JP2015204751A - Dna二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤のスクリーニング方法 - Google Patents

Dna二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】DNA損傷に対する細胞周期停止機構で機能する因子を標的としつつ、通常の細胞増殖に対する悪影響が低い、がんの治療に有用な物質を提供すること、及びそのような物質をスクリーニングする手段を提供すること。【解決手段】本発明に係るDNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤のスクリーニング方法は、哺乳動物由来細胞又は該細胞の核抽出液と被検物質を接触させ、次いで、前記細胞又は前記核抽出液における、RPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化レベル及びRPA-NBS1複合体に依存しないATRの活性化レベルを検出し、前記複合体依存のATR活性化レベルが前記複合体非依存のATR活性化レベルよりも低く検出される被検物質を選択することを含む。【選択図】図8

Description

本発明は、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤、及び該増強剤のスクリーニング方法に関する。
染色体の安定性は、正常細胞であれがん細胞であれ、細胞周期停止、アポトーシスや細胞老化などのさまざまなDNA損傷応答によって維持されている(非特許文献1)。これらの機構が阻害されると、著しい染色体不安定性を招き、DNA損傷が生じて細胞死が導かれる。そのなかでも、DNA損傷に対する細胞周期停止機構は、細胞生存性を高める上で重要な役割を担っており、哺乳類では主にATM-p53-p21経路(非特許文献2、3)とATM/ATR-Chk1-Cdc25経路(非特許文献4、5)の2経路によって制御されている。前者はG1期およびG2期での細胞周期停止を、後者はG2期での細胞周期停止を制御している(非特許文献6〜8)。
多くのがん細胞はp53遺伝子の変異が認められるため、それらの細胞ではDNA損傷存在下での細胞の生存はChk1を介するG2チェックポイントにのみ依存している。従って、G2チェックポイントを阻害する薬剤は、p53変異がん細胞に細胞死を導くことができると期待される。
DNA損傷を認識して生じたシグナルは、その下流分子へと瞬時に伝達していくが、その伝達経路はDNA損傷の種類に応じて異なっている。例えば、DNA二重鎖切断(double-stranded DNA break; DSB)の場合は、まずATM(ataxia telangiectasia mutated)キナーゼ(非特許文献9)及びDNA-PKcs(DNA-dependent protein kinase catalytic subunit)が活性化され、続いてヌクレアーゼによってDNA断端はATRを活性化できる構造へと処理される(非特許文献10〜12)。一方、一本鎖DNA及び一本鎖DNA−二本鎖DNA間の接合部(一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクション)が生じるようなDNA損傷では、それぞれ複製タンパク質A(RPA)及びRad17に依存した経路で直接的にATR(ataxia telangiectasia and Rad3-related)が活性化される(非特許文献13)。活性化したATM及びATRの一方又は両者がp53やChk1、Chk2などの多くのエフェクター分子へ信号を伝達することで、G1、G2チェックポイントが作用する(非特許文献1)。
p53遺伝子に変異を有するがん細胞は、DNA損傷に対してその生存がG2チェックポイントに依存しているので、これを利用して様々なG2チェックポイント阻害剤が臨床応用を目指して開発されてきた。それらの中でも、カフェインはATMキナーゼ及びATRキナーゼの阻害剤であり、p53変異細胞の放射線感受性増強剤としていままでに多くの研究がなされている。また、UCN-01(非特許文献14)、CEP-3891(非特許文献15)、AZD7762(非特許文献16)などのChk1阻害剤も、G2チェックポイント抑制剤として働く。
しかし、ATRやChk1は哺乳動物細胞の生存に必須のキナーゼであり(非特許文献17〜21)、ATMも正常細胞の増殖における染色体の正常性を保つのに必須な分子である(非特許文献22)。従って、これらの薬剤は、正常細胞に対し想像以上の影響を与えかねず、臨床応用の可能性は低いと予想される。
DNA損傷チェックポイント因子の阻害によるがん治療を開示している特許出願としては、PARP阻害による癌治療に関する特許文献1、KNTC2遺伝子(紡錘体チェックポイントシグナル伝達に関与)の発現抑制による癌治療に関する特許文献2があり、またDNA修復機構に関与する因子を対象とした特許出願として、XPF遺伝子の発現抑制による癌治療に関する特許文献3がある。しかしながら、これらの手段もまた、正常細胞に対して予期せぬ有害な作用を引き起こす懸念は残る。
本願発明者及び共同研究者らはこれまでに、放射線照射したp53欠損HT29細胞を用いたcell based-high-throughput screening systemにより、G2チェックポイント阻害剤としてCBP-93872を同定した(非特許文献23)。この薬剤は、高血圧症や狭心症等の治療に用いられるβブロッカーとしても報告されているが、p53欠損でかつCDKN2A (Cyclin dependent kinase inhibitor 2A) 野生型の癌細胞の増殖を抑制する作用があることが見出されており、細胞周期の解析によりこの増殖阻害はG1期停止の誘導によることが示されているが、この薬剤で生じるG2チェックポイント阻害の分子機構に関してはほとんど分かっていない。
特開2014−1210号公報 特許第4761389号 特許第5390653号
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本発明は、DNA損傷に対する細胞周期停止機構で機能する因子を標的としつつ、通常の細胞増殖に対する悪影響が低い、がんの治療に有用な物質を提供すること、及びそのような物質をスクリーニングする手段を提供することを目的とする。
本願発明者は、G2チェックポイント阻害剤として同定されたCBP-93872の細胞内分子標的について鋭意研究した結果、CBP-93872はDNA二重鎖切断に特異的に作用するG2チェックポイント維持阻害剤であって、DNA二重鎖切断で生じるRPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化を阻害すること、CBP-93872がp53変異がん細胞に対してDNA二重鎖切断を誘導するがん療法の治療効果増強剤として利用可能であることを見出した。さらに、近年開発された核抽出液によるインビトロATR活性化アッセイ(Shiotani, B. & Zou, L. Mol Cell 33, 547-58 (2009).)を応用し、CBP-93872が一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクションにより生じるATR活性化ではなく一本鎖DNAにより生じるATR活性化を特異的に阻害することを見出し、このアッセイ系を用いればCBP-93872のようにDNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強効果を有する物質をスクリーニングすることができることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、哺乳動物由来細胞又は該細胞の核抽出液と被検物質を接触させ、次いで、前記細胞又は前記核抽出液における、RPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化レベル及びRPA-NBS1複合体に依存しないATRの活性化レベルを検出し、前記複合体依存のATR活性化レベルが前記複合体非依存のATR活性化レベルよりも低く検出される被検物質を選択することを含む、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤のスクリーニング方法を提供する。また、本発明は、上記本発明のスクリーニング方法によりスクリーニングされた物質を有効成分とする、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤を提供する。さらに、本発明は、RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害する物質を有効成分とする、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤を提供する。
