JP2014226081A - 糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法 - Google Patents

糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 目的の糖タンパク質の糖鎖付加部位の周辺配列を改変することにより、糖鎖構造パターンをも改変した糖タンパク質を製造すること。【解決手段】 目的の糖タンパク質のアミノ酸配列において、糖鎖付加部位の周辺配列の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを含む組換えベクターを含む形質転換体を培養して、目的の糖タンパク質とは糖鎖構造パターンが異なる糖タンパク質を製造することを特徴とする、糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法。【選択図】 図2

Description

本発明は糖鎖をもつタンパク質において、その糖鎖付加部位周辺配列を改変することにより、付加される糖鎖の構造パターンをも改変されたタンパク質の製造方法に関する。
多くのタンパク質には翻訳後修飾として糖鎖付加がなされている。糖鎖付加の様式には2種類あって、タンパク質中のN(Asn)−X(Pro以外のアミノ酸)−S(Ser)/T(Thr)という配列中のAsnに糖鎖が付加される場合はN結合型糖鎖、タンパク質中のSer、Thrの水酸基を介して糖鎖が付加される場合はO結合型糖鎖とよぶ。一般に、N結合型糖鎖には上記のようなコンセンサス配列があるため、糖鎖付加の予測や制御が容易であるといえる。
糖鎖はタンパク質が適正なfoldingをとる際に必要であったり、当該タンパク質の分泌促進、機能発現、血中での安定化、分子間相互作用などにも関与していたりする。このような機能性糖鎖をタンパク質に効率よく付加させるために、タンパク質中にあるN結合型糖鎖付加のコンセンサス配列を改変したり、これをタンパク質中に人為的に導入して、タンパク質に結合する糖鎖の数を増やすことが検討されてきている(特許文献1、2、非特許文献1参照)。
しかし、一方で、その糖鎖構造は均一ではなく、様々なグリコフォームの集団として発現される。
さらに、単に糖鎖の付加の有無だけでなく、タンパク質に結合する糖鎖の構造が機能発現等に重大な影響を及ぼし、特定のグリコフォームに高い活性が現れる場合があることも知られている。例えば、抗体医薬として用いられるIgG1抗体の場合、そのFc領域に結合するN結合型糖鎖にα1,6結合したフコース(コアフコース)が存在しないグリコフォームや、bisecting GlcNAcが存在するグリコフォームは、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が飛躍的に増大する(非特許文献2、3参照)。
一般に、抗体医薬のような糖タンパク質製剤は、CHO細胞などの動物細胞を用いて生産される場合が多い。宿主細胞を変えれば糖鎖構造も変わる可能性がある。これは細胞ごとに各糖鎖関連遺伝子の発現量が異なるからである。しかし、物質生産に適する細胞とそうでない細胞が存在するため、宿主細胞によっては生産量が低下する可能性がある。
目的タンパク質の糖鎖構造をさらに積極的に改変しようとするなら、宿主細胞で発現している糖転移酵素等の糖鎖関連遺伝子の発現を遺伝子破壊やsiRNA導入によって抑制するか、あるいは新たに糖鎖関連遺伝子を宿主細胞に導入して過剰発現させるといった工夫が必要になる。しかし、酵母、植物細胞などのようにヒト型糖鎖とは異なる糖鎖を合成する細胞を宿主とする場合には、より多くの糖鎖関連遺伝子の発現調節が必要になる。
抗体に関しては、その生理活性を増強するために様々なアミノ酸変異体が作製されている。例えば、Genentech IncがFc領域にアミノ酸変異を加えてADCC活性の高いS298A/E333A/K334Aの変異体を作製している(非特許文献4)。また、286および298位のアミノ酸をCysへ置換した変異体も作製されている(特許文献3)。
また、エラープローンPCRによってランダムに抗体に変異導入したところ、F243L変異によってADCC活性の増強が認められている(非特許文献10)。この変異体の糖鎖構造を解析したところ、高いADCC活性の発現に関わるコアフコース含量が減少した糖鎖が結合していた。すなわち、抗体などの糖タンパク質の機能向上において、糖鎖構造を改変することは非常に有効であるといえる。
