JP2015037505A - 肺容量の減少方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】慢性閉塞性肺疾患に対して有効な治療効果を発揮する処置方法を提供する。
【解決手段】気腫化した気腫部が形成された肺10の辺縁11の少なくとも一か所で当該辺縁の近傍に存在する肺実質の伸縮を抑制することにより、肺容量を減少させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、肺容量の減少方法に関する。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、正常な呼吸を妨げる肺疾患の広範な群を意味し、肺気腫や慢性気管支炎に罹患することにより肺が閉塞する疾患である。
このうち、肺気腫は、ガス交換の場となる呼吸細気管支、肺胞道、肺胞、及び肺胞嚢を含む肺胞実質と呼ばれる組織に破壊をともなった異常な拡大が生じた状態をいう。正常な肺胞実質は呼気時に収縮するが、気腫化した肺胞実質は呼吸により拡張した後はもとには戻らない。このため、呼気を十分に行えない。その上、肺胞の有効面積や血管床(肺胞の表面に縦横に走る毛細血管)が減るため、肺全体の換気能力が低下する。加えて、炎症によりエラスチンなどが破壊されているため、肺の弾力性も低下し、気道を引っ張って広げていることができず、気管支が変形しやすい状態になる。このため、呼気のときに肺が縮むと、その気管支が空気に満たされた周りの肺胞に圧迫されて狭くなり、肺が過膨脹し、空気が出にくくなる。
肺気腫に対する処置としては、現在のところ、一時的に症状を緩和させる酸素療法や薬物療法に加え、外科的方法として、肺の病変部を除去し、肺の正常部の膨張を促す肺容積減少手術(Lung Volume Reduction Surgery:LVRS)が行われているが、この肺容積減少手術では病変部だけでなく病変部近傍の多くの正常部も除去される場合がある上、侵襲が大きく、入院期間も長くなることから、患者への負担が大きい。
一方、特許文献1には肺の病変部を除去することなく、肺を収縮させることによって肺の過膨張状態を緩和させる治療方法が提案されている。この治療方法では、気腫部が形成された気管支等の肺実質に、周辺組織を掻き寄せるような形状付けがなされた形状記憶合金性のコイルを留置し、気管支とともに気管支周辺の組織を掻き寄せることによって肺全体を収縮させている。さらに、コイルが備える弾性によって線維化した肺に張力を付与して呼気時の肺の収縮を補助することにより肺から空気を抜け出し易くしている。
特表2012−501813号公報
上記の方法によれば、肺の過膨張した状態を緩和させることができ、かつ呼気時の肺の収縮を補助することが可能となるため、一定の治療効果を得ることは可能である。しかしながら、気種化の進行に伴い肺実質およびその周辺に掻き寄せる対象となる組織が存在しなくなったような患者には適用することができない。このため、適用可能な患者の対象が患部の症状如何によって限定されてしまうため、汎用性に欠けてしまう。
そこで、本発明は、慢性閉塞性肺疾患に対して有効な治療効果を発揮する処置方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の(1)〜(13)のいずれかの方法によって達成され得る。
(1)気腫化した気腫部が形成された肺の辺縁の少なくとも一ヶ所で当該辺縁の近傍に存在する肺実質の伸縮を抑制することにより肺容量を減少させる、肺容量の減少方法。
(2)前記肺に含まれる葉のうち、少なくとも前記気腫部が形成された葉で前記肺実質の伸縮を抑制する、上記(1)に記載の肺容量の減少方法。
(3)前記肺の辺縁のうち、少なくとも下縁、水平裂、斜裂、横隔面、肺尖、前縁、心切痕、小舌のいずれかを含む所定の範囲で前記肺実質の伸縮を抑制する、上記(1)または上記(2)に記載の肺容量の減少方法。
(4)少なくとも前記所定の範囲の連続した領域で前記肺実質の伸縮を抑制する、上記(3)に記載の肺容量の減少方法。
