本発明は、内空断面形状計測装置及び内空断面形状計測方法に関し、詳しくは、簡単な構成であるにもかかわらず、内空断面形状を精度高く測定することが可能な内空断面形状計測装置及び内空断面形状計測方法に関する。
従来より、トンネル、地下大空洞、建物、大型の円筒管等の内空の断面形状を測定するための技術は多数存在する。例えば、特開昭60−213811号公報(特許文献1)には、トンネルの壁面方向に向けられながらその横断面に沿って測定ピッチ角ごとに順次回転される照準器と、該照準器から所定距離を隔てて配置され壁面上にライトスポットを照射する照射手段とを備えるトンネル断面自動計測装置が開示されている。このトンネル断面自動計測装置は、更に、前記ライトスポットを上記照準器が捕えた時該照準器方向に対する照準角を検知する手段と、該照射角により各測定ピッチ角ごとに壁面までの距離を計算しトンネル断面形状及び寸法を算出する手段を備える。これにより、極めて迅速に断面形状や寸法が算出され、直ちにディスプレイやプリンターによって表示させて、常に断面状態を把握することが出来て、支保工や覆工計画が迅速に行えるとしている。
又、近年、上述した内空断面の形状を測定するためにレーザ距離計を用いることが多くなってきている。このレーザ距離計とは、レーザ光を用いて距離を測定する測定器であって、レーザ光を対象物(目標物)に当てることで、当該レーザ光の起点(発信源)から前記対象物の照射点(測点、反射点)に反射して当該起点に戻ってくるまでの時間を距離に換算し、前記レーザ光の起点から対象物の測点までの距離を測定する。
このようなレーザ距離計を用いる技術として、例えば、特開平2−193006号公報(特許文献2)、特開平2−179404号公報(特許文献3)には、空洞の断面方向に光線を照射して測定断面の空洞内壁面に所望幅の光跡を形成し、所定位置から前記光跡を含む空洞内壁面を撮像したのち、その画像および前記所定位置から撮像した前記空洞内壁面の未照射状態の画像を比較し光跡部分のみを抽出するとともに、前記所定位置と測定断面との距離から画像の縮尺を算出して空洞の内空断面の形状および寸法を計測するようにする内空断面計測方法が開示されている。この内空断面計測方法は、前記測定断面の少なくとも任意の1箇所に光点を形成し、カメラ軸を測定断面と垂直にして前記光点の少なくとも1つを含む基準となる画像Aを撮像し、かつ、カメラ軸を傾けて前記光点の少なくとも1つを含む画像Bを少なくとも1つ撮像する。更に、前記画像Bの座標を前記画像Aの座標に座標変換するとともに、対応する光点が重なるように全画像を合成して全光跡を抽出する。これにより、多数の測定点の測定結果を寄せ集めて全体の断面形状を求めるといった煩雑な手間の掛かる作業が不要になり、極めて効果的であるとしている。又、内空変位やコンクリートの吹き付け厚みの測定についても、従来の方法では現実的に測定不可能であった横断面全体の変形モードや壁面変位や吹き付けコンクリートの厚みの絶対量を直ちに知ることができ、支保の補強や変更等、トンネルの安全管理・施工管理に極めて有効であるとしている。
又、特開平11−324560号公報(特許文献4)には、トンネル内空断面をレーザーの回転により計測する内空断面計測器と、ターゲットおよび内空断面計測用制御装置が搭載されたトンネル掘削装置と、切羽後方で前記ターゲットを視準可能な位置に配設されたレーザー照射器および位置計測用制御装置とを備えるトンネル内空断面測定システムが開示されている。このトンネル内空断面測定システムは、更に、前記ターゲットの視準により内空断面計測器の位置を算出し、内空断面計測器の水準を自動設定する手段と、前記内空断面計測器によりトンネルの余掘り量を算出する手段とを備える。これにより、余掘り量が自動的に計測、算出することができるとともに、計測した断面の正確な位置を把握することができるとしている。
又、特開2000−46551号公報(特許文献5)には、本体部と、本体部に対して所定の回転軸を中心に回転可能に設けられているとともに、この回転軸に直交する方向へレーザビームを射出するヘッド部と、このヘッド部を前記本体部に対して回転させることによって前記レーザビームを同一面内で走査させる回転機構とを備えたレーザ測量装置が開示されている。又、このレーザ測量装置は、前記ヘッド部の前記本体部に対する相対回転角を検知する相対角検知部と、前記本体部の設置方向の方位角を検知する方位角センサと、任意の方位角が設定される方位角設定部とを備える。更に、このレーザ測量装置は、前記相対角検知部によって検知された前記ヘッド部の前記本体部に対する相対回転角と前記方位角センサによって検知された方位角とに対応する前記ヘッド部の方位角が前記方位角設定部に設定された方位角と一致するように、前記回転機構を制御する制御部を備える。これにより、レーザビームの射出方向を正確に所望の方角に向けることができ、これによって、任意の方位角を正確に示すことが出来るとしている。
又、特開2001−74448号公報(特許文献6)には、レーザ測距法により距離を測定する測定機を中空管内に配置し、前記測定機により前記中空管の延長方向に対して直交する方向にレーザを照射して前記中空管内の断面形状を測定する方法が開示されている。この中空管内の断面形状測定方法は、前記中空管内におけるレーザ照射点の軌跡であるレーザ照射線上の異なる複数の点について前記測定機の配置位置から当該点までの距離及び前記測定機の配置位置と当該点とを結ぶ線が基準線に対してなす角度を測定する測定ステップと、測定した測定距離及び測定角度に基づいて前記測定機の配置座標を算出する配置座標算出ステップとを備える。これにより、測定機の配置座標の測定が容易となるとともに、配置座標に生じる誤差が少なくなるので、従来に比して、手間や時間の面で有利に、測定機の配置位置を比較的正確に測定することが出来るとしている。
又、特開2001−91249号公報(特許文献7)には、可視光レーザを照射して距離を測定する距離計測手段と、測定する内空断面に対して垂直な軸方向を中心に前記距離計測手段を回転させる回転手段とを備える内空断面測定装置が開示されている。この内空断面測定装置は、前記回転手段の回転角を検知する検知手段と、この検知手段で検知された回転角に対応して前記距離計測手段で計測された距離を記憶する記憶手段とを備える。これにより、測定対象となる場所が目視可能で、検知手段で検知された回転角に対応して距離計測手段で計測された距離を記憶手段で記憶することにより内空断面を容易にかつ精度高く測定できるとしている。
特開昭60−213811号公報
特開平2−193006号公報
特開平2−179404号公報
特開平11−324560号公報
特開2000−46551号公報
特開2001−74448号公報
特開2001−91249号公報
しかしながら、前記特許文献1−7に記載の技術では、使用条件によって測定結果にばらつきがあったり、十分な精度を確保出来なかったりする問題があった。
例えば、前記特許文献1に記載の技術では、照準器を手作業で回転させるため、当該照準器の回転の正確性に欠けるという問題がある。又、前記特許文献2、3に記載の技術では、光線を照射する測距儀(距離測定手段)と、光線を屈折させる光照射手段とが別個に設けられているため、両者に位置ズレが発生し、測定結果に位置ズレの誤差が含まれるという問題がある。
又、前記特許文献4に記載の技術では、内空断面計測器の詳細な構成が不明で、誤差の発生に対する対策が不明であるという問題がある。又、前記特許文献5に記載の技術では、レーザビームによる測定結果において誤差の発生に対する対策が不明であるという問題がある。
又、前記特許文献6、7に記載の技術では、レーザ距離計自体を回転させるため、当該回転の際にレーザ距離計から延出されるケーブル等が供回りしたり干渉したりして、一回転又は半回転出来ない可能性があるという問題がある。又、前記レーザ距離計自体の重さにより、前記回転の際に当該レーザ距離計に回転ブレが生じて、精度高く断面形状を測定することが出来ない可能性があるという問題がある。
一方、近年、内空の断面形状の測定結果に対して高精度化が求められており、例えば、要求される測定精度は、数.0mm以内である。前記特許文献1−7に記載の技術では、このような高精度な測定結果を得ることが出来るか否か不明である。
