JP2015091930A - 装具用板材料、装具および装具の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方で、装具はスポーツ用途でも用いられる。従来から、スポーツ時には下腿部の保護やパフォーマンスの向上を目的として、一般的にサポーターと呼ばれるスポーツ用装具が用いられている。特に、サッカーやラグビー等の競技においては、競技者の脛を保護する目的で、合成樹脂製の脛当て型の装具が使用される(特許文献3)。これらスポーツ用装具についても、より軽量である方が競技者への負担も軽減し、より高いパフォーマンスが発揮できるため好まれるが、従来技術では、機械物性の面から軽量化には限界があった。
(b)0FM×T×T×T ≧ 40N・m
(c)45FS×T×T ≧ 220N
(d)45FM×T×T×T ≧ 22N・m
T:装具用板材料の厚み
(6) 少なくとも一方の表面に、不織布を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の装具用板材料。
[工程(i)] 一方向に配向した繊維長6mm以上25mm以下の炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなるプリプレグ基材を、炭素繊維の配列方向が異なる向きに少なくとも2枚積層してプリプレグ積層体を得る工程
[工程(ii)] 前記プリプレグ積層体を加熱して、前記熱可塑性樹脂を軟化させる工程
[工程(iii)] 前記工程(ii)で加熱したプリプレグ積層体を屈曲部および/または湾曲部を有する型に押し付けて沿わせて賦型を行う工程
[工程(iv)] 前記工程(iii)において成形された成形品を前記屈曲部および/または湾曲部を有する型から取り外す脱型工程
(10)前記プリプレグ基材を構成する炭素繊維の体積含有率が、20体積%以上50体積%以下である上記(9)に記載の装具の製造方法。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明における装具とは、四肢および体幹に装着するものであり、医療用途、スポーツ用途をはじめ、狩猟用途、武装用途等幅広く適用可能である。特に、医療用途およびスポーツ用途において好ましく適用される。より好ましくは、短下肢装具等の医療用装具として適用される。
本発明の装具用板材料は、熱可塑性樹脂と炭素繊維からなるプリプレグからなり、前記炭素繊維の繊維長が6mm以上25mm以下である必要がある。繊維長が長いほど機械物性に優れる傾向にあり、一方、繊維長が短いほど賦形性に優れる傾向にあるが、炭素繊維の繊維長が6mm以上であれば装具とした際に必要な機械物性が得られる。また炭素繊維の繊維長が25mm以下であれば装具用板材料として必要な賦形性が得られる。機械物性と賦形性のバランスから8mm以上15mm以下の範囲が好ましい。
(a)0FS×T×T ≧ 360N
(b)0FM×T×T×T ≧ 40N・m
(c)45FS×T×T ≧ 220N
(d)45FM×T×T×T ≧ 22N・m
式(a)および(b)を満たせば、装具とした際に、歩行時に患者の体重を担うに好ましい機械物性が得られ、また式(c)および(d)を満たせば、装具とした際に、該装具を装着した患者の長幹骨の捻転変形を抑制することができ好ましい。より好ましい値は、下記式(a’)〜(d’)であり、さらに好ましい値は、下記式(a’’)〜(d’’)である。
(a’)450N ≦ 0FS×T×T ≦ 2500N
(b’)60N・m ≦ 0FM×T×T×T ≦ 450N・m
(c’)300N ≦ 45FS×T×T ≦ 2500N
(d’)35N・m ≦ 45FM×T×T×T ≦ 450N・m
(a’ ’)850N ≦ 0FS×T×T ≦ 2500N
(b’ ’)120N・m ≦ 0FM×T×T×T ≦ 450N・m
(c’ ’)600N ≦ 45FS×T×T ≦ 2500N
(d’ ’)100N・m ≦ 45FM×T×T×T ≦ 450N・m
本発明の装具用板材料における厚みは1.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。厚みが厚いほど装具とした際の機械物性に優れるが、厚いと賦形時にシワがより易く、また厚さが増すに従い重量も増加する。厚みが1.0mm以上であれば装具とした際に好ましい機械物性が得られる。また3.0mm以下であれば賦形時のシワを抑制することができ装具用板材料として好ましい賦形性が得られ、また装具とした際に軽量化の効果があり好ましい。より好ましい厚みとしては、1.5mm以上2.5mm以下である。
