JP2014233413A - 換気装置 - Google Patents

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清水 昭博
Akihiro Shimizu
昭博 清水
敦士 内田
Atsushi Uchida
敦士 内田
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Abstract

【課題】 より簡素な構成で振動空気圧による換気を行うことができる換気装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、被換気空間内部の内気を外部に排出し、被換気空間内部に外部のガス供給源からの外気を供給する換気装置に関する。そして、本発明の換気装置は、第1のシリンダと第1のピストンとを有する第1ピストン機構と、第2のシリンダと第2のピストンとを有する第2のピストン機構と、第1及び第2のピストンが同期した往復運動を行うように駆動させる駆動機構とを備え、第1のシリンダにはガス供給源から内部の方向にのみ通気可能な第1の弁と、内部から被換気空間の方向にのみ通気可能な第2の弁とが設けられており、第2のシリンダには、被換気空間から内部の方向にのみ通気可能な第3の弁と、内部から外部の方向にのみ通気可能な第4の弁とが設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、換気装置に関し、例えば、高頻度振動換気法を適用した人工呼吸器に関する。
従来の人工呼吸器の一つの方式として、高頻度振動換気法(HFOV:High Frequency Oscillatory Ventilation)がある。高頻度振動換気法とは、1回換気量が死腔体積(dead volume)以下の1〜3[ml/kg](体重)で,5〜30[Hz]の高い換気数の振動流を気道に与える人工換気法である。高頻度振動換気法を用いて換気を行うことにより、テーラー分散をはじめとする様々な要因で体内の換気が促進されるため、1周期あたりの換気量が死腔体積以下の小さな換気量でも、患者の生命維持に必要な換気(ガス交換)が可能になる。
従来の高頻度振動換気法を利用した人工呼吸器としては、特許文献1の記載技術がある。
特許文献1に記載された人工呼吸器は、吸気(空気と酸素の混合気)を供給する吸気導入部と、陽圧及び陰圧の両方の空気圧を同時に発生するブロワと、ブロワで発生した陽圧又は陰圧を交互に選択して所定の振動空気圧に変換するロータリバルブ機構と、ロータリバルブ機構からの振動空気圧に付勢されて作動し、吸気導入部から患者に供給される吸気に振動空気圧を付勢するダイヤフラム機構とを備えている。
特開2001−37881号公報
しかしながら、特許文献1に記載された人工呼吸器は、吸気導入部、ブロワ、ロータリバルブ機構、及びダイヤフラム機構等を備えるため大型でかつ部品点数が多い装置となり、さらに、複雑かつ精密な制御(例えば、各構成要素間のタイミング同期制御や出力量制御等)が必要となる。
装置の小型化や低廉化を目指す場合に、より簡素(シンプル)で部品点数の少ない構造となることが望ましい。また、装置の信頼性、耐久性、保守性(メンテナンス性)、等を鑑みた場合も、より簡素で部品点数が少ない構造が望ましい。特に、AED(自動体外式除細動器、Automated External Defibrillator)に並ぶ可搬性(ポータビリティ)を目指す場合には、従来の人工呼吸器とは異なる構造が必要となる。AEDを必要とする患者は、多くの場合自発的な呼吸も停止しているため、AEDを利用した心臓の除細動と並行して、人工呼吸を行う方が蘇生率は高くなる。一方で、近年病院で用いられている人工呼吸器は一部の機種を除いて気管への挿管が必要であるが、気管挿管は所定の資格(医師,歯科医師,または所定の講習と実習を受けた救急救命士)を持つ者にのみに認められた医療行為とされているため、気管挿管の必要がなく、簡易操作で使用できる可搬式の人工呼吸器(例えばマスク式等)の実現が望まれている。
マスク式の人工呼吸器を実現する場合には、振動空気圧を用いた換気装置(例えば、高頻度振動換気法を適用した装置)を用いることが好適であるが、現在のところは特許文献1の記載技術のように大型でかつ複雑な構造の装置となっているため、AEDと同様の大きさとコストで製造することは困難である。