本発明により、DNA二重鎖切断に特異的な経路を標的とする、がん療法の抗がん作用増強剤をスクリーニングする手段が提供された。RPA-NBS1複合体依存のATR活性化のみを阻害できる物質であれば、DNA二重鎖切断に特異的な経路のみをブロックしてG2チェックポイントの維持を効果的に阻害できるので、二重鎖切断をもたらす刺激に対する感受性を高めることができる。これまで、p53変異がんに対する抗がん剤及び放射線療法増強剤の開発は、G2チェックポイントを構成するATM, ATR, Chk1, Wee1等のキナーゼを分子標的として行われてきた。しかしながら、これらのキナーゼは細胞の生存や染色体安定維持に必須の役割を果たしており、正常細胞に対し想像以上の影響を与えかねず、効果的な医薬の開発には至っていない。一方、ATM活性化からATR活性化までの分子経路(図8参照)は通常の細胞増殖には必須でないと考えられるため、この経路を標的とした薬物は、正常細胞への悪影響が少なく、DNA損傷によりもたらされる抗腫瘍効果を望ましく増強できる、理想的な医薬となり得る。本発明は、DNA二重鎖切断に特異的な抗腫瘍作用を示す薬物の開発に役立つものであり、DNA損傷チェックポイント経路を標的としたこれまでの抗がん薬物開発の概念・技術よりも臨床応用の可能性がはるかに高いものである。
(A)ヒト結腸がんHT29細胞を放射線(10Gy)、紫外線(10 J/m2)、MMS(200μM)で刺激した。刺激後8時間後に、CBP-93872(20μM)もしくはUCN01(300 nM)を加えさらに培養した。それと同時にノコダゾール(500nM)を加え、細胞分裂期からG1期への移行を阻害した。その8時間後に細胞を固定し、FACS解析を行った。分裂期細胞は、H3のS10リン酸化陽性細胞として同定した。分裂期指数(Mitotic index)は、阻害剤の処理を行っていないものに対する比率で示した。データは少なくとも独立した3回の平均と標準偏差で示した。その結果、CBP-93872は、放射線によるG2停止を効果的に阻害するが、紫外線やMMSによるG2停止には影響を及ぼさないことが確認された。(B-E)CBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下、HT29細胞を放射線(B)、紫外線(C)、MMS(D)、HU(E)で処理した。処理の2時間後(放射線、紫外線)又は4時間後(MMS、HU)に細胞を回収し、細胞抽出液で図示した抗体を用いて免疫ブロットを行なった。その結果、CBP-93872は、放射線照射によるChk1のS317およびS345のリン酸化を強く抑制するが、放射線によるATMの活性化(ATMのS1981のリン酸化)とその下流のChk2のリン酸化は抑制しなかった(図1B)。さらに、CBP-93872は、紫外線、MMS及びヒドロキシ尿素によるChk1のリン酸化には影響を与えなかった(図1C-1E)。以上のことから、CBP-93172の細胞内標的はDNA二重鎖切断によるATM活性化の下流にあることが示唆された。 (A)p53が機能しないヒト結腸がんHT29細胞、ヒト肺腺がんA594細胞およびヒト非小細胞性肺がんNCI-H460細胞、並びにp53が機能しているヒト乳がんMCF7細胞を、DMSO(コントロール)、CBP-93872(20μM)、カフェイン(2 mM)もしくはUCN01(300 nM)存在下で放射線(10Gy)刺激した。放射線照射後1時間で図1Aのようにノコダゾール(500nM)を加え、図に示した時間に細胞を固定した。固定した細胞を用いてFACS解析を行った。分裂期指数は図1Aのように同定し、データは少なくとも独立した3回の平均と標準偏差で示した。p53が機能していないがん細胞(HT29、A594、NCI-H460)では、CBP-93872存在下で、放射線照射後1時間での分裂期への移行は有意に抑制されているが、16時間後では若干増加していた。一方、カフェインやUCN-01存在下では、1時間後の分裂期移行はほとんど抑制されず、12時間後で劇的に増加していた。p53が機能しているMCF7細胞においては、CBP-93872存在下でも常に分裂期移行は低いままであった。以上のことから、カフェイン及びUCN-01はG2チェックポイントの初期反応を阻害するが、CBP-93872はG2チェックポイントの初期反応には影響せず、G2期停止維持を阻害することが示唆された。(B)HT29細胞をDMSO(コントロール)、CBP-93872(20μM)、UCN01(300 nM)もしくはKU-55933(20μM)存在下で放射線(10Gy)刺激した。照射後図に示した時間に細胞を回収し、細胞抽出液で図示した抗体を用いて免疫ブロットを行なった。CBP-93872存在下では放射線照射後4時間ではH3-S10リン酸化(細胞分裂期の細胞の指標となる)のシグナルは低く、照射後8時間で再度上昇した。その一方、UCN-01やATM阻害剤(KU-55933)の存在下では、H3-S10リン酸化の程度はほぼ変わりのないままであった。KU-55933存在下では、予想通り、放射線処理によるATMの活性化、およびその基質であるChk2のリン酸化も抑制された。UCN-01存在下ではATMの活性化、およびChk2のリン酸化は抑制されず、Chk1のS317およびS345のリン酸化は強くなっていた。この結果は図2Aの結果と合致しており、CBP-93872はG2チェックポイントの初期反応には影響せず、G2期停止維持を阻害することが示唆された。 (A-B) DMSO又はCBP-93872(20μM)の存在下、ヒト結腸がんHT29細胞に放射線(A)又は紫外線(B)を照射した。照射2時間後に細胞を回収し、細胞抽出液で図示した抗体を用いて免疫ブロットを行なった。ATR-T1989のリン酸化(ATRの活性化)は、Chk1のリン酸化と同様、放射線1Gy以上の処理で直ちに検出され、CBP-93872は、DNA二重鎖切断で生じるATR活性化、およびその下流のChk1リン酸化を強く抑制した。紫外線処理は照射量依存的にATRを活性化したが、このATRの活性化は、紫外線により誘導されるChk1リン酸化と同様に、CBP-93872処理しても影響を受けなかった。(C)精製したGST-Rad17を基質とし、組換えATR-ATRIP複合体を用いてin vitroキナーゼ解析を行なった。図示した濃度のCBP-93872又はVE-821 (10μM)を反応系に加え、精製した野生型ATR-ATRIP(Wt-ATR-ATRIP)複合体の共存下又は非共存下でGST-Rad17を37℃、30分間インキュベートした。SDSサンプルバッファーを添加してボイルすることでキナーゼ活性を停止し、Rad17のS645のリン酸化特異的抗体を用いて免疫ブロットを行った。ATR阻害剤のVE-821ではATR活性化が抑制されているにもかかわらず、CBP-93872は200マイクロモルまで濃度を濃くしてもATR活性化は抑制できず、CBP-93872はATRの活性化を直接抑制していないことが示された。以上の図3の結果を合わせると、CBP-93872の分子標的は、ATMによるATRを活性化可能なDNA構造改変からATR活性化までの間に存在すると考えられた。 (A)ヒト結腸がんHT29細胞にコントロールshRNAもしくはCtIPに対するshRNA(shCtIP)を発現するTet-on発現レンチウイルスを感染させた。感染細胞をドキシサイクリン存在下(1μg/ml)で3日間培養した。その後、細胞にCBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下で、放射線(10Gy)照射を行った。照射4時間後に細胞を固定し、抗RPA2抗体および抗γ-H2AX抗体を用いて免疫染色し、蛍光顕微鏡で撮影した。その結果、CBP-93872処理した細胞(IR+/CBP+/shRNA-)においては、放射線処理によりRPA2のドット構造形成が認められ、二重鎖断端の削り込みが起きていることが確認された。(B)コントロールshRNA又はshCtIPを発現させたHT29細胞に放射線(10Gy)を照射した。ノコダゾール(500nM)を放射線照射1時間後に加え、図に示した時間に細胞を回収した。細胞抽出液で図示した抗体を用いて免疫ブロットを行なった。CtIPノックダウン細胞では、ATM活性化は抑制されないが、Chk1のS317、S345およびRPA2のリン酸化が抑制されることが確認された。(C)(A)で固定した細胞を抗H3リン酸化S10抗体で免疫染色し、図2Aのごとく分裂期細胞を解析した。データは少なくとも独立した3回の平均と標準偏差で示した。DNA二重鎖切断において、CtIPノックダウン細胞ではCBP-93872による処理でみられるものとよく似たG2チェックポイント阻害を示した。以上の図4の結果から、CBP-93872の分子標的はDNA断端の削り込みからATRが活性化されるまでの間に存在することが示唆された。 (A)HT29細胞にコントロールshRNA又はATRに対するshRNA(shATR)を発現するTet-on発現レンチウイルスを感染させた。感染細胞をドキシサイクリン存在下(1μg/ml)で3日間培養した。その後、細胞にCBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下で放射線(10Gy)照射を行なった。照射2時間後に細胞を回収し、クロマチン分画でNbs1のS343リン酸化に特異的な抗体を用いて免疫ブロットを行なった。ATRをノックダウンすると、放射線によるNbs1のS343のリン酸化は強く抑制された。CBP-93872処理によってもそのリン酸化は強く抑制された。(B)HT29細胞にCBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下(DMSO)で放射線(10Gy)照射し、図に示した時間に細胞を回収した。細胞抽出液を抗Mre11抗体で免疫沈降した。