一方、エラープローンPCRのような方法では、どこに変異が導入されるか予測できず、糖鎖構造改変に適した部位に変異が導入されるとは限らないため、糖鎖構造が改変された変異体を効率よく取得することは困難である。
特開平5−86099号公報 特開2012−70711号公報 特開2009−55899号公報
Susan H. Shakin−Eshleman et al., J. Biol. Chem. 271, 6363−6366 (1996) Toyohide Shinkawa et al., J. Biol. Chem. 278, 3466−3473 (2003) Pablo U et al., Nat. Biotechnol. 17, 176−180(1999) Robert L. Shields et al., J. Biol. Chem. 276, 6591−6604 (2001) Reed J. Harris et al., J. Chromatogr. B 752, 233−245 (2001) Ernst Bause et al., Biochem. J. 195, 639−644 (1981) Gerry A. F. Nicolaes et al., Biochemistry 38, 13584−13591 (1999) Atsushi Nishikawa et al., Biochem. J. 355, 245−248 (2001) Lakshmi Kasturi et al., Biochem. J. 323, 415−419 (1997) Ross Stewart et al.,Protein Engineering, Design Selection 24, 671−678 (2011)
本発明の課題は、目的タンパク質の糖鎖付加部位周辺配列を改変することによって、グリコフォームのパターンをも改変し、新たな性質が付与されたタンパク質を製造することである。新たな性質とは、分泌生産性、各種機能、安定性などの向上を意味する。
タンパク質に存在するN結合型糖鎖付加部位の周辺配列を改変した場合に、糖鎖付加効率が変動することがあると知られているが(非特許文献1)、このとき糖鎖構造にどのような影響があらわれるのかは明らかではない。そこで本発明者らは、この点について詳しく解析したところ、驚くべきことに、糖鎖付加効率が変動することとは別に、糖鎖構造そのものに変化があらわれることを新たに見出し、糖タンパク質の糖鎖構造を簡便かつ効率よく改変する本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<2>の糖タンパク質の製造方法である。
<1> 目的の糖タンパク質のアミノ酸配列において、糖鎖付加部位の周辺配列の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを含む組換えベクターを含む形質転換体を培養して、目的の糖タンパク質とは糖鎖構造パターンが異なる糖タンパク質を製造することを特徴とする、糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法。
<2> 目的の糖タンパク質がIgG、酵素またはホルモンである、上記<1>に記載の製造方法。
本発明者らは、タンパク質に存在するN結合型糖鎖付加部位の周辺配列を改変した場合に、糖鎖付加効率が変動するとともに、新たに糖鎖構造も変化することを見出した。従来、宿主細胞に組換えタンパク質を生産させる際、当該タンパク質の糖鎖構造を改変するには、糖鎖関連遺伝子の発現が異なる宿主細胞に変更するか、宿主細胞が発現している糖鎖関連遺伝子を人為的に制御する必要があった。そのため、宿主細胞を変更することで目的タンパク質の生産量が低下する恐れや、宿主細胞が発現している糖鎖関連遺伝子を人為的に制御するために多くの労苦が必要になるといった問題があった。本発明では、タンパク質側に変異を導入することで、簡便に糖鎖構造を改変することが可能で、宿主細胞側を改造するアプローチとは異なる。場合によっては、両者を組み合わせることでより効果が期待される。
本発明ではタンパク質に変異を導入することから、場合によっては、タンパク質の性質や分泌生産量が変化する可能性がある。しかし、変異導入の位置が限定されているため、それらの点に関して特に問題が起こりにくいと考えられ、極めて簡便に糖鎖構造を改変できる手法であるといえる。また変異導入によって、タンパク質の諸性質にとって正の効果が得られる可能性もある。
