JP2015064310A - 金属元素の封じ込め方法 - Google Patents

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【課題】環境中に存在する金属元素や放射性元素等を封じ込方法を提供する。【解決手段】標的金属元素を含む環境に吸着材と鉄(III)酸化物を添加する。これにより、吸着材への標的金属元素の吸着ないし固定化が生じる。次いで、鉄(III)酸化物を利用した環境中での鉄還元反応によって鉄(II)イオンが発生して鉱物化反応が進行し、鉱物化反応で生成した鉄鉱物が吸着材表面を被覆する。その結果、標的金属が吸着材の内部又は表面に封じ込められる。【選択図】図3

Description

本発明は、金属元素、特に、セシウム等の放射性元素を封じ込める技術に関する。詳しくは、環境中(土壌など)に存在する標的金属元素を捕捉・固定化して封じ込め、植物体への移行性などを低減させる方法に関する。
環境中に放出された放射性セシウムやストロンチウムなどの放射性物質は半減期が長く、長期間にわたって環境中に残存する。放射性物質やその他の金属(例えば重金属)によって汚染された環境を浄化するための様々な対策が講じられている。例えば、主に放射性セシウムに関して、以下に示すように様々な除染技術(1)〜(7)が提案されている。
(1)汚染土壌中の放射性セシウムを、セシウムの沸点(670℃)以上の高温(700〜1400℃)で処理し、気化させて除去する技術(例えば特許文献1〜5)がある。この技術は放射性セシウムを土壌から99%除去できるが、高温とするために多くのエネルギーが必要である。また、農耕地土壌で用いる場合、高温処理による微生物の死滅、土壌有機物が酸化されることによる農地作土層へのダメージが大きい。また、大量の農地土壌の処理施設への運搬、処理にコストがかかる。
(2)汚染土壌中の放射性セシウムを薬剤で洗浄し、抽出または沈降する方法(例えば特許文献6〜9)がある。この方法は放射性セシウムを土壌から化学洗浄するものであるが、放射性セシウムは土壌中の粘土鉱物に強く固定される。そのため、除去効率を上げるには、薬剤(硝酸、硫酸、アンモニア、カリウム)溶液を高濃度にしたり、加熱処理を併用したりする必要がある。洗浄処理による農地土壌の酸性化、肥料成分が流亡するといった問題点が考えられる。また、必要な処理エネルギー・処理コストも大きい。
(3)放射性セシウム汚染土壌を粒径別に分級して、細粒画分を除去する方法(例えば特許文献10)がある。土壌中の細粒画分(主に粘土画分)には、窒素、リン、カリウムといった肥料成分を多く含んでいる。これらの細粒画分を除去することにより土壌の肥沃度が低下する問題点が考えられる。また、放射性セシウムを含む粘土画分の2次処理が必要となる。
(4)カリウム系肥料の施肥による農作物への移行抑制技術(例えば非特許文献1、2)がある。カリウムはセシウムに対して粘土鉱物への吸着部位をめぐる競合イオンとして働く。そのため、カリウム系肥料の大量施肥はセシウムイオンの粘土鉱物から土壌水への溶出を誘発し、結果として移行量を増やす可能性がある。
(5)汚染土壌中の放射性セシウムをファイトレディエーションにより除染処理する技術(例えば特許文献11、12)がある。この技術は熱処理、抽出処理、洗浄処理といった処理過程を含まないため土壌に対するダメージは少ない。しかし、土壌中の粘土鉱物に固定された放射性核種の割合が高いと、植物への移行が低くなる。放射セシウムを吸収した植物を処理する(2次処理)が必要となる。
(6)放射性セシウムを微生物に取り込ませて除去する技術(例えば、特許文献13、非特許文献3〜5)がある。水田土壌に生育する微生物との競合や、微生物の増殖期と定常期での放射性セシウムの取り込み速度が異なることが問題になると考えられる。また、汚染土対策としては、微生物を土壌から取り出す技術が合わせて必要になる。
(7)微生物の鉄還元プロセスにおける鉱物化反応での共沈殿による各種金属の固定化(例えば、非特許文献6〜8)も提案されている。この方法によればシュワネラ属細菌などの微生物によって鉄酸化物を還元し、亜鉛、ストロンチウム、カドミウム、マンガン、ニッケル、鉛等が生成する鉱物中に取り込まれるが、その結合の強さは鉄(III)イオンと鉄(II)イオンのイオン半径に近いイオン半径をもったものがゲータイトに強く結合する。
特開2013−36883号公報 特開2013−82604号公報 特開2013−101032号公報 特開2013−122449号公報 特開2013−122440号公報 特開2012−237658号公報 特開2013−36970号公報 特開2013−88361号公報 特開2013−88362号公報 特開2013−117449号公報 特開2013−104696号公報 特開2013−117407号公報 特開2013−68556号公報
