図1は、第1の実施形態にかかる触覚提示装置10の外観斜視図である。図2は、図1に示すA−A線部における触覚提示装置10の断面図である。図3は、触覚提示装置10の背面図である。
触覚提示装置10は、圧電フィルム20、フィルムガイド部材30、振動板40、およびタッチパネル50を備えている。触覚提示装置10は、いわゆるキーボードである。
平板状のタッチパネル50は、キー配列に対応する各位置に設けた複数のタッチセンサ(不図示)を有する。タッチパネル50が、この発明で言うタッチ検出部に相当する。タッチセンサは、ユーザのタッチ操作を検出する機能であればどの様な方式であってもよく、メンブレン式、静電容量式、圧電フィルム式、等の様々な方式を用いることができる。
タッチパネル50は、平板状の振動板40の一方の主面(以下、正面と言う。)に装着されている。振動板40は、平面視して矩形状である。振動板40は、他方の主面の(以下、背面と言う。)において短手方向の両端が圧電フィルム20に固定されている。この短手方向が、この発明で言う第1の方向に相当する。振動板40は、例えばアクリル樹脂PMMAで構成されている。なお、振動板40は、金属板、PET、ポリカーボネイト(PC)、PLLA、ガラス等の他の材料を用いてもよい。
なお、タッチパネル50は、必須ではない。例えば、振動板40の正面において、キー配列に対応する各位置に複数のタッチセンサを設ける態様とすることも可能である。
フィルムガイド部材30は、圧電フィルム20と同じ振動板40の背面側に位置する。図4は、フィルムガイド部材30の外観斜視図である。フィルムガイド部材30は、矩形状の枠体である。フィルムガイド部材30は、長手方向に延びる横棒30A、30Bと、短手方向に延びる縦枠30C、30Dを有する。この長手方向が、この発明で言う第2の方向に相当する。フィルムガイド部材30は、長手方向の両側に位置する縦枠30C、30Dに突起部30R、30Lが形成されている。フィルムガイド部材30は、突起部30R、30Lにおいて振動板40の背面に固定する。このとき、フィルムガイド部材30の短手方向の中心と、振動板40の短手方向の中心とを略一致させている。振動板40と、フィルムガイド部材30の横棒30A、30Bとの間には、突起部30R、30Lの高さに応じた隙間が生じている。
圧電フィルム20は、平面視して矩形状のベースフィルムの両主面に形成された電極(不図示)を有する。圧電フィルム20のベースフィルム200は、圧電性樹脂であり、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、キラル高分子、等の材料を用いる。より好ましくは、透光性の高いポリ乳酸(PLA)を用いる。特にPLLAで構成されていることが望ましい。PLAを用いる場合、他の構成も透光性の高い材料を用いることにより、正面視した略全面が高い透光性を有する触覚提示装置10を実現することができる。圧電フィルム20は、ベースフィルムをPLLAで構成する場合、延伸方向に対して各外周辺が略45°となるように裁断することによって矩形状に形成し、圧電性を持たせる。
圧電フィルム20は、ベースフィルムの両主面の略全面に電極が形成されている。この電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリチオフェンを主成分とすることが好ましい。なお、電極には、銀ナノワイヤ電極を用いることも可能であるし、透光性が低くてよい使用態様であれば、アルミ蒸着電極を用いることが好ましい。電極には、図示しない引き出し用の配線導体が接続されており、駆動信号が当該配線導体を介して電極へ印加されるようになっている。
圧電フィルム20は、フィルムガイド部材30の長手方向に伸びる2本の横棒30A、30Bを利用し、振動板40の短手方向の中間において、つづら折りになるように折り返している。図5は、圧電フィルム20がつづら折りになるようにフィルムガイド部材30に巻き付けた状態を示す図である。図5では、振動板40、およびタッチパネル50を図示していない。フィルムガイド部材30の2本の横棒30A、30Bが、振動板40の短手方向における圧電フィルム20の折り返し点になる。フィルムガイド部材30の2本の横棒30A、30Bの外周面(特に、圧電フィルム20と接触する面)は、圧電フィルム20が伸縮時に滑りやすいように摺動性をよくしておくのが好ましい。
振動板40は、平板面が湾曲した状態で圧電フィルム20に固定されるため、図2に示す白抜き矢印F901の曲げ応力がかかっている。また、圧電フィルム20は、振動板40の取り付け位置において、図2に示す白抜き矢印S901の引張力がかかっている。