(5)少なくとも前記所定の範囲の複数の部位で前記肺実質の伸縮を抑制する、上記(3)または上記(4)に記載の肺容量の減少方法。
(6)前記辺縁以外の部位において、スポット状および/または前記辺縁へ延在する線状のパターンで前記肺実質の伸縮を抑制する、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の肺容量の減少方法。
(7)前記肺実質の伸縮を抑制するために、前記肺に前記肺実質の弾性が減少した弾性減少部を形成する、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の肺容量の減少方法。
(8)少なくとも前記肺の生体組織を焼灼することにより、前記弾性減少部を形成する、上記(7)に記載の肺容量の減少方法。
(9)少なくとも前記肺の生体組織を線維化することにより、前記弾性減少部を形成する、上記(7)または上記(8)に記載の肺容量の減少方法。
(10)少なくとも前記肺の生体組織を硬化することにより、前記弾性減少部を形成する、上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の肺容量の減少方法。
(11)少なくとも前記肺の生体組織を冷却することにより、前記弾性減少部を形成する、上記(7)〜(10)のいずれか1つに記載の肺容量の減少方法。
(12)前記肺実質の伸縮を抑制するために、前記肺の生体組織を拘束する拘束器具を少なくとも使用する、上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の肺容量の減少方法。
(13)経気管支的に導入した医療装置および/または体表側から導入した医療装置を使用して前記肺実質の伸縮を抑制する、上記(1)〜(12)のいずれか1つに記載の肺容量の減少方法。
上記(1)に記載の発明によれば、気腫部が形成された肺の容量を減少させ、呼吸困難感を緩和することができるため、慢性閉塞性肺疾患に対して有効な治療効果を発揮することができる。
上記(2)に記載の発明によれば、肺に含まれる葉のうち、少なくとも気腫部が形成された葉で肺実質の伸縮を抑制しているため、より一層好適に肺容量を減少させることが可能になる。
上記(3)に記載の発明によれば、肺の辺縁のうち、少なくとも下縁、水平裂、斜裂、横隔面、肺尖、前縁、心切痕、小舌のいずれかを含む所定の範囲で肺実質の伸縮を抑制するため、下方への肺の拡張動作を抑えることができ、肺内部へのガスの流入を好適に防止することができる。
上記(4)に記載の発明によれば、所定の範囲の連続した領域で肺実質の伸縮を抑制しているため、肺の拡張動作をより一層好適に抑えることが可能になり、肺の容量の減少を確実に行うことが可能になる。
上記(5)に記載の発明によれば、所定の範囲の複数の部位で肺実質の伸縮を抑制しているため、肺の拡張動作をより一層好適に抑えることが可能になり、肺の容量の減少を確実に行うことが可能になる。
上記(6)に記載の発明によれば、辺縁以外の部位において、スポット状および/または辺縁へ延在する線状のパターンで肺実質の伸縮を抑制するため、肺の容量を効率よく減少させることが可能になる。
上記(7)に記載の発明によれば、肺に肺実質の弾性が減少した弾性減少部を形成するため、持続的に肺実質の伸縮を抑制することが可能になる。
上記(8)に記載の発明によれば、肺の生体組織を焼灼することにより弾性減少部を形成するため、より確実に肺実質の伸縮を抑制することができる。
上記(9)に記載の発明によれば、肺の生体組織を線維化することにより、弾性減少部を形成するため、より確実に肺実質の伸縮を抑制することができる。
上記(10)に記載の発明によれば、肺の生体組織を硬化することにより、弾性減少部を形成するため、より確実に肺実質の伸縮を抑制することができる。
上記(11)に記載の発明によれば、肺の生体組織を冷却によって壊死を起こし、弾性減少部を形成するため、より確実に肺実質の伸縮を抑制することができる。
上記(12)に記載の発明によれば、肺の生体組織を拘束する拘束器具を使用するため、肺実質の伸縮の抑制と、その抑制の解除を可逆的に行うことが可能になる。
