JP2015166321A - 抗腫瘍活性を有するチロシン誘導体 - Google Patents

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Abstract

【課題】癌の増殖を確実に抑制し、かつ毒性の少ない癌治療薬の提供。【解決手段】下記式(I)で示されるチロシン誘導体からなる化合物はその薬学的に許容可能な塩を含む、前立腺癌治療剤。[式中、R1は、C1〜6アルキル基を表す。]【選択図】図1

Description

本発明は、抗腫瘍作用を有するアミノ酸誘導体、特にチロシン誘導体を含有する前立腺癌治療用の医薬組成物および治療剤などに関する。
癌は、日本人における死因のトップであり、これまでに多くの治療法および治療薬が開発されてきている。しかしながら、既存の治療法および治療薬は臨床現場において十分なものではなく、より改善された治療法および治療薬の提供が依然として求められている。特に、癌の増殖を確実に抑制する治療薬および毒性の少ない治療薬の開発が望まれている。
ところで、国際公開公報第2003/066574号(特許文献1)には、芳香族アミノ酸誘導体、例えばチロシン側鎖のフェニル基にハロゲンまたは多環式の置換基を有する化合物群が開示されている。しかしながら、これらの化合物は、合成に煩雑なステップを要するほか、水溶性が低い等の特徴を有している。一方、ベンジル基で保護された側鎖を有するチロシン(Tyr(Bzl))のアルキルエステルやTyr(Bzl)を含むトリペプチドエステルなど、チロシンを含む化合物が開発されている。これらのチロシン誘導体は、合成が簡便なだけではなく、Valsa ceratosperma Maire(リンゴ腐爛病菌)に対する抗真菌活性を有することが知られている(特許文献2)。しかしながら、これらのチロシン誘導体が抗腫瘍活性を示すことは知られていない。
国際公開公報第2003/066574号 特開2010−070547
癌の増殖を確実に抑制する治療薬および毒性の少ない癌の治療薬の開発が望まれている。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、アミノ酸誘導体、特にチロシンの誘導体が前立腺癌細胞に対する細胞毒性による抗腫瘍活性を有することを見いだした。アミノ酸は天然由来の成分であるため、チロシン誘導体はその使用量や使用対象の制限が少ないと考えられること、また、チロシン誘導体の合成は容易であることから、抗腫瘍活性を有するチロシン誘導体はこれまでにない特徴を有する抗癌剤となり得ることが考えられた。本発明者はこれらの知見に基づき、チロシン誘導体が癌治療用医薬組成物、特に前立腺癌治療用医薬組成物として使用できることを明らかにし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]一般式(I)

[式中、Rは、C1〜6アルキル基を表す。]
で示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、前立腺癌治療用医薬組成物。
[2]Rが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である、請求項1に記載の組成物。
[3]Rが、メチル基である、請求項1に記載の組成物。
[4]一般式(I)

