JP2014226030A - 回転体を用いた温度変化発電システム - Google Patents

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Abstract

【課題】高い温度分解能を有する高効率の温度変化発電システムを提供する。
【解決手段】本発明は、温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、逆回転を防止するラッチ機構、整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構である。温度変化収穫機構は、たとえば、バイメタル構造のゼンマイを含む機構であり、または中空の円板形状の外周面および/または内周面にバイメタル構造のカンチレバーを複数配列した櫛歯(くしば)状の回転円板体を少なくとも1つ有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、環境の温度変化という熱エネルギーを、効率的に力学的エネルギーを経由して電気エネルギーに変換する温度変化発電システムに関する。
尚、本発明は国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギーベンチャー技術革新事業/風力発電その他未利用エネルギー(2010〜2012年)」に基づく委託研究で、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)である。
環境の温度変化という熱エネルギーを力学的なエネルギー等の他の種類のエネルギーへ変換するアイデアは多数提案され実際に実験的にはいろいろ試みられているが、現実の温度変化は緩慢であり、また温度変化も小さいことが多く、余り大きなエネルギーを得ることができないため実用化されていない技術が多い。特許文献1には、環境の温度変化による熱エネルギーを機械的エネルギーに変換し発電機を提供する技術が提供されている。これは、伸縮可能な蛇腹を有する密封された容器内に液体と気体が共存する高圧物質を充満し、気温変化により高圧物質が膨張伸縮をすることを利用して蛇腹を上下運動させて可動バーを動かすというものである。また、異なる熱膨張率を有する金属を合わせた渦巻き構造のバイメタルをゼンマイに用いて温度変化を力量(機械的エネルギー)の形に貯めるという構想も古くから実施されている。たとえば、スイスのニューシャテルのジャン・レオン・ルターは1928年に気体の収縮・膨張を利用しゼンマイを巻き上げる置き時計を考案し、ジャガー・ルクルト社はその置き時計をアトモスと名付けて1938年に発売した。このアトモスは、わずか1度の温度変化で2日間も動くことから、当時EWS(Eternal Winding Syastem:永久巻き上げ機構)という触れ込みで話題となった。(非特許文献1)また、アメリカの個人時計店の発明家スティーブン・フィリップスが2003年のバーゼルフェアでEWS腕時計ガーディアンと銘打って展示を行なった。このスティーブンの腕時計はゼンマイにバイメタル構造を採用したもので、バイメタル発条部は幅2mm、総延長1250mm、直径50mmというラフな製作にも拘わらず、0.138℃の分解能で巻き上げ可能であり、腕への装着のみならず部屋に放置しておいても充分にゼンマイを巻き上げることができたということで、見た目に永久機関のごとく動作するものとして話題を集めた。(特許文献1)
特開平06−341371 US特許6,457,856 特開昭56−167897 特開2009−62986
時計三昧(http://www.tokeizanmai.com/clock-atmos.html )
特許文献1にある方法は、蛇腹を動かしさらにその蛇腹の運動で可動バーを動かすという方法を用いているのでエネルギーロスが大きく、密封容器内の高圧液体および気体への熱伝達が悪いため、気温変化が小さい場合には気温変化という熱エネルギーを機械的エネルギーに変換することは難しい。また、高圧部分が存在し、装置が大掛かりになり小型化が困難であるという問題がある。また、特許文献2に記載のゼンマイのバイメタル構造は、薄い金属板を2枚機械的に貼り合わせて作製したものであるから、バイメタルの幅や厚さがmmオーダーであり、μmオーダーの小さなバイメタルゼンマイを作ることは非常にむずかしく、しかも安価に量産することは現在の技術を用いても困難である。また得られるエネルギー量は1μW/day程度と小さいので、クオーツ時計への適用が限界であり、これ以上のエネルギーを必要とする多数の携帯機器への適用は困難である。仮にバイメタルゼンマイを小さくした場合、特許文献に記載の方法では、回転トルクが小さくなり発電機構のローターを回転できないので、充分な発電を行なうことができない。
本発明は、環境の温度変化のような緩慢な温度変動においても、温度変化という熱エネルギーを力学的なエネルギーに変換し、さらには電気エネルギーとして発電するシステムを提供することを目的とする。本発明は、温度変化を回転エネルギーに変換する機構を用いた温度変化発電機構であり、MEMSプロセス等を用いた微細な温度変化発電機構も含むものであり、以下の特徴を有する。
(1)本発明は、温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構、前記整列された回転力による回転速度を変速(減速)する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を変速(増速)する第2の変速機構、前記第2の変速機構により変速(増速)された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であり、前記蓄力機構はゼンマイを用いて蓄力するシステムであり、前記第1の変速機構において変速比可変構造を設けることにより、前記蓄力機構における巻き上げトルク特性を一定にすることを特徴とする。
(2)本発明は、前記ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面(回転面)に用いた回転円板体を使用しており、前記ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面に用いた少なくとも2つの回転円板体(第1回転円板体、第2回転円板体)を使用し、第1回転円板体の側面と第2回転円板体を組み合わせて接触させ、第1回転円板体の側面に形成した微細毛の配向と第2回転円板体の側面に形成した微細毛の配向により、ラッチ機構を発揮するとともに、特定の一方向に回転を伝達することを特徴とする。
(3)本発明は、前記温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構は、バイメタル構造のゼンマイを含み、前記バイメタル構造のゼンマイが温度上昇および温度降下を伴う温度変化により変形することを用いて、ゼンマイの回転エネルギーを収穫(発生)することを特徴とし、さらに、巻き方向の異なる2種類のゼンマイの外端を接続した少なくとも1つのS字状ゼンマイを含むことを特徴とし、あるいは、中空の円板形状の外周面および/または内周面にバイメタル構造のカンチレバーを複数配列した櫛歯(くしば)状の回転円板体を少なくとも1つ有することを特徴とし、さらに隣接する少なくとも2つの直径の異なる回転円板体を有し、複数の前記回転円板体は中心軸を共有するとともに、前記直径が大きな回転円板体の内周面に配列されたカンチレバーの櫛歯(くしば)の間に、前記直径が小さな回転円板体の外周面に配列された櫛歯状(くしば)のカンチレバーが入り込んだ構造となっていることを特徴とする。
(4)本発明の温度変化収穫機構は、流体(液体および/または気体)の熱膨張および/または熱収縮による流体の流れを回転エネルギーに変換したことを特徴とし、前記温度変化収穫機構は、流体を内部に含む熱交換器、流体を貯留する流体貯留容器、前記熱交換器および前記流体貯留容器を接続し流体が流れるパイプ、および前記パイプ内に配置され前記パイプ内の流体の流れにより回転し回転エネルギーを発生する回転車を含み、前記熱交換器内で熱膨張した流体が前記パイプ内に流れ込むことによって発生する流体の流れによって前記回転車が回転し回転エネルギーを発生することを特徴とする。
(5)本発明の温度変化収穫機構は、流体を内部に含む熱交換器、流体を貯留する流体貯留容器、前記熱交換器および前記流体貯留容器を接続し流体が流れるパイプ、および前記パイプ内に配置されパイプ内の流体の流れにより回転し回転エネルギーを発生する回転車を含み、前記熱交換器内で熱収縮した流体が前記パイプ内から前記熱交換器内へ流れ込むことによって発生する流体の流れによって前記回転車が回転し回転エネルギーを発生することを特徴とする。
(6)ここで、(4)に記載の温度変化収穫機構における熱交換器、流体貯留容器、パイプおよび回転車は、(5)に記載の温度変化収穫機構における熱交換器、流体貯留容器、パイプおよび回転車と同一であっても良い。
(7)前記熱交換器の第1のパイプとの接続口側および/または前記第1のパイプ内に、前記交換器から前記流体貯留容器へ流れる流れに対して開き、その逆の流れに対して閉じる機能を持つ第1の逆止弁を有し、さらに、前記熱交換器の第2のパイプとの接続口側および/または前記第2のパイプ内に、前記流体貯留容器から前記交換器へ流れる流れに対して開き、その逆の流れに対して閉じる機能を持つ第2の逆止弁を有することを特徴とする。あるいは、前記第1の回転車は、前記交換器から前記流体貯留容器へ流れる流れに対して回転し、その逆の流れを停止する機能を持つか、あるいはその逆の流れに対して回転せずかつ回転軸に対して空周りする機能を持ち、および/または前記第2の回転車は前記流体貯留容器から前記交換器へ流れる流れに対して回転し、その逆の流れを停止する機能を持つか、あるいはその逆の流れに対して回転せずかつ回転軸に対して空周りする機能を持つ。さらに前記第1の回転車および第2の回転車は同軸で回転し、前記同軸回転は一方向への回転であり逆方向には回転しないことを特徴とする。
(8)本発明の温度変化発電機構は、上記に加えて、流体(液体および/または気体)の熱膨張および/または熱収縮による流体の流れを往復運動エネルギーに変換し、前記往復運動エネルギーを回転運動エネルギーにさらに変換したことを特徴とし、前記温度変化収穫機構は、流体を内部に含む熱交換器、流体を貯留するシリンダ、前記熱交換器および前記シリンダを接続し流体が流れるパイプを含み、前記往復運動はシリンダに配置されるピストンによる運動であり、前記ピストンに備わる駆動歯車に咬合する回転整列機構により回転エネルギーを発生することを特徴とする。さらに、上述した本発明の温度変化発電機構は、ヒートポンプに組み込んだことを特徴とする。
(9)本発明は、温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、前記発電機構は、複合磁性体コアに複数回コイルを巻いて作製したジェネレータコイルを複数接続したバルクハウゼン発電機であることを特徴とする温度変化発電機構である。
(10)本発明は、上記に加えて、発電機構は、複合磁性体コアに複数回コイルを巻いて作製したジェネレータコイルを複数接続したバルクハウゼン発電機であることを特徴とする温度変化発電機構である。
(11)本発明は、温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構および前記回転エネルギーから発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、前記発電機構は、複合磁性体コアに複数回コイルを巻いて作製したジェネレータコイルを複数接続したバルクハウゼン発電機であることを特徴とする温度変化発電機構であり、さらに前記温度変化収穫機構は、バイメタルぜんまいであることを特徴とする温度変化発電機構である。
本発明の温度変化発電機構は、温度変化を回転エネルギーに変換し、さらにその回転エネルギーを電気エネルギーに変換する温度変化発電システムである。小さな温度変化でも効率的に回転エネルギーに変換し、その回転エネルギーを蓄力した後電気エネルギーに変換するので、回転エネルギーが小さくても十分な発電をすることができる。逆回転を防止するラッチ機構を備えているので、エネルギー変換ロスが少ない。またラッチ機構に配向性を有する微細毛を用いることにより、システムを小型化できる。さらに、本発明の温度変化収穫機構に使用されるバイメタルゼンマイは微細化して小型化しているので、温度変化が小さくてもバイメタル構造により容易に巻き上げたり巻き戻したりすることができる。また、本発明の温度変化収穫機構に使用されるバイメタルカンチレバーを用いた回転円板体は微細化して小型化しているので、温度変化が小さくてもバイメタル構造によりカンチレバーの変形力により容易に回転することができる。すなわち温度分解能が高いので、温度変化という熱エネルギーを効率良く回転エネルギーに変換することができる。小型化して回転トルクが小さくなった分は、第1の変速機構で回転速度を減速して通常のゼンマイを巻き上げて力量を蓄積(蓄力)し、その力量を用いて発電することができる。すなわち小さなトルクでゼンマイをどんどん巻き上げて、蓄力機構に充分なトルク量を確保した後で、第2の変速機構で増速することにより充分な回転速度で発電することができる。温度変化収穫機構の後に一方向回転整列機構を付随することにより、温度上昇および温度低下という二種類の温度変化による二方向の回転も利用できるので、発電効率をさらに向上することができる。本発明のバイメタルはMEMSプロセスを用いて簡便なプロセスで大量に作成できるので、製造コストを低くできるとともに品質の安定した製品を実現できる。また、流体を用いた温度変化発電機構も、上述した効果に加えてさらにエネルギー収穫率が高いので効率的な発電を可能とする。