上記(13)に記載の発明によれば、経気管支的に導入した医療装置および/または体表側から導入した医療装置を使用して肺実質の伸縮を抑制するため、アクセスがより容易な導入方法を、処置を行う部位や医療装置の種類に応じて任意に選択することができ、処置を迅速かつ簡単に行うことが可能になる。
図1は、実施形態に係る肺容量の減少方法が適用された肺を示す図であって、(A)は、肺の概観斜視図、(B)は、(A)の矢印1B方向から見た肺の底面を示す図である。 図2は、実施形態に係る肺容量の減少方法が適用された肺を示す図であって、(A)は、図1(A)の矢印2A方向から見た肺の表面を示す図、(B)は、図1(A)の矢印2B方向から見た肺の背面を示す図である。 図3は、実施形態に係る肺容量の減少方法が適用された肺を示す図であって、(A)は、図1(A)の矢印3A方向から見た肺の外側面を示す図、(B)は、図1(A)の矢印3B方向から見た肺の内側面を示す図である。 図4は、肺の辺縁の近傍に存在する肺実質の伸縮を抑制することにより肺容量が減少される原理を説明するための概念図であって、(A)は、肺実質の伸縮を抑制する前の状態の辺縁の一部を拡大して示す断面図、(B)は、肺実質の伸縮が抑制された状態の辺縁の一部を拡大して示す断面図である。 図5は、肺の辺縁に対する処置を行うための手順を説明するための図であって、(A)は、経気管支的に医療装置を導入する手順を模式的に示す図、(B)は、体表面から経皮的に医療装置を導入する手順を模式的に示す図である。 図6(A)、(B)は、肺実質の伸縮を抑制する部位を例示する図である。 図7(A)、(B)は、肺実質の伸縮を抑制する部位を例示する図である。 図8(A)、(B)は、肺実質の伸縮を抑制する部位を例示する図である。 実施例を説明するための図であって、辺縁の近傍に存在する肺実質の伸縮が拘束された肺を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1〜図3は、本発明に係る肺容積の減少方法が適用された肺を示す図である。図4は、肺容積が減少する原理の説明に供する図である。図5は、肺容積の減少方法の手順の説明に供する図である。なお、図中のX軸は肺の幅方向を示し、Y軸は肺の長手方向を示し、Z軸は肺の厚み方向を示す。
本実施形態に係る肺容量の減少方法(以下、「処置方法」とも記載する。)は、気腫部が形成された肺の容量(体積)を減少させることにより、肺の過膨張状態を緩和させ、肺気腫疾患の症状を和らげることを可能にするものである。
図1(A)に示すように、本実施形態に係る処置方法は、気腫化した気腫部が形成された肺10の辺縁11の少なくとも一ヶ所で当該辺縁11の近傍に存在する肺実質15(図4(A)参照)の伸縮を抑制することを含む。図1〜図3において辺縁11の境界を二点鎖線で示す。本実施形態における「肺の辺縁」とは、肺10の外形をなす外周縁の境界部分(稜線部分)を含む一定の部位である。肺実質15の伸縮を抑制する部位は、肺10の辺縁11であればどのような箇所や範囲でもよいが、本実施形態においては二点鎖線で囲んだ範囲(図中のドットが付された部位、後述する「弾性減少部31」に相当する)を処置対象部位30に設定している。
図4を参照して、辺縁11の近傍に存在する肺実質15の伸縮を抑制することにより肺容量が減少する原理を説明する。
図4(A)を参照して、肺実質15(肺胞上皮細胞とそれに囲まれた肺胞腔)は、酸素を体内に取り込んだり、二酸化炭素(ガス)を体外へ排出したりするガス交換の場としての機能を備えている。肺実質15には弾性を備えた細胞間基質が存在する。肺実質15が伸長する際には、細胞間基質が弾性的に変形することにより肺実質15の伸長が促される。この肺実質15の伸長が抑制されると、肺実質15によるガス交換機能が低下し、肺実質15へのガスの流入が抑えられる。一方で、肺実質15に滞留していたガスは、肺実質15のガス交換機能の低下に伴い肺10から徐々に排出される。
