以下、本発明に係る超音波診断装置の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成概略図を示す図である。超音波診断装置は、一般に、病院等の医療機関に設置される医療上の機器である。
プローブ10は、被検体表面に沿って移動させられ、超音波の送受波を行う超音波探触子である。プローブ10は、ケーブルを介して超音波診断装置本体に接続されている。それが無線によって接続されてもよい。プローブ10は、操作者(検査者)によって保持され、三次元空間内において運動可能な可動体である。プローブ10は、例えば、複数の振動素子からなるアレイ振動子を有しており、そのアレイ振動子によって超音波ビームBが形成される。また、超音波ビームBを電子走査することにより走査面Sが形成される。電子走査方式としては、例えば電子セクタ走査方式や電子リニア走査方式等があげられる。なお、プローブ10が、いわゆる2Dアレイ振動子を有し、3次元データ取込空間が構成されてもよい。プローブ10は、超音波の送受波により画像形成用データを出力する。
プローブ10と被検体との間において音波を伝わり易くするため、或いはプローブ10の被検体表面上での滑りをよくするためのエコーゼリーを超音波診断に先立って塗布する際にもプローブ10が用いられる。具体的には、被検体表面、特に診断箇所にエコーゼリーを引き延ばす際にプローブ10が用いられる。
本実施形態において、加速度センサ12は、後述するジャイロセンサ14と共に座標情報取得手段を構成するものである。加速度センサ12はプローブ10の内部に設けられている。それがプローブ10の外表面上に後付け設置されてもよい。加速度センサ12は、例えば機械式変位測定方式を採用したものであってよく、ばね等の弾性体に繋がれた錘の位置変化を捉えることでプローブ10に加わった加速度を計測して出力する。加速度センサ12は3軸加速度センサであり、互いに直交するx軸、y軸、z軸それぞれの成分の加速度を計測する。
ジャイロセンサ14は、加速度センサ12同様、プローブ10に内部又は外部に設けられている。ジャイロセンサ14は、例えば振動型ジャイロセンサであって良く、振動子に加わるコリオリの力からプローブの角速度を計測して出力する。加速度センサ12同様、ジャイロセンサ14も3軸ジャイロセンサであり、互いに直交するx軸、y軸、z軸それぞれの成分の角速度を計測する。
座標情報取得手段として、加速度センサ12及びジャイロセンサ14に代えて、磁気センサを用いてもよい。磁気センサはプローブ10に取り付けられ、所定の位置に固定的に設置された磁場発生器から発せられる磁場の強度を計測することで、プローブ10についての座標情報を計測する。また、座標情報取得手段として、光学的な方式によって座標情報を取得する手段を用いてもよい。
座標情報演算部16は、加速度センサ12及びジャイロセンサ14から有線方式又は無線方式で出力される信号に基づいて、プローブ10の空間的な座標(x、y、z)及びプローブ10についての各軸回りの回転角度(θx、θy、θz)を演算する。座標情報演算部16は、加速度センサ12から得られた各軸の加速度を積分して各軸に対するプローブ10の速度を得る。さらに速度を積分することで各軸に対する位置座標を得る。また、ジャイロセンサ14から得られた各軸の角速度を積分することで各軸に対するプローブ10の角度座標(姿勢)を得る。座標情報は、位置座標及び角度座標から構成されている。
座標情報記憶部18は、座標情報演算部16が得た座標情報を記憶する。座標情報記憶部18は、少なくとも後述の模擬画像形成部32が模擬画像を形成するのに必要な分の座標情報を記憶する。座標情報記憶部18は、加速度センサ12及びジャイロセンサ14から連続的に出力され座標情報演算部16において処理された座標情報を全て記憶するようにしてもよいが、模擬画像を形成するのに必要な座標情報のみを記憶するのが好適である。例えば、操作者から座標情報を取得する旨の指示を受けたときのみプローブ10の位置を示す座標情報を取得するようにしてもよい。この点に関して、操作者から座標情報を取得する旨の支持を受けたときのみ、加速度センサ12及びジャイロセンサ14が出力を行うようにしてもよい。
