JP2015112423A - てんかん性発作兆候検知装置、てんかん性発作兆候検知モデル生成装置、てんかん性発作兆候検知方法、てんかん性発作兆候検知モデル生成方法、てんかん性発作兆候検知プログラムおよびてんかん性発作兆候検知モデル生成プログラム - Google Patents
てんかん性発作兆候検知装置、てんかん性発作兆候検知モデル生成装置、てんかん性発作兆候検知方法、てんかん性発作兆候検知モデル生成方法、てんかん性発作兆候検知プログラムおよびてんかん性発作兆候検知モデル生成プログラム Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】情報処理装置14は、演算処理部を備える。被検者Pの心電信号から生成されたRRIデータを取得し、心拍に関する複数種類のHRV指標それぞれについてのHRV指標値を示す複数のHRV指標データを生成する。演算処理部は、複数種類のHRV指標それぞれについてのHRV指標値からT2統計量およびQ統計量を算出する所定の発作兆候検知モデルを用いて、複数のHRV指標データから算出されるT2統計量およびQ統計量に基づいて、てんかん性発作の兆候の有無を識別する。発作兆候検知モデルは、発作間欠期における心電信号から生成されたRRIデータに基づいて生成された、心拍に関する複数種類のHRV指標それぞれについてのHRV指標値を示す複数のHRV指標データについて主成分分析を行うことにより生成されたものである。
【選択図】図1
Description
また、被検者の心拍データ計測中にてんかん性発作が起きる頻度は少なく、てんかん性発作を予測する心拍パターン(てんかん性発作の兆候を示す心拍パターン)を取得することは困難であるという実態がある。
これに対して、本構成によれば、発作兆候検知モデルが、発作間欠期(てんかん性発作が起きていない状態)における第2指標データについて主成分分析を行うことにより生成される。つまり、発作兆候検知モデルの生成に際して、てんかん性発作の兆候が現れている状態における第2指標データは不要なので、その分、発作兆候検知モデルを比較的容易に生成できる。そして、発作兆候検知モデルを比較的容易に生成できることにより、てんかん性発作の兆候の検知を容易に行うことができる。
本構成によれば、複数のてんかん性発作患者について得られた第2指標データを用いることにより、発作兆候検知モデルの汎用性が高まる。
本構成によれば、時間窓に含まれるサンプルデータの大きさを反映した値を用いて正規化することにより、第1指標データにおける被検者間での個人差を低減することができる。また、第1指標データとして、時間窓に含まれるRRIデータに関する統計的な指標値から構成されるデータを採用することができる。
本構成によれば、サンプルデータとして時間的に等間隔に並んだデータを得ることができるので、時間窓を用いた第1指標データの生成が可能となる。
本構成によれば、識別器は、第1指標データの経時変化が考慮された管理値を算出することができるので、てんかん性発作の兆候が生じた場合に特有の第1指標データの経時変化を捉えることができる。従って、てんかん性発作の兆候を精度良く識別することが可能となる。
本構成によれば、心拍の変動を的確に把握することができる。
本構成によれば、時間窓に含まれるRRIデータのゆらぎ成分を捉えることが可能となる。これにより、自律神経系によって制御されている心拍数変動に特有のゆらぎ成分を指標とすることができるので、自律神経系に関連するてんかん性発作の兆候の検知精度向上を図ることができる。
ところで、呼吸周波数と同じ周波数である、0.15Hz〜0.4Hzの成分は、略副交感神経系の活動性のみを反映している。このことから、本構成によれば、てんかん性発作の兆候が現れることに伴う副交感神経系の活動性の変動を捉えることができるので、その分、てんかん性発作の兆候の検知精度向上を図ることができる。
ところで、約10秒の周期をもつ0.04〜0.15Hzの成分は、交感神経系と副交感神経系の両方の活動性を反映している。このことから、本構成によれば、てんかん性発作の兆候が現れることに伴う交換神経系と副交感神経系の両方の活動性の変動を捉えることができるので、その分、てんかん性発作の兆候の検知精度向上を図ることができる。
本構成によれば、識別器が、T2統計量およびQ統計量それぞれに対する管理領域を設定し、T2統計量およびQ統計量それぞれを独立して監視する。これにより、例えばT2統計量のみで指標データの変動を監視する構成とは異なり、てんかん性発作の兆候が現れたことに伴う、指標データ間の相関関係の変化を検知することができる。従って、てんかん性発作の兆候の検知精度向上を図ることができる。
本構成によれば、発作兆候検知モデルから出力される管理値が二値化されているので、識別器における、てんかん性発作の兆候の有無を識別する識別処理の簡素化を図ることができる。