以上のような問題に鑑みて、より簡素な構成で振動空気圧による換気を行うことができる換気装置がのぞまれている。
本発明は、被換気空間内部の内気を外部に排出し、上記被換気空間内部に外部のガス供給源からの外気を供給する換気装置において、(1)第1のシリンダと、上記第1のシリンダ内で往復運動する第1のピストンとを有する第1ピストン機構と、(2)第2のシリンダと、上記第2のシリンダ内で往復運動する第2のピストンとを有する第2のピストン機構と、(3)上記第1のピストンと上記第2のピストンが同期した往復運動を行うように駆動させる駆動機構とを備え、(4)上記第1のシリンダには、上記ガス供給源から当該第1のシリンダ内部の方向にのみ通気可能な第1の弁と、当該第1のシリンダ内部から上記被換気空間の方向にのみ通気可能な第2の弁とが設けられており、(5)上記第2のシリンダには、上記被換気空間から当該第2のシリンダ内部の方向にのみ通気可能な第3の弁と、当該第2のシリンダ内部から外部の方向にのみ通気可能な第4の弁とが設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、より簡素な構成で大きな圧力の代わりに小さな振動空気圧による換気
を行うことができる換気装置を提供することができる。
第1の実施形態に係る人工呼吸器の概略断面図である。 第1の実施形態に係る人工呼吸器のピストンの構成及び動作について示した説明図である。 第1の実施形態に係るピストンの1周期分の位置の変位についてカム線図の形式で示したグラフである。 第2の実施形態に係る人工呼吸器の概略断面図である。 第2の実施形態に係るピストンの1周期分の位置の変位についてカム線図の形式で示したグラフである。 第1の実施形態及び第2の実施形態に係る人工呼吸器の効果測定実験に用いた人体モデルの概略断面図である。 第1の実施形態及び第2の実施形態に係る人工呼吸器の効果測定実験に用いた人体モデルを構成する気道モデルの一部を拡大して示す断面図である。 第1の実施形態及び第2の実施形態に係る人工呼吸器を用いた場合の効果測定実験結果について示したグラフ(その1、拍出体積V=40mlの場合)である。 第1の実施形態及び第2の実施形態に係る人工呼吸器を用いた場合の効果測定実験結果について示したグラフ(その2、拍出体積V=80mlの場合)である。 第1の実施形態及び第2の実施形態に係る人工呼吸器を用いた場合の効果測定実験結果について示したグラフ(その3、拍出体積V=118mlの場合)である。 第1の実施形態及び第2の実施形態に係る人工呼吸器を用いた場合の効果測定実験結果について示したグラフ(その4、拍出体積V=158mlの場合)である。
(A)第1の実施形態
以下、本発明による換気装置を人工呼吸器に適用した場合の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、この実施形態の人工呼吸器1の全体構成を示す概略断面図である。
人工呼吸器1は、患者Rの体内(主として、患者Rの気道AWや肺Pを含む体内)に、ガス供給源50から供給されたガス(以下、「外気」とも呼ぶ)を供給(注入)し、さらに、患者Rの体内のガス(以下、「呼気」、又は「内気」とも呼ぶ)を外部(この実施形態では大気中)に排気するものである。
ガス供給源50は、例えば、既存の人工呼吸器で用いられるガス供給源を用いることができるので詳しい説明を省略するが、大気中の空気と酸素ボンベ等の酸素を混合して排出する装置や所定の酸素濃度のガスが充填されたボンベ等を用いることができる。また、この実施形態の人工呼吸器1では、ガス供給源50として上述のような装置を用いるものとして説明するが、特に装置を配置せずに、単に大気(大気中の空気)をガス供給源50として用いるようにしてもよい。なお、大気をガス供給源50として用いる場合には、外気取入用逆止弁14に取り込む空気の異物等を除去するフィルタ等を配置することが望ましい。
次に、人工呼吸器1の内部構成について説明する。
人工呼吸器1は、外気を取り込んで患者Rの体内に供給するための外気供給用ピストン機構10と、患者Rの体内の内気を取り込んで外部に排気する内気排気用ピストン機構20とを備えている。
