以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置及び日射強度相互相関係数推定システムについて、説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100を備える日射強度相互相関係数推定システム10の構成を示す図である。
同図に示すように、日射強度相互相関係数推定システム10は、日射強度相互相関係数推定装置100及び日射計200を備えている。
日射強度相互相関係数推定装置100は、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定するコンピュータである。ここで、推定するとは、現在または過去の状態を補間したり、将来の状態を予測したりすることをいう。なお、この日射強度相互相関係数推定装置100は、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されてもよいし、専用のコンピュータシステムによって実現されてもよい。日射強度相互相関係数推定装置100の詳細な構成については、後述する。
日射計200は、複数の日射計(日射計201、202、203等)を備えており、それぞれの日射計は、異なる地点に配置され、一定時間間隔で、日射強度を測定し、測定した当該日射強度を日射強度相互相関係数推定装置100に出力する。
例えば、日射計201は、第一地点に設置され、所定の時刻に第一日射強度を測定し、測定した当該第一日射強度を日射強度相互相関係数推定装置100に出力する。また、日射計202は、第三地点に設置され、所定の時刻に第三日射強度を測定し、測定した当該第三日射強度を日射強度相互相関係数推定装置100に出力する。また、日射計203は、第四地点に設置され、所定の時刻に第四日射強度を測定し、測定した当該第四日射強度を日射強度相互相関係数推定装置100に出力する。
なお、本実施の形態では、日射計200は、少なくとも3つの日射計201、202、203を備えていることとし、当該3つの日射計201、202、203は、正三角形の各頂点となるような位置に配置されていることとする。なお、当該3つの日射計201、202、203は、正三角形の各頂点となるような位置に配置されているのが好ましいが、これに限定されるものではなく、正三角形の各頂点となるような位置に配置されていなくてもかまわない。
次に、日射強度相互相関係数推定装置100の詳細な機能構成について、説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
日射強度相互相関係数推定装置100は、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定する装置であり、同図に示すように、自己相関関数取得部110と、遅延時間取得部120と、相互相関係数推定部130と、記憶部140とを備えている。
自己相関関数取得部110は、所定の第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数を取得する。つまり、自己相関関数取得部110は、所定の第一地点において、日射強度の時系列データの相関性を示す自己相関関数を取得する。
具体的には、自己相関関数取得部110は、所定の第一地点に設置された日射計201から、所定の期間、日射計201が測定した日射強度である第一日射強度を取得する。そして、自己相関関数取得部110は、取得した第一日射強度の時系列データ(以下、第一日射強度時系列データという)を用いて、当該第一日射強度時系列データの自己相関関数を算出することで、当該自己相関関数を取得する。
なお、日射強度の時系列データとは、日射強度の時間に対する変化を示すデータであり、所定の期間において時間的に連続した複数のデータからなる。以下についても、同様である。
遅延時間取得部120は、第一地点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、所定の第二地点に到達するまでの期間(時間)である第一遅延時間を取得する。具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点を通過する風の風向きと風速とを取得し、取得した風向きと風速とを用いて、第一遅延時間を算出する。
さらに具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、所定の第三地点に到達するまでの期間(時間)である第二遅延時間を取得し、第一地点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、所定の第四地点に到達するまでの期間である第三遅延時間を取得する。なお、第三地点及び第四地点は、第一地点とは異なる任意の2地点である。
ここで、遅延時間取得部120は、第一地点と第三地点との間での日射強度時系列データの相互相関関数である第一相互相関関数を算出することにより、第二遅延時間を取得する。具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点での日射強度時系列データである第一日射強度時系列データと、第三地点での日射強度時系列データである第三日射強度時系列データとから、第一相互相関関数を算出する。そして、遅延時間取得部120は、第一相互相関関数において最大値をとる場合のラグを第二遅延時間として取得する。
また、遅延時間取得部120は、第一地点と第四地点との間での日射強度時系列データの相互相関関数である第二相互相関関数を算出することにより、第三遅延時間を取得する。具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点での日射強度時系列データである第一日射強度時系列データと、第四地点での日射強度時系列データである第四日射強度時系列データとから、第二相互相関関数を算出する。そして、遅延時間取得部120は、第二相互相関関数において最大値をとる場合のラグを第三遅延時間として取得する。
なお、遅延時間取得部120は、日射強度時系列データのクロススペクトルを算出することにより、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得することにしてもよい。具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点と第三地点との間での日射強度時系列データのクロススペクトルである第一クロススペクトルを算出することにより、第二遅延時間を取得する。さらに具体的には、遅延時間取得部120は、第一日射強度時系列データと第三日射強度時系列データとから、第一クロススペクトルを算出して、第一クロススペクトルの位相の傾きから、第二遅延時間を取得する。
つまり、横軸を角周波数(2×π×周波数)、縦軸を第一クロススペクトルの位相としたグラフに、各時間における第一クロススペクトルの位相の値をプロットする。そして、プロットされたグラフに回帰直線を引き、当該回帰直線の傾きを、第二遅延時間として算出する。このようにして、遅延時間取得部120は、第一クロススペクトルから第二遅延時間を取得することができる。
また同様に、遅延時間取得部120は、第一地点と第四地点との間での日射強度時系列データのクロススペクトルである第二クロススペクトルを算出することにより、第三遅延時間を取得する。つまり、遅延時間取得部120は、第一日射強度時系列データと第四日射強度時系列データとから、第二クロススペクトルを算出して、第二クロススペクトルの位相の傾きから、第三遅延時間を取得する。
ここで、遅延時間取得部120は、第一地点に設置された日射計201から、第一日射強度を取得する。つまり、遅延時間取得部120は、日射計201から、第一日射強度の時系列データである第一日射強度時系列データを取得する。また、遅延時間取得部120は、第三地点に設置された日射計202から、第三日射強度を取得する。つまり、遅延時間取得部120は、日射計202から、第三日射強度の時系列データである第三日射強度時系列データを取得する。また、遅延時間取得部120は、第四地点に設置された日射計203から、第四日射強度を取得する。つまり、遅延時間取得部120は、日射計203から、第四日射強度の時系列データである第四日射強度時系列データを取得する。これにより、遅延時間取得部120は、第一相互相関関数及び第二相互相関関数を算出し、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得する。
