JP2016031255A - 相分離構造観察方法 - Google Patents

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【課題】試料作製にあまり手間をかけることなく、SEMにより相分離構造を観察する方法を提供する。【解決手段】第1工程S101で、基板の上に相分離構造膜を形成する(分離構造形成工程)。次に、第2工程S102で、所定の処理室内に相分離構造膜を形成した基板を搬入して載置し、この処理室内に金属錯体または有機金属のガスを導入する(付着工程)。このガス導入により、ガスを相分離構造膜に接触させ、観察領域の第1領域に金属錯体または有機金属を選択的に付着させる。次に、第3工程S103で、処理室内で金属錯体または有機金属を分解することで生成した金属を観察領域の全域に堆積して観察領域の全域に導電膜を形成する(導電膜形成工程)。【選択図】図1

Description

本発明は、ブロック共重合体の相分離構造を電子顕微鏡で観察する相分離構造観察方法に関する。
ブロック共重合体は、自己組織化により様々なナノレベルの相分離構造を形成する。高分子材料の性能や機能の把握には、立体規則性、分子量、異性構造などの分子鎖の一次構造、さらには分子鎖が集合した高次構造などの構造解析が重要となる。特に、nmからμm領域の大きさのラメラ晶や球晶構造の形態を観察するためには、透過型電子顕微鏡(TEM)による解析が広く用いられている。
一般に、高分子材料のほとんどは、C、H、N、O等という軽元素で構成されているため、電子線の透過性が良く、このままでは、内部構造を認識するだけの透過電子に対するコントラストを得るのが難しい。このため、電子散乱性の高い重金属を固定化して識別する方法が用いられている。代表的な例として、四酸化オスミウム(官能基:−CH=CH−、ポリブタジエンなどの不飽和系ポリマー)、四酸化ルテニウム(官能基:−CH2−CH2−、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなど)、リンタングステン酸(官能基:−NH2、ポリアミド)、酢酸ウラン、クエン酸鉛などがある。
四酸化オスミウムは、二重結合に対して選択的に反応し、架橋反応により重金属元素の導入と分子鎖の拘束が起こるため、コントラストの付与と同時に試料の電子線ダメージを低減する効果が得られる。このような重金属の化合物の固定により電子像におけるコントラストを得る方法は、染色法と呼ばれている。
染色法には、重金属を固定化した箇所を観察するポジティブ染色と、試料周辺に重金属を固定化することで、試料の部分は電子線が透過しやすいための陰影像として得られるネガティブ染色がある。
ところで、TEMの試料としては、電子線を透過させる程度に薄くすることが必要となる。方法としては、バルク材料をエポキシ樹脂等に包埋し、ウルトラミクロトームなどで超薄切片としてTEM用試料とする。また、TEMグリッドと呼ばれる例えばカーボン支持膜上にポリマーを塗布して薄膜を形成し、TEM用試料とする方法などがある。バルク材料の内部構造を観察する方法としては、TEMは優れた分析法である(非特許文献1参照)。
ところで、上述したように作製した薄膜試料では、高分子薄膜を形成する基材と材料の相互作用により、ナノレベルでの構造が容易に変わってしまうことが懸念される。しかしながら、高分子内部構造のナノレベルの観察は、現在TEM以外の手法ではほとんど行われていないのが現状である。ところが、基材として金属やセラミックスなどの表面に形成したポリマーの相分離構造を観察したい場合、基材が電子線を透過できないためTEMによる観察ができない。
例えば、電気化学測定用電極や表面プラズモン共鳴法(SPR)測定では、センシングのために金属薄膜が用いられるが、この上に形成した高分子の試料については、TEMでは構造解析ができない。このため、センシング用の薄膜上において、形成している薄膜に所望の構造が再現されているかどうかがわからないという問題がある。したがって、コーティング膜のような基材に形成されている薄膜のナノ構造を観察するためには、電子線の透過を用いることなく、相分離構造を観察できる手法が求められる。
試料の状態を観察するその他の手法として、走査型電子顕微鏡(SEM)がある。通常、SEMは、試料表面の凹凸に由来する二次電子の放出量の状態より像のコントラストを得る。しかし、高分子の表面に内部のナノ構造による凹凸がない場合、SEMではナノ構造の状態を把握することができない。