天正清ら(1961) 水稲による特異的セシウムの吸収・機構、土肥誌, 32, 139-144 Tsukada et al (2002). Transfer of 137Cs and stable Cs from paddy soil to polished rice in Aomori, Japan. Journal of Environmental Radioactivity, 59, 351-363. Tomioka et al (1994). Cesium accumulation and growth characteristics of Rhodococcus erythropolis CS98 and Rhodococcus sp. strain CS402. Applied and Environmental Microbiology, 60, 2227-2231 Tomioka et.al (1995). Kinetic studies on cesium transport in Rhodococcus erythropolis CS98 and Rhodococcus sp. strain CS402 Japan society for Bioscience, Biochemistry, and Agrochemistry, 59, 2219-2222. Ivshina et al (2002). Efficient uptake of cesium ions by Rhodococcus cells. Microbiology, 71, 357-361. Cooper et al (2000). Zinc immobilization and magnetite formation via ferric oxide reduction by Shewanella putrefaciens 200. Environmental Science & Technology, 34, 100-106 Parmar et al (2000). Solid phase capture of strontium by the iron reducing bacteria Shewanella alga strain BrY. Chemical Geology 169 281-288 Cooper et al (2006). Interactions between microbial iron reduction and metal geochemistry: Effect of redox cycling on transition metal speciation in iron bearing sediments. Environmental Science and Technology. 40, 1884-1891
各種技術が提案・報告されているが、いずれも問題点を含み、決定的なものはない。本発明はこのような背景の下、環境中に存在する金属元素や放射性元素等を封じ込めることに有効且つ実用性の高い手段を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み研究を進める中で本発明者らは2:1型層状ケイ酸塩鉱物(バーミキュライト、ベントナイト)並びにアルミノケイ酸塩鉱物(ゼオライト)に着目した。2:1型層状ケイ酸塩鉱物(バーミキュライト、ベントナイト)並びにアルミノケイ酸塩鉱物(ゼオライト)が放射性セシウムを強く吸着することはよく知られている。この特性を活かし、放射性セシウムを含む廃液の濾過材として当該鉱物が利用されている。また、放射性物質で汚染された農耕地に対し、2:1型層状ケイ酸塩鉱物(バーミキュライト、ベントナイト)並びにアルミノケイ酸塩鉱物(ゼオライト)からなる吸着材を加えて吸着サイトを増加させ、放射性物質の植物移行性を低下させる方法も提案されているが、植物移行性を十分に低下できない例が認められる。
ところで、2:1型層状ケイ酸塩鉱物に吸着したセシウム等の放射性元素は層間に固定化されているものとアンモニア等で置換可能な形態で吸着しているものがあり、後者は植物による吸収が可能なため、2:1型層状ケイ酸塩鉱物を放射性元素汚染土壌に添加しただけでは放射性元素の植物移行性を十分に低下させることはできない。このような考察を踏まえ、本発明者らは以下の戦略を発案した。
(1)放射性元素等(本明細書では「標的金属元素」と呼ぶ)を捕捉可能な吸着材を環境(例えば汚染土壌)に投入する。併せて、鉄(III)酸化物も投入し、鉄還元微生物による還元反応を利用して不溶性の鉄鉱物(マグネタイト等)を生成させる(図1、2を参照)。環境中に鉄還元微生物が存在している場合には、鉄(III)酸化物が投入されることによって、鉄還元微生物による鉄還元反応が促進されることになる。環境中に鉄還元微生物が存在していない場合には、鉄(III)酸化物とともに鉄還元微生物も投入する。
(2)吸着材に捕捉された状態の放射性元素等が、生成した鉄鉱物(マグネタイト等)で被覆(包埋)され、吸着材の内部又は表面に封じ込められる(図3を参照)。
標的金属元素として放射性セシウムを用い、上記戦略の有効性を検証した結果、植物体(実験ではイネを使用)への放射性セシウムの移行を抑えることに成功した。即ち、当該戦略の有効性が確認された。また、封じ込めの効果を高めるための条件(標的金属元素を捕捉するために投入するとよい鉱物の種類等)について重要且つ有益な知見が得られた。
以下に示す発明は、上記の成果及び考察に基づく。
[1]吸着材と鉄(III)酸化物を、標的金属元素を含む環境に添加することを特徴とする、金属元素の封じ込め方法。
[2]前記吸着材が、標的金属元素を捕捉可能な鉱物又はイオン交換樹脂である、[1]に記載の方法。
[3]前記鉱物が多孔質及び/又は層状の鉱物である、[2]に記載の方法。
[4]前記鉱物が粘土鉱物である、[2]に記載の方法。