そこで、本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成であるにもかかわらず、内空断面形状を精度高く測定することが可能な内空断面形状測定装置及び内空断面形状計測方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な内空断面形状測定装置及び内空断面形状計測方法を完成させた。即ち、本発明に係る内空断面形状測定装置は、内空断面形状を測定する内空断面形状測定装置であって、レーザ距離測定部と、円筒回転部と、屈折部と、断面形状算出部とを備える。レーザ距離測定部は、平面台に固定され、円筒部の内空の中心軸に沿ってレーザ光を通過させ、当該レーザ光の起点から当該レーザ光が反射した対象物の反射点までの測定距離を測定する。円筒回転部は、前記平面台の端部に固定され、前記円筒部の内空の中心軸を回転軸とし、予め設定された基準角度から所定の回転角度ごとに、当該円筒部を前記レーザ光の周方向に回転させる。屈折部は、前記円筒部のうち、レーザ光が出射する円筒部の端部に直接固定されて外部に突出し、当該出射したレーザ光を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して直角に屈折させる。断面形状算出部は、前記円筒部の複数の回転角度と、前記回転角度ごとに測定される前記測定距離とに基づいて、前記屈折点を中心とし、前記回転角度における前記レーザ光の屈折部の屈折点から当該レーザ光の対象物の反射点までの半径距離を半径とした内空の断面形状を算出する。
又、前記断面形状算出部は、前記回転角度で測定された前記測定距離から、予め測定した前記レーザ光の起点から前記レーザ光の屈折部の屈折点までの固定距離を減算することで、当該回転角度における前記半径距離を算出し、前記固定距離は、前記半径距離と比較して短く設定される。
又、前記円筒回転部は、前記基準角度から前記回転角度ごとに、前記円筒部を一回転又は半回転させ、前記断面形状算出部は、前記円筒部の一回転分又は半回転分の複数の回転角度と、前記回転角度ごとに測定される前記測定距離とに基づいて、一回転分又は半回転分の内空の断面形状を算出する。
又、本発明に係る内空断面形状測定方法は、内空断面形状を測定する内空断面形状測定方法であって、レーザ距離測定ステップと、円筒回転ステップと、屈折ステップと、断面形状算出ステップとを備える。レーザ距離測定ステップは、平面台に固定されたレーザ距離測定部で、円筒部の内空の中心軸に沿ってレーザ光を通過させ、当該レーザ光の起点から当該レーザ光が反射した対象物の反射点までの測定距離を測定する。円筒回転ステップは、前記平面台の端部に固定された円筒回転部で、前記円筒部の内空の中心軸を回転軸とし、予め設定された基準角度から所定の回転角度ごとに、当該円筒部を前記レーザ光の周方向に回転させる。屈折ステップは、前記円筒部のうち、レーザ光が出射する円筒部の端部に直接固定されて外部に突出した屈折部で、当該出射したレーザ光を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して直角に屈折させる。断面形状算出ステップは、前記円筒部の複数の回転角度と、前記回転角度ごとに測定される前記測定距離とに基づいて、前記屈折点を中心とし、前記回転角度における前記レーザ光の屈折部の屈折点から当該レーザ光の対象物の反射点までの半径距離を半径とした内空の断面形状を算出する。
本発明に係る内空断面形状測定装置及び内空断面形状計測方法によれば、簡単な構成であるにもかかわらず、内空断面形状を精度高く測定することが可能となる。
本発明に係る内空断面形状測定装置の概略図である。
本発明に係る内空断面形状測定装置の機能ブロック図である。
本発明に係る内空断面形状測定装置の測定原理を示す概略図である。
本発明に係る屈折部の回転によりレーザ光の進行方向が変更する状態を示す斜視図である。
本発明に係る内空断面形状測定装置の測定状態を示す左側面概略図である。
実施例1に係る内空断面形状測定装置の斜視写真(図6A)と、実施例1に係る内空断面形状測定装置を小管に配置して内空断面形状を算出している最中の斜視写真(図6B)とである。
実施例1に係る内空断面形状測定装置の内空断面形状測定試験1の結果である。
実施例1に係る内空断面形状測定装置の内空断面形状測定試験2の結果(図8A)と、比較例例1に係る内空断面形状測定装置の内空断面形状測定試験2の結果(図8B)とである。
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る内空断面形状測定装置の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
<内空断面形状測定装置>
図1は、本発明に係る内空断面形状測定装置の概略図であり、図2は、本発明に係る内空断面形状測定装置の機能ブロック図である。
本発明に係る内空断面形状測定装置は、内空断面形状を測定する内空断面形状測定装置1であって、図1、図2に示すように、レーザ距離測定部11と、円筒回転部12と、屈折部13と、断面形状算出部14とを備える。レーザ距離測定部11は、平面台10に固定され、円筒部12aの内空の中心軸に沿ってレーザ光を通過させ、当該レーザ光の起点A(発信源)から当該レーザ光が反射した対象物の反射点(図示せず)までの測定距離L(mm)を測定する。円筒回転部12は、前記平面台10の端部10aに固定され、前記円筒部12aの内空の中心軸を回転軸とし、予め設定された基準角度R0(度)から所定の回転角度R(度)まで、当該円筒部12aを前記レーザ光の周方向に回転させる。更に、屈折部13は、前記円筒部12aのうち、レーザ光が出射する円筒部12aの端部12a1に直接固定(直付け)されて外部に突出し、当該出射したレーザ光を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して直角に屈折させる。断面形状算出部14は、前記円筒部12aの複数の回転角度R(度)と、前記回転角度R(度)ごとに測定される前記測定距離L(mm)とに基づいて、前記屈折点Bを中心とし、前記回転角度R(度)における前記レーザ光の屈折部13の屈折点Bから当該レーザ光の対象物の反射点Cまでの半径距離D(mm)を半径とした内空の断面形状を算出する。これにより、簡単な構成であるにもかかわらず、内空断面形状を精度高く測定することが可能となる。
即ち、本発明では、円筒部12aに直接固定された軽量な屈折部13を回転させることで、レーザ光を屈折点Bから回転させるため、レーザ距離計自体を回転させる従来技術と比較して、当該レーザ光の回転に伴う回転ブレが生じ難く、前記屈折部13の回転制御が容易となる。そのため、レーザ光を正確に回転させることが可能となるとともに、内空断面形状の計測結果に回転ブレの誤差を生じ難くすることが可能となり、計測結果の精度を向上させることが可能となる。
又、本発明では、前記円筒回転部12を平面台10の端部10aに固定することで、当該円筒回転部12の円筒部12aに直接固定された屈折部13が前記平面台10の端部10aの外部(前方)に突出した形態となる。つまり、前記屈折部13のレーザ光の屈折点Bが前記平面台10の端部10aの外部(前方)に位置することになる。そのため、従来技術のように、レーザ距離計自体の回転に伴うケーブル等の供回りや干渉を全く生じさせることなく、前記屈折点Bからレーザ光を自由に回転させることが可能となる。
更に、本発明では、レーザ距離測定部11と円筒回転部12とを同一の平面台10に固定することで、測定中における両者の位置ズレが殆ど生じることが無い。そのため、内空断面形状の測定結果に位置ズレの誤差を生じ難くすることが可能となり、計測結果の精度を更に向上させることが可能となる。
従って、本発明では、簡単な構成であるにもかかわらず、近年で要求される測定精度を数.0mm以下にすることが可能となるのである。
<各構成>
ここで、前記レーザ距離測定部11は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、以下の構成が採用される。前記レーザ距離測定部11は、レーザ光を対象物に当てることで、当該レーザ光の起点Aから前記対象物の反射点Cで反射して当該起点Aに戻ってくるまでの時間を距離に換算し、前記レーザ光の起点Aから前記対象物の反射点Cまでの測定距離Lを測定する。
又、前記レーザ距離測定部11の距離測定範囲は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.1m〜80.0mの範囲内が好ましく、0.1m〜30.0mの範囲内が更に好ましい。これにより、小型トンネルや小型地下空洞等の小型の内空断面形状から大型トンネルや大型地下空洞等の大型の内空断面形状までを幅広く算出することが可能となる。
又、前記レーザ距離測定部11のレーザ光の安全基準のクラスは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、波長が400nm〜700nmの範囲内である可視光で出力が1mW以下であるクラス2が好ましい。このクラスであると、例えば、内空断面形状を測定している際に、仮に、ユーザの目にレーザ光が一時的に照射しても、ユーザが目の嫌悪反応を感じるだけであるので、極めて安全である。