図1は、本発明の温度変化発電機構のシステム構成を示す図である。 図2は、MEMSプロセスを用いて半導体基板上に形成した本発明のバイメタルゼンマイを示す模式図である。 図3は、本発明のバイメタルゼンマイをMEMSプロセスで作成する場合の一実施形態を示すプロセスフローである。 図4は、本発明のバイメタルゼンマイをMEMSプロセスで作成する場合の一実施形態を示すプロセスフローである。 図5は、本発明の温度変化発電と温度差発電(たとえば、ゼーベック素子を用いたもの)との相違を示す図である。 図6は、渦巻形バイメタルの変位量A、荷重P、内部応力Sの関係式を示す図である。 図7は、温度を変化させたときのバイメタルゼンマイの動作を示す図である。 図8は、2種類のタイプのバイメタルゼンマイを組み合わせて作製したS字状ゼンマイを示す図である。 図9は、第1の変速機構において自動変速機構を用いた自動トルク化を実現する実施例を示す図である。 図10は、カンチレバータイプのバイメタルの模式図を示す。 図11は、S字ゼンマイのトルクと蓄力量の関係を示した図である。 図12は、円板状構造の支持体にカンチレバー構造のバイメタルを適用した別の回転体を示す図である。 図13は、バイメタルゼンマイのトルクと角度変位量との関係を示したグラフである。 図14は、室内および屋外の温度変化による温度変化収穫総量を示す図である。 図15は、バイメタル構造の厚み方向への集積化を示す模式図である。 図16は、一方向回転整列機構の一例を示す図である。 図17は、バイメタルゼンマイの一例を示す図である。 図18は、温度変化収穫機構の他の実施形態を示す図である。 図19は、流体を用いた温度変化収穫機構の別の実施形態を示す図である。 図20は、温度変化収穫機構においてピストン・シリンダ方式を用いた実施形態を示す図である 図21は、バイメタルや流体等を用いた温度変化収穫機構の能力を高める方法を示す概念図である。 図22は、一定角度を持って基板に配置された微細毛を用いた回転ラッチ機構を示す模式図である。 図23は、図21で示した温度変化収穫機能の高性能化を実現する製品の一例を示す図である。 図24は、開放型送風器を用いて冷却する方法を示す図である。 図25は、微細毛を用いた別の回転ラッチ機構を示す図である。 図26は、本発明の温度変化発電機構の応用例を示す図である。 図27は、本発明の温度変化発電機構をモジュール化した例を示す図である。 図28は、時定数とエネルギー収穫量の関係を示した図である。 図29は、ヒートポンプサイクルの模式的構成図を示す図である。 図30は、温度変化収穫機構に回転整列機構を組み合わせた実施形態を示す図である 図31は、流体を用いた温度変化収穫機構の別の実施形態を示す図である。 図32は、図31で示す熱交換器の外壁構造の一例を示す図である。 図33は、微細植毛を用いた回転ラッチ機構の別の実施形態を示す図である。 図34は、バルクハウゼン発電機の構造を示す図である。 図35は、バルクハウゼン発電機を用いた高性能型温度変化収穫機構を示す図である。 図36は、バルクハウゼン発電機と従来の誘導型発電機における回転数と発電エネルギーの関係を示す図である。 図37は、バイナリーサイクルおよびAPGを組み合わせた発電システムの一実施形態を示す図である。 図38は、バイナリーサイクルとAPGブロックの協調動作パターンを示す表である。 図39は、バイナリーサイクルおよびAPGブロックの協調動作による発電タイミングを示す図である。 図40は、種々の作動媒体の得失を比較する表である。 図41は、APGブロックのベローズと伝達機構の構成イメージを示す図である。
図1は、本発明の温度変化発電機構のシステム構成を示す図である。本発明の基本は環境の少しの温度変化を機械的エネルギー、さらに電気的エネルギーに変換することであり、図1の構成図に示すように、最低限、温度変化という熱エネルギーを力学的エネルギー(力量、あるいは機械的エネルギー、あるいは回転エネルギー)に変換する温度変化収穫機構111およびその力量を用いて発電する発電機構116からなる。温度変化収穫機構111は、たとえば複数のバイメタルゼンマイ(渦巻きバネ)から構成され、温度変化によってバイメタルゼンマイが巻き上げられたり巻き戻されたりする。図17にバイメタルゼンマイの一例を示す。バイメタルゼンマイ516は渦巻き状に巻き上げられており、このバイメタルゼンマイ516は熱膨張率の異なる2枚の板状材料517および518が張り合わされ、巻かれて構成されている。温度変化による2枚の材料517および518の熱膨張差によってバイメタルゼンマイ516が巻き上げられたり巻き戻されたりする。このように、熱エネルギーがゼンマイの回転エネルギーとして変換される。本発明のバイメタルゼンマイは、従来使用されているバイメタルより微細(厚みが1mm〜100μm以下)なので、このバイメタルゼンマイは少しの温度変化(1℃〜0.5℃以下の高分解能)でもゼンマイを巻き上げることができる。
バイメタルゼンマイが巻きあがった後に、一方向回転整列機構112を通して第1の変速機構により減速して蓄力機構114に温度変化収穫機構111の力量を移転し蓄積する。温度変化は温度上昇と温度低下の2通りあるので、巻き方向が逆になる。また、バイメタル構造の材料を逆にすると回転方向が逆になる。さらに巻き方を逆にしておくとやはり巻き方向が逆になる。あるいは巻き戻しのときにも回転方向が逆になる。一方、第1の変速機構から力量の伝達を受ける蓄力機構では回転方向がそろっていないとエネルギーロスが大きくなる。すなわち、第1の変速機構側では回転方向が常にそろっていた方が良い。これらのすべての状況に対応するためには、温度変化収穫機構111から伝達される2通りの回転方向を一方向に整列する機構が必要となる。そのシステムが一方向回転整列機構112である。一方向回転整列機構112には従来から種々の方法があり、本発明においてはこれらの方法を適宜選択して採用することができる。たとえば、腕時計の自動巻の巻き上げ機構に採用されている切り換え車方式、マジックレバー方式やペラトン方式を適用することができる。
図16は、一方向回転整列機構の一例を示す図である。一方向回転整列機構に切換車408、409およびラチェット車413、423を用いている。温度変化収穫機構の回転は、切換かな414、424と同期して切換車408、409に伝達される。切換車408、409のそれぞれは、切換かな414、424と一体になったラチェット車413、423を備えている。切換車408の回転は第1の変速機構410に伝達されるように、たとえば切換車408の歯車および第1の変速機構410の歯車411が噛み合っている。切換車408、409を構成する切換歯車412、422は、回転自在な切換つめ415、425と、切換つめ415、425の一端を押圧し、かつ他端をラチェット車413、423の歯面に対して付勢する付勢ばね416、426を備えている。切換つめ415、425は固定ピン417、427で切換歯車412、422に固定されている。また、付勢ばね416、426も固定ピン429、430で切換歯車412、422に固定されている。これらのラチェット車413、423の回転規制方向(逆回転防止方向)は互いに反対方向であり、温度変化収穫機構の回転がいずれの方向(ある方向とそれの逆方向の2方向しかない)に回転しても、第1の変速機構410は常に一方向に回転する。
たとえば図16において、温度変化収穫機構の回転によって、切換車408では切換かな414を介してラチェット車413が反時計方向に回転すると、ラチェット車413が切換つめ415でロックされないので、ラチェット車413の回転は切換歯車412に伝達しない。一方、温度変化収穫機構の回転によって、切換車409では切換かな424を介してラチェット車423が反時計方向に回転すると、ラチェット車423の規制方向が切換車408と異なるために、ラチェット車423が切換つめ425でロックされるので、ラチェット車423と同期して切換歯車422も反時計方向(R8方向)に回転する。この回転が切換車408側の切換歯車412に伝達され(切換歯車412と切換歯車422はたとえば歯車で噛み合っている)、切換歯車412は時計方向(R7方向)に回転し、さらにこの切換歯車412の回転により第1の変速機構410の歯車411が反時計方向(R9方向)に回転する。
次に、温度変化収穫機構の逆回転によって、切換車408では切換かな414を介してラチェット車413が時計方向に回転すると、ラチェット車413が切換つめ415でロックされるので、ラチェット車413の回転に従い切換歯車412も時計方向(R7方向)へ回転する。この切換歯車412の回転により第1の変速機構410の歯車411が反時計方向(R方向9)に回転する。一方、温度変化収穫機構の逆回転によって、切換車409では切換かな424を介してラチェット車423が時計方向に回転すると、ラチェット車423の規制方向が切換車408と異なるために、ラチェット車423が切換つめ425でロックされないので、ラチェット車423の回転は切換歯車422に伝達しない。以上のように、温度変化収穫機構がどのように回転しても、第1の変速機構410の歯車411は一定方向{図16では反時計方向(R9方向)}へのみ回転する。
さらに、この機構112には逆回転を防止するラッチ機構が配置されている。たとえば、ゼンマイを巻き上げていくとその復元力で巻き戻そうとする力も働き、巻き戻されるとエネルギーが大きくロスしてしまう。これを防止するための機構がラッチ機構である。すなわち、ラッチ機構とは、一方向のみに回転して回転毎に係止し逆回転を防止する機構であり、たとえばつめ車とつめでなるラチェット機構やドーボ機構がある。
一方向回転整列機構112を通して温度変化収穫機構111のバイメタルゼンマイを解放し(巻き戻し)、バイメタルゼンマイに接続した第1の変速機構113の輪列(歯車)により減速する。温度変化収穫機構111はバイメタルゼンマイが充分に巻き上がるまで第1の変速機構にその力量を移動させないために、温度変化収穫機構111と第1の変速機構113および一方向回転整列機構112に接続しないようにしても良い。また、バイメタルゼンマイが完全に巻き戻すまで第1の変速機構と接続させバイメタルゼンマイの持つ力量を充分に第1の変速機構へ移転するようにしても良い。バイメタルゼンマイの持つ力量を完全に巻き戻すには、バイメタルゼンマイの温度変化を閾値温度変化(巻き戻すの必要な温度変化)以下とすれば良い。あるいは、巻き上げる温度変化と逆の温度変化になるようにすればバイメタルゼンマイの持つ力量は速く解放される。本発明のバイメタルゼンマイは厚さを薄くできかつ有効長さを長くできるので変位量を大きくできる。従って、高い温度分解能(収穫し得るエネルギー量の最小単位)を実現できるので、わずかの温度変化でもバイメタルゼンマイを動作することができる。
逆に巻き戻す力が小さいのでトルクが弱く、バイメタルゼンマイを用いて増速することが難しい。(図6を参照)そこで、第1の変速機構113の減速によりトルク力を高めて蓄力機構114のゼンマイを巻き上げる。第1の変速機構113は複数の歯車からなる輪列機構で、蓄力機構114のゼンマイを効率良く巻き上げることができるように輪列機構の変速比を調節することができるようになっている。また、蓄力機構114のゼンマイのオーバーチャージを効果的に排除する機構を取り付けても良い。さらに、温度変化収穫機構111の力量の充解放や第1の変速機構の変速比等の調節やオーバーチャージ等をコントロールする制御機構(たとえば、センサー付きIC)を設けても良い。尚、温度変化収穫機構11の力量が不足している場合、緊急に発電する必要がある場合などには、自力で蓄力機構におけるゼンマイを回転できるように手動の手巻き機構117を第1の変速機構113や蓄力機構114に備えても良い。この手動の手巻き機構117の方式も手動式腕時計などに使用されている従来方法を採用することができる。
温度変化収穫機構111で収穫した回転エネルギーは一方向回転整列機構・ラッチ機構112および第1の変速機構113を経由して蓄力機構114に伝達される。蓄力機構114に用いるゼンマイは通常の単一材料(たとえば、高炭素鋼、ステンレス鋼、Co-Ni合金)からなるもので、腕時計や置き時計などに使用されている従来のゼンマイを使用することができる。また、このゼンマイは香箱に収納されても良く、回転エネルギーの蓄力と解放を同時にできるという利点がある。蓄力機構114のゼンマイが充分に巻き上がった後に(完全蓄力状態で)、第2の変速機構115に接続して輪列(歯車)機構を用いて、ゼンマイの解放(巻き戻し)による回転運動を増速させ、発電機構116で発電する。発電機構116は、たとえば磁石とコイルを用いた電磁誘導発電であり、薄さが要求される場合はフラットタイプとすれば良い。発電機構116は充放電制御機構119により発電速度や発電量が制御されている。たとえば、発電機構116において発電された電気により負荷120で仕事をするが、充放電制御機構119はその負荷量に応じて放出する電気量をコントロ−ルできる。また、発電速度を制御するために充放電制御機構119からの信号を変速機制御機構118に送り、第2の変速機構の変速比を変更するなどして、複数の歯車から構成される第2の変速機構の輪列の回転速度を調整することができる。負荷120は末端の電子機器であり、たとえば携帯電話や時計等の携帯機器であるが、電流(電荷)むらを吸収したり、蓄電したりする電気二重層キャパシタや二次電池を備えても良い。充放電制御機構や変速機制御機構として充放電制御回路や変速機制御回路等を組み込んだLSIを搭載しても良い。
腕時計等で使用されるゼンマイを収納した香箱が蓄力と解放を同時にできる理由は以下の通りである。プルバック式のおもちゃでは香箱は固定されているので、動力の蓄力と解放は中心軸から行うので蓄力と解放を同時に行うことはできない。しかし、時計の香箱では、ゼンマイばね外周は香箱に(固定して)触れており、ゼンマイばね中心は香箱真に固定されている。このため香箱真は蓄力、香箱は解放と役割を分担させることで蓄力と解放を同時に行うことができる。また、香箱車にこはぜを用いて蓄力方向しか回転しない構造となっている。尚、蓄力機構として、ゼンマイ(発条)以外にも、たとえば、板バネ、トーションバースプリング、コイルバネ、或いは気体圧縮を用いたものも使用できる。
図2は、MEMSプロセスを用いて半導体基板上に形成した本発明のバイメタルゼンマイを示す模式図である。半導体基板130上にバイメタルゼンマイ131が多数作成されている。破線で囲まれた領域が1個のチップに相当し、1個のチップ内に1つのバイメタルゼンマイが形成される。図2はバイメタルゼンマイ131を平面的に見た図であり、バイメタルゼンマイ131は回転軸133を中心として螺旋状に、あるいは渦巻き状に形成され、外端部132で終端する。バイメタルゼンマイ131は、図2に示すように、2種類の材料A134と材料B135が渦巻き方向(x方向またはy方向、あるいはバイメタルゼンマイ131の厚み方向)に結合した構造となっている。材料AおよびBの間の白抜きの空間はバイメタルゼンマイの隙間となっている。
同一位置における材料Aの厚みTa、材料Bの厚みをTb、隙間をDa-b(材料A−B間の距離)、渦巻きの巻き数nとする。バイメタルゼンマイの作成時、すなわち材料Aと材料Bの間に熱応力が発生しない温度(これをT0とする)から温度変化を与える(T0より高くするか低くする)とバイメタルゼンマイは変形する。Ta、Tb、Da-b、nは、材料Aの熱膨張率αa、材料Bの熱膨張率αbに基づき、どの程度の温度変化、あるいはどのくらいの時間でバイメタルゼンマイを完全に巻き上げるかによって決定することができる。作成時(熱応力が働かないとき)Ta、Tb、Da-bはすべての位置で一定である必要はなく、場所によって変化させて最適の巻き上げが可能となるようにする。たとえば、回転軸133から外端部(州端部)132になるに従い、Ta、Tb、Da-bを徐々に大きくしてゼンマイの中心側との巻き上げ速度を合わせるように調節することもできる。金属片を貼り合わせる従来のバイメタルではこのようなことは極めてむずかしかったが、本発明のMEMSプロセスでは後述するようにフォトマスクを用いてこれらの厚みや隙間を調節できるので、極めて簡単にTa、Tb、Da-bやnを変化させることができる。さらに、非常に小さなバイメタルゼンマイを大量に量産することができ、しかも多数作製されたバイメタルゼンマイのサイズが均一になるので品質のそろった製品を生産可能となる。
