JP2015123014A - エチレン阻害剤を用いた不定胚の誘導法 - Google Patents

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【課題】培養細胞からの不定胚誘導率を高めることにより、効率的に不定胚を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で培養する工程を含む、不定胚の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、培養細胞からの不定胚誘導率を改善し、より効率的な植物体生産方法を提供する。
植物の栄養体は、挿し木、株分け、塊茎、りん茎等を利用し増殖されるが、植物種によってはインビトロ培養による増殖法が利用されている。現在用いられているインビトロ培養法は、無菌環境下での挿し木、株分け、塊茎誘導、りん茎誘導の他、植物体再生能を有する細胞から不定芽や不定胚を経由し、植物体を再生する方法等である。
これらのうち、細胞から不定胚を経由して植物体を再生する方法は、大量の植物体が効率良く得られることが期待される方法である。たとえば樹木苗の場合、米国ノースカロライナ州だけでも1年間に約5千万本と非常に大量の苗が植付けられており(K.Roeder, Forestry and Tree Planting in North Carolina, Tree Planters’ Notes, 2011年, Volume 54, No. 2, pp12-22)、新規樹木品種・系統等の大量増殖法として本方法の実用化が大いに期待されている。
しかしながら、本方法においては、現状で全ての細胞から植物体が再生するわけではなく、植物体再生効率を最大化できていない。特に、多くの場合、培養細胞からの不定胚誘導効率が十分に高くないことに課題があり、実用レベルの植物体増殖に不定胚を用いることの大きな障害となっている。
不定胚の誘導に影響を与える要因としては植物ホルモンが挙げられる。植物ホルモンは植物の生長調節・形態形成に重要な役割を果たしている事が知られており、オーキシン、サイトカイニン、ABAなどの種々の植物ホルモンが不定胚誘導へ与える影響についても検討されている(非特許文献1)。
エチレンも植物ホルモンの1つであり、生長抑制、成熟促進、細胞肥大促進等の活性を有することが知られている。生長抑制に関わる活性は、特に培養条件を用いた植物増殖の場面にて影響が大きい。培養容器の中でエチレンが発生/蓄積することで植物体が褐変し、生長が阻害される。その解決策として、エチレン作用阻害剤やエチレン生合成阻害剤の利用が検討されている。特に、エチレン作用阻害剤の1つである硝酸銀を培地に添加する方法が様々な植物種で試みられている。培養細胞からの不定胚誘導場面においても適用された例(非特許文献2及び3)があるが、結果は様々であり効果の検証は十分ではない。また、その検討は固体(寒天)培地で行われているものの、固体培地で通常用いられるシャーレあたりの不定胚形成数は限られており(US patent 5294549, 1994年)、膨大な苗需要に固体培地による培養で対応することは不可能である。一方、大量増殖に適した液体培地における効果の検証例は殆どない。更に、硝酸銀以外のエチレン作用阻害剤については検討自体が殆ど行われていない。
V.M.Jimenez, Involvement of plant hormones and plant growth regulators on in vitro somatic embryogenesis, Plant Growth Regulation , 2005年, Vol. 47, pp. 91-110 V. Kumar, et al., Influence of different ethylene inhibitors on somatic embryogenesis and secondary embryogenesis from Coffea canephora P ex Fr., In Vitro Cell. Dev. Biol.-Plant, 2007年, Vol. 43, pp. 602-607 A.E. Meskaoui and F.M. Tremblay, Effects of sealed and vented gaseous microenvironments on the maturation of somatic embryos of black spruce with a special emphasis on ethylene, Plant Cell, Tissue and Organ Culture, 1999年, Vol. 56, pp. 201-209
