JP2015180238A - 医療用ロボット - Google Patents
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Abstract
【課題】マニピュレータの動作領域が十分に得られるよう配慮し、SPSによる手術にも適用可能とした医療用ロボットを提供する。
【解決手段】医療用ロボット1は、水平面内に設けられた円弧状のガイドレール11と、鉛直面内に設けられ、水平面内の前記ガイドレール11に沿って移動可能な2本の円弧状のガイドレール13と、鉛直面内の各ガイドレール13に沿って移動可能である2基のロボットアーム20と、各ロボットアーム20によって保持された2本の鉗子マニピュレータ30とを備え、2本の鉗子マニピュレータ30は、水平面内および鉛直面内のガイドレール11、13の円弧により定まる仮想球の中心であるピボットポイント40で交差する。
【選択図】図1
【解決手段】医療用ロボット1は、水平面内に設けられた円弧状のガイドレール11と、鉛直面内に設けられ、水平面内の前記ガイドレール11に沿って移動可能な2本の円弧状のガイドレール13と、鉛直面内の各ガイドレール13に沿って移動可能である2基のロボットアーム20と、各ロボットアーム20によって保持された2本の鉗子マニピュレータ30とを備え、2本の鉗子マニピュレータ30は、水平面内および鉛直面内のガイドレール11、13の円弧により定まる仮想球の中心であるピボットポイント40で交差する。
【選択図】図1
Description
本発明は、医師等により遠隔操作可能な医療用ロボットに関する。
従来、腹腔鏡手術としては、腹部の表面に複数の孔を開け、それぞれの孔から手術器具を挿入して手術を行う多孔式腹腔鏡手術が行われることが多い。このような多孔式腹腔鏡手術においては、術者の操作によりロボットが手術を行うマスタースレイブ型の手術ロボットが種々開発され、臨床に使用されている。
例えば、特許文献1には6自由度を持つ手術ロボットを複数台用いた手術システムが記載されている。特許文献2では、手術支援装置自体と、手術支援装置が故障した時にも安全に動作させるための検出技術が記載されている。特許文献3には、一つの孔から一つのエフェクタを挿入する、多孔式腹腔鏡手術ロボット用のアームが記載されている。
一方、近年では単孔式腹腔鏡手術(SPS;Single
Port Surgery)による手術例が増加している。SPSは、臍上に切開する一箇所の孔から複数の手術器具を挿入して行う手術方法である。SPSは従来の方法よりも傷口が少なくなることから、術後の癒着による合併症が少なくなると考えられている。また、切開跡は臍部に引きこまれて見えなくなるため、整容性が良い。SPSにおいても、手術ロボットの開発が種々進められている(特許文献4、非特許文献1、2参照)。
Port Surgery)による手術例が増加している。SPSは、臍上に切開する一箇所の孔から複数の手術器具を挿入して行う手術方法である。SPSは従来の方法よりも傷口が少なくなることから、術後の癒着による合併症が少なくなると考えられている。また、切開跡は臍部に引きこまれて見えなくなるため、整容性が良い。SPSにおいても、手術ロボットの開発が種々進められている(特許文献4、非特許文献1、2参照)。
なお、その他の医療用のロボットの例として、水平面および鉛直面内の円弧状のレールを用いて内視鏡を移動させ、内視鏡の操作を行う内視鏡保持装置が特許文献5に記載されている。
SPSでは、鉗子や腹腔鏡といった手術器具を単一孔から挿入する。このため、通常の多孔式腹腔鏡手術に比べて、手術器具の操作が窮屈となる。
特許文献1〜3のような従来の多孔式腹腔鏡手術を念頭においた手術ロボットでは、操作を行う際にロボットアーム同士が干渉してしまうため、手術器具の動作領域に制限をうけSPSへの適用は難しい。またロボットも大きなものになる。
また、非特許文献1の手術ロボットは一つの円筒内に腹腔鏡カメラと2本の作業用マニピュレータを収めた微細作業用のものと考えられ移動機構も複雑である。また特許文献4や非特許文献2の手術ロボットは多孔式腹腔鏡手術用の手術ロボットと同様のアームを使用しているため前記と同様の問題が生じる。
また、特許文献5の内視鏡保持装置は、内視鏡のみの操作を目的としており、複数の手術器具を操作する場合の上記の問題を解決するものではなかった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、マニピュレータの動作領域が十分に得られるよう配慮し、SPSによる手術にも適用可能とした医療用ロボットを提供することを目的とする。
前述した課題を解決するための本発明は、水平面内に設けられた1つ以上の円弧状軌道と、鉛直面内に設けられた2つ以上の円弧状軌道と、鉛直面内の各円弧状軌道に沿って移動可能な2つ以上のロボットアームと、各ロボットアームによって保持された2つ以上のマニピュレータと、を備え、鉛直面内の前記円弧状軌道は、水平面内の前記円弧状軌道に沿って移動し、前記ロボットアームは、鉛直面内および水平面内の前記円弧状軌道によって、仮想球の球面上を移動可能であり、前記2つ以上のマニピュレータは、前記仮想球の中心で交差することを特徴とする医療用ロボットである。
これにより、ロボットアームの干渉を回避してマニピュレータを移動させることが容易であり、結果各マニピュレータの動作領域が広くとれるので、SPSにおいても術具操作が容易になる。さらに、ロボットアームの移動機構は簡単でありロボットも小型化できるので、安価に構成でき経済的効果や普及性の観点からも従来技術より優れている。
前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであることが望ましい。
これにより、医療用ロボットによる手術を好適に行うことができる。
これにより、医療用ロボットによる手術を好適に行うことができる。
前記ロボットアームは、前記仮想球の径方向に沿って前後に移動可能であることが望ましい。
これにより、目的の箇所へとマニピュレータを延ばすことができる。
これにより、目的の箇所へとマニピュレータを延ばすことができる。
また、前記マニピュレータの変形量を検知するセンサが設けられることが望ましい。
これにより、マニピュレータの変形量を遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることができる。
これにより、マニピュレータの変形量を遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることができる。
また、前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであり、前記ジョーは、減速ギアを含んだモータの回転によって駆動機構を動作させることにより開閉し、演算部により、前記モータの通電情報と、前記モータの回転に関する回転情報を用いて、下式で示す運動方程式からτextの値を算出して前記ジョーの把持力の推定値《τext》とし、
Jθ”=τm-Dθ’-τf-τext
(Jはモータの慣性モーメント、θ’はモータの角速度、θ”はモータの角加速度、τmはモータの入力トルク、τfはモータのクーロン摩擦トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数)
前記推定値《τext》から、オーバーシュートの誤差、前記モータに含まれる減速ギアの負荷による誤差、前記駆動機構の負荷による誤差を引いて前記ジョーの把持力を算出することが望ましい。
さらに、前記オーバーシュートの誤差を、前記モータから減速ギアを除いた、単独で回転する把持力算出用モータの通電情報と、前記把持力算出用モータの回転に関する回転情報を用いて推定値《τext》を算出することによって求めることが望ましい。
また、前記減速ギアの負荷による誤差を、前記把持力算出用モータについての前記推定値《τext》を所定の減速ギア補償関数に代入することによって求め、前記駆動機構の負荷による誤差を、前記モータの通電情報と回転情報を所定の駆動機構補償関数に代入することによって求めることが望ましい。
これにより、ジョーの把持力を正確に算出し、これを遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることができる。
ここで、前記把持力算出用モータは、前記把持力算出用モータの通電情報と回転情報の関係を示す数式モデルによる仮想的なモータとすることも可能である。
Jθ”=τm-Dθ’-τf-τext
(Jはモータの慣性モーメント、θ’はモータの角速度、θ”はモータの角加速度、τmはモータの入力トルク、τfはモータのクーロン摩擦トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数)
前記推定値《τext》から、オーバーシュートの誤差、前記モータに含まれる減速ギアの負荷による誤差、前記駆動機構の負荷による誤差を引いて前記ジョーの把持力を算出することが望ましい。
さらに、前記オーバーシュートの誤差を、前記モータから減速ギアを除いた、単独で回転する把持力算出用モータの通電情報と、前記把持力算出用モータの回転に関する回転情報を用いて推定値《τext》を算出することによって求めることが望ましい。
また、前記減速ギアの負荷による誤差を、前記把持力算出用モータについての前記推定値《τext》を所定の減速ギア補償関数に代入することによって求め、前記駆動機構の負荷による誤差を、前記モータの通電情報と回転情報を所定の駆動機構補償関数に代入することによって求めることが望ましい。