ハーセプチンのFc領域N結合型糖鎖付加N300周辺配列を改変した変異体の発現。 野生型ハーセプチン(NST)および変異体NSSのFc領域N300を含む糖ペプチドのマススペクトル。 野生型ハーセプチンおよび変異体のN300に結合していた主なN結合型糖鎖の構造。
本発明の糖タンパク質製造方法は、下記<1>〜<2>である。
<1> 目的の糖タンパク質のアミノ酸配列において、糖鎖付加部位の周辺配列の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを含む組換えベクターを含む形質転換体を培養して、目的の糖タンパク質とは糖鎖構造パターンが異なる糖タンパク質を製造することを特徴とする、糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法。
<2> 目的の糖タンパク質がIgG、酵素またはホルモンである、上記<1>に記載の製造方法。
上記<1>において、糖鎖構造パターンとは、糖鎖構造の質的多様性(タンパク質のある糖鎖付加部位に結合している糖鎖の構成糖や結合様式の違い)およびそれぞれの糖鎖付加効率のパターンをさす。
上記<1>において、糖鎖付加部位の周辺配列とは、糖鎖付加部位から−10〜+10位のアミノ酸配列であり、好ましくは−5〜+5位のアミノ酸配列である。特に好ましくは、N結合型糖鎖付加部位のAsnから−2、−1、+1、+2、+3、+4位である。なおこの場合、+2のアミノ酸はThr、Ser、Cysが好ましく、特に好ましくはThr、Serである。
本発明においてタンパク質をコードするDNAは、上記<1>〜<2>の変異を導入したタンパク質をコードする塩基配列のDNAで、T4リガーゼを用いて各種組換えベクターに挿入するが、タンパク質をコードするDNAの組換えベクターへの挿入法はこの方法に限定されるものではない。また、ベクター挿入時に制限酵素サイトを利用する場合は、制限酵素サイトやタグ配列によってコードされるアミノ酸もタンパク質に連結される。
本発明における組換えベクターは、特にその種類は限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミドやファージベクター)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。
好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、タンパク質をコードするDNA、およびプロモーター等の転写に必要な要素が機能的に連結されている。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。また、これらの発現ベクターはアンピシリン耐性遺伝子などの適当な選択マーカー遺伝子を含んでいてもよい。発現ベクターの例としては、例えば、pBluescript II SK+ベクター(Stratagene)、pcDNA3.1/Myc−His ver.A(Invitrogen)などが挙げられるが、本発明に用いる発現ベクターはこれらに限定されるものではない。
本発明で用いるDNAは、遺伝子導入試薬、例えばリン酸カルシウムやリポソームを利用するもの、あるいはFuGene 6 transfection reagent(従来はRoche、現在はPromega)などの非リポソーム系トランスフェクション試薬などを用いて、あるいはエレクトロポレーション法やマイクロインジェクション法などにより、宿主細胞へ導入する。
本発明における形質転換体として、細胞は糖鎖付加能を有する細胞、例えば、原核生物ではカンピロバクターやオリゴサッカリルトランスフェラーゼ遺伝子を導入された大腸菌など、また真核生物では、酵母、糸状菌、植物細胞、昆虫細胞、哺乳類由来培養細胞などが挙げられるが、遺伝子導入のしやすさ、タンパク質生産量の高さ、哺乳類型糖鎖が付加できる点などで、哺乳類由来培養細胞のうち、HEK293細胞、CHO細胞、COS−7細胞などを用いるのが特に好ましい。