肺10はガスが流入されると、主に辺縁側を拡張させることにより肺10の全体を膨張させるように変形する。したがって、図4(B)に示すように、肺10の辺縁11の近傍に存在する肺実質15の伸長を抑制することにより、肺10の膨張を効果的に抑えることができ、肺容積を効率よく減少させることが可能になる。
肺実質15の伸縮を抑制する方法として、例えば、肺実質15の弾性が減少した弾性減少部31を形成する方法が挙げられる。本実施形態に係る処置方法では、肺10の辺縁11の生体組織を焼灼することにより、辺縁11の近傍に存在する肺実質15を壊死させ、弾性を消失させている。この弾性減少部31を形成することにより、弾性減少部31において持続的に肺実質15の伸縮を抑制することが可能になる。
なお、処置前後を比較して処置後の方が肺実質15の伸縮が抑制されているようであれば肺容積を減少させることが可能であるが、例えば、図4(B)に示すように、肺10の表面22および背面(裏面)23が接する程度に辺縁11を圧縮等することで辺縁11の近傍に存在する肺実質15の弾性をより確実に消失させることができ、治療効果を向上させることができる。
焼灼方法としては、例えば、辺縁11に熱風を吹き付ける方法、辺縁11に蒸気を吹き付ける方法、辺縁11にレーザーを照射する方法、辺縁11に発熱体を接触させる方法などが挙げられる。
また、肺10に弾性減少部31を形成する方法としては、焼灼を行う方法以外に、例えば、辺縁11周辺の生体組織を線維化させる方法、辺縁11周辺の生体組織を冷却して壊死させる方法、辺縁11に硬化性の剤等を注入または塗布する方法などを採用することが可能である。なお、上記の各方法を併用して弾性減少部31を形成することも可能である。
生体組織を線維化させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ポリカチオン、ポリアニオン、ポリカチオンとポリアニオンとの複合体、生分解性材料、癒着剤等を生体組織に注入する方法、末梢血管を塞栓する方法、クリップなどでの局所的な圧迫によって虚血にする方法等が挙げられる。
硬化性の剤の具体例としては、特に制限されないが、例えば、柔軟性重合硬化物、二液混合架橋ポリマー、接着剤、ウレタンエラストマー、光硬化性樹脂、アクリル系樹脂、骨セメント等が挙げられる。
冷却して壊死させる方法としては、例えば、液体窒素、ドライアイス、冷風を用いる方法、吸熱体を接触させる方法等が挙げられる。
また、肺実質15の伸縮を抑制するために、肺10の生体組織を拘束する拘束器具を使用することも可能である。拘束器具としては、例えば、辺縁11周辺の生体組織を把持や保持し、辺縁11近傍の肺実質15の伸縮を抑制するクリップ、ステープラー、開閉式の容器、縫合糸、袋、ネットなどを採用することができる。拘束具を使用することにより、肺実質15の伸縮の抑制と、その抑制の解除を可逆的に行うことが可能になる。
なお、肺容量を減少する処置は、弾性減少部31を形成する方法、拘束器具を使用する方法を併用して行うことが可能である。有効な治療効果を挙げることが可能な方法や、円滑に処置を行うことが可能な方法を、処置を行う部位や患者の病状に応じて任意に選択することができる。
次に図5を参照して、辺縁11の近傍に存在する肺実質15の伸縮を抑制する手順を説明する。
図5(A)に示すように、例えば、経気管支的に導入した医療装置100を使用して肺実質15の伸縮を抑制する処置を行うことができる。医療装置100は、前述した弾性減少部31を形成する場合は、例えば、アブレーション装置、レーザー照射装置、所定の流体や剤を塗布するためのカテーテルなどであり、拘束器具を使用する場合は、前述した各種の器具などである。医療装置100の導入は、気管支内を挿通可能に構成された公知のアクセスデバイス(カテーテルデバイス、注入用針筒等)110を使用して行うことができる。なお、アクセスデバイス110とともに軟性内視鏡などの撮像装置を併用することも可能である。
