JP2015506924A - 種子処理組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、種子を処理するための組成物に関する。さらに本発明は、それらの組成物の生産およびそれらの組成物の使用を対象とする。
Description
[発明の分野]
本発明は、種子を処理するための新規な組成物ならびにそれらの生産および使用法に関する。
本発明は、種子を処理するための新規な組成物ならびにそれらの生産および使用法に関する。
[発明の背景]
農業分野では、とりわけ豆果、果実、レタス、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、およびコメなどの様々な種類の作物を生産する。これらの作物の多くは、不利な貯蔵条件または環境条件(それらのすべてが、それらのその後の成熟植物に成長する能力に影響を及ぼす)による物理的損傷に抵抗する生得の能力の点で異なる種子から成長する。さらに種子は、真菌、細菌、ウィルス、および線虫を含めた植物病原体による損傷を受けやすく、また昆虫、鳥、齧歯動物、および食料源としてそれらに頼る他の生物の攻撃を受けやすい。真菌は、経済的に最も重要な植物病原体のグループのうちの一つであり、市場向けの食品、繊維、および飼料の莫大な毎年の損失の原因である。
農業分野では、とりわけ豆果、果実、レタス、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、およびコメなどの様々な種類の作物を生産する。これらの作物の多くは、不利な貯蔵条件または環境条件(それらのすべてが、それらのその後の成熟植物に成長する能力に影響を及ぼす)による物理的損傷に抵抗する生得の能力の点で異なる種子から成長する。さらに種子は、真菌、細菌、ウィルス、および線虫を含めた植物病原体による損傷を受けやすく、また昆虫、鳥、齧歯動物、および食料源としてそれらに頼る他の生物の攻撃を受けやすい。真菌は、経済的に最も重要な植物病原体のグループのうちの一つであり、市場向けの食品、繊維、および飼料の莫大な毎年の損失の原因である。
例えば真菌による損傷に起因する収率の損失を減らすために、現在では種子のかなりの割合が1種類または複数種類の合成農薬で処理されている。しかしながら植物病原体を駆除するために合成農薬を使用することは、農場経営者にとってコストを増大させ、かつ生態系に対する有害な影響を引き起こしている。消費者および政府政策者も同様に、病原体から種子を守るための合成農薬の生産および使用に関連した環境上の危険にますます関心を抱くようになっている。
さらに、種子に農薬を散布すること自体が、土壌と農薬の結合、農薬散布による種子の二次凝集、および高価かつ複雑な化学剤散布設備の使用などの問題をはらんでいる。これに加えて、それらの化学物質が種子に対して、また種子から発芽する植物に対して毒性がある場合があるので、農薬によって種子が悪影響を受ける恐れもある。このような毒性は、種子に安全に散布できるそれら農薬の量を制限する。毒性の一つの望ましくない影響は、処理された種子の発芽率および/または発芽速度が低減すること、またはそれどころか全く発芽しないことである。一般に、毒性のある農薬で処理された種子の発芽率および/または発芽速度は、その化学物質の散布後、時間とともに減退し、したがって処理済みの種子の有効期間を制限する。農薬の毒性は、幾つかの方法で対処されてきた。
種子に加えて農薬の毒性の影響を改善する化学物質を含めることが広く使用される。しかしながらこの解決策は、追加の高価なことが多い化学成分を種子に施すことを必要とする。
毒性の影響を克服する別の方法は、農薬の動きを制限するマトリックス中に農薬を封入することである。この方法は、種子およびその新生の苗と農薬の接触を制限することができる一方で、化学物質がマトリックスから放出するにつれて、後で発芽および初期の植物成長の間にその化学物質が利用可能になることを可能にする。カプセル化技術の適切な実施は、農薬および封入用マトリックスの物理的および化学的性質の注意深い適合に左右される。どのマトリックスも、またどのカプセル化方法も、種子処理に現在使用されているすべての農薬のカプセル化に適しているわけではない。さらに、封入マトリックスは亀裂の影響を受けやすい。
毒性の影響を克服するさらに別の方法は、種子を不活性物質の比較的厚い層で覆うことである。農薬は、それが種子と直接に接触しないようにその層の上に散布される(国際公開第2004/049778号パンフレット参照)。しかしながらこの方法の不利点は、有効であるためには高い用量の農薬が必要なことであり、それがさらにその農薬の種子に対して起こり得る毒性の影響を引き起こす恐れがある。さらに、高い用量のせいでその塗膜の物理化学的特性が著しく変わる可能性があり、塗膜中の酸素/水のバランスの変化が原因で生じる負の影響を間接的に生じさせる。
さらなる代替手段には、種子含有ペレットおよび農薬含有ペレットを別のペレットとして同時に播種することが挙げられる(米国特許出願公開第2006/0150489号明細書参照)。この解決策の不利点は、面倒でかつ費用のかかる2種類の別個のペレットを製造する必要があることである。さらにこの解決策は、それらペレットの散布時間、比率、および場所に制御が存在しないか、限定された制御が存在するのみであるので、農薬含有ペレットのむらのある使用を誘発する恐れがある。
したがって、一方で現在使用されている農薬よりも低い公害および環境災害の危険性を有し、かつ他方で種子に対する毒性のない種子病原体の駆除のための新規なコーティング組成物に対する深刻な必要性が存在する。
[発明の概要]
病原性微生物によって引き起こされる作物の損傷の大部分は、早ければ貯蔵の間に種子が攻撃される時に、また種子が土壌に導入された後に種子の発芽の間にまたその直後に起こる。この局面は、成長しつつある植物の根および苗条が特に敏感であり、また軽微な損傷さえもが植物全体の変形または枯死につながる恐れがあるために特に重要である。したがって種子をできるだけ速やかに発芽させることには特に関心がある。本発明によれば、ナタマイシンなどのポリエン殺真菌剤が、種子発芽を向上させ、また早めるために使用することができることを発見した。
病原性微生物によって引き起こされる作物の損傷の大部分は、早ければ貯蔵の間に種子が攻撃される時に、また種子が土壌に導入された後に種子の発芽の間にまたその直後に起こる。この局面は、成長しつつある植物の根および苗条が特に敏感であり、また軽微な損傷さえもが植物全体の変形または枯死につながる恐れがあるために特に重要である。したがって種子をできるだけ速やかに発芽させることには特に関心がある。本発明によれば、ナタマイシンなどのポリエン殺真菌剤が、種子発芽を向上させ、また早めるために使用することができることを発見した。
[発明の詳細な説明]
第一の態様において本発明は、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方をポリエン殺真菌剤と接触させるステップを含む種子発芽を向上させるための方法に関する。
第一の態様において本発明は、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方をポリエン殺真菌剤と接触させるステップを含む種子発芽を向上させるための方法に関する。
このポリエン殺真菌剤は、種子の20〜30℃で14〜16日のインキュベーション後に種子発芽を1〜15%、好ましくは5〜15%向上させる。ある実施形態ではポリエン殺真菌剤は、種子の20〜30℃で14〜16日のインキュベーション後に種子発芽を少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%向上させる。詳細には種子は、設定された温度および光の条件を備えた専門の滅菌発芽室中でインキュベートされた。種子は、よく知られているISTA(International Seed Testing Association)の手順に従って滅菌したロールペーパーに植え付けられた(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing,Edition 2011,Chapter 5参照)。その植え付けられた種子を、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間の14〜16日のサイクルにかけた。湿度は98から100%の間であった。
ある実施形態ではポリエン殺真菌剤は、ナタマイシン、ナイスタチン、アムホテリシンB、トリエニン、エトルスコマイシン、フィリピン、チャイニン(chainin)、デルモスタチン、リンホサルシン、カンジシジン、オーレオフンギンA、オーレオフンギンB、ハマイシンA、ハマイシンB、およびルセンソマイシンからなる群から選択される。好ましい実施形態ではポリエン殺真菌剤はナタマイシンである。また、ある実施形態では2種類以上の異なるポリエン殺真菌剤が、その種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方に接触することもできる。好ましくはそのポリエン殺真菌剤のうちの1種類はナタマイシンである。これらには限定されないが、ナタマイシンなどのポリエン殺真菌剤の塩または溶媒和化合物、あるいはナタマイシンなどのポリエン殺真菌剤の変性された形態を含めたナタマイシンなどのポリエン殺真菌剤の誘導体もまた、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方と接触させることができることを理解されたい。ナタマイシンを含有する市販製品の例は、商品名Delvocid(登録商標)を有する製品群である。このような製品は、DSM Food Specialties(The Netherlands)によって生産され、例えば50%(w/w)ナタマイシンを含有する固体、または例えば0.5〜50%(w/v)ナタマイシンを含有する液体であることができる。前記市販製品を、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方と接触させることができる。
