JP2015028462A - 熱刺激電流測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の熱刺激電流測定装置は、試料の熱刺激電流を測定して得られた測定データを用いて、活性化エネルギーと温度の相関を示す相関データを取得するデータ取得部と、その相関データを用いて、活性化エネルギーと温度の相関をグラフ化したときのプロットの平坦部を抽出する抽出部43と、抽出部43の抽出結果に基づいて試料の特性を評価する評価部44と、評価部44による評価結果を画面に表示する表示部6と、を備える。
【選択図】図1
Description
がある。熱刺激電流測定法は、試料に電解を加えることにより試料内部や表面及び界面に存在する電荷トラップを注入キャリアで蓄積させ、昇温過程でのトラップサイトからの熱放出(脱トラップ)現象で生じる熱刺激電流(以下、「TSC」ともいう。)を検出する方法である。熱刺激電流測定法に関しては、たとえば、JIS、K7131等にも規定されている。
試料の熱刺激電流を測定して得られた測定データを用いて、活性化エネルギーと温度の相関を示す相関データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記相関データを用いて、前記活性化エネルギーと温度の相関をグラフ化したときのプロットの平坦部を抽出する抽出部と、
前記抽出部の抽出結果に基づいて前記試料の特性を評価する評価部と、
前記評価部による評価結果を画面に表示する表示部と、
を備えることを特徴とする熱刺激電流測定装置である。
前記抽出部は、前記グラフ化したときの低温側のプロットのうち、あらかじめ設定されたエネルギー範囲に収まっているプロットの部分を前記平坦部として抽出する
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の熱刺激電流測定装置である。
前記評価部は、前記平坦部に含まれるプロットの温度幅とあらかじめ設定された良否判定条件とを比較し、この比較結果に基づいて前記試料の特性の良否を評価する
ことを特徴とする上記第1又は第2の態様に記載の熱刺激電流測定装置である。
前記データ取得部は、試料の熱刺激電流を測定して得られた測定データを用いて複数の異なる昇温開始温度に対応するアレニウスプロットのデータ群を求めるとともに、当該データ群から前記複数の昇温開始温度ごとにアレニウスプロットの傾きを求めるデータ解析部と、前記データ解析部で求めた前記複数の昇温開始温度ごとのアレニウスプロットの傾きを、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフにプロットしたグラフデータを生成するデータ生成部と、を含み、
前記表示部は、前記データ生成部が生成した前記グラフデータに基づく前記グラフを、前記評価結果とあわせて表示する
ことを特徴とする上記第1〜第3の態様のいずれかに記載の熱刺激電流測定装置である。
前記表示部は、前記グラフの中に前記平坦部を示す目印を表示する
ことを特徴とする上記第4の態様に記載の熱刺激電流測定装置である。
ユーザーの入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記平坦部の抽出に用いる前記エネルギー範囲のデータを、前記試料の材料名及び/又は用途ごとに対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記抽出部は、前記入力操作部を用いてユーザーが指定した試料の材料名及び/又は用途に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記エネルギー範囲のデータを読み出し、このエネルギー範囲を適用して前記平坦部を抽出する
ことを特徴とする上記第2の態様に記載の熱刺激電流測定装置である。
前記表示部は、前記試料の材料名、前記試料の用途、前記抽出部が前記平坦部の抽出に用いた前記エネルギー範囲、及び前記試料の特性評価に用いた前記良否判定条
件のうち、少なくともいずれか一つを、前記評価結果に含めて表示する
ことを特徴とする上記第6の態様に記載の熱刺激電流測定装置である。
ユーザーの入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記表示部による画面表示を制御する表示制御部と、をさらに備え、
前記表示制御部は、前記入力操作部を用いてユーザーが表示の切り替えを指示した場合に、この指示にしたがって、前記表示部の画面に表示するグラフを、前記複数の異なる昇温開始温度に対応するアレニウスプロットと、前記活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフと、の間で切り替える