上述のように、細胞から不定胚を経由して植物体を再生する方法によれば、大量の植物体を効率良く得ることができるが、しかしながら、当該方法は十分に確立されていない。
そこで、本発明は、培養細胞からの不定胚誘導率を高めることにより、従来法に比してより効率的な不定胚による植物体生産を可能とする方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で不定胚形成細胞を培養することにより、不定胚の誘導効率を高め得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で培養する工程を含む、不定胚の製造方法。
(2)エチレン作用阻害剤が銀イオンである、(1)記載の方法。
(3)エチレン作用阻害剤がクリザールである、(1)記載の方法。
(4)エチレン作用阻害剤がSTS剤である、(1)記載の方法。
(5)エチレン生合成阻害剤がアミノエトキシビニルグリシンである、(1)記載の方法。
(6)前記培地が液体培地である、(1)〜(5)のいずれか1記載の方法。
(7)不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む液体培地で培養する工程を含む、不定胚の製造方法。
(8)エチレン作用阻害剤が銀イオンである、(7)記載の方法。
(9)エチレン作用阻害剤がクリザールである、(7)記載の方法。
(10)エチレン作用阻害剤がSTS剤である、(7)記載の方法。
(11)エチレン生合成阻害剤がアミノエトキシビニルグリシンである、(7)記載の方法。
(12)(1)〜(11)のいずれか1記載の方法に従い、不定胚を製造する工程と、前記不定胚から植物体を再生する工程とを含む、植物体の製造方法。
本発明によれば、不定胚形成細胞をエチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で培養することにより、産業上有用な不定胚の誘導率を高めることが可能である。
クリザールがテーダマツの不定胚誘導に及ぼす影響(液体培地)を示すグラフである。
本発明に係る不定胚の製造方法(以下、「本発明に係る方法」と称する)は、不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で培養する工程を含む方法である。本発明に係る方法によれば、従来法に比して、不定胚形成細胞からの不定胚の誘導効率を高めることができる。
一般に、不定胚を経由する植物体再生の工程は、(1)植物組織(外植片)から不定胚形成能を有する細胞(不定胚形成細胞)を誘導・維持・増殖する工程、(2)不定胚形成能を有する細胞(不定胚形成細胞)から不定胚を誘導する工程、及び(3)不定胚からの植物体再生工程から成る。これらの中で、本発明に係る方法では、(2)の工程において、不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤のうち1種又は複数種を添加した培地で培養することにより不定胚誘導効率を改善することができる。
本発明では、エチレン作用阻害剤として、銀イオン、具体的には硝酸銀の他、STS(チオ硫酸銀錯塩)剤、及びSTS剤を含む市販のエチレン作用阻害剤(クリザール:商品名クリザールK-20C等)を用いることができる。夫々のエチレン作用阻害剤の添加濃度は、植物種、不定胚形成細胞の状態及び培養条件等によって最適な値を選択する。以下の濃度に限定されるものではないが、例えばテーダマツの液体培養条件での不定胚誘導においては、下記の実施例で用いているクリザールK-20CやSTS剤の場合、銀イオン濃度50μM〜130μMで用いることができる。一方、硝酸銀の場合は、固体(寒天)培地では同様の濃度帯にて各種検討が行われているが、液体培養条件においてはそれら濃度帯では細胞の成長が過度に抑制され、条件によっては枯死してしまう。そこで、硝酸銀の場合、液体培養条件での好ましい濃度はかなり低く、銀イオン濃度で0.02〜5μMである。
一方、エチレン生合成阻害剤としては、アミノエトキシビニルグリシン(AVG)を用いることができる。添加濃度は、エチレン作用阻害剤の場合と同様に、植物種、不定胚形成細胞の状態及び培養条件等によって最適な値を選択する。下記の実施例で用いているAVGの場合は、0.01〜20μMの濃度で用いることができる。
以下、本発明に係る方法において、上述したエチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤の施用に用い得る植物及び用い得る培養工程を例示する。