本明細書中で使用される「種子が植え付けられる培地」とは、種子から植物および/または苗を成長させるのに適した任意の生育環境、例えば土壌および他の生育培地(天然または人工の)を意味する。ポリエン殺真菌剤は、例えば畝間の土壌、栽培区画、溝に、またはT−バンド中に散布することができる。ポリエン殺真菌剤は、種子を蒔くのと同時に散布することができる。ある実施形態ではポリエン殺真菌剤は、灌漑用水を介して種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方に散布することができる。
本明細書中で使用される「種子」とは、植物の生長段階から物理的に切り離された植物の任意の休眠期を意味する。用語「休眠」とは、植物が、植物(非種子)の状態に不可欠な光、水、および/または栄養物が存在しないにもかかわらず妥当な限界内で生存能力を保持している状態を指す。種子は、長期間貯蔵することができ、同じ種の別の植物個体を再生させるために使用することができる。具体的には用語「種子」は、真の種子を指すが、吸枝、球茎、球根、果実、塊茎、穀粒、切り枝、および刈桑などの植物珠芽を包含しない。換言すれば種子は、受精後に発育し、保護カバーによって取り囲まれた胚を含有する裸子植物および被子植物の成熟した胚珠である。別法では、人工種子は受精を必要としない。例えば内胚乳などの他の食料備蓄保存組織が、成熟種子中に存在してもよい。
農業において、温室中で、林業において、造園において、またはブドウ園において使用されるあらゆる種類の植物品種の種子をポリエン殺真菌剤と接触させることができる。具体的にはそれは、トウモロコシ、メイズ、ライコムギ、テフ、ピーナツ、カノーラ、ナタネ、ケシ、オリーブ、ココナツ、芝、カカオ、ダイズ、ワタ、ビート(例えば、甜菜および飼料用ビート)、コメ(いずれのコメも使用することができるが、好ましくはジャポニカ種イネ(Oryza sativa sp.japonica)、ジャワ種イネ(Oryza sativa sp.javanica)、インディカ種イネ(Oryza sativa sp.indica)、およびこれらの交配種からなる群から選択される)、ソルガム、アワ、テフ、スペルトコムギ、コムギ、デュラムコムギ、オオムギ、カラスムギ、ライムギ、ヒマワリ、サトウキビ、芝、牧草、ムラサキウマゴヤシ、またはタバコの種子と関係がある。ポリエン殺真菌剤はまた、これらには限定されないがバラ科の果実類、例えばリンゴおよび西洋ナシと、核果類、例えば桃、ネクタリン、サクランボ、プラム、およびアンズと、柑橘類の果実、例えばオレンジ、グレープフルーツ、ライム、レモン、キンカン、マンダリン、および温州ミカンと、堅果類、例えばピスタチオ、アーモンド、クルミ、コーヒー、カカオ、およびペカンの実と、トロピカル・フルーツ類、例えばマンゴー、パパイヤ、パイナップル、ナツメヤシ、およびバナナと、ブドウとを含めた果実植物の種子に、またこれらには限定されないが葉菜類、例えばエンダイブ、ラムズ・レタス、キバナスズシロ、ウイキョウ、チョウジノキ(タマチシャ)およびルーズリーフサラダ、チャード、ホウレンソウ、およびチコリーと、アブラナ属蔬菜類、例えばカリフラワー、ブロッコリー、白菜、ケール(冬ケールまたはカーリーケール)、コールラビ、芽キャベツ、レッドキャベツ、ホワイトキャベツ、およびちりめんキャベツと、果菜類、例えば茄子(エッグプラントとも呼ばれる)、キュウリ、パプリカ、唐辛子(辛い)、マロー、トマト、ズッキーニ、メロン、スイカ、カボチャ、およびスイートコーンと、根菜類、例えば根用セロリ、カブ、ニンジン、スウェーデンカブ、ハツカダイコン、セイヨウワサビ、ビートの根、サルシフィ、およびセロリと、食用豆類、例えばエンドウ豆およびビーンと、鱗茎菜類、例えばリーキ、ニンニク、およびタマネギとを含めた野菜類の種子の処理のために使用することができる。ポリエン殺真菌剤はまた、観賞用植物、例えばバラ、パンジー、ホウセンカ、ペチュニア、ベゴニア、トルコギキョウ、ヒマワリ、カッコウアザミ、菊、およびゼラニウムの種子の処理のために使用することができる。好ましい実施形態ではポリエン殺真菌剤は、トマト、キャベツ(例えば、白菜、ケール(冬ケールまたはカーリーケール)、コールラビ、芽キャベツ、レッドキャベツ、ホワイトキャベツ、およびちりめんキャベツ)、タマネギ、パプリカ、茄子(エッグプラントとも呼ばれる)、レタス(例えば、エンダイブ、ラムズ・レタス、キバナスズシロ、ウイキョウ、チョウジノキ(タマチシャ)およびルーズリーフサラダ、チャード、ホウレンソウ、およびチコリー)、トウモロコシ、コメ、ダイズ、およびウリ科植物(例えば、キュウリ、カボチャ、スイカ、およびメロン)の種子の処理のために使用される。
種子は、トランスジェニック種子、すなわちトランスジェニック植物の種子であってもよい。本明細書中で使用される「トランスジェニック植物」とは、その植物DNAが、本来はその同一株の自然の非トランスジェニック植物中に存在しない導入外因性DNA分子を含有する形質転換植物細胞またはプロトプラスト由来の植物またはその子孫を意味する。
本発明によれば、発芽を向上させるために種子は、種子にポリエン殺真菌剤を散布することによって処理される。本発明の方法は任意の生理的状態において種子に適用することができるが、種子は、種子処理過程で顕著な損傷を受けない十分に耐久力のある状態であることが好ましい。一般にこれら種子は、田畑から収穫された、植物から取り出された、かつ/あるいは果実および任意の穂軸、鞘、柄、外殻、および周囲の果肉または他の非種子植物性物質から分離された種子である。これら種子はまた、処理が種子に生物学的損傷を引き起こさない程度まで生物学的に安定であることが好ましい。一実施形態では、例えば処理は、収穫され、きれいにされ、また特定の含水率まで乾燥された種子に施すことができる。代替実施形態では種子は乾燥され、次いで水および/または別の材料でプライミング処理され、次いでポリエン殺真菌剤で処理する前、間、または後に再乾燥されることができる。
ポリエン殺真菌剤は「生のまま」、すなわち任意の希釈または追加の成分が存在することなく施用することができる。しかしながらポリエン殺真菌剤は、一般には組成物および/またはコーティング剤および/または製剤の形態で種子に施用される。それ故に、本発明によるこの組成物および/またはコーティング剤および/または製剤は、ポリエン殺真菌剤および少なくとも1種類の他の成分の(物理的)混合物であることができる。しかしながら、この組成物および/またはコーティング剤および/または製剤はまた、ポリエン殺真菌剤および少なくとも1種類の他の成分の任意の組合せであることができるが、そのポリエン殺真菌剤と少なくとも1種類の他の成分は、その同じ組成物および/またはコーティング剤および/または製剤中に一緒に存在する必要はない。ポリエン殺真菌剤および少なくとも1種類の他の成分が同じ組成物および/またはコーティング剤および/または製剤中に一緒に存在しない本発明による組成物および/またはコーティング剤および/または製剤の例は、部品からなるキットである。部品からなるキットでは、キットの2種類以上の成分が別々に包装される、すなわち予め調合されない。したがってキットは、ガラス瓶、缶、瓶、小袋、袋、またはキャニスターなどの1個または複数個の別個の容器を含み、各容器が農薬組成物のための個々の成分を収容する。例は、二成分、三成分、または四成分さえものキットである。種子は、あらゆる好適な種子処理法、具体的には当業界で知られている種子粉衣技術、例えば種子コーティング(例えば、種子ペレット化、外被形成、フィルムコーティング)、種子散粉、および種子吸水(例えば、種子浸漬、プライミング)を使用してポリエン殺真菌剤と接触させることができる。ここで「種子処理法」とは、種子とポリエン殺真菌剤を互いに接触させるあらゆる方法を指し、また「種子粉衣」とは、一定量のポリエン殺真菌剤を種子に付与する、すなわちポリエン殺真菌剤を含む種子を生み出す種子処理の方法を指す。原理上、処理は種子の収穫から種子の播種までの任意の時期に種子に施すことができる。種子は、種子の植付けの直前またはその間に処理することができる。しかしながら処理はまた、数週間または数ヶ月、例えば種子を植え付ける13ヶ月前まで、例えば種子粉衣処理の形で行うことができる。処理は、蒔かれていない種子に施すことができる。本明細書中で使用される用語「蒔かれていない種子」とは、種子を収穫してから、植物の発芽および生育の目的で地面に種子を蒔くまでの任意の段階における種子を指す。種子はまた、種子に対して直接ではなく播種後に、例えばポリエン殺真菌剤を土壌または培地に散布することによって処理することもできる。しかしながら種子を蒔く前に種子に処理を施すことにより作業は簡素化される。このやり方では種子を、例えば中心の場所で処理し、次いで植付けのために分散することができる。これは、種子を植え付けるヒトが、ポリエン殺真菌剤に手で触れ、使うことを避けることを可能にし、またただ単に通常の未処理の種子に対して一般に行われているやり方で処理済みの種子を取り扱い、植え付けることを可能にし、これはヒトのそれへの曝露を軽減する。処理される種子は、プライミング処理された種子でも、プライミング処理されていない種子でもよい。種子のプライミングは、種子を制御された条件下で同一の発芽レベルに至らせるために行われる。プライミング技術の例は、オスモプライミングおよびドラムプライミングである。これらのプライミング技術は当業熟練者に知られている。