SEMでは、電子線照射によって試料表面で発生した二次電子を検出するが、二次電子像のコントラスト発生の代表的要因としては、試料表面の凹凸によるものが挙げられる。これは、エッジ効果と呼ばれる現象によるものであり、試料表面の凹凸によって二次電子の放射効率が異なることによる。この他に、一般に反射電子の放出は原子番号が大きくなるにしたがって増大するが、二次電子の放出については必ずしも原子番号の順ではないことから、二次電子像で明るい部位が暗い部位に比べて平均原子番号が大きいとは単純に結論できない点には注意が必要である。しかし、簡易的に組成差を評価する目的では、上述した測定も簡便であることから有効な方法である。
一方で、通常では二次電子の検出は、SEMの試料室内で試料の横に置かれた検出器(アウトレンズ)が用いられる。これに対し、In−lens検出器を用いる方法もある。In−lens検出器は、比較的低いエネルギーを持つ二次電子を、静電界レンズで鏡体内に巻き上げてレンズ内に環状に配置することにより検出する。In−lens検出器を用いると、試料最表面の汚染、帯電、酸化等などの状態、さらに、元素組成が異なることに由来する高感度なコントラスト像が得られる。このように、SEMに搭載されているIn−lens検出器を用いることで、二次電子の組成の違いにより、ブロック共重合体の相分離構造のコントラストを得ることが可能となる。
組成の違いでコントラストを得るためには、高分子材料の場合、前述したような金属化合物の固定化(染色)が有効となる。しかしながら、SEMにおいては、観察多少の試料表面におけるチャージアップ(電位差に依存するもの)を防ぐことも重要となる。チャージアップとしては、有機材料や生体試料などの非導電性試料を観察する時に、照射された電子が蓄積し試料表面が帯電する例などが挙げられる。このチャージアップが、試料からの二次電子の放出に影響を与え、異常なコントラスト(像)を示すことがある。
これを避けるためには、試料表面に金属やカーボンなどの導電物質の皮膜を形成する必要がある。また、加速電圧を低くして試料が帯電しにくい状態で観察することで、チャージアップを抑制する方法もある。しかしながら、加速電圧を低くすると解像度が低下し、また、加速電圧を低くしても、観察の時間を長くしようとすると、チャージアップが避けられない状態となる。このため、チャージアップを避けるためには、導電膜の形成が重要となる。
岡村 稔、「高分子材料の内部構造観察」、分析技術情報誌 SCAS NEWS 2002-I号、Vol.15、2002年。
ところで、前述したようにブロック共重合体の観察には、SEMが有用であるが、上述使用に、試料作製において、金属化合物による処理と、導電性膜の形成とが必要となり、試料作製に手間がかかる問題がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、試料作製にあまり手間をかけることなく、SEMにより相分離構造が観察できるようにすることを目的とする。
本発明に係る相分離構造観察方法は、互いに異なる表面自由エネルギーを持つ第1ブロック鎖および第2ブロック鎖から構成されたブロック共重合体より構成され、第1ブロック鎖による第1領域と第2ブロック差による第2領域とに相分離した相分離構造膜を基板の上に形成する分離構造形成工程と、相分離構造膜を形成した基板が載置された処理室内に、金属錯体または有機金属のガスを導入することで、ガスを相分離構造膜に接触させて観察領域の第1領域に金属錯体または有機金属を選択的に付着させる付着工程と、付着工程の後で、処理室内で金属錯体または有機金属を分解することで生成した金属を観察領域の全域に堆積して観察領域の全域に導電膜を形成する導電膜形成工程と、導電膜形成工程の後で、相分離構造膜の観察領域を走査型電子顕微鏡で観察する観察工程とを備える。
上記相分離構造観察方法において、第1領域は疎水性であり、金属錯体または有機金属は疎水性である。
以上説明したことにより、本発明によれば、試料作製にあまり手間をかけることなく、SEMにより相分離構造が観察できるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態における相分離構造観察方法を説明するフローチャートである。 図2は、試料の構成を示す断面図である。 図3は、相分離構造膜203を構成しているポリマーの構造式を示す説明図である。 図4は、作製した試料のアウトレンズによる観察結果を示す写真である。 図5は、作製した試料のアウトレンズによる観察結果を示す写真である。 図6は、作製した試料のインレンズによる観察結果を示す写真である。
以下、本発明の実施の形態について図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における相分離構造観察方法を説明するフローチャートである。