図3および図4は本発明のバイメタルゼンマイをMEMSプロセスで作成する場合の一実施形態を示すプロセスフローである。第1基板141上に絶縁層142、その上に第2基板143が積層した構造の基板140を用いて、図3(a)に示すように、第2基板143上に厚膜フォトレジストを塗布しフォトマスクを用いて感光した後現像して、ゼンマイパターンの厚膜フォトレジストパターン144を形成する。一例として、第1基板141のシリコン基板厚みは100μm〜500μm、絶縁層142のシリコン酸化膜の厚みは1μm〜100μm、第2基板143のシリコンの厚みは20μm〜1000μmである。次に、フォトレジストパターン144をマスクとして第2基板143をエッチングし、図3(b)に示すような柱状の第2基板材料からなるパターン145を形成する。この第2基板パターン145はバイメタルゼンマイの一方の材料となるので、以下、図2で示した材料のうちの材料Aパターンと称する。材料Aパターン145の形状が変動しないようにできるだけ垂直なパターンが望ましい。第2基板143のエッチングを深堀エッチング(DRIE)によりドライエッチングすることにより所望の形状のパターン(垂直パターン)を得ることができる。
次に図3(c)に示すように、材料Aパターン145の周囲に絶縁膜146を形成する。この絶縁膜146は後のプロセスで材料Bの選択成長時のマスクとなる層であり、CVD法で絶縁膜(シリコン酸化膜など)を積層しても良く、絶縁膜146の厚みは100nm〜1μm程度で良い。次に図3(d)に示すように、フォトレジスト147を付着させて、図3(e)に示すようにフォトリソグラフィ法により必要な部分にフォトレジスト148をパターニングする。次に図3(f)に示すように、フォトレジスト148で被われていない材料Aパターン145の側壁絶縁膜146をエッチング除去する。側壁絶縁膜146がシリコン酸化膜である場合は、緩衝フッ酸液(HF+NH4F)等でウエットエッチング除去でき、またはエッチングガス(たとえば、CF系ガス)を用いたドライエッチングにより除去できる。次に図4(g)に示すように、フォトレジストパターン148を残した状態で、材料B149を蒸着、スパッターやCVD法で積層する。従って、フォトレジストパターン148上にも付着する。
次に、フォトレジストパターン148を除去すると、いわゆるリフトオフ法によりフォトレジスト148上に積層した材料B膜も一緒に除去される。フォトレジスト膜148の除去は、ウエット液の場合には熱濃硝酸系剥離剤や有機系剥離剤等で、あるいは、酸素プラズマ等を用いてプラズマアッシングしても良い。図4(h)は、フォトレジスト148が除去され、その上に形成された材料B膜149が除去された状態を示す図である。材料Aパターンの酸化膜がある部分には材料B膜は存在せず、材料Aパターンの酸化膜がなく材料Aが露出している部分には材料B膜が積層している。次に図4(i)に示すように、材料Aパターン145に積層している材料B膜だけを残して他の部分の材料B膜を除去する。特に絶縁膜142上に積層した材料B膜は除去しておくと良い。
次に、図4(j)に示すように、材料B膜上に材料Bをメッキすれば材料B膜149上に選択的に材料B151を厚く積層することができる。材料B膜149は渦巻き状に接続しているので、渦巻きパターンの一部から通電するようにすれば電解メッキが可能である。材料Bをシリサイド(たとえば、タングステンシリサイド)にしても良い。シリサイドの場合ベース金属とシリコンとの中間の熱膨張率を持ち、組成によって熱膨張率が変化するので、熱膨張率を調節したバイメタル構造を作製できる。所望の厚みの材料B151を積層した後に、絶縁膜146および絶縁膜142を除去する。(図4(k))バイメタルゼンマイは絶縁膜142上のみに積層しているので、絶縁膜142を除去した後は、第1基板141から分離して個別のバイメタルゼンマイとなり、1つ1つのゼンマイを図1に示す温度変化収穫機構111にセットすることができる。尚、バイメタルゼンマイが個片化する前に熱処理等を行ない材料B膜149および材料Bであるメッキ膜151を融合(一体)化して材料B152としてから、個片化しても良い。(図4(l))
図6は、渦巻形バイメタルの変位量A、荷重P、内部応力Sの関係式を示す図である。この図において、Aは変位量{変角(度)}、Pは荷重(トルク)(kg)、Tは平衡温度(変位が0、または基準変位のときの温度)、Tは環境温度、lは有効長さ(mm)、bは幅(mm)、tは厚さ(mm)、cは巻形の偏位係数(/℃)、mは巻形の力係数(kg/mm)、rは回転腕長さ(mm)、Sは内応力(kg/mm)、zは外周半径である。A=c(T2−T1)l/tであるから、変位量Aはバイメタルゼンマイの厚みtを小さくし、有効長さlを大きくすれば増大することが分かる。さらに厚みtを小さくしていけば同じサイズのバイメタルゼンマイの場合には巻き数nも増大するので、有効長さlも大きくなる。
例えばここで、図6の式において板の厚みtに着目して考えると、図15で、仮にtを増やしていくと、厚み方向に接合から離れた体積分は接合での応力(図6の式中、S)に寄与しない様子がイメージとして判る。これに対して、同体積(温度に対して)で多数集積したほうが、よりエネルギーハーベストとして効率が上がることを示す。スティーブンの時計に使われたバイメタルゼンマイの厚みは約1mmであるが、本発明のMEMSプロセスで作成したバイメタルゼンマイは厚みtを非常に小さくすることができる。(図2に示したようにt=Ta+Tbである)たとえば、本発明のMEMSプロセスで作成したバイメタルゼンマイは厚みtを100μmとすれば(この値は簡単に実現できる)、巻き数も約10倍にできるので、有効長さは約10倍になる。従って、歪量(変位量)は約100倍となり大きな歪を得ることができる。このことは、バイメタルゼンマイに接続した歯車の回転数を増大させることが可能なことを示している。このようにバイメタルゼンマイを薄くしていけばわずかな温度変化でも高い温度分解能を得ることができる。これに加えてバイメタルゼンマイを薄膜化することにより、温度追従性も向上するので、エネルギー収穫量のさらなる向上を図ることができる。
図14(a)は室内の1日の温度変化を示すグラフであり、右側の図が一部拡大図である。菱形印を結ぶ折れ線グラフAは10分毎の温度変化であり、四角印を結ぶ折れ線グラフBは60分毎の温度変化である。これから温度分解能を向上すればより小さな変化も収穫でき、温度追従性を向上すれば、時間あたりより多くの上昇・加工を収穫できることが分かる。図14(c)は、横軸が温度分解能、縦軸が1日の温度変化収穫総量を任意に相対値で表すグラフである。菱形印を結ぶ折れ線グラフCは一日の温度変化を収穫したデータであり、四角印を結ぶ折れ線グラフDは脱着(たとえば、腕時計)により収穫したデータである。折れ線グラフCから、0.5℃の温度分解能で熱エネルギーを収穫した場合に比べて、例えば、0.1℃で収穫するとおよそ6倍の量のエネルギーを収穫できることになる。また、腕時計の場合は、腕に装着するよりむしろ置いておいた方が良いことが分かる。図14(b)のグラフは腕時計を想定した、脱着時の温度変化を測定したもので、室温の変化がおよそ5度(図14(a)の場合)であるのに対して、脱着では10℃程度変化する。これをハーベスト(収穫)するには分解能として3℃程度あれば充分である。しかしながら、脱着は1日に1〜せいぜい数回の行為であり、これをハーベストしても図14(c)のグラフに示すような値となる。つまり、高分解能化すると、ゆらぎも収穫するので、脱着に期待しなくても放置しておくだけでも相当のハーベストができることを意味する。スティーブンの時計に対して(図14(c)に示すSの場合)、3倍 x 前記100倍なので約300倍となり、概略1uw x 300 =300 uw/day 収穫できる。このように温度追従性および分解能を上げることは、格段にエネルギー収穫量が向上することを意味する。本発明の温度変化収穫機構は、上述したように、温度追従性および分解能が高いので、エネルギー収穫効率が非常に高い。また、本発明の温度変化収穫機構は、温度の上昇のみならず温度の下降側も収穫し、温度変化の絶対値の累積として取りだすことができるので、さらに収穫効率が高くなる。
図6に示すように、荷重Pはバイメタルゼンマイが変位した場合に生じるトルクと考えて良いので、P=cm(T2-T1)bt2/rの関係式からバイメタルゼンマイを微細化すると小さくなる。従って、低トルクのため図1に示した温度変化収穫機構111から直接増速して発電用ローターを高速回転させて発電することは難しいので、本発明の温度変化発電機構では、第1の変速機構113を用いて蓄力機構に力量(回転エネルギー)を蓄えて高トルクを得るようにした。さらに、本発明のエネルギーモジュール(温度変化発電機構)では、温度変化収穫機構から蓄力機構へ力量を移転する機構である第1の変速機構における変速比、および蓄力機構から発電機側へエネルギーを伝達する第2の変速機構の変速比を異なる値に適宜設定できるので、弱い力でしかし高分解能(温度変化に敏感に)で巻き上げて、力量を蓄力機構(ゼンマイ機構)に一旦蓄力し、その後で蓄力機構(ゼンマイ機構)から好適なトルクで発電することができる。尚、S字ゼンマイを蓄力機構(香箱)に用いることにより巻き上げトルク特性を一定(フラットトルク化)にできるので、S字ゼンマイを巻き上げる力とS字ゼンマイを解放する力をほぼ一定にでき、発電能力を一定に保持できるという利点がある。たとえば、コンストン式S字ゼンマイでは、丸く巻いたゼンマイを熱処理することにより、巻いてある方向と逆に巻いていけば繰り出し側と巻取り側の半径の差が一定となるので巻き取る時のゼンマイの曲率の変化率が一定になることからフラットトルクを得ることができる。
図11はS字ゼンマイのトルクと蓄力量の関係を示した図である。縦軸はトルク、横軸は蓄力量(巻き数と考えても良い)であり、n1はS字ゼンマイを香箱に収納した初期状態、n2はフル巻き状態、n0はS字ゼンマイの開放状態(香箱に入っていない状態)を示す。比較のために通常の玩具等に用いられるゼンマイ(片巻き状態)におけるトルク特性(曲線B)も示す。片巻きゼンマイでは初期段階は小さなトルクで巻けるが、だんだんトルクが大きくなり、フル巻き状態ではかなり大きなトルク(t3)を必要とする。(曲線B)これに対して、S字ゼンマイ(コンストン式)では上述したように、初期段階でスグに一定のトルクとなり最終段階まで一定の巻き上げ力(フラットトルク)(t1)となり、最後のフル巻き状態でも余り大きくないトルク(t2)となる。(曲線A)従って、片巻きゼンマイの場合はフル巻き状態の大きなトルク(t3)に耐えられるように、ラッチ機構のピッチや強度を大きくする必要がある。これに対して、S字ゼンマイの場合は、フラットトルク(t1)程度の小さなトルク(t2)に耐えれば良いので、ラッチ機構のピッチや強度を大きくする必要はない。従って、S字ゼンマイによるフラットトルク化はラッチ機構のピッチを微細化することも可能になる(逆転防止ストッパーの強度をむやみに高くしなくてよい)。さらに、このラッチ機構のピッチ微細化により温度分解能も向上できるというメリットもある。
フラットトルクを得る他の方法として、蓄力源の力により配分比を自己バランスにより決定する自己調整型自動トルク調整器によりフラットトルクを得る方法がある。図9は、第1の変速機構において自動変速機構を用いた自動トルク化を実現する実施例を示す図である。回転変換機構から蓄力機構へ伝達する変速比を、増速か減速かで考えてみる。増速とは、実際のトルクを小さくし、可動量を大きくすること意味する。例えば、短い時間で大きく変化した場合は、大きなトルクが発生するので、それを減速の変速比で伝達してしまうと、ゼンマイで言うところのいわゆる無駄解放になってしまう。一方、小さい変化の連続の場合、累積すれば大きな収穫になるにもかかわらず、ひとつひとつは小さなトルクなので、蓄力機構を動かすことができないということになる。常に蓄力側の受けトルクとして動けなくなるぎりぎりのトルクに拮抗したトルクで伝わるのが望ましい状態である。
そこで、第1の変速機構において、変速比可変構造を設けるのが望ましい。図9(a)に示すように、伝達機構として、Vベルト554とそれを受けるプーリ553で示すと。プーリ553はテーパ構造を有したV型とし、Vベルト554の位置によって変速比可変構造とする{図9(a)(b)}。例えば、図9(a)が増速状態、図9(b)が減速状態であり、回す側の負荷が増大して、ゆくゆく回せなくなるような状況に近づくとプーリ553と軸回転との間の拮抗トルクが増大する、そうすると、図9(c)に示すように、バネ561と螺旋溝565によってテーパプーリ563の間隔が増大する方向に動く、そうすると、図9(b)のようになり、変速比が減速側に振れる。逆に、有り余るトルクで無駄解放状態に近づくと、変速比が増速側に振れていく。尚、図9において、551はテーパ構造、552はバックプレート、556は回転軸、562はバックプレート、564はVベルト、566は軸の回転方向・トルクを示す。
図13は、バイメタルゼンマイのトルクと角度変位量との関係を示したグラフである。縦軸にトルク(μNmm)を、横軸に角度変位量(deg)を取っており、温度変化量ΔTをパラメーターとしている。バイメタルゼンマイの条件は、材料がニッケル(Ni)とシリコン(Si)のバイメタル構造で、外径10mmの渦巻状ゼンマイで、ゼンマイ幅は0.5mmとし、メタルゼンマイの厚みを0.1mm〜1mmに変化させ、ニッケル(Ni)とシリコン(Si)の厚み比を1としたものである。(Niの熱膨張率は13.4×10−6/℃、Siの熱膨張率は2.6×10−6/℃である(20℃にて)から、温度が上昇するとSi側に反る。)角度変位量が小さくなるに従い、或いは温度変化量が大きくなるに従い、或いはバイメタルゼンマイ厚みが大きくなるに従い、発生するトルクは大きくなる。一方向回転整列機構はたとえば切換え車機構やマジックレバー方式に見られるように回転を一方向化するためラッチ機構がある。このラッチ機構は最小きざみ分(1ラッチ分)の有限の動き量(角度)を必要とする。これまで説明してきたように、本発明の温度変化発電機構では第1の変速機構を有することで、小さなトルクでも蓄力可能であるが、変速前にこのラッチ機構の1ラッチ分の角度変位量は最低必要である。すなわち、図13に示すように、温度変化量(収穫分解能)0.5℃以下において、角度変位量の実用的な領域である0.08deg以上を確保するためには、バイメタルゼンマイの厚みは0.6mm以下であることが必要である。
図7は、温度を変化させたときのバイメタルゼンマイの動作を示す図である。図2に示すようなバイメタルゼンマイにおいて、外側の材料Bの熱膨張率αbが内側の材料Aの熱膨張率αaより大きい場合(αb>αa)、温度を上げると図7(a)に示すようにバイメタルゼンマイが中心軸に巻き上げられる。また温度が下がると図7(b)に示すように巻き上げられたバイメタルゼンマイが解放され(巻き戻され)、外側に巻かれていく。この中心軸に歯車をつけておけばバイメタルゼンマイの巻き上げ、あるいは巻き戻しに対応して力量を伝達することが可能となる。温度の上昇および下降(低下)を繰り返すことによりこの巻き上げおよび巻き戻しが繰り返されて力量が蓄力機構に移動する。逆にαb<αaの場合には前記の逆の現象となる。