図5(B)に示すように、例えば、体表側から導入した医療装置100を使用して肺実質15の伸縮を抑制する処置を行うこともできる。例えば、図示するように、生体外部と肺10の辺縁11周辺とを連通する所定のポート120を設置し、このポート120を介して医療装置100の導入を行うことができる。この際、胸腔鏡や腹腔鏡などを併用してもよい。胸腔鏡等を使用する場合は、胸腔鏡等を導入するためのポートを増設してもよい。また、その他の方法として、ポート120を設置せずに、生体の胸部を開胸し、開胸した部分を通して医療装置100を導入することも可能である。
なお、肺容量を減少する処置は、経気管支的に導入した医療装置100により処置を行う方法、体表側から導入した医療装置100により処置を行う方法、開胸部分を通して医療装置100により処置を行う方法をそれぞれ併用して行うことも可能である。アクセスがより容易となる導入方法を、処置を行う部位や医療装置の種類に応じて任意に選択することができる。さらに、LVRS(Lung Volume Reduction Surgery)と併用して行ってもよい。併用する際、それぞれの処置は同時、もしくは期間を空けて行ってもよい。
次に、図1〜図3を参照して、本実施形態に係る処置方法が適用された肺10を説明する。なお、以下の説明においては、右肺下葉に対して処置を行った例を示すが、右肺上葉、中葉、または左肺上葉、下葉、または副葉に対しても同様の処置を行うことが可能である。また、一人の患者の右肺および左肺、または複数の葉に対して処置を行うことも可能である。
処置対象部位30は、肺10の底面21(図1(B)を参照)、肺10の表面22(図2(A)を参照)、肺10の背面23(図2(B)を参照)、肺10の外側面24(図3(A)を参照)、肺10の内側面25(図3(B)を参照)のそれぞれの辺縁11に設定している。
具体的には、底面21全体と、表裏両面22、23において底面21に隣接する下縁13と、両側面24、25において底面21に隣接する下縁13からの所定の範囲で処置を実施している。このように肺10の下縁13を含む所定の範囲で肺実質15の伸長を抑制することにより、下方への肺10の拡張動作を抑えることができ、肺10の内部へのガスの流入を好適に防止することができる。また、図示するように、下縁13を含む所定の範囲の連続した領域で肺実質15の伸縮を抑制することにより、肺10の拡張動作をより一層好適に抑えることが可能になる。特に、各図に示すように、底面21と、底面21に連なる下縁13を含む所定の範囲で肺10の下部側を袋状に覆うような形態で処置を行うことにより、肺10の上下方向の拡張、左右方向の拡張を抑えることができ、肺10の内部へのガスの流入をより効果的に防止することが可能になる。なお、肺10の水平裂、斜裂、横隔面、肺尖、前縁、心切痕、小舌のいずれかを含む所定の部位で肺実質15の伸縮を抑制することにより、上記のように肺10の拡張動作を抑えることが可能であるため、これらの部位に対して処置を行ってもよい。
本実施形態に係る処置方法は、例えば、肺10に含まれる葉のうち、少なくとも気腫部が形成された葉に対して行うことが好ましい。このような葉に対して処置を行うことにより、好適に肺容量を減少させることが可能になる。図1〜図3に示す例では、右肺10に含まれる上葉17、中葉18、下葉19のうち、気腫部が形成された下葉19に対して処置を行っている。なお、下葉19に対する処置とともに、下葉19に隣接する中葉18の一部に対しても処置を行っている。
以上のように、本実施形態に係る処置方法によれば、気腫部が形成された肺10の容量を減少させ、呼吸困難感を緩和することができるため、慢性閉塞性肺疾患に対して有効な治療効果を発揮することができる。
また、肺10に含まれる葉のうち、少なくとも気腫部が形成された葉で肺実質15の伸縮を抑制しているため、より一層好適に肺容量を減少させることが可能になる。
また、肺10の辺縁11のうち、少なくとも下縁13を含む所定の範囲で前記肺実質15の伸縮を抑制しているため、下方への肺10の拡張動作を抑えることができ、肺内部へのガスの流入を好適に防止することができる。
また、下縁13を含む所定の範囲の連続した領域で肺実質15の伸縮を抑制しているため、肺10の拡張動作をより一層好適に抑えることが可能になり、肺10の容量の減少を確実に行うことが可能になる。