沈降産物をサンプルとし、図に示した抗体を用いて免疫ブロットを行なった。DNA二重鎖切断により生じるNbs1のリン酸化は2時間後より増加し、4時間から8時間にかけて最大となったが、このリン酸化はCBP-93872処理により阻害された。CBP-93872はNbs1のMre11及びRad50との複合体形成には影響を与えなかった。(C)HT29細胞にCBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下で放射線(10Gy)又は紫外線(100 J/m2)照射を行なった。照射2時間後に細胞を回収した。(B)のごとく、免疫沈降および免疫ブロットを行なった。CBP-93872は、放射線により生じるNbs1のリン酸化を特異的に阻害し、紫外線により生じるリン酸化は阻害しなかった。また、図5Bと同様に、CBP-93872はNbs1のMre11及びRad50との複合体形成には影響を与えないことが図5Cからも確認された。(D)内在性Nbs1をノックダウンした細胞に野生型(W)もしくはRPA2と結合ができないEDE変異型(EDE)のmycタグ付きNbs1を発現させた。細胞に放射線を照射し、分裂期細胞を図2Aのごとく解析した。データは少なくとも独立した3回の平均と標準偏差で示した。その結果、放射線照射後の1時間で細胞分裂期の割合が減少せず、24時間後で増加しており、Nbs1ノックダウンによりG2チェックポイントの初期反応と維持の両者が欠如すると考えられた。Nbs1ノックダウン細胞に野生型のNbs1を入れ戻すと、放射線照射後24時間においてでさえ、細胞分裂期前の細胞周期停止能が回復した。一方、EDE変異体を入れ戻した場合は、CBP-93872で処理した場合と同様に、G2チェックポイントの初期反応は回復するが、その維持は破綻したままであった。(E)細胞にCBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下で放射線(10Gy)照射を行った。ノコダゾール(500nM)を照射1時間後に加え、図に示した時間に細胞を回収した。細胞抽出液で免疫ブロットを行った。Nbs1-myc-Hisは、Wが野生型Nbs1、EがEDE変異型Nbs1である。EDE変異体入れ戻しでは、CBP-93872で処理した場合と同様、照射後1時間後のATM自己リン酸化(ATMのS1981リン酸化)は回復したが、24時間後のChk1のS345リン酸化は回復しなかった。(F)野生型(W)もしくはEDE変異型(E)のNbs1を発現した細胞の抽出液を用い、抗Mre11抗体で免疫沈降を行った。その沈降産物を用いて免疫ブロットを行った。その結果、EDE変異はMre11およびRad50との複合体形成に対し影響がないと判断された。 (A)HCT116細胞から抽出した核抽出液を、70ntの一本鎖DNA(ssDNA)もしくは70nt ssDNAと50nt ssDNAをアニーリングした一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクションとともに37℃で15分反応させた。反応産物でRPA2 S33のリン酸化特異抗体を用いて、免疫ブロットを行った。矢印で示したバンドがRPA2 S33のリン酸化体である。CBP-93872の存在下で一本鎖DNAと核抽出液をインキュベートすると、CBP-93872の濃度依存的にRPA2のS33リン酸化が抑制された(上段)。しかしながら、一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクションとインキュベートした場合は、CBP-93872によるRPA2のS33リン酸化への影響はなかった(下段)。(B)HT29細胞にCBP-93872(20μM)の存在下又は非存在下(DMSO)で、放射線(10Gy)照射を行った。図に示した時間に細胞を回収し、細胞抽出液で免疫ブロットを行った。その結果、CBP-93872処理によりRPA2のS33リン酸化は強く抑制された。図6A及び6Bの結果から、CBP-93872は一本鎖DNAによるATR活性化を抑制することで、ATRのチェックポイントシグナルの増幅を直接抑制することが示唆された。(C)CBP-93872の作用点を説明する図である。 イリノテカンとの併用によるCBP-93872の抗がん作用増強効果をin vivoで確認した結果である。イリノテカンはがん細胞移植の7および14日後に投与した(下向き矢印)。CBP-93872は移植の7、8、9、10、14、15、16及び17日後に投与した(上向き矢印)。データは腫瘍体積(mm3)の平均値±標準誤差で示した。移植後17日目から図示した通りに腫瘍体積に有意差が認められた。イリノテカン単独投与群とCBP-93872併用群との間では、移植後24日目から有意差が認められ、CBP-93872併用によりイリノテカンの抗がん作用が増強されることが確認された。 本発明による抗がん作用増強剤の新たな細胞内標的経路について説明する図である。
本発明のスクリーニング方法では、まず、哺乳動物由来細胞又は該細胞の核抽出液と被検物質を接触させ、次いで、上記細胞又は上記核抽出液における、RPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化レベル及びRPA-NBS1複合体に依存しないATRの活性化レベルを検出し、上記複合体依存のATR活性化レベルが上記複合体非依存のATR活性化レベルよりも低く検出される被検物質を選択する。
哺乳動物由来細胞としては、正常なNBS1遺伝子及びATR遺伝子を有する細胞であれば特に限定されず、例えば公知のヒト由来株化細胞を好ましく用いることができる。「遺伝子が正常である」とは、該遺伝子に変異がないことをいい、より具体的には、該遺伝子にコードされるタンパク質の生理活性が損なわれるような変異が該遺伝子に存在しないことをいう。ヒトのNBS1遺伝子及びATR遺伝子は、NCBIのデータベースにそれぞれGene ID: 4683(RefSeq. NM_002485.4、配列番号3、4)及びGene ID: 545(RefSeq. NM_001184.3、配列番号5、6)として登録されている。これらの配列は正常な各遺伝子の配列の典型例である。もっとも、タンパク質のアミノ酸配列には影響しないような一塩基多型等のごく少数の塩基の変異、例えばNCBIのdbSNPや1000 Genomes Project等の塩基配列の多様性に関する周知のデータベースに登録されているような塩基変異は、通常、コードされるタンパク質の機能には影響せず、そのようなごく少数の塩基置換はここでいう変異には該当しない。
本発明においては、哺乳動物由来細胞の核抽出液を用いることが好ましい。その場合、哺乳動物由来細胞としては、細胞増殖速度が速く、核抽出液を採取しやすいがん由来細胞株(例えばHCT116細胞等)を好ましく用いることができる。p53については変異があっても正常でもよい。
細胞からの核抽出液の調製方法は周知である。例えば、Dignamらの方法(Dignam, et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11, 1475-1489)により、あるいは該方法に修正を加えたYang, X.H., and Zou, L. (2006) Methods Enzymol. 409, 118-131.に記載の方法等により細胞核抽出液を調製することができる。また、哺乳動物細胞から核抽出液を調製するためのキット類も市販されている。核抽出液の調製方法の具体例は下記実施例に記載の通りである。
DNA二重鎖切断に続くATR活性化は、Nbs1(RPA-NBS1複合体)に依存した経路とRad17に依存した経路の二つの異なる経路で制御されていることが知られている(Shiotani, B. et al. Cell Rep 3, 1651-62 (2013).)。細胞内でDNA二重鎖切断が生じると、DNA断端の片方の鎖の削り込みにより一本鎖DNAと二本鎖DNAとが接合した構造(一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクション)が生じるが、このジャンクション部分をRad17-RFC複合体が認識し、続いて9-1-1複合体とTopBp1がジャンクションに局在化する。この局在化によりATR活性化が開始する。DNA断端の削り込みが続き一本鎖DNA部分の鎖長が長くなると、RPAとATR-ATRIP複合体が一本鎖部分に局在化する。続いて、Nbs1のEDE領域を介してMRN複合体がRPA-一本鎖DNAと結合し、TopBp1が局在化してATR-ATRIPが活性化される。
従って、本発明におけるRPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化とは、一本鎖DNA構造により哺乳動物細胞内ないしはその核抽出液中で生じるATRの活性化として検出することができる。RPA-NBS1複合体に非依存のATRの活性化とは、一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクション構造により哺乳動物細胞内ないしはその核抽出液中で生じるATRの活性化として検出することができ、Rad17に依存したATRの活性化ということもできる。
核抽出液を用いた本発明のスクリーニング方法は、例えば以下の工程を含む。
(a) 正常なNBS1遺伝子及びATR遺伝子を有する哺乳動物由来細胞の核抽出液中に、被検物質を添加する工程