これに対して、本構成によれば、発作兆候検知モデルが、発作間欠期における第2指標データについて主成分分析を行うことにより生成される。つまり、発作兆候検知モデルの生成に際して、てんかん性発作の兆候が現れている状態における第2指標データは不要なので、その分、発作兆候検知モデルを比較的容易に生成できる。そして、発作兆候検知モデルを比較的容易に生成できることにより、てんかん性発作の兆候の検知を容易に行うことができる。
<1>構成
図1は、本実施形態に係るてんかん発作兆候検知システムの概略構成図である。
R波検出器12は、被検者Pについて計測した心電信号からR波を抽出し、抽出したR波を示す信号を無線送信する。また、R波検出器12には、被検者Pの体表に取り付けられる複数(図1では3つ)の電極16が接続されている。ここで、3つの電極16は、例えばプラス電極と、マイナス電極と、接地電極とから構成される。このR波検出器12は、例えば、特開2011−255051号公報に記載されているR波検出器と同じ構成とすることができる。
情報処理装置14は、R波検出器12から送信されるR波を示す信号に基づいて、R波間隔(以下、「RRI(R−R Interval)」と称する。)を示すRRIデータを取得することができる。
情報処理装置14は、通信部141と、RRI算出部142と、演算処理部143と、報知部144と、ユーザが情報処理装置14の電源投入または電源オフの操作を行うための操作部(図示せず)と、を備える。
通信部141は、例えば、R波検出器12から送信されたR波を示す無線信号を受信し、受信した無線信号からR波を示すデータを生成してRRI算出部142へ入力する。ここで、R波を示すデータとしては、例えば、R波を示す信号の振幅が所定の閾値電圧以上か否かに応じて値が「0」または「1」をとるデジタルデータ(以下、「R波データ」と称する。)が挙げられる。この場合、通信部141は、例えば、受信器からノイズフィルタを通じて取得した信号の振幅と所定の閾値電圧との比較結果に応じて出力が変動するコンパレータを備える構成とすることができる。
図3(a)は、心電信号の一例を示し、図3(b)は、図3(a)に示す心電信号に対応するR波データを示す。図3に示すように、R波データは、心電信号におけるR波に対応する期間(信号強度Iが所定の強度閾値Ithを超える期間)が「1」に設定され、それ以外の期間が「0」に設定された矩形パルス列を表すデータである。そして、RRI算出部142は、例えばこのR波データから、時間的に隣り合う2つの矩形パルスの立下り時刻の時間間隔をRRI変数として算出し、算出した当該RRI変数を時系列に並べることにより、RRIデータを生成する。
図4(a)および(b)に示すように、RRIデータは、被検者Pにストレスが加わっていない場合、700ms〜950msの範囲内で周期的に変化している。これに対し、被検者Pにストレスが加わっている場合、比較的高い値(800ms〜1000ms)で推移する。このように、被検者Pにてんかん性発作の兆候がなく、被検者Pが通常に行動している場合であっても、RRIデータの時間プロファイルは大きく変わり得る。
また、RRI算出部142は、算出したRRIデータを演算処理部143へ入力する。
そして、演算処理部143は、てんかん性発作の兆候が有ると判定すると、報知部144を駆動させるための駆動信号を報知部144へ入力する。なお、この演算処理部143の動作の詳細は後述する。
次に、本実施形態に係る演算処理部143の動作について説明する。
本実施形態に係る演算処理部143は、多変量統計的プロセス管理(MSPC: Multivariate Statistic Process Control)を利用した識別器として機能する。ここでは、てんかん性発作の兆候の検知に必要なモデルを構築するモデル構築動作と、構築したモデルを用いて発作の兆候を検知する発作兆候検知動作とに分けて説明する。
初めに、演算処理部143が発作兆候検知モデルを生成するてんかん性発作兆候検知モデル生成装置の機能を実現する場合の動作(モデル構築動作)について説明する。ここにおいて、演算処理部143では、CPUがプログラム記憶部に記憶されたてんかん性発作兆候検知モデル生成プログラムを実行する。
ここでは、演算処理部143が、複数のてんかん性発作患者のてんかん性発作の発作間欠期(てんかん性発作が起きていない状態)におけるRRIデータを用いてモデル構築動作を行う。ここにおいて、てんかん性発作患者はN人存在するとし、各人に番号n(n=1,2,・・・,N)が付与されているものとする。
図5は、本実施形態に係る演算処理部143のモデル構築動作を示すフローチャートである。
まず、演算処理部143は、てんかん性発作患者それぞれに付与された番号nを「1」に設定する(ステップS11)。
RRI平均値は、時間窓内(例えば、時刻t−180sec〜時刻t)におけるRRI値の平均値である。
RRI標準偏差は、時間窓内に含まれるRRIデータの標準偏差である。
RMSSDは、時間窓内に含まれるRRIデータについて、時間的に隣り合う2つのRRIデータの差分値の二乗平均の平方根である。
トータルパワーは、時間窓内に含まれるRRIデータの2乗和である。