又、前記レーザ距離測定部11のレーザ光の波長は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、可視光で赤色を示す650nmであると好ましい。これにより、内空断面形状を測定している際に、ユーザが一見してレーザ光の照射の可否を確認することが出来る。
又、前記レーザ距離測定部11の分解能(測定限界)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.1mm〜1.0mmの範囲内が好ましく、0.1mm〜0.5mmの範囲内が更に好ましい。これにより、前記レーザ距離測定部11の分解能を小さくすることで、本発明に係る内空断面形状測定装置1の精度を向上させることが可能となるため、近年、要求されている測定精度の数.0mmを容易に達成することが可能となる。
又、前記レーザ距離測定部11の再現性は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、1.0mm以下の範囲が好ましく、0.5mm以下の範囲が更に好ましい。これにより、算出する内空断面形状の測定結果の再現性を向上させることが可能となる。
又、前記レーザ距離測定部11の距離測定時間(応答時間)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、10msec〜10000msecの範囲内が好ましく、20msec〜6000msecの範囲内が更に好ましい。これにより、前記レーザ距離測定部11の距離測定時間を短くすることで、本発明に係る内空断面形状測定装置1の測定時間(内空断面形状の測定時間)を短縮させることが可能となるため、現場における内空断面形状の確認や検査を迅速に行うことが可能となる。
又、前記レーザ距離測定部11のレーザ光の光径(スポット径)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、5mm〜100mmの範囲内が好ましく、10mm〜30mmの範囲内が更に好ましい。これにより、前記レーザ光は、結局、前記円筒部12aの内空の中心軸を通過し、当該円筒部12aの内空の中心点となり、更に、前記屈折部13の屈曲点Bで屈曲して、当該屈曲点Bを中心として内空断面形状が算出される。そのため、前記レーザ光の光径が、実質的に、前記内空断面形状の屈曲点B(中心点)となるから、当該レーザ光の光径が小さい程、前記内空断面形状の屈曲点Bが理想的な中心点(ゼロ次元の点)に近づき、算出する内空断面形状の精度を向上させることが可能となる。
又、前記円筒回転部12は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、以下の構成が採用される。前記円筒回転部12は、前記レーザ距離測定部11のレーザ光の起点Aに対向する位置に、前記円筒部12aを回転可能に支持する回転ステージ部12bを備え、前記レーザ距離測定部11のレーザ光が前記円筒部12aの内部の中心軸を通過するように配置する。これにより、前記円筒部12aの内部の軸方向と、当該内部を通過するレーザ光の軸方向とが一致する。ここで、前記回転ステージ部12bは、前記円筒部12aが装着(挿入)可能な装着孔が設けられており、当該装着孔の内周面に前記円筒部12aの外周面を周方向に回転させる回転部(図示せず)が設けられている。次に、前記円筒回転部12は、前記回転部を介して円筒部12aの回転を制御するモータ制御部12cを所定の位置(例えば、前記レーザ距離測定部11の上面)に設け、当該モータ制御部12cと前記回転ステージ部12bの回転部とを制御信号線で通信可能に接続する。そして、前記モータ制御部12cが、制御信号に基づいて前記回転ステージ部12bの回転部を介して円筒部12aを当該円筒部12aの中心軸を中心として所定の角度で回転させるようになっている。
又、前記円筒部12aの回転方式は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、前記回転ステージ12bの回転部の構成により、ギア式でもベルト式でも構わない。
又、前記円筒部12aの内空径(径方向のサイズ)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、10mm〜30mmの範囲内であると好ましい。これにより、前記レーザ光の光径よりも所定距離だけ大きいサイズとなり、前記円筒部12aの内部は、当該レーザ光が通過する光路であるとともに、当該円筒部12aの端部12a1は、前記屈折部13が直接固定されるため、当該レーザ光の通過を確実にするとともに、当該屈折部13の固定を強固にすることが出来る。又、前記円筒部12aは回転対象であるため、内空径が小さい程、面振れを生じ難くすることが出来るとともに、装置全体が嵩張らすに小型化することが可能となる。
又、前記円筒部12aの軸方向のサイズは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、10mm〜50mmの範囲内であると好ましい。これにより、前記レーザ光の起点Aから対象物の反射点Cまでの測定距離Lのうち、内空断面形状に寄与しないレーザ光の起点Aから前記屈折部13の屈折点Bまでの固定距離d(mm)を出来るだけ短く設定することが可能となり、前記内空断面形状に寄与する前記屈折部13の屈折点Bから前記対象物の反射点Cまでの半径距離D(mm)の測定範囲を拡大することが可能となる(後述)。
又、前記円筒回転部12の分解能(回転限界)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.01度〜0.10度の範囲内が好ましく、0.02度〜0.05度の範囲内が更に好ましい。これにより、前記内空断面形状の半径距離D(mm)を詳細に区切った角度R(度)で計測することが可能となるため、木目細かい分解能の内空断面形状を算出することが可能となる。
又、前記円筒回転部12の面振れは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.010mm〜0.100mmの範囲内であると好ましく、0.010mm〜0.030mmの範囲内であると更に好ましい。これにより、前記内空断面形状の精度を更に向上させることが可能となる。尚、前記面振れは、例えば、ダイヤルゲージ等の測定機材を用いて、前記円筒回転部12が円筒部12aを所定の角度R(度)で回転させた直後の当該円筒部12aの最大振れと最小振れとの差が対応する。
又、前記円筒回転部12の平行度は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.010mm〜0.100mmの範囲内であると好ましく、0.010mm〜0.050mmの範囲内であると更に好ましい。これにより、前記円筒部12aの内部の軸方向を、前記レーザ光の軸方向(進行方向)に精度高く一致させることが可能となり、前記内空断面形状の精度を更に向上させることが可能となる。
又、前記レーザ距離測定部11と平面台10との間には、当該レーザ距離測定部11の固定面を傾斜可能な第一の傾斜調整部10bが備えられており、又、前記円筒回転部12(回転ステージ部12b)と平面台10との間には、当該円筒回転部12(回転ステージ部12b)の固定面を傾斜可能な第二の傾斜調整部10cが備えられている。これにより、ユーザが、第一の傾斜調整部10b、第二の傾斜調整部10cを調整することにより、前記レーザ距離測定部11のレーザ光の軸方向と、前記円筒回転部12の円筒部12aの内部の軸方向とを精度高く一致させることが可能となる。
又、前記屈折部13は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、透明性の部材で作製された三角プリズムやペンタプリズム、反射板(屈折板、ミラー部)等が採用される。例えば、図1に示すように、前記屈折部13は、透明性部材の直方体の一端部を、一端面から、対向する他端面に向かって45度の角度で切断された形状であり、当該切断面に反射板を設けることで、前記円筒部12aの端部12a1から出射したレーザ光の進行方向を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して90度だけ(直角に)屈折(反射)させるように構成している。
又、前記屈折部13に取り付けられる反射板は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、反射強化アルミ膜等の反射強化金属膜が採用される。
又、前記屈折部13の外形寸法公差(寸法許容限界)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.1mm〜0.5mmの範囲内であると好ましく、0.1mm〜0.3mmの範囲内であると更に好ましい。これにより、前記反射板の屈折点Bのブレに外形寸法公差の寄与を小さくして、算出する内空断面形状の精度を向上させることが可能となる。