(b) 工程(a)で得られた混合物に一本鎖DNAを添加した第1の反応系、及び前記混合物に突出末端を有する二本鎖DNAを添加した第2の反応系を準備し、各反応系をインキュベートする工程
(c) 各反応系におけるATRの活性化レベルを検出する工程
(d) 第1の反応系におけるATRの活性化レベルが第2の反応系におけるATRの活性化レベルよりも低い被検物質を、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用を増強する物質として選択する工程
工程(a)では、哺乳動物由来細胞の核抽出液と被検物質を接触させる。哺乳動物由来細胞が正常なATM遺伝子及びDNA-PKcs遺伝子を有している場合には、該抽出液には、さらに、ATM阻害剤及びDNA-PKcs阻害剤を添加する。これらの阻害剤は、DSBに応答性のキナーゼであるATM及びDNA-PKcsを阻害し、後の工程(b)で添加する突出末端を有する二本鎖DNAの末端部におけるDNA鎖の削り込みを防止するために添加する。被検物質と上記阻害剤を核抽出液に添加する順番は特に限定されない。なお、ヒトのATM遺伝子及びDNA-PKcs遺伝子遺伝子は、NCBIのデータベースにそれぞれGene ID: 472(RefSeq. NM_000051.3、配列番号1、2)及びGene ID: 5591(RefSeq. NM_006904.6(transcript variant 1)、配列番号27、28; RefSeq. NM_001081640.1(transcript variant 2)、配列番号29、30)として登録されている。もっとも、本発明においては、ATM遺伝子及びDNA-PKcs遺伝子が正常であるか否かを調べることは必須的ではなく、それらが正常であるか否かを調べることなくATM阻害剤及びDNA-PKcs阻害剤を核抽出液に添加してよい。
ATM阻害剤及びDNA-PKcs阻害剤はいずれも公知である。具体例を挙げると、ATM阻害剤としてはKU-55933を使用することができ、DNA-PKcs阻害剤としてはNU7026、又はCompound 401を使用することができるが、これらに限定されない。ATM阻害剤及びDNA-PKcs阻害剤は、数mM〜数十mM程度の終濃度で用いればよい。
工程(b)では、工程(a)で得られた混合物に一本鎖DNAを添加した反応系と、同混合物に突出末端を有する二本鎖DNAを添加した反応系の2種類の反応系を準備し、各反応系をインキュベートして反応を進行させる。便宜的に、前者を第1の反応系、後者を第2の反応系と呼ぶ。1つの被検物質に対して、第1の反応系及び第2の反応系のセットが少なくとも1セット必要である。1つの被検物質の濃度を何通りかに変えて検討する場合には、1つの濃度に対して1セットが必要となる。
突出末端を有する二本鎖DNAは、RPA-NBS1複合体に非依存のATR活性化を生じさせる一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクション構造として使用される。この二本鎖DNAは、少なくとも一方の末端が本明細書に定義する通りの突出末端であればよい。突出末端部は、5'突出でも3'突出でもよい。
突出末端の一本鎖部分の鎖長は、50塩基以上とすると一本鎖DNAとして作用してしまうおそれがあるため、50塩基未満とする必要がある。通常、一本鎖部分の鎖長は10〜40塩基であり、例えば15〜30塩基、又は15〜25塩基であり得る。
二本鎖DNA部分の鎖長は特に限定されないが、20塩基対程度以上のサイズであればよい。あるいは、一本鎖部分の鎖長と同程度以上であればよい。二本鎖DNA部分の鎖長の上限は特に限定されないが、化学合成により容易にDNAを調製する観点では全長(突出部を含む全長)が百数十塩基以内であることが好ましく、従って二本鎖DNA部分のサイズは100bp程度以下とすることが好ましい。
一本鎖DNAの鎖長は20塩基程度以上であればよい。上限は特に限定されないが、二本鎖DNAと同様、化学合成により容易に調製する観点では百数十塩基以下とすることが好ましい。
突出末端を有する二本鎖DNAは、例えば、百数十〜数十塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドと、このオリゴヌクレオチドの一部と相補的な配列からなるオリゴヌクレオチドを調製し、両者をアニーリングすることにより調製することができる。また、一方のオリゴヌクレオチドを一本鎖DNAとして用いることができる。
一本鎖DNA及び突出末端を有する二本鎖DNAの配列は特に限定されないが、ヒト等の哺乳動物細胞(特に、本発明のスクリーニング方法において用いられる核抽出液が由来する細胞)のゲノム中に存在しない配列を用いることが好ましい。下記実施例では、バクテリオファージ由来の配列(配列番号25及び26)を用いているが、これに限定されない。任意の塩基配列がヒト等のゲノムに存在するかどうかは、NCBIのGenBank等の公知のゲノムデータベースを検索することにより容易に調べることができる。
二つの反応系をインキュベートする温度は35〜40℃程度、例えば37℃でよい。インキュベートする時間は10〜30分程度でよい。
工程(c)では、第1及び第2の二つの反応系におけるATRの活性化レベルを検出する。検出は、定量的でも半定量的でもよい。ATRの活性化は、RPA2の33番セリンにおけるリン酸化、Chk1の自己リン酸化(例えば317番セリン又は345番セリンにおけるリン酸化)、ATRの自己リン酸化(例えば1989番スレオニンにおけるリン酸化)、Nbs1のリン酸化(例えば343番セリンにおけるリン酸化)等を指標として検出することができる。いずれも、各残基においてリン酸化された形態のタンパク質を特異的に認識する抗体が公知であるので、特異抗体を用いたウエスタンブロッティング等の免疫アッセイによりリン酸化レベルを容易に検出することができる。
多数の被検物質群から候補物質をスクリーニングするハイスループットのスクリーニングを行なう場合、通常のウエスタンブロッティングの泳動ステップを省略し、メンブレンに反応産物をそのまま転写して特異抗体と反応させ、リン酸化のレベルを半定量的に検出することで工程(c)を実施することができる。また、特異抗体に蛍光標識や放射標識をしておくことで、二次抗体との反応ステップも省略可能である。
工程(d)では、第1及び第2の二つの反応系におけるATRの活性化レベルを対比し、第1の反応系におけるATRの活性化レベルが第2の反応系におけるATRの活性化レベルよりも低い被検物質を選択する。第1の反応系において検出されるATR活性化のレベルが、第2の反応系において検出されるATR活性化のレベルの50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下であればよい。
ある濃度の被検物質に対し、第1の反応系におけるATR活性化レベルが検出限界(バックグラウンド)以下であるか、検出されたとしても、第2の反応系において検出されるATR活性化のレベルと比較して明らかに弱く、当該濃度では第1の反応系においてATRの活性化が生じていない(被検物質によりATR活性化が阻害されている)と当業者であれば判断する程度に両者のATR活性化レベルに差異が認められる場合、当該被検物質は、「RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害する」と表現される。そのような被検物質は、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤の特に有望な候補物質として選択できる。
多数の被検物質群から候補物質をスクリーニングする場合には、例えば免疫ブロッティングの結果を目視で比較して、第1の反応系において検出されたシグナルが第2の反応系において検出されたシグナルよりも低いと判断できるものを選択して被検物質を絞り込み、次いで、絞り込まれた被検物質の使用濃度を高めて再度本発明のスクリーニング方法を実施し、RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害すると判断できる物質を選択してもよい。
本発明によりスクリーニングされる被検物質は、DNA二重鎖切断時に生じるG2停止を抑制する作用を有すると期待されるので、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用を増強する物質の候補となる。特に、p53変異がんでは、DNA損傷時の細胞の生存がG2チェックポイントに依存しているので、本発明のスクリーニング方法で選択された物質は、p53変異がんに対する上記がん療法の抗がん作用増強剤としてとりわけ有用である。
DNA二重鎖切断を誘導するがん療法としては、DNA二重鎖切断を誘導する抗がん剤による化学療法、及び放射線療法を挙げることができる。
DNA二重鎖切断を誘導する抗がん剤は種々のものが公知である。具体例としては、カンプトテシン及びその誘導体(例えば、イリノテカン、トポテカン)、プラチナ製剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、PARP阻害剤(例えば、オラパリブ)、アントラサイクリン系薬剤(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