図6は、触覚提示装置10の構成を示すブロック図である。図6に示すように、タッチパネル50に設けられたタッチセンサをユーザがタッチすると、駆動部61が圧電フィルム20の両主面に形成された電極に駆動信号を印加する。これにより圧電フィルム20が伸縮する。圧電フィルム20は、同じ材質であれば、単位長さ当たりの伸縮量が同じであるので、その長さが長いほど、駆動信号の印加時における伸縮量が長くなる。
図1および図2に示すように、振動板40は、圧電フィルム20が位置する背面側に対して反対側(振動板40の正面側)に湾曲して突出する形状となるように、短手方向の両側を圧電フィルム20に固定している。この構成により、振動板40と圧電フィルム20との間には、中空領域が形成されている。そして、この振動板40のある側が触覚提示装置10の正面側となり、圧電フィルム20がある側が触覚提示装置10の背面側となる。
ただし、本実施形態において、振動板40の湾曲状態は、説明のために誇張して記載している。振動板40と圧電フィルム20との間は、できるだけ小さいほうが望ましい。
図7は、触覚提示装置10の動作説明図であり、図7(A)は、駆動信号により圧電フィルム20が縮んだタイミングでの状態を示す断面図である。図7(B)は、駆動信号が印加されていない、または駆動信号の振幅が0の状態を示す断面図である。図7(C)は、駆動信号により圧電フィルム20が伸びたタイミングでの状態を示す断面図である。
駆動部61が、圧電フィルム20に第一方向の電界を駆動信号として印加すると、図7(A)の矢印S911に示すように、圧電フィルム20は、振動板40の短手方向に収縮する。この圧電フィルム20の収縮にともなって、振動板40が圧電フィルム20に固定されている箇所(短手方向の端部)から中央方向に引っ張られる。これにより、振動板40は、図7(A)の矢印F911に示すように、正面側へより突出するように湾曲する。
一方、駆動部61が、圧電フィルム20に駆動信号を印加し、圧電フィルム20に上記第一方向とは逆の第二方向の電界を駆動信号として印加すると、図7(C)の矢印S912に示すように、圧電フィルム20は、振動板40の短手方向に伸張する。この圧電フィルム20の伸張にともなって、振動板40が中央方向から圧電フィルム20に固定されている箇所(短手方向の端部)に引っ張られる。これにより、振動板40は、図7(C)の矢印F912に示すように、正面側への突出量が低下した湾曲状態となる。
したがって、振動板40は、駆動部61が第一方向の電界、および第二方向の電界を周期的に切り替えながら圧電フィルム20に印加することにより、この駆動信号の周期に応じて、図7(B)の状態を基準に、図7(A)の状態や図7(C)の状態に遷移して、正面方向および背面方向(振動板40主面に直交する方向)に沿って振動する。
これにより、駆動信号に応じた振動が振動板40を介してタッチパネル50に伝達され、タッチパネル50をタッチしたユーザに伝達される。したがって、ユーザは、タッチパネル50のタッチセンサをタッチすると、振動がフィードバックされるため、キーを「押した」と感じることができる。
また、振動板40には、非動作状態で定常的な曲げ応力が与えられているため、圧電フィルム20の伸張時に振動板40に与えられる力は、当該曲げ応力と同じ方向となる。したがって、触覚提示装置10は、振動板40を効率的に振動させることができる。
さらに、圧電フィルム20は、フィルムガイド部材30の横棒30A、30Bを利用し、振動板40の短手方向において、つづら折りにしているので、振動板40の短手方向における長さを、この振動板40の短手方向の長さよりも長くできる。したがって、触覚提示装置10は、駆動部61が第一方向の電界、および第二方向の電界を周期的に切り替えながら圧電フィルム20に印加したときにおける、この圧電フィルム20の全体の伸縮量を大きくすることができ、振動板40を大きく振動させられる。
なお、圧電フィルム20は、フィルムガイド部材30の2本の横棒30A、30Bの間隔を長くするほど、振動板40の短手方向における長さを長くできる。
また、フィルムガイド部材30は、突起部30R、30Lを振動板40の背面に固定しているので、圧電フィルム20の伸縮時に、振動板40との相対的な位置関係が変化しない。したがって、圧電フィルム20の伸縮時に、フィルムガイド部材30が振動板40に対して回転することがなく、圧電フィルム20の伸縮を効率的に振動板40の振動量に変換できる。
なお、圧電フィルム20と、振動板40との間に形成された中空領域には、シリコーンゲル等の柔らかい樹脂を充填し、振動板40が振動することにより生じる音を抑制するのが望ましい。
次に、第2の実施形態にかかる触覚提示装置10Aについて説明する。この実施形態にかかる触覚提示装置10Aは、図8に示すように、振動板40の長手方向に2つの圧電フィルム20A、20Bを重ならないように並べている点で、上述の実施形態と異なる。図8は、第2の実施形態にかかる触覚提示装置10Aの背面図である。