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、変性ポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリルとスチレンとのコポリマー)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)、変性ABS樹脂、MBS樹脂(メチルメタクリレート、ブタジエン及びスチレンのコポリマー)、変性MBS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変性ポリメチルメタクリレート等及びこれらのポリマーアロイ等が挙げられる。これら1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。上記の中でも、機械物性と軽量性の観点からポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンの中でも、ポリプロピレン系がより好ましく、酸変性ポリプロピレンがさらに好ましい。
本発明で用いる炭素繊維は特に限定されず、PAN系炭素繊維、PICH系炭素繊維などが挙げられる。好ましい炭素繊維としては、JIS R7601(1986)に準じて測定したストランド引張強度が1.0GPa以上9.0GPa以下、ストランド引張弾性率が150GPa以上1000GPa以下のものである。より好ましい炭素繊維としては、JIS R7601(1986)に準じて測定したストランド引張強度が1.5GPa以上9.0GPa以下、ストランド引張弾性率が200GPa以上1000GPa以下のものである。
熱可塑性樹脂と炭素繊維からプリプレグを製造する方法は、溶融樹脂を押出機にて含浸させる方法、粉末樹脂を繊維層に分散し溶融させる方法、樹脂をフィルム化してラミネートする方法、樹脂を溶剤に溶かし溶液の状態で含浸させた後に溶剤を揮発させる方法、樹脂を繊維化して混合糸にする方法、熱可塑性樹脂のモノマーの状態で含浸させた後に重合させてポリマーにする方法などがある。溶融樹脂を押出機にて含浸させる方法は樹脂を加工する必要が無いという利点があるが、安定したプリプレグを製造するのが難しい。粉末樹脂を繊維層に分散する方法は含浸がしやすいという利点があるが、粉末を均一に繊維層に分散させるのが困難である。樹脂をフィルム化してラミネートする方法はフィルム加工する必要があるが、比較的品質の良いものが作られる傾向にある。
以下本発明における装具用板材料を用いて、炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなり、屈曲部および/又は湾曲部を有する装具を製造する方法の一例を示す。
本発明の工程(i)における“一方向に配向した繊維長6mm以上25mm以下の炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなるプリプレグ基材”を得る方法としては特に限定しないが、例えば、上記 <プリプレグの製造方法>により得られるプリプレグに、繊維長が6mm以上25mm以下となるように切込みを入れることにより得られる。この切込はレーザーマーカー、カッティングプロッター又は抜型等を利用して得られる。中でも抜型を用いたものが、高速に加工できるため好ましい。
本発明の工程(ii)における加熱方法としては、特に限定されないが、IRヒーター、IHヒーター、熱風循環式オーブン、スチーム式オーブン等が挙げられる。加熱温度としては、前記熱可塑性樹脂を軟化させることができればよいが、具体的には、前記熱可塑性樹脂の融点よりも10〜100℃高い温度、又は前記熱可塑性樹脂が融点を有さないときはガラス転移温度よりも10〜100℃高い温度で加熱すればよい。10〜100℃高い温度で加熱すれば、前記プリプレグ積層体の層間を接着することができると共に、後述の賦型工程において、良好な賦型性が得られる。好ましくは15〜80℃高い温度で加熱すればよい。
本発明の工程(iii)における押し付け方法としては、屈曲部および/または湾曲部を有する型の外側に押し付けて賦型することが好ましい。屈曲部および/または湾曲部を有する型の温度としては、20℃〜100℃が好ましい。温度が低すぎると、加熱したプリプレグ積層体の冷却が急速となり、好ましい賦型時間が確保できず、また、温度が高すぎると、後述の脱型が困難となるが、20℃〜100℃であれば、好ましい賦型性と脱型性を確保できる。