一般に、種子処理に適した装置、例えば固体成分または固体/液体成分用のミキサーを、ポリエン殺真菌剤が種子上に均一に分配されるまで使用する。ポリエン殺真菌剤は、これらに限定されないが、容器(例えば、瓶、袋、タンブラー、ロータリーコーター、流動床、または噴霧器)内での混合、機械的塗布、タンブリング、噴霧、および浸漬を含めた任意の標準的な種子処理方法によって種子に塗布することができる。適切な場合、これはその後に種子の乾燥が続く。噴霧種子処理は、大量のコメ種子を処理するために一般に使用される方法である。この目的では、組成物(例えば、FS、LS、DS、WS、SS、およびES)の希釈によって得られる溶液を噴霧室中で種子上に連続的に噴霧し、次いで乾燥室中で高い温度(例えば25〜40℃)で乾燥する。
別の実施形態では種子をコーティングまたは吸水(例えば浸漬)にかける。「コーティング」は、種子の外面に部分的または全面的に非植物性物質の層または複数層を与える任意の工程を意味する。コーティングは、コメ、トウモロコシのような広い土地の作物、また同様に野菜の種子に対して最もよく使用される。この方法によれば、種子をきれいにし、その後に希釈された製剤を、例えば回転ポットミキサーをおよそ数分間使用し、続いて逆回転することによってコーティングする。その後、種子を乾燥する。
「吸水」とは、種子の発芽性部分への、かつ/またはその天然鞘、(内部の)皮、殻皮、殻、莢、および/または外皮へのポリエン殺真菌剤の浸透を引き起こす任意の工程を指す。浸漬法によれば、種子をきれいにし、袋に詰め、これを種子体積と同体積の薬品溶液中に沈める。この薬品溶液は、一般にはFS、LS、DS、WS、SS、およびESなどの製剤の希釈によって得られる。その後、種子を乾燥する。浸漬は、コメ種子に対して最も一般的に利用される。
本発明はまた、ポリエン殺真菌剤を含む塗膜を種子に付与するステップを含む種子の処理法に関し、またポリエン殺真菌剤を有する種子の吸水を含む種子の処理法に関する。コーティングはまた、タンブラーまたはパン型造粒機などの設備の適切な構成要素中で種子を撹拌しながらポリエン殺真菌剤を種子上に噴霧するステップを含むこともできる。コーティングはまた、種子の外面を湿らせ、その湿った種子にポリエン殺真菌剤を塗布し、その得られた種子を乾燥することによって行うこともできる。種子は、例えば水または水性溶液を噴霧することによって湿らせることができる。種子が水中での膨潤に敏感な場合、膨潤防止剤を含有する水性溶液でそれらを湿らせることができる。
コーティング剤は、流動床技術、ローラーミル法、ロトスタティック種子処理装置、およびドラムコーターなどの通常のコーティング技術および機械を用いて種子に塗布することができる。また噴流層技術などの他の方法が有用な場合もある。種子は、コーティングの前にプレサイジングすることができる。コーティング後、種子は一般に乾燥され、次いでサイジングのためにサイジング機に運ばれる。乾燥は、自然換気によって行うことができるが、場合によっては加熱した空気の強制流を種子上に通すなどのそれ自体が周知である任意の技術に従って行うこともできる。種子をこの目的のために篩などの装置中で整列させることができる。
大規模(例えば工業規模)に種子をコーティングする場合、種子を重量単位または流量単位のいずれかで処理設備(タンブラー、ドラム、プレート、ミキサー、またはパン型造粒機)中に導入することができる。処理設備中に導入されるポリエン殺真菌剤の量は、コーティングされる種子重量、種子の表面積、ポリエン殺真菌剤の濃度、仕上がった種子上での望ましい濃度などに応じて変えることができる。ポリエン殺真菌剤は様々な手段によって、例えば噴霧ノズルまたは回転ディスクによって種子に塗布することができる。一般にポリエン殺真菌剤の量は、効力にとって必要なポリエン殺真菌剤の必要比率によって決まる。種子が処理設備中に落ちるにつれて種子を処理し(例えば、ポリエン殺真菌剤を霧状または飛沫状にして吹きつけることによって)、連続的な運動/混転下で処理設備を通過させることができる。そこで種子は均一にコーティングされ、貯蔵または使用の前に乾燥されることができる。別の実施形態では既知重量の種子を処理設備中に導入することができる。既知体積のポリエン殺真菌剤を、ポリエン殺真菌剤を種子全体にわたって均一に塗布することを可能にする速度で処理設備中に導入することができる。手作業または自動粉末フィーダにより外被形成用の粉末を加えることができる。塗布の間、例えば高速回転また混転によって種子を混ぜ合わせることができる。任意選択で、混転作業の間に種子を乾燥する、または部分的に乾燥することができる。コーティングまたは外被形成の完了後、その処理された種子を、更なる乾燥または追加の加工、使用、あるいは貯蔵のための区域に移すことができる。さらに別の実施形態では、タンブラー、ミキサー、またはパン型造粒機などの実験室規模の業務用処理設備中で、その処理設備に既知重量の種子を導入し、所望の量のポリエン殺真菌剤を加え、その種子を混転または高速回転させ、それらをトレイ上に置いて完全に乾燥することによって、種子をコーティングすることができる。別の実施形態では種子はまた、既知量の種子を、蓋を備えた細口瓶または容器中に置くことによってコーティングすることもできる。混転させながら所望の量のポリエン殺真菌剤をその容器に加えることができる。種子は、それらがポリエン殺真菌剤をコーティングされ、それで外被形成され、またはそれと一緒にペレット化されるまで混転される。コーティング、外被形成、またはペレット化の後、任意選択で種子を、例えばトレイ上で乾燥することができる。必要ならば乾燥を通常の方法によって行うことができる。例えば、乾燥剤または軽い加熱(約40℃未満など)を使用して、乾燥した塗膜または外被(encrusting)を生じさせることができる。
別法ではコーティングはまた、粉末の形態のポリエン殺真菌剤が種子と結合して塗膜、外被、またはペレットを形成するように、フィラーまたはバインダーなどの「固着剤」を接着膜として種子全体にわたって塗布することによって行うこともできる。例えば、大量の種子を固着剤と混合することができ、また任意選択で撹拌して、固着剤による種子の均一なコーティングを促すこともできる。この二番目のステップでは、次に固着剤をコーティングされた種子をポリエン殺真菌剤の粉末状混合物と混ぜ合わせることができる。ポリエン殺真菌剤の乾燥製剤は、下記に考察するように他の成分を含有することができる。種子とポリエン殺真菌剤の混合物を、例えば混転によって撹拌して固着剤と粉末状物質の接触を促し、それによって粉末状物質を種子に固着させることができる。
すでに上記で指摘したように、ポリエン殺真菌剤は、組成物および/またはコーティング剤および/または製剤(以後、すべて組成物として示す)中に含ませることができる。組成物は、1種類または複数種類のさらなる成分を含むことができる。成分には、これらに限定されないが、他の駆除薬(殺真菌剤、ダニ駆除剤、殺ダニ剤、殺虫剤、防虫剤、鳥忌避剤、殺鼠剤、軟体動物駆除剤、線虫駆除剤、殺菌剤、および燻蒸剤など)、除草剤、補助剤、湿潤剤、栄養物、ワックス、酸化防止剤、遺伝子活性化物質保護コロイド、界面活性剤、無機物、化学交雑剤、顔料、オーキシン、固着剤、抗生物質、および他の薬物、生物誘引物質、着色剤、分散剤、溶媒、固体キャリア、成長調節剤、フェロモン、増粘剤、染料、毒性緩和剤、肥料、凍結防止剤、生物防除剤(例えば、天然由来または組換え細菌および/または真菌)、液体希釈剤、バインダー(例えば、ポリエン殺真菌剤用のマトリックスとして働く)、フィラー(例えば、応力条件の間、種子を保護するための有機または無機型の微粉末)、可塑剤(可撓性、接着性、および/または散布性を改善する)、乾燥剤、可溶化剤、分散剤、消泡剤が挙げられる。
本発明において種子を処理ために使用される組成物は、ほんの2、3の名を挙げると、可溶性濃厚剤(SL、LS)、分散性濃厚剤(DC)、乳剤(EC)、懸濁剤(SC、OD、FS)、エマルション剤(EW、EO、ES)、水性媒体(例えば水)中の粒子のスラリー剤、ペースト剤、水分散性または水溶性粉末剤(WP、SP、SS、WS)、芳香剤、水分散性または水溶性粒剤(WG、SG)、乾燥粒剤(GR、FG、GG、MG)、ゲル製剤(GF)、散粉性粉末剤(DP、DS)の形態であることができる。種子の処理の目的に対しては水溶性濃厚剤(LS)、フロアブル濃厚剤(FS)、乾燥処理用粉末剤(DS)、スラリー処理用水分散性粉末剤(WS)、水溶性粉末剤(SS)、エマルション剤(ES)、乳剤(EC)、およびゲル剤(GF)が一般に使用される。これらの組成物は、希釈してまたは希釈せずに種子に塗布することができる。好ましい実施形態では、ポリエン殺真菌剤を含む組成物は、さらにフィラー、バインダー、またはこの両方を含む。換言すれば種子は、ポリエン殺真菌剤、フィラー、および/またはバインダーを含む組成物と接触させることができる。別法では種子はまた、これら別々の成分と接触させることもできる。接触は、同時にまたは別々に行うことができる。例えば種子を、フィラーとポリエン殺真菌剤を含む組成物と接触させ、その後にフィラーとバインダーを含む組成物と接触させることができる。ほかに採り得る組合せは、当業熟練者の手の届く範囲にある。