外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20は、それぞれ、円筒形のシリンダ11、21と、シリンダ11、21の内部で往復運動する円柱形のピストン12、22と、一方の端面がピストン12、22に固定されたシャフト13、23とを有している。
シリンダ11、21、ピストン12、22及びシャフト13、23の素材は限定されないものであるが、例えば、ポリカーボネート、カーボンロッドやアクリル等の軽量な合成樹脂性素材や、アルミニウム、チタン、ステンレス等の金属素材(耐腐食性の高い素材が望ましい)等を用いることができる。なお、ピストン12、22についてはシリンダ内の気密性を保ちつつシリンダとの摺動摩擦を軽減することを目的として、外周面にフェルト(例えば、シリコンオイル等を浸潤させたフェルト等)やラバーをピストンリングとして配置することが望ましい。
また、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20は、それぞれ、後述する逆止弁を介して被換気チャンバー30等と接続(通気)可能となっている。そして、人工呼吸器1では、図1に示すように、被換気チャンバー30が、チューブ31、マスク32、患者Rの鼻孔、及び気道AWを介して、患者Rの肺Pと接続(通気)している。チューブ31及びマスク32については、例えば、既存の人口呼吸器で用いられるものを用いることができるため詳しい説明を省略する。
外気供給用ピストン機構10のシリンダ11には、ガス供給源50からシリンダ11内部の方向(図1の矢印X11の方向)にのみ通気可能な外気取入用逆止弁14と、シリンダ11内部から被換気チャンバー30の方向(図1のX12の方向)にのみ通気可能な外気注入用逆止弁15が配設されている。
内気排気用ピストン機構20には、被換気チャンバー30からシリンダ21内の方向(図1の方向X13)にのみ通気可能な内気取入用逆止弁24と、シリンダ21内部から装置外(シリンダ21外部)の方向(図1の方向X14)にのみ通気可能な内気排気用逆止弁25とが配設されている。
この実施形態では、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20に設ける弁(バルブ)は、1方向にのみ通気可能な弁(バルブ)であれば具体的な構成については限定されず逆止弁以外の名称・構成の弁(例えば、一方向弁等)を用いるようにしてもよい。
また、外気供給用ピストン機構10のシャフト13と、内気排気用ピストン機構20のシャフト23は、並行するように配置されている。さらに、シャフト13、23のそれぞれの端面(ピストン12、22と逆方向の端面)は、リンク部40に固定されている。リンク部40は、シャフト13及びシャフト23と垂直する方向に配置されたシャフト形状の部材となっている。人工呼吸器1では、このリンク部40を、シャフト13、23と並行となる方向(図1のX21、X22の方向)に往復運動させることで、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20の駆動を同期(往復運動の振幅、周期及び位相を同期)させることができる構成となっている。
なお、リンク部40の素材や形状についても限定されないものであるが、安定して外部ガス供給用ピストン機構10及び外部ガス供給用ピストン機構10を駆動するために、軽量であるが剛性の高い素材(例えば、アルミニウム合金、ステンレス等の金属素材)を用いることが望ましい。
また、人工呼吸器1では、リンク部40を介して、ピストン12、22を駆動(往復運動)させる駆動機構(以下、「ピストン駆動機構」と呼ぶ)として、後述するスコッチ・ヨーク機構が採用されている。
図2は、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20の構成及び駆動(往復運動)した場合の動作について示した説明図である。
なお、図2では、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20は、逆止弁以外の構成について同じ仕様であるものとして図示している。そして、図2に示すように、シリンダ11、21の内径(ピストン12、22の外径)の寸法はいずれ同じ寸法Dとなっているものとする。