この実施形態にかかる触覚提示装置10Aが備えるフィルムガイド部材30、振動板40、およびタッチパネル50は、上述の実施形態と同じである。フィルムガイド部材30、振動板40、およびタッチパネル50については、ここでは詳細な説明を省略する。
振動板40は、短手方向の両端が、圧電フィルム20Aに固定されているとともに、圧電フィルム20Bに固定されている。
圧電フィルム20A、20Bは、上述の実施形態と同様に、フィルムガイド部材30の横棒30A、30Bを利用して、振動板40の短手方向において折り返して、つづら折りにしている。図9に示すように、圧電フィルム20Aの折り返しと、圧電フィルム20Bの折り返しとは、振動板40の主面に直交する方向において反転させている。図9(A)は、図8に示すB−B線部の断面図であり、圧電フィルム20Aの折り返しを示す図である。図9(B)は、図8に示すC−C線部の断面図であり、圧電フィルム20Bの折り返しを示す図である。
また、この実施形態にかかる触覚提示装置10Aは、図6に示した駆動部61を備えている。触覚提示装置10Aの駆動部61は、圧電フィルム20A、および圧電フィルム20Bに対して、同じタイミングで同じ方向の電界を印加し、圧電フィルム20A、および圧電フィルム20Bがともに収縮、または伸張するように制御する。
この実施形態の触覚提示装置10Aも、フィルムガイド部材30の横棒30A、30Bを利用し、振動板40の短手方向において、圧電フィルム20A、20Bをつづら折りにしている。したがって、圧電フィルム20A、20Bは、振動板40の短手方向における長さが、この振動板40の短手方向の長さよりも長い。このため、上述した実施形態にかかる触覚提示装置10と同様に、駆動部61が第一方向の電界、および第二方向の電界を周期的に切り替えながら圧電フィルム20A、20Bに印加したときにおける、この圧電フィルム20A、20Bの全体の伸縮量を大きくすることができ、振動板40を大きく振動させられる。
また、圧電フィルム20Aの折り返しと、圧電フィルム20Bの折り返しとを、振動板40の主面に直交する方向において反転させているので、振動板40の長手方向において、圧電フィルム20A、20Bの伸縮時におけるフィルムガイド部材30および振動板40にかかる引っ張り力のバランスを取ることができる。したがって、フィルムガイド部材30および振動板40において、ねじれが生じるのを抑えられる。
また、上述の実施形態にかかる触覚提示装置10Aでは、振動板40の長手方向に2つの圧電フィルム20A、20Bを重ならないように並べるとしたが、振動板40の長手方向に重ならないように並べる圧電フィルム20については、3つ以上であってもよい。この場合も、振動板40の長手方向において隣り合う圧電フィルム20の折り返しは、振動板40の主面に直交する方向において反転させるのが好ましい。
また、上述の実施形態にかかる2つの触覚提示装置10、10Aでは、圧電フィルム20、20A、20Bを2つの折り返し点で折り返す構成としたが、この折り返し点を4つや、6つ等に増加させ、圧電フィルム20、20A、20Bにおける振動板40の短手方向における長さをより長くしてもよい。
また、フィルムガイド部材30は、枠体であるとしたが、圧電フィルム20、20A、20Bを折り返し点で折り返し、つづら折りにすることができる形状であれば、どのような形状であってもよい。例えば、フィルムガイド部材30は、振動板40の主面に直交する方向において、複数の板状部材を適当な間隔で配置し、圧電フィルム20を板状部材間に通してつづら折りにする構成であってもよい。この場合、板状部材における振動板40の短手方向の辺が、圧電フィルム20、20A、20Bを折り返す折り返し点になる。
次に、この発明の第3の実施形態にかかる触覚提示装置10Bについて説明する。図10は、この第3の実施形態にかかる触覚提示装置10Bの外観斜視図である。図11は、図10に示すA−A線部における触覚提示装置10Bの断面図である。
触覚提示装置10Bは、圧電フィルム21(21A,21B、21C、21D)、フィルム取付部材31、振動板41、およびタッチパネル51を備えている。タッチパネル51、および振動板41は、上述の実施形態で説明したタッチパネル50、および振動板40と同じであるので、ここでは説明を省略する。また、この触覚提示装置10Bも、図6に示した駆動部61を備える。ただし、この触覚提示装置10Bでは、駆動部61は、タッチパネル51に設けられたタッチセンサをユーザがタッチすると、駆動部61が圧電フィルム21(21A,21B、21C、21D)の両主面に形成された電極に駆動信号を印加する。