そこで、図8に示すように、2種類のタイプのバイメタルゼンマイを組み合わせて1組のS字状ゼンマイを作成することにより、温度上昇時も温度下降時も力量を発生しながら蓄力機構へ力量を伝達することができる。すなわち、図8(a)において、バイメタルゼンマイ212およびバイメタルゼンマイ211のゼンマイの巻き方は逆になっている。この逆向きになっているバイメタルゼンマイの外端が接続して一つなぎになってS字形状のS字(状)ゼンマイとなる。図8(a)におけるバイメタルゼンマイ212の外側にくる材料が図7(a)と同じαb>αaとなる材料Bであり、従って材料Bはバイメタルゼンマイ211の内側にくる。この結果温度が上昇すると、ゼンマイは、バイメタルゼンマイ212の中心軸に巻かれていきゼンマイの半径が小さくなっていき、バイメタルゼンマイ211の中心軸から解放されていき(巻き戻されていき)ゼンマイの半径が大きくなっていく。温度が下がると、ゼンマイは、バイメタルゼンマイ211の中心軸に巻かれていき、バイメタルゼンマイ212の中心軸から解放されていく(巻き戻されていく)。このように巻き方の異なるゼンマイを連続して接続すれば、温度の上昇時も下降字も必ずどちらかのバイメタルゼンマイから力量を蓄力機構へ移転することが可能となるので、発電効率を向上させることができる。
図8(b)に示すバイメタルゼンマイは、図8(a)に示すバイメタルゼンマイの材料AおよびBが逆になったものである。図8(b)において、バイメタルゼンマイ213およびバイメタルゼンマイ214のゼンマイの巻き方は逆になっている。この逆向きになっているバイメタルゼンマイの外端が接続して一つなぎになっている。図8(b)におけるメタルゼンマイと図8(a)におけるメタルゼンマイの巻き方は逆であり、図8(b)におけるバイメタルゼンマイ214の外側にくる材料はαb>αaとなる材料Bであり、従って材料Bはバイメタルゼンマイ213の内側にくる。この結果温度が上昇すると、ゼンマイは、バイメタルゼンマイ213は中心軸に巻かれていき半径が小さくなり、バイメタルゼンマイ214は中心軸から解放されていき(巻き戻されていき)その半径が大きくなる。温度が下がると、ゼンマイは、バイメタルゼンマイ214の中心軸に巻かれていき、バイメタルゼンマイ213の中心軸から解放されていく(巻き戻されていく)。図8(b)に示す場合にも、このように巻き方の異なるゼンマイを連続して接続すれば、必ずどちらかのバイメタルゼンマイから力量を蓄力機構へ移転することが可能となるので、発電効率を向上させることができる。
図8(c)は、図8(a)と(b)のバイメタルゼンマイを並べたものである。温度が上昇すると、メタルゼンマイ212は中心軸に巻かれ、その下に配置されるメタルゼンマイ214は中心軸から解放される。また、メタルゼンマイ213は中心軸に巻かれ、その上に配置されるメタルゼンマイ211は中心軸から解放される。このように巻かれるゼンマイと解放(巻き戻し)されるゼンマイを隣接して配置すると占有面積を大幅に減らすことが可能となり、多数の1組のバイメタルゼンマイを配置する場合、同じ面積であれば多数のバイメタルゼンマイ組みを配置することができるので、それだけ力量を大きくすることができ、その結果発電量も大きくすることが可能となる。図8(a)および図8(b)に示すメタルゼンマイ組み(S字状ゼンマイ)は本発明の図3、図4、図6に示したプロセスを用いて簡単に作製することができる。すなわち、図2に示す隣接するバイメタルゼンマイを接続して、それらのゼンマイの巻き方を逆にすれば良いだけである。材料AおよびBについても必要な部分について逆に配列するだけで良い。図8(a)または(b)に示すようなタイプのバイメタルゼンマイ組(S字状ゼンマイ)を多数配列し、個々のバイメタルゼンマイの中心軸には歯車を連結し、それらの隣接する歯車が咬み合わせて、全体として大きな力量を発生させることができる。これらの全体の力量が第1の変速機構に伝達され蓄力機構に蓄えられる。
図10はカンチレバー(片持ち)タイプのバイメタルの模式図を示す。熱膨張率の異なる材料A(223)および材料B(224)がバイメタル構造で、支持体222に対してカンチレバー構造になっている。材料Aの熱膨張率αaが材料Bの熱膨張率αbより小さいとき(αa<αb)、温度が上昇すると、図10(b)に示すようにそれぞれのカンチレバーの先端が矢印225のように上方へ反る。その結果、支持体222は全体として上方(矢印226方向)への力を受ける。図10に示すカンチレバータイプのバイメタル構造体を櫛歯(くしば)状に組み合わせた場合、同じ向きで対向すると、温度変化が生じた場合にカンチレバーが変形して、図12(a)に示すようにお互い同士が干渉してしまう。従って、カンチレバー同士の間隔を余り接近できなくなる。そこで、図12(b)に示すようにカンチレバーの中途でバイメタルの材料を逆にすることにより、お互いが干渉しないようになり、カンチレバー同士の間隔を狭めることができ、かつスムーズな回転を実現することができる。すなわち、図12(b)において、下側のカンチレバー270の根元側の構造は、右側が材料A273で左側が材料B272となっており、下側のカンチレバーの先端側の構造は、右側が材料B272で左側が材料A273となっている。一方、上側のカンチレバー271の根元側の構造は、右側が材料B272で左側が材料A273となっており、上側のカンチレバーの先端側の構造は、右側が材料A273で左側が材料B272となっている。このように対向するカンチレバーの材料を異種材料とし、かつ根元側と先端側の材料も中途で異種材料(本明細書で基材する異種材料とは熱膨張率が異なる材料という意味である)に変えることにより、上下のカンチレバー同士の干渉を抑えることができ、かつカンチレバー同士の間隔を狭めることができるので、多数のカンチレバーを配列することが可能となり大きな回転力を産むことができる。
図12(c)は図12(b)に示す櫛歯(くしば)構造が上下で噛み合った円板状の回転体を同心円状に多数配列した状態を示す図である。本発明のプロセスを用いれば図12(b)に示す構造を持つ図12(c)に示す同心円状の回転体を多数作製することは容易である。たとえば、図12(c)に示す円板体を同心円状にパターニングすることにより、図3および図4で示したプロセス等を用いて作製できる。バイメタルのカンチレバーの厚みをT、バイメタルのカンチレバー同士の間隔をDとすれば、D>Tであるとき図12(b)に示すように上下のカンチレバー同士の櫛歯(くしば)が相手の櫛歯(くしば)の間に入り込むことができるが、本発明で示したプロセスではTおよびDは1μm〜100μmと非常に小さくすることも可能であるから、非常に微細で多数の櫛歯(くしば)を有するカンチレバータイプの円板状櫛歯(くしば)構造の回転体を作成できる。図12(b)において、バイメタルの厚みをT、バイメタル同士の間隔(上部カンチレバーと下部カンチレバーの距離)をDとしたとき、図12(c)における集積化カンチレバー構造バイメタル円板回転体におけるT/Dを内心にいくほど大きくすると良い。このようにすると回転体1要素当たりのトルク負担(耐量)が均一になり、円板体の回転効率が高くなる。
これまで、バイメタル構造はMEMSプロセスや半導体プロセスを用いて作製することを述べてきたが、従来方法によってもある程度微細に作製することができる。たとえば、熱膨張係数の異なる2種類の金属薄板(各薄板の厚みは0.1mm〜2mm)を溶着やろう付け等で貼り合わせた後に、カンチレバーやゼンマイ状にすれば良い。あるいはバイメタル構造の一方、または両方が有機系材料でも良い。たとえば、一方が金属材料であり他方が有機系高分子材料(樹脂)である場合や、両方の材料が有機系高分子材料(樹脂)であっても良い。要するに熱膨張率の異なる材料を適宜選択して貼り合わせた構造にすれば良い。また、厚みをさらに薄くしたければ貼り合わせた後でエッチングしたり研磨して作製できる。このようにして作製した微細なバイメタルを本発明の温度変化収穫機構に用いて、図1に示した本発明の温度変化発電機構により高効率の発電を行なうことができる。
図18は温度変化収穫機構の他の実施形態を示す図である。本実施形態では流体(液体または/および気体)の熱膨張・熱収縮を用いて熱エネルギーを力学エネルギー(回転エネルギー)に変換する。これまで説明したバイメタルを用いた温度変化収穫機構は、バイメタル自身の応力へのエネルギー消費のために一定の損失があるが、流体媒体を用いた温度変化収穫機構はそれ自体のエネルギー消費が殆どないか小さいため、温度変化収穫(ハーベスト)の効率をさらに向上することができる。
図18に示す実施形態において、パイプ状の熱交換器312から伸びたパイプ313の開口部314が(貯留)容器315内に入り、容器315内およびパイプ312および313内は液体または/および気体(以下、流体と呼ぶ)317で満たされている。熱交換器312の他端はストップバルブ318で開閉できるようになっている。熱交換器312と容器315の間のパイプ313には回転車316が配置されている。パイプ312および313内に入っている物質(流体317)は、熱膨張係数が高い液体または気体が良い。たとえば、水、エタノールやメタノール等の各種アルコール、エーテル類、シリコーンオイル類、水銀、流動パラフィンである。あるいは超臨界状態の二酸化炭素(CO)でも良い。超臨界COは熱膨張率が大きく、かつ熱伝導率も大きいので本発明の流体には非常に有用である。また熱交換器312やパイプ313、容器315の材料は熱膨張係数が小さいものが良い。また、熱交換器312およびそれを構成するパイプの材料は、熱交換が迅速に行なうことができるように熱伝導率が大きい物が良い。したがって、たとえば、銅(Cu)やアルニウム(Al)ないしはそれらの合金が好適であるが、さらには、モリブデン(Mo)とタングステン(W)を基本材料とする合金であればさらに好適である。あるいはシリコンカーバイト(SiC)でもよい。ダイヤモンド複合材も優れているが、これはパイプ状への加工が困難であり、かつ高価なものとなる。熱交換器312内のパイプは外気(外部環境)との接触面積を大きくするような構造となっている。たとえば、パイプ312が螺旋状やコの字状に曲がり外気とより多く接触し外気との熱交換が迅速に行なわれるようになっている。また、パイプの表面に溝やひだが形成されていたり、フィン状になっていても良い。
熱交換器312において、外気と接して熱交換機312内の液体等が外気の温度変化で迅速に熱膨張および熱収縮を行なう。たとえば、熱交換器312の外部の温度が高くなると、熱交換器312内で熱膨張をした流体はパイプ313を通り容器315内に向かう流れS1を発生させる。この流れS1によって回転車316が回転(たとえば、R1の方向)する。熱交換器312内の温度変化が大きいほど流れS1が大きく、熱交換器312内の温度変化がほぼなくなるまで流れS1が生じるので、回転車316は同じ方向(R1)へ回転する。熱交換器312の外部の温度が低くなると、熱交換器312内で熱収縮した流体によって、容器315内の流体317がパイプ314の開口端314からパイプ313内に入ってきてS1とは逆方向の流れS2を発生させるので、回転車316はR2の方向へ回転する。熱交換器312内の温度変化が大きいほど流れS2が大きく、熱交換器312内の温度変化がほぼなくなるまで流れS2が生じるので、回転車316は同じ方向(R2)へ回転する。これらの回転エネルギーが温度変化収穫機構によって得られたエネルギーであり、本発明の温度変化発電機構に適用できる。すなわち、図18は、流体を用いた温度変化収穫機構の原理を示すもので、いわばこの温度回転変換機構(温度変化のエネルギーを回転エネルギーに変換する)は、回転車(水車)が一つであり、この水車が回転整列機構に接続されて、流体の膨張および収縮の両方を収穫(ハーベスト)することができる。
尚、図18では、回転車316の回転方向をR1とR2で逆になっているが、回転車316において、たとえば回転羽根の構造を工夫したり、パイプ側や容器側から回転車316へ入る流れを工夫したりすれば、R1およびR2をそろえることもできるし、逆回転ができないようにすることもできる。従って、図18に示す流体を用いたシステムは、図1に示す温度変化収穫機構、一方向回転整列機構、およびラッチ機構を備えることもできる。また、図18では回転車を1個だけ記載しているが、流れを弱めなければ複数設けても良く、その場合は温度変化によって生じる流れによる回転エネルギーの収穫効率(エネルギーハーベスト率)が高くなり、蓄力の効率をより高めることができる。
図19は、流体を用いた温度変化収穫機構の別の実施形態を示す図である。図19において、熱交換器321、熱交換器321の出口は細いパイプ322へ接続し、このパイプ322は容器324へ入り込む。容器324の出口は細いパイプ325に接続し、さらにこのパイプ325は熱交換器321の入口につながっている。熱交換器321の出口側には出口方向にのみ開く逆止弁327が備わり、熱交換器321の入口側には入口と反対方向(熱交換器321側)へのみ開く逆止弁328が備わっている。熱交換器321、パイプ322、325および(貯留)容器324内には図19に示すように、流体329で満たされており、パイプ322および325には流体の流れによって回転する回転車323および326が配置されている。このように、水流のあるシステムとして構成するため回転車(水車)を2つ配置した。熱交換器321内の流体329は熱交換器の外部温度変化によって熱膨張または熱収縮する。たとえば、外部温度が高くなると流体329が熱膨張し、熱交換器321内の圧力が高まり逆止弁327が開き、熱交換器321内の流体329が細いパイプ322へ流れ出て、パイプ内で容器324側への流れが生じる。この流れによって回転車323が回転する。一方、逆止弁328は閉じた状態になっているので、パイプ325内では流体329の流れは生じない。従って回転車326は回転しない。回転車323は熱交換器内の温度変化がなくなり流体の流れが生じなくなるまで同じ方向へ回転する。
外部温度が低くなると熱交換器321内の流体329が熱収縮し、熱交換器321内の圧力が低下し逆止弁328が開き、容器324内の流体329がパイプ325へ流れていき、さらに熱交換器321内へ流入し、パイプ325内で熱交換器321側への流れが生じる。この流れによって回転車326が回転する。一方、逆止弁327は閉じた状態になっているので、パイプ322内では流体329の流れは生じない。従って回転車323は回転しない。回転車326は熱交換器内の温度変化がなくなり流体の流れが生じなくなるまで同じ方向へ回転する。以上のように、図19に示す温度変化収穫機構において、温度変化が生じると流体の流れが生じ、これにより回転エネルギーを発生させることができる。尚、逆止弁327、328を回転車323、326へ組み込むことも可能であり、さらに回転車323および326の回転方向を一致させることも可能であるから、図19に示す実施形態は、図1に示す温度変化収穫機構、一方向回転調整機構、およびラッチ機構を一緒に組み込んだものにすることができる。