なお、プローブ10の座標情報に基づいて模擬画像を形成するには、プローブ10の位置を示す情報、すなわち加速度センサ12からの情報のみでも足りる。しかしながら、特に三次元模擬画像を形成する際には、プローブ10の姿勢を示す情報、すなわちジャイロセンサ14からの情報が有った方が好適である。例えば、乳房の模擬画像を形成する場合には、プローブ10は乳房の表面に対して垂直に当接されることが前提となっているため、プローブ10の姿勢情報に基づいて、プローブ10の当該位置における乳房の表面の傾きを把握することができる。また、模擬画像上にプローブマークを形成する場合においても、プローブ10の被検体への当接位置のみならず、プローブ10がどの向きで被検体に当接されたのかを示したプローブマークを形成できる。
送信部20は、送信ビームフォーマーとして機能する。すなわち、制御部28の制御の下、送信部20は、プローブ10の複数の振動子に対して所定の遅延関係をもって複数の送信信号を供給する。これにより、アレイ振動子から生体内へ超音波が送波される。その際、送信ビームが形成される。
生体内からの反射波はプローブ10のアレイ振動子において受波され、これによりアレイ振動子から複数の受信信号が受信部22へ送られる。受信部22は、受信ビームフォーマーとして機能し、制御部28の制御の下、プローブ10の複数の振動子から出力される複数の受信信号に対して、いわゆる整相加算処理を実行する。また、受信部22は、整相加算後の受信信号(ビームデータ)に対して、検波、対数圧縮などの処理を実行する。
シネメモリ24は、時系列順で入力される複数のフレーム分の画像データを記憶するシネメモリである。本実施形態において、1つの画像データは1つの受信フレームに対応する。1つの受信フレームは、1つの走査面に対応し、それは例えば100本のビームデータにより構成される。個々のビームデータは、深さ方向に並ぶ多数のエコーデータにより構成される。シネメモリ24は、例えばリングバッファのような構造を有しており、常に最新から過去一定期間にわたる画像データ列を記憶する。
超音波画像形成部26は、例えばデジタルスキャンコンバータ(DSC)等であり、画像データに基づいて生体イメージとしての超音波画像を構成する。本実施形態においては、2次元の超音波画像(断層画像)が構成されるが、3次元の超音波画像を構成するようにしてもよい。生体イメージは、2次元組織画像上に2次元血流画像が重畳されたカラーフローマッピング画像等であってもよい。
制御部28は、中央演算部(CPU)及び動作プログラムで構成され、超音波診断装置の各構成の動作制御を行う。制御部28は、キャリブレーション実行部30、模擬画像形成部32、被検体特徴取得部40、及びプローブマーク生成部42を含んで構成されている。また、模擬画像形成部32は、補間処理部34、補正部36、及びレンダリング処理部38を含んで構成されている。本実施形態において、それらはソフトウエアの機能として実現されている。
キャリブレーション実行部30は、被検体における実座標系と、加速度センサ12及びジャイロセンサ14の座標系とを対応付ける(整合させる)キャリブレーションを実行する。キャリブレーションは、一連の座標情報の取得に先立って実行される。例えば、被検体上において定義されるキャリブレーション用特定位置に対してプローブ10における送受波面中心(音響レンズ表面の中心)を鉛直姿勢で当接させ、その時の座標を加速度センサ12及びジャイロセンサ14の座標系の原点とする。すなわち、座標情報演算部16は、決定された原点を基準として、加速度センサ12及びジャイロセンサ14から出力される加速度及び角速度に対して演算を行い、位置座標及び角度座標を算出する。なお、被検体上において定義される複数の特定位置におけるプローブ10の座標情報に基づいて、加速度センサ12及びジャイロセンサ14の座標系の原点を算出してもよい。
模擬画像形成部32は、座標情報記憶部18から複数の座標情報を読み出し、これらの座標情報に基づいて、被検体の表面形態を模した模擬画像を形成する。模擬画像形成部32が形成する模擬画像は、二次元の模擬画像であってもよいが、本実施形態では、三次元の模擬画像である。本実施形態に係る超音波診断装置は、サンプリングされた複数の座標情報に基づく補間処理により模擬画像を生成する第1模擬画像生成モードと、サンプリングされた複数の座標情報に基づいて基本形状を変形することにより模擬画像を形成する第2模擬画生成モードと、を有している。それらの中から選択されたモードに従って、模擬画像径性部32が模擬画像を形成する。模擬画像形成部32が有する各構成について以下に詳述する。