フィルム取付部材31は、振動板41の背面側に位置する。図12は、フィルム取付部材31の外観斜視図である。フィルム取付部材31は、平面視して矩形状であるベース板31Aの長手方向の両端に突起部31R、31を形成したものである。この長手方向が、この発明でいう第2の方向に相当する。フィルム取付部材31は、突起部31R、31Lにおいて振動板41の背面に固定する。このとき、フィルム取付部材31の短手方向の中心と、振動板41の短手方向の中心とを略一致させている。振動板41と、フィルム取付部材31のベース板31Aとの間には、突起部30R、30Lの高さに応じた隙間が生じている。
フィルム取付部材31には、図13に示すように、4つの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが、長手方向に重ならないようにベース板31に並べて取り付けられている。圧電フィルム21A,21B、21C、21Dの材質は、上述した実施形態における圧電フィルム20、20A、20Bと同じであるので、ここでは説明を省略する。圧電フィルム21A,21B、21C、21Dは、一端をベース板31Aの短手方向の端部に取り付けている。また、フィルム取付部材31の長手方向に隣り合う圧電フィルム21A,21B、21C、21D間において、取り付けているフィルム取付部材31の短手方向の端部を反転させている。
さらに、圧電フィルム21A,21B、21C、21Dは、フィルム取付部材31の短手方向におけるフィルム取付部材31に取り付けていない側の他端を振動板41の端部に取り付けている。このとき、圧電フィルム21A,21B、21C、21Dは、ベース板31Aの短手方向において、突起部31R、31Lを挟んで両側に延びるように、一方の端部をベース板31Aに取り付け、他方の端部をスライド板32Bに取り付けている。これにより、圧電フィルム21A,21B、21C、21Dは、振動板41の短手方向において、フィルム取付部材31の短手方向に隣り合う圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが交差する(たすき掛けになる。)(図14参照)。
この実施形態にかかる触覚提示装置10Bは、駆動部61が圧電フィルム21A,21B、21C、21Dに対して、同じタイミングで同じ方向の電界を印加し、これらの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが同じタイミングで収縮、または伸張するように制御する。
触覚提示装置10Bの駆動部61が圧電フィルム21A,21B、21C、21Dに対して、これらの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが振動板41の短手方向に収縮する方向の電界を印加すると、振動板41は圧電フィルム21A、21Cの収縮にともなって、これらの圧電フィルム21A、21Cを取り付けている側(図14における左側)の端部が中央方向に引っ張られる。また、同時に、振動板41は圧電フィルム21B、21Dの収縮にともなって、これらの圧電フィルム21B、21Dを取り付けている側(図14における右側)の端部が中央方向に引っ張られる。これにより、振動板41は、前方へより突出するように湾曲する。
一方、触覚提示装置10Bの駆動部61が圧電フィルム21A,21B、21C、21Dに対して、これらの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが振動板41の短手方向に伸張する方向の電界を印加すると、振動板41は圧電フィルム21A、21Cの伸張にともなって、これらの圧電フィルム21A、21Cを取り付けている側(図14における左側)の端部が中央方向と反対側に引っ張られる。また、同時に、振動板41は圧電フィルム21B、21Dの伸張にともなって、これらの圧電フィルム21B、21Dを取り付けている側(図14における右側)の端部が中央方向と反対側に引っ張られる。これにより、振動板41は、前方への突出量が低下した湾曲状態となる。
触覚提示装置10Bの駆動部61が圧電フィルム21A,21B、21C、21Dに対して、これらの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが振動板41の短手方向に収縮する方向の電界を印加したときに、振動板41の前方への突出量を増加させるのに寄与する圧電フィルム21A,21B、21C、21D収縮量は、圧電フィルム21A(または21C)の収縮量と、圧電フィルム21B(または21D)の収縮量と、の和である。また、触覚提示装置10Bの駆動部61が圧電フィルム21A,21B、21C、21Dに対して、これらの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dが振動板41の短手方向に伸張する方向の電界を印加したときに、振動板41の前方の突出力を低下させるのに寄与する圧電フィルム21A,21B、21C、21D伸張量は、圧電フィルム21A(または21C)の伸張量と、圧電フィルム21B(または21D)の伸張量と、の和である。