NN50は、時間窓内に含まれるRRIデータについて、時間的に隣り合う2つのRRIデータのペアのうち、その差分が50msecを超えるペアの数である。
pNN50は、NN50を、時間窓内におけるRRIデータの総数で除して得られる値である。
HRV三角指標は、時間窓内に含まれるRRIデータについて、1/128sec間隔でヒストグラムを作成し、その後、各RRIデータを、当該RRIデータに対応するヒストグラムの高さで除することにより生成される。
この周波数領域のHRV指標データの算出において、まず、演算処理部143が、時間窓(時刻t(第1時刻)と時刻t−180sec(第3時刻)との間)に含まれるRRIデータに対応するパワースペクトルを算出する。
そして、演算処理部143は、パワースペクトルにおける0.15Hz〜0.4Hz(第1周波数帯域)および0.04〜0.15Hz(第2周波数帯域)それぞれの積分値(第1積分値、第2積分値)を、HF、LF(HRV指標データ)として生成する。
また、LF/HF比率は、LFをHFで除して得られる値である。
図6(b)に示すように、健常者にストレスが加わっていない場合、0.04〜0.15Hzの帯域のパワー(LF)と、0.15〜0.4Hzの帯域のパワー(HF)との比率は、1.4程度である。
これに対し、図6(a)に示すように、健常者にストレスが加わっている場合、パワースペクトルは0.04〜0.15Hzの帯域にピークが発生し、LFとHFとの比率は13まで増加する。このように、健常者が通常に行動している場合であっても、パワースペクトルの形状は大きく変わり得る。
図8(a)および(b)は、それぞれてんかん性発作患者C1、D1について、てんかん性発作が起きていない状態における各HRV指標データの時間プロファイルを示す図である。
図7(a)および(b)に示すように、各てんかん性発作患者A1、B1のてんかん性発作起始周辺では、各HRV指標データの時間プロファイルが変化しているものの、図8(a)および(b)に示すように、各てんかん性発作患者C1、D1にてんかん性発作が起きていない発作間欠期であっても、各HRV指標データの時間プロファイルが変化している。このように、各HRV指標データの時間プロファイルは、発作間欠期であっても、例えば食事や運動等の他の要因により変化し得る。
ステップS14において、てんかん性発作患者に付与された番号nがてんかん性発作患者の総数N未満であれば(ステップS14:Yes)、演算処理部143は、番号nを「1」だけインクリメントして(ステップS15)、再びステップS12の処理を行う。
次に、HRV指標データ生成処理について詳細に説明する。
図9は、本実施形態に係る演算処理部143のRRIデータ生成処理における動作を示すフローチャートである。ここにおいて、演算処理部143は、時間窓の長さをWに設定しているとする。また、RRIデータのデータ総数は、L(Lは正の整数)であるとする。
続いて、演算処理部143は、切り出したRRIデータから前述の複数種類のHRV指標データそれぞれを生成する(ステップS103)。
その後、演算処理部143は、生成した複数種類のHRV指標データそれぞれについて、時間窓毎に、トータルパワーで正規化する処理を行う(ステップS104)。
続いて、演算処理部143は、データ番号lがデータ総数L未満か否かを判定する(ステップS106)。
ステップS106において、データ番号lがデータ総数L未満であると判定されると(ステップS106:Yes)、演算処理部143は、再びステップS102の処理を行う。
一方、ステップS106において、データ番号lがデータ総数L以上であると判定されると、演算処理部143は、HRVデータ生成処理を終了する。
演算処理部143は、前述のステップS101〜S106の一連の処理を行うことにより、RRIデータに対する時間窓を時間Δtずつ移動させながら各HRV指標データを生成していく。例えば、演算処理部143は、20分間のRRIデータに対して、時間窓の長さWを3分(180sec)、時間Δtを1secに設定した場合、時間窓を1secずつ移動させながら(図10中の矢印参照)、各時刻におけるHRV指標データを生成していく。例えば、時刻tにおける各HRV指標変数は、時刻t−180secから時刻tまでの間のRRIデータから算出される。このようにして、演算処理部143は、複数種類のHRV指標データを生成する。
次に、前述のモデル生成処理(ステップS18)の内容について詳細に説明する。ここでは、主成分分析処理により主成分得点および予測誤差を算出する処理と、算出された主成分得点および予測誤差からT2統計量およびQ統計量を求める処理とに分けて説明する。
主成分分析処理では、複数の変数(例えばHRV指標変数)から主成分と呼ばれる新たな合成変数を生成する。
ここで、HRV指標変数が2つであり、主成分が2つの場合について説明する。
図11(a)は、2つのHRV指標変数(変数1、変数2)と2つの主成分(第1主成分、第2主成分)との関係を示す図であり、図11(b)は、2つのHRV指標変数および2つの主成分とT2統計量との関係を説明するための図であり、図11(c)は、第1主成分と第2主成分と予測誤差との関係を示す図である。