[式中、Rは、C1〜6アルキル基を表す。]
で示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、前立腺癌治療剤。
本発明により、チロシン誘導体を含む新たな癌治療用医薬組成物、特に前立腺癌治療用医薬組成物が提供される。また、本発明により、チロシン誘導体を含む新たな抗癌剤、特に前立腺癌治療剤が提供される。本発明におけるチロシン誘導体は、チロシンなどの市販されている出発原料から数ステップで合成できるために、合成が非常に容易であり、かつ、低コストである。また、本発明におけるチロシン誘導体は、アミノ酸誘導体であるため、既存の抗腫瘍性物質に比べて、使用量や使用対象が制限される可能性が低い。さらに、本発明におけるチロシン誘導体は、水に対する溶解度が高く、医薬として使用するのに適している。したがって、本発明におけるチロシン誘導体は、前立腺癌治療剤、前立腺癌治療用医薬組成物の活性成分として有用である。
本発明のチロシン誘導体による抗腫瘍活性を示す図である。 本発明のチロシン誘導体による抗腫瘍活性を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.本発明の概要
本発明者は、アミノ酸誘導体、特にチロシンから合成した化合物が抗腫瘍活性、特に前立腺癌に対する抗腫瘍活性を有することを見出し、本発明を完成した。
本発明のチロシン誘導体は、アミノ酸由来の化合物であることから、従来の抗癌剤と比較して副作用の懸念が少なく、広範囲に使用することができ、また多量に使用し得る可能性がある。さらに、本発明のチロシン誘導体は、比較的容易に化学合成することが可能である。また、本発明におけるチロシン誘導体は、水に対する溶解度が高く、医薬として使用するのに適している。
したがって、本発明のチロシン誘導体は、抗腫瘍剤や癌治療用医薬組成物の活性成分として使用することが可能である。
2.チロシン誘導体
本明細書において、「チロシン誘導体」とは、チロシン由来の化合物であり、かつ抗腫瘍活性を有する物質であれば、特に限定されない。本発明のチロシン誘導体の骨格を形成するチロシンは、α−、β−、γ−などのいずれのチロシンでもよいが、α−アミノ酸が好ましい。
本発明におけるチロシン誘導体として、以下の一般式(I)で示される化合物(以下、「本発明の化合物」ともいう)またはその薬学的に許容可能な塩を用いることができる。