本発明における工程(iv)は、工程(iii)で賦型した後、成形品が十分冷却された固化した後に行う。具体的には、成形品の表面温度が、前記熱可塑性樹脂の融点よりも30℃以上低い温度、又は前記熱可塑性樹脂が融点を有さないときはガラス転移温度よりも15℃以上低い温度となった後に脱型することが好ましい。
得られた装具用板材料より湿式カッターにて長さ100mm、幅25mmの曲げ試験片を切り出し、ASTM D790に規定する試験方法に従い、それぞれ3点曲げ試験を行った。試験機としてはインストロン万能試験機4465型を用いた。測定した試験片の数はそれぞれn=6とし、その全平均値より曲げ強度および曲げ弾性率を算出し、また装具としての機械物性として、算出した曲げ強度および曲げ弾性率を用いて下記式(1)にて耐荷重指数を、下記式(2)にて剛性指数を算出した。結果を表1に記す。
[耐荷重指数(N)] = [曲げ強度(MPa)]×[厚さ(mm)]2・・・式(1)
[剛性指数(N・m)] = [曲げ弾性率(GPa)]×[厚さ(mm)]3・・・式(2)
(賦形性評価および重量測定)
得られた装具用板材料を所望の大きさに裁断し、200℃雰囲気下の循環式熱風炉内で15分間過熱した後、最表層の繊維方向が装具用の短下肢形状型の長手方向になる様に、型の脹脛および踵側から押し付けて成形し、冷却後型から外した。シワなく賦形できた場合は○、賦形できたがシワが残った場合は△、賦形できなかった場合は×として記録した。また賦形したものを型の形状にそって切断加工した後、重量を測定した。それぞれの結果を表1に記す。
一方向に炭素繊維(三菱レイヨン製パイロフィルTR 50S)を平面状に引き揃えて目付が78g/m2となる繊維シートとし、繊維シートの両面から、酸変性ポリプロピレン樹脂(三菱化学製モディックP958V)からなる目付が40g/m2のフィルムを挟み、カレンダロールを複数回通して加熱と加圧により、樹脂を繊維シートに含浸させ、繊維体積含有率Vf35vol%、厚み122μmmのプリプレグを作製した。
目付が61g/m2の酸変性ポリプロピレン樹脂のフィルムを用いた以外は製造例1と同様の手法で、繊維体積含有率Vf26vol%、厚み165μmmのプリプレグを作製した。
製造例1で得たプリプレグを530mm角に切り出し、カッティングプロッター(レザック製L−2500カッティングプロッター)を用いて、繊維となす角度θの絶対値が45゜、強化繊維の繊維長Lが25mmになるように切込みを入れ、切込みプリプレグを得た。この切込みプリプレグを積層構成が[0/45/90/−45]Sとなる様に積層して積層体を得た。こうして得られた積層体を535mm角で深さ1.5mmの印籠金型内に配置して、200℃まで加熱した後、多段プレス機で220℃の盤面で0.55MPaの圧力で7分間加熱・加圧後、同一の圧力で室温まで冷却し、1.0mm厚の装具用板材料を得た。得られた装具用板材料を評価した結果、装具用板材料として適応可能な機械物性を有しており、また多少のシワは発生したが賦形することができた。
プリプレグに切込みを入れず、切込みプリプレグとしなかった以外は実施例1と同等の手法で1.0mm厚の装具用板材料を得た。得られた装具用板材料を評価した結果、装具用板材料として機械物性は十分であったが、賦形することができなかった。
製造例2で得たプリプレグを原料とし、強化繊維の繊維長Lが10mmになるように切込みを入れ、積層構成を[0/45/−45/90/−45/45/0]とした以外は実施例1と同等の手法で1.2mm厚の装具用板材料を得た。得られた装具用板材料を評価した結果、装具用板材料として適応可能な機械物性を有しており、またシワなく賦形することができた。
積層構成を[0/45/−45/90/−45/45/0]2とした以外は実施例2と同等の手法で2.3mm厚の装具用板材料を得た。得られた装具用板材料を評価した結果、装具用板材料として優れた機械物性を有しており、またシワなく賦形することができた。