[5]前記粘土鉱物が2:1型層状ケイ酸塩鉱物又はアルミノケイ酸塩鉱物である、[4]に記載の方法。
[6]前記2:1型層状ケイ酸塩鉱物がバーミキュライト又はベントナイトである、[5]に記載の方法。
[7]前記金属元素が放射性元素である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]前記放射性元素が放射性セシウムである、[7]に記載の方法。
[9]前記鉄(III)酸化物が、水和酸化鉄及び酸化鉄からなる群より選択される一又は二以上の化合物である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]更に、鉄還元微生物を前記環境に添加することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記鉄還元微生物が、シュワネラ属細菌又はジオバクター属細菌である、[10]に記載の方法。
[12]前記環境が、土壌、底質、地下水、河川水、湖沼水又は海水である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
鉄還元細菌(Shewanella属細菌)による鉄酸化物の結晶化反応の例。 鉄鉱物の再生成過程。酸化鉄(III)が還元されて鉄(II)イオン−水酸化物イオンとして一旦可溶化することによって、負電荷密度の高い粘土表面(そこに多くの微生物も付着しており、還元反応の起こる場所でもある)に集積して、化学反応(鉱物化反応)を起こして、コーティングが起こるものと考えられる。 鉄コーティング反応の模式図。 バーミキュライトによる137Csの吸着に対する鉄処理及びGeobacter処理の影響。 走査型電子顕微鏡像(900倍)と、鉄と酸素のデジタルマップ解析。 土壌からイネへの放射性セシウムの移行試験の結果。コ:コントロール(未処理土壌)、ベント:ベントナイト処理、鉄:鉄処理、ベント+鉄:ベントナイト処理と鉄処理、洗コ:コントロール(洗浄土壌)、バーミ+鉄+酢:バーミキュライト処理+鉄処理+酢酸ナトリウム処理。 イネ移行試験後の溶存態およびイオン交換態の放射性セシウムの割合。凡例・記号は図6と同様。同じ条件の結果が3つのバーで表されているものは、3連の実験の結果である。
本発明は金属元素を封じ込める方法に関する。本発明では、吸着材と鉄(III)酸化物を、標的金属元素を含む環境(本明細書では「汚染環境」とも呼ぶ)に添加することにより、標的金属元素を吸着材に封じ込める。用語「封じ込める」とは、環境(土壌(水田土壌等の農業用地のもの、居住地又はその周囲に存在するものなど)、底質、地下水、河川水、湖沼水、海水等)中に存在する標的金属元素(例えば放射性セシウム)が吸着材に吸着ないし固定化(捕捉)された状態を維持することをいう。本発明の方法を適用すると、標的金属元素が封じ込められた結果として、環境中に遊離状態で存在する標的金属元素の量が少なくなり、環境中から放出ないし漏出する、或いは環境中から植物体などに移行する標的金属元素の量が低減することになる。
本発明の方法では、吸着材と鉄(III)酸化物を汚染環境に添加することにより、吸着材への標的金属元素の吸着ないし固定化が生じる(ステップ(1))。次いで、鉄(III)酸化物を利用した環境中での鉄還元反応によって鉄(II)イオンが発生して鉱物化反応が進行し、鉱物化反応で生成した鉄鉱物が吸着材表面を被覆する(ステップ(2))。その結果、標的金属が吸着材の内部又は表面に封じ込められることになる。
鉄(III)酸化物については、鉄(III)酸化物自体ではなく、鉄(III)酸化物を発生する材料(以下、「鉄(III)酸化物用材料」と呼ぶ)を添加することにしてもよい。このように、直接ではなく、間接的に鉄(III)酸化物を添加することになる場合についても、本明細書では「鉄(III)酸化物を添加する」に該当するものとする。例えば、水処理凝集剤等に使用されるポリ塩化鉄(酸性)等の塩化物を添加した後、石灰(Ca(OH)2)等を添加して中和することによって鉄(III)酸化物を発生させることができる。この場合、ポリ塩化鉄及び石灰が「鉄(III)酸化物用材料」に該当する。ポリ塩化鉄の代わりに塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)等の異なる鉄(III)塩化合物でも良い。他に、鉄(II)塩化合物を酸化的に加水分解する方法、鉄(III)イオン溶液を高温(100度以上)や高圧(1〜3Kbar)にさらす方法、鉄(III)キレート溶液を高温(100度以上)やアルカリ(pH12以上)で分解する方法によっても鉄(III)酸化物を発生させることができる。
吸着材と鉄(III)酸化物(又は鉄(III)酸化物用材料)の添加順序は特に限定されない。但し、上記ステップ(1)及び(2)を効率的に進行させるため、好ましくは、吸着材を添加した後に鉄(III)酸化物を投入するか、或いは吸着材と鉄(III)酸化物を同時に投入する。
例えば、投入、散布、塗布、混合等によって、吸着材及び鉄(III)酸化物(又は鉄(III)酸化物用材料)の「添加」を行うことができる。工法の具体例を示すと、対象土壌に、吸着材を散布して耕耘した後、鉄(III)酸化物(又は鉄(III)酸化物用材料)を散布する。