ここにおいて、HRV指標変数としては、前述の10種類のHRV指標変数から2つを選択すればよい。例えばRRI平均値とLFとを選択することができる。
HRV指標データを表すデータ行列をX∈RN×Pとする。ここで、PはHRV指標データの種類の数を表し、Nは各HRV指標データに含まれるデータ数を示す。図11に示すように、HRV指標データが2種類の場合、P=2となる。なお、各HRV指標データは、平均0に中心化されており、さらに正規化をしてもよい。ここで、「正規化」とは、例えば、前述のようにHRV指標データをトータルパワーで正規化することである。
ここで、上記データ行列Xの特異値分解を下記式(1)で表すとする。
ここで、UとVとは直交行列であり、対角行列Sの対角要素には,特異値srが降順に並んでいる。採用する主成分の数をRとすると,第r主成分は、負荷量行列VRの第r列vrで与えられる。この第r列vrは、P次元のベクトルで表される。図11に示すように、変数が2つの場合、第r列vrは、2次元のベクトルとなる。
ここで、urは、行列URの第r列を表している。従って、R個の主成分それぞれに対応する主成分得点をまとめて表現すると、下記式(3)で表される。
前述では、HRV指標データが2種類で、主成分数が2つの場合について例を挙げて説明したが、HRV指標データが3種類以上の場合も同様である。
次に、前述の主成分分析処理により得られる主成分得点および予測誤差からT2統計量およびQ統計量を算出する処理について説明する。
T2統計量は、主成分分析により得られる主成分得点から下記式(6)の関係式を用いて算出される。
ここで、σ(tr)は、第r主成分得点trの標準偏差であり、T2統計量は、R次元空間の原点からのマハラノビス距離に対応している。
例えば、3個のHRV指標変数から構成される3次元の空間を、2つの主成分で張られる2次元の空間に圧縮したとする。この場合、図11(c)に示すように、2つの主成分に直交する1つの成分(予測誤差成分)で張られる1次元の空間(直線)を求めることができる。ここにおいて、あるHRV指標データ(図11(c)中のPo1参照)は、第1、第2主成分得点がt1、t2、予測誤差がe1であるとすることができる。そして、この予測誤差の大きさを反映する統計量、即ち、HRV指標データのうち、主成分で張られる部分空間では表現できない部分を表す統計量が、Q統計量である。
Q統計量は、主成分分析により得られる主成分得点から下記式(7)の関係式を用いて算出される。
つまり、式(7)は、式(5)で表される予測誤差の2乗ノルムに相当する。
次に、演算処理部143が、てんかん性発作の兆候を検知するてんかん性発作兆候検知装置の機能を実現する場合の動作(てんかん性発作兆候検知動作)について説明する。ここにおいて、演算処理部143では、CPUがプログラム記憶部に記憶されたてんかん性発作検知プログラムを実行する。
図12は、本実施形態に係る演算処理部143のてんかん性発作検知動作を示すフローチャートである。
まず、演算処理部143は、RRIデータを取得する(ステップS21)。ここでは、演算処理部143が、<2−1>で説明したステップS11の処理と同様に、メモリに格納されたRRIデータを再構築する。ここにおいて、演算処理部143は、時間窓の長さをWに設定した場合、t[l]が長さW以上になるまで、RRIデータの取得を継続する。
ここでは、演算処理部143は、発作兆候検知モデルを用いて、時刻t、時刻t−Δt、時刻t−2ΔtにおけるHRV指標変数から構成される30個の変数から、T2統計量およびQ統計量を算出する。なお、発作兆候検知モデルは、上記式(6)および式(7)の関係式で表現できる。
図13は、第1主成分、第2主成分および予測誤差と、管理領域との関係を示す概念図である。
この場合、演算処理部143は、前述のモデル構築処理における管理限界を設定する処理(ステップS19の処理)において、図13に示すような、管理限界を示す楕円柱で囲まれた管理領域を設定することになる。
そして、演算処理部143は、T2統計量に基づいて、第1主成分得点および第2主成分得点のいずれか一方が管理領域から外れたことを検知する。例えば、演算処理部143は、T2統計量に基づいて、予測誤差の値は管理領域内に収まっているが第1主成分得点が管理領域から逸脱している状態を検知できる(図13中の点APo1参照)。
また、演算処理部143は、Q統計量に基づいて、予測誤差が管理領域から外れたことを検知する。例えば、演算処理部143は、Q統計量に基づいて、第1主成分得点および第2主成分得点は管理領域内に収まっているが予測誤差の値が管理領域から逸脱している状態を検知できる(図13中の点APo2参照)。
つまり、演算処理部143は、T2統計量に基づいて、主成分得点が管理領域内に存在するか否かを判定し、Q統計量に基づいて、予測誤差が管理領域内に存在するか否かを判定する。そして、演算処理部143は、主成分得点および予測誤差の少なくとも一方が管理領域を所定の判定期間以上外れ続けた場合に異常を検知したものと判定する。