図2(a)は、ピストン12、22が上死点P1に到達した状態について示しており、図2(b)は、ピストン12、22が下死点P2に到達した状態について示している。そして、図2では、上死点P1と下死点P2との間のストロークをSと図示している。そして、以下では、ピストン12、22が往復した上死点P1から下死点P2までの行程によって拍出するガスの体積を「拍出体積V」と呼ぶものとする。拍出体積Vは、主としてストロークSとピストンの内径Dにより定まる。
次に、第1の実施形態のピストン駆動機構の構成について説明する。
第1の実施形態のピストン駆動機構(スコッチ・ヨーク機構)は、主としてリンク部40、クランク円盤52、及びACサーボモータ51により構成されている。クランク盤52は、ACサーボモータ51を駆動源として回転軸52aを中心に回転運動を行う。また、クランク円盤52の偏心した位置にはクランクピン52bが設けられている。クランクピン52bは、リンク部40に設けられた溝40aと摺動自在に嵌合している。第1の実施形態のピストン駆動機構では、ACサーボモータ51の回転運動を、クランク円盤52(回転軸52a)及びリンク部40(溝40a)により構成されるスコッチ・ヨーク機構により往復運動に変換している。外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20のストロークSについては、クランク円盤52における回転軸52aとクランクピン52bとの間の距離(以下、「クランク半径r」とも呼ぶ)により調整することができる。
すなわち、人工呼吸器1では、ストロークS(拍出体積V)及びクランク円盤52の回転速度(ACサーボモータ51の回転速度、以下「振動周波数f」とも呼ぶ)により、単位時間あたりの換気量(患者Rの体内に供給可能な外気の量、及び、患者Rの体内から排出可能な内気の量)を調整することができる。例えば、患者の体重1kgあたり2mlの拍出体積を必要とする場合(2ml/kgの場合)、人工呼吸器1の拍出体積は100mlに設定する必要がある。また、この場合、振動周波数fは、患者Rの状態(例えば、パルスオキシメータにより測定される患者Rの酸素飽和度)に応じて、10〜15Hzの間で調整(例えば、当該人工呼吸器1のオペレータが手動で調整)可能な構成としてもよい。
リンク部40の両方の端部には、それぞれガイドシャフト41、42を貫通させるための貫通孔40b、40cが設けられている。ガイドシャフト41、42は、それぞれシャフト13、23と並行となるように配置されており、図示しないフレーム等に固定されている。ガイドシャフト41、42は、それぞれリンク部40の貫通孔40b、40cに摺動自在に貫通した状態となっており、リンク部40の往復運動がシャフト13、23と並行して直動するように案内する機能を担っている。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、人工呼吸器1の動作について図1を用いて説明する。
人工呼吸器1は、ACサーボモータ51の駆動(例えば、スイッチのON)及び、ガス供給源50の駆動(例えば、ボンベ等のバルブを解放・調節)により、動作(患者Rに対する人工呼吸)を開始する。なお、ガス供給源50として大気の空気を用いる場合には、特に操作の必要はない。
ここでは、初期状態で、図2に示すように、ピストン12、22の位置が上死点P1であったものとする。
次に、ピストン駆動機構の駆動(スコッチ・ヨーク機構の駆動)により、ピストン12、22の位置が上死点P1から下死点P2に移動したものとする。そうすると、外気供給用ピストン機構10のシリンダ11内には、ガス供給源50から外気取入用逆止弁14を介して、外気が取り込まれる。また、同時に内気排気用ピストン機構20のシリンダ21には、内気取入用逆止弁24を介して被換気チャンバー30内(患者Rの体内)の内気(呼気)が取り込まれる。
次に、ピストン駆動機構の駆動(スコッチ・ヨーク機構の駆動)により、ピストン12、22の位置が下死点P2から上死点P1に移動したものとする。そうすると、外気供給用ピストン機構10のシリンダ11内の外気が、外気注入用逆止弁15を介して被換気チャンバー30(患者Rの体内)に供給(注入)される。また同時に、内気排気用ピストン機構20のシリンダ21内の内気(呼気)が、内気排気用逆止弁25を介して外部(大気)に排出される。