そして、遅延時間取得部120は、取得した第二遅延時間と第三遅延時間とを用いて、第一遅延時間を算出する。具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点と第三地点と第四地点との位置関係、及び、第二遅延時間と第三遅延時間とを用いて、第一地点を通過する風の風向きと風速とを算出することにより、第一遅延時間を算出する。
相互相関係数推定部130は、自己相関関数取得部110が取得した自己相関関数と、遅延時間取得部120が取得した第一遅延時間とを用いて、第一地点と第二地点との間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定する。具体的には、相互相関係数推定部130は、第一遅延時間経過後の当該自己相関関数の値を、当該相互相関係数として推定する。
具体的には、相互相関係数推定部130は、自己相関関数取得部110が取得した第一日射強度時系列データの自己相関関数に、第一遅延時間を代入することにより、当該自己相関関数の第一遅延時間経過後の値である自己相関係数を算出する。
そして、相互相関係数推定部130は、算出した当該自己相関係数を、第一地点と第二地点との間での同時刻における日射強度時系列データの相互相関係数の推定値とする。つまり、相互相関係数推定部130は、当該自己相関係数を、第一地点での日射強度時系列データである第一日射強度時系列データと第二地点での日射強度時系列データである第二日射強度時系列データとの同時刻における相互相関係数の近似値として使用する。
記憶部140は、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定するためのデータなどを記憶しているメモリである。具体的には、記憶部140は、日射計200から入力されるデータや、自己相関関数取得部110、遅延時間取得部120または相互相関係数推定部130が算出したデータなどを含む推定用データ141を記憶している。
なお、図示していないが、日射強度相互相関係数推定装置100は、キーボードやマウスなどの入力部や液晶ディスプレイなどの表示部を備えていてもよい。
次に、日射強度相互相関係数推定装置100が行う処理について、説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100が行う処理(日射強度相互相関係数推定方法)の一例を示すフローチャートである。
同図に示すように、まず、自己相関関数取得ステップとして、自己相関関数取得部110は、所定の第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数を取得する(S102)。
つまり、自己相関関数取得部110は、第一地点に設置された日射計201から、第一日射強度時系列データを取得する。具体的には、日射計201が測定した第一日射強度時系列データは、記憶部140の推定用データ141に記憶され蓄積されており、自己相関関数取得部110は、推定用データ141から、必要な期間の第一日射強度時系列データを読み出す。
そして、自己相関関数取得部110は、読み出した第一日射強度時系列データを用いて、当該第一日射強度時系列データの自己相関関数を算出することで、当該自己相関関数を取得する。そして、自己相関関数取得部110は、取得した当該自己相関関数を、記憶部140に記憶されている推定用データ141に書き込む。
なお、自己相関関数取得部110は、自ら当該第一日射強度時系列データの自己相関関数を算出するのではなく、外部の機器が当該第一日射強度時系列データを用いて算出した当該自己相関関数を、当該外部の機器から取得することにしてもよい。または、自己相関関数取得部110は、ユーザが算出した当該自己相関関数を、当該ユーザの入力により取得することにしてもよい。
次に、遅延時間取得ステップとして、遅延時間取得部120は、第一地点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、第二地点に到達するまでの期間(時間)である第一遅延時間を取得する(S104)。
具体的には、遅延時間取得部120は、第一地点を通過する風の風向きと風速とを取得し、取得した風向きと風速とを用いて、第一遅延時間を算出する。そして、遅延時間取得部120は、算出した第一遅延時間を、記憶部140に記憶されている推定用データ141に書き込む。この遅延時間取得部120が第一遅延時間を取得する処理の詳細な説明については、後述する。
次に、相互相関係数推定ステップとして、相互相関係数推定部130は、自己相関関数取得部110が取得した自己相関関数と、遅延時間取得部120が取得した第一遅延時間とを用いて、第一地点と第二地点との間での同時刻における日射強度時系列データの相互相関係数を推定する(S106)。
具体的には、相互相関係数推定部130は、記憶部140に記憶されている推定用データ141から、当該自己相関関数と第一遅延時間とを読み出す。そして、相互相関係数推定部130は、読み出した当該自己相関関数と第一遅延時間とを用いて、第一遅延時間経過後の当該自己相関関数の値を算出し、算出した当該自己相関関数の値を当該相互相関係数として推定する。そして、相互相関係数推定部130は、推定した当該相互相関係数を、記憶部140に記憶されている推定用データ141に書き込む。
ここで、相互相関係数推定部130が、第一地点での第一日射強度時系列データの自己相関関数の第一遅延時間経過後の値を、第一地点と第二地点との間での同時刻における日射強度時系列データの相互相関係数として推定することについて、具体的に説明する。
図4及び図5は、本発明の実施の形態に係る相互相関係数推定部130が、第一地点での第一遅延時間経過後の自己相関関数の値を、第一地点と第二地点との間での相互相関係数として推定することを説明する図である。
まず、図4に示すように、風向きに平行な軸(x軸)と風向きに垂直な軸(y軸)との直交座標系として、座標系を定義する。そして、第一地点をA点、第二地点をC点とする。また、A点から風向きに垂直な方向(y軸方向)に延ばした線と、C点から風向きに平行な方向(x軸方向)に延ばした線との交点をB点とする。また、A点(第一地点)での日射強度時系列データ(第一日射強度時系列データ)をf(t,r)とし、時間的(t)、
位置的(r)な定常性と独立性を仮定する。
また、A点の座標rに対し、C点の座標をr+Δrとする。つまり、A点とC点との座標の差は、Δrである。ここで、Δrの風向方向の射影ベクトルをΔxとし、風向方向と垂直方向の射影ベクトルをΔyとする。また、風向きの方向への風速をVとする。
このとき、C点には、A点と座標がΔyだけ離れたB点の雲が、Δt=|Δx|/V[s]後に形を変えつつ通過すると考えられる。このため、C点の日射強度時系列データ(以下、第二日射強度時系列データという)をf(t,r+Δr)として、第一日射強度時系
列データf(t,r)が進行する成分(進行波成分)と、時間と位置によるゆらぎε(t−Δt,r)とを利用して、以下の式1のように記述できると仮定する。
ここで、w(Δt,Δr)は忘却係数(0≦w(Δt,Δr)≦1を満足する係数)とする。
なお、上記のΔtは、A点(第一地点)から風向きに垂直な方向にあるB点に存在する雲が、C点(第二地点)に到達するまでの期間であり、遅延時間取得部120が取得する第一遅延時間である。
また、第一日射強度時系列データf(t,r)及びゆらぎε(t−Δt,r)の期待値Eと分散Vとを、以下の式2のように定義する。
また、f(t,r)とε(t−Δt,r)とが独立であると仮定すると、上記の式1から、以下の式3が成り立つ。
また、さらにf(t,r)の定常性を考慮すると、上記の式2と式3とから、以下の式4が成り立つ。
これにより、以下の式5を導出できる。
さらに、上記の式5から、0≦w(Δt,Δr)≦1を満足するためには、σf 2≧σε 2という条件を満足する必要があることがわかる。
ところで、A点とC点間の日射強度時系列データの相互相関関数CAC(τ)は、次の式6で定義される。ここで、τは、A点とC点間の時系列上のずれ(ラグ)であり、Covは共分散を意味している。
以下、上記の式6を変形して簡単な形にする。まずは、上記の式6に式1を代入すると、次の式7となる。
また、f(t,r)の定常性と、f(t,r)とε(t−Δt,r)とが独立であることを考慮すると、次の式8が得られる。
上記の式8を考慮して、式7を変形すると、次の式9が得られる。
ここで、A点での日射強度時系列データの自己相関関数CAA(τ)は、次の式10で定義される。