一方、ステップS26において、終了操作がなされたと判定されると(ステップS26:Yes)、演算処理部143は、そのまま処理を終了する。
次に、本実施形態に係る演算処理部143における上記判定期間の長さの設定方法について説明する。
判定期間は、てんかん性発作起始前に生じる、T2、Q統計量が管理限界を超え続ける期間の長さに基づいて設定する。
図14(a)に示すように、てんかん性発作患者A2の場合、てんかん性発作起始約420sec前に、T2統計量が管理限界T2thを超え続ける期間I1が存在する。この期間I1は、約90secの長さである。また、発作起始約360sec前に、Q統計量が管理限界Qthを超え続ける期間I2が存在する。この期間I2の長さは、約50secである。
図14(b)に示すように、てんかん性発作患者B2の場合も、発作起始約100sec前に、T2統計量が管理限界T2thを超え続ける期間I3が存在する。この期間I3の長さは、約80secである。
一方、図15(a)および(b)に示すように、発作間欠期におけるてんかん性発作患者C2、D2の場合、管理限界T2th、Qthを超える期間はほとんど存在しない。なお、てんかん性発作の兆候が現れていない場合でも、T2統計量やQ統計量が、突発的に管理領域を外れることがある。しかし、T2統計量やQ統計量が、管理限界T2th、Qthを超える期間が存在しても高々10sec程度である。
データ測定中にてんかん性発作患者にてんかん性発作が起きる頻度は少なく、てんかん性発作患者にてんかん性発作の兆候が現れている状態におけるRRIデータを取得することは困難であるという実態がある。従って、このてんかん性発作の兆候が現れている状態におけるRRIデータからHRV指標データ(第2指標データ)を生成するのも当然困難となる。
本実施形態に係るてんかん発作兆候検知システムは、実施形態1に係る構成と同様である。但し、演算処理部143が行う処理内容が、実施形態1とは相違する。
演算処理部143は、「−1」(normaly値:第1値)または「1」(anormaly値:第2値)のいずれかを判定値(管理値)として出力する発作兆候検知モデルを用いて、てんかん性発作の兆候の有無を識別する。そして、演算処理部143は、発作兆候検知モデルから出力される判定値が「1」である場合、てんかん性発作の兆候が有ると識別する。
また、演算処理部143は、1クラスサポートベクターマシン(One−Class Support Vector Machine)を利用して特徴量管理領域を特定する。
演算処理部143は、実施形態1で説明したステップS11〜S17までの処理と同じ処理を行う。
演算処理部143は、各HRV指標データを正規化した後(ステップS17の後)、発作兆候検知モデルを生成するモデル生成処理を行う(ステップS218)。ここでは、演算処理部143は、時刻t、時刻t−Δt、時刻t−2Δtそれぞれにおける10種類のHRV指標変数から構成される計30個の変数を使って、主成分分析処理を行う。そして、演算処理部143は、主成分分析処理を行うことにより、てんかん性発作患者のHRV指標データから発作兆候検知モデルを生成する。この発作兆候検知モデルの詳細は後述する。なお、時間Δtは、例えば1secに設定される。また、発作兆候検知モデルの特徴量管理領域は、1クラスサポートベクターマシンを利用して特定される。
まず、演算処理部143が、実施形態1と同様な主成分分析処理を行い、各主成分に対応する主成分得点データを算出する。ここでは、演算処理部143が、複数(例えば5つ)の主成分それぞれの主成分得点データを算出する。その後、演算処理部143は、各主成分得点データを、所定の非線形写像Φを用いて特徴量空間上に写像する。そして、演算処理部143は、主成分得点データそれぞれに対応する特徴量空間上の座標(特徴量)に基づいて、原点からの距離が最大となるような超平面を特定する。ここにおいて、超平面は、特徴量空間において、モデル生成処理に用いるHRV指標データの多くがこの超平面を挟んで原点側とは反対側に存在するように配置されている。
そして、この超平面を挟んで原点側とは反対側に位置する非線形写像Φに対応する主成分得点データが存在する領域が、特徴量管理領域に相当する。
図17(b)に示すように、特徴量空間において、モデル生成処理に用いるデータは、超平面HPを挟んで原点側とは反対側に存在する。
そして、図17(a)に示す主成分得点を表す2次元空間における、図17(b)における超平面HPを挟んで原点側とは反対側の領域に対応する領域ARが、特徴量管理領域に相当する。
ここで、特徴量空間における各変数をΦ(xi)(i=1,2,・・・,N)とすると特徴量空間内に配置される平面は、下記式(8)で表される。
ここで、wは、各変数へのウェイトを示すウェイトベクトルである。また、Nは、例えば主成分得点データ(HRV指標データ)のデータ数に設定することができる。
そして、超平面は、特徴量空間内に配置される平面のうち、下記式(9)の関係式で表されるウェイトベクトルwを有するものとして特定される。