人工呼吸器1では、以上のようなサイクルの動作を所定の周期(周波数)で繰り返し行うことにより、換気チャンバー30内を介して患者Rの体内を換気することができる。
次に、ピストン12、22の往復運動における変位について説明する。
図3は、クランク円盤52が回転軸52aを中心として1回転する間のピストン12、22の変位(回転角度毎の位置)についてカム線図の形式で示したグラフである。
図3では、横軸をクランク円盤52の回転角度(0°〜360°)、縦軸をピストン12、22の位置(下支点P2〜上死点P1)としている。
上述のように、スコッチ・ヨーク機構により構成される駆動機構により、クランク円盤52の回転運動が往復運動に変換され、ピストン12、22が動作するため、クランク円盤52の回転角ごとのピストン12、22の位置をグラフにすると、その1周期分の波形(線図)は図3に示すように正弦波状(ストロークSの正弦波)となる。したがって、ACサーボモータ51によりクランク円盤52が等速で回転(同じ角速度で回転)する場合、ピストン12、22の位置の変位は、図3に示すような正弦波が繰り返されるグラフで示されることになる。以下では、ピストン12、22の位置が図3に示すような正弦波状で周期的に変位する際に、被換気チャンバー30に供給される振動空気圧(振動流)を、「正弦波状振動流」と呼ぶものとする。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
人工呼吸器1では、外気供給用ピストン機構10と内気排気用ピストン機構20を駆動させるだけで、患者Rの体内の内気の排出と外気の供給を分離して同時に行うことができる。例えば、特許文献1の記載技術では、吸気(空気と酸素の混合気)を供給する吸気導入部と、陽圧及び陰圧の両方の空気圧を同時に発生するブロワと、ブロワで発生した陽圧又は陰圧を交互に選択して所定の振動空気圧に変換するロータリバルブ機構と、ロータリバルブ機構からの振動空気圧に付勢されて作動し吸気導入部から患者に供給される吸気に振動空気圧を付勢するダイヤフラム機構とを備え、それぞれの機構を精密なタイミングと出力で制御する必要がある。これに対して、第1の実施形態の人工呼吸器1では、2つのピストン12、22はリンク部40に固定されているため、駆動機構のACサーボモータ51(クランク円盤52)の回転速度を制御するのみで、特にタイミング制御(例えば、2つのピストンの同期制御等)を行う必要がなく、簡易な制御構成で動作が可能となる。言い換えると、従来の人工呼吸器では、通常外気を患者に供給する回路と、患者の呼気(内気)を外部に排出するための回路とを構築し、それぞれの回路を同期して制御する構成が必要となるが、第1の実施形態の人工呼吸器1では、外気供給用ピストン機構10と内気排気用ピストン機構とが一体となった機構となっているため別々に制御するという概念が必要なく、簡素(シンプル)な構造となっている。
また、人工呼吸器1では、主たる構成要素が外気供給用ピストン機構10と内気排気用ピストン機構しか存在せず、上述のように簡素な構成で駆動・制御されるため、従来よりも少ない部品点数で製造することができ、より小型化に適した構造となっている。
(B)第2の実施形態
以下、本発明による換気装置を人工呼吸器に適用した場合の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(B−1)第2の実施形態の構成及び動作
図4は、第2の実施形態の人工呼吸器1Aの全体構成を示す概略断面図であり、第1の実施形態の図面(上述の図1)と同一又は対応する部分には、同一又は対応する符号を付している。
以下では、第2の実施形態の人工呼吸器1Aの構成について第1の実施形態との差異を説明する。
第2の実施形態の人工呼吸器1Aでは、ピストン駆動機構の構成がスコッチ・ヨーク機構から三角カム機構に置き換わっている点で第1の実施形態と異なっている。
具体的には、第2の実施形態では、リンク部40及びクランク円盤52が、リンク部40A及び三角カム53に置き換わっている点で、第1の実施形態と異なっている。
図4に示すように、リンク部40Aは、矩形(長方形)のフレーム形状(断面は矩形であるものとする)となっている。