製造例1で得たプリプレグを530mm角に切り出し、カッティングプロッター(レザック製L−2500カッティングプロッター)を用いて、繊維となす角度θの絶対値が45゜、強化繊維の繊維長Lが10mmになるように切込みを入れ、切込みプリプレグを得た。非繊維強化のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製ノバテックEA6A)を0.5mmt、530mm角に切り出し、この非繊維強化のポリプロピレン樹脂と切込みプリプレグを用いて、積層構成が[0/45/0/45/−45/90/(非繊維強化のポリプロピレン樹脂)/90/−45/45/0/45/0]となる様に積層して積層体を得た。積層体は実施例1と同様にプレスにより一体化して2.0mm厚の装具用板材料を得た。得られた装具用板材料の全体での繊維体積含有率は21体積%であった。得られた装具用板材料を評価した結果、装具用板材料として優れた機械物性を有しており、またシワなく賦形することができた。
4.0mm厚のポリプロピレン板(日本ポリプロ株式会社製ノバテックEA6A)を用いて、装具用材料としての評価を行った。結果、賦形性および機械物性は装具用材料としては適応可能であるが、軽量性に欠けるものであった。
Claims (12)
- 熱可塑性樹脂と炭素繊維からなるプリプレグからなり、前記炭素繊維の繊維長が6mm以上25mm以下である装具用板材料。
- 炭素繊維の体積含有率が10体積%以上35体積%以下である請求項1に記載の装具用板材料。
- 厚み方向において、内層に0.05mm以上にわたり炭素繊維の体積含有率が10体積%以下である層を有する請求項1または2に記載の装具用板材料。
- 前記プリプレグにおいて、炭素繊維の体積含有率が20体積%以上50体積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の装具用板材料。
- 装具用板材料の長手方向においてASTM D790に準じて得られた曲げ強度0FSおよび曲げ弾性率0FMと、装具用板材料の長手方向から45゜回転した試験片切り出し方向においてASTM D790に準じて得られた曲げ強度45FSおよび曲げ弾性率45FMが、下記式(a)〜(d)を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の装具用板材料。
(a)0FS×T×T ≧ 360N
(b)0FM×T×T×T ≧ 40N・m
(c)45FS×T×T ≧ 220N
(d)45FM×T×T×T ≧ 22N・m
T:装具用板材料の厚み - 少なくとも一方の表面に、不織布を有する請求項1〜5のいずれかに記載の装具用板材料。
- 前記熱可塑性樹脂が酸変性ポリプロピレンを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の装具用板材料。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の装具用板材料からなる装具。
- 炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなり、屈曲部および/または湾曲部を有する装具の製造方法であって、下記工程(i)〜(iv)を有する装具の製造方法。
[工程(i)] 一方向に配向した繊維長6mm以上25mm以下の炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなるプリプレグ基材を、炭素繊維の配列方向が異なる向きに少なくとも2枚積層してプリプレグ積層体を得る工程
[工程(ii)] 前記プリプレグ積層体を加熱して、前記熱可塑性樹脂を軟化させる工程
[工程(iii)] 前記工程(ii)で加熱したプリプレグ積層体を屈曲部および/または湾曲部を有する型に押し付けて沿わせて賦型を行う工程
[工程(iv)] 前記工程(iii)において成形された成形品を前記屈曲部および/または湾曲部を有する型から取り外す脱型工程 - 前記プリプレグ基材を構成する炭素繊維の体積含有率が、20体積%以上50体積%以下である請求項9に記載の装具の製造方法。
- 前記工程(i)において、積層されたプリプレグ基材の間に、樹脂シート、および/または、炭素繊維と樹脂からなり、炭素繊維の体積含有率が10体積%以下であるシートを、0.2mm以上の厚みとなるように積層する請求項9または10に記載の装具の製造方法。
- 前記工程(i)において、前記プリプレグ積層体を仮止めする請求項9〜11のいずれかに記載の装具の製造方法。
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