吸着材及び鉄(III)酸化物(又は鉄(III)酸化物用材料)の添加量は、標的金属元素の種類、使用する材料、環境中の標的元素の濃度、環境条件等によって変動し得る。適切な添加量は予備実験や実証実験などによって設定すればよいが、例えば、吸着材の添加量は土壌100L当たり100g〜1kg、鉄(III)酸化物の添加量は同様に土壌100L当たり100g〜1kgである。
標的金属元素を捕捉可能である限り、各種鉱物やイオン交換樹脂など、様々な吸着材を用いることができる。「捕捉可能」とは、固定や吸着等により、その内部又は表面に標的金属元素を保持することができることをいう。ここでの保持は一時的なものであっても永続的なものであってもよい。該当する鉱物として、好ましくは多孔質又は層状の鉱物、或いは多孔質且つ層状の鉱物が用いられる。このような特性の鉱物は、一般に、保持能及び保持容量が大きく、捕捉に有利である。
標的金属元素を捕捉可能な鉱物として粘土鉱物を用いることができる。粘土鉱物の例は、層状ケイ酸塩鉱物、アルミノケイ酸塩鉱物である。層状ケイ酸塩鉱物の中でも、2:1型層状ケイ酸塩鉱物を用いることが好ましい。2:1型ケイ酸塩鉱物は、ケイ素(Si)と酸素(O)で構成される四面体シートが、アルミニウム(Al)と酸素(O)で構成される八面体シートを挟む単位構造(2:1層)が積層した構造を有する。同型(同形)置換(四面体シートのケイ素の一部がアルミニウムへ置換すること、又は八面体シートのアルミニウムの一部がマグネシウムや鉄へ置換されること)によって、2:1型ケイ酸塩鉱物は負電荷を持ち、層間に陽イオンを保持することができる。2:1型層状ケイ酸塩鉱物はスメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト)、バーミキュライト、イライトに大別される。本発明に好適な2:1型層状ケイ酸塩鉱物の具体例を挙げるとバーミキュライト、ベントナイト(モンモリトナイトを主成分とする粘土鉱物)である。
アルミノケイ酸塩は、ケイ酸塩のケイ素元素の一部がアルミニウムに置換された構造を有する。アルミノケイ酸塩の代表例はゼオライト(沸石)である。ゼオライトは立体網目構造を有する多孔質材料である。ゼオライトは骨格構造に由来する分子ふるい効果に加え、イオン交換能、吸着能、触媒能等を備え、イオン交換体、吸着材、触媒等に利用されている。
後述の実施例に示す通り、土壌中の放射性セシウムを標的金属元素とした実験においてバーミキュライト及びベントナイトが特に高い効果を発揮した。そこで、好ましい一態様では、標的金属元素を捕捉可能な鉱物としてバーミキュライト及び/又はベントナイトを採用する。
2種類以上の吸着材を併用することにしてもよい。また、特定の吸着材単体のみならず、他の材料ないし物質(例えば鉱物)との混合物を用いることにしてもよい。吸着材は天然物であっても、人工合成品であってもよい。例えば、水熱反応法や溶融法などによって様々な粘土鉱物(バーミキュライト、ゼオライト、ベントナイトなど)が合成されている(例えば、粘土ハンドブック第2版、日本粘土学会編、技報堂出版(1987年); 水谷 義 (1992) ゼオライト、No.3、96-102等を参照)。また、多くの企業によって天然由来の粘土鉱物や合成粘土鉱物が提供されている。例えばバーミキュライトは福島バーミ株式会社(福島県小野町)等から、ゼオライトは新東北化学工業株式会社(仙台)等から、ベントナイトはクニミネ工業株式会社(東京)等から、それぞれ入手することができる。本発明における吸着材としてこのような市販品を用いることができる。
本発明における「金属元素」は、例えば、鉛、クロム、カドミウム、水銀、亜鉛、ヒ素、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、錫、ビスマス、ウラン、プルトニウム等の重金属、アルカリ金属ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、ヨウ素である。本願明細書では、封じ込めの対象となる金属元素のことを、「標的金属元素」と呼ぶ。標的金属元素は放射性又は非放射性であり、典型的な標的金属元素の一つは放射性セシウムである。2種類以上の金属元素を標的にしてもよい。
鉄(III)酸化物の例は、水和酸化鉄(FeOOH、水酸化鉄、オキシ水酸化鉄とも呼ばれる)や酸化鉄(Fe2O3:結晶性鉄(III)酸化物)である。水酸化鉄の具体例は非晶質不定形のフェリヒドライト(コロイド状で反応性が高い)、異なる結晶構造を持つゲータイト(α-FeOOH)、アカガネイト(β-FeOOH)、レピドクロサイト(γ-FeOOH)等である。また、酸化鉄の具体例はヘマタイト(α-Fe2O3)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)、等またはそれらの混合物である。2種類以上の鉄(III)酸化物を併用することにしてもよい。また、主要成分が鉄(III)酸化物であれば他の金属元素など不純物が混じっていても良い。
水和酸化鉄や酸化鉄等は、微生物による還元反応によってFe2+を生成する。Fe2+は炭酸イオンとの反応によってシデライト(FeCO3、菱鉄鉱)を、リン酸イオンとの反応によってビビアナイト(Fe3(PO4)2・8H2O、藍鉄鉱)をそれぞれ生成する(図1)。また、鉄イオン同士ではマグネタイト(Fe3O4、磁鉄鉱)を生成する(図2)。一方、シデライトやマグネタイトの酸化により、ゲータイト(α−FeOOH、褐鉄鉱)が生成する。マグネタイトやゲータイトが最も環境中で反応性が低く安定であることから、本発明の目的においてはマグネタイト生成反応が進行することが望ましい。但し、例えば、土壌環境条件ではカウンター陰イオンが不均一な濃度で分布するため、上記の各種鉱物が混在した状態が形成されると考えられる。