好ましい実施形態ではフィラーは、炭酸塩、木粉、珪藻土、およびこれらの組合せからなる群から選択される。好ましい実施形態ではフィラーは炭酸塩である。炭酸塩の例は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、またはこれらの組合せである。好ましい実施形態ではフィラーは炭酸カルシウムである。
好ましい実施形態ではバインダーは、リグノスルホン酸塩、ポリビニルピロリドン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。ポリビニルピロリドンは、モノマーのN−ビニルピロリドン((C6H9NO)N)から作られる水溶性ポリマーである。その分子量は、モノマー単位の数によって決まる。リグノスルホン酸塩は、リグノスルホン酸銅、リグノスルホン酸亜鉛、リグノスルホン酸マグネシウム、リグノスルホン酸マンガン、リグノスルホン酸ナトリウム、リグノスルホン酸カルシウム、リグノスルホン酸アンモニウム、またはこれらの組合せとして加えることができる。
一般に種子に施されるポリエン殺真菌剤の量は、種子100kg当たりポリエン殺真菌剤が約10g〜約4000gの範囲のはずである。好ましくはポリエン殺真菌剤の量は、種子100kg当たりポリエン殺真菌剤が約50g〜約3000gの範囲内、より好ましくは種子100kg当たりポリエン殺真菌剤が約100g〜約2000gの範囲内のはずである。
それ故、本発明はまた、フィラー、バインダー、およびポリエン殺真菌剤を含む種子処理組成物に関する。ある実施形態ではそのポリエン殺真菌剤はナタマイシンである。さらなる実施形態ではそのフィラーは炭酸カルシウムである。別の実施形態ではそのバインダーはリグノスルホン酸塩、ポリビニルピロリドン、またはこれらの組合せである。
ある実施形態ではポリエン殺真菌剤は、組成物の総重量の0.05%〜50%の量で存在する。懸濁剤またはスラリー剤として製剤化される場合、組成物中のポリエン殺真菌剤の濃度は、好ましくは組成物の総重量の0.05%〜25%、好ましくは組成物の総重量の0.1%〜20%である。一般にフィラーの比率は、きわめて広い範囲内で変えることができる。それは、一般には組成物の総重量の0.1%と99%の間、好ましくは組成物の総重量の0.5%と99%の間である。
さらなる態様において本発明は、フィラー、バインダー、およびポリエン殺真菌剤を含む種子に関する。ある実施形態ではそのポリエン殺真菌剤はナタマイシンである。ある実施形態では種子は、本発明による種子処理組成物を含む。種子は、これらの化合物を含まない種子の形で取り扱い、輸送し、貯蔵し、配給することができる。その上にそれらは、従来の設備を使用してこれらの化合物を含まない種子と同じやり方で同様に播種し、散水することができる。一般には本発明は、土壌または移植鉢中で栽培する作物の種子に適用されるが、それは本発明の範囲から逸脱することなく他の植物および生育培地に適用することができる。本発明による処理法は、再処理を必要とすることなくポリエン殺真菌剤の長持ちする望ましい効果を、種子および結果として生ずる植物に与えることができることが分かった。
本発明の別の態様は、フィラー、バインダー、およびポリエン殺真菌剤を含む植物生育用の培地に関する。ある実施形態ではポリエン殺真菌剤はナタマイシンである。ある実施形態ではその植物生育用の培地は、本発明による種子処理組成物を含む。
さらに別の態様では本発明は、a)本発明による種子を蒔く、本発明による培地中に種子を蒔く、または本発明による種子を本発明による培地中に種子を蒔くステップ、およびb)その種子から植物を成長させるステップを含む植物の栽培方法に関する。種子は人の手あるいは機械によって蒔くことができる。この植物は、通常の方法により栽培し、育てることができる。当然、その植物の成長を達成するためには十分な量の水および栄養物を加える必要がある。
本発明のさらなる態様は、種子発芽を向上させるためのポリエン殺真菌剤の使用法に関する。ある実施形態ではそのポリエン殺真菌剤はナタマイシンである。
苗から根の発達を向上させるためにポリエン殺真菌剤を使用することは、本発明の別の態様である。ある実施形態ではそのポリエン殺真菌剤はナタマイシンである。本明細書中で使用される用語「根」とは、生理的機能を果たすために、普通は土壌表面よりも下に位置する植物の部分を指す。好ましくはこの用語は、種子より下方にあり、苗条または枝葉からではなく種子からまたは他の根から直接出現している植物の部分を意味する。根は、幼根および不定根の遠位末端に位置する一群の細胞である根の分裂組織から成長する。根の分裂組織は根の増殖部位として働き、特定の根組織、すなわち表皮、樹皮、内皮、内鞘、および前形成層に分化する、また根が土壌中で成長するときに根を保護し円滑にする根冠に分化する新しい細胞を生みだす。根毛は、樹皮との相互作用により発芽後に表皮から生ずる。
本発明のさらなる態様は、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方をナタマイシンと接触させるステップを含む、種子から発生する苗の根の総質量を増加させる方法に関する。ある実施形態ではその種子は、ナタマイシンで被覆された種子である。
本発明のさらなる態様は、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方をナタマイシンと接触させるステップを含む、種子から発生する苗の総質量を増加させる方法に関する。ある実施形態ではその種子は、ナタマイシンで被覆された種子である。
本発明のさらなる態様は、種子、種子が植え付けられる培地、またはその両方をナタマイシンと接触させるステップを含む、種子から発生する個々の苗の平均乾燥質量を増加させる方法に関する。ある実施形態ではその種子は、ナタマイシンで被覆された種子である。
本発明の態様について本明細書中で述べた実施形態および特徴はまた、本発明のその他の態様にも関係する。
[実施例]
[実施例1]
[コメ種子の被覆:]
この実施例ではコメ種子を表1に示すコーティング組成物で被覆した。コメ種子は、下記の方法を用いて被覆した。50gの炭酸カルシウムと、2.5gまたは9gのナタマイシン製品を混合してナタマイシン混合物を作製した。使用したナタマイシン製品は、50%(w/w)ナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標)であった。次に、1kgの種子をパンに載せ、ロータリーコーター内の回転ディスクにより湿らせた。湿潤後、コメ種子が互いにくっつき始める直前にそのナタマイシン混合物を種子に加えた。種子がその粉末混合物を吸収し、乾燥した外観になった後、種子を再び湿らせ、950gの炭酸カルシウムと400gのリグノスルホン酸塩懸濁液(リグノスルホン酸塩133gおよび水267gを含む)の混合物、または950gの炭酸カルシウムと200gのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)の混合物を加えた。種子が粉末混合物を吸収した後、それをパンに入れた状態に保ち、5〜10分間揺らした。その後、それをパンから取り出し、乾燥機中に温度25〜35℃で60分間置いた。乾燥後、種子を選別機に通して塵埃、ブランク(すなわち芯としての種子がない外被)、およびダブル(すなわち芯として2個以上の種子を有する外被)を除去した。選別後、被覆種子を計量し、以下の実験に使用した。
[実施例1]
[コメ種子の被覆:]
この実施例ではコメ種子を表1に示すコーティング組成物で被覆した。コメ種子は、下記の方法を用いて被覆した。50gの炭酸カルシウムと、2.5gまたは9gのナタマイシン製品を混合してナタマイシン混合物を作製した。使用したナタマイシン製品は、50%(w/w)ナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標)であった。次に、1kgの種子をパンに載せ、ロータリーコーター内の回転ディスクにより湿らせた。湿潤後、コメ種子が互いにくっつき始める直前にそのナタマイシン混合物を種子に加えた。種子がその粉末混合物を吸収し、乾燥した外観になった後、種子を再び湿らせ、950gの炭酸カルシウムと400gのリグノスルホン酸塩懸濁液(リグノスルホン酸塩133gおよび水267gを含む)の混合物、または950gの炭酸カルシウムと200gのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)の混合物を加えた。種子が粉末混合物を吸収した後、それをパンに入れた状態に保ち、5〜10分間揺らした。その後、それをパンから取り出し、乾燥機中に温度25〜35℃で60分間置いた。乾燥後、種子を選別機に通して塵埃、ブランク(すなわち芯としての種子がない外被)、およびダブル(すなわち芯として2個以上の種子を有する外被)を除去した。選別後、被覆種子を計量し、以下の実験に使用した。