ことを特徴とする上記第4の態様に記載の熱刺激電流測定装置である。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.熱刺激電流測定装置の概略構成
2.TSC測定部の概略構成
3.処理フロー
4.実施の形態の効果
5.変形例等
図1は本発明の実施の形態に係る熱刺激電流測定装置の概略構成を示すブロック図である。図示のように、熱刺激電流測定装置は、TSC測定部1と、温度制御部2と、主制御部3と、情報処理部4と、入力操作部5と、表示部6と、表示制御部7と、記憶部8と、を備えている。
TSC測定部1は、測定対象の試料のTSCを測定するものである。TSC測定部1の構成については、後段で説明する。
温度制御部2は、あらかじめ決められた温度制御条件に基づいて、試料室(後述)の温度を制御するものである。
主制御部3は、熱刺激電流測定装置全体の動作を統括的に制御するものである。
情報処理部4は、種々の情報処理を行うものである。情報処理部4が行う情報処理のなかには、たとえば、演算処理や描画処理などが含まれる。情報処理部4は、大きくは、データ解析部41と、データ生成部42と、抽出部43と、評価部44と、を有する。以下、各部の機能について説明する。このうち、データ解析部41およびデータ生成部42は、活性化エネルギーと温度の相関を示す相関データを取得するデータ取得部を構成する。
データ解析部41は、TSC測定部1によって得られる測定データを用いて、あらかじめ決められたデータ解析を行うものである。具体的には、データ解析部41は、TSC測定部1の測定データを用いて、複数の異なる昇温開始温度に対応するアレニウスプロットのデータ群を求める。また、データ解析部41は、求めたアレニウスプロットのデータ群から、複数の昇温開始温度ごとにアレニウスプロットの傾きを求める。
データ解析部41で求めた複数の昇温開始温度ごとのアレニウスプロットの傾きを、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフにプロットしたグラフデータを生成するものである。
抽出部43は、活性化エネルギーと温度の相関をグラフ化したときのプロットの平坦部を抽出するものである。具体的な抽出方法については、後段で説明する。
評価部44は、抽出部43の抽出結果に基づいて資料の特性を評価するものである。具体的な評価方法や評価内容については、後段で説明する。
以上が、情報処理部4の各部の機能の概要である。
入力操作部5は、熱刺激電流測定装置を使用するユーザーが種々の情報を入力するために操作するものである。入力操作部5は、マウス、キーボード、ボタン、スイッチ、タッチパネルなどを用いて構成することが可能である。入力操作部5によって入力される情報には、たとえば、熱刺激電流測定装置の操作に関する情報(たとえば、測定開始を指示する情報など)や、TSC測定に関する情報(たとえば、測定条件を指定する情報、試料の情報など)などが含まれる。
表示部6は、評価部44による評価結果を画面に表示するものである。表示部6は、たとえば、カラー表示が可能な液晶表示装置や有機EL表示装置などを用いて構成される。
表示部6の画面は、タッチパネル付きの画面で構成することが可能である。表示部6の画面に表示される情報には、上述した評価結果の他にも、データ生成部42が生成したグラフが含まれる。また、表示部6の画面に表示される情報には、必要に応じて、データ解析部41による解析結果(アレニウスプロットなど)が含まれる。
表示制御部7は、表示部6による画面表示を制御するものである。具体的には、表示制御部7は、表示部6に画像(描画)データを入力することにより、その画像データに基づく情報を表示部6の画面に表示するように制御する。また、表示制御部7は、入力操作部5を介してユーザーから表示画面の切り替え等の指示がされた場合に、指示された情報を表示部6の画面に表示するように制御する。
記憶部8は、TSC測定や測定後のデータ解析等のために必要になる種々の情報(データ)を記憶するものである。
図2にTSC測定部の概略構成を示す。図2においては、試料室10の内部に試料台11が設けられている。試料室10の外壁部分には、試料室10に収容した試料12を加熱したり冷却したりするための温度可変機構(不図示)が組み込まれている。本実施の形態においては、試料室10の温度と、試料室10に収容した試料12の温度とが、実質的に同じ温度であるとする。試料台11は、測定の対象となる試料12を支持するものである。試料台11の形態(形状、寸法等)は、試料12の形態(粉体、液体、シート状、板状など)に応じて決定される。