本発明の形質転換体を用いて本発明のタンパク質を製造する方法として、形質転換体の培養、タンパク質の取得、精製などの工程が挙げられる。形質転換体の培養は、37℃のCOインキュベーター内で、遺伝子導入後一定時間(5〜15時間)までは10%牛血清含有培地にて行い、その後は目的タンパク質の精製を容易にするために無血清培地に交換して継続培養する(+9〜48時間)。目的タンパク質の取得は、当該タンパク質が分泌タンパク質で、培地中に分泌されているようであれば、培地を回収してタンパク質源とし、これをアフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーに供して精製する。目的タンパク質が培地中に分泌されず、細胞内に蓄積している場合には、細胞を回収し、ここに細胞溶解剤を加えるとともに超音波破砕により細胞を破砕して目的タンパク質を細胞溶解剤中に放出させ、これを適当な緩衝液などで希釈するなどしたものをタンパク質源として、上記と同様にして各種クロマトグラフィーにより精製する。
本発明のタンパク質を製造する方法は、細胞を用いる方法に限定されるものではなく、無細胞タンパク質合成系によって製造することもできる。無細胞タンパク質合成系としては、例えば、コムギ胚芽、大腸菌、ウサギ網状赤血球、昆虫細胞などから調製したものが挙げられる。目的タンパク質をコードするDNAを逆転写が可能なベクターに組み込み、これより逆転写反応によって合成したmRNAを適当な無細胞タンパク質合成系に加えて目的タンパク質を合成する。そして、その反応液より目的タンパク質を上記と同様にして精製する。
以下に記載する実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
本実施例ではヒトIgG1抗体のFc領域に存在するN結合型糖鎖付加部位の周辺配列を改変したとき、糖鎖構造へどのような影響が現れるかを調べた。ヒトIgG1抗体としては、乳がんの分子標的薬として知られている抗体医薬品ハーセプチンをモデルとして用いた。一般に、ヒトIgG1抗体のFc領域に存在するN結合型糖鎖付加部位はN297であるが、ハーセプチンの場合はN300である(非特許文献5参照)。
まず哺乳類培養細胞におけるハーセプチンの発現ベクターを構築した。IgG1のH鎖定常領域については、ヒト脾臓由来cDNA(Clontech)を鋳型として、プライマーNG399+、NG400−(配列表配列番号1、2)とKOD FX DNA polymerase(TOYOBO)を用いてPCR増幅を行い、ここで増幅したDNA断片をpBluescript II SK+ベクター(Stratagene)のEcoRVサイトにクローニングした(プラスミド1)。
つぎに、このプラスミド1からXhoI、XbaIで切り出したヒトIgG1のH鎖定常領域をコードするDNA断片をpcDNA3.1/myc−His Ver. A(Invitrogen)のXhoI−XbaIサイトに挿入したプラスミドを作製し(プラスミド2)、これを鋳型として、プライマーT7、NG410−(配列表配列番号3、4)とKOD FX DNA polymeraseを用いてPCR増幅を行い、ここで増幅したDNA断片(ヒトIgG1のH鎖定常領域にMycタグ、His6タグが付加したものをコード)を予めSacII−XbaIサイトを欠失させたpBluescript II SK+ベクターのEcoRVサイトにクローニングした(プラスミド3)。
ここで作製したプラスミド3から、XhoI、MluIで切り出したDNA断片をpIRESベクター(Clontech)のXhoI−MluIサイトに挿入した(プラスミド4)。一方、ハーセプチンH鎖の可変領域をコードするDNAはGenscript社に合成依頼し、NheI−XhoI断片として切り出して、これをプラスミド4のNheI−XhoIサイトに挿入した(プラスミド5)。
IgG1のL鎖定常領域については、ヒト脾臓由来cDNAを鋳型として、プライマーNG408+、NG409−(配列表配列番号5、6)とKOD FX DNA polymeraseを用いてPCR増幅を行い、ここで増幅したDNA断片をpBluescript II SK+ベクターのEcoRVサイトにクローニングした(プラスミド6)。
また、ハーセプチンL鎖の可変領域をコードするDNAはGenscript社に合成依頼し、XbaI−BsiWI断片として切り出して、これをプラスミド6のXbaI−BsiWIサイトに挿入した(プラスミド7)。これよりXbaI−NotI断片(ハーセプチンL鎖をコード)を切り出し、プラスミド5のXbaI−NotIサイトに挿入して、野生型ハーセプチンの発現ベクターとした。