ここで、ξi(i=1,2,・・・,N)は、ウェイトベクトルwで表される平面の超平面からのずれの程度を表す非負のスラック変数である。また、vは、原点から平面までの距離を決める係数である。
ここで、αi、ξi(i=1,2,・・・,N)は、非負のラグランジュ乗数を表す。
そして、ラグランジュ関数L(w,ξ,ρ)の最適解において、下記式(11)で表される関係式が成立する。
そして、式(11)から、下記式(12)の関係式が導き出される。
ここで、K(xi,yj)は、Φ(xi)とΦ(xj)との内積(カーネル)を表す。
ここで、xは、判定対象となる主成分得点を表し、xsは、特徴量空間における超平面上の任意の点に対応する主成分得点である。また、sign(*)は、符号関数を表す。
発作兆候検知モデルF(x)は、特徴量空間において、主成分得点xに対応する特徴量Φ(x)が超平面を挟んで原点側よりも反対側にあれば、第1項が第2項に比べて小さくなるので、判定値として「−1」(normal値)を出力する。
一方、発作兆候検知モデルF(x)は、主成分得点xに対応する特徴量Φ(x)が超平面よりも原点側にあれば、第1項が第2項に比べて大きくなるので、判定値として「1」(anomaly値)を出力する。例えば、図17(a)および(b)に示すように、2つの主成分それぞれの主成分得点が、2つの主成分で表される二次元空間における点APの座標で表されるとする。この場合、点APは、非線形写像Φ(x)により、特徴量空間における超平面HPよりも原点側の点(図17(b)中の点AP)に写像されることになる。
図18は、本実施形態に係る演算処理部143の発作検知動作を示すフローチャートである。なお、実施形態1と同様の処理については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
演算処理部143は、実施形態1で説明したステップS21およびS22までの処理と同じ処理を行う。
一方、異常を検知しないと判定されると(ステップS224:No)、演算処理部143は、ステップS26以降の処理を行う。
図19(a)に示すように、てんかん性発作患者A2の場合、てんかん性発作起始約300sec前に、判定値が「1」(anormaly値)で継続する期間I21が存在する。この期間I21の長さは、約50secである。
また、図19(b)に示すように、てんかん性発作患者B2の場合も、てんかん性発作起始約90sec前に、判定値が「1」(anormaly値)で継続する期間I22が存在する。この期間I22の長さは、約80secである。
(1)実施形態1および2では、T2統計量およびQ統計量の少なくとも一方が管理限界を超えた状態、或いは判定値が「1」(anormaly値)の状態が所定の判定期間以上継続した場合にてんかん性発作の兆候が有ると識別する例について説明した。但し、演算処理部143は、上記状態が継続する期間の長さに基づいててんかん性発作の兆候有無の識別を行う構成に限定されるものではない。例えば、演算処理部143が、所定の期間内において上記状態を検知した回数に基づいて、てんかん性発作の兆候の有無を識別する構成であってもよい。
或いは、演算処理部143が、所定の期間内(例えば10min以内)に判定値が3回以上「1」(anormaly値)となった場合に、てんかん性発作の兆候有りと識別するようにしてもよい。
但し、HRV指標データの種類は、これらの線形なHRV指標データに限定されるものではなく、非線形なHRV指標データであってもよい。非線形なHRV指標データとしては、例えば、サンプルエントロピーやDFA(Detrended Fluctuation analysis)値、ローレンツプロット値等が挙げられる。
DFA値は、時間窓内に含まれるRRIデータのフラクタル相関特性の有無を示す変数である。
ローレンツプロット値は、時間窓内に含まれるRRIデータについて、横軸をk番目(kは正の整数)のRRIデータとし、縦軸をk+1番目のRRIデータとしてプロットして得られる相関図の特性を示す値である。
まず、演算処理部143が、MSPCを利用した識別器を構成することにより、発作の兆候の検知を行う場合について説明する。
この場合、判定期間は、実施形態1と同様に、てんかん性発作の起始前に生じる、T2、Q統計量が管理限界を超え続ける期間の長さに基づいて設定する。
なお、演算処理部143による発作兆候検知モデルを生成する際の主成分数は、3つに設定されている。
図21(a)に示すように、てんかん性発作患者A2の場合、てんかん性発作起始約350sec前に、T2統計量が管理限界T2thを超え続ける期間I31が存在する。この期間I31は、約20secの長さである。また、てんかん性発作起始約350sec前に、Q統計量が管理限界Qthを超え続ける期間I32が存在する。この期間I2の長さは、約20secである。
図21(b)に示すように、てんかん性発作患者B2の場合も、てんかん性発作起始約100sec前に、T2統計量が管理限界T2thを超え続ける期間I33が存在する。この期間I33の長さは、約10secである。