)という非常に微小な電流を測定可能な電流計を用いて構成される。
次に、本発明の実施の形態に係る熱刺激電流測定装置を用いて、試料のTSC測定と特性評価を行う場合の処理フローについて、図3のフローチャートにしたがって説明する。なお、以下の処理は、主制御部3の制御下において実施されるものである。
まず、TSC測定と特性評価に関して、ユーザーが入力(指定)する情報を入力操作部5によって受け付ける。この段階でユーザーが入力する情報には、少なくとも、試料の材料名が含まれる。たとえば、試料が半導体材料であれば、SiCなどの具体的な材料名をユーザーが入力操作部5を用いて指定し、これを主制御部3で受け付ける。また、TSC測定に関する情報には、材料名とあわせて、又は材料名の代わりに、試料の用途を含めてもよい。試料の用途については、たとえばその試料が、絶縁膜として使用するものであるか、それとも半導体膜として使用するものであるか、といった情報を入力する。試料の用途をユーザーに指定させる理由は、その用途によって試料の評価基準を変える場合があるからである。TSC測定に関する情報には、必要に応じて、TSC測定の測定条件を含めてもよい。また、特性評価に関する情報として、試料の評価基準を変更するための情報を含めてもよい。
次に、TSC測定部1において試料のTSC測定を行う。以下に、TSC測定の原理と手順について説明する。TSC測定は、複数のステップで行われる。以下、各ステップについて、図4を参照しながら記述する。
第1ステップでは、試料室10の試料台11に試料12をセットして電極14,14を接続した後、ガス供給部15及び排気部16により、試料室10の内部を不活性ガスで満たした減圧雰囲気にする。また、第1ステップでは、温度制御部2が試料室10内の試料12の温度を室温から所定の温度Tsまで低下させる。ここで記述する所定の温度Tsとは、次の第2ステップにおいて、試料内のトラップを凍結させるのに必要な温度である。本実施の形態においては、所定の温度Tsが80Kに設定されているものとする。
第2ステップでは、試料12の温度を所定の温度Tsに維持した状態で、スイッチ19a,19bをオフからオンに切り替える。これにより、励起キャリアの発生に必要な電圧(以下、「トラッピング電圧」ともいう。)が、電圧源20から試料12に印加される。トラッピング電圧を印加する時間tsetは、トラップをキャリアで満たすのに必要な時間
を考慮して設定(調整)される。このとき、必要に応じて、トラッピング電圧の印加とあわせて、光照射部13から試料12に所定波長の光を照射してもよい。これにより、試料12の内部では、励起キャリア(電子、正孔)が発生するとともに、この励起キャリアが、伝導帯と価電子帯との間の禁制帯Egにおいて、あるエネルギー準位(以下、「トラップ準位」ともいう。)に捕獲される。すなわち、励起によって発生した電子と正孔は、それぞれトナー準位とアクセプター準位に捕獲される。このとき、キャリアが捕獲されるトラップ準位は、トラップエネルギーの深さ(以下、「トラップ深さ」ともいう。)として捉えることができる。いずれのトラップ準位に、どの程度のキャリアが捕獲されるかは、試料12の特性によって異なる。
第3ステップでは、スイッチ19a,19bをオンからオフに切り替えることにより、トラッピング電圧の印加を停止し、この状態をあらかじめ設定された保持時間tgsetだ
け保持する。保持時間tgsetは、トラップに捕獲すべきキャリア以外のキャリア(以下
、「余剰キャリア」ともいう。)を禁制帯から排除するのに必要な時間に応じて設定(調整)される。
第4ステップでは、スイッチ19a,91bをオフからオンに切り替えることにより、トラッピング電圧と逆極性のコレクティング電圧を電圧源20によって試料12に印加する。また、それと同時に、試料室10内の試料12を温度制御部2により一定速度で昇温させる。そして、この昇温過程でキャリアの解放により流れる電流(TSC)を電流計測部21で測定する。
1回目のTSC測定では、あらかじめ決められた昇温開始温度(本形態例では80K)から昇温終了温度の全温度範囲にわたって一定速度で連続的に昇温させる。このため、昇温工程を実施した場合は、上記の全温度範囲にわたる昇温過程でのキャリアの解放によって流れるTSCの測定データが得られる。このとき、測定によって得られた測定データをもとに保持時間tgsetの適否を判断し、保持時間tgsetが不足している場合は、保持時間tgsetを現在の設定よりも長くするように温度制御条件を変更して、TSC測定をや