したがって、この実施形態にかかる触覚提示装置10Bは、振動板41を大きく振動させることができる。
なお、上記の実施形態では、振動板41の長手方向に、4つの圧電フィルム21A,21B、21C、21Dを重ならないように並べる構成としたが、振動板41の長手方向に並べる圧電フィルムは、複数であればいくつであってもよい。
次に、この発明の第4の実施形態にかかる触覚提示装置10Cについて説明する。図15は、この第4の実施形態にかかる触覚提示装置10Cの外観斜視図である。図16(A)は、図15に示すA−A線部における触覚提示装置10Cの断面図であり、図16(B)は、図15に示すB−B線部における触覚提示装置10Cの断面図である。
この実施形態にかかる触覚提示装置10Cは、圧電フィルム22(22A,22B、22C、22D、22E、22F)、フィルム取付部材32、振動板42、およびタッチパネル52を備えている。タッチパネル52、および振動板42は、上述の実施形態で説明したタッチパネル50、および振動板40と同じであるので、ここでは説明を省略する。
フィルム取付部材32は、振動板42の背面側に位置する。図17は、フィルム取付部材32の外観斜視図である。フィルム取付部材32は、平面視して矩形状である板部材のベース板32Aと、このベース板32Aに対してスライド自在に取り付けたスライド板32Bと、を有する。ベース板32Aに対するスライド板32Bのスライド方向は、振動板42の短手方向(図17に示すX−-X方向)である。ベース板32Aには、長手方向の両端に突起部32R、32Lが設けられている。スライド板32Bは、突起部32R、32Lによって、スライド自在に保持されている。フィルム取付部材32(ベース板32A)は、突起部32R、32Lにおいて振動板42の背面に固定する。このとき、フィルム取付部材32の短手方向の中心と、振動板42の短手方向の中心とを略一致させている。振動板42と、フィルム取付部材32のベース板32Aとの間には、突起部30R、30Lの高さに応じた隙間が生じている。
スライド板32Bは、平面視して櫛葉形状である板部材である。すなわち、スライド板32Bは、平面視して矩形状である板部材に対して、2つの切り欠き部を形成したものである。
図18は、圧電フィルム22を、フィルム取付部材32に取り付けた状態を示す図である。ベース板32Aには、上述した触覚提示装置10Bのフィルム取付部材31と同様に、4つの圧電フィルム22A,22B、22C、22Dが、長手方向に重ならないように並べて取り付けられる。また、圧電フィルム22A,22B、22C、22Dの材質は、上述した実施形態における圧電フィルム20と同じであるので、ここでは説明を省略する。
また、圧電フィルム22A,22B、22C、22Dは、一端をベース板32Aの短手方向の端部に取り付けている。また、フィルム取付部材32の長手方向に隣り合う圧電フィルム22A,22B、22C、22D間において、取り付けているフィルム取付部材32の短手方向の端部を反転させている。
また、スライド板32Bに形成されている切り欠き部は、ベース板32Aの短手方向の一方の端部に取り付けた圧電フィルム22B、22Dが対応するベース板32Aの長手方向の位置に形成されている。言い換えれば、スライド板32Bに形成されている櫛葉は、ベース板32Aの短手方向の一方の端部に取り付けた圧電フィルム22A、22Cが対応するベース板32Aの長手方向の位置に形成されている。また、スライド板32Bの長手方向における切り欠き部の幅は、圧電フィルム22B、22Dの幅よりも少し大きい。
圧電フィルム22A、22Cは、フィルム取付部材31の短手方向におけるフィルム取付部材31に取り付けていない側の端部を、スライド板32Bの端部に取り付けている。圧電フィルム22A、22Cは、ベース板32Aの短手方向において、突起部32R、32Lを挟んで両側に延びるように、一方の端部をベース板32Aに取り付け、他方の端部をスライド板32Bに取り付けている。
また、スライド板32Bには、2つの圧電フィルム22E、22Fの一方の端部が取り付けられている。圧電フィルム22E、22Fは、ベース板32Aの短手方向における、圧電フィルム22A、22Cがベース板32Aに取り付けられている側で、スライド板32Bに取り付けている。また、圧電フィルム22Eは、振動板42の主面に直交する方向において、圧電フィルム22Aと略重なる位置に取り付け、圧電フィルム22Fは、振動板42の主面に直交する方向において、圧電フィルム22Cと略重なる位置に取り付けている。