これにより、ジョーの把持力を正確に算出し、これを遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることができる。
ここで、前記把持力算出用モータは、前記把持力算出用モータの通電情報と回転情報の関係を示す数式モデルによる仮想的なモータとすることも可能である。
また、前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであり、前記ジョーは、モータによるプーリの回転によってワイヤの押し引きを行うことにより開閉し、演算部により、前記モータの通電情報と、前記モータによるプーリの回転に関する回転情報を用いて、下式で示す運動方程式からfの値を算出して前記ワイヤの張力の推定値《f》とし、
Jmθm”=τm-Dθm’-τFm-rmf
(θm’はプーリの角速度、θm”はプーリの角加速度、rmはプーリの回転半径、Jmはプーリの慣性モーメント、τmはモータの入力トルク、τFmはプーリのクーロン摩擦による負荷トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数)
前記推定値《f》を用いて下式からジョーに加わる負荷トルクτiを算出し、
τj=《f》{(rm 2/rj)(Jj/Jm)+rj}-τFj-(rm/rj)(Jj/Jm)(τm-Dθm”-τFm)
(rjはジョーの回転半径、Jiはジョーの慣性モーメント、τFjはジョーのクーロン摩擦による負荷トルク)
算出したτjを用いて下式からワイヤの伸び量xsを算出する
xs={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jm)}
(kはワイヤの弾性定数)
ことが望ましい。
これにより、ワイヤの伸び量を算出でき、ワイヤの伸び量を補正したモータの回転制御ができるようになる。また、ジョーの把持力を算出し、これを遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることもできる。
Jmθm”=τm-Dθm’-τFm-rmf
(θm’はプーリの角速度、θm”はプーリの角加速度、rmはプーリの回転半径、Jmはプーリの慣性モーメント、τmはモータの入力トルク、τFmはプーリのクーロン摩擦による負荷トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数)
前記推定値《f》を用いて下式からジョーに加わる負荷トルクτiを算出し、
τj=《f》{(rm 2/rj)(Jj/Jm)+rj}-τFj-(rm/rj)(Jj/Jm)(τm-Dθm”-τFm)
(rjはジョーの回転半径、Jiはジョーの慣性モーメント、τFjはジョーのクーロン摩擦による負荷トルク)
算出したτjを用いて下式からワイヤの伸び量xsを算出する
xs={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jm)}
(kはワイヤの弾性定数)
ことが望ましい。
これにより、ワイヤの伸び量を算出でき、ワイヤの伸び量を補正したモータの回転制御ができるようになる。また、ジョーの把持力を算出し、これを遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることもできる。
前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであり、前記ジョーは、モータによるプーリの回転によってワイヤの押し引きを行うことにより開閉し、演算部により、前記モータの通電情報と、前記モータによるプーリの回転に関する回転情報を用いて、下式で示す運動方程式から、
{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}
(θm’はプーリの角速度、θm”はプーリの角加速度、Jmはプーリの慣性モーメント、Jiはジョーの慣性モーメント、rmはプーリの回転半径、rjはジョーの回転半径、τmはモータの入力トルク、τFmはプーリのクーロン摩擦による負荷トルク、τFjはジョーのクーロン摩擦による負荷トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数、x”はワイヤの伸びの加速度)
下式で示す値τexを算出して推定値《τex》とし、
τex=(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}
前記推定値《τex》を用いて下式からワイヤの伸び量xを算出する
x={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFj)+(rj/Jj)τFj+(rj 2/rmJj)《τex》}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}
(kはワイヤの弾性定数)
ことも望ましい。
これにより、ワイヤの伸び量をより正確に算出でき、ワイヤの伸び量を補正したモータの回転制御ができるようになる。
{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}
(θm’はプーリの角速度、θm”はプーリの角加速度、Jmはプーリの慣性モーメント、Jiはジョーの慣性モーメント、rmはプーリの回転半径、rjはジョーの回転半径、τmはモータの入力トルク、τFmはプーリのクーロン摩擦による負荷トルク、τFjはジョーのクーロン摩擦による負荷トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数、x”はワイヤの伸びの加速度)
下式で示す値τexを算出して推定値《τex》とし、
τex=(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}
前記推定値《τex》を用いて下式からワイヤの伸び量xを算出する
x={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFj)+(rj/Jj)τFj+(rj 2/rmJj)《τex》}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}
(kはワイヤの弾性定数)
ことも望ましい。
これにより、ワイヤの伸び量をより正確に算出でき、ワイヤの伸び量を補正したモータの回転制御ができるようになる。
また、下式から求まるワイヤの伸び量xの数値解と前記算出したワイヤの伸び量xの差が最小となるようなαの最適解を求め、
x”=-Ax+B+C《τex》+α
(ここで、A=k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)、B={(rm/Jm)(τm-Dθm”-τFm)+(rj/Jj)τFj}、C=rj 2/rmJj)
前記最適解αと前記推定値《τex》から、下式によりジョーに加わる負荷トルクτiを算出する
τj=(rj/rm)《τex》+(Jj/rj)α
ことも望ましい。
これによりジョーの把持力を算出し、これを遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることができる。
x”=-Ax+B+C《τex》+α
(ここで、A=k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)、B={(rm/Jm)(τm-Dθm”-τFm)+(rj/Jj)τFj}、C=rj 2/rmJj)
前記最適解αと前記推定値《τex》から、下式によりジョーに加わる負荷トルクτiを算出する
τj=(rj/rm)《τex》+(Jj/rj)α
ことも望ましい。
これによりジョーの把持力を算出し、これを遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させることができる。
本発明により、マニピュレータの動作領域が十分に得られるよう配慮し、SPSによる手術にも適用可能とした医療用ロボットを提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1、2に、本発明の実施形態に係る医療用ロボット1を示す。図1は医療用ロボット1を上から見た図、図2は図1の矢印aに示す方向から医療用ロボット1を見た図である。
図1、2に、本発明の実施形態に係る医療用ロボット1を示す。図1は医療用ロボット1を上から見た図、図2は図1の矢印aに示す方向から医療用ロボット1を見た図である。
図に示すように、医療用ロボット1は、ガイドレール11、13、ロボットアーム20、鉗子マニピュレータ30等を有する。
(1.ガイドレール11、13)
ガイドレール11、13は、ロボットアーム20の移動を行うために用いられる。
ガイドレール11、13は、ロボットアーム20の移動を行うために用いられる。
ガイドレール11は、水平面内に設けられた円弧状軌道である。本実施形態では、2本のガイドレール11が底板111上に並行して配置され、これらのガイドレール11間を架け渡すように板状のベース112が2基設けられる。底板111には、さらに、ガイドレール11に並行した円弧状曲線に沿って歯付きベルト113が固定される。
歯付きベルト113と、ベース112に設けた駆動部(不図示)の歯付きプーリを噛み合わせ、該歯付きプーリを駆動部にて回転させることで、各ベース112がガイドレール11に沿って移動可能である。