り直してもよい。
まず、説明の前提として、温度制御部2による温度の可変範囲において、キャリアを凍結するための温度を80Kとし、この80Kを1回目の部分昇温によるTSC測定の昇温開始温度とするものとする。また、1回あたりの部分昇温の温度変化を30Kとする。そして、「昇温開始」→「昇温停止」→「急冷」を一つのサイクルとする部分昇温を複数回
に分けて行うものとする。また、前回の部分昇温と今回の部分昇温では、昇温開始温度を10Kずつシフトさせることにする。
まず、データ解析部41は、上述した部分昇温法によるTSC測定によって得られた測定データを取り込み、この測定データを用いてアレニウスの式に基づくアレニウスプロットを行う。以下に、アレニウスの式を記述する。
ITSC∝exp(−E/kT)
ここで、「ITSC」は熱刺激電流、「E」は活性化エネルギー、「k」はボルツマン定
数、「T」は絶対温度である。
対数、横軸に温度(K)の逆数(1/T)をとったものである。データ解析部41は、各回の部分昇温の測定データごとにアレニウスプロットを行う。これにより、上述のように昇温開始の温度を80K〜160Kの範囲で10Kずつシフトさせたときの各測定データのプロットが得られる。
次に、データ解析部41は、上記のアレニウスプロットのデータ群から、各昇温開始温度に対応するアレニウスプロットの傾きを計算によって求める。アレニウスプロットの傾きは、たとえば、最小二乗法による直線近似によって求めることができる。その際、複数の昇温開始温度ごとにアレニウスプロットのデータ群のすべてを用いるのではなく、上記図6に示すように、各々の昇温開始温度ごとにアレニウスプロットの立ち上がり部分(図中、符号Dで囲む部分)のデータ群だけを用いて、アレニウスプロットの傾きを求める。傾きの計算に使用するデータ群の範囲は、あらかじめデフォルトで設定してもよいし、ユーザーが入力操作部5を介して指定してもよい。
次に、データ生成部42は、データ解析部41が求めたアレニウスプロットの傾きを、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフにプロットしたグラフデータを生成する。図7は活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフである。このグラフでは、縦軸に活性化エネルギー(トラップの深さ)をとり、横軸に温度をとっている。そして、昇温開始温度ごとに、上記の計算によって求めた活性化エネルギーの値をプロットしている。この図か
ら分かるように、昇温開始温度が低い低温側(80K〜100K)では、温度の変化に対して活性化エネルギーの変化が小さい平坦部Pが存在している。また、それよりも昇温開始温度が高い高温側(110K〜160K)では、温度の変化に対して活性化エネルギーの変化が大きい傾斜部Sが存在している。
まず、TSC測定のために捕獲凍結されたキャリアは、試料を一定速度で昇温させたときに、エネルギー準位が低い(トラップの深さが浅い)ところから順に解放されるのが通常である。このため、昇温による温度の変化に対して、キャリアが解放されるトラップの深さは段階的に深くなる。したがって、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフのプロットは、昇温開始温度(80K)を起点とした右上がりの傾斜となる。
まず、昇温過程において、温度Taに達すると、図8(B)に示すように、キャリアaが解放される。次に、温度Taよりも高い温度Tbに達すると、図8(C)に示すように、キャリアbが解放される。次に、温度Tbよりも高い温度Tcに達すると、キャリアcが解放される。その結果、上記図7のグラフの低温側には、温度の変化に対して活性化エネルギーがほとんど変化しないプロットの部分(平坦部P)が現れる。
まず、抽出部43による平坦部の抽出方法について説明する。
抽出部43は、活性化エネルギーと温度の相関を上記図7のようにグラフ化したときのプロットの平坦部Pを抽出する。本実施の形態においては、抽出部43は、データ生成部42が生成したグラフデータを用いて、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフの低温側のプロットの平坦部Pを抽出する。平坦部Pの抽出は、次のように行う。すなわち、低温側にプロットされるデータを対象に、そのエネルギー変動幅が、あらかじめ材料ごとに設定された活性化エネルギーのエネルギー範囲(以下、「基準エネルギー範囲」ともいう。)に収まっているプロットの部分を、平坦部Pとして抽出する。平坦部Pの抽出に適用するエネルギー範囲のデータは、材料名に対応付けて記憶部8に記憶しておき、これを抽出部43が読み出すようにすればよい。また、これ以外にも、たとえば、TSC測定前やTSC測定後にユーザーが入力操作部5を用いて指定したエネルギー範囲を適用して平坦部を抽出してもよい。