補間処理部34は、第1模擬画像形成モードにおいて機能するモジュールであり、それは、座標情報記憶部18から読み出した複数の座標情報に対して補間処理を行い、座標間の補間座標情報を生成する。補間座標情報とは、例えば座標を結ぶ線或いは面を示す式である。補間処理としては、座標情報群に基づいて補間多項式を生成して補間する多項式補間や、座標間を線形に結ぶ線形補間等が用いられる。三次元模擬画像を形成する場合における線形補間は、例えば、x軸、y軸、z軸の3軸のうち所定の1軸方向に沿って線形補間を行った後に、さらに他の1軸方向に沿って線形補間を行う。補間処理部34による処理の詳細は、図を用いて後述する。
補正部36は、第2模擬画像形成モードにおいて機能するモジュールであり、それは、座標情報記憶部18からの座標情報に基づいて、後述の基本形状記憶部44から読み出した基本形状を補正して、模擬形状を示す模擬形状情報を生成する。補正部36による基本形状の補正の詳細についても、図を用いて後述する。
レンダリング処理部38は、補間処理部34が生成した補間座標情報又は補正部36が生成した模擬形状情報に基づいて、レンダリング処理を実行して模擬画像を形成する。レンダリング処理の手法としては各種の方法を用いることができる。例えば、被検体の表面を表す部分のみにテクスチャをマッピングするサーフェスレンダリング法が用いられる。その他にも、レイトレーシング法やラジオシティ法等を用いてもよい。
被検体特徴取得部40は、被検体表面の形態に関する特徴を示す特徴情報を取得する。特徴情報とは、例えば被検体の乳房が摘出されたことを示す情報であるが、これに限られない。被検体特徴取得部40は、操作パネル50により操作者に入力される特徴情報を取得してもよい。或いは、超音波診断のための種々の設定が記憶されたプリセットが用意されている場合には、操作者により選択されたプリセットが有する情報から特徴情報を取得するようにしてもよい。
プローブマーク生成部42は、模擬画像上に表示され、プローブ10の位置を示すプローブマークを形成する。プローブマーク生成部42は、座標情報演算部16或いは座標情報記憶部18からプローブ10の位置を示す座標情報を取得し、座標情報に基づいて模擬画像上にプローブマークを形成する。生成されるプローブマークは二次元の模擬画像上に表示される二次元のマークであってもよいし、三次元の模擬画像上に表示される三次元のマークであってもよい。
基本形状記憶部44には、第2模擬画像形成モードにおいて利用可能な情報として、模擬画像の基礎をなす基本形状が記憶されている。複数の基本形状が記憶されていてよく、例えば、被検体の部位毎、性別毎に基本形状が用意されていてもよい。なお、基本形状は被検体表面の平均的な形態を示すものであることが好ましい。例えば、乳房の基本形状である場合は、基本形状の乳房の大きさを平均的な大きさ、また鎖骨や腋窩ラインに対する位置を平均的な位置とすることが好ましい。これにより、補正部36による補正処理における補正量が少なくすることができ、処理速度を向上させることができる。
表示処理部46は、超音波画像形成部26、模擬画像形成部32、又はプローブマーク生成部42から出力される画像データに対して処理を行い処理後のデータを出力する。
表示部48は、表示処理部46からのデータを受け取り、超音波画像、模擬画像、及びプローブマーク等を表示する。ここで、表示部48は、主表示器及び補助表示器の2つの表示器からなるものであってもよい。すなわち、一方の表示器に超音波画像を表示させ、他方の表示器に模擬画像又はプローブマークを表示するようにしてもよい。
操作パネル50は、各種スイッチやボタン等を有しており、操作者が各種設定や入力を行うための手段である。操作パネル44は、被検体表面の形態を示す特徴情報入力する手段や、模擬画像形成ためのプローブ10の座標情報の取得の開始/停止ボタン等を含んでいる。操作パネル50は、タッチパネルであっても良く、表示部48と一体化されていてもよい。操作パネル50を利用して、上記2つの模擬画像形成モードの中から、実際に動作させるモードがユーザーにより選択される。更に他のモードが搭載されてもよい。