[実施例2]
[被覆コメ種子の発芽:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を下記のように発芽させた。被覆および未処理の種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で100個の種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。実験は4回行った(すなわち、処理ごとに種子400個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。各滅菌したペーパーを100mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で20〜30℃において14日間インキュベートした。この14日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。14日後、発芽の割合を次のように確定した。内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、ISTA基準に従って苗の分類を行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。
[被覆コメ種子の発芽:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を下記のように発芽させた。被覆および未処理の種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で100個の種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。実験は4回行った(すなわち、処理ごとに種子400個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。各滅菌したペーパーを100mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で20〜30℃において14日間インキュベートした。この14日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。14日後、発芽の割合を次のように確定した。内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、ISTA基準に従って苗の分類を行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。
結果を表2に示す。それらは、コメ種子をナタマイシンで被覆した場合、著しく高い割合のコメ種子が発芽することを明白に示している。発芽の増加は、様々なナタマイシン濃度(例えば、種子1kg当たりナタマイシン製品2.5gおよび種子1kg当たりナタマイシン製品9.0g)で見られる。
さらに発芽の増加は、異なる成分を含むコーティング組成物、例えば炭酸カルシウムとリグノスルホン酸カルシウムを含むコーティング組成物および炭酸カルシウムとポリビニルピロリドンを含むコーティング組成物で見られる。
上記から、ナタマイシンを使用して種子の発芽を増加させることができると結論を下すことができる。
[実施例3]
[貯蔵後の被覆コメ種子の発芽:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を2か月間貯蔵した。貯蔵後、それらを下記のように発芽させた。被覆および未処理種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で100個の種子を滅菌ペーパーのロールに載せた。実験は4回行った(すなわち、処理ごとに種子400個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。滅菌したペーパーを100mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で20〜30℃において16日間インキュベートした。この16日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。16日後、発芽の割合を次のように確定した。内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、ISTA基準に従って苗の分類を行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。
[貯蔵後の被覆コメ種子の発芽:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を2か月間貯蔵した。貯蔵後、それらを下記のように発芽させた。被覆および未処理種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で100個の種子を滅菌ペーパーのロールに載せた。実験は4回行った(すなわち、処理ごとに種子400個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。滅菌したペーパーを100mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で20〜30℃において16日間インキュベートした。この16日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。16日後、発芽の割合を次のように確定した。内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、ISTA基準に従って苗の分類を行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜41参照)。
結果を表3に示す。それらは、コメ種子をナタマイシンで被覆した場合、貯蔵されたコメ種子の著しく高い割合が発芽したことを明白に示している。発芽の増加は、様々なナタマイシン濃度(例えば、種子1kg当たりナタマイシン製品2.5gおよび種子1kg当たりナタマイシン製品9.0g)で見られ、種子1kg当たりナタマイシン製品9.0gが最も高い増加を示す。
さらに、発芽の増加は様々な成分、例えばバインダーを含むコーティング組成物で見られる。しかしながら発芽の最も高い増加は、種子を炭酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、およびナタマイシンで被覆した場合に見られる。
上記からナタマイシンを使用して、種子を貯蔵した後の種子の発芽を増加させることができると結論を下すことができる。さらに、炭酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、およびナタマイシンでコーティングすることが好ましいと結論を下すことができる。
[実施例4]
[被覆コメ種子の根の発達:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を、本質的に実施例2で述べたと同様に発芽させた。16日後、得られた苗の根の重量を測定した。計量は次のように行った。まず、外科用メスで湿った根を子葉との付着点で切断した。次に、その湿った根を計量した。この根の重量を、本明細書中では総質量(乾燥質量および含水量)と定義する。
[被覆コメ種子の根の発達:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を、本質的に実施例2で述べたと同様に発芽させた。16日後、得られた苗の根の重量を測定した。計量は次のように行った。まず、外科用メスで湿った根を子葉との付着点で切断した。次に、その湿った根を計量した。この根の重量を、本明細書中では総質量(乾燥質量および含水量)と定義する。
結果を表4に示す。それらは、ナタマイシンで被覆した種子から発生する苗における根の発達が、未処理種子またはナタマイシンなしで被覆された種子から発生する苗における根の発達よりも良好であったことを明白に示している。
[実施例5]
[被覆または未処理コメ種子から発生する苗の発達:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を、実施例2で述べたと同様に発芽させた。16日後、苗を収穫し、収穫した苗の総重量を測定した。苗の重量は、苗条および根の合計重量である。計量は次のように行った。まず、外科用メスで湿った根および苗条を子葉との付着点で切断した。次に、その湿った根および苗条を計量した。この根および苗条の重量を、本明細書中では総質量(乾燥質量および含水量)と定義する。
[被覆または未処理コメ種子から発生する苗の発達:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を、実施例2で述べたと同様に発芽させた。16日後、苗を収穫し、収穫した苗の総重量を測定した。苗の重量は、苗条および根の合計重量である。計量は次のように行った。まず、外科用メスで湿った根および苗条を子葉との付着点で切断した。次に、その湿った根および苗条を計量した。この根および苗条の重量を、本明細書中では総質量(乾燥質量および含水量)と定義する。