リンク部40Aのフレーム外面40g(フレームの一辺の外面外)に、ピストン12、22の端面が固定されている。また、リンク部40Aには、リンク部40Aの往復運動を案内するガイドシャフト41、42を貫通させるための貫通孔40d、40eが設けられている。
そして、リンク部40Aのフレーム内面40f側に、三角カム53が、配設(外周面がフレーム内面40fに接するように配設)されている。三角カム53は、ACサーボモータ51を駆動源とし、回転軸53aを中心とした回転運動を行うものである。言い換えると、三角カム53は、回転軸53aを中心として回転する際に、リンク部40Aのフレーム内面40fに接して、摺動しながら回転することにより、リンク部40Aを往復運動(ガイドシャフト41、42及びピストン12、22と並行となる方向の往復運動)させる。このように第2の実施形態では、三角カム53及びリンク部40Aにより構成される三角カム機構により、回転運動が往復運動に変換され、その往復運動がリンク部40Aに固定されたピストン12、22に伝達される構造となっている。
第2の実施形態では、ピストン駆動機構が三角カム機構となったことにより、ピストン12、22の往復運動における変位が第1の実施形態と異なる。
図5は、三角カム53が回転軸53aを中心として1回転する間のピストン12、22の変位(回転各ごとの位置)についてカム線図の形式(上述の図3と同様の形式)で示したグラフである。図5に示すように、第2の実施形態では、三角カム機構により、ピストン12、22が上死点P1及び下死点P2を中心として、それぞれ60°分ずつ変位が停止するように構成されている。具体的には、第2の実施形態では、図5に示すように、上死点P1を含む150°〜210°の区間、及び下死点P2を含む330°〜30°の区間で、ピストン12、22の変位が停止するように三角カム機構が調整されている。言い換えると、第2の実施形態では、ピストン12、22の変位をカム線図で表すと図5に示す波形となるように、三角カム53の外形が調整されている。なおピストン12、22の変位が停止する区間については、上述の例に限定されないものである。
また、第2の実施形態において、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20のストロークSについては、外径の異なる三角カム53に置き換えることにより調整することができる。
このように、第2の実施形態では、ピストン駆動機構を三角カム機構に置き換えることにより、1周期の間で間欠的にピストン12、22を往復運動させ、被換気チャンバー30に間欠的な振動空気圧(以下、「間欠振動流」とも呼ぶ)を供給することができる。
このように、本発明の人工呼吸器(換気装置)では、リンク部を駆動する駆動機構(回転運動を往復運動に変換する変換機構)を置き換えることにより様々な変位特性でピストン12、22を駆動させることができる。
(B−2)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
第2の実施形態の人工呼吸器1では、駆動機構として三角カムを用いることにより、被換気チャンバー30(患者Rの体内)に間欠振動流を供給することができる。ここで、被換気チャンバー30(患者Rの体内)に、正弦波状振動流を供給する場合(第1の実施形態の場合)に対する間欠振動流を供給する場合(第2の実施形態の場合)の有意性について説明する。
以下では、第1の実施形態の人工呼吸器1(正弦波状振動流による換気)と、第2の実施形態の人工呼吸器1A(間欠振動流による換気)との換気効率の差異を検証した実験結果について説明する。
本実験では、図6に示すような人間の体内のモデルMを用いた。図6は、本実験で用いたモデルMの概略断面図である。
モデルMでは、患者Rの気道AWに対応する気道モデルM1に、患者Rの肺Pに対応する肺モデルM2が接続されている。なお、気道モデルM1は、被換気チャンバー30に接続されている。