なお、自己相関関数CAA(τ)は、自己相関関数取得部110が取得する第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数である。そして、上記の式9に式10を代入すると、次の式11が得られる。
そして、さらに、上記の式11に式5を代入すると、次の式12が得られる。
このように、A点(第一地点)とC点(第二地点)との間での日射強度時系列データの相互相関関数CAC(τ)は、A点(第一地点)での日射強度時系列データの自己相関関数CAA(τ)を用いて表現される。
ここで、図5に示すように、A点での日射強度時系列データの自己相関係数CAA(τ)は、グラフPのように示される。相互相関関数CAC(τ)を説明するため、自己相関係数CAA(τ)に式12における係数を乗じた仮想的なグラフQを考える。当該係数は1よりも小さい値であるので、グラフQはグラフPが圧縮された形状となる。そして、式12における相互相関関数CAC(τ)は、グラフQをΔtだけ平行移動させたグラフRのように示される。
このため、同図において、グラフRにおけるτ=0の場合の値R1(相互相関係数CAC(0))は、グラフQにおけるτ=Δtの場合の値Q1と同じ値となる。また、グラフPにおけるτ=Δtの場合の値P1(自己相関係数CAA(Δt))は、この値R1及びQ1に近い値となる。つまり、相互相関係数CAC(0)を自己相関係数CAA(Δt)で近似することができる。
このように、A点とC点との間での同時刻(τ=0)における日射強度時系列データの相互相関係数は、上記の式12にτ=0を代入したCAC(0)となり、A点での日射強度時系列データの自己相関係数CAA(Δt)として表現される。つまり、相互相関係数推定部130は、第一地点での第一日射強度時系列データの自己相関関数CAA(τ)の第一遅延時間経過後の値CAA(Δt)を、第一地点と第二地点との間での同時刻における日射強度時系列データの相互相関係数CAC(0)として推定する。
具体的には、相互相関係数推定部130は、自己相関関数取得部110が取得した第一日射強度時系列データの自己相関関数CAA(τ)のτに第一遅延時間Δtを代入することにより、当該自己相関関数の第一遅延時間経過後の値である自己相関係数CAA(Δt)を算出する。そして、相互相関係数推定部130は、算出した自己相関係数CAA(Δt)を相互相関係数CAC(0)の推定値とする。つまり、相互相関係数推定部130は、自己相関係数CAA(Δt)を相互相関係数CAC(0)の近似値として使用する。
なお、自己相関係数CAA(Δt)は、相互相関係数CAC(0)よりも少し大きめの値となる。ここで、相互相関係数CAC(0)が小さい値の場合には、第一地点に設置された太陽光発電と第二地点に設置された太陽光発電とが異なる位相で発電を行うこととなるため、太陽光発電変動は、第一地点、あるいは、第二地点のどちらか一方の太陽光発電変動を2倍したものよりは小さくなり、商用電力系統への影響が小さくなるが、相互相関係数CAC(0)が大きい値の場合には、逆に、商用電力系統への影響が大きくなる。このため、相互相関係数CAC(0)を大きい値に推定した方が、商用電力系統への影響が大きくなる方向への推定となるため、安全サイドでの想定となっている。
以上により、日射強度相互相関係数推定装置100が所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定する処理は、終了する。
次に、遅延時間取得部120が第一遅延時間を取得する処理(図3のS104)について、詳細に説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係る遅延時間取得部120が第一遅延時間を取得する処理の一例を示すフローチャートである。また、図7〜図12Bは、本発明の実施の形態に係る遅延時間取得部120が第一遅延時間を取得する処理を説明する図である。
具体的には、図7は、本発明の実施の形態に係る遅延時間取得部120が第一相互相関関数及び第二相互相関関数を算出することにより第二遅延時間及び第三遅延時間を取得する処理を説明する図である。また、図8及び図9は、本発明の実施の形態に係る遅延時間取得部120が風向きと風速とを算出することにより第一遅延時間を算出する処理を説明する図である。
また、図10及び図11は、本発明の実施の形態に係る遅延時間取得部120が風向きと風速とを算出することにより第一遅延時間を算出する処理の他のケースを説明する図である。また、図12A及び図12Bは、本発明の実施の形態に係る遅延時間取得部120が第一遅延時間を算出する際の角度の定義について説明する図である。
まず、図6に示すように、遅延時間取得部120は、各地点での位置情報及び日射強度を取得する(S202)。つまり、遅延時間取得部120は、第一地点、第三地点及び第四地点に設置された日射計201、202及び203から、第一地点、第三地点及び第四地点の位置情報と、第一日射強度、第三日射強度及び第四日射強度とを取得する。
具体的には、第一地点、第三地点及び第四地点の位置情報と、日射計201、202及び203が測定した第一日射強度、第三日射強度及び第四日射強度の時系列データとは、記憶部140の推定用データ141に記憶され蓄積されている。そして、遅延時間取得部120は、推定用データ141から、第一地点、第三地点及び第四地点の位置情報と、第一日射強度時系列データ、第三日射強度時系列データ及び第四日射強度時系列データとを読み出すことで、取得する。
そして、遅延時間取得部120は、第一相互相関関数及び第二相互相関関数を算出する(S204)。つまり、遅延時間取得部120は、第一日射強度時系列データと第三日射強度時系列データとの間での相互相関関数である第一相互相関関数と、第一日射強度時系列データと第四日射強度時系列データとの間での相互相関関数である第二相互相関関数とを算出する。
具体的には、遅延時間取得部120は、第一日射強度時系列データと第三日射強度時系列データとから、第一相互相関関数を算出する。例えば、遅延時間取得部120は、図7に示すように、同図の(a)で示されるような第一日射強度時系列データと、同図の(b)で示されるような第三日射強度時系列データとから、同図の(c)で示されるような第一相互相関関数を算出する。また、同様に、遅延時間取得部120は、第一日射強度時系列データと第四日射強度時系列データとから、第二相互相関関数を算出する。
図6に戻り、次に、遅延時間取得部120は、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得する(S206)。つまり、遅延時間取得部120は、第一相互相関関数において最大値をとる場合のラグを第二遅延時間として取得する。また、遅延時間取得部120は、第二相互相関関数において最大値をとる場合のラグを第三遅延時間として取得する。
具体的には、図7に示すように、例えば、遅延時間取得部120は、同図の(c)で示されるような第一相互相関関数において最大値をとる場合のラグ(同図では、t秒)を、第二遅延時間として取得する。つまり、同図の(a)で示されるような日射強度時系列データからt秒遅延して、同図の(b)で示されるような日射強度時系列データが伝えられていることを示している。
図6に戻り、次に、遅延時間取得部120は、第一地点を通過する風の風向きと風速とを算出する(S208)。この遅延時間取得部120が当該風向きと風速とを算出する処理の詳細について、以下に説明する。
まず、図8に示すように、A点を原点とし、例えば、東西方向をx軸方向、南北方向をy軸方向とする直交座標系として、座標系を定義する。そして、第一地点をA点、第二地点をC点、第三地点をD点、第四地点をE点とする。また、同図に示す向きに、風速Vの風が吹いているとする。
ここで、遅延時間取得部120は、第一地点、第三地点及び第四地点の位置情報(座標)を取得しているため、A点、D点及びE点の位置情報(座標)は、既知である。このため、図9に示すように、遅延時間取得部120は、A点及びD点間の距離である線分adの長さと、A点及びE点間の距離である線分aeの長さと、D点及びE点間の距離である線分adの長さと、線分ad及び線分aeのなす角θとを算出することができる。