2基のベース112には、2本のガイドレール13の下端がそれぞれ取付けられる。上記したベース112の移動に伴い、各ガイドレール13の下端が水平面内で半径Rの円弧に沿って矢印Aに示す方向(ヨー方向)に移動する。
ガイドレール13は鉛直面内に設けられた半径Rの円弧状軌道である。ガイドレール13には板状のベース132が取付けられる。ベース132は、ガイドレール13に沿って矢印Bに示す方向(ピッチ方向)に移動可能である。
ベース132の移動は、前記と同じく、ガイドレール13に並行した円弧状曲線に沿って歯付きベルト131を固定し、歯付きベルト131とベース132に設けた駆動部133の歯付きプーリ(不図示)を噛み合わせ、該歯付きプーリを駆動部133にて回転させることで行われる。
なお、ベース112、132の移動機構は上記に挙げた例に限ることはなく、水平面内および鉛直面内の円弧状軌道に沿って移動できればよい。
(2.ロボットアーム20および鉗子マニピュレータ30)
ベース132にはロボットアーム20が固定される。ベース132は前記した通りガイドレール13により鉛直面内の半径Rの円弧状軌道に沿ったピッチ方向に移動可能であり、またガイドレール13は、ガイドレール11上のベース112の移動に伴って、水平面内の半径Rの円弧に沿ったヨー方向に移動可能である。従って、ロボットアーム20が上記のヨー方向、ピッチ方向に移動可能であり、これらの移動方向は半径Rの仮想球の球面上に沿ったものになる。
ベース132にはロボットアーム20が固定される。ベース132は前記した通りガイドレール13により鉛直面内の半径Rの円弧状軌道に沿ったピッチ方向に移動可能であり、またガイドレール13は、ガイドレール11上のベース112の移動に伴って、水平面内の半径Rの円弧に沿ったヨー方向に移動可能である。従って、ロボットアーム20が上記のヨー方向、ピッチ方向に移動可能であり、これらの移動方向は半径Rの仮想球の球面上に沿ったものになる。
ロボットアーム20は、鉗子マニピュレータ30の保持を行うとともに、患者の体内に向かう上記仮想球の径方向(矢印Cに示す。以下トランスレーション方向という)に沿った前後の移動を行う。
トランスレーション方向の移動は、ベース132に取り付けたボールねじ(不図示)を利用して、ロボットアーム20に設けた駆動部201内のモータによる回転運動をトランスレーション方向への直線運動に変換することで行われる。
鉗子マニピュレータ30は、医師が操作する鉗子の代わりとなるものであり、シャフト302の先端にジョー301を設けたものである。ロボットアーム20は、鉗子マニピュレータ30をトランスレーション方向に保持するとともに、ジョー301の把持開閉、回転、及びシャフト302のジョー301側先端の上下左右の屈曲の駆動を行う。
各ロボットアーム20が保持する鉗子マニピュレータ30は一点で交わる。この点が図1の40で示すピボットポイントであり、前記仮想球の中心に対応する。前記したようにロボットアーム20はヨー方向、ピッチ方向に移動し、またトランスレーション方向に沿って前後にも移動するが、このピボットポイント40の位置は不変である。
ジョー301やシャフト302のジョー301側先端の前記の動作は、ロボットアーム20に設けた駆動機構により行う。図3に示すように、本実施形態では、この駆動機構として、モータ202、205、ラックアンドピニオン機構203、平歯車204、ボールジョイント206等をロボットアーム20に設けている。なお、図ではロボットアーム20の駆動部201等の図示を省略している。
例えばジョー301の開閉は、モータ202の回転運動をラックアンドピニオン機構203を用いて直線運動に変換し、シャフト302内部のワイヤの押し引きを行い、これを既知のリンク機構などでジョー301の開閉動作に変換する。これによりジョー301を開閉し把持あるいは把持の解除を行う。
また、ジョー301の回転は、ジョー301に接続されたシャフト302内部の軸を、平歯車204を介してモータ205で回転させることにより行う。
さらに、本実施形態では、2本1組のワイヤ303を2組、ジョー301からシャフト302内を経てロボットアーム20のボールジョイント206まで延ばし、これによりシャフト302のジョー301側先端の屈曲動作を実現している。なお、2組のワイヤ303は、各組の2本のワイヤ303を結ぶ方向が90度の角度で交差するように配置される。
すなわち、ボールジョイント206に設けたレバー206a、206bの一方を回転させることにより、1組のワイヤ303の一方を引き、他方を送り出すことができる。これによりシャフト302のジョー301側先端の屈曲が可能であり、2組のワイヤ303の操作により上下左右への屈曲動作を可能とする。
なお、シャフト302のジョー301側先端の屈曲動作も、ジョー301の把持開閉あるいは回転と同様、ロボットアーム20に設けたモーター等の駆動により行うことが可能である。
例えば図4に示すように、前記した1組のワイヤ303のそれぞれをプーリ207に巻き付けて固定する。各プーリ207にはかさ歯車208が取付けられ、各かさ歯車208は、かさ歯車210と噛み合うように設けられる。このかさ歯車210をモーター209により回転させると、一方のかさ歯車208が正方向に回転し、他方のかさ歯車208が逆方向に回転する。これによりモーター209の回転により1組のワイヤ303の一方を引き、他方を送り出すことができ、前記と同様シャフト302のジョー301側先端の屈曲が可能である。
前記した2組のワイヤ303のそれぞれについて上記の機構を設けることで、2組のワイヤ303の操作により上下左右への屈曲動作を可能とできる。
以上の構成により、本実施形態の医療用ロボット1は、ロボットアーム20のヨー方向、ピッチ方向、トランスレーション方向の移動が可能となり、ピボットポイント40で交差する鉗子マニピュレータ30の各方向の必要な動作が可能になる。さらにジョー301の開閉、回転、およびシャフト302のジョー301側先端の屈曲動作も可能である。
図5の点線は前記した半径Rの仮想球の上半部を示す。例えば、医療用ロボット1を用いたSPSによる胆嚢52の摘出手術時には、患者50の臍上部に開口51を設けて手術用のアクセスポート(不図示)を配置する。また、前記のピボットポイント40を開口51から患者50の体内へ若干進んだ位置に設定し、上記アクセスポートを通して鉗子マニピュレータ30を配置する。
ロボットアーム20のヨー方向、ピッチ方向の移動により鉗子マニピュレータ30の配置を変化させることができ、ロボットアーム20のトランスレーション方向の移動により目的の箇所まで鉗子マニピュレータ30の先端のジョー301を延ばすことができる。各ロボットアーム20は、互いに干渉することなくヨー方向、ピッチ方向、トランスレーション方向の移動が可能である。
このように、各ロボットアーム20は互いに干渉することなく移動でき、開口51から若干頭部側にある胆嚢52の摘出をSPSにて行うために必要と考えられる鉗子マニピュレータ30の動作領域を容易に確保できるので、術具の操作も簡単になる。
図5のa1、b1は一方のロボットアーム20のヨー方向、ピッチ方向の移動範囲を示し、a2、b2は他方のロボットアーム20のヨー方向、ピッチ方向の移動範囲を示す。本実施形態では遠隔操作に係るソフトウェア上で各ロボットアーム20の移動範囲をa1、b1、a2、b2などの所定値に規定している。
なお、ここでは、腹腔鏡は手術の際に患者近傍の助手が手動で操作するものとする。ただし、上記と同様のガイドレール13やロボットアーム20を更に追加し、このロボットアーム20に腹腔鏡を先端に有するマニピュレータを保持させて遠隔操作可能としてもよい。当該マニピュレータも、前記のピボットポイント40で他の2本の鉗子マニピュレータ30と交差する。
医療用ロボット1の操作は、図6に示すように遠隔の操作デバイス60にて行うことができる。この操作デバイス60としては、例えばForce Dimension社製の入力装置Omega.7を用いることができる。
Omega.7は平行3軸と回転4軸の自由度を持つ力覚付入力装置であり、制御部と各軸に対応する操作ハンドルを備える。例えば、平行3軸のハンドル操作にロボットアーム20のヨー方向、ピッチ方向、トランスレーション方向の動作を対応させ、回転4軸の内2軸のハンドル操作に、鉗子マニピュレータ30のジョー301の把持開閉と回転を対応させる。
なお、シャフト302のジョー301側先端の屈曲動作は、患者近傍の助手が前記のボールジョイント206のレバー206a、206bを操作することにより手動で行えるが、図4で説明した機構を適用して屈曲動作についても遠隔操作可能にしてよい。
以上説明したように、本実施形態の医療用ロボット1によれば、ロボットアーム20の干渉を回避して鉗子マニピュレータ30を移動させることが容易であり、結果各マニピュレータの動作領域が広くとれるので、SPSにおいても術具操作が容易になる。さらに、ロボットアーム20の移動機構は簡単でありロボットも小型化できるので、安価に構成でき経済的効果や普及性の観点からも従来技術よりも優れている。
特に本実施形態の医療用ロボット1は、近年その操作性に関して有効性が実証され、臨床においても推奨されている、2本のマニピュレータと腹腔鏡をねじって螺旋状に配置した状態で術具の操作を行うローテーション配置(「H. Kawamura and C. Ishii, Mechanical Analysis of the Formation of
Forceps and Scope for Single-port Laparoscopic Surgery, Surg Laparosc Endosc