また、肺10に肺実質15の弾性が減少した弾性減少部31を形成しているため、持続的に肺実質15の伸縮を抑制することが可能になる。
また、肺10の生体組織を焼灼することにより弾性減少部31を形成しているため、より確実に肺実質15の伸縮を抑制することができる。
また、肺10の生体組織を拘束する拘束器具を使用することにより、肺実質15の伸縮の抑制と、その抑制の解除を可逆的に行うことが可能になる。
また、経気管支的に導入した医療装置100および/または体表側から導入した医療装置100(開胸部分から導入した医療装置100を含む)を使用して肺実質15の伸縮を抑制するため、アクセスがより容易な導入方法を、処置を行う部位や医療装置の種類に応じて任意に選択することができ、処置を迅速かつ簡単に行うことが可能になる。
<変形例>
次に、肺実質15の伸縮を抑制する対象となる部位(処置対象部位)の変形例を例示する。前述したように、本実施形態に係る処置方法を肺10の辺縁11の少なくとも一ヶ所で実施することにより、肺10の容量を減少させることが可能である。したがって、以下の各変形例に示すような部位に対して処置を行う場合においても同様の効果を得ることができる。なお、各図において、二点鎖線で囲まれた部位は肺10の辺縁11を示し、ドットが付された部位は処置対象部位30を示す。また、各図においては説明の省略のために肺10(右肺)の背面23のみを示すが、底面21、表面22、両側面24、25などについては、前述した実施形態と同様の部位に設定することが可能であるし、また肺10(右肺)下葉以外の他の任意の部位に設定することも可能であり、特に限定されない。
図6(A)に示すように、例えば、辺縁11以外の部位に対して処置を行うことが可能である。また、辺縁11以外の部位では、例えば、スポット状に処置を行うことができる。さらに、辺縁11以外の部位において複数の箇所に対して処置を行うことができる。このように、辺縁11と、辺縁11以外の部位に対して処置を行うことにより、肺10の容量を効率よく減少させることが可能になる。
図6(B)に示すように、例えば、辺縁11以外の部位に対して辺縁11へ延在する線状のパターンに沿うように処置を行うことも可能である。本変形例に示すように処置を行うと、肺10の表裏両面に直交する方向(紙面に直交する方向、肺10の厚み方向)においても肺10の拡張動作を抑えることが可能になるため、肺10の容量をより一層効率よく減少させることが可能になる。特に、表面22も同様のパターンで処置を行う場合、表裏両面に直交する方向の拡張を効果的に抑えることが可能になる。また、本変形例では、1本の線状のパターンに沿うように処置を行っているが、複数本の線状のパターンに沿って処置を施すことで、より効果的に拡張を抑えることが可能である。
図7(A)に示すように、例えば、図6(B)のパターンに加えて、肺10の伸長方向(図中の上下方向)に、さらに線状のパターンで処置を行うことも可能である。本変形例によれば、図6(B)に示すパターンよりも肺10の表裏両面に直交する方向の拡張を効果的に抑えることが可能になる。なお、図7(A)では、一対の交差した線状のパターンを示したが、例えば、網目状に複数の交差した線状のパターンで処置を行うことで、より効果的に拡張を抑制することが可能である。
図7(B)に示すように、例えば、辺縁11の一部の連続した領域に対して処置を行う場合においても、肺10の容量を減少させることが可能である。
図8(A)に示すように、例えば、辺縁11にスポット状に処置を行うことが可能である。図示するように複数の箇所に処置を行ってもよいし、一ヶ所に行ってもよい。この場合においても、下縁13を含む所定の範囲の複数の部位で肺実質15の伸縮を抑制しているため、肺10の拡張動作を好適に抑えることが可能になり、肺10の容量の減少を確実に行うことが可能になる。
図8(B)に示すように、例えば、辺縁11の一部の連続した領域に対して処置を実施し、辺縁11の他の部位にスポット状に処置を実施することも可能である。このような処置を実施した場合においても、肺10の容量を減少させることが可能である。