つぎに、ハーセプチンのN結合型糖鎖付加部位の周辺配列を改変したとき、糖鎖構造がどのように変化するかを調べるため、N結合型糖鎖付加N300の+2位のT302のThrをSerに置換した変異体(ハーセプチン変異体T302S)、T302Sに加えさらに+1位のS301を他のアミノ酸Xに置換した一連の変異体(ハーセプチン変異体S301X/T302S)、および−1位Y299と+3位Y303をそれぞれPheに置換した変異体(ハーセプチン変異体Y299F/Y303F、FF変異体)を作製した。
まず、プラスミド3より糖鎖付加部位を含む配列をコードするSacII−XbaI断片を切り出し、pBluescript II SK+ベクターのSacII−XbaIサイトに挿入した(プラスミド8)。これを鋳型として、プライマーNG265+、NG266−(配列表配列番号7、8)とKOD FX DNA polymeraseを用いてPCRを行い、増幅したDNAを制限酵素DpnIで消化した後、そのまま大腸菌の形質転換に用いた。ここで得られた形質転換体よりプラスミドを調製し、T302S変異が導入されたプラスミドを得た(プラスミド9)。
このプラスミド9よりSacII−XbaI断片を切り出し、これをプラスミド3のSacII−XbaI断片といれかえたプラスミドを作製した(プラスミド10)。ここからさらにXhoI−MluI断片を切り出し、これを野生型ハーセプチン発現ベクターのXhoI−MluI断片とのせかえて、ハーセプチン変異体T302Sの発現ベクターとした。
ハーセプチン変異体S301X/T302Sの発現ベクターについては、プラスミド9を鋳型として、配列表にある各変異導入用プライマー(配列表配列番号9〜46)の組み合わせとKOD FX DNA polymeraseを用いてPCRを行い、上記と同様にして各変異体の発現ベクターを作製した。
ハーセプチン変異体Y299F/Y303F(FF変異体)の発現ベクターについては、プラスミド8を鋳型として、プライマーNG952+、NG954−(配列表配列番号47、49)とKOD FX DNA polymeraseを用いてPCRを行い、上記と同様にしてY299F変異を導入したのち、このプラスミド(プラスミド10)を鋳型として、プライマーNG953+、NG954−(配列表配列番号48、49)とKOD FX DNA polymeraseを用いてさらにPCRを行い、この場合も上記と同様にしてY303F変異を導入し、ハーセプチン変異体Y299F/Y303F(FF変異体)の発現ベクターを作製した。
それぞれの発現ベクターはFuGene 6 transfection reagent(Rocheあるいはプロメガ)を用いてHEK293細胞に導入した。トランスフェクション後、これらの細胞は37℃のCOインキュベーターで一晩培養し、ここで培地交換を行って(3.5cm dish、MEMα培地+10%牛血清2mlをMEMα培地1mlに交換)、さらに一定時間培養を行った(トランスフェクションから48時間後まで)。培養終了後、培養上清を回収して少量のProtein Aビーズ(Thermo)を添加し、4℃で2時間撹拌して培養上清中に分泌されたハーセプチンおよびその変異体をこれに吸着させ回収した。糖鎖付加効率を解析する場合は、このProtein AビーズをPBS緩衝液で洗浄後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)用のsample bufferと混合し、煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。
泳動終了後、ウェスタンブロットを行うため、ゲル中のタンパク質はブロッティング装置を用いてPVDFメンブレン(Immobilon−P、Millipore)に転写し、これを3%スキムミルク含有TBS−T緩衝液内で室温1時間震盪してブロッキング処理を行った。つぎにこのメンブレンを一次抗体溶液(抗myc−tag抗体、MBLを3%スキムミルク含有TBS−T緩衝液で1000倍希釈したもの)に浸漬させ、室温で1時間震盪した。その後、メンブレンを3%スキムミルク含有TBS−T緩衝液で2回洗浄し、二次抗体溶液(HRP−conjugated抗マウスIgG抗体、Zymedを3%スキムミルク含有TBS−T緩衝液で5000倍希釈したもの)に浸漬させ、室温で1時間震盪した。なお場合によっては、上記一次抗体、二次抗体のかわりに、HRP標識抗ヒトIgG抗体(Santa Cruz、3%スキムミルク含有TBS−T緩衝液で3000倍希釈したもの)に浸漬させ、室温で1時間震盪した。そして、いずれの場合においてもメンブレンを3%スキムミルク含有TBS−T緩衝液で2回洗浄し、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo)を用いて化学発光反応を行い、Chemidoc XRS(Bio−Rad)で陽性バンドを検出した。