又、前記屈折部13の角度公差(角度許容限界)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.01度〜0.05度の範囲内であると好ましく、0.01度〜0.03度の範囲内であると更に好ましい。これにより、上述と同様に、前記反射板の屈折点Bのブレに角度公差の寄与を小さくして、算出する内空断面形状の精度を向上させることが可能となる。
又、前記屈折部13の円筒部12aの端部12a1への固定方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、ネジ、接着剤、磁石等を用いる方法、前記円筒部12aの端部12a1の屈折部13に直接接触される位置に当該屈折部13の固定面の周側面を挟持する挟持手段を用いる方法等が挙げられる。
又、前記屈折部13と前記円筒部12aの端部12a1との間には、当該屈折部13の固定面を傾斜可能な第三の傾斜調整部(図示せず)が備えられており、ユーザが、第三の傾斜調整部を調整することで、前記円筒部12aの端部12a1から出射したレーザ光の進行方向を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して90度だけ精度高く屈折させることが可能となる。
又、前記断面形状算出部14は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、図1に示すように、ノートパソコン等の端末装置又は携帯端末装置を採用することが出来る。前記断面形状算出部14を、所定の変換器11aを介して前記レーザ距離測定部11と通信可能に接続し、当該断面形状算出部14が、所定の制御信号(例えば、レーザ光の照射開始信号、照射停止信号等)を前記レーザ距離測定部11に送信したり、当該レーザ距離測定部11からの制御信号(例えば、測定距離結果等)を受信したりする。又、前記断面形状算出部14を、所定の変換器12dを介して前記円筒回転部12のモータ制御部12cと通信可能に接続し、当該断面形状算出部14が、所定の制御信号(例えば、円筒部12aを予め設定した基準位置へ移動させるための基準位置移動信号、円筒部12aの前記基準位置から所定の角度だけ回転させるための回転信号等)を前記モータ制御部12cに送信したり、当該モータ制御部12cからの制御信号(例えば、円筒部12aの回転完了信号等)を受信したりする。
又、前記断面形状算出部14は、前記屈折点Bを中心とした内空の断面形状を算出すると、当該算出した内空の断面形状を所定の表示部14aに表示させる。
又、前記表示部14aは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、液晶ディスプレイの他に、ユーザがキー操作可能なタッチパネルが採用される。
又、本発明では、前記レーザ距離測定部11と前記円筒回転部12とがそれぞれ固定される平面台10の同一固定面上に、水平面に対して当該固定面の傾斜(角度)を測定する傾斜測定部15(傾斜計)が設けられ、前記内空断面形状測定装置1を所定の地面に設置した場合に、前記固定面の傾斜を確認することが可能となる。
又、前記傾斜測定部15は、例えば、前記断面形状算出部14と通信可能に接続され、当該断面形状算出部14が、前記傾斜測定部15の制御信号を送受信し、当該傾斜測定部15の傾斜測定を実行したり、当該傾斜の測定結果を前記表示部14aに表示させたりする。
ここで、前記傾斜測定部15の種類は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、2軸傾斜計等が好ましい。
又、前記傾斜測定部15の傾斜測定範囲は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、−30度〜+30度の範囲内であると好ましく、−25度〜+25度の範囲内であると更に好ましい。これにより、対象物の内空を、水平面に対して直角な断面形状として精度高く算出することが可能となる。
又、前記傾斜測定部15の分解能は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.001度〜0.010度の範囲内であると好ましく、0.001度〜0005度の範囲内であると更に好ましい。これにより、上述と同様に、対象物の内空を、水平面に対して直角な断面形状として精度高く算出することが可能となる。
又、本発明では、前記平面台10の下面(前記レーザ距離測定部11と前記円筒回転部12との固定面に対向する面)に、地面に設置可能な支持部(例えば、三脚)が設けられる。そして、前記平面台10は、当該平面台10の固定面を水平状態に調整可能な水平調整ステージが適用され、更に、水平面に対して前記平面台10の固定面の角度や傾斜を確認する水準器が設けられる。これにより、前記傾斜測定部15の測定結果や水準器の測定結果に基づいて、ユーザが前記水平調整ステージの各隅の上下動作可能なアクチュエータを調整し、前記平面台10の固定面、つまり、前記レーザ距離測定部11と前記円筒回転部12との固定面を水平状態にすることが可能となる。
又、本発明では、前記レーザ距離測定部11の近傍に、前記断面形状算出部14から送信される制御信号に基づいて所定数の色の光を点灯させる点灯部16が設けられる。前記点灯部16は、例えば、緑色、赤色、黄色、青色の4種類のLED光源が直列に配置され、前記断面形状算出部14が、各種の動作に応じて、所定の色のLED光源を点灯させる。例えば、前記断面形状算出部14が、内空断面形状を測定中であれば、前記点灯部16の赤色のLED光源を点灯させ、測定完了であれば、前記点灯部16の緑色のLED光源を点灯させ、待機中であれば、前記点灯部16の黄色のLED光源を点灯させる。
又、本発明では、前記レーザ距離測定部11、前記円筒回転部12のモータ制御部12c、前記断面形状算出部14、前記傾斜測定部15、前記点灯部16に電力をそれぞれ供給する電力部17が設けられ、各部に必要な電力を供給している。
又、本発明では、前記断面形状算出部14に、所定の記憶媒体18(例えば、USBメモリ)が装着可能に設けられ、内空の断面形状の測定結果を前記記憶媒体18に記憶させ、ユーザが携帯出来るようにしている。
又、本発明では、前記断面形状算出部14が、LAN等のネットワーク19に通信ケーブを介して通信可能に接続され、例えば、内空の断面形状の測定結果を、前記ネットワーク19に接続されたサーバや携帯端末装置、タブレット端末に送信し、測定現場から離れた遠隔地で、ユーザが前記測定結果を閲覧することが出来る。
又、本発明では、前記平面台10に固定されたレーザ距離測定部11、円筒回転部12、屈折部13等を覆うカバー部20が設けられ、測定時以外では、各部の上面に被せられ、塵や埃等の付着を防止する。
<内空断面形状の測定原理>
次に、本発明に係る内空断面形状測定装置1の測定原理について説明する。図3は、本発明に係る内空断面形状測定装置の測定原理を示す概略図であり、図3Aは、本発明に係る内空断面形状測定装置の測定原理を示す正面概略図であり、図3Bは、本発明に係る内空断面形状測定装置の測定原理を示す左側面概略図である。
本発明に係る内空断面形状測定装置1のレーザ距離測定部11は、図3A、図3Bに示すように、基本的に、起点Aから発信したレーザ光が、円筒部12aの内部(中心軸)を通過して当該円筒部12aに直接固定された屈折部13で直角に屈折し、屈折後のレーザ光の進行方向に存在する対象物に反射して、同じ光路を経て起点Aに戻ってくるまでの時間を距離に換算することで、前記レーザ光の起点Aから対象物の反射点Cまでの測定距離Lを測定する。
ここで、前記レーザ距離測定部11と前記円筒回転部12とは平面台10の同一固定面に固定されていることで、前記レーザ距離測定部11の起点Aから、前記屈折部13の屈折点Bまでの固定距離d(mm)は、常に一定となる。
一方、前記屈折部13の屈折点Bから前記対象物の反射点Cまでの半径距離Dは、測定対象となる対象物の種類、前記円筒部12aの回転角度R(度)等に応じて異なることになる。
そこで、前記固定距離d(mm)を予め測定しておき、前記断面形状算出部14が、前記測定距離L(mm)から当該固定距離d(mm)を減算することで、前記半径距離D(mm)を算出することが可能となる。
尚、前記レーザ距離測定部11のレーザ光による測定距離L(mm)は、長くなればなる程、前記レーザ光のスポット径が広がり、誤差が大きくなる。そのため、前記固定距離d(mm)を、例えば、前記半径距離D(mm)と比較して短く設定する等、出来るだけ短く設定することで、前記半径距離D(mm)に及ぼす誤差の影響を小さくし、前記半径距離D(mm)の精度を更に向上させることが可能となる。