[式中、Rは、C1〜6アルキル基を表す。]
のC1〜6アルキル基は、1または複数の置換基で置換されていてもよい。当該置換基は、限定されるわけではないが、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)から選択される1以上を挙げることができる。
本明細書において「C1〜6アルキル基」は、炭素数が1から6個の直鎖又は分枝状アルキル基を示す。好適な基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、2−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−プロピルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等があげられ、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等、さらにより好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等であり、最も好ましくはメチル基である。
本明細書において「n−」とはノルマルタイプ又は1級置換基であることを意味し、「sec−」とは2級置換基であることを意味し、「t−(tert−)」とは3級置換基であることを意味し、「i−」とはイソタイプの置換基であることを意味する。
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、好ましくは以下で示される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
また、式(I)に示す化合物は、2−アミノ−3−(4−フェニルメトキシフェニル)−プロパン酸エステルともいう。
本発明において、一般式(I)には、上記化合物が含まれ、これらの化合物の1つまたは数個あるいはそれらの薬学的に許容可能な塩を組み合わせて、本発明のチロシン誘導体として使用することができる。
また、本発明のチロシン誘導体は、2以上のチロシンまたはチロシン誘導体が、ペプチド結合で結合した分子、例えばジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドなどであってもよい。例えば、本発明のチロシン誘導体において好ましいトリペプチドは、H-Tyr(Bzl)-Gly-Phe-OMeまたはH-Phe-Gly-Tyr(Bzl)-OMeである。「-Tyr(Bzl)-」は、チロシン側鎖の(パラ位)ヒドロキシ基(-OH)のHが、ベンジル基(-CH2-Ph)で置換されたチロシル基を示す。
本発明において用いる前記チロシン誘導体は、当業者であれば公知の方法で製造することができる。例えば「ペプチド合成の基礎と実験(泉屋信夫・加藤哲夫・青柳東彦・脇 道典著)丸善株式会社」、「生化学実験講座 第1巻(日本生化学会編)東京化学同人」、「実験化学講座16(日本化学会編)丸善株式会社」などに記載の方法で製造することができる。
また、本発明のアミノ酸誘導体は、例えば以下の文献に記載されるような、実施例に記載の方法により製造することができる。例えば、
エステルの合成法:Cs塩法-S. S. Wang et al, J. Org. Chem., 42, 1286(1977).
Na塩法-V. Bocchi et al, Synthesis, 961(1979).
エステル交換法-E. Taschner et al., Justus Liebig's Annalen der Chemie, 646, 127(1961).;および
脱Boc: K. Sato et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 50, 1999(1977)。
本発明のチロシン誘導体のいくつかの態様は、次の2段階で合成できる:(1)Boc-Tyr(Bzl)のセシウム塩またはナトリウム塩をハロゲン化アルキルと反応させることで、Boc-Tyr(Bzl)の各エステルを得る;(2)塩酸でBoc基を除去し、目的のTyr(Bzl)のエステルを得る。
また、本発明のチロシン誘導体の中、tert-ブチルエステルは、1段階で合成できる。Boc-Tyr(Bzl)-OHを過塩素酸に溶かし、酢酸tert-ブチルを加える。Boc基除去とエステル化が起こり、目的のTyr(Bzl) tert-ブチルエステルを得る。
本発明のチロシン誘導体は、酸又は塩基と塩を形成し得る。本発明におけるチロシン誘導体は、これらの塩も包含する。本明細書において、塩は薬学的に許容可能な塩であり、チロシン誘導体と薬学的に許容可能な塩を形成するものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、もしくはリン酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、もしくは蓚酸塩などの有機酸塩、またはナトリウム塩、カリウム塩、もしくはカルシウム塩などの塩が挙げられる。本発明のチロシン誘導体の塩は、当業者であれば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、フマル酸、メタンスルホン酸などの適切な酸、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの適切な塩基を用いて調製することができる。