通常、糖鎖付加された分子とされていない分子では分子量に違いがあり、泳動度に差がある。糖鎖付加された分子はペプチド:N−グリコシダーゼF(PNGase F)処理によりN結合型糖鎖を除去すると、泳動度が糖鎖付加されていないものと一致するようになる。これによってN結合型糖鎖の存在を確認した。
野生型ハーセプチンおよびハーセプチン変異体の糖鎖構造を質量分析装置で解析するために、ある程度のタンパク質量を確保する必要があるため、安定発現株を樹立した。まず発現ベクターを、FuGene 6 transfection reagent(Rocheあるいはプロメガ)を用いてHEK293細胞に導入した。トランスフェクション後、これらの細胞は37℃のCOインキュベーターで二晩培養(3.5cm dish、MEMα培地+10%牛血清、2ml)した。その後400μlのトリプシン処理によって細胞をディッシュよりはがし、その細胞懸濁液少量(5〜20μl)を、G418を500μg/mlの濃度で含む培地(10cm dish、MEMα培地+10%牛血清、8ml)にうつして、G418耐性のクローンがコロニーを形成するまで培養した(〜1ヶ月)。つぎに各コロニーを単離し、12ウェルプレートにうつして、細胞が十分に増えるまでG418含有培地で培養した。その後、培養上清中のハーセプチン(変異体)の有無、産生量をウェスタンブロットにより確認し、ハーセプチン(変異体)を安定発現するクローンを取得した。
各安定発現株を大量培養し(1クローンにつき、10cm dish、MEMα培地+10%牛血清、7ml、30枚)、細胞が十分に増えた時点でPBS緩衝液を用いて細胞を2回洗浄後、無血清培地(MEMα培地、5ml)に交換してさらに2日間培養した。その後、培養上清を回収し、Protein Aビーズを加えて4℃で20時間撹拌して、培養上清中に分泌されたハーセプチン(変異体)をこれに吸着させた。このビーズを遠心で回収後、水で数回洗浄し、さらに0.5M酢酸/酢酸アンモニウム、pH3.4を0.3ml×3回加えてハーセプチン(変異体)を溶出した。この溶出液を遠心濃縮機にかけて濃縮乾固させたが、残留した酢酸アンモニウムを除くためにさらに水を加えて濃縮乾固を行った。この作業は数回繰り返した。
このようにして調製した抗体サンプル10μgにRapiGest SF試薬(Waters)を加えて変性させ、さらにトリプシン500ngを加えて37℃で一晩消化し、ペプチド断片とした。つぎに、セルロースを用いて反応物中より糖ペプチドを精製した。この糖ペプチドの糖鎖構造を質量分析装置(島津製作所、AXIMA−QITおよびAXIMA−TOF2)を用いて解析した。
<実施例1>
図1にHEK293細胞に発現させたハーセプチンおよびその変異体のウェスタンブロットの結果を示す。野生型ハーセプチン(WT, NST)の場合、その糖鎖付加部位周辺のアミノ酸配列はYNSTY(アミノ酸番号299〜303)であり、9割以上の分子にはN300に糖鎖が付加されていた。一般に、N結合型糖鎖付加のコンセンサス配列であるAsn Xaa Thr/Ser配列において、三番目のアミノ酸がThrのほうがSerの場合よりも糖鎖付加効率が高くなる傾向があることが知られている(非特許文献6〜9)。ハーセプチンの場合も、このThrをSerに交換したところ(T302S変異体、NSS)、糖鎖付加率が若干減少した。また同時にXaaの位置にあるSer(S301)を他のアミノ酸に置換したところ、変異体ごとにその糖鎖付加率は異なった。
次に、変異体の糖鎖構造の変化を調べるために質量分析装置を用いて解析した。例として、図2に野生型ハーセプチンNSTおよび変異体NSSのスペクトルを示す。本解析によって検出された主な糖鎖の構造を図3に示す。比較のためにヒト血清由来IgGの糖鎖構造解析も行った。
HEK293細胞に発現させた野生型ハーセプチンの場合、その主要糖鎖として、G1F>G0F>G2Fの順に存在していた。この傾向はヒト血清由来IgG1やNHS、NNS変異体などでも観察された。