まず、平坦部を抽出するための基準エネルギー範囲が、0.06eV以上、0.07eV以下の範囲(エネルギー幅で0.01eV以下)に設定されているものとする。また、上記図7において、昇温開始温度が80Kのときの活性化エネルギーは0.06eV、90Kのときの活性化エネルギーは0.06eV、100Kのときの活性化エネルギーは0.06eV、110Kのときの活性化エネルギーは0.08eVであるとする。そうした場合、抽出部43は、最初に、昇温開始温度が80Kと90Kのときの活性化エネルギーの変化量を求め、この変化量が基準エネルギー範囲に収まっているかどうかを確認する。この数値例では、昇温開始温度が80Kと90Kのときの活性化エネルギーの変化量が、基準エネルギー範囲に収まる。そうすると、抽出部43は、これに続いて、昇温開始温度が80Kと90Kと100Kのときの活性化エネルギーの変化量(最大値と最小値の差)を求め、この変化量が基準エネルギー範囲に収まっているかどうかを確認する。この数値例では、昇温開始温度が80Kと90Kと100Kのときの活性化エネルギーの変化量が、基準エネルギー範囲に収まる。そうすると、抽出部43は、これに続いて、昇温開始温度が80Kと90Kと100Kと110Kのときの活性化エネルギーの変化量を求め、この変化量が基準エネルギー範囲に収まっているかどうかを確認する。この数値例では、昇温開始温度が80Kと90Kと100Kと110Kのときの活性化エネルギーの変化量が、基準エネルギー範囲を超える。このため、抽出部43は、低温側のプロットにおいて、80K〜100Kの範囲を平坦部Pと抽出する。
まず、平坦部を抽出するための基準エネルギー範囲が、0.06eV以上、0.07eV以下の範囲(エネルギー幅で0.01eV以下)に設定されているものとする。また、図示はしないが、昇温開始温度が80Kのときの活性化エネルギーは0.06eV、90Kのときの活性化エネルギーは0.08eVとなっていて、100K以降も同様の変化量で活性化エネルギーが変化(増加)しているものとする。そうした場合、抽出部43は、最初に、昇温開始温度が80Kと90Kのときの活性化エネルギーの変化量を求め、この変化量が基準エネルギー範囲に収まっているかどうかを確認する。この数値例では、昇温開始温度が80Kと90Kのときの活性化エネルギーの変化量が、基準エネルギー範囲を超える。このため、抽出部43は、低温側のプロットにおいて、平坦部が存在しないと判断する。
次に、試料の評価方法について説明する。
まず、評価部44は、上述のように抽出部43が抽出した平坦部に含まれるプロットの温度幅を求める。たとえば、上記第1の数値例で平坦部を抽出した場合は、この平坦部に含まれるプロットの温度幅が20K(80K〜100K)と求まる。また、第2の数値例で平坦部を抽出した場合は、この平坦部に含まれるプロットの温度幅が0Kと求まる。ここで求めた「温度幅が0Kの場合」とは、「実質的に平坦部が存在しない場合」に相当する。
れば、試料の特性を「不良」と判定する。また、評価部44は、試料が絶縁膜として使用されるものであれば、先に求めた平坦部の温度幅が基準温度幅よりも小さいかどうかにより、試料の特性の良否を判定する。たとえば、基準温度幅が10Kに設定されている場合に、平坦部の温度幅が20Kであれば、試料の特性を「不良」と判定し、平坦部の温度幅が0Kであれば、試料の特性を「良」と判定する。
定条件を示している。この場合、平坦部の抽出に適用するエネルギー範囲を0.09〜0.11eV(エネルギー幅で0.02eV以下)に設定し、このエネルギー範囲を適用して抽出した平坦部の温度幅が83〜123K(≧40K)の条件を満たすときに、試料の特性を「良判定」とする。
次に、評価結果の表示方法について説明する。ここでは代表的な3つの表示例を挙げて説明する。いずれの表示例も、表示制御部7の制御下において表示部6に表示されるものである。
うに強調表示してもよい。強調表示の手法としては、たとえば、上記の囲み線を目印とする場合は、他の部分と異なる色で表示したり、他の線よりも太い線で表示したり、他の線と線種を変えて表示したりすればよい。
本発明の実施の形態に係る熱刺激電流測定装置においては、アレニウスプロットの傾き