<実施例>
次に、実施例を説明する。
図9には、豚から摘出した肺50に対して、図1〜図3に示した処置対象部位30と同様の箇所に対して処置を行った結果を簡略的に示している。なお、本発明は、実施例において説明する形態のみに限定されるものではない。
図9には、摘出した豚の肺50の背側を示している。実施例では、豚の右肺50の胸膜の表面の辺縁11(図中の二点鎖線で囲まれた部位)に対して、高温の熱風を吹き付けて、辺縁11周辺の組織および肺実質15を焼灼した。なお、辺縁11以外の部位には、熱風による焼灼を防ぐためのマスク材を配置した。焼灼した後、所定のケース内に肺50を収容し、ケース内を脱気して、肺50内部に流体を送り込むことで拡張させた。この状態で、処置を行う前の肺50と大きさを比較したところ、図9に示す矢印U方向に5cm程度収縮したことが確認できた。この結果より、実施形態に係る肺容量の減少方法が有効であるとの知見を得ることができた。
10 肺、
11 肺の辺縁、
13 下縁、
15 肺実質、
17 上葉、
18 中葉、
19 下葉、
21 肺の底面、
30 処置対象部位、
31 弾性減少部。

Claims (13)

  1. 気腫化した気腫部が形成された肺の辺縁の少なくとも一ヶ所で当該辺縁の近傍に存在する肺実質の伸縮を抑制することにより肺容量を減少させる、肺容量の減少方法。
  2. 前記肺に含まれる葉のうち、少なくとも前記気腫部が形成された葉で前記肺実質の伸縮を抑制する、請求項1に記載の肺容量の減少方法。
  3. 前記肺の辺縁のうち、少なくとも下縁、水平裂、斜裂、横隔面、肺尖、前縁、心切痕、小舌のいずれかを含む所定の範囲で前記肺実質の伸縮を抑制する、請求項1または請求項2に記載の肺容量の減少方法。
  4. 少なくとも前記所定の範囲の連続した領域で前記肺実質の伸縮を抑制する、請求項3に記載の肺容量の減少方法。
  5. 少なくとも前記所定の範囲の複数の部位で前記肺実質の伸縮を抑制する、請求項3または請求項4に記載の肺容量の減少方法。
  6. 前記辺縁以外の部位において、スポット状および/または前記辺縁へ延在する線状のパターンで前記肺実質の伸縮を抑制する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の肺容量の減少方法。
  7. 前記肺実質の伸縮を抑制するために、前記肺に前記肺実質の弾性が減少した弾性減少部を形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の肺容量の減少方法。
  8. 少なくとも前記肺の生体組織を焼灼することにより、前記弾性減少部を形成する、請求項7に記載の肺容量の減少方法。
  9. 少なくとも前記肺の生体組織を線維化することにより、前記弾性減少部を形成する、請求項7または請求項8に記載の肺容量の減少方法。
  10. 少なくとも前記肺の生体組織を硬化することにより、前記弾性減少部を形成する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の肺容量の減少方法。
  11. 少なくとも前記肺の生体組織を冷却することにより、前記弾性減少部を形成する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の肺容量の減少方法。
  12. 前記肺実質の伸縮を抑制するために、前記肺の生体組織を拘束する拘束器具を少なくとも使用する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の肺容量の減少方法。
  13. 経気管支的に導入した医療装置および/または体表側から導入した医療装置を使用して前記肺実質の伸縮を抑制する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の肺容量の減少方法。
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