ここで、水和酸化鉄(III)と鉄(II)イオンが共存すると、以下の反応が生じ、マグネタイトが生成する。
Fe2++8FeOOH+2e-→3Fe3O4(マグネタイト)+4H20
そのメカニズムは不明であるが、ヘマタイトからもマグネタイトが生成することが知られている。そこで、マグネタイトを生成し易くするためには、例えば、水和酸化鉄とヘマタイトを併用するとよい。
尚、コロイド状の水和酸化鉄(III)は、それ自体が各種金属の良い吸着材であるが、環境中で微生物による還元を受けやすく、還元に伴い吸着していた金属類が溶出することが知られている(例えばZachara (2001). Solubilization of Fe(III) oxide-bound trace metals by a dissimilatory Fe(III) reducing bacterium. Geochimica et Cosmochimica Acta. 65, 75-93 ; Cummings DE, Caccavo F, Fendorf S, Rosenzweig RF (1999) Arsenic mobilization by the dissimilatory Fe(III)-reducing bacterium Shewanella alga BrY. Environ. Sci. Technol. 33, 723-729.を参照)。本発明では、水和酸化鉄(III)は吸着材の表面コーティングに利用される。従って、このような金属の再溶解のおそれが少ない。
ところで、水中に溶解した各種重金属を鉄鉱物との共沈殿によって沈殿除去できることが知られている。Mを対象重金属とすれば、共沈殿物を下記の様に表すことができる。
シデライトの場合:Fe(1-x)MxCO3
ビビアナイトの場合、Fe3-XMx(PO4)2・8H2O(予想される化学組成)
マグネタイトの場合:Fe3-xMxO4(フェライトとも呼ばれる)
上記共沈殿では、鉄イオンのサイズに近いサイズの金属イオンがより効率よく共沈殿することが知られている。従って、共沈殿による水中からの除去処理では、金属種によってその効率が異なる。また、本発明において好適な標的金属元素の一つである放射性セシウムの場合は殆ど共沈殿しない。一方、環境中には多様な粘土鉱物が存在し、その表面又は層間に様々な金属元素を吸着できることが知られている。放射性セシウムの場合も、2:1型粘土鉱物の層間に強く吸着される。しかし、これらの吸着金属は、水素イオン(例えば植物根から発生する)によって交換されて徐々に液中に溶解し、植物根に吸収される。本発明の方法によれば、水に溶解した各種金属類や放射性核種(標的金属元素)を、粘土鉱物やイオン交換樹脂などの各種吸着材に吸着し、次いで、イオン交換反応が起きないように表面を鉄鉱物で覆うことにより、金属類および放射性核種が汚染土壌や底質などから生物へ移行して食物連鎖へ入ることを防ぐことができる。
本発明の一態様では、環境中での鉄還元反応を汚染環境中に存在する鉄還元微生物が担う。即ち、本発明を適用する汚染環境中に鉄還元微生物が存在している場合には、当該鉄還元微生物を利用して鉄還元反応を進行させることができる。例えば、水田の場合は水田土着の鉄還元細菌を利用できるため、別途、鉄還元微生物を用意する必要がなく、簡便且つ低コストで本発明を実施することが可能となる。
一方、本発明の他の一態様においては、吸着材及び鉄(III)酸化物に加えて、鉄還元微生物も汚染環境に添加する。この態様は、典型的には、汚染環境中に鉄還元微生物が存在しない場合に有効である。また、鉄還元微生物の存在量が少なく或いは鉄還元能が低く、十分な鉄還元反応が進行しない場合にも有効である。一方、汚染環境中に鉄還元微生物が存在している場合においても、本発明の効果(鉄鉱物による被覆によって標的金属元素を封じ込めること)を高めるために、当該態様を採用してもよい。
上記の通り、本発明では鉄還元微生物を利用して鉄鉱物を生成し、標的金属元素の封じ込め(被覆)を行う。鉄還元能を有する限り、様々な微生物を採用することができる。鉄還元微生物を例示するとジオバクター属細菌、シュワネラ属細菌である。二種類以上の微生物を併用してもよい。また、鉄還元能を示す微生物を一種類以上含む微生物群ないし微生物群集を用いることにしてもよい。ここでの微生物群ないし微生物群集は、鉄還元能を示さない微生物を含んでいてもよい。また、培養した微生物に代表されるように鉄還元微生物そのものを添加するのではなく、鉄還元微生物を含む土壌や底質などを添加することにしてもよい。
尚、鉄還元微生物を利用した鉱物化反応は、微生物表面で起こることが知られている。また、土壌地下水環境中の微生物は主にシルト・粘土画分に吸着している。そのため、鉱物化反応はシルト・粘土の表面で主に起こると考えられ、コーティング反応に都合が良い。
本発明の方法による効果(鉄鉱物による被覆によって標的金属元素を封じ込めること)を維持するため、或いは効率化のために、一以上の要素(吸着材、鉄(III)酸化物、鉄還元微生物)を定期的に又は随時、補充することにしてもよい。