本実施形態においては、上記の機能全てが超音波診断装置に含まれているが、機能の一部をコンピュータ等の情報処理装置に含ませるようにしてもよい。例えば、超音波診断装置としては、プローブ10、加速度センサ12、ジャイロセンサ14、送信部20、受信部22、及び座標情報演算部16のみ有し、他の機能を情報処理装置に含ませてもよい。この場合は、上記他の機能に対応したプログラムにより、超音波診断装置から座標情報を受け取り、模擬画像の形成やプローブマークの形成等を情報処理装置が行う。
以下に、上述した第1模擬画像形成モード及び第2模擬画像形成モードについて説明する。最初に前者のモードについて説明する。図2は、被検体の乳房の形態を模した二次元の模擬画像を補間処理により形成する場合におけるプローブ10の座標情報の取得位置の例を示す図である。乳房の二次元の模擬画像を形成する場合は、例えば操作者は図2に黒点で示されるよう、被検体60の乳房の周囲における取得位置62a〜62e及び乳頭位置における取得位置62fにプローブ10を順次当接する。その過程で複数の取得位置62a〜62eへの当接時に複数の座標情報が取得される。図2には、左右それぞれの乳房の周囲について取得位置62a〜62eを含む8箇所の取得位置においてプローブ10の座標情報を取得しているが、取得位置の数は8箇所に限られず、これより多くても少なくてもよい。ただし、補間処理部34による補間処理により乳房を示す曲線が生成できる程度の数が必要である。なお、取得位置が多いほど実際の乳房により近い形態の模擬画像が形成できる。
また、プローブ10が被検体60の腋窩における取得位置64に当接されたときの座標情報も取得する。これにより、胴体に対する乳房の位置を特定する。図2に示す例においては、腋窩における取得位置64は左右1つずつとなっているが、左右それぞれの腋窩について複数の取得位置において座標情報を取得するのが好適である。乳房の位置の特定には、腋窩における取得位置64に代えて或いは加えて、鎖骨或いは首筋に沿ってプローブ10が当接移動されたときの座標情報を取得するようにしてもよい。
図3は、取得した座標情報に基づいて、補間処理により被検体の乳房の形態を模した二次元の模擬画像が形成される様子を示す図である。補間処理部34は、基準点72a〜72f及び74を含む、プローブ10が取得した座標情報に対応する基準点に基づいて模擬画像を形成する。なお、図2における取得位置62a〜62fは、図3(a)における基準点72a〜72fに対応し、図2における取得位置64は、図3(a)における基準点74に対応している。
具体的には、補間処理部34は、まず、図3(a)に示されるように基準点をプロットし、基準点72a〜72eを含む乳房の周囲に対応する基準点の間の補間処理を行う。補間処理としては、例えば、基準点72aと72bの間の曲線は、乳頭位置に対応する基準点72fを中心とした円弧状の曲線とする方法であってもよい。次に、乳頭位置に対応する基準点72fを中心とする円或いは楕円を生成する。さらに、腋窩に対応する基準点74に基づいて腋窩を示すラインを生成する。腋窩を示すラインに加え、鎖骨或いは首筋を示すラインを生成するのも好適である。そして、レンダリング処理部38は、補間処理部34が生成した模擬形状をレンダリング処理し、模擬画像を形成する。なお、乳房を示す曲線、乳頭位置を示す円或いは楕円、並びに腋窩、鎖骨、及び首筋等を示すラインの生成の順序は任意である。
図3(b)に補間処理部34及びレンダリング処理部38によって形成される模擬画像80の一例が示されている。曲線82は、補間処理部34による乳房の周囲に対応する基準点72a〜72eの間の補間処理により生成された曲線である。乳房を表す自然な形態となるように、乳房の上部(鎖骨側)は曲線をレンダリング処理しないのが好適である。或いは乳房の上部においては補間処理を行わないようにしてもよい。模擬画像80においても、乳房の上部、すなわち基準点72c〜72eの間には曲線を形成していない。また、乳頭位置を示す楕円84、腋窩ライン86及び鎖骨首筋ライン88も形成されている。腋窩ライン86や鎖骨首筋ライン88により、胴体に対する乳房の位置を示すことができる。なお、補間処理部34により乳房を示す模擬画像のみ生成し、腋窩ライン86及び鎖骨首筋ライン88に関しては、予め基本形状記憶部44に記憶された模擬画像を利用するようにしてもよい。