結果を表5に示す。それらは、ナタマイシンで被覆した種子から発生する苗の重量が、未処理種子またはナタマイシンなしで被覆された種子から発生する苗の重量よりも大きいことを明白に示している。
[実施例6]
[被覆コメ種子の乾燥質量の発達:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を、実施例2で述べたと同様に発芽させた。16日後、湿った根および苗条を、得られた苗のそれぞれとの付着点で外科用メスにより切断した。苗ごとの根および苗条の重量を測定し、その後、根および苗条をオーブン中で130℃において30分間乾燥した。乾燥後、乾燥した根および苗条をオーブンから取り出し、デシケーター中で冷却し、個々の苗ごとの根および苗条の重量を再び測定した。乾燥前の重量と乾燥後の重量の差を根の含水量と呼ぶ。乾燥後のこの重量を乾燥質量と定義する。
[被覆コメ種子の乾燥質量の発達:]
この実施例では、実施例1で述べたと同様に調製した被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))および未処理コメ種子を、実施例2で述べたと同様に発芽させた。16日後、湿った根および苗条を、得られた苗のそれぞれとの付着点で外科用メスにより切断した。苗ごとの根および苗条の重量を測定し、その後、根および苗条をオーブン中で130℃において30分間乾燥した。乾燥後、乾燥した根および苗条をオーブンから取り出し、デシケーター中で冷却し、個々の苗ごとの根および苗条の重量を再び測定した。乾燥前の重量と乾燥後の重量の差を根の含水量と呼ぶ。乾燥後のこの重量を乾燥質量と定義する。
結果を表6に示す。それらは、ナタマイシンで被覆したコメ種子から発生する個々の苗ごとの根および苗条の平均乾燥質量が、未処理コメ種子またはナタマイシンなしで被覆されたコメ種子から発生する個々の苗ごとの根および苗条の平均乾燥質量よりも大きいことを明白に示している。
したがってナタマイシン塗布後に個々の苗当たりのより大きな乾燥質量が生ずる。乾燥質量は苗または植物の成長の間に発生するので、乾燥質量の生成は成長刺激と相関関係がある可能性がある。
[実施例7]
[ナタマイシンまたは過酸化カルシウムで被覆したコメ種子の発芽:]
下記のコーティング組成物を外被形成用に使用したことを除いて、被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))を実施例1で述べたと同様に調製した。
−対照(未処理)。
−組成物A:表1の組成物4と同一であり、実施例1で述べたと同様に種子1kgに塗布した。
−組成物B:1kgの炭酸カルシウム、0.2kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)、および30%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
この被覆および未処理コメ種子に、実施例2の記述と同様の発芽手順を施した。14日後、発芽の割合を実施例2で述べたと同様に求めた。
[ナタマイシンまたは過酸化カルシウムで被覆したコメ種子の発芽:]
下記のコーティング組成物を外被形成用に使用したことを除いて、被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))を実施例1で述べたと同様に調製した。
−対照(未処理)。
−組成物A:表1の組成物4と同一であり、実施例1で述べたと同様に種子1kgに塗布した。
−組成物B:1kgの炭酸カルシウム、0.2kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)、および30%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
この被覆および未処理コメ種子に、実施例2の記述と同様の発芽手順を施した。14日後、発芽の割合を実施例2で述べたと同様に求めた。
結果(表7参照)は、ナタマイシンで被覆した種子については、発芽した種子の割合が明らかに高いことを示している。さらに、ナタマイシンで被覆した種子の発芽割合は、過酸化カルシウムで被覆した種子の発芽割合に勝った。したがってナタマイシンは、成長促進剤として過酸化カルシウムよりも性能が優れている。
[実施例8]
[ナタマイシンまたは過酸化カルシウムで被覆したコメ種子の乾燥質量の発達:]
下記のコーティング組成物を外被形成用に使用したことを除いて、被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))を実施例1で述べたと同様に調製した。
−対照(未処理)。
−組成物A:表1の組成物6と同一であり、実施例1で述べたと同様に種子1kgに塗布した。
−組成物B:1kgの炭酸カルシウム、0.2kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)、および10%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
−組成物C:1kgの炭酸カルシウム、0.2kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)、および30%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
−組成物D:表1の組成物3と同一であり、実施例1の記述と同様に種子1kgに塗布した。
−組成物E:1kgの炭酸カルシウム、0.4kgのリグノスルホン酸塩溶液(リグノスルホン酸塩133gおよび水267gを含む)、および10%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
−組成物F:1kgの炭酸カルシウム、0.4kgのリグノスルホン酸塩溶液(リグノスルホン酸塩133gおよび水267gを含む)、および30%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
この被覆および未処理コメ種子に、実施例2の記述と同様の発芽手順を施した。14日後、苗ごとの根および苗条の合計乾燥重量を実施例6で述べた方法に従って求めた。
[ナタマイシンまたは過酸化カルシウムで被覆したコメ種子の乾燥質量の発達:]
下記のコーティング組成物を外被形成用に使用したことを除いて、被覆コメ種子(イネ(Oryza sativa))を実施例1で述べたと同様に調製した。
−対照(未処理)。
−組成物A:表1の組成物6と同一であり、実施例1で述べたと同様に種子1kgに塗布した。
−組成物B:1kgの炭酸カルシウム、0.2kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)、および10%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
−組成物C:1kgの炭酸カルシウム、0.2kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン10gおよび水190gを含む)、および30%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
−組成物D:表1の組成物3と同一であり、実施例1の記述と同様に種子1kgに塗布した。
−組成物E:1kgの炭酸カルシウム、0.4kgのリグノスルホン酸塩溶液(リグノスルホン酸塩133gおよび水267gを含む)、および10%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
−組成物F:1kgの炭酸カルシウム、0.4kgのリグノスルホン酸塩溶液(リグノスルホン酸塩133gおよび水267gを含む)、および30%(w/w)過酸化カルシウムの混合物全体を1kgの種子に完全に加えた。
この被覆および未処理コメ種子に、実施例2の記述と同様の発芽手順を施した。14日後、苗ごとの根および苗条の合計乾燥重量を実施例6で述べた方法に従って求めた。
結果(表8参照)は、ナタマイシンで被覆したコメ種子から発生した個々の苗ごとの根および苗条の平均乾燥質量が、未処理コメ種子または過酸化カルシウムで被覆されたコメ種子から発生した個々の苗ごとの根および苗条の平均乾燥質量よりも大きいことを明白に実証している。さらに、実際には30%過酸化カルシウムの使用は、未処理種子と比べて苗ごとの根および苗条の平均乾燥質量の減少を引き起こした。ナタマイシン処理種子の苗のこの一層高い乾燥質量は、ポリビニルピロリドンまたはリグノスルホン酸塩のどちらかをコーティング組成物中で単一バインダーとして使用した場合に観察された。
したがってナタマイシン塗布後に個々の苗当たりのより大きな乾燥質量が生じ、それはナタマイシンが過酸化カルシウムと比較して好ましい成長促進剤であることを示している。
[実施例9]
[被覆したトウモロコシ種子の根の発達:]
この実施例では、被覆したトウモロコシ種子(トウモロコシ(Zea mays))を、下記のコーティング組成物を使用して1kgのトウモロコシ種子を被覆するという条件で、本質的には実施例1で述べたと同様に調製した。
−組成物A:0.6kgの炭酸カルシウムおよび0.5kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン25gおよび水475gを含む)。