図30は、図19に示す温度変化収穫機構に回転整列機構を具体化した実施形態を示す図である。基本的には図19と同じであるから、各部の符号は同じ番号で示している。回転車323および326の回転軸を一致(O軸)させておき、各回転車に空周り機構をつけておけば、流体の膨張および収縮により流体の流れが逆になってもO軸(回転軸)を常に同じ方向(R方向)へ回転させることができる。たとえば、流体の流れがBであるとき、回転車323はR方向へ回転するようにし、回転車326は回転せずかつ回転軸に対して空周りするようにする。この結果回転軸(O軸)はR方向へ回転する。流体の流れがAであるとき、回転車323は回転せずかつ回転軸に対して空周りするようにし、回転車326はR方向へ回転するようにする。この結果回転軸(O軸)はR方向へ回転する。従って、流体の膨張および収縮により流体の流れが逆になっても、回転軸(O軸)は常に同じ方向(R方向)へ回転するから、図30に示す温度変化収穫機構は回転整列機構も有する。尚、回転車323および326を回転させないようにするには、図16、図18、図22、図25等で説明したラッチ機構を適用することができる。さらに、図19に示すような逆止弁327および328を取り付けることもできるし、回転車323および326に一定の方向に対する流れを通すような弁(これも逆止弁である)を設けるなどすれば良い。また回転車323および326を一定方向の流れに対して空周りさせる機構は開示された種々の方法を用いることができる。このように2つの回転車323および326を用いる場合には、回転車とは別の回転整列機構を用いる必要はなく、回転車323および326自体に回転整列機能を持たせることができる。
図20は、図18や図19に示す回転車(水車)等に加えて、または代えてピストン・シリンダ方式を用いた実施形態を示す図である。流体(液体または気体)の(貯留)容器601がシリンダ構造をしており、流体(溶媒)607の膨張・収縮に応じて往復運動をするピストン602を有するもので、シリンジ構造となっている。シリンダ601はパイプ608および609を通して熱交換器と接続し、熱交換器内の流体(溶媒)607が熱膨張・熱収縮によりパイプ608および609内を流れ、往復の流体流れ611および612が生じる。(パイプ608および609は図18のパイプ313、図19のパイプ322や325に相当する。また、(貯留)容器601が図18における(貯留)容器315、あるいは図19における(貯留)容器324に相当し、さらに、図18における回転車(水車)316や図19における回転車(水車)323および326はピストン602および駆動歯車603に相当すると考えれば良い。)これらの往復の流体流れ611および612によりシリンダ601に配置されるピストン602の往復運動が生じる。ピストン602に備わる駆動歯車603に咬合している歯車604がピストン602の往復運動を回転運動として取り出し、回転整列機構605を経て、さらに第1の変速機構を経て蓄力機構606へ伝達させる。この実施形態では、回転車(水車)は不要であり、しかも回転整列機構605に逆転防止機能があるので、水流を規制する逆止弁等も不要である。このようなピストン602とシリンダ((貯留)容器)601を摺動する構造(溶媒シリンダ方式と呼んでも良い)の他に、摺動部を蛇腹構造として、流体の体積変化を同様に寸法変化として往復運動で取りだすベローズ方式としても良く、この場合は、摺動部がないので耐久性が向上する。このように、ピストン・シリンダ方式(温度変化エネルギーを往復運動エネルギーおよび回転エネルギーに変換する)を用いた温度変換収穫機構でも本発明の温度変換発電機構を実現できる。
本発明の温度変化収穫機構は、温度変化を用いたエネルギー変換機構であるから、ヒートポンプや放熱器等の熱交換器と融合することができる。図29は、ヒートポンプサイクルの模式的構成図を示す。ヒートポンプの冷媒にCO2を用いれば、CO2冷媒給湯器となる。ヒートポンプ391は、蒸発器392へファン396等で外部(環境)から大気熱や廃熱等の低温熱CO2を入れ、内部を流れる流体媒体を蒸発させて圧縮機394にて高温・高圧流体を作り、給湯器等の熱交換器で温熱をはきだす。たとえば、水Bを入れてヒートポンプ内の流体の熱で熱交換し温水Aとして外部へ流す。熱交換されたヒートポンプ内の流体は冷やされて膨張弁395で適宜蒸発器392へ送り出される。これらの繰り返しがヒートポンプサイクルである。図19に示す本発明の温度変化収穫機構は、図29の破線397で示す部分と同等であるから、図29に示すヒートポンプ熱交換システムと容易に融合でき、ファンやモーター要素も兼用できる。従って、機器外観も機器の大きさも殆ど変化させずに、ヒートポンプ熱交換システムを用いて発電もできる。
図31は、流体を用いた温度変化収穫機構の別の実施形態を示す図である。図31に示す温度収穫機構は、熱交換器404を冷却する機構として間欠的に冷却液を熱交換器404に散水する手段を有する。本実施形態の温度変化収穫機構は、冷却液を貯液する第1容器401、第1容器401から冷却液を受けて貯液する第2容器402、第2容器402に貯液した冷却液を定時的(あるいは間欠的に)散水することによって冷却される熱交換器404を含む。この熱交換器404は図18の熱交換器312や図19における熱交換器329と同様のものと考えて良いので、熱交換器404にはさらに回転車(水車)等が接続する。第1容器401には、液体供給源から熱交換器を冷却する液体が注入(補給)されて、冷却液が貯液されており、たとえば一定量の液体D1が常時第2容器402に供給される。この簡単な機構として、たとえば第1容器に常時一定量の冷却液を貯めておき、第1容器の下部に小孔を設けておけば、この小孔から一定量の液体が常時第2容器402に落液する。第2容器402は、たとえば2つの部分(402−1、402−2)から構成され、第2容器402の貯液量が少ないときは、これらの2つの部分が重なって冷却液が排出しないようになっているが、第2容器402の貯液量が一定量になると、たとえば設定した重量になると2つの部分(402−1、402−2)が離れて第2容器402の一定量(一部または全部)の貯液がD2のように熱交換器404に降り注ぐようになっている。(原理は、ししおどしまたは添水と類似)たとえば、冷却液D2はミスト状、あるいはシャワー状になるようにする。
熱交換器404全体を均等に冷却するために、第2容器402複数並列したり、図31(c)に示すように、第2容器405の割れ口406を広角にして複数配列したりして、熱交換器機構の全体に満遍なく冷却液がかかるようにする。熱交換器404は熱交換の効率向上のためにフィンやひだ状構造になっていて、これらの熱交換器404の外壁全体を伝いながら冷却液が落ちてゆく。さらに熱交換器404の外壁材料は親液性であることが望ましい。その場合、熱交換器404の外壁は冷却液によって湿潤するようになる。湿潤状態になった冷却液は熱交換器404の外壁の熱によって蒸発して、その結果熱交換器404は冷却される。このように、本発明の温度変化収穫機構の冷却機構は間欠的湿潤機構と言えるもので、熱交換器機構のフィン等に湿潤させた液体の状発熱冷却効果で熱交換器内の溶媒の温度変化を温度速度・頻度とも増幅するという効果を有する。
図32は、図31で示す熱交換器の外壁構造の一例を示す図である。熱交換器431の外壁は大気との接触面積が大きくなるようにフィン構造となっており、たくさんの突状部432が形成され、熱交換器431の外壁は凹凸形状を有している。さらに突状部432自体も凹凸形状を有しており、熱交換器431の外壁の表面積を増大させている。また表面積を大きくするために熱交換器431の外壁を梨地仕上げとし、細かい凹凸を形成しても良い。ただし、周囲流体(大気等)がこの凹凸形状の凹部内との出入が容易になるように、周囲流体の流れを妨げないように形状や方向を適宜選択する。また、図31で示したように、冷却液D2が熱交換器431の外壁を伝り落ちていくので、熱交換器431の下部も含めた全体が湿潤した状態になるように、冷却液D2の流れを妨げないように形状や方向を適宜選択する。
上述したように外壁材料は新液性材料が良いので、光沢のある金属等は親液性でない場合が多いので、上述の梨地仕上げや酸素プラズマ処理等の親液(親水)処理を行なうと良い。あるいは、図32に示すように、熱交換器431の突状部432の表面に高熱伝導性親液製ポリマー433をコーティングしたり、高熱伝導性親液製薄膜を形成すると良い。たとえば、熱伝導性フィラー配合樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が挙げられる。親液性に関しては図32に示すように、材料上に液滴434を形成したとき、その接触角αが90度より小さい場合を親液性が良いといい、接触角αが0度に近いほど親液性が優れている。尚、冷却液が水の場合は親水性であり、冷却液がアルコール等であれば、アルコール液に対する親液性である。以上のように、本発明の温度変化収穫機構の熱交換器機構において、外気等との接触領域となる熱交換器外壁の表面積を増大させて熱抵抗を下げるとともに外壁を親液性とすることによって、冷却効果が高まり温度変化収穫率を向上させることができる。熱交換器の材質は高熱伝導率を有する材料が望ましい。たとえば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、亜鉛、モリブデン、タングステン、シリコン、炭素材料(グラフェン、カーボンナノチューブ等も含む)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素(ナノチューブ等も含む)、これらの合金や複合物である。さらに、上述した内容から分かるように、低膨張率の材料であることが望ましい。(内部を流れる流体の流速が速くなる。)たとえば、上記の炭素材料や窒化ホウ素以外にもアルミニウムや銅と炭素材料との複合物は高熱伝導率であり低熱膨張率を有する。また熱交換器内を流れる液体の熱膨張率は高い方が良い。たとえば、アンモニア、二流化イオウ、アセトン、エチルエーテル、超臨界CO2等種々上げられる。また気化しやすい液体も体積膨張をし大きなエネルギーを産むので好ましい。
図21は、バイメタルや流体等を用いた温度変化収穫機構の能力を高める方法を示す図である。図21(a)はその概念図で、図21(b)はその効果を示すグラフである。バイメタルや流体等を用いた温度変化収穫機構342は温度変化追従性の向上により回転エネルギーを高める(すなわち、エネルギーハーベストが向上する)ことができる。そこで、環境の温度変化を温度変化収穫機構342へ効率良く伝達させるために、蓄力機構343に蓄えた蓄力の一部を使って温度変化収穫機構342の前に配置したファン341を回して風を送り温度変化収穫機構342における温度伝達の効率を高める。すなわち、送風により外部環境の温度変化が温度変化収穫機構342内へ速やかに伝達される。温度変化収穫機構342内に発生した回転エネルギーは一方向回転整列機構およびラッチ機構を含む変速機構344を通じて蓄力機構343に伝達される。蓄力機構343に蓄力が少し溜まったらその一部を使用してファンを回していけば温度変化収穫機構342の温度伝達率が高まっていき、蓄力機構343へどんどん蓄力が行なわれていく。蓄力機構に蓄えられた蓄力の残りは発電に使用される。逆に環境の風力が強いときはファンを回さなくとも効率は高くなっているので、蓄力機構343に蓄力する方に使用する。以上のようにしてバイメタルを用いた温度変化収穫機構の効率を高めることができる。
図21(b)は、図21(a)に示したファンを用いた効果を示す図で、縦軸に蓄力量(ハーベスト量)を縦軸に経過時間を取っている。本発明の温度変化発電システムを動作させると一定時間(t1)経過後蓄力が始まり次第に蓄力機構343に蓄力される(曲線A)。ある程度蓄力されたら(t2時間後)蓄力されたエネルギーの一部を用いてファン341を動作させる。従ってその分エネルギーが消費される(曲線B)が、ファン341の風により温度変化収穫機構342の温度状態が外部環境の温度変化に速やかに追随するので、一定時間後(t3時間後)再び蓄力量が増大する(曲線C)。ファンを用いない状態(曲線A)より蓄力量の増加率は大きくなるので、グラフの曲線(曲線C)の傾きは大きくなり、温度変化収穫機構の効率が高まる。t2時間後に示した斜線領域Sの部分はファンの動作に消費されているエネルギーであるが、この分のエネルギーが消費されても、ファンを用いた方が温度変化収穫機構のエネルギー収穫量が大幅に上回る。尚、ファンの動作には蓄力機構の一部の開放利用でも良いし、蓄電の一部を利用しても良い。
図23は、図21で示した温度変化収穫機能の高性能化の概念図を具体化した製品の一例を示す図である。直方体形状の温度変化発電機構装置の中に温度変化収穫機構347を収納している。この温度変化収穫機構347は図18や図19で説明した流体利用型の一例であり、微小な温度変化から大きなエネルギーを得るために温度変化収穫機構347の体積の占有率は大きく取っている。また、長いパイプ状の熱交換器が折れ曲がりながら配置されており外気との接触面積が大きくなっている。さらに表面積を稼ぐためにフィン構造になっていても良い。温度変化収穫機構347の一部であるパイプ状熱交換器347(347−1)の中の流体の設膨張・熱収縮により一方向整列機構およびラッチ機構を備えている温度変化収穫機構347(347−2)で回転エネルギーを得ている。この一方向回転により第1の変速機構348により減速させて大きなトルクを得て蓄力機構349で回転エネルギーを蓄積し、蓄力機構349の回転エネルギーはさらに第2の変速機構351により大きな回転速度にして発電機構352で効率的発電を行なう。
第1の変速機構や第2の変速機構は、たとえば、図23に示すように輪列(歯車)機構で減速または増側を行なうことができる。尚、温度変化収穫機構347(347−2)では回転整列を行なわず第1の変速機構348に一方向整列機構およびラッチ機構を備えても良い。蓄力機構(香箱機構)349の回転エネルギーは必要なときにターボファン346を回転させて送風して温度変化収穫機構347(347−1)の温度を通常状態に戻す。このようなフィードバック機構により温度変化収穫機構の効率を向上させることができる。尚、発電機構352から発電した電気エネルギーを用いてファン346を回転させて送風することができる。蓄力機構349からのフィードバックに比較して一旦発電させる分だけ効率が落ちるが、これも温度変化収穫機構の効率を向上させる有効な方法である。ファン346は温度変化収穫機構347に有効に送風するために相当位置(たとえば、周囲)に適宜配置することが望ましい。また、ファンは送風性能を向上するためにダクテッドファン構造であることが望ましい。