がんの放射線療法に用いる電離放射線の種類は特に限定されず、粒子線(重粒子線)、γ線、X線など、がん治療分野において放射線療法として知られる手法で用いられるいずれの電離放射線であってもよい。電離放射線は、染色体上に二重鎖DNA切断を誘導することにより細胞の自殺(アポトーシス)を誘導してがん細胞を殺傷する。
本発明のスクリーニング方法で得られた物質を有効成分とする抗がん作用増強剤を併用して、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法を実施する場合、がん療法は、単独で実施する場合と同程度の用量で実施してもよい。本発明のスクリーング方法で得られた抗がん作用増強剤によって、既定の用量の抗がん薬を投与や放射線治療を行っても、正常組織には悪影響を増大させずに、がん細胞に対しては、より増強した抗がん効果を期待できる。あるいは、単独で実施する場合よりも低い用量で実施してもよく、この場合は、併用されるがん療法による副作用を軽減することができる。
がん療法と抗がん作用増強剤を「併用する」、あるいは「組み合わせて用いる」とは、がん療法と抗がん作用増強剤の投与を患者に対し同時に、順次に、又は別々に実施することを意味する。化学療法と抗がん作用増強剤を併用する場合、抗がん剤と増強剤は、別々の製剤であってもよいし、同時に投与される場合には、同一の製剤中に両者の有効成分が含有されたものを用いてもよい。
本発明のスクリーニング方法で得られた物質を有効成分とする抗がん作用増強剤の使用量は、腫瘍の大きさやステージ、悪性度、患者の年齢、体重等に応じて異なり得るが、上記がん療法との併用の効果が認められる程度の量で投与すればよい。特に限定されないが、有効成分であるところのスクリーニングで得られた物質の投与量として、患者に対し1日当たり0.1mg/kg体重〜500mg/kg体重程度、例えば10mg/kg体重〜50mg/kg体重程度であり得る。1日の投与は1回でもよく、数回に分けて投与してもよい。また、治療期間中の抗がん作用増強剤の投与は1回でもよく、あるいは数日間毎日、又は数日、数週若しくは数月おきに複数回投与してもよい。
抗がん作用増強剤の投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。固形がん組織の近傍に局所投与してもよく、あるいは固形がん近傍の所属リンパ節に投与してもよい。
本発明による抗がん作用増強剤の有効成分として好ましく用いられる、RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害する物質の具体例として、下記構造を有する化合物(CBP-93872)を挙げることができる。
また、CBP-93872の官能基を改変するなどの各種の修飾を施したCBP-93872誘導体も、RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害する活性を有する限り、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤として有用である。CBP-93872を基本骨格として各種の修飾を施した誘導体のライブラリーを調製し、これらの誘導体を被検物質群として本発明のスクリーニング方法を実施することにより、RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害する活性が強い誘導体を選択することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<方法>
細胞培養と薬剤処理
ヒト結腸がん細胞株であるHT29細胞とHCT116細胞を、10% fetal bovin serum (FBS) と1% penicillin-streptomycin (Invitrogen社)を加えた McCoy's 5A (Gibco社)で培養した。NCI-H460, A594及びMCF7は、10% fetal bovin serum (FBS) と1% penicillin-streptomycin (Invitrogen社)を加えたRPMI-1640 (Sigma-Aldrich社)で培養した。すべての細胞は5%CO2、37℃で培養した。
この研究で使用した阻害剤を下記に示す。
CBP-93872 (20 μM; 中外製薬より提供)、UCN01 (300 nM; Sigma-Aldrich)、カフェイン(2 mM; Sigma-Aldrich)、KU-55933 (20 μM; Sigma-Aldrich)、ノコダゾール (500 nM; Sigma-Aldrich)、MMS (Sigma-Aldrich)は200 μMで使用し、ヒドロキシ尿素 (Sigma-Aldrich) は様々な濃度で使用した。
プラスミド作製
shRNAのレンチウイルスを作製するために、5'-ACGTGTGCTGTCCGT-3'ループ(配列番号7)を含むshRNA配列をpENTER4-H1tetOx1(H. Miyoshiより提供)へ組み込んだ。H1tetOx1-shRNAをレンチウイルスベクターに組み込む為に、CS-RFA-ETBsd (H. Miyoshiより提供) と共にGateway LR clonase (Invitrogen社)で処理した。
野生型human Nbs1のcDNA(配列番号8、アミノ酸配列は配列番号9)は、フォワードプライマーaaagcggccgcatgtggaaactgctgccc(配列番号14)及びリバースプライマーaaatctagatcttctcctttttaaataaggattgtatct(配列番号15)を用いたRT-PCRにより、ヒト正常線維芽細胞cDNAから増幅して得た。増幅断片をpcDNA3.1 myc-His AベクターへNotI/XbaIでクローニングした。これを鋳型として、フォワードプライマーaaaggatccgccaccatgtggaaactgctgcc(配列番号16)及びリバースプライマーaaagtcgacaaactcaatggtgatgg(配列番号17)を用いて再度PCRを行ない、myc-Hisを含んだNbs1配列部分のcDNAを増幅した。増幅断片をpENTER1Aベクター(Invitrogen社)へBamHI/SalIでクローニングし、pENTR1A Nbs1-myc-Hisプラスミドを得た。
site-specific mutagenesis kit (Toyobo社)を用いて、pENTR1A Nbs1-myc-HisプラスミドのNbs1領域にshRNA抵抗性変異又はshRNA抵抗性変異とEDE変異の両者を導入した。shRNA抵抗性変異を含むNbs1の配列を配列番号10及び11に、shRNA抵抗性変異とEDE変異を含むNbs1の配列を配列番号12及び13に示す。shRNA抵抗性変異の導入にはフォワードプライマーagaagaggacgtgaacgtacgtaaaaggccaaggatggatatagaaa(配列番号18)及びリバースプライマーtgtttttgaactttcacatcaattt(配列番号19)を、EDE変異の導入にはフォワードプライマーgcagctgcagtattggaacagttattcaagg(配列番号20)及びリバースプライマーtatggccacatcatccattt(配列番号21)を用いた。
完成したプラスミドをそれぞれCS-IV-TRE-RfA-UbC-Puro vector (H. Miyoshiより提供)とともにGateway LR clonaseで処理し、レンチウイルスベクターを作製した。
ウイルス作製および感染
リン酸カルシウム法により、pCMV-VSV-G-RSV-RevB (H. Miyoshiより提供)及びpCAG-HIVgp(H. Miyoshiより提供)と各CS-RFA-ETBsdを293T細胞へコトランスフェクトし、各shRNAを発現するレンチウイルスを作製した。HT29細胞へウイルスを感染させ、感染細胞を10μg/mlブラストサイジン(Invitrogen社)で3日間処理した。
内在性Nbs1をノックダウンさせた細胞に、Nbs1Wt-myc-His(shRNA抵抗性変異を導入したもの)もしくはNbs1EDE-myc-His(shRNA抵抗性変異及びEDE変異を導入したもの)を発現させるために、shNbs1を発現したHT29細胞へ、shRNA抵抗性の変異を加えたpENTR1A Nbs1Wt-myc-HisもしくはpENTR1A Nbs1EDE-myc-Hisから発現したウイルスを感染させた。感染細胞を10μg/mlブラストサイジン及び2μg/mlピューロマイシン(Sigma-Aldrich社)で処理した。
誘導性のshRNAおよび遺伝子を発現させるために、ドキシサイクリン(Sigma-Aldrich社)を1μg/mlの濃度で含んだ培地でウイルス感染細胞を3日間培養した。
shRNAの標的配列
shRNAで用いた標的配列を下記に示す。
ATR, GCCGCTAATCTTCTAACATTA(配列番号22)
CtIP, GCATCATCCTTCAGCCCTTGA(配列番号23)
Nbs1, GGAGGAAGATGTCAATGTTAG(配列番号24)
分裂期指数の計測
細胞を放射線(IR)、紫外線(UV)、メチルメタンスルホン酸(MMS)又はヒドロキシ尿素(HU)で処理し、任意の時間に70%エタノールで固定した。ノコダゾールを処理後1時間に加えた。固定した細胞を、phospho-histone H3 S10 (H3 pS10) (1:200; Millipore社)に対する抗体と1時間、次いでAlexa Fluor 488標識二次抗体 (1:100; Invitrogen社)と30分間反応させた。RNaseを含んだ0.1 mg/mlヨウ化プロピジウムでDNAを30分間染色した。FACSCantoII flow cytometer (BD Biosciences社)を用い、フローサイトメトリーを行った。