−組成物B:0.6kgの炭酸カルシウム、0.5kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン25gおよび水475gを含む)、および18gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)ナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
この被覆および未処理種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で25個の種子を滅菌ペーパーのロールに載せた。実験は8回行った(すなわち、処理ごとに種子200個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜46参照)。各滅菌したペーパーを75mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で20〜30℃において14日間インキュベートした。この14日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。14日後、内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、個々の苗ごとの根の平均乾燥質量を次のように測定した。湿った根を、得られた苗のそれぞれとの付着点で外科用メスにより切断した。苗ごとの根の重量を測定し、その後、根をオーブン中で130℃において30分間乾燥した。乾燥後、乾燥した根をオーブンから取り出し、デシケーター中で冷却し、個々の苗ごとの根の重量を再び測定した。乾燥前の重量と乾燥後の重量の差を根の含水量と呼ぶ。この乾燥後の重量を乾燥質量と定義する。
[被覆したトウモロコシ種子の根の発達:]
この実施例では、被覆したトウモロコシ種子(トウモロコシ(Zea mays))を、下記のコーティング組成物を使用して1kgのトウモロコシ種子を被覆するという条件で、本質的には実施例1で述べたと同様に調製した。
−組成物A:0.6kgの炭酸カルシウムおよび0.5kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン25gおよび水475gを含む)。
−組成物B:0.6kgの炭酸カルシウム、0.5kgのポリビニルピロリドン溶液(ポリビニルピロリドン25gおよび水475gを含む)、および18gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)ナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
この被覆および未処理種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で25個の種子を滅菌ペーパーのロールに載せた。実験は8回行った(すなわち、処理ごとに種子200個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜46参照)。各滅菌したペーパーを75mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で20〜30℃において14日間インキュベートした。この14日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での12時間、続く日光の30℃での12時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。14日後、内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、個々の苗ごとの根の平均乾燥質量を次のように測定した。湿った根を、得られた苗のそれぞれとの付着点で外科用メスにより切断した。苗ごとの根の重量を測定し、その後、根をオーブン中で130℃において30分間乾燥した。乾燥後、乾燥した根をオーブンから取り出し、デシケーター中で冷却し、個々の苗ごとの根の重量を再び測定した。乾燥前の重量と乾燥後の重量の差を根の含水量と呼ぶ。この乾燥後の重量を乾燥質量と定義する。
結果を表9に示す。それらは、ナタマイシンで被覆したトウモロコシ種子から発生する個々の苗ごとの根の平均乾燥質量が、ナタマイシンなしで被覆されたトウモロコシ種子から発生する個々の苗ごとの根の平均乾燥質量よりも大きいことを明白に示している。
この実施例を、炭酸カルシウムの代わりにペレット状粉末Y5(約3%(w/w)の硫酸塩、約30%(w/w)のカルシウム、約30%(w/w)の炭酸塩、および約35%(w/w)のシリカを含む)を使用した組成物で繰り返した。その結果は、ナタマイシンで被覆したトウモロコシ種子から発生する個々の苗ごとの根の平均乾燥質量が、ナタマイシンなしで被覆されたトウモロコシ種子から発生する個々の苗ごとの根の平均乾燥質量よりも大きいという点で炭酸カルシウムによる結果に匹敵した。
したがってナタマイシン塗布後に個々の苗当たりのより大きな乾燥質量が生ずる。乾燥質量は苗または植物の成長の間に発生するので、乾燥質量の生成は成長刺激と相関関係がある可能性がある。
[実施例10]
[コーティングされたタマネギ種子の発芽:]
この実施例では、タマネギ種子(タマネギ(Allium cepa))は未処理か、または次の組成物のうちの1つでコーティングされた。
組成物A:1.5gのポリビニルピロリドンおよび3gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)ナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
組成物B:1.5gのポリビニルピロリドンおよび6gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
組成物C:1.5gのポリビニルピロリドンおよび9gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
組成物D:1.5gのポリビニルピロリドンおよび15gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
[コーティングされたタマネギ種子の発芽:]
この実施例では、タマネギ種子(タマネギ(Allium cepa))は未処理か、または次の組成物のうちの1つでコーティングされた。
組成物A:1.5gのポリビニルピロリドンおよび3gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)ナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
組成物B:1.5gのポリビニルピロリドンおよび6gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
組成物C:1.5gのポリビニルピロリドンおよび9gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
組成物D:1.5gのポリビニルピロリドンおよび15gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))。
コーティングは下記の方法に従って行った。上記組成物を30mlの水に溶解して水溶液を調製した。次に、1kgの種子をロータリーコーターに入れ、それぞれの溶液を種子に塗布した。種子は、それぞれの溶液と一緒に45秒間回転させた。溶液は、ロータリーコーターの回転ディスクにより種子全体にわたって均一に広がった。その後、種子をロータリーコーターから取り出し、乾燥機中に温度25〜40℃で15分間置いた。
次に、コーティングされたタマネギ種子および未処理タマネギ種子を発芽させた。このためにこのコーティングされた種子および未処理種子を滅菌したペーパーのロールに載せた。全体で100個の種子を滅菌ペーパーのロールに載せた。実験は4回行った(すなわち、処理ごとに種子400個)。発芽手順は、ISTAのよく知られている手順に従って行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜32参照)。各滅菌したペーパーを50mlの水中に入れ、滅菌した微生物標本培養室中で15〜20℃において12日間インキュベートした。この12日の間、植え付けられた種子は、暗所の20℃での16時間、続く日光の20℃での8時間のサイクル、また別法では暗所の15℃での16時間、続く日光の20℃での8時間のサイクルにかけられた。湿度は98から100%の間であった。12日後、発芽の割合を次のように確定した。内側に種子を有する滅菌したペーパーのロールを微生物標本培養室から取り出し、ロールを開き、ISTA基準に従って苗の分類を行った(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜32参照)。
結果を表10に示す。それらは、タマネギ種子をナタマイシンでコーティングした場合、著しく高い割合のタマネギ種子が発芽することを明白に示している。発芽の増加は、様々なナタマイシン濃度で見られる。
上記から、ナタマイシンを使用して種子の発芽を向上させることができると結論を下すことができる。