また、遅延時間取得部120は、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得しているため、図9に示す第二遅延時間τD及び第三遅延時間τEについても既知である。ここで、第二遅延時間τDは、A点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、D点に到達するまでの期間であり、第三遅延時間τEは、A点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、E点に到達するまでの期間である。
これにより、遅延時間取得部120は、例えば以下の式13により、風向きを示す角αと、風速Vとを算出する。なお、角αは、風向きと線分adとのなす角である。
なお、遅延時間取得部120は、風向きと線分aeとのなす角βを、風向きを示す角度として算出することにしてもよい。この場合、遅延時間取得部120は、線分aeと角βと第三遅延時間τEとを用いて、風速Vを算出することができる。
このように、遅延時間取得部120は、第一地点と第三地点と第四地点との位置関係、及び、第二遅延時間と第三遅延時間とを用いて、第一地点を通過する風の風向きと風速とを算出する。
次に、図6に戻り、遅延時間取得部120は、第一遅延時間を算出する(S210)。つまり、遅延時間取得部120は、算出した第一地点を通過する風の風向きと風速とから、第一遅延時間を算出する。
具体的には、図9に示すように、遅延時間取得部120は、風向きを示す角αと風速Vとを用いて、例えば以下の式14により、A点から風向きに垂直な方向に存在する雲が、C点に到達するまでの期間である第一遅延時間Δtを算出する。
ここで、γは、線分adと線分acとのなす角であり、線分acは、A点及びC点間の距離である。遅延時間取得部120は、C点の座標を取得することで、角γと線分acとを算出することができる。
なお、図9においては、第二遅延時間τD及び第三遅延時間τEがともに0ではない場合を図示しているが、第二遅延時間τD及び第三遅延時間τEのいずれか一方が0となるケース、あるいは、ともに0となるケースがある。
まず、第二遅延時間τD=0かつ第三遅延時間τE≠0のケースについて、説明する。このケースでは、図10に示すように、風向きは、線分adと垂直の方向となる。そして、遅延時間取得部120は、上記の式13及び式14に代えて以下の式15により、風速Vを算出し、第一遅延時間Δtを算出する。
次に、第二遅延時間τD≠0かつ第三遅延時間τE=0のケースについて、説明する。このケースでは、図11に示すように、風向きは、線分aeと垂直の方向となる。そして、遅延時間取得部120は、上記の式13及び式14に代えて以下の式16により、風速Vを算出し、第一遅延時間Δtを算出する。
最後に、第二遅延時間τD=0かつ第三遅延時間τE=0のケースについて、説明する。この場合には、雲が移動していないと考え、Δt=0とする。
また、遅延時間取得部120は、上記の各ケースにおいて、第一遅延時間Δtを算出するために、線分ad及び線分aeのなす角θと、線分ad及び線分acのなす角γとを、図12A及び図12Bに示すような定義とする必要がある。
つまり、図12Aに示すように、AEベクトル×ADベクトル>0となるように、A点、D点及びE点の位置関係を決定する。また、図12Bに示すように、ACベクトル×ADベクトル>0の場合にはγは正と定義し、ACベクトル×ADベクトル<0の場合にはγは負と定義する。
また、上記の各ケースにおいて、D点及びE点は、任意の位置に配置されていればよいが、計算の精度向上の観点から、A点、D点及びE点は、正三角形の各頂点となるような位置に配置されるのが好ましい。つまり、3つの日射計を正三角形の各頂点となるような位置に配置するのが好ましい。また、当該正三角形の各辺の長さ(つまり、日射計の配置間隔)は、日射強度の相関がはっきりと持続する(相互相関関数がきれいに計算できる)距離とするのが好ましい。
本願発明者は、鋭意実験と研究の結果、日射計の配置間隔を約2kmとすれば、日射強度の相関が持続することを見出した。また、相互相関係数を推定するためには、約5km四方が限界であることも見出した。つまり、本願発明者は、約5km四方ごとに、3つの日射計を一辺が2kmの正三角形型に配置すれば、日射強度の面的推定を精度良く行うことが可能となることを見出した。
以上により、遅延時間取得部120が第一遅延時間を取得する処理(図3のS104)は、終了する。
次に、日射強度相互相関係数推定装置100が算出するデータとして、遅延時間取得部120が算出した第一遅延時間と、相互相関係数推定部130が推定した相互相関係数との実測値に対する誤差について、説明する。
図13〜図19は、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100が算出した第一遅延時間と、推定した相互相関係数との実測値に対する誤差について、説明する図である。
まず、図13は、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100が日射強度を取得する日射計の位置関係を示す図である。
同図に示すように、11個の日射計(シリコン型全天日射計)が、11箇所の地点に配置されている。ここで、A点で示されるS32地点が第一地点であり、D点で示されるS22地点が第三地点であり、E点で示されるS33地点が第四地点である。また、その他の地点は、第二地点である。
また、図14A〜図15Bは、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100が算出した第一遅延時間の実測値に対する誤差を示すグラフである。
具体的には、図14Aは、最も誤差が小さいS34地点における第一遅延時間の実測値に対する誤差を示すグラフであり、図14Bは、図14Aを横軸方向に拡大した図である。また、図15Aは、最も誤差が大きいS14地点における第一遅延時間の実測値に対する誤差を示すグラフであり、図15Bは、図15Aを横軸方向に拡大した図である。
これらの図に示すように、S32地点(第一地点)に比較的近い地点が、誤差が小さく、S32地点(第一地点)に比較的遠い地点が、誤差が大きくなる傾向にある。
いずれの地点においても、第一遅延時間の誤差は、ほぼ|10|sec以内に収まっている(±10sec以内に収まっている)。また、いずれの地点においても、誤差が非常に大きい日(S34地点ではT1、S14地点ではT2及びT3)が含まれているが、全体的には比較的精度良く推定できていると言える。または、これらの誤差が非常に大きい日を排除すれば、非常に精度良く推定できていると言える。なお、これらの誤差の分析のために利用した真値は、A点(S32地点)とそれぞれの検証地点における遅延時間とし、図6で説明した方法に基づいて算出した値を利用した。
また、図16A及び図16Bは、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100が推定した相互相関係数の実測値に対する誤差を示すグラフである。
具体的には、図16Aは、最も誤差が小さいS34地点における相互相関係数の実測値に対する誤差を示すグラフであり、図16Bは、最も誤差が大きいS14地点における相互相関係数の実測値に対する誤差を示すグラフである。
これらの図に示すように、S32地点(第一地点)に比較的近い地点が、誤差が小さく、S32地点(第一地点)に比較的遠い地点が、誤差が大きくなる傾向にある。
また、いずれの地点においても、相互相関係数の誤差は、ほぼ|0.1|以内に収まっている(±0.1以内に収まっている)。特に、相互相関係数の誤差は、ほぼ0〜0.1内に収まっており、プラス側の誤差となっている。このため、相互相関係数は実測値よりも大きく推定される傾向にあり、上述の通り、商用電力系統への影響が大きくなる方向への推定となるため、安全サイドでの想定となっている。
また、いずれの地点においても、誤差が非常に大きい日(S34地点ではT4、S14地点ではT5)が含まれているが、全体的には比較的精度良く推定できていると言える。または、これらの誤差が非常に大きい日を排除すれば、非常に精度良く推定できていると言える。
また、図17は、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100が算出した第一遅延時間及び相互相関係数の実測値に対する誤差を示す図である。
同図に示すように、第一遅延時間の推定精度が悪い日であっても、相互相関係数の推定精度にはあまり悪影響を及ぼさず、相互相関係数の推定精度は比較的高くなっている。