一方、NSS変異体やNQS変異体の主要糖鎖はG1Fが最も多いが、次いでG2F、G0Fの順に多かった。この結果より、ハーセプチンがもつN結合型糖鎖付加のコンセンサス配列NSTにおいて、ThrをSerに変えることによってG2Fの割合が増加することが明らかになった。言い換えれば、糖鎖付加効率が低下したにもかかわらず、ガラクトース転移量は増加している(あるいはさらにシアル酸も付加している可能性がある)。すなわち、ポリペプチド合成時にAsnに糖鎖が付加するための要因と、糖鎖付加後にプロセシングを受け、さらに糖転移酵素により修飾を受けるための要因は必ずしも一致しないということが明らかになった。
さらに、NAS、NVS、NDS、NES変異体の主要糖鎖では、G2Fの割合が最も多く、次いでG1F、G0Fの順に多かった。すなわち、ガラクトースが付加するグリコフォームが増加した。また、ヒト血清由来IgG2やFF変異体の主要糖鎖はG0Fが最も多く、次いでG1F、G2Fの順に多かった。ガラクトース残基を多く有するグライコフォームを含有する変異体は、シアル酸付加量が高くなり(シアル酸転移能の高い細胞を使用したり、In vitroで後から付加させたりすることも可能)抗炎症活性を有する可能性がある。また、これらの変異体は、G0/G0FやG1/G1Fをもつグライコフォーム、つまりGlcNAcで終わっているグライコフォームが少ないので、血中からの消失速度が低下する(作用が持続する)効果も期待される。
各変異体のグライコフォーム比較のため、ガラクトース残基の数、Bisecting GlcNAc含有糖鎖、コアフコースの無い(Afucosylated)糖鎖に着目して表1にまとめた。すなわち、G0、G0F、G0B、G0FBを合わせたものをGal0、G1、G1F、G1B、G1FBを合わせたものをGal1、G2、G2F、G2B、G2FBを合わせたものをGal2として、ハイマンノースM5との合計を100%として、それぞれの比率を算出した。また、それらのうち、Bisecting GlcNAcを含有するものの合計、フコースを含まない(Afucosylated)糖鎖を合計したものの割合を示す。
<表1: 各ハーセプチン変異体のN300に結合した糖鎖構造比較。>
Figure 2014226081
ガラクトース残基数以外にも、変異体によっては、ADCC活性の発現に関わるBisecting GlcNAc糖鎖やAfucosylated糖鎖の割合も変化することが明らかになった。特にBisecting GlcNAc糖鎖については、程度の差はあるが表1に記載したいずれの変異体でもその含有量が増加しており、例えばNVS、NDS、NASの各変異体では野生型ハーセプチンNSTに比べて5.4〜7.6倍の含有量を示した。これらのグライコフォームを野生型より多く含有する変異体は、抗体のADCC活性を増強する可能性がある。
本発明の糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法は、抗体をはじめとする有用タンパク質の糖鎖構造改変、およびそれに伴う機能改変や新機能が付与されたタンパク質の製造、あるいは血中安定性が増大したタンパク質の製造などに利用できる。

Claims (2)

  1. 目的の糖タンパク質のアミノ酸配列において、糖鎖付加部位の周辺配列の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されたアミノ酸配列をコードするDNAを含む組換えベクターを含む形質転換体を培養して、目的の糖タンパク質とは糖鎖構造パターンが異なる糖タンパク質を製造することを特徴とする、糖鎖構造パターンを改変した糖タンパク質の製造方法。
  2. 目的の糖タンパク質がIgG、酵素またはホルモンである、請求項1に記載の製造方法。
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Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
PROTEIN ENGINEERING, DESIGN & SELECTION, vol. Vol.24, No. 9, JPN6017008680, 2011, pages 671 - 678 *
立命館大学理工学研究所紀要, vol. 第66号, JPN6017008678, 2007, pages 第1-12頁 *

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