Percutan Tech, Vol.22, No.4, pp.168-175, 2012」参照))による施術にも好適に用いることができる。
Forceps and Scope for Single-port Laparoscopic Surgery, Surg Laparosc Endosc
Percutan Tech, Vol.22, No.4, pp.168-175, 2012」参照))による施術にも好適に用いることができる。
本発明の医療用ロボット1が医療現場において臨床利用できれば、国内各地の医療機関に本医療用ロボットを配置することで、今後益々需要が増えると考えられる単孔式腹腔鏡手術において外科医がより安全に腹腔鏡手術を行うことができ、将来的には遠隔地から名医の手術を受けられるようになる可能性を持つ。
なお、本発明の医療用ロボット1は上記に挙げた例に限ることはない。例えば医療用ロボット1では同じガイドレール11上に沿って2本のガイドレール13を移動させたが、2本のガイドレール13を別々のガイドレール11上で移動させることも可能である。
この場合、ガイドレール11および当該ガイドレール11に沿って移動するガイドレール13からなる組が2つできるので、ガイドレール11、13の円弧により定まる仮想球の中心を、これらの組の間で一致させ、鉗子マニピュレータ30をこの中心で交差させればよい。また、ガイドレール11等の配置あるいはソフトウェア上の制御により、ロボットアーム20の移動範囲は重複しないようにしておく。
さらに、本実施形態の医療用ロボット1は手術に用いるものとし、先端にジョー301を設けた鉗子マニピュレータ30を用いたが、場合によっては医療用ロボット1を診察等に利用することも考えられ、この場合は鉗子マニピュレータ30の代わりに、対応する器具を先端に設けたマニピュレータを使用すればよい。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、マニピュレータのたわみ、ねじれ、圧縮などの変形量を操作デバイス60の制御にフィードバックし、遠隔操作時の力覚に反映させる例である。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、マニピュレータのたわみ、ねじれ、圧縮などの変形量を操作デバイス60の制御にフィードバックし、遠隔操作時の力覚に反映させる例である。
すなわち、マニピュレータは患者50の体内で臓器等に当たると若干変形することから、図7に示すように、鉗子マニピュレータ30aの根元付近に上記の変形量を測定するセンサ70を設け、変形量の信号を操作デバイス60に送信する。
このセンサ70として、本実施形態では前後左右上下の互いに直交する3軸方向のたわみに加え各軸周りの回転の検知が可能な6軸力覚センサを用いる。センサ70としては、例えばATI社製の6軸力覚センサMini40を用いることができる。
図7の例では、センサ70を取付けるために、孔(不図示)を有する取付板211をロボットアーム20の先端部に設ける。センサ70は、中央に孔(不図示)を有する円筒状の形状を有し、当該孔の位置を取付板211の孔の位置に合わせて取付板211に取付ける。センサ70および取付板211の孔には鉗子マニピュレータ30aが通される。
一方、鉗子マニピュレータ30aには伝達部材304が取付けられる。伝達部材304は、鉗子マニピュレータ30aの変形に応じた力をセンサ70に伝達するもので、円筒部304aの一端に円板部304bを設けたものである。円板部304bにおいて円筒部304aに対応する位置には孔(不図示)が設けられる。伝達部材304は、円筒部304aおよび円板部304bの孔に鉗子マニピュレータ30aのシャフト302を通して配置され、円板部304bがセンサ70の表面に取付けられる。鉗子マニピュレータ30aが外力により変形すると、変形に応じた力が伝達部材304を介して円板部304bからセンサ70に作用し、これにより鉗子マニピュレータ30aの変形量を検知できる。
ただし、センサ70は上記の他、ひずみゲージなどでもよい。またセンサ70の取付位置も特に限定されないが、上記のように6軸力覚センサを鉗子マニピュレータ30aの根元付近に取り付けることで、変形量を精度よく検出できる。
操作デバイス60は前記の信号を受信して、変形量に応じて制御部により操作ハンドルのトルク等を増加させるなどして操作抵抗を与える。これにより、遠隔の操作者に、鉗子マニピュレータ30aの臓器等への接触に伴う抵抗感を与えることができ、知らない間に臓器を傷つける等の恐れもなくなる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、ジョー301の開閉により対象物を把持したときの把持力を、センサ70を使用せずに算出し、操作デバイス60での遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させるものである。本実施形態では、反力推定オブザーバ(外乱オブザーバ)と呼ばれる手法を用いた演算によりジョー301の把持力を算出する。そこで、この手法について以下簡単に説明する。
第3の実施形態は、ジョー301の開閉により対象物を把持したときの把持力を、センサ70を使用せずに算出し、操作デバイス60での遠隔操作時の力覚フィードバックに反映させるものである。本実施形態では、反力推定オブザーバ(外乱オブザーバ)と呼ばれる手法を用いた演算によりジョー301の把持力を算出する。そこで、この手法について以下簡単に説明する。
ここで、モータ202の運動方程式は、Jをモータ202の慣性モーメント、τmをモータ202への入力トルク、τlをモータ202に加わる負荷トルクとして次式(1)で表される。なおθ”はモータ202の回転角度θの2階微分値であり、角加速度である。
Jθ”=τm-τl…(1)
Jθ”=τm-τl…(1)
負荷トルクτlは次式(2)で与えられる。
τl=τint+Dθ’+τf+τext…(2)
ここで、τintはモータ202の内部干渉トルク、Dはモータ202内部の粘性摩擦係数、τfはモータ202のクーロン摩擦トルクである。τextは推定すべき反力の負荷トルクであり、ここでは、ジョー301の把持力を示す。また、θ’はモータ202の回転角度θ’の微分値であり、角速度である。
τl=τint+Dθ’+τf+τext…(2)
ここで、τintはモータ202の内部干渉トルク、Dはモータ202内部の粘性摩擦係数、τfはモータ202のクーロン摩擦トルクである。τextは推定すべき反力の負荷トルクであり、ここでは、ジョー301の把持力を示す。また、θ’はモータ202の回転角度θ’の微分値であり、角速度である。
モータ202は小さいので内部干渉トルクτintは無視できるとすると、式(1)、(2)より
Jθ”=τm-Dθ’-τf-τext…(3)
となる。
Jθ”=τm-Dθ’-τf-τext…(3)
となる。
ここで、モータ202への入力トルクτmは、Iαをモータ202に印加する電流値、kをトルク係数とすると、τm=kIαと表される。また、トルク係数k及び慣性モーメントJとして、真値との誤差は無視できるものとして既知の公称値を用い、粘性摩擦係数Dとクーロン摩擦トルクτfは同定実験で予め入手した既知の値を用いるものとすると、ジョー301の把持力τextは、モータ202の電流Iα(モータ202の通電情報)と回転角度θあるいは角速度θ’(モータ202の回転に関する回転情報)を測定し、式(3)により推定することができる。この手法は一般に反力推定オブザーバ(外乱オブザーバ)と呼ばれる(大西公平、“外乱オブザーバによるロバスト・モーションコントロール”、日本ロボット学会誌、Vol.11, pp.486-493 (1993)、Ohnishi, K.,
Shibata, M. and Murakami, T., “Motion Control for
Advanced Mechatronics”, IEEE/ASME Transactions on
Mechatronics, Vol.1, No.1, pp.56-67 (1996)、Murakami,
T., Yu, F. and Ohnishi, K., “Torque Sensorless Control
in Multidegree-of-Freedom Manipulator”, IEEE
Transactions on Industrial Electronics”, Vol.40, No.2,
pp.259-265 (1993)など)。ここでは、反力推定オブザーバの手法を用いて算出した式(3)のτextの値を、反力推定オブザーバによる推定値であることを示すため二重カッコ付きで《τext》と表すものとする。
Shibata, M. and Murakami, T., “Motion Control for
Advanced Mechatronics”, IEEE/ASME Transactions on
Mechatronics, Vol.1, No.1, pp.56-67 (1996)、Murakami,
T., Yu, F. and Ohnishi, K., “Torque Sensorless Control
in Multidegree-of-Freedom Manipulator”, IEEE
Transactions on Industrial Electronics”, Vol.40, No.2,
pp.259-265 (1993)など)。ここでは、反力推定オブザーバの手法を用いて算出した式(3)のτextの値を、反力推定オブザーバによる推定値であることを示すため二重カッコ付きで《τext》と表すものとする。