つまり、第一遅延時間(雲の移動速度)の推定精度は比較的高く、また、相互相関係数の推定誤差も、おおよそ|0.1|以内に収まっており、推定精度は比較的高い。また、第一遅延時間の推定誤差が非常に大きくなっても、そのような日は、相互/自己相関係数の低下度合いが緩やかであるため、相互相関係数の推定誤差は小さくなることが確認できた。なお、図15AのT2は図17の2012.08.25にあたり、図15AのT3は図17の2012.12.29にあたる。
以上のように、本発明の実施の形態に係る日射強度相互相関係数推定装置100によれば、第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数と、第一地点から風向きに垂直な方向に存在する雲が第二地点に到達するまでの期間である第一遅延時間とを用いて、第一地点と第二地点との間での同時刻における日射強度時系列データの相互相関係数を推定する。つまり、上述のように、日射強度相互相関係数推定装置100は、3地点に設置された3つの日射計201、202、203から日射強度を取得することで、第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数と第一遅延時間とを取得して、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。このため、日射強度相互相関係数推定装置100は、多くの日射計を必要とすることなく、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。
また、本願発明者は、鋭意研究と検討の結果、第一地点と第二地点との間での日射強度時系列データの相互相関係数として、第一遅延時間経過後の第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数の値を用いることができることを見出した。このため、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一遅延時間経過後の第一地点での当該自己相関関数の値を、第一地点と第二地点との間での当該相互相関係数として推定することで、簡易に、所定の2地点間での当該相互相関係数を推定することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点から風向きに垂直な方向に存在する雲が第三地点及び第四地点に到達するまでの期間である第二遅延時間及び第三遅延時間を用いて、第一遅延時間を算出する。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と異なる2つの地点との間の2つの遅延時間を取得することで、簡易に、第一遅延時間を算出して、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と第三地点と第四地点との位置関係、及び、第二遅延時間と第三遅延時間とを用いて、第一地点を通過する風の風向きと風速とを算出することにより、第一遅延時間を算出する。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と異なる2つの地点との位置関係、及び、第一地点と異なる2つの地点との間での2つの遅延時間を取得して、第一地点を通過する風の風向きと風速とを算出することにより、簡易に、第一遅延時間を算出することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と第三地点及び第四地点との間での日射強度時系列データの相互相関関数である第一相互相関関数及び第二相互相関関数を算出することにより、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得する。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と異なる2つの地点との間での2つの相互相関関数を算出することにより、簡易に、第一地点と異なる2つの地点との間での2つの遅延時間を取得して、第一遅延時間を算出することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一相互相関関数及び第二相互相関関数において最大値をとる場合のラグを第二遅延時間及び第三遅延時間として取得する。このため、日射強度相互相関係数推定装置100は、簡易に、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得して、第一遅延時間を算出することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点での第一日射強度時系列データと、第三地点及び第四地点での第三日射強度時系列データ及び第四日射強度時系列データとから、第一相互相関関数及び第二相互相関関数を算出する。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と異なる2つの地点との日射強度の時間に対する変化を取得することで、簡易に、第一地点と異なる2つの地点との2つの相互相関関数を算出して、第一遅延時間を算出することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点、第三地点及び第四地点に設置された日射計201、202、203から第一日射強度時系列データ、第三日射強度時系列データ及び第四日射強度時系列データを取得することで、第一相互相関関数及び第二相互相関関数を算出する。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、3地点に設置された3つの日射計201、202、203から日射強度時系列データを取得することで、第一地点と異なる2つの地点との間での2つの相互相関関数を算出して、第一遅延時間を算出することができる。このため、日射強度相互相関係数推定装置100によれば、多くの日射計を必要とすることなく、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。
また、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と第三地点及び第四地点との間での日射強度時系列データのクロススペクトルを算出することにより、第二遅延時間及び第三遅延時間を取得する。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点と異なる2つの地点との間での2つのクロススペクトルを算出することにより、簡易に、第一地点と異なる2つの地点との間での2つの遅延時間を取得して、第一遅延時間を算出することができる。
(変形例)
次に、上記実施の形態の変形例に係る日射強度相互相関係数推定装置100について、説明する。本変形例では、相互相関係数推定部130が上記実施の形態とは異なる数式を用いて相互相関関数を推定する。
つまり、上記実施の形態における図3の相互相関係数推定部130が相互相関係数を推定する処理(図3のS106)、図4及び図5での説明において、相互相関係数推定部130は、減衰効果(上記実施の形態では忘却係数w(Δt,Δr))も推定することで、相互相関関数を算出する。具体的には、相互相関係数推定部130は、図5のグラフRで示される相互相関関数を算出する。なお、「相互相関関数」とは、「複数の連続した相互相関係数」で示される関数のことであり、相互相関係数推定部130は、複数の連続した相互相関係数で示される相互相関関数を算出する。
具体的には、1地点(第一地点)の日射計から得られた日射強度時系列データの自己相関関数から、日射計が存在しない周辺地点(第二地点)との相互相関関数の推定を可能にする時空間減衰モデルについて、以下の2つの条件に分けて説明する。
(a)積雲や層積雲のような比較的細切れの雲の移動に伴い類似の日射強度変動が2地点間で遅延して観測される場合。
(b)快晴日や曇天日のように類似の日射強度変動が2地点間で遅延せずに観測される場合。
まず、上記の条件(a)の、積雲や層積雲のような比較的細切れの雲の移動に伴い類似の日射強度変動が2地点間で遅延して観測される場合について、説明する。この場合、日射変動の主な要因が雲の移動等によるものであると考え、下記の4つの仮定を行う。なお、日射変動の上述したもの以外の要因については、時間的外乱、空間的外乱として扱うことにする。
(1a)2地点間の距離が離れるほど、日射強度に影響を及ぼす上空の雲、周囲の地形や建物等の状況も徐々に異なってくると考え、風向きと垂直な方向では、2地点間の日射強度の相関が空間的に一次減衰すると仮定する。