図24は、図21で示した温度変化収穫機構の高性能化を実現する別のシステムを示す図である。図21では、温度変化収穫機構342の温度安定化にファン341を用いた。このファン341は、図21から分かるように送風する部分である中央の開口部に送風羽根が存在する。この送風羽根が回転して温度変化収穫機構に送風しているときは温度変化収穫機構342の温度安定化がスムーズに行なわれるが、送風羽根が停止しているときは、内部に熱がこもり温度変化収穫機構342の温度安定化を妨げている。これを改良するために、図24に示す送風機355は中央の開口部に送風羽根を用いない開放型である。図24(a)は温度変化収穫機構358の前に開放型送風機355を配置した状態を示す図で、開放型送風機355は基台356および吐風環357から構成され、風を発生する羽根車等の駆動部は基台356の内部に配置されている。吐風環357の内側は羽根車も何もない開放状態である。
図24(b)は送風機355が動作しているときの風の発生状態を示す図である。基台内部で発生した強力な空気流が吐風環357に形成された環状アパーチャーから噴出して、吐風環357の前方に送り出される。このとき、吐風環357の内側の空気圧が低下し、吐風環357の後方の空気や周囲の空気が引き込まれて吐風環357の前方に送り出されるという仕組みである。(特許文献3、特許文献4)この結果、吐風環357の後方の巻き込み空気W1に加えて、取り入れ空気W2、さらに吐風環357の外縁からの引き込み空気W3が付加されて、大きな空気流W4が吐風環357の前方に吹き、空気流れは10倍〜20倍(W4/W1)に増幅される。本発明の送風機としてこのような開放型送風機を用いることによって、図21に示す従来型ファンに比較して効果的に温度変化収穫機構358の温度安定化(定常状態への回復)を実現できる。開放型送風機の他の利点として、非動作時でも中央の開口部は完全開放であるから自然な空気流を妨げないこと、ファンが露出していないので安全であること、駆動部が露出していないので耐候性を有することなどが挙げられる。尚、図24に示す温度変化収穫機構358は、外気との熱交換が活発に行なわれるように表面積が大きな熱交換の効率の高いフィン型構造の熱交換器で示している。さらに熱交換器358の内部にまで外気が入り込む構造となっている。このようなフィン型等の構造により熱交換器の熱抵抗を大きく低下させることができる。熱交換器にはパイプ359(パイプ本体は省略)が接続され、パイプ359とフィン構造の熱交換器358の間で熱膨張・熱収縮した流体が流れる。図21〜図24の実施形態では、流体媒体を用いて説明しているが、前述のバイメタル方式等の温度変化収穫機構358にもフィードバック型送風機構を用いることができる。
図22は、一定角度を持って基板に配置された微細毛を用いた回転ラッチ機構(逆回転防止機構)を示す模式図である。図22(a)に示すように、基板521に微細毛522を一定角度αをつけて成長あるいは植毛させる。(このような微細植毛をピーチスキンと呼称することもある。)たとえば、図22(b)に示すように、基板521上に微細毛522のシーズ膜523を形成した後絶縁膜524を積層する。この絶縁膜524に一定角度αを有する溝(斜溝)525を微細毛522のシーズ膜523に達するまで形成した後、微細毛522の膜を溝525内にシーズ膜523から選択成長させることによって、基板面に対して一定角度αを有する微細毛522を形成できる。この選択成長法としてたとえば、CVD(化学気相成長)法、蒸着法、メッキ法等がある。微細毛522の材料は、たとえば有機系材料、導電体材料、ガラス繊維などがある。図22(c)に示すように、このような一定角度を持って配置(配向)された微細毛を回転円板体526および527の側面に形成し、これらの円板体526および527の側面を合わせて回転伝達系を作ることができる。
回転円板体526の側面(回転面)に形成された微細毛531の配向方向に合わせて、配向された微細毛532を有する回転円板体526の側面(回転面)を配置する。(微細毛は回転円板体の側面(回転面)における接面に対して一定角度で傾いて植毛または成長している。)この結果、円板体526は、回転軸528の周りにR3方向には回転するが、R3と逆方向に配向された微細毛532によって規制されるため回転できない。円板体527も、R4方向には回転するがR4と逆方向に配向された微細毛531によって規制されるため回転できない。また、配向された微細毛531および532が同方向に噛み合っているので、円板体526をR3方向へ回転させると円板体527はR4方向へ回転する。すなわち、円板体526や527は歯車と同じ働きをして互いの回転を伝達することができる。このようにして微細毛を用いて、逆回転を規制したラッチ機構付き回転体を作製できる。この微細毛を用いたラッチ機構付き回転体は微細毛のピッチを細かくできるので、微細な回転体も形成でき、本発明の温度変化発電機構を小型化することが可能となる。さらに、このラッチ機構は、第1の変速機構や第2の変速機構に適用することができる。尚、図22では微細毛それぞれの長さおよび間隔を一定として示しているが、実際にはそれぞれランダムに配置することで、たとえば一本が該100μmとしても、数μm〜数10μmでのラッチ(逆転防止)のピッチ(きざみ)が実現できる。
図25は、微細毛を用いた別の回転ラッチ機構を示す図である。図22(c)で示す回転ラッチ機構は接触部がライン状(或いは、小面積面接触型)であるが、図25に示す回転ラッチ機構は接触部が面状(或いは、大面積面接触型)である。図25に示す回転ラッチ機構は円筒形状であり、内側回転円板体361の円柱362の側面全体に、接面に対して一定角度で傾いた微細毛363が形成されている。この円柱362を受ける内側が中空の外側円筒状回転体364の内側面365の側面全体に、接面に対して一定角度で傾いた微細毛366が形成されている。図25(a)は内側回転円板体361および外側円筒状回転体364が離れているときの図で、図25(b)はそれらが組み合わさっているときの図である。内側回転円板体361は外側円筒状回転体364の中空部分に挿入できるようになっており、それらが組み合わさると互いの微細毛363および366が一定角度で組み合うので、一定方向にだけ回転できるが、逆方向には回転できない。たとえば、図25(b)において、内側回転円板体361がR6と逆方向に回転しようとすると、互いの微細毛363および366の配向が逆方向になるので回転できない。しかし、内側回転円板体361がR6の方向に回転すると、互いの微細毛363および366が同方向に噛み合い、外側円筒状回転体364はR6の方向へ回転する。図22(c)で示すライン接触型回転ラッチ機構に比べて、図25で示す面状接触型回転ラッチ機構は、互いの微細毛が面状(円筒全体)に接触しているので、より強い逆止め力を得ることができ、この結果さらに微細ピッチ化を図ることができる。
図33は、微細毛を用いた回転ラッチ機構の別の実施形態を示す図である。図33(a)は、上図で示す微細毛を用いた回転ラッチ機構の課題を示す図である。ピーチスキン状の微細植毛による逆転防止機構(片方向回転機構)を用いる場合、強い逆方向回転が加わった場合、(1)、(2)および(3)に示すように微細植毛が変形され、遂には当初設定に対して逆方向の逆転防止機能となってしまう。すなわち、図25に示すような円筒型回転ラッチ機構の場合、円柱回転体362の微細毛363と外側円筒状回転体364の微細毛366は(1)に示すように配置されており、順方向R6方向にスムーズ回転できるが、R6と逆方向には微細毛の配向が逆になるので回転できない。しかし、強い逆方向回転が加わると、(2)のように微細毛363および366が変形し、(3)に示すように微細毛363および366の向きが逆になってしまう。このようになってしまうと図25に示す円筒型回転ラッチ機構は順方向に回転しにくくなり、本来の働きが不可能になる。
それを防止するため、図33(b)に示すように、粗いピッチだがより強い強度の逆転防止ツメを設けることで(つまり2段構えということである)、本来の回転方向に対する逆転を防止すると同時に、次に本来方向の強い力が加わった時には正常回転方向に戻ると同時に本来の微細ピッチのラッチきざみに戻れるという効果が得られる。すなわち、内側回転円板体361に補強部材541、外側円筒状回転体364に補強部材542を設け、補強部材541の側面に微細毛363より強度の大きな微細毛543を、補強部材542の内側側面に微細毛366より強度の大きな微細毛544を付着させる。これらの微細毛543および544の付着(植毛)方法は微細毛363および366の付着(植毛)方法と同じ方法の場合は、形状をツメ状にすると同時に、より強度の大きな材料を用いたり、微細毛の太さやサイズを大きくする。微細毛のサイズを大きくすれば、直接ツメ状部材を付着することもできるし、他の形成方法、たとえば、補強部材51および542の側面に加工(エッチングまたは機械的に)することもできる。
図28は、図14(a)に示した1日の温度変化のグラフをもとにして、1日のエネルギー収穫量(変化累積値℃)を求め、収穫エネルギーのシミュレーションを行ない、時定数(温度応答速度)とエネルギー収穫量の関係を示した図である。パラメータとして温度分解能(℃)を取っている。シミュレーションでは、一定の体積の媒質が上記の温度変化にさらされた時に原理的に通過するエネルギー量として計算した。容積率は50%で見積もり、残り半分は大気が通過したとみなした。温度分解能、温度応答速度、媒質(バイメタル想定金属、水、アルコールないしLLC液媒)等を変化させた。この結果から時定数(温度応答速度)、および分解能の効果としてグラフ化したものが図28である。時定数や分解能は、温度変化収穫機構の装置の構造、機構、大きさ等により変化する。図28から、分解能に対してはほぼ一次関数的に向上するが、時定数の寄与が顕著であり、時定数(温度応答速度)を20分以下とすると累積温度変化量が改善する。従って、温度分解能を上げ、応答速度を速くすれば、本発明の温度変化収穫機構のエネルギー収穫率を向上することができる。
図5は、本発明の温度変化発電と温度差発電(たとえば、ゼーベック素子を用いたもの)との相違を示す図である。いわゆる熱発電、すなわち温度差発電との違いを図5を参照しながら説明する。図5(a)にゼーベック素子を示す。発電に寄与するジャンクションを挟んで、放熱フィンなどをつけた外部温度応答性の早い側と熱的イナーシャを持たせた遅い側とを構成することで、外部温度が変化した時に発電することは可能であり、その様子を図5(b)に示す。温度上昇のみならず、下降時もマイナスの電位で発電する様子を示している。このマイナス電位部分も整流素子を使用することで、収穫可能であるので、見た目上、本発明の温度変化発電に類似した効果が得られることになる。しかし、図5(c)に示すように、このような温度差利用発電では、熱的イナーシャ部分の容量がポイントとなる。つまり、熱的イナーシャが小さい場合は急激な温度変化での発電は効果的だが、ゆっくりした大きな温度変化では発電効率が大きく低下することを示し、また一方、熱的イナーシャが大きい場合はゆっくりした温度変化での発電は効果的だが、微小で速い温度変化では発電効率が大きく低下することを示している。これに対して、本発明の温度変化発電では、温度分解能、応答性を上げれば上げるだけ発電能力は向上し、かつ温度変化の速度の全域に渡って効率は変わらないことを示している。このことが紛れもなく、温度変化収穫発電(本発明)が温度差発電(ゼーベックなどを用いた従来技術)に対して原理的に全く異なるものであると同時に勝って優れていることを示している。
本発明の温度変化発電機構の特徴を以下に幾つか簡潔に述べる。温度変化収穫機構、回転整列機構、ラッチ機構、および第1の変速機構を薄膜化・集積化することにより、単位体積当たりのエネルギー収穫を向上させることができる。このとき、回転整列機構・ラッチ機構を用いて温度上昇および温度下降の両方を収穫できるので、さらにエネルギー収穫率をアップできる。ラッチ機構を微細化して温度収穫分解能を上げることもでき、熱交換器構成を最適化し、ターボファン方式を採用することにより、温度応答性を上げることができる。鹿威し効果や香箱を用いて蓄力することにより、エネルギー蓄積と開放を同時に実現できる。本発明の温度変化発電機構はかつてもアトモスやスティーブンの世代に対して格段に確信されており、発電機構以降を付加して、新たな電源システムを実現できる。
図26は、本発明の温度変化発電機構の適用事例を示す図である。図26に示す温度変化発電機構は携帯機器よりも大きな電力を必要とする機器へ使用できるものである。図26(a)に示す温度変化発電機構370は中型規模で蓄電・電源へ応用でき、たとえば、へき地、災害地用の交流ラインのない場所で使用できる蓄電システムである。この温度変化発電機構370は蓄電池部374を内蔵する小型デスクトップパソコン程度の大きさであり、持ち運びも比較的容易である。蓄電池部374は、温度変化収穫機構373、蓄力機構372、発電機構373等からなる。この種の温度変化発電機構370は、携帯電話の充電器や電気スタンド等の小型電気機器への非常用供給電源として使用できる。もう少し大型化すれば、図26(b)に示すように、本発明の温度変化発電機構はUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源)クラスの非常用電源としても使用でき、たとえば机の下に置いておき停電時パソコン、テレビ、ラジオ等の電気機器のバックアップ電源に用いることができる。本発明の温度変化発電機構は、さらに大型化すれば、自動冷媒ヒートポンプ給湯機等に用いられるヒートポンプとの合理的融合が可能となり、昼間使用していない熱交換系の有効活用ができる。EV(電気自動車)は本来ラジエータがないので暖房に苦慮しているが、本発明の温度変化発電機構ではヒートポンプとの融合が可能なので、本発明の温度変化発電機構をEVやPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)の供給電源に用いれば、使用するヒートポンプを車の暖房にも使用できる。ヒートポンプは暖房に使っていない時は走行中も発電に使用できる。駐車しておいても温度差は発生するので、充電器(蓄電池)も満タンとなる。走行中は駐車時より温度変化が大きいので、本発明の温度変化発電機構での回生エネルギーは駐車中よりさらに多くなる。さらに、スマートハウス・HEMS(Home Energy Management System:家庭用エネルギー管理システム)へリンクして蓄電し売電もできる。図26(c)は、本発明の温度変化発電機構を太陽エネルギーを用いた発電システムに適用した実施形態を示す図である。本発明の温度変化発電機構を多数並べてモジュール化(377)することにより、大容量で大規模の発電が可能となる。温度差は昼夜問わず存在するので、昼間の発電に加えて、従来の太陽電池と異なり、夜間発電も行なうことができ、24時間発電できる。以上説明したように、温度差は太陽由来のエネルギーであるから、本発明の温度変化発電機構のエネルギー源は太陽エネルギーと対等の能力が潜在している。従って、本発明の温度変化発電機構方式をAPG(Atmospheric Power Generation、またはAero-thermal Power Generation)発電と呼称しても良い。