図4は、被検体の乳房の形態を模した三次元の模擬画像を形成する場合におけるプローブ10の座標情報の取得位置の例及び補間処理の例を示す図である。図4(a)は、被検体の乳房90の表面に沿ってプローブ10が動かされ、その過程においてプローブ10の座標情報が取得される様子を示す図である。図2同様、図4(a)において黒点で示される位置がプローブ10の座標情報が取得される取得位置92である。三次元の模擬画像を形成するにあたっては、プローブ10を被検体表面に当接させながら移動させたときの座標情報を所定の間隔をもって連続的に取得するのが好ましい。正確な模擬画像を形成するにはできるだけ多くの座標情報を取得すればよいことになるが、メモリの容量との関係上、例えば数十ミリ秒或いは数秒毎にプローブ10の座標情報を取得するのが好ましい。
図4(a)におけるx軸、y軸、z軸は、座標情報演算部16における座標系であり、例えばx軸は体軸に対して平行であり、z軸は体表面に対して垂直であり、y軸はx軸及びz軸に垂直な方向に設定される。
図4(b)及び(c)は、取得された座標情報間の補間処理の様子を示す図である。補間処理部34は、まず座標情報演算部16における座標系の1軸に平行な方向に沿って線形処理を行う。図4(b)が示す例においては、y軸に平行な方向に線形補間を行っており、当該線形補間により、座標情報間をy軸方向に結ぶ曲線94が生成される。曲線94は、取得位置92に対応する基準点102を通過するのが好ましいが、基準点102の近傍を通過するよう生成されてもよい。次に、図4(c)が示すよう、x軸に平行な方向に線形補間を行う。当該線形補間により、座標情報間をx軸方向に結ぶ曲線96が生成される。曲線96も、基準点102を通過するのが好ましいが、基準点102の近傍を通過するように生成されていてよい。さらに、生成された曲線94及び96の間を補完する処理を行ってもよい。このように線形補間を行った後にレンダリング処理部38によるレンダリング処理により、被検体表面のテクスチャがマッピングされ三次元の模擬画像100が形成される。
図5は、第2模擬画像形成モードが選択されて、被検体の乳房の形態を模した二次元の模擬画像を基本形状の補正により形成する場合におけるプローブ10の座標情報の取得位置の例を示す図である。この場合においては、例えば操作者は図5に黒点で示されるよう、被検体の乳房の周囲4点及び乳頭位置においてプローブ10を当接させ座標情報を取得する。また、図2に示した例と同様に、プローブ10が被検体の腋窩に当接されたときの座標情報も取得する。また、鎖骨の中央部や首筋の所定の位置にプローブ10が当接されたときの座標情報を取得するようにしてもよい。
図6は、取得した座標情報に基づいて、基本形状の補正により被検体の乳房の形態を模した二次元の模擬画像が形成される様子を示す図である。図6(a)は、乳房を示す模擬画像の基本形状の一例である。当該基本形状は、基本形状記憶部44に記憶されている。基本形状120は、乳房を示す曲線122、乳頭位置を示す楕円124、腋窩ライン126、及び鎖骨首筋ライン128を含んで構成されている。
図6(b)は、取得された座標情報に基づいて、基本形状120が補正される様子を示す図である。補正部36は、まず、図6(b)に示されるように、取得した座標情報に対応する基準点132a〜132e及び134aをプロットする。なお、基準点132a〜132eは図5に示す取得位置112a〜112eに、基準点134aは取得位置114にそれぞれ対応している。次に、基準点132a〜132dに基づいて、基本形状の曲線122の補正を行う。補正の処理としては、例えば、曲線122が基準点132a、c、及びdを通過するよう、或いは近似曲線となるよう、曲線122を平行移動又は拡大・縮小させる処理を行う。或いは、基準点132a〜132dに基づいて、曲線122の曲率を変更するようにしてもよい。また、補正部36は、乳頭位置に対応する基準点132eに基づいて、基本形状の楕円124を移動させる。具体的には、楕円124の中心が基準点132eの位置となるよう楕円124を平行移動させる。