[実施例11]
[コーティングされたスイカ種子の発芽:]
スイカ(スイカ(Citrullus lanatus))の種子は、未処理か、または種子1kgにつき、1.5gのポリビニルピロリドンおよび9gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))を含む組成物をコーティングされた。この組成物は実施例10で述べたと同様に塗布された。
[コーティングされたスイカ種子の発芽:]
スイカ(スイカ(Citrullus lanatus))の種子は、未処理か、または種子1kgにつき、1.5gのポリビニルピロリドンおよび9gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))を含む組成物をコーティングされた。この組成物は実施例10で述べたと同様に塗布された。
続いてこの種子を、滅菌し緩衝させた(すなわち硝酸カルシウムでpH6.7に)ココピートのトレイ中で発芽させた。ココピートは、一般に使用される安定な生育培地であり、園芸産業において、例えば種子発芽の刺激のために受け入れられている。処理ごとに植え付けられる50個の種子を、夜間は最低1.4℃の周囲温度、また昼間は最高26.9℃(平均温度13.6℃)に19日間曝し、圃場容水量まで絶え間なく水を注いだ。試行の間の平均相対湿度は72%であった。試行の間ずっと、ココピートの入ったトレイに1日につき3〜5回水を注いだ。トレイは底に穴あけされ、それにより過剰な水を直接取り除く。この方法によりココピートを圃場容水量に保つことができる。15、17、および19日後に、発芽割合をISTA基準(International Seed Testing Association,Switzerlandにより刊行されたHandbook International Rules for Seed Testing、2011年版、5章、ページ5〜32参照)に従って求めた。
表11の結果は、ナタマイシンをコーティングした場合、著しく高い割合のスイカ種子が発芽したことを示している。15、17、および19日間のインキュベーションの後、ナタマイシンをコーティングした種子の発芽割合は、未処理種子の発芽割合を、それぞれ18、34、および38%上回った。
したがってスイカ種子へのナタマイシンの塗布は、その種子の発芽を刺激することは明白である。
[実施例12]
[ドラムプライミング処理した被覆トマト種子の発芽:]
トマト(トマト(Solanum lycopersicum))の種子を、ドラムプライミング法を使用してプライミング処理した(すなわち、同一の発芽レベルに導いた)。その後、そのプライミング処理されたトマト種子は、それ以上に処理されないか、または表1の組成物6を実施例1で述べた方法に従って被覆された。その後、処理ごとに100個の種子を、実施例11で述べた発芽手順にかけた。10および19日後、発芽割合を実施例11で述べたISTA法を用いて求めた。
[ドラムプライミング処理した被覆トマト種子の発芽:]
トマト(トマト(Solanum lycopersicum))の種子を、ドラムプライミング法を使用してプライミング処理した(すなわち、同一の発芽レベルに導いた)。その後、そのプライミング処理されたトマト種子は、それ以上に処理されないか、または表1の組成物6を実施例1で述べた方法に従って被覆された。その後、処理ごとに100個の種子を、実施例11で述べた発芽手順にかけた。10および19日後、発芽割合を実施例11で述べたISTA法を用いて求めた。
表12の結果は、ナタマイシンで被覆された場合、著しく高い割合のプライミング処理スイカ種子が発芽したことを証明している。10および19日間のインキュベーション後、その両方でナタマイシンを被覆されたプライミング処理トマト種子の発芽割合は、対照種子の発芽割合を10%上回った。
これらの結果から、トマト種子へのナタマイシンの塗布は、高い種子発芽をもたらすと結論を下すことができる。
[実施例13]
[オスモプライミング処理したコーテッド茄子種子の発芽:]
茄子(ナス(Solanum melongena))の種子を、オスモプライミング法を使用してプライミング処理した(すなわち、同一の発芽レベルに導いた)。その後、そのプライミング処理された茄子種子は、それ以上に処理されないか、または種子1kgにつき、1.5gのポリビニルピロリドンおよび9gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))を含む組成物でコーティングされた。この組成物は実施例10で述べたと同様に塗布された。各処理がそれぞれ50個の種子の4回の繰返し(すなわち、全体で処理ごとに種子200個)からなることを別にすれば、このコーティングされていない種子およびコーティングされプライミング処理した種子を、実施例10で述べたISTA発芽手順を使用して発芽させた。さらに、この植え付けられた種子を、暗所の20℃での16時間、続く日光の30℃での8時間のサイクルに14日間かけた。湿度は98から100%の間であった。14日後、発芽の割合を実施例10で述べたと同様に評価した。
[オスモプライミング処理したコーテッド茄子種子の発芽:]
茄子(ナス(Solanum melongena))の種子を、オスモプライミング法を使用してプライミング処理した(すなわち、同一の発芽レベルに導いた)。その後、そのプライミング処理された茄子種子は、それ以上に処理されないか、または種子1kgにつき、1.5gのポリビニルピロリドンおよび9gのナタマイシン製品(すなわち50%(w/w)のナタマイシンを含む製品であるDelvocid(登録商標))を含む組成物でコーティングされた。この組成物は実施例10で述べたと同様に塗布された。各処理がそれぞれ50個の種子の4回の繰返し(すなわち、全体で処理ごとに種子200個)からなることを別にすれば、このコーティングされていない種子およびコーティングされプライミング処理した種子を、実施例10で述べたISTA発芽手順を使用して発芽させた。さらに、この植え付けられた種子を、暗所の20℃での16時間、続く日光の30℃での8時間のサイクルに14日間かけた。湿度は98から100%の間であった。14日後、発芽の割合を実施例10で述べたと同様に評価した。
表13の結果は、ナタマイシンでコーティングされた場合、より高い割合のオスモプライミング処理茄子種子が発芽したことを明白に実証している。したがって茄子種子へのナタマイシンの塗布はそれらの発芽を刺激する。
Claims (17)
- 種子発芽を向上させるための方法であって、前記種子、前記種子が植え付けられる培地、または両方を、ナタマイシンと接触させるステップを含む方法。
- ナタマイシンが組成物中に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記組成物が、フィラー、バインダー、または両方をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
- 前記フィラーが、炭酸塩、木粉、珪藻土、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- 前記バインダーが、リグノスルホン酸塩、ポリビニルピロリドン、またはこれらの組合せであることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
- ナタマイシンが、種子100kg当たり10g〜4000gのナタマイシン量で存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- フィラー、バインダー、およびナタマイシンを含む種子処理組成物。
- 前記フィラーが、炭酸塩、木粉、珪藻土、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の種子処理組成物。
- 前記バインダーが、リグノスルホン酸塩、ポリビニルピロリドン、またはこれらの組合せであることを特徴とする、請求項7または8に記載の種子処理組成物。
- ナタマイシンが、前記組成物の総重量の0.05〜50%の量で存在することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の種子処理組成物。
- フィラー、バインダー、およびナタマイシンを含む種子。
- 請求項7〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む種子。
- フィラー、バインダー、およびナタマイシンを含む植物生育用の培地。
- 請求項7〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む植物生育用の培地。
- 植物を生育するための方法であって、
a)請求項11または12に記載の種子を蒔くステップ、請求項13または14に記載の培地中に種子を蒔くステップ、あるいは請求項11または12に記載の種子を請求項13または14に記載の培地中に蒔くステップと、
b)前記植物を前記種子から成長させるステップと
を含む方法。 - 種子発芽を向上させるためのナタマイシンの使用。
- 苗からの根の発達を向上させるためのナタマイシンの使用。
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