図27は、本発明の温度変化発電機構をモジュール化した例を示す図である。図27(a)は図1に示す温度変化発電機構の一例で、各機構を具体的な部品レベルで分解して示している。多数の低トルクゼンマイ等から成るシリコンMEMS製バイメタルゼンマイモジュール等からなる温度変化収穫機構381を用いて温度変化による熱エネルギーから運動エネルギー(回転エネルギー)を収穫する。これらのゼンマイの弱いトルクでどんどん巻き上げて、次段の回転整列機構・ラッチ機構を含む第1の変速機構382を用いて蓄力に好適な変速比で回転を減速し、ゼンマイを有する蓄力機構383で蓄力する。さらに、この蓄力による回転エネルギーを輪列等から成る第2の変速・調速機構を用いて発電に好適な変速比で増速し、電磁誘導等による発電機構385を用いて効率的に発電する。また、本発明の温度変化発電機構には、獲得した電気エネルギーを蓄える高容量キャパシタや2次電池等の蓄電機構386や種々のコントロールを行なうことができる専用LSI等の制御機構387を付帯しても良い。図27(b)は、本発明の温度変化発電機構を小型電子機器向け携帯用機器にしたもので、図27(a)に示すすべてがコンパクトに収納されている。用途や容量により大きさは変わるが、一例として、幅Wおよび奥行きDは20〜40mm、高さHは3〜8mmであり、上着のポケットに入れて持ち運びできる。さらに、図27(c)に示すように、携帯電話の一部389に収納しバッテリーとしても使用できる。
通常のコイルにおける誘導起電力を利用した誘導型発電機に対し、複合磁性体における大バルクハウゼン効果を利用したものがバルクハウゼン発電機である。バルクハウゼン発電機と従来の誘導型発電機における、回転数と発電エネルギーの関係を図36に示す。誘導型発電機は発電できない回転域を残し、ある程度以上で回転数に比例したエネルギーを出力し飽和する。バルクハウゼン発電機では低回転域から高回転域まで発電できない回転域が無く、ほぼリニアな発電特性を示し、ある程度の回転数で飽和する。すなわち、従来の誘導型発電機では発電できない極低速回転であっても発電でき、高速回転にすればより一層出力の大きな発電が可能である。緩慢な回転運動(角度変化)であっても発電することができるため、伝達機構としてダイレクトドライブが適する。
バルクハウゼン発電機(通常実装型)では、回転数0[rpm]付近から発電可能であり、発電エネルギーは回転数に比例し一定の回転数以上で飽和する。バルクハウゼン発電機(多極高密度実装型)では、回転数0[rpm]付近から発電可能であり、発電エネルギーは回転数に比例し一定の回転数以上で飽和する。高密度実装であることから、通常実装型と比較してより低い回転数から飽和する。通常実装と多極高密度実装のバルクハウゼン発電機の発電特性と、従来の誘導型発電機との比較では、多極高密度化することでより低回転域から大きいエネルギーで発電することが分かる。具体的な多極高密度化法としては、発電機寸法は変えずに可能な限り多くのジェネレータコイルを基板上に実装することにより出力を大きくし、体積当たりのエネルギー密度を高くする。従って、発電デバイスであるコイルと永久磁石を小型化・高密度集積化するための実装技術を確立する。
従来のバイナリー発電システムを小型化する際、如何に安定、高効率動作させるかが課題となる。バイナリーサイクルの作動媒体の流量が少なくなると、タービンの回転数が不十分となり出力が安定しない。少ない流量に合わせてサイクルをスケールダウンしても、作動媒体ポンプに与えるエネルギーが小さくなり安定動作しない。本発明の技術内容は、システムをバイナリーサイクルとAPG(Atmospheric Power Generation)ブロック(温度変化発電部)の2つに分け、バイナリーサイクルでは温度差を発電に利用し、APGブロックでは温度変化を発電に利用することで高効率化と出力安定化を実現する。これらを相補的に動作させ、温度差のみならず温度変化をも収穫することにより、限られた占有面積で最大の発電効率を得る。本発明の発電機は、バイナリーサイクルとAPGの得意とする動作で発電することが特徴である。すなわち、バイナリーサイクルは、蒸発器と凝縮機の温度差を収穫して発電し、APGは、蒸発器と凝縮機の温度変化を収穫して発電するので、これらを組み合わせることによって、常時発電する効率の良いシステムを構築できる。
図37は、バイナリーサイクルおよびAPGを組み合わせた発電(サイクル)システムの一実施形態を示す図である。図37には本技術内容の各発電要素も示している。バイナリーサイクル側の蒸発器側には温水が入る熱交換器があり、バイナリーサイクル側の凝縮器側には冷却水が入る熱交換器がある。蒸発器全体または一部を含む容器1をAPGブロックのベローズ1側に接続し、凝縮器全体または一部を含む容器2をAPGブロックのベローズ2側に接続する。ベローズ1およびベローズ2はラック&ピニオンでダイレクトドライブ方式のバルクハウゼン発電機に接続する。容器1、2内には所定の沸点を持つ作動媒体が入っており、所定温度以上では気体となり、所定温度以下では液体となる。バイナリーサイクル側の蒸発器側では温水からの熱によってバイナリーサイクルのチューブ内の液体媒体が気化する。一方、バイナリーサイクル側の凝縮器側では冷却水によってバイナリーサイクルのチューブ内の気体が液化する。温水の温度が低下すれば、バイナリーサイクル側の蒸発器側では液体媒体の気化スピードが低下し、場合によって気化しなくなったり、逆に気体が液化する。冷却水の温度が上昇すれば、バイナリーサイクル側の凝縮器側では気体(媒体)の液化スピードが低下し、場合によって液化しなくなったり、逆に液体が気化する。また、APGブロック側の容器1や2では、温水や冷却水の温度が安定していると作動媒体の変動は小さい。一方、APGブロック側の容器1や2では、温水や冷却水の温度が変動していると作動媒体の変動が大きくなる。
この図37に示すように、本システムは複雑な機構を用いず大変シンプルである。バイナリーサイクルとAPGブロックを協調動作させる温度の組み合わせは図38のバイナリーサイクルとAPGブロックの協調動作パターンに示すように4パターンである。すなわち、下記発電タイミング(1)〜(4)に示す様に、バイナリーサイクルとAPGブロックの発電時期が異なり、エネルギーを補てんし合うことで作動媒体の流量低下による不安定化を避け、小型であっても高効率安定動作を実現する。
(1)温度パターン1
バイナリーサイクルの蒸発器と凝縮器の温度が共に上昇している場合、バイナリーサイクルによる発電量はゼロ(0)か極めて小さい。一方、APGブロックのベローズは大きく伸張するためAPGの発電機が正回転して十分な発電エネルギーを得る。この時、APG発電エネルギーをバイナリーサイクルの液媒作動ポンプのエネルギーに転用することで作動媒体循環を助け、安定動作に寄与する。
(2)温度パターン2
バイナリーサイクルの蒸発器と凝縮器の温度が共に下降している場合、バイナリーサイクルによる発電量は0か極めて小さい。一方、APGブロックのベローズは大きく収縮するためAPGの発電機が逆回転して十分な発電エネルギーを得る。この時、APG発電エネルギーをバイナリーサイクルの液媒作動ポンプのエネルギーに転用することで作動媒体循環を助け、安定動作に寄与する。
(3)温度パターン3
バイナリーサイクルの蒸発器の温度が上昇、凝縮器の温度が下降している場合、双方の温度差が十分であればバイナリーサイクルは安定した発電を行う。この時、APGブロックによる発電量は0か極めて小さい。
(4)温度パターン4
バイナリーサイクルの蒸発器の温度が下降、凝縮器の温度が上昇している場合、双方の温度差が十分であればバイナリーサイクルは安定した発電を行う。この時、APGブロックによる発電量は0か極めて小さい。
以上の温度パターン1〜4は図38に要約して示している。また、温度と発電量の関係、すなわちバイナリーサイクルおよびAPGブロックの協調動作による発電タイミングを図39に示す。このことから、すべての温度条件のもとで、本発電システムは、バイナリーサイクルかAPGブロックかどちらかが安定した発電を行なっていて、非常に効率の良い発電システムとなっている。尚、図38に示すCWとは時計回りであり、CCWとは反時計回りである。
本発明の発電システムは、バイナリーサイクルとAPGの得意とする動作で発電させる。それらの作動媒体について、バイナリーサイクルとAPGの媒体動作の様子は、以下のようである。
(1)バイナリーサイクルの液媒(作動媒体):媒体移動は大きい。ポンプで移動し、タービンを低速から高速へ回転させる。
(2)APGの液媒(作動媒体):媒体移動は小さいか殆どなく、バイナリーサイクルに使われない蒸発器と凝縮器からの余剰熱を得ることで、ベローズを圧縮伸長させる。
従って、双方の発電量は下記のようになる。
(1)蒸発器と凝縮器の温度差が大きい時は、 バイナリーサイクルによる発電量大。
(2)蒸発器と凝縮器の温度がほぼ同時に上昇または下降する時は、 APGによる発電量大。
作動媒体の沸点は100℃以下であるが、高すぎると低温熱源に使用できず、低すぎると設計を困難にする。たとえば、一例として図40に示すように、低環境負荷・低沸点であるフッ素系熱媒体を選択採用し、合わせてシステム設計すると良い。
温度差を収穫するバイナリーサイクル部と、温度変化を収穫するAPG部に新規発電機を応用することで、軸摩擦が少なく長寿命かつメンテナンスフリーにすることができる。APGブロック(蒸発器または凝縮器側)のベローズと伝達機構の構成イメージを図41に示す。ベローズは肉薄金属が良く段数が多い程、移動量が大きくなるため好都合である。ラックアンドピニオンを含む伝達機構は、シンプルである程故障が少なく、ダイレクトドライブ可能な新規発電機の特長を活かすために、増速輪列を使用しない設計とし、ベアリング使用により軸摩耗を小さく抑えることで長寿命化することができる。
次に、効率と出力の見積を行ない、バイナリーサイクルとAPGブロックの協調動作による効率向上を推定する。
(1)低温バイナリー発電システムの効率(最大推定値):
蒸発器の効率0.7、タービン効率0.5、発電機効率0.5、凝縮器の効率0.7、ランキンサイクルの理論熱効率0.1、従ってη1=0.7×0.5×0.5×0.7×0.1=0.0123=1.2%、
(2)バイナリーAPG発電システムの目標効率:
APG協調動作による効率増加は、蒸発器、凝縮器、発電機の各効率に0.1を加算したものと等価となるため、
蒸発器の効率0.8、タービン効率0.5、発電機効率0.6、凝縮器の効率0.8、ランキンサイクルの理論熱効率0.1、従ってη2=0.8×0.5×0.6×0.8×0.1=0.0192=1.9%、
バイナリーAPG化によるシステム効率差Δη=η2−η1=1.9−1.2=0.7%、
これにより、出力と市販マイクロバイナリー相当の電気料金換算額を見積ると、
マイクロバイナリー発電出力を1kWとした時、必要な入力は1kW/1.2%=83kW
上記効率差による出力差Δp=83kW×Δη=0.58kW、
24時間365日連続運転では、Δp×24×365=5081kWh、
(3)電気料金換算(1kWh:25円):127,025円。
たとえば、システム価格を100万円に抑えれば、効率差Δηだけでも8年で元が取れる。
このように概略見積もりでも回収効率は非常に良い。
図34および図35は、図1の116、図23の352、図27の385などで示した温度変化収穫機構の高性能化を実現する別のシステムを示す。図34および図35では通常のコイルにおける誘導起電力を利用した誘導型発電機に替えて、複合磁性体における大バルクハウゼン効果を利用したバルクハウゼン発電機を用いた構成を示す。
図34は、バルクハウゼン発電機711の構造を示す。図34(a)は平面図で、図34(b)は側面図である。図中ジェネレータコイル712は複合磁性体コア713に多数(複数)回コイル714を巻いたものである。このジェネレータコイル712を複数直列または並列に接続し、多極磁石715の周囲を取り巻く。(図34では、直列接続)(或いは、単独のジェネレ−タコイルで多極磁石の周囲を取り巻いても良い)コイル714の巻き始めを図の様に(黒丸印717)揃えて配線し易くする。双方向(矢印718方向)自由回転する多極磁石715のN極とS極がジェネレータコイル712との距離を変化させながら入れ替わることにより、複合磁性体コア713中の整列磁極が雪崩を打ったように一斉反転すること(大バルクハウゼン効果)でコイル714に短時間の電磁誘導をもたらし、パルス状の起電力が生じる。磁石715を回転シャフト716の回りに回転させることでパルスを繰り返し発生させて、一定の電気エネルギーを得ることができる。従来の誘導型発電機では発電できない極低速回転であってもパルス起電力で発電でき、高速回転にすればより多数のパルスが生じるので一層出力の大きな発電が可能なことが利点である。従って、温度変化によるバイメタルなどの緩慢な回転運動であっても発電するので、温度変化収穫ステージとの機械的結合において輪列を減らし、伝達機構の損失を軽減することができる。図34の矢印718に示すように、磁石715の正逆回転どちらでも(すなわち、自由回転で)発電できるので、たとえば、図1に示すような回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構や回転方向の逆回転を防止するラッチ機構を使用しなくても良く、その分本発明の温度変化収穫機構はよりシンプルな機構となり、伝達損失が軽減する。
図35は、バルクハウゼン発電機711を用いた高性能型温度変化収穫機構を示す。図35(a)はその構成図であり、図35(b)は初期状態、図35(c)は温度変化後の状態を示す図である。バイメタルコイル(またはバイメタルぜんまい)722を、固定軸723に一端を固定した上で巻き、他端をホイール721に接続した機構により温度変化を収穫する。温度が変化するとバイメタル722が湾曲するが、これはコイル(あるいは、ぜんまい)状に巻いてあるので、結果的に固定軸723に対するホイール721の矢印方向724の回転となる。(図35(c))熱容量が許す限り幅が広く厚みを持ったバイメタルを組み込むことで、回転角が小さくとも大きなトルクを引き出すことができる。ホイール721は発電機711の回転シャフト716に回転力を伝達して発電機を回すが、(図35(c)に示す矢印方向725の回転)回転角度変化さえあれば発電する。ホイール721と発電機回転シャフト716はギアかアイドラーで結合する。収穫段階から回転トルクが大きく極低速から高速回転まで動作するため、蓄力用ゼンマイは必須でなく、コストや機構簡素化による故障率軽減が可能である。たとえば、図1において、一方向回転整列機構やラッチ機構以外にも第1の変速機構、蓄力機構、第2の変速機構も不要になる。極端に言えば、温度変化収穫機構(図35で言えば、バイメタルコイル)および発電機構(バルクハウゼン発電機)だけで良い。以上より高性能な温度変化発電機構を実現する。
以上、詳細に説明したように本発明の温度変化発電機構は携帯レベルの超小型サイズから、中型・大型化にも対応でき、小規模発電〜大規模発電も可能である。小型化では、一日程度の放置で携帯機器を充電できる蓄電・充電機を実現できる。中型化すれば、家庭内の電気機器への対応も可能となる。さらに大型化すれば各家庭全体の消費エネルギーをカバーできるようになる。太陽電池発電や風力発電が集中型エネルギーセンタであるのに対し、本発明の温度変化発電機構は、独立・分散型であり、災害にも強いというメリットを持つ。