<植物>
本発明に係る方法は、不定胚を提供する植物に適用可能である。植物としては、以下のものに限定されないが、好ましくはマンサク科、ヒノキ科、マツ科、マメ科、フトモモ科、ヤナギ科、クワ科、セリ科、サトイモ科、イネ科、ユリ科及びヒルガオ科に属する植物が挙げられる。
上記植物の例は以下のとおりである。マンサク科(スイートガム等)、ヒノキ科(ヒノキ等)、マツ科(マツやトウヒ等)、マメ科(アルファルファやアカシア等)、フトモモ科(ユーカリ等)、ヤナギ科(ポプラ等)、クワ科(ゴムノキ等)、セリ科(ニンジン、セロリ等)、サトイモ科(スパティフィラム等)、イネ科(イネ等)、ユリ科(アスパラガス等)、ヒルガオ科(サツマイモ等)。
<植物組織(外植片)から不定胚形成能を有する細胞(不定胚形成細胞)を誘導・維持・増殖する工程>
本発明に係る方法では、先ず不定胚形成能を有する細胞(不定胚形成細胞)を準備する。
本発明に用いる各種植物における未熟胚、葉、葉柄、根等の各種植物組織(外植片)からの不定胚形成細胞の誘導、維持及び増殖方法は、特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、A. Jiら, 「Advances in Somatic Embryogenesis Research of Horticultural Plants」, American Journal of Plant Sciences(2011)2,:727-732;農林水産研究文献解題No. 17 植物バイオテクノロジー 平成3年;国際公開WO2007/064028;E. Maruyamaら, 「Embryogenic cell culture, protoplast regeneration, cryopreservation, biolistic gene transfer and plant regeneration in Japanese Cedar」, Plant biotechnology (2000) 17: 281-296;GS. Pullmanら, 「Improving loblolly pine somatic embryo maturation : comparison of somatic and zygotic embryo morphology, germination and gene expression」, Plant Cell Rep. (2003) 21 : 747-758等に記載されている方法を用いることができる。
<不定胚形成細胞から不定胚を誘導する工程>
次いで、本発明に係る方法では、上述のように準備した不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で培養する。
エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地における培養を除き、当該工程における不定胚の誘導方法は特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、上記文献(すなわち、農林水産研究文献解題No. 17 植物バイオテクノロジー 平成3年;国際公開WO2007/064028;E. Maruyamaら, 「Embryogenic cell culture, protoplast regeneration, cryopreservation, biolistic gene transfer and plant regeneration in Japanese Cedar」, Plant biotechnology (2000) 17: 281-296;GS. Pullmanら, 「Improving loblolly pine somatic embryo maturation : comparison of somatic and zygotic embryo morphology, germination and gene expression」, Plant Cell Rep. (2003) 21 : 747-758等)に記載されている方法を用いることができる。なお、固体培地と液体培地の何れの条件も適用可能であるが、大量増殖に適した液体培地(液体培養)が好ましい。また、光条件にも特に限定はない。
<不定胚の脱水工程>
上記のようにして誘導した不定胚はそのまま発芽工程に供試することができる。ただし、不定胚を脱水や乾燥に供することによりその後の植物体再生率が向上する場合があることが知られている。また、保存が必要な場合は、不定胚に脱水や乾燥処理を施すことで一定期間の保存が可能となる。