さらに、圧電フィルム22E、22Fは、スライド板32Bに取り付けていない側を、ベース板32Aの短手方向において、突起部31R、31Lを挟んで両側に延びるように、振動板42の端部に取り付けている。圧電フィルム22B、22Dは、ベース板32Aに取り付けていない側を、ベース板32Aの短手方向において、突起部31R、31Lを挟んで両側に延びるように、振動板42の端部に取り付けている。圧電フィルム22B、22Dは、スライド板32Bに形成している切り欠き部を通して、振動板42の端部に取り付けることができる。このように、圧電フィルム22B、22Dは、他の圧電フィルム22A,22C、22E、22Fと、振動板42の短手方向において交差するように(たすき掛けになるように)、振動板42の端部に取り付けている。
この実施形態にかかる触覚提示装置10Cは、駆動部61が圧電フィルム21A,21B、21C、21D、21E、21Fに対して、同じタイミングで同じ方向の電界を印加し、これらの圧電フィルム21A,21B、21C、21D、21E、21Fが同じタイミングで収縮、または伸張するように制御する。
触覚提示装置10Cの駆動部61が圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fに対して、これらの圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fが振動板42の短手方向に収縮する方向の電界を印加すると、圧電フィルム22A、22Cの収縮にともなって、スライド板32Bは、圧電フィルム22A、22Cに取り付けた側(図16(B)における左側)の端部が中央方向に引っ張られるので、図17に示した−X方向にスライドする。また、振動板42は、圧電フィルム22E、22Fの収縮、およびスライド板32Bのスライドにともなって、圧電フィルム22E、22Fに取り付けた側(図16における左側)の端部が中央方向に引っ張られる。また、振動板42は圧電フィルム22B、22Dの収縮にともなって、圧電フィルム22B、22Dの端部に取り付けられた側(図16における右側)の端部が中央方向に引っ張られる。これにより、振動板42は、前方へより突出するように湾曲する。
一方、触覚提示装置10Cの駆動部61が圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fに対して、これらの圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fが振動板42の短手方向に伸張する方向の電界を印加すると、圧電フィルム22A、22Cの伸張にともなって、スライド板32Bは、圧電フィルム22A、22Cに取り付けた側(図16(B)における左側)の端部が中央方向と反対側に引っ張られるので、図17に示したX方向にスライドする。また、振動板42は、圧電フィルム22E、22Fの伸張、およびスライド板32Bのスライドにともなって、圧電フィルム22E、22Fに取り付けた側(図16における左側)の端部が中央方向と反対側に引っ張られる。また、振動板42は圧電フィルム22B、22Dの伸張にともなって、圧電フィルム22B、22Dの端部に取り付けられた側(図16における右側)の端部が中央方向と反対側に引っ張られる。これにより、振動板41は、前方への突出量が低下した湾曲状態となる。
このように、この実施形態にかかる触覚提示装置10Cは、上述した触覚提示装置10Bに比べて、スライド板32Bがスライドする分だけ、振動板42を大きく振動させることができる。
具体的には、触覚提示装置10Bの駆動部61が圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fに対して、これらの圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fが振動板42の短手方向に収縮する方向の電界を印加したときに、振動板41の前方への突出量を増加させるのに寄与する圧電フィルム22A,22B、22C、22D収縮量は、圧電フィルム22A(または22C)の収縮量と、圧電フィルム22B(または22D)の収縮量と、圧電フィルム22E(または22F)の収縮量と、の和である。また、触覚提示装置10Bの駆動部61が圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fに対して、これらの圧電フィルム22A,22B、22C、22D、22E、22Fが振動板42の短手方向に伸張する方向の電界を印加したときに、振動板41の前方の突出力を低下させるのに寄与する圧電フィルム22A,22B、22C、22D伸張量は、圧電フィルム22A(または22C)の伸張量と、圧電フィルム22B(または22D)の伸張量と、圧電フィルム22E(または22F)の伸張量と、の和である。
また、上述の実施形態では、フィルム取付部材32が有するスライド板32Bを1枚としたが、振動板42の主面に直交する方向に複数枚のスライド板32Bを設けてもよい。