まず、第1工程S101で、基板の上に相分離構造膜を形成する(分離構造形成工程)。相分離構造膜は、互いに異なる表面自由エネルギーを持つ第1ブロック鎖および第2ブロック鎖から構成されたブロック共重合体より構成され、第1ブロック鎖による第1領域と第2ブロック差による第2領域とに相分離した構造である。この相分離した状態は、総分子構造膜の表面にも現れている。
次に、第2工程S102で、所定の処理室内に相分離構造膜を形成した基板を搬入して載置し、この処理室内に金属錯体または有機金属のガスを導入する(付着工程)。このガス導入により、ガスを相分離構造膜に接触させ、観察領域の第1領域に金属錯体または有機金属を選択的に付着させる。ここで、例えば、第1領域は疎水性であり、第2領域は親水性である。また、金属錯体または有機金属は疎水性である。したがって、上記ガスの導入により、疎水性である金属錯体または有機金属は、選択的に疎水性である第1領域に付着し、親水性である第2領域には付着しない。
次に、以上のように選択的な付着を実施した後、第3工程S103で、処理室内で金属錯体または有機金属を分解することで生成した金属を観察領域の全域に堆積して観察領域の全域に導電膜を形成する(導電膜形成工程)。例えば、金属錯体または有機金属が導入されている処理室内に、放電(グロー放電;プラズマ生成)し、金属錯体または有機金属を分解すればよい。この分解により、金属以外の組成は気化し、生成した金属が相分離構造膜の表面に堆積し、導電膜が形成される。
以上のようにして選択的に金属化合物を付着させ、この上より全域に導電膜を形成した後、第4工程S104で、相分離構造膜の観察領域を走査型電子顕微鏡で観察する(観察工程)。上記処理により、第1領域には金属化合物が付着して金属原子が存在し、第2領域には金属化合物は付着していないので、これらの違いが、走査型電子顕微鏡の観察で確認できるようになる。
以下、実験の結果をもとに説明する。
[試料作製]
相分離構造膜の材料として、3−(methacryloyloxy)propyltris(trimethylsilyloxy)silane(MPTSSi)および2−methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)のモノマーから作製されるブロックコポリマーpoly(MPTSSi)−b−poly(MPC)−b−poly(MPTSSi)(PSMS)を用いた。この組成を以下の表1に示す。PSMSは、相分離構造を形成することがTEM像から観察されている。
次に、試料として、図2に示すように、石英からなる基板201の上にAu薄膜202を形成し、Au薄膜202の上に上記ポリマーをスピンコートして、相分離構造膜203を形成した。相分離構造膜203は、疎水性のPoly(MPTSSi)からなる第1領域231と、親水性のPoly(MPC)からなる第2領域232とに相分離している。相分離構造膜203を構成しているポリマーの構造式を図3に示す。なお、基板201は、ガラスや金属、セラミックス等の材料から構成してもよく、また、バルク材料でもよい。
次に、金属錯体または有機金属のガスを用い、相分離構造膜203の第1領域231に、金属錯体または有機金属を選択的に付着させる。例えば、四酸化オスミウムのガスを用い、第1領域231に四酸化オスミウムを付着させる。引き続き、四酸化オスミウムのガスにグロー放電を生成させ、相分離構造膜203の全域にオスミウムからなる導電膜を形成する。
例えば、メイワフォーシス株式会社(Meiwafosis Co., Ltd)製のNeoc−Proネオオスミウムコータプロを用い、この装置のチャンバー(処理室)内に、相分離構造膜203を形成した基板201を搬入し、基板台上に載置する。次いで、チャンバーを密閉し、接続されている真空ポンプなどを動作させ、内部の空気(大気)を排気し、例えば2Paにまで減圧(真空排気)する。
次いで、昇華塔にある四酸化オスミウムを昇華させて四酸化オスミウムガスを生成させ、このガスを、密閉して減圧した(真空状態とした)チャンバー内に、圧力が12Paになる程度に導入する。これにより、四酸化オスミウムガスを相分離構造膜203に接触させ、第1領域231に選択的に四酸化オスミウムを付着させる。この処理を60〜90秒程度行う。
次いで、四酸化オスミウムガスが供給されているチャンバー内圧力が8Pa程度となる状態を維持し、チャンバー内にグロー放電によりプラズマを生成し、チャンバー内に導入されている四酸化オスミウムガスを分解してオスミウムを生成し、これを相分離構造膜203の上に堆積させる。この処理を10秒間行う。これにより、相分離構造膜203の全域にオスミウムからなる層厚5nmの導電膜が形成された試料が得られる。