抗体
今回の研究で使用した抗体を下記に示す。
免疫ブロット
プロテアーゼ阻害剤およびフォスタファーゼ阻害剤を含むimmunoprecipitation (IP) kinase buffer (50 mM HEPES, pH 8.0, 150 mM NaCl, 2.5 mM EGTA, 1 mM EDTA 1 mM DTT, 0.1% Tween20, 10% glycerol)を用いて細胞抽出液を作製した。細胞可溶化物はSDS sample buffer (45 mM Tris-HCl, pH 6.8, 10% glycerol, 1% SDS, 0.01% bromophenol blue, 50 mM DTT)でボイルし作製した。抽出液中のタンパク質をSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写した。メンブレンを1次抗体と一晩反応させた後、HRP結合二次抗体で1時間反応させた。
免疫沈降
免疫沈降は既報(Shimada, M. et al. Cell 132, 221-32 (2008))に従って行った。プロテアーゼ阻害剤およびフォスタファーゼ阻害剤を含むIP kinase bufferで細胞を可溶化した。細胞可溶化液を一次抗体と4℃で一晩反応させ、続いてprotein G-agarose (GE healthcare)と1時間反応させた。沈降物をIP kinase bufferで3回洗浄し、2xSDS sample bufferで処理した。
免疫組織化学分析
カバーガラスにまいた細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温10分固定し、0.5% Triton X-100 in PBSで細胞を10分透過処理し、blocking buffer (PBS + 5% bovine serum albumin + 0.1% Tween 20)で30分ブロッキングした。処理後の細胞を、blocking bufferで1:500希釈した抗RPA2抗体及び抗γH2AX抗体と2時間室温で反応させ、次いで、blocking bufferで1:400希釈したAlexa Fluor 488標識抗Rat IgG抗体(Life Technologies社)及びAlexa Fluor 594標識抗Rabbit IgG抗体(Life Technologies社)と室温で30分間反応させた。核をHoechst 33342 (1:1000)で染色した。
in vitroキナーゼ解析
ATRのキナーゼ解析は、既報(Liu, S. et al. Mol Cell 43, 192-202 (2011).)の方法をもとに下記に示した改変を加えて行った。
HEK293E細胞にFlag-ATR-又はHis-ATRIP-発現プラスミドをトランスフェクトし、TGN buffer (50 mM Tris-HCl [pH 7.5], 150 mM NaCl, 50 mM phosphoglycerol, 10% glycerol, 1% Tween 20, 1 mM PMSF, 1 mM NaF, 1 mM Na3VO4, 1 mM DTT, 及びプロテアーゼ阻害剤)中で抗Flag M2抗体を用いてFlag-ATRを免疫沈降した。沈降物をTGN bufferで2回、0.5 M LiClを含むTGN bufferで1回、ATPを含まないreaction buffer (10 mM HEPES [pH 7.5], 50 mM NaCl, 10 mM MgCl2, 50 mM glycerophosphate, 1 mM DTT, 及びプロテアーゼ阻害剤)で2回洗浄し、200 mg/ml 3x Flagペプチドを用いてATR-ATRIP複合体の溶出を行なった。in vitroキナーゼ反応は1 mM ATPと精製したGST-Rad17を用いて行った。Rad17のリン酸化は抗リン酸化Rad17(S645)抗体(Bethyl社)を用いて確認した。
核抽出液の調製
HCT116細胞(p53正常)を≦80%コンフルエントまで培養し、トリプシン処理後、200xgで3分間室温にて遠心し、PBSで洗浄した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(ナカライテスク社)を加えた細胞の5倍量のhypotonic buffer A (10 mM Hepes-KOH, pH 7.9, 10 mM KCl, 1.5 mM MgCl2, 0.5 mM DTT, and 0.5 mM PMSF)で細胞ペレットを懸濁し、氷上で5分間反応させた。細胞を500xgで5分間4℃にて遠心し、細胞の2倍量のbuffer Aで懸濁し、タイトフィットのペッスルを用いてDounceホモジナイザーで細胞を破砕した。4,000xgで5分分間4℃にて遠心して核を回収し、プロテアーゼ阻害剤カクテルを加えた核と同量のbuffer C (20 mM Hepes-KOH, pH 7.9, 600 mM KCl, 1.5 mM MgCl2, 0.2 mM EDTA, 25% glycerol, 0.5 mM DTT, and 0.5 mM PMSF)で核を懸濁し、ローテーターを用いて30分間4℃で振盪した。核抽出液(上清)を遠心(16,000xg、15分、4℃)で回収し、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassettes (3,500-D protein molecular weight cutoff; Thermo Fisher Scientific社)を用いてbuffer D (20 mM Hepes-KOH, pH 7.9, 100 mM KCl, 0.2 mM EDTA, 20% glycerol, 0.5 mM DTT, and 0.5 mM PMSF)で透析した。透析後の核抽出液を遠心(16,000xg、30分、4℃)し、残った沈殿物を取り除いた。ブラッドフォード法を用いて上清のタンパク質濃度を測定し、急速冷凍ののち-80℃で保存した。
核抽出液によるATR活性化解析
核抽出液によるATR活性化解析は既報の方法(Shiotani, B. & Zou, L. Mol Cell 33, 547-58 (2009).)に一部改変を加え、下記の通りに実施した。
核抽出液に任意の濃度のCBP-93872を加え、氷上で1時間プレインキュベートした。ATMおよびDNA-PKcsの活性を同時に阻害する目的で、10mMのKU-55933およびNU7026 (Sigma-Aldrich社)を加え、15分氷上で反応させた。
上記で反応させた核抽出液5μLに、4xReaction buffer(40 mM HEPES (pH 7.6), 200 mM KCl, 4mM PMSF, 2mM DTT, protease inhibitor)を2.5μL、5xReaction buffer(0.5 mM MgCl2, 5 mM ATP, 50 g/ml creatine kinase, 25 mM phosphocreatine)を2μL、及び25 μMのssDNA (70nt、配列番号25) 又はssDNA/dsDNA junction (70ntのssDNAに50ntの相補鎖(配列番号26)をアニールさせたもの)を0.5μL加え、37℃で15分反応させた。6xSDS sample buffer(0.35 M Tris-HCL (pH 6.8), 36% Glycerol, 11% SDS, 0.6M DTT, 0.012% Bromo Phenol Bule) で反応液をボイルし、反応を停止した。
ボイル後の反応液をサンプルとして、RPA2 S33のリン酸化形態を特異的に認識する抗体(A300-246A、BETHYL社 参考文献:Shiotani et al. Cell Report 2013, 3, 1651-1662)を用いて免疫ブロットを行ない、反応産物中のRPA2 S33のリン酸化を検出した。
<結果>
CBP-93872はDNA二重鎖切断によるG2チェックポイントを特異的に阻害する
CBP-93872によるG2チェックポイント阻害の分子原理を明らかにするために、我々ははじめにどのような種類のDNA損傷により誘導されたG2チェックポイントに対してこの薬剤が作用するかを調べた。機能が欠損したp53タンパク質を持つHT29細胞をCBP-93872の存在下又は非存在下で放射線、紫外線、MMS(アルキル化剤)にて刺激し、分裂期直前の細胞周期停止をヒストンH3のS10のリン酸化を指標として評価した。
CBP-93872は放射線によるG2停止を効果的に阻害するが、紫外線やMMSによるG2停止には影響を及ぼさなかった(図1A)。一方、紫外線やMMSによるG2停止はUCN01によって効果的に阻害された。これと一致するように、CBP-93872存在下で放射線照射によるChk1のS317およびS345のリン酸化が強く抑制された(図1B)。興味深いことに、CBP-93872は放射線によるATMの活性化(ATMのS1981のリン酸化)とその下流のChk2のリン酸化は抑制しなかった(図1B)。さらに、CBP-93872は紫外線、MMS及びヒドロキシ尿素によるChk1のリン酸化には影響を与えなかった(図1C-1E)。以上のことから、CBP-93172の細胞内標的はDNA二重鎖切断によるATM活性化の下流にあることが示唆された。