さらに、基準点134aに基づいて、基本形状の腋窩ライン126を平行移動させる。本例においても、左右の腋窩それぞれにおいて複数の座標情報を取得しておき、当該座標情報に対応する複数の基準点に基づいて、基本形状の腋窩ライン126を変形させるようにしてもよい。また、例えば鎖骨や首筋におけるプローブ10の座標情報を取得した場合は、当該座標情報に対応する基準点に基づいて、鎖骨首筋ライン128を平行移動或いは変形させてもよい。
以上のような補正を行った後、レンダリング処理部38によりレンダリング処理が行われ、図6(c)に示すような模擬画像140が形成される。模擬画像140は、乳房を示す補正された曲線142、乳頭を示す補正された楕円144、及び補正された腋窩ライン146を含んでいる。
図7は、取得した座標情報に基づいて、基本形状の補正により被検体の乳房の形態を模した二次元の模擬画像が形成される他の例を示す図である。図7が示す例においても、同じ基本形状120に基づく補正処理が行われ、処理の内容は図6を用いて説明した処理と同様である。図7は、図5に示す被検体110よりも乳房が大きい被検体の乳房を模した模擬形状を形成する例を示している。
図6(b)と図7(b)を比較して分かるように、乳房の大きい被検体における座標の取得位置に対応する基準点132f〜132iは、図6(b)に示す基準点132a〜132dよりも広範囲に分布するようプロットされる。したがって、乳房を表す曲線152は、図6(c)に示す曲線142よりも大きな乳房を表すよう補正される。
図6(c)及び図7(c)が示すよう、同じ基本形状120に基づく模擬形状であっても、補正部36がプローブ10の座標情報に基づいて補正を行うことで、それぞれ異なった模擬画像であって、それぞれの被検体の表面形状に適合した模擬画像を形成することができる。
図8は、取得した座標情報に基づいて、基本形状の補正により被検体の乳房の形態を模した三次元の模擬画像が形成される様子を示す図である。基本形状の補正により三次元の模擬画像を形成する場合における処理も、基本形状の補正により二次元の模擬画像を形成する場合における処理と同様である。
図8(a)は、乳房を示す模擬画像の三次元基本形状の一例である。当該三次元基本形状160は、基本形状記憶部44に記憶されている。乳房の基本形状160は、半球状面162を含んでいる。図8(b)は、取得された座標情報に基づいて、三次元基本形状160が補正される様子を示す図である。補正部36は、まず、図8(b)に示されるように、取得した座標情報に対応する基準点170a〜170eをプロットする。なお、基準点170a〜170eは図5に示す取得位置112a〜112eに対応している。次に、基準点170a〜170dに基づいて、基本形状の補正を行う。補正の処理としては、例えば、半球状面162が基準点170a〜170eを含むよう、或いは基準点170a〜170e近傍となるよう、半球状面162を平行移動、或いは縮小・拡大させる処理を行う。また、図5に示す例よりも多くの取得位置においてプローブ10の座標情報を取得し、これらに対応する基準点に基づいて、半球状面162の形状を補正するようにしてもよい。以上のような補正を行った後、レンダリング処理部38によりレンダリング処理が行われ、図8(c)に示すような模擬画像180が形成される。
図9は、左乳房が摘出された被検体の乳房の形態を模した二次元の模擬画像を形成する場合におけるプローブ10の座標情報の取得位置の例を示す図である。特に、二次元の模擬画像を形成しようとする場合、摘出された乳房を模した模擬画像を形成することが難しい場合がある。そもそも被検体において乳房の周囲がどこであるのかを特定することが難しいため、乳房の周囲においてプローブ10の座標情報を取得することが難しい上、模擬画像上において摘出された乳房をどのように表現するかという問題もある。また、摘出されているからといって模擬画像上に何も表示しないのでは、プローブ10が被検体のどのあたりの位置をスキャンしているのかという情報がうまく表現できなくなってしまう。
そこで、本実施形態では、被検体特徴取得部40が被検体の乳房が摘出されたことを示す摘出情報を取得した場合は、まず、摘出されていない乳房について、当該乳房を模した模擬形状を生成する。次に、当該生成した模擬形状に基づいて、摘出された側の乳房について、乳房が摘出されていることを示しつつ当該乳房の摘出前の形態を示すよう模擬形状を生成する。