ここで、前記固定距離d(mm)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、100mm〜300mmの範囲内であると好ましく、220mm〜230mmの範囲内であると更に好ましい。これにより、前記内空断面形状に寄与しない固定距離d(mm)を出来るだけ短く設定することで、当該内空断面形状に寄与する半径距離D(mm)の測定範囲を拡大し、前記内空断面形状の測定限界を拡張することが可能となる。
次に、本発明に係る屈折部13の回転によりレーザ光の進行方向が屈折点Bを中心として、例えば、一回転(360度回転)することを説明する。
図4は、本発明に係る屈折部の回転によりレーザ光の進行方向が変更する状態を示す斜視図であり、図4Aは、レーザ光の進行方向が上方向に変更された状態を示す斜視図であり、図4Bは、レーザ光の進行方向が右方向に変更された状態を示す斜視図である。又、図4Cは、レーザ光の進行方向が下方向に変更された状態を示す斜視図であり、図4Dは、レーザ光の進行方向が左方向に変更された状態を示す斜視図である。
本発明では、図4A、図4B、図4C、図4Dに示すように、前記円筒部12aを回転させることで、前記屈折点Bからのレーザ光の進行方向を簡単に360度回転させることが可能である。例えば、図4Aに示すように、前記屈折部13の反射板が上を向いている場合は、レーザ光の進行方向が上方向になる。この状態を、例えば、予め設定する基準角度R0の基準状態として、前記円筒部12aを外側(前記円筒部12aの端部12a1から出射するレーザ光の進行方向と逆方向)から見て時計回りに90度だけ回転すると、図4Bに示すように、前記屈折部13の反射板が左方向を向く。ここで、前記円筒部12aの内部の軸方向とレーザ光の軸方向とが一致していることから、前記屈折部13の回転では、前記屈折部13の屈折点Bの方向が実質的に左方向を向くことになる。そのため、これに伴って、前記レーザ光の進行方向が左方向に変更されるのである(基準角度R0に対する回転角度R=90度)。
又、前記円筒部12aを時計回りに90度だけ更に回転すると、図4Cに示すように、前記屈折点Bの方向が実質的に下方向を向き、前記レーザ光の進行方向が下方向に変更される(基準角度R0に対する回転角度R=180度)。更に、前記円筒部12aを時計回りに90度だけ回転すると、図4Dに示すように、前記屈折点Bの方向が実質的に右方向を向き、前記レーザ光の進行方向が右方向に変更される(基準角度R0に対する回転角度R=270度)。最後に、前記円筒部12aを時計回りに90度だけ回転すると、図4Aに示すように、当該円筒部12aは基準状態に戻り、前記屈折点Bの方向が実質的に上方向を向き、前記レーザ光の進行方向が上方向に変更される(基準角度R0に対する回転角度R=360度=R0)。つまり、本発明では、前記屈折点Bからのレーザ光の進行方向を、当該屈折点Bを中心に360度回転させることが可能となるのである。
図5は、本発明に係る内空断面形状測定装置の測定状態を示す左側面概略図である。そして、図5に示すように、前記断面形状算出部14が、基準状態、例えば、前記屈折点Bを中心として基準角度R0(例えば、0度)の半径距離D0を測定し、次に、前記断面形状算出部14が、前記円筒部12aを前記基準角度R0から所定の回転角度R1(例えば、45度)まで回転させた後、当該回転角度R1の状態における半径距離D1を測定する。そして、前記断面形状算出部14が、前記基準角度R0からの回転角度R1と、当該回転角度R1の状態における半径距離D0とを所定のメモリーに関連付けて記憶する。更に、前記断面形状算出部14が、前記回転角度R1の状態から、更に前記回転角度R1(45度)(基準角度R0から回転角度R2=90度)だけ回転させた後、当該回転角度R2の状態における半径距離D2を測定し、両者を前記メモリーに関連付けて記憶する。これを基準角度R0から一回転(360度)まで繰り返すことで、0度から360度までの範囲内での回転角度Rと半径距離Dとを得ることが出来る。そして、前記断面形状算出部14は、0度から360度までの範囲内での回転角度Rと半径距離Dとから、前記屈折点Bを原点とした極座標系において、前記回転角度Rごとの原点から半径距離Dまで点Cを線で結合するか、回転角度Rと半径距離Dとを極座標から直交座標に変換して、前記屈折点Bを原点とした直交座標系において、前記回転角度Rごとの原点から半径距離Dまで点Cを線で結合すれば、前記屈折点Bを中心とし、前記回転角度Rにおける半径距離Dを半径とした内空の断面形状を簡単に算出することが可能となる。
尚、上述では、1台の内空断面形状測定装置1が360度(一回転)当たりの内空断面形状を算出するよう構成したが、他の構成でも良い。例えば、2台の内空断面形状測定装置1を用意し、2台の内空断面形状測定装置1を上下に設置し、上方の内空断面形状測定装置で、対象物の内空の水平線から上方の部分の内空(半回転)を測定し、下方の内空断面形状測定装置で、対象物の内空の水平線から下方の部分の内空(半回転)を測定するように構成し、各内空断面形状測定装置の180度(半回転)の内空断面形状を一つの360度(一回転)の内空断面形状に結合すればよい。これにより、1台の内空断面形状測定装置1の測定に要する時間を短縮するとともに、360度当たりの回転角度を小さく設定して、現実の内空断面形状を木目細かく算出することが可能となる。
又、上述では、前記円筒回転部12は、前記基準角度R0から前記回転角度R(度)ごとに、前記円筒部12aを一回転させ、前記断面形状算出部14は、前記円筒部12aの一回転分の複数の回転角度R(度)と、前記回転角度R(度)ごとに測定される前記測定距離Lとに基づいて、一回転分の内空の断面形状を算出したが、他の構成でも良い。例えば、測定対象の種類によって、対象物の高さのみを確認したい場合、対象物の幅のみを確認したい場合等、0度から180度までの範囲内でも良い場合があるため、前記円筒回転部12は、前記基準角度R0から前記回転角度R(度)ごとに、前記円筒部12aを半回転させ、前記断面形状算出部14は、前記円筒部12aの半回転分の複数の回転角度R(度)と、前記回転角度R(度)ごとに測定される前記測定距離Lとに基づいて、半回転分の内空の断面形状を算出しても良い。
<実施例、比較例等>
以下、実施例、比較例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<実施例1>
図1〜図5に示すように、本発明に係る内空断面形状測定装置1を組み立てて作製し、図6Aに示すように、作製した内空断面形状測定装置を実施例1の内空断面形状測定装置とした。尚、屈折部13は、反射板を採用した。
<比較例1>
市販のレーザ距離計(Leica DISTO D510)を比較例1の内空断面形状測定装置とした。
<内空断面形状測定試験1>
直径が400.0mmの小管を測定対象物とし、その小管の内空断面形状を測定した。
<内空断面形状測定試験1の結果>
図6Bに示すように、実施例1の内空断面形状測定装置を小管の内部に設置して、当該小管の内空断面形状を測定した。測定条件は、基準角度R0を真上に設定し、360度当たり各回転角度(度)を7.8度に設定し、360度の円形当たりに46点の測定点を測定するよう構成した。その結果、図7に示すように、360度の円形当たりに46点を92秒で測定出来た(測定点1点当たりに2秒の測定時間)。尚、測定点は、白点であり、測定された内空断面形状は、各白点を白線で結合された形状である。又、青線で示した円形は、既知の小管の直径400.0mmに基づいて描いた形状であり、赤線で示した円形は、既知の小管の直径400.0mmに対して所定の閾値(例えば、10.0mm)を加算又は減算した2種類の管理値で描いた形状である。
又、測定精度を検討すると、前記測定結果において、回転角度が0度(R0)の時の半径距離D0と、回転角度が約180度(R)の時の半径距離Dとを加算した値である小管の上下方向の寸法は、400.7mmであり、既知の小管の直径400.0mmと比較して、+0.7mmであった。又、回転角度が90度(R)の時の半径距離Dと、回転角度が270度(R)の時の半径距離Dとを加算した値である小管の左右方向の寸法は、393.1mmであり、既知の小管の直径400.0mmと比較して、−6.9mmであった。又、回転角度が45度(R)の時の半径距離Dと、回転角度が225度(R)の時の半径距離Dとを加算した値である小管の右上左下方向の寸法は、399.6mmであり、既知の小管の直径400.0mmと比較して、−0.4mmであった。又、回転角度が135度(R)の時の半径距離Dと、回転角度が315度(R)の時の半径距離Dとを加算した値である小管の右下左上の寸法は、394.9mmであり、既知の小管の直径400.0mmと比較して、+5.1mmであった。従って、数mm〜0.数mmの測定精度を得ることが出来た。尚、比較例1の内空断面形状測定装置は、小管に入れて内空断面形状を計測することが出来なかった。