<不定胚からの幼植物体再生工程>
上記のようにして得られた不定胚又は脱水不定胚は固体培地上でも液体培地中でも高効率で発芽する。発芽に用いる培地は、MS培地等を基本培地とし、糖源としてショ糖を1〜6%、好ましくは2〜4%添加する。発芽した不定胚は発根も伴い、そのまま幼植物体へと生育する。また、生育した幼植物体を、通常の方法に従い生育させることで、植物体を生産(製造)することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例で使用する培地の組成を以下の表1に示す。
Figure 2015123014
〔実施例1〕クリザールがヤツガタケトウヒの不定胚誘導に及ぼす影響(固体培地)
ヤツガタケトウヒの未熟種子から常法に従って誘導し(丸山ら, 「絶滅危惧種ヤツガタケトウヒの不定胚形成」, 日本森林学会大会学術講演集(2007)118巻)、固体増殖培地(EM)で2〜3週間毎に継代培養されている不定胚形成細胞(森林総合研究所保有)を用いて、以下の試験を実施した。
クリザールK-20C(クリザールジャパン(株)、大阪、日本国)の最終濃度が1/3000倍(銀イオン濃度67μM)、1/2000倍(同100μM)、1/1000倍(同200μM)になる様に添加した固体不定胚誘導培地(MP)を作製し、直径9cmのシャーレに20mlずつ分注した。それら培地に不定胚形成細胞を置床し(約100mgの細胞塊をシャーレあたり9個ずつ置床)、暗所、25℃にて5週間培養し、不定胚の誘導を行った。培養の後、置床細胞塊毎に不定胚数を計測し、平均不定胚数を算出した。結果を以下の表2に示す。
Figure 2015123014
表2に示すように、クリザールを添加した全ての濃度条件で、対照(クリザール非含有培地)に比して細胞塊当たりの不定胚誘導数が増加した。特に銀イオン濃度67μMの試験区では対照比2倍を超える不定胚が得られた。また得られた不定胚のサイズも対照に比して大きくまた形態も良好であった。
〔実施例2〕各種エチレン阻害剤がヤツガタケトウヒの不定胚誘導に及ぼす影響(液体培地)
実施例1と同じヤツガタケトウヒの不定胚形成細胞を用いて、以下の実験を実施した。
液体増殖培地(LP)100mlを含む300ml三角フラスコに不定胚形成細胞0.4gを置床し、暗所、25℃、80rpmの条件にて2週間浸盪培養を行った。増殖した細胞を培地と共にピペットで2ml吸い取り、硝酸銀、STS(チオ硫酸銀錯塩)剤、市販のSTS剤であるクリザールK-20Cを夫々銀イオン濃度が30、44、67、100、200μMになる様に添加した液体不定胚誘導培地(LPS、100ml/300ml三角フラスコ)に置床し、暗所、25℃、80rpmにて5週間浸盪培養を行い不定胚の誘導を行った。培養後、各試験区の培地1ml中に含まれる不定胚数を計測し、対照(エチレン阻害剤非含有培地)比の不定胚誘導効率を算出した。結果を以下の表3に示す。
Figure 2015123014
表3に示すように、銀イオンを硝酸銀の形態で添加した条件では不定胚は殆ど得られなかった。特に、44μMの濃度では置床した細胞は枯死した。STS剤として添加した試験区では、対照比1.3倍の効率にて不定胚が誘導された。更に、クリザールK-20Cとして添加した試験区では、対照比1.3〜1.7倍と顕著に高い不定胚誘導効率が得られた。この様に、銀イオンの添加形態が不定胚誘導効率に大きな影響を及ぼすことが判明した。
〔実施例3〕クリザールがテーダマツの不定胚誘導に及ぼす影響(液体培地)
テーダマツの未熟種子から常法に従って誘導し(GS. Pullmanら, 「Improving loblolly pine somatic embryo maturation : comparison of somatic and zygotic embryo morphology, germination and gene expression」, Plant Cell Rep. (2003) 21 : 747-758)、固体増殖培地(LPSA:LP培地にゲルライトを0.25%濃度で添加した培地)で2〜3週間毎に継代培養されている不定胚形成細胞を用いて、以下の試験を実施した。
液体増殖培地(LP)100mlを含む300ml三角フラスコに不定胚形成細胞0.4gを置床し、暗所、25℃、80rpmの条件にて2週間浸盪培養を行った。増殖した細胞を培地と共にピペットで3ml吸い取り、クリザールK-20Cの最終濃度が1/4000倍(銀イオン濃度50μM)、1/3000倍(同67μM)、1/2000倍(同100μM)、1/1500(同134μM)、1/1000倍(同200μM)になる様に添加した液体不定胚誘導培地(LPS)に置床し、暗所、25℃、80rpmにて4週間浸盪培養を行い不定胚の誘導を行った。培養後、各試験区の培地1ml中に含まれる不定胚数を計測し、フラスコ当たりの不定胚数を算出した。結果を図1に示す。