しかしながら、本実施形態において反力推定オブザーバによって把持力の推定を行うと、後述するオーバーシュート、モータ202の減速ギアによる負荷、ジョー301の駆動機構による負荷が誤差として生じることがわかった。そこで、本実施形態では、これらの誤差をキャンセルするための修正を行う。これを以下説明する。
(1.オーバーシュートによる誤差)
オーバーシュートとは、モータ202の電流Iαの変化がモータ202の回転に影響を及ぼすのには若干のタイムラグが生じるので、同時に測定したモータ202の電流Iαと回転角度θを用いて反力推定オブザーバによる演算を行うと、図8(a)に模式的に示すように、ジョー301の把持開始時にジョー301の把持力(負荷トルク)の推定値《τext》が大きくなってしまう現象である。図の横軸は把持開始からの時間であり、この例ではジョー301を無負荷で開閉しているので時間が経過すると推定値は0に近づく。
オーバーシュートとは、モータ202の電流Iαの変化がモータ202の回転に影響を及ぼすのには若干のタイムラグが生じるので、同時に測定したモータ202の電流Iαと回転角度θを用いて反力推定オブザーバによる演算を行うと、図8(a)に模式的に示すように、ジョー301の把持開始時にジョー301の把持力(負荷トルク)の推定値《τext》が大きくなってしまう現象である。図の横軸は把持開始からの時間であり、この例ではジョー301を無負荷で開閉しているので時間が経過すると推定値は0に近づく。
本実施形態では、オーバーシュートをキャンセルするため、図9に示すようにモータ202’(把持力算出用モータ)を別途用意する。このモータ202’は、モータ202と同じモータであり同じ電流が印加されるが、単独で(即ち、ジョー301の駆動に寄与しないで)回転し、且つ減速ギアが省略される点でモータ202と異なる。
このモータ202’の電流Iαと回転角度θを測定し、前記の式(3)を用いた反力推定オブザーバによる推定値《τext》の算出を同様に行うと、《τext》はオーバーシュートのみが反映された値(以下、τerrorと表す)となる。
そこで、モータ202の電流Iαと回転角度θを測定し、これによって推定したジョー301の把持力の推定値《τext》(図8(a)参照)から、モータ202’の電流Iαと回転角度θにより推定した推定値《τext》(=τerror)を引くことにより、図8(b)に示すように、ジョー301の把持力の推定値《τext》からオーバーシュートによる誤差をキャンセルできる。
(2.減速ギアの負荷による誤差)
減速ギアの負荷による誤差とは、モータ202に含まれる減速ギアの負荷による誤差である。前記の反力推定オブザーバは、減速ギアのないリニアモータなどでは推定精度が高いが、減速ギアの含まれる通常のモータでは推定精度が低くなる。そこで、本実施形態では、予めオフラインで減速ギアの負荷を推定し、減速ギア補償関数として把持力の算出に組み込む。
減速ギアの負荷による誤差とは、モータ202に含まれる減速ギアの負荷による誤差である。前記の反力推定オブザーバは、減速ギアのないリニアモータなどでは推定精度が高いが、減速ギアの含まれる通常のモータでは推定精度が低くなる。そこで、本実施形態では、予めオフラインで減速ギアの負荷を推定し、減速ギア補償関数として把持力の算出に組み込む。
本実施形態では、減速ギアの負荷の推定にあたって、減速ギア付きのモータ202と、減速ギア無しの同じ型のモータ202’のそれぞれを単独で(即ち、ジョー301の駆動に寄与しないで)回転させ、各モータについて、前記の反力推定オブザーバを用いた手法により式(3)のτextを算出して負荷トルクの推定値《τext》とした。その結果が図10(a)であり、推定値《τext》の差は減速ギアの負荷トルクτgearとなる。
図10(b)は、上記のように算出した減速ギアの負荷トルクτgearを縦軸、減速ギア無しのモータ202’にて推定した負荷トルクの推定値《τext》を横軸として、これらの関係を実線でグラフ化したものである。この関係を図の鎖線に示すように直線で近似すると、例えば関係式は以下のようになる。
τgear=39.73《τext》-(4×10-5)…(4)
τgear=39.73《τext》-(4×10-5)…(4)
このように、減速ギアの負荷トルクτgearは、モータ202’にて推定した負荷トルクの推定値《τext》に比例して大きくなる。本実施形態では、関係式(4)を減速ギア補償関数とし、これにより、減速ギアの負荷による誤差をキャンセルすることができる。
(3.駆動機構の負荷による誤差)
ジョー301の把持開閉には、かさ歯車、ラックアンドピニオン機構、ワイヤ等の駆動機構が用いられている。このため、実際にジョー301による把持を行う際には、モータ202の減速ギアの他、これらの駆動機構により生じる負荷も把持力算出時の誤差として加わる。そこで、本実施形態では、前記と同様、予めオフラインで駆動機構の負荷を推定し、駆動機構補償関数として把持力の算出に組み込む。
ジョー301の把持開閉には、かさ歯車、ラックアンドピニオン機構、ワイヤ等の駆動機構が用いられている。このため、実際にジョー301による把持を行う際には、モータ202の減速ギアの他、これらの駆動機構により生じる負荷も把持力算出時の誤差として加わる。そこで、本実施形態では、前記と同様、予めオフラインで駆動機構の負荷を推定し、駆動機構補償関数として把持力の算出に組み込む。
本実施形態では、駆動機構の負荷の推定にあたって、ジョー301に負荷をかけない状態でモータ202を回転させてジョー301の開閉動作を行うと同時に、前記のモータ202’の回転を行った。そして、各モータについて、前記の反力推定オブザーバを用いた手法により式(3)のτextを算出して負荷トルクの推定値《τext》とした。
モータ202’について推定した推定値《τext》はオーバーシュートによる誤差τerrorであり、当該《τext》の値を式(4)の減速ギア補償関数に代入すると減速ギアの負荷トルクτgearが求められる。従って、モータ202について求めた推定値《τext》からτerror、τgearを引くと、その値は駆動機構の負荷トルクτpartsとなる。
こうして求めた駆動機構の負荷トルクτpartsを示すのが図11(a)〜(c)であり、モータ202の入力電圧の周波数を2、4、6(Hz)と変えてジョー301の開閉速度を異ならせた各ケースにおいて、横軸をモータ202の入力電圧、縦軸を駆動機構の負荷トルクτpartsとして、これらの関係を実線でグラフ化したものである。各図の鎖線は、この関係を直線で近似したものである。
図に示すように、駆動機構の負荷トルクτpartsは、モータ202の電圧vが大きい程大きくなる。また、τpartsの近似線の傾きは、図11(a)〜(c)に示すように、モータ202に入力する周波数が大きい(ジョー301の開閉速度が速い)程大きくなる傾向がある。
図12は、モータ202の角速度θ’とτpartsの近似線の傾きaの関係をプロットしたものであり、両者の関係は、例えば図の鎖線で示す関係式(5)で近似できる。
a=(1×10-4)θ’3-(5×10-4)θ’2+(6×10-4)θ’-(4×10-5)…(5)
a=(1×10-4)θ’3-(5×10-4)θ’2+(6×10-4)θ’-(4×10-5)…(5)
これらの結果から、駆動機構の負荷トルクτpartsは、モータ202の角速度θ’(モータ202の回転に関する回転情報)と入力電圧v(モータ202の通電情報)を用いて下式(6)のように近似できる。なお式(6)の切片の値には例えば図11(a)〜(c)の各近似線の切片の平均値を採用できる。
τparts=av-(6.3×10-5)…(6)
τparts=av-(6.3×10-5)…(6)
この式(6)を駆動機構補償関数とし、把持力の算出に組み込むことで、駆動機構の負荷による誤差をキャンセルすることができる。
以上を踏まえ、本実施形態では、医療用ロボット1において、図9に示すように、モータ202の他に、モータ202と同じモータであるが減速ギアが省略され、且つ単独で回転するモータ202’を別途設けておき、モータ202と同じ電流が供給されるようにしておく。
そして、ジョー301の把持開閉時には、操作用デバイス60の制御部(演算部)が、各モータ202、202’の同時刻の電流Iαと回転角度θをリアルタイムで取得する。なお回転角度θは、例えばモータ軸に取付けたエンコーダ等から取得することができる。
そして、操作用デバイス60の制御部は、各モータについて、前記の反力推定オブザーバを用いた手法により式(3)のτextを算出して推定値《τext》とする。そして、モータ202について求めた推定値《τext》(ジョー301の把持力の推定値)から、モータ202’について求めた推定値《τext》(オーバーシュートによる誤差τerror)を引いてオーバーシュートによる誤差をキャンセルする。
また、操作デバイス60の制御部は、モータ202’について求めた推定値《τext》を式(4)の減速ギア補償関数に代入して減速ギアの負荷τgearを算出する。また、モータ202の電流Iαと回転角度θからモータ202の入力電圧vと角速度θ’を求め、式(5)(6)から駆動機構の負荷τpartsを算出する。
そして、オーバーシュートによる誤差をキャンセルした後のジョー301の把持力の推定値(《τext》-τerror)から、さらにτgearとτpartsを引いて、オーバーシュート、モータ202の減速ギア、ジョー301の駆動機構の負荷による誤差をキャンセルしたジョー301の把持力(《τext》-τerror-τgear-τparts)を算出する。算出した値は、第2の実施形態と同様、その値に応じて操作ハンドルのトルク等を増加させるなどして操作抵抗を与えるために用いられる。