<内空断面形状測定試験2>
直径が5660mmの円形空洞物を測定の対象物とし、その円形空洞物の内空断面形状を測定した。
<内空断面形状測定試験2の結果>
実施例1の内空断面形状測定装置を円形空洞物の内部に設置して、当該円形空洞物の内空断面形状を測定した。ここで、円形空洞物の直径が大きいことから、実施例1の内空断面形状測定装置を2台用意して、実施例1の内空断面形状測定装置を上下に固定し、上方の内空断面形状測定装置で、円形空洞物の水平線から上方の部分の内空(半回転)を測定し、下方の内空断面形状測定装置で、円形空洞物の水平線から下方の部分の内空(半回転)を測定するように構成した。測定条件は、基準角度R0を真上に設定し、180度当たり各回転角度を4.0度に設定し、180度当たりに45点、二台合わせて、360度の円形当たりに90点の測定点を測定するよう構成した。その結果、図8Aに示すように、360度の円形当たりに90点を約3分で測定出来た(2台同時測定開始で、測定点1点当たりに2秒の測定時間)。
又、測定精度を検討すると、前記測定結果において、回転角度が0度(R0)の時(A点)の半径距離D0と、回転角度が約180度(R)の時(C点)の半径距離Dとを加算した値である円形空洞物の上下方向の寸法(A−C寸法)は、5557.0mmであり、既知の円形空洞物の直径5660mmと比較して、−3.0mmであった。又、回転角度が90度(R)の時(B点)の半径距離Dと、回転角度が270度(R)の時(D点)の半径距離Dとを加算した値である円形空洞物の左右方向の寸法(B−D寸法)は、5554.0mmであり、既知の円形空洞物の直径5660mmと比較して、−6.0mmであった。又、回転角度が45度(R)の時(E点)の半径距離Dと、回転角度が225度(R)の時(G点)の半径距離Dとを加算した値である円形空洞物の右上左下方向の寸法は、5551.0mmであり、既知の円形空洞物の直径5660mmと比較して、−9.0mmであった。又、回転角度が135度(R)の時(F点)の半径距離Dと、回転角度が315度(R)の時(H点)の半径距離Dとを加算した値である円形空洞物の右下左上の寸法(F−H寸法)は、5560.0mmであり、既知の円形空洞物の直径5660mmと比較して、0.0mmであった。従って、数mm〜0.数mmの測定精度を得ることが出来た。
一方、比較例1の内空断面形状測定装置で、測定者が、実施例1の内空断面形状測定装置と同じ場所で、回転角度が90度(R)の時(B点)の半径距離Dと、回転角度が270度(R)の時(D点)の半径距離Dとをそれぞれ測定すると、測定点2点当たり5分を要した(測定点1点当たりに2.5分の測定時間)。また、測定精度を検討すると、前記2点の半径距離Dから、円形空洞物の左右方向の寸法(B−D寸法)を測定すると、5553mmであり、既知の円形空洞物の直径5660mmと比較して、−7mmであった。
尚、図8Bには、測定点2点を用いて、既知の円形空洞物の直径5660mmが変わらないことを仮定して仮想的に描いた円形を示している。図8Aの円形と、図8Bの円形とを比較すると、実測点(測定点)から構成される円形が、円形空洞物の内空断面形状を正確に反映していることが理解出来る。
尚、本発明では、高精度を実現することが可能となるため、トンネル、地下大空洞、建物、大型の円筒管等の内空の断面形状の測定のみならず、地下小空洞、小型の円筒管等の内空の断面形状も、もちろん測定することが出来て、更に、これらの経時変化の確認、検査等に好適となる。
又、本発明では、既設のトンネル等の内空において、現状の内空断面形状を測定し、その測定結果から、ヒビ等の有無の確認等の維持管理に適用すると、更に、好ましい。例えば、本発明に係る内空断面形状測定装置を、台車や自動車等の搬送車に載置して、内空断面形状を移動しながら測定する。この際、前記内空断面形状測定装置は、例えば、当該内空断面形状測定装置の屈折部13が前方又は後方に突出するように、前記搬送車に載置する。これにより、搬送車の進行方向に対して直角方向の内空断面形状を360度分、確実に測定できる。又、移動しながら、前記内空断面形状を測定すると、擬似的に3次元の内空を模写できて、既設のトンネルや建物等の内空の3次元形状を、精度高く確認することが可能となり、建物等の内空の維持管理に最適となる。
又、本発明では、対象物の内空断面形状が既知である場合、断面形状算出部14が、既知の内空断面形状に対して所定の閾値を加算又は減算した管理値を設け、測定点又は各測定点で結合された測定線が当該管理値を超過するか否かを判定し、当該判定の結果、前記測定点又は測定線が前記管理値を超過する場合には、当該測定点又は測定線を赤字で濃く表示する等の警告表示を行なったり、アラームを発したりしても良い。これにより、対象物の内空断面の計時変化を簡単に確認することが出来る。
又、本発明では、断面形状算出部14が、前記円筒回転部12が回転させた円筒部12aの回転角度を所定の補正値で補正するよう構成しても良い。これにより、円筒部12aの回転の際に、回転ブレが多少生じて0.数度のずれが生じる場合であっても、このずれに対応した補正値で回転角度を補正することで、精度高い回転角度R(度)で内空断面形状を算出することが出来る。
又、本発明では、断面形状算出部14が、レーザ光の回転角度R(度)に応じて当該レーザ光で測定される測定距離L(mm)を補正するよう構成しても良い。これにより、レーザ距離計で測定される測定距離は、レーザ光が対象物の平面に対して直角に入射して反射されることを前提とした測定値であるため、レーザ光の回転角度R(度)により、その前提が崩れ、レーザ光が直角に入射せず、反射光量が弱くなり、測定距離にバラつきが生じる場合がある。その場合であっても、レーザ光の回転角度R(度)に応じて所定の補正値で測定距離L(mm)を補正すれば、精度高い回転角度Rで内空断面形状を算出することが出来る。
又、本発明では、屈折部13に着脱可能のカバーを設けるよう構成しても良い。これにより、測定時にカバーを外し、非測定時にカバーを付けることで、屈折部13に大気中の塵、埃等の付着を防止することが出来る。又、屈折部13の屈折面に、結露防止のカバーや表面処理を施しても良い。
又、本発明では、平面台に、外部からの振動の伝達を防止する振動伝達防止部材を設けるよう構成しても良い。これにより、内空断面形状の計測時では、外部の振動により、測定された内空断面形状に誤差が生じるおそれがあるため、振動伝達防止部材を設けることで、外部振動による誤差の発生を防止することが出来る。尚、振動伝達防止部材は、例えば、ゴムや発泡材等の緩衝材や制振装置を挙げることが出来る。
以上のように、本発明に係る内空断面形状測定装置及び内空断面形状計測方法は、トンネルや建物等の内空断面形状の測定分野、例えば、土木技術分野、測量技術分野、計測技術分野等に有用であり、簡単な構成であるにもかかわらず、内空断面形状を精度高く測定することが可能な内空断面形状測定装置及び内空断面形状計測方法として有効である。
1 内空断面形状測定装置
10 平面台
11 レーザ距離測定部
12 円筒回転部
13 屈折部
14 断面形状算出部
15 傾斜測定部
16 点灯部
17 電源部
18 記憶媒体
19 ネットワーク
20 カバー部
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な内空断面形状測定装置及び内空断面形状計測方法を完成させた。即ち、本発明に係る内空断面形状測定装置は、内空断面形状を測定する内空断面形状測定装置であって、レーザ距離測定部と、円筒回転部と、反射部と、断面形状算出部とを備える。レーザ距離測定部は、固定面を水平状態とする平面台に固定され、水平に対応する、円筒部の内空の中心軸に沿ってレーザ光を通過させ、当該レーザ光の起点から当該レーザ光が反射した対象物の第一の反射点までの測定距離を測定する。円筒回転部は、前記平面台の端部に固定され、前記円筒部の内空の中心軸を回転軸とし、予め設定された基準角度から所定の回転角度ごとに、当該円筒部を前記レーザ光の周方向に回転させる。反射部は、前記円筒部のうち、レーザ光が出射する円筒部の端部に直接固定されて外部に突出し、当該出射したレーザ光を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して直角に第二の反射点で反射させ、前記対象物に前記第一の反射点で反射させて、前記第二の反射点を介して、前記起点に戻らせることで、前記起点から前記第二の反射点を介して前記第一の反射点までの間のレーザ光の光路を同じとする。断面形状算出部は、前記円筒部の複数の回転角度と、前記回転角度ごとに測定される前記測定距離とに基づいて、前記第二の反射点を中心とし、前記回転角度における前記レーザ光の反射部の第二の反射点から当該レーザ光の対象物の第一の反射点までの半径距離を半径とし、前記中心から前記半径距離までの前記回転角度ごとの点を線で結合した内空の断面形状を算出する。