(2a)日射強度変動は雲が移動することにより伝わるが、その雲は形を変えながら移動するため、日射強度変動はそのままの形では伝わらないと考え、風向方向では、2地点間の日射強度時系列データの相関が時間的に一次減衰すると仮定する。
(3a)日射強度時系列データの時間的、空間的な定常性を仮定する。
(4a)日射強度時系列データに対する時間的、空間的外乱の独立性を仮定する。
これらの仮定の下では、2地点間の相互相関関数が、1地点の自己相関関数を用いて記述できることを図18を用いて説明する。図18は、本発明の実施の形態の変形例に係る相互相関係数推定部130が、第一地点での自己相関関数を用いて第一地点と第二地点との間での相互相関関数を推定する処理を説明する図である。
同図に示すように、風向きに平行な軸をy軸、風向きに垂直な軸をx軸とする直交座標系を定義する。そして、A点の座標をr=(rx,ry)T、A’点の座標をr’=(rx+Δx,ry)T、D点の座標をr+Δr=(rx+Δx,ry+Δy)Tとする(Tは、転置行列を示す)。
なお、本変形例においては、上記実施の形態とは異なる定義を行っている箇所がある。例えば、本変形例におけるx軸(風向きに垂直な軸)は、上記実施の形態での図4におけるy軸に相当し、本変形例におけるy軸(風向きに平行な軸)は、上記実施の形態での図4におけるx軸に相当する。また、本変形例におけるA点は、上記実施の形態での図4におけるA点(第一地点)に相当し、本変形例におけるA’点は、上記実施の形態での図4におけるB点に相当し、本変形例におけるD点は、上記実施の形態での図4におけるC点(第二地点)に相当する。その他についても、本変形例中で行う定義は、上記実施の形態で行った定義と異なる場合があるが、詳細な説明は省略する。
上記(1a)、(3a)、(4a)が成立するときに成り立つ関係式の1つとして、以下の式17の関係式が考えられる。以下の式17は、A点において時刻tに観測される日射強度時系列データをf(t,r)としたときに、座標がx軸方向にΔxだけ離れたA’点及びA点の日射強度時系列データf(t,r’)及びf(t,r)の間に成り立つ関係式である。
ここで、αは減衰係数、ε1(Δx)は空間的外乱である。ところで、上記の仮定(3a)より、雲は一定風速Vで移動すると考えると、D点には、A点と座標がx軸方向にΔxだけ離れたA’点の雲が、Δτ=Δy/V後に形を変えつつ通過する。このΔτは、上記実施の形態でのΔt(第一遅延時間)に相当する。
これにより、上記の仮定(2a)、(3a)、(4a)が成立するときに成り立つ関係式の1つとして、以下の式18の関係式が考えられる。以下の式18は、D点において時刻t+Δτに観測される日射強度時系列データf(t+Δτ,r+Δr)と、D点から座標がy軸方向にΔyだけ離れたA’点において時刻tに観測される日射強度時系列データf(t,r’)との間に成り立つ関係式である。
ここで、βは減衰係数、ε2(Δτ)は時間的外乱である。このとき、2地点(AD地点、つまり第一地点及び第二地点)間の相互相関関数が1地点(A地点、つまり第一地点)の自己相関関数を用いて記述できることを示す以下の式19が成り立つ。
ただし、自己相関関数CAA(τ)は、以下の式20に示される通りである。
また、相互相関関数CAD(τ)は、以下の式21に示される通りである。
なお、Cov[]は時間について共分散をとる演算子であり、Var[]は時間について分散をとる演算子である。このVar[]は、上記実施の形態でのV[]に相当する。また、上記の式19における係数e−α|Δx|−β|Δτ|は、0≦e−α|Δx|−β|Δτ|≦1である。
つまり、相互相関係数推定部130は、第一遅延時間(Δτ)経過後の第一地点(A点)での日射強度時系列データの自己相関関数CAA(τ)の値に0以上1以下の所定の係数を乗じて得られる値を、第一地点(A点)と第二地点(D点)との間での日射強度時系列データの相互相関関数CAD(τ)として推定する。なお、相互相関関数CAD(τ)は、第一地点と第二地点との間での複数のラグτにおける連続した相互相関係数で示される関数である。
図5を用いて具体的に説明すると、相互相関係数推定部130は、グラフPで示される自己相関関数を第一遅延時間遅らせて(平行移動させて)当該所定の係数を乗じる(圧縮する)ことで、グラフRで示される相互相関関数を算出する。または、相互相関係数推定部130は、グラフPで示される自己相関関数に当該所定の係数を乗じて(圧縮して)から第一遅延時間遅らせる(平行移動させる)ことで、グラフRで示される相互相関関数を算出する。
ここで、上記の式19は、以下のように証明される。つまり、上記の式18と仮定(3a)とから、以下の式22が成り立つ。
一方、上記の式17と仮定(3a)とから、以下の式23が成り立つ。
ここで、上記の式22に式23を代入すると、以下の式24となる。
さらに、上記の式24と仮定(3a)とから、以下の式25となる。
ところで、上記の式21の分子は、式25を代入すると、以下の式26のように変形できる。
ここで、E[]は時間について期待値をとる演算子である。さらに、上記の式26は、仮定(4a)により、以下の式27となる。
ところで、上記の式20から、以下の式28となる。
一方、上記の式21と式28の分母は、以下の式29とおくと、上記の仮定(3a)より、以下の式30となる。
最後に、上記の式21に、式27、式28及び式30を代入すると、式19が得られる。そして、式19から、A点とD点との相互相関関数CAD(τ)は、α、β、Δτ、Δxが既知であれば、A点の自己相関関数CAA(τ)から推定できることがわかる。
そして、Δτ(第一遅延時間)は、上記実施の形態での遅延時間取得部120が第一遅延時間を取得する処理(図3のS104)で説明した通り、風向きと風速とが推定できれば算出できる。また、Δxは、座標軸を決めるためには風向きが必要であるため、風向きが推定できれば算出できる。また、風向きと風速については、上記実施の形態での遅延時間取得部120が風向きと風速とを算出する処理(図6のS208)によって算出できる。詳細については、上記実施の形態と同様であるため、説明は省略する。なお、α及びβの推定方法については、後述する。
次に、上記の条件(b)の、快晴日や曇天日のように類似の日射強度変動が2地点間で遅延せずに観測される場合について、説明する。この場合、日射変動の主な要因が上空の雲、周囲の地形や建物等からの乱反射によるものであると考え、下記の3つの仮定を行う。なお、日射変動の上述したもの以外の要因については、空間的外乱として扱うことにする。
(1b)2地点間の距離が離れるほど、日射強度に影響を及ぼす上空の雲、周囲の地形や建物等の状況も徐々に異なってくると考え、2地点間の日射強度の相関が空間的に一次減衰すると仮定する。
(2b)日射強度時系列データの時間的、空間的な定常性を仮定する。
(3b)日射強度時系列データに対する空間的外乱の独立性を仮定する。
なお、仮定(2b)、(3b)は、上記の(3a)、(4a)にそれぞれ相当する条件である。これらの仮定の下では、2地点間の相互相関関数が1地点の自己相関関数の関数として記述できることを、上記の式19での説明と同様の考え方により、以下で説明する。
A点の座標をr、D点の座標をr+Δr、A点とD点とにおいて時刻tに観測される日射強度時系列データをそれぞれf(t,r)、f(t,r+Δr)とする。このとき、A点とD点とでは上空の雲、周囲の地形や建物等の状況が異なると考えると、上記の仮定(1b)、(2b)、(3b)が成立するときに成り立つ関係式の1つとして、以下の式31の関係式が考えられる。
ここで、αは減衰係数、ε1(Δr)は空間的外乱である。そして、上記の式31と仮定(2b)とから、以下の式32が成り立つ。
ここで、上記の式21の分子は、式32を代入して、式19の証明と同様の計算を行うと、以下の式33となる。
そして、上記の式21に、式20、式30及び式33を代入すると、以下の式34となる。
これにより、A点とD点との相互相関関数CAD(τ)は、αが既知であれば、A点の自己相関関数CAA(τ)から推定できることがわかる。なお、αの推定方法については、後述する。
なお、上記の式34における係数e−α|Δr|は、0≦e−α|Δr|≦1である。つまり、相互相関係数推定部130は、この場合においても、第一遅延時間(Δτ=0)経過後の第一地点(A点)での日射強度時系列データの自己相関関数CAA(τ)の値に0以上1以下の所定の係数を乗じて得られる値を、第一地点(A点)と第二地点(D点)との間での日射強度時系列データの相互相関関数CAD(τ)として推定する。