上記の方法を実施したところ、ジョー301の把持力の推定値に対し理想的に各誤差がキャンセルされ、精度の高い把持力の算出が行えることがわかった。なお、実機のモータ202’を使用するかわりに、モータ202’を数式モデルによる仮想的なものとすることもできる。数式モデルは、モータ202’について、印加電流Iα等の通電情報と回転角度θ等の回転情報の関係をオーバーシュート等を含め正確に近似してモデル化したものであり、例えば下式(7)で示されるが、これに限ることはない。なお、前記と同様、下式(7)の入力トルクτmはτm=kIαで表される。
Jθ”=τm-Dθ’-τf…(7)
Jθ”=τm-Dθ’-τf…(7)
実際に測定したモータ202の電流値Iαを(仮想的な)モータ202’の電流値Iαとすれば、上記数式モデルによって(仮想的な)モータ202’の回転角度θを求めることができる。従って、(仮想的な)モータ202’の電流値Iαと回転角度θを、実機のモータ202’の電流値Iαと回転角度θの代わりに用いて前記と同様の手順で各誤差を求め、これらの誤差をキャンセルした正確な把持力を算出できる。
[第4の実施形態]
本実施形態において、ジョー301の駆動機構にはワイヤが用いられている。このワイヤは、ジョー301の把持開閉による繰返しの負荷により、伸びたり緩んだりし、ジョー301の駆動制御に誤差が生じる恐れがある。そこで、第4の実施形態では、ワイヤの伸びによる誤差をキャンセルしてモータ202の回転制御を行う例について説明する。なお、本実施形態では、図4で説明したようなプーリをモータ202により回転させてワイヤを押し引きし、ジョー301の把持開閉が行われるものとする。
本実施形態において、ジョー301の駆動機構にはワイヤが用いられている。このワイヤは、ジョー301の把持開閉による繰返しの負荷により、伸びたり緩んだりし、ジョー301の駆動制御に誤差が生じる恐れがある。そこで、第4の実施形態では、ワイヤの伸びによる誤差をキャンセルしてモータ202の回転制御を行う例について説明する。なお、本実施形態では、図4で説明したようなプーリをモータ202により回転させてワイヤを押し引きし、ジョー301の把持開閉が行われるものとする。
(1.ワイヤの伸びのキャンセル方法;その1)
ジョー301の駆動機構を簡易モデル化して示したものが図13である。図において、θmはプーリ(モータプーリ)の回転角度であり、θjはジョー301の爪の回転角度(以下、単にジョー301の回転角度という)である。また、rmはプーリの回転半径であり、rjは、ワイヤの押し引きによりジョー301を回転させるための回転部の回転半径(以下、単にジョー301の回転半径という)である。τm、τjはそれぞれモータ202の入力トルク、ジョー301に加わる負荷トルクである。また、k,x,fはそれぞれ、ワイヤの弾性定数、弾性伸び量、張力である。
ジョー301の駆動機構を簡易モデル化して示したものが図13である。図において、θmはプーリ(モータプーリ)の回転角度であり、θjはジョー301の爪の回転角度(以下、単にジョー301の回転角度という)である。また、rmはプーリの回転半径であり、rjは、ワイヤの押し引きによりジョー301を回転させるための回転部の回転半径(以下、単にジョー301の回転半径という)である。τm、τjはそれぞれモータ202の入力トルク、ジョー301に加わる負荷トルクである。また、k,x,fはそれぞれ、ワイヤの弾性定数、弾性伸び量、張力である。
この時、プーリの運動方程式は次式(a)で表すことができ、ジョー301の運動方程式は次式(b)で表すことができる。式(a)、(b)において、Jm、Jjはそれぞれプーリ、ジョー301の慣性モーメント、τFm、τFjはそれぞれプーリ、ジョー301のクーロン摩擦による負荷トルクである。また、Dはモータ202内部の粘性摩擦係数である。
Jmθm”=τm-Dθm’-τFm-rmf…(a)
Jjθj”=rjkx-(τFj+τj)…(b)
Jmθm”=τm-Dθm’-τFm-rmf…(a)
Jjθj”=rjkx-(τFj+τj)…(b)
また、ワイヤの伸び量xは次式(c)で表され、ワイヤの伸び量xの加速度と、プーリ及びジョー301の角加速度との関係は次式(c’)で与えられる。
x=rmθm-rjθj…(c)
x”=rmθm”-rjθj”…(c’)
x=rmθm-rjθj…(c)
x”=rmθm”-rjθj”…(c’)
ここで、式(a)に対し、ワイヤの張力fを推定すべき反力として、前記と同様に反力推定オブザーバを適用することで、モータ202の電流Iαとプーリの回転角θmから、ワイヤの張力fを推定することができる。なお、ここでは、反力推定オブザーバの手法を用いて式(a)から算出したfの値を、反力推定オブザーバによる推定値であることを示すため二重カッコ付きで《f》と表すものとする。
一方、式(a)、(b)、(c’)からは、ワイヤの伸びに関する以下の微分方程式(d)が得られる。
x”+k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)x=(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)…(d)
x”+k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)x=(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)…(d)
ここで、モータ202の入力トルクτmとジョー301への負荷トルクτjが変動せず一定値であると仮定すると、x”=0となるため式(d)の解析解xsが次式(e)により得られる。
xs={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jm)}…(e)
xs={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jm)}…(e)
式(e)を変形し、kxsの部分に反力推定オブザーバで推定したワイヤの張力の推定値《f》を代入して、次式(f)によりジョー301に加わる負荷トルクτjを求めることができる。
τj=《f》{(rm 2/rj)(Jj/Jm)+rj}-τFj-(rm/rj)(Jj/Jm)(τm-Dθm’-τFm)…(f)
τj=《f》{(rm 2/rj)(Jj/Jm)+rj}-τFj-(rm/rj)(Jj/Jm)(τm-Dθm’-τFm)…(f)
さらに、式(f)にて得られたジョー301への負荷トルクτjを式(e)に代入することにより、ワイヤの伸び量xsが算出される。こうしてワイヤの伸び量xsを求め、式(c)より得られる以下の式(g)のxとして代入する。ジョー301の回転角度の目標値θj refが与えられた際に、プーリの回転角度の目標値θm refを式(g)とすることにより、ワイヤの伸びを補償しジョー301の把持動作時の追従精度を向上することができる。
θm ref=(rjθj ref+x)/rm…(g)
θm ref=(rjθj ref+x)/rm…(g)
以上を踏まえ、本実施形態では、ジョー301の把持開閉時に、医療用ロボット1の駆動制御部(演算部)が、モータ202の電流Iαとプーリの回転角度θmをリアルタイムに取得する。そして、これらの値を用いて前記の反力推定オブザーバを用いた手法により式(a)のfを算出してワイヤの張力の推定値《f》とする。そして、推定値《f》を式(f)に代入してジョー301に加わる負荷トルクτjを求め、これを式(e)に代入することでワイヤの伸び量xsを算出する。
そして、式(g)により、駆動制御部に入力されたジョー301の回転角度の目標値θj refに対するプーリの回転角度の目標値θm refを算出する。当該値に基づきモータ202の回転を行うことにより、ワイヤの伸びの影響を考慮したモータ202の回転制御が可能になる。なお、ジョー301に加わる負荷トルクτiは、第3の実施形態と同様、力覚フィードバックに反映させることができる。すなわち負荷トルクτiの値に応じて操作デバイス60の操作ハンドルのトルク等を増加させるなどして操作抵抗を与えることもできる。
(2.ワイヤの伸びのキャンセル方法;その2)
上記の方法ではτmやτjの変動が無視できると仮定しているが、実際にはこの仮定が成り立つ状況は少ない。そこで、以下ではそのような仮定を設けない方法について説明する。
上記の方法ではτmやτjの変動が無視できると仮定しているが、実際にはこの仮定が成り立つ状況は少ない。そこで、以下ではそのような仮定を設けない方法について説明する。
ここで、式(a)、(b)、(c’)より、ジョー301及びワイヤの伸びを考慮したプーリの運動方程式を以下のように表すことができる。
{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}…(h)
{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}…(h)