又、前記円筒回転部は、前記レーザ距離測定部のレーザ光の起点に対向する位置に、前記円筒部を回転可能に支持する回転ステージ部を備え、前記回転ステージ部は、前記円筒部が装着される装着孔と、前記装着孔の内周面に前記円筒部の外周面を周方向に回転させる回転部と、前記回転部を介して前記円筒部を当該円筒部の中心軸を中心として所定の角度で回転させるモータ制御部と、を備え、前記反射部は、前記円筒部に直接固定される。
又、本発明に係る内空断面形状測定方法は、内空断面形状を測定する内空断面形状測定方法であって、レーザ距離測定ステップと、円筒回転ステップと、反射ステップと、断面形状算出ステップとを備える。レーザ距離測定ステップは、固定面を水平状態とする平面台に固定されたレーザ距離測定部で、水平に対応する、円筒部の内空の中心軸に沿ってレーザ光を通過させ、当該レーザ光の起点から当該レーザ光が反射した対象物の第一の反射点までの測定距離を測定する。円筒回転ステップは、前記平面台の端部に固定された円筒回転部で、前記円筒部の内空の中心軸を回転軸とし、予め設定された基準角度から所定の回転角度ごとに、当該円筒部を前記レーザ光の周方向に回転させる。反射ステップは、前記円筒部のうち、レーザ光が出射する円筒部の端部に直接固定されて外部に突出した反射部で、当該出射したレーザ光を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して直角に第二の反射点で反射させ、前記対象物に前記第一の反射点で反射させて、前記第二の反射点を介して、前記起点に戻らせることで、前記起点から前記第二の反射点を介して前記第一の反射点までの間のレーザ光の光路を同じとする。断面形状算出ステップは、前記円筒部の複数の回転角度と、前記回転角度ごとに測定される前記測定距離とに基づいて、前記第二の反射点を中心とし、前記回転角度における前記レーザ光の反射部の第二の反射点から当該レーザ光の対象物の第一の反射点までの半径距離を半径とし、前記中心から前記半径距離までの前記回転角度ごとの点を線で結合した内空の断面形状を算出する。
本発明に係る内空断面形状測定装置は、内空断面形状を測定する内空断面形状測定装置1であって、図1、図2に示すように、レーザ距離測定部11と、円筒回転部12と、反射部13と、断面形状算出部14とを備える。レーザ距離測定部11は、固定面を水平状態とする平面台10に固定され、水平に対応する、円筒部12aの内空の中心軸に沿ってレーザ光を通過させ、当該レーザ光の起点A(発信源)から当該レーザ光が反射した対象物の第一の反射点(図示せず)までの測定距離L(mm)を測定する。円筒回転部12は、前記平面台10の端部10aに固定され、前記円筒部12aの内空の中心軸を回転軸とし、予め設定された基準角度R0(度)から所定の回転角度R(度)まで、当該円筒部12aを前記レーザ光の周方向に回転させる。更に、反射部13は、前記円筒部12aのうち、レーザ光が出射する円筒部12aの端部12a1に直接固定(直付け)されて外部に突出し、当該出射したレーザ光を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して直角に第二の反射点で反射させ、前記対象物に前記第一の反射点で反射させて、前記第二の反射点を介して、前記起点に戻らせることで、前記起点から前記第二の反射点を介して前記第一の反射点までの間のレーザ光の光路を同じとする。断面形状算出部14は、前記円筒部12aの複数の回転角度R(度)と、前記回転角度R(度)ごとに測定される前記測定距離L(mm)とに基づいて、前記第二の反射点Bを中心とし、前記回転角度R(度)における前記レーザ光の反射部13の第二の反射点Bから当該レーザ光の対象物の第一の反射点Cまでの半径距離D(mm)を半径とした内空の断面形状を算出する。これにより、簡単な構成であるにもかかわらず、内空断面形状を精度高く測定することが可能となる。
即ち、本発明では、円筒部12aに直接固定された軽量な反射部13を回転させることで、レーザ光を第二の反射点Bから回転させるため、レーザ距離計自体を回転させる従来技術と比較して、当該レーザ光の回転に伴う回転ブレが生じ難く、前記反射部13の回転制御が容易となる。そのため、レーザ光を正確に回転させることが可能となるとともに、内空断面形状の計測結果に回転ブレの誤差を生じ難くすることが可能となり、計測結果の精度を向上させることが可能となる。
又、本発明では、前記円筒回転部12を平面台10の端部10aに固定することで、当該円筒回転部12の円筒部12aに直接固定された反射部13が前記平面台10の端部10aの外部(前方)に突出した形態となる。つまり、前記反射部13のレーザ光の第二の反射点Bが前記平面台10の端部10aの外部(前方)に位置することになる。そのため、従来技術のように、レーザ距離計自体の回転に伴うケーブル等の供回りや干渉を全く生じさせることなく、前記第二の反射点Bからレーザ光を自由に回転させることが可能となる。
<各構成>
ここで、前記レーザ距離測定部11は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、以下の構成が採用される。前記レーザ距離測定部11は、レーザ光を対象物に当てることで、当該レーザ光の起点Aから前記対象物の第一の反射点Cで反射して当該起点Aに戻ってくるまでの時間を距離に換算し、前記レーザ光の起点Aから前記対象物の第一の反射点Cまでの測定距離Lを測定する。
又、前記レーザ距離測定部11のレーザ光の光径(スポット径)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、5mm〜100mmの範囲内が好ましく、10mm〜30mmの範囲内が更に好ましい。これにより、前記レーザ光は、結局、前記円筒部12aの内空の中心軸を通過し、当該円筒部12aの内空の中心点となり、更に、前記反射部13の第二の反射点Bで反射して、当該第二の反射点Bを中心として内空断面形状が算出される。そのため、前記レーザ光の光径が、実質的に、前記内空断面形状の第二の反射点B(中心点)となるから、当該レーザ光の光径が小さい程、前記内空断面形状の第二の反射点Bが理想的な中心点(ゼロ次元の点)に近づき、算出する内空断面形状の精度を向上させることが可能となる。
又、前記円筒部12aの内空径(径方向のサイズ)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、10mm〜30mmの範囲内であると好ましい。これにより、前記レーザ光の光径よりも所定距離だけ大きいサイズとなり、前記円筒部12aの内部は、当該レーザ光が通過する光路であるとともに、当該円筒部12aの端部12a1は、前記反射部13が直接固定されるため、当該レーザ光の通過を確実にするとともに、当該反射部13の固定を強固にすることが出来る。又、前記円筒部12aは回転対象であるため、内空径が小さい程、面振れを生じ難くすることが出来るとともに、装置全体が嵩張らすに小型化することが可能となる。
又、前記円筒部12aの軸方向のサイズは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、10mm〜50mmの範囲内であると好ましい。これにより、前記レーザ光の起点Aから対象物の第一の反射点Cまでの測定距離Lのうち、内空断面形状に寄与しないレーザ光の起点Aから前記反射部13の第二の反射点Bまでの固定距離d(mm)を出来るだけ短く設定することが可能となり、前記内空断面形状に寄与する前記反射部13の第二の反射点Bから前記対象物の第一の反射点Cまでの半径距離D(mm)の測定範囲を拡大することが可能となる(後述)。
又、前記反射部13は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、透明性の部材で作製された三角プリズムやペンタプリズム、反射板(ミラー部)等が採用される。例えば、図1に示すように、前記反射部13は、透明性部材の直方体の一端部を、一端面から、対向する他端面に向かって45度の角度で切断された形状であり、当該切断面に反射板を設けることで、前記円筒部12aの端部12a1から出射したレーザ光の進行方向を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して90度だけ(直角に)反射させるように構成している。
又、前記反射部13に取り付けられる反射板は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、反射強化アルミ膜等の反射強化金属膜が採用される。