CBP-93872は二重鎖切断におけるG2チェックポイントの初期反応は阻害せず、維持を阻害する
CBP-93872によるG2チェックポイント阻害様式について、細胞分裂期の細胞をH3-S10のリン酸化を指標にフローサイトメトリーで計測することで調べた。結果を図2Aに示す。p53の機能が欠損しているHT29、A594、及びNCI-H460細胞では、CBP-93872存在下で、放射線照射後1時間での分裂期への移行は有意に抑制されているが、16時間後では若干増加していた。一方、カフェインやUCN-01存在下では、1時間後の分裂期移行はほとんど抑制されず、12時間後で劇的に増加していた。p53が機能しているMCF7細胞においては、CBP-93872存在下でも常に分裂期移行は低いままであった。以上のことから、カフェイン及びUCN-01はG2チェックポイントの初期反応を阻害するが、CBP-93872はG2チェックポイントの初期反応には影響せず、G2期停止維持を阻害することが示唆された。
ウエスタンブロットによりCBP-93872によるG2チェックポイント阻害様式を調べた結果を図2Bに示す。図2Aの結果と合致するように、ウエスタンブロットでも、CBP-93872存在下では放射線照射後4時間ではH3-S10リン酸化のシグナルは低く、照射後8時間で再度上昇した。一方、UCN-01やATM阻害剤であるKU-55933の存在下では、H3-S10リン酸化の程度はほぼ変わりのないままであった。また予想どおりに、KU-55933存在下では放射線処理によるATMの活性化、およびその基質であるChk2のリン酸化も抑制された。UCN-01存在下ではATMの活性化、およびChk2のリン酸化は抑制されず、Chk1のS317およびS345のリン酸化は強くなっていた。
CBP-93872は二重鎖切断に生じるATRの活性化を抑制する
次に我々は、CBP-93872が阻害するのはATR活性化の上流であるのか、下流であるのかを調べた。ATRの活性化はT1989残基の自己リン酸化で評価した(Liu, S. et al. Mol Cell 43, 192-202 (2011).)。T1989残基の自己リン酸化は、ATR T1989リン酸化形態を特異的に認識する抗体(Liu, S. et al. Mol Cell 43, 192-202 (2011).)を用いた免疫ブロットにより評価した。
ATR-T1989のリン酸化は、Chk1のリン酸化と同様、放射線1Gy以上の処理で直ちに検出された(図3A)。CBP-93872は、DNA二重鎖切断で生じるATR活性化、およびその下流のChk1リン酸化を強く抑制した。重要なことは、紫外線処理は照射量依存的にATRを活性化したが、このATRの活性化は、紫外線により誘導されるChk1リン酸化と同様に、CBP-93872処理しても影響を受けなかった(図3B)。CBP-93872処理は、紫外線処理ありでも無しでもS期の進行には影響を及ぼさなかったが(データ省略)、このことは、S期の進行に変化をきたしていることの間接的な結果によりCBP-93872がUV誘導性のChk1リン酸化を抑制できないという可能性を排除するものである。さらに、我々はCBP-93872がATR活性を直接阻害しているかを調べた。野生型組み換えATR-ATRIP複合体たんぱくを用いたin vitroキナーゼ活性測定によると、ATR阻害剤のVE-821ではATR活性化が抑制されているにもかかわらず、CBP-93872は200マイクロモルまで濃度を濃くしてもATR活性化は抑制できず、CBP-93872はATRの活性化を直接抑制していないことが示された(図3C)。以上を合わせると、CBP-93872の分子標的は、ATMによるATRを活性化可能なDNA構造改変からATR活性化までの間に存在すると考えられた。
CBP-93872は二重鎖切断部分のDNA断端の削り込みを抑制しない
DNA二重鎖切断におけるATR活性化には、ATMを活性化するDNA二重鎖切断構造からATRを活性化するDNA構造への変換が必要である。DNA二重鎖切断のDNA断端では、迅速にヌクレアーゼおよびCtIPによって一本鎖DNA構造と一本鎖DNA−二本鎖DNA間のジャンクション構造(一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクション)とが形成される(Liu, S. et al. Mol Cell 43, 192-202 (2011).; Shiotani, B. & Zou, L. Mol Cell 33, 547-58 (2009).)。一本鎖DNAには複製タンパク質A(RPA)が結合し、核内にドット様構造を形成する。従って我々は、CBP-93872によってDNA二重鎖断端の削り込みが阻害されるかどうかを、RPA2に対する抗体を用いた免疫組織染色により調べた。
免疫組織染色の結果を図4Aに示す。コントロールの細胞(IR+/CBP-/shRNA-及びIR+/CBP-/shRNA Control)では、放射線処理後直ちにRPA2のドット構造形成が認められた。これらのドット構造はγH2AXドットと共局在することから、RPA2のドット構造はDNA二重鎖切断部位のDNA断端の削り込みによって生じた一本鎖DNAを表していることが示唆された。CtIPをノックダウンした細胞(IR+/CBP-/shRNA CtIP)ではRPA2ドット構造の形成はほぼ完全に認められず、二重鎖断端の削り込みが起きていないことが確認された。一方、CBP-93872処理した細胞(IR+/CBP+/shRNA-)においては、放射線処理によりRPA2のドット構造形成が認められ、二重鎖断端の削り込みが起きていることが確認された。興味深いことに、DNA二重鎖切断において、CtIPノックダウン細胞ではCBP-93872による処理でみられるものとよく似たG2チェックポイント阻害を示した(Huertas, P. & Jackson, S.P. J Biol Chem 284, 9558-65 (2009).)(図4C)。CtIPノックダウン細胞では、ATM活性化は抑制されないが、Chk1のS317、S345およびRPA2のリン酸化が抑制された(図4B)。従って、CBP-93872によるDNA二重鎖切断におけるG2チェックポイントの維持にはDNA断端の削り込みが必要であることが示唆された(図4C)。これらの結果から、CBP-93872の分子標的はDNA断端の削り込みからATRが活性化されるまでの間に存在することが示唆された。
CBP-93872はATR依存的なNbs1のS343のリン酸化を抑制する
ごく最近、全く異なった2つのATR活性化経路が明らかにされた(Shiotani, B. et al. Cell Rep 3, 1651-62 (2013).)。一つはRad17-TopBP1経路によるもので、もう一つは一本鎖DNAに結合したMRN複合体によるものである。前者はATRによるチェックポイントシグナルの初期反応に関与し、後者は一本鎖DNA上でATRによるチェックポイントシグナルの増幅に寄与していると示されてきた。従って、我々は、DNA二重鎖切断で生じるNbs1のS343のリン酸化の少なくとも一部はチェックポイントシグナルの増幅過程で活性化ATRにより生じるとの仮説を立てた。図5Aに示されるように、ATRをノックダウンすると、放射線によるNbs1のS343のリン酸化は強く抑制された。興味深いことに、CBP-93872処理によってもそのリン酸化は強く抑制された。DNA二重鎖切断により生じるNbs1のリン酸化は2時間後より増加し、4時間から8時間にかけて最大となったが、このリン酸化はCBP-93872処理により阻害された(図5B)。このことから、このリン酸化はG2チェックポイントの初期反応ではなくチェックポイント維持に関与するものと考えられた。ここで重要なことであるが、CBP-93872はNbs1のMre11及びRad50との複合体形成には影響を与えなかった(図5B及び5C)。CBP-93872は放射線により生じるNbs1のリン酸化を特異的に阻害し、紫外線により生じるリン酸化は阻害しなかった(図5C)。
Nbs1をRPAと結合できなくするとG2チェックポイントの維持ができなくなる
Nbs1がRPAと結合することはMRNによるATR活性化に必要であることから(Shiotani, B. et al. Cell Rep 3, 1651-62 (2013).)、我々はRPAとの結合能を欠いたNbs1変異株(EDE変異体)はCBP-93872処理と同様にG2チェックポイント維持に異常が生じると考えた。放射線照射後の1時間で細胞分裂期の割合が減少せず、24時間後で増加しており(図5D)、Nbs1ノックダウンによりG2チェックポイントの初期反応と維持の両者が欠如すると考えられた。Nbs1ノックダウン細胞に野生型のNbs1を入れ戻すと、放射線照射後24時間においてでさえ、細胞分裂期前の細胞周期停止能が回復した。一方、EDE変異体を入れ戻した場合は、CBP-93872で処理した場合と同様に、G2チェックポイントの初期反応は回復するが、その維持は破綻したままであった。これと一致して、EDE変異体入れ戻しでは、CBP-93872で処理した場合と同様、照射後1時間後のATM自己リン酸化(ATMのS1981リン酸化)は回復したが、24時間後のChk1のS345リン酸化は回復しなかった(図5E)。EDE変異体によるMre11およびRad50との複合体形成に対する影響については、Mre11による免疫沈降で確認した結果、影響がないと判断された(図5F)。以上の結果より、MRN複合体によるATR活性化の欠損は、CBP-93872処理でみられるものと類似の表現系であることが分かった。