<異化型鉄還元細菌(Geobacter AY株)による放射性セシウムの脱着抑制>
1.目的
異化型鉄還元細菌は、鉄還元作用の代謝産物として粒子状の鉄鉱物(マグネタイト:Fe2Fe3+O4、シデライト:FeCO3など)を生成する。本実験では、137Csを吸着した状態の吸着剤(水田土壌、ベントナイト、バーミュキュライト)表面を鉄還元細菌が生成した鉄鉱物で覆うことで、吸着剤から植物可給態での放射性セシウムの脱着を抑制できるかを検討した。
2.方法
バイアル瓶(50mL)にAY培地(主要イオン組成:Na 47mM,K 8.2mM,NH4 9.3mM,Ca 0.7mM,Mg 0.5mM,Cl 35mM,PO4 1.5mM)を20mLいれ、吸着剤としてバーミュキュライトを0.5g(固液比1:40)混合した。バイアル瓶をガス注入装置にて窒素と二酸化炭素の混合ガス(20%二酸化炭素)を曝気し嫌気条件にした。培地中の137Cs濃度が430 Bq L-1になるように137CsClを添加し、吸着剤に137Csが吸着されるまで3日間30℃でインキュベーター内で静置した。静置後、培地に0.4Mのコロイド状の水和酸化鉄(フェリヒドライト、FeOOH)1mLを添加し、Geobacter AY株(特開2012−034620号参照)を植えて2週間培養した。培地のみ(AY培地と以下では示す)、培地にFeOOHを添加したもの(AY培地+Fe)、培地にFeOOHを添加してGeobacter AY株を植え付けたもの(AY培地+Fe+Geo)の3条件で行った。培養後にバイアル瓶内の培地を遠心管に移し、遠心分離して上澄みを採取し、NaIシンチレーション検出器で放射性セシウム濃度を測定し吸着率を求めた(下記の式1)。次に、遠心管に残る吸着剤を超純水5mLで抽出し溶存態での脱着率を求め(下記の式2)、さらに1Mの酢酸アンモニウム溶液5mLで抽出しイオン交換態での脱着率を求めた(下記の式3)。
137Cs吸着率(%)=(添加137Cs量−培養後上澄み137Cs量)/添加137Cs量×100 (式1)
137Cs脱着率(%)=(超純水抽出137Cs量)/添加137Cs量×100 (式2)
137Cs脱着率(%)=(NH4抽出137Cs量)/添加137Cs量×100 (式3)
3.結果
結果を図4にまとめた。137Csの吸着率は、AY培地で61〜68%、AY培地+Feで58〜68%、AY培地+Fe+Geoで94〜98%であった。鉄還元細菌の生育により放射性セシウムの吸着能が高まった。137Csの溶存態としての脱着率(水抽出処理)は、AY培地で6.3〜12%、AY培地+Feで5.3〜7.6%、AY培地+Fe+Geoで0.6〜1.5%であった。また、イオン交換態としての脱着率(NH4抽出処理)は、AY培地で21〜28%、AY培地+Feで22〜26%、AY培地+Fe+Geoで7.5〜12%であった。このことから、バーミュキュライトを137Cs吸着剤として用いた場合には、鉄還元細菌によって溶存態およびイオン交換態(これらは植物可給態と考えられる)の137Csを1/3程度まで減少できると考えられる。
<異化型鉄還元細菌(Geobacter AY)の生育条件下での粘土鉱物の表面結晶構造解析>
1.目的
Geobacter AY株培養条件での粘土鉱物(水田土壌、ベントナイト、バーミュキュライト)の結晶構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、その表面組成(Fe、O)を定性分析した。
2.方法
AY培地に粘土鉱物を0.5g(バーミュキュライトのみ0.05g)入れて、オキシ水酸化鉄(FeOOH)を添加し、Geobacter AY株を植え付け2週間、30℃で嫌気培養した。培養後に、粘土鉱物を105℃で十分に乾燥した。これらの試料の表面結晶構造を電界放出走査型電子顕微鏡(日本電子(株)、JSM-6330F)で観察(×900)し、その表面組成(Fe、O)をエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive Spectroscopy, EDS)により定性面分析(デジタルマッピング)した。
2.結果
走査型電子顕微鏡でのEDSによる定性分析では、土壌では一部を除いて全体に鉄が存在し、バーミキュライトでは粘土鉱物の端の結合破断面に鉄濃度が高かった(図5)。殆どの部位で鉄と酸素の両方が観察された。土壌や粘土鉱物の表面における、酸素を含む鉄鉱物の被覆が示された。しかし、鉄が観察されても酸素は観察されない部位もあった(バーミキュライトの○で示した部分)。その部位の鉄化合物は酸化鉄では無いと考えられる。
<鉄鉱物ならびに粘土鉱物(ベントナイト、バーミュキュライト)の混合土壌での放射性セシウムの植物(イネ)移行試験>
1.目的
粘土鉱物と3価鉄(Fe2O3、FeOOH)を土壌に混合することで土壌から稲への放射性セシウムの移行が抑制されるかを測定した。
2.方法