また、本発明において、チロシン誘導体は、置換基の種類によっては不斉炭素を有し光学異性体が存在しうるが、これら光学異性体も本発明のチロシン誘導体に含まれる。
3.前立腺癌治療用医薬組成物および前立腺癌治療剤
本発明は、本発明のチロシン誘導体を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物に含まれるチロシン誘導体は、好ましくは一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。本発明のチロシン誘導体またはその薬学的に許容可能な塩は、前立腺癌細胞に対する抗腫瘍活性を有するため、本発明のチロシン誘導体は、前立腺癌の治療に使用することができる。すなわち、本発明のチロシン誘導体を含有する本発明の医薬組成物は、前立腺癌治療用医薬組成物として有用である。また、本発明のチロシン誘導体または医薬組成物は、前立腺癌治療剤としても使用することができる。
本発明において、前立腺癌の「治療」には、腫瘍の大きさを減少させること、癌の増殖速度を抑制もしくは停止させること、癌の進行を抑制もしくは停止させること、癌細胞を殺傷すること、前立腺癌に由来する症状の軽減、停止などが含まれる。本発明の別の態様において、治療には発症の予防または再発防止も含まれる。
本発明の医薬組成物または治療剤の治療対象の癌は、前立腺癌である。
本発明の医薬組成物または治療剤を投与・適用する対象は、ヒト、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなどの哺乳動物であり、好ましくはヒトまたはヒト以外の哺乳動物である。
本発明のチロシン誘導体は、アミノ酸の誘導体であるため、既存の抗癌剤に比べて、使用量や使用対象が制限される可能性が低い。したがって、本発明の医薬組成物または治療剤は、既存の抗癌剤と比較して、副作用の懸念が少なく、広範囲に使用することができ、また種々の用量で使用し得る。
本発明の医薬組成物または治療剤の投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)、または患部への直接投与などが挙げられる。また、本発明の医薬組成物または治療剤は、投与方法に応じた剤形に調製することができる。
本発明の医薬組成物または治療剤は、本発明のチロシン誘導体をそのまま使用しても良いし、必要に応じ、定法に従い、本発明のチロシン誘導体に加えて、薬学的に許容可能な添加剤を配合させ製剤化したものであってもよい。このような薬学的に許容可能な添加剤の具体例としては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、キャリア、賦形剤および/または薬学的アジュバントなどが挙げられるが、これらに限定されない。
経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定されず、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、粉末剤、散剤、液剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれであってもよいし、使用する際に再溶解させる乾燥精製物にしてもよい。
非経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定されるものではなく、例えば、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤等のいずれであってもよい。
各種注射剤の場合は、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態や、使用時に溶解液に再溶解させる凍結乾燥粉末の状態で提供され得る。当該非経口剤には、前述した活性成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形剤や添加剤を上記活性成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、各種注射剤の場合は、水、グリセロール、プロピレングリコールや、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリアルコール等が挙げられる。
本発明の医薬組成物の投与量は、一般には、投与対象(患者)の年齢、性別、体重、症状、投与経路、投与回数、投与期間、剤形等を勘案し、適宜設定することができる。本発明のチロシン誘導体の経口投与の1日当たりの投与量は、限定されないが、適用対象(患者)の体重1kgあたり、0.05〜5000mg/日、あるいは0.1〜1000mg/日であることが好ましい。非経口剤の1日当たりの投与量は、限定はされないが、例えば各種注射剤であれば、一般には、適用対象(患者)の体重1kgあたり、0.01〜1000mg/新、あるいは0.05〜500mg/日であることが好ましい。
本発明は、前立腺癌を治療するための本発明のチロシン誘導体を含むキットを提供する。本発明のキットは、本発明のチロシン誘導体を含むものであれば、それを構成する材料は特に限定されない。本発明のチロシン誘導体のほか、水、緩衝液、容器、シリンジ、取扱説明書などを具備すればよい。本発明のチロシン誘導体は、水溶液、凍結乾燥状態などにて提供され、使用前に適切な状態に調製してもよい。本発明のキットを用いることにより、癌を効果的に治療することが可能となる。
