」は「コントロールプレーン機能」と称される。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。