図1に示すように、クリザールの添加によって、不定胚誘導数が顕著に増加することが確認された。特に、銀イオン濃度67μM及び100μM区では、対照(クリザール非含有培地)比4倍以上の不定胚が形成された。得られた不定胚のサイズも対照に比して大きく、形態も良好であった。また、銀イオン濃度によっては、不定胚の分化段階がより進むことが観察された。
〔実施例4〕硝酸銀がテーダマツの不定胚誘導に及ぼす影響(液体培地)
実施例3と同じテーダマツの不定胚形成細胞を用いて、以下の実験を実施した。
液体増殖培地(LP)100mlを含む300ml三角フラスコに不定胚形成細胞0.4gを置床し、暗所、25℃、80rpmの条件にて2週間浸盪培養を行った。増殖した細胞を培地と共にピペットで3ml吸い取り、銀イオン濃度が0.018、0.06、0.6、50、67、100μMになる様に硝酸銀を添加した液体不定胚誘導培地(LPS、100ml/300ml三角フラスコ)に置床し、暗所、25℃、80rpmにて4週間浸盪培養を行い不定胚の誘導を行った。培養後、各試験区の培地1ml中に含まれる不定胚数を計測し、対照(硝酸銀非含有培地)比の不定胚誘導効率を算出した。結果を以下の表4に示す。
Figure 2015123014
硝酸銀は、不定胚誘導場面での使用が幾つかの事例で検討されている(寒天培地)。
表4に示すように、用いられている濃度は数十μMであるが、実施例2と同じくそれら濃度では細胞は全て枯死した(液体培地)。一方、非常に薄い濃度で添加した試験区では、対照に比して大きく改善された不定胚誘導が認められた。大量培養に適した液体培地では、硝酸銀の場合、非常に薄い濃度での使用が必須である。
〔実施例5〕アミノエトキシビニルグリシン(AVG)がヤツガタケトウヒの不定胚誘導に及ぼす影響(液体培地)
実施例1と同じヤツガタケトウヒの不定胚形成細胞を用いて、以下の実験を実施した。
液体増殖培地(LP)100mlを含む500ml三角フラスコに不定胚形成細胞0.4gを置床し、暗所、25℃、80rpmの条件にて2週間浸盪培養を行った。増殖した細胞を培地と共にピペットで2ml吸い取り、アミノエトキシビニルグリシン(AVG)を0.5、1.0、2.5、5.0、10.0μMの濃度で添加した液体不定胚誘導培地(LPS、100ml/300ml三角フラスコ)に置床し、暗所、25℃、80rpmにて5週間浸盪培養を行い不定胚の誘導を行った。培養後、各試験区の培地1ml中に含まれる不定胚数を計測し、対照(AVG非含有培地)比の不定胚誘導効率を算出した。結果を以下の表5に示す。
Figure 2015123014
表5に示すように、AVGはエチレンの生合成阻害剤であるが、硝酸銀等のエチレンの作用阻害剤と同様に、不定胚形成効率を高める効果が確認できた。最良の不定胚誘導は、0.5μM区で認められた。

Claims (12)

  1. 不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む培地で培養する工程を含む、不定胚の製造方法。
  2. エチレン作用阻害剤が銀イオンである、請求項1記載の方法。
  3. エチレン作用阻害剤がクリザールである、請求項1記載の方法。
  4. エチレン作用阻害剤がSTS剤である、請求項1記載の方法。
  5. エチレン生合成阻害剤がアミノエトキシビニルグリシンである、請求項1記載の方法。
  6. 前記培地が液体培地である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 不定胚形成細胞を、エチレン作用阻害剤及び/又はエチレン生合成阻害剤を含む液体培地で培養する工程を含む、不定胚の製造方法。
  8. エチレン作用阻害剤が銀イオンである、請求項7記載の方法。
  9. エチレン作用阻害剤がクリザールである、請求項7記載の方法。
  10. エチレン作用阻害剤がSTS剤である、請求項7記載の方法。
  11. エチレン生合成阻害剤がアミノエトキシビニルグリシンである、請求項7記載の方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項記載の方法に従い、不定胚を製造する工程と、
    前記不定胚から植物体を再生する工程と、
    を含む、植物体の製造方法。
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