土壌には、福島県飯舘村佐須で採取した水田表層土(深さ2cmまで、pH=7.6、電気伝導度0.06mS/cm)を用いた。これに下記に示したような処理を施した土壌を、ポット(1/10000アール)に1kgずつ入れて(土壌の深さ約10cm)、2週間湛水(土壌表面から2cm)した後、イネ苗(消毒、塩水染後に発芽させて2週間程度経過したもの)を植栽し、人工気象器の中で1ヶ月間30℃で培養した。光の強さは170W/cm2(=773.9マイクロモル/m2/秒)で、日照時間は15時間/日とした。元肥として複合肥料(くみあい被覆尿素入り苦土安複合7.555)0.4g/ポットを加えた(全窒素15%、く溶性リン酸15%、水溶性カリ15%、く溶性苦土3%)。培養後にイネ地上部を刈り取り、イネ地上部の放射性セシウム濃度を測定し、処理土壌の放射性セシウム濃度から移行係数を以下の式で求めた。
イネへの移行係数(TF)=(イネ地上部の放射性セシウム濃度)/(ポット土壌の放射性セシウム濃度)
実験1では、根の放射性セシウム濃度も測定し、移行係数を求めた。土壌は、現地の土壌をそのまま(未処理土壌)または水洗浄処理(洗浄土壌)を用いた。実験は3連で行った。土壌処理条件は、下記に示すとおりである。
(1)実験1
未処理土壌(コントロール)、ベントナイト処理土壌(粒状1.0%添加)、鉄処理土壌(水和酸化鉄0.5%、ヘマタイト1.0%)、ベントナイト+鉄処理土壌
(2)実験2
土壌:未処理土壌(コントロール)、ベントナイト+鉄処理土壌(水和酸化鉄1.0%、ヘマタイト1.0%)
(3)実験3
土壌:洗浄土(コントロール)、バーミキュライト+鉄+酢酸ナトリウム処理土壌(バーミキュライト1.0%、水和酸化鉄1.0%、ヘマタイト1.0%、酢酸ナトリウム1.0%)酢酸ナトリウムの添加によって電気伝導度が高まったので、水洗して0.3-0.6mS/cmまで低下させた後に実験に供した。
3.結果
結果を図6にまとめた。鉄処理土壌では、イネへの放射性セシウムの移行が抑制されることが明らかとなった。
(1)実験1
植物体の放射性セシウム濃度は、未処理土壌(コントロール)で760±520 Bq kg-1、ベントナイト混合土壌で510±220 Bq kg-1、鉄混合土壌で310±90 Bq kg-1、鉄・ベントナイト混合土壌で310±180 Bq kg-1となった。イネへの移行係数は、未処理土壌(コントロール)で0.019±0.013、ベントナイト混合土壌で0.013±0.006、鉄混合土壌で0.008±0.002、鉄・ベントナイト混合土壌で0.008±0.004となった。ベントナイト処理および鉄処理土壌で放射性セシウム移行性が減少した。特に、鉄処理の効果が大きかった。イネの乾重量に土壌処理の影響は無く、Cs線量と乾重量の間にも相関は見られなかった。これより、イネ体中のセシウム濃度の違いは、鉄処理による抑制効果によるものと考えられる。
(2)実験2
植物体の放射性セシウム濃度は、未処理土壌(コントロール)で570±20 Bq kg-1、鉄・ベントナイト混合土壌で390±50 Bq kg-1となった。イネへの移行係数は、未処理土壌(コントロール)で0.014±0.001、鉄・ベントナイト混合土壌で0.010±0.001となった。鉄・ベントナイト処理による放射性セシウムのイネへの移行性の抑制効果が確認された。
(3)実験3
植物体の放射性セシウム濃度は、洗浄土壌(コントロール)で310±100 Bq kg-1、洗浄土壌に鉄・バーミュキュライト・酢酸ナトリウムを混合した土壌で150±40 Bq kg-1となった。イネへの移行係数は、洗浄土壌で0.012±0.004、洗浄土壌に鉄・バーミュキュライト・酢酸ナトリウムを混合した土壌で0.008±0.002となった。鉄・バーミキュライトによる放射性セシウムのイネへの移行性の抑制効果が示された。
<植物移行試験に用いた土壌の植物可給態の放射性セシウム濃度>
1.目的
本実験では、植物移行試験で用いた土壌について、試験後に溶存態ならびにイオン交換態のセシウム濃度を測定し、土壌処理による、植物可給態の放射性セシウムの溶出抑制効果を考察した。
2.方法
溶存態の放射性セシウムは、処理土壌に固液比が1:10となるように超純水を混合し、6時間反復振とう(200 回/分)した後、その上澄み液を20分間の遠心分離(5000rpm 20分,3400G)し採取した(溶存態画分、式1)。イオン交換態の放射性セシウムは、水抽出後の残渣に1Mの酢酸アンモニウム溶液を固液比が1:10になるように混合し、18時間反復振とうした後、上澄み液を遠心分離により採取した(イオン交換態画分、式2)。
水溶性137Cs画分率(%)=(超純水抽出137Cs量)/処理土壌137Cs量×100 (式1)
137Cs脱着率(%)=(NH4溶液抽出137Cs量)/処理土壌137Cs量×100 (式2)
3.結果
結果を図7にまとめた。鉄処理した土壌では、溶存態とイオン交換態の放射性セシウム(これらは植物可給態と考えられる)の割合が低下した。これは、鉄処理土壌でのイネ移行係数の減少と傾向が良く一致している。
(1)実験1の土壌
溶存態の放射性セシウムは、ベントナイト混合土壌でやや高かったが、全体的に低い値であった。未処理土壌(コントロール)で0.00〜0.01%、ベントナイト混合土壌で0.09〜0.47%、鉄混合土壌で全て0.00%、鉄・ベントナイト混合土壌で0.00〜0.12%であった。イオン交換態の放射性セシウムは、未処理土壌(コントロール)で1.4〜1.7%、ベントナイト混合土壌で2.1〜2.5%、鉄混合土壌で1.4〜3.2%、鉄・ベントナイト混合土壌で1.3〜1.7%であった。鉄・ベントナイト混合土壌では、未処理土壌と比較して差はみられなかったが、他の処理区と比較して低い値となった。
(2)実験2の土壌