を、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフにプロットした場合に、低温側のプロットに現れる平坦部を抽出し、この平坦部の温度幅に基づく試料の特性評価の評価結果を画面に表示する構成を採用している。これにより、TSC測定に不慣れなユーザーであっても、上述した平坦部という評価指標に基づいて、試料の評価を簡易に迅速に行うことができる。このため、非常に使い勝手のよい熱刺激電流測定装置を提供することができる。
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
5…入力操作部
6…表示部
7…表示制御部
8…記憶部
41…データ解析部
42…データ生成部
43…抽出部
44…評価部
Claims (8)
- 試料の熱刺激電流を測定して得られた測定データを用いて、活性化エネルギーと温度の相関を示す相関データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記相関データを用いて、前記活性化エネルギーと温度の相関をグラフ化したときのプロットの平坦部を抽出する抽出部と、
前記抽出部の抽出結果に基づいて前記試料の特性を評価する評価部と、
前記評価部による評価結果を画面に表示する表示部と、
を備えることを特徴とする熱刺激電流測定装置。 - 前記抽出部は、前記グラフ化したときの低温側のプロットのうち、あらかじめ設定されたエネルギー範囲に収まっているプロットの部分を前記平坦部として抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の熱刺激電流測定装置。 - 前記評価部は、前記平坦部に含まれるプロットの温度幅とあらかじめ設定された良否判定条件とを比較し、この比較結果に基づいて前記試料の特性の良否を評価する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱刺激電流測定装置。 - 前記データ取得部は、試料の熱刺激電流を測定して得られた測定データを用いて複数の異なる昇温開始温度に対応するアレニウスプロットのデータ群を求めるとともに、当該データ群から前記複数の昇温開始温度ごとにアレニウスプロットの傾きを求めるデータ解析部と、前記データ解析部で求めた前記複数の昇温開始温度ごとのアレニウスプロットの傾きを、活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフにプロットしたグラフデータを生成するデータ生成部と、を含み、
前記表示部は、前記データ生成部が生成した前記グラフデータに基づく前記グラフを、前記評価結果とあわせて表示する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱刺激電流測定装置。 - 前記表示部は、前記グラフの中に前記平坦部を示す目印を表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の熱刺激電流測定装置。 - ユーザーの入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記平坦部の抽出に用いる前記エネルギー範囲のデータを、前記試料の材料名及び/又は用途ごとに対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記抽出部は、前記入力操作部を用いてユーザーが指定した試料の材料名及び/又は用途に対応付けて前記記憶部に記憶されている前記エネルギー範囲のデータを読み出し、このエネルギー範囲を適用して前記平坦部を抽出する
ことを特徴とする請求項2に記載の熱刺激電流測定装置。 - 前記表示部は、前記試料の材料名、前記試料の用途、前記抽出部が前記平坦部の抽出に用いた前記エネルギー範囲、及び前記試料の特性評価に用いた前記良否判定条
件のうち、少なくともいずれか一つを、前記評価結果に含めて表示する
ことを特徴とする請求項6に記載の熱刺激電流測定装置。 - ユーザーの入力操作を受け付ける入力操作部と、
前記表示部による画面表示を制御する表示制御部と、をさらに備え、
前記表示制御部は、前記入力操作部を用いてユーザーが表示の切り替えを指示した場合に、この指示にしたがって、前記表示部の画面に表示するグラフを、前記複数の異なる昇温開始温度に対応するアレニウスプロットと、前記活性化エネルギーと温度の相関を示すグラフと、の間で切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の熱刺激電流測定装置。
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