本実験では、図7に示すように2種類の気道モデルM1A、M1Bを用いた測定を行った。図7(a)、図7(b)は、それぞれ気道モデルM1A、M1Bの一部を拡大して示す断面図である。気道モデルM1Aは、図7(a)に示す通り、内径が18mmの円筒形状の直管となっている。一方、気道モデルM1Bは、図7(b)に示すように、10mm間隔で、幅10mm深さ6mmの溝Gが形成された溝付管となっている。言い換えると、気道モデルM1Bは、直径18mm幅10mmの大径部と、直径12mm幅10mmの小径部が交互に接続された管となっている。気道モデルM1Bでは、この溝Gの存在により、より人間の気道に近い形状を再現している。
肺モデルM2は、内部空間が図6の方向から見て幅310mm×高さ80mm×奥行80mmとなる直方体を用いて構成されている。肺モデルM2には、開口部M22が設けられており、その開口部M22は、肺(肺胞)組織の弾力性を再現するためのラバー膜M23で覆われている。
また、図6に示すように、肺モデルM2には、肺モデルM2内に二酸化炭素を供給(充填)するための炭酸ガス供給源E1(炭酸ガスが所定の圧力で充填された圧力調整弁付きボンベ)、及び肺モデルM2内の圧力を測定する圧力測定器E2が接続されている。また、肺モデルM2内には、肺モデルM2内のガスを撹拌するための電動式のファンE3、及び肺モデルM2内の二酸化炭素濃度(炭酸ガス濃度)を測定するための二酸化炭素濃度測定器E4が配置されている。
なお、本実験では、ピストン12、22の直径D(シリンダ11、21の内径)は50mmであるものとする。そして、本実験では、肺モデルM2内の二酸化炭素濃度を5%とした後、人工呼吸器1による正弦波状振動流、及び人工呼吸器1Aによる間欠振動流により換気したときの二酸化炭素濃度の半減期の期間を測定した。すなわち、本実験では、人工呼吸器1で直管の気道モデルM1Aを用いた第1の実験系、人工呼吸器1で溝付管の気道モデルM1Bを用いた第2の実験系、人工呼吸器1Aで直管の気道モデルM1Aを用いた第3の実験系、及び人工呼吸器1Aで溝付管の気道モデルM1Bを用いた第4の実験系について、それぞれ実験(二酸化炭素濃度の半減期の測定)を行った。なお、本実験では、ガス供給源50としては特に装置を設けず大気中の空気をそのまま外気供給用ピストン機構10に取り入れている。
そして、本実験では、第1〜第4のそれぞれの実験系について、拍出体積V、及び振動周波数fを変化させて、二酸化炭素濃度の半減期を測定した。具体的には、本実験では、拍出体積Vを40ml、80ml、118ml、158mlと4段階に変化させ、さらに振動周波数fを0.2Hz、1Hz、2Hz、6Hzと4段階に変化させた。なお、振動周波数fは、ACサーボモータ51の回転速度により調整することができる。また、本実験では、全ての実験系の測定において、実験室内の温度を20±2[℃]としている。
そして、第1〜第4の実験系について二酸化炭素濃度の半減期を測定した結果は図8〜図11のようになった。
図8〜図11は、それぞれ、拍出体積Vを40ml、80ml、118ml、158mlとした場合の各実験系の測定結果について示したグラフである。図8〜図11のグラフでは、それぞれ横軸を振動周波数f、縦軸を二酸化炭素濃度の半減期として、各実験系の測定結果がプロットされている。
図8〜図12に示すように、全体としては、正弦波状振動流、及び間欠振動流のいずれを用いて換気を行った場合も、拍出体積V及び振動周波数fの増加に対して反比例して、より短い半減期で、モデルM内を換気することができることがわかる。また、図8〜図12に示すように、拍出体積Vが比較的小さい条件での直管(気道モデルM1A)内の正弦波状振動流より、溝付管(気道モデルM1B)内の正弦波状振動流や両方の管路中の間欠振動流の方が半減期が短く、拍出体積Vが比較的大きい条件では、低振動周波数領域を除いて、条件が変わっても半減期に大差がなくなることがわかる。したがって、人工呼吸器においては、正弦波状振動流(第1の実施形態の人工呼吸器1)よりも間欠振動流(第2の実施形態の人工呼吸器1A)の方が、より適していることがわかる。
(C)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
(C−1)上記の各実施形態では、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20は各1つずつの構成となっているが、複数のピストン機構を束ねた構成としてもよい。