次に、減衰係数α及びβの推定方法について説明する。なお、この減衰係数の推定には、3つの日射計から得られる日射強度時系列データを用いるが、当該3つの日射計は一直線上にないという仮定を設けることとする。減衰係数の算出に際して、方程式を解くために、B−C点のx軸方向及びy軸方向の比が、A−B点あるいはA−C点のx軸方向及びy軸方向の比と一致しないようにするためである。
まず、上記の条件(a)の日射強度変動が2地点間で遅延して観測される場合について、説明する。この場合、3つの日射計から得られる日射強度時系列データより導出される3つの関係式を用いる。まずは、その3つの関係式の導出について、図19を用いて説明する。図19は、本発明の実施の形態の変形例に係る相互相関係数推定部130が、減衰係数を推定する処理を説明する図である。
同図における座標系では、図18と同様に、風向きと平行な軸をy軸、風向きと垂直な軸をx軸とする。そして、A点の座標をr、B点の座標をr+Δrb、C点の座標をr+Δrcとし、Δrb=(Δxb,Δyb)T、Δrc=(Δxc,Δyc)Tとする。また、風速はVであるとし、雲はこの速さで移動すると考える。このとき、B点には、A点と座標がx軸方向にΔxbだけ離れた地点の雲が、ΔτAB=Δyb/V後に、C点には、A点と座標がx軸方向にΔxcだけ離れた地点の雲が、ΔτAC=Δyc/V後に、それぞれ、形を変えつつ通過する。
A点、B点、C点に日射計が設置されている場合、A点とB点、及び、A点とC点の日射強度時系列データの相互相関関数CAB(τ)、CAC(τ)をそれぞれ算出できる。また、上述のΔτAB、ΔτACも、それぞれ、CAB(τ)、CAC(τ)の最大値をとるラグτとして算出することができる。さらに、以下の式35とおくと、上記の式19から、以下の式36の関係式が得られる。
一方、今度は、B点とC点との関係に着目する。B点とC点との座標の差をΔrbc=Δrc−Δrb=(Δxbc,Δybc)Tとすれば、C点には、B点と座標がx軸方向にΔxbcだけ離れた地点の雲が、ΔτBC=Δybc/V後に、形を変えつつ通過する。このとき、B点とC点との日射強度時系列データの相互相関関数CBC(τ)は、CAB(τ)やCAC(τ)と同様、簡単に算出でき、また、ΔτBCもCBC(τ)の最大値をとるラグτとして算出することができる。さらに、上記の式36と同様、式19から、以下の式37の関係式が得られる。なお、CBB(τ)は、B点の自己相関関数である。
ここで、本変形例では、相互相関係数推定部130は、導出した式36及び式37を用いて、減衰係数α及びβを推定するが、以下でその推定手法について説明する。
本来、関係式が2つあれば、α及びβを一意に推定可能である。しかし、風向きや各種推定誤差などの影響を排除して安定に推定するため、本変形例では、相互相関係数推定部130は、複数(以下、n個とする)のラグτについて上記の式36及び式37を算出し、そのようにして得られた複数の関係式から、最小二乗法を利用して、減衰係数α及びβを推定する。
まず、n個のラグτ1≦τ≦τnについて、上記の式36及び式37を算出し、それぞれ左辺と右辺を入れ替えた上で自然対数をとって行列形式を求めると、以下の式38〜式41の関係式を得ることができる。
ここで、推定誤差がなければ、上記の式38は成り立つが、推定誤差があるため、相互相関係数推定部130は、最小二乗法を利用して、以下の式42を満足する最小二乗解xを、以下の式43により求める。
ここで、3つの日射計が一直線上にないという仮定より、上記の式40のAは任意の風向きについて常に列フルランクであるため、最小二乗解を持つ。なお、式40中のΔxb、Δxc、Δxbc、Δyb、Δyc、Δybcの算出のためには、風向きが必要であるが、風向きの推定方法については、上記実施の形態での遅延時間取得部120が行う処理(図6のS208)と同様であるため、説明は省略する。
以上のように、相互相関係数推定部130は、第一地点(A点)を含む異なる3地点(A、B、C点)における異なる3つの2地点間(AB間、AC間、BC間)での日射強度時系列データの相互相関関数を用いて、減衰係数α及びβを算出する。そして、相互相関係数推定部130は、減衰係数α及びβを用いて、上記の式19における所定の係数e−α|Δx|−β|Δτ|を算出する。
次に、上記の条件(b)の日射強度変動が2地点間で遅延せずに観測される場合について、説明する。この場合、3つの日射計から得られる日射強度時系列より導出される3つの関係式を用いる。日射計は、座標がrであるA点、座標がr+ΔrbであるB点、座標がr+ΔrcであるC点に設置されているとする。また、B点とC点との距離を|Δrc−Δrb|=|Δrbc|とする。ここで、A点とB点、A点とC点、B点とC点の日射強度時系列データの相互相関関数を、それぞれ、CAB(τ)、CAC(τ)、CBC(τ)とし、上記の式34を用いて、それらを求めると、以下の式44となる。
さらに、上述の条件(a)の場合と同様に、n個のラグτ1≦τ≦τnについて、上記の式44を算出し、それぞれ左辺と右辺とを入れ替えた上で自然対数をとって行列形式を求めると、以下の式45〜式47の関係式を得ることができる。
本変形例では、相互相関係数推定部130は、上述の条件(a)の場合と同様に、上記の式45〜式47に最小二乗法を適用し、減衰係数αを推定する。
以上のように、相互相関係数推定部130は、第一地点(A点)を含む異なる3地点(A、B、C点)における異なる3つの2地点間(AB間、AC間、BC間)での日射強度時系列データの相互相関関数を用いて、減衰係数αを算出する。そして、相互相関係数推定部130は、減衰係数αを用いて、上記の式34における所定の係数e−α|Δr|を算出する。
次に、相互相関係数推定部130が推定した相互相関係数の実測値に対する誤差について、説明する。なお、上述した図13の場合と同様に、相互相関係数の算出を行うための異なる3つの地点は、S32地点(A点)、S22地点(本変形例では、B点)及びS33地点(本変形例では、C点)である。また、本変形例では、S13地点(D点)での相互相関係数(S32地点とS13地点との間の相互相関係数)を推定する。
図20A及び図20Bは、本発明の実施の形態の変形例に係る相互相関係数推定部130が推定した相互相関係数の実測値に対する誤差を示すグラフである。
具体的には、図20Aは、上記実施の形態におけるS13地点での相互相関係数の実測値に対する誤差を示すグラフであり、図20Bは、本変形例におけるS13地点での相互相関係数の実測値に対する誤差を示すグラフである。
なお、これらの図においては、相互相関係数CAD(0)の推定誤差のヒストグラムを示している。また、これらの図において、上記の式38〜式41または式45〜式47で利用したラグは、日射計間の距離と平均的な風速等を考慮し、−30sec≦τ≦30secで1sec刻み(つまり、n=61個のラグを利用)とした。なお、このラグについては、一般的には、本変形例のように、相互相関係数を求めた地点間の距離と平均的な風速等を考慮して決めればよい。
図20Aに示すように、上記実施の形態においては、誤差の大部分が0以上となっており過大傾向にあるが、図20Bに示すように、本変形例では、誤差の偏りが小さい。また、上記実施の形態においては、誤差は、平均値0.0261、標準偏差0.0460、RMSE0.0529であったのに対し、本変形例では、平均値−0.00427、標準偏差0.0280、RMSE0.0284であった。
このため、本変形例に係る相互相関係数推定部130が推定した相互相関係数の実測値に対する誤差は、上記実施の形態に比べて、偏りが小さく、平均値が0に近く、標準偏差が小さく、RMSEも小さい結果となり、非常に精度良く推定できていると言える。
以上のように、本変形例に係る日射強度相互相関係数推定装置100によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本願発明者は、鋭意研究と検討の結果、第一地点と第二地点との間での日射強度時系列データの相互相関関数として、第一遅延時間経過後の第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数の値に0以上1以下の所定の係数を乗じて得られる値を用いることができることを見出した。このため、日射強度相互相関係数推定装置100は、当該自己相関関数の値に当該所定の係数を乗じて得られる値を当該相互相関関数として推定することで、簡易に、当該相互相関関数を推定することができる。