ワイヤの伸びに関する微分方程式は式(d)で表されるが、式(d)は非同次方程式でありτjが分からなければ解析的な解xは得られない。そこで、ここでは式(h)に対して反力推定オブザーバを構成する。すなわち、式(h)は下式(h’)のように書き直すことができるので、式(h’)の左辺、即ち下式(i)に示すτexを反力推定オブザーバにより推定する。方法は前記と略同様であり、モータ202の電流値Iαとプーリの回転角θmを測定して式(h’)の右辺のτm、θm’、θm”の値を算出し、それから左辺τexの値を算出すればよい。式(i)に示すように、推定されるτexは、ジョー301に加わる負荷トルクτjとワイヤの伸びの加速度x”を含んだ値である。
(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”…(h’)
τex=(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}…(i)
なお、ここでは、反力推定オブザーバの手法を用いて算出したτexの値を、反力推定オブザーバによる推定値であることを示すため二重カッコ付きで《τex》と表すものとする。
(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”…(h’)
τex=(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}…(i)
なお、ここでは、反力推定オブザーバの手法を用いて算出したτexの値を、反力推定オブザーバによる推定値であることを示すため二重カッコ付きで《τex》と表すものとする。
一方、ワイヤの伸びについて、式(d)を変形すると次式(j)のように表せる。
x=[(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)τFj+(rj/Jj){τj-(Jj/rj)x”}]/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}…(j)
x=[(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)τFj+(rj/Jj){τj-(Jj/rj)x”}]/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}…(j)
ここで、前記の推定値《τex》を式(j)に代入すると、ワイヤの推定伸び量xは、次式(j’)のように表すことができる。
x={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)τFj+(rj 2/rmJj)《τex》}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}…(j’)
x={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)τFj+(rj 2/rmJj)《τex》}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}…(j’)
このようにジョーに加わる負荷トルクτjとワイヤの伸びの加速度x”を含んだ負荷トルクτexを反力推定オブザーバにより推定することで、式(j’)によりワイヤの伸び量xを解析的に得ることが可能となる。求めたxを前記の式(g)に代入し、ジョー301の回転角の目標値θj refが与えられた際のプーリの回転角の目標値θm refを求めればよい。これにより、前記と同様、ワイヤの伸びを補償しジョー301の把持動作時の追従精度を向上することができる。
具体的な方法としては、ジョー301の把持開閉時に、医療用ロボット1の駆動制御部(演算部)が、モータ202の電流Iαとプーリの回転角度θをリアルタイムに取得する。そして、これらの値を用いて前記の反力推定オブザーバを用いた手法により式(h)(式(h’))から式(i)に示すτexを算出して推定値《τex》とする。そして、推定値《τex》を用いて式(j’)からワイヤの伸び量xを算出する。
そして、式(g)により、駆動制御部に入力されたジョー301の回転角度の目標値θj refに対するプーリの回転角度の目標値θm refを算出する。当該値に基づきモータ202の回転を行うことにより、ワイヤの伸びの影響を考慮したモータ202の回転制御が可能になる。このケースでは、前記した仮定を行わないので、より正確な回転制御ができる。
なお、この手法でもジョー301に加わる負荷トルクτjを推定できるので、以下負荷トルクτjの推定方法について説明する。ここでは、まずワイヤの伸びの加速度x”を以下のように推定する。
すなわち、式(d)の右辺にx”を加減すると次式(d’)のように表すことができる。
x”=-k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)x+{(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)τFj+{(rj/Ji)τj-x”}+x”…(d’)
x”=-k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)x+{(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)τFj+{(rj/Ji)τj-x”}+x”…(d’)
ここで、式(d’)に前記の推定値《τex》を代入し、右辺の未知変数x”をパラメータαと置くと、次式(k)のように表すことができる。
x”=-Ax+B+C《τex》+α…(k)
ここで、A=k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)、B={(rm/Jm)(τm-Dθm”-τFm)+(rj/Jj)τFj}、C=rj 2/rmJjである。
x”=-Ax+B+C《τex》+α…(k)
ここで、A=k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)、B={(rm/Jm)(τm-Dθm”-τFm)+(rj/Jj)τFj}、C=rj 2/rmJjである。
以下、式(k)を数値積分してワイヤの伸び量xの数値解を求める。ここで、式(j’)で与えられるワイヤの伸び量の解析解xと区別するため,式(k)の数値解をxnと表す。数値解xnはパラメータαの値に依存するので、xnはパラメータαの関数であると考えられる。数値解xnと解析解xが同値である場合は、α=x”となる。そこで、αの値を変えつつ数値解xnと解析解xの差を求め、差が最小となるような最適解αを求めることにより、x”(すなわち最適解α)を推定する。評価関数Eは次式(l)のように定義する。
E=(1/2)(x-xn(α))2…(l)
E=(1/2)(x-xn(α))2…(l)
このとき、式(k)の数値解析を、関数Eを最小とするようなαを求める最適化問題へと帰着することができる。数値解析の手法については既知であるので説明を省略する。例えば、計算時間をできるだけ短くするため、微分方程式(k)を数値積分する際にオイラー法を用い、αの最適解を求める際に勾配法を用いることができる。
前記の推定値《τex》と、上記の数値解析の最適解αにより、式(i)から、下式(m)のようにジョー301に加わる負荷トルクτjを推定することができる。
τj=(rj/rm)《τex》+(Jj/rj)α…(m)
τj=(rj/rm)《τex》+(Jj/rj)α…(m)
なお、ジョー301に加わる負荷トルクτiの演算は操作デバイス60の制御部(演算部)にて行うことができ、第3の実施形態と同様、負荷トルクτiすなわちジョー301の把持力の値に応じて操作ハンドルのトルク等を増加させるなどして操作抵抗を与えることもできる。
また、第3、第4の実施形態は、第1の実施形態の医療用ロボット1のジョー301の駆動に限らず、その他の医療用ロボットのジョーの駆動に関しても適用することが可能である。
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1;医療用ロボット
11、13;ガイドレール
111;底板
112、132;ベース
113、131;歯付きベルト
133、201;駆動部
20;ロボットアーム
30、30a;鉗子マニピュレータ
40;ピボットポイント
50;患者
51;開口
52;胆嚢
60;操作デバイス
70;センサ
202、205、209;モータ
203;ラックアンドピニオン機構
204;平歯車
206;ボールジョイント
207;プーリ
208、210;かさ歯車
301;ジョー
302;シャフト
303;ワイヤ
304;伝達部材
11、13;ガイドレール
111;底板
112、132;ベース
113、131;歯付きベルト
133、201;駆動部
20;ロボットアーム
30、30a;鉗子マニピュレータ
40;ピボットポイント
50;患者
51;開口
52;胆嚢
60;操作デバイス
70;センサ
202、205、209;モータ
203;ラックアンドピニオン機構
204;平歯車
206;ボールジョイント
207;プーリ
208、210;かさ歯車
301;ジョー
302;シャフト
303;ワイヤ
304;伝達部材
Claims (11)
- 水平面内に設けられた1つ以上の円弧状軌道と、
鉛直面内に設けられた2つ以上の円弧状軌道と、
鉛直面内の各円弧状軌道に沿って移動可能な2つ以上のロボットアームと、
各ロボットアームによって保持された2つ以上のマニピュレータと、
を備え、
鉛直面内の前記円弧状軌道は、水平面内の前記円弧状軌道に沿って移動し、
前記ロボットアームは、鉛直面内および水平面内の前記円弧状軌道によって、仮想球の球面上を移動可能であり、