溶存態の放射性セシウムは、いずれも低い値で土壌処理条件による違いは無かった。未処理土壌(コントロール)で0.00〜0.30%、鉄・ベントナイト混合土壌で0.00〜0.16%であった。イオン交換態画分は、未処理土壌(コントロール)で2.7〜3.0%、鉄・ベントナイト混合土壌で1.2〜1.5%であった。イネ移行係数が低かった鉄・ベントナイト混合土壌では溶存態およびイオン交換態(植物可給態と考えられる)の放射性セシウムの割合が低かった。
(3)実験3の土壌
溶存態の放射性セシウム画分は、洗浄土壌(コントロール)で0.09〜0.41%、洗浄土壌に鉄・バーミュキュライト・酢酸ナトリウムを混合した土壌で0.00〜0.58%となり、土壌の混合処理条件にかかわりなく絶えず低い値となった。イオン交換態画分は、洗浄土壌(コントロール)で2.2〜2.5%、洗浄土壌に鉄・バーミュキュライト・酢酸ナトリウムを混合した土壌では1.9、2.1%、7.8%となった。1試料で7.8%という高い値が測定されたが、これは洗浄土試料の不均一性によるものではないかと考えられる。残りの2試料では1.9%と2.1%と他の条件区よりも低い傾向がみられた。
<まとめ>
土壌中の放射性セシウムを封じ込める技術として以下の方法を考案した。まず、放射性セシウムに汚染された土壌(例えば水田土壌)に、天然または人工の2:1型粘土鉱物(バーミュキュライト、ベントナイト)又はアルミノケイ酸塩鉱物(ゼオライト)を混合し、土壌の放射性セシウムをこれら2:1型粘土鉱物(バーミュキュライト、ベントナイト)又はアルミノケイ酸塩鉱物(ゼオライト)に固定化させる(工程1:セシウム固定化処理)。次に、鉄(III)酸化物(実験には非結晶性の水和酸化鉄(FeOOH)とヘマタイト(Fe2O3)を使用)を混合し、土壌中の微生物を利用した鉄還元反応によって鉄(II)イオン(水溶性)を発生させ、それによって起こる鉱物化反応によって粘土鉱物を覆う(工程2:鉄コーティング)。以上の2工程により、土壌中の放射性セシウムを粘土鉱物の内部又は表面に封じ込め、植物への移行を抑制する。
上記方法の有効性を、2:1型粘土鉱物としてバーミュキュライト及びベントナイトを用いて検証した。その結果、溶存態及びイオン交換態の放射性セシウムの量を大幅に減少できること、土壌からイネへの放射セシウムの移行を抑制できることが示され、上記方法が極めて有効であることが明らかとなった。
本発明によれば、例えば、環境中(汚染土壌など)に存在するセシウム等の放射性元素の植物体への移行性を低減することができる。洗浄土壌(表面に吸着したセシウム等の放射性元素は除去されて、放射性元素は主に層間に残ると考えられる)に本発明を適用すれば、植物移行性の低減化の一方で、放射能汚染廃棄土壌の量の低減も図ることができる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (12)

  1. 吸着材と鉄(III)酸化物を、標的金属元素を含む環境に添加することを特徴とする、金属元素の封じ込め方法。
  2. 前記吸着材が、標的金属元素を捕捉可能な鉱物又はイオン交換樹脂である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記鉱物が多孔質及び/又は層状の鉱物である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記鉱物が粘土鉱物である、請求項2に記載の方法。
  5. 前記粘土鉱物が2:1型層状ケイ酸塩鉱物又はアルミノケイ酸塩鉱物である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記2:1型層状ケイ酸塩鉱物がバーミキュライト又はベントナイトである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記金属元素が放射性元素である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記放射性元素が放射性セシウムである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記鉄(III)酸化物が、水和酸化鉄及び酸化鉄からなる群より選択される一又は二以上の化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 更に、鉄還元微生物を前記環境に添加することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記鉄還元微生物が、シュワネラ属細菌又はジオバクター属細菌である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記環境が、土壌、底質、地下水、河川水、湖沼水又は海水である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101754790B1 (ko) * 2016-07-04 2017-07-10 한국원자력연구원 세슘 이온의 생광물학적 제거 방법 및 장치
JP2019095300A (ja) * 2017-11-22 2019-06-20 株式会社環境整美 湖沼除染工法
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