この場合、判定期間は、てんかん性発作の起始前に生じる、判定値が「1」(anormaly値)で継続する期間の長さに基づいて設定する。
図23(a)に示すように、てんかん性発作患者A2の場合、てんかん性発作起始約300sec前に、判定値が「1」(anormaly値)で継続する期間I41が存在する。この期間I41の長さは、約40secである。
また、図23(b)に示すように、てんかん性発作患者B2の場合も、てんかん性発作起始前約150sec前に、判定値が「1」(anormaly値)で継続する期間I42が存在する。この期間I42の長さは、約20secである。
具体的には、演算処理部143が、下記式(15)で求められる判定量Jに対して、管理限界を設けて異常を検知するようにしてもよい。
ここで、T2は、T2統計量を表し、QはQ統計量を表し、kは、所定の係数を表す。
例えば、複数(30個)のHRV指標データの分散を算出し、当該複数のHRV指標データの分散のうちの少なくとも1つよりも大きい分散を有する主成分について、主成分得点を算出するようにしてもよい。
14 情報処理装置
16 電極
141 通信部
142 算出部
143 演算処理部
144 報知部
Claims (16)
- 被検者の心電信号から生成されたサンプルデータを取得する取得部と、
前記サンプルデータに基づいて心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の第1指標データを生成する指標データ生成部と、
前記複数種類の指標それぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する所定の発作兆候検知モデルを用いて、前記複数の第1指標データから算出される前記管理値に基づいて、てんかん性発作の兆候の有無を識別する識別器と、を備え、
前記発作兆候検知モデルは、発作間欠期における心電信号から生成されたサンプルデータに基づいて生成された、心拍に関する前記複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の第2指標データについて主成分分析を行うことにより生成されたものである
てんかん性発作兆候検知装置。 - 前記発作兆候検知モデルは、複数のてんかん性発作患者について得られた前記複数の第2指標データについて主成分分析を行うことにより生成されたものである
請求項1記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記指標データ生成部は、所定幅の時間窓に含まれる前記サンプルデータに基づいて生成される複数種類の心拍に関する指標についての指標値を、前記時間窓に含まれる前記サンプルデータの大きさを反映した値を用いて正規化することにより、前記第1指標データを生成するよう構成されている
請求項1または請求項2記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記取得部は、心電信号から得られる時間的に等間隔に並んでいない経時データについて、補間処理を行うことにより、時間的に等間隔に並んだ前記サンプルデータを生成するよう構成されている
請求項3記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記識別器は、前記発作兆候検知モデルを用いて、第1時刻における第1指標データと、前記第1時刻よりも過去の第2時刻における第1指標データとから算出される前記管理値に基づいて、てんかん性発作の兆候の有無を識別するよう構成されている
請求項1または請求項2記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記サンプルデータは、被検者の心電信号から生成されたR波の間隔を示すRRIデータである
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記指標データ生成部は、
所定幅の時間窓に含まれる前記RRIデータに対応するパワースペクトルを算出し、算出した前記パワースペクトルにおける第1周波数帯域の値と、前記パワースペクトルにおける前記第1周波数帯域よりも低周波数側の第2周波数帯域の値とを前記第1指標データとして生成するよう構成されている
請求項6記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記第1周波数帯域は、0.15Hz〜0.4Hzである
請求項7記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記第2周波数帯域は、0.04Hz〜0.15Hzである
請求項7または請求項8記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記発作兆候検知モデルは、前記第1指標データが入力されると、前記第1指標データについて主成分分析を行うことにより算出される主成分得点および予測誤差からT2統計量およびQ統計量を前記管理値として算出し、