前記2つ以上のマニピュレータは、前記仮想球の中心で交差することを特徴とする医療用ロボット。 - 前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであることを特徴とする請求項1記載の医療用ロボット。
- 前記ロボットアームは、前記仮想球の径方向に沿って前後に移動可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療用ロボット。
- 前記マニピュレータの変形量を検知するセンサが設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の医療用ロボット。
- 前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであり、
前記ジョーは、減速ギアを含んだモータの回転によって駆動機構を動作させることにより開閉し、
演算部により、
前記モータの通電情報と、前記モータの回転に関する回転情報を用いて、下式で示す運動方程式のτextの値を算出して前記ジョーの把持力の推定値《τext》とし、
Jθ”=τm-Dθ’-τf-τext
(Jはモータの慣性モーメント、θ’はモータの角速度、θ”はモータの角加速度、τmはモータの入力トルク、τfはモータのクーロン摩擦トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数)
前記推定値《τext》から、オーバーシュートの誤差、前記モータに含まれる減速ギアの負荷による誤差、前記駆動機構の負荷による誤差を引いて前記ジョーの把持力を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の医療用ロボット。 - 前記オーバーシュートの誤差を、
前記モータから減速ギアを除いた、単独で回転する把持力算出用モータの通電情報と、前記把持力算出用モータの回転に関する回転情報を用いて推定値《τext》を算出することによって求めることを特徴とする請求項5記載の医療用ロボット。 - 前記減速ギアの負荷による誤差を、前記把持力算出用モータについての前記推定値《τext》を所定の減速ギア補償関数に代入することによって求め、
前記駆動機構の負荷による誤差を、前記モータの通電情報と回転情報を所定の駆動機構補償関数に代入することによって求めることを特徴とする請求項6記載の医療用ロボット。 - 前記把持力算出用モータを、前記把持力算出用モータの通電情報と回転情報の関係を示す数式モデルによる仮想的なモータとすることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の医療用ロボット。
- 前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであり、
前記ジョーは、モータによるプーリの回転によってワイヤの押し引きを行うことにより開閉し、
演算部により、
前記モータの通電情報と、前記モータによるプーリの回転に関する回転情報を用いて、下式で示す運動方程式からfの値を算出して前記ワイヤの張力の推定値《f》とし、
Jmθm”=τm-Dθm’-τFm-rmf
(θm’はプーリの角速度、θm”はプーリの角加速度、rmはプーリの回転半径、Jmはプーリの慣性モーメント、τmはモータの入力トルク、τFmはプーリのクーロン摩擦による負荷トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数)
前記推定値《f》を用いて下式からジョーに加わる負荷トルクτiを算出し、
τj=《f》{(rm 2/rj)(Jj/Jm)+rj}-τFj-(rm/rj)(Jj/Jm)(τm-Dθm”-τFm)
(rjはジョーの回転半径、Jiはジョーの慣性モーメント、τFjはジョーのクーロン摩擦による負荷トルク)
算出したτjを用いて下式からワイヤの伸び量xsを算出する
xs={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFm)+(rj/Jj)(τFj+τj)}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jm)}
(kはワイヤの弾性定数)
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の医療用ロボット。 - 前記マニピュレータは、シャフトの先端にジョーを有する鉗子マニピュレータであり、
前記ジョーは、モータによるプーリの回転によってワイヤの押し引きを行うことにより開閉し、
演算部により、
前記モータの通電情報と、前記モータによるプーリの回転に関する回転情報を用いて、下式で示す運動方程式から、
{Jm+(rm/rj)2Jj}θm”=τm-{Dθm’+τFm+(rm/rj)τFj}-(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}
(θm’はプーリの角速度、θm”はプーリの角加速度、Jmはプーリの慣性モーメント、Jiはジョーの慣性モーメント、rmはプーリの回転半径、rjはジョーの回転半径、τmはモータの入力トルク、τFmはプーリのクーロン摩擦による負荷トルク、τFjはジョーのクーロン摩擦による負荷トルク、Dはモータ内部の粘性摩擦係数、x”はワイヤの伸びの加速度)
下式で示す値τexを算出して推定値《τex》とし、
τex=(rm/rj){τj-(Jj/rj)x”}
前記推定値《τex》を用いて下式からワイヤの伸び量xを算出する
x={(rm/Jm)(τm-Dθm’-τFj)+(rj/Jj)τFj+(rj 2/rmJj)《τex》}/{k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)}
(kはワイヤの弾性定数)
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の医療用ロボット。 - 下式から求まるワイヤの伸び量xの数値解と前記算出したワイヤの伸び量xの差が最小となるようなαの最適解を求め、
x”=-Ax+B+C《τex》+α
(ここで、A=k(rm 2/Jm+rj 2/Jj)、B={(rm/Jm)(τm-Dθm”-τFm)+(rj/Jj)τFj}、C=rj 2/rmJj)
前記最適解αと前記推定値《τex》から、下式によりジョーに加わる負荷トルクτiを算出する
τj=(rj/rm)《τex》+(Jj/rj)α
ことを特徴とする請求項10記載の医療用ロボット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014209230A JP2015180238A (ja) | 2014-03-04 | 2014-10-10 | 医療用ロボット |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014041767 | 2014-03-04 | ||
JP2014041767 | 2014-03-04 | ||
JP2014209230A JP2015180238A (ja) | 2014-03-04 | 2014-10-10 | 医療用ロボット |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015180238A true JP2015180238A (ja) | 2015-10-15 |
Family
ID=54328838
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014209230A Pending JP2015180238A (ja) | 2014-03-04 | 2014-10-10 | 医療用ロボット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015180238A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN116749227A (zh) * | 2023-08-22 | 2023-09-15 | 山东省科学院海洋仪器仪表研究所 | 一种适用于水下作业的机械臂及其精细调节装置 |
CN117984334A (zh) * | 2024-04-03 | 2024-05-07 | 泓浒(苏州)半导体科技有限公司 | 一种自适应晶圆机械臂力矩调整系统及方法 |
-
2014
- 2014-10-10 JP JP2014209230A patent/JP2015180238A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN116749227A (zh) * | 2023-08-22 | 2023-09-15 | 山东省科学院海洋仪器仪表研究所 | 一种适用于水下作业的机械臂及其精细调节装置 |
CN116749227B (zh) * | 2023-08-22 | 2023-11-03 | 山东省科学院海洋仪器仪表研究所 | 一种适用于水下作业的机械臂及其精细调节装置 |
CN117984334A (zh) * | 2024-04-03 | 2024-05-07 | 泓浒(苏州)半导体科技有限公司 | 一种自适应晶圆机械臂力矩调整系统及方法 |
CN117984334B (zh) * | 2024-04-03 | 2024-05-28 | 泓浒(苏州)半导体科技有限公司 | 一种自适应晶圆机械臂力矩调整系统及方法 |
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