(C−2)上記の各実施形態では、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20のシャフト13、23はリンク部に固定されて一体となっているが、切り離した構成としてもよい。この場合、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20は別々に往復運動を制御することになるが、往復運動の周期及び位相の同期をとる必要がある。
(C−3)上記の各実施形態では、外気供給用ピストン機構10及び内気排気用ピストン機構20のピストン12、22を往復運動させる駆動機構として、スコッチ・ヨーク機構、又は三角カム機構等の機械的な制御構成を適用しているが、ACサーボモータ、ソレノイド、プランジャー等を用いて電気的に往復運動の変位を制御するようにしてもよい。
(C−4)上記の各実施形態では本発明の換気装置を人工呼吸器に適用する例について説明したが、換気する対象は人体に限定されないものである。例えば、本発明の換気装置を大規模化(例えば、ピストンの大口径化、ピストン数の増加、振動周波数の増加等)し、建築物の室内換気等に適用するようにしてもよい。
(C−5)上記の各実施形態では、本発明の人工呼吸器1、1Aは、被換気チャンバー30内を換気することで、間接的に被換気空間としての患者Rの体内を換気しているが、被換気チャンバー30を省略して、直接各ピストン機構をマスク32に接続するようにしてもよいし、マスク32を介さずに各ピストン機構を直接患者Rの気道AWに接続(例えば、各ピストン機構の逆止弁にチューブを接続し、当該チューブを直接気道AWに挿管)するようにしてもよい。このように本発明の人工呼吸器1、1Aと、被換気空間(患者Rの体内)とを接続する構成については限定されないものである。
1…人工呼吸器、10…外気供給用ピストン機構、11…シリンダ、12…ピストン、13…シャフト、14…外気取入用逆止弁、15…外気注入用逆止弁、20…内気排気用ピストン機構、21…シリンダ、22…ピストン、23…シャフト、24…内気取入用逆止弁、25…内気排気用逆止弁、30…被換気チャンバー、31…チューブ、32…マスク、R…患者、AW…気道、P…肺。

Claims (5)

  1. 被換気空間内部の内気を外部に排出し、上記被換気空間内部に外部のガス供給源からの外気を供給する換気装置において、
    第1のシリンダと、上記第1のシリンダ内で往復運動する第1のピストンとを有する第1ピストン機構と、
    第2のシリンダと、上記第2のシリンダ内で往復運動する第2のピストンとを有する第2のピストン機構と、
    上記第1のピストンと上記第2のピストンが同期した往復運動を行うように駆動させる駆動機構とを備え、
    上記第1のシリンダには、上記ガス供給源から当該第1のシリンダ内部の方向にのみ通気可能な第1の弁と、当該第1のシリンダ内部から上記被換気空間の方向にのみ通気可能な第2の弁とが設けられており、
    上記第2のシリンダには、上記被換気空間から当該第2のシリンダ内部の方向にのみ通気可能な第3の弁と、当該第2のシリンダ内部から外部の方向にのみ通気可能な第4の弁とが設けられている
    ことを特徴とする換気装置。
  2. 上記第1のピストンと上記第2のピストンは1つのリンク部に固定されており、上記駆動機構は上記リンク部を往復運動させることを特徴とする請求項1に記載の換気装置。
  3. 上記駆動機構は、上記第1のピストン及び上記第2のピストンの位置の変位が正弦波状となるように、上記第1のピストン及び上記第2のピストンを往復運動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の換気装置。
  4. 上記駆動機構は、上記第1のピストン及び上記第2のピストンの位置の変位が間欠的となるように、上記第1のピストン及び上記第2のピストンを往復運動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の換気装置。
  5. 上記駆動機構は、上記第1のピストン及び上記第2のピストンの往復運動を、上死点及び下死点で所定期間停止させることを特徴とする請求項4に記載の換気装置。
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