また、本発明は、本発明のチロシン誘導体を対象(例えば、ヒト)に投与することを含む、前立腺癌の治療方法も提供する。また、本発明は、癌の治療に使用するための本発明のチロシン誘導体をも提供する。本発明のチロシン誘導体の投与量、投与方法などは、本発明の医薬組成物の記載を参照することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
チロシン誘導体の合成
チロシンおよびBoc-Tyr(Bzl)-OHは、渡辺化学工業株式会社(広島)から入手した。H-Tyr(Bzl)-OHは、Boc-Tyr(Bzl)-OHを塩酸で処理しBoc基を除去することにより得た。H-Tyr(Bzl)-OMe、H-Tyr(Bzl)-OEt、H-Tyr(Bzl)-OPr、H-Tyr(Bzl)-OBun、H-Tyr(Bzl)-OBui、H-Tyr(Bzl)-OBus、およびH-Tyr(Bzl)-OButの合成を以下の手順で行った。また、チロシンおよびH-Tyr(Bzl)-OH(式(I)のRがHの化合物)の合成も以下の手順で行った。
H-Tyr(Bzl)-OMe、H-Tyr(Bzl)-OEt、H-Tyr(Bzl)-OPr、H-Tyr(Bzl)-OBun、H-Tyr(Bzl)-OBui、およびH-Tyr(Bzl)-OBusは、セシウム(またはナトリウム)塩とハロゲン化アルキルを用いた次の方法で合成した。Boc-Tyr(Bzl)-OHを炭酸セシウム(または炭酸水素ナトリウム)でセシウム(またはナトリウム)塩とした後、相当するハロゲン化アルキルを加えた。反応終了後、目的物を酢酸エチルで抽出した。得られたBoc-Tyr(Bzl)エステルを塩酸/ジオキサンで処理しBoc基を除去した。過剰の塩酸を窒素ガスで除去し、目的の各H-Tyr(Bzl)エステル塩酸塩を得た。
H-Tyr(Bzl)-OButは次のエステル交換法で合成した。Boc-Tyr(Bzl)-OHを過塩素酸に溶かし、酢酸tert-ブチルを加えた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。ろ過後、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層に塩酸/ジオキサンを加え、目的のH-Tyr(Bzl) tert-ブチルエステル塩酸塩を得た。
H-Tyr(Bzl)-OH・HCl
Boc-Tyr(Bzl)-OHを塩酸/ジオキサンに溶かし、室温で約1時間反応させた。反応終了後、過剰の塩酸を窒素ガスで除去した後に減圧濃縮した。残渣をエーテルで固化し、ろ取した。
トリペプチドの合成は以下のスキームで行った。
H-Tyr(Bzl)-OMe・HClの合成
Boc-Tyr(Bzl)-OH(1当量)(渡辺化学工業、広島)をDMFに溶かし、炭酸水素ナトリウム(2当量)とヨードメタン(5当量)を加えた。遮光した状態で、室温で約24時間反応させた。反応液を分液漏斗に移し、AcOEtと多量の水を加えて洗った。AcOEt層を、Na2S2O3水溶液と飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで一晩脱水した。硫酸ナトリウムを濾去し、AcOEtを減圧濃縮して、Boc-Tyr(Bzl)-OMeを得た。Boc-Tyr(Bzl)-OMeを塩酸/ジオキサンに溶かし、室温で約1時間反応させた。反応終了後、過剰の塩酸を窒素ガスで除去した後に減圧濃縮した。残渣をエーテル−石油エーテルで固化し、ろ取した。
Boc-Phe-Gly-OMeの合成(混合酸無水物法)
Boc-Phe-OH(1当量)(渡辺化学工業、広島)をDMFに溶かし、攪拌しながら−15℃に冷却し、NMM(1当量)及びIBCF(1当量)を加えた。10分攪拌したのち、H-Gly-OMe・HCl(1当量)とNMM(1当量)をDMFに溶かした溶液を加え、−15℃で30分攪拌した。その後、室温で60分攪拌し、反応の終了をTLCで確認した。反応液を分液漏斗に移し、AcOEtと多量の水を加えて洗った。AcOEt層を、10%クエン酸水溶液酸と4%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去した後、残渣をエーテル−石油エーテルで固化し、ろ取した。
Boc-Phe-Gly-OHの合成(メチルエステルの除去)
Boc-Phe-Gly-Ome(1当量)をMeOHに溶かし、1N NaOH水溶液(NaOH、1.2当量)を加えた。室温で約3時間反応させ、減圧濃縮後に水を加えた。分液漏斗に移し、ジエチルエーテルを加えて未反応物を除去した。水層にクエン酸を加えて目的物を沈澱させ、AcOEtで抽出し、硫酸ナトリウムで一晩脱水した。硫酸ナトリウムを濾去し、AcOEtを減圧濃縮した後、残渣をエーテル−石油エーテルで固化し、ろ取した。
H-Phe-Gly-Tyr(Bzl)-OMe・HClの合成
H-Tyr(Bzl)-OMe・HCl(1当量)をDMFに溶かし、氷冷下でNMM(1当量)を加えた。その後、Boc-Phe-Gly-OH(1当量)、HOBt・H2O(1.5当量)を加え、最後にWSCI・HCl(1.2当量)を加えた。氷冷下で約24時間反応させた。反応液を分液漏斗に移し、AcOEtと多量の水を加えて洗った。AcOEt層を、4%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、10%クエン酸水溶液、水の順に、各2回ずつ洗い、硫酸ナトリウムで一晩脱水した。硫酸ナトリウムを濾去し、AcOEtを減圧濃縮した。得られた残渣を塩酸/ジオキサンに溶かし、室温で約1時間反応させた。反応終了後、過剰の塩酸を窒素ガスで除去した後に減圧濃縮した。残渣をエーテル−石油エーテルで固化し、ろ取した。