なお、金属化合物は、電子線散乱性の高い重金属から構成されたものであるとよい。このような有機金属としては、上述した四酸化オスミウムの他に、四酸化ルテニウムなどがある。また、金属錯体としては、リンタングステン酸、クエン酸鉛、酢酸ウランなどがある。
次に、上述した試料を走査型電子顕微鏡で観察した結果について説明する。走査型電子顕微鏡として、カールツァイス社製ULTRA55を用いた。当該装置のアウトレンズを用い、加速電圧は10kV、倍率は10万倍で観察した。観察結果を図4示す。四酸化オスミウムガスへの暴露時間をより長くした場合の結果を図5に示す。二次電子によるコントラストのため、白く観察される部分が四酸化オスミウムの付着した第1領域であり、黒く観察される部分が四酸化オスミウムが付着していない第2領域であることが判断できる。
図4に示すように、上記試料(相分離構造膜203)の疎水性ドメインである第1領域の寸法が、約30μmであることが確認された。また、四酸化オスミウムガスへの暴露時間をより長くすると、白く観察される領域が明確になる。ことから、より多くの四酸化オスミウムを付着させることで、より高いコントラストが得られることが分かる。
ところで、カールツァイス社製ULTRA55では、アウトレンズを用いた観察では、500eV以下の電子が検出でき、透過できる試料の厚さは、PMMA(Poly methyl methacrylate)換算で12nmとなる。この観察では、1次電子の照射で反射電子が試料から放出されるときに表面近傍で励起した2次電子(SE2)を検出している。一方、カールツァイス社製ULTRA55では、インレンズを用いた観察も可能である。この観察では、1次電子の照射により直接励起されて試料より放出される2次電子(SE1)を検出している。インレンズを用いた観察では、100eV以下の電子が検出でき、透過できる試料の厚さは、PMMA換算で1nmとなる。このため、インレンズを用いて上記試料を観察すると、導電膜の表面状態が見られることになる。
図6に、インレンズを用いて観察した結果を示す。図6に示すように、インレンズを用いると、相分離構造膜203の相分離の状態が観察されない。上述したように、インレンズを用いると、試料の最表面しか観察されないため、相分離構造膜203ではなく、この上に形成した導電膜が観察されている。これらのことより、上記試料における相分離構造膜203の観察のためには、より大きなエネルギーの電子を検出可能としているアウトレンズを用いた方がよいことが分かる。
以上に説明したように、本発明では、金属錯体または有機金属のガスを第1領域に選択的に付着させ、この後、雰囲気の金属錯体または有機金属のガスを分解することで生成した金属を観察領域の全域に堆積して観察領域の全域に導電膜を形成するようにした。この結果、本発明によれば、試料作製にあまり手間をかけることなく、SEMにより相分離構造が観察できるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
201…基板、202…Au薄膜、203…相分離構造膜、231…第1領域、232…第2領域。

Claims (2)

  1. 互いに異なる表面自由エネルギーを持つ第1ブロック鎖および第2ブロック鎖から構成されたブロック共重合体より構成され、前記第1ブロック鎖による第1領域と前記第2ブロック差による第2領域とに相分離した相分離構造膜を基板の上に形成する分離構造形成工程と、
    前記相分離構造膜を形成した前記基板が載置された処理室内に、金属錯体または有機金属のガスを導入することで、前記ガスを前記相分離構造膜に接触させて観察領域の前記第1領域に前記金属錯体または前記有機金属を選択的に付着させる付着工程と、
    前記付着工程の後で、前記処理室内で前記金属錯体または前記有機金属を分解することで生成した金属を前記観察領域の全域に堆積して前記観察領域の全域に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
    前記導電膜形成工程の後で、前記相分離構造膜の前記観察領域を走査型電子顕微鏡で観察する観察工程と
    を備えることを特徴とする相分離構造観察方法。
  2. 請求項1記載の相分離構造観察方法において、
    前記第1領域は疎水性であり、
    前記金属錯体または有機金属は疎水性である
    ことを特徴とする相分離構造観察方法。
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