尚、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
上述した以外にも、本発明は、温度変化が生じ得る場所であればいつでもどこにでも設置したり持ち運んだりして発電することができる。たとえば、非常灯や緊急用ラジオにも適用しても良いし、携帯機器の常時充電器にも使用できる。
111・・・温度変化収穫機構、112・・・一方向回転整列機構、
113・・・第1の変速機構、114・・・蓄力機構、115・・・第2の変速機構、
116・・・発電機構、117・・・手巻き機構、118・・・変速機制御機構、
119・・・充放電制御機構、120・・・負荷、

Claims (34)

  1. 温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、
    前記温度変化収穫機構は、流体の熱膨張および熱収縮による流体の流れを回転エネルギーに変換した機構であり、
    前記温度変化収穫機構は、流体を内部に含む熱交換器、流体を貯留する流体貯留容器、前記熱交換器および前記流体貯留容器を接続し流体が流れる第1のパイプ、および前記第1のパイプ内に配置され前記第1のパイプ内の流体の流れにより回転し回転エネルギーを発生する第1の回転車を含み、前記熱交換器内で熱膨張した流体が前記第1のパイプ内に流れ込むことによって発生する流体の流れによって前記第1の回転車が回転し回転エネルギーを発生することを特徴とし、さらに、
    前記熱交換器および前記流体貯留容器を接続し流体が流れる第2のパイプ、前記第2のパイプ内に配置され前記第2のパイプ内の流体の流れにより回転し回転エネルギーを発生する第2の回転車を含み、前記熱交換器内で熱収縮した流体が第2のパイプ内から前記熱交換器内へ流れ込むことによって発生する流体の流れによって前記第2の回転車が回転し回転エネルギーを発生することを特徴とする温度変化発電機構。
  2. 前記熱交換器の第1のパイプとの接続口側および/または前記第1のパイプ内に、前記交換器から前記流体貯留容器へ流れる流れに対して開き、その逆の流れに対して閉じる機能を持つ第1の逆止弁を有し、さらに、
    前記熱交換器の第2のパイプとの接続口側および/または前記第2のパイプ内に、前記流体貯留容器から前記交換器へ流れる流れに対して開き、その逆の流れに対して閉じる機能を持つ第2の逆止弁を有することを特徴とする、請求項1に記載の温度変化発電機構。
  3. 前記第1の回転車は、前記交換器から前記流体貯留容器へ流れる流れに対して回転し、その逆の流れを停止する機能を持ち、および/または前記第2の回転車は前記流体貯留容器から前記交換器へ流れる流れに対して回転し、その逆の流れを停止する機能を持つことを特徴とする、請求項1または2に記載の温度変化発電機構。
  4. 前記第1の回転車は、前記交換器から前記流体貯留容器へ流れる流れに対して回転し、その逆の流れに対して回転せずかつ回転軸に対して空周りする機能を持ち、および/または前記第2の回転車は前記流体貯留容器から前記交換器へ流れる流れに対して回転し、その逆の流れに対して回転せずかつ回転軸に対して空周りする機能を持つことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  5. 前記第1の回転車および第2の回転車は同じ回転軸で回転し、前記同軸回転は一方向への回転であり逆方向には回転しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  6. 温度変化を往復運動エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記往復運動エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、
    前記温度変化収穫機構は、流体の熱膨張および熱収縮による流体の流れを往復運動エネルギーに変換した機構であり、前記温度変化収穫機構は、前記往復運動エネルギーを回転運動エネルギーにさらに変換したことを特徴とし、前記温度変化収穫機構は、流体を内部に含む熱交換器、流体を貯留するシリンダ、前記熱交換器および前記シリンダを接続し流体が流れるパイプを含み、前記往復運動はシリンダに配置されるピストンによる運動であり、前記ピストンに備わる駆動歯車に咬合する回転整列機構により回転エネルギーを発生することを特徴とする温度変化発電機構。
  7. 前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーの一部、および/または発電した電気エネルギーの一部を用いて羽根付きファンまたは羽根なしファンを用いて前記温度変化収穫機構に風を当て、前記温度変化収穫機構における回転エネルギーへの変換を促進することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  8. 前記温度変化収穫機構における熱交換器の冷却において、前記熱交換器に所定時間毎に散水する機構が付加されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  9. 前記熱交換器の外壁はフィン状であり、外壁表面は冷却液に対して親液性であることを特徴とする請求項8に記載の温度変化発電機構。
  10. 前記熱交換器の外壁表面に冷却液に対して親液性材料を付着形成させることを特徴とする請求項9に記載の温度変化発電機構。
  11. 前記熱交換器の外壁表面に高熱導電性材料を付着させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の温度変化発電機構における温度変化収穫機構をヒートポンプに組み込んだことを特徴とする温度変化発電機構。
  13. 温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、
    前記温度変化収穫機構はバイメタル構造のゼンマイを含み、前記バイメタル構造のゼンマイが温度上昇および温度降下を伴う温度変化により変形することを用いて、ゼンマイの回転エネルギーを収穫(発生)することを特徴とし、
    前記バイメタルは、その厚さ方向に熱膨張率の異なる2種類の材料(材料Aおよび材料B)が結合した構造であり、前記材料Aからなる基板を深堀エッチングにより形成した後に、エッチングされた前記材料Aの側面に材料Bを付着形成することにより作製されることを特徴とする温度変化発電機構。
  14. 温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、
    前記温度変化収穫機構はバイメタル構造のゼンマイを含み、前記バイメタル構造のゼンマイが温度上昇および温度降下を伴う温度変化により変形することを用いて、ゼンマイの回転エネルギーを収穫(発生)することを特徴とし、
    前記温度変化収穫機構は、中空の円板形状の外周面および/または内周面にバイメタル構造のカンチレバーを複数配列した櫛歯(くしば)状の回転円板体を少なくとも1つ有することを特徴とする温度変化発電機構。
  15. 前記温度変化収穫機構は、隣接する少なくとも2つの直径の異なる回転円板体を有し、複数の前記回転円板体は中心軸を共有するとともに、前記直径が大きな回転円板体の内周面に配列されたカンチレバーの櫛歯(くしば)の間に、前記直径が小さな回転円板体の外周面に配列された櫛歯(くしば)のカンチレバーが入り込んだ構造となっていることを特徴とする、請求項14に記載の温度変化発電機構。
  16. 前記バイメタル構造のカンチレバーは2枚の板状体CおよびDが厚み方向に結合しており、片側の板状体Cは、略中間部から根元側の材料Eと略中間部から先端側の材料Fから構成されており、材料Eと材料Fの熱膨張率は異なっていることを特徴とし、前記板状体Cと結合する他の片側の板状体Dにおいて、板状体Cにおける材料Eと結合する板状体Dは材料Fであり、板状体Cにおける材料Fと結合する板状体Dは材料Eであることを特徴とし、さらに、直径が大きな円板体の内周面に配列された櫛歯(くしば)状のカンチレバーにおける片側の板状体の材料は、これと対向する直径の小さな円板体の外周面に配列された櫛歯(くしば)状のカンチレバーにおける片側の板状体の材料とは異なっていることを特徴とする、請求項14または15に記載の温度変化発電機構。
  17. 共通の中心軸を有する複数の回転円板体からなる前記温度変化を回転エネルギーに変換する機構において、カンチレバーの厚みをT、隣接するカンチレバーの間隔をDとしたとき、中心にいくに従いT/Dが大きくなっていることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  18. 前記バイメタルは、その厚さ方向に熱膨張率の異なる2種類の材料(材料Aおよび材料B)が結合した構造であり、前記材料Aからなる基板を深堀エッチングにより形成した後に、エッチングされた前記材料Aの側面に材料Bを付着形成することにより作製されることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  19. 前記材料Aはシリコンであり、前記材料Bは金属シリサイドまたは金属であることを特徴とする、請求項13、17または18のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  20. 前記バイメタルは、その厚さ方向に熱膨張率の異なる2種類の材料(材料Aおよび材料B)が結合した構造であり、材料Aおよび/または材料Bは樹脂であることを特徴とする、請求項13、17または18のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  21. バイメタルの板厚が0.6mm以下であることを特徴とする、請求項13〜20のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  22. 前記ラッチ機構は配向性を有する微細毛を側面に用いた少なくとも2つの回転円板体(第1回転円板体、第2回転円板体)を使用し、第1回転円板体の側面と第2回転円板体を組み合わせて接触させ、第1回転円板体の側面に形成した微細毛の配向と第2回転円板体の側面に形成した微細毛の配向により、ラッチ機構を発揮するとともに、特定の一方向に回転を伝達することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  23. 前記第1回転円板体および前記第2回転円板体は円柱形状であり、前記第1回転円板体の側面と前記第2回転円板体の側面が接触していることを特徴とする請求項22に記載の温度変化発電機構。
  24. 前記第1回転円板体は円柱形状であり、前記第2回転円板体は内側が空洞の円筒形状であり、前記第1回転円板体の円柱の側面および前記第2回転円板体の円筒の内側側面に配向性を有する微細毛が形成されており、前記第1回転円板体が前記第2回転円板体の内側に挿入され組み合わされて、前記第1回転円板体の円柱の側面と前記第2回転円板体の円筒の内側側面が接触していることを特徴とする請求項22に記載の温度変化発電機構。
  25. 前記第1回転円板体に配向性を有する微細毛を側面に用いたさらに別の部材(第1部材)が結合し、前記第2回転円板体にも配向性を有する微細毛を側面に用いたさらに別の部材(第2部材)が結合し、第1回転円板体の側面と第2回転円板体を組み合わせて接触させたときに、前記第1部材の側面および前記第2部材の側面も接触し、前記第1部材の側面に形成した微細毛の配向と前記第2部材の側面に形成した微細毛の配向により、前記ラッチ機構を補助することを特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  26. 前記第1の変速機構に手巻き機構が付随していることを特徴とする、請求項1〜25のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  27. 前記第1の変速機構における減速比は1/5であり、および/または第2の変速機構における増速比は5であることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  28. 前記第2の変速機構にさらに変速制御機構が付加されるとともに、蓄力機構におけるゼンマイが完全巻き上げ状態であることを検出して前記蓄力機構におけるゼンマイを自力解放する機構が付加されており、および/または前記発電機構に充放電制御回路を含むことを特徴とする、請求項1〜27のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  29. 前記充放電制御回路において充放電の状況を監視しながら、前記変速制御機構により前記蓄力機構におけるゼンマイを断続的に解放することを特徴とする、請求項28に記載の温度変化発電機構。
  30. 前記蓄力機構はゼンマイを用いて蓄力するシステムであり、前記第1の変速機構において変速比可変構造を設けることにより、前記蓄力機構における巻き上げトルク特性を一定にすることを特徴とする請求項1〜29のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  31. 温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構、前記回転エネルギーを一方向の回転力へ整列する一方向回転整列機構、前記回転方向の逆回転を防止するラッチ機構、前記整列された回転力による回転速度を減速する第1の変速機構、変換された前記回転力を第1の変速機構を通して回転エネルギーとして蓄える蓄力機構、前記蓄力機構に蓄えられた回転エネルギーによる回転速度を増速する第2の変速機構、前記第2の変速機構により増速された回転速度から発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、
    前記発電機構は、複合磁性体コアに複数回コイルを巻いて作製したジェネレータコイルを複数接続したバルクハウゼン発電機であることを特徴とする変化発電機構。
  32. 発電機構は、複合磁性体コアに複数回コイルを巻いて作製したジェネレータコイルを複数接続したバルクハウゼン発電機であることを特徴とする、請求項1〜30のいずれか1項に記載の温度変化発電機構。
  33. 温度変化を回転エネルギーに変換する温度変化収穫機構および前記回転エネルギーから発電する発電機構を含む温度変化発電機構であって、
    前記発電機構は、複合磁性体コアに複数回コイルを巻いて作製したジェネレータコイルを複数接続したバルクハウゼン発電機であることを特徴とする温度変化発電機構。
  34. 前記温度変化収穫機構は、バイメタルぜんまいであることを特徴とする、請求項33に記載の温度変化発電機構。

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