また、相互相関係数推定部130は、異なる3地点における異なる3つの2地点間での日射強度時系列データの相互相関関数を用いて、精度良く、所定の係数を算出することができる。
また、上記実施の形態では、相互相関係数推定部130は、第一地点と第二地点との間での同時刻における日射強度時系列データの相互相関係数を推定することとしたが、本変形例では、相互相関係数推定部130は、第一地点と第二地点との間での日射強度時系列データの相互相関関数を推定する。つまり、本変形例では、相互相関係数推定部130は、第一地点と第二地点との間での異なる時刻における日射強度時系列データの相互相関係数も推定することができる。図21は、本発明の実施の形態の変形例に係る日射強度相互相関係数推定装置100が奏する効果を説明する図である。
同図に示すように、相互相関係数推定部130は、第一地点(例えばA点)と第二地点(D点)との間での同時刻(時刻=t)及び異なる時刻(時刻=t−Δt、t−2Δt等)における日射強度時系列データの相互相関係数を推定する。これにより、過去のデータから当該相互相関係数を予測したり、補間したりすることができる。
このように、本変形例に係る日射強度相互相関係数推定装置100によれば、相互相関係数推定部130が相互相関関数を推定することで、日射強度の時空間相関構造が明らかになり、短時間予測手法や時空間の情報を利用した補間法(最尤推定法)への応用を図ることができる。
なお、上記変形例では、相互相関係数推定部130は、減衰係数の推定精度を向上させるために、複数(n個)のラグτについて式36及び式37、または式44を算出して、減衰係数を推定することとした。しかし、相互相関係数推定部130は、1つのラグτについて式36及び式37、または式44を算出することで、簡易に、減衰係数を推定することにしてもよい。
また、上記変形例では、相互相関係数推定部130は、減衰係数の推定精度を向上させるために、異なる3地点における異なる3つの2地点間での相互相関関数CAB(τ)、CAC(τ)及びCBC(τ)を用いて、最小二乗法によって減衰係数を算出することとした。しかし、2つの係数は2つの関数から算出することができ、1つの係数は1つの関数から算出することができる。
このため、上記の条件(a)の場合には、相互相関係数推定部130は、異なる3地点における異なる2つの2地点間(例えば、AB間、AC間)での日射強度時系列データの相互相関関数(例えば、CAB(τ)及びCAC(τ))を用いて、減衰係数α及びβを算出することにしてもよい。また、上記の条件(b)の場合には、相互相関係数推定部130は、異なる3地点における1つの2地点間(例えば、AB間)での日射強度時系列データの相互相関関数(例えば、CAB(τ))を用いて、減衰係数αを算出することにしてもよい。これにより、相互相関係数推定部130は、最小限の相互相関関数を用いて、簡易に、所定の係数を算出することができる。
なお、本発明は、このような日射強度相互相関係数推定装置100として実現することができるだけでなく、日射強度相互相関係数推定装置100と、3つの日射計201、202、203とを備える日射強度相互相関係数推定システム10としても実現することができる。つまり、上述のように、日射強度相互相関係数推定装置100は、3地点に設置された3つの日射計201、202、203から日射強度を取得することで、第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数と第一遅延時間とを取得して、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。このため、日射強度相互相関係数推定システム10は、3つの日射計201、202、203を備えていることで、気象データ等から第一遅延時間を取得することなく、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。
また、日射強度相互相関係数推定システム10において、3つの日射計201、202、203は、正三角形の各頂点となるような位置に配置されている。ここで、本願発明者は、3つの地点の位置関係から第一遅延時間を算出する際に、当該3つの地点が正三角形に配置されている場合に、第一遅延時間を精度良く算出することができることを見出した。このため、日射強度相互相関係数推定システム10において、第一遅延時間を精度良く算出することで、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を精度良く推定することができる。
また、本発明は、日射強度相互相関係数推定装置100に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする日射強度相互相関係数推定方法としても実現することができる。また、当該日射強度相互相関係数推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムや集積回路として実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る日射強度相互相関係数推定装置100及び日射強度相互相関係数推定システム10について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、上記実施の形態では、相互相関係数推定部130は、第一地点での第一遅延時間経過後の自己相関関数の値を、2地点間での相互相関係数として推定することとした。しかし、相互相関係数推定部130は、当該相互相関係数を当該自己相関関数の値に近似することなく、上記の式12または式19に従った数式にて、当該相互相関係数を算出することにしてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、日射計201は、少なくとも3つの日射計201、202、203を備えていることとした。しかし、日射計201は、1つの日射計しか備えていない構成でもかまわない。つまり、日射計201は、例えば、少なくとも第一地点に設置された少なくとも1つの日射計201を備えている構成であってもかまわない。
この場合、日射強度相互相関係数推定装置100は、第一地点での日射強度時系列データの自己相関関数を、第一地点に設置した1つの日射計201から取得することができ、また、第一遅延時間を、気象データ(例えば、風向、風速データ)等から取得することができる。このため、1つの日射計201で2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができるため、多くの日射計を必要とすることなく、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。つまり、日射強度相互相関係数推定装置100は、気象データ等から、第一地点を通過する風の風向きと風速とを取得することで、簡易に、第一遅延時間を算出して、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。
また、上記実施の形態及びその変形例では、日射強度相互相関係数推定装置100は、日射強度時系列データを用いて、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することとした。しかし、日射強度相互相関係数推定装置100は、日射強度時系列データの代わりに、日射強度時系列データから算出される晴天指数を用いて、当該相互相関係数を推定することにしてもよい。なお、晴天指数とは、大気上端における理論日射強度に対する観測地点における日射強度の割合である。
また、本発明は、このような日射強度相互相関係数推定装置100として実現することができるだけでなく、日射強度相互相関係数推定装置100と、少なくとも第一地点に設置された少なくとも1つの日射計201とを備える日射強度相互相関係数推定システム10としても実現することができる。つまり、上述のように、日射強度相互相関係数推定装置100は、気象データ等から第一遅延時間を取得することができれば、1つの日射計201で2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。このため、日射強度相互相関係数推定システム10は、少なくとも1つの日射計201を備えていることで、所定の2地点間での日射強度時系列データの相互相関係数を推定することができる。
なお、上記実施の形態及びその変形例において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。