又、前記反射部13の外形寸法公差(寸法許容限界)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.1mm〜0.5mmの範囲内であると好ましく、0.1mm〜0.3mmの範囲内であると更に好ましい。これにより、前記反射板の第二の反射点Bのブレに外形寸法公差の寄与を小さくして、算出する内空断面形状の精度を向上させることが可能となる。
又、前記反射部13の角度公差(角度許容限界)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、0.01度〜0.05度の範囲内であると好ましく、0.01度〜0.03度の範囲内であると更に好ましい。これにより、上述と同様に、前記反射板の第二の反射点Bのブレに角度公差の寄与を小さくして、算出する内空断面形状の精度を向上させることが可能となる。
又、前記反射部13の円筒部12aの端部12a1への固定方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、ネジ、接着剤、磁石等を用いる方法、前記円筒部12aの端部12a1の反射部13に直接接触される位置に当該反射部13の固定面の周側面を挟持する挟持手段を用いる方法等が挙げられる。
又、前記反射部13と前記円筒部12aの端部12a1との間には、当該反射部13の固定面を傾斜可能な第三の傾斜調整部(図示せず)が備えられており、ユーザが、第三の傾斜調整部を調整することで、前記円筒部12aの端部12a1から出射したレーザ光の進行方向を、出射する前のレーザ光の進行方向に対して90度だけ精度高く反射させることが可能となる。
又、前記断面形状算出部14は、前記第二の反射点Bを中心とした内空の断面形状を算出すると、当該算出した内空の断面形状を所定の表示部14aに表示させる。
又、本発明では、前記平面台10に固定されたレーザ距離測定部11、円筒回転部12、反射部13等を覆うカバー部20が設けられ、測定時以外では、各部の上面に被せられ、塵や埃等の付着を防止する。
本発明に係る内空断面形状測定装置1のレーザ距離測定部11は、図3A、図3Bに示すように、基本的に、起点Aから発信したレーザ光が、円筒部12aの内部(中心軸)を通過して当該円筒部12aに直接固定された反射部13で直角に反射し、反射後のレーザ光の進行方向に存在する対象物に反射して、同じ光路を経て起点Aに戻ってくるまでの時間を距離に換算することで、前記レーザ光の起点Aから対象物の第一の反射点Cまでの測定距離Lを測定する。
ここで、前記レーザ距離測定部11と前記円筒回転部12とは平面台10の同一固定面に固定されていることで、前記レーザ距離測定部11の起点Aから、前記反射部13の第二の反射点Bまでの固定距離d(mm)は、常に一定となる。
一方、前記反射部13の第二の反射点Bから前記対象物の第一の反射点Cまでの半径距離Dは、測定対象となる対象物の種類、前記円筒部12aの回転角度R(度)等に応じて異なることになる。
次に、本発明に係る反射部13の回転によりレーザ光の進行方向が第二の反射点Bを中心として、例えば、一回転(360度回転)することを説明する。
図4は、本発明に係る反射部の回転によりレーザ光の進行方向が変更する状態を示す斜視図であり、図4Aは、レーザ光の進行方向が上方向に変更された状態を示す斜視図であり、図4Bは、レーザ光の進行方向が右方向に変更された状態を示す斜視図である。又、図4Cは、レーザ光の進行方向が下方向に変更された状態を示す斜視図であり、図4Dは、レーザ光の進行方向が左方向に変更された状態を示す斜視図である。
本発明では、図4A、図4B、図4C、図4Dに示すように、前記円筒部12aを回転させることで、前記第二の反射点Bからのレーザ光の進行方向を簡単に360度回転させることが可能である。例えば、図4Aに示すように、前記反射部13の反射板が上を向いている場合は、レーザ光の進行方向が上方向になる。この状態を、例えば、予め設定する基準角度R0の基準状態として、前記円筒部12aを外側(前記円筒部12aの端部12a1から出射するレーザ光の進行方向と逆方向)から見て時計回りに90度だけ回転すると、図4Bに示すように、前記反射部13の反射板が左方向を向く。ここで、前記円筒部12aの内部の軸方向とレーザ光の軸方向とが一致していることから、前記反射部13の回転では、前記反射部13の第二の反射点Bの方向が実質的に左方向を向くことになる。そのため、これに伴って、前記レーザ光の進行方向が左方向に変更されるのである(基準角度R0に対する回転角度R=90度)。
又、前記円筒部12aを時計回りに90度だけ更に回転すると、図4Cに示すように、前記反射点Bの方向が実質的に下方向を向き、前記レーザ光の進行方向が下方向に変更される(基準角度R0に対する回転角度R=180度)。更に、前記円筒部12aを時計回りに90度だけ回転すると、図4Dに示すように、前記反射点Bの方向が実質的に右方向を向き、前記レーザ光の進行方向が右方向に変更される(基準角度R0に対する回転角度R=270度)。最後に、前記円筒部12aを時計回りに90度だけ回転すると、図4Aに示すように、当該円筒部12aは基準状態に戻り、前記第二の反射点Bの方向が実質的に上方向を向き、前記レーザ光の進行方向が上方向に変更される(基準角度R0に対する回転角度R=360度=R0)。つまり、本発明では、前記第二の反射点Bからのレーザ光の進行方向を、当該第二の反射点Bを中心に360度回転させることが可能となるのである。
図5は、本発明に係る内空断面形状測定装置の測定状態を示す左側面概略図である。そして、図5に示すように、前記断面形状算出部14が、基準状態、例えば、前記第二の反射点Bを中心として基準角度R0(例えば、0度)の半径距離D0を測定し、次に、前記断面形状算出部14が、前記円筒部12aを前記基準角度R0から所定の回転角度R1(例えば、45度)まで回転させた後、当該回転角度R1の状態における半径距離D1を測定する。そして、前記断面形状算出部14が、前記基準角度R0からの回転角度R1と、当該回転角度R1の状態における半径距離D0とを所定のメモリーに関連付けて記憶する。更に、前記断面形状算出部14が、前記回転角度R1の状態から、更に前記回転角度R1(45度)(基準角度R0から回転角度R2=90度)だけ回転させた後、当該回転角度R2の状態における半径距離D2を測定し、両者を前記メモリーに関連付けて記憶する。これを基準角度R0から一回転(360度)まで繰り返すことで、0度から360度までの範囲内での回転角度Rと半径距離Dとを得ることが出来る。そして、前記断面形状算出部14は、0度から360度までの範囲内での回転角度Rと半径距離Dとから、前記第二の反射点Bを原点とした極座標系において、前記回転角度Rごとの原点から半径距離Dまで点Cを線で結合するか、回転角度Rと半径距離Dとを極座標から直交座標に変換して、前記第二の反射点Bを原点とした直交座標系において、前記回転角度Rごとの原点から半径距離Dまで点Cを線で結合すれば、前記第二の反射点Bを中心とし、前記回転角度Rにおける半径距離Dを半径とした内空の断面形状を簡単に算出することが可能となる。
<実施例1>
図1〜図5に示すように、本発明に係る内空断面形状測定装置1を組み立てて作製し、図6Aに示すように、作製した内空断面形状測定装置を実施例1の内空断面形状測定装置とした。尚、反射部13は、反射板を採用した。
又、本発明では、既設のトンネル等の内空において、現状の内空断面形状を測定し、その測定結果から、ヒビ等の有無の確認等の維持管理に適用すると、更に、好ましい。例えば、本発明に係る内空断面形状測定装置を、台車や自動車等の搬送車に載置して、内空断面形状を移動しながら測定する。この際、前記内空断面形状測定装置は、例えば、当該内空断面形状測定装置の反射部13が前方又は後方に突出するように、前記搬送車に載置する。これにより、搬送車の進行方向に対して直角方向の内空断面形状を360度分、確実に測定できる。又、移動しながら、前記内空断面形状を測定すると、擬似的に3次元の内空を模写できて、既設のトンネルや建物等の内空の3次元形状を、精度高く確認することが可能となり、建物等の内空の維持管理に最適となる。
又、本発明では、反射部13に着脱可能のカバーを設けるよう構成しても良い。これにより、測定時にカバーを外し、非測定時にカバーを付けることで、反射部13に大気中の塵、埃等の付着を防止することが出来る。又、反射部13の反射面に、結露防止のカバーや表面処理を施しても良い。
1 内空断面形状測定装置
10 平面台
11 レーザ距離測定部
12 円筒回転部
13 反射部
14 断面形状算出部
15 傾斜測定部
16 点灯部
17 電源部
18 記憶媒体
19 ネットワーク
20 カバー部