図9に示すよう、左乳房が摘出された被検体190において、摘出されていない右乳房について、図5に示す例と同様に、乳房の周囲4点及び乳頭位置におけるプローブ10の座標情報を取得する。また、被検体190の両腋窩に当接されたときのプローブ10の座標情報も取得する。鎖骨及び首筋にプローブ10が当接されたときの座標情報を取得してもよい。
図10は、左乳房が摘出された被検体を示す二次元の模擬画像が形成される様子を示す図である。図10(a)に示すように、図6及び図7を用いて説明した例と同様、図9に示されるプローブ10の座標情報の取得位置202に対応する基準点212に基づいて、補正部36が基本形状を補正することで右乳房を模した模擬形状を生成する。また、取得位置204に対応する基準点214に基づいて、補正部36が基本形状を補正することで腋窩を模した腋窩ラインや鎖骨首筋ラインを生成する。なお、右乳房、腋窩ライン及び鎖骨首筋ラインは、補正部36による補正により生成ではなく、図2及び図3を用いて説明した例と同様に、補間処理部34が基準点212間を補間処理することで生成するようにしてもよい。
次に、操作者により左乳房が摘出されていることを示す摘出情報が操作パネル50により入力される等して、被検体特徴取得部40が当該摘出情報を取得すると、補正部36は、生成した右乳房を模した模擬形状を、左右反転させた上で左乳房の位置にコピーする。コピー先となる左乳房の位置は、生成した腋窩ライン等に基づいて決定すればよい。摘出された左乳房を表す模擬形状は、摘出されていない右乳房を表す模擬形状と表示形態が異なるように生成される。例えば、図10(b)に示すように、レンダリング処理部38によりレンダリング処理が行われた際に、左乳房を表す曲線及び楕円が点線で表示されるよう生成する。これにより、右乳房を模した模擬画像216と摘出前の左乳房を模した模擬画像218との表示形態が異なることになる。
なお、三次元模擬画像を形成する場合は、乳房が摘出された被検体に関しても、図4を用いて説明した処理と同様の処理において模擬画像を形成してよい。三次元模擬画像においては、乳房の高さも表現できるため、たとえ乳房が摘出されていても通常の模擬画像形成と同様の処理によって被検体の特徴を表した模擬画像を形成することができる。
以下、本実施形態に係る超音波診断装置の処理の流れを説明する。図11は、取得した座標情報に基づいて、補間処理により被検体表面の形態を模した模擬画像が形成される処理の流れを示すフローチャートである。図1を参照しながら、図11のフローチャートについて説明する。
ステップS10において、キャリブレーション実行部30は、上述のキャリブレーションを実行する。本実施形態においては、被検体の乳頭位置において体軸及び体表面に対して垂直にプローブ10を被検体表面に当接させ、そのときのプローブ10についての座標情報を原点とする。
ステップS12において、操作者は、プローブ10を被検体表面に沿って移動させる。そして、加速度センサ12及びジャイロセンサ14は、プローブ10の位置及び姿勢を示す座標情報を取得し出力する。上述のように、超音波診断の前に、被検体表面にはエコーゼリーが塗布される。そこで、エコーゼリーを被検体表面にプローブ10により引き延ばしながら、プローブ10の座標情報を取得するのが好適である。ステップS12が、被検体表面へのプローブ10の当接を利用した表面形態サンプリング過程となる。加速度センサ12及びジャイロセンサ14は、プローブ10が移動させられている間、数ミリ秒或いは数秒毎に座標情報を出力するようにしてもよいが、操作者から指示があったタイミングでのみ座標情報を出力するようにしてもよい。
ステップS14において、補間処理部34はステップS12で取得した座標情報に対して補間処理を行い、補間座標情報を生成する。補間処理の内容は上述の通りであり、補間座標情報とは、例えば座標を結ぶ線或いは面を示す補間多項式である。
ステップS16において、レンダリング処理部38は、ステップS14において生成された補間座標情報に基づいてレンダリング処理を行う。レンダリング処理により、模擬画像を構成する線或いは面が形成される。
ステップS18において、表示処理部46はレンダリング処理部38が形成した模擬画像を表示部48に表示させる。
次に、基本形状を補正して模擬画像を形成する処理を説明する。図12は、取得した座標情報に基づいて、基本形状の補正により被検体の乳房の形態を模した模擬画像が形成される処理の流れを示すフローチャートである。図1を参照しながら、図12のフローチャートについて説明する。