H-Tyr(Bzl)-Gly-Phe-OMe・HClは、H-Phe-Gly-Tyr(Bzl)-OMe・HClと同様の方法で合成した。
また、得られたチロシン誘導体のCLogP(オクタノール/水での分配係数)をChemDrawで計算したところ、2.7〜4.2であった。この値は、Lipinskiらの文献(Advanced Drug Delivery Reviews, 23, 3(1997).)に開示されている、「CLogPが5以下」という医薬品に求められる条件の1つを満たしている。また、H-Tyr(Bzl)-OMeは、以下の実施例2において、少なくとも40μg/mL以下で溶解することが目視で確認されている。したがって、本発明のチロシン誘導体は、医薬品候補として十分な水溶性、かつ脂溶性を有するといえる。
抗腫瘍活性の検討
ヒト前立腺ガン細胞(PC-3)に対する抗腫瘍活性は、CellTiter-BlueTM Cell Viability Assay(プロメガ、東京)を用いて決定した。ヒト前立腺ガン細胞(PC-3)はAmerican Type Culture Collection(Manassas, VA)から入手した。抗癌剤であるパクリタキセルおよびシスプラチン(cisplatin)は、和光純薬工業株式会社(大阪)から入手した。
ヒト前立腺ガン細胞を、RPMI1640培地中、10%ウシ血清・ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン酸とともに、37℃、5%CO2環境で培養した。培養した細胞5×10個を96穴のプレートに移し、本発明のチロシン誘導体もしくはトリペプチドまたは抗ガン剤を加えた。陰性対照として、チロシン誘導体または抗癌剤を溶解させた溶媒(10μl)を加えた。36時間培養後にCellTiter-BlueTMを加え、さらに4時間培養した。570nmと595nmの吸光度を測定した。得られた吸光度値から細胞の生存率を求め、百分率で表した。
結果を図1および図2に示す。また、本発明のチロシン誘導体の有する抗腫瘍活性について、表2にまとめる。
本発明のチロシン誘導体(Tyr(Bzl)のエステルおよびトリペプチドH-Tyr(Bzl)-Gly-Phe-OMeまたはH-Phe-Gly-Tyr(Bzl)-OMe)は、前立腺癌細胞に対して抗腫瘍活性を示した。特に、本発明のチロシン誘導体であるTyr(Bzl)のエステルは、n−ブチルエステル以外、前立腺ガン細胞に対してシスプラチンと同程度またはそれ以上の高い抗腫瘍活性を示した。また、その活性はエステル部分の違いによって変化し、メチルエステル(式(I)においてRがメチル基である化合物、H-Tyr(Bzl)-OMe)が最も強い活性を示した。
H-Tyr-OHとH-Tyr(Bzl)-OHは抗腫瘍活性を示さなかったことから、側鎖ベンジル基とC端アルキル基(エステル部分)が活性発現に必要と考えられる。
Tyr(Bzl)エステルの抗腫瘍活性の強さについて、疎水性や分子の表面積・体積・形状との相関について検討したところ、疎水性が関係しているようである。ただし、疎水性の効果は、直接的なものではなく、溶解性に関係しているとも考えられる。
エステル部分の違いが抗腫瘍活性に影響を与えていることは明らかである。しかし、各Tyr(Bzl)エステルのエステル部分に相当するアルコールの疎水性と抗腫瘍活性の間には相関は見られなかった。Tyr(Bzl)部分とエステル部分の協働によって効果が生まれていると考えられる。
以上のように、本発明のチロシン誘導体は、抗腫瘍活性を有することが示された。特に、2−アミノ−3−(4−フェニルメトキシフェニル)−プロパン酸のメチルエステル(式(I)においてRがメチル基である化合物、H-Tyr(Bzl)-OMe)が最も高い抗腫瘍活性を示した。
明細書中のそれぞれの略号の意味は以下のとおりである。
AcOEt: Ethyl acetate、
Boc: t-Butyloxycarbonyl、
Bzl: Benzyl、
DMF: N,N-Dimethylformamide、
HOBt: 1-Hydroxybenzotriazole、
IBCF: Isobutyl chloroforomate、
OMe: Methyl ester、
MeOH: Methanol、
NMM: N-Methylmorpholine、
TLC: Thin-layer chromatography、
WSC: Water soluble carbodiimide、
F, Phe: Phenylalanine、
G, Gly: Glycine、
Y, Tyr: Tyrosine

Claims (4)

  1. 一般式(I)

    [式中、Rは、C1〜6アルキル基を表す。]
    で示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、前立腺癌治療用医薬組成物。
  2. が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である、請求項1に記載の組成物。
  3. が、メチル基である、請求項1に記載の組成物。
  4. 一般式(I)

    [式中、Rは、C1〜6アルキル基を表す。]
    で示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、前立腺癌治療剤。
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