CBP-93872はin vitroで一本鎖DNAによるATRの活性化を直接阻害する
最後に、CBP-93872が一本鎖DNA上で生じるATRのチェックポイントシグナルの増幅、あるいは一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクションで生じるATRのチェックポイントシグナルの増幅のどちらか、あるいは両方を抑制するかを、近年開発されたin vitro ATR活性化系を用いて調べた。このシステムでは、一本鎖DNAもしくは一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクションを細胞核抽出液に加えインキュベートすると、ATR、TopBP1やNbs1に依存したRPA2のS33のリン酸化が生じる。
結果を図6に示す。CBP-93872の存在下で一本鎖DNAと核抽出液をインキュベートすると、CBP-93872の濃度依存的にRPA2のS33リン酸化が抑制された(図6A上段)。しかしながら、一本鎖DNA/二本鎖DNAジャンクションとインキュベートした場合は、CBP-93872によるRPA2のS33リン酸化への影響はなかった(図6A下段)。さらに、HT29細胞に対し、CBP-93872の存在下又は非存在下で放射線照射(10Gy)を行ない、細胞内でのRPA2のS33リン酸化を調べると、CBP-93872処理によりRPA2のS33リン酸化は強く抑制された(図6B)。以上のことから、CBP-93872は一本鎖DNAによるATR活性化を抑制することで、ATRのチェックポイントシグナルの増幅を直接抑制することが示唆された。
<イリノテカンとの併用によるCBP-93872の抗がん作用増強効果>
HT29大腸がん細胞をNOD scidマウス(7週齢、雌)の背部皮下に移植(5x106細胞/マウス)し、以下の通りに薬剤投与を行なった。各群7匹とした。
イリノテカン単独投与群:
がん細胞移植の7および14日後にイリノテカンを25 mg/kg body weightで計2回投与
CBP-93872併用群:
がん細胞移植の7および14日後にイリノテカンを25 mg/kg body weightで計2回静脈内投与投与し、かつ、移植の7、8、9、10、14、15、16及び17日後にCBP-93872を100 mg/kg body weightで計8回腹腔内投与
コントロール群:
イリノテカンに代えて生理食塩水を上記と同様に計2回静脈内投与し、かつ、CBP-93872に代えて生理食塩水で10%に希釈したDMSOを上記と同様に計8回腹腔内投与
がん細胞移植から3、6、10、13、17、21、24、及び28日後に、腫瘍体積を測定した。デジタルノギスを用いて、背部皮下に形成された腫瘍の長径と短径を測定し、(長径mm×短径mm×短径mm)/2の値を腫瘍体積として算出した。各測定日の腫瘍体積の値について、対応がない分散分析(Non-repeated Measures ANOVA)を実施し、両側検定にてP<0.05水準で有意差を示した17、21、24、及び28日後の腫瘍体積データについて、統計プログラムystat2013を用いてSNK検定(Student-Newman-Keuls test)を行なった。
結果を図7に示す。移植後17日目から図示した通りに腫瘍体積に有意差が認められた。イリノテカン単独投与群とCBP-93872併用群との間では、移植後24日目から有意差が認められ、CBP-93872併用によりイリノテカンの抗がん作用が増強されることが確認された。

Claims (18)

  1. 哺乳動物由来細胞又は該細胞の核抽出液と被検物質を接触させ、次いで、前記細胞又は前記核抽出液における、RPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化レベル及びRPA-NBS1複合体に依存しないATRの活性化レベルを検出し、前記複合体依存のATR活性化レベルが前記複合体非依存のATR活性化レベルよりも低く検出される被検物質を選択することを含む、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤のスクリーニング方法。
  2. 前記哺乳動物由来細胞は、正常なNBS1遺伝子及びATR遺伝子を有する細胞である、請求項1記載の方法。
  3. RPA-NBS1複合体に依存したATRの活性化は、一本鎖DNA構造により前記細胞内又は前記核抽出液中で誘導されるATR活性化であり、RPA-NBS1複合体に依存しないATRの活性化は、一本鎖DNAと二本鎖DNAとが接合した構造により前記細胞内又は前記核抽出液中で誘導されるATR活性化である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 下記(a)〜(d)の工程を含む、請求項3記載の方法。
    (a) 正常なNBS1遺伝子及びATR遺伝子を有する哺乳動物由来細胞の核抽出液中に被検物質を添加する工程
    (b) 工程(a)で得られた混合物に一本鎖DNAを添加した第1の反応系、及び前記混合物に突出末端を有する二本鎖DNAを添加した第2の反応系を準備し、各反応系をインキュベートする工程
    (c) 各反応系におけるATRの活性化レベルを検出する工程
    (d) 第1の反応系におけるATRの活性化レベルが第2の反応系におけるATRの活性化レベルよりも低い被検物質を、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用を増強する物質として選択する工程
  5. 前記工程(a)において、核抽出液にさらにATM阻害剤及びDNA-PKcs阻害剤を添加することを含む、請求項4記載の方法。
  6. ATRの活性化は、RPA2の第33番セリンにおけるリン酸化によって検出される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 突出末端を有する二本鎖DNAは、少なくとも一方の末端が突出末端であり、突出末端部における一本鎖部分の鎖長が10〜40塩基であり、二本鎖部分の鎖長が20〜100塩基対である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
  8. p53変異がんに対して用いられる抗がん作用増強剤のスクリーニング方法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
  9. DNA二重鎖切断を誘導するがん療法が、DNA二重鎖切断を誘導する抗がん剤による化学療法、又は放射線療法である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記抗がん剤が、カンプトテシン及びその誘導体、プラチナ製剤、PARP阻害剤、並びにアントラサイクリン系薬剤から選択される少なくとも1種である、請求項9記載の方法。
  11. カンプトテシン誘導体がイリノテカン及びトポテカンから選択される少なくとも1種であり、プラチナ製剤がシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンから選択される少なくとも1種であり、PARP阻害剤がオラパリブであり、アントラサイクリン系薬剤がドキソルビシン及びエピルビシンから選択される少なくとも1種である、請求項10記載の方法。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法によりスクリーニングされた物質を有効成分とする、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤。
  13. RPA-NBS1複合体に依存したATR活性化を特異的に阻害する物質を有効成分とする、DNA二重鎖切断を誘導するがん療法の抗がん作用増強剤。
  14. 前記物質が、下記構造を有する化合物又はその誘導体である、請求項13記載の抗がん作用増強剤。
  15. DNA二重鎖切断を誘導するがん療法が、DNA二重鎖切断を誘導する抗がん剤による化学療法、又は放射線療法である、請求項13又は14記載の抗がん作用増強剤。
  16. 前記抗がん剤が、カンプトテシン及びその誘導体、プラチナ製剤、PARP阻害剤、並びにアントラサイクリン系薬剤から選択される少なくとも1種である、請求項15記載の抗がん作用増強剤。
  17. カンプトテシン誘導体がイリノテカン及びトポテカンから選択される少なくとも1種であり、プラチナ製剤がシスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンから選択される少なくとも1種であり、PARP阻害剤がオラパリブであり、アントラサイクリン系薬剤がドキソルビシン及びエピルビシンから選択される少なくとも1種である、請求項16記載の抗がん作用増強剤。
  18. p53変異がんに対して用いられる請求項13ないし17のいずれか1項に記載の抗がん作用増強剤。
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