ステップS30において、キャリブレーション実行部30は、被検体の乳頭位置においてプローブ10の座標情報についてキャリブレーションを行う。
ステップS32において、操作者は、プローブ10を被検体表面に沿って移動させ、加速度センサ12及びジャイロセンサ14は、プローブ10の位置及び姿勢を示す座標情報を取得し出力する。基本形状を補正して模擬画像を形成する場合は、補間処理を行うことにより模擬画像を形成する場合に比べ、取得する座標情報の数は少なくてよい。
ステップS34において、補正部36は、ステップS32で取得した座標情報に基づいて、基本形状を補正することで模擬形状を生成する。基本形状の補正の具体的処理内容は上述の通りである。
ステップS36において、レンダリング処理部38は、ステップS34において生成された模擬形状に基づいてレンダリング処理を行う。レンダリング処理により、模擬画像を構成する線或いは面が形成される。
ステップS38において、表示処理部46はレンダリング処理部38が形成した模擬画像を表示部48に表示させる。
図13は、表示部48に超音波画像230、模擬画像80、及びプローブマーク232が表示される様子を示す図である。表示部48には、形成された模擬画像80と共に、プローブ10が取得した画像データをもとに図1に示す超音波画像形成部26が形成した超音波画像230が表示される。さらに、模擬画像80上には、例えば現時点におけるプローブの位置を示すプローブマーク232が表示される。プローブマーク232は、図1に示すプローブマーク生成部42により形成される。本実施形態においては、プローブマーク232の表示位置は、加速度センサ12及びジャイロセンサ14からの出力に基づいて決定されるが、プローブマーク232の表示位置を加速度センサ12の出力のみに基づいて決定されるようにしてもよい。
図14は、表示部48にプローブマーク232を表示させる処理の流れを示すフローチャートである。図1及び図13を参照しながら、図14のフローチャートについて説明する。なお、図14のフローチャートにおいて、検査開始の時点で模擬画像及び超音波画像は既に形成され、表示部48に表示されているものとする。また、プローブ10の座標情報についてのキャリブレーションも既に行われているものとする。
ステップS50において、プローブマーク生成部42は、加速度センサ12及びジャイロセンサ14が出力し座標情報演算部16により処理された、プローブ10の位置及び姿勢を示す座標情報を取得する。
ステップS52において、プローブマーク生成部42は、ステップS50で取得した座標情報に基づいて、模擬画像80上にプローブマーク232を生成する。プローブマーク232としては、図13に示すようにプローブ10の被検体と当接する部分(超音波の送受波面)を線分で示すものであってもよいし、プローブ10を模した模擬画像を基本形状記憶部44等に記憶しておき、それを読み出すことで生成するようにしてもよい。なお、図13に示されるプローブマーク232は、プローブ10の送受波面の所定の端部を示す1番ピンマーク234を含んでいる。
ステップS54において、表示処理部46は、ステップS52でプローブマーク生成部42が生成したプローブマーク232を表示部48に表示する。
ステップS56において、制御部28は、検査が終了されたか否かを判断する。検査の終了は、操作者の指示(例えば操作パネル50に含まれる検査終了ボタンの押下)に基づいて判断し、操作者から検査を終える旨の指示があるまでは検査が継続されていると判断する。検査が継続していると判断された場合は、再度ステップS50に戻る。検査が終了したと判断された場合は処理を終了する。
上述の通り、図11又は図12のフローチャートが示す処理により形成される模擬画像は、被検体表面へプローブ10を当接させたときに得られたプローブ10についての座標情報に基づいて形成されるため、被検体の表面形態を的確に模したものとなる。そして、図14のフローチャート示す処理により、当該模擬形状上にプローブ10についての座標情報に基づいてプローブマーク232を生成することで、プローブ10が実際の被検体への当接位置を的確に表すプローブマーク232を生成することができる。