前記識別器は、前記T2統計量および前記Q統計量の少なくとも一方が前記管理領域を外れた場合、てんかん性発作の兆候が有ると識別する
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 前記発作兆候検知モデルは、前記第1指標データが入力されると、前記第1指標データについて主成分分析を行うことにより算出される主成分得点を、所定の非線形写像に基づいて特徴量に変換し、当該特徴量が所定の特徴量管理領域内である場合、前記管理値として第1値を出力し、前記特徴量が前記特徴量管理領域外である場合、前記管理値として第2値を出力し、
前記識別器は、前記管理値が前記第2値である場合、てんかん性発作の兆候が有ると識別するよう構成されている
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のてんかん性発作兆候検知装置。 - 発作間欠期におけるてんかん性発作患者の心電信号から生成されたサンプルデータに基づいて、心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の指標データを生成する指標データ生成部と、
前記複数の指標データについて主成分分析を行うことにより、前記複数種類の指標それぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する所定の発作兆候検知モデルを生成するモデル生成部と、を備える
てんかん性発作兆候検知モデル生成装置。 - 被検者の心電信号から生成されたサンプルデータを取得するステップと、
前記サンプルデータに基づいて心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の第1指標データを生成するステップと、
前記複数種類の指標それぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する所定の発作兆候検知モデルを用いて、前記複数の第1指標データから算出される前記管理値に基づいて、てんかん性発作の兆候の有無を識別するステップと、を含み、
前記発作兆候検知モデルは、発作間欠期における心電信号から生成されたサンプルデータに基づいて生成された、心拍に関する前記複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の第2指標データについて主成分分析を行うことにより生成されたものである
てんかん性発作兆候検知方法。 - 発作間欠期におけるてんかん性発作患者の心電信号から生成されたサンプルデータに基づいて、複数種類の心拍に関する指標となる指標データを生成するステップと、
前記指標データについて主成分分析を行うことにより、前記複数種類の指標それぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する所定の発作兆候検知モデルを生成するステップと、を含む
てんかん性発作兆候検知モデル生成方法。 - 被検者のてんかん性発作の兆候を検知するてんかん性発作兆候検知処理をコンピュータにより実現させるてんかん性発作兆候検知プログラムであって、
前記てんかん性発作兆候検知処理は、
被検者の心電信号から生成されたサンプルデータを取得するステップと、
前記サンプルデータに基づいて心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の第1指標データを生成するステップと、
前記複数種類の指標それぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する所定の発作兆候検知モデルを用いて、前記複数の第1指標データから算出される前記管理値に基づいて、てんかん性発作の兆候の有無を識別するステップと、を含み、
前記発作兆候検知モデルは、発作間欠期における心電信号から生成されたサンプルデータに基づいて生成された、心拍に関する前記複数種類の指標それぞれについての指標値を示す複数の第2指標データについて主成分分析を行うことにより生成されたものである
てんかん性発作兆候検知プログラム。 - 被検者のてんかん性発作の兆候を検知するために用いるてんかん性発作兆候検知モデル生成処理をコンピュータにより実現させるてんかん性発作兆候検知モデル生成プログラムであって、
前記てんかん性発作兆候検知モデル生成処理は、
発作間欠期におけるてんかん性発作患者の心電信号から生成されたサンプルデータに基づいて、複数種類の心拍に関する指標となる指標データを生成するステップと、
前記指標データについて主成分分析を行うことにより、前記複数種類の指標それぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する所定の発作兆候検知モデルを生成するステップと、を含む
てんかん性